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やらない夫は弱虫のようです 第三十二話

304 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:11:21 ID:e4LFvmMs [30/38]
828









                   ┏
                     ――――…一年と、ほんの数カ月。
                                            ┛











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305 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:11:58 ID:e4LFvmMs [31/38]
829



  .l,;;;;;;;;;l;;;;;;;;;l              /;;|       ┏
  l;;;;;;;;;;;i;;;;;;;;;!、       ´    /;;;;l          それは、一緒に暮らしていた、年月。
  l,;;;;;;;;;;;;',;;;;;;;',ヽ、    ー    , イ;;;;;;|                                ┛
  l;;;;;;;;;;;;;;',;;;;;;;',  ヽ、     ,/;;;;l;;;;;;;l
  ノ,,;;;;;;;;;;;;;;',;;;;;;;',   `丶、..., '´;;;;;;;;;;|;;;;;;l
r‐ ''"´    ',;;;;;;',、 、   /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l;;;;;;;l
ヽ       ',;;;;;;;',\\. /、;;;;;;;;;;;;;;;;;;i;;;;;;;!       ┏
/,. -‐‐- 、 ',;;;;;;;', \ヽ、lヽ;;;;;;;;;;;;;l;;;;;;;!         夫婦となり、親となり、家族となって。
       `ヽ'、;;;;;;';、 \ ! ヽ;;;;;;;ノ;;;;;/                                ┛



         ┏
           ―――たった、それだけの時間しか、わしたちは一緒にいなかった。
                                                     ┛



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


    /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ
   /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ト、;;;l、;; ト、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;',   「この子には、強く…何より優しくあってほしいわ。」
   /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ト、!-ヽ!ヽl.ヽ;;;;;;;;;,イ/!;;,ィ;;;;;;;;;;;;;;;;;
  ,';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l、;;!ィ ===ミl `i;;;;;/ ナ'l/ノ、/;;;;;;;;;;/
  ;;;;;;;;;;;;|;;;;;;;;;;ト、ヾ""    レ' -=、 !;;;;/;;;;/     「あなたのような…ね。」
  l;;;;;;;;;;;l;;;;;;;;;|        ,   " ノ//
  ',;;;;;;;;;;;l;;;;;;;;;l     、,__      '"/;;|
  :;:;:;:;ンヽ',;;;;;;;' ヽ、      ,/  l;;;;;;;l        ┏
 ;:;:;:;/_/_',;;;;;;;',  `丶、..., ' ´   |;;;;;;;l          自分の息子に対して、そう願っていた
r‐ ''"´    ',;;;;;;;',、 、  /        l;;;;;;;l          妻は、今はいない。
ヽ       ',;;;;;;;',\\/、        i;;;;;;;!                                  ┛
/,. -‐‐- 、 ',;;;;;;;', \ヽ、lヽ.    l;;;;;;;!
       `ヽ'、;;;;;;';、 \ ! ヽ、 ノ;;;;;/


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━





306 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:12:45 ID:e4LFvmMs [32/38]
830


         ┏
           あの時のわしと、現在のわしでは取り巻く環境、状況。―――すべてが、何もかも違う。
                                                                ┛



               , ,.ノ  、  zzz…
               l (= =    zzz…  ┏
               |  (__人)            今、わしのもとにはリュカ―――マーサが
              ヽ    ノ             産んでくれた、たった一人の息子がいる。
              /   くつ                                       ┛
              |    つ
              ヽ __ )          ┏
                 Lノ            元気で、素直な子に育ってくれたと思っている。
                                                           ┛



            ┏
               この前など、ベビーパンサーをどこからか拾ってきて飼わせてくれと言ってきた。
                                                               ┛

           ┏
             やはり血は争えないと、いうことなのだろうか。あの後も、マーサは気づけば

             みょうちくりんな生き物を連れてきたり、助けたりしていたものだ。
                                                             ┛


.

