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旅　第７話

460 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [1/123]

　　　今から何十年も前のことになるが、大きな市で私は鏡を買った。
　　　
　　　私はそれを宿に持ち帰ると、壁にかけてその前でさまざまなポーズを取ってみた。
　　　
　　　無論、鏡は何も映さない。

　　　両手を広げようとつま先立ちになろうと、ただ向かい側にある壁の木目を映すばかりだ。

　　　　　　　　　　,ｨﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆヽ
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　　　　　　　　　　ヽﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆノ

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461 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [2/123]

　　　次に私は町で娼婦を買ってきて、裸にして鏡の前に立たせてみた。
　　　
　　　娼婦の全身が鏡に映る。娼婦が右手を上げれば鏡の中の像も左手を上げる。
　　　
　　　娼婦が左足を前に差し出せば鏡の中の像も右足をこちらに差し出してくる。
　　　
　　　私はそれをまじまじと眺めて思った。実に不思議なものだ。

　　　　　　　　　　　　／￣￣ヽ__
　　　　　　　　　　　　　　(_／ |￣＿人__
　　　　　　　　　　　　　＼ヽ|　|　＿＿}_
　　　　　　　　　　　　　　　ヽし'／　　　　}
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　　　　　　　　　　　　　　　　　 }　ヽ--|
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462 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [3/123]

　　　私は娼婦には手をつけずに帰すと、ベッドの上に身を放り出した。
　　　
　　　天井を眺めながら思う。
　　　
　　　私はどこにいるのか、と。
　　　
　　　私はもう百年間も自分の顔を目撃していない。鏡はもちろんのこと、水面にも私の顔は映らない。
　　　
　　　ならばこれはすべて夢で、ひょっとしたら自分という人間はどこにも存在していないんじゃないか？

　　　　　　　 /　　ﾊ.　　ﾄ､　　　:/　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾍ
　　　　　　　:/　　/i!ﾍ　|　＼　　 /　　　　　/　　／ / / 　　　　ﾍ
　　　　　 :/ 　 ,.ｲ: l　|ヽ{ 　　ヽ, ┤l　　　,'　/　／/ ./ /|　　　　　　　 '.
　　　　　　/　,.ｲl:::l　|　',　　　／y‐| |　　　|　|,イ／／∠､| 　　 ,' 　　　l
　　　　／　,ｲ::|i!::ﾄ. ヽヽ　　{ {.´　| |　　　|　|∠∠／^￢i!　　　l　　 |　|
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　　　:/: 　　 |::::||:::|::|: ＼　　∧丶ﾉﾚ'l　　ﾄ､{　　 Vj::/　｀、　 |　l　/l　!
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ﾉ　l 　/ /::::::::::::::::::::::::::::::::::: ヽ　ヽ＿::／
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　　　ﾚ´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
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463 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [4/123]

　　　そう思うとき、私は水銀燈の寝顔をよく眺めた。
　　　
　　　彼女の顔は美しく、そこには神秘的な力があった。
　　　
　　　自分はここにいるという確かな説得力がその顔には備わっていた。
　　　
　　　良かった。水銀燈がここにいるということだけは間違いないんだ。
　　　
　　　私はその事実に安堵すると、次第に自分のことはどうでもよくなってくるのだった。
　　　
　　　私がいようといまいと、そんなことはどうでもいいではないか。
　　　
　　　大事なのはこのパートナーが傍にいるということだけだ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　//￣ヽi ／,.≦√:::::ー＜:::::フ_ ＜::ト､ゝ┐_,ハ
　　　　　　　　　　　　　　　r_ ﾆﾆﾆj::::::二ﾆﾆﾆﾆyzzﾝ､＿,ﾊー=ミ::::::::ュ＼ヽ　>_}}　,
　　　　　　　　　　　　　　　　 _j::ｰ':〈≠,:／　￣　　　　　　￣乂zz＜::::::::}ヽ:.　<,Y ',
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　　　　　 ,'二二二二二二二ﾆ=ﾑ}　ﾘ　　 ` ＝zヾ　}' !　 /￣}'￢, 　　 ,'　　:|,ﾑ }:::}二二二二ニ |
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　　　,ｘく二二二ニﾑﾆニ',ニニニ/ j |　ﾄ､　　　　　　　　 ` ＝=zY 　　／　 Y:二/二二ﾆ／二二ﾆ＼
　／二ニニニニ二ﾑニﾆ,二二厶ｲ |　,ﾊ　　　　　　　　　　､　　　ﾉ　　　ノ　ノ二{ﾊ ,r┐￣＞=＜￣ヽ、
。゜=, '´￣￣｀　-(: ; ＼＿_',二二(_, ､l /　ﾍ、　-､｀ '　_　=ミ＞=ﾆ_r'__ーv't=-二ﾆ}ｰ'　_,.='´ヽ￣￣｀　、
二/　ー── r─'ニ＝──(::===彡'　フY< ＞-　'´　　　ヽ＼｀ー-y　｀ー=ミ、　￣｀　､　〉　 - ､_
ニ!　　､_　　,'　　　　　　　 f´_　　--　j￢ ´　　　　　　､　ヽ　ヽ,＼（__　 __　　　 r'　　　　　乂
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ﾄ､　弋￢ｒ== '　ー── :j　　＿_　 i{:...　　　　　　 ,.ｨﾒ､　':,　〉／---j＿,.　 ---- ミ　　　　　｀　j
.　＼　｀ y::､　　　　　〃　､_　rﾁ ,､::二＝─　´∠__　／:イ　ゝ_　　 ...:Y　　　　(__　　　　　,ハ___ユ／
　　ヽ /ﾊ-(｀＜　 __{{　　　ﾉ　 ,==z_／　　　　　　　　　　　　∠＿＿,. '　ヽ＿,､_　ヽ　／
　　　　　　　￣￣￣￣ヽ_＞'´　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 {　　／　　ゝ─　´

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464 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [5/123]

　　　しかしそこで安心してしまうのは、私の罪に違いない。
　　　
　　　ひょっとしたら水銀燈も同じように不安に思っているかもしれないではないか。
　　　
　　　私には彼女の鏡像を取り戻す責務があるのだ。
　　　
　　　彼女を自分と同じ身に引きこんだ者としての責務が。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾉ｀ヾ)
　　　　　　　　　　　　　　　　　　(⌒ｰ,ｨ'¨￣￣¨I'く
　　　　　　　　　　　　　　　(___/　　　　　　ヽ　　　 __
　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　 ))　rﾍﾍ｢ﾉ,'Yチ,'　ヽ
　　　　　　　　　　　　 ,r=f{{}}≧､/rfﾑ´⌒rヘﾍ｀Y孑"ﾍ/__,.-､｀ｰ､
　　　　　　　　　　　 r=f}{≧≦}}ﾐﾑ,ﾍﾍ｢j/7‐ｧ､>:::<ﾆﾆﾁﾍ:::ﾍヘ__ノ
　　　　　　　　　　　 {{}}{≧》《≦}{}}ヘﾍf' /∠イ)Jヽ＼)/ｨﾊ__／ミ)
　　　　　　　　　　　㌫㌧'_y'^(二ﾆ＞:::::＜ﾆ二ミ)ｿ㍊)/rfﾑﾐﾑ
　　　　　　　　　　,.㌫riｉﾞYY´!∠／/ /∧ヽ､ノrf斥fぇf'ﾁ}}'r亠､
　　　　　　　　　　　f―-､ﾍ| |/＞'f'ヽiノ ,r-､´ {fﾁ}(≧k}}rfyj〉　 ,}___
　　　　　　　　　　　(二ﾆ≧::::´＼ﾍ｢:ｌ. /　／) tfｼ{{炒ﾂﾑｽﾁ／ __ノ
　　　　　　､ f>　　 (__／／/(二ﾆ＼| |/／ｨニ)yf'ﾑ匕rf{{爻}｢}ヾぇｰ―'ヽ、
　　　　　　　丈　　　(／　/ (二二ﾆ:::::::ﾆ二二)≧{}} {{}≧ｪｭｯ'ｼ}{}}ﾐ､㍊ﾐｰ'
　　　　　　　｢::ヽ¨｀ﾞヽ｀¨´ 　(__／ ,/ｊ lヽ.ヽ､ヽｧ'}}}ｼ'ｰゞ{{}Wkｿ)}yｿﾂ,㍊ｼ
　　　　　　　｀¨¨´ヽ√`ー'㌫ｧ(_／_/ |ﾍ㌫ _)､}ソ(⌒Yミﾂ､{{}{ﾂﾙ'､__ノ
　　　　　　　　　　 {j　　 '㌫㌫㌫,y´｀ｰ㌫ﾍ_,-､（ﾞゝー'ゞ､__}}ﾑy"
　　　　　　　　　　　｀ﾍｰiﾌ　㌫／十十/ノ｀ゝ-' ゝ'十｀ｰ､_ﾉ'´∨
　　　　　　　　　　　　 {_ﾙ　＼__)十十十十十十十十十十 ∨
　　　　　　　　　　　　　　　　　∨十十十十十十十十十十∨
　　　　　　　　　　　　　　 ∨十十十十十十十十十∨
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∨土土土土土土土土∨

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465 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [6/123]

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466 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [7/123]

　　　普通の人間は映らないが悪魔の姿だけは映すという鏡の噂を追って、
　　　
　　　我々は北へ南へとさまよった。
　　　
　　　湖の底にある国に行き、雲の上にあるという都にまで行ったが、見つからない。
　　　
　　　失意の日々が続いた。

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467 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [8/123]

　　　我々は次第に何も考えずに、黙々と世界の各地をさまようようになった。
　　　
　　　風の吹く草原を歩き、暑い砂漠地帯を抜けた。
　　　
　　　破壊された町の跡地を行き、蛇の棲む深い森の中をさまよった。
　　　
　　　森をさまよう内に、乞食同然のさもしい老人に出会った。
　　　
　　　脇を通りすがろうとした時に声をかけられて、我々は話した。
　　　
　　　「おぬしらは自分自身の姿を求めておるようだな。それならどこに行こうと無駄じゃろうて。
　　　
　　　自分などというものは、今・ここにしかおらん。それ以外のどこにもおらんのよ。」
　　　
　　　「なんだって？　お前に我々の何が分かる？」

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iiiiiWWWiiii;;;;;;;;::::::::;;;;;;;き´:::y　　　ろ　≦:::　:::iiiiwwiiiiiiiw;;;;;;:::::::......　　ゝiiiiiWWWiiii;;;;;;;;::::::::;;;;;;;き´:::y
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　　|川 :i|　　|川　|l:i|　　~^~^　　　　　　 |i: :ii|　 |i: l川|　|:ii|　　|川 :i|　　|川　|l:i|　　~^~^
　　|川 :i|　　|川　''"'''''　　　　　　　　　　!|i: :ii|　 |i: l川|`~^~^　!|川 :i|　　|川　''"'''''
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468 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [9/123]

　　　「分かるさ。だてに年はとっちゃいない。
　　　
　　　いいか、“今・ここ” よ。常にその瞬間を、ひとつひとつの出会いを大事にすることじゃな。」
　　　
　　　老人はそう言うと、高笑いをしながら去っていった。
　　　
　　　我々はその老人の偉容に気圧されて、無言のまま見送った。

　　　　　　　 |l三三三三三三三三三=､　三三三三三三三＼
.　　　　　　《三三三三三三三三三三＼　三三三三三三三ヽ
　　　　　　　 }i※※※※※※※※※※彡＼　三三三三三三三丶
　　　　　　　　|i三三三三三三三三三三三彡＼　三三三三三三三,
　　　　　　《三三二ﾆﾆ==--‐‐=≡大¨¨丁￣＼ =三三三三三三',
　　　　　　　 [_ミヽ ∠ _三二ﾆ=-‐=　ハ　｜　//∧　ﾆ三三三三三',
　　　　　　ヽﾐヽ　〃,.=ﾆ二フ ‐=ﾆ　 }　｜　 //∧　 =三三三三三i
　　　　　　　　　 }辷} 　 {｀二　 -=ﾆ　　 /　　|　　　ハ　 =ﾆ三三三三|
　　　　　　　　〈　/ 　ﾉ＼_　　　　／　／　 /　 '　 |　 =ﾆ三三三三|
　　　　　　　　　 У 　　ノ＾≧＝=ミｰ=≦=-‐彡 /　 ∧　=ﾆ三三三三|
　　　ｰ‐=＝ﾆ二//　　／　　 _＿,ﾊ｀トミ=‐-=彡／　ヽ =三三三三/
　　　　　　　　 //　.∠ﾊヽ二ﾆ=-‐'　}　}　/￣￣￣{　　　ヽ=三三三/
. 　　　　　　　// ／　　辷=‐-　　　　 / 　 |　　入　　　　|ﾆ三三|/
　　　　　　　〈_／　　　 |　　　　 /　／ｉ|　　|　／　 ',　　　 |ﾆ三三|
　　　　　　　　　　　　厶ｨィィィイ_∠二⊥ﾆ=''"　　　ﾏ二∨ﾆ三三|
　　　　　　　　　／/ 仁ﾆ=-彳 |￣　　　　　　　　　∨ /,三三三|
　　　　　　　 ,.　=-‐'"´　　　　_|　|　　　　　　／　∨=三三三|丶、
　　　　　　　〃　　　,.-‐二三／|　|　　　　　／　／/三三三三|三ﾆ＼

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469 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [10/123]

　　　それからは静かな日々が続いた。
　　　
　　　「自分などというものは、今・ここにしかおらん。」
　　　
　　　その言葉に従うならば、移動には意味がないということだ。

　　　我々は適当な町に身を休めることにして、何もしないまま時を過ごした。
　　　
　　　ありがたいことに、その町にはひとつも鏡のない宿があるのだった。

ｘＸ´,.:'´,.:'´,.:'´,.:'´,.:'´,.:'´,.:'´,.:'´,.:'´,.:'´,.:'´,.:'´,.:'´,.:'´,.:'´,.:'´,.:'´,.:'´;';';';';';＿;';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';'
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＼｀丶二ﾍﾆﾆﾍﾆﾆﾍﾆﾆﾍﾆﾆﾍﾆﾆﾍﾆﾆﾍﾆﾆﾍﾆ∧＿| ||ニﾍﾆﾆﾍﾆﾆﾍﾆﾍ ∠ﾆﾆﾍﾆﾆﾍﾆﾆﾍﾆニﾍﾆニﾍﾆニﾍ　∠ﾆﾆﾍﾆﾆﾍﾆﾆﾍﾆﾆﾍﾆﾆﾍ
＿＼/|二二へ二二へ二二△／￣へ二二へ二二へ二二へ二二癶 ∠二ヘ二二へ二二へ二二二へ　∠二二へ二二へ二二へ二
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470 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [11/123]

　　　我々は影を引き連れて町の中を歩いた。
　　　
　　　見渡せば、あらゆる所に影はあった。
　　　
　　　建物の前を通ればその大きな影に人々の影は呑まれて消えた。
　　　
　　　そこから出てくる者があると影はまた影の中から出てきた。
　　　
　　　適当な石の段に座って人通りを眺めていると、そういう影たちの消失と出現が無数にあることがよく分かった。
　　　
　　　人と人はぶつかり合えば文句も言うが、影たちはぶつかり合っても文句どころかすれ違うだけで、会釈ひとつしないのであった。

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471 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [12/123]

　　　我々はよく町はずれの人気のない開けた所までやってきて、心ゆくまでそこらを練り歩いた。
　　　
　　　その場所では我々の影はどこにも呑み込まれず、再び影を失うのではないかという不安から解放されて、
　　　
　　　いつまでも歩き続けていられたからである。
　　　
　　　歩いていると心が安らいだ。何もできず何も起こらないままに過ぎていく時の中で、唯一の慰撫が体を動かすことだった。
　　　
　　　ただ、無気力と希望のなさは体を急激な運動から遠ざけた。
　　　
　　　それで我々ができることと言えば、ゆっくりと二本の足を動かすことのみとなった。

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472 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [13/123]

　　　我々は歩きに歩いた。
　　　
　　　それで疲れたら市場まで行き、人通りをなんとなく眺めた。
　　　
　　　そうやって無為のまま時間は過ぎ去っていったが、
　　　
　　　ある時宿の主人から大きな姿見を買ってくるようにとお使いを頼まれた。
　　　
　　　この町に居座るのもここまでのようだった。我々は素直に依頼を受けて市まで鏡を買いに行き、
　　　
　　　宿に持ち帰った。それからそれまでの清算をすると、宿から離れ、別の場所を探して旅立っていった。

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473 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [14/123]

　　　我々は山奥に入り、猟師が山籠もりをするための山小屋を貸してもらってそこに居座った。
　　　
　　　自分で薪から火を起こし、狩ってきた兎を捌いて、金網の上で焼いた。
　　　
　　　我々は買って持ち込んだワインを飲み、兎の肉を出来る限りゆっくりと食べながら時を過ごした。
　　　
　　　その山にはいくらでも兎がいて、そこら中を跳んではねていたので、捕まえるのに困らなかった。

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474 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [15/123]

　　　何もないなぁ、と思った。
　　　
　　　山奥の空気は清らかで、どこまでも澄んでいた。
　　　
　　　森の中は静かで、歩いているだけで心が安らいだが、同時にひどく寂しくなった。
　　　
　　　今我々は人里から遠く離れているというだけでない。
　　　
　　　鏡像もなく不老である身を抱えて生きており、定住する可能性を永遠に奪われているのだ。

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475 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [16/123]

　　　
　　　つまり我々は二重の意味で人々から離れており、その距離がいつになく苦しかった。
　　　
　　　寂しさを自覚して、自分自身に隠すことなく、ごまかすことなく感じようと努めている今は、何よりも苦しい時期だった。
　　　
　　　何もない。
　　　
　　　我々には何もないのだ。
　　　
　　　我々が突然どこからもいなくなってしまったとしても、誰も困らないし、誰も気がつかない。

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476 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [17/123]

　　　　　無だ。
　　　　　
　　　　　我々は無を生きている。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,.- ＝‐‐‐-､'ﾞ　　 .　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　ノ　　　　　　　ﾞ、 '´　　 .:　　　|. ﾞ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　 i゛　　　　　　　　ヽ　　､i:::　　　　i.　i
.　　　　　　　　　　,　-‐- 、　 |　　　　　　　　　　ﾞ:、 :::i.　　　 l　 |
　　　　　　　　　ノ´ 　　　　ヽ ! 　　　、　　　　　　ヾ.:::|.　　　 l 　.|
. 　　　　　／　　　　　 /　　　　　i.　　　　　　ﾞ:､|　　　　l 　 |
.　　　　　　／　　　　　　　　/　　　　 |:!　　　　　　　 i 　　　ｌ　 |
　　　　　.／　　　　　　　 /. 　　　　 i: :! 　　　　　　l. 　　　l 　 |
　　　　／　　　　　　　,　　/.　　　　　　!、 i　　　　　　 l 　　　 |.　 |
　　／　　　　　　　/゛、./. 　　　　ﾉ　ヽ.l　　　　　　　 i: 　　　i.　 |
　.／　　　　　　　　/ 　｀/　　　　　 /　　　i._,. --‐''¨￣｀ヽ　　　| 　.|
／　　　　　　　／　　　/　__,... --‐‐ '' ¨¨´￣　　　　　　　　ｌ. 　!
　　　　　　,. ‐'´　　ノ'' ¨¨´　　　　　　　　　　　　　　　　　＿ ,........!:､　ﾞ、
　　　,. -'´　　　 i!　　　 ,,.=.‐--,-‐ ‐ ' ¨¨¨￣､￣¨~~~~￣　　　　　　　ﾞ:、
　.／　　　　　　i、 r‐‐'´　　／＼　　　　　ヽ　　　　　　　　　　　　　i
/´ 　　　　　　　　｀./　　　／　　ヽ　　　　　i 　　　　　　　　　　　　　　i.
　　　　　　　　　ノ　　　/.　　　　　ゝ.　　　　;.　　　　　　　　　　　　　　l
　　　　　　　_, :'　　　　〈.　　　　　　　＼　　　 i、　　　　　　　　　　　 /
　　　　　 _,.‐'　　　　　　）　　　　　　＼.　　゛、　　　　　　　　 /
　　　 _,.‐'　　　　__,...__,,／　　　　　　　　　｀ｰ-‐'ヽ､　　. 　　　　／
　　 (　 ,...___,. '´　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ - ...＿,,,,...,:::'

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477 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [18/123]

　　　突然、一匹の蛇が茂みから姿を現して私の前を通り過ぎて行った。
　　　
　　　蛇はガサガサと音を立てて再び別の茂みへと消えていく。
　　　
　　　私はその蛇を追って走り出した。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿
　　　　　　　　　　　　　　　＿＿_| !_　　／:::::::｀//
　　　　　　　　　　 ,..::"::::::::::::::| |:::｀::.､i::::::::::､//::ヽ
　　　　　　　　　――--/:::::::;: -―-l l､::::::::::ヽ::::::::ヾ.:::::::`::- ..､
　　　　　　　　　 ―‐--l::::／　,_-―' .ﾞ'` ､:::::::::ヽ::::::::ヾー--､::::ヽ
　　　　　　　　　　　　　l::::i　（,,_ヾヽ￣￣ `ヽ､::::::::::::::ﾉｰ､､ｰヽ :::ｌ
　　　　　　　　　　　　　ヾ:ヽ.　　￣｀ヽ.＿＿　`''ー''"　　ヾ:､ﾉ:::ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　 `''`ーz‐::γ´::::::;;::::｡ﾞヽ　　　　　ヾ:<
　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::iｌ:::::::i´ ト-‐く_
　　　　　　　　　　　　　　　　 i::::::::/ ヾ:::::!　ｌ　　｀
　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ::::::ﾞｰ:'ﾞ::/　ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ::::::::;.ｲ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣￣

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478 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [19/123]

　　　蛇は明るい黄色の肌をしていた。
　　　
　　　それは神秘的な色で、とても美しい。
　　　
　　　私は茂みを越えて蛇を追った。
　　　
　　　蛇はすばしっこく、時に見失うこともあったが、私は音を聞き分けて方向を割り出し、なんとか追いついた。
　　　
　　　私は蛇を捕まえようと意を決して飛び掛かった。
　　　
　　　しかし蛇はするりとこの手を抜けて、壁の小さな穴に潜っていった。
　　　
　　　気が付くと私は切り立った崖の前に立っていて、行き止まりにいた。

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ﾊﾊ从'从∧::::∧::::::::::::::::::::::::::::,,;.;.''　;;;;;''":::::::::::::::::::::::::::::::::::＿＿／kkkkkkkkkﾉﾉヾ从ﾉﾉ;
ﾉﾉゞゞ"ヾハ∧从∧:::::::::::::::::::::::''''""::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／kkkkkkkkkk∧kk,',,彡ミ彡爻',
〃ﾞゞ∧ﾉﾉ',ゞ从ﾞゞソ∧,,:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::__ノ¨kkkkkkkk,,∧从从ﾞゞ;:;"ゞ,,ｿゞ从
∧ﾞミ爻彡从爻"ﾊﾊ彡ゞ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,．ノkkkkk∧kk∧ミ从ミゞ',从ﾘ冫';',彡ﾝゞ,
爻Y;'ハﾘ从ｿゞミハ∧ゞﾞヽ￣￣)　冫￣￣￣￣￣￣从;爻ﾞヾ,,∧ﾞヾ彡,,"彡ゞ,,∧ゞ;,ﾞヾ"
iiiiｿヾii彡Y;;ミソハ人爻,;'ゞ',,..／　 (＿　　　　　　　　从ゞ从,,У,ヾ::爻::;人ﾝ;爻ﾊﾊﾉ爻ゞ;
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479 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [20/123]

　　　私は無意識のままに動いた。
　　　
　　　蛇の潜っていった穴に腕を入れる。
　　　
　　　すると一つの柔らかな感触があった。
　　　
　　　きっと蛇に違いない。私はそのまま腕を引っ張ったが、蛇も負けじと体を暴れさせて私の手を振りほどいた。
　　　
　　　私はもう一度蛇を捕まえようとして腕をやみくもに伸ばしてみた。
　　　
　　　しかし蛇は一度捕まったきり、二度と手にひっかからなかった。

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480 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [21/123]

　　　私は顔を地面につけて穴の中を覗き込んだ。
　　　
　　　暗闇ばかりで何も見えない。
　　　
　　　いや、きっと何かがあるはずだと思い、片目をつむり、もう一方の目だけを穴につけて闇に慣れるまで待ったが、
　　　
　　　やはり何も認められなかった。
　　　
　　　私は意気消沈して顔を離し、ふたたび穴に腕を突っ込んだ。

三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三il
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三il
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三il
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481 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [22/123]

　　　私は懸命に腕を動かして蛇がかかるのを待った。
　　　
　　　そのまま長い時間が経って、やがてポツポツと雨が降ってきた。

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482 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [23/123]

　　　もう諦め時だろうか。無為のまま時間は経っていった。
　　　
　　　暖かい火とワインが恋しい。雨も激しくなってきた。
　　　
　　　木々の葉が雨に打たれてざわめき、凄まじい音を立て始めた。
　　　
　　　もう帰ろうか。水銀燈も心配しているに違いない。
　　　
　　　でも、あともう少しだけ頑張ってみてもよいかもしれない。
　　　
　　　私は辛抱強く腕を動かす。

