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【R-18】雇われサマナーキル夫 第十三話『加賀喜留夫という男』

654 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:04:39 ID:jFx9OXCA0 [4/46]

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│                           .│
│   第十三話『加賀喜留夫という男』    .│
│                           .│
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655 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:04:54 ID:jFx9OXCA0 [5/46]

.           ‐=ニ二三三三三三三三三三\
              \三三三三三三三三三三三\
            `ミ三三三∧三三三三三三三三}ミ、
             ー=ニ二ハ/∨ ∨ー=ニ三彡'三三三ノ三}
          ミ三_厶‐く三\∠__ |三三彡=--くノニソ
             ̄/⌒} }辷フ〔__`ヽ  ̄|    /`V
                {廴「  }´ 弋ッう \|_/}  /
  「 ̄ ̄\__ ___/ ノ7  /   ^ ̄   __,化__レ'/
..  _____/ / //{丙〈          { 「ドク/´}         今日は来てくれてありがとう…………
  ∧     |  {   ∨∧       弋ト__ノ{ l//`/
    \   |  |     /      r‐_ r―{ l/`/           加賀喜留夫君…………
     }  |  |   ′       `|ヽ  ̄| | |`/
.     /   |  |   i    ト   _ |__〔__ | | │{            こうして話を聞くのは三回目かな?
    {   |  |   l    ,ノ ̄l / ̄  ノノ ,ノ ノ
   ___   ∨∧  l   / __/        /             「二回目っす」
..    ̄\  ∨∧  \  | {         /
... __  {  ∨∧__/\ |ト\_____/} \              まあいい。今回も存分にネタを提供してほしい。
     \)  ∨ ̄ノ    |    「 ̄冂  /
.       {/   /    /\|    l    |ー{
.       |  /__/\____\______廴__ソ ノ
.       l              |  ̄ ̄i ̄|‐r┘
.      |          │    l  |│
        !\_        |       |!
.        l          l     │|
.       |    \_/ /    /  |│         ___
         |     ´ ̄{ / i    l   ∨ ̄ ̄ ̄ ̄\ {ニ二二二ニ}
      /{_ ̄ ̄j___/__/ |        }    ̄ ̄\│ |ー―――‐|
    }  /  )-‐… ¨  ̄{           |   ___,ノー‐ }ノ |        l
.       /         ,l  l      / ̄    {ー|   |     │
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【人間 岸辺露伴 Lv21】

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ソファに座り、背の低いテーブルを挟んで岸辺露伴と対談する。
この男は漫画家なのだが、同時に超能力者なのだ。
ペルソナ能力、というらしい。

なんでも、自身の体内の生体マグネタイトを放出し、
人格に悪魔の殻を被せて召喚するという代物らしい。
悪魔にかぎらず、偉人やその人間に縁深い故人なども召喚されることがあるらしい。

岸辺露伴のペルソナは、他者の記憶を読み解き、そこに命令を書き足したり
することができるらしい。

そして彼は、その能力をなんと漫画のネタ集めに使ってるそうなのだ。

自分は報酬と引き換えに、岸辺露伴にネタ、つまりは記憶を提供していた。
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656 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:06:03 ID:jFx9OXCA0 [6/46]

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           ,..<::::::::::::::::::::::::::::::::::::>..、
.          /:::::::::::::::-=ニ三ニニ‐-:::::::::::::\
          /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\__,
         V:::::::::::::::::―--::::::::--―:::::::::::::::::::::\          そうだよ…
          |\::::ー--::::::::::::::::::::::::::::::::::::::__> '⌒     _
         |  ` ー=ニニ二三 ー---‐__| -─、 ̄\ ̄     必要なのは
.           l        /\ /ヽ__/f ! ̄ヽ | \  ヽ
.          l ル、\  /  /__ ノ ヒ! {、|\..:|│ |   |    l | ‐┬ァ l │ ニ,ニ  _∟l l
            l,ハr‐tッV ー代タ´ 、 i、'_ノヽ  l |  l   |     ,ノ  ノ´  ,ノ  ノ イ / こ
           '/',  ̄ '}  `    i | _|L  / l  j  /-──--
.             | ∧  / _l:.、     ' / l丙| /  / /
         __r‐┴丙 ヽ ヽ-'_    ,.'--─<  /::./
   ,∠二´-―-、 |iノ  \こ ´   / / ̄  丶、::|
 /        `ー--- ヽ--./ /ヽ/ ̄ ノ_ \―‐、
 :::::/..:::..  、  .   . .::/   (__/` / / ̄\\\\
 :< :::::::::::::... \\:: :..:::l::.::/   ‘ー'  ̄  __、 \\\)
 -`ー――--- \\___\!  l    __/   丶、)__)ノ
                ̄  ` ̄ ̄` ̄ ̄

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「君の体験は実に興味深い。インスピレーションがどんどん湧いてくるんだ……
ぷつぷつと……泉に浮かぶ泡のようにね……さあ、また面白い体験を貯め込んで
いるんだろう?」

岸辺露伴はそこまで言って、「いやまて」と言葉を区切った。

「折角だ。今回は君の最初の記憶……デビルサマナーとしての最初の記憶を
見せてもらおうか。そういえば、君の最初の戦闘の話とかも聞いていない。
一般人がサマナーになる瞬間。初めて悪魔を殺した感想……面白いッ!
見てみたくなるじゃあないかッ!」

なんか興奮してきたらしく、岸辺露伴はスケッチブックとペンを取り出した。
変態ではあるが、悪い人間ではないのだ。多分。
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657 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:06:35 ID:jFx9OXCA0 [7/46]

                    ___                              、___,ノ`ー----‐一'
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     〈ー‐<            /l /∧      , ' \ ̄::::::::;、::::::∧;:ヘ./  {l }   }       ‐-  l
     ∨            /|  l/   〉   ./    | \lV ∨     l∧j_j-区 |     _/
      V            , イ  l/l  ./  /     .|  ',    ,、 ハ,ィ1 /! l\ /     ‐─ァ | |
.         ∨     , イ  l , イ  .l/  ,.イ⌒)    |/ト.ヽ 「トtテァV ¬´l│l  /       _/\
          ∨  x< _│, イ   l./   / V {\   |  l 〉,.へ ̄ヘ、   l// /        ・
.        /V´__,,. ィ l  |,  '    /    ハ Y│ l/ 「 丙 li\. r= ヲ / | /   ⌒   |、| |
     /  ∨ │  |, ´    , イ  _,.イ .l__ノ j_/ー<´ V \ 丶.___/ヽ|\   天    .| ヽ
    /    ヽ--- ‐'"    / / ,.ィり ノ─ l  / \   \    \三二ニl  ヽ. 国   ̄Τフ
                     ∠ __‐┘ ー‐く   |/ l _,ヘ   ヽ      (二ヨヲ i へ   ノ
               ,.r弋ワ´ ノ  ヽ   .\ l   |l    ',   ',\_/   (二ヨヲ | .の    ア
.               _,.へ>─r'   、ノ  /  ソノ   {     V  i        (二ヨヲ、l .扉    |
       _  <     \l │ _ イ l  /l _ l    ',  /      /     / ー'   │
    ̄ ̄       ト、___   >x        /、 l' ̄  |/   /i/      /二コニ,=、 ̄>、   .|
             /    ̄フ「 `> ‐- 'ヽ  l __  |   /∥ニ二 ̄ /___// 》'´ ∧   .|
            〉    ̄/ノ  | 〈   ',  ,!´ ̄ l  ,.イ 八___/┼‐┼‐レ《__/  /_',  ツ
            |    / '7  \ `ヽ  \´l ____ !ノ //  }\__>z'´__/  /    i└─
           l     _L,-─-、ヽ \__|l  l |     |\      /   /    | /⌒ヽ
.            l   / /   ̄ ̄ヽ ` ̄   .|l   | |     ヽ \        /    l/
             l  / .〈  ノ__,ノ      ヽニ´ノ       |         /

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岸辺露伴がペルソナを召喚する。
COMPによる召喚時とは違う、青い光が舞い上がり、シルクハットを被った
少年の姿をしたペルソナが現れた。

