前編に続いて、本記事では5か所の余ってしまった土地を紹介し、最後にこの種の土地の魅力について述べたい。
④ 緑の角地
川越市内を散策中、ガードパイプで仕切られた緑の一角を見つけた。
おそらく、この空き地は開発予定地として残されているのではないだろうか。
過去の姿が気になったので、ストリートビューで確認したところ、この辺りに2014年まで住宅や店が数軒立っていたことがわかった。
しかし、2015年にはそれらの建物が全て取り壊され、新たに広い空き地ができる。
そして2019年には、空き地の西側半分が新しい道路(写真左側)に姿を変えている。こうして、残された東側半分が現在の緑の一角になっているのだ*1。
つまり、この空き地は道路の新設工事によって2015年に生まれ、私が訪れた2024年8月時点で9年ほど放置されていることになる。
歩道橋の上から見た様子。
広さは100坪くらい。
空き地の端には公共物と思われるガードパイプが並んでいる。おそらくこの土地は公有地になっているのだろう。
集合住宅に接するところだけ防草シートが敷かれている。
敷地の北側に立つ樹木。
自然に根付いた雑木だと思うが、クズに覆われて姿が見えない。
この空き地は、立地や広さなどを考えると十分活用できると思う。仮にここが公有地なら、将来は住宅と道路との緩衝地として、公園や植樹帯などが整備されるのではないだろうか。
あるいは、道を挟んだ向かい側には調整池が新設されているので、そこに関係する施設が出来るのかもしれない。
いずれにしても、このような余った状態は一時的なものに思える。
なお、この道路を挟んで向かい側にも余ってしまった土地があるので、次に紹介したい。
(no.582 埼玉県)
⑤ 旧道の残滓
先の空き地の道路を挟んで向かい側に、旧道の一部が残されていた。
上の写真がその全景で、スペースの北端から撮影したもの。
このスペースは、最近できた道路(左側)、飲食店の敷地(右端)、調整池(右奥)に挟まれている。“Z”を反転させたような不整形地で、広さは50坪程度。
ここは交差点のそばにあるので、右折の路面表示が残っている。
調整池側から北方向を見た様子。
南端から見たスペースの全景。
この旧道部分も移動式のガードパイプで区切られている。ただ、空間としては右隣の歩道とほぼ一体化しており、自由に出入りできるようになっている。
おそらく、この余ってしまった土地は、区分としては道路(公有地)にあたるのではないだろうか。
先に紹介した緑の空き地とは異なり、ここは再利用しづらい土地なので、今後新しいものが整備される可能性は低いと思う。しばらくは無用空間として残りそうだ。
(no.583 埼玉県)
⑥ 駐車場横のデッドスペース
駅の近くに、防草シートに覆われた30坪くらいの未開発地がある。
10年以上は定期的にこの前を通っているが、使われている様子はない。
隣は駐車場になっており、そこは利用者の数が多い。
この空き地も土地需要はありそうだが、なぜ長い期間開発が控えられているのだろうか。
敷地内の様子。
かつては砂利が敷かれていたのだが、2、3年くらい前にこの防草シートが設置された。
なお、奥に立つ「月極駐車場」の看板は隣接する駐車場のもの。



この空き地の過去の様子を空中写真で確認したところ*2、元々は農地だったようだ。
上の写真は、左から1990年、2005年、2008年に撮影されたもので、空き地の場所はそれぞれ赤色の四角で示している。
左写真を見ると、この空き地を含めて広範囲が畑のようになっている。
しかし、中央と右写真では畑らしき土地がほとんど姿を消し、代わりに道路、建物、駐車場などができている。ただ、この変化の中でも、この区画は変わらず空き地のままだ。
初めて訪れた際、この空き地は隣接する駐車場の一部に見えたので、ここだけ駐車スペースにしないことが不思議だった。
しかし、おそらくここは駐車場とは別の独立した区画になっており、所有者が異なる可能性がある。立地や広さを考えると有効利用できそうに思えるが、長い間開発を控える何かの事情があるのだろう。
(no.584 茨城県)
⑦ 小さな設備跡
集合住宅の敷地の角にある、小さな余った土地。
何かが設置されていたスペースのようだが、それを知る手がかりは残されていない。
サイズから設置されていたものを推測すると、消火栓、散水栓、水道メーターボックス、止水弁、排水枡、郵便ポストなどが候補に挙げられる。
何にせよ、これほど小さなスペースは将来何かに再利用できるとは思えないので、しばらくこのまま残り続けるだろう。
(no.585 東京都)
⑧ 自販機横の空きスペース
自販機の横にある謎の空きスペース。
かつて、ここにもう一台自販機が置いてあったのかもしれないが、将来追加設置することを見越して空けている可能性もある。
ゴミ箱は右端に置いてあるもので十分だと思うので、そのためのスペースではないだろう。
少し気になる点は、スペースの手前に1か所白いコンクリートが埋まっていること。
これが土台跡だとすれば、ここに何かの標識が立っていたケースも考えられる。
(no.586 東京都)
おわりに
今回は前編と後編をとおして8か所の「余ってしまった土地」を紹介した。
最後にそれぞれの成り立ちと、将来の利用可能性についてまとめておきたい。
◎成り立ちについて
それぞれの成り立ちについては次のようにまとめられる。





