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多元的無知について

ちょうど読んでいる本で見かけた「多元的無知」という言葉について興味を持ったので、いろいろ調べたという話。ソフトウェア開発における多元的無知の現象について考えたこと。

調べるきっかけとなったのは以下の記述である。

個人レベルでは育休取得に肯定的な男性たちが、職場の周囲の人々の思いを誤って推測してしまうために、一人ひとりの思いとは裏腹な行動をみんなが選択してしまって、いつまでも育休取得という新しい選択ができないまま旧態依然とした状況が繰り返される側面もある。こうした現象は「多元的無知」あるいは「沈黙のらせん」とよばれる社会心理学的現象である。


産業・組織心理学 (放送大学教材 1631) 第15章、より

多元的無知とは

多元的無知(たげんてきむち、英: pluralistic ignorance)とは、特定の社会的集団の構成員に見られるバイアスの一種である。多元的無知は社会心理学において、集団の過半数が任意のある条件を否定しながらも、他者が受け入れることを想定しそれに沿った行動をしている状況を指す。言い換えれば「誰も信じていないが、誰もが『誰もが信じている』と信じている」と表現できる。
多元的無知 - Wikipedia

もっともわかりやすい例は「裸の王様」とされている。それはわかるが、実際の身の回りで起きていることが多元的無知に該当するかどうかをサッと判断するのは、なかなか難しそうな印象である。
冒頭であげた産業・組織心理学の例でいえば

  • (実際は)誰もが「育休休暇を否定的に考えてはいない」
  • (しかし、多元的無知によって)誰もが「育休休暇を否定的に考えている」と信じてしまう
  • だから、育児休暇は取らない

ということになる。

ソフトウェアアーキテクチャの基礎 で紹介されている例

ソフトウェア開発における多元的無知の事例が、ソフトウェアアーキテクチャの基礎 ―エンジニアリングに基づく体系的アプローチでも紹介されていた(第22章)。

  • チームでは、2つのリモートサービス間でメッセージングを使用することが最適なソリューションであるという合意がもともとあった
  • (実際は)誰もが「例外(サービス間にセキュアなファイアーウォールがある場合など)はある」と考えている
  • (しかし、多元的無知によって)自分が何かの見落としをしているか、馬鹿にされるのではないかと恐れて(サービス間にセキュアなファイアーウォールがあるにも関わらず)「メッセージングを使用すること」に同意をしてしまう

組織を変える5つの対話 で紹介されている例

組織を変える5つの対話 ―対話を通じてアジャイルな組織文化を創る のでも、多元的無知が紹介されている(4章)。

その場の誰かまたは全員が同じ不安を感じていても、一見他の人が気にしてなさそうに見えると、その不安を口に出すことは憚られてしまうのです。言い換えれば、そのグループの中で「煙が出ている」と最初に言うくらいなら、火事で死ぬ方がマシだということです。それくらい、多元的無知は強いのです。


組織を変える5つの対話 ―対話を通じてアジャイルな組織文化を創る 4.2 準備:逸脱の常態化、より

  • これまでも、冷え込んでいた日のスペースシャトル打ち上げは成功していた
  • (実際は)一定の気温以下では、ブースター部品(Oリング)に亀裂が入ることがわかっていた。よって、打ち上げは中止すべきだった
  • (しかし、多元的無知によって)過去の成功事例に基づき、(一部のメンバーの懸念は無視され)飛行は中止されなかった
  • 結果として、ブースターは爆発し、乗組員全員が死亡した

多元的無知は「見てみぬふり」ではない

似たような概念で「見てみぬふり」があるが、上記の例をみて考えると、多元的無知 とは違うことがわかる。

「見てみぬふり」は、明らかに問題には自分は気づいているが、それについて指摘することで自分に不利益があることがわかっているから、気づかなかったふりをすることだと思う。
一方で「多元的無知」では、いちど問題に気付いていたにもかかわらず、周囲との関係性で自己(自分の発見そのもの)を訂正してしまう(自分が間違っていると思い込む)。

多元的無知の解決

組織を変える5つの対話 ―対話を通じてアジャイルな組織文化を創るでは、不安に関する対話を通じて解決するという話が紹介されていて、まあそれはそうだろうなと思う。ただ、多元的無知のバイアスにとらわれている場合はそもそも「不安」を感じていない(自己訂正済)ということもあるので、対話だけで解決するのも難しそうだ。

まずは、何らかの判断を行うための根拠を明確に(できれば見える形で)するのが良さそう。このあたりについては、もう少しいろいろ考えてみたい。




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