やらない夫は弱虫のようです 第五十八話 「本当の化け物」
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┏
今まで、いろんな悪意を受けてきた。
┛
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116 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:03:12 ID:tIirp6j+ [7/51]
1697
|::::| レ\ | \\ ∧ ヽ l | | | /
┏ |::::| | |l | ` \ トヘ _ - ア ノ人 | |./
逆らえるはずもないような圧倒的な悪意から、 |::::| | | l| |l| \ ヽ、 _ . ´ イ ヽ| |′
┛. └┘ | |∧l ||| ト ` ,. ' / |
八 | ヽ ||l | |> . _ ´ //..::.:|
\ \ |リ | | `T爪_//..::.::.::.:|
\ | | |>〔]‐< ::.::.::.::.:/
ノ | /イ/^l ト、\::.::./
┏
見る者を心底軽蔑しているだけの、
気にしさえしなければ大したことはない悪意まで。
┛
.
117 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:04:18 ID:tIirp6j+ [8/51]
1698
┏
だけどそれらは、殆どがはっきりとした「目的」に応じて起こる悪意だった。
┛
--─` ` ` ` `ヽ、. i
三 `iノ,
三 〃〃〃___ノ
彡 ,ィ《´`\ヽ 「 お前…モンタスに頼まれた奴だな…? 」
彡 ,':;:; ̄` `i
彡 !ィ :;:;:;:;:; く
彳 ト :;:;:;:; `ス
|! :| ## ,-─-- イ 「 ちくしょう…お前が来なければ、
|| (⌒ヽ! (_,,、-‐‐イ´ お前が引き受けさえしなければ 」
川 ヽ > \_ |_ノ^>
川_`'=-‐'''"⌒`´⌒`''"´⌒ヽ、
/⌒` \
/ \
| ヽ
| ';
| |
| || ノ
┏
理解なんかはしたくない。
が、まだ判りやすい悪意だったんだ。
┛
.
118 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:05:10 ID:tIirp6j+ [9/51]
1699
┏
しかし…ここまで、妙なまでにねじくれた悪意は。
┛
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「 ―――ちくしょう! お前なんか…! 」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┏
強い意志や目的もなく。
―――ただ、ねじれきっている、だけの悪意は。
┛
┏
俺はまだ、受けたことがなかったんだ。
┛
.
119 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:06:01 ID:tIirp6j+ [10/51]
1700
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120 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:06:25 ID:tIirp6j+ [11/51]
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―――ベホイミ。
.....:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:.....
. .:;:;:;:;:;:;:;:;:;:.:;:..;:.:..:;:.:;:;:;:;:;:;:;:;:;:. .
,:;:;:;:;:;:;:;:;:.:.:.:.:.. .:. .:. .:. ..:.:.:.:.:;:;:;:;:;:;:;:;:.
.:;:;:;:;:;:;:.:.:.:.:.:... .. .. . . ..l⌒l ...:.:.:.:.:.:;:;:;:;:;:;:.
.:;:;:;:;:;:.:.:.:.:.:.:... ..l⌒l | |.. ...:.:.:.:.:.:.:;:;:;:;:;:.
.:;:;:;:;:;:.:.:.:.. .. ', ', | | .. ..:.:.:.:;:;:;:;:;.
.:;:;:;:;:.:.:.:... . ', \ | | , -、..:.:.:.:;:;:;:;:.
.:;:;:;:;.:.:.:..r- 、 \ ー' ヽ / / . ..:.:.:;:;:.
.:;:;:;:;.:.:.:.. .\ ` ー- _,ゝ `フ /_ __:.:.:;:;:.
.:;:;:;:;:.:.:.:... . ー-、 _ / 〈 ヽヽ
.:;:;:;:;:;:.:.:.r―――' / / l ;:;:;:;.
.:;:;:;:;:;:.:.:丶-----く / /
.:;:;:;:;:;:;:.:.:.:.:.:... .. ..\ / _ ィ/
,:;:;:;:;:;:;:;:;:.:.:.:.:.. .:. .:.ー一'  ̄ ̄  ̄.
. .:;:;:;:;:;:;:;:;:;:.:;:..;:.:..:;:.:;:;:;:;:;:;:;:;:;:. .
.....:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:.....
l /
′/
__
_, -' ´___\
, '´ _,-'´, -――- ゝ、
/ ./ .;;#::: l ト、\
\__/ /l / / , /l'| ト、l ', ……う?
l | / l/|7ニイ三〃| -L.l !
l | l | (─)三(●).;;#:::|
彡彡彡 (__人__) u .ミミ
\ .;;#::: `⌒´ /
/ \
.
121 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:07:35 ID:tIirp6j+ [12/51]
1702
┏
俺がベホイミを唱えると、モンタスはすぐに気付いた。
┛
__
_, -' ´___\
, '´ _,-'´, -――- ゝ、
/ ./ / l ト、\
\__/ /l / / , /l'| ト、l ', リュカ…さん。
l | / l/|7ニイ´/〃| -L.l !
l | l | (○) / (●) .」 |
彡彡彡 (__人__) :;:;:#.ミミ
\ :#;:; `⌒´ /
/ ̄ ̄\
/ _ノ ヽ、_ \
. | ( ●)(● ) |
. | (__人__) │
大丈夫か?モンタスさん。 | `⌒ ´ |
. | |
. ヽ /
ヽ /
> <
| |
| |
┏
ここは、村長の家の、客間の一室。
┛
.
122 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:09:22 ID:tIirp6j+ [13/51]
1703
/ ̄ ̄\
/ ヽ、_ \
. ( (● ) |
. (人__) | 村長から…、話は聞いたよ。
|⌒´ |
. | | モンタスさん…俺をかばってくれたんだって?