　!|　!| ゛ゞ.ヾゞヾヽ,.ゞ:,,ヾゞヾ;ゞゞヽ,.ゞ:,　　,ヾゞヾ;ゞゞ＼ヾゞ:　ヾヾ゛　ゞ.ヾゞヾヽ,.ゞ:,,ヾゞヾ;ゞゞノ　|　!　l
| !　! ゛ゞ.ヾ　　ゞヾゞ;ゞゞヾ　　ゞ;,.ゞ　:,,ヾゞヾ;ゞゞノヾゞ:ヾヾ　　゛ゞ.ヾ　　　　ゞヾゞ;ゞゞヾ　　ゞ;ゞヾ;;　!|
!　!　ヾ.,　.ゞヾゞ;ゞ　　ヾ;ゞゞゞ;ゞ:ヾゞ゛;ヾ;ゞ　　,',;:ゞヾゞ;ゞヾ.:　　　　ヾ:ヾゞヾ.,　.ゞヾゞ;ゞ　　　ヾ;ゞゞ; l　|
　|　!| 　ゞヾゞヾ　.ゞ;ゞヾ;ゞゞ; ,,ゞ.ヾ＼＼　ゞヾ:ゞヾ　ﾉﾉ　ゞヾ　.　ゞヾゞヾ　.ゞ;ゞヾ;ゞゞ;ゞ　ヾ;ゞゞ　!
!　!　 |　!|　ヾゞ..ヾ　.ゞ,'ヾ　　ゞヾゞヾ　,,.ゞヾ::ゞヾゞ:ヾ　ゞ:.y.ﾉヾゞ..ヾ　.ゞ,'ヾ　ゞヾゞ　;ゞヽ,.ゞ:,,ヾゞヾ　!|
| !　!　|　!　|!l　ゞヾゞ___＼＼ゞゞヾゞ;ゞゞヾゞ;ゞiiiiii;;;;::::: ｲ.ヾゞ,　.,;　ゞヾゞ___//　;ゞゞゞ;ゞゞヾゞ;　　|　!|
　|!　!　　|　!| 　!l ;ゞヾゞ;ゞヾ;ゞゞヾ　　　　ゞ;ゞ　iiiiii;;;;;::::: :)_/ヽ,.ゞ:,,ゞヾゞ__;::/　ゞヾゞ;ゞヾ;ゞ　 |!　　!| !|!
!l　|!　!|　!|　!l　|!　!　|　!　|!l　|!　!|　lゞヾゞ;ゞヽ;iiiiii;;;;::::: :|;:/　　　ヾ;ゞゞ;ゞ　ヾゞ　!　|　!　|!l　|!l　|!　 l|!
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483 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [24/123]

　　　かかった。
　　　
　　　柔らかい感触が手に握りこまれ、すさまじい力がかかる。
　　　
　　　しかしこれは本当に蛇なのだろうか。蛇にしては柔らかすぎるのでは？
　　　
　　　私は引っ張り合いをしながら頭を混乱させつつあった。
　　　
　　　手に何者かが握りこまれる時、奇妙に分かたれたいくつもの感触が同時にしたのだ。

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484 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [25/123]

　　　そうだ、これは五指だ。握りこんでいるのはおそらく、人間の手なのだ。
　　　
　　　一体どういうことだ？
　　　
　　　私は穴に向かって大きな声で呼びかけた。
　　　
　　　「おーい何者だー！　穴の中に誰かいるのかーッ！？」
　　　
　　　すると小さな声で返事があった。
　　　
　　　「ああ、どうか助けてください。手をお放しになって。謝りますから、とって食べないでくださいまし。」
　　　
　　　「とって食べたりしないよ。分かった、手を放そう。でも、どうしてあなたはそんな所にいるんだい？」

: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼
: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :/
､ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : /　〉
.　､: : : : : : : : : : : : : : : : : : : ／　/`ー─-　_
　　＼ : : : : : : : : : : : : : : ／　／　　　　　　　｀丶
　　　＼ : : : : : : : : : : ／　／　　　　　　　　　　＼
　　　　　＼: : : : :_ - " ＞´　＼　　　　　　　　　　　｀ヽ
　　　　　　　ー "､_ -　　　　　　丶　_　　　　　　　　　　',
　　　　　　　　　　　　 ',　　　　　　　､￣／￣￣ ',　 _ノ ',｀丶
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　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　　f´-ヽl「_ﾌ ',　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　＼　_ｆ⌒',ｰ '　',　　 ',￣｀ヽ　　　　　　　＼- ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　丶 ',￣､　　',　　 ',､ __ﾉ　　　　　　　　/　ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼､　丶-ｲ`ー'　　　　　　　　　_ イ　　　ﾍ-､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣　　￣￣￣￣`ーr─≦　　　　／　∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∨　　　　／　　　 ∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 { ∨_ ＞ ´　　　　 ∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　丶　　　　　　　　　　 ∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　∨　　　　　　　　　　∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∨　　　　　　　　　　∧

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485 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [26/123]

　　　「私の名はルネ。これも運命、どうぞ私の所までおいでなさい。
　　　
　　　崖の上を登って、この穴のちょうど真上にある大きな樹を見つけ、その根元の入り口からここまで来るのです。」
　　　
　　　私は了承の返事を返し、ルネを訪ねることにした。
　　　
　　　半日かけて崖を登る道を見つけると、教えてもらった場所にあった木の大きなうろに身を潜り込ませて、
　　　
　　　そこから地下への道をくだっていった。
　　　
　　　進んでいった先には扉があり、それを開くと大きな部屋があった。
　　　
　　　部屋には井戸や箪笥やテーブルや椅子が置いてあり、人が快適に生活できるように調度品がしつらえてあった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／
～､、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 γ´￣￣￣￣｀丶　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／
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| |丁Ｔ=-　　　　⌒ﾆ=-　_丶､　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　／／
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二..,,_ｰ-: |　|:|:|:|::|::|::「丁:|::|　　　 || 　 | |｀ｉ¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨|　／／
| |::|::|丁ﾆ|　|＝=-⊥L_|: |::|￣~^"||─ | |_:|＿＿＿＿＿ｒ‐ーー┐__ｒーー‐┐＿＿＿＿＿＿______|／／
|_|::|::|::|::|::|　| | | | | | | |:「|::|￣~^"||¨¨ | |‐|‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐|:|￣￣|:|--|:|￣￣|:|‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐イ
「｢丁ｉTＴ|　|￢＝＝==ｰ|::|　　　_||_　 | | :|　　　　　 |:|====|:| 　|:|====|:| 　　　　|￣￣￣|　　 |
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486 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [27/123]

　　　そして部屋の奥にある椅子の上には首だけの人間が座っており、こちらを眺めていた。
　　　
　　　「ようこそいらっしゃいました。首だけの姿で失礼します。私はルネ。
　　　
　　　かつてはここら一帯を治めていた国の女王でした。しかしある時死んで墓に眠ろうとした時、
　　　
　　　首から下を盗人に奪われてしまい、以降安らかに眠ることができず、このような静かな生活を続けているのです。」

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487 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [28/123]

　　　部屋の隅では先ほど追いかけていた黄色い蛇がとぐろを巻いていた。
　　　
　　　「こちらの蛇は私の召使いのアンと言います。アンは亡くなるときに左腕だけを私に差し出して、
　　　
　　　私が安らかに眠れる日が来るまで仕えることを約束してくれたのです。これは彼女の左腕が化けた姿です。
　　　
　　　アンは外に出て食料を取ってきて、調理して私に食べさせてくれます。
　　　
　　　彼女がいなければ私の生活は成り立ちません。」
　　　
　　　すると先ほど私が掴んでいた手はこの蛇だったらしい。

　　　　
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488 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [29/123]

　　　「私の名はイン。ここで出会ったのも何かの縁です。ルネ、あなたの体を取り戻す手伝いをさせてください。」
　　　
　　　「嗚呼、ありがとうございます、イン。恩に着ます。体を失ったのはもう三百年も昔のことになりますが、
　　　
　　　私には分かるのです。遠く離れていても。私の体はいまだにどこか別の場所で、狭い所に閉じ込められている。
　　　
　　　私の体は運動できず、全身が凝り固まっており、それでここにいる私も恐ろしいほど疲れ切っているのです。」
　　　
　　　「難儀なことですね。しかし私にはあなたがうらやましい。」

　　　　　　　/　 /　　　　　　　ハＹ::/　　　　　　／　　　　　　　　＼
　　　　　　　|　ｲ　 !　　　　　　　　ヽV｀ｰ-　　　　　/　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　　　|/｜　|　　　　　　　 |　ﾄ､　ﾐ､　　　/　　　　　　　　　　　|　　　',
　　　　　　　|!　|　｜　　　　　　　}　 |ヾ､　｀ｰ-､_ | ! 　　　 /　　ノ/　/　　,　ﾊ
　　　　　　　|　 !　 |　　　　　　　/　∧　　丶　　 _|{　　　| /　／／//|　　/ i　}!
　　　　　　　　　',　|　　　　　　 / ／ヽ　､　　＼/r'ぃ　　 | |　/／∠＝i 　 | /}ハ
　　　　　　　　　 Ⅵ　　　　 /ｲ::ﾊ:::',＼＼　　| {∧ﾄ､　 | | /　｀k T:ｆヽ､ |/ ﾉ
　　　　　　　　　 }　　　　　　 /:/ |::::|ヽ　丶八ゝ､{∧　ﾄ!' 　　ヽiｿ　 |ハ
　　　　　　　　　 / /　| 　　　|::|　|::::|　＼　｀　>､_　＼{　　　　｀　　＼
　　　　　　　 / ∧　|!　　　 |::|　|::::|　　｀ｭ､,/　　',　　｀　　　　　　 /
　　　　　　　　ノ'´　ヽﾊ　ヽ入ヽﾉ::::| |　 |/rY!ﾞ　　丶　　　　　 -r′
　　　　　　　　　　　＼＼　}　｀ｰ､::i |　,'　|三,ﾍ　　　　｀　　　　　　 ,´
　　　　　　　　　　　　　　ヽヽ|　　|　|:::||,ｲ　ノ､三三ｲ廴､　 /｀rｰ　---′
　　　　　　　　　　　　　 |　 /!/|:::川／＼＼三三三≦ ／
　　　　　　　　　　　　　　ﾉ／　 /;'／三三ﾆミ二二ﾆ--ソ＼
　　　　　　　　　　　　　 ´　　／三三三三三三三三三三ﾆ｀ｰ､
　　　　　　　　　　　　　　　／三三三三三三三三三三三三三三ﾆヽ
　　　　　　　　　　　　　　　/三三三三三三三三三三ハ三三三三三ﾆ',
　　　　　　　　　　　　　/三三三三三三三三三三/　ヽ三三三三三ﾆ!

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489 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [30/123]

　　　するとルネは驚いた顔をしてこう答えた。
　　　
　　　「うらやましいですって？　あなたは五体が揃っているではありませんか。私の方こそむしろあなたを羨む身ですわ。」
　　　
　　　「いえ、じつは私も半身を失っている身。鏡像が行方不明なのです。しかし私には自分の半身との繋がりは一切
　　　
　　　感じられません。すでに鏡像は鏡像のみで、どこぞでくたばっているのかもしれません。
　　　
　　　そうすると、もう二度と私は鏡に自分の身を映すことはできないことになります。」
　　　
　　　「まあ、そうでしたの。やはり人には人ごとの苦しみがございますのね。その人固有の苦しみが。」

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490 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [31/123]

　　　「ええ。この世には人の数だけ苦しみにも種類がございます。
　　　
　　　そして結局の所どれだけ苦しんでいるかというのは、苦しんでいる本人にしか分からないものなのです。」
　　　
　　　私はそう言うと、改めてルネに向き直った。
　　　
　　　「ルネ、私があなたの苦しみを癒しましょう。あなたに代わって体を探します。
　　　
　　　そのための手掛かりがあったら教えてください。」
　　　
　　　「では私の髪を一房切り取っていってください。私の体が近づけば反応するに違いありません。」
　　　
　　　私は黄色い蛇の頭をなでると、それからルネに近づいて髪を一房切り取り、持っていた袋に収めた。

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　　　　　　　　　　　　　　　＞ γvゞ-'＾乂_)=c､　{　　　 _）
　　　　　　　　　　／二＼／　　　し゜、　　_ 　｀´C≧､￣
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491 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [32/123]

　　　「それからアンも連れて行ってくださいまし。彼女なしでも、しばらくの間なら私は生活できましょう。
　　　
　　　アン。あなたは左腕だけになってから、随分と勘を研ぎ澄ましましたね。その勘でどうぞインを
　　　
　　　導いてください。」
　　　
　　　私はアンを連れ帰り、水銀燈にルネのことを話した。
　　　
　　　彼女は話を了承し、再び我々は奇妙な旅へと出発した。

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　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　ヽ
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492 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [33/123]

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493 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [34/123]

　　　蛇に導かれるままに我々は旅をし、大きな川の橋の上へとやってきた。

;⌒⌒⌒ヽ　　 )ヽ
乂::__..　　::⌒´　　⌒ー ::⌒｀`ヽ、
乂:..　ゝ-::　 ::.　　　　 ::.　　　　　｀ヽ、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿
　 ::;;＼　　｀ー～ ::､　⌒ー -::: ;;　～）　　　　　　 __　　　　　,;:～ぅ　　　　r～ー::.､r～___ ::.｀ヽ、
　　　 ;;::ヽ　　　　　 _,　「Ｌ T ┐_:)::...　　ｒ‐ √Ц |「:|Л_r┐:r┐r┐,.┐__｀～ぅ::. ` {=_-}-┐r┐__
:: ～' ;､　　　　　　　 {=_-_-_-_-_-_} :⌒ヾ:: {_=_l_ｎ_ｎ_ｎ|-|=_=_-|_ｎ_ｎ_ｎ- -_}ｆ⌒:: . ヽ {_=_=_=_-_-_-_}　　　　　 ,.: ⌒ヽ
'　　　　　　　　　 {=_-_-_-_-_=_}　r-､ :)Υ=|_-_-_-_|=|_---_|-_-_-_-_|-/　　　　　 {_=_=_=_-_-_-_}　 r～⌒
　　　　　　　　　　　　 {=_-_-_-_-_=_|¨:|-_};''　}=_|-_「]_-_|=|=_=_=|-_-_「]-_|-},＿　　　{=|_=_[」=_-_-_-_}:ヽ '::.　　　 :: .
　　　　_...._　　　　　　 {=_-_-_-_-_=_|￢_ｉ￢_i'|=_|_-_-_-_|=|=_=_=|-_-_-_-_|-}=_=|ニ≦=|_=_=_=_-_-_-_}　｀ー～ﾞ　～
～⌒ ::　: : ＼　　 ,. - {=-_-_-[]_-_=|=_=_=_=_|=_|_-_-[」_|=|:_____::|-_-_[」-_|-}=_=|=_=_=_|_=_=_=_-_「]-_}　 .::　　..　　　 )
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木木木木 ,,ェェェｫェ,,{=_-_-_[］-_=_|=_=_=_=_|=_|_-_-_-_|=|:,:==:,:|-_-_-_-_|-}=_={=_=_=_|_=_=_=_-_-_-_}木ォｪォォ､　木
木木木木木木木ｴ{=_-_-_-_-_-_|_=_=_[」=|=_|_-_-_-_|=|{_三_}|-_-_-_-_|-}=_={=_=_=_|_=_[」=_-_-_-_}木木木木ｪ､,木
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494 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [35/123]

　　　橋には巨大な黒い岩がちょうど真ん中に鎮座しており、人々の通行の邪魔をしていた。
　　　
　　　「どうしてこの岩を誰もどかさないんですか？」
　　　
　　　通りすがりの者にそう尋ねた所、なんでもこの岩はいつの間にか橋の上に現れて、以来ずっと交通の邪魔をしているらしい。
　　　
　　　岩はとてつもなく重く、誰にもどかすことができないらしいのだ。
　　　
　　　気が付くとアンは岩の上に登ってそこに巻き付いていた。
　　　
　　　我々はそれに興味を持ち、試しに岩を押してみた。
　　　
　　　確かに岩はひどく重い。我々の力でもどかせそうになかった。

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495 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [36/123]

　　　私は袋からルネの髪を取り出してみた。
　　　
　　　すると髪は逆立って反応を示している。もしやこの岩がルネの体と関係があるのだろうか？
　　　
　　　そこで我々はその日は一日中黒い岩を押したり持ち上げたり、あるいは割ってみようと試みたりした。
　　　
　　　けれどもその試みはすべて無駄に終わり、岩はうんともすんとも言わなかった。

: 　　 |　 |::::::/＼　　　 / 　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　ヽ
:／　 |　 |:::/　　＼　　/　　　　　　　 /　　　 / 　　　／;　　　　ヽ　　|
　 /　 |　 |/＾＼＼　　:′ 　 /　　　　　　 ′　　／　 |　　|　　 l
　　　八　|　　　＼　　　|　　　　　　　　| 　　/　　　　　　 |　　ﾄ､　　|　　 |
/　.:/　| ヽ　　　　＼　| 　/　　　　　　　_　＿_　／　　　 |
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　l | 　 |:::[ 　＼　　 /　厶　|ｌ　　　￣|￣　丁¨¨Τテ卞､　 |l /＿〉　　　 |
　l l　/:|:::|l、　＼ {　 {　＼､　　　　 |　　　ヽ＿し:::丿　　　/､了] 　 ∧　|
　l |　|::|:::|/＼　　人　ゝ　^八　　　　 |　　　　　　　　　　　　　＼|　/ 　　＾
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　l |　|::|:::|　　　　＼　八 /∧ 　　ト　　　　　　　　　　　　　 }
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　　　|ヽ　　　 _／　､　　　　レ　　|　／| /＞　　　　　　／
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496 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [37/123]

　　　やがて夜になった。
　　　
　　　我々はその日は橋の上で眠ることにした。
　　　
　　　満天の星を眺める内にうとうとし、私はいつしか寝入っていた。
　　　
　　　夢にはサクラが現れたが、その顔は暗かったので、私は残念に思った。
　　　
　　　と、袖をひっぱる感触によって私は目が覚めた。
　　　
　　　蛇のアンが私を起こしたのだ。

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　　　　　　　　。　　.　　　.　。　。ﾟ.　。*　。,　´。.　　☆。。.　ﾟ。+　。　.。　　.　　｡　　　.
　　　　　　　　　.　　　。　　ﾟ　ﾟ。　。,　.。o　☆　+　,ﾟ。　*。.　。　。　.　　　　。　　　　.
　　　　　　　　ﾟ　.ﾟ　ﾟ　　。ﾟ　+　。.　+。　*　。ﾟ。ﾟ.,　,+　。ﾟ.　。　.　.　　　,　　　　,　　　.
　　　　　　　ﾟ。ﾟ+ﾟ`,　o。。.ﾟ*。ﾟ　。.ﾟ　。　☆＋。。ﾟ.　°　。　.　　　,　　　　　　ﾟ　　　　ﾟ
　　　　　　　　。,　.ﾟ。　+　☆。,ﾟ.　o。。+　。ﾟ.,　　.　ﾟ　　　,　　　。　　　　　。　　　.　　　.
　　　　　　　　ﾟ.　ｏ　*　。ﾟ。ﾟ.。ﾟ。+ﾟ　。　。　ﾟ。ﾟ　。　　ﾟ
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497 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [38/123]

　　　私が何だろうと思っていると、どこからか、夜にそぐわない明るい気配がするのが分かった。
　　　
　　　そこで私が辺りを見渡すと、黒い岩の底から光が漏れ出ているのが認められた。
　　　
　　　一体何が起こっているのだろう？
　　　
　　　私は岩の底を探ろうと思い、縁に両手をかけて思い切って引き上げてみた。
　　　
　　　すると岩は昼間よりもわずかに軽く、少しだけ持ち上がった。しかし押しても動いてはくれない。
　　　
　　　私はいったん岩を降ろすと、今度は橋の床の上に腹ばいになって、岩を両手で持ち上げた。

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498 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [39/123]

　　　岩が持ち上がって底にあるものが見えた。
　　　
　　　それは穴だ。
　　　
　　　穴から光が漏れ出ているのだ。
　　　
　　　私は顔を近づけて穴の中を見やった。
　　　
　　　すると驚くべきことに、穴はある家の中の光景を映し出していた。
　　　
　　　床に加えてベッドにテーブル、椅子も見える。

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499 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [40/123]

　　　私の頭は混乱した。ここは橋の上、それもちょうど真ん中に我々はいるのだ。
　　　
　　　その下に住まいを設けるスペースなどあろうはずもない。
　　　
　　　とするとこの穴は、今この時だけ別の空間に接続されているのだろうか？
　　　
　　　そう考えでもしないとこの現象は理解できなかった。
　　　
　　　私は目を凝らして穴の中を懸命に見詰め続けた。

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500 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [41/123]

　　　穴を見始めてから三十分が経ち、一時間が経った。
　　　
　　　そろそろ手が痺れてきた。穴の中の部屋には変化がない。
　　　
　　　もう岩を降ろしてしまおうか、そう思った時である。
　　　
　　　部屋の中に一人の痩せた少女と肌の黒い男が入ってきた。
　　　
　　　少女の髪は鮮やかな銀色をしていた。

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501 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [42/123]

　　　男は裸で、その肌は濃い闇を凝縮させて造ったかのような漆黒だった。
　　　
　　　少女は着ていた衣服を男にひん剥かれ、ベッドに倒された。
　　　
　　　少女があお向けになり、その顔がベッドから天井を向いた。
　　　
　　　すなわち穴から覗いている私の顔と向かい合う形になった。

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　　　　　　　ヽ　　　　/　　　　　　　　ｌ/　　　　 /
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　　　　　 ,　 -‐'´　　　　,.ｨ　　 / 　　　　ﾉ　　　　 ', 　　　ヽ
　　　　/ 　　　　 , -'´ ,'　　// 　　　　/ 　　　　　 i 　　　 ',
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502 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [43/123]

　　　そこで私はどんなに驚いたか分からない。
　　　
　　　目を見開いた私は思わず腕から力が抜けて岩を落としそうになってしまった。
　　　
　　　私は懸命にそれに耐えて、なんとか岩を保つ。
　　　
　　　穴の下にいる少女、それは私だった。
　　　
　　　影の時とは違い、輪郭もぼやけていない。
　　　
　　　寸分違わず正確に私の姿を写し取った本物だ。
　　　
　　　百年ぶりに自分の姿をはっきりと見たにも関わらず、私にはそれが分かった。

　　　 /　.:／ .: / :　　　　 ; :.:.　 |　　　 :　　　　　　ヽ　　ヽ　　　　ヽ　＼　{
　　　 ′://　.: i /:　　　　 ://:|:　 :|　　　 |:.　ヽ:.　　　|:.:.. :.　:l 　　　 i　　ヽ. ､
　　　i　/:/:　.:. |:l:.:　 :　　 ://:/}:　.:.l!　　　 l:. 　 :ト:.　　:|:.:.:.:..ヽ:i 　　　 l ヽ:　ﾄ､＼
　　　|./|:l!:. .:.:.:.|:|:.:　 : 　 .:!':/_/:..:./__V　　 :l､:.　:| _l:.　.:l_ヽ:.:.:.:|:|　　　 : |　 V |
　　　lハﾊ:. :.:.:.:|:|:.:.　 :.:　.:|/'7:.∠二.､ヽ　　:{ヽ:..:l´.]:. :/_￣ヽ:.}:|　　　 :} |　　}: !
　　　　 V:.:.:.:|ﾊ:.:..　:.:. :.|_/_´＿＿__　ヽ　.∨＼く }:/＿＿_ ∨　　 .:/:ﾘ　,ﾘ}.|
　　　　　ヽ:.:.:ﾄ:.ヽ:...:.:.:.小{¨{[:r::ｨ.示｀　＼:.{ 　´不_r::ｨi丁ﾌ.′　 :/: /　//ﾉ′
　　　　　　　 }:.:.ハ:.ﾄ､:.:.:.:.{ `　く辷.ル　　　　＼.　ヽく辷ツｲ/　　 ./: /　/
　　　　　　　/:./:小:ﾄ､＼:.:ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　 / 　／:／: /
　　　　　ノイ{|:.:.|:.:|:.:｀ヽミ‐＼　　　　　　 |　　　　　／- ブ:.イ:.:.l{ {
　　　　　从!:.:ﾄ､:.:.:.:.:.:∧　　　　　　　　 ′　　　　　　‐ ７:|:.:.|:.:.:小､
　　　　　　　ヽヽ{ ヽl:.:.:.l::/ﾄ､　　　　　　　　　　　　　　 .ｲ:::|:.:ﾊ:.:八
　　　　　　　　　　　　}:./l::i:.:!::|＼　　　 ´　￣｀　　　　ｲ::||:.::|/ j/
　　　　　　　　　　　ノﾍl::|l:.|:::!::ﾄ:＞ .　　　　　　　　イlﾚ|::ﾚ!:::|
　　　　　　　　　　 |::|{`!::|::|:}Vﾍ. ＞､　＿ . ,＜／|ｲ|::| !:::!
　　　　　　　　　　　　　|::ハ|::l!::l_ﾄ､:.:´.:.:.:.∨:.:V.:.:.:.:':.:.:.ｨ::|::l |:::|
　　　　　　　　　　　　　|:{　.j斗く:ヽ::`:::ー------―:::´:j＞.､}:::|
　　　　　　　　　　 _...斗:.´:.:.:.:.:.:.:.:.:｀:.‐:.::::＿＿::::.:-:.ｧ´:.:.:.:.:.:｀丶､

