2025.5.31都市計画塾vol.11「まちづくりと公園の歴史について~林試の森と稲荷山公園に着目して」の動画と受講メモをお届けします。
-本題に入る前にまず、[阿佐ヶ谷の原風景を守るまちづくり協議会]の、杉並区まちづくり団体登録の報告。
そして、前回までの「都市計画の住民提案」も踏まえて、「杉並区のあさがやまちづくりセッションやデザイン会議では本質的な話はされていない。まちづくりに住民のカウンタープランを出す、そうした場が必要」という島田講師の見解。
今回のテーマは公園。
〇都市計画における公園とは?
・日本の都市公園法は、旧都市計画法より後、68年の改正より前の1956年にできた。
・都市計画法の旧法、新法の違い:
旧法はスラムのような衛生的に生活改善が必要な地域を対象とし、内務省衛生局管轄。都市計画区域として定めるエリアは狭い。例えば月島の木密、未設道宅地地域。関東大震災や戦後に無秩序に作られた街に、公共が手を下して集中的に投資、積極的公共を実施する目的。一方、地区計画は住民が、自主的に管理するもの。
新法は、都市の単位がすべて都市計画区域に入る。エリア的に決めたのでなく、都市全体が区域となり、その中でのゾーニング計画。道路・河川が公共で、それ以外の民有地では建築制限をかける。
・都市公園法はゾーニングの影響を受けていない。公園を設置する時には集中投資する意気込みを見せるが、のちにゾーニングされた街との不具合が生じる。

・都市公園法ができた背景
1.ヨーロッパから輸入:田園都市計画
・イギリス:エベネザー・ハワード(1050-1928)が1898年に「田園都市」を提唱。エンクロージャーで追い出された小農が行き場がなく工場労働者になり、住むところがなくホームレスに。住むべき場所を衛生的に作ると同時に、工場労働者の気晴らし、人間を開放させる、自然と触れ合う「田園都市」が計画された。大都市の中に作るべきもの。
・イギリス発祥だが、実はドイツはもっと盛ん。しかしナチスの政策だから、戦後は他の国は取り入れない。
2.アメリカから輸入:セントラルパークの影響
・米国:フレデリック・L・オムステッド(造園家1822-1903)が社会的調和、コミュニティの場として公園作りを推進。association結束節:テニス、絵画サークルなどの場として。コミュニティの中に必ず一つ。
・日本では近隣住区と呼ぶ。小学校か中学校学区単位。この中に必ず一つ公園を作る。


・都市公園の種類
このページは、講義では割と流されてしまいました。今回の事例とは関係が薄かったかもしれませんが、基本的知識としておさらいしておきたいところですね。補足として「国立公園は国立公園法が規定する、野生の獣がいるような区域のこと」という説明あり。

ここから、練馬区で立ち退き問題が生じている稲荷山公園について。
練馬区北部・土支田にある稲荷山公園は、西側の清水山の森と東側稲荷山憩いの森の総称。実は「公園」としての都市計画決定はさらに広い範囲(大泉町を含む100ha)に及んでおり、すでに宅地化が完了した今になって、いきなりその計画が実施されようとしています。収容法を使って、行政代執行も辞さない、とまで。
杉並などの人にはなかなか稲荷山、なじみがないと思いますので、詳しくはこちら。公園、周辺の住宅地をフォトレポートしています。

・なぜ南側などは(道路や境界線ではなく、建物を横切るような)「雑な直線」で都市計画範囲が定められているのか:旧法の集中投資の意志表示、現在のゾーニングのようにきっちりしたものでない。新法に沿って引き直し、拡大したが、元の線がそのまま残った。

計画線がマンションをぶった切っている。
・経緯 : S53(1978)年都市計画決定変更。すでに住宅があったが、計画変更は住民に知らされない。掲示板に貼り出し、2週間で意見提出しろ、と言うだけ。R4(2022)年度整備計画で初めて知るところとなった。
・もともとは、白子川南は丘陵、北側は畑。清水山、稲荷山を開発されないように行政が押さえた。ゾーニング上はなんでも建てられるので家が建った。しかし公園の計画が残り、都市計画公園の中に家がある状態になっている。

