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命を湛えたこの身ひとつで

8月11日。隣の家の屋根で猫が3匹ほど一心不乱に鳴いている。井戸端会議が盛り上がっているんだろうか。喧嘩でも交尾でもなさそうだし。

けがをしてるとかじゃないといいけどねえ、と話しながら、実家から届いた巨峰とシャインマスカットを食べる。歯を押し当てるとぷちりと皮がはじけ、中から溢れ出た実が果汁とともに口内をどっと満たした。太陽を湛えている味がする。

葛西臨海水族園まで向かう。行きがけに通った東京駅はお盆の移動と夢の国の行き帰りをする人たちとで賑わっていて、スーツケースを転がして歩く人たちの間をかき分けるようにして進んだ。

日記集の再版のための入稿を終えてから家を出られてよかった。まだまだやりたいことはたくさんあるけれど、ひとまずはほっとしている。京葉線の座席でふうと息をつく。自分との約束や、待ってくれている人からの期待を、毎日少しずつ裏切っている状態が、しんしんと積み重なっていくのが苦しかったから。

夜の水族館はよかった。ようやっと抱きかかえられるかぎりぎりなほどに太く張りのあるまぐろたちが、泡立つ水をかき分けぎゅいぎゅいと泳ぐ様を見ていたら、なんだか元気が湧いてきた。勇ましい砲弾みたいに、一度動き始めたら最期まで止まれない魚。命の底に突き当たるまで泳ぎつづけることしかできない生き様を目の当たりにして、死ぬまで息を止められないという点では私たちも大差ないのかもしれない、などと思う。

ファミマでつまみと飲み物を買い、公園まで引き返してピクニック。天井と壁に囲まれてうっつまった空間で話すよりも、視線をひょいと遠くにまで追いやれて、いつもよりするりと言葉を吐くことができるから、外でやる飲み会はわりと好きだ。

いつの間にか木々のすきまから見えていた打ち上げ花火も終わり、ライトアップされていた観覧車とひまわり畑もしんと暗がりに溶け込んでいた。すっかり静かになった駅までの道を歩く。火薬なり花粉なりのにおいがしないから、そこにそれが本当にあったのか、今じゃもうわからない。




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