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503 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [44/123]

　　　穴の下の部屋にいる私は黒い肌の男に愛撫を受け、体の隅々までいじくられていた。
　　　
　　　まるで兵隊が捕虜の全身をあらためる時のように、その手つきには遠慮がなく、執拗だった。
　　　
　　　私はゾッとして、体中の毛が逆立つように感じられた。
　　　
　　　男はもう一人の私を四つん這いにさせると、その背後に立って私の股を開き、己のペニスをそこに挿入していった。
　　　
　　　黒い男は激しく腰を揺さぶって獣欲をむさぼっていく。
　　　
　　　私の混乱はますます高まっていくが、ここからは何もできない。
　　　
　　　私は無力で、ただ見ていることしかできなかった。

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　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　',　　 i　/　　　　　　 ',
　　　　　　　 .／　　　　　　　　　　　} 　 |　{　　　　　　 }
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　　 {　　　／　 {　　　　i　　　　　　　 !　　　　 .!ヽ　　､　　　　 ,
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　　　　　　　i: 　ﾊ　', ヽ　|　　',　　　　　　　 i!　　　　　　　　 , 　ﾉ　 ./~Ｙ
　　　　　　 ,ﾊ　　',　',　ｰj　　 ',　　　　　　　ハ　　　　　　　／　／　 ,ｲ /.:}
　　　　　　 i　ヽｰ- } ﾉ　　　　　ヽ　　　　　 ./-､',　　　　　／　／　.イ　ノ:./j
　　　　　　 {　　Ｙ　　　　　　　　＼　　　／ヽ　＼　　 .＞ ´　　￣　＞ ´:／/
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504 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [45/123]

　　　男は陰茎を性器に挿入しながら、私の肛門に指を突き刺し、ねちねちと中をいじくった。
　　　
　　　男はさらに私の尻を叩き、背を妖しく愛撫した。
　　　
　　　それから男はしばらくの間ピストン運動を続けると、やがて背を震わせて果てた。
　　　
　　　その後男は考えられる限りの方法で私を汚した。
　　　
　　　それは私を侮辱し、存在価値をゼロに貶めるためのあらゆる手管だった。
　　　
　　　性器を私に舐めさせ、発射された精液を顔じゅうに塗りたくった。
　　　
　　　天井から私の体を吊るすと真っ赤になるまで尻と背を鞭で叩いた。
　　　
　　　肛門を汚し、性器を汚し、あらゆる場所を汚した。

｀ﾞ''ｰ- ..,,ニニニニニニニニﾆニﾆi!ニニニニニニニ..イニニニニニニニニニニニニニニニニﾊ__
ニニニニ≧zz--..,,ニニニニニニ|ニニニニニニﾆ/ニニニニニニニニニニニニニニニニ r_＿_　ヽ
ニニニニニニニニ≧z..,,ニニニ.入ニニニニニﾆ/ニニニニニニニニニニニニニニニニニー-- ､｀V
ニニニニニニニニニニﾆ≧==≦: : ≧==zzニﾆ/ニニニニニニニニニニニニニニニニニニ弋二ヽ }
ニニニニニニニニニニニニ.ﾊ: : : : ､: : : : : : : : }ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニﾆ廴.　j
ニニニニニニニニニニニニニ≧=- ｀ー--. : :´i!ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニﾆ!ｲ
ニニニニニニニニニニニニニﾆ|　 ',: : : : : ',: : :.|ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニﾆ|
ニニニニニニニニニニニニニﾆ|　　',: : : : : ';: : :!ニニニニニニニニニニニニニニニニﾆﾆニﾆﾆﾆ.|
ニニニニニニニニニニニﾆニﾆ.ﾊ.　　',: : : : : ',:.ハニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニi!
ニニニニニニニニニニニニﾆ/ .∧　　｀こ二 ´i　 ∨ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ|
ニニニニニニニニニニニニ/　　込.　　i!　　 ||　ｲ∨ニニニニニニニニニニニニニニニニニニ｜
ニニニニニニニニニﾆニﾆ./_　　　　 ≧ j. __　||≦ |　Vニニニニニニニニニニニニニニニニニニ.!
ニニニニニニニニニニニ/　｀＜＿八　　　/　　乂_∨ニニニニニニニニニニニニニニニニニ｜
ニニニニニニニニニニ／　　　　　ー―-､　 , -――　 ∨ニニニニニニニニニニニニニニニニニ!
ニニニニニニニニﾆ／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　∨ニニニニニニニニニニニニニニニニ｜
ニニニニニニニニ/　　,.. -- ――　　　　　　　､__ 　 -―-∨ニニニニニニニニニニニニニニニニ!
ニニニニニニニﾆ/ _,.r,:.､:.:.　　　　　　　　　　　　　　 ∨ニニニニニニニニニニニニニニニﾆ,
ニニニニニニニ/´ / :ゞ:.:.:.ﾉ　　　　　　　　　　　　　　ヽニニニニニニニニニニニニニニニﾊ
ニニニニニﾆニ′ .{　　　　　　　J　　　　　　　　　　　　　　　.:.ゞ＼ニニニニニニニニニニニニニニ∧
ニニニニニニ::i　 .八　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀　´ }ニニニニニニニニニニニニニニニ,
ニニニニニニ:.　　　　､　　　　　　,.ィ　　　　　　｀:.　　　　　　　　ﾊニニニニニニニニニニニニニニﾆ:,
ニニニニニニ′　　　　｀ T　　　´　　　　　　　　　　 ≧=--- r ''´　}ニニニニニニニニニニニニニニニ!
ニニニニニﾆ′　　　　ﾊ　　　　　　　 i　　　　　　　　　　　 !　　ﾑニニニニニニニニニニニニニニニ:.
ニニニニニ/　　　　　　 ', 　u　　　 |　　　　　　　　　　　′　/ニニニニニニニニニニニニニニニニ:',
ニニニニﾆ.′　　　　　　 ',　　　　　　|　　　　　　 i　　　　　　 .iニニニニニニニニニニニニニニニニニ
ニニニニ/　　　　　　　　　 ',　　　　 !　　　　　　J 　　　′ 　 !ニニニニニニニニニニニニニニニニﾆ|
ニニニﾆ.′　　　　　　　　 } 　　　 ,　　　　　__　　　　 {　　　 Vニニニニニニニニニニニニニニニニi!
ニニﾆﾆ/　　　　　　　　　　　 ′　　　　　　　／　　｀ﾞ''　　 ', 　　 ∨ニニニニニニニニニニニニニニニ｜
ニニニ,　　　　　　　　　　　　 /　　　　　i　　 ./　　　　　　　＼:, 　　 ∨ニニニニニニニニニニニニニニニ!
ニニﾆ,　　　　　　　　　 ,.ィ´ ￣￣ヽ　　} 　 /　　　　　　　　　＼　　　∨ニニニニニニニニニニニニニニ｜
ニﾆ／　　　　　　　　／　　　　　　 ',　　　 .′　　　　　　　＼　　＼.　　∨ニニニニニニニニニニニニニニ!
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505 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [46/123]

　　　その間もう一人の私はずっと無表情を貫いていたが、やがて顔を手で覆い泣き出した。
　　　
　　　それから少女は男の手によって連れ出され、姿は見えなくなった。
　　　
　　　次に連れてこられたのは水銀燈だった。
　　　
　　　ここにいる水銀燈ではなく、別の水銀燈だ。
　　　
　　　私は息も止まるほど驚いて、岩をいったん降ろすと、慌てて水銀燈を起こした。
　　　
　　　水銀燈は眠っているところを起こされて不機嫌だったが、穴を覗き始めると途端にその表情が変わった。
　　　
　　　真っ黒な肌の男が三人部屋に入ってきて、水銀燈を取り囲んでいるところだった。

　　　　　　　　　／　　　　　　　　　イｆ它メﾐー- 　＜＿　く￣＼
　　　　　　　　ィ⌒´／￣廴　／｛い辷彡ｸ―- ､＼＼　＿〕＼ヽ
　　　　　　 f´l |　 /　／　ハ/　／＞＝≠=ｰ- 　＼＼ヽ __厂ヽ＼
　　　　　　　|　／/　　　／　/／／　 ′　　ヽ　｀　、＼ヽ（＿　 ∠二ﾆ、
　　　　　 /⌒7⌒ー┬ｧ　 / ／ /　　l　　 |　　 l 　　＼　ｌ　l　／ - ― ｒ'
　　　　／|　/／　／厶　 l /　 /　ｌ　l| 　ｌ| |l　 | |l　　ｌ　ﾄ､|　〃.::.::.::.:て |
　　　ヽ｜′　ノ　／ヽィl 　 ′｜ l| 　ｌ| |l　 | |ﾄ､　 |　l | ｌ〈″ ::.::.::. 〈｜
　　　　 lﾉ　　　　　´￣　川　ｌ| ||｜」| 　ｌ|｀T 7 ハT　|　l | | | ::.::.::.::.::.::| |
　　　 ⊥∠￣`ー-<⌒ 川　 |l ｋﾍ八　 |　|/,,斗=ミｋ　ｊ | ! | ::.::.::.::.::. | |
　　　　＼::.::.:-‐''´￣ヽノ川　 |l_|孑ﾃミ＼ |　l〃弋ヅﾞ｝ ' 从 |::.::.::.::.::.::.| |＼
　　　　　ヽ ::.::.::.::.::.::.::..＼ﾉ|　 lﾍド _ゞｿ　　　　　　￣ /　/｜_j::.::.::.::.::.::.| |＼ヽー-　､
　　　　　　ヽ ::.::.::.::.::.::.::.: >ﾍ　ｌ八　　、　　　　 /　/l　|´::.::.::.::ー―｛　　、　￣ヽヽ
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　　　　　／ /　/　弋_::.::.::.::.::.::.::l　 ||　　 {Ｌﾉ| |Ｌﾉﾉ　 /　　.:..＼::.::.::.//j:i､　ﾉ人　ヽ
　　　　 ´　/　/　　 / ｀７⌒ヽ/ |　ﾉ|ｰ-　_￣　￣ｲ　;′.:´　　　＼:.ヽ{i:i:i:i:ト--＜ﾊ　 }
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　　｛　｛　イ:i:i:i:i:i:ｉ/:i:i':i:i:/ .::.::.::|＼＼＿ﾉ）　　:.　　　　　　　　　 |::.::.::.::l:i:i:i:i:i:i:{:i:}i:i:i:ﾄ､
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　　　　人｛　ヽ′　　　　　　　〔￣::.::.::二ィ::]{≫==≪}[::.r―‐::.::.:|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ::.::.::.:ニ＝::]{≫=≪}[::.::.ー‐.::.::/

506 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [47/123]

　　　黒い男たちはさらに苛烈な方法で水銀燈を汚していった。
　　　
　　　彼らは水銀燈の口へ、性器へ、肛門へと同時に挿入し、獣声を上げながら交合を楽しんだ。
　　　
　　　その周りをさらに四人の男たちが取り囲み、陰茎を自分の手で扱いて射精し、
　　　
　　　その液体を水銀燈の顔や背中に塗りこんでいった。
　　　
　　　そこへ先ほど連れられた “私” が再び連行されてやってきて、余った四人の男たちとセックスが再開された。
　　　
　　　我々は一晩中その様子を穴の中から覗いていた。
　　　
　　　異様な光景は朝まで続き、やがて我々の腕にのしかかる岩の重量は重くなって、岩を降ろさざるを得なくなった。
　　　
　　　すると穴から漏れ出ていた光もやんで、すべては元の通りに戻った。

　　　　　　 ,.r--､　∠二`=､―- ､
　　　　　　 {{＿ノ三三三≧ミ､_　　＼
　　　　　　 `∠二二ニ＝ミ、＼}}＿_　＼
　　　　　／　　　　　　`ーﾍ＞､＼￣＼　＼　　　 .＿_　　 .＿_
　　　　 /　　　　　　　＼　　　 | ||＼＼＿}}　　＼　 / ,ｨ　＼../ ,ｨ　＼
　　　 /　　　　　ヽ　　_j |ヽ　 :! !!　　》￣＼＼　　.fv'　/ ,　..v'　/ ,　.ヽ､_
　　　　　　　　ト､ V´ :NLｨ　　| {{＿〃＼　＼＼.　.＼　　_|_ﾄ,/ / ,ｨ　 V＼
　　　　　 i　　:!　_〉iV庁刈.|　/　￣　 Vヽヽ　　ヽ〉　　＼　≫il｀ヽ'　.　,}ニ}
　　　　　 !　　「´ Vr代ゞ´::j/|　　　　 |＜}:::}､　　　＼.　　＼.il//TYT´ﾇｲ}
　　　 !　　|　 'T≧ﾐ　 ::::::::　　|　 i 　　 !　 L「＼　　　＼.´　＼ミニニﾆシ
　　　 .､　ﾄ、　! Vﾊ　　　　 |: /|.　/ /´￣｀＜ﾆ}　　　＼　　.＼T＝Tﾞ|
　　　　＼!. ＼「八ｰ＜￣ヽj/ .j　. /　　　　　｀ ≪ .ﾄ、.　 ', 　　 l　　 |
　　　　　　　　　　 |＞　`ー'　／　/　　　　　　　　　｀ '　､.,l　　　.l　　　|
　　　　　　　　　　 |　|　　￣　Y /　　　 _　- 、　　　　　　　｀　-　l　　 .|
　　　　　　　　　　 |　|　　　..../,/　　 i　　　 / i　　、　　　　　｀{ 　　 l
　　　　　　　　　　,ﾙl -'　￣￣/./　　 i/　　　 .l　　 .＞　_　　　 .', 　　.l
　　　　　 r.､,..-ｧ'´　　　　 , /　　　.l　　　　 , 　　,'　　　 l｀.　-　＿　　/
　　　　　 .Y: : ,'　　　　　　 ,:'　　　 l　　　 / i l　∧　l　　l　　..l　 . l　　l.
　　　　　　 ' ; '　　　　　　　{ｌ　　　 ,.　　　／　l 　/　lヽi　　|　　.i 　 i　　|
　　　　　　　　l　　　　　　　　 ,.'　　　　　 f ﾄ､|　l　　|　　.l 　 l　　|
　　　　　　　.八　　　　　　　 , 　　　　 / 　 l,八|　l、ｌ :|　　.l、ｌ..l、ｌ :|
　　　　　　　　 .＼　　　　　　／　　　　 ´ ,.　〈　 .l　l l | :|　　.l l |.l l | :|
　　　　　　　　　　｀　　＿ , .イ　　　　　　　　 l　　V/ / .l | :|　　　l | :|　　 .＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　 .|　　　　　　　　　ヽ　　∨__ l | :|　,　- ''' ´ ￣　　　￣｀　、
　　　　　　　　　　　　　　　　八　　　　　　-｀ー- ＿ニフ´　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　　　　 ´￣　　￣　 - 、
　　　　　　　　　　　　　　　 ',　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　　　　　 V
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∧　　　　　　　　　　　　　　　　　 '.,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∧　/　　　　　　　　　　　　　　　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .∨　　　　　　　　　　　　　　　　 k .、
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,　-　´　　　　　　　　　　　　　　　　　　　} q }
　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　)-ｲ｀ヽ
　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ .,介.､ﾊ､　　 ,
　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / ./:￣｀ヾ､￣
　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i-ｲ i: : : l: ﾊ＼
　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾉ :{: l: : : l: : }　｀　ー-　　＿
　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,　＜´　 {: l: : : l: : }

507 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [48/123]

　　　私も水銀燈もこれ以上ないほど衰弱していた。
　　　
　　　今しがた見たばかりの光景は一体なんだったのだろう。
　　　
　　　これらは何を意味しているのだろう。分からない。
　　　
　　　ただ確実なのは、あれがきっと本物であろうということだけだった。
　　　
　　　あの像たちの有り様は真に迫っていた。
　　　
　　　幻覚や夢のたぐいではない。
　　　
　　　作り出された映像ではなくて、本物の我々があの場にいたのだ。
　　　　　　　．．
　　　おそらくは鏡像の我々が。

　　　　　　 /　　　　　　　/　 ....-‐==＝￢　　　　　　＜⌒
　　　　　　　　　　　　　　　 ..:::::　'"´　　　　 .　-‐…‐-ミ　｀
　　　　／　　　　　　｛:／　　　　　 ´　　　　　　　丶⌒　＼
　　__彡　　/　　　　　　　｛　　　　　／
⌒¨¨ﾟﾟ　　/ /　　　　　 l| ｛　　　　.
　　　　 / / 　　　 |　 l| ｛　　　　　　　　　　　　　、　　　　　ﾟ｡　　　ﾟ｡
　　　　　　　　 |　八｛　　 /　　　　　　　　｝　 |　　　　　　ﾟ
　　　　 |　　　　　　 ′ ＼　.′　　　　　　　　　｝　 | 　　　|
　　　　 | ∧　　　丿:{　　　　　　　　　 |　　ハ　　　　　|　､　　　　 l
　　　　 |　　　　　 :::|　　　 |　　　　　　　　 /|　　　　　　ハ　　卜　＼　　　|
.　　　八{　　　　　　|::|　＼　| 　　　　　 / l|　 /　　} /　　　厂＼ハ　　|
　　　　　｝　　　　|::| 、　　|　　　　　　厶斗 / ￣／　　 |　　_.斗rｧ｝　八
　　　　　｝ :|　　 |::|　ﾄ､八　　 | 　　｛　 |/___.斗r　　 | /´｛::...ﾂ　　／
　　　　　｝ :|　　 |::|　|::::{｛: ＼　卜.　｛　《｛::....ツ＾　　　}′、　　ノイ
　　　　　｝ :|　　 |::|　|::人ゝｯj＼{　＼{　　　　　　　　　　　 l｛
　　　　　｝八　 ∧:: __|:::|　＼＿,.､＼　　　　　　　　　　　　 ′　八
　　　　　　　　　　｛　ﾟ｡ ::::_｣　 |:::|　ハ＼　　　U　　　　　　　　 _
　　　　　　　　　　　＼ﾟ　　　　|:::|/　　.　　.　　　　　　　　　 ´
　　　　　　　　　　 V　八::|八　 l 　　＞　　　　　　　　／
　　　　　　　　　　　　　　 }　　 |:::|　j/V|　　　　　 ≧　　. __／
　　　　　　　　　　　　　　 }/　 i|:::|　|.. 八/＼/＼／∨＼〈......｛
　　　　　　　　　　 /　　 |:::|　〉..............................................ノｰ-ミ
　　　　　　　　　　　　　　　 |斗'........≧=‐-.............-‐=≦.......................
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　　　　　　　　　　　／.................................... /.........................................................................

508 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [49/123]

　　　百年前に鏡像を売り渡して以来、もうひとつの我々はおそらくずっとああやって
　　　
　　　邪悪な者たちの欲望のえじきになってきたのだ。
　　　
　　　そう考えるとおぞましい心地になってたまらなかった。
　　　
　　　私がサクラを抱いたり、水銀燈と酒を飲んだり、馬に乗って荒野を駆けている間も、
　　　
　　　鏡像たちは無言で男たちに犯されて、涙を流していたのだ。
　　　
　　　私は気が付かなかった。
　　　
　　　私はそうしたことに気づかず、何も知らずにずっと生きてきたのだ。

　　　　　　　　　　　 .　:´　　　　　｀: : . .　　　　　　　　　＼::::::!　ｊ
.　　　　　　　　／　　　　　　　　　　｀: : .、　　　　　　　　＼!　,′
　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ. 　　　　　　　 | ｲ
　　　　　 , '　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　　八!
. 　　　　 / /　　　｜　　　　　　　　　　　　　　 : : : .　　　　　　　 i　　ﾍ.
　　　　 / /　　　 !　. :!　　　　　　　　　　 |　　　 . :i　　　　　　　　八　　ハ
　　　　　 '　'　　　　ﾍ　｜ : 、　　　　　　 |　　　　. :|　　　　ﾉﾉ. : :∧　　 |　:
. 　　　 i　i 　　　: : :::',　ﾄ.、 :＼: .　｀ヽ: .　　 |: .　　　: :|'⌒ヽく／／. : : ﾉ::ﾊ､　 !　: .
　　　　　i　i 　: :!　　: ::|ﾊ ,.く｀ヽ｛｀丶、ハ: : 　 !: : 　. : : :|ヘ. 　Ｙ: : : :.／:./:ハ＼.|　: : .
　　　　　|　! : :八　　: :|　｀くＬ.....≧=≠7ﾄ､ : . !: : : .ハ: :ﾄ､　　 }: : ／:.:.:/: i　 |:::::ﾄ､ : : : .
. 　　　 i　! 　: :iへ. : :|　　气て:::::ﾊ〃　ﾊ: :ハ: :/　ｉ/　}　/　厂: : : :./: : !　 !:::::!　ヽ : : : .
　　　　 ',ハ . : ! i ｒミﾒ:､　　弋Ｚﾝ　′　ｊ/ 　!/　　ﾉ　ｒ‐ '　/: : : : :./: : :ハ. |:::::|: : : : : . .
　　　　　ヽハハ从ﾍﾊ｀ヽ　　 ´　　　　　　　ﾉ　　　　　　ノ: : : : :./: : .ｲ:::::}ﾉ::::ﾉ　　　　　. : :/
　　　　　　　　　　　ﾄﾘ　　　　　　　　　　　　　　　厂　｀ヽ: ://: ／. !::::::::イ　　　　 . : :./
　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　u　　　　　　　　　 Y//ヘ.　 |:::::厂　　　　 : : /
　　　　　　　　　　　｀ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　V⌒　　 |::::|　　　　　. : : :/
　　　　　　　　　　　　　　＼　＿　　　　　　　　　　　　　　　〉､　 i　!::::|　　　. : : : ﾄ､{
　　　　　　　　　　　　　ヽ　　｀　　　　　　　.:' 　　　　 /＼/:::::∨|　!::::|　 . : : : : : |　ヽ
　　　　　　　　　　　　　＼　　　　　／　　　/＼　 /:::::::::::::::::::::|　!::::|　　: : : :.:八
　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ. __　.. イヘ.　　 /::::::::ヽ'::::::::::::::::::::::::|　!::::|　　: : : :!: : i｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∨::::::::＼/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::八 !::::|　　. : :.ﾊ: :ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ⌒ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ|　 . : :/ ﾉ´
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509 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [50/123]

