2025.7.12都市計画塾vol.12「再開発事業と公園の関係性 ~ キッシンジャー村vs美濃部亮吉(革新自治体)」の動画・資料・受講メモをお届けします。今回からカメラと講師PCをリンクさせたので、動画の資料画像がとても見やすくなりました。

これまでの都市計画塾でも言われてきたことですが、都市計画は本来レギュレーションをかけるもの。それがなぜ、逆に規制緩和に向かっているのか。今回はその入り口として公園と臨海部の再開発の類似性を見ていきます。両方ともオリンピックと深く関係しています。
※本ブログで受講メモを担当しているイケガミは、ガチガチの反オリンピックで、築地市場移転反対派。受講後に気がついたことも含め、関連事項を書き足しました。〈補足:緑文字〉はイケガミによる補足です。



まずは、戦時中~戦後~現在の東京の道路計画について。
マッカーサー道路と呼ばれる環状2号線に着目。外堀通りを延伸し、今は豊洲まで通った環状2号線。そのうちの市ヶ谷~臨海部がマッカーサー道路と呼ばれている。
その経緯は、GHQが市ヶ谷駐屯地から臨海部へまっすぐな道を作りたかったから。しかし、このルートは戦時中に日本が空爆の延焼遮断としてすでに計画していたもの。戦後は防災目的として、(利害が共通した)GHQに日本がお願いして作ってもらった。
〈補足:1940年=皇紀2600年には東京オリンピックと東京万博が決定されていたが、戦争のため返上。万博は晴海~月島、豊洲が会場で、勝どき橋はそのために整備された。当時としては皇居から臨海部を結ぶ道路によって、万博と国威発揚を繋げたかったのでは。オリンピックとの関係でいえば、築地市場は2020オリンピックのために晴海の選手村(現・晴海フラッグ)から競技場に「15分短縮するため」環状2号線を通さなくてはいけない(地下なのに)、というのが移転理由の一つ。実際は1年遅れた2021年になっても開通せず、市場跡地は車両基地とコロナ対策に使われた〉
オリンピック遺跡を掘り起こせ ! 築地と東京の海 - 築地でええじゃないか! かわら版



環状2号線の虎ノ門ヒルズ~新橋の区間は、木造密集地域があり、どかすことが難しく、なかなか整備ができなかった。「幻のマッカーサー道路」といわれる。
今回、森ビルが立体道路制度を使った虎ノ門ヒルズタワーで、不可能と言われていたところをやった。地下トンネル(築地虎ノ門トンネル)の上にビルを建てる。
道路は行政財産のうち、特定目的財産(道路のみに使用しなくてはいけない)にあたるが、1989年 : 立体道路制度ができて、地上部を好きに使ってよいことに。
木密地域の地上げを行い再開発。5棟のタワー。森ビルは特定建築者となり、再開発ビルの建築とその後の運営を担う。地権者は権利変換で土地を差し出す。
再開発は収支がとんとんになるよう公開しなくてはいけないが、特定建築者は明らかにする必要はない。
総合設計制度→広場(公開空地)を作って容積率ボーナスを得た。大儲け、サクセスストーリー。
立体道路制度が使われたのは、おそらく大規模には初めてのケース。




