やらない夫は人生のまとめに入るようです 1話
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- v やらない夫は人生のまとめに入るようです 3話 (06/05)
- v やらない夫は人生のまとめに入るようです 2話 (06/05)
4 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:01:08
ID:Gq7BeRy2
『俺はこの世界の、主役じゃなかった』
.
5 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:01:43
ID:Gq7BeRy2
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ ( ;;;;( そんな事をはっきりと自覚したのは、一体いつからだったろうか。
| ( ─)(─ ) ;;;;)
| (__人__) /;;/
. | ノ l;;,´ 大学受験に失敗した時だろうか?
| ∩ ノ)━・'
/ / _ノ´ 愛し合っていると思っていた彼女が、
(. \ / ./ │ 二股をかけていた事が分かった時だろうか?
\ " /___| |
. \/ ___ /
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ 一生をかけようと思っていたバンドが、
| ( ー)(ー) 下らない理由であっさりと解散してしまった時か?
. | (__人__)
| ` ⌒´ノ 就職先が見つからず、仕方なく今の職業に
.l^l^ln } 就く事を決意せざるをえなかった時だろうか?
. ヽ L }
ゝ ノ ノ
/ / \ …いや、本当はもっと早く気付いていたのかもしれない。
/ / \
. / / |ヽ、二⌒)、 ただ、その事を、どうしても、認めたくなかっただけで。
ヽ__ノ
/ _ノ \ ( ;;;;( そんな事をはっきりと自覚したのは、一体いつからだったろうか。
| ( ─)(─ ) ;;;;)
| (__人__) /;;/
. | ノ l;;,´ 大学受験に失敗した時だろうか?
| ∩ ノ)━・'
/ / _ノ´ 愛し合っていると思っていた彼女が、
(. \ / ./ │ 二股をかけていた事が分かった時だろうか?
\ " /___| |
. \/ ___ /
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ 一生をかけようと思っていたバンドが、
| ( ー)(ー) 下らない理由であっさりと解散してしまった時か?
. | (__人__)
| ` ⌒´ノ 就職先が見つからず、仕方なく今の職業に
.l^l^ln } 就く事を決意せざるをえなかった時だろうか?
. ヽ L }
ゝ ノ ノ
/ / \ …いや、本当はもっと早く気付いていたのかもしれない。
/ / \
. / / |ヽ、二⌒)、 ただ、その事を、どうしても、認めたくなかっただけで。
ヽ__ノ
6 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:02:35
ID:Gq7BeRy2
/ ̄ ̄\
/ _ノ ヽ
| ( ●) | 俺は違う、俺だけは違うと、
| (__人) 無駄にあがき続けた俺の今までの人生。
| ⌒ノ
ン ノ 凡人は凡人なりに必死になって積み重ねた努力は、
/⌒ヽ、 _ノ その殆どが『無駄』としか言い様が無いものに成り果てた。
/ ノ \__ィ ´
/ / '|.
( y |. …今の俺は、無駄に年齢だけを積み重ねた、
\ \ | 凡人以下の存在だ。
\ィン、__)、
.| ij ,ノ
/ ̄ ̄\
/ _ノ ,ヽ\ 日々の安定も将来の希望も無く、
| ( ●)(●) 昔の仲間の様に、叶わぬ夢を
. \ | (__人__) 追い続ける事すらも許されず。
.\ .| ` ⌒ノ
. \ ヽ } 搾取されている事が分かっていながら、
.\_,ゝ ノ それでも日々の飯銭の為に、
/, r、 く 下らない仕事を機械的にやり続ける毎日…
./ 〈 \ i
. ヽ、 .ヽ \ i..|
.て_) \ノ 俺は、そんな男だった。
\
\ どこにでもいる、一人の敗北者だった。
\
/ _ノ ヽ
| ( ●) | 俺は違う、俺だけは違うと、
| (__人) 無駄にあがき続けた俺の今までの人生。
| ⌒ノ
ン ノ 凡人は凡人なりに必死になって積み重ねた努力は、
/⌒ヽ、 _ノ その殆どが『無駄』としか言い様が無いものに成り果てた。
/ ノ \__ィ ´
/ / '|.