直後、意識が遠のく。

眠りに落ちていくのとも違う。
目の前に懐かしい映像が流れ始めた。

これは、自分が高校生の頃のこと。
丁度、十年になる。
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658 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:07:01 ID:jFx9OXCA0 [8/46]

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        /      \
      /         \
     /   (●) (●)  \
     |   (トェェェェェェェェイ)   |
     \  \ェェェェェ/   /
     (ヽ、      / ̄)  |
      | ``ー――‐''|  ヽ、. |
      ゝ ノ      ヽ  ノ  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
【人間加賀喜留夫 Lv1 当時十六歳】
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春の日差しの中、睡魔に襲われる。
昼食後の五時限目は満腹感によるものなのか、喜留夫はよく寝ていた。
教師もそれを注意する気がないらしい。諦めているのだろう。

高校生活は漫画や小説で読んで知っていたものとはだいぶ違い、
退屈なものだった。友人もできやしないし、恋人などもってのほかだ。

授業の終わりを告げる鐘が鳴る。
今日は水曜日なので、五時限目が終わったらホームルームだ。
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659 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:09:51 ID:jFx9OXCA0 [9/46]

                   ____
             /      \
            /         \
    ( ( (    /    (●)  (●) \
            |    (トェェェェェェェェイ) |
           /     \∩ノ ⊃/ /
.            (  \  / _ノ |  |
          .\//  ./___|  |
      /\「 ̄~//\/____ /
      [三三三//三三三]
        | i i i i i i i i i i i i i |

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帰り際、母親に頼まれていた食材をスーパーで買い込む。
この後、また成績の悪さで説教されるのだろうな、とぼんやりと思いながら、
メモに書かれた食材をぽいぽいと籠に放り込んでいく。

自分は勉強ができなかった。
中学校まではなんとかついていけたが、高校に進学した後はもうだめだった。
このままでは留年確定だろう。それは自分でも分かっている。
だが、勉強しようとしても、問題を目の前にすると思考停止してしまうのだ。
特に数学がだめだった。現代文と英語は良いのだが、なぜが数学はだめだった。
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660 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:11:08 ID:jFx9OXCA0 [10/46]

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                    | | /       \
                    | |_  (● ) (● )\
                    | |_) (トェェェェェェェェイ)i| 
‐-、                   | |(⌒ヽ \ェェェェェ//
:::::::ヽ、                | |:::ヽ  、::::`ー ' ::::<
::::::::::,ヽ                 | |:::  ヽ __    ノ
\:::::::)                 | |
  \ノ                  | |

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重い買い物袋をぶら下げながら、帰路に着く。
途中で、見覚えのある男女が遠くでもめているのを見つけた。

確か、同じクラスの織斑と篠ノ之だったか。
二人とも珍しい苗字だったから覚えていた。

面倒事か? そう思いながらも、近づいてしまったのは、なぜだろうか。
クラスメイトとして、ある程度の親近感のようなものがあったのかもしれない。

「放してくれ! 金なんて持ってないって!」

織斑と篠ノ之は他校の生徒に絡まれていた。制服で分かる。
自分の高校はブレザーだったが、織斑の襟を掴んでいる男は学ランだった。
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661 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:11:30 ID:jFx9OXCA0 [11/46]

──────         - --             |
─── /⌒ヽ、/o ̄\  ─────   .\      |
 ̄ ̄  / ,ヘ   .| トェェェ |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ \、_ ノし'//.‐
 ̄ ̄ i .i \ .ヽ   ,ノヽ,   _, __ _ ,, .__)    て.,
── ヽ勿  ヽ,__    j  i~""   ...――=二      =――一
______   ヽ,, / / __,,, -- ' " ─ "ー メ、    (_,
───────  ヽ/ /,イ  ─── ― -   ..Y^  \
───────  ./ /.  ヽ,  ──          .|     \
______   / / .ヽ,__,ノ ___ _ _ _   .!
           j  i
_____    巛i~ ____ _

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こういうのは勢いだ。
喜留夫は走り出し、容赦なく他校の生徒の背中にローリングソバットを浴びせた。
他校の生徒は蹴飛ばされ、転がり、壁に打ち付けられた。

痛みに顔を歪めながらも、他校の生徒は起き上がり、喜留夫を睨みつけたが、
その顔を見た途端、今度は恐怖で顔が歪んだ。

まあ、いつものことだ。
自分はとにかく人相が悪い。人相だけで喧嘩相手が降参したことがあるくらいだ。

他校の生徒はひいひい言いながら逃げ去り、その場に立ち尽くす喜留夫と、
織斑と篠ノ之だけが残された。
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662 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:11:45 ID:jFx9OXCA0 [12/46]

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                 ,:::>:/:7、::::{ ヾ、 Vrタ '   マ::i 'ヘ!j'rハ `ヾvV:\:::::::::V:::ヽ:::,
               /´  !ハ::! ヽハ . .`.: :≦:': ´ノ: :ヽヾ、 Vrタ   }:、7::Vヽ:::::::V::::!V
                      ハムヽ ヾ、ー==一 /'ヾ:、: : : ≧z-  ノ'´ソ:::ヽVィ:\::V::!       ひっ! か、加賀……
                   //!ム、j `     `   ` ー-----  /:::;:イj` }:::::ヘ:::V,
                   /´ .!::::八 し               /イ/r'_ノノ::::'  `ヾ、
                     j::/ !:.、  ,__      U  ゚ ,.イ_><::::,'
       __             '´  _j__ヽ_  'ー-- 、ミ 、    /:::::::::::/ ヽ::!
    /  ',   `>         r≦::::__i:、  ==  `゙´ r- <!:::::::/V{   ヾ
   ,    _j__       >     }/´/////,} \     ,..ィ/sミ、: `<  {
  /   /::i:::>ー-:::..、  `v、ヘj///////,j--, ヽ -r≦  //////>x::::ヽ
  ,   ,:::::::/',ヽ>--ミ:::>:..、}/V/!///////, ! !   ハ`>///////////7
 ,   ./:::::/  , !    ` <::::!///!///////! ノ |  / ! _////////////{ヘ-。s≦ア' ̄ ̄

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織斑と篠ノ之はさっきよりも怯えた表情で、喜留夫を見た。

そういえば、話すのはこれが初めてだ。
お互い気まずいのかもしれない。

「あー、なんだ。財布無事か?」
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663 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:12:02 ID:jFx9OXCA0 [13/46]

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...l|. |::::::::::::::::ヽ:,'  ',:|  ヽ::::::::::::::::::::, ヽ::',  _><::!:::::::::::::::::::::::: |::::: /!
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 | ',::::::::::::::::::, ./==ァ==ミ、ヘ \:::::::::::',/ハ:ェュ::リ 〉l:::::::::/:::::::::::::::|:/  | /:::
 |  ',::::::::::::::::ハ`〈 マモリ:| `ヽ .\:::::::', ヒ__モリ/.イ/:::::::/:::::::::::::::/:|.. ..|'\::::
 ヽ. ',::::::::::::::::ヽ   `─'      \:::',     /::::∠:::::::::::::::/):!  人___',::
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    .|:::::::::::::::::::::,        /         / ,::::::::::::::::::,' .ヽ:|/  /::::
    . |:::::: ::::::::::::::ヘ               u   ,:::::::::::::::::;//! /:::::::::        「だから、財布。大丈夫だったか。
.   .|:::::::::::::::::::::::::ヽ     ____      ,:::::::::::::::::;./ ./:::::::::::::
    |::::::::::::::::::::::::::::::\   '───--.ミ>  ∠,::::::::::::::::; | /:::::::::::::::::          カツアゲされてたんだろ」
   .|::::::,::::::::::::::::::::::::::::::`..、   " `    ., .´  ,:::::::::::::::/ .∨|:::::::::::::::::
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   ,ィ ' :|:::::i::::::::ハ:::::::{,メ',:',ヽ::::::::::::,   ´ マr-':リ   .}::/ 〈: : メ<}:、::::::::::,
  /  ,::::::',:::::ハ:',:::::{ ,z==ミヽ:::::::,      ゞ'"   j'  ヽ: : :} ハ:::::::::!、:.、
      ハ::::ハ:::!:::::',::::! 〃ぅr:ムヽ\:,            /: : ノ ハ::::::::::! ヾ:、      ま……まさか、助けてくれたのか?
      ハ::{ ',:i',:::::ヽ:|、゙ヽヾrタ }  ヽ            !ィ  /:::::::!、'
      ハ{ ` ,::::::ハ::ヽ  ´ .:'           u   _,. ィ:|:::::::::::i }:'          あの加賀が? 俺たちを?
       `  }:::,' ヽハ   〈、             /. . . . |ハ::::::::!--ミ
          }/   ム、  `     _       ハ. . . . .i'. ∨:/,イ: 〉        「そんな大したことじゃねえよ」
          '       \    r_"´--'    ,イ. . . . . . .,.ィ:´: : :イハ
                  ヽ.、   --     ,イ. . . . ,.ィ:´: : :,.ィ升ニニム
                   >:.、     / ,。<: : : ,.ィ≦三三三三{__
                 ,ィ´////ヽ、_,.イ'": : : :,..ィ≦三三三三三三三三≧
                く//////f'" .ハ  }≦三三三三三三三三三三三三

