2024.6.26産業商工会館で、第3回学校改築検討懇談会が開催されました。直前の日程発表で、傍聴も予約制です。
当[阿佐ヶ谷の原風景を守るまちづくり協議会]では、移転予定地である現・河北病院の立地に数々の問題があることをこれまで指摘してきました。前回の傍聴により、地域にあまり詳しくない委員もいると思われたため、特に建築に関して重要となる軟弱地盤についての懸念を伝える意見書を制作し、教育委員会を通じて全委員に席上配布しました(文末に全文掲載※資料1)。
当日の進行は、新たに委員となった杉一小保護者(PTA枠)2名の紹介から始まりました。
全体2時間のうち70-80%の時間が区からの資料等の説明で、出席委員も1人1回4-5分程度の発言。あまり懇談や議論という感じにはならず。前回CS委員に対して非礼で高圧的な発言をした委員は今回は発言なし。区議会で問題になったので控えたのでしょうか?
配布資料:
・第1回、2回改築検討懇談会の振り返り
・軟弱地盤意見書(上述)配布報告
・かぎ裂き地(これまで区画整理事業に参加していなかった現在の河北病院に隣接した民家のうち2軒)は土地区画整理事業に編入した旨の報告
・校舎の開校以来の変遷説明
・視察報告(桃井第二小、杉並第二小)、各校の防災倉庫の紹介
前回までの懇談会(杉ニ小・桃ニ小視察含む)の振り返り、並行して開催のデザイン会議や[あさがやまちづくりセッション]の報告、区公認団体の阿佐ヶ谷駅北東地区エリアマネジメント推進懇談会(要望書提出:文末に概要とリンク掲載※資料2)の報告、学びのプラットフォーム考え方説明、杉一小児童へのアンケート調査を行う計画の説明がされました。
この杉一小児童に「楽しい学校作り」のアンケートという行政のアイディアは、デリケートなことを安易に言い出しているようで、非常に危ないものを感じました。子どもの意見聴取を子どもを知らない人が安易に使いすぎです。
そもそも、児童の中でも、移転についての情報がある子も、ほとんど知らない子もいます。どうしてもやるなら児童に充分な説明をした上でやるべきですが、これまで杉並区はきちんと杉一小児童に向き合って、説明をしたことは一度もありません。
仮に移転のことは別として単に「新しい学校」への夢や希望を聞くにしても、「狭い学校と広い学校とどっちがいい?」などと聞けば、10人中10人が広い方と答えるでしょう。それでもって、子ども達も広い学校を望んでいるとされても意味がない上、子ども達に意見を聞いたというアリバイにされてしまいます。
まして、なんの問題もない小学校の児童に将来の夢の学校像を聞くのではないのですから、この状態で、子どもを相手に適切で公正な意見集約ができるとは到底思えません。
このままアンケートが実施されたら、子どもの政治利用、子どもの権利侵害だと思います。
一般区民を対象にして、第1回がいきなり杉一小移転改築についてのテーマで始まった[あさがやまちづくりセッション]にも同様の問題があります。予備知識の有無や当事者性が参加者によってまちまちな状態で、意見を聞いて、それを改築検討懇談会に反映するのは乱暴です。
あさがやまちづくりセッションの問題点 - 阿佐ヶ谷駅北口・杉一小改築問題情報
しかし、杉並区としてはなんら疑問を持たないのか、セッションの報告として
・杉並で第一と誇れる小学校に
・多様性対応
・地域開放
・多機能
の議論が紹介されました。
「地域開放」案については委員から「地域の施設利用、地域に開かれたといってもあくまで中心は子供の教育でないと。その点を明確にすべき。杉一小の現役教職員に意見を聞くべき。あくまで学校教育の延長として地域住民の活用を考えるべき」という懸念が出されました。
杉並区(中曽根学校支援課長)からの回答は「学校教育が第一は当然。だが、地域とつながり、大人同士のつながりも杉一小の特徴」という内容。
区としては、杉一小施設の民間活用・夜間の大人の活用を具体的に検討しているらしく、区の資料にもいくつか書かれていましたし、セッションでもそんな意見が出ていました(夜は居酒屋?!)が、この点は今後、要注目要注意だなと。ただ、もしそうするなら、駅チカの現在地の方がより有効に活用できるはずだが…と思いました。
これは当会の[都市計画塾]第2回で学習した「エリアマネジメント」?