307 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:13:53 ID:e4LFvmMs [33/38]
831



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


           「奥さまの前では、誰しもが警戒心をほどかされてしまいます…。

           そんな、不思議な力のあるお方でした。」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


         ┏
           そう、先ほどサンチョが言った通り。マーサはどこかそういうところがあった。
                                                         ┛

         ┏
           説明しえない力……人であろうが動物であろうが、魔物であろうが。

           不思議と、逆らえない。警戒心を抱けない。そんなところがあったのだ。
                                                       ┛


.

308 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:14:42 ID:e4LFvmMs [34/38]
832

<<サンタローズ村・パパスの家>>



         -‐一……ー- 、
    ,, '´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
   /::::, -‐ァ:::, -―ァ:::::, -、::::::',,
  /イ/-、∠/-― 、`ヽ:i  }::::::|     しかし、驚きましたよあの時は。
  /イT o} y  T o ̄}  l」   |::::::|
    l  r′    ̄  *  、ー' :::::|     旦那さまが突然、奥さまを連れてこられて……、
   r┴―――一'′     ヽ :::::|      あの時程、戸惑われている旦那さまのお顔は、
   |                    \|      このサンチョ、記憶にございません。
   |                }
   |                /′
   ヽ_____         '´ /
   /`ー――――一'´   /
   /  /⌒ヽ.        /


               ┏
                 一時間ほど、だろうか。わしとサンチョは、ホットワインを片手に、
                 静かに昔話をした。
                                                         ┛


   / ̄ ̄\
 /   _ノ  \
 |    ( ー)(ー)       その話はしてくれるな。
. |  ;  (__人__)
  |     ` ⌒´ノ       わしもあの時は、どうかしていたんだ。
.  |       nl^l^l
.  ヽ      |   ノ
   ヽ    ヽ く
   /     ヽ \



309 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:15:42 ID:e4LFvmMs [35/38]
833



         -‐一……ー- 、
    , '´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
   /::::, -‐ァ:::, -―ァ:::::, -、::::::',         なにをおっしゃいますか。
  /イ/-、∠/-― 、`ヽ:i  }::::::|
  /イT o} y  T o ̄}  l」   |::::::|        サンチョは嬉しかったんです。常に長であろうと
    l  r′    ̄  *  、ー' :::::|        されておられた旦那さまは、あのころはいつも
   r┴―――一'′     ヽ :::::|        無理をされておられました。
   |                    \|
   |                }        奥さまがいらしてからですな。旦那さまが柔らかく
   |                /′       なられたのは。
   ヽ_____         '´ /
   /`ー――――一'´   /           ―――ええ。あれほど、仲良くいらしたのに…。
   /  /⌒ヽ.        /



                          ┏
                             薄寒く、静かな夜。

                             思い出話をするにはちょうど良い夜。
                                                    ┛


     / ̄ ̄\
   /   _ノ  \
   |    ( ー)(ー)                ………随分と、色々あったものだ。
  . |  .   (__人__)
    |     ` ⌒´ノ                    しかし、「その」話はするな。サンチョ。
  .  |         }                 わしは諦めた気はないし、これからも諦める気はない。
  .  ヽ        }
     ヽ     ノ
     i⌒\ ,__(‐- 、                ―――ベルギースも未だ、手掛かりと思えるものが
     l \ 巛ー─;\              ある度に知らせてくれる。ありがたいことだよ。
      | `ヽ-‐ーく_)
  .    |      l



.

310 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:16:36 ID:e4LFvmMs [36/38]
834



                                               -‐一……ー- 、
                                          , '´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
                                         /::::, -‐ァ:::, -―ァ:::::, -、::::::',
            ええ、全くです。申し訳ありません。      /イ/-、∠/-― 、`ヽ:i  }::::::|
                                        /イT o} y  T o ̄}  l」   |::::::|
            ……そういえば、旦那さま。             l  r′    ̄     、ー' :::::|
            数日前に、ベルギース様からの書状が     r┴―――一'′     ヽ :::::|
            届いていたようですが…、             |                    \|
                                            |                }
            やはり、奥さまの?                 |                /′
                                         ヽ_____         '´ /
                                         /`ー――――一'´   /
                                         /  /⌒ヽ.        /



