はじめに
耕作地帯を散策していると、使われている様子がない空き地や、中途半端な使われ方がされている土地を見かけることがある。
この記事では、このような空き地のうち小規模なものを中心に4か所紹介したい。
なお、私がこれまで耕作地帯で見つけた空き地は、次のように4つの性格に分けられる。
(1)聖域としての空き地

たとえば、上2点の写真のように、水田の端や中央に神を祀るスペースが設けられていたり、個人や集落の墓地が設けられていることがある。
(2)耕作地以外の農業に供する土地
作物自体は栽培されていないが、農作業に供する土地。
たとえば、作業の合間の休憩スペース、植え付けや収穫作業などの際に使われる準備・片付け用のスペース、農道具や資材を置いておくためのスペース、駐車場などがあげられる。
なお、これらの農業用地に野立て看板を立て、農業以外の目的で利用されているケースもある(下の写真)。
また、スペース内に観賞用の草花や樹木、果樹などを植えたり、小さな菜園を設けたりして庭に似た雰囲気になっている所もある。
このように、この種の空き地の中には用途が一つに絞られておらず、複数混在しているケースも多い。そして、そのことがある種の自由さや、独特の緩い雰囲気を生み出している。
(3)何らかの事情で耕作されなくなった土地
使われなくなった耕作地は、「休耕地」、「耕作放棄地」、「荒廃農地」などと呼ばれており、過去記事では詳しくまとめた(下記参照)*1。
使われていない農地 / 牧草地 / 緑肥栽培地 - 空き地図鑑
使われていない耕作地は、一時的に耕作を休止しているケースもあれば、将来も耕作する見通しが立たず管理放棄されているケースもある。
上の写真は休耕地と見られる。
そして、下の2点は長い間耕作されている様子がなく荒廃が進んでいる場所。どちらもかつては水田だったようだ。
(4)用途不明の空き地
用途があるかどうか判断できなかった土地。
たとえば、上の写真はさほど広くない畑にある、樹木が立つスペース。
休憩場所にしては狭く感じられる。そもそも、この規模の畑にわざわざそれを設けたとは考えにくい。
また、聖域の空き地にも思えたが、祠や墓石は見当たらない(右側に立っているのは切り株)。
ということは、たんに樹木のために設けられたスペースだろうか。そうだとすれば、なぜここに木を植えたのか不思議である。(no.592 茨城県)
なお、用途不明の農地の空き地については過去にも紹介したことがある(下の記事)。
以上の4項目が、私が耕作地帯で見かけた空き地の種類だ。
これらのうち、本記事では(2)と(3)に該当すると見られる空き地を紹介したい。
1. 水田地帯の小さな空き地
水田地帯を散策中、田んぼの端に15坪ほどの空き地が設けられていた。
上の写真は2024年4月に撮影したもの。
耕地は田起こしされたばかりのようで、まだ水が張られていない。
空き地は使われている様子がなく、雑草も伸びたままになっている。
そして、これが夏(2024年7月)の姿。
周囲には青々と生育した稲が広がる。
この時期も敷地内は雑草に覆われており、使われている様子は全く見られない。
南西から見た姿。
空き地は道路から15メートルほど田んぼの中に突き出ている。
そして、撮影年が1年遡るが、晩夏(2023年8月)の様子。
水田は稲穂が黄色く色づき始めている。
そして、この時はスペース内の雑草が刈り取られていた。
たんに環境整備のために刈られた可能性もあるが、私の推測では、稲の収穫時に作業スペースとして使うためではないだろうか。
敷地内には4本の樹木が植えられ、木陰をつくっている。
なお、左手前に立つ木は翌年には切られてしまっている。
木陰の中には向かいあって二つの瓶ケースが置かれていた。
おそらく2人で何かの作業をしたり、くつろいだりする時に腰掛けるのだろう。
先ほどの木陰をつくっていたのはこの柿の木。
敷地内で最も背が高く、撮影時は秋が近いためたくさんの実をつけていた。
瓶ケース以外で目についた人工物は、スペースの端(道路側)に置かれたコンクリート管。
これらは車止めや腰掛けなどの役割を担っているのだろう。
このように、この空き地の用途については色々と推測できるが、はっきりと断定できない。
ただ、おそらく利用される機会は限定されており、苗の植え付け、収穫、除草、農薬散布などを行う際に使われるのではないだろうか。用途としては、作業の準備や片付けを行うためのスペース、休憩所、道具置き場、駐車場などが考えられる。
したがって、ここは日常的に使われるスペースではなく、年間を通して使われない日の方が多いのだと思う。
(no.593 茨城県)
2. シンボルツリーのある休耕地
1.で紹介した空き地の近くにある、休耕地と思われる土地(北側から見た全景)。