( y |. …今の俺は、無駄に年齢だけを積み重ねた、
\ \ | 凡人以下の存在だ。
\ィン、__)、
.| ij ,ノ
/ ̄ ̄\
/ _ノ ,ヽ\ 日々の安定も将来の希望も無く、
| ( ●)(●) 昔の仲間の様に、叶わぬ夢を
. \ | (__人__) 追い続ける事すらも許されず。
.\ .| ` ⌒ノ
. \ ヽ } 搾取されている事が分かっていながら、
.\_,ゝ ノ それでも日々の飯銭の為に、
/, r、 く 下らない仕事を機械的にやり続ける毎日…
./ 〈 \ i
. ヽ、 .ヽ \ i..|
.て_) \ノ 俺は、そんな男だった。
\
\ どこにでもいる、一人の敗北者だった。
\
7 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:02:54
ID:Gq7BeRy2
"やらない夫は人生のまとめに入るようです"
.
8 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:03:58
ID:Gq7BeRy2
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ その日も俺は店を閉め、暗い夜道を一人、
| ( ー)(ー) すっかり寝るぐらいしか使い所のなくなった
. | (__人__) 狭く汚いアパートに帰る所だった。
| ` ⌒´ノ
. | nl^l^l 「ふぅ…」
. ヽ | ノ
ヽ ヽ く 最近また溜め息をつく事がふえたなとか、
/ ヽ \ そんな下らない事を考えながら。
/ ̄ ̄\
/ _ノ ヽ、_\ 力強く生きる気力などとうになく、
.| (●)(●) | さりとて命を絶つ勇気も無く、
| (__人__) | ただただ生き延ばしの毎日…
っ `⌒´ |
/ ミ) / 「んっ…? なんだ、あいつら?」
/ ノヽ /
| |/ ヽ だが、俺は出会ってしまった。
| | /| | | ――そう、あいつらに。
/ _ノ \ その日も俺は店を閉め、暗い夜道を一人、
| ( ー)(ー) すっかり寝るぐらいしか使い所のなくなった
. | (__人__) 狭く汚いアパートに帰る所だった。
| ` ⌒´ノ
. | nl^l^l 「ふぅ…」
. ヽ | ノ
ヽ ヽ く 最近また溜め息をつく事がふえたなとか、
/ ヽ \ そんな下らない事を考えながら。
/ ̄ ̄\
/ _ノ ヽ、_\ 力強く生きる気力などとうになく、
.| (●)(●) | さりとて命を絶つ勇気も無く、
| (__人__) | ただただ生き延ばしの毎日…
っ `⌒´ |
/ ミ) / 「んっ…? なんだ、あいつら?」
/ ノヽ /
| |/ ヽ だが、俺は出会ってしまった。
| | /| | | ――そう、あいつらに。
9 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:04:31
ID:Gq7BeRy2
___
/ \ 背格好は、15~16歳前後。
/ _ノ '' 'ー \
/ (●) (●) \ 「いい加減諦めるお、蒼星石」
| (__人__) |
\ ` ⌒´ / 少し小汚い格好をした、どこにでもいそうな二人だった。
____
/::::::::::::::::::::::::`丶、 金を入れてもジュースが出なかったのか、少年の様な外見の少女は、
, --‐'――─‐--- 、:::::::\ 地面に倒れ込み、稚児の様に駄々をこねていた。
,イィ_二仁 イ 二― `ヽ::::\::::::}
_ 〃,lト、 ヽ \ ヽヾ `!::i:い::::::i/ …若いというだけで、根拠の無い希望に満ち溢れていたあの頃。
{ ⌒} /:/=冬フ`ヾ! ‐ゝ七、ト!:リ !|:::| あいつらもいずれ、俺みたいに現実に直面し、絶望するのだろうか。
(` `i .イrっ==` ≪´ ̄ |:イノ レ´ いやその前に、現実と妥協し、それなりに上手くやっていくのだろうか。
{__,、_ァ- ′/ {`>_ Y´ /> -- ‐- 、`ヾつ!:. :ト'
/´X //く/ 八 { } jレヘ⌒}
{:// \'ィ、_Y__>,ミ - .. __ノ _.. イ トヽ:.V 「いやだいやだいやだっ!