             ┏
               しかし、わしは誰かの思い出話をするのは好きではない。

               第一、思い出にするつもりも、ないのだ。
                                                  ┛



     / ̄ ̄\
   /   _ノ  \
   |    ( ●)(ー      いや…、それが、よく判らんのだよ。
   |      (__人__)
    |        ノ      何か頼みごとがあるらしいのだが、書状には
   |      ∩ ノ ⊃      細かいことは一切書いていなかった。
  /     ./ _ノ
 (.  \ / ./_ノ │
  \  “ /___|  |
.    \/ ___ /



.


312 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:17:37 ID:e4LFvmMs [37/38]
835



             ┏
               サンチョがいれてくれた、ワインももう生ぬるく、さめた。
                                                  ┛



   / ̄ ̄\
  / _ノ  ヽ、_ \
. | ( ●)(● ) |       ―――あいつには、昔から世話になっている。
. |  (__人__)  │       近いうちに、ラインハットに行くことになるだろうな。
  |   `⌒ ´   |
.  |           |        すまんが、サンチョ。準備を頼めるか?
.  ヽ       /
  ヽ      /
   >     < 
   |      | 

                                                     はい、判りました>


               ┏
                 そろそろ、この昔話も、終わらせるときだろう。
                                              ┛


.
5 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:25:48 ID:e4LFvmMs [3/21]
836



     ┏
       わしは数日もしないうちに、サンタローズから離れたラインハット国に行くことになるだろう。
                                                              ┛


        / ̄ ̄\
      /   _ノ  \     すまんな。
      |   ( ●)(●)
      . |    (__人__)     ―――サンチョ、お前には、本当に…
        |     ` ⌒´ノ     昔から、世話をかけるな。
      .  |         }
     .  ヽ        }
          ヽ     ノ    ┏
        .>    <       アルカパから帰ってきてやっていた仕事にも、
        |     |       一区切りがついた。               ┛
        |     |


                                                       -‐一……ー- 、
                                                   , '´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
                                                 /::::, -‐ァ:::, -―ァ:::::, -、::::::',
                  旦那さま、何を言われるのですか。         /イ/-、∠/-― 、`ヽ:i  }::::::|
                                                /イT o} y  T o ̄}  l」   |::::::|
                  このサンチョにそんなことをおっしゃいますな。     l  r′    ̄  *  、ー' :::::|
                                                 r┴―――一'′     ヽ :::::|
                                                 |                    \|
                                                 |                }
                                                 |                /′
                                                  ヽ_____         '´ /
                                                  /`ー――――一'´   /
                                                 /  /⌒ヽ.        /


             ┏
                もうそろそろ、明日に備えて眠りにつく頃合いだろう。
                                                  ┛


.

6 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:26:40 ID:e4LFvmMs [4/21]
837



     / ̄ ̄\
    /   _ノ  \
   |    ( ●)(●)      さて…それでは、そろそろ寝ようか。
  . |     (__人__)
    |     ` ⌒´ノ       明日も早い。
  .  |         }       リュカの相手も…してやりたいしな。
  .  ヽ        }
      ヽ     ノ
     .>    <
     |     |
     |     |


         ┏
           マグダレーナがアルカパからやってきたころから、リュカは自分を鍛えてくれと言ってきた。
                                                                  ┛

           ┏
             あの優しい子がどうしたものかと思ったが、どうやらわしの手伝いをしたいらしい。
                                                               ┛


     / ̄ ̄\
   /     _ノ \
   |      ( ●))       あいつは、今はわしの動きを追いかけるだけで
    |       (__ノ_)      必死だが、不思議なほど銅の剣を使いこなしている。
    |       `⌒ノ
  .  |         }       不思議だな…。わしは自分で自分を鍛えながら、
  .  ヽ        }       そんな自分がどこか好きでは無かったよ。
     ヽ     ノ
     .>    <         そんなわしが、息子に剣を教えることになろうとはな。
     |     |
     |     |

7 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:27:48 ID:e4LFvmMs [5/21]
838