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助けた。まあ、形だけで言えばそうなる。

喜留夫はなるべく警戒心を抱かせないように笑顔を作ると、
二人も引きつった笑顔を浮かべ、「あ、ありがとな」と礼を言ってきた。

母親以外に礼など言われるのは久しぶりだ。
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664 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:12:24 ID:jFx9OXCA0 [14/46]

                       /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
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                    / /::::::::::::从,::::::ト----一 、::::::ヽ::::マ::.,
                    ':/l:::::::::|`"\::::|:,xテ--x ヽl> ::::’::::|Ⅴ
                     / ’::::::::|<戊l \::.,戊ノ '  ' /  >::: Ⅴ
                      Y::::ヽ`¨ l `´      〉/:::Ν         そ、そうだ、何かお礼しないとな。
                 /\  _ |∧::ハ  ヽ       ィ-:::::Ν
                /   ´ |\ヽ< >\  __  / 从V            今度食堂の飯でも奢って……
               /-≦     、 〉 `ヽゝ\   f ̄ ̄ ̄ ̄|
         -=    ̄ |: : : |   Y |   〈: : : :ー | ̄ ̄ ̄ ̄            「あー、そういうのいいから……あ」
     -  | |       |: : : |   .|"⌒ 、 、/"V |: : : : : : : : F 、
   /   ノノ        .|: : : |   .|」    ̄,〈 .六’: : : : : : : :/    =-
   ,   / /        .|: : : |   ,   /: : : Vノ: : : : : : : : : :i =- =- \ ヽ
     / /      ―   ̄ ̄ ̄ |  /: : : : /: : : : : : : : : : |     ヽ ヽ | |
  /  , ,     /         | /: : : : /: : : : : : : : : : : : :       、 、 .|
  、 ____ _____   |\: :./: : : : : : : : : : : : : : : |    /   | |
                    ≧斗  /: : : : : : : : : : : : : : : : :|  ./     |





         ____
        /      \
      /         \       あったわ! お前らに助けてほしいこと!
    /   (●) (●)  \l⌒l
    |   (トェェェェェェェェイ)   | .|   とりあえず、また明日な! 今日はもう帰るわ!
    \  \ェェェェェ/   //

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
織斑たちを尻目に、家へ向かう。
今日は暖かいので、買い物袋の中身が心配だった。
早く冷蔵庫に入れてやらねば。

家へ帰ると、「おかえり、喜留夫。喧嘩してないだろうね?」と母に釘を刺された。
驚きが顔に出ないように、「してねえよ。ほら、飯の材料」と買い物袋を差し出す。
「ありがと。今日はオムライスだよ。喜留夫、好きでしょ」

「ああ、確かに好きだけど」

「お父さんも好きだったのよねえ、オムライス。血筋なのかしら」

母が懐かしそうに父のことを語る。
自分は父のことを写真でしか見たことがない。
母が自分を妊娠している時に、事故で死んでしまったのだ。

それ以来、母は女手一つで自分を育ててくれていた。
そんな母に報いるために、こうしてできることはしているつもりだった。
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665 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:12:37 ID:jFx9OXCA0 [15/46]

             ____
           /      \
          /         \
        /   (●) (●)  \      「そんなことより、今日は小テストだったんでしょ? どうだった?」
        |   (トェェェェェェェェイ)   |
        \  \ェェェェェ/   /      赤点だよ。でも、もう心配いらねえよ。
 r、     r、/          ヘ
 ヽヾ 三 |:l1             ヽ      いい方法思いついたんだ!
  \>ヽ/ |` }            | |
   ヘ lノ `'ソ             | |      「カンニング、とか言ったら殺すよ」
    /´  /             |. |
    \. ィ                |  |      ねーよ。息子への信頼ゼロかよ。

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
その日はいつも通り、二人で夕食を終え、皿を洗い、風呂に入って寝た。
いつも通りの日常が、いつまでも続くと思っていた。

自分が家を出たら、母は寂しがるだろう。
さっさと就職して、ペットの一匹でも買ってやろう。
そんなことを思っていた。
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666 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:12:56 ID:jFx9OXCA0 [16/46]

                         ┌──────┐
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
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                             │ :: │
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                                   □

                               ・

667 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:13:49 ID:jFx9OXCA0 [17/46]


          /   {:.:}:.:.:.:.:.:. / /:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:. |:. |:.:.:.: |:. }
        /     i:. i:.:.:.:.:.:/ /:.:.:. : :/ |:.:.:.:.:.:.:. :/:. :|:.:.:.: |:. i
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       ⌒\ \7}:.:.:.:.:.:.: ㌢芹笊ミt、:.:.:.:.:./‐=≦:}:.:.: /:. |         ここは係数を二乗して……
           / \/ / |:.:.:.:.:|:.:|ゝV)ツ   } / 、__,:/:. /:.:.: |
.         /:.:.: 〈 /:. :{:.:.:.: |:.:|       /   `^¨^:.:./:.:.:.:.:|         「お? おお?」
       /:.:.:.:.:.: 〉:. /:.:.:.:.:|:/        '   ≦イ:.:.:.:.: :
        /:.:.:.:. : /:/ヽ! : ::| :{ u             人:.:.:.:.:.:./          だから、こうしてだな……
.      /:.:.:.:. : 〈/:. : :∧:.:.:| :i  \  (  )  ..::. /:.:.:.:.:. /
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             ,':/ }:::::::!':,ハヾ  マタ `   ヽ:::::. ffj:} } }ム::ヽ:::::メ:V::!        お前これくらいもできなかったのか!?
             i'  .}::::::i :!ヾ、 ` ̄    .:!  \:. ≧= "/::::;ィ !:::,' ヽ:i
           ,。.r≦"!:/!/i:、ムヽ     :ノ   `   / イ_ノイ::'  ヾ        よく高校入れたな!
      ,。r≦>'"´   j' !ニi:::>,           i  ´ /_ィiヾ!/、
     ,ィ> '"       _,jニニi/ム'ム、    __   し .イニハ `ヾヽ、         「うっせーやい。中学までは何とかなったんだよ」
    '::/  `Y   ,.。r≦:斗iニニニニム:',\  (__ ___)   ,.イニニニ、  ヾヽ、
   '::/   jr≦:>'"´   iニニニニニムヽ, ヽ、 -  ,.イノ /ニニニニ!:ヽ    ヾ:ヽ.、
   '::/    /:!イ       !ニニニニニヽヽ_ ヽ_ .イ>" /ニニニニニ!\\   `メ::メ:.、
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放課後、織斑と篠ノ之と一緒に、ファミレスのテーブル席で勉強会を開いた。

