
前記事、「改築基本計画を読み解く!」と同日の2024.10.26、ウェルファーム杉並にて東京都下水道局による「第二桃園川幹線・天沼一、二丁目枝線工事に関する説明会」が行われたので、行ってきました。
参加した区民は10人程度、説明者は下水道局の設計課と工事課が計7人、受注会社ノバック、家屋調査会社中央建鉄。

第二桃園川幹線は東高円寺の蚕糸の森公園を発進立坑とし、天沼弁天池公園までの杉並区側(完成)約4km、桃園川・神田川合流点までの中野区側(整備中)約3kmに渡り、直径2.6m(上流)、4.25m(下流)のシールドトンネルを、深さ20-50mのところに掘るという巨大工事。
善福寺川上流調節池ほど話題になっていませんが、似たような事業です。
(同じ下水道局の事業なので、これが近い。ニシオギDrunkerシンブン「潜入!和田ポンプ施設」)
桃園川自体は、農業用水として使われていたものが、杉並区が宅地化した大正期ごろから下水が排出され、1960年代のオリンピック対応で暗渠になりました。天沼弁天池から阿佐谷地域区民センターを経て、高円寺、中野坂上に続く緑道の下を流れている下水道が桃園川の本流ですが、細かい川や用水が流れこみ、分岐し、特に阿佐谷北1~3丁目では網目のように残ったものが細い道路になっています。
この本流を下水道局は「(既設)桃園川幹線」と呼んで、下水道として管理しています。しかし相次ぐ大雨による浸水(内水氾濫)への対策として、新たに「既設桃園川幹線」の水位を下げる「第二桃園川幹線」が現在整備されているのです。

しかし、桃園川や普通の下水道は地表面からすぐ下を流れています。第二は地下20~50m。そのままでは桃園川の水は第二に落ちていきません。
今回作られることになった、この枝線というのが、要するに第二への連絡管になります。


今回の工事は天沼東公園に立坑を掘り、周辺三ヶ所の下水道からの水を取り込み、深さ19mまで落として、第二桃園川幹線に繋げるというものです。
枝線の工法は推進工法といって、本線のようなシールド工法(掘削しながら管のパーツ(セグメント)を組み立てる)ではなく、立坑から円筒型の下水管を入れていって、それを掘削したところに油圧ジャッキで押し込む方法。土砂は管を通して運び出す。シールドよりも径の小さい工事で使われる、一般的なものです。


同時に、天沼2丁目、阿佐谷北3丁目の道路の下にも同様の枝線を掘ります。これは深い立坑に落とすのではなく、マンホールから第二桃園川幹線(この辺りは深さ20m程度)までを斜めに掘り進みます。
後日下水道局に電話で確認したのですが、この取水地点のうち、天沼東公園の南側一カ所だけが既設桃園川幹線から取水、あとは桃園川に流れていく普通の下水道からで、桃園川幹線に流入する前にキャッチするということになります。
質疑は、やはりご近所の方たちからは騒音や震動の心配が聞かれました。
A(ノバック):騒音は規制値85デシベル以下。振動75デシベル。測定は天沼東公園に測定器を置く。
Q:工事の真上ではなく、離れているところに振動が響く。日大幼稚園(天沼東公園の向かい)の工事の時に振動があった。どこの範囲までモニタリングするのか。家屋が揺れるのではないか。家屋調査(事前)の範囲は。
A:現時点では公園のみ。調査は個別に回答する。騒音振動計は工事フェンスに掲示する。
Q:工事のペースはどのくらいか?
A:一日に2mの管を3,4本入れる。
その他、土日や夜間の工事を「しないと言っていてもやっている」事例が最近多いため、施工時間を厳守するよう注文がありました。
天沼地域の三ヶ所はR10(2028)に工事完了予定となっています。
Q:工事が終了したらすぐに取水できるのか?
A:R10から機能する。中野側は未定。上流(杉並区側)はR6(2024)年2月からすでに暫定供用している。
Q:すでに完成している取水地点はあるのか?
A:シールドの到達点の天沼弁天池の立坑、高円寺南2丁目(高円寺通りと青梅街道のぶつかる辺り)にマンホールがある。
Q:阿佐ケ谷駅北口前枝線の工事予定は。
A:受注会社は決まった。バス停を移動してフェンスを建て、停車位置が狭くなるため、バス会社、警視庁と協議している。合意ができてから。
説明会後、「暫定供用」について疑問が残りました。資料では、溜まった水は「神田川に放流」となっているからです。
神田川合流点である中野側ができていないのに、どうして暫定供用できるのか?
神田川まではどうやって水を上げるのか?

そこで、この記事を書くにあたり、下水道局・第二基幹施設再構築事務所設計課に電話してみました。対応者:橘田さん。師走の忙しいときにありがとうございます。
Q:今年2月から暫定供用しているというが、実際に水を入れたことがあるのか?
A:ある。
Q:その水はどうやって排出したのか?神田川には到達していないが。
A:高円寺南のマンホールにポンプがあり、そこから下水管(桃園川ではない)に上げる。その先は普通の下水と同じ、水再生センターに送られる。
Q:そのポンプは中野側の完成後も使うのか?最終的にはどうやって排水するのか?
A:完成したら中野側の到達点にポンプ場を作り、その一カ所だけで既設桃園川幹線に排水する。神田川よりは少し手前。緑道の横の土地を東京都が購入したので、そこにポンプ施設と管理建屋が建つ。

中野坂上手前、「既設桃園川幹線」が神田川に流れ込むところ。


なるほど!中野の桃園川緑道のこの工事がそれだったのですね。
Q:現在の取水地点はどこか?
A:天沼弁天池と高円寺南の二ヶ所。
Q:今回の天沼三ヶ所、その次が阿佐ケ谷駅前、そこから高円寺南まで取水地点はないのか?
A:取水地点は作る必要があるが、場所は未定。計画があるのは阿佐ケ谷駅前だけ。
最後に、杉並第一小の移転予定地域での浸水に、この第二桃園川幹線が対応しているのか?という問題です。
第二桃園川幹線は阿佐谷北3丁目から中杉通りの下を通り、駅前で東側の新進会商店街の通りに入り、さんじゅ会のところで線路を越えます。

(ハザードマップの上に貼ってみました。赤が第二桃園川幹線、紺色が既設桃園川幹線)
この阿佐谷北1丁目区間に枝線の計画は「まだない」とのこと。ここに枝線を作れば、問題の河北病院周辺の下水道や既設桃園川幹線からの直接の取水が可能になります。
阿佐ケ谷駅前の枝線だけでは、2丁目区間よりも上流の水しか取りません。ただし、そこで取水することによって既設桃園川幹線の流量に余裕ができるため、1丁目区間の下水が流れこんでもオーバーフローしにくくなるのではないか。
今回の説明からはそのように判断されます。
前者と後者のケースでは1丁目区間に与える影響はどのくらい違うのか?河北病院や杉一小といった大規模工事をするなら、そこで枝線は検討されなかったのか?
杉並区は「第二桃園川幹線により75mm/hの降雨に対応できるようになる」とだけ言うのではなく、下水道の流量のシミュレーションを出すべきではないでしょうか?こうした事業は縦割りになっていて、東京都だけでも下水道局(和田弥生幹線や善福寺川への流入下水)と建設局(善福寺川調節池)の事業データがリンクしていません。
杉一小移転によって地形や排水が変化する可能性が高いのですから、下水の流量や流れる方向などのデータはきわめて重要です。