　　　翌日の晩も穴から光が漏れ出てき、岩は少しだけ軽くなり、
　　　
　　　我々はそこに張り付いて部屋の中を覗き続けた。
　　　
　　　そこで鏡像たちは延々と犯された。
　　　
　　　相変わらず性器を汚され、口を汚され、肛門を汚され続けた。
　　　
　　　それも代わる代わる、何人もの男たちが我々の体で大いに楽しみ、我々が涙を流すのを見て喜んだ。
　　　
　　　それは地獄の宴だった。
　　　
　　　女性の尊厳を破壊することだけを目的に催された一種の見世物であり、遊びだった。

　　　　　　　　　　　　　 i/////////////ﾊニニニニニニニニニ!ニニニニニニニニニ/////////u////j
　　　　　　　　　　　ﾏ////////////,ﾑニ.==---==＜ニニニニニニニニニニニﾆ'//////////////′
　　　　　　　　　　　　　　　ヽ/////////////i'´　　　　　　　＼ニニニ＞ "´ ￣￣｀＜j//////////////
　　　　　　　　　　　　／＼//////////.ﾑ　　　　　　｀￣ ´　　　　　　　　　 /////////////,.ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　/ニニ:＼//////////ヽ　　　　 u　　　i　　　',　　　　　　　 ////////////／ﾆﾆ:,
　　　　　　　　　　　　　./ニニニニ＼/////////＼　　　　　　ノ　　　　　　　　　　__ノ//////////／ニニニ',
　　　　　　　　　　　　 /ニニニニﾆﾆ,＼/////////,｀ヽ　　　　　　　　　　　　　／//////////,／ニニニニニ,
　　　　　　　　　 /ニニニニﾆ／　　Ｙ/////////,ﾊ､__　　　　　　　　 ___ ノ//////////}／　＼ニニニニﾊ
　　　　　　　　　　 /ニニニニ:.　　　　　 i　//////＞--- ’　　　　i　　弋/////////////!　　　ヽニニニニ,
　　　　　　　　　 .ニニﾆニﾆ/　　　　　.､|////.／　　　　　　　　 |　　　｀￣￣｀ヽ/////,　　　　　ﾏニニﾆﾆi
　　. --､　　　　　 ,ニニニニ,　　　　　　　j////　　　　　　,ｨ'´￣￣ﾞ＞＜'´￣｀､　　ﾏ///j　　　　　　∨ニニﾆ!　　　　　 ,.--､
　 .i　　＜　　　　iニニニ /　　　　　　ﾏ//{　　　　／,. -‐:.:.:.:.ヽ≧≦ノ―-､.:.:＼　 }//.ﾘ　　　　　　 Vニニﾆ　　　　　＞'　　 }
　ﾉ　　　　｀＜ ..|ニニﾆ./　　　　　　　　＼!　　　.／:／:.:.,. -‐＜／＼＞､:.:.:.:＼:.:＼.,／　　　　　　　 ∨ﾆﾆﾆ|　＞ ´　　　　 {
../　　メ､　　　｀＜ニ/　　　　　　　　　　　ヽ　/:／:.:.／ |＞'´　　　　　 └‐＼:.:＼ハ　　　　　　　　　 .Vニ＞ ´　　　　　　　 |
乂r ,-{､　ヽ　　　　　　_/　　　　　　　 .＿＿　　 /:/:.:.／」￣　　　　　　　ヽ　Ｌ＼:.ヽ:|〉　　　　　　　　 .',´ 　　　　　　　ｲ　.ﾉ
　｀/⌒　　＼　　　　　　　　　　「「￣＼＼|/:./「　　　　　／　　　i　　　 |　　Ｌヽ:.ﾄ､　　　　　　　 ,　　　　　　 .／ｰt''｀ヽ
　 /　 i　　　＼　　　　　　　　　 | |　　　〉::〉/_」　 /　　 /,　 i　　/./　　 |　　 !　| V|/＝＝＝､　　　　 i　　　　　／　　 i!　　＼
　′　.|:. 　　　＼　　　　　　　　 .LL≧＝７/ .|　　 |　　 / /　 | 　/./　 / /! 　 |　「￣「＼＿＿||　　　　　.j　　　／　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／:／／／//|　|　　ﾄ､　/ / |　/ /./　 ./ / |　 /　 | 　 ||＼.`ｰ‐┘　　　　　イ
　　　　　　　　　　　　､　　　 ..イ.／　《//_//　|　|　　 N〉＞=イﾚ' /V_＿/_/__レ/ |　/ 　 ||'ぃ＼＼＼　　　　イ
　　　　　　　　　　　　　｀ー　´　　　／// ７　_」　ﾄ､　ﾄ､!j∠　ｊ/ / / ￣ｲ /￣ j/　!/ / /.||'ぃ}} 》　〉:::〉ー‐　´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /.〈/　　　 / ∧　＼「￣｀メ|　 /／ .jｨ＝≠x,.　/ / ∧ ＝手'　ヽ/
　　　　　　　　　　　　　　　　 {　　　　　/ / .∧＼＼　　 j／　　　 _,.イ／ / /　∧//　}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　八　　　　/ /　 |　|＼＼_ヽ　　　　,　　　　_＞'　　／　/　〈/　,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　',　　 / / 　 ,!　.!、＼ﾄ､｀　〈￣::冫＜／７／　　/　 /＼∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∧　/ /　　/!　「＼　,-､＞､ー´ ,.　イ／　／/ 　/　:､＼`､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 У,ｲ　　∧|　 | 　 `ー} ヽ　＞＜　／／／/| .|／ゝ、＼　ヾ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　／／.∧　∧ ﾄ､. ＼　　　　　　 / 　{　 /,'　ﾚ''　　　∧　}. 　ハ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / /　〃', ﾄ∧　|ヽ＼.{.　　　　ヽ　／.{　/ヽ ! .|　　　　 /　∨‘, 　 .}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 | ｉ　〃　∧ V∧　 i　　　　　　 Y　　ヾ. 　`　!　　　 ∧､ ∨ﾊ　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 | ﾚ'/　/ .! ヽ/　＼!.　 J 　　　 i　　　　　 ′　　 /‘:，Ｖ ∨／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 V/　/ / ! ,ｲ|.ヽ　　 ',　　　　　　 .|　　　　　　/　　　 ./ 　 ,ﾝ,/／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∧V_///〃/ /i　　　ヽ　　　 .人:.　　　／　　　 .ｲ　　'"ﾞ´'′
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /ﾚﾚ!り/／　.､　　 ` ｰrｪイ　　ｰrｫイ　　　　 ′
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　 ',　　　　　　 ′ 　　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　',　　　　　 /　　　.／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_＼　　ヽ　　　 ./　　_／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＞ ´　　｀　 /　　　 {　 ´　｀＜
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510 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [51/123]

　　　我々はそれを毎日見せつけられた。
　　　
　　　一日経つごとに我々は衰弱し、言葉も少なくなっていった。
　　　
　　　アンはただ岩に巻き付き、無言でいた。
　　　
　　　昼間、橋を行く人々は我々に非難の視線を浴びせてきた。
　　　
　　　女性二人がだらんとした格好で岩にもたれかかって座り込んでいるのだから、無理もないことである。
　　　
　　　しかし我々はそういった視線に反応できないほどやつれていた。
　　　
　　　頭にあるのは絶望の二文字だった。

　　　　　　　　　　　　　　　　 r-j _　　　 //＞､
　　　　　　　　ィニﾆﾐv -ｧ､斗斥｝｛）ﾊ | |_ゝ i　, - ､＿
　　　　　　　 i￣/爪､ﾄｲヶ）ｽz=- '' ,フノ｝┴.K<　￣　｝ｲ
　　　r､　　/l 人｛ヶｿミ从=イ/　 r''｝ﾉ:::r-´￣｀＼ーオ/
　　　i ﾄヽ＞ｲ≧ Y　ﾉ￣ｒ=vソ､::::r- -','　　　ヽ　＼/./ﾐ､＿ ,ｨ
　　　| |　｛ <ｒjﾐﾆゞイ　r-ｲ:::｛　￣　　,'　　　　 ',　　 .＼＼＿／
　　ﾉ:ﾉィヾトー川K>=ｲ::r⌒　/　　　　i 　　 ',　　',　　　ヾﾐ､ _
　　｀ーイi　ト>イr≧_ﾉ￣　 / ,;'　　　,'　　　 ',　　i　　　　ﾄ,￣
　　／ｨ;∧,ﾚ/r''ノ　//　　 /　 ,　　 /　 ,'　　 i　　l　　　　l
　 /// /i:::ilil之ッ　,'/　　 /　 /　 ,'　/ ,;' 　 i　;　i ;,　　　 |
　 ii./ /　l::l7/｝　 i,':　　/　 / i　,' :/　,'　　 l　; /l ;　　　　|
　 / /　/ l::l Vil　 ',, 　 /ー/- | /､ｨ　,' i　 /i,L/ _; i　　;　 i
. /i 　 /　 l::lハ;　', 　 / ／= =i/ﾐ､ﾊ,' /l ;/ﾌﾊ,'＝ｲ;　　;　 |
/　ヽ／ ,;; |::|rｙヾ ',　iY家不:::ｿ≦　ﾚ　/　行:::旅川;　 ;　,'
/ ／　 /　.|::|　及｝ヾ　ヽ''┴''´　　　　　　　'┴ ノｲ　ｲﾊ,'
,;;'　　,/　　|::|　i　ﾄﾐ､' ,　ヽ　　　　　　 ::.　　　 /i/ ｲ/j
　／　 /　レi　', 川小＞' ' ｀　　　　　 '　　／ノ /il /
,;;'/　／　/彡i　ヽﾄ-､＼ > ､　　　 ´￣｀／.;/／
./／ミ＝v'｀ヾヽ　 i:::::::ｹ:::≧::＞　､　／/ ,' /
:::廴_､ノilケ｝ﾊ::i ; ヽ:::::ヾ::::::::::ﾐ>､/￣, ;/ノ /
:::/　廴r=i レ､ヾ:| ;,　｝::::::i;:::::://ｰヾ廴7:i.l /
::::｝￣r''´ﾊ　r'　 l ;,　ﾊ::::::ﾚ:://｝　iﾐー:::ﾊ :i
:::::ｹ-￣｝入vヾ. | ;,　i lﾐ＝//ｼ　　ヾヽﾌ小｝
::::::::ー- 'ｰｧﾉ　 l ,　川　 i i　　　　 i:::ヾｲ从
:::::::::｛_ _ノミ=　V.;　 ,'ﾊ　　| |　　　　 l::::l＼ﾄｲ＼

511 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [52/123]

　　　そして、初めてそれを見てから七日目の晩のことである。
　　　
　　　我々はさらに恐ろしい光景を目撃することになった。
　　　
　　　鏡像の私と水銀燈が部屋に連れてこられた。
　　　
　　　“私” がベッドに寝かせられて、男たちがその四肢を掴んで取り押さえた。
　　　
　　　私は首を振り、髪を振り乱して叫び声を上げる。
　　　
　　　ある男がのこぎりを持って刃を私の足首に押し当てた。
　　　
　　　まさかと思う間もなく、その作業は始まった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ヽ／
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿／.o／
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　　　　　　　　　　　　　　＞''　 .,,＜
　　　　　　　　　　　,,斗''　 ,,＜
　　　　　＿,斗七', ,,s≦
　　　＞＿,,,,,,s≦
　　　￣

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512 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [53/123]

　　　私の足首に押し当てられたのこぎりが上下に動き、繰り返され、徐々に足首が切られていく。
　　　
　　　世にも恐ろしい悲鳴が私の口から上がる。血が吹き出て、白かったベッドのシーツは真っ赤に染まっていく。
　　　
　　　切断は余すことなく続けられた。刃に肉片と血がべっとりと付着し、見る間に視界のほとんどが赤くなった。
　　　
　　　男はすっかり切断された足首を持つと、宙に掲げ、その場にいるほかの男たちに見せびらかし、
　　　
　　　それから鳥の骨を捨てるようにポイとそれを床に投げ捨てた。
　　　
　　　作業が再開された。
　　　
　　　男はもう一つの足首も同じように切断していった。私は気絶することができずに、ただ涙を流しながら悲鳴を上げ続けた。
　　　
　　　私は男たちに赦しを乞うが、慈悲はなく、切断は続けられていく。
　　　
　　　もう見ていられなかった。

　　　　　　　　　　　　:,:　　　　　　　　 (/)
　　　　　　　　　　　　ﾉ霜斧ﾐx,゜　　　　　　'´　　　　　　　 _ノ(
　　　　　　　　　　　(圭圭圭{!'　　　　　　　　　　　　　　　　(圭{
　　　　　　　　　　　寸圭圭ｲ :';'''　　　　　　　　　　　 '´⌒
　　　　　　　　　　 τ'{{7⌒∴：
　　　　　　　　　　　 )/
　　　　　　　　　。∴{!　　　　　　　　　　　　　　　　　　_,ｨ(。
　　　　　＿,ｨ(　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　`'''´⌒'・
　　　　　,ｨ圭||ｱ　'’　　　　＿_　　　　　　　　　　　　 ,ｨ(＿＿＿_,ｨ∵ 　　　　　　　 ,ｨ(＿
　　　　　炸圭( 　　　 ,ィ升彡　　　　　　　　　　　ノ圭圭圭圭そ　　　　　　　　　。　佳圭心､_
　　　　 ⌒`寸ﾄ､　　 ,{抄'⌒ 　　　ﾉ斧ﾐ､　o　　 ∴炸圭圭圭|iて ',∴ ･　　　　　　　　 _ノ佳佳佳て。
　　　　　　゜　　　　ﾉ/　　　　　 ⌒∴　　・　ﾉ(_ノ圭斥⌒',寸ﾐ､　　　　　　　　',.:,：･'｀¨∵¨¨⌒´
　　　　　,,、　　　／/　　　ノ(　　　　　　　　　/少'⌒ `　　　　　　　..,, _,.｡x≦少"・　　　　　　　,ｨ(＿∴_,：･・
　　π_ノ心､_ノ(,炸||(　　 ,,.,⌒　・っ　　∴ ･　　　　　　　　　　　　　 ;,,ｨ炒⌒;.　　　　c=≠二,ｨ炸圭圭(;''
　　　)圭圭圭圭圭ア　　∴：¨'`　　　`　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ',∴ ･　　　　　⌒　寸筵τ'⌒``
　τ｀Ⅷ:圭圭圭圭(_ノ廴　τミx｡、∴＿_　　　　　　　ノ廴_,ｨ炸廴ｨ
　　　)}圭圭圭圭圭そ `⌒'・　　 __,ｨ圭掛x、∵　　　 ,ｨ炸圭少⌒'・
　_,ｨ炸圭圭才寸圭廴｡x:≦少"´⌒''''⌒¨∵¨´　　　　　 ⌒¨¨∵：･
　　　⌒`寸ﾄ､∴｀寸ﾐ､　∵：･
　　　　　　`寸そ：¨'`沁っ

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513 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [54/123]

　　　しかし顔をそむける訳にはいかない。なぜならそれは私の罪の必然的帰結だったからだ。
　　　
　　　無責任に自分の大事な物を放り出し、離れて行ったことへの報いであり、終わりだった。
　　　
　　　もう一方の足首が切断された。足首は高く掲げられ、男たちの喝采を浴びた後、床に投げ捨てられた。
　　　
　　　切断面から血が吹き出す。 “私” がもう二度と歩けないであろうことは確実だった。
　　　
　　　次に右脚の付け根が切断されていく。この男たちは楽しんでいるのだ。
　　　
　　　最初からそこを切りさえすれば足首を刻む必要はなかったろうに、私の苦痛を最大限にしようと、
　　　
　　　彼らは末端から徐々に切り刻んでいっているのだ。

　　　　　　　　　　　　　　　　＿,,,.,,.,,__,,,,__
　　　　　　　　　　　彡圭圭圭圭圭∨
　　　　　　　　　　　　　ヽ圭圭圭圭圭圭ﾐ∨
　　　　　　　　　　　　　　｀､圭圭圭圭圭圭∨
　　　　　　　　　　　　　　　ヽ.　　　ﾐ圭圭圭∨
　　　　　　　　　　　　　｀､　　　;;;;;;;;;┃ ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ.　　　;;;;;┃..　ゝ‐'"´￣｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀､.　　　;;┃.　　　　　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　 ┃　　　　　　 i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀､.　 ┃.　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ. ┃.　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀┃.　　　　　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　｀ヽヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ┃ ｀､　　　　　｀¨''-､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ┃.　ヽ　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　；　　　｀､　　　　　　　　　　∨
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　；　　　　＼　.-‐ 、　　　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼_,.イ.‐､=、、　　i,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　；　　　　　　｀ｰ=イ.＿Ｙ¨ ヽ￣` ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 `"´ゝ.､,__丿　　 }
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ=,,＿ﾉ

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514 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [55/123]

　　　右足の付け根が切り取られた。足首がないと、真ん中で折れたただの肉の棒にしか見えないなと、ぼんやりと思った。
　　　
　　　のこぎりを持った男は私の太腿に噛みつくと、ひとしきりそれを舐ったあと、床に投げ捨てた。
　　　
　　　別の男がそれを拾って、切断面から血を飲んだ。
　　　
　　　“私” はそれでも気絶することができず、目を見開いて反抗を続けていた。
　　　
　　　左手の拘束が解かれたと思う間もなく、のこぎりの男が左手の上に座り込んで押さえつけ、手首の切断にとりかかった。
　　　
　　　私は耐えられなくなって目を背けた。ふたたび私の叫び声が穴の中から上がってきた。彼女は泣いていた。
　　　
　　　私も目から涙を流していた。それはどんな涙だったろう。自分では痛みを感じない、卑怯者の涙だろうか。
　　　
　　　それとも失われていく物を前にして何もできないでいる、無力な人間の、切実なそれだろうか。

　　　　　　　　　　　　／イ　　／ /ミ＼: :　/／=≠ : ＼　　　　＼
　　　　　　　　　　／´／　／　 /=＝ミヽ厶-=＝=―-:: : .　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　 /　.:/　　 /-‐:＞　 ´　／￣¨ 　　　＜　　　＼＼
　　　　　　　　　　　　 / . ::/　　 /: ／　 -‐　/　　　　　　　 `　.　＼: : .　ヽニ=-
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　　　　　　　　　　　　　　 Ⅵﾊ:∧ : |＿__　￣｀＼: :.:| ´￣　　}八/ ／:/ |
　　　　　　　　　　　　　 }:| ／￣ヽヽくヽ一　　＼{ ー―‐o／イ:i: / ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　／　 ⌒ｌ_ﾉ / /: {　　　i:　　　　　ij　/.ノﾚ
　　　　　　　　　　　　　　／　　 { 　し'､/＞'　　　　　　　 /１:/
　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　ﾉ　　.x介:､　　　　 --　　　　.:ｨ:| j/
　　　　　　　　　　　　　 /　　　‐ ＿_／　|:|: :＞　　　　　　　ィ:/ |:|
　　　　　　　　　　　　 / 　　　 /　l/　　ｌ」＼:.|: : :＞ｰ＜: : :|/　ｌ」
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515 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [56/123]

　　　　左手に続き、右手の手首が切断された。
　　　　
　　　　さらに今度は肩の下、つまり両腕の付け根が刻まれて、私は四肢をなくした。
　　　　
　　　　それでも彼女は気丈にも首を上げて、自分の体を確かめようとした。すなわち胴体だけになってしまった自分の体を。
　　　　
　　　　確認した彼女の目からある種の光が失われていくのが、穴の上からでも分かった。
　　　　
　　　　なぜ彼女はまだ生きているのだろう？　せめて気を失うことはできないのだろうか？
　　　　
　　　　あるいは彼女は呪いをかけられているのかもしれなかった。
　　　　
　　　　心臓が止まるまで気を失うことができないという呪いを。

　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　｀
　　　　　　　　 ,′　　　　　 }　　 /　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　　　;　　 .′　　　 / ／}/
　　　　　　　；　　{　　　　ノイ　 {　　　　　　　　　　　　　　　ﾟ。
　　　　　　　　　 {　　乂　／ ′＼　　　　　　／　　　　　　ﾞ`ヽ
　　　　　　　　　乂,　　〃　 !＼　　、
　　　　　　　　 | ヽ　{{ 　 {、　＼　　　　 /　　　　　　　　　　　 '.
　　　　　　　　 |　　{{　　'. ＼　　、　　　/　　　　　　′
　　　　　　　　　　 i|　　乂__,∧　ア⌒ヽ　　 ′　　　 /　　　　　　　　　　　}
　　　　　　　　　　八　　￣　∨{ 　　 V　｛　　　 / 　　　/　　　　　　；
　　　　　　　　　　　 | ヽ　　 !　　八　 )　∨{　　　　 /}／}　.;′　　/　　　.′
　　　　　　　　　　　 |/' '. 　 |　!　　ｉ。｀　ﾞi!　　 ,N/-≠ }　;　　 ≠
　　　　　　　　　　　ﾉ　 }　 il　|　j ,r‐}｀ｰ　　'. 　茨芹伃ﾉﾊ! 　,ｨ筏i}
　　　　　　　　　　　 }　八 {　/ }:ﾘ　　　　　､　{ ´ " ｀　乂(　ﾞ｀.'　／
　　　　　　　　　　　ノイ　 ,. ' { {.′　　　　＼_,　ij　　　_, 　≠イ
　　　　　　　　　　　　　　　／　　＼￣{　　　　、　　　　 ___ 　 ,.ｲ
　　　　　　　　　　　／　　　　＼＼_　　　` 　　　　¨,.ｨ升　｀ヽ
　　　　　　　　　／　　　　　　　┼＼￣￣}＿厂≧=く┼┼　　 }
　　　　　　　　〃　　　　　　　　┼┼ ≧‐--‐彡┼┼┼┼　　 '
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ┼┼┼┼┼ ┼┼┼　　 /;;；
　　　　　　　　　　　圭圭圭圭圭ﾐ'.　　　　┼┼┼┼ ┼┼　　　 /圭{
.　　　　　　　　　圭圭圭圭圭圭}　　　　　 ┼┼ ┼　　　　/圭ﾐ〉
　　　　　　　　　　ﾐ圭圭圭圭圭}　　　　　　　　　　　　　　 ;圭圭;;
　　　　　　　　　　　┃ 圭圭圭圭ﾐi! .′　　　　　　。　　　　　 } 　┃
　　　　　　　　　　　┃　　┃ヽ.　//　　　　　｡ﾟ　ﾟ｡　　　 !.　┃
　　　　　　　　　　　┃　　；.　　{/　　　　　　。ﾟ=‐-‐= ﾟ　｡.　{.　　；
　　　　　　　　　　　┃　　；. 　 }/　　　。ﾟ　匚匸}__}　　}ﾟ..　　；

516 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [57/123]

　　　複数の男たちが私の体に顔を近づけて、舌で舐め回し始めた。
　　　
　　　男たちはにやにやと笑いながら私の肌の感触を、そして血の味を楽しんでいるようだった。
　　　
　　　私はそれから逃れようと四肢を失った体でもがく。
　　　
　　　だが、もはや拘束は解かれたにも関わらず、私は起き上がることさえできなかった。
　　　
　　　男たちは無力にもがく私を見て笑い出した。
　　　
　　　それから勃起した男が私の性器にペニスを挿入していくのが見えた。
　　　
　　　男たちは順番待ちをし、次々と私の性器にペニスを挿入し、射精して離れて行った。

　　　　　　　　　　　　　ヾ　〈、　　　_,ﾉ　 ` ｰ - - 一≦テｧji〉丶
　　　　　　　　　　　　　丶f､｀￣｀)ｧ'r　　　　　　. : : ,ｧy'ヽ/川: :
　　　　　　　　　　　　　　ﾞi,ﾐヽァ､,ﾞ''"　 ,.. . . ィ '"ｨ'^i´:,jノ7fい: :
　　　　　　　　　　　　　　ﾞi,ﾞi,ﾞk ,ﾉ｀ﾞiー+- ┬'"!´j-:く";;;;/ i: :ｨ: :
　　　　　　　　　　　　　　　ヾj l;;;;ﾝﾆ>-'ｰ-┴ '^'′: :彡,/: !: i:l!:
　　　　　　　　　　　　　　　　ヽＶＺ7　 ο: : : : : : : ｼr三!: : : : :!:
　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞi,ヽ/ 　 ;; : : : : : :,ノ;r'ｰ,ｿ: : : : : :,,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　Ｖ　　: : : : : ／;r=ﾐ／/: : : : : :〃
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l　　: : : :fY''Y´,〉′/: : : : : ,: ィ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i,　　: : :,iヾ-:':": ,:ノ: : : :ﾉ,,ｨ;;;;;;;
　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　 : : ﾘ＿,, :ィ": : : :／￣´~｀ﾞ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ゝ- ,ｨ^''ﾞ: : : : : : ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しfi !丶,,＿,, - '"
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 iiヽ)
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 lt、　o
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 `''"

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517 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [58/123]

　　　　すべての男たちが射精を終えると、ついに祭りの最後がやってきた。
　　　　
　　　　首の切断である。
　　　　
　　　　黒い男たちは突如として歌を歌い始めた。
　　　　
　　　　それが最後の見世物の始まりの合図なのだ。
　　　　
　　　　私は裏っ返しにされ、首にかかる髪を切られた。うなじが露わになった。
　　　　
　　　　遠目でも私の歯がカチカチと鳴っているのが分かった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ヽ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　／
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〉ヽゝ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ヽX_)
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　／
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ *;／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／圭;／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／圭;／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　／
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,,＞　 ,,,＜
　　　　　　　　　　　　　　　＞'''　 ,,＜
　　　　　　　　　　　　　　＞''*;;*.,,＜
　　　　　　　　　　　,,斗'圭;;,,＜　；
　　　　　＿,斗圭圭;;*≦..　　　；
　　　＞圭圭圭,s≦.　　　　　　 ;
　　　￣┃　　　　　　　　　　　　 ;
　　　　 ┃
　　　　 ┃
.　　　　；
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518 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [59/123]

　　　切断が開始された。
　　　
　　　押さえつけられた私の頭からこの世の物とは思えないほどの凄まじい叫び声が上がった。
　　　
　　　最後の抵抗を試みているのだ。
　　　
　　　だが男たちに容赦はなかった。
　　　
　　　彼らは一斉に音頭をとって手を打ちながら掛け声を上げた。
　　　
　　　そしてその掛け声が鳴るごとにのこぎりの刃は上下された。
　　　
　　　今までにないほどの勢いで血が噴射される。
　　　
　　　男たちの肌は真っ赤に染まった。

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519 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [60/123]

　　　
　　　
　　　やがて私の悲鳴はやんだ。息絶えたのだ。
　　　
　　　のこぎりを持った男はそれを投げ捨てると、私の首を髪で引っ張るように持ち上げて高く掲げた。
　　　
　　　男たちが輪になって取り囲み、それに拍手を送った。
　　　
　　　輪から外れた一人の男が私の胴体に噛みつき、乳房をしゃぶっていた。

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;;;:;:;: `.┴┴‐'´　　//;:;:;:;|　￣弋─-- {,ヽ-‐ヽ::　＼__ヽ::::　ヽ　　/　　/
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　　＼／^＼／　　　 l;:;:|　　::::: ｀`ヽ､　　 l::::::::ヽ:::::::　i:::　　 :: 　　　　　| ヽ
　　く　　　　,>､　　 l;:;:| 　 :::::　　　　`ヽ､ l:::::::::::ヽ:::::::　 :::::: 　　:: 　　　|　|
　／;;;;ヽ　　/;:;:;:＼　 .l:;:| 　 ::::::　　　　　/　ヽ::::::::: ::::::::::　::::::　　 ::　　 ;;|　|
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520 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [61/123]

　　　私は穴から離れて、一人泣いた。
　　　
　　　離れる前に、穴の下に鏡像の水銀燈の姿が見えた。
　　　
　　　私はもうそれ以上見るのをやめたが、水銀燈だけは自分が切り刻まれるのを見続けていた。
　　　
　　　それはたぶん、この世のあらゆる地獄の中で、上から数えて二番目に辛いものだった。
　　　
　　　当の切り刻まれている自分自身に次いで、二番目の。