                                             -‐一……ー- 、
                                        , '´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
                                       /::::, -‐ァ:::, -―ァ:::::, -、::::::',
                  旦那さま…。            /イ/-、∠/-― 、`ヽ:i  }::::::|
                                      /イT o} y  T o ̄}  l」   |::::::|
                                        l  r′    ̄     、ー' :::::|
                                       r┴―――一'′     ヽ :::::|
                                       |                    \|
                                       |                }
                                       |                /′
                                       ヽ_____         '´ /
                                       /`ー――――一'´   /
                                       /  /⌒ヽ.        /


       ┏
         鍛えながらも、嫌っていた技術。

         ―――大事なものさえ守れればよいと思っていた、その技術。
                                               ┛


      / ̄ ̄\
    /   _ノ  \          人によっては、滑稽だと笑うかもしれんな。
    |    ( ー)(ー)
   . |     (__人__)         わしは、好きな女一人守れなかった男だ。
     |     ` ⌒´ノ         ―――そう、一人も、守れなかった男だ。
   .  |       nl^l^l
   .  ヽ      |   ノ        そんな男が、息子とはいえ…。
        ヽ    ヽ く         教えることに、なろうとはな。
      /     ヽ \


.

8 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:28:44 ID:e4LFvmMs [6/21]
839


      / ̄ ̄\
    /   _⌒  \
    |   (●)(●)     そんな顔をするな、サンチョ。
   . |   ⌒(__人__)     わしは今、悲嘆にくれていたりはしないのだから。
     |     |r┬| .}
   .  |     ー―' }     あいつは優しい子だよ。
   .  ヽ        }      優しいからこそ、強くなりたいと思っている。
      ヽ     ノ
                  ―――マーサの願った通りの子に、育っているのだから。



      ┏
        息子に体術や剣術を教えるたび、複雑な気分にならないでもない。過去の、自分を思い出すからだ。
                                                                    ┛

        ┏
          だが、それでもわしは嬉しいのだ。日に日に、教えたことを理解していく息子を見るのが。
                                                                ┛



                                                            ∧
                                                            |.l.|
               「わっ! とうさん、ほんとに                     、 ノ |.i.|
                もらっていいの!?     」                  (● ●宀
                                                   *(人__)rE)
                                                    ヽ   イ |
               「ありがとう! だいじにするね!」                 /   ノ
                                                    (|    |
                                                     ゝ l  |
                                                     `(_ノ



.

9 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:29:59 ID:e4LFvmMs [7/21]
840



        ┏
          ――― 一年と、数か月。たったそれだけしかいられなかった、わしと、マーサ。
                                                           ┛

      ┏
        それでも、毎日成長していくリュカを見るたびに、わしはマーサの姿を息子の中に見ることができる。
                                                                    ┛



               , ,.ノ  、
               l (> <            「わぁい!」
             (^ヽ,,,,(__人)^)
              ヽ \  .ノ /           「プックル、プックル!」
               Y     /
                |     |            「きょうから、いっしょにくらせるね!」
                |     |
                し. ⌒J



        ┏
          ―――それに気づくたびに、わしは思うのだ。 今度こそ、……遠慮するのはやめよう、と。
                                                                   ┛


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10 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:30:45 ID:e4LFvmMs [8/21]
841



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


                        「マーサ。…その、なんだ。」
      |////   (__人__)
      |         ノ        「―――いや、何でもないんだ…。」
      |     ∩ノ ⊃ }
     /ヽ   / _ノ }
     ( ヽ  /  / ノ
      ヽ “  /_|  |
       \__/__ /


               ┏
                 あの子が生まれた日に、―――言いたかったのに、言えなかったこと。
                                                             ┛
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


               ┏
                 伝えたいのに、伝えられず後悔するよりは…、と思うのだ。
                                                    ┛


.


