
2025.3.23都市計画塾vol.9
都市計画住民提案制度~デベロッパー提案制度とのちがい~
動画とレポートをお届けします。前回の「まちづくり協議会」「住民提案制度」について、さらに掘り下げます。今回は練馬区、中野区、渋谷区など、再開発や道路事業、地域環境の破壊などの問題を抱える方が大勢駆けつけてくれました。杉並区はもちろん、各地域での「住民提案」の実現に向けて、共に学んでいきましょう!
記事は前編:島田昭仁さんの講義全編、中・後編:受講生(阿佐ヶ谷の原風景を守るまちづくり協議会メンバー)による具体例のレポートの三部作でお届けします。
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まずは前回のおさらいと補足。
まちづくり協定の誕生・神戸市長田区真野(1977):首長と住民が協定を結ぶ。
今の多くのまちづくり協定:住民が作った計画を行政が公のものにする。

『まちづくり協議会とまちづくり提案』久保光弘(学芸出版社)より
・ルールづくり:住民にまちづくり協議会を作らせ、協定を作る
・ことおこし:テーマ型、イベント(本来は管轄が違う?)
・ものづくり:建設主体、民活の流れの中でデベロッパーにやらせる
※補足:これは後で出て来る杉並区等の用語では
・ルールづくり=地区指定型
・ことおこし=テーマ型
・ものづくり=市街地整備型 に対応
デベロッパーがやるものにひらがなの「まちづくり(正しい定義は住民が行うまちづくり、行政主体は漢字の街づくりを使う)」を使っているのはどうか。
本来のまちづくり:住民が行政の作った計画にカウンタープランを出すもの。
現在の仕組み:協議会を公なものにし、協定も公なものとして認めさせる。
Q:スーパーシティはどうか?さいたまの実験都市。
A:規制緩和や補助金で行政が民間を支える。
まちづくり協議会制度は都市計画法ではこぼれる分野の制度づくりに使われる。
景観法(2004年公布の景観緑三法。まだあまり使われていない)ができるまでは、ものづくり:眺望、風通し、文化的景観についての議論。公共施設というのも出て来るが、都市計画でいう施設とはハコモノではなく、道路、公園のこと。
これらの制度が住民主体にならない→どうして日本は行政の力が強いのか。
・議会より行政が強く、司法は口を出せない。
・敗戦後、アメリカやヨーロッパを真似た制度、法律を作った→逆コースで保守的・封建的に。下図左の日本型マトリクスの固定化。




逆コースの主要人物
・渡邉恒雄(ナベツネ):キングメーカー、フィクサーとしての価値。石原慎太郎を推し、石原伸晃を派閥の長に。原発政策においてエージェントとなって、反対する学者を入れなかった。批判する人を入れない。トランプ政権も同じ。
このような独裁的仕組みの中で、住民の声を引き上げる制度も用意“は“されている。
2002年の都市計画法改定、その前の地方分権の流れで、国の委任事務から首長に権限が移行した。

まちづくり(ひらがなの)提案制度
※第21条の2 3行目~9行目:当該土地の所有権又は建物の所有を目的とする「対抗要件」を~提案することができる : 「対抗要件」とは第三者に対して、土地の所有権が「あります」と言えるもの:登記簿、固定資産税台帳に記載されているなど
2.は、非営利団体がまちづくりをしたい、と言えることを定義したもの。

3.は計画提案の成立要件。
土地所有者の2/3以上の同意→非地権者である非営利団体は、同意を得る必要
がある。
※一.「都市計画に関する基準に適合するもの」とは、現行の該当地域の都市計画に合っているかどうか、ではなく、都市計画法の用語に合っているかを意味する。都市計画法の範囲ではない景観や眺望などは入らない。
第21条の3 変更が必要かは行政=首長が決める

第75条の9 「都市計画協力団体」:そこに住んでいなくても同じように提案できる。団体を認めるかどうかは首長に権限がある。

『コミュニティデザイン学』小泉秀樹編(東京大学出版会)

まちづくり条例制度の運用について、一都三県の自治体に対するアンケート(2009年)
神奈川でまちづくり条例の策定例が多い:横浜市など革新自治体が多かった。
Q:この図では中野区は黒になっているが?
A:テーマ型まちづくり条例はある。