臨海副都心開発との関係
鈴木俊一都知事(1979-95) : 1964年五輪当時は、副知事として実務のナンバーワン。
マッカーサー道路実現のために東京オリンピックを使い、次に世界都市博を計画したが、96年青島幸男都知事当選で頓挫。
都市博は環状2号線が第一の狙いで、それから臨海再開発。
それ以前にマッカーサー道路は美濃部亮吉(1967-79)が都知事となって革新都政で頓挫した。美濃部は住民との対話、暮らしの質、防災緑地整備優先。これは当時の革新自治体(横浜、藤沢、大阪、神戸)すべてに共通。背景には公害問題があった。
キッシンジャー村とは:戦後の「逆コース」のメンバー。
美濃部が開発を止めたことに不満で、レッドパージ。美濃部は都民の人気が高いので、企業の人気を取ろうとして、2回目のオリンピック(1964)→都市博 : 企業にお金を落とす計画。ゼネコンや東京電力、NTTなど大手各社に1~4兆円。
都市博で、企業は数年後に入る事業費をアテにしたが、そのタイミングでバブルが崩壊。銀行が貸さないので事業からも撤退し、都市博開催が不可能になったところで、青島幸男が登場した。
企業に対する裏約束:東京オリンピックと豊洲再開発合わせて(石原慎太郎)1兆円は出している。
〈補足:島田講師は2020(2021年開催)オリンピックを想定しているが、その前に石原による2016招致がある。これは晴海メインスタジアムの新設含め、ほとんど湾岸部を使う計画で、おそらくこの方が都市博の直接的な穴埋めを狙ったもの。2020は「既存施設を活用した世界一お金のかからないコンパクト五輪(猪瀬直樹)」だったが、有明アリーナほか湾岸部に多数の新設・仮設施設を作った。国立競技場の建て替えも近年の他国の五輪メインスタジアムに比べて圧倒的に高いし、面積拡大により後述の明治公園移転に繋がっている〉

美濃部→鈴木でハコもの政治が復活。
青島→石原、猪瀬で企業にお金を落とす裏約束が復活。

虎ノ門ヒルズに立体道路制度を適用させたのは和泉洋人首相補佐官。
著書に『容積率緩和型都市計画論』があるほどの人物。自民党~民主党まで首相補佐官。小泉政権で都市再生本部に抜擢。
ここからは公園に道路と同じ手法が適用される話。
Park-PFI(2018年):森ビルの開発手法からヒントを得たもの。公園で収益をしてもいい。事業者が設計もやり、収益事業もやる。民間提案でやる。



明治公園:TokyoLegacyParks(東京建物、三井物産、日本テレビなど):オリンピックで再開発のため閉鎖、更地になった。そのあとPark-PFIを使う。
ここでイケガミの写真による明治公園の現状を見てもらう。

・公園に占める建物の面積が大きく、カフェが三つ、レストラン、アウトドアショップ、スパが入ってまるで商業施設のよう。

・「誇りの杜」なる樹木がショボい。中にただの石ころの「渋谷川」がある。

・インクルーシブ広場、希望の広場はコンクリートの突起物だけで、日陰がまったくない。

・歩兵連隊跡の石碑だけは元の明治公園から移設した。場所は違うのに。樹木は「移植」しなかった(できない)。
<補足: 元の明治公園は現在の国立競技場の南西部分。国立競技場が大きくなって潰された。移転再開したのは国立競技場南側にあった都営霞ヶ丘アパート跡。1964年五輪で立ち退きとなった人が住んでいた霞ヶ丘アパートは、今回の五輪で廃止・解体され、期間中は放送施設になっていた(一部は先行してJOC敷地に)。
ちなみに隣接する三井不動産のタワマン:the Court外苑も1964年五輪の海外報道陣滞在施設を転用した外苑ハウス跡地。風致地区の規制をなくして高層マンションを建設>

公園内の建物を規制しているのは公園法:例外的に公園になる前からあった建物は可。
Park-PFIでは収益事業をやってもいい。地下の道路と地上部を分けるのと同じ仕組み。
杉一小移転改築もプロポーザル方式で事業者を募ったが、決まったらその事業者が設計、建築、その後の運営まで担う。募集要領を公表し、施行者(杉並区)が一番よい提案を選択する。どのように上図のような配慮をするのか。そこに住民意見は入らない。
募集要領にはあるがどこに配慮したのか。杉一小と似ている。

1956年に都市公園法ができてから、公園を管理するのは自治会、パートナー制度などがあったが、地方自治法改正により2003年に指定管理者制度が導入される。
立体道路制度とPark-PFIは同じ。民間のために公共用地を差し出すこの仕組みはいろんなところでハレーションを起こしている。

