
2025.2.8阿佐ヶ谷地域区民センター第1集会室:都市計画塾vol.8「都市計画住民提案制度とは~地区計画提案制度とのちがい」の動画と受講メモをお届けします。
前回(2024年12月)vol.7では阿佐ヶ谷A街区を事例とし、公共施設が民間事業者によって計画・運営されるPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ:公民連携。PFIは、PPPの代表的な手法の一つ)の仕組みを学びました。それでは住民からのカウンタープランはどのように出すことができるのでしょうか?
今回は杉並区の「善福寺川上流調節池」、練馬区の「外環の2」、稲荷山公園、中野区のサンプラザの問題に取り組む人たちが集まり、それぞれのケースでどのような実践ができるのかの議論も白熱しました。

講義はまず、最近の話題として八潮市の下水道陥没の話から。
国土強靱化とは、老朽インフラを検査・修復補修するはずなのに、東京都だけが新しく道路を作ろうとしている。
河北病院周辺の桃園川幹線(下水道)も50年経つ。検査・修復が必要なのに、新たに第二桃園川幹線(シールドトンネル)を作ろうとしている。
島田さんは行政にアドバイスするコンサルタントから出発。そのバックボーンである東京大学都市工学専攻・都市計画研究室とは何か。
1962年高山英華と丹下健三の尽力で開設された。
それぞれの都市計画に対するスタンスは
・高山:密集市街地が空襲に襲われたら大変なことに。そのあと都市計画が必要となる。古い木密対策。
・丹下:建築物と人間の相互関係、モニュメンタルな建築物で人間の心はどう変わるか。
都市工学には第1から第10研究室まであり、第1の目的はここで学んだ学生が、都市計画をわかっている国家官僚(旧建設庁)となること。
しかし第1~第4は、国の政策に批判的で、御用学者がいない闘う研究室。90年代以降は特にアドボカシープランニング(住民の立場に立って弁護)できる人材を育成。
2000年代の民主党政権事業仕分けで研究費がカットされ、島田さんもバイトをしていたが、戻ってきても若い世代に研究費が行ってしまった、とのこと。
本題の「都市計画住民提案制度」については、最初に参考文献二冊を紹介。
①小泉秀樹編「コミュニティデザイン学」(東京大学出版会):島田さんも執筆
②久保光弘「まちづくり協議会とまちづくり提案」(学芸出版社)
*都市計画法に出てくる「ひらがなのまちづくり(住民によるまちづくり)」は②が出てから。国交省の考えるまちづくりは②による。
1.コミュニティデザイン学
まちづくり条例が各地で始まったきっかけは、阪神淡路の震災復興。
しかしそれ以前から先駆的な事例として1977年からの、神戸市長田区の真野地区、丸山地区のまちづくりがあった。
真野地区は今も継続しているが、丸山は継続しなかった。当時は「闘う丸山」と言われた。丸山は住民主体の「ひらがなのまちづくり」を最初に出した(京大の論文)が、まちづくり協定は作っていない。
現在ほとんどの「まちづくり協定」は住民協議会の中で構成員どうしが協定を結び、それを行政が公定する。しかし真野地区のまちづくり協定は住民協議会(まちづくり懇談会)と神戸市が協定を結ぶもの。
震災復興以降の神戸市のまちづくり条例は都市計画局所管だが、真野は住宅局所管。町会長・役員がすべての工作物・建築物を作っていいかその都度認可する。現在もそれが続いていて、ひとつひとつ地域が決める。
真野・丸山は元々は公害闘争:住宅地に工場が無秩序に入ってきた。真野地区では区画整理を行政がかぶせてきたのをはねのけた。立ち退きを出さないために、災害時に車が曲がれないことが問題なら交差点の隅切りだけする、区画道路はむしろ車が入ってこない方が安全、という住民の考え方をルールにする。
真野:住民が作ったまちづくり計画。それを守るためのルール:都市計画法21条-2を使った地区計画(4条)が担保。
住民が作った計画を公的に担保するのがまちづくり条例(1981年に神戸市が作ったもの)。
地区計画:行政が作る。用途地域(商業や低層住宅など)よりも厳しい建築制限。
まちづくり計画:住民のカウンタープラン。法制度で定められているものではないので、名称は決まっていない。
震災復興:瓦礫の山になった→住めないから出ていけ→ピカピカの街にする→戻れる人は戻ってきていい→家賃、地価高くなる→金持ちだけ戻ってこられる、税収上げる→ジェントリフィケーション。
まるでパレスチナのガザ地区だが(ひどい!)、元々の平均所得低いところでは住民が住めなくなる。そこで、都市計画法68年新法のもとでは、住民と協議しながら進めることになっている。旧都市計画法は建設大臣が線を引いて、出ていかなければ強制執行。
2.まちづくり協議会とまちづくり提案


ルールづくり:この本で言っているのは建築制限。「まちづくり協定」は法制度ではない。法制度でがんじがらめだと融通が効かない。住民の意志によっていつでも変えられるようにしてある。
Q:中野サンプラザの再開発は「協定書があるから変えられない」と区長は言っている。
A:協定は紳士協定、任意協定、覚え書き。変えられる。
契約の自由:誰でも任意に協定に入れるし、解消できる。首長の権限は絶大。
建築協定(建築基準法に則る)
10年ごとに見直しできるので、参加したくない人は離れていける。抜ける人が多いと歯抜けになる→そうならないように→地区計画→その下に協定。
協定には拘束力がまったくない。
ex.1階は店舗にする→破る人が出ても何もできない。
のちのち行政が地区計画を立てる場合は、協定を参考にする。地区計画の前段階。
Q:どこに届出するのか?
A:出さないといけない決まりはないが、まちづくり条例によって定められたものは届出する。建築行為をしようとする者が閲覧できるように。どこに出すかは自治体ごとにいろいろなパターンがある→公定されていないものはわからないのでハレーションが起きることがある→紛争条例が別にある。
まちづくり条例:
準備会→熟度が上がったらまちづくり協議会に。まちづくり協定案を策定し、行政が認可。
3.三権分立における司法権