::/　　 |/　|l∧　　∨　　　 | /　　　|　　　　　　　',　　　　　　　　　｀ヽ　` ､
/　／ |　| |',　＼ /　　 /　.ｌ l　　　 l|　　　　　　　|　　　　　　　　　　　'｀ヽヽ
　/:/　|　l '＼_　 |　　　|　∧',　　 / |　　　　　　　|　',　　｀ヽ　　　　　 |　 |` ､;
/:::/　 |　l Y´_｀ヽ|　　　', ｌー',　　 |- ',　　　　　　',|　 ',　　　｀　　　　　|ヽ.|
:::/　　.|　,' / __',　|　　　l',|　　､　　|ー',　　　　　　',＼ ',　　　',　　　　　| ',l
:/　 , ∧ |　/　八,l　　　||行テテ､ ' ＿＼　　　　　ﾍー｀ヽ　　|ヽ､　　　｀､'　　ヽ
　／/:/:ヽ　　く　ヽ　　lﾍ弋;;:l||l;冫｀T　｀丶,　　　∧　　∧　,　　ヽ､　　　ヽ､
/::::/::/: :∧ヽ　｀　　` ､.',　"''' ≠ 　　　　　　　ﾊ斥,　',-/　 l/　　　|: : ｀: :ー―
::::/:::/: : |::∧ﾍ_ ,　　　　`ヽ　i |　　　　　　　 /　弐;rｹ｀/丶　　　 /l　|: : : : : : : :
:/i::::l: : : .',:::l∧_∧.　　　　　 J.　　　　 ,　　　"i'''' /　|,　　　|: ',,|: : : : : : : : : :
　|::::|: : : :∨l　,'　｀　　　　　　　　　　　　,.　　　　 ;　/＼| ＼　 !: : : : : : : : : : : :
　|::::|ヽ: : : ∨/　　　＼　　　　　　　　　　　　　　iJ ' ': : : : : ｀ヽ: : : : :｀ヽ: : : : :
　|:::::ヽ `　､∨　　　　　　　　　　　-　､　　　　／: : : : : : : : : : : : : : : : : : :＼::／
　ヽ::::::＼　/　　　　　　　＼　　　　-　　　　　,::＼: : : : : : : : : : : : : : : : : : :／:::
　　　ヽ､. /　　　　　　　　　丶　　　　, イ｀ヽ＼::::＼; :＼: : : : : : : : : : : ／::::／
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521 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [62/123]

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522 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [63/123]

　　　その夜は一睡もできなかった。
　　　
　　　朝になって私は念のために水銀燈に確認したが、やはりもう一人の彼女も殺されたらしかった。
　　　
　　　物を考えることができなかった。
　　　
　　　私は拳をくりかえし岩に打ち付けた。
　　　
　　　拳は痛んだが、今は自分自身を痛めつけたい気持ちでいっぱいだった。
　　　
　　　指に血がにじむ。

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523 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [64/123]

　　　くりかえし岩を殴りつけていく内に、次第に岩に割れ目が入っていった。
　　　
　　　私はそこを目掛けて自分の拳を何度も打ち付けた。
　　　
　　　拳は痛む。だが私はいくらでも殴る。殴る。
　　　
　　　やがて割れ目は大きくなっていった。水銀燈がそれを見て強烈な蹴りを放った。
　　　
　　　派手な音を立てて、岩は真っ二つに割れた。
　　　
　　　すると中から一つの人形が出てきた。
　　　
　　　子供が遊びに使うようなおもちゃの人形である。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 r'´　　｀ヽ.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　　　　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i　　　　　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　　　　　　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　　　　　　i、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,,-‐'´￣￣￣￣￣｀ﾞヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　r'´　　,r 'i´￣￣｀i'ヽ、　_,,）
　　　　　　　　　　　　　　　　　ゝ､＿i　 |●　, ●|　 i'¨ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　､＿,ノ　,!　 i　ｰ ‐' ,i　人.　ゝ-'）
　　　　　　　　　　　　　　　　ゝ､__,ノゝ､i｀Ｙ∀Ｙ.ﾚ' 　｀ー‐'ﾞ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./´. ¨ ｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /ヽ　　　/ ﾞi
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,i　ﾞ,　　 i　 .i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,i　　 i,　　|　　i,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　 _,,_i,　 i_,,_　.i　　　＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　_／￣i　　　 i'.｀i　　　i｀ﾞレ´＜_
　　　　　　　　　　　　　　　/´　ｒ‐　　i_,.､-､､Y,.,..,__ ,ﾉ　i　＜´
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　　　　　　　　　　　　　　　　　 !/レ'´i,.ｲ｀ﾄ.,ｒ'l ,.ｒi｀ﾄ. ,ヘ.i´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,ｒ'''7ﾞ./、　　,r.i .ト､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〉､_ｰ'_ﾉ　　 i. _'ｰ'_,）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　 ¨ｒ'　　　｀i ¨　ﾞ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　 /　　　　.i　　　 ',
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　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ､＿,/　　　　　　　'、　　 ,）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀￣´

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524 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [65/123]

　　　私はそれを拾って懐にしまうと、岩の片づけに移った。
　　　
　　　岩は以前よりも軽くなっており、容易に持ち上げることが出来た。
　　　
　　　我々は割れた岩をかついで橋から川に投げ捨てた。
　　　
　　　岩はそのままどこぞに流されて行った。
　　　
　　　我々は岩の跡を検分してみたが、どこにもあの穴はなかった。
　　　
　　　穴は消えてしまったのだ。まったく不思議な出来事だと言うほかはなかった。

;⌒⌒⌒ヽ　　 )ヽ
乂::__..　　::⌒´　　⌒ー ::⌒｀`ヽ、
乂:..　ゝ-::　 ::.　　　　 ::.　　　　　｀ヽ、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿
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木木木木木木木ｴ{=_-_-_-_-_-_|_=_=_[」=|=_|_-_-_-_|=|{_三_}|-_-_-_-_|-}=_={=_=_=_|_=_[」=_-_-_-_}木木木木ｪ､,木
＿木木 __,,,木木..,,_＿{=_-_-_-_-_-_|=_=_=_=_|=_|_-_-_-_|=|{_三_}|-_-_-_-_|-}=_={=_=_=_|_=_=_=_-_-_-_}_木木木木木木
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525 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [66/123]

　　　あの穴は何だったのだろう？
　　　
　　　ひょっとすると鏡像たちが死期を悟って、我々に送ってきた信号なのかもしれない。
　　　
　　　あるいは邪悪な男たちがただ我々に不快な思いをさせようとして、接続してきただけなのかもしれない。
　　　
　　　いずれにせよ知らないよりは知った方が良かっただろう。
　　　
　　　「もうこれで私たちに鏡像が戻る可能性はなくなったわね。」
　　　
　　　水銀燈が青い顔で言った。
　　　
　　　「たとえそうだとしても、」　私は答えた。
　　　
　　　「ルネの体だけは取り戻してあげましょう。だって彼女は私たちと同じだから。
　　　
　　　半身を奪われた身として、不安に違いないから。」

　/　 /　　　　　　　ハＹ::/　　　　　　／　　　　　　　　＼
　|　ｲ　 !　　　　　　　　ヽV｀ｰ-　　　　　/　　　　　　　　　　　　ヽ
　|/｜　|　　　　　　　 |　ﾄ､　ﾐ､　　　/　　　　　　　　　　　|　　　',
　|!　|　｜　　　　　　　}　 |ヾ､　｀ｰ-､_ | ! 　　　 /　　ノ/　/　　,　ﾊ
　|　 !　 |　　　　　　　/　∧　　丶　　 _|{　　　| /　／／//|　　/ i　}!
　　　',　|　　　　　　 / ／ヽ　､　　＼/r'ぃ　　 | |　/／∠＝i 　 | /}ハ
　　　 Ⅵ　　　　 /ｲ::ﾊ:::',＼＼　　| {∧ﾄ､　 | | /　｀k T:ｆヽ､ |/ ﾉ
　　　 }　　　　　　 /:/ |::::|ヽ　丶八ゝ､{∧　ﾄ!' 　　ヽiｿ　 |ハ
　　　 / /　| 　　　|::|　|::::|　＼　｀　>､_　＼{　　　　｀　　＼
.　　　/ ∧　|!　　　 |::|　|::::|　　｀ｭ､,/　　',　　｀　　　　　　 /
　　ノ'´　ヽﾊ　ヽ入ヽﾉ::::| |　 |/rY!ﾞ　　丶　　　　　 -r′
　　　　　＼＼　}　｀ｰ､::i |　,'　|三,ﾍ　　　　｀　　　　　　 ,´
　　　　　　　　ヽヽ|　　|　|:::||,ｲ　ノ､三三ｲ廴､　 /｀rｰ　---′
　　　　　　　 |　 /!/|:::川／＼＼三三三≦ ／
　　　　　　　　ﾉ／　 /;'／三三ﾆミ二二ﾆ--ソ＼
　　　　　　　 ´　　／三三三三三三三三三三ﾆ｀ｰ､
　　　　　　　　　／三三三三三三三三三三三三三三ﾆヽ
　　　　　　　　　/三三三三三三三三三三ハ三三三三三ﾆ',
　　　　　　　/三三三三三三三三三三/　ヽ三三三三三ﾆ!
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526 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [67/123]

　　　水銀燈もそれに同意してくれた。
　　　
　　　私は岩の中から出てきた人形を取り出してまじまじと観察してみた。
　　　
　　　布と綿で出来たなんの変哲もない人形である。
　　　
　　　アンがそれに興味を示し、ちろちろと舌で人形を舐め始めた。
　　　
　　　これが何かの役に立つのだろうか？
　　　
　　　我々は旅の支度をすると、ふたたびアンを肩に載せて、その頭が示す方向へと歩いて行った。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 r'´　　｀ヽ.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　　　　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i　　　　　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　　　　　　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　　　　　　i、
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　　　　　　　　　　　　　　　　　r'´　　,r 'i´￣￣｀i'ヽ、　_,,）
　　　　　　　　　　　　　　　　　ゝ､＿i　 |●　, ●|　 i'¨ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　､＿,ノ　,!　 i　ｰ ‐' ,i　人.　ゝ-'）
　　　　　　　　　　　　　　　　ゝ､__,ノゝ､i｀Ｙ∀Ｙ.ﾚ' 　｀ー‐'ﾞ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./´. ¨ ｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /ヽ　　　/ ﾞi
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,i　ﾞ,　　 i　 .i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,i　　 i,　　|　　i,
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　　　　　　　　　　　　　　　　　_／￣i　　　 i'.｀i　　　i｀ﾞレ´＜_
　　　　　　　　　　　　　　　/´　ｒ‐　　i_,.､-､､Y,.,..,__ ,ﾉ　i　＜´
　　　　　　　　　　　　　　　￣Ｚ　　　 i｀ｰ'ｰ'-'ｰ'ｰ'ｰ'　、＜´
　　　　　　　　　　　　　　　　　 !/レ'´i,.ｲ｀ﾄ.,ｒ'l ,.ｒi｀ﾄ. ,ヘ.i´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,ｒ'''7ﾞ./、　　,r.i .ト､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〉､_ｰ'_ﾉ　　 i. _'ｰ'_,）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　 ¨ｒ'　　　｀i ¨　ﾞ',
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527 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [68/123]

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528 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [69/123]

　　　道行く途中で様々な物が目に映った。
　　　
　　　どこまでもなだらかな傾斜で続く麦畑と、その中で風車が回転している風景を我々は見た。
　　　
　　　その風車は死んでしまったもう一つの我々を大地につなぎ止めて、
　　　
　　　復活しないよう慰めとして回転しているように我々には見えた。

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//／/ /.:. 从八/:|/:|/し(/ /.:.／/／:/.:/:/ノiノ://.://／/.:.:/://.:／/ノ(.:/.:＼{/:/.:./.:/⌒.:/.://.:./.://.:/.:/:/／/:/.://
／／￣二ﾆ=-/ :/.://.:./.:/／/／/::/.:/:/＼／|/ //／/|.:/.:/´￣｀ﾆ=-//＼.:＼／/!.::/:⌒ヽ:、:/.:/／|∨://.:/:/.:/／
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529 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [70/123]

　　　またどこまでも続く青い空の上をひつじ雲が流れていく様子は、
　　　
　　　我々の目には死んで魂となって空を旅する鏡像たちに思えてならなかったし、
　　　
　　　眠る前に夜風が鳴く音は、彼女たちの泣いているさまと重なって聞こえた。
　　　
　　　どんなことも、喪として、死に供された慰撫として我々には感じられるのだった。

　　　_,.v''´⌒ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_,.v''´⌒ヽ　､
　__ノ　　　´⌒ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　r‐:.､（　　　　｀ヽ　）
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　　　　　　　,'⌒ー。゜　　　　（　　　　　）　　　　　　　　￣¨¨‐=.:.:.:._ﾉ　　　r'⌒ヽ　　__r‐'⌒ヽ⌒ヽﾉ　　＿r'⌒ヽ
....__......._.._.._.._.........ﾉ　（⌒ヽr‐'...._.._.._　r‐--'¨¨つ　　r_,つ　　＿＿r‐⌒）＿r':._:.:.:.___　'¨ﾞﾞ:.:.:.:＿:.:.＿r''　＿(　　　　ノ
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530 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [71/123]

　　　自分自身の葬式が必要だなと我々は思った。
　　　
　　　「ネズミの埋葬もちゃんとおこなったようですわね。
　　　
　　　もしあなた方が後始末を何もしないようなら、影は再び失われるところでした。」
　　　
　　　セシリア・オルコットの言っていたことが思い出された。
　　　
　　　しかしそれは一体どのような式になるべきなのだろう？
　　　
　　　死体はないのだ。我々にできるのは涙することぐらいに思えた。

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　　　　　　　　　　　　　　　 ,'　l 　,'::::::＞''"ニし!￣¨l''‐ﾍ.　　　∨
　　　　　　　　　　　　　　　　, 　.|　,::／､_ノ　}} 　｀´!､｀‐ﾊ',　　　 V
　　　　　　　　　　　　　　　 l 　 ', .|'_ノlⅥｚ､ｿ　', ´天''＜ lﾊ　　　 }
　　　　　　　　　　　　　 |　　 ',.| | イ._从ﾍ、 ∨ ｨ示ミﾊ/ 　 / ,!
　　　　　　　　　　　　　 |ヽ　　'イV笊示ヾゝ､'､ Vrﾘ》､　,ｲ.　ﾊ
　　　　　　　　　　　　　 | ',＼.　ﾍ,《乂ソ　　　　:::::::::/　,ｲ/.　,　!
　　　　　　　　　　　　　 |　, 　＼. ヽ:::::::　　　l 　　 /／　'　 ,'!　',　
　　　　　　　　　　　　　　　 ,'/ ﾍ　　＞､.ヽ、　　 ,　.〃.从.　　ﾊ!　 V
　　　　　　　　　　　　　　 ∥.　ﾍ　 ┌ｖ‐､∥　｀　　 .ゝヽ/　　 / ', 　 ∨
　　　　　　　　　　　　〃.　 ,' ﾍ.　| | .l /｀ヽﾄ､_ イ__|､　　∧ . ', 　 ∨
　　　　　　　　　　　　　〃　　/.__∧ |.' ′. ﾄﾉ｀'''‐'''´ 　 |　 ∧　',　',　　∨
　　　　　　　　　　　　 /.γ!''"¨|ニ|.ﾍﾞ､　　　ヽ_＿　 _　,.　/ﾄ､.',　',　',　　∨
　　　　　　　　　 ,ｲ　 l　! 　 |ニ|　∧'、　　 Y　　　/ ∧.|ニ|｀ ''＜.　　ヽ
　　　　　　　／　　 | . { 　 |ニ|ｲ. 　ﾊ　　 }　　　/ /　ゝニ|. 　　＞､.　ヽ
.　　　　　　／　　　　| 　',__,'イ　　 ,ｨく｀ヽﾉ　　ゝ､＿　｀ー┐／.　 }.　　ヽ
　　　　　　／　　　　 ,ｲ|　〈＼‐''"／　　ヽ_>/／,イﾆﾆﾆﾆzz,ｲﾉ}. 　　 |　　　＼
. 　　　 ,イ　　　／''"　ハ. ハ　 ,ｲ　　　　 }ｱﾆﾆﾆﾆﾆﾆ=イ／ . } 　　　, ｀ヽ　　＼
　　　／.　　 ,イ　　　,ｲ|　',ﾑニア　　　　　　/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾑ　　_.イ}　　　人.　　ヽ　ヽ＞､
　　　| 　　 ,ｲ　　　 /./. 　ﾏ／.　　　　　　 ,ｲﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆア _/ 　　,ｲ　ヽ　　　 ',＞'"　}_
　　　|　　　ゝ､. 　 /_/_ノ｀.イ　　　　　　 ,ｲ八ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆく_イ┐ 　/ ,>　　　＼ ,イ　　　´ }
　　　|　　　　　｀　Y　 /／　　　　　　 ,イ=ｲﾆゝﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆくイ . ／　{　', 　　／　　　　　,ィ
　　　　＞─　＿ _{　∥ 　　　　　　／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ寸ﾆﾆﾆﾆ.イﾉ).　　　ﾊ　ヽ/　　　 _..-'"
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531 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [72/123]

　　　死体、か。
　　　
　　　この世に死体ほど難しい物はおそらくあるまい。
　　　
　　　それは腐り、忌むべき物でありながら、聖人の正しくミイラ化されたそれは
　　　
　　　聖遺物として崇められる。
　　　
　　　ただの死体でさえ正しく埋葬されなければ蘇り、我々に害をなす。

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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _r-------ヵ､_
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　　　　　　　　　　 /;;/ﾏ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣∨∧
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　　　　　　　　　　　　仏ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾏ
　　　　　　　　　　　　　 ∨　 r≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡7　/
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　　　　　　　　　　　　　　　　　ムニニニニニニニニニニニゝ

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532 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [73/123]

　　　我々は蛇の頭が指し示す方向へとただ歩いた。
　　　
　　　馬には乗らず、二本の足を黙々と動かした。
　　　
　　　疲れること。逆説的だが、それだけが魂を癒す唯一の術（すべ）だったのだ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　＼　　　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　丶、　　　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　　　＼　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　　　　'＼　　　＼　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　　　 / 　＼　　　＼_　丶._
　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　　 /　　　　丶　　　 }　　　丶
　　　　　　　　　　　　　　　　 | 　　　 /　　　　 !　　　　　　　 }
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,'　　　 / 　　　　 |　　　　　　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,'　　　　 ;　　　　　　　j　　　　　　／
　　　　　　　　　　　　　　　 / 　　 ,'　|　　　　　　　,　　　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　 !　|　　　　　　 /　　　 /
　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　 |　|　　　　 /　　　　 /
　　　　　　　　　　　 _,. 　 ´　　　　　　　/　〈　　　　ノ, , , /　,.ノ
　　　　　　　 r'三´　　　　　　　　　　　　　　}　　　 / /// し'´
　　　　　　　匕二､＿_,,..　 -―‐-　..,,＿_,.ノ　　　〈ノ-‐'´

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533 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [74/123]

　　　やがて我々は山の上に建設された町にたどり着いた。

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534 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [75/123]

　　　そこには腕のいい人形職人がいて、我々は高い金を出して自分たちを模した人形を作ってもらった。
　　　
　　　さらに葬儀屋に頼み、子供用の小さな棺を譲ってもらい、そこに人形を収めた。
　　　
　　　我々は教会を訪れ、人形のために簡単な葬式を行いたいと頼みこんで、司祭に祈りと経文を唱えてもらった。

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535 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [76/123]

　　　経文が唱えられている間、私は岩から出てきた人形を胸に抱いていた。
　　　
　　　人形の葬儀に出席するのはやはり人形が妥当なような気がしていたからである。
　　　
　　　棺は共同墓地に収められた。自分たちで土を掘り、埋め立てた。
　　　
　　　これで鏡像たちも赦してくれるだろうか。
　　　
　　　そうであってくれれば良いのだが。

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536 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [77/123]

　　　さて葬儀がすべて終わり、司祭に別れを告げた後、突然私の腕の中の人形が自分で動き出し、飛び出した。
　　　
　　　人形は自分の足で大地に立ち、歩き出した。
　　　
　　　我々は呆気に取られたが、結局人形の後をおとなしくつけていくことにした。

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537 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [78/123]

　　　歩いていく内に人形は次第に大きくなっていった。
　　　
　　　髪の毛も長くなり、豊かな金髪となって背中を覆った。
　　　
　　　人形は森の中へと我々をいざなった。
　　　
　　　森の奥に進めば進むほど、辺りが暗くなれば暗くなるほど、人形は成長して人の大きさに近づいていった。
　　　
　　　やがてそれはセシリア・オルコットの姿に変わると、我々の方に振り向いてこう言った。
　　　
　　　「こんにちは、イン様。それに水銀燈様。お久しぶりですわね。」

　　　　　　　　　 ――
　　　　　　　　／／-=ニ=-＼　｀　､
　　　　　／／二二二ニﾆﾆ＼　　＼
　　　　　 / ./＞'"~￣￣´~"''＜∧
.　　　　 / ./　jI斗{　　 ´}~/''～､ } }　　 ∨
　　　　/　.{ ,ｲ l ', {　 {　/j/　}　ｌ　j/　　.}i ∨
.　　　｜i　{　l ,ｨ示. 　Ｖ /　_.}/:l//　　 / _.,-,斗
.　　　｜l　{i 〃Vソ`'＜＼ "~"'～　／ / |./ /
.　　　｜lＶ{V{｀ ::::::::　'　｀` ::::::/ .／　 l　|' /∨
　　　 V!v＼＼　　 /´￣｀ヽ /イ .「 i　 l　|/ 　∨
..　　　　ヽ∨　＼　ゝ＿_ ノ { /　.| .l ノl　|- ､　＼
.　　　　　　＼　ﾍ`: .　　　　./　 /　V .l　| 　 V　　＼
.　　　　　　　 } Ｖ　}　ﾍ｀¨´　.|　 i{　　./　｜　 ∨　　｀`～､、
.　　　　　 jI斗-∨} '" ﾍ　　｜八　./　　Ｖ'　　∨　　　　　　　￣￣￣￣￣￣￣｀~"''～､、
.　　　　　/　　　 .} }～、}　,斗　 { ＼　　　 ∨　　∨`＜　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼｀　､
. 　　　 {　　 {./} }　　｀　　V　{　　ヽ　　 ∨　　∨　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣｀~"''～V' ∧
.　　　r ､- -=≦: :/　　　　／ ∨{＼　∧　　　＼　　V　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　 V' ∧
..　　　Ｖ＼: :. :.イ　　　 / 　　＼: :.＞∧　　　＼　V　　　　　`～､、　　　　　　　　　　　　 }　　}-- 、
　　　＼　｀`～､、　　.′ 　　 .／　　,∧ 　　　＼V＼　　　　　｀`～､、　　　　　　 ,ｨ}　　}: :.}｜
..　　　　｜＞――'　　　{ 　　　／　　／__,∧　　　　＼: ＼ `～､、　　　　｀　、　　 .／:./　 ./⌒! |
. 　　　 |〈ヾ´ 　　　　 :. 　　 `～､( : : ／∧　　　　　　 }: : :.＼　 : :｀`～､、　　＼　／: ／　 ./　　j .!
. 　　　 |{ ヽ _｀二ﾌ　　､　　　　 `／　/ { ＼　　　　　}: : : : : ＼　　　: : :. `～､　 /＞"　　／　　/ /
.　　　从　V:{　　　　　　,':`　　　　 `'＜ヽ{ : : ｀`'～､_ノ: : : : :. :. :.＼　　 : :∧　　＼｀¨¨¨¨´　　 / /ﾆ=- ､
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　　　ｉ　＼　　　＼∧　　　 ',　　　　　　　　　　　＼: :}　 V∧　　　　 V: |　 }　|　　　　　}: !
　　　 l　 : : ,＼　　　　} 　　　 ', 　　　　　　　　＼　 V |. 　　　 V|　 }　|　　　　 /:/
　　　 | 　: /ｌ|: {＼　　 ,'　　　　ヽ〉　　　　　　　　　　　　　 ! |　　　　 .}|　 } /　　　 /:/
　　　 | 　 {　∨､　＼ .,'　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∨:| /　　　 /:!.ィj/　　　 .ｲ:/
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.　　　　 `ｰ― `ｰ.从　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 W
　　　　　　　　 W　　　　　　　　　　　／　　　　　　　 }
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538 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [79/123]

　　　「セシリア！　お前どうしてこんな所に？」
　　　
　　　「求められたからですわ。あなた方はルネとかいう顔だけの女の体を求めてらっしゃるのでしょう？
　　　
　　　しかしそれはそう簡単に手に入る場所にはございません。そこで私のような “中継点” が必要とされるのです。」
　　　
　　　セシリアはそう言ってクスクスと笑うと、おのれの乳房を寄せて持ち上げてみせた。
　　　
　　　「イン様、あなたはまたそうやって私の体をジロジロとご覧になる。そんなに私のことが欲しいんですか？」
　　　
　　　「不快だったら見るのをやめるよ。」　私は目を伏せた。

