
-
原題:Olympia
-
作者:エドゥアール・マネ
-
制作:1863年
-
寸法:130.5 cm × 190 cm
-
技法:油彩、カンヴァス
-
所蔵:オルセー美術館(パリ)
《草上の昼食》と同時期に描かれ、同じく大炎上したといわれる作品。「オランピア」は、当時のパリにおける娼婦の通称のこと。

ポール・セザンヌは《草上の昼食》と同じく、この絵にオマージュを捧げ、《モデルヌ・オランピア》という絵画を1874年に描いている。

ちなみに、《オランピア》は1865年のサロンでモネの《エーヴ岬の干潮》と並んで展示された。その結果、名前が似ている「Manet(マネ)」と「Monet(モネ)」が混同された。これをきっかけに、若造と混同されたマネは激おこプンプン丸。モネは以後「クロード・モネ」とフルネームで署名するようになった。
絵画レビュー:世界一“視線で殴ってくる”名画

この絵の前に立つと、やられる。
視線で。
裸婦画のくせに、「恥じらい? なにそれ?」という顔で、こっちをガン見してくる。この圧、強キャラ。ラスボス。
女はベッドの上で完全にくつろぎながら、「で? なにか用?」と言っている。この態度、現代のSNSでもなかなか見ないメンタルの強さだ。
後ろからメイドが花束を差し出しているけれど、完全スルー。花束をスルーする裸婦。いったい何者だよ。
そして左足の先では、黒ネコが尻尾をピンと立てて、ほぼ影のように存在している。このネコもまた、ただならぬ空気を醸し出す。
色使いは鮮烈なのに、画面には不思議な静けさがある。全員が何かを待っている。この絵は、裸婦画というジャンルの革命児。優雅な女神でも、神話の主人公でもない。ただの「ひとりの女」が、まっすぐこちらを見返す。その瞬間、19世紀の価値観が爆散した。《オランピア》は「美術界のメテオ」。落ちた瞬間、世界が焦げた。絵なのに、こっちが姿勢を正してしまう。
ちょっと真面目な解説
19世紀のパリではセンセーショナルな絵画だったとしても、現代の眼で見ると、当たり前に映る。
それより凄いのは構図とコンセプトの妙。女性が局部を隠す手のすぐ背後に布の境界線が引かれており、黒人のメイドとのヒエラルキーを暗に示している。
伝統的な絵画では、ベッドに犬、もしくは白猫が寝ていることが多いが、マネは魔女をイメージする黒猫を配置した。しかも寝ておらず、立っていることで、誰かを警戒しており、目の前に男の客の存在があることをうかがわせる。
陰影がなく、絵から感じるイメージは官能ではなくファッション性。モデルの女性は髪に花を飾り、首には黒いリボン、腕や足にはブレスレットやミュールといった装飾を身につけている。白いシーツにも彩り豊かな模様があり、ベッドの上がランウェイのような華やかさを帯びている。横たわりながらも、女性は自信とスタイルをまとい、パリ・コレクションのモデルのような粋さを放っている。
マネは絵画を「高尚な芸術」ではなく、視覚に訴えるポスター的な表現として扱っている。もう少しあとのベル・エポック期にロートレックやミュシャが展開したポスター・アートの先駆けとも言える。
マネに逢える日本の美術館





裸婦画の傑作たち
日本のおすすめ美術館
東京のおすすめ美術館
妄想ミュージアム『エヴェレスト美術館』