昨日はどうやら二人で帰っているところを当てつけでカツアゲされていたらしく、
そこを助けたお礼として、勉強を教えてもらうことにしたのだ。

他の科目はある程度何とかなっていたが、数学が駄目だったので、
数学を重点的に教えてもらうことにした。

二人とも喜留夫の馬鹿具合に四苦八苦しながらも、必死に問題を噛み砕き、
喜留夫が理解できるようになるまでレベルを落として教えてくれた。

「そういや、二人は付き合ってんのか」

「ん? ええと、まあな。まだ二か月だけど。幼馴染でさ。
中学卒業の時に俺から告ったんだ。へへ」

「ほーん、羨ましくなんかねえからな」
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668 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:14:35 ID:jFx9OXCA0 [18/46]

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          ,:':>'/::://::!::::::::::::斗七7ァ‐ミi:::::::::::::≧ァ=-',:::::ハ:::::::::∧ ``ヽ
          '"´ ,':::/:':::::__!:::::::/::/zz≧、  i:::::::::/:::/_____ }:::,':::::::::::::∧
            /メr":::/ィ:':::::ハ:i!〃 う:Yiヾ! .':::::://ィr'うメ ヾ!ハ:::::::::!、::∧
               !::::::{ 〉',:::i { ヾ マrタ   ':/.!   frzリ ./!:ハ::::::::! `マ∧        うーん、半分正解、半分間違いってとこか。
               !:∧::、(ム:i     ´   '´  {!    `   ハ ハ:::::i    `
              !' ∨\_,{、           〉     ハイ::i ヾ:',            ここらへんは問題を反復して解くしかないなあ。
                 〉::,、::::!、_________ム__ヾ!___
               // j:::::i: ,                       `
                ,------,                       '
                fニニニ,                         '
                 !ニニニ,                      '
               ,fニニニニ,  __                    ,
            ,斗≦ニニニニ' "  ` <                  ,
   斗-------≦斗≧;、ニニ>'´    ___   ` メ,             ,
 / ィ≦三三> '"´   ヽ:i´  ,..ィ'"   ` ー‐'"             !=≧メ、


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二時間が過ぎた後、喜留夫はポケットをまさぐり、そして気づいた。

「やべえ! 携帯、教室に忘れてきた!」

「まじかよ! さっさと取ってこいって!」

織斑たちに食事代を渡し、学校へと走る。

ファミレスを飛び出し、近道をしようとして細道に入る。
それが運命の分かれ目だった。
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669 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:15:30 ID:jFx9OXCA0 [19/46]

   o
    ゝ;:ヽ-‐―r;;,               。
,,_____冫;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:\      ,,,,,,,, o  /
"`ヽ;:;:;;;:::;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:从    (;:;:;:;:ヾ-r
   〈;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:) 0  ソ;:;:;:;:;:;:;:}
  ,,__);:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ノ     ゞイ"ヾ,:;:,ソ
  (;:;:ノr-´^~;;r-ー⌒`    ,.、
  "  ,,,,      _;:;:⌒ゝソ;:/
    (;:;:丿    (;:;:;:;:;:;:;:;:;:)
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            ´  /;:ノ 。  。
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「なんだ、これ」

建物と建物の間、ゴミ箱や室外機が置いてある細道の中央に血痕があった。
それも大きな、大量出血の後だ。

恐る恐る近づくと、暗がりに鈍く光る銀色の物体があるのが見えた。
銃だろうか。いや、それにしては銃口がないし、何より銃身が平べったい。
こんな銃は存在しないだろう。もっと別の何かだ。

そこでその物体を捨ててしまってもよかったのだが、後で交番にでも
届けようと思い、喜留夫はそれを鞄にしまった。
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670 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:17:11 ID:jFx9OXCA0 [20/46]

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    ヽ|ノ          . .::|  ||       ||   | :   :
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\||__\ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\,||.      \  ||  i ::   :::
  \  ||\______\        \,||  | :::   .:::
 ̄||.   ||\||   :=:   || ̄        \ | :::   ::::
 ̄||:   ||  || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|| \         ノ .::::   :::::
  ||      ||          ||..  \         ゙^ヽ,  .:::::::
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 ̄ ̄\    \ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\.. \
     \.    ||\______\ . \
 ̄ ̄ ̄||~     ||\||   :=:   || ̄.   \
 ̄ ̄ ̄||    ||  || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||        \
      ||.       ||          ||


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学校に入り、部活動帰りの生徒たちの間をすり抜け、教室に入る。
夕焼けに照らされた教室は、どこか幻想的だった。

机や黒板が橙色に染まり、とても静かだった。

自分の席に行き、机の中に手を突っ込むと、携帯電話があった。
体育の授業の際に、電源を切って入れておいたのだ。
この高校は携帯電話使用禁止なので、万が一制服に入れた状態で落ちたりしたら
困る。

そこで、喜留夫は妙な生き物が教室の隅で動いているのを見つけた。
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671 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:17:22 ID:jFx9OXCA0 [21/46]

                     , . -:―:‐:-: 、
            ___ ,..-‐:x:'´__: : :-=ミ、`ヽi
      ┌──< _:_:_:_:_;'::.::.::.::.:'´::.:ヽ: : : : :ト、: |
      |        {::.::.::.::.::.::.::.::.:}`ヽ、/  `
.     丿        __ヘ.::.::.::.::.::.::.;イ
    . '′    , < l: : :l: xく::.::.::://
   (__, .ィ.:_:/ l:_:_:l:_:_:l_:_:「 `´〈 : ヽ
     /:/:「   〇     〇   ト、: :i
      レ' ∧          U ハ :ヽ|       こ、困った……
      厶/  ヽ  -――‐-  ,   ヽリ
         _>r‐:---:‐r<            顕現する場所間違えた……
        (_^ -‐个、::.::.:/ト 、`_フ
         _/ `ー'′ !
        く /  ,     `丶、
           `丶、_/__j__〉┘
           /、7ー'ー'‐r弋´
        _m/ /    ∨ ヽm
      <\广::V       V^7⌒>
      `丶、/        ∨_/
【妖精ピクシー Lv1】

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そこには、小人のような何かがふわふわと浮いていた。
よく見ると、背中に透明な羽根が生えているのが分かる。
大きさは自分の拳程度だろうか。

見つめていると、小人も自分に気づいたらしく、飛び上がった。

「あ、人間だ! 私のこと見えてるの!?」

「お、おう、まあな」

「もしかしてCOMP持ってたり……する?」

COMP? 聞き慣れない単語だった。
もしかして、これのことだろうか? 先程拾った銃型の物体を取り出すと、
小人は喜留夫の周りを跳び回りながら歓喜の奇声を上げた。

「やったやった! 私、妖精ヴィヴィアンとして顕現するはずだったんだけど、
間違えてこんなMAGもない場所に顕現しちゃって、ピクシーになっちゃったの!
このままじゃ消えちゃうよ! お願い! 私をそのCOMPに入れて!」
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

672 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:17:34 ID:jFx9OXCA0 [22/46]

         ____
       /     \
.    /       \
.  / /) ノ '  ヽ、 \       こ、小人と話してんのか、俺……
  | / .イ '(ー) (ー) u.|
.   /,'才.ミ)トェェェェェェェイ)/       「小人じゃないよ、妖精ピクシー! コンゴトモヨロシク!」
.   | ≧シ'ヽェェェェェ/ \
 /\ ヽ          ヽ

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
思考が追い付かない。
目の前にお伽噺の存在が現れて、それが目の前で跳び回り、話している。

「わ、わかった。入れてやるよ。うん」

そう口にした瞬間、COMPと呼ばれた物体が一人でに動き出した。
がちゃがちゃと音を立て、キーボードとモニターに展開される。
パソコンだったのか、これは。

すると、目の前のピクシーと名乗った存在が緑色の光に包まれ、
COMPへと吸い込まれていった。

「New contract accept」

COMPから電子音声が鳴る。
画面を見ると、「DEVIL」の欄に妖精ピクシーの名前があった。

これがメイヴとの邂逅になる。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

673 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:17:59 ID:jFx9OXCA0 [23/46]