/V ト、_ >、_ || (<_仆_>)、 //::_/ ヽ>イ ハ r‐v‐ 、 ボクはこのジュースが飲みたいんだいっ!」
{ ハ _ノ::.::.::.:ト.ハ トヽィ/l 廴__//::.:/ニ <イ/ |ハ r' }
r'⌒ヽ-、|! ヽ::.::.::.::.::.:\jノ::Lノー─‐::''/´ //'7-、|| ヽ_ィ フ
r' j | ヽ \_::.:ト、:ー: :`ヽ、;;;ヽ、::.:ァァー----Ll_/ー' ー' …まあ、俺にも、そしてあいつらにも関係の無い話だ。
7 i′ l! >=ニ::. ::. {、;;;;;/ すぐに視界と意識から二人を外し、通り過ぎようとした時――
ー^ー ′ _l!.斗‐.<::.::.::.::.::. :. :.リ/
ハ }::.::.::_::.:/´ 少年の発したある言葉が、
ヽ:_ヽ__ ,⊥-´ すっかりくたびれてしまった耳に入り込んできたのだった。
`\
/ \ 背格好は、15~16歳前後。
/ _ノ '' 'ー \
/ (●) (●) \ 「いい加減諦めるお、蒼星石」
| (__人__) |
\ ` ⌒´ / 少し小汚い格好をした、どこにでもいそうな二人だった。
____
/::::::::::::::::::::::::`丶、 金を入れてもジュースが出なかったのか、少年の様な外見の少女は、
, --‐'――─‐--- 、:::::::\ 地面に倒れ込み、稚児の様に駄々をこねていた。
,イィ_二仁 イ 二― `ヽ::::\::::::}
_ 〃,lト、 ヽ \ ヽヾ `!::i:い::::::i/ …若いというだけで、根拠の無い希望に満ち溢れていたあの頃。
{ ⌒} /:/=冬フ`ヾ! ‐ゝ七、ト!:リ !|:::| あいつらもいずれ、俺みたいに現実に直面し、絶望するのだろうか。
(` `i .イrっ==` ≪´ ̄ |:イノ レ´ いやその前に、現実と妥協し、それなりに上手くやっていくのだろうか。
{__,、_ァ- ′/ {`>_ Y´ /> -- ‐- 、`ヾつ!:. :ト'
/´X //く/ 八 { } jレヘ⌒}
{:// \'ィ、_Y__>,ミ - .. __ノ _.. イ トヽ:.V 「いやだいやだいやだっ!
/V ト、_ >、_ || (<_仆_>)、 //::_/ ヽ>イ ハ r‐v‐ 、 ボクはこのジュースが飲みたいんだいっ!」
{ ハ _ノ::.::.::.:ト.ハ トヽィ/l 廴__//::.:/ニ <イ/ |ハ r' }
r'⌒ヽ-、|! ヽ::.::.::.::.::.:\jノ::Lノー─‐::''/´ //'7-、|| ヽ_ィ フ
r' j | ヽ \_::.:ト、:ー: :`ヽ、;;;ヽ、::.:ァァー----Ll_/ー' ー' …まあ、俺にも、そしてあいつらにも関係の無い話だ。
7 i′ l! >=ニ::. ::. {、;;;;;/ すぐに視界と意識から二人を外し、通り過ぎようとした時――
ー^ー ′ _l!.斗‐.<::.::.::.::.::. :. :.リ/
ハ }::.::.::_::.:/´ 少年の発したある言葉が、
ヽ:_ヽ__ ,⊥-´ すっかりくたびれてしまった耳に入り込んできたのだった。
`\
10 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土)
12:05:16 ID:Gq7BeRy2
____
/ \
/_ノ ヽ、_ \ 「仕方ないお… 『やってやる』から、
/(●)三(●)) .\ ちょっと待ってろお」
| (__人__) |
\ ヽ|r┬-| / / …やってやる?
/ `ー'´ \ 何をやるというのだろうか?
/ ̄ ̄\
/ u ノ \
| .u ( ●) | 「おいおい、マジかよ、面倒くせーな…」
. | (__人_)
| ` ⌒ノ 彼が一体、何をやろうとしたのかは分からなかった。
| } だが少なくとも、真っ当な手段でなさそうなのは確かだった。
ヽ u }
ヽ ノ 注意する、制止に入るなどという選択肢は初めから無く、
ノ \ 一体どうやってこの場から離れようかと、疲労と眠気で
/´ ヽ 少しぼんやりとした頭を必死で動かそうとしていたその時――
/ \
/_ノ ヽ、_ \ 「仕方ないお… 『やってやる』から、
/(●)三(●)) .\ ちょっと待ってろお」
| (__人__) |
\ ヽ|r┬-| / / …やってやる?
/ `ー'´ \ 何をやるというのだろうか?