① 分割された住宅地(左上)
② 国道沿いのデッドスペース(右上)
③ 三角の余った土地(左下)
④ 緑の角地(中央下)
⑤ 旧道の残滓(右下)
この5か所は道路の新設工事にともなって生まれた空き地で、今回最も多かった。
(ただし、⑤ 旧道の残滓は調整池の新設も一つの要因になっている。)


⑦ 小さな設備跡(左 )と⑧ 自販機横の空きスペース(右) は、元々設置されていたものが取り除かれてデッドスペース化したものと考えられる。

⑥ 駐車場横のデッドスペース(上) は、元々広い農地の一部だった。
しかし、周囲の土地が開発されていく中で、ここだけ使われずに残されている。
比較的小さな土地だが、けして有効利用できないほど狭くはなく、立地も悪くない。したがって、開発を控える所有者の個人的事情が窺える。
◎将来の利用可能性について
今回紹介した8か所の土地は、様々な理由で利用されていない状態が長く続いている。
ただ、敷地の広さ、状態、立地などを考えた場合、再利用しやすそうな場所と、そうでない場所に分けることができる。



② 国道沿いのデッドスペース(左) と⑤ 旧道の残滓(中央)は、どちらも「道路」扱いになっていると考えられる。
② は、十分広いので何かに利用できそうだが、コンクリートで覆われているので、近いうちに再開発されることはないだろう。
⑤ は、狭い不整形地なので、しばらく新しい使い道は見つからないと思う。
⑦ 小さな設備跡(右) は、何かに利用できるほどのサイズではないので、これもデッドスペースとしてしばらく残りそうだ。





一方、① 分割された住宅地(左上)、③ 三角の余った土地(右上)、④ 緑の角地(左下)、⑥ 建物跡地横のデッドスペース(中央下)は、立地、広さ、地表の状態などを見る限り、比較的容易に開発・利用できそうに思える。
私有地であれば、住宅、事業所、駐車場、駐輪場などをつくったり、自販機や自立式看板などを置くスペースとして活用できるのではないだろうか。
⑧ 自販機横の空きスペース(右下)は、需要が高まれば自販機を1台追加設置できるだろう。
◎最後に
何か新しいものをつくると、たいてい使い切れない部分が生まれてしまう。
それが簡単に捨てられるものなら問題ないが、土地の場合はそうもいかない。
個人的には、余ってしまった土地を見つけることは面白いし、成り立ちを探ることに謎解きとしての魅力を感じている。
また、無用の空間ならではの侘しい雰囲気が漂っていることがあったり、思わずじっと眺めてしまうような変わった姿のものもある。これらも、この種の土地が持つ大きな魅力といえる。
例として、過去記事に掲載したものをいくつか紹介したい。
上の小さな三角地は、一見したところゴミ集積所に思える。しかし、それを示す標識はなく、カラス除けネットも置かれていない。雑草が生えたスペース内には、古い資材が2、3個置かれているだけだ。使い道がない土地として、ひっそりと佇む姿に哀愁を感じられないだろうか。


また、左の余った土地は、用途不明の工作物や不要物らしきものが置かれており、謎めいた雰囲気が魅力だ。
右は十字路にある使われていない三角地で、敷地内に存在感のある何かの基礎が残されている。
そして、この細長い土地は、歩道(左)と建物(右)の隙間に残っていた駐車場の跡地。
かつてここに運送業者の広い駐車場があったが、そのほとんどが道路新設によってなくなり、この部分だけ余ってしまっている。なお、等間隔に並ぶ白線は、フォークリフトの駐車スペースを区切っていたものと見られる。
このように、余ってしまった土地には、構造が特殊なもの、敷地内がきちんと整備されていないもの、中途半端な使われ方をされているものなどがある。そのため、姿を見て不思議に感じられたり、おかしみを感じられることが多い。
もちろん、この種の土地の管理や活用方法について、日々頭を悩ます所有者がいることにも留意する必要があるが、今後も様々な余ってしまった土地を記録しながら、観賞を楽しんでいきたい。
さて、これまで私が訪れたこの種の土地は100か所くらいで、その多くは私が住んでいる地域で見つけたものだ。
読者の皆さんが住む街にも、普段見過ごしているものがたくさんあると思う。
意外な場所に隠れているケースが多いので、街を散策する際はぜひ探してみてほしい。
*1:参照:Googleマップ/ストリートビュー、©︎2024年Google。2014年3月、2015年5月、2018年9月、2019年4月の画像を参照。https://www.google.com/maps/@35.9166037,139.4675023,3a,75y,351.93h,89.74t/data=!3m8!1e1!3m6!1s24xu9xfJB0o6lECRGr4EjA!2e0!5s20140301T000000!6shttps:%2F%2Fstreetviewpixels-pa.googleapis.com%2Fv1%2Fthumbnail%3Fcb_client%3Dmaps_sv.tactile%26w%3D900%26h%3D600%26pitch%3D0.2582077548070174%26panoid%3D24xu9xfJB0o6lECRGr4EjA%26yaw%3D351.933266315748!7i13312!8i6656?entry=ttu&g_ep=EgoyMDI1MDQzMC4xIKXMDSoASAFQAw%3D%3D(2025.5.3.閲覧)
*2:国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」https://service.gsi.go.jp/map-photos/app/map?search=photoにある1990、2005、2008年の写真を参照(2024.10.26.閲覧)。本記事ではこれらの写真を切り抜き加工して掲載。