        / ̄ ̄\
      /       \       ___
      |::::::   母    |     /       \
     . |:::::::::::     |  /         \ | |
       |::::::::::::::    |/  (●) (●)   \     ……ってことがあったんだよ!
     .  |::::::::::::::    } |  (トェェェェェェェェイ)   |
     .  ヽ::::::::::::::    } \  \ェェェェェ/   /     「馬鹿じゃないの」
        ヽ::::::::::  ノ  | | |               | | |
.          /:::::::::::: く    | |         | |
-―――――|:::::::::::::::: \-―┴┴―――――┴┴――

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帰って、正直に母に話してみると、冗談だと受け取られた。
まあ、信じてもらえるわけがない。

こんな人相の悪い男が妖精などというファンタジーな存在と出会い、
あまつさえ連れ帰ってきたことなど。

部屋に入り、COMPを起動してみる。
SUMMONのコマンドを選び、エンターキーを押してみると、妖精ピクシーが現れた。
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674 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:18:17 ID:jFx9OXCA0 [24/46]

              厂 ̄`'<´ ̄ ̄`丶
            _/       \.: : :./⌒ヽ,  /:.\
        r<辷___       `Y::.::.::.::.::.::V′.: : : :\
       \__/: :/:/ミァニニ辷__|::.::.::.::. : :⌒':くヽ.: : .:.:\
            }丁 _,_L/: : : :/:/`|::.::.::.::.::.::.::. : :.) \: : : : \
            /: |衍 う  ̄ ̄⌒'y|::.::.::. : :._ .イ    ヽ.:. : : :ハ
        /.:,イ {心ソ   ___  `テ¨.´ : : :Y´      i: :ハ.: :.:|
         /イ八  ,_  ´ ̄`ヾ ./.: :/:/.:.:/      |: |_|: : :|      さっきはありがとー!
            \ |'⌒ ̄|   /.:/ イ/        |: | |: : :|
             ゝ.,__ノ /.:∠<ノ           L」 廴/       ここがあなたのお部屋?
            ___r:._]]宍三∃
          r┴     `マ 〉 ハ                       なんだかとっても……寂しいわね!
        ン^ o   o ∨ (, / ̄¨`マ
        [,イ o   o   ) 、,> o  \                   「叩き落とすぞ」
        Ⅵ」|     _|_」__〉 o o i 〔
        \ 少LrLl人廴从 l   i_」┘
             `ー'′   `ー'′゙'¬┘

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その晩は召喚されたピクシーに、色々な質問を投げかけた。
悪魔とは何か? マグネタイトとは? COMPとは?

その全てにピクシーは答えてくれた。

「うーん、最近葛葉のサマナーがメシア教に狙われてやられてるって噂だし、
喜留夫は偶然やられたサマナーの遺品を拾ったんじゃないかな?
これ、他の仲魔の召喚プログラムは壊れちゃってるじゃん? 傷もあるし。
壊そうとしたけど、頑丈すぎて諦められたんじゃないかな?
で、時間がなくって、そのまま放置して帰ったところを、喜留夫が見つけたとか?」

「疑問形だらけだな」

とにかく、そういうことらしい。
こうして、喜留夫はサマナーとなった。
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675 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:18:34 ID:jFx9OXCA0 [25/46]

                         ┌──────┐
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
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                           ┌───┐
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                               └┘

                                   □

                               ・

676 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:18:56 ID:jFx9OXCA0 [26/46]

         ____
        /ノ   ヽ、_\
      /( ○)}liil{(○)\
     /u (トェェェェェェェェイ)  \      わっかんねー!
     |   ヽ!!il|!|!l|!!ii|i/. u |
     \u  ヽェェェェェ/   /      「諦めんな! 俺たちがついてる!」
     /            ヽ

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それからというもの、喜留夫の生活は大した変化はなかった。
サマナーとして積極的に悪魔を倒しに行くこともなく、
たまにマグネタイトの補給として異界を探し、結晶化した生体マグネタイトを拾う
作業をしていた程度だった。

ピクシーもそれに対しては文句はないらしく、ちょくちょく自室で呼び出して
雑談を交わすくらいだった。

そして中間テストに向けて地獄の猛勉強が始まり、心が折れそうになる喜留夫を、
織斑たちは懸命に励まし、諦めずに教えてくれた。
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677 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:19:08 ID:jFx9OXCA0 [27/46]

       ___
      /     \
    /         \
   /   ( ⌒)  (⌒)\        二人ともいつもありがとな。
   i    (トェェェェェェェェイ) i
   ヽ、   \ェェェェェ//        この恩は忘れねえよ。
     /     ┌─┐
     i   丶 ヽ{ .茶 }ヽ
     r     ヽ、__)一(_丿
     ヽ、___   ヽ ヽ
     と_____ノ_ノ





          / :::::::::::::::::/:::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|::::::::::::::::::| \
       / :::::::::::::::::;::::::::::::;:::/::::|:::::::::::::::::::::|:::i:::::::::::::::::::::::::::::::::::|:::::::::::i:::::|   ∧´
.      /  i::::::::::::::::i::::::::::/:/ |::∧:::::::::::::::::::|:::|::::::::|::::::::::::::::::::::::::|:::::::::::i:::::|   ∧
      ∧  l:::::::::::::::」-‐:チ:「 ]::「 Ⅴ`::::::::::::::/Ⅳ::Т:::::―-:::::::::::|:::::::::::i:::::|   ∧
      \\:::::::::::´:::|:::::/|::| __.|::|  ∨:::::::::;:/:::| `;:::| \::::::::::::::`丶:::::::::::::|    _,∧
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       /:/|:::::::::::::::::V ,〃 チ牙ハ`  \/:::::::::, 斗チ屶ぅぇ、::::;::::::::::::;:::::|//1
       .::/ .|:::i::、::::::::::| 爪 乢 爿   / \:::::::,  抓 灼 ⅵⅤ:::::::::/::::::|/`;:::|       気にしないでいいぞ。
      .:/  |:::i:::::\::八    `' ´      \:::.、ゞ -ク ノハ |::::::::/:::::::リハ  Vl
      ,:/  |:::i:::::::::::\:::、            \:、      /::::::/::::::::/| l  |:|        友達同士、助け合うのは当たり前だ。
     .::    |:::i::::::::::::::::::ト\        j}     //// /::::/::::::::∧トミ|  |:|
     i:|    |:::iハ:::::::::::::::j込 `                    ∠_イ::::::::::::/ リ |  |:|
      l:|   |:i:|∧::::::::::::i  ∧      、             /´ j::::::::::/ /∧/  |:|
      l:l    ;::i:V∧::::::::::|    \           ´    /|  ./::::::::/ / ' /|   |:|
     \  /::::i::|\::::::::::|   / .\             イ  | /::::::::/ ゙//:::|   |:|
.       ∨:i::::i:l  ∨:::::|  r七刋 `      <   L  ∨:::::///:::::::::|  ,:/
      /::::l::::从::::::∨:::|\,八   |     I爪       | ``/::/_/:::::::::::::::| //
      /::::::|::::::::::::::::::\| /  \ |          | // \ l:::::::::::::::::::::|::/

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そうか、友達か。自分は知らず知らずのうちに友達を作っていたのだ。
二人がカップルというのは若干羨ましい、と同時に妬ましいが、それでも
大切な友人であることには変わりなかった。

その日、喜留夫は小テストで満点を取った。
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678 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:19:28 ID:jFx9OXCA0 [28/46]

                         ┌──────┐
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                               └┘

                                   □

                               ・

679 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:19:42 ID:jFx9OXCA0 [29/46]