/ ̄ ̄\
/ u ノ \
| .u ( ●) | 「おいおい、マジかよ、面倒くせーな…」
. | (__人_)
| ` ⌒ノ 彼が一体、何をやろうとしたのかは分からなかった。
| } だが少なくとも、真っ当な手段でなさそうなのは確かだった。
ヽ u }
ヽ ノ 注意する、制止に入るなどという選択肢は初めから無く、
ノ \ 一体どうやってこの場から離れようかと、疲労と眠気で
/´ ヽ 少しぼんやりとした頭を必死で動かそうとしていたその時――
11 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土)
12:05:44 ID:Gq7BeRy2
\ ゚ o 。| 。 / 。 /
○ 。 ゚ |゜ O / o / 。゜
゜ 。 \ o ゚ O ゚ 。 /゚ 。 O シュッ――
゚ 。 \ | ゚ o / ゚ 。 ゜
。 ゜ 。 。 。 ゚ 。o ゜
__。___ ゚ 。 ゜ ―O――――
゜ o 。 o ゚ 。 ゚ 。 ゚
゚ 。 O / 。 |゜ 。゚ \゜ O ゜
゜ 。 / 。 / ○゚ O \ 。 ゜
O ゜。 / ゚ | 。゜ ゚ 。 o
/ o 。゜ | o ゜ \
____
/ \ 少年の手が、一瞬だけ強く、しかしはっきりと光った。
/ ー, ー\ rnm
/ ( ー) (ー)\ rl | 「まったく… 最後の200円を吸い込みやがった
| (__人__) | ゝ .| お前が悪いんだお…」
\ ` ⌒´ ,/_ | |
ヽ i 丿 まずその事に驚き視線を向け続けていると、
/(⌒) / ̄ ̄´ 少年は、その手をゆっくりと自動販売機の
/ / / コイン投入口にかざし――
○ 。 ゚ |゜ O / o / 。゜
゜ 。 \ o ゚ O ゚ 。 /゚ 。 O シュッ――
゚ 。 \ | ゚ o / ゚ 。 ゜
。 ゜ 。 。 。 ゚ 。o ゜
__。___ ゚ 。 ゜ ―O――――
゜ o 。 o ゚ 。 ゚ 。 ゚
゚ 。 O / 。 |゜ 。゚ \゜ O ゜
゜ 。 / 。 / ○゚ O \ 。 ゜
O ゜。 / ゚ | 。゜ ゚ 。 o
/ o 。゜ | o ゜ \
____
/ \ 少年の手が、一瞬だけ強く、しかしはっきりと光った。
/ ー, ー\ rnm
/ ( ー) (ー)\ rl | 「まったく… 最後の200円を吸い込みやがった
| (__人__) | ゝ .| お前が悪いんだお…」
\ ` ⌒´ ,/_ | |
ヽ i 丿 まずその事に驚き視線を向け続けていると、
/(⌒) / ̄ ̄´ 少年は、その手をゆっくりと自動販売機の
/ / / コイン投入口にかざし――
12 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土)
12:06:19 ID:Gq7BeRy2
_ _
/ ̄ ̄/ /_/ /_/
/ / | ̄|
/ / | \
/ / \ \
/__/ \_/
`
\ ,,_人、ノヽ
)ヽ (
- < >─
) て
/^⌒`Y´^\
__
|__|
/\
/ /
___/ /
|___/
.
13 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土)
12:07:34 ID:Gq7BeRy2
____
/ \ 小さい破裂音と共に、かざしただけで
/ ノ ヽ__\ 直接触れてはいない筈の自販機が、揺れた。
/ (ー) (ー) \
| (__人__) | 「…よし、出てきたお」
./ ∩ノ ⊃ /
( \ / _ノ | | そして数秒後、機械が軋む様な異音と共に、
.\ " /__| | 大量の硬貨とジュースが、釣銭口や
\ /___ / 取り出し口から溢れ出していった。
〉 <三三三三三三三三三三三三三三〉〉
, <三三三三三三三三三三三三三三三7/´ 次々と溢れ出る硬貨や缶を、背にしょった
〈 〈三三三三≧.イ"´ ̄ ヽ. 、 i`Y/ リュックサックに片っ端から詰める少女。
\、三三=彳 i 、 '. } ハ
ヽ./ i ハ \ 、 ヽ ' ! .ハ 「おお~こりゃまたたくさん出てきたねっ!」
/ / i/ /i ハ. ヽ \、 ヽ . i i i
′ i′' j ' \ ヽ丶、\ ┼f ┼ :! :i i そしてそれを、平然とした顔で眺める少年。
i i / /_/_/__ ヽ \ >x≧f斗} i i i
l |i / イノ∠_云ミ、 \、 イ_ぃハ 癶 / l i 二人の表情からは、罪悪感など微塵も感じられなかった。
