
1987年 91分 中国
監督:チャン・イーモウ
出演:コン・リー、 チアン・ウェン
片田舎で起きたのは。 ★★★☆
冒頭に貧しい家から売られて嫁入りする若い娘・九児(コン・リー)の様子が描かれる。
九児はラバ1頭と交換に、親子ほども年の離れたハンセン病患者の造り酒屋の主人に売られたのだ。
土埃の田舎道を粗野な男たちが担ぐ御輿で行く嫁入り道中である。
中国特有の笛や太鼓の鳴り物入りの一行なのだが、そのにぎやかしがかえって九児のなんとも哀れな境遇を思わせる。
この出だしからこの映画はただものではないな、上手いなと思わせる。
これがのちに中国映画界の巨匠となったチャン・イーモウ監督の初作品である。
主演はこの映画でデビューしたコン・リー。
かつては中国の百恵ちゃんといわれていたコン・リーだが(私はどちらかといえば小雪に似ていると思っていた)、この映画の時は22歳である。
まだ純情素朴という雰囲気で、実に初々しい。
さて。一行はざわざわと風に鳴るコーリャン畑で強盗に襲われるが、御輿の担ぎ手の一人・余(チアン・ウェン)に救われる。
映画ではこのコーリャン畑はこの後も印象的にあらわれる。
九児が余と初めて結ばれるのもこのコーリャン畑であるし、最後の場面もコーリャン畑なのだ。
(ポスター写真を見て欲しい。それこそ紅のコーリャン畑なのである。道に倒れているのは・・・!)
造り酒屋に嫁いだ九児だったが、やがてその主は行方不明になってしまう。
未亡人となった九児は造り酒屋を継ぎ、周囲の協力を得て必死に頑張る。
そして使用人だった余と結婚し、子にも恵まれる。
このあたり、貧しそうな生活なのだが幸福感に溢れているのだ。
(映画を観ている者は、みんな、造り酒屋の主は余が殺したのだろうと思っている 汗)
(醸造中のコーリャン酒に尿が入ってしまったら奇跡的に美味しくなった、なんてあるわけないだろ 汗)
こうして広大な中国の大地の片隅で健気に生きてきた女性が描かれていたのだが、われわれ日本人観客としてどうしても気になるのは終盤の展開である。
大陸に侵攻してきた日本軍が幸せな村の生活を蹂躙するのである。
日本軍は村人たちに非道な行いをするのである。
そんな日本軍に、九児たちははかない抵抗をこころみるのだ。
そしてコーリャン畑は真っ赤な色に染められたようになるのである。
こんな展開になるなんて・・・。
それを別にすれば、印象には深く残る作品。
映画全体がチャン・イーモウ監督の美意識で彩られていた。
九児がまとう花嫁衣装、夕陽に映える茫漠とした大地など、その映像美は並ではない。
最後に大地に流れる血の色も(その背景にある物語を別にして)、まさしく印象的な”紅”だった。
ベルリン国際映画祭の金熊賞を受賞しています。初監督作でこの快挙はさすが。