　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　／,'///////////////＼＾‘,　　　　　　‘,
　　　　　　　　　　　　　　　　　 /////////////////////＼!
　　　　　　　　　　 /　　　　　　//＞―――――‐＜///////|　　　　　　 ',
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　　　　　　　　　　　 /　　:ｉ　　　　 |ｉ -/―:|　　　　　　 /　 .／￣| ＼|　　　　 |
　　　　　　　　 /　　　ｌ　　　　 |i / :|i /|　｜　　／　／ =‐x' ＼｜　　　 |
　　　　　　　　　＿/　/　　ｌ　　　　 |/　 |/ :l　∧　／　／　 , ｲ　＼　|　　　　　:|
￣￣￣￣￣￣／　 /　　｜　　｜ | ､＿　 l:┼千―彡　／ ./／/　/|
二二二二二／　／.′　　|　　 :l　|〃⌒ヾヽ|　′　___／ｨｆ抃トﾐ／ /　　　　 ,:′
.　￣＼＿／　∠　/ 　　 :|　　八！:.:.:.:.:　　　　}／　　　 | |::ゝ心 /　　　　/
.　　　 |┌‐ ´　　/　　　　:|　　　　ﾄヽ:.:.:.:.:.:　　　′　　　 |:乂::ソ》.′ 　　∧
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＿＿＿__／　　　　　　 /　　　　　∧＼　　ト.　__　　　_／／／　　　 /|　　/∧
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､￣￣＞―=ミ___／ .／　　　,ｲ′　　＞‐　Ｔ ¨　　　　_| ｌ　　　￣.ﾉ　　　　 ∨ ∧
. ＼／　　　　　＞＜＿＿／ /　　／＼　　′ 　 ┌┘'　|＼／∨　　　　　／　`、
.　　＼　　＿_／　/|　　／　／　　　ヽ　　　　__|　/　/　/　　|___　　　　　/＼
　　　＼／／　　/ :|／／　／　　　　　　} 　　 |　 /　/　　　　　斗-―┐/＿ |
、　　　 ` く　　／.／／　／　　　　、　　　　 -〈　/　/　　　　　　　　　 |'　／|
: ＼　　　／／／ __彡　´ 　　　　　:.　　　　 V　 ,|　　　　　　　　　　／　 |
／. ＼__／'７＞'"´　　　　　　　　　 }.. 　 =-　/　/ ｌ　　　　　　　　　　ｲ　　 /
＼￣￣ __／::::　　　　　　　　　　 .　'´　　　　.′/　　　　　　　／　| 　 ∧
__/　　　Y:::::::::::　　　　　　　　　　／　　　　　 i　 {＼　　　　　　　 /　 ∧ `、
　　　　 l::::::::ノ　　　　　　　　／　　　　　　＼＼ ¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨入 ./ ／　 `、`、
　　　　 |　　　　　　　　 /　　　　　　　　 |＼　　　　　　／　＼{　　　 `、
――==ﾆ　　　　　　　 .′　　　..:::::::::::::..　　　/ 　二ニ=ー彡　　　 )、　　　 `、
.　　　　_人　　　　　　ｉ　　　　::::::ｒｯ:::::::::　　/　　|　　　　　　　　　／　〉ヽ
＼　　 `マ＼＿＿＿＿___ |　　　　ヽ::::::::::::ノ／　　　＼　　　 -==ﾆ〈/　 /　　＼
　＼　　　＼ﾆﾆﾆﾆﾆニニ八　　　　　　　　／　　　　　　　二二二＞ ( 　厂￣￣￣
　　＼＼　 `ｰ―＜ﾆ＜⌒＼＿＿／ﾆア　　　　　　　 |　　　　　　　〉 /ﾆ=-
　　　＼　 ――　　￣＼ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ／　　　　　　　　 └──＜匸´ /ニニﾆﾆ＞
　　　　＼　　　　　　／＼ﾆﾆﾆ７　　　　　　　　　　　 /／　_{/ニニニ「

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539 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [80/123]

　　　「いえ、よいのです。イン様、わたくしとセックスしてくださいませ。」
　　　
　　　「えっ。どうして？」
　　　
　　　「どうしても何も、それが今必要とされているからです。他に理由はございませんわ。
　　　
　　　女に恥をかかせるおつもり？　水銀燈様は下がっていてくださいませ。
　　　
　　　さあ、ここなら誰も見てはいませんわ、イン様。」
　　　
　　　私はアンを水銀燈に預けると、促されるままに森の奥へと足を運び、裸のセシリアを抱いた。

;;ヾゞヾ（((（(((しししヾヾヾ;;:ゞゞゞ((（(;;|il!|巛;..;;彡ニミミ;|i|彡彡///巛彡彡彡彡;;;:;｡;;;;
;: .::;;;ヾヾ(（（((((ししし;;ゞゞゞ::...;;;))））ヾilｌ};;;:;:;;;:;,__　＿こ|i|ツﾉッッｯﾉﾉﾉ,.ツ少彡彡ツ;;;
;;:: ;::. :;ヾヾしし（（((しし;;.;ゞヾ;;ヾ)））)）|;l!|_;;｡__;;::.;__＿;;:,;;|i|ﾝ彡彡彡ﾉツミツラフフフ;;
;;::;;:: :...:;;;ヾヾヾ(,__）)（(（,,;;,.彡..;.;; :|i|ｌ| |!il|√ミﾐミﾐﾐミミﾆ}i};:;.:: :.;ツフ彡彡彡彡::;:.ﾌ彡
;;.。;..;;;:..,;:.;;ヾヾヾヾ||;､;;|||;。;..;./:;;;;| il|;;}iil|ミミﾐミﾐミﾐヾ;ゝ|i|ゞ;;ゞゝﾞヾヾ彡彡ソ;:ﾟ;.:.彡彡
;;;;;:;;;;;;:;:;:;,,::::;ゞゞゞ ||ゞ;||.|;;..:;:/;:;:;:;|.,il|;;|l!l}三ﾆニ==ﾆミミ;|i|彡彡彡彡ﾉﾉラﾉ;;::;｡;,:;:;:;.;;;:
;;｡..;;;:::;.:. ;;;:.ﾟヾヾl;;.;{{;;.;||;|;;;／;:｡;ﾞ; |;;ll|;;|lil|ツ;:　::;:;:;::;;;;;;:;ソ|i|ヾヾヾゞゞ刀（((彡///;;:; :;;;
;,;::.::,ﾟ::.,;;,,..;;.;,;ミミ;;.;||; ;||;ﾚ;;;; .:::;:*.|;ilii|:;|iil|,,.;;::.ヾヾヾﾂ>;;;;;}i}ﾂﾂヾゞゞ;;ﾜｳﾜｳﾗﾘﾘｩｯﾗﾘﾘ
::.:.:,:::|;;::;:.:;;;.,,ミ|;|| ..||;｡|!/..;;:;::;|;/:::|i!il!};|!il|彡彡ミﾐヾ彡彡}li}ヾヾヾミ|!;;ﾘﾘﾂくﾗﾗｽﾘ::::彡
ヾヾ|{彡;:;||;::;;:.ｖ|.!;::|ミ{i{;::;:|::>l/;;;;|.lili!|;|;;i|;ﾚヾヾヾ彡彡彡}ili};;Y;;:.ン||ノﾉﾉﾗﾜﾘﾘ彡;;ﾟ,ﾘﾘ
;:;ヾ{ |彡;;||;;｡;:;;|;|.|;;|;|;;||ヾ;;|ミ|ﾚ'"| il!l|;;|;il|;|彡ミミ;;;ﾟ:;:ヾ|;ゝ}ill|;{''"ﾞ;;: ||彡彡ｿﾘｽﾙン||;;:;
;;｡:;| ;}彡;||''ﾞ""|;;|.|;{i{;;}i}　 |　}|;:;:;}..i!li| |ili|;|;;;ﾟ::.ヾゞゞゞ;Y　.|ili|;};.;::.;::;彡Yii|;､;;:.;||ツ:.;;||;;.;
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　 { i!l|

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540 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [81/123]

　　　いつものように陰茎を生やす薬は使わなかった。
　　　
　　　私とセシリアはお互いを癒すように全身を愛撫した。
　　　
　　　それは丁寧に段階を踏んで点けられた火のようだった。
　　　
　　　我々は静かに燃え盛り、隅々まで情熱的に相手の体に触れて、舐め、愛した。
　　　
　　　情事が終わる頃には二人とも汗だくだった。

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　　　　／　　ノ＞''::::::`丶、　　＼
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541 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [82/123]

　　　「うふふ、素敵でしたわ。イン様。」
　　　
　　　「それなら良かった。」
　　　
　　　「慰められたのではないかしら？　あなたは大分傷ついているようでしたから。」
　　　
　　　「そうだね。確かに。」
　　　
　　　「さて、私は人形へと戻ります。人形は交合を通じてあなたの願いと意志を受け取りました。
　　　
　　　彼女は自動で歩いて、あなた方を導いてくれるはずですわ。
　　　
　　　良いですか、決して人形を見失ってはいけません。また人形を引き留めてもいけません。
　　　
　　　何があっても彼女を信じるのですよ。」
　　　
　　　そう言うとセシリアの体は縮んでいき、元の人形へと戻った。

　　　　　　　　　　　　　　　　　＿　 -‐ ミ
　　　　　　　　　　　　　　　＞ ´　　　　　　　｀ヽ .、
　　　　　　　　　　　　　　,, ,"' ,　_　-ｧ｀ヽ　　　　丶
　　　　　　　　　　　　　〃'　 '/////////,ヘ　　　　 ∨
　　　　　　　　　 '/　 /////＞-''－'-くﾊ　　　　　V
　　　　　　　　　　　　/ ' 　l/ア´　ﾘ　　　　　ﾏ　　　　 V
　　　　　　　　　　　 //! 　,i"　　ノ'　　, rj =ト、ﾏ l　　 l　丶
　　　　　　　　 // j　　l　,{ｒ{￢V l /ノァ=ｪﾐ、'　　 ;　　ト` ー　　　＿
　　　　　　　　　　/ '　l! 　 l　{!ﾞィﾍ`ヾl'´　Vりﾉ`　　ﾊ　丶　　　￣｀　￢￣ミ　、
　　　　　　　 '/ 　 !　V{　l ( Vり　　　　::::::: / ,ｲ　/l　　　ヽ　　　　　　　　　｀丶ヽ
　　　　　　　　　.{'　　 ; 　ゞ、'ヽ :::::: ′ 　　　/'７　/　!　　　　＼　　　　　　　　　） }
　　　　　　　　　　 7　 /、ー =ｧ7　ー　´ 　(（.ｨy 　　 .｀ .＜　　 .` ＜　　　　　　 ( （＿_
　　　　　　　　 /　 /　!‐　´　 .＞.. - ..イ　　　　　　　　 .｀ヽ　　　　　｀二二ニ　_　　￣｀　＜
　　　　　　　　 ' 　/　 j! ､　　ヽ　　　　 / 　　 ._　　　　　｀　 .‐-　　　＿＿　　　　＞　、　　 `　、
　　　　　　　／　 /　７　 .｀ー-　 .＼　　 '　　-‐..´　　　　　　　　　　　　　　　｀ヽ　　　＼　　　ヽ
.　　　　　 ., "　'　/　ｱ　　　　　ヽ　　／　　　　　 r‐-　.＿　　　　　　　　　　 _..} 　　　　 .ヽ　、　　∨
　　　　　ア　 /　/ ,／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｜ﾍヽ￣￣／¨¨　.‐- ´ ′　　　　　　ヽ丶　　i
.　　　 .ア　 /_＞ィ　 ∧　 .i!　　　　　　　　　　　　 | 　} 　＼　　　 .／＼　　　　　　 ∧ ゛　 !
　　　 / ＞　 ,ィ´　　　　　.，　 }　　　　　　　　　　　　　　 V /　　 /　　 _／｀ヽ　＼　　　　　　　　 }　　ﾘ
　　　　く　　ゝ、　　　　　　’　,'　　　　　　　　　　　　　　　 ∨｀ｰ-,'　　 ,ィ,､　　　＼　＼　　 /`ー=-'　　/
　　　ｌ　　丶、　｀ヽ　　　　 ./ 　　　　 i!　　　　　　　　　　 |　／￣／-' ノ　ヽ　　丶、＼/{
　　　l　　７' ＼　　ヽ　　　　　　　　　　　! 　　　　　　　　 !､　　/　　｀ﾆj　　丶、　　＼ヽV ＿_ _
. 　 .,'　　 ,'　　 )_ ィ,　〉　　.'　　　　　 .{　　　　　　　　　　 ′　＞､　≦¨_: ヽ、　ヽ　　ハ ,} ヾ
..r＜　　 / 　,／´　　ｊ　 .r: : :、　　　　　　　　　　　　　 / 　　　 . ＞ー‐´　 .∨　　　〈　,l ﾘ　＼
｜　`＜　〈＿　_ . ィ′　ゞｿ: :　　　　 .ヽ、　　　 .､:／　　　　　　　　　 V　　 Vヾ / ゞ、
｜　　　ヽ　X´ ≧=- 、　 .｀　　ー一　 .≦ 　‐- ､::::ィ　　　　　　　／　　　 .}　　　..! "、　＞'
　＞=-　/ 　　乂＿　 ,ﾘ　　　　　 .’　　　 .∨　 .｀´　　　　　　　　　　　　　　 '　　　ﾘ＼ｰ"
..{　ｰ=く　　　＞―' 　　　　　　ヽ　　　 ∨　‐-　 .､＿ ,　‐..´　　　　　　　　　　 .ゞ、　〉
..＞=-,ノ　　　〈ヾ´　　　　　　　　　　　､　　 V 　　　 / } 　　　　　　　 /　　　　ア
..(　∠ノ)　　　　　ヽ_｀ﾆﾌ'　　　　　　　　 .ヽ　　 V 　　 /　|　　　　　　　 /

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542 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [83/123]

　　　私は服を着ると水銀燈とアンを連れてきた。
　　　
　　　人形は立ち上がり、歩き始めた。
　　　
　　　我々もそれを追って歩き始めた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 r'´　　｀ヽ.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　　　　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i　　　　　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　　　　　　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　　　　　　i、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,,-‐'´￣￣￣￣￣｀ﾞヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　r'´　　,r 'i´￣￣｀i'ヽ、　_,,）
　　　　　　　　　　　　　　　　　ゝ､＿i　 |●　, ●|　 i'¨ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　､＿,ノ　,!　 i　ｰ ‐' ,i　人.　ゝ-'）
　　　　　　　　　　　　　　　　ゝ､__,ノゝ､i｀Ｙ∀Ｙ.ﾚ' 　｀ー‐'ﾞ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./´. ¨ ｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /ヽ　　　/ ﾞi
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,i　ﾞ,　　 i　 .i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,i　　 i,　　|　　i,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　 _,,_i,　 i_,,_　.i　　　＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　_／￣i　　　 i'.｀i　　　i｀ﾞレ´＜_
　　　　　　　　　　　　　　　/´　ｒ‐　　i_,.､-､､Y,.,..,__ ,ﾉ　i　＜´
　　　　　　　　　　　　　　　￣Ｚ　　　 i｀ｰ'ｰ'-'ｰ'ｰ'ｰ'　、＜´
　　　　　　　　　　　　　　　　　 !/レ'´i,.ｲ｀ﾄ.,ｒ'l ,.ｒi｀ﾄ. ,ヘ.i´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,ｒ'''7ﾞ./、　　,r.i .ト､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〉､_ｰ'_ﾉ　　 i. _'ｰ'_,）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　 ¨ｒ'　　　｀i ¨　ﾞ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　 /　　　　.i　　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　{´￣ヽv'　　　　　　.i '´￣ヾ,
　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ､＿,/　　　　　　　'、　　 ,）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀￣´

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543 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [84/123]

　　　人形の歩行は遅く緩やかだった。
　　　
　　　しかし足場は悪く、森の奥へと踏み込んでいく人形を追うのは一苦労だった。
　　　
　　　人形を追い始めて二時間も経たないうちに、我々はこれが大変な作業であることに思い至った。
　　　
　　　なにせ人形はこっちの疲れには目もくれず、決して休まずに一定のペースで進んでいくのだ。
　　　
　　　しかもどんなに足場が悪くても決して足取りが乱れないのである。

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544 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [85/123]

　　　我々は辛抱強く人形を追い続けた。
　　　
　　　森は鬱蒼となり、辺りはさらに暗くなっていく。
　　　
　　　決して人形を見失うまいと我々は必死に追いすがった。
　　　
　　　疲労がつのってくる。私は何も考えまいと努めた。
　　　
　　　ただ二本の足を機械的に動かして人形の後を追う。

: : :j 　 |洲洲洲洲i:i::::::::::::::::: ; |;:;:;:;:;:;:;:;:: : : ⌒㍉ミﾐﾐﾐミﾐﾐﾐﾐ州i洲i洲|::::i:i:i:刈爻災淡淡淡淡
: : ｛　 |川^刈洲jl|i:i:::::::::::: : : :|__彡ﾞ⌒乂ツ;';';';';';乂ﾐﾐﾐﾐﾐﾐ泌ミ洲洲i|::::i:i:i:i爻爻爻爻淡淡淡
: : :{ 　｝i:i|ﾊi:i寸ミ|i:i:::::::::: : : :.:|刈爻;';';';';';';';'⌒ン;';';';'⌒ヾミﾐh､刈ﾉi:i{::::i:i:i:i:i爻爻j／:::::ｘ'爻爻
: : :}　　｛i:i|圦:i:i≧{i:i:i:::::::: : : :.:|洲爻;';';';';';';';';';';';';乂;';';';ツ災淡{∨i:i:ハ::::i:i:i:i:|爻ｧ'ﾟ::::イ川}ﾊi:i
: : :{　　:〔i:|ﾉﾉへi:i:i:i:i:i:::::::: : : : |川州洲x;';';';';';';';';';';'刈爻爻炎圦i:i:/ﾐﾐ}:::i:i:i:i:ﾚ'ﾞ::,.ｨシﾞ:ﾉﾉ乂ji:i
: : :{　　: {i:|ilililil/ヽi:i:i:i:::::::{ : :{ :|ﾉﾉノﾉ洲刈爻爻xく爻从爻爻ﾊi:∧乂ﾐj:::i:i:i:i:i／i:i:i:i:彡ｨｲシ{i:i
＾i : {　: : {i:|ililili|i:i:i:|ilili:i:::::j' : 川水彡j乂爻爻爻爻ミ爻乂ノ＾ｉ|:|i:i:i:ﾍ｀'{::::i:i:i:iﾉi:i:x<个i:i:i:｢爻{i:i
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.:.:＼: ::　 Wililｉｌ|i:i:ｉ:|ilili:i:::::: : :{:.:|i:ｉ|⌒|ililil|＾'ｖi:iﾉﾉ: : : ^'ｯｊﾘｲ:::ｼ| |i:i:ｉ:|㍉|:::i:i:i:i|i:i:i:i|＾'ﾘi:ｉ:ｉ:|＾Yi:ｉ|i:i
..::.. : ::　　ﾔililｉl|.＼|ilili:i:i::::: : :j: |i:ｉ|.....|ililil|.. .|i:i|:|.. .. .. .. .|::|.l::/ |::|i:ｉ:ｉ:|.....|:::i:ｉ:ｉ:|i:i:i:i|.. .||i:ｉ:ｉ|. .|i:ｉ||i:i:
.:.: { : :{　 ,ﾊililil| 　,|ilｉlｉ:i:i:::: : ﾉ: :|i:i| . |ililili|. .|i:i|::|　 . .　 .|::||::|　|::}i:ｉ:ｉ:| . |::::i:ｉ:ｉ|i:i:i:i| . .ｉ|i:i:i|. .|i:ｉ|.|i:i:
.:.:.:{ : :i　'/∧爻爻|ililili:i:{::: :{:　 {i:i|　|ilili从 |i:ｉ|;:l　　　.|::ﾘ::|　j:::}i:i:ｉ:|　|::::i:ｉ:ｉ|i:i:i:i|　ｉ|i:i:i|　|i:ｉ| |i:i:
＼j{ : :{ :　　{寸爻|ililii:i:i:{::: :ヽ　{i:i} jilili:i:ｉ:ｉﾞ|i:ｉ|;:;{　　　ノ::j':::|ノ:::ﾉi:i:i:i:Ⅵ::::i:i:i|i:i:i:i|爻j|i:i:i:刈i:i:リi:i
;:;:ﾉi| : :}i　　j　やりililﾘi:i:乂: :〈　{i:川ilililili:i:|i:ｉ|::从ﾆ二￣￣爻爻i:i:i:i:i:j{.:.:i:i:i:Ⅵ从j'りi:i:i从ｼシi:i:i:
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∧(: : ∨.:/∧: : :}八,:ﾞ,;ﾞ,;ﾞ,;ﾞ,;ﾞ,;ﾞ,;ﾞ,;ﾞ,;ﾞ,:ﾞ,;ﾞ,;ﾞ,;ﾞ,;ﾞ,;ﾞ,;ﾞ｀｀` ｰ￢宀宀宀￢冖⌒　　　 }:}//　)／'"´
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i:i:i:≪＾ヾﾉ＞i:i:i:i:刈ノノＹノノix;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;/i:i/´;:;:;:;:;:;:)V)V)V
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545 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [86/123]

　　　やがて人形は絶壁の前に立った。
　　　
　　　それから絶壁に沿って歩いていく。
　　　
　　　茂みは深く、草は腰の高さまで届いた。
　　　
　　　見失わないよう私はより注意深くなる。
　　　
　　　人形は絶壁に洞穴を見つけるとそこへ入っていった。
　　　
　　　我々も慌てて入っていく。

　　　　　　　　　　{Ｌ」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ....　　_　　　　冂
　　　　　　　　　　匸二　　　　　　　　　　　........　　　　　　　　　　　丁]
　　　　　　　　　　{匸Ｌ」　　　　　　　　 _ ＿ _‐-ミ　　　　　 _ 　　　ニコ
　　　　　　　　　　匚｢二　　　　　／ｨiT丁匸工心ヽ　　　　 _　　二Fｺ
　　　　　　　　　　|ＩT厂_」￣_　　 / 〃,ィＴ丁工Tヽハﾊ　　　　　　　_厂TＩ|
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546 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [87/123]

　　　洞穴は暗かった。明かりなしで進めるものではなかったが、我々に用意はなかった。
　　　
　　　もしやここまでなのか――そう思ったのも束の間、人形はそれ自体が明るく光って辺りを照らし出した。
　　　
　　　安堵して我々は人形を追った。
　　　
　　　地面は固く、湿っている。足を取られないように注意しながら我々は奥へと進む。

　　　　 .ゞミノ"''ｰ-､,_i 　 ,/''-,i_,ii__,i　!　,! ､　"　　ﾉ　 ,,-､　､　　　ﾉ
　　　　　ｌ　/　　/　　ﾞi　ﾉ"'ｰ-,=ﾆ」, '､,,し‐''冖'''''"､..-"　 .｀'--''ｰ,／　|　 |
　　　　 /　l　/ ｰﾞ.-..,_ レ″　　,ゝｉﾞ＼　　.,,ﾉﾞ'　､,,し‐''　　｀'ｰ..,_,.ｲ　　 { 　l
　　　　,;!　.］ |　ﾉ　　ｌ j 　〉　　｀7　　`i.､"゛^'‐'''"´＿_,､_l」..:イ　/　　　｀ﾞ"|
　　　　 _,.ソ li|　　　　´　ﾉ　　　 :!、　 ,.ゝヾ;;;;;;;;;;;-ﾍ　 7　　,ゝヾ　　／　　し
　　　　ﾞl、ノﾞ　　,ソ　　.}　　〉　 |　!　 i/　　};;;;;;;;;L　〉〈　 / ､　,j　「　　　　,'
　　　'''"゛　.､　"´　　　　ゝ　,ゝ　　 | j　}　　 };;;;;;;;;l 　!　〉　l.､　 y 　 ! 　　　/
　　　　　}　 j　.、　　／　　」　　｀'i 　〉　ｌ.:..:.:..‐-.L_/　　 ,! 　ｌ /　し　 √
　　　ヽ.　 '"　　｝　　,!　　　　／　　 i 」　/: ::.:.:.,;.:..　.￣ ` く、│L ｌ!l　" ﾉ
　　　　 |! 　|　 .l　　 j 　７　　,ゝ　　,」　/.:.:.:. :: :.::.　　,, -‐ 　`･i　　.!　　'!､
　　　　 |、.j　　.ヽ　　　.}　　　｀ヽ　　ｌ／..::. :: :　　　　　　　　　　 ':、｛　　〈
　　　　 ,l`'く　　/　　　.! 　　　 |　,='　:.:...:.:､.....:.,､,、......:. 　 ,.､　　.`:〈　　 /
　　　　　　.}　　ﾉ　　　,ﾉ　　　:/_ゞ;;:.:.:.......:.::.:.:.:::::::::　　　　　　　　 ,..-‐:､″
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547 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [88/123]

　　　洞穴は進むほど広くなっていった。
　　　
　　　やがて人形の明かりでは照らせないほど天井が高くなった。
　　　
　　　人形がぎょっとする行為に出た。
　　　
　　　人の背丈の三倍はあろうかという段差を一気に飛び越したのである。
　　　
　　　一瞬で我々は自分たちの危機を察知した。
　　　
　　　刹那でその段差を登るためのコースを見定めると我々は猛烈な勢いで壁に取りついて登っていった。

　ｪ .,　　 .,,,、　　　　　．　 !　│　　　　　　　　　 l三三三三三三三三三三三三三三ｌ　 .,!三|　　　　 'i
./ .!.l!　 ./三ヽ　　　　!　.lﾞ　.!　,!　 ./ﾞ.ｌ　　　　 ./.ｌ .!三三三三三三三三三三三三三三 !　.!三;;;1　　　　.ヽ.　　.!l,　　　　／
三 ||.!　/三三!　　 . !　 .!　ｌ　|　!　./三|　　　 iゞ　ｌ.l三三三三三三三三三三三三三三 ! .!三三|　 i，　 /;;!　 .lﾞ;;!　　 /　／
三三! .|三l.i三.!　　l三l　!三!│　/三 .!　　 .lﾞ三三i,l三三三三三三三三三三三三三三 l !三三|　,! !　 |三|　 |三i 　i ./三
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548 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [89/123]