広さは100坪くらいで、敷地中央に2本の木が寄り添うように立っている。
両側の土地は耕されているが、なぜこの区画だけ放って置かれているのだろうか。
過去の空中写真を確認したところ、1975年の写真では耕されたこの土地の姿が写されていた。しかし、1989年から2010年までは耕作された様子は見られず、荒地の姿をしている*2。
つまり、空中写真を確認した限りでは、ここは4、50年前から耕作放棄されている土地と考えられる。
ただ、管理者や利用実態については様々なケースが想定できるので、断定することはできない。
たとえば、この区画と両隣の区画は所有者が同じで、何かの理由でこの区画だけ耕作を控えているケースがある。この場合、もしかしたら、物置場や作業スペースなどの目的で使われることがあるのかもしれない。
あるいは、この区画と両隣の区画は所有者が異なっており、ここだけ所有者の事情で耕作不能になっているケースも考えられる。
敷地の中央に立つ2本の樹木。
手前に落葉樹、奥に常緑樹が立っている。
これらが植えられたものなのか、それとも自然に根付いたものなのかはわからない。
北西の角から見た区画の全景。
なお、2本の木の奥側は別区画になっているようで、そこには資材が置かれていたり、ネギが栽培されていたりする。
(no.594 茨城県)
3. 開発されなかった土地
田畑が広がるエリアに古いフェンスで囲われた空き地がある。
敷地内にはススキとセイタカアワダチソウが群生しており、左隣には太陽光パネルが立ち並ぶ。
なお、右隣の土地は耕作中の畑である。

敷地内の様子。
過去の空中写真を確認したところ、1980年代頃までここ(太陽光パネルの土地を含む)は農地として利用されていたようだった。
しかし、どこかのタイミングで耕作されなくなり、少なくとも2008年以降は荒地になっている*3。そして、2014年頃に敷地の半分に太陽光パネルが設置されることとなり、残された半分がこのような荒地になっている。
ただ、敷地の周囲にわざわざフェンスが設けられているので、一時的に駐車場や何かの施設として利用されていた可能性もある。
敷地の半分しかパネルを設置しなかった理由は、たんに予算のせいだろうか。
それとも、この荒地は将来利用することを見越してあえて残しているのだろうか。
(no.595 茨城県)
4. 荒廃農地の黄葉

最後に、地元で見つけた広めの荒廃農地を紹介したい。
上の空中写真は2008年5月に撮影されたもので、まだ荒廃していない時の姿だ。
東西に250メートルほど伸びた細長い窪地に、大小合わせて十数区画の農地(おそらく水田)が写っている。
このうち、左半分は緑に覆われているので、この時点で耕作放棄されている可能性がある。ただ、どの場所でも区画を区切る畔らしき線がはっきり見てとれる。
そして、右半分の水田らしき数区画はきれいな状態で管理されている。

そして、これが2013年5月の写真。
中央付近の2区画は土の地面が見えており、人の手が入っている様子が見受けられる。しかし、それ以外の区画は緑がまだらに侵食しており、畔のラインも消えかかっていて荒廃してきている*4。
つまり、2010年前後から、このエリアにある農地の多くは耕作されなくなり、管理放棄され始めたようだ。
そして、2020年に撮影した現地の様子が下の写真。上の空中写真にある赤丸および矢印が、下写真の撮影地点とカメラ方向を示している。
北東の角から見た荒廃農地の全景(先の空中写真の赤丸地点から撮影)。
農地が使われなくなり、およそ10年でこのような姿になっている。
東端にあたるこの場所は、カナムグラやクズと思われるツル性植物に覆われている。
ここからは、西端を目指しながら敷地内の様子を紹介していきたい。
少し西へ移動すると、ススキや雑木の姿が増えてくる。
植生が大きく変わる理由は、区画によって栄養分が違っていたり、管理放棄された時期が異なるせいだろう。
この辺りは最も荒廃が進んでいる場所。
ここでもクズが地表を覆っているが、雑木が様々な起伏をつくり、敷地全体として変化に富んだ景観になっている。
ここには、落葉した雑木にクズが絡みついて、見たことのない黄葉樹が出現していた。
このような自然の姿は荒地でしか見られないものだろう。
庭園など、人が設計・管理する植物の美しさもあるが、個人的にはこのような偶然性の高い造形のほうが好みだ。
引き続き、西方向へ移動。
この辺りは再び植生が変化しており、雑木の姿が減ってセイタカアワダチソウとススキがたくさん生えている。
そして、この辺りが中間地点。
この2区画だけは耕作が続けられてきたようだ。2013年の空中写真にも、整えられた当区画の姿が写っていた。
さらに西へ向かって移動すると、再びこのような荒地が広がっている。
ただ、この辺りは雑木があまり生えていない。