{ ハノ´ 小 {_??゚} 弋__ノ イ i l l
V i \ ヽ 弋ノ /i ! | ! __
i i ハ\_ ' ; --、// i´i⌒l .r=i
i l l ヽ r _ ヲ ィ.|l⌒l l | ゙ー '| | L.」 ))
l ト、 ハヽ > _ _. イ/j/|.ー‐' | | | ! l
|l } ./ ヽ>ヽハ`¨´ _⊥.|"'| l │ |. i 」 ,. -‐;
i/ , v⌒ -‐' {_. ´ i ! l _| l. | | / //
,孑'"´ /_ノ7ー 、. │ l l、'´j、| | } |,.{ / ))
/) / // ハ 「ヽ } |__,.ヽ、__,. ヽ_」 レ' ; /
/ \ 小さい破裂音と共に、かざしただけで
/ ノ ヽ__\ 直接触れてはいない筈の自販機が、揺れた。
/ (ー) (ー) \
| (__人__) | 「…よし、出てきたお」
./ ∩ノ ⊃ /
( \ / _ノ | | そして数秒後、機械が軋む様な異音と共に、
.\ " /__| | 大量の硬貨とジュースが、釣銭口や
\ /___ / 取り出し口から溢れ出していった。
〉 <三三三三三三三三三三三三三三〉〉
, <三三三三三三三三三三三三三三三7/´ 次々と溢れ出る硬貨や缶を、背にしょった
〈 〈三三三三≧.イ"´ ̄ ヽ. 、 i`Y/ リュックサックに片っ端から詰める少女。
\、三三=彳 i 、 '. } ハ
ヽ./ i ハ \ 、 ヽ ' ! .ハ 「おお~こりゃまたたくさん出てきたねっ!」
/ / i/ /i ハ. ヽ \、 ヽ . i i i
′ i′' j ' \ ヽ丶、\ ┼f ┼ :! :i i そしてそれを、平然とした顔で眺める少年。
i i / /_/_/__ ヽ \ >x≧f斗} i i i
l |i / イノ∠_云ミ、 \、 イ_ぃハ 癶 / l i 二人の表情からは、罪悪感など微塵も感じられなかった。
{ ハノ´ 小 {_??゚} 弋__ノ イ i l l
V i \ ヽ 弋ノ /i ! | ! __
i i ハ\_ ' ; --、// i´i⌒l .r=i
i l l ヽ r _ ヲ ィ.|l⌒l l | ゙ー '| | L.」 ))
l ト、 ハヽ > _ _. イ/j/|.ー‐' | | | ! l
|l } ./ ヽ>ヽハ`¨´ _⊥.|"'| l │ |. i 」 ,. -‐;
i/ , v⌒ -‐' {_. ´ i ! l _| l. | | / //
,孑'"´ /_ノ7ー 、. │ l l、'´j、| | } |,.{ / ))
/) / // ハ 「ヽ } |__,.ヽ、__,. ヽ_」 レ' ; /
14 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土)
12:08:48 ID:Gq7BeRy2
.. ____
/ ― -\ 俺があまりにも現実離れした光景に、
. . / (ー) (●) 声も出せないまま驚いていると、
/ (__人__) \
| ` ⌒´ | 「蒼星石、そろそろ行くお――」
. \ / …なんだお、あんた?」
. ノ \
/´ ヽ 少年が、俺に気付いた。
,. - ──── - 、
/ \
| 〉
| /
| _ _ - ──-、/ そのままずっと、無言でこちらを見つめる少年。
_ _[二二 _ _ , -───‐- 、
(´ ̄ \ しばしの沈黙、一瞬で高まる緊張感。
\ , ィ´  ̄ ̄ ̄ ̄``ー-.. 、 _ _/
`y'´ / /.ハ、.: .:.、 . :.:.::::ヽ::ヽ::::<
/ / /:/;ハト,ヽ:、\ . :.:.:::::::|::::|::::::| 「…ひょっとして、見てた?」
i ! /.:// \ト、ト、:.\:.:.:.::::!::::|::::::!
| l/::// __, ヾ! ‐ゝ-ト、:_:_|::::|::::::|
| / .,:ィ厂_ _ `二ニ!::::!::::::! 俺は少女の問いに、顔を冷や汗でベトベトに濡らしながら、
ト、 ̄.::/:!ヾテ。::.フ ヽ辷フ 7:::,'::::/ ただこくこくと頷くしかなかった。
l/|.:.:::/:::| /::/:::/
|.::/.:.:::ト、 /::/:::/
l/ヽ.::::l/ト 、 (⌒ヽ , ..イ::/l::/
\N `コ ー-‐<l:::/l/ |/
_ _/  ̄`フ杯ト、 _
_「ハ_ ,イ j1ト、 \ ト、
l/.:.:.:.::::)ト、 // //j。jト、//.:.:!