. ヽ /
ヽ /
.> <
| |
| |
┏
俺が村に戻ってきて、
モンタスと、もう一人の男が倒れているのを見つけ。
┛
.
123 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:10:05 ID:tIirp6j+ [14/51]
1704
--─` ` ` ` `ヽ、. i
三 `iノ,
三 〃〃〃___ノ
彡 ,ィ《´`\ヽ
彡 ,':;:; ̄` `i 「 るっせいこの余所者村長!! 」
彡 !ィ :;:;:;:;:; く
彳 ト :;:;:;:; `ス 「 おらはもともと余所者のお前が気に入らなかったんだぁ!! 」
|! :| ## ,-─-- イ
|| (⌒ヽ! (_,,、-‐‐イ´
川 ヽ > \_ |_ノ^> 「 お前は、このカボチを変えた! 」
川_`'=-‐'''"⌒`´⌒`''"´⌒ヽ、
/⌒` \ 「 だから、仕返ししてやっただけさぁっ!! 」
/ \
| ヽ
| ';
| |
| || ノ
┏
もう一人の男が、開き直ったように
叫んでいるのを聞いて。
┛
.
124 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:10:55 ID:tIirp6j+ [15/51]
1705
_____
rァ'フ"´::::::::::::::::::::::`ヽ
{f〃::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
ヾ ;::、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾ
/- l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l 「 …聞いたな、リュカ。 」
l、_ l三ミ、:::::::::::::::::::::::::::::::::l
〉ァ l::::ミミミ::::::::::::::::::::::::::::: 「 犯人は、この村の者だったのだ。 」
r'`ー jl´`,::::::::::::::::::::::::::::::::::::
〔__ヽ i!ー'::::::::::::::::::::::::::::::::::::
l ヽl:::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 「 ―――村を少しでも発展させようとしたわしが、
ゝ リルラリルハ -‐リlハノヽ
-──-<._x x x x x どうやら原因だったようだよ…。 」
/x x x x x x x x x x x x x
.l x x x x x x x x x x x x x
.l x x x x x x x x x x x x x
┏
力を落とし、悲しそうに…ひたすら悲しそうに。
呟くように言うのを聞いて――――
┛
.
125 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:11:53 ID:tIirp6j+ [16/51]
1706
__
,.-''";;;;;;;;;;``'ヽ、
/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ、
/;;;;、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;、
,!;;;!゙`''~^~ァrr-'゙`'´''ラヘ;;;!
|;;;| ノリ ミ;;;|
_ゞ;! r─-- 、 ,rェ--- 、ミ;リ
!ヘl;|. ぐ世!゙`` ,ィ '"世ン 「ヽ 「 考える以上にドス黒いものが、現実にはあるってことを。 」
!(,ヘ!  ̄'" |:::.`  ̄ ,ドリ
ヾ、! !; ,レソ 「 お前さんより知ってることもあるのさ。 」
`| ^'='^ ム'′
,rト、 ー- ─-: /|
_../ i| \ === ,イ.:ト、
/ i| ゙、\ ; /リ.:;!:::\、_
゙! ゙、 `ー─''゙:::;:'::::|::::::::::\
゙、 :::/::::::|::::::
`ヽ、 ゙、 ./ .| ,-、、
┏
情けないことに、ほんとに情けないことに。
俺はその時初めて、二人が言っていた言葉の意味を悟ったのだった。
┛
,. -- 、
〃´ ̄ ``
{li
__ -- 、ヘ ,. -- . ー‐‐へ
´ . ´ `丶´ ̄ヽ`ヽ
/ , ' , ' ヽ、 \ ̄\ ト、
/// , ' / 、 \ ヽ メ 〉.
「 ……スミスさんは、あなたのことを / / , ' , '. / i ト、ヽ、 \ V メ 〉
思って、そう言ってるんです。 」 / / //// // ll l ヽ \ ヽ ヽ メ、
/ ////_/_i l ll l ,.. >== ヽ. ヽ V//
「 あなたを傷つけたくないから。 」 / .l ll l | ,ィテくj ,イ j::::ハハへ ヽVヘ.
l | ll l l ' |r';:jト. |.仆ノノ N ヽ ヽ´ ̄`ヽ.
八| l lト、ー‐'. ´~~´ ,イ メ/ヽ ヽ/ /,. -- '´ ̄ ̄ ̄`ヽ.
| l l| i\ ___, |メ、ヽ ヽ V.メ. __ ,. -- '´ ̄ ̄ `` ´
| l l| \ / |´⌒ヽ\ Vハー -x
从 ハ ヽ i > _ _ / __ .. =ヘj ノ V V⌒ Xこ二二フ
リ V ヽヽ 「 ┐r‐ ´__ >=ー ‐‐ ‐‐ 、
,. --- / ̄ ̄ ̄ ヽ / \\ `ヽ.
.
126 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:14:00 ID:tIirp6j+ [17/51]
1707
__
_, -' ´___\
, '´ _,-'´, -――- ゝ、
/ ./ / l ト、\
\__/ /l / / , /l'| ト、l ',
l | / l/|7ニイ´/〃| -L.l ! うう…まさか、まさかこんな事実だったなんて。
l | l | o゚⌒ ⌒゚o.」 | おら、もうリュカさんになんてお詫びを言ったらいいですぉ。
彡彡彡 :(__人__).ミミ |
\ ` ⌒´ /
┏
俺の顔を見たとたんに申し訳なさげに謝ってくるモンタスに、
俺は責める気になどなれなかった。
┛
/ ̄ ̄ ̄\
/ \
./ ヽ
.l l 謝らなくていいよ、モンタスさん。
l l
.l l あなたは何も―――悪くないんだから。
ヽ l
ヽ l
.) __,,../
/===、_〈
/ \
/ ヽ
┏
だって。モンタスも、騙されていたんだから。
単なる腹いせのための、くだらない仕返しともいえないものの…ために。
┛
.
