「Frictionless: 7 Steps to Remove Barriers, Unlock Value, and Outpace Your Competition in the AI Era」という英語の本をざっくり読んだという話。日本語にすると「フリクションレス:障壁を取り除き、価値を解き放ち、AI時代において競合他社を凌駕するための7つのステップ」というところか。Martin Fowlerによる推薦文の日本語訳が公開されており、気になった本だ。なお私の紹介は誤読の可能性があるため、興味のある人は原著をあたるとよい。
ソフトウェア開発における生産性について書かれたものの大半はクズだ。だが、NicoleとAbiの書籍は注目すべき例外である。
本当だろうか?
- Frictionlessの紹介、全体的な感想
- Frictionlessの内容に関するメモ
Frictionlessの紹介、全体的な感想
日本語訳で読めるMartin Fowler序文でもわかる通り、本書は「生産性を低下させる摩擦(Friction)を解消し、開発者体験(DevEx)を改善させることが重要だ」という本である。ここでいうFriction/DevExの阻害要因とは例えば手動デプロイとか、ビルド時間の長さ、不安定なテストや不十分なオンボーディング資料、ローカル環境の問題などである。
しかし、うーん、どうだろう、というのが率直な感想だ。確かに生産性を向上させるための方法論にはロクでもないものが多いため、逆張りのアプローチで生産性低下要因を撲滅するという考え方はわかるし、害がなさそうではある。というか、絶対にやるべきことである。でもー、どうなんでしょうー。それより前に考えるべきことがあるんじゃないか? 乾いた雑巾を絞ってないか? という疑問が頭をよぎり、「これは良い本だ」と断言できるほどの確信は持てなかったというのが正直なところ。
摩擦(Friction)に関しては、たまたはではあるが同時期に読んだ「FRICTION(フリクション) 職場の問題を解決する摩擦の力」のほうは良かった。こちらの本は「不要な摩擦は無くし、逆にスピードがある領域は意図的に摩擦を作り出して事故を減らそう」という本書よりは抽象度の高い議論をしていて、共感できた。そう考えてしまうのは自分が開発から離れてマネジメントに着目しているからなんだろうか。
というわけで、他の方の意見もぜひ聞きたい。どうなんですか、これ。
Frictionlessの内容に関するメモ
以下、各章のメモである。
lntroduction
現状、開発者体験(DevEx)により多大な損失が発生している。加えて、AIによりコード生成やプロトタイピングが劇的に高速化。このメリットを最大限に享受するためには、DevExの重要性はさらに増大している
- DevExは「気持ちの良いアイデア」ではなく、戦略的レバー
- AI時代において、DevEx改善に投資する組織が未来をリードする
PART I - Understanding DevEx
開発者体験とは何か。そして摩擦(Friction)とは何か
- Friction = The Value Killer
- 摩擦はAI投資の価値を殺す要因になりかねない
PART II The Three Essential Elements of DevEx
開発者体験を改善するための3つの重要な要素について
- フィードバックループの最適化
- フロー状態の保護
- 認知負荷の削減
PART Ⅲ Making the Business Case
経営層の支持を得る方法について。DevEx回線を財務的成果や戦略的優先事項に結びつけなければならない。そのため、経営層の関心事(コスト削減
スピード、競争力)に沿って提案する必要がある
- ビジネス価値に翻訳する
- データを活用し、ROIを定量化
- 戦略との整合性
PART IV lmproving DevEx : A 7-Step Process
DevEx改善をするための、計画的・段階的なアプローチについて
STEP 1 Start Your DevEx Journey
改善の第一歩として、始めるべきことについて
STEP 2 Start SmaIl and Get a Quick Win
小さく始めて、早期に成果を出す
- 適切なプロジェクトを選んで、効果を検証する
- Quick RICEフレームワークの利用。Reach,Impact,Confidence,Effort の4つの観点でざっくり評価する
- 初期の成果を共有してモメンタムを作る
- 失敗も共有し、学びを示す
- よくある落とし穴を避ける方法
- 防御的になる、解決策の押し付け、スピードを重視しすぎて孤立、マイクロマネジメント……
STEP 3 Use Data to Optimize Your Own DevEx Work
データを用いてDevEx改善を最適化する
- 解決策に飛びついてはいけない
STEP 4 Decide Strategv and Priority
戦略と優先順位の決定。すべての課題を解決することは難しいため、共通基準を用いてDevEX課題を評価する方法について
- RICE基準を使って意思決定を明確化し、データを活用して合意形成を進める
- RICE基準:(Reach×Impact×Confidence)/ Effort = RICE Score.
- RICE評価だけでなく、追加評価によって決定する
- ビジネスバリュー、集団的なアクションとなるか否か、タイムライン、制約、ゴールの高さ
STEP 5 Sell Your Strategy
改善計画を社内に浸透させるためのコミュニケーション戦略について。ワークショップや、メンタリングや、ハンズオンなどの活用を考える
- Step1 で作成したステークホルダーマトリクスを元に、各グループに響くメッセージを設計
STEP 6 Drive Change at (Your) Scale
自分の影響範囲に合わせて、変革を推進する
- スコープ別の戦略
STEP 7 EvaIuate Your Progress and Show VaIue
DevEx改善の進捗を評価し、ステークホルダーに価値を示す方法。進捗指標を定め、結果をビジネス言語に翻訳し、定期的に報告する
PART V Evolving and Sustaining DevEx
DevEx改善を自足的に進化させるための考え方について
- リソースの確保と保護
- 組織構造の整備
- プロダクト指向の技術ソリューション
- 進化し、影響を増幅するようなメトリクス設計
PART VI Workbooks
Frictionless: How to Outpace Your Competition in the AI Era からダウンロードできる(してない)
というわけで、モヤモヤする読書ではあった。Amazonのレビューだとそこそこの評判みたいなんだけどなぁ