ここで明治公園の「渋谷川」から、公園における流水設備について。
ビオトープ:親水空間の整備は、1970-80年代に世田谷区が発祥。その頃はよかったが今は世田谷区でも水は流れていない。この前プールに3cmの水で子どもが溺れる事件があった。3cmでも死ぬということで、水を流すのが許されなくなる。管理者の責任になるので、水を溜めないようになった。
ビオトープというのは、雨が降ったら水が溜まるもの。国立競技場脇の「渋谷川」は少しだけ水を流している(水道か汲み上げで、雨水ではない)。
Q:西荻窪のどんぐり公園や高円寺の馬橋公園では流れているが?
A:前に作られたものは許されているが、水位を下げている。
ここから質疑に入るにあたり、島田講師から
「今日は明治公園のPFIどう思いますか?というところを聞いてから話せばよかったかもしれない。こういうのが今日の流行りであることは間違いない。虎の門ヒルズにも広場(公開空地)があるが、広場という概念と公園が一緒のものになっている」
「先行する例として豊島区立南池袋公園、樹も生い茂っていたが、Park-PFIで芝生広場になった。利用者からはそういう要望も多い。子どもを守るための視認性が優先としされ、生態系がないがしろにされる。芝生はシートを引いて食べたりできるので評価される。それでいいのかという議論」
「美濃部知事は公園の目的を防災、生態系を取り戻すことに置き、商業は敢えて外してきた。IRも凍結した。都市博、東京テレポート構想では自民党がカジノ入れる要望をした。美濃部がストップしたことを、ことごとく覆そうとする流れ」
質疑では、各人の経験した具体的な事例に基づく意見が多く出ました。
Q:仙台農業園芸センターのPFIプロポーザルに関わった。商社がトマトとハーブの圃場、農業レストランを提案したが、3位で落選。1位は(杉並区にもある野菜販売のマルシェの)ファームドゥだったが、神戸で補助金詐欺の会社と組んだとして失格。2位のJAも不正で降りた。PFIはやり方によってはうまくいくことがあるのでは。
A:地方都市で財源が乏しい中で公園を整備するにはPFIが欠かせない。しかし、東京は特異な使い方で、救済措置ではなく、収益を上げるため。
Q:そういう意味では
・緑
・語らいの場所
・水
三つの要素があるのが私の考える都市公園。さらにウィーンでは音楽がある。そういうのが日本では否定される。日本人が特殊なのか、そういう方向の教育がなされているのか。
A:さまざまな公園があるが、日本の都市公園はイギリス型の自然を保全し、開発から守る、アメリカ型の福祉目的の二つが出発点。地方都市では財政難で民間の力に頼るため、規制緩和した。都内で財政も豊かなのに規制緩和するのは、美濃部都政の遺産を潰しにかかっている。
Q:デンマークオーデンセの公園は、住宅街の真ん中をオーデンセ川が流れ、遡ると樹林帯と原生林。18-9世紀の農村を再現した博物館があり、地元のボランティアが維持している。財政的に厳しくてもお金をかけずにできるのだが、日本にないのは民度が低い。

Q:練馬区の屋敷林を守るNPOをしている。練馬区の緑被率は23区で一番だったのが、3位に落ちた。練馬区は公園の緑被率だけは高くなっているが、民有地が20%後半だったのが5%くらい落ちた。
パーク・マネジメントと次世代公園のFaceBookグループに入った。そこに参加している人たちはPFIが中心で「収支が取れるよう運営」の研究会、入札に参加する企業の人が多かった。しかしそんな人たちも棚田などを「よりよい緑地を作るには」と書いている。FBではそうでも実際の集まりでは事業をゲットして利潤を上げようとギラギラしている。
日ノ出町に研究施設があり、都立公園の全部の写真を見たが、都立公園の中で石神井公園が一番緑地が豊か。公園も千差万別だが、自然を保全する代表例として石神井公園はある。
日比谷公園などは人工的で幾何学的。都市公園は自然公園にはならない。公園を作るにあたって「潜在自然植生」をちゃんと調べているのか行政に聞くが、知らない。環境省はちゃんとマップを作っている。
維持管理に経費がかかるからPFIみたいのが出てくる。利益を無視はできない。練馬区は必ず「にぎわい」が入っていて、稲荷山公園拡張でも入れている。行政は利益が上がるものを作りたい。
A:PFIは住民との意見交換をしないでいい。稲荷山もPFIになったら意見できなくなる。
稲荷山住宅地、公園化 : 隣の街が"またまた"たいへんだ ! - ニシオギDRUNKerシンブン
Q:都市公園法そのものがおかしくなっているのでは。
A:今は都市計画自体がおかしい。レギュレーションをかけるのが、都市計画だったのに、規制緩和している。
動植物の既存種在来種を残すには、スポット的にでも都会の中に残っていれば生息できる。
今の公園管理は人間の視点だけ。樹を切った方がいい、水は溺れるからダメとか。
Q:京都大学演習林は収益的にもいい。住民の声だけでなく、開発事業者が自然回帰、都市の中に自然を作ると考えるようにならなくては。
A:教育の問題かもしれないが、子どもたちが次の文明を作る転換点かもしれない。
外苑西通りの設計に関わったが、渋谷川を残すべき、観音橋だけは残す、在来種を街路樹に、と、いくら説明しても動かない。民間様々で行政が口を出さない。
阿佐ヶ谷では、欅屋敷の屋敷林を切ったのだからそれを復活させるくらいのことが必要。