127 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:14:56 ID:tIirp6j+ [18/51]
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┏
別に、複雑な事情があるわけじゃない。
┛
|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:;;:;:;;:;:;:;::;;:;::;:;;::;:;:;;:::::;:::::::::;::;:::::::::::::::::::;;:::::::::::::::::::;::;::;:;:;:;:;;:;::;;:;;;;
|;;;;;;:::;;;::::::::: :┌───┬───┬───┬───┐:::::::::::::;;:;;::;;:;:
|;;:::;::::;::::::::: ::│::::;::::::;;;;;::|| ;; ;:::: : ::::|| ;; ;:: ::: ::::||::::: ;; ;:: : :| : :::: :::::::::;::: ほら、モンタスさん。
|::::::::::::::::::: :::│:: ::;:: ::::: :|| ;; ;:::: : ::::|| ;; ;:::: : ::::|| ::::: ::: ;; ::| : :: ::::::::::::: まだ休みなよ。
|:::::::::: :: : │:: ::;:: ::::: :|| ;; ;:::: : ::::|| ;; ;::::: : :::||::: : ;; ::: :::| :: ::::::::: :::::
|:::::::: : : : │:: ::;:: ::::: :|| ;; ;:::: : ::::|| ;; ;::::: : :::||::: ::: : : ::::| : :::::::::
|: : : :: : │:: ::;:: ::::: :|| ;; ;:::: : ::::|| ;; ;::::: ::: :||:::: : :: :: :::|: :: ::::::: 回復呪文は、
|: : iニニニニニニニニニニニニニニニニニニi ::::::: 傷と体力の同時回復は
| ,____ ____,__. : :: できないんだからさ。
| ./ / / /i | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| .
|__,||ニ |二二二二| ニ|| :|_ /:⌒:⌒´:ヽ⌒:⌒:⌒ハ______
/ ::||ニ |/ | ニ||/ / ..:.; /.. ::.ノ ..:ヽ./丿..................:::::::::: 村長も休んでていいって。
::::::::::::...... ̄ ̄'  ̄ ̄ / :.;:...ヾヽ.::.::.( ...:... /::/ ............:::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.............../..:.. ..:. ..::.:. ..:.. /::/ ::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: l⌒'⌒´⌒'⌒´⌒'⌒´l,,;;/ :::::::::::::::::::::::::::::::::::
|,,|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄'|,,||,/
┏
十人に聞いたら十人が、「なんだそんなことで」と、
呆れるような、きっとそんな理由。
┛
.
128 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:15:56 ID:tIirp6j+ [19/51]
1709
/ ̄ ̄\
. / _ノ ヽ
| ( ⌒)(⌒) じゃ俺、村長と少し話すことがあるから。
. | (__人__)
| ` ⌒´ノ ほんとに休んでるんだぞ。
ン }
. /⌒ヽ、 _ノ
/ ノ \__ィ ´
/ / '|. ┏
( y |. ものすごく単純に言えば、今回のことは。
. \ \ |
\ィン、__)、 前村長の娘婿としてやってきた村長へのやっかみが原因だった…らしい。
┛
__
_, -' ´___\
, '´ _,-'´, -――- ゝ、
/ ./ / l ト、\
\__/ /l / / , /l'| ト、l ', ありがとう…ありがとうですぉ。
l | / l/|7ニイ´/〃| -L.l !
l | l | o゚⌒ ⌒゚o.」 | リュカさん…。
彡彡彡 :(__人__).ミミ |
\ ` ⌒´ /
┏
元々の、今よりもっと貧しい、何もないカボチ村を、
未だ貧しいとはいえ、それなりに知名度のある野菜の産地に仕立て上げた―――
村の誰より頑張って、動き回っていた、村長への。
┛
.
129 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:16:49 ID:tIirp6j+ [20/51]
1710
┏
余所者。
村には元々いなかった人間。
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| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.|
| |
| | パタン。
| |
| |
| |
| |
| |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┏
その人の人間性や、その人がする行動の如何にかかわらず。
たったそれだけの理由で、何もかもを認めたくない、という考えを持つ人間は、確かにいる。
┛
.
130 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:17:47 ID:tIirp6j+ [21/51]
1709
/ ̄ ̄\
/ _ノ ヽ
| ( ●) |
| (__人)
(( | ⌒ノ ┏
ン ノ 特に人の少ない、だから周りと協力しないと生きていけない
/⌒ヽ、 _ノ
/ ノ \__ィ ´ 田舎にはよくある、強い結束とそれ以外への排他。
/ / '|. ┛
( y |.
\ \ |
\ィン、__)、
.| ij ,ノ
| |;;;;;:;;;;:;::::::::::::::::::::::::::::::::::| |
| :;. |;;:;;;;:;:::::::::::::::::::::::::::::::::::::| |
| |;:;:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| |
| .: |;:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| |
| | . ::::::::::::::::::::::::::::::::::::| |
| , | ...:::::::::::::::::::::| |
| ' | . ::::::::::::::::| | .
| | :::::::::::::| |
| | . ' :::::::| | ,
| | ::::| |
|_____________| , :l.,|___
|
| '"
______| .:::::'; .:
,';:. ,;::' .:
' '
┏
俺の故郷、サンタローズだって少なからずはあった、
知らないものに対する警戒心。それはある意味、生きていくためには必要なことだ。
┛
.
