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袋小路と爽快感────『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』感想

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 『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』をみたので感想。前作に引けを取らぬ傑作です!

 宇宙世紀0093年。反地球連邦を掲げる組織、マフティーの一員にして中心人物のハサウェイ・ノアは、アナハイム・エレクトロニクス社から極秘裏に受領した最新鋭モビルスーツΞガンダム連邦軍の新鋭機を退けた。政府高官が集うアデレードでの連邦議会襲撃に向けて準備を進めるが、同じく反地球連邦を掲げるゲリラが窮地に陥っているとの報もあり、救出するか見捨てるか決断を迫られる。そして、地球へのシャトルで同乗し奇妙な縁をもった少女、ギギ・アンダルシアの存在が、ハサウェイを煩悶させる。そのギギはいったん香港へ旅立ったかに思われたが、マフティーを追う連邦軍の「キルケー部隊」を率いるケネス・スレッグ大佐のもとに舞い戻り、行動をともにするようになる。

 2021年に公開され、ガンダムという作品の、あるいはロボットアニメというジャンルにおけるリアリティのレベルを一気に更新したメルクマール、『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の続編にして、三部作の第2作目。監督に『虐殺器官』の村瀬修功、脚本にむとうやすゆき、キャラクターデザインにpablo uchida恩田尚之、工原しげき等のメインスタッフは継続していて、恐るべき画面の密度も健在。

 この『キルケーの魔女』は前作と比べて会話劇的な印象が強いが、ハイコンテクストな会話のなかで時によりさまざまなニュアンスを込めた所作の描写が丹念で、こちらを飽きさせない。このリアリティあふれるキャラクターの芝居が、巨大ロボットが飛び交う世界で確かなリアリティを担保している。前作に引き続きギギの存在感はすさまじく、香港の別邸を自分好みに改装するさまが贅沢に映されるシークエンスは楽しげでいかにも遊び慣れた少女のような雰囲気をみせるが、時に異様な緊張を漲らせる緩急自在の佇まいでこの映画そのものをコントロールしているようだった。上田麗奈の妖艶な演技の恐ろしさよ。

 さて、モビルスーツにかかわる描写については、冒頭、手持ちカメラ風の映像でモビルスーツに蹂躙されるゲリラたちの描写は前作の市街戦のなかでの逃亡劇とはまたちがったシチュエーションで巨大なロボットという存在の暴力性を画面に刻んだ見事なシークエンス。そして、圧倒的な高速度で空を裂くモビルスーツの高速戦闘、なかでもクライマックスになるΞガンダムペーネロペー(ではなくこの映画で初登場のアリュゼウスガンダムというらしい!)の対決は、前作からさらにスケールアップして、新しいモビルスーツアクション描写を開拓している。現実の水準では最新鋭のモビルスーツの鍔迫り合いを描きつつ、ハサウェイの主観においては過去の因縁が絡みつき精神を苛むこの混迷ぶりとが同居しながら、しかしある種の爽快感を喚起せずにはおかないこの対決は見事という他なかった。

 そうした画面からほとばしる快と対照的に、物語はどんどん袋小路に追い詰められていくような感があり、しかもそれが大仰でなく淡々としているので、その意味でもリアリティを感じさせる。これまで乗っていた艦船が連邦軍に捕捉され沈められる、という絶望的な展開を(おそらくハサウェイは直接みていないがゆえに)さらっと流すが、それが絶望をより強くする。Ξガンダムという最新兵器を入手したはいいものの、むしろそのような強烈な実力を手中にしてしまったことが、マフティーという組織を自縄自縛に追い込み、破滅に近づいていくような皮肉。

 にもかかわらず、結部には圧倒的な爽快感があり、映画としてこれほどうれしいことはない。傷ついたガンダムが異形の外殻を剥がされ、ハサウェイもまたヘルメットを脱ぎ素顔を見せてギギとキスを交わし、それをGuns N' Rosesの「Sweet Child O' Mine」が祝福する。袋小路に追い詰められたハサウェイだが、そんなことは関係ないのだと言わんばかりの爽快感!そうした仕方で映画的詐術を働かせてくれるサービス精神が、素朴にうれしかったのだった。

 

 

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