都市計画塾第2回:エリアマネジメントとは何か - 阿佐ヶ谷駅北口・杉一小改築問題情報
他にも委員からはこれまで解決していない問題点が挙げられました。
ずっと学校関係者から指摘されてきた騒音・近隣問題について
委員:「意外に小さな音でもやかましい。認識すべき。移転に際し近隣住民へのアンケート調査取っているのか?近隣住民全員がウェルカムでないと。トラブルが起こらないか?最近、練馬でもこれが原因で殺人事件も。桃ニ小はすぐそばに環八があるので問題はなさそう。杉一小は現在地では問題はなかった」
安川学校整備課長:「騒音問題はどこまで対策すれば安心ということはない」
と、相変わらず。
水害、土壌汚染問題については
委員:「盛土で周囲に水が流れ出し、近隣住宅の浸水が心配。下水道の整備をして欲しい」
委員:「土壌汚染が心配。有機水銀、放射性物質はないとは思うが、ちゃんと調査して安全を確保して欲しい」
安川:「学校施設内の雨水は施設内で処理する予定。病院の責任で調査し、区もちゃんと監視していく予定」
で、変わらず。

(委員が視察した桃井第二小学校。改築で校舎が善福寺川スレスレに。こちらも浸水問題がありそうだが…)
最後に、「杉一小改築コンセプト案たたき台」が出され、意見交換されました。委員からの主な意見として、
・どこにでもある雛形通りのコンセプトで杉一小独自の要素が見当たらない。杉一小の経営計画や基本教育方針を見てほしい。
・どこか現実離れしていてリアリティに欠ける。実態把握の上で検討すべき。
・ロングスパンでの検討が大事。長期中期短期で分けて考えた方がいい。
・前教育委員長が、あれだけ移転反対の声を押し切って、最後に述べた移転の唯一最大の理由が「学校が広くなる」で、心底ガッカリした。だが、今日の新校舎コンセプト案には、その「広くなる」要素は全くなく、じゃあの理由はなんだったのか?
・最も杉一小の教育をよく知り、課題意識のある杉一小教職員の意見を聞くべき。
※杉一小の教職員に意見を聞けという話は複数の委員から出ましたが、安川課長は「なんらかの聴取することを検討する」「ただ先生も忙しいし、校長副校長も委員に入っているので…」という回答。児童へのアンケートを早々に決定しているのに比べて、前向きな態度とはいえませんでした。
・このコンセプト案は他校のと同じ。強弱がわからない。杉一らしさが出てない。いろんな議論が混じっていてこの会の役割がよくわからない。夜間(深夜から早朝)の施設の使い方も十分議論になるのでは?