131 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:18:46 ID:tIirp6j+ [22/51]
1710
--─` ` ` ` `ヽ、. i
三 `iノ,
三 〃〃〃___ノ ┏
彡 ,ィ《´`\ヽ あの男もそんな気持ちを強く持つ一人。
彡 ,':;:; ̄` `i
彡 !ィ :;:;:;:;:; く 貧しくても、自分が知る者たちだけがそばにいることだけを望み、
彳 ト :;:;:;:; `ス
|! :| ## ,-─-- イ どれだけ村長が村のために尽くしても、むしろ気に入らなかった
|| (⌒ヽ! (_,,、-‐‐イ´
川 ヽ > \_ |_ノ^> ―――らしい。
川_`'=-‐'''"⌒`´⌒`''"´⌒ヽ、 ┛
/⌒` \
/ \
| ヽ
| ';
| |
| || ノ
┏
自分を知る者だけがそばにいて、
自分が知る同じ毎日を過ごすことを望み。それ以外の一切を、拒否しようとしていた。
┛
.
132 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:19:49 ID:tIirp6j+ [23/51]
1711
┏
化け物騒ぎも、最初は単なる思いつきだったらしい。
ある日の夜、村の子供が、たまたま外で、
見かけない大きな(たぶんプックルのことだ)ものとじゃれあってるのを見て。
┛
_,.-―-----ー--、,_
,:' ノノ/
イ ノ
i r'`''''ーー--、,-:-ー,゙‐'´
l i | ) i
l i '´`''ー --‐'l 「 ………。 」
l ミミ `( 。j ( 。)
{ i^ゝノヽ、 ̄ ` ' イ
ソi l | |
レゝヽ、 !
ノ人 i .-─、 !
| ゝ ノ
l `''‐--t'
/`''ー-、 `''-、
_,,,.-'"''ー- / ヽ、 /`''ー
┏
化け物が現れ、畑を荒らしたことにして。
作物をめちゃくちゃにしてやれば、気分もすっきりするし、
村長にもいい面当てになる、って。
┛
.
133 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:20:39 ID:tIirp6j+ [24/51]
1712
┏
村長の頑張りで、遠くラインハットまで知られることになった
カボチの野菜。
┛
,----、l´  ̄`l ,---、_
,‐'´ ̄`` 丶、 l`  ̄´l ,-‐'´  ̄``丶、
/ _,,,、-‐ー'゙i、__ノ__-‐ー -、 丶、
/ / /´ ヽ ヽ 丶
/ / / ヽ ヽ ',
.l / l l ', l
| i l l l l
.l l l l l l
l l. l l l l
l l. l l l l
l l l l l l
ヽ ', l l / /
ヽ ヽ l l / / ┌────────┐
丶、 ヽ . ', / / /. │. カボチ名産. │
 ̄~~ヽ 、_\,,_ _,//‐‐‐ー'''´ │.特大ドテカカボチャ│
 ̄ `──'''´  ̄ └────────┘
┏
でも男は、気に入らなかったらしい。
自分たちが努力して作り出した野菜だったのに。
村長への反感が、村長がする全てのことに対する拒否につながったらしい。
┛
.
134 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:21:40 ID:tIirp6j+ [25/51]
1713
┏
村長が苦しめばいい。
そうして男は畑を、化け物がしたように荒らして、
噂を流した。
┛
┏
実際魔物らしきやつ(プックル)は出ていたし、
魔物を利用することには何の気持ちも抱かなかったから。
┛
.,、,._,.、_.,,_..,.,、,._,.、_.,,_..,.,、,._,.、_.,,_..,.,、,._,.、 _.,_,、,._,.、_.,,_..,.,、,._,.、_.,,_..,.,、,._,.、_.,,_..,.,、,._,.、_.,_
:ヾ ;., ;;. .., ,; .: ヾ,,。, ::;;, ;.. :ヾ ;., ;;. .., ,; .: ヾ,,。, ::;;, ;..
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ヾ::: ################ :::;; ;;: ヾ::: :;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:; :::;; ;;:
;;: ,,。, ::;;, ;;ヾ . ;;: ,,。, ::;;, :;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;
;;ヾ ;; :::;; ..,:: ::; ヾ .;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;;; :::;; ..,:: ::; ヾ .;;;。
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、., `゙" 、., :;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;., . ヽ|〃################;:;:;:;:
_ -, ;:_ .:;:;:;:;:;:;:;:;.-:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:; wv_,..-: _.;_ -, ;:_ ...;_ wv_,..-: _.;
:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:; ~ :;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;
~ ::::::........ :;:;:;:;:;:;:;:;;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:; ...,,;;;: ~:.......;;::....
┏
迷信深い村民たちはすぐに信じたし、
化け物のせいにしておけば自分が疑われることもない。
せいぜい困ればいい。村長が困る顔が見たかった、と。
┛
.