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         ,':::::::::;イ:::::::::::::i::i::トL」::_!:::::::: ハ::l::::l::::::::l|:|:|::::::l:::::::l:::::l
           i::::::::/ |:::::::::::::ト::l::l:::iヤミ、丶、 リ|::::l::::::::j|:|:|::::::i::::::::トi::l
.          j:::::::ヘ 」:::::::::::::|:::ト:l::::lヘユハヘ  ー┴三」ル!:::::j:::::::::!:l::l       あら…………
        /|::::::::::ヘ!:::::::::::::!:::!::l::::トユツ' '     ,ィィテミ、:/::::::::::|:j:!!
.        / ,'::::::::::::::!::::::::::::::トi、:l、::l.!l.l        じリツ冫::::::::::::! !        こんにちは、加賀君。
      /ノ::::::::::::::::|:::::::::::::::::|ヘ!ヘ:! ! l       `´ /:::::::::::::::::ト,
.     /'/:::::::::::::::::::!:::::::::::::::::l  ヘ.! l    '     /:::::::::::::::i::::l
.     '//::::::::::::::::::トi::::::::::::::::ト、    l  ‐-    .ノ::::::::::::::::::ト:::l
   〃´/:::::::::::::::/ハ:::::::::::::::ヘ. 丶、 j!      , ィ:´:::::::::::、::::::::ヘ:::ト、
.  // /:::::::_; -‐'    l:::::::::::::::ヘ   メ、__, ィi::l:::|ト:::::::::::::::ヽ::::::::ヽヽヽ
  // 厶<丶      ヘ::::::::::::::::ヘ / ∧、:::::||:::!:::ll::i:::::::::::::::::ヽ::::::丶\\
. / /¬-、 丶丶、    l::::::::::::::::::Y ∧  ヾヽ、::ヘ!::トi:::::::::::::::::丶::::::\\\
/r'     \ \\   l::::::::::::::::::ヘ.  ∨  ヽ \ト!::トi::::::::::::::::::ヾ 、:::::\\\
/        \ \\.  l::::::::::::::::::::i  ∨  〉  !ヾ!ヘ::::::::::::::::::::ヽヽ::::::\\\
          ヽ ヽ ヽ !:::::::::::::::::::|二二!      ト、ヘ:::::::::::::::::::::\\::::\\\
【人間 閻魔哀 Lv45】
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いつも通り、異界でMAG拾いをしていると、同級生の閻魔哀に遭遇した。
異界に迷い込んだのかと思いきや、そうでもないらしく、その服は返り血に
塗れていた。手には刀と銀色の管が握られている。

閻魔哀がくすりと笑い、喜留夫にこう告げた。

「そのCOMP、精々大切にすることね。近々、大きいのが来るわよ」
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680 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:20:11 ID:jFx9OXCA0 [30/46]

                     , . -:―:‐:-: 、
            ___ ,..-‐:x:'´__: : :-=ミ、`ヽi
      ┌──< _:_:_:_:_;'::.::.::.::.:'´::.:ヽ: : : : :ト、: |
      |        {::.::.::.::.::.::.::.::.:}`ヽ、/  `
.     丿        __ヘ.::.::.::.::.::.::.;イ
    . '′    , < l: : :l: xく::.::.::://
   (__, .ィ.:_:/ l:_:_:l:_:_:l_:_:「 `´〈 : ヽ
     /:/:「   〇     〇   ト、: :i       喧嘩にならなくてよかったねー。
      レ' ∧          U ハ :ヽ|
      厶/  ヽ  -――‐-  ,   ヽリ       あれ、私たちじゃ瞬殺だよ。
         _>r‐:---:‐r<
        (_^ -‐个、::.::.:/ト 、`_フ        「まじ?」
         _/ `ー'′ !
        く /  ,     `丶、          まじまじ。指先一つでダウンさってやつ。
           `丶、_/__j__〉┘
           /、7ー'ー'‐r弋´
        _m/ /    ∨ ヽm
      <\广::V       V^7⌒>
      `丶、/        ∨_/


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どうやら、閻魔哀もサマナーであるらしい。
ピクシーから、サマナーという人種については聞き及んでいた。

魔を駆り魔を討つ、闇の住人。

それが自分の高校にいたとは、驚きだった。

だが、同時に心強くもあった。
悪魔もいれば、それから人間を守るサマナーもいる。
自分が戦う必要などどこにもない。

その時は、そう思っていた。
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681 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:20:34 ID:jFx9OXCA0 [31/46]

          ____
        /      \
      /         \
     /   (●) (●)  \
     |   (トェェェェェェェェイ)   |      お? 地震?
     \  \ェェェェェ/   /
     (ヽ、      / ̄)  |
      | ``ー――‐''|  ヽ、. |
      ゝ ノ      ヽ  ノ  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
それから数日が過ぎた頃。
学校で三時限目の授業を受けていた時、地震が来た。
大きな揺れで、皆慌てて机の下に潜っていた。

揺れが収まり、皆が顔を出すと、空が赤黒く染まっていた。
太陽は隠れ、暗雲が立ち込めている。

尋常ではない。その場にいた誰もがそう直感していた。
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682 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:21:08 ID:jFx9OXCA0 [32/46]

         ___
       _,. '´      ̄`、
      /   u.      \

     |  (●)ililili (●) u, |
     、   トェェェェェェェイ    /
      ,"ヽ、 ヽェェェェェ/  '´ `、
     /               ゙ヽ、
     |   `-、、            ヽ
     \    ヽ        ハ
       ヽ    l       l

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最初は教師たちが職員室へと集まり、それから帰ってこずに十五分。
皆が異常に気付き始めた頃には、もう遅かった。

一階の方から、凄まじい声量の悲鳴が校内に響き渡った。

生徒たちがざわめく。皆、恐怖の表情を浮かべていた。
誰が言い出したか、「逃げろ!」と叫ぶと共に、生徒たちが蜘蛛の子を散らす勢いで
教室から飛び出していった。

一人残された喜留夫は、異界歩き用に持ち歩いていたサバイバルナイフと
COMPを確認し、念のためピクシーを呼び出しておく。
背に腹は代えられない。万が一にも見られないように、制服のポケットに
隠れさせておく。
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683 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:21:29 ID:jFx9OXCA0 [33/46]

       ____
     /     \
   /         \
  /. u   (●)ili(●)\
  |    (トェェェェェェェェイ) |
  \   \ェェェェェ/ /

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自分たちがいるのは三階。
恐らく、異常が起きたとしたなら一階だろう。そう直感した。
今の悲鳴は生半可なものではなかった。恐らく、相当の恐怖と痛みを引き起こす
何かに遭遇したに違いない。そんなものが入ってくるとしたなら、まず一階の
エントランスだろう。

窓から下を確認する。

すると、先ほどまで無人だったはずのグラウンドに、蠢く影があった。
COMPのエネミーソナーが真っ赤になる。

悪魔だ。
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684 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:21:45 ID:jFx9OXCA0 [34/46]

                     , . -:―:‐:-: 、
            ___ ,..-‐:x:'´__: : :-=ミ、`ヽi
      ┌──< _:_:_:_:_;'::.::.::.::.:'´::.:ヽ: : : : :ト、: |
      |        {::.::.::.::.::.::.::.::.:}`ヽ、/  `
.     丿        __ヘ.::.::.::.::.::.::.;イ
    . '′    , < l: : :l: xく::.::.::://
   (__, .ィ.:_:/ l:_:_:l:_:_:l_:_:「 `´〈 : ヽ
     /:/:「   〇     〇   ト、: :i       や、やばくない!?
      レ' ∧          U ハ :ヽ|
      厶/  ヽ  -――‐-  ,   ヽリ       「相当やべえぞ! 結構な数の悪魔が押し寄せてきてる!」
         _>r‐:---:‐r<
        (_^ -‐个、::.::.:/ト 、`_フ         私たちも逃げようよ! えっと、とりあえず一階を目指そう!
         _/ `ー'′ !
        く /  ,     `丶、           「ああ!」
           `丶、_/__j__〉┘
           /、7ー'ー'‐r弋´
        _m/ /    ∨ ヽm
      <\广::V       V^7⌒>
      `丶、/        ∨_/


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自分もサマナーといえど、あんな数の悪魔とは戦える気がしなかった。
何度か幽鬼ガキという力の弱い悪魔を相手取ったことがあるが、その程度だ。

だが、押し寄せてきている悪魔たちはガキより大きい。
恐らく、強さもそれ相応だ。ならば、逃げの一手を取る他あるまい。

織斑と篠ノ之が逃げてくれていることを祈りつつ、喜留夫は教室を飛び出た。
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685 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:22:19 ID:jFx9OXCA0 [35/46]

  ...l′   :l";二゙''''┐       ,l´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ-'''''-、
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二階は血の海と化していた。逃げ惑う生徒たちが無残に食い殺され、
臓物を撒き散らし、四肢をばら撒かれて死んでいた。