11 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:31:46 ID:e4LFvmMs [9/21]
842



――――さぁ、サンチョ。お前もそろそろ休んでくれ。




                      ┏
                        これまでも、これからも。
                                       ┛


                 ┏
                   わしはリュカの、息子のそばにいようと思う。
                                              ┛


               ┏
                 たとえそのせいで、魔物との戦いが面倒なことになったとしても。
                                                        ┛


               ┏
                 わしができること、してやれること。全てを見せてやろうと思うのだ。
                                                          ┛


               ┏
                  あの子が……、一人で生きていけるように、なるまで。
                                                    ┛


                ┏
                   自分の母のことを聞いて、理解できるように…なるまでは。
                                                       ┛




                                              ―――はい。おやすみなさいませ…。


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12 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:32:53 ID:e4LFvmMs [10/21]
843



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                                          , - ────── - 、 、
                                         /                ヽ
                                       /                        \
                                        /    ,, 、、               \
                                     / __ノ′ `ヽ、__                l
                                    // ヽ     /´   `ヽ             |.
    「――――マーサァー――!!!」           l ``ヾ, lゞ 〃 l , -‐ ''"´ l             |
                                    |ヽ  ノ   ヾ ヽ、..  _ノ            |
                                   ,'⌒/´          ヾ'⌒``         |
                                   | l    j        ノ′           l
                                    l `ー-'´``ー---─ '″`ヾ             /
                                    |   ト、ノ),、、       ノ          /
                                     |   | ``´´        /           イ
                                     |   |    /⌒'⌒/            / l
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                                     |  |   /     /          ,.     |
                                     ゞ  `ー┴---一´        /     |
     ┏                               ヽ`ゝ、__,,,,, ,,         /  、ノ   ト 、.._
       「あの時」のように。                    \     __ , _,_ -‐ イ   /     ト、:.:.:`::-..,,_
                   ┛                   ,`ー--- --ーー    /   、′   /゙.:::.:.:.:.:.:.: . \
                                       /..::.:.:.:.:| ト      /′ ; ′   /...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:...\
                                           /´.:.:.:.:.:.:.:.l、         /´    /...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. \
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              ┏
                自分を殺してやりたいと思うような、悲嘆にくれないためにも―――…
                                                           ┛



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13 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:33:45 ID:e4LFvmMs [11/21]
844













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14 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:34:15 ID:e4LFvmMs [12/21]
845




                   ┏
                     ――――次の日。
                                 ┛


                  ┏
                    忙しい仕事にキリをつけ、息子の相手をした後。
                                                  ┛


                                              , -―- 、
                                             /     \
                                            /  \_   |
                                            (●) (●)   |
                       ただいま。               (_人__)    /
                                            l`⌒´    /
                       ……サンチョ? いないのか。   |      ヽ
                                            __!、____/  \
                                           /、 ヽ     r 、 ヽ
                                          ハ ヽ Y`l     |  >  Y
                                          { ヽ_ゾノ     | レi i i}
                                          `¨´  ヽ    ハ  `'''
                                               >   / ヘ
                                               /  /ヽ  ヘ
                                              _,/  / ご_ノ
                                             ( ヽ /
                                                 \__ノ



                    ┏
                      わしは再び仕事にとりかかろうか、と思っていた。
                                                     ┛

                 ┏
                   ラインハットに行くまでに、もう少しまとめておきたいことがあったからだ。
                                                               ┛

15 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:34:54 ID:e4LFvmMs [13/21]
846


トントン。

             ┏
               わし以外に誰もいない家の戸が、ノックされた。
                                             ┛



   / ̄ ̄\
  /   _ノ  \       ((村長かな?))
  |    ( ●)(●)
.. |     (__人__)
  |     ` ⌒´ノ       ……どうぞ。どなたかな?
..  |         }
..  ヽ        }
   ヽ     ノ
    .>    <
    |     |
    |     |
                                              ―――すいません、失礼します。


               ┏
                 どうせ村民の誰かかと思っていた。
                                       ┛

                   ┏
                      ……だが。
                              ┛


.

