Not a dream/DayRe:
1stEP『ReFraction』の5曲目に収録されている楽曲。
曲調と5人の歌声からは、ほのぼのして心が解されて和むインプレッションを抱いた。表面上だけを評するなら、本曲は癒し系の楽曲になるのだろう。
『癒し系』の雰囲気を醸し出しているのは、宮沢小春さんの歌声。彼女の繊細で柔和な歌声から感じられる可愛らしい歌声とメロディとの親和性が見事に合致して聴き心地の良さへと至る。
宮沢さんの柔和でナチュラル(いい意味で飾り気のない)可愛らしい歌声の真骨頂が発揮されるのが、彼女の謳う落ちサビだと思う。
まだ先の見えない未来は
不安と期待 半分で
夢見るだけじゃ 物足りないんだもん
―DayRe: 『Not a dream』より引用
宮沢さん曰く、このパートの歌詞は、ちょっと暗めなことを言いつつ…可愛い雰囲気でもってあんまり重く捉えずポップにカジュアルに受け取っていただけたらと語っていて、本曲自体キュートで落ち着いたテイストってのもあるが、落ちサビの特性によって彼女のボーカルはより強調されて響いてくる。
あくまでも個人の感覚だが……例えるなら、乾いた砂地に水を撒いてジワッと砂に水が徐々に沁み渡る様子を見ている感じで、宮沢さんの柔和で可愛らしい歌声が魂へ沁みてくるのが実に心地良い。
特に、「物足りないんだもん」の語尾である「だもん」の歌い方が非常に可愛いッ!
不可思議なミステリアスさとマイペースさで掴み所がない所はあれど、論理的で落ち着いている印象の彼女がこの箇所で子供のような口調になっているのは、完全に不意を突かれたギャップで撃ち落されてしまうのである……彼女はいい意味で本当にズルい人だなと思い知らされる。
他のメンバーの歌い方に話を移すが、橘さんと日向さんは器用に本曲の核になっている可愛らしい歌声を存分に響かせている。声そのものが強い橘さんと日向さんは、宮沢さんの柔和でナチュラルな可愛さと違うベクトルになる活発な可愛さが宿っているように感じた。
一方で、本曲を歌うのに苦戦したと語っていたのは、相川さんと夏目さん。
「大分苦戦した。結構苦戦した」と語っていた相川さん。夏目さんは「なるべく、ハスキーな声を出さないように頑張った」と語るが…「私のハスキーは消えない…こういったふわふわしている楽曲は歌えない」と零す。
この話を踏まえて、本曲での相川さんと夏目さんがどういったアプローチで核になっている『可愛らしさ』を歌声に乗せているのか?にポイントを絞って聴くのも面白いかもしれない。自分の印象では、彼女達の歌声からは抱いた苦手意識と本曲に真っ向から向き合って得られた彼女たちなりの『答え』が歌声に出ていたのではと思っている。
ここまで本曲は可愛いやら癒される楽曲と評したが、それは本曲の表面上の顔にすぎない。歌詞を読んでみると、何気ない日常の理想と現実とのギャップをテーマにしているとの事。
1番では、朝目覚めてからイメージしている理想の1日を思い描いて心躍る様子が描かれる。しかし、2番に入るとそんな理想は打ち砕かれる。「そうよ あんなに上手くいくわけないのよ いつも通り」の歌詞がより鋭く突き刺さってここは暗さの面がより際立つ。
2Aを歌うのは夏目さん。(だと思う…)前述で「私のハスキーは消えない…」と零していたが、彼女の低音の歌声により2番の核になっている現実に打ちのめされた感がよく表れている。
Cメロに入ると、楽曲はまた違った表情を見せる。ままならない現実に向き合って、試行錯誤を繰り返しながら必死に抗い未熟だけどそれがありのままの自分であると叫ぶ。と、書いたが……メロディと歌声は本曲の核であるカジュアルでポップな雰囲気は損なわれていない。
で、ラスサビの歌詞は、思い描く理想にならなくても突き進もうとする意志の強さが描かれる。
思うようにいかない事の方が多い世の中ではあるが…全てが重苦しくなるワケじゃない。アプローチをちょいと変えてみたらうまくいくって事は日常生活においては意外と多かったりするのだ。ラストフレーズの歌詞はそれを表現されている。
毎日毎日 積み重ねて Ah ゆめじゃない
ゆめじゃない
―DayRe:『Not a dream』より引用
いい事もそうじゃない日常に意味はちゃんとあって尊いものであり、その日常こそがその人にとっての完璧な日々であり何気ない日常でもある事に本曲の主人公は気づいたのかもしれない。
ラストフレーズの「ゆめじゃない」の歌い方は、低い音から高い音へ上がる歌い方。
最後だからといって明瞭に歌い上げるのでなく、ただ優し気で魂が和む余韻を残していく歌声が堪らなくいい。