四方八方から悲鳴が聞こえる。

「喜留夫! 階段まで突っ切ろう!」

ピクシーに呼びかけられ、悪魔が生徒たちを貪り食っている間を走り抜ける。
中には知っている顔もあったが、構っていられなかった。
自分のことだけで必死だった。醜いほどに。

階段の近くで、織斑と篠ノ之を見つけた。
二人は重なるように倒れていた。

「おい、織斑! 篠ノ之!」

駆け寄り、呼びかける。

すると、織斑たちはゆらりと起き上がった。
よかった生きていた。安堵のため息を漏らし、慌ててピクシーを隠す。

織斑たちはうつむきながら喜留夫の方を向き、よたよたと歩き出した。

「おい、大丈夫か?」

織斑たちは答えない。

「おい……」

織斑の肩に手をかける。織斑が顔を上げた。
そこには、かつての織斑の面影はなかった。赤黒い肌の、屍鬼がそこにいた。
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686 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:22:44 ID:jFx9OXCA0 [36/46]

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     f''`⌒(     ,,,,               !:(',,,,、              ::,,,,,、...
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織斑と篠ノ之が噛り付いてくる。制服を歯が突き破り、肉が食い破られる。

悲鳴を上げながら後ろに転がる。

「どうしちまったんだよ、二人とも! おい!」

ぐちゃぐちゃと音を立て、織斑たちは喜留夫から食い破った肉を咀嚼していた。

「なんで……」

絶句する。そんな喜留夫を現実に呼び戻すように、COMPの画面に
デビルアナライズの表示が出ていた。

屍鬼ゾンビが二体、と。

「うっ……うあああああっ!」

走った。その場から逃げるように、いや、逃げたのだ。
喜留夫はわき目もふらずに、ぼたぼたと食い破られた個所から血を流しながら、
階段を駆け下りた。
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687 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:22:56 ID:jFx9OXCA0 [37/46]

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     /     \
   /         \
  /. u   (ー)ili(ー)\
  |    (トェェェェェェェェイ) |
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「なあ、俺もああなるのか?」

「ううん、ゾンビっていうのは、瘴気が溜まった場所に置かれた死体が変化した
悪魔だから、生きている喜留夫は平気なはずだよ」

「そうか、映画とは違うんだな」

織斑たちの顔を思い出す。優しかった織斑。厳しくも丁寧に教えてくれた篠ノ之。
二人は、既に死体になっていた。死体になった上で、悪魔にされたのだ。
怒りと悲しみが綯い交ぜになり、腹の中で煮えくり返った。

「とにかく、今は逃げよう。学校から出れば、きっと……」

だが、その認識は甘かった。

学校から出ても、赤黒い空は続き、街には悪魔が闊歩していた。

「だめ、町全体が異界化してる……どこもかしこも悪魔がいるよ!」

「おい待て、それってつまり、俺の家も?」

「あっ……」

喜留夫は駆けだした。自分の家へと向かって全力疾走した。
命のエネルギーの全てを振り絞る思いで走った。
どうか。頼む、母だけは。祈りながら、息を切らして走った。
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688 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:23:22 ID:jFx9OXCA0 [38/46]

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                             ',

           ,、-‐ー‐- 、‐-、 ノ            ',
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       __ミ|lヽ、_       l    } i ,-‐ 、    ,'
      : : : ヽ`‐、._ニ==ニ二ニi、 ノ ノノ./    ヽ i
     : : : : :i: : :,-:、: : ,、-‐i /: 〉: : :::::::::';  ゚  l/
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      /,-'´,、-/ !O 丿ノ o        i ,’ }

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遅かった。何もかもが遅すぎた。
家に帰った喜留夫を出迎えたのは、織斑たちと同じような姿と化した母だった。

絶望に膝を折る。
このまま食い殺されるのもいいか。
本気でそう思った。

喜留夫は目を瞑った。母に殺されるのなら、それでいい。構わない。

だが、そうはならなかった。

ピクシーが電撃を放ち、母を焼いたのだ。

「しっかりして! 弱気になっちゃだめ! なんとしても生き残らなくちゃ!
あなたが死んだら、誰がお母さんやお友達を弔うの!
誰が想ってあげるの!? あなたしかいないでしょ!?」
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689 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:23:37 ID:jFx9OXCA0 [39/46]

            ____
           /   u, \
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       :,-| . |ー-、/ ゞノヽ .|:
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              ゝ-i--i´ ;
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╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
それから三時間ほど、喜留夫は家の自室に立てこもり、扉にバリケードを積んだ。
もちろん、破られた。そこから先はよく覚えていない。
気づいた時には、白い生地に青い十字架を描いた服を着た男たちに囲まれていた。

これが、喜留夫から見た十年前の災厄の顛末だ。
日本の各地で起こった後にこの大災害は新興宗教による毒ガステロとして公表され、
死傷者は三百九十万人、行方不明者は五百万人に上った。

生き残った者も記憶を処理され、ぽっかりと穴の開いた日常へと戻された。
喜留夫はサマナーだったおかげで、記憶は処理されずに済んだ。
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690 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:23:55 ID:jFx9OXCA0 [40/46]

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   トェェェェェェェェェェイ |>;・;):〉 |
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喜留夫はその後、高校を中退した。
叔父夫婦の援助でなんとか生活はできたが、心の傷は決して癒えなかった。
いや、心の傷は癒えるようにはできていないのだ。
一度抉られれば最後、その穴を抱いたまま生きていかねばならない。

喜留夫は自暴自棄に陥っていた。

何もかもがどうでもよかった。何度も首を吊ろうとしたが、そのたびに
ピクシーに止められた。

「私が傍にいるから! 何があっても、私があなたを一人にはしないから!」

小さな手で、ピクシーはそっと喜留夫の手に触れてきた。

「これからは、私も一緒にご飯食べる! 一緒に寝る! 私、
あなたから離れないから! だから……だから、そんな目をしないで」

少しだけ、胸の奥の痛みが引いた気がした。
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691 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:24:12 ID:jFx9OXCA0 [41/46]

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加賀探偵事務所が設立されたのはその五年後だ。
喜留夫はこつこつと小さな依頼をこなし、サマナーとして活動していくようになった。

仲間も増え、ピクシーもハイピクシーへと変異し、喜留夫自身も強くなった。

ある日、ハイピクシーに更なる変化が起きた。
それまで姿形に大した変化は起きなかったにもかかわらず、
今回は稲光に包まれると共に、その体を大きく変化させた。

気づくと、目の前には見知らぬ少女が立っていた。
けれど、喜留夫には分かった。それが今まで寄り添ってきたピクシーであることに。
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692 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:24:30 ID:jFx9OXCA0 [42/46]

/ / // /|ノ ゝ/ / / / / / // l ト_l_r/  / / ill / . / /  l  /
;/ / / |- └//_/ / /l /l il/ //yγ|/  l /|/ / // | /l /  /
;;/r ̄´ ̄´   ` `l_、 //l //l // / l/ | || / ;/ : l| / /// / \ /l/  /   /
;:rー´,yー´/l⌒lゞノ l/ l /l//lil / /  i |  / // / /il// |/ /  /   /
l  il 〈l〉//ヾ`\ lーl/ll/ / /l/ l  l |  / | / / /l/ / /l  / / //
l   i Y r´ ♂i  ヾl〉ーll / l l / l_/ll/  l // l ト 、/ / /l  / / l/
\τーl  l / yl  l 〉 l/l l l l /ll  //  / // / l / \ノ/ l / / //
` 〉\ ヾ y_て / l ll ll l i ll / / / /  / / / /l/\l // //
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L_ゞーヽーー´ー)l》〉il l i   l / /´ //彡==ー-/  / / // /
   ヽ l\il_/ ̄/ /´     /i/ ´ /  〃 : : ;;;;;;;;;::;;ミ‐_l/ / / /     /
   ) l `´    (/      /  / / ;∥;;;;:..  ::::::::::::::ノ/ l//      /
   !/       ´      ´ /  ´  ̄\::::::::::....℃/\l /     /         ……ずっと、こうしたかった。
  /                         ゛゛ゞ;;;;;;;;/:://l/  /  ;/l
         ヽ_           ―       ゛゛// //   /   / l
                       ―       // / /   / /l
     、_                  ―     //;/   / l l
     \`  ヽ、                    ;/ /    /  l l  /
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、                           /〃     /   i  l /
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l  ̄`;;;;;;;`‐‐=-ー ´;;;;;;;;;;;;〈    ヽ/ /       /     /  / li
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l  i::::::::::::::)    lーーー´ /  /        /    /   / /

