国宝を観た。本当に美しいものを見た時は、恐ろしさがきて、美しいとか、綺麗だとか、そういうのを凌駕して、恐れる感情が湧くんだと実感した。
苦しかった。辛い気持ちだった。それでも目が離せなかった。
最後、綺麗やなぁ、というシーン。その先に見た景色はずっと求めていたものかも知れないし、もう私たちには分からないものまで見えていたのかも知れない。
恐ろしくて、その恐れをまとったキクオの姿が、私たちに焼き付いて離れない。
私が見たのは、歌舞伎だったのか。夢だったのか。ただ1人の人間が、歌舞伎に狂わされていく姿だったのか。
それでも、それでも。
私は自分のこの感情を忘れずに居たい。
本当に美しいものは、真っ先に恐ろしい、が来るのだということ。
それはそれまでの稽古のことかも知れないし、その人、その役者のそれまでの人生かも知れない。稽古もそれ以外でも得てきた血肉すべてなのかもしれない。
ただ言えるのは、美しさは恐ろしさをまとって来るのだ、という実感。
今この、人生で一番若い、目も意識もはっきりしている状態で、この映画を見られて良かった。
私の感性を、また一つ研いでくれた作品に出会えて、本当に幸せだ。
美しいとは苦しいだ。
美しいとは恐ろしさだ。
私の中の美しいが、今まで知らない顔をしてこっちを向いていた。
有難う、国宝…。
有難う、歌舞伎の歴史を続けてきてくださった先人たち……。
この映画を、今見られて本当によかったです。
有難う…。