■ 稚内の塩ラーメン
北海道ならではの " あの食材 " も
各地の鉄道に乗車し、美しい日本の景色や文化を楽しみながらご当地の麺を啜る…という番組がときどき放映されます。駅ナカにある名物麺のこともあれば、名も無き小さな食堂の片隅でしみじみと味わう郷土色豊かなひと品であることも…浮ついた演出もなく、実直で真面目な人々が心を込めて作るお料理の素晴らしさに心打たれることの多い番組です。

出演するのは鉄ヲタで有名なモデルの市川沙耶さんや、飲み鉄で名を馳せる個性派俳優の六角精児さんなど視聴していてもキモチのよい方々ばかりですが、この日はシンガーソングライターの土屋礼央さんが宗谷本線で稚内に向い、ミシュランガイドで星を得た「塩ラーメン」を啜る駅前の小さな食堂が舞台でした。
一見何の変哲もない「塩ラーメン」のように見受けられますが、北海道ならではの " あの食材 " も入っていることがとても嬉しくそして懐かしい感じがします。慌ててメモ代わりにテレビ画面を撮影してしまいましたよ。そう、スープに浮かんでいるのは " お麩 " なんですね、カニとかホタテやらコーンといった北海道らしさ満開のものではなく、ジミでフツーな " お麩 " と云うものが素晴らしいパフォーマンスを見せてくれるのです。

きっと鍋焼きうどんに " お麩 " を添える感覚なのでしょうけれど、これがまた熱いスープを吸っていい感じになるのですよ。
" お麩 " 自体は無味無臭に近いものがありますけれど、このニュートラルなのに何故か周囲を巻き込んで穏やかな融和を図る手腕の上手さは見事ですね。
番組中のお店のように中心部が紅く染められた " お麩 " ならナルト巻みたいなビジュアルでよかったのでしょうけれど、残念ながら当家の在庫はごくフツーの小町麩だけ…まあそれでもこの楽しみを味わえるのですからヨシとしましょう。

いつもは静岡風にあっさりさっぱりすっきりな『塩ラーメン』ですが、稚内の食堂さんのように北海道らしくラードをたっぷりとスープに仕込んだものにしました。スープに脂のフタをして極寒の北海道でも冷めにくくする工夫と、カラダを温めてくれるカロリー摂取を効率よく行うための必然性、そんな食文化が奇を衒うこともなく自然に流れているところが素晴らしいと思うのですよ。
同じ『塩ラーメン』とは思えないくらい別のベクトルが発せられるこの一杯、 " お麩 " の温かみも心にシミるものです。
■ 如月の庭風景
厳寒期に花を咲かせていたヤツデ
春の訪れに従いその枝先は種子苞に
打ち上げ花火の残像のように
静かな余韻が漂う姿です