ここで、イケガミがおまけに入れていた日比谷公園の再開発の写真を映したため、日比谷公園の話題に。
日比谷公園は向かいの三井不動産のミッドタウン日比谷と、新たに再開発している内幸町の高層ビル群からデッキで直結し、公園内も「バリアフリー」の名目で樹を伐り、噴水を縮小し、バラ園を潰し、芝生広場にしてイベント広場として使いやすくされています。
Q:公園再開発に参入する三井のメリットは何か。
A:日比谷は防災エリアとしても緑地がほとんどない。ビルと直結することで私の庭にする。再開発エリアに入る帝国ホテルも、今では三井の子会社。
さらに都心~湾岸再開発と「公園」についての情報が。
参加者より:日本橋で首都高を地下化しているが、その地上部「KKライン」を遊歩道化し、都市公園扱いにしようという計画。コリドー街の上、地目は宅地。三菱地所、みずほ銀行、大成建設が参入している。
東京高速道路(KK線)の再生に向けた取組|都有地等をいかしたまちづくり|東京都都市整備局
これは「次の宮下公園」になる。本願寺裏の地下高速道路を含め、築地再開発と連動。築地アリーナ、浜松町、新橋との動線。
ニューヨークのハイライン、鉄道跡を緑地にしたものをモデルにしている。ループの首都高速道路を地下にして、地上部は建物の上に鉄板をかけて、公園・緑道にする。汐留ににぎわいを作る目的もある。交通会館は三菱地所と東京都。ビックカメラも三菱地所。果てしない構想。交通局は不動産屋化している。みどりのプロムナード構想として、中央区も協力。
そもそも日本橋の上の高速道路撤去、誰が言い始めたか、考えればわかる。
宮下パークは、どこまでが「公園」なのか? :公園の現在地vol.2 - 築地でええじゃないか! かわら版
さまざまな論点や事例が出たため、島田講師より最後にまとめとポイントのおさらい。
「鈴木俊一は戦中から国にいた。東京都の都市計画の父、後藤新平を踏襲。1964オリンピック、都市博で一気に開発。キッシンジャー村の黒幕が周りを固めていた」。
「バブル崩壊でプロジェクト解散。都市博中止。長年宙に浮いていた計画が今回の東京五輪で動き出し、規制緩和手法も洗練された。立体道路制度は公園PFIと非常に似ている」。
「阿佐ヶ谷のまちづくりの中で知見をどう活かすか。土地のポテンシャルは開発圧力を受けない。阿佐ヶ谷地域区民センターの上にまで立体公園(けやき公園)ができてしまった。生態系無視した開発手法。阿佐ヶ谷も無視できない問題」。
「今行政がやっているのは、本来の公園ではなく広場に近い。再開発のための公開空地。再開発とセット。収益を上げる種地になっている」。
次回は[阿佐ヶ谷の原風景を守るまちづくり協議会]の「まちづくり団体」活動として、「都市計画塾Special : 阿佐ヶ谷・杉並の屋敷林と樹木」を、座学とフィールドワークの2回にわたって9~11月に企画します。
また、島田講師のこの課題からの展開としては、「再開発等促進区」のテーマを予定しています。