ようやく西端付近に来た。
この辺りは再整備の兆候が見られ、敷地の端のほうに土が運び込まれている(写真左端)。
なお、この辺りは他に比べると荒れていないが、雑草が多く、一見したところ耕されているようにも思えない。
しかし、よく見ると、雑草にまぎれてトウモロコシがたくさん生えていることに気づいた。
これらは栽培されているというより、自生しているように思える。
過去に栽培していたものが野生化したものだろうか。
もちろん、食用、飼料用、緑肥用などとして栽培されているケースも考えられる。
いずれにしても、この辺りはまだ人の手が入っているので、しばらく荒廃農地になることはなさそうだ。
そして、これが西端の区画。
ここにもトウモロコシがたくさん生えている。
(no.596 茨城県)
おわりに
「はじめに」でも述べたように、耕作地帯で見かける空き地は休耕地や荒廃農地だけでなく、祭祀スペース、作業スペース、休憩スペースなど様々なものがある。
特に、利用率が低そうな作業スペース、休憩スペース、雑多な用途で使われているスペースなどは、見た目が面白かったり、のどかさや自由な雰囲気を感じる場所が多い。これらについては、引き続き色々なものを探していきたい。
◎荒廃した空き地について
荒廃農地は、農業就業者の高齢化、労働力不足、土地条件の悪さ、鳥獣被害などが原因で増加している。
また、荒廃農地が生まれることで、さらに鳥獣被害の範囲が広がったり、不法投棄を誘引したりして周りの環境を悪化させることになる。
そして、この悪循環は地方を中心に増加している空き家・空き地の問題とも似ている。
空き家・空き地も少子高齢化や人口減少などによって生み出され、それらのうち適切に管理されなくなったものが荒廃し、周辺の環境を悪化させている。
このように、荒れた農地や宅地は一般的に社会問題として捉えられており、私も単純にこれらの空き地の増加が良いことだとは思わない。
ただ、その一方で、人が管理していた場所が次第に植物に侵食され、支配されていく姿に強く惹かれてもいる。
つまり、私は自然崇拝的な観点で荒廃した空き地を眺めることが多いのだが、それについて述べると長くなるので、また別の機会にまとめたいと思う。
*1:なお、荒廃農地について、近年の状況もふまえてまとめると次のとおり。
日本の農地面積が最大だったのは1961年で、当時はおよそ609万haもあった。しかし、それから60年ほど経過し、2024年には約427万haにまで減少している(農林水産省ウェブサイト「荒廃農地の現状と対策」(2024年12月)https://www.maff.go.jp/j/nousin/tikei/houkiti/attach/pdf/index-35.pdf、2025.9.5.閲覧)。
現在も農地面積は年々減り続けており、それに伴って多くの使われなくなった農地(空き地)が生み出されている。たとえば、2023年度に全国で新たに生まれた荒廃農地は2.5万ha程度ある。もちろん、荒廃農地の再生利用も進められており、同年度で1万haほど再生利用されているが(参照:農林水産省ウェブサイト「令和5年度の荒廃農地面積(令和6年3月31日現在)」https://www.maff.go.jp/j/nousin/tikei/houkiti/attach/pdf/index-33.pdf、(2025.9.5.閲覧))、それでも合計では新たに生み出される荒廃農地のほうが多い。
*2:国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」https://mapps.gsi.go.jpにある1975、76、89、94、2008、2010年の写真を参照。(2025.8.25.閲覧)。
*3:参照:国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」https://service.gsi.go.jp/map-photos/1984年、2008年の写真を参照(2025.7.14.閲覧))
*4:出典:国土地理院ウェサイトにあるデータ2点(撮影日:2008年5月27日(https://service.gsi.go.jp/map-photos/app/disp?id=709297&data_type_id=4&print=false&number=CKT20083-C6-61&kind=standard)、2013年5月8日(https://service.gsi.go.jp/map-photos/app/disp?id=1553992&data_type_id=4&print=false&number=CKT20139-C6-15&kind=standard)2025.9.5.データ取得)をそれぞれ加工して掲載。