・放課後〜夜間の地域の民間や大人の活用の話が散見されるが、あくまで中心は子供の教育であり、子供の教育を地域が支える構造でないと本末転倒。
・地域防災視点で防火水槽の設置や防災倉庫の配置に留意が必要。土壌汚染、低地、木密地域等から学校には防火水槽の設置を考えてもらいたい。
杉ニ小は防災倉庫の位置が外からのアクセスや避難所の体育館のそばでいい。
避難所には1800人分の避難資材を確保が必要。現在は杉一小は360人分しかない。
・通学路を含めた子供の安全やセキュリティの充実が必要。
などが上げられました。区はいずれも善処検討すると応答してたのは従来通り。
委員からの「そもそもどんな教育をしたいのかを具現化したのが校舎」という発言があり、安川課長も改築検討懇談会の目的は「目指す学校像を決め、基本設計に反映すること」としています。
次回開催は、8/5(月)10:00-12:00場所未定。コンセプト案の最終案が出てきて、そこで決める想定のようです。
(資料1)
小学校移転先の軟弱地盤についての意見書 ~ 盛土と宙水による地盤崩壊を考える
阿佐ヶ谷の原風景を守るまちづくり協議会
- 背景と趣旨
当会はこれまで移転先の地質が小学校の用地としては不向きであることを主張してきました。これまでにも区内の小学校が河川近くに建設されたことはありますが、本件の敷地はそれらとは異なる条件(病院跡地のため土壌を入れ替える可能性がある。宙水が存在する可能性がある。)を有していることを指摘して訴えてきましたが、個々の問題に対しての議論を経ないまま現在に至ります。そこで本書をもって具体的に、旧桃園川床の地盤や地形がどのような特性を持っているかを記述し、特別の配慮と措置が必要であることを訴えます。
- 問題点
当該敷地(C街区)は、病院跡地であることから最低でも地下3~5m程度の土壌を入れかえる(撤去する)ことが想定されます。そして、水害危険区域にあることから現在のGLより2~3m程度の盛土(かさ上げ)をすることが想定されます。
すると校庭のGLから最大5~8m程度は盛土になることが考えられます。まず盛土は地震の際に流動化する(過剰間隙水圧が有効上載圧を上回る)危険性が高い(釜井,2023,p-19)ことが挙げられます。盛土に砂質成分が多い場合は液状化も懸念されます。また、盛土と固い地盤の間に宙水が発生することが考えられ、この宙水が原因でさらに流動化を促進してしまう(釜井,2023,p-22)ことが挙げられます。盛土部分が地震の際に流動化(過剰間隙水圧が有効上載圧を上回る)するということは支持杭を打った支持層の上層に建築物を支える力が無くなることを意味するのみならず、支持杭に横方向に想定外の(過剰な)負荷がかかることを意味し、それは支持杭等の地中構造物の浮き上がりや破損を生じる危険性があることを意味しています。
また宙水は地盤沈下の原因にもなります(釜井,2023,p-23)。地震による液状化は一般的に砂状地質において見られ、粘土層には見られません。盛土部分についてはその成分によって液状化が懸念されることは上述のとおりですが、仮に粘土層のままであったとしても、当該敷地(C街区)は、もともと地下数メートルに帯水層があることから、宙水を形成しやすい地質環境にあると言え(中山,川合,p-255)、宙水が支持層の上の層を(時間をかけて)掘削し地中に空洞を形成していく可能性が想定されます。とくに地下ピットのような構造物が原因で生じることがあります。すなわちそれは繰り返しになりますが液状化と同様に地震の際に地下構造物の浮き上がりや破損につながり、平時においては地盤沈下につながることを意味します。
なお参考までに付記すれば、豊洲市場は埋立地でかつ盛土部分に建物を支える力がないことから(建物直下は盛土せず)支持層からいわばピロティ構造で建物を支えるような特殊構造物として設計されている部分があります。また、先般の能登半島地震での輪島市の7階建てビル倒壊の原因は、杭基礎(支持杭)が地震によって破壊されたことであると分かっています。
上記のような宙水の及ぼすメカニズムについては、これまで土木工学・地質工学では副次的に取り扱われてきて正しく認識されておらず、地盤の破壊現象につながる重要な影響を及ぼす原因と考えられるようになったのは昨今のことです。また、支持杭を打った建物が地震で倒壊したのも能登半島地震が初めてであり、支持層の上の軟弱地盤が直下型のような地震の際に支持杭に影響を与えることはこれまで想定されておらず、メカニズムは詳細には解明されていません。