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「私は夜魔。夜魔クイーンメイヴ。今後ともよろしくね、喜留夫。
それから……」

メイヴは喜留夫のことを強く抱きしめた。
体温が、胸の鼓動が伝わってきて、喜留夫はメイヴの命の熱を感じた。

「これからも、ずっと一緒よ」
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693 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:24:41 ID:jFx9OXCA0 [43/46]

                         ┌──────┐
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                               ┌┐
                               └┘

                                   □

                               ・

694 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:24:59 ID:jFx9OXCA0 [44/46]

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___/ニニニ:/\/\ニニニニニニ
___∨⌒V : : : : : : \/\/|ニ
____|: : : : : ::ト、: : : : : : : : : : : |/
____|: , 、: fニ}ト、V:\/\∧: : : :
____|// ∨V  } }ハニニニ∨V
___人 fjフ    レ'  }三三三ノ_       ……そうかそうか、なるほどなるほど。
\     }    |又     /
\\   |__     '    /            それでか、君が仲魔と親しくするのは。
:  \\  └ 、    /}  /   /
`> 、\\r‐、.(__/ /::{  }  /          確かに、こんな経験をすれば、そうもなるだろうな。
ニニニニニ∧-\{___{/ニ/ /
ニニニニニニ}   }\ニニ{ /
ニニニニ「ヽ|    __\_|/
ニニニニニ\.   /   ./{
ニニニニニニ>-{__/⌒{|
ニニニニニニニニ{   l| :\

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目が覚めると、岸辺露伴が凄まじい速さでペンを走らせていた。

「湧き上がってくるぞッ! 次の話のネタがッ! 素晴らしいッ!
……っと、こんな経験を見せられて、喜んではいけないな」

すっと岸辺露伴は真面目な顔になり、スケッチブックを置いた。

隣にはメイヴが座っている。いつの間に出てきたのか。

「君が意識を失っている間、ずっと隣にいたんだよ。
心外にも、僕のことを見張っていたらしい」

「喜留夫を見守っていたのよ。悪い夢を見ていなかったかって」
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695 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:25:28 ID:jFx9OXCA0 [45/46]

       ____
     /     \
   /         \
  /     (⌒) (⌒)\      大丈夫だよ、メイヴ。
  |    (トェェェェェェェェイ) |
  \    \ェェェェェ//      ありがとな。
  /          |





                     _,,、---、  /`ー---、_
           ,   ._,、-― ' ´       `´((,、_ ,ィ-、`!
         ,、((._,ィ'´       ー.'二==テイト、ォハ´`))!ヽ
      /`/ト、`))          ̄__,ィ /乂Yノ少((.  ヽ
      ,イ ./ノ少、'          l  .l    i ((ゞ'´  ` l  ヽ,
     l   弋トン"   /  l     | l!  l!  l! l!  ))  l  l l   l
.    /!    )) ./ / l  l! .l  l l!.l .l!  l l l!l l! ´  l! .l l  .l
   ノ  l.  (( / .′l  l! .l l! i!.l i!  l!.l l!l.l l!    i! l .l!.l  l!
 ./   l   /./  l! l! l.l  l .l l l! l l! i!l.l l! l! l! l  l .l! l l!  /
./    / l .l! l!  l! l! ! ll! .l l!.l l!l.l .l! ll! l.l!l! l l l!  l l .l l / l         そう、ならいいのだけれど。
!  / / ./ i! i!-=ミ.、 l! l l.l((.l!i!.l! l!.l-十十‐!-i! l! l!   l l! l l!/./ l!
 / /  / .l l.l l!  .))l_l! l l ))l l! l!l l从==ュ. l! l .l! / l.l /././  `ー        そろそろ貰うものを貰って帰りましょう。
/ /  /  l! l ll! .ィーイ_,`ヽ.'イ l!l!l .l!イん::ハ.ヽ l l! / ./ //!   __
./.|  /.|  l!  .i! .,イ´`'Z`メ! ヽ     乂z:ソ. './ ./ ./// /.l           今日は何にするの?
./ヽ. l l  l!、  i! フ 〈、Yノ ノ .l          ̄ /  ,′/ / ./ l
  ヽ! .l! i!ヘ  i! >`、´ 、,ノ  '       l   .l   /  /l             「オムライスにしようと思う」
 l  i! ヽ l ヘ .|  i!ヽヽ-イ))      _      ヽ,  ヽ .l!  .l l!
 l  .l!  l!   ト、 l l ヘ ((    ̄    ,ィ‐、ィ‐、  ヽl!  、l l             あら、いいわね。私は好きよ。
 l l l ヽ     l. ヽ l!l i> ,        ゝ,. `´ |  リ__  `ー
./ .l l  ヽ i  l  ヽ.i! l!   >__ , _ , ィ`l´  / / .`ー-
  .l l  ヽ .l! l  l l /l .,ィ、_ノ  ̄ゝイ   / /
  .l!l   l!.l! .l  ./ / l/l .,、- `i   | / /

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
もう、失いたくない。あんな思いは二度とごめんだ。
そのためなら、どんな対価でも払おう。

目の前にいるこの女性を守るためなら、何も惜しくはない。
今度は祈るだけではない。たとえどんな巨大な組織が相手でも、戦おう。

何も言わず、メイヴを抱き寄せる。

「あら、どうしたの? 甘えたくなった?」

からかいながらも、メイヴも腕を回してきた。
とくん、とくんと人間と何ら変わらない温もりと律動が伝わってくる。

この熱がある限り、この鼓動が続く限り、自分の心は折れはしない。
もう二度と失わない。そのためなら、何だってしてやる。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

696 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2018/07/22(日) 21:25:42 ID:jFx9OXCA0 [46/46]

                    ___
                  ,.ァフ::::::::::::::::::`>.、
                    〈:{:/:::::::::::::::::::::::::::::彡      抱きしめ合う
                      lヽ'^ヽ'^ヽ'^ヽ‐tノ        男女を描く時の
                     l ,ハ、ハ ハ,.-、,ハ |─<\      参考になる
                     ヽ.でjフ レ,ィ.N\  ヽ \
                  / /,       トイ  }`!  }  |
            / ̄\  `‐、    l   //  | ハ    スケッチしとこう
               |  \ ヽ.  こ  /____/'   ∨ 〉
       _r‐=ニ´__n ヽ l  `¨´ー┴┬'o    / ヽ|      「帰りましょうか」
.      ノ      ./||\ノ      ヽ| o_,  V   \
  ー───-----  ./  || l へ、  / o \   {   \|     「お、おう」
  \         | | l | }    ̄     /\  ,ハ-、 \ |
    \          `ヽ{ l_ノ  ̄\  o/   \ |'⌒ `|
     \        `┘      \/    / | l ̄   |
                                     ~また次回~

697 名前:名無し-Red-市民-2[sage] 投稿日:2018/07/22(日) 21:55:34 ID:SMR8CCNA0
乙でした

698 名前:名無し-Red-市民-2[sage] 投稿日:2018/07/22(日) 22:23:36 ID:/J3kDFuw0 [1/2]
乙でした。
キツイ記憶だなぁ…

699 名前:名無し-Red-市民-2[sage] 投稿日:2018/07/22(日) 22:32:15 ID:/J3kDFuw0 [2/2]
けど、何か葛葉壊滅も含めてメシア教の計画通りの様な気がするなぁ(汗

700 名前:名無し-Red-市民-2[sage] 投稿日:2018/07/23(月) 02:08:40 ID:ZZoNvQ/.0
乙です



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