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探偵の才覚、小市民の徳────『小市民シリーズ』「秋期限定栗きんとん事件」「冬期限定ボンボンショコラ事件」感想

TVアニメ「小市民シリーズ」オリジナル・サウンドトラック

 『小市民シリーズ』後半をみたので感想。

 夏の事件をきっかけに、小鳩常悟朗と小佐内ゆきは互恵関係を解消。それぞれ別のパートナーをみつけ、小市民らしく日々を送っていこうとする。そんななか、市内で連続放火事件がおこる。小佐内のあたらしい恋人で、新聞部に所属する瓜野高彦は、その犯人を追おうと、新聞部をなかば私物化して捜査に取り組むのだが…。

 米澤穂信による所謂「日常の謎」系ミステリのアニメ化、後編はこのシリーズのハイライトともいうべき、連続放火事件をめぐる「秋期限定栗きんとん事件」と、轢き逃げにあった小鳩が病室で過去を回想しながら進行する「冬期限定ボンボンショコラ事件」から成る。

 米澤穂信にとってデビュー以来の主題だった「思春期の全能感」、その蹉跌を残酷までに突き付けた「秋期限定栗きんとん事件」はアニメでもその切れ味は健在。自身の「特別さ」、周囲から抜きんでた存在であると信じて疑わない瓜野高彦が、その実、ごく平凡な「小市民」の一人にすぎないのだと思い知らされるこのエピソードは、米澤のテクストのなかでも「思春期の全能感」の招く滑稽な事態を見事に描いている。

 一方で、「冬期限定ボンボンショコラ事件」では、中学時代に「思春期の全能感」の赴くままに自身の才覚をひけらかそうとした小鳩が、思いもよらぬかたちでその報いを受けることになる。原作の刊行は「秋期」から「冬期」まで15年の歳月が経っていたのでそれほど意識しなかったのだが、これをシームレスで眺めると、みじめな道化を演じる瓜野と探偵たる小鳩はぎりぎりのところで分岐したに過ぎない存在ではないかと思わされ、そのあたりのバランス感覚に、米澤穂信という作家のある種の成熟をみた気がした。

 ほとんど絶体絶命に陥った小鳩を辛くも救ったのは、自身の好奇心と名誉欲を糊塗するためのカモフラージュにすぎなかったであろう、善意の言葉だった。探偵の才覚ではなく小市民の徳に軍配を上げるかのようなこの差配も、このシリーズの幕引きにふさわしいものだったろう。探偵ぶった全能性は他者を切り裂きかねない危うさをもつが、小市民の善意はたとえ薄っぺらくとも命を救いうるのだ。

 この後半部も監督に神戸守、アニメーション制作はラパントラックという布陣は継続していて、シネマスコープサイズの画面は相変わらずリッチ。前半と比べて登場人物の出入りもやや増えるのでミニマル感はやや薄らぎトリッキーな演出も抑えめになっている気がしたが、原作の強度は十分に伝えられていたと思う。

 しかし、アニメ版の小佐内さんの小悪魔(この「小」は余計かもしれないと思わせるほどの)ぶりは見事で、それがこのアニメを一層印象的なものにしていたことは疑いはない。片山若子によるイラストレーションからイメージするともうちょっと無害そうな印象をもっていたのだが、アニメ版の小佐内さんはもうなんか近づいてはいけない感じがめちゃくちゃにする、最強のヒロインでした。

 

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