16 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:35:25 ID:e4LFvmMs [14/21]
847



               ┏
                 事前の約束もなく入ってきたのは、いつも通りの村民ではなく。
                                                       ┛


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   l               l    ノ!
   l               `ー‐ f r'
   l                  ノ'
   !                     /          ――――こちらは、パパスさんのお宅でよろしいですか?
   ,'                   /
 ̄ `ー -               /
        `  、        /
:.:.:.:.:.:...        、      /
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..      .:.:ヽ _ ´              ┏
ー- :.:.:.:.:.:.:.:..   ..:.:.:.:.:.:ヽ                  浅黒い肌。柔らかいが、隙のない動き。
    ` 、:.:.:.:.:.:.:...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ                                          ┛
       、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\
       ..:.`:.:、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ           ┏
      ..:.:.:.:.:.:.:.`:.:、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./              やや緊張した、言葉遣い。
                                                   ┛

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


                 ┏
                   今まであったこともない、青年だった。
                                           ┛


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17 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:36:10 ID:e4LFvmMs [15/21]
848



              ┏
                 何処かで、会ったような気もしたが…、
                                         ┛


    / ̄ ̄\
   / _ノ  ヽ、_ \
 . | ( ⌒)(● ) |      ああ、そうだよ。私がパパスだ。
 . |  (__人__)  │     ―――君は、だれかね?
   |   `⌒ ´   |
 .  |           |
 .  ヽ       /
    ヽ      /
    >     <
    |      |
    |      |


             ┏
               記憶をまさぐっても彼と同じ人物は当てはまらなかった。
                                                 ┛



.

18 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:36:43 ID:e4LFvmMs [16/21]
849





   l               l    ノ!
   l               `ー‐ f r'
   l                  ノ'
   !                     /          ――――僕は…
  ,'                   /
 ̄ `ー -               /
       `  、        /
:.:.:.:.:.:...        、      /
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..      .:.:ヽ _ ´              ┏
ー- :.:.:.:.:.:.:.:..   ..:.:.:.:.:.:ヽ                  彼は、言葉に詰まるように話し出す。
   ` 、:.:.:.:.:.:.:...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ                                          ┛
       、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\
       ..:.`:.:、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ           ┏
      ..:.:.:.:.:.:.:.`:.:、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./              その喋り方、その目つき。
                                 ―――何故だろう、初めて会う彼に、懐かしさすら感じるのは。
                                                                       ┛



.

19 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:37:38 ID:e4LFvmMs [17/21]



850



    ―――あなたの、息子です―――。



                                                   / ̄ ̄\
                                                 / _ノ  ヽ、_ \
               ┏                               . | ( ●)(● ) |
                 緊張した様子のまま、彼はわしにいった。      . |  (__人__)  │
                                          ┛      |   `⌒ ´   |
                                                .  |           |
                                                .  ヽ       /
               ┏                                  ヽ      /
                 嘘を言うはずもないような、澄んだ瞳で。         >     <
                                           ┛      |      |
                                                   |      |









          ┏
             誰かに、誰かに似ていると思わせる瞳で―――わしを一心に、見つめながら。
                                                             ┛


.

20 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:38:34 ID:e4LFvmMs [18/21]
はい。以上で、パパスの過去編、すべて終了です。
ありがとうございました。


次からはラインハット編。リュカの親友が、できますね。

21 名前:名前なんて無いだろ常識的に考えて[sage] 投稿日:10/05/14(金) 22:41:47 ID:s/64ke7Z [2/2]
乙乙
>>1ペロペロ

22 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:47:49 ID:e4LFvmMs [19/21]
乙ありがとうございます。

>>21
ペロペロはやめれwww 私は飴とかじゃないぞwwww

23 名前:名前なんて無いだろ常識的に考えて[sage] 投稿日:10/05/14(金) 22:49:52 ID:dOUmShqa
乙!
これだけパパスの内面に踏み込んだのは数あるDQスレでも珍しいですね

24 名前:名前なんて無いだろ常識的に考えて[sage] 投稿日:10/05/14(金) 22:56:58 ID:BcZ9prxk [2/2]
乙           ムシャムシャ

