
- 作者:エゴン・シーレ
- 別題:ほおずきの実のある自画像
- 制作: 1912年
- 寸法:33 x 40 cm
- 技法:油彩、グワッシュ、板
- 所蔵:レオポルト美術館(オーストリア)
オーストリアの画家、エゴン・シーレが22歳頃に描いた自画像の一枚。
《ほおずきの実のある自画像》は、オーストラリアのウィーンにあるレオポルト美術館に所蔵されている。
右下に1912年とシーレのサインが入っていることから年代が特定できる。シーレは、チャチャっと描いたような素描にも必ずといっていいほどサインを入れた。
絵画レビュー:シーレ《ほおずきの実のある自画像》

骨ばった頬、引き伸ばされた首、強調された目と唇、上から目線。
肌には青や紫、赤の色が走り、血管や神経が浮かび上がっている。病の兆しのようであり、それは生の痕跡でもある。生命力を語るのは健康ではなく、病、寿命、死。
シーレは人間に襲いかかる不幸の種に対し「どうってことねえよ」と見下している。
背後に揺れる朱の「ほおづき」は、鳳凰の羽。シーレの守護であり、やがて死の旅へと寄り添う従者。
絵の鑑賞者を見つめる眼光はやさしい。22歳にしてシーレは、生の苦さも死のぬくもりも受け入れ、「君たちは、どう生きるのか?」と、絵の奥から問いかけている。
絵画レビュー:血で描いた自画像
ウィーンの若きアウトローが、スマホもないのに世界最強の“自撮り”を残したらこうなる。首は疑問符みたいにねじれ、視線はナイフの背でこちらを撫でる。白い背景は遺影の余白みたいに冷たく、黒い上着は棺のふたのように重い。肌の下では青や紫の血が電流になって走り、線は骨を探るメスだ。絵の具は肌理を立て、傷口の縁みたいな光を拾う。
右手の画家は、左の赤い“ほおずき”を相棒に選ぶ。提灯のように灯る果嚢は、魂の行き先を照らす小さな太陽。枯れはじめた葉は黄に錆び、死の気配を連れてくる。そのあいだに立つ彼は、生と死の綱渡りを平然とやってのける曲芸師だ。
師のクリムトが金で人を飾ったのに対し、シーレは血で人を描く。美の仮面を剥ぎ、震える素肌だけをキャンバスに押し付ける。だからこの自画像は、ポーズではない。脈拍だ。一世紀たっても画面から熱がじわりと伝わる。赤と白と黒、その三色の警報音が鳴りやまない。
エゴン・シーレの自画像


シーレは28歳の短い生涯で、約100点ほどの自画像を残している。
ストライプシャツの自画像,1910年

腕を広げた自画像,1911年

エゴン・シーレという画家

エゴン・シーレは、1890年にオーストリアで生まれた画家。歪んだ身体表現、鋭い輪郭線、露出された内面性により、生と死の感情を描き続けた。その絵には常に緊張と孤独が宿る。
グスタフ・クリムトに師事しながらも、より過激で本能的な表現を追求し、官能性と病的なまでの内省が同居している。1918年、スペイン風邪により28歳で夭逝。
Schiele(シーレ)という名前は、Schielen(シーレン)という「斜視」「横目で見る」「盗み見る」というドイツ語と似ており、まさに名は体を表す通りの画家。
10本の指に入る好きな画家である。
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