
2025年 118分 日本
監督:前田哲
出演:鈴木亮平、 有村架純
大人のファンタジーもの。 ★★☆
原作は朱川湊人の同名短編小説(本作を含む短編小説集で直木賞を受賞している)。
ただし、小説は兄の幼い日々の回顧だけで、成人した兄やんとフミ子の物語は映画のオリジナル。
大阪の下町で暮らす俊樹(鈴木亮平)とフミ子(有村架純)の兄妹。
俊樹は、死んだ父と交わした「どんなことがあっても妹を守る」という約束を忘れることなく、兄として妹のフミ子を守り続けてきた。
そんなフミ子も結婚が決まり、もうじき父との約束も果たし終えるはずだった。
しかし兄妹には幼い日に経験した不思議なできごとがあったのだ。
そしてフミ子は、兄や婚約者に隠れて秘かにある人たちに会いに行っていた。
鈴木亮平が実に好い。この映画は、妹のことを一生懸命に大切にする彼の映画だった。
鈴木亮平と言えば、映画「孤狼の血 LEVEL2」での恐ろしくぶっ飛んだ悪ヤクザぶりに感心したものだった。
その彼が、この映画では終始笑顔をたたえて真逆の人間像を演じている。
役者ってすごいものだと、あらためて思ってしまった。
兄やん、兄やんと兄を慕う有村架純ももちろん好かったのだが、脇役も好かった。
兄妹が親しく訪れるお好み焼き屋の娘役のファーストサマーウイカ、それに重田家の父親役の酒向芳。
特に酒向芳は、キムタクとニノが共演した「検察側の証人」での狂気じみた悪役が印象的だった。彼もまた真逆の人物層を演じていたことに感心した。
さてこの映画は、亡くなった人の魂が別の人に乗り移るという、普通に考えればオカルト的になる設定なのだが、それを優しい物語にしていた。
タイトルの「花まんま」は、幼児がままごと遊びで作った花びらを敷きつめたお弁当のこと。
事故で亡くなった重田喜代美も幼い頃に花まんまを作って遊んでいたのだ。
喜代美の魂が乗り移ったフミ子がその花まんまを重田家に届ける場面は印象的だった。
クライマックスはフミ子の結婚式。バージンロードを重田家の父と手をつないで歩くフミ子。
そして兄やんの親族代表挨拶。
ここも好かったのだが、印象的だったのは結婚式が終わりフミ子が参列者にお礼の挨拶をする場面。
フミ子はにこやかにお祝いの言葉を言う重田一家の人たちに、今日はありがとうございました、どちらからお出でいただいたのですか?と言うのだ。
そうなのだ、フミ子はもう重田家の記憶をすっかりなくしたのだ。
ここは、ああ!と思ってしまった。
原作の小説も好かったのだが、あの短編からここまで物語を膨らませて、まったく別物とも言える映画にしたことに感心した。
悪人は一人も登場しません。気持ちが洗われます。
好い映画でした。