
- 英題:Self-Portrait
- 別題:屋根裏部屋の自画像
- 作者:ポール・ゴーギャン
- 制作: 1885年
- 寸法:65.2 x 54.3 cm
- 技法:油彩、カンヴァス
- 所蔵:キンベル美術館(米国・テキサス州)
パリを離れ、画家への転身を図ったゴーギャンが、まだ家族とデンマークのコペンハーゲンで暮らしていた時期。36歳頃、画家としての確信も支援もなく、家族との生活もうまくいかず、境界に立たされていたときの自画像。
2016年の『ゴッホとゴーギャン展』(東京都美術館)で来日し、すべての作品の中で最も衝撃を受けた。それまで興味のなかった自画像というジャンルに首根っこを掴まれ、引き込まれた瞬間だった。
アトリエで絵を描いているのに、厚手のコートを着込んでいる。よほど寒い場所なのか、それとも心が虚しいのか。
ゴーギャンは光が射すほうを向いているが、その顔には希望の色がない。闇が降り注ぐように見える。梁、冷たい椅子の輪郭。それらが、画家という生き方の重さを視覚化している。
絵を描くことは、希望に向かう道ではなく、絶望に身を沈める行為。画家はシジフォスの岩。報われなくても、それでも描く。それが画家であるとゴーギャンは達観している。
覚悟や決意といった強い意志ではなく、もっと冷徹な眼差し。ゴーギャンは、「画家」という運命を、黙して見つめ返している。
もうひとつの絵画レビュー:屋根裏で燃える静けさ
斜めに走る梁が、画家の頭上で冷たくきしむ。薄明かりは容赦なく、頬を青緑に割り、眼だけを鋭く残す。机の端に転がるパレットだけが、小さな火山のように色を溜め込んでいる。まだ噴き上がる前の、危険な静けさだ。
この男は口を結び、横目で未来を測る。職も家族も安定も、絵のために脱ぎ捨てる前夜の顔。屋根裏という狭い世界に身を置きながら、視線だけは海図の外へ滑っていく。のちに南の島で爆発する色彩は、まだ硬い鉱石のまま、胸の奥で音を立てている。
絵肌は粗く、寒色が支配する。それでも指先は、テーブルの角を確かめるように緊張し、今にも筆を握り直しそうだ。自分を塗ることでしか自分から逃れられない。そんな矛盾を、厚い絵の具が正直に受け止めている。
この自画像は豪語しない。代わりに、決意の直前といういちばん長い一秒を、顔の陰影と沈黙で引き伸ばして見せる。屋根裏の暗がりは、実は出航前の船倉だったのだ。ここから彼は、世界の色を奪いに行く。
ゴーギャンの自画像
自画像

- 年代:1875年
- 寸法:47 x 38 cm
- 所蔵: フォッグ美術館(米国・マサチューセッツ州)
27歳後に描かれた初期の自画像。哀しい眼をしているが、その静かさには「重さ」がある。
レ・ミゼラブルの自画像

- 年代:1888年
- 寸法:45 x 55cm
- 所蔵:ゴッホ美術館(オランダ)
ゴッホに贈った自画像。背景の緑の人物はエミール・ベルナール。
ゴーギャンの顔は陰鬱だが、背景のイエローは明るく、花が小鳥のように舞っている。絶望と希望をコインの表裏のように一体として描いている。
光輪のある自画像

- 年代:1889年
- 寸法:79 x 51cm
- 所蔵:ワシントン・ナショナル・ギャラリー
右手に蛇を持ち、林檎がぶら下がる。すべてを見透かそうとしているドヤ顔。
「黄色いキリスト」のある自画像

- 年代:1889年
- 寸法: 38 x46cm
- 所蔵: オルセー美術館(パリ)
背後の十字架も「我関せず」の前進。
自画像

- 年代:1893年
- 所蔵: デトロイト美術館
タヒチで描いた自画像。ニヒリズム全開。緑と赤の横縞のネクタイが皮肉たっぷり。
眼鏡をかけた自画像

- 年代:1903年
55歳で亡くなる前に、最後に描かれた自画像。タヒチ人でもフランス人でもない、一人の人間に戻っている。
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