136 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:23:29 ID:tIirp6j+ [27/51]
1714
┏
男にとって計算外だったのは、
村長が男が思うよりずっと賢い人だったこと。
┛
, , , -‐==- ._
/.//イイ≦三≡=‐=‐-.._
i .川/〃イ三≧三三二≧、
, -ゝlllllヘヘヘへミミミミミ、ミミ、、ミ
イイフジ゙゙'' ヘ. \\`ヾ゙゙三ミミヾヾミ
´イ// / ,イ´ヽ ` ヾ 、`ヾミミミ
llレ__` { ´ _,,イ二ヽ ヾミミ、 ヽヾミミ ┏
{三≧ =≦竺o='' 三ミミ、ミミ、ミミミ 事態を重く見た村長は、
.〉ー ゚' 、 ノ 三ミ、ミミ、ミミ、ミ
.( `_/.. `¨ 三三F lミヾミミ 化け物を何とかしようとすぐに手を打とうとした。
l ( ___)ヽ 、 三-、 .リヽヾヾヾ、 ┛
l/  ̄__ _ `ー、 .三 ' /川川ハハヾ
l ´ _ ` l ゝ-イ川 川川ハハ
l ¨ ___ ノノノノノ川 l || l i ハ
ゝ._ __ 、二ンノイノノノ川 川 l川
Т  ̄ // `ーイノノノノハノノハノノ
r‐‐- - -┴────-==─イイノノハノハ
jl`ヽ: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
ノj ヽ: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
┏
村の責任を預かる人としては当然の対応だと思う。
村長の才腕に村の行く末がかかっているのなら、尚更に。
┛
.
137 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:24:16 ID:tIirp6j+ [28/51]
1715
┏
村長が何とかしようと考えている、と聞いて動いたのが、モンタスだった。
┛
__
_, -' ´___\
, '´ _,-'´, -――- ゝ、
/ ./ / l ト、\
\__/ /l / / , /l'| ト、l ', 「 じゃあ誰か強い人を雇って、
l | / l/|7ニイ´/〃| -L.l ! 化け物を退治してもらりゃあいいですぉ! 」
l | l | (○) / (●) .」 |
彡彡彡 (__人__) .ミミ 「 ポートセルミにいるグレンなら、いろんな人をすってるはず。
| u. `Y⌒y'´ | おらが、紹介してもらいますぉ! 」
\ ゙ー ′ ,/
/⌒ヽ ー‐ ィヽ
/ rー'ゝ 〆ヽ
/,ノヾ ,> ヾ_ノ,|
| ヽ〆 |´ |
┏
村でもそんなに多くない、村長を信望するモンタスが動くことは、
ある意味当然の流れだったかもしれない。
┛
.
138 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:25:10 ID:tIirp6j+ [29/51]
1716
┏
そして、俺たちが雇われることになり、
俺たちは「魔物のすみか」に向かった。
┛
_,,,.-―-----'ー-、,
,.‐'"´ `'ヽヽ、
イ )ノ
r ノ
〈 r' `''ーー--,-、,_,,,.-―''' ┏
i | | ヽ、 `、 「魔物のすみか」に化け物が、ということまでは男は噂にしなかったらしいが、
l | ,.‐'`''--、 )__.j.,
レミ ノ ,.‐'`''‐-`'' _,,,.-―'l_,, (それと関係なくプックルは村に来ていたから)
( ニミ | ( しj (_(し))
`、 ( `、l ヽ、  ̄ | イ その事実さえも、男には都合がよかったらしい。
l | i ┛
|`''‐、 ) |
||__,_i ,,,.-─‐、 |
ゝ、  ̄ ̄ |
| `''‐-、___ ノ
| | `、
-:''"゙`''ー-、, `''‐-、
-:''"゙ /\ / `''‐、l
/`'ー-、, / \
く } 、
┏
「魔物のすみか」とよばれるようなところに行くようなバカはいないだろうし、
何より、行ったとしても…「帰ってこられない可能性が高いだろうから」。
┛
.
139 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:27:13 ID:tIirp6j+ [30/51]
1717
┏
俺たちが「魔物のすみか」の中で化け物を探している時に。
┛
--─` ` ` ` `ヽ、. i
三 `iノ,
三 〃〃〃___ノ
彡 ,ィ《´`\ヽ
彡 ,' / ̄` `i
彡 !ィ /゚) く 「 ったくとんだバカもいたもんだよ…へへっ 」
彳 ト `‐ `ス
|! :| ヽ ,-─-- イ 「 命あっての物種だってのになぁ。何信じてんだか。 」
|| (⌒ヽ! (_,,、-‐‐イ´
川 ヽ > \_ |_ノ^> 「 まあ俺たちに関係のない奴らだ、たとえ死んでも… 」
川_`'=-‐'''"⌒`´⌒`''"´⌒ヽ、
/⌒` \
/ \
| ヽ
| ';
| |
| || ノ
┏
俺たちのことを、男は一人でいるときにそう呟いたらしい。
それを、たまたま聞いていたモンタスが…男に詰問。
┛
┏
現在に―――至る、ということらしい。
┛
.
140 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:28:24 ID:tIirp6j+ [31/51]
1718
トントン
―――失礼します。
/ ̄ ̄\
/ _ノ ヽ、.\
| (●)(●) .| モンタスさんが気付きました。
! (__人__) |
, っ `⌒´ | もう少し休めば、大丈夫だと思います。
/ ミ) /
./ ノゝ /
i レ'´ ヽ
| |/| | |
_____
rァ'フ"´::::::::::::::::::::::`ヽ
{f〃::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
ヾ ;::、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾ
/- l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l ……ああ。
l、_ l三ミ、:::::::::::::::::::::::::::::::::l
〉ァ l::::ミミミ::::::::::::::::::::::::::::: すまないな、リュカ。
r'`ー jl´`,::::::::::::::::::::::::::::::::::::
〔__ヽ i!ー':::::::::::::::::::::::::::::::::::: お前に介抱まで頼むことになってしまった。
l ヽl::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
ゝ リルラリルハ -‐リlハノヽ
-──-<._x x x x x
/x x x x x x x x x x x x x
.l x x x x x x x x x x x x x
.l x x x x x x x x x x x x x
.
