
- 原題:La Carriole du père Junier
- 作者:アンリ・ルソー
- 制作:1908年
- 寸法:129 x 97 cm
- 技法:油彩、カンヴァス
- 所蔵: オランジュリー美術館(パリ)
のどかな休日の昼下がり。ジュニエ爺さんは妻と2人の子ども、そしてルソー本人と一緒に、新しく買った馬車で出かけている。ルソーの後ろに座る子ども(姪のレア・ジュニエ)の前には、正体不明の不思議な生き物が描かれている。
クロード・ジュニエは、ルソーの住まいの近くで食料品店を営んでいた人物。絵は、店に溜まったツケの代わりに描かれたと言われている。ジュニエ爺さんは馬の調教師でもあり、ちょうど愛馬の白馬ローザを購入したばかりだった。
ジュニエ一家とルソーの仲は良く、ジュニエ夫人はルソーに料理を振る舞っていたという。

ルソーはこの絵を写真を観て描いたが、曇り空を青空に変え、道路に犬を一匹、付け加えた。
絵画レビュー:アンリ・ルソー《ジュニエ爺さんの馬車》

写真はあくまで「記録」にすぎない。ルソーにとって絵画は、それを超えて「意味」や「雰囲気」を宿すもの。曇り空を青空に変えることで、新しい馬車の門出を祝福した。
白馬の前に不自然に置かれた黒い小さな生き物。ルソーは、ささやかな存在にこそ愛情を注いだのだ。堂々とした白馬が力と富の象徴であるならば、その前を歩く豆粒ほどの生き物は、何ものにも縛られぬ自由の象徴である。自分の歩幅で、マイペースで、行きたい方向へと歩いていく。そこにルソーは、人生の幸福を見ていた。
大きさではなく、小ささに。富ではなく、自由に。ルソーの眼差しは、見落としがちな「幸福の居場所」に注がれている。この一枚は静かに告げている。
人生の祝福は、青空の下を歩む小さな影の中に宿るのだ。
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