・憩いの森とは:民有林を提供型公園とする憩いの森制度。公園ではないが公園のように保全、固定資産税が減免される。東京都が作った政策で、練馬区が手を挙げた。条例を作らないでも運用できていた。公共の福祉に利用するから。今は条例を必ず作って運用する。
・練馬区のスタンス:前川区長が「公園なのだから公園として整備」と言っているが、400軒以上もの立ち退きがあり、実現性ない。区に確認したところ、「何年かかるかわからないが、公園なので公園として整備」と回答。今年実施計画が策定され、来年測量予定だが、遅れている。すでに昨年作られるはずだった専門家会議のロードマップがまだできていない。
小池都知事が日比谷公園を再開発ビルにつなげたり、杉並区でも田中前区長が公園を削って保育園にしたり、目黒区では公園と美術館などの施設をまとめてタワマンにする計画が出たり(頓挫)、都市部では公園を潰す話はよくあります。しかし、逆に「住宅を潰して公園拡大」というのは、初めて聞いたときには島田講師も驚いていました。
練馬区・外環の2に取り組む方からの質問。
Q:都市計画は練馬区のものか。憩いの森はどこのものか。
A:決定は東京都が行う。
Q:ここは区立公園として開発しようとしている。
A:都市計画は市町村と関係ない。元は国が行い、市町村に委託された。東京都が権限を持っているが、施策としては練馬区がやる。計画の最高権限は東京都にある。
Q:まちづくり提案は、練馬区の面積基準が東京都と違い、練馬区条例が適用される。練馬区は条例だけが適用と回答している。
(※質問した方は稲荷山に限らず、練馬区の道路問題等の都市計画住民提案についての実践について話しており、会場では会話が噛み合っていませんでした。後で資料を見て理解)
A:一般的には条例だけで決まるわけではない。条例は国の法律に負ける。
Q:具体的に行動を起こすにはどっちのルールでやればいいか。
A:条例は法律に矛盾しないはずなので。
Q:土地所有と計画主体が違うことはあるが。所有権は東京都だが、練馬区の事業で、憩いの森は民有地のはず。
A:手続き的には都市計画区域を設定、変更するのは東京都。ある行為については区だけの範囲でやっていい。
Q:専門家会議は練馬区がやっている。
A:整備計画は練馬区が作っている。条例を国法より厳しくするのは矛盾で、規制緩和は地区計画を使えばできる。権限委譲で、法のグリップがきかず、地方自治体が勝手なことがやれるようになっている。
Q:開発済みの住宅地をどうするつもりか。
A:新法になったときに「見直し」といったのに、古い計画をそのままなぞり書きしてしまった。

実はこの地区の都市計画には公園だけでなく、再開発促進地区がかかっていることが、図面からわかります。西南側(左下)に都市計画道路拡幅事業が行われており、これが光が丘駅からの大江戸線延伸ルートです。参加者からは「土支田駅(仮称)」が作られることで再開発促進となったのだろう、との指摘がありました。
公園は「保全すべき区域」だが、「再開発すべき」地区が同じところにかかっている。これは新法のゾーニングの考え方で、広い範囲をすっぽり都市計画区域に入れ、その中でミクロに地区を線引きしたことで起きた。再開発地区計画が促進地区になった。地区計画なので治外法権。治外法権同士が重なっている。
再開発促進のイメージとしては駅前のタワマンだろうが、再開発促進地区において、実は具体的に書かれていない。再開発促進地区はタワマンでないところにも使える。成田の阿佐ヶ谷住宅は「すべき地区」に指定された。市街地再開発法は市街地再開発事業、土地区画整理事業、地区計画、どれを使うかは市区町村がその場で決める。
理念だけで具体的に何を入れるのかは決まっていない。行政は計画的に誘導します、といえばいい。かなり無理やり運用している。
一番問題は住んでる人が追われること。