141 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:28:58 ID:tIirp6j+ [32/51]
1719
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ●)(●) いいえ、村長。
. | u. (__人__)
| ` ⌒´ノ 回復呪文は得意なほうですし、気にしないでください。
. | }
. ヽ }
ヽ ノ
i⌒\ ,__(‐- 、
l \ 巛ー─;\
| `ヽ-‐ーく_)
. | l
┏
すっかり村長は気落ちしてしまっている。
┛
_____
rァ'フ"´::::::::::::::::::::::`ヽ
{f〃::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
ヾ ;::、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾ
/- l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l いや。そういうことではないのだ。
l、_ l三ミ、:::::::::::::::::::::::::::::::::l
〉ァ l::::ミミミ:::::::::::::::::::::::::::::
r'`ー jl´`,:::::::::::::::::::::::::::::::::::: 村とは本来縁のない若者に、面倒を押し付けた挙句に、
〔__ヽ i!ー':::::::::::::::::::::::::::::::::::: こんな結果になるとはな。
l ヽl:::::::::::::::::::::::::::::::::::::: しかもあいつはあんな暴言まで…。
ゝ リルラリルハ -‐リlハノヽ
-──-<._x x x x x 本当にすまないと思っている…。
/x x x x x x x x x x x x x
.l x x x x x x x x x x x x x
.l x x x x x x x x x x x x x
.
142 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:30:00 ID:tIirp6j+ [33/51]
1720
/ ̄ ̄\
/ ノ ヽ \
| ( ●) (●)| 気にしていないと言えば嘘になりますが…、
| (__人__) |
| ` ⌒´ |
| | でも村長、それはあなたが言ったことではありません。
ヽ /
_,,ゝ (,_
/´ `ー-一´`ヽ
/ 、 , |
/ ノ | l
┏
今、男は物置に普段使っているという
倉庫の中に、見張り付きで閉じ込められている。
┛
_____
rァ'フ"´::::::::::::::::::::::`ヽ
{f〃::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
ヾ ;::、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾ
/- l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l いや、村の者の行動の責任は、やはりわしにあるのだよ。
l、_ l三ミ、:::::::::::::::::::::::::::::::::l
〉ァ l::::ミミミ:::::::::::::::::::::::::::::
r'`ー jl´`,:::::::::::::::::::::::::::::::::::: だから、せめて礼と、詫びを入れさせてくれ。
〔__ヽ i!ー'::::::::::::::::::::::::::::::::::::
l ヽl::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
ゝ リルラリルハ -‐リlハノヽ
-──-<._x x x x x
/x x x x x x x x x x x x x
.l x x x x x x x x x x x x x
.l x x x x x x x x x x x x x
┏
普段村長をそれほど良く思っていなかったらしいほかの村民も、
今では自分たちの生命線になっている野菜をめちゃくちゃにされて、
原因を知った今、男を許せなくなったらしい。
┛
.
143 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:33:18 ID:tIirp6j+ [34/51]
1721
r―-、__r―-、
|―‐z__,r:、__)
| | / /___r-、
>―-、__ノr―‐┴'′ さっきお前は、グレンへの手紙しか受け取らなかったが…。
,. -‐'''" ̄ ̄`―〇ニニニヽ
/ \ `〇 やはり…、
| ヽ この、…合わせて三千ゴールドを。受け取ってほしいと思っている。
| |
\ /
\________/
┏
村長は俺に、金のはいった袋を渡そうとした。
┛
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ●)(●) いえ…、詫びはともかく、礼に値することは
. | (__人__) 俺はしていません。
| ` ⌒´ノ
. | }
. ヽ }
ヽ ノ mm
/  ̄ ̄ ̄ つノ
| | ̄ ̄ ̄
.
144 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:33:55 ID:tIirp6j+ [35/51]
1722
_____
rァ'フ"´::::::::::::::::::::::`ヽ
{f〃::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
ヾ ;::、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾ いや。
/- l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l
l、_ l三ミ、:::::::::::::::::::::::::::::::::l わしがそれを渡したいのだよ。お前に。
〉ァ l::::ミミミ:::::::::::::::::::::::::::::
r'`ー jl´`,:::::::::::::::::::::::::::::::::::: 金は命さえ無事なら稼ぐこともできるだろう。
〔__ヽ i!ー'::::::::::::::::::::::::::::::::::::
l ヽl:::::::::::::::::::::::::::::::::::::: それに、お前は…その時はそうだとわしも信じていたが、
ゝ リルラリルハ -‐リlハノヽ 村の者の嘘に振り回された被害者だ。
-──-<._x x x x x
/x x x x x x x x x x x x x
.l x x x x x x x x x x x x x
.l x x x x x x x x x x x x x
┏
村長はあまり俺を見ようとしない。
…だけど。俺には、村長の感情が目に見えて判るようだった。
┛
_____
rァ'フ"´::::::::::::::::::::::`ヽ
{f〃::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
ヾ ;::、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾ
/- l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l
l、_ l三ミ、:::::::::::::::::::::::::::::::::l
〉ァ l::::ミミミ::::::::::::::::::::::::::::: これはわしの我儘かもしれない。
r'`ー jl´`,::::::::::::::::::::::::::::::::::::
〔__ヽ i!ー':::::::::::::::::::::::::::::::::::: だがその金を、受け取ることでわしの気を…
l ヽl::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
ゝ リルラリルハ -‐リlハノヽ
-──-<._x x x x x 少しでも楽にさせてくれないか…。
/x x x x x x x x x x x x x
.l x x x x x x x x x x x x x
.l x x x x x x x x x x x x x
145 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:35:01 ID:tIirp6j+ [36/51]
1723
rァ'フ"´::::::::::::::::::::::`ヽ
{f〃::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
ヾ ;::、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾ ┏
/- l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l 俺はこの時、村長に何と声をかければ
l、_ l三ミ、:::::::::::::::::::::::::::::::::l
〉ァ l::::ミミミ::::::::::::::::::::::::::::: 良かったんだろう。
r'`ー jl´`,:::::::::::::::::::::::::::::::::::: ┛
〔__ヽ i!ー'::::::::::::::::::::::::::::::::::::
l ヽl::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
ゝ リルラリルハ -‐リlハノヽ ┏
-──-<._x x x x x 村の為に頑張った自分の行動の結果が、
/x x x x x x x x x x x x x
.l x x x x x x x x x x x x x 村民の裏切りという形で出てしまったこの人に対して。
.l x x x x x x x x x x x x x ┛
┏
俺はプックルと再会できた。ガンドフも仲間になった。
親父の剣を見つけることもできた。
だけど――――、この人は、失うばかりで…何一つ、得ることがなかった。
┛
.