25 名前:名前なんて無いだろ常識的に考えて[sage] 投稿日:10/05/14(金) 22:58:45 ID:VMjOeGb1

このシーンをパパス視点だとどんな風になるか気になる

26 名前:名前なんて無いだろ常識的に考えて[sage] 投稿日:10/05/14(金) 23:00:46 ID:ZYuttZwx [1/2]
乙です!
うわああ……いよいよ、ラインハットへ向かう時が……

28 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 23:14:45 ID:e4LFvmMs [20/21]
<<作者からのお礼>>



             _,,. -─- .== -,..-‐、
          . _,厶-ク   \v`ヽ\´- ヽ      乙ありがとうございます。
         /   /  ,ハ   ハ  ハ   }
.        /    /イ  /ヽヘ/r、_},ハ //  ヽ     最終話の、ラストだけ小説から少しお借りしました。
        {イ /!仏ムヘ/   `ソイ リi //         本当は、もっとBADEND的な鬱話で終わらせる予定だったのですが、
        Vi ハ ○     ○.^ヾイ}.リ|    |     このラストを思いついて一気に修正することになりました。
        ハ/||ミ彡》、_,、_, ⊂⊃/ |ノ| |    |
         \トゞミゞ ヽ._)   / | }.|   |      99パーセント、オリジナルでしたがいかがでしたでしょうか。
          | |> ァr‐七⌒ |  |リ |   |      面白いが故に、とても難しく、そして楽しいパパスの過去編でした。
          | |/ {メ^く_/  |  |ヽ |   |
          | ト /:∧∨ 〉.|  ト   |   |      イメージと違う、と思った方もいるかもしれませんが、ご容赦ください。



            _,,. -─- .== -,..-‐、
          . _,厶-ク   \v`ヽ\´- ヽ
        /   /  ,ハ   ハ  ハ   }        パパスは書いていて実に味のあるいい親父です。
.        /    /イ  /ヽヘ/r、_},ハ //  ヽ       もうすぐ…と思うと、ラストに時間がかかってしまいまった。
       {イ /!仏ムヘ/ u. `ソイ リi //    |
        Vi ハ ─     ─.^ヾイ}.リ|    |        >>パパス視点で
        ハ/||ミ彡》、_,、_, ⊂⊃/ |ノ| |    |        それも考えたのですが、見ないのもお楽しみ、ということに
         \トゞミゞ ヽ._)   / | }.|   |        しました。息子視点では、また現れますけども。
          | |> ァr‐七⌒ |  |リ |   |
          | |/ {メ^く_/  |  |ヽ |   |         >>ラインハット
          | ト /:∧∨ 〉.|  ト   |   |         ああ、いよいよ少年編屈指のあれこれが詰まった
                                    シリーズになります…。
                                    親友になる「あいつ」は、もう皆さん想像がつきますよね?





31 名前:名前なんて無いだろ常識的に考えて[sage] 投稿日:10/05/14(金) 23:22:36 ID:ZYuttZwx [2/2]
>親友になる「あいつ」
だれだろうまるでよそうがつかない!

32 名前:名前なんて無いだろ常識的に考えて[sage] 投稿日:10/05/15(土) 01:45:36 ID:yDOaBGAz
おつでした、作者様!

小説版は読んだことがないんだけど、パパスとマーサがちゃんと笑顔になれる最後を期待してしまいました。
作者様はプロの物書きさん?
 

33 名前:名前なんて無いだろ常識的に考えて[sage] 投稿日:10/05/15(土) 15:27:26 ID:4wkLqHDe

あわわわ…来たよ…来ちゃったよ…小説版屈指の名シーンが…。

34 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/16(日) 00:01:22 ID:0lgnGe9e