三権分立:
日本は行政に力を持たせる形。国は議員内閣制、地方は首長を選挙で選ぶ二元代表制。
68年地方分権法ができるまでは、地方自治体は国の指示で動く。
ムラ社会:原発で顕著。地方自治体が「陰の力」で動かされる。
今は首長の裁量権が強い。
行政計画に批判的な集団が作ったまちづくりを行政が公定:神戸、横浜、藤沢
一般的には:首長がまちづくり条例を作って住民意見を反映→国:都市計画法を作る
4.背景「逆コース」について考える
5.まちづくり提案制度



1981年真野地区まちづくり協議会が神戸市と協定:神戸市に実現の義務
行政によって認定または登録された住民組織(まちづくり協議会等)が、首長に「まちづくり計画(構想)」を提案し、行政が公定する仕組み(各自治体によって制度・条例は異なる)
◆2009年東大実施アンケート(コミュニティデザイン学・第3章)
(一都三県に対し)➡212自治体に配布し有効回答196
(1) まちづくり条例等によるまちづくり協議会などの住民組織への支援制度があるか
➡(首都圏)ある:61、検討中:24

(2) まちづくり協議会の認定基準
➡ほとんどが条例もしくは要綱または規則で定める
➡(具体的でなく行政の裁量が大きい)
(3) 行政がまちづくり協議会として認定するにあたっての基準
➡前段組織の「準備会」等組織の熟度を査定
➡準備会に対しても支援を行う自治体もあるが、仕組みづくりが追いついていない。
➡支援内容は行政職員による相談が主。
(4) 住民組織(まちづくり協議会)による計画提案制度の実態
(a) 住民組織(まちづくり協議会)による計画提案制度の仕組みがあるか
➡(首都圏)35、うち実際に計画を公定(認定または登録)した:13
(b) 住民組織による地区計画に準ずるルール提案制度の仕組みがあるか
➡21、うち公定した:1
(表3.3) 条例以外の枠組みで公定した実績
➡地区計画提案制度、建築協定、任意協定など:実績がある:15

◆アンケート結果の補足
実態として、まちづくり条例が機能しているのか?
➡行政が先に計画を持っており、その実現のために協議会を作ったのがほとんど。官製。
➡官製でなく、住民がまちづくり協議会を作ったのは練馬区と杉並区の2例のみ。調布市では(セットバック、看板禁止などの内容ですら)住民提案が認められなかった。
ここからは質疑。
Q:「官製でない」練馬区・杉並区とはどのような内容だったのか?
A:テーマ型提案制度(カウンタープランではなく行政とコラボレーションをするので活動費を出す)に基づく。
・練馬区NPO法人公園づくりと公園育ての会:「公園を作ってくれ」という提案。公園の管理、利用のルールが採択される
・杉並区まちづくり上井草:総合的なまちづくり案。協議会は採択されたが定めたルールについては記録なし。
*補足:上井草は商店街、設計事務所がやっていて、鉢植えを置く、道に名前をつけるなどの内容だった。建築制限や道路計画ではない任意の活動。
Q:行政のお眼鏡に叶うものだけしか通らないということか?
A:ほとんどそうだが、世田谷区の初期はそうではなかった(今はない)。住民のカウンタープランを後から行政が公定していた。しかし、作った建築制限や道路計画について、住民の2/3が合意しているかどうかの担保が取れない→制度をやめた。
Q:使う方法はあるのか?やろうとしても潰されるのか?
A:まちづくり条例と都市計画の提案制度という二つのスキームがある。
提案制度:行政の考えているものと違う意見を出せる。住民の2/3の合意が必要で、国交省、都市計画審議会にかける。行政は受理はしないといけない。
まちづくり条例:「ひらがなのまちづくり(住民主導)」なのにカウンタープランではなく、行政と一緒にやっていくもの。合意2/3は要らない。
*補足:外環の2・杉並区部分の中止提案は都市計画提案制度を使ったが、(練馬~調布の)長い道路延長の中なので認定されなかった→が、住民2/3の合意がないので事実上、事業認可は下ろせない。
Q:かつて成田西3丁目町づくりの会があった。善福寺川緑地を東京都に認めさせて作った。住民にアンケートを取り、133号線の代替案としてすぎまるけやき路線を作った。みんな高齢になってできなくなった。名前だけが残っているのだが、復活させられないか?
A:まちづくり団体として登録されていれば、協議会に格上げしてくれとは言える。が、行政とコラボレーションできるか。それができないなら提案制度で行かないと。
Q:こうした制度は、住民が戸建で定住してる地域が前提なのでは。今は分譲や1個の土地の権利をたくさんの人が分け合っている。流動人口が多い。今後どういうスキームがあるのか。地域のLINEグループは自治会に準ずるものとできないか。東京都ならできるのでは。
A:国は民間活力、デベロッパーに仕切ってもらう方向性。それでは金儲け目的で、地域の環境をよくすることにつながらない。マンションの管理組合はそのままではまちづくり協議会になれないが、自治会は誰でも作れるので、2/3の合意を集める提案制度を出せばいい。
Q:そうした制度そのものを変えるには、どこにどう提案すればいいのか。
A:国はまちづくり条例の制度を認めたことでやるだけのことはやった、となっている。認可するのは首長であり、選挙で選ばれた人が認可するかどうか、というのが国の立場。