146 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:37:23 ID:tIirp6j+ [37/51]
1724
/ ̄ ̄\
/ ヽ、_ \
. ( (● ) | 村長。
. (人__) |
r-ヽ | 確かに「化け物」はいませんでした。
(三) | |
> ノ /
/ / ヽ / でも…、俺は、あの「魔物のすみか」で。
/ / へ> <
|___ヽ \/ ) 十年ぶりに、友達に再会したんですよ。
|\ /|
| \_/ |
, , , -‐==- ._
/.//イイ≦三≡=‐=‐-.._
i .川/〃イ三≧三三二≧、
, -ゝlllllヘヘヘへミミミミミ、ミミ、、ミ
イイフジ゙゙'' ヘ. \\`ヾ゙゙三ミミヾヾミ
´イ// / ,イ´ヽ ` ヾ 、`ヾミミミ
llレ__` { ´ _,,イ二ヽ ヾミミ、 ヽヾミミ …友達、とな?
{三≧ =≦竺o='' 三ミミ、ミミ、ミミミ
.〉ー ゚' 、 ノ 三ミ、ミミ、ミミ、ミ
.( `_/.. `¨ 三三F lミヾミミ
l ( ___)ヽ 、 三-、 .リヽヾヾヾ、
l/  ̄__ _ `ー、 .三 ' /川川ハハヾ
l ´ _ ` l ゝ-イ川 川川ハハ
l ¨ ___ ノノノノノ川 l || l i ハ
ゝ._ __ 、二ンノイノノノ川 川 l川
Т  ̄ // `ーイノノノノハノノハノノ
r‐‐- - -┴────-==─イイノノハノハ
jl`ヽ: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
ノj ヽ: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
.
147 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:37:57 ID:tIirp6j+ [38/51]
1725
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ ええ。
| ( ー)(ー)
. | (__人__) 十年ぶりに、再会した…「魔物の」友達です。
| ` ⌒´ノ
. | nl^l^l
. ヽ | ノ
ヽ ヽ く
/ ヽ \
/  ̄ ̄\
/ ノ ヽ
|:::::: (● ) あなたが前俺に言った通り、俺には魔物を供とする
. |::::::::::: (__人) 素質があるようです。
|:::::::::::::: ⌒ノ
. |:::::::::::::: } …でも、不思議ですね。
. ヽ:::::::::::::: }
ヽ:::::::::: ノ 俺の友達である「魔物」よりも…あの男のほうが、
/:::::::::::: く より「化け物」に見えました。
|:::::::::::::: |
|:::::::::::::::| |
.
148 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:38:34 ID:tIirp6j+ [39/51]
1726
┏
あの後。さんざん開き直ったあとに。
俺に気付いた、男が、俺に言ってきたのだ。
┛
--─` ` ` ` `ヽ、. i
三 `iノ,
三 〃〃〃___ノ
彡 ,ィ《´`\ヽ 「 …お前、モンタスに頼まれた奴だな…? 」
彡 ,':;:; ̄` `i
彡 !ィ :;:;:;:;:; く 「 ちくしょう…お前が来なければ、
彳 ト :;:;:;:; `ス お前が引き受けさえしなければ。 」
|! :| ## ,-─-- イ
|| (⌒ヽ! (_,,、-‐‐イ´ 「 俺は丁度いいとこで村長を村から追い出して、
川 ヽ > \_ |_ノ^> 昔のカボチ村を取り戻せたのに。 」
川_`'=-‐'''"⌒`´⌒`''"´⌒ヽ、
/⌒` \
/ \ 「ちくしょう…お前なんか―――お前なんか! 」
| ヽ
| ';
| |
| || ノ
.
149 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:40:12 ID:tIirp6j+ [40/51]
1727
┏
人間なのに。
その男もまた、守るものや守りたいものもあるだろうに。
┛
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
--─` ` ` ` `ヽ、. i
三 `iノ,
三 〃〃〃___ノ
彡 ,ィ《´`\ヽ
彡 ,':;:; ̄` `i
彡 !ィ :;:;:;:;:; く 「 ―――魔物に食われて、
彳 ト :;:;:;:; `ス
|! :| ## ,-─-- イ
|| (⌒ヽ! (_,,、-‐‐イ´
川 ヽ > \_ |_ノ^> いっそ帰ってこなければよかったのになっ!! 」
川_`'=-‐'''"⌒`´⌒`''"´⌒ヽ、
/⌒` \
/ \
| ヽ
| ';
| |
| || ノ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┏
そのさまは、魔物よりも、ずっと化け物のように見えた。
┛
.