　　　辺りが暗くなる。人形が先に進んだのだ。
　　　
　　　我々は肝を冷やしながら段差を登っていった。
　　　
　　　無事二人とも壁を登り切り、人形を視界に収めた。
　　　
　　　走って追いつき、再び鈍足で人形の歩行に付き合う。

　 /　V　V 川　V　∧　/∨￣ √i　 /∨二V二二＼　　∨∨　/ ∧ :/二 |　/゛`｀｀√⌒＼/
∨ |　:|　√∨　-二二V　/⌒V　∧/‐‐二二二--　　￣　ノ(　　/　∨　＿乂⌒　/i　　　／￣
￣^|　|Ｖ￣-- - -─　 ∨二二∨二￣￣＿ _ _　--二二-ｰ'＾7'´￣√二─ ﾍ　 /∧ :／
:::::::::Ｖ::::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:───.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.:⌒'─Ｖｰ'´∨￣‐_.:.:.:.:.:.:∨─∨.::.::.::.::.::／
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.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.:二二二.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::／￣ ∨＼/"~~￣~゜
二へ二二三三三三二二二二───二二三二二──二二三三三三: : : : ::ノ彡,へ　: : : : :
く: : : :>‐ ‐ 二二二─ ‐──二二二二三三─＜￣￣_二 ‐ ‐ ──=二三㌻ |　_彡,　＼: : : : :
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ﾆ─　‐　　　　　　_ _ ノ´　　　　　　　-=ﾆ二＿""~~⌒´::::::::::::::::::⌒～-　　＿_　 . . . . . .　／: :
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549 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [90/123]

　　　我々は洞窟の深部へと進んでいった。
　　　
　　　ここまで来たら明かりなしで戻ることはまず不可能だ。
　　　
　　　こうなったら人形だけが頼りである。見失うわけにはいかない。

　　　一行は歩いていく。
　　　
　　　やがて我々はどこまでも続く壁に突き当たり、その壁にそって歩き出した。

:/ヽ　　/＼　　　 /　ﾍ　 /. . .／: : : : : ..／／/: : :／::::::::::::::::::::::::::::〉.:.:.}: : : :.::l :|＼: : : {　 :| ＼　/
:| :l:|　/: : ∧　　∧　/ ﾍ :|　 /ヽ　　　／/: {: :}.:.:.:/::::::::::::::::::::::::::::::::{.:.:.:.{: : : : ::| |: : :＼ { 　 |: . .| :|. .
:∨:| ﾊ.:.:.: .:.| 　 |:::|　|: : | |: /}: :.:|　　ハﾉ: : ∨{／:::::::::::::::::::::::::::::::::ﾉ.:.:.:.:}: : : : :Ч＼: : : }　 :|::. . Ｙ. .
: :[.:| | | ﾊ.:.:.|　 :|:.::| :|/: | | :| ｉ.:.:.:|　 :}: ::{: : : :} }::::::::::::::::::::::::::::::::::::::{.:.:.:.:/: : : : : : : :.:|: :.:∧　:|: . . |. . .
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: :V　V: Ｖ.:.:.|　 l/: |:｜.:| | :|ﾉ: : ::|　|: : ﾉ: :.:{: |::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／:/: : : : :.|: : :ｉ: : |.:.:.: : | /:|.:|: : . . .
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⌒ ヽ : : ＼ :|　| : ﾊ: :∨⌒ ＼ﾉ |　 |: :}: : : ∨::::::::::::::::::::::::::::::::::∧: ::}: :ﾊ: : :|: : :|: : : :./ : | ∨｜i: : . .
　　 : : : :　 {:|　|: :| :|: : :＼　　Ｙ⌒　V: :.:ﾊ.: :＼:::::::::::::::::::::::::::: | :|:.:/: :| |: : : : :∧: : /　 :|　| : |└ ＿
　　'′　　ﾉ|　 V :∧: : : : ＼　}: . . : :}ｉ: :} :{: :}: }:::::::::::::::::::::::.:.:.:|　|/: : | :| :.∧ ; : j: : ／ :|　|: / ／
　　ｒ-‐ｧ7´:ﾘ　　∨　 >'⌒ヽ: :ﾉ: : : :丿∨: :∨:/ヽ:::::::::::::::::::::／　八／: :∨: :/: / ∨⌒｜ |:/'´: :ﾉ
vv {::::::∧::/　　ﾉ＼{::::　　;'⌒ヽ: : :＼: ヽ: :∨: : |三=---=二彡ィ´: : : :〈／ ∧: /: . . /　/: : : ;'
::::| |::∧／　　'⌒ヽ　 ):::.....ノ　 :　　. : : .　 ;,　.:＼ﾉ‐ ‐ ─二二─Ｌ＿__／ : /　∨ノ⌒j／: :　 ;
＾Ｙ´)／　　　′　: : : :`'<⌒ヽ: : : :γ⌒¨¨⌒X⌒: : : : : :__--二三三＜＿_/　〈´.:.:.:.:/: : : :}／　⌒
　Ｙ:::　　　 ;′ 　＼　: :｀Ｙ⌒ヽ_ノ　｀'く⌒V　＼　: : : : : ￣￣￣二二二──=二㌻: : : ノ
　 ⌒ヽ__ノ´　　　　　)-=彡,　: : )　　. : :|　ﾉ､、　: : . .　　　二二二二二二㌻¨¨⌒¨ア⌒　　／
　　　　＼: : ;　_　　 ´￣＼: ゝ-=彡<　ﾉ⌒ヽ　: : : : : : :⌒丶､　　─==二二二二㌻　／. .,.ィ⌒丶
⌒ヽノ　　∨　 }'´　　　<⌒ヽ　　　　｀⌒丶　─--＜⌒　　: : :｀`'ーｧ─=二二二く_γ⌒V　乂＿_
　　　　　　ﾉ　'′　　　.　.　. '⌒: . .　　　　　＼: : : : : : . . 丶､. : : ノ'⌒　　(　γ⌒丶{.:.:.:.:.:＼: : : : :
　　　＼　　⌒＼　　　γ⌒　　　　＼　　　　　｀``⌒ヽ. . . . . ＞: : : : . . . ^'　乂: : : ｀'⌒¨¨⌒丶､
　-く　　}　　＼　'⌒¨´: . .　　　　　　｀¨¨¨¨¨二二二７ﾆﾆﾆ─　.　.　.　.　. ＿_二￣: : : : .:.:γ⌒＼;
　　__)-へ　`｀　　　　　　　　.　.　.　. . . : : : : : ::.:.:.:.:.. . .　　-二　　.　.　.　:　:　:　⌒ヽ: : : . . . )　　ﾉ
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⌒　　-　　　_,; '´￣　　　　　　　　　　　　_..二ﾆ=-''"~　.　.　.　.　.　.　　-=ﾆ＿⌒￣　─-L＿_　_-
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550 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [91/123]

　　　嫌な予感がする。
　　　
　　　人形は四肢を元気に振りながら歩いている。
　　　
　　　我々もその後をつけてしずしずと進んでいる。
　　　
　　　人形は小さな穴を見つけると四つん這いになってその穴に潜り込んだ。
　　　
　　　予感が的中した。

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　.__,,‐.,,lﾞ　广　　 .,,,ｘ,!''''ﾞア｀　.|　　 `ﾞ',!i､　　　.|　ﾞ''''' ., ﾐ、
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　、，.、 .|　 .／ _,|,、 ,|,,,ノ''ﾞ￣￣ﾞﾞﾞ'''''く　.|,,,入、 `ｰく_,,．
　ﾞl,,.| _iﾍ″ ./ﾞ'ぐ　,ﾉ"::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾞ'│ ﾞ''/ﾟi､　　 |
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551 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [92/123]

　　　それはとても小さな穴で、人間が入っていけるようなものではない。
　　　
　　　「人形を引き留めてはいけません」。セシリアの忠告が思い出された。
　　　
　　　明かりが失われるわずか数秒の間に私は辺りを見渡した。
　　　
　　　とりあえず水銀燈の手を取った。
　　　
　　　しかし道は見つからない。そして明かりは失われ、完全な暗闇が訪れた。

　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　　ヽ
　　　　　　＼　 /　　　　　　／　　　　　　　　　ﾍ　　　　　　　　ﾍ
　　　　　　　 V　　　　　　 /　　　　　ﾍ　　　　!　　 l　　　　ﾍ　　　　'.
　　　｀ヽ.　 / 　　　　 / 　　　／　ｉ　　　 |　　　|　　　　　l　　　 |
　　　　　ﾝ′　　　　　/　／　／　　　 i 　　 |　　　ﾄ､　　　　|　　|　 |
　　　　　,/ /|│　　　　 j／j ／　｀　‐- ､.!　　 |　　　|__ﾍ.　　 !　　!　ｌ|
　　　　　{ 　 |│　　　　 |　__　　￣￣ヽ　i 　　 |ﾍ.　/_　　}　　 |　 ,'　ﾘ
　:　　　　'.　　ﾍ　　{　　 |　ﾍ¨乙ラﾃぇ-'　ヽ.　 |　V　　`　} 　 ,'　/　/
　　　　　ﾊ.　　ﾑ　 '.　　!　　弋::::::rノ　　　　＼|　'{乃ﾃﾌ7|　/　/／
　} 　 l 　 }　＼_,.厶. ﾍ　ヽ　　　　　　　　　　　　　　ヽﾋノ ' リ /／
ノ　　　　,'　　　７　＼＼{、　　　　　　　　　　 ;. 　　　　ｲ /
　 {　　 /　 ∧ /　　　　　ヽ　　　　　　　　　　/　　　　ﾊ/
　乂.　,ﾊノ　j/ ＼　　＼　　　　　　　　　　　　,.　　　　, ′
　　ﾚ′　 ,ハ::::::..＼. 　＼　　　　　　'"´ ￣′　　／
　　　　　 / 　＼::::::..＼　　 `　、　　　　　　 .　´
.　　　　 /　　　｀　::::::.`::....　_＿>　.　　 ,． ´
　　　 /　　　　　｀ｰ-　 .::／l　}　｀ ´
. 　　 /　 ,.． -─-　､　　　　　 V
　　 /／　　-─‐-　　＼　　　　　 |
　　／　　　　　　　｀＼　　 /:!

552 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [93/123]

　　　はたと私は立ち止まった。
　　　
　　　真っ暗闇の中で頭はパニックになりそうだった。
　　　
　　　落ち着けイン。深呼吸をしろ。
　　　
　　　私は壁に手をつけて考え続けた。
　　　
　　　どうする。どうする。

圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
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圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
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圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭

553 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [94/123]

　　　一分ほどもそうしていただろうか。
　　　
　　　突然私は足をノックする何者かの気配を認めた。
　　　
　　　またパニックに陥りそうになったが、ある瞬間ハッと気が付いた。
　　　
　　　これはアンだ。
　　　
　　　私は足元に屈みこんでアンのしっぽ――だろう、おそらく――を空いている方の手で掴んだ。
　　　
　　　しっぽを通じてアンの体が動くのが感じられた。
　　　
　　　彼女は我々を導こうとしているのだ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_,,.‐一ｰ､＿_
　　　　　　　　　　　　　　　　 _＿-ｰ　　　　　　　｀ー― 、
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　　　　　　　　　　　　　　 |　、　　　　　　　　　　　　　　　│
　　　　　　　　　　　　　〃　｜　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　 |, - ‐|　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　_ノ′　_r'、　　　　　　　　　　　　 l,
　　　　　　　　　　　 _l 　　／:::::入　　　　　　　　　　　　　　　ヽ､
　　　　　　　　 _,.-‐'ﾌ　_/´::::／　ヽ　　　　　　　　　　　　　　　｀'ｰ､_
　　　　___.,ｒ一' 　_／　 /::::::(_　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀'ｰ、
　　　ﾞﾞ　　　　〃　　ﾞヽ:::::::::ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀
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　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ､::

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554 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [95/123]

　　　我々は急ぎ足でアンの導きに沿って進んでいった。
　　　
　　　今はただ彼女を信じるしかない。
　　　
　　　暗闇の中、胸の鼓動は高まっている。
　　　
　　　右手にアンを、左手に水銀燈を掴みながら私はただ導かれるままに足を動かしていった。
　　　
　　　何も考えることができなかった。
　　　
　　　危機のさなかでは人はあらゆる恐ろしい可能性を否定するために、考えるのをやめるのだ。

.　　　　　　　　　｛ /　　　/　／　　　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　ﾉ/　　 / ／.／　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　　／　　　 /://　　　　　　　　　　ｉ　　　　　 :.
　　　　　　　／イ　　 .{/: :/　　　　　　／　　　　　　　|　ｉ　　　　ｌ |
.　　　　　　　／ ´　 | .}　 . : : ': .　　　　　 /1　／',　　　 | 　| 　　　　l |
　　　　　　　　　　 |:/　: : : :|:i: .　　/ / /__| ./ 　 l　　 /} ハ八　}､　ﾊ|
　　　　　　　　　　 / /: : : ∧|: : .　{./l:/　 |/‐￣｜　/ j 仁/¨ ∨｜/
　　　　　　　　 / .' :,/.://小:､: . |{ ∧茫歹¨`　|／　ｲ茫歹/丿//
　　　　　　　　　　 /　:{〃:///八`＼:{　　￣￣　　　 i　￣￣ / //
　　　　　　　厶イ|:{|:////: /ヘ_ﾄ＼　　　　　　　　}　　　 /イ/
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　　　　　　　　　　　ﾚ＼'/､////} }（| :＼　　　　- ―　　／
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　　　　　　　　　　　　　　 /∨/}'//:::::::::＼､＿＞: -＜:::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　 У'／:::::::::::::::::`ー‐:.ヽ//::}::::::::::::::::.
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555 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [96/123]

　　　視界の失われた中、何度もつまずきそうになりながら、我々は歩く。歩く。
　　　
　　　私はただ四肢を動かすことのみに意識を集中した。
　　　
　　　アンを信じるのだ。
　　　
　　　確信はないが、足の感触から次第に自分たちは上って行ってるらしいと私は感じた。
　　　
　　　それから平らな場所に移ってしばらく歩いた。
　　　
　　　やがて視界の片隅がぼんやりと明るくなるのに私は気が付いた。
　　　
　　　人形だ！

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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 !:::::::::|　ﾊﾆ二癶
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556 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [97/123]

　　　さあ、行こう！
　　　
　　　――いや、待てよ。
　　　
　　　私はアンを放り出して思わずそちらに駆けつけたくなるのを、ぐっとこらえた。
　　　
　　　辺りに何があるか分からないのだ。そう、人形と自分達の間に奈落が控えている可能性も否定できない。
　　　
　　　私はただアンを信じてその導きに従った。
　　　
　　　我々は人形から徐々に逸れていき、別の方向へ向かった。

　　　人形は次第に視界から外れていき、また完全な暗闇が訪れた。
　　　
　　　闇に覆われて背中がひやりとする。脈拍が静かに高まっていくのを感じる。

圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
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圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
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圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
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圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
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圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
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圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭

557 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [98/123]

　　　我々はまた歩き続けた。
　　　
　　　大きく右に曲がっていきながら、人形を見た地点へと進んでいってるのを私は感じた。
　　　
　　　それにしても疲労がつのる。もう足が棒のように感じられる。
　　　
　　　くじけそうになるのをこらえて、我々はさらに歩いて行く。

　　　　　　　　　　　　　　ﾏ二.二.二二.二二二ﾑ
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558 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [99/123]

　　　やがてまた人形の明かりを視界にとらえた。
　　　
　　　今度はアンも素直にそこに近づいて行った。
　　　
　　　そうして我々はふたたび人形と同行することになった。
　　　
　　　私の口から安堵のため息がおのずと漏れた。
　　　
　　　アンのしっぽを放す。

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　　　ﾉ⌒;　　ノ: : : : ノ´.: .: .: .:.:.:.:.:.:.:.:.:.: .: .: .: .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
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559 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [100/123]

　　　そしてついに洞窟の出口へと我々はたどり着いた。
　　　
　　　ああ、その光を目にした瞬間、私はどれだけ安心したか分からない。
　　　
　　　ついに地上に出られるのだ！　私は疲労を忘れてそちらに向かって駆けだした。

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560 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [101/123]

　　　我々は人形に先駆けて出口を抜けた。
　　　
　　　圧倒的な日の光に目が眩む。
　　　
　　　思わず私は腕で顔をかばい、目を伏せた。
　　　
　　　しばらくして目が光に慣れた頃、私は顔を上げて眼前の風景を目にとらえた。

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561 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [102/123]

　　　雄大な荒れ地が眼下には広がっていた。
　　　
　　　あちこちに大きな岩が転がっており、草は一切生えておらず、木は点々としか見えない。
　　　
　　　地平線からは白く巨大な雲が伸びており、天は暑い日光をその下のあらゆる物に降らせていた。

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　 /´.::;:..＼::.:､:...　＜::.´￣`ヽ::..＿　. 　　'　:　　. 　　　;　　　 ;　'　:　　　＿;∠,;;;;.:;::::;:､:;ﾞヾ
／〉　　　　::.:ﾆ;;.. ,／￣＼:::..ﾊ''´ .::::＼.　　　　　;　　.　　'　　　.　...　.::.::;／べ;:::.::'.:.￣ヾ::;:;;;,:;
,ノ.::.:::':::.:.:..;;.;;:;::.:./.::､:／´￣｀＼:-:ー:┴- ､　. 　　　;　　.　 ;　'　:　　.::/　.::;:.::::.:;:::::.;::':ヾ＞ｰ-
:.:;:べ､＿＿_,,／￣｀ヾ;:::.:..:;.:...::.:::;:.::/.:::.::......｀ヽ::::::::..　　　　　 r-､　 .:└ヾ,;:::':::::;ｨ;;;;;;;;:;;ﾂ::::::;;;;

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562 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [103/123]

　　　そして我々の占める一角は、絶壁のさなかに浮き出たひとつの岩棚に過ぎず、
　　　
　　　どこにも繋がる場所のない、単なる行き止まりだったのである。

.: : : :.〉: : }: : : : : :|.: : : :. :.∧: :`、: : : : : :| : :ヽ: : : : : :}__ﾄ､.＼.:}
￣＼: : /ﾊ: : : : :.{__: :/￣￣＼:ヽ: : : : : | : : ‘: : : : :∧: ＼.:.:ﾊk
.: : : :.∨|!_∧.: : : :.￣乂 ,,,,,,,,,,ﾉ : 〉: : : :人 : : }＿: :/ :ｊ}: : :∨ｲ¨`､
.: : : :.j: :|!-_∧: :／￣` 、: :￣￣`、: :/￣＼/: : :.`ヽ: ｒ─‐ﾍ廴.:.厶
､＿ / ∧_-_∧′.: : : :. ヽ.:: : : : :.ｉ``ヽ.: : : :.}: : : : :.{.:.:k.:.:.:.:/＼.:.:.:∧
￣￣`＼〉-_刈 : : : : : : ｲ: : : : : : |: : :.}: : : : L : : : : 〉: :ﾍ､_L.:.:.:〉:.j.:.ﾍ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _､‐‐
＿＿: : :.＼'""ヽ､､､、: : }￣｀ヽ_ 」√ ＼イ⌒＼: :,,{: : :.∧ ヽ.:.:.{ｲ.:.:.:.k　　　　　　　　　　 ,,､　　　ｒ'"^ｲ..........
: : : : :.`､: : `: : :.|: : : :ﾊ : }: : : : :∨＼ : : /.: : : :.j{: :/: : : : :∨}Ｙ:.ヽ,イ从　　_,,,,____　 ,,.／￣ﾘ..＼___/........^..........
: : : : : : i!: :￤: : ∨: : ∧￣＼: :」 : : ,}: : {: : : : :{⌒ヽ─ ､,,/.:.廴:/､.:.:::ハ／..i...........∨....〉......|..............{......./...........
: : : : : : {: :厶: : : :∨ : : 〕: : : : Ｙ: : : ﾉ;,: :乂＿,ﾉ: : : :〉¨ヽ:`ヽL,/:.:.:ヽ.:.:..{........＼,.......}／......./..............ﾊ.....{......!......
.: : : : : :.レ'"^ヽャ气￣＼＿＿|: : ,/￣￣＼: :￣厂{ : イ￣＼.:＼,＿刈ﾄ､_.........^.....＼....../.....i........................厶....
`,.: : : : : :.＼: : }: : : : Ｙヽ: : : :/￣ヽ.: : : :. :.＼__{ : ∨¨＼: : ∧::::〉:::∨:::::{ ...........〉...._}...厶.....i.........__/....._/.........
厶: : : : : : : :|: :ｊ: : : : :.}!: :∨￣}、: : :.|.: : : :. :. :.|.: : : :.}! : : jli : :.∧::}ｲ￣｀Ｙﾊ───‐=ミ、...∧.../......^ヽ.........{..
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: : : :;′ヽ: :/: :￣＼/￣ヽ」: : :.〉: :И}: : : :ﾊ: : {: :∧-__〈￣＼__＿込　　　　　ﾄ､:i:i:i:i:i:i:/:,:,:!:,:,:,:,:,:,:,ｒ'":,:,:,:,:,:,:,:
: : : :＼: :j￣￣￣＼〉: : :.}: :￣ヽ: : ﾘ: : : :} |⌒＼ ∧: : }.: : : :.〉 ´￣＼　　　　乂_:i:i:i:i:i{:,:,:,:,:,:￣,:,__|:,:,:,‐-:,:,:,:,
: : : : :.√＼.: : : : : :.|￣￣＼____/¨¨^`、/￣＼: : ＼}'""~￣ヽw'´: : 刈}　　　 .:.:｀`～､、;.;.;.;.;.;.;.;.∧;.;.;.;.;.;.;ｉ.;.;
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w//⌒ヽ刈芹ミx､〈从乂ﾊｗ'"＾　￣￣＾ヽ　ィ;;;:,:,:,...　　　　　.: .: .: .: .: 　　　.: .: .: .: .: .: .: .: .: .: :,:,:,:,:,:,:,:,:∨;;;;;

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563 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [104/123]

　　　これは一体どういうことだろう。
　　　
　　　我々が唖然として立ち尽くしていると、人形がその脇を通り抜けて、前進していった。
　　　
　　　そしてまさかと思う間もなく、人形は岩棚のふちを通り過ぎて、空中へと躍り出たのである。

　　　　　　 /　　　　　　　/　 ....-‐==＝￢　　　　　　＜⌒
　　　　　　　　　　　　　　　 ..:::::　'"´　　　　 .　-‐…‐-ミ　｀
　　　　／　　　　　　｛:／　　　　　 ´　　　　　　　丶⌒　＼
　　__彡　　/　　　　　　　｛　　　　　／
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　　　　 / / 　　　 |　 l| ｛　　　　　　　　　　　　　、　　　　　ﾟ｡　　　ﾟ｡
　　　　　　　　 |　八｛　　 /　　　　　　　　｝　 |　　　　　　ﾟ
　　　　 |　　　　　　 ′ ＼　.′　　　　　　　　　｝　 | 　　　|
　　　　 | ∧　　　丿:{　　　　　　　　　 |　　ハ　　　　　|　､　　　　 l
　　　　 |　　　　　 :::|　　　 |　　　　　　　　 /|　　　　　　ハ　　卜　＼　　　|
.　　　八{　　　　　　|::|　＼　| 　　　　　 / l|　 /　　} /　　　厂＼ハ　　|
　　　　　｝　　　　|::| 、　　|　　　　　　厶斗 / ￣／　　 |　　_.斗rｧ｝　八
　　　　　｝ :|　　 |::|　ﾄ､八　　 | 　　｛　 |/___.斗r　　 | /´｛::...ﾂ　　／
　　　　　｝ :|　　 |::|　|::::{｛: ＼　卜.　｛　《｛::....ツ＾　　　}′、　　ノイ
　　　　　｝ :|　　 |::|　|::人ゝｯj＼{　＼{　　　　　　　　　　　 l｛
　　　　　｝八　 ∧:: __|:::|　＼＿,.､＼　　　　　　　　　　　　 ′　八
　　　　　　　　　　｛　ﾟ｡ ::::_｣　 |:::|　ハ＼　　　U　　　　　　　　 _
　　　　　　　　　　　＼ﾟ　　　　|:::|/　　.　　.　　　　　　　　　 ´
　　　　　　　　　　 V　八::|八　 l 　　＞　　　　　　　　／
　　　　　　　　　　　　　　 }　　 |:::|　j/V|　　　　　 ≧　　. __／
　　　　　　　　　　　　　　 }/　 i|:::|　|.. 八/＼/＼／∨＼〈......｛
　　　　　　　　　　 /　　 |:::|　〉..............................................ノｰ-ミ
　　　　　　　　　　　　　　　 |斗'........≧=‐-.............-‐=≦.......................
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　　　　　　　　　／..................................................................................................＼
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564 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [105/123]

　　　あっと思った瞬間、人形はそのまま空中を歩いて渡っていった。
　　　
　　　その足元に見えない道でもあるかのように、人形は宙を平然と歩いていく。
　　　
　　　「何があっても人形を信じるのですよ。」
　　　
　　　セシリアの言葉が思い出された。
　　　
　　　行くしかない。
　　　
　　　私は唾を飲み込み、覚悟を決めると、空中に一歩を踏み出した。