/.:.:::::::::::::Yト、l ト、 // j。 i|V/.::::::|
/ ― -\ 俺があまりにも現実離れした光景に、
. . / (ー) (●) 声も出せないまま驚いていると、
/ (__人__) \
| ` ⌒´ | 「蒼星石、そろそろ行くお――」
. \ / …なんだお、あんた?」
. ノ \
/´ ヽ 少年が、俺に気付いた。
,. - ──── - 、
/ \
| 〉
| /
| _ _ - ──-、/ そのままずっと、無言でこちらを見つめる少年。
_ _[二二 _ _ , -───‐- 、
(´ ̄ \ しばしの沈黙、一瞬で高まる緊張感。
\ , ィ´  ̄ ̄ ̄ ̄``ー-.. 、 _ _/
`y'´ / /.ハ、.: .:.、 . :.:.::::ヽ::ヽ::::<
/ / /:/;ハト,ヽ:、\ . :.:.:::::::|::::|::::::| 「…ひょっとして、見てた?」
i ! /.:// \ト、ト、:.\:.:.:.::::!::::|::::::!
| l/::// __, ヾ! ‐ゝ-ト、:_:_|::::|::::::|
| / .,:ィ厂_ _ `二ニ!::::!::::::! 俺は少女の問いに、顔を冷や汗でベトベトに濡らしながら、
ト、 ̄.::/:!ヾテ。::.フ ヽ辷フ 7:::,'::::/ ただこくこくと頷くしかなかった。
l/|.:.:::/:::| /::/:::/
|.::/.:.:::ト、 /::/:::/
l/ヽ.::::l/ト 、 (⌒ヽ , ..イ::/l::/
\N `コ ー-‐<l:::/l/ |/
_ _/  ̄`フ杯ト、 _
_「ハ_ ,イ j1ト、 \ ト、
l/.:.:.:.::::)ト、 // //j。jト、//.:.:!
/.:.:::::::::::::Yト、l ト、 // j。 i|V/.::::::|
15 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土)
12:09:52 ID:Gq7BeRy2
(⊃ ̄ ̄\
(⊃ _ノ \ とりあえずその場から共に離れ、
(⊃ ( ●)(●) 数分程歩いた所にある公園のベントに腰を下ろし、
| (__人__) 近くの自販機でちゃんと金を出して買った
| u ` ⌒´ノ 缶コーヒーの蓋をあけながら、俺は、
| u } \
/ヽ } \
/ ヽ、____ノ ) 「その力は…一体何なんだ?」
/ . | _/
| / ̄ ̄(_)
\ \ /| JJJ ( と、単刀直入に二人尋ねた。
\ / /⊂_)
_.. ‐'''''''''''' ‐ 、
,r' \ 「まあ、見ての通りだお…
/_,ノ ,, ヽ, 超能力だのESPだの言った方が、
( о) ミ ヽ、,,,_ ..i おっちゃんには分かり易いかお?」
i. ミミ( ○) .|
\(_入_ノ / 返って来たのは、シンプルな答え。
ノ__,,/,____/ まあ手品の類などとごまかされなかっただけ、
./ゝ/ノ:::::::::::::::::\ よしとしておこうか。
(⊃ _ノ \ とりあえずその場から共に離れ、
(⊃ ( ●)(●) 数分程歩いた所にある公園のベントに腰を下ろし、
| (__人__) 近くの自販機でちゃんと金を出して買った
| u ` ⌒´ノ 缶コーヒーの蓋をあけながら、俺は、
| u } \
/ヽ } \
/ ヽ、____ノ ) 「その力は…一体何なんだ?」
/ . | _/
| / ̄ ̄(_)
\ \ /| JJJ ( と、単刀直入に二人尋ねた。
\ / /⊂_)
_.. ‐'''''''''''' ‐ 、
,r' \ 「まあ、見ての通りだお…
/_,ノ ,, ヽ, 超能力だのESPだの言った方が、
( о) ミ ヽ、,,,_ ..i おっちゃんには分かり易いかお?」
i. ミミ( ○) .|
\(_入_ノ / 返って来たのは、シンプルな答え。
ノ__,,/,____/ まあ手品の類などとごまかされなかっただけ、
./ゝ/ノ:::::::::::::::::\ よしとしておこうか。