150 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:40:54 ID:tIirp6j+ [41/51]
1728
./ ̄ ̄\
./ _ノ ⊂_ ‐-' <
| ( ―) λ ヽ あの男にも思うところはあるのでしょう。
,ヘ__| (__人) ヽ ',
__,/ ` < ⌒ノ . r'-‐¬
/---‐――--.、ゝ\ ノ 」-‐>ヽ ……これ以上は、本当によそ者の俺には
/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./⌒ヽ. ´_ノ / ´ l 語れるところではありませんが。
/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/ /´ `ヽ ヽ. , , .!
/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/ / ヽ l` / / /!
/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./ ./ _ __ヽ-、 !/. ,' l !
/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l _十''''''''"" \ < ' l
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ●)(●) 村長。
| (__人__)
| ` ⌒´ノ …これからも、どうか…頑張ってください。
| }
ヽ }
ヽ、.,__ __ノ モンタスたちのように、あなたに感謝している人も…
_, 、 -― ''"::l:::::::\ー-..,ノ,、.゙,i 、
/;;;;;;::゙:':、::::::::::::|_:::;、>、_ l|||||゙!:゙、-、 ポートセルミのグレンのように、あなたたちを正当に
丿;;;;;;;;;;;:::::i::::::::::::::/:::::::\゙'' ゙||i l\>::::゙'ー、 評価している人も確かに…、いるのですから。
. i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|::::::::::::::\::::::::::\ .||||i|::::ヽ::::::|:::!
/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;!:::::::::::::::::::\:::::::::ヽ|||||::::: /::::::::i
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|;;;;:::::::::::::::::::::::\:::::゙、|||:::/::::::::::|:::
.
151 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:42:54 ID:tIirp6j+ [42/51]
1729
, ィ〃〃〃〃〃〃,,)))
,r≦三〃〃〃〃〃〃,)))ゝ、
/彡三〃彡彡//////-'''''' Yミ、
.{イメ彡///ノ /イ 〃リ.ヽ _ _ ミヾ ……すまんな。
.彡三三ニ{  ̄` _ {´ ,,,,ゝ
,彡彡三ニ;} ∠三二ヽ`ヽ}∠≦ノ 詫びを入れねばならんところを、逆に励まされてしまったようだ。
彡メ彡三{ fニヒノj''' 、fニヒノヽ
,彡ソf-三ニ{ ‐-‐' _ ヽ、ー' {
彡ニl 三{{ _,t _____ )、 l
/l/l,ハ ` 三} ./ _ ヽl
!l/l/l/l`t-イ ` ̄ - ` j
ヾj/T(\ 、 __ ,イ\____
__ノ:;:;:;:ヽ\\  ̄ ̄ ̄ノ i!lヽ:;:;:;:;\:;:;:;:;:;: ̄
┏
村長はやっとこちらを見て、少しだけ笑った。
┛
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ⌒)(⌒) いえ。気にしないでください。
l (__人__)
l ` ⌒´ノ
| |
ヽ l それではこのお金は…要らないといっても、
_,ゝ、 _,ノ 納得してもらえないでしょうから、頂くことにします。
,、-='l \_,ン g<\
/ \ └〆\ i=i|\'\ きっとこのお金は、大事に使うことに…しますから。
丿 ゙i \ \=il / i!
l l \\| /=|l
| | \i/ ||
.
152 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:44:43 ID:tIirp6j+ [43/51]
1730
/ ̄ ̄\
/ ヽ_ \
| (⌒ )(⌒)
. | (__人__) それじゃ…失礼します。
| ` ⌒´ノ
. | }
. ヽ } 俺も…旅に戻ることに、します。
ヽ ノ モンタスさんによろしく。
_,,,,ノ|、 ̄//// \、
_,,..r''''"/ | \`'/ / |  ̄`''ー-、 前も言いましたが。―――お互い、頑張りましょう。
/ / | /\ / / / ヽ
ノ | > |/)::::/\/ \ ノ /}
{ | { | ,r":::ヽ / / / // ハ
┏
たぶんこの村長は、これからも苦労するだろう。
だけどきっと。 ―――乗り越えられるだろう。
┛
, ィ〃〃〃〃〃〃,,)))
,r≦三〃〃〃〃〃〃,)))ゝ、
/彡三〃彡彡//////-'''''' Yミ、
.{イメ彡///ノ /イ 〃リ.ヽ _ _ ミヾ ―――リュカ。
.彡三三ニ{  ̄` _ {´ ,,,,ゝ
,彡彡三ニ;} ∠三二ヽ`ヽ}∠≦ノ ああ、そうだな…頑張ることにするよ…。
彡メ彡三{ fニヒノj''' 、fニヒノヽ
,彡ソf-三ニ{ ‐-‐' _ ヽ、ー' {
彡ニl 三{{ _,t _____ )、 l
/l/l,ハ ` 三} ./ _ ヽl
!l/l/l/l`t-イ ` ̄ - ` j
ヾj/T(\ 、 __ ,イ\____
__ノ:;:;:;:ヽ\\  ̄ ̄ ̄ノ i!lヽ:;:;:;:;\:;:;:;:;:;: ̄
┏
根拠なんてないけど…、俺は…そう思ったのだ。
┛
153 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/22(火) 23:45:32 ID:tIirp6j+ [44/51]
1731
┏
俺は村長に頭を一回下げて、部屋を、家を出た。
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