　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　 |　　　　　　　/　　　　 l　　　　　 ',: : .　　{
　　　　　　　　　　　 '　　　　　　　　　 |　　　　　　 /　　ｉ　　ｌ　　l　　　　 , : . 　ヽ
　　　　　　　　　　　　　 :　　　ｌ　 } 　.:|　:|､　　:i　　 :| ヽ　 }　　｜　 |　　　　　:} : : .　 l ＼
　　　　　　　　　 l .　　　　| 　 '　/ l　:| ', 　 l　　 :|　 }: 八　　|　　|　　　:　 : : : : .　 l
　　　　　　　　　 |: .　{　　 !　/ ./- !　|_ :,　 :,　　 |＞}/―ヽ　{∨ |　　　}　. :' : : : .　|
　　　　　　　　　 |: : . ',　　l /j:/ ￣ヽ:{: `ヽ　ヽ　 |　./´￣　＼ ∨! 　 . : . : 八 : ､　{
　　　　　　　　　　 l: :､: .､　 ∨/{￣だ茫}不＼{＼｜　ｱ¨だ茫} ¨}.:}　. :/: : /: .:l: : '; .　,
　　　　　　　　　　　 ∨ﾄ､:.ヽ. 八　ヽ.ゞzツ　　　:l　＼.　　ゞｚツノ八 / : :∧: ::|､: :}:､: :,
　　　　　　　　　　＼ヽ: ＼ヽ　　　　　　 :}　　　　　　　　　/.:／}. :〈/∧: | }: :　＼､
　　　　　　　　　　　　　､: : ト:＼　　　　 :{　　　　　　　 /イ//ｲ : ∨∧:! |:/　　＼
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565 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [106/123]

　　　左足に体重をかけ、右足を持ち上げる。
　　　
　　　身が空中へと乗り出される。
　　　
　　　体の重心が前に移り、右足が降ろされていく。

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566 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [107/123]

　　　
　　　足が降ろされた。
　　　
　　　足元に、確かな感触があった。
　　　
　　　気が付けば、私は空中を渡っていた。
　　　
　　　私はそのまますんなりと歩いて人形へと追いつき、その背中にたどり着いた。

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567 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [108/123]

　　　やがて私の後ろから水銀燈とアンもついてきた。
　　　
　　　我々は宙を歩行し、段々と降下していくと、人形と共に荒れ地へと降りて行った。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ;:;'r-=´へ、
　　　　　　　　　　　　　┌へ、　　　　　　　　　　　　　　　　 _,／　/ ':..ﾍ `.＼､_
　　　　　　　　　　 _,／.::/.:::::;＞‐''ﾞ￣￣ﾊ .r─r--::;:-.:.､_:: ,＜´_,::":/:':::::..`._..::;'".へ'´＼／^
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,ノ.::.:::':::.:.:..;;.;;:;::.:./.::､:／´￣｀＼:-:ー:┴- ､　. 　　　;　　.　 ;　'　:　　.::/　.::;:.::::.:;:::::.;::':ヾ＞ｰ-
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568 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [109/123]

　　　我々はそれから二時間程度を歩き、一つの廃村にたどり着いた。

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工エ::「 /〈. ::〈|-､_/::::::..＼r':.|.::[,/T>.:/ﾛ〃乢.: :: :〈〈　　　　　　￣└─匚|＿_| :| |:L:冂_| :|┐ .::::::ｉr==| |.:::.｢.:[]:}iｌ|{´
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569 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [110/123]

　　　我々は人形と共に廃村の中央広場まで行った。
　　　
　　　広場にはギロチンが据えられていた。
　　　
　　　刃はさびていたが、まだ使えそうだ。
　　　
　　　人形はギロチンの階段を上ると我々に向かって振り返り、首を斬る身振りを示し、
　　　
　　　それから罪人が首を突っ込む穴に自らの首を差し出した。

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570 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [111/123]

　　　我々は黙って人形の指示に従い、縄を引っ張ってギロチンの刃を上まで引き上げ、それから手を離した。
　　　
　　　刃が落下した。
　　　
　　　人形の首が切断された。
　　　
　　　それから人形は次第に大きくなり、人のサイズまで膨れ上がった。
　　　
　　　私はそれを抱き上げて確かめてみた。
　　　
　　　暖かく、柔らかい。
　　　
　　　首の切断面は不思議な赤い肉の膜で覆われており、血は吹き出ていなかった。

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　　　　　　　　　ヽ　　　　　　　　 , '　　　　　／',.　　 ',　　　　　, '
　　　　　　　　　　　　　`　、　　　　 , '　　　　／　 /ﾞ,.　　 ',　　　／i
　　　　　　　　　　　　　　　 `　--〆　　　　, '　,､ '/　 i　　　',　, '　 ,'
　　　　　　　　　　　　　　_　...._／　　　　 , '`"　 /　　 }　　　 ',　　 ,'
　　　　　　　　　　　　　 ,'　　　　　　　／　　　/ 　 r-i　　　　',　ノ
　　　　　　　　　　　　　,'　　　　　　 , ' 　　　 /r‐'".... !　　　　 Y
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571 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [112/123]

　　　ひょっとすると、これがルネの体なのではないだろうか？
　　　
　　　ルネの髪の毛を体に近づけるとそれは大いに逆立って反応していた。
　　　
　　　やはり。我々は大きなため息をつくと、その場にへたり込んだ。
　　　
　　　丸一日歩き続けた疲労が身にのしかかってきた。
　　　
　　　ありがたいことに廃村の井戸はまだ枯れていなかった。
　　　
　　　我々は心ゆくまで水を飲むと、まだ屋根のある民家に入って座り込み、眠りについた。

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　　　　人　　ｉ|　　　＞┬ｚ┐　/⌒７⌒７⌒フ´￣´　　＼／　　　＼＿＿＿＿＿＿＿
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572 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [113/123]

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573 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [114/123]

　　　それから我々は一か月ほどの時間をかけて旅をし、ルネのいる所まで戻ってきた。
　　　
　　　ルネは歓喜した。これは確かに彼女の体らしい。
　　　
　　　その首の上にルネの頭を載せると、ピタリと両者は吸い付き、結合した。

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　　　　　　　　　　　叭　　 r 　　　 }　　　　 l: : : : : : :| : : : : |: : :|
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574 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [115/123]

　　　完全なルネが取り戻された。
　　　
　　　我々はそれを祝った。
　　　
　　　ルネは、入口を塞いでここでアンと共に永眠しようと思うと言ったので、我々もそれに賛成した。
　　　
　　　「ではこれでお別れですね。」

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　　　　 j,/　　　　 i　/i,/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .　　　　　 l
　　　　 /　,ノ　.　　 | '　′　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　 l,　 | ｌ　 . 　　ｉ |
.　　　 /／'{ 　 i　　 |{　i　　　　　　　　　ｉｲ'i　　jﾊ　　　　i　　 ,1　 |_|　 i　　 | |
.　　ノ'　　‘,　 l　　　.l　　　　　ｉ　　｣.|_l　_厶j　　　　l 　 ./ |　厶|　 |　　 ,ﾊ|
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　　　　　　　　　　　　 {//　　　　　　　　　　　　 {爪,|rっ　　　 {　　　|

575 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [116/123]

　　　「お待ちください。なぜだかあなた方は浮かない顔をしていらっしゃいますね。
　　　
　　　旅先で何かあったのではありませんか。どうかお聞かせください。」
　　　
　　　「でも眠りにつこうとしているあなたにとっては、不吉な話だと思いますよ。」
　　　
　　　「構いません。あなた方は御恩のある御方。」
　　　
　　　「では申し上げますが、実は我々の鏡像が殺されたのです。
　　　
　　　もう二度とこの身は鏡には映りません。もはや我々は自分の顔を見ることはできない身です。」

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　　　　　　　　 | : ／　　　ヽ｀`、 :∨∧:':,∨　　￣＼ーミ|: : :|
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576 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [117/123]

　　　ルネは我々の境遇に同情してくれた。
　　　
　　　それどころか彼女は涙まで流してくれたのである。
　　　
　　　「なんて無残なことでしょう！　しかも、このような善行を行う者たちにこの仕打ちとは。
　　　
　　　神も仏もないのでしょうか？」
　　　
　　　「ありがとうございます、ルネ。ではこれで……」

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／
～､、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 γ´￣￣￣￣｀丶　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／
　　｀`～､、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ゝ　　＿＿,.　　'′　　　　　　　　　　　　　　　　／　　／
ﾆ=-　__ 　｀′　.,_　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　／／
__　　　⌒ﾆ=-　 _ ｀`～､、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　／／
| |丁Ｔ=-　　　　⌒ﾆ=-　_丶､　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　／／
| | | | | |:|:|　｢丁Ｔ=- , _ 　 |　　｀`ｉｉ─┬　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿_／　　／／
二..,,_ｰ-: |　|:|:|:|::|::|::「丁:|::|　　　 || 　 | |｀ｉ¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨|　／／
| |::|::|丁ﾆ|　|＝=-⊥L_|: |::|￣~^"||─ | |_:|＿＿＿＿＿ｒ‐ーー┐__ｒーー‐┐＿＿＿＿＿＿______|／／
|_|::|::|::|::|::|　| | | | | | | |:「|::|￣~^"||¨¨ | |‐|‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐|:|￣￣|:|--|:|￣￣|:|‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐イ
「｢丁ｉTＴ|　|￢＝＝==ｰ|::|　　　_||_　 | | :|　　　　　 |:|====|:| 　|:|====|:| 　　　　|￣￣￣|　　 |
| | | | | |:|:|　| | | | | | |::|:|:|::|T丁｢| |~|　| | :|　　　　　 |:|＿＿|:|　 |:|＿＿|:|　　　　 |　　　 |　　 |
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-┴_ ,二┤ |iＴ丁|::|::|:,,|」|::|　　 |-| |　 | |＿||_.| |　　 |── |── |──| |/￣￣￣￣￣￣￣￣　＼
T｢|ｉ:| |:|:| |　|_」⊥-_二┬|::|　　 |‐| |￣|_|￣￣|_|￣￣|＿＿_|＿＿_|＿＿|/　　　　　　　　　　　　　　　＼
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577 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [118/123]

　　　「お待ちなさい！　私があなた方の鏡像の代わりをしてさしあげましょう！」
　　　
　　　「なんですって？　どういうことです。」
　　　
　　　「正確にはあなた方の内どちらかお一人の鏡像を、私が務めてみせます、と言っているのです。」
　　　
　　　「そんなことができるのですか？」
　　　
　　　「可能でございます。私の魔術をもってすれば。」

　　　　　　　　　　　／: : : : : : : : : : : : : : `、 : : : : : : : `、: : : : : : : : : : ＼
　　　　　　　　　　　　　／: : : :.:;.ﾍ/|: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : `、
　　　　　　　　　　　　 : : : : :.:.:/＾⌒|: :.:.|: : : : : :.:.l:|: : : : : : : : : :| : : : : : : : : : : : : : :
　　　　　　　　　　　 /.:.:.:/: : : :|　　 ',: : |: : : : : :.:.|:|: : : : : : : : : :トﾐ: : : : :＼: : : : : : |
　　　　　　　　 /: : : |: : | : | 　　 ',: :|＼: : :.:.:.Ν: : : : : : : : :.:|: : ＼／⌒ヽ＞ミ :|
.　　　　　　　　　 ,′: : :|: : | : | 　　　', |　 `、:.:.:.| |: : : : : : : : : :トﾐ: : :ヽ:＼: :}: : : :Yヽ
　　　　　　　　　　: : :|: :.:|: : | : |　　＿ ',L=--',: :/ :|: : : : : : : : : :| ／ : : : : : >: : :.:〉 : |＼
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　　　　　　　　　 ||: ∧:.:|‐: | ＼　　 __,,ｘ==ミｘ　　 |: : : : : : : : : :|'⌒ヽ／ミ_／､_／:ﾉ: : :｜
　　　　　　　　　　 l|: :.∧:|＼|　　　　〃|:::（__ ヾ＼ |: : : : : : : : : :l＜　|:｜: : : : : :|´: : : : :|
　　　　　　　　 |: : : :l'|iｆ㍉　　　　　　| |:::j｜ﾉ´｜:/: : : : : : :｜ヽl　|:｜: : : : : :|: : : : :| |
　　　　　　　　 |:∧ :|圦 )ﾊ　　　　乂_.ソ　　 /:/: : : : : : : : |　　/: :|: : : : : : |: : : :.:.| |
　　　　　　　　 |　∧|∧ Vﾉ　　　　　:::::::::::::: /:/|: : : : : : : : :l_ノ /: : :|: : : : :.:.:| : : : : |＼
　　　　　　　　　　 |: : :.}:ｒ'　　　　　　　　／｜ : : : : : : : |_／: : : :| :: : : : :.| : : | : |
　　　　　　　　　　　　 |: : :| ヽ　　　　　　　　　　 |: : : : : : : : :|: : : : : : : : : : : : :| : : |: /
　　　　　.　　　　　　 |: :.i|　　　　　　　　　　　　 |: : : : : : : :.:| : : : : : : : : : : : : | : /|/
　　　　　　　　　　　 || 圦　　ﾏ⌒＼　　　　　　　|: : : : : : :.:..|',: : : : : : : : : : : :.:|∨
　　　　　　　　　　　　　 l|: : : :.　　∨⌒ ヽ　　　　　 | : : : : : : : Ｌ∨: : : : : : : : : : :|
　　　　　　　　　　　　 |: : : : :＼　ー‐ ′　　　_,. |: : : : : : : :|-‐∨ : : : : : : : : ！
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578 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [119/123]

　　　私はそれなら水銀燈の鏡像を務めてくれとルネに言った。
　　　
　　　「待ちなさいよ！　なんであなたじゃなくて私なの？」
　　　
　　　「それは、お前がこうなった原因が私にあるからだよ。」

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 __rf㌻ア{⌒V⌒ﾊミ*､_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　__(ﾊ'゛乂_,廴ヽ´_,,ノ,ﾉ⌒ヽ㍉,_
　　　　　　　　　　　　　　　　　_{「/,ﾉi:i:r‐┘_,,..￣..,,_　`ヽ､i:i_ﾊ))
　　　　　　　　　　　　　 (＾/ｲ⌒,ｘ≦＾　　　　　＾''*､i乂八ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　__};{_ﾉ,x㌻　　{　 ;　　i　　　辷ヽ㏍}I.}⌒ヽ
　　　　　　　　　　　　　　〃⌒く/＼}｝　 .i{　 | 　 |{　 }　; . 乂}ﾊ{⌒)　}
　　　　　　　　　　　　　　ゝ／/}__ノ.iﾊ　 li{　 | 　 |{　 }! .}　i! //}}＼xく
　　　　　　　　　　　　 .{／ｲ/ハ　ｉ{_,i　从 . | 　 |{　 }! i}　i!乂_ﾘ⌒＼ヽ
　　　　　　　　　　　　／　 !}__ノ　-=≧s,,.ﾊ_j　　|{_,,.s≦=-　 {＼}　　} }
　　　　　　　　　　く／. 　 !}[　ｉ　 `笊irjﾊ＾乂_,,_ 笊irjﾊ7´ 　{　 ))　 } }
　　　　　　　　　　 //　　　!}[　|　　|!`冖''゛　　　 `冖''゛}　　{ 〃　ﾉﾉ
　　　　　　　　　 .〈/　　　 .!}[　|　　|!　　　　　;,　　　　_,ﾉ　　{ {{ く／
　　　　　　　　　　　　　 }[　|　　i|!;､　　　_,,.,,_　　　 ,7　　ﾊ　∨
　　　　　　　　　　 /　　 .|　　i|!l i`　　　　　 .イ,′　/　} 　 ∨
　　　　　　　　　　　　 /　　　 |　　;|!|ﾉ　}_,,.≧≦.,,_}_/　　/　 .} . 　 ∨
　　　　　　　　　 /　　　八　ｉ!|_／r''⌒)(⌒ヽｉ:}　 /　　 } 　　 ∨
　　　　　　　　　　　 /　　／⌒ｰ＼　ヽ. {_／乂＼_j;ﾉ .ｲ≧=-.　　　 ∨
　　　　　　　　 / 　〃i:i:i:i:i:i:i:i:{))⌒`ｰｧ /　 }`ｰ／/;{i:i:i:i:i:i:i:＼.　　 ∨
　　　　　　　　　 ′　_j{i:i:i:i:i:i:{i:ｉ:ｉ{))　　./ /i 　 } } 　 /ノ{i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ヽ. 　 ∨
　　　　　　　　　 .′　(i:i:i:i:i:i:i:i:ｉ:Vｉ:{))r‐く／⌒)〃＾Y＾)_j((!{i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉ}　　 ;,
　　　　　　　　　ヽi:i:i:i:i:i:i:ｉ:}ｉ:{))|　 {　　く_j{　 .lｲ　 ((}i}i:i:i:i:i:ｉ:ｉ/i:/　　　 ′
　　　　　　　　　　 /i:i:i:i:i:i:i:i:ｉ:i:乂|　∧　　 / 　 |′ﾉ((}i}i:i:i:i:i:iｲi:ｉ{　　　　.,
　　　　　　　　 .{ 　　 {i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉ乂{__}　　{_____ﾉ／:_乂i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:) 　　　 ′
　　　　　　　　　 .{i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i≧=-　-=≦i:i:i:　i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:}　　　　　}

579 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [120/123]

　　　「でも私たちはパートナーでしょう？」
　　　
　　　「そうだね。しかしこんなチャンスはまたとないぜ。」
　　　
　　　「それはそうかもしれないけれど。」

　　 //　 /,　　　 ,
. 　 //　 //　 //　/,　 ,
　 //　 //　 //　//　/.:'
; //　 //　 //　//　// / ,
//　 //　 //　//　// / /'　 /　　 ,
/;ﾄ､:'/　 //　//　// / /'　 /　　 /　 ,　　 ;
7/,/＼;//　//　// / /'　 /　　 /　 // 　川
/ﾝ_厶ｨ＼;// , ｲ{ / /'　 /　　 /　 //　　/// '
　「７::ヾ:、＼/　|!ﾊ/'　 /　　 /　 //　　/ '　/　　ｲ　,
　　{う}::::＼、＼jl　|{　/　　 /　 // 　 / 　 / 　 /'　/　 .:
　ヽ弋こツゞｖ/＼}f/,　　.:′,〃　　,　　 /　　/　 /　　'
　　 `　-　　`Ｙ{｀ーｸ　／　ｨ　　／/　 /　　 '　 /　　,′
　　　　　　　　　　/／ィ／ハ／ィ/　 /　／　 /　　/
　　　　　　　　　　　　　　　ｒ-:zL」＿厶イ彡ィ　　 /
　　　　　　　　　　　　　　ィﾁう≧ｧｘ /／　'　/ 　 /
　　　　　　　　　　　 ‘代こツ　/く爪/／　 ,
　　　　　　　｀ _」　　　　 `ー　　,ィ/彡　　／
　　　　｀丶、　　　　　　／/ ｲ　 }　／/
、　　　｀　　　　　　　　　　イ　/ / |　/　　 '
::＼　　　　　　_＿__ . ．　´ﾊ{ 〃{　 }/ 　　 |
≫ｘ:ｰ:7_「￣} 川　爪{/ | l i l//　ヾｲ　　　　|
//ﾌイ/ﾑ､　j/ l !/ |i/　 | l i l{　　川　　　 |
才///「｀ヾ:{′| ′L__ ;/| l i l　　 | !{　　　 '
//〈/:∧　 }:} _」ｧ7///7ｧLi」_l_ 　 |八　　　 |
厶///小.///////////////ハ　|　ヾ;:.　　|
ﾏ「{ﾏ「{ﾏＶヽ//////////////∧i　　 }} 　 |
　|:|　|:|　　 {'///////////////＼イ　　 |
　{:{　ヾ:,　　 }'/////////////////＼　　 |

580 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [121/123]

　　　しぶる水銀燈を説得し、私はルネに言った。
　　　
　　　「ではこちらの水銀燈の鏡像を務めてください。できますか？」
　　　
　　　「ええ、分かりました。ただし制限がございます。
　　　
　　　一度に映ることができる鏡は一つまで。それと夜は私も眠りにつきますから、鏡には映りません。
　　　
　　　それでよろしいかしら？」
　　　
　　　我々が首肯すると、ルネの姿はかき消えた。

　　　　　　　　　　／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼
.　　　　　　　　　／ : : : : : : : : : : : : : : : :＼ : : : : : : ヽ
　　　　　　　　　　 : : : : : : :/: : : /Vヽ : : : : : : ヽ: : : : : : : :
　　　　　　　　　 /: : : : :|: :.| : : /'^⌒|: : :|: : : : : :',: :＼: : : |
　　　　　　　 /: : : :.:::.|: :.|: ::/　　　|: : :l: : : : : : |: |ﾐ , ﾍ:∧_
.　　　　　　 / : : | |: /|:./|: :′　　｜: ∧: : : : : |: |: ＼: 〉: 〉ヽ
　　　　　　 / : : : | |/,_| |_|: |　＿＿|: /　': : : :| : : | : : :/ :/: :｜
.　　　　　　 /|: : : :| |　 | | |: |　　＿ |/￣ |: : : | : : |: /_:／: : :｜
　　　　　　 / :| |: :八|示ミ八:l　　 x====ミ|: : l | : : |/: : | : : : : |
　　　　　　　 | | :八:| 乂.」　＼　　乂_ﾝﾉ: :/ |: : :.|ヽ : l : : : l |
　　　　　　　 |∧: : :＼_　　　　　　　　　　|/l: :l: : : |) }: :l : : : リ
　　　　　　　 :＼(｢　〈　　　　　　　 |:｜:.:.:.|ノ: :.|: : : :|l
　　　　　　　　 ∨圦　　　　　　　　　 |: |: : : |: : : :|: :.:..八
　　　　　　　　　　　 |＼　 ‐ -　　　　　　 l: |. : : |: : : :.',: :/
　　　　　　　　　　　　 |: :.:＼　　　　　イ　　|:.|: : : |: : : : :∨
　　　　　　　　　　　　　|: : l :个 ≦|_　＿___:」/ : : :| : : : : : :.
　　　　　　　　　 |: : l : |: : ::_|ｌ l┌―‐|: : : : |: : : : : : : :.
　　　　　　　　　　 l : :l____／ x| | lｘ　 | : : : :|､: : : : : : : :.
　　　　　　　　　　　 |: :.|／　八ﾉﾉﾉ　　｜: :.:.:.|　` ＜_ : : : :.
.　　　　　　　　　／ :|: :.|　　　 | ｌ | ｒ―｜: :.:.:.|　　∠⌒ 　､:',
　　　　　　　　 /　　:|:_ｒ‐｢ Y＼┴ﾐ　　| : : : :|　 /　　　　　＼
　　　　　　　 .′　 /_｣　　＼　',ｰ|＼ | : : : :|　/　　　　　 ',
.　　　　　　　　 ∧ 　 |ｆ´　　　　ヽ├|／:|: : : : |∨　　　　　　　　|
.　　　　　　　　 | :|_／|　　　　　 V／ |: : : : |:∧　/　　　　　　ﾊ
　　　　　　 _|／:／',__|￣＼/＼　|:　｜: :.:.:.|:::: ∨　　　　　 / : :.
　　　　　　　 /:::,</　 ∧ |￣＼/＼/|　｜: :.:.:.|、::::∧　　　.／/: : : :.
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　　　　　 :::::/　　　　 /￣∧　　　　ヽ|: : : : |: / _∨::::::::::＼: : : : : : : : :.
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581 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [122/123]

　　　部屋に置かれている鏡を水銀燈が覗き込むと、確かに鏡像が映った。
　　　
　　　それは水銀燈と寸分たがわず同じ顔をしていた。
　　　
　　　水銀燈はしばらくの間自分の顔を眺めていた。

　　　眉を潜めたり、笑顔を作ったり、鏡とにらめっこをして自分の顔のありようを確かめていた。
　　　
　　　アンは部屋の隅まで行くととぐろを巻いて、長い眠りについた。

　　　　　　　　　　　　　　　＿_
　　　　　　　　　　　　_,-''"´ 　｀`‐-､._
　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　　/　　　　　　､-,　　　　°　＼
　　　　　　　　 /　　　　　／　 `‐､_　　‐-､.．-'
　　　　　　　　/　　　　　/　　　　　｀`‐-､)｀`‐-､._
　　　　　　　 /　　　　　/　　　　　　　　　　　　　｀=
　　　　　　　 l　　　　　 l
　　　　　 |　　　　　　l
　　　　　　　 l 　　　　 l
　　　　　　　 |　　　　　　 l
　　　　　　　 l　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　ヽ　　　　　　　＼
　　　　　　　　　＼　　　　　　　` ‐ ､._
　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　　　　　` ────
　　　　　　　　　　　 `‐､_
　　　　　　　　　　　　　　`‐､_
　　　　　　　　　　　　　　　　｀`‐-､._
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀`───‐-

To Be Continued．

.

582 名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2019/09/29(Sun) 14:49:02 ID:37a78055 [123/123]
あと一回か二回で終わりです。

583 名前：普通のやる夫さん[sage] 投稿日：2019/09/29(Sun) 17:40:30 ID:fb98b202
乙でした
終わりが見えてきたのか

584 名前：普通のやる夫さん[sage] 投稿日：2019/09/29(Sun) 22:22:15 ID:5186ef3c
乙でした！

さて、どんなラストになることか

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[ 2019/09/30 14:05 ] 旅 | TB(-) | CM(0)

旅 第７話

旅　第７話