            _,,. -─- .== -,..-‐、
          . _,厶-ク   \v`ヽ\´- ヽ      今晩は。作者です。
        /   /  ,ハ   ハ  ハ   }      ただ今からラインハット編の書きだめを
.        /    /イ  /ヽヘ/r、_},ハ //  ヽ     始めたいと思います。
       {イ /!仏ムヘ/   `ソイ リi //    |
        Vi ハ ○     ○.^ヾイ}.リ|    |    さて…どれだけ原作でどれだけのオリジナルで
        ハ/||ミ彡》、_,、_, ⊂⊃/ |ノ| |    |    とか分配を全く考えていない相変わらずの見切り発車です。
          \トゞミゞ      / | }.|   |    以前私が自分をアホの子といった理由が皆さんわかりますよね?
           | |> ァr‐七⌒ |  |リ |   |
          | |/ {メ^く_/  |  |ヽ |   |    でも頑張りますので、みなさんこれからもよろしくお願いします。
          | ト /:∧∨ 〉.|  ト   |   |




                                 >>だれだろう
                                   うそだっ! ぜったいしってるはんのうだっ!
            __,,. -─- .== -,..-‐、
          . _,厶-ク   \v`ヽ\´- ヽ       >>パパスとマーサがちゃんと笑顔に
        /   /  ,ハ   ハ  ハ   }        ……難しいです。原作小説では…(察してください)…ですので。
.        /    /イ  /ヽヘ/r、_},ハ //  ヽ        しかし、私はアンハッピーエンドよりハッピーエンドが好きです。
       {{イ /!仏ムヘ/   `ソイ リi //    |       二人には、何らかの形で、笑顔を。約束します。
        Vi ハ ==  =='. ^ヾイ} リ|   |        しかし親世代、なぜこうまで展開がハードなの。堀井雄二さまよ。
          ハ/||ミ | |、_,、_,  | |  / |ノ| .|   |
           \トゞ.| |. {  } .| |_./ | }.|   |      >>プロ…
          || ⌒)、._ ̄_ (´ j |  |リ |   |       きゃー!そんなことないっすよ!趣味でちょこちょこ書き物
          || |/ {メ^く_/   |  |ヽ |   |       をしたりしてるだけです。 でもマジうれしい。
          || ト /:∧∨ 〉.|  ト   |   |

                                 >>小説屈指
                                   続きは青年編で! しかもかなり後です!


35 名前:名前なんて無いだろ常識的に考えて[sage] 投稿日:10/05/16(日) 00:37:45 ID:NCaz2Ujl
>>続きは青年編で
仕方ない、読み返してくるかw

CDシアター版のパパスさんも格好いいんだよな…

36 名前:名前なんて無いだろ常識的に考えて[sage] 投稿日:10/05/16(日) 01:16:09 ID:e5poue3M
今日初めて読みました。非常に面白い。
作者さんのDQ5への想いが詰まってるのが伝わってきますよ。素晴らしい


37 名前:名前なんて無いだろ常識的に考えて[sage] 投稿日:10/05/16(日) 05:26:34 ID:PmSHMxTB
こんな面白いスレを見落としていたとは…

ラインハットも楽しみです

38 名前:名前なんて無いだろ常識的に考えて[sage] 投稿日:10/05/16(日) 08:06:29 ID:Cdw6Tado
ラインハット編は何周プレイしてもスゲエ辛いんだけど、
でもやっぱり5が個人的シリーズ最高傑作だと思うのは
やはりラインハット編あればこそなんだよなあ…
ドジッ娘の>>1がどう料理するのか、心から楽しみにしてます。

39 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/16(日) 19:45:59 ID:IvMoeSyw [1/32]
作者です、今晩は。


さっそくでなんですか、21時に27話、ラインハット編を投下したいと思います。
今回は1話です。投下ペースにやたら考えているつい最近。


>>35-38
ありがとうございます!嬉しすぎて涙でそう。頑張る原動力です!


>>CDシアター版のパパス
カッコよすぎて泣ける。惚れる。神谷さんの本気を見た。

>>ラインハット編
はい、作者も辛すぎますが大好きなところなのです。
最初にゲームでやった時もマジ泣きした記憶が。(SFCの時代)
どう料理していくか…頑張ります!


管理人※オリジナルってのが違和感無いのが凄いなぁ。
       最後のシーンは今まとめるために読み返して鳥肌立った。
       しかしリュカの親友になる「あいつ」……だれなんだろう


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