もう一つの事例は目黒区の都立林試の森公園。林業試験場が筑波に移った跡地を公園にしたもの。
・90年代、テーマ型まちづくり協議会「林試の森21」が運用。花を植える、目黒のさんまのイベント、ミニSLなど。都市公園法では勝手に住民がやることはできない。管理者以外は公園に手を下してはいけない。まちづくり協議会がやった初の事例。

・林試の森事件(H18:2006年最高裁判決):南門水車門にアプローチ道路を建設する(公園の区域となる。建設大臣が線引き)ため、民家の立ち退き(地図赤丸)が発生。住民が国有地の公務員住宅の方(地図左側)に作れと、裁判を起こした。
一審:住民の主張を認める。
二審:行政に裁量権の逸脱はない。住民敗訴。
最高裁:行政は裁量権を越えている。二審判決破棄し、差し戻し。
・最高裁が行政判断に立ち入った珍しい判断。事業認可取消になった。稲荷山に関しても「行政に合理性がない」という判決が起こりうる。
(※註 : 「林試の森公園事件」はこれとは別の殺人事件)
追記(2025年12月):実際に林試の森に行ってきましたので、写真を追加します。




ここも公園として拡幅する計画があるようで、
やはり民有地側に道路を拡幅しなくてよかった。

Q:最高裁が行政に立ち入るのはどういう条件か。よっぽどひどいからか。
A:附帯はついていて、行政が合理性をもって民有地側に通すのも一理あるとしている。
Q:高円寺の道路:補助221号線拡幅について。都市計画道路で訴訟して、これはおかしい、と裁判所がなるには、どういう要件ならいいのか。
A:よっぽどひどい、ということ。B/Cをやってないとか、何十年もかかるとか、予算手段が講じられていないとか。
Q:交通量は半減している。杉並区は無視したB/Cを出してきた。
A:道理としてはあるが、裁判官がそれをおかしいと思うかどうか。そもそも都市計画道路は30年ごとに見直すべき。
Q:杉並区は防災だ防災だという。中野再開発でタワマンが複数棟区界に建つ。タワマンの真ん中に大きな駐車場があり、そのための拡幅である。

工事中のビルが東急不動産の囲町再開発。
Q:公園について、今日出なかった話だが、明治公園が新しくなった。やたら建物が建ち(公園法で建物は3Fまで、敷地の2%、美術館などの教育施設等は10%以内)カフェがいくつも入っている。スパまである。なんでこんなことをしていいのか。商業施設を入れていいのか。
A:商業施設はもともと可能。公園内の建物の面積はパークPFIで緩和できる(明治公園は東京都初のパークPFI)。
昔、公園は指導員がいて、住民が花植えてもよかったのが、都市公園法でぎちぎちになった。今は違う意味で緩和してしまっている。ジェントリフィケーション、富裕層のため、公園経営という観点が入り、もともとの福祉目的から離れたものになっている。

Q:稲荷山、ゾーニングの考え方が入ったときに、どうして住宅が建ったときに公園としてゾーニングしなかったのか。78年の計画変更までに、周囲は家が建っていた。
A:通常なら区域を外すべきである。
Q:住居は市街化調整区域に違法に建てたのか?
A:住居専用地域ではないので違法ではない。公園(計画区域)と知りながら家を建ててもいい。都市計画道路も同じで、道路計画がかかっていると知りながら家を建てていい。
次回都市計画塾は7月12日(土) 15:30-17:45 産業商工会館第一集会室(区民センターではありません。阿佐ヶ谷駅南口徒歩5分)
テーマは「公園と再開発」、 島田講師が「闇が深すぎる」と言う、東京のど真ん中、神宮外苑と明治公園を取り上げます!