16 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土)
12:10:41 ID:Gq7BeRy2
| 三三三三三三三三三三三三三三三. /
| 三三三三三三三三三三三三三三三 /
__ |` ー-- 、..三三三三三三三三三三三' それきり少年は押し黙ったまま、口を開こうとはしなかった。
r__─ / ` ー── - _ 三三三三三l
| `ー---... _ | 少年の代わりに、それまで彼の横に大人しく
| 三三三三.... `= ー― -- ..、 ト._.\ ちょこんと座っていたボーイッシュな少女が、
' 三三三三三三三三三三 `ニニ=ー───---` .) 俺の目の前に立って、俺が知りたかった事の大体を、
ヽ___ 三三三三三三三三三三三三三三三三 / 聞いてもないのに向こうから色々と話してくれた。
/::::` -..、_三__三三三三三三三三三三三三 /
/:::::::::::/::/:::::::::人::: ̄\--- ..、___三三_三三._/
' :::::::::::::::/:__:/ |::::::::::::ヽ::::::::::::::::::::ヽ:::::::::: ̄ヽ
'::::::::::: :,. '::::/:/ ` |::|:::::::ト , ----- 、 :::l ::::::::::::::::゙ 「んーとね、んーとね――」
|::|:::::::ノ::_/, ' __ |::l::ヽ::ヽ \ ::::::::::::::: | ::::::::::::::::|
丁! ̄::!::/イ,.ィ´ `ヾ|::ヽ:::ヾ::\_`_ヽ ::::::::| ::::::::|::::: |
|ヘ:::::ヽ:::::::| ト ィ_、| ヽ| \!` 7:::::::`ヾ、::ノ ' ::::::|::::: |
ハ:::N\::l ゝ_..ノ ハ::_,ヘ| ハi /::::::::,. ::::, どうやら彼女は少年と違い、なかなかの饒舌なようだった。
l::::::ヽ::::::::ヽ ゝ __.ノ,.'::::::::::::./:::::/ おまけに妙に人懐っこい。
|:::∧:::::::::::;ヘ ' /イ:::::::::::/::イ::| 俺にもこんな愛嬌があったら、
. レ'. │:::::::|::::ヽ. ,- 、 フ:::::/::::::小/∨ もう少しまともな人生を送れたのだろうか。
|:::::::.ハ/ヽl >._j / イ:://::::イ/
|::::/ / ノ /フT /,':::::_イレ
V _ ノ ー<'/ノ , 介 ̄ l::/´ \
, -ーf ー-ノ !-イ/l::!ヽ レ \
|三r | 、__ ノノ //_j|:|ヾ:ヽ
γ´ ゝrゝl ノ| /イ/{.|:|
(j 入(^つ-rく> ´//`l{´|:|
.
17 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土)
12:11:30 ID:Gq7BeRy2
| ,. ' "´ ̄ /
_ ⊥. '"´ /
〈 ,. - ────く
',:::::.:. , '"´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::;i.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
',::::::, ".:i.:.:.:.:.:.:.:i .:.:.:.:.:.:.:./:|i::::::::::::::l::i:.:.:.', 少し舌足らずな彼女が話してくれた内容を整理すると、
V:.:.:.:.:.:.:.|.:.:.:.:.:.:.l.::::::::;::::/ハ:l:::::::::::.:|::|::.:.:.! まず少年の名はやる夫、少女は蒼星石というらしい。
!:.:.:.:.:.:.:.|::::i::::::::|.:::::/.:// i:l::::::::::: |::!:::::::!
