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ちいさな物語/白石千紗
サニーピースのシングル『Let's Go!Let's Go!ピース!ピース!』に収録された白石千紗 (CV:高尾奏音)のソロ楽曲。CD音源以外ではサブスク配信にてリリースされている。
作詞・作曲・編曲は、高尾奏音さんの実兄である高尾奏之介氏が手掛けられていて、これは本曲における大きなアピールポイントだと思える。
「楽曲タイトルに物語とあるように、楽曲の構成が物語調になっていて絵本を読んでいるような気分になる楽曲」と高尾奏音さんは評されていて、フルで聴いてみると彼女の言葉に納得と同意で、首がもげそうな勢いで頷くしかなかったのである。
そして、楽曲タイトルの『ちいさな』が『小さな』でなく平仮名にしているのもエモーショナルな衝動を揺さぶってくる。歌詞を読んでいくとそれはハッキリとした輪郭を帯びてリスナーの感覚に深く突き刺さって……『ち』と『さ』=白石千紗のアイドルとしての軌跡と彼女が貫き通したPRIDEを謳っている楽曲ということを盛大にアピールしている。
曲調は、ベーシックで奇を衒わないアイドルソングの王道を往く感じだろうか。
軽やかなテンポで、音の配置もシンプル。そこに重さは感じられずオープンなメロディと、千紗(高尾さん)の飾りっ気のない可憐な歌声が重なって、分かり易いキャッチーさがありながら、何度か聴いていくうちに沁みていって印象深くなっていく要素も感じられる。
軽快なメロディと楽し気な千紗の歌声が『陽』の因子なら、彼女が辿って来た軌跡は決して明るく照らされていたワケじゃない『陰』の因子がある。そんな二重構造が本曲に重なって生まれた深みが際立つ。
本曲でもう一つ特徴的なのは、千紗が誰かに語りかけるかのように歌っていること。
それは千紗の物語を、彼女の大切な人達やリスナーに向けて読み聞かせるようでもあるし、もう一人の千紗(彼女自身の内面)との対話という解釈も成り立つと思える。
前述したが、本曲は千紗のアイドルとしての軌跡(物語)を謳っている楽曲。始まりは静かだが進行していくに連れて盛り上がって、サビで千紗の感情が爆ぜた歌声に至る。そこには、未来への不安を抱きながらも変わりたい想いと一歩踏み出す勇気をもって進んでいく彼女の解放された意志が歌声へ宿る。
サビの歌詞は、千紗の物語のクライマックスを司っていて力強さが漲っている。ストーリー初期では彼女の自己肯定感の低さ故になかなか自信が持てなかったが……仲間と出逢って過ごした刻と情熱にあてられ、大切に着実に踏みしめて歩んだ一歩一歩が千紗の大きな成長の証になった。
そんな彼女がサビで「よそ見しちゃだめですよっ!なんてね?」と言い放つとは初期の千紗では考えられなかっただろう。実にあざとい……(もちろんいい意味で)
内気で自己肯定感が低く自信をなかなか持てなかった彼女が、ニュアンスは違うけれど『私を見てッ!』と力強く言えるまでになるのは凄いことなのだと。本当に千紗は『強く』なったんだなと思えるのだ。千紗がアイドルの軌跡を駆けだして必死に積み重ねてきた刻。どんなに辛くても止めなかった刻は絶対に彼女を裏切らなかった証明でもある。
で……本曲の締めのメロディと歌声が堪らなく良い。「これはわたしの物語 続いてくよ」と優し気で穏やかな歌声からは、過去から今、そして未来へ向かう全ての刻で千紗が体験することに意味があって物語を未来へ繋ぐ強い決意が伝わってくる。
そう、彼女のちいさな物語はまだ始まったばかりなのだ。