まちづくり協定は拘束力を持たない:
・神戸市の例
地区計画:行政が定める
まちづくり協定:協議会が定めて、市長と締結
景観形成市民協定:景観法以前に作られたもの
・法的拘束力とは:地区計画、建築協定、景観協定:違反したらペナルティ
・まちづくり協定は紳士協定(違反しないことを期待するが、違反してもペナルティはない):拘束力がないからアグリーメントできるという一面もある。
例:通称「協定道路(2項道路)」:住宅の前の道路の幅が狭いが、敷地が4m以上の道路に接道していると見做されないと建て替えできない。「将来4m以上にする前提」→協定道路(道路台帳に書き込み)として、建て替え可能にする(救済措置)
覚書を交わす→小泉政権でなくなった。
問題事例(調布市):「将来の拡幅」予定地に、協定に反してマンションが建てられた。道路拡幅の前提が壊れ、付近の家が建て替えできなくなる→「協定」だけなので住民が裁判で負けた。
2000年までは行政が指導して建築確認をしていた→小泉政権で廃し、民間同士でも確認申請ができるように=協定をハウスメーカーが見られない→事件が多発→まちづくり条例を作るきっかけ:未接道宅地救済:その地区でまちづくり協議会を作って地区計画※もしくはまちづくり協定を作る=「ルールづくり」。
※地区計画は住民全員が反対していても、行政が決めたらできる。公示も所定の場所に2週間貼り紙をすれば、住民がそれを見なくて知らないままでも進められる。
使える事例:広域幹線が敷かれる→まちづくり協議会を作る→都市計画道路を迂回させる計画を提案→破られてもしょうがない→行政とタッグを組んで協定を守らせる→建築業者にもわからしめる
「細い道路のままでいい」という地区もある。高級住宅地はわざと車を入らせない。(→中編:成田西の事例)
Q:レジュメp.4( ↑ 再掲 )の2で、「計画提案できるもの」として、特定非営利活動促進法により非営利団体、営利を目的としない法人となっているが、渋谷区は企業が入り込んだ「なんとかまちづくり」「なんとかラボ」がたくさんできている。住民も知らないうちに。後から住民が団体を作れば変えられるのか。
A:実際は権利者団体(住民)が一番強いが、2/3の合意を取るのが難しいから非営利団体、協力団体で計画を作ろうとする。
Q:まちづくり協議会は神戸市が最高で東京が最悪。都営団地が老朽化している→高層化して空いた敷地を業者が活用。なぜ東京でこんなに変節したのか。
(参考:高島平団地の小学校跡地を種地としてタワマンを建て、建て替えを進める)
A:小泉政権の影響が大きい。貸しはがし、土地の塩漬けの対策として、規制緩和していった。これがヒットして、デベロッパー、ハウスメーカーが規制緩和を恒久的に望む。緩和が救済から利益に変質した。和泉洋人政務官が民活を進めた。



Q:東京ではまちづくり協議会から住民が排除され、自治会イベントも三菱地所などの企業任せ。住民自治が崩壊している。
A:民活の流れだと思います。調布市の方では団地の建て替えの際、容積率緩和を目的としたまちづくり協議会だけが認められた。地元の切実な提案は通らない。2009年の官製まちづくりから、現在は企業が作ったものに行政がお墨付きを与える。
嘆かわしいのはテーマ型提案制度。不動産を動かすようなものは行政が住民のまちづくり協議会にはやらせない。
テーマとは:都市計画に入らないもの=緑化、福祉、防災など
※景観は景観法ができたので、法的に景観まちづくりに入る。



杉並区のこれまでの事例
・まちづくり団体について問い合わせたが、リストもない。
・まちづくり上井草:総合的なまちづくりというが、通りの名前をつける、植栽(大きな植木鉢に株立ちの木を植えて、商店街に置く)活動。植木鉢を置いたのは民地側なので難しいことではない。もし公有地に置いたとしたら、かなり難しいものを許可したことになる。
ハードでなく、ソフトで解決するところを、住民が提案し、行政が支援。
ここで、杉並区の二つの事例:成田西と成田地区(阿佐ヶ谷住宅→プラウド阿佐ヶ谷=野村不動産)についての受講生・加古晴子によるレポート。
Q:野村不動産は六本木ヒルズの手法を使ってやった。阿佐ヶ谷で都心の再開発の手法を使うとは。
A:PPPの事業手法と部分的に重なる。阿佐ヶ谷住宅は公有地ではないが、「ものづくり」を民活で担う発想。

公民連携
・今は民間事業、公共事業でなく、公民連携が主流。民間が完全に自分たちで負担するわけではない。
DBO:民設民営。建設費という名目で出せないので前払い運営費、補助金という形で払う。
PRE:公有地を民間に使わせる。格安で売る、貸す:定期借地権法
PFI:確実に儲かるので融資、投資がされる。
Q:民間に安い値段で売る貸すというのはおかしいのに、なぜ安いことが基準になるのか。
A:このスキームは税収の少ない自治体が行う前提で作られた。単独財政では難しいので民間に公有地を使わせて事業を担わせる。そのスキームが一人歩きして、(税収の多い)一都三県でも行われるようになった。民間が要求し、行政ものんでしまう。
Q:渋谷区は情報開示すると、民間がPPPをしたいという提案が出てくる。どうやって阻止すればいいのか。
A:民間は売り逃げしたい。行政はジェントリフィケーション(高級化)で、高所得者(税収)が増えることを期待している。
Q:中野サンプラザはPPPのどれでするつもりだったのか。
A:その時のマーケティングに従って決めるため、1年くらい前にならないと決まらない。だからこそなるべく安く買いたい。
ジェントリフィケーションによる自治体の収入増についても、行政が監視しないといけない。ほんとうに税収は上がっているのか。議会報告はするが、数値を見映えよくしている。
本来公共事業は救済であり、税収を上げるのが目的ではない。
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