また、C街区は桃園川の谷地にあり(国土地理院傾斜量図参照)、地震発生時に「共鳴」、「反射と屈折」、「波束の収束」等の効果により地震波が増幅される可能性もあります。
こうしたあらゆる危険性を考慮に入れて、建物の安定性、地震時や水害時への対策を講じることが要請されます。とくに従来の小学校立地が高台の比較的安定した関東ローム層の上にあったのに対して、谷地の盛土の上に小学校を建設するわけですから、従来の工法が想定しうる範囲で施工するのみならず、残余の危険性を排除するための特別の配慮と措置が必要であると我々は訴えます。またそうしなければ土地区画整理法89条及び95条の1項に反すると主張します。
- 考えられる対策案
移転先の地盤に対する対策案を提案します。具体的には次のような土木工事を実施することが改善策として効果が高いと考えられます。
1)土壌改良
・敷地全体に土壌を固めるための基礎杭(摩擦杭)を40㎡に1~4本程度(具体的な密度は調査をしてみないと分からない。)打つ。これは直下型のような大地震の際に盛土部分が流動化し支持杭に想定外の負荷がかかることのないようにするためです。
2)強固な支持杭の打設または杭だけで支えられる特殊構造物
・盛土部分には建物を支える力がないので支持杭を打つわけですが、直下型の大地震が起きた際には、従来の基準の支持杭では残余の危険性を排除できないので、強固な支持杭ないし(地下部分が)ピロティ構造のような特殊構造物として設計する。
・例えば㈱技研製作所の地下駐車場(エコパーク)にように、力学的に安定した円筒形状の圧入杭連続壁(鋼管矢板井筒基礎)による大口径の下部構造とするなど、従来の基礎杭よりも耐震性にすぐれた下部構造を持った建築構造とする。(この場合は基礎杭不要。)
- 結論
区はこれまで、A街区に現地建替えを行った場合に、C街区よりも支持層までが長い基礎杭を打たなくてはならないので現地建替えの方が費用が掛かると表明してきましたが、A街区は比較的安定した関東ローム層上にあるので基礎工の考え方は異なり、単純に支持層までの長さで工費が比較できるものではありません。またC街区は産業汚染地であることから土壌の入替え、盛土が行われるべき土地であり、このことが耐震対策における残余の危険性をさらに複雑なものにしています。当該懇談会に対して、当該地質に関する懸念を伝え、適切な対応を求めます。具体的には前述のような対策工事を(金に糸目をつけずに)行うか、C街区を小学校の仮移転用地とし将来的にはA街区の複合施設の中に小学校を戻すことを提案します。なお今回の副題に上げた盛土と宙水による地盤崩壊問題等の残余の危険性について当会は今後専門家を交えて公論の場を設けるとともに、後者の具体案については次回の改築検討懇談会までに意見書として提出する予定です。
【参考文献】
・「3.杉並区地下水情報の整備」2009,中山・川合,東京都土木技術支援・人材育成センター年報,pp-253-258
・「宅地崩壊と地下水」2023,釜井,地下水学会誌第65巻第1号,pp-17-26
・「大地震における杭基礎の残存耐震性能と建物の構造安全性」2024,田村修次,東京工業大学
・豊洲市場
http://blogs.yahoo.co.jp/kensyou_jikenbo/55544195.html
(2021年6月閲覧)
・シティタワーズ豊洲ザ・シンボル
(2024年6月閲覧)
・国土地理院傾斜量図
(2024年6月閲覧)
(資料2:阿佐ヶ谷駅北東地区エリアマネジメント推進懇談会要望書・同会HPより)
「杉並第一小学校移転改築への要望」
昨年度まで、阿佐ヶ谷駅北東地区エリアマネジメント推進懇談会(以下懇談会)で、地域全体のまちづくりを検討してきました。まちづくりの効果を高めるために、杉一小学校建替計画について懇談会で議論し、まちづくりの視点からの改築への要望をまとめ、杉並区に提出することにしました。 6月18日午後、相澤会長が、杉並区教育委員会渋谷正宏教育長にお会いして、直接「杉並第一小学校移転改築への要望」をお渡ししましたので、報告いたします。
防災の効果を高めるために「地域防災拠点」として機能する方策や、中杉通りからの「みどりのネットワーク」を形成する植栽の考え方、地域全体での環境への取り組み方、地域とともにある学校の考え方などの内容を提案していますので、詳しくは、要望書――――をご覧ください。 今後、学校改築に向けて、協議や設計が進められていきます。未来の子どもたちにとって良い学校となるよう、一緒に見守りましょう。