!::::::::::::::|:i::l::::::::|:フナナ'ー l:トヽく::::l::l:::ハ:|
ヽ:::::::::::|:l::l::::::::レzr==ミ リ rzトV/l/
ヽ:::::::::|:|::ト、:::::l ヽトーイソ ヒ1:::| ′ 「ねぇねぇやる夫っ、早く遊ぼうよぅ~」
ヽ:::::|:|::l:::',::::',  ̄ ,' !:::|
\ト、:ト、:';::::',. _ _ /::::|
ヽヽ::ト:;::::L_ ,..イ::::::::/
,r一ヽヽ::::| ``7´ヽ:/1::/ 教えてくれたのは下の名前だけで、
ノ \:::|ー‐介ヽ l/ 苗字に関しては結局教えてくれなかった。
_∠二ニヽ、. ':;| /:ハト、\
厂 , '⌒ヽX、_ /:/i i::ト、 \ まあ、この辺は別段問題はないだろう。
/ /.:.::::::::.:.ヽX_}、 l:/ i i:! l fヘ
ヽ/.:.:::::::::::::::.:.ヽX_} l:l i i」 l fヘ}
___
/ \ やる夫と蒼星石は、共に貧しい団地で生まれ育ち、
/ ─ ─ \ それこそホクロの数から、尻にある痣の形まで知っている仲だという。
/ (●) (●) \
.| (__人__) | __
\ ` ⌒/ ̄ ̄⌒/⌒ / 「ちょっと待つお、蒼星石。
(⌒ / SM / スカトロ / この裏庭で拾ったHな雑誌を読み終えるまでは――」
i\ \ ,(つ / ⊂)
| \ y(つ__./,__⊆)
| ヽ_ノ | そういえば、あいつと会ったのはいつが最後だったかなと、
| |_ 何年も会っていない、一番仲が良かった元バンド仲間の事を、
ヽ、___  ̄ ヽ ヽ 少しだけ思い出した。
と_______ノ_ノ
_ ⊥. '"´ /
〈 ,. - ────く
',:::::.:. , '"´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::;i.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
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V:.:.:.:.:.:.:.|.:.:.:.:.:.:.l.::::::::;::::/ハ:l:::::::::::.:|::|::.:.:.! まず少年の名はやる夫、少女は蒼星石というらしい。
!:.:.:.:.:.:.:.|::::i::::::::|.:::::/.:// i:l::::::::::: |::!:::::::!
!::::::::::::::|:i::l::::::::|:フナナ'ー l:トヽく::::l::l:::ハ:|
ヽ:::::::::::|:l::l::::::::レzr==ミ リ rzトV/l/
ヽ:::::::::|:|::ト、:::::l ヽトーイソ ヒ1:::| ′ 「ねぇねぇやる夫っ、早く遊ぼうよぅ~」
ヽ:::::|:|::l:::',::::',  ̄ ,' !:::|
\ト、:ト、:';::::',. _ _ /::::|
ヽヽ::ト:;::::L_ ,..イ::::::::/
,r一ヽヽ::::| ``7´ヽ:/1::/ 教えてくれたのは下の名前だけで、
ノ \:::|ー‐介ヽ l/ 苗字に関しては結局教えてくれなかった。
_∠二ニヽ、. ':;| /:ハト、\
厂 , '⌒ヽX、_ /:/i i::ト、 \ まあ、この辺は別段問題はないだろう。
/ /.:.::::::::.:.ヽX_}、 l:/ i i:! l fヘ
ヽ/.:.:::::::::::::::.:.ヽX_} l:l i i」 l fヘ}
___
/ \ やる夫と蒼星石は、共に貧しい団地で生まれ育ち、
/ ─ ─ \ それこそホクロの数から、尻にある痣の形まで知っている仲だという。
/ (●) (●) \
.| (__人__) | __
\ ` ⌒/ ̄ ̄⌒/⌒ / 「ちょっと待つお、蒼星石。
(⌒ / SM / スカトロ / この裏庭で拾ったHな雑誌を読み終えるまでは――」
i\ \ ,(つ / ⊂)
| \ y(つ__./,__⊆)
| ヽ_ノ | そういえば、あいつと会ったのはいつが最後だったかなと、
| |_ 何年も会っていない、一番仲が良かった元バンド仲間の事を、
ヽ、___  ̄ ヽ ヽ 少しだけ思い出した。
と_______ノ_ノ
18 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土)
12:13:38 ID:Gq7BeRy2
___
/ \ 『不思議な力』は、物心ついた頃から備わっていた。
/ \ , , /\
/ (ー) (ー) \
| (__人__) | 「はぁっ!」
\ ` ⌒ ´ ,/
. /⌒~" ̄, ̄ ̄〆⌒,ニつ その力は、歳を重ねるごとに段々と強くなっていき、
| ,___゙___、rヾイソ⊃ それと同時に、コントロールする術も身に着けていったという。
| `l ̄
. | | ボン!
/ { \ / / /ヽ
ヽ ヽ ヾー 、__ _,. -‐ ' / / /
\ \ \ ` ー-- 、___,. -ー '" _/ ./ /
\ `ヽ、 ヽ、 ,. - ' / /
\ ` