6月14日(土)杉並産業商工会館にて当会主催による「阿佐谷連続学習会Vol.3『杉一小移転問題の今』うわさ?の「改築検討懇談会」はどうなっている?」を開催しました。
当ブログでは、昨年来この「学校改築検討懇談会」についてはあまり詳細をご報告してこなかったので、この会をレポートすることでご報告に代えさせていただきます。
当日はあいにくの雨模様。東京都知事選挙の投開票日を一週間後に控え、この学習会に来ていただいた方々の中には、選挙のボランティア活動のため都合がつかなかった方も多かったのではないでしょうか?来場者はいつもより少なめでしたが、それでもそのような日にもかかわらず、ご来場いただいた方なので、この問題への関心が高く熱量を持って耳を傾けていただき、且つ鋭いご指摘やご質問が相次ぎ、非常に密度の濃い会となりました。
記事は前後編、後編は質疑と意見交換です。
まず、杉並第一小学校児童の現役の保護者が「杉一小移転問題とは?」という概要と、現在進行中の改築検討懇談会について基調報告を行った。

この問題が、既に10年以上に及ぶ長期に渡っていることに改めて驚いた。
・駅近の一等地にある150年の歴史ある小学校と、
①軟弱地盤
②土壌汚染
③低地浸水
の三つの悪条件がある病院跡地とを交換するという、とんでもない事業であること。
・その交換も地主側にとって有利な計算がされていて、十億円規模の区の財産棄損が疑われること(換地の不公正)。さらに区がその計算内容を開示しないこと。

(2023年作成)
・2016年3月に現地建替複合施設として区の基本計画が正式に決まったにも関わらず、同年、水面下で見直し検討が進められ、翌年5月にはこれまで話されていなかった河北病院跡地への移転を前提とした施設整備方針がいきなり一方的に決められたこと。その後、「対話の区政」「公共の再生」を掲げて選挙で選ばれた岸本新区長のもと、2023年には「振り返る会」と称して、杉一小移転を含めた阿佐ヶ谷まちづくりに関して、数回の区民と区の対話集会が開かれたが、区は区民の意見をただ聴くだけで、1mmも聞き入れるつもりがなかったこと。

(2024年作成)
などなど、これまでの経緯・課題ポイントを来場者と共に改めて復習し、この問題の根深い闇と、児童保護者や学校関係者、近隣住民の憤りを実感した。
学校改築検討懇談会について

最初に示した改築検討懇談会の運営要綱には、来場者からも失望のため息が漏れた。
つまり、あくまで意見を聴くだけで、合意する場ではないということ。2023年に何度も行われた区民と区の対話集会と全く同じ。「区は1mmも聞き入れるつもりはない」ということが明らかである。
岸本区長は「対話の区政」というが、「対話」とは、あくまで合意形成のための手段の一つで、「対話」自体が目的ではないはず。しかも聴くだけで「あとはこちらで考えます」というのでは、仕事として参加している区職員や有償で招聘された専門家はともかく、わざわざ仕事を休んで7回も8回も参加して熱心に意見している懇談会委員のことを何だと思っているのか?
並行して行われているあさがやまちづくりセッションや、道路問題に関するデザイン会議も基本は同じだろう。区民と区がどのような形式で対話し、どのように合意形成すればよいのかの知見や方法論を区は持っていないのだ。無理もない。前区政においては、この程度の「対話」すらいっさいなかったのだから。そしてこれは区長や区職員だけが考えることでも、一朝一夕にクリア出来ることでもないだろう。だが、岸本区長はせっかく「対話の区政」を掲げて区民の支持を得たのだから、「対話」のあり方についての研究もする必要がある。

学校改築検討懇談会の経緯。
設計業者から基本計画案が出たあと、校舎配置案の検討で4か月・4回を要している。この検討は予定では2回で、6月時点は既に諸室配置案の検討に入っているところだった。4回も要した理由として、区が設計業者に建築の前提条件となる土地(低地・土壌・地盤)の問題を情報提供しておらず、土地の問題を最大課題とする懇談会委員と議論が嚙み合わなかったと指摘された。
聞けば、通常、設計業者とは、あくまで土地のウワモノ(建築物)についての検討や提案しかしないものだそうだ。だが、これもいかにも通例主義のお役所仕事の問題である。杉一小移転の件は、あり得ないほど問題のある土地に小学校を建てる計画なのだから、通常の進め方ではダメなのだ、ということがわかった対応がされていない。区が最初から土地の問題を解決課題として、設計業者に対策を含めた計画を依頼し、設計業者もその課題解決策を中心に提案~説明をしていれば、こんなに滞ることはなかっただろう。8回目でようやく校舎配置案までは概ね合意されたが、①軟弱地盤②土壌汚染③低地浸水の懸念は今だ未解決。

昨年の6-8月に検討された基本方針案。
ビジョン3のブロックが前から気になっていたこと(下に拡大)。

小学校の校舎なのに、なぜこうも一般区民への施設開放にこだわるのだろう?確かにこれまでも杉一小の特徴として「地域に支えられ、地域と共に学ぶ」はあるが、それはあくまで小学校の教育に地域の大人たちがボランティアで参加して貢献するというもの。決して地域の大人たちが自分たちのために学校施設を勝手に使うという話ではない。
この点に強い違和感があり、さらにこの地域の有力者等で構成された阿佐谷北東エリアマネジメント(今年からエリアプラットフォーム)から、昨年6月に同内容の提案がなされていたことが報告された。区は彼らの意見に忖度して基本方針を描いたのか?
だが、この点については参加者の一人から、杉並区教育委員会の中に学校施設を「地域の学びのプラットフォーム」とし、人生100年時代の生涯学習の場とする構想があるのだとの指摘があった(後編に詳細)。この基本方針はその構想に沿ったものなのか?改築検討懇談会ではそのような説明や議論はなかったので、今後注視していく必要がある。

移転後の小学校の敷地に、ハザードマップを重ねたもの。校舎の配置は南側案と北側案があったが、ここでは第8回で決まった南側案のみ取り上げる。
この図は改築検討懇談会資料の一部であり、先日の杉並区議会第二回定例会の一般質問において安田マリ区議がパネルで提示し質問したもの。改めてひどい水没想定地に小学校を移転することにしたものだと思い知らされる。
(参照)
https://x.com/asagaya_sugi1/status/1931145388943413296
第7回(左)でハザードマップでは0.5~1.0mの浸水を示す黄色・黄緑色だったところが、第8回(右)では浸水のない白色に変わっている(後編参照)。区の説明によると、これは資料の作り方の違いによるもので、第7回は現在のハザードマップをそのまま重ねたもの、第8回は小学校の土地を周辺の最低地点から+1.5mの高さまで嵩上げ(校舎は+2.0m)する想定。
つまりこの時点で初めて、区は杉一小の移転予定地を嵩上げする計画を暗に示したことになる(明言はしていない)。しかし改築検討懇談会の中では誰も質問・確認しなかったので、懇談会終了後、当会が区職員に確認して資料変更の経緯が判明したものである。
区や設計業者が低地浸水の懸念を初めて具体的に捉えた点は、遅まきながらもささやかな進歩である。だが、当会がこれまで指摘してきたように、杉一小の土地を嵩上げするということは、今度は周囲の住宅地の水害リスクを上げることになる。現時点ではその点は全く考察されていない。
来場者からも、周辺が水没した際、避難経路がなく児童は水に浸かりながら自宅へ帰ることになるのでは?との懸念が上げられた。


今後検討される予定の諸室配置案(1F)とイメージパース。
先述の基本方針の「公共施設」的な要素として「まちかど広場(イメージパース左側三角の軒下)」「多目的室」が案に出ている。この辺りが次回以降の改築検討懇談会で議論されることになるだろう。
前教育長は上述の「振り返る会」で「校庭が広くなる」ことを唯一の移転理由としていた。しかし、校庭面積を削って「まちかど広場」を作るのだから、よほどの理屈が必要だし、果たしてそこに「地域の学びのプラットフォーム」といった理念が出てくるのだろうか?
こうした機能の導入によって、大人の利便性や経済性、「街のにぎわい」にかこつけた不動産としての有効活用といった観点で、子供の教育の場が利用されることのないよう注視したい。