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プレ・シンギュラリティ時代の奇書────吉見俊哉『自己との対話 社会学者、じぶんのAIと戦う』感想

自己との対話 社会学者、じぶんのAIと戦う (集英社新書)

 吉見俊哉『自己との対話 社会学者、じぶんのAIと戦う』を読んだので感想。

 本書は社会学者、吉見俊哉が、自身の著作や論文、研究ノート等を学習させたAIと、吉見自身との対話を収めた本。率直に言って、変な本である。近年、吉見は集英社新書からいくつか著作を出していて、吉見俊哉に街歩きさせたろ!という『東京裏返し』、東大退官をひとつのきっかけに、弟子筋の社会学者たちとセッションさせた『さらば東大』と、吉見という巨人からなにかおもしろいことを引き出してやろう、という編集サイドの意志が感じられる企画で、どちらもおもしろく読んだ。

 この『自己との対話』も、集英社新書の側からの企画では…と推察するのだが、これまでの企画と比べて成功しているかというと、かなり微妙だと思う。吉見の著作を学習しているとはいえ、わたくしたちが使うことのできるchatGTPとそれほど変わらない質感の回答をしばしばするというか、結構「底が知れる」感じなのだ。だから、本書の半分はよくある生成AIのなかばでっちあげみたいな文章を読んでいく感じになり、結構苦痛である。

 吉見はAI吉見俊哉を以下のように評す。

AI吉見くんには安直な修正癖がある。これが、対話を重ねる中で見えてきた特徴だった。AIの回答は、細かいところを詰めていくと、結構、誤りが多い。しかも、彼は当初、ほとんどこの不正確さに気づいていないのだが、誤りを指摘されると、表面的な修正でごまかそうとする。つまり、誤りがなぜ発生したのかを検証するでもなく、私の発言が間違っているのではないかと疑うでもなく、即座に自説を曲げて相手に合わせる。相手に従順で、自分の論拠にはこだわらず辻褄合わせをする。

 あと普通にひどい事実誤認もして、戦後の新制大学の数とか、人間がググれば即座に正解がわかる類の質問でも平気で誤った答えを返し、吉見に突っ込まれるとしどろもどろになる。そして、吉見の著作は学習していても、吉見の読んだ本すべてを学習しているわけではないので、柳田国男見田宗介の著作について聞かれるとめちゃくちゃ的外れなレスポンスを返す。まあこれは学習してるデータセットの都合上しょうがないかなとも思うが…。

 全体として、「吉見の著作を学習したユニークなAI」という感じはあまりしなくて、たまーに吉見の質問がうまくはまったとき、抜き書きのようなかたちで吉見の著作からの引用っぽい調子で返答があるくらい。

 だから本書を読んだ感想としては、結局現時点の生成AIってこんなもんか、という感じで、それはchatGTPとかで遊んでるとつとに感じるところでもあるので、本書を読むユニークな意味はさほどない気もする。しかし、これから数年後、あるいは数十年後、あるいは数か月後、なんらかのブレイクスルーがおこって生成AIが長足の進歩を遂げたとき、ああ、2025年時点では生成AIってこんなバカだったんだ、という証拠がテクストとして残っている、ということには意味があるかもしれない。Aiがまだバカだった時代、そのバカさ加減を徹底的に攻撃した奇書として、結構歴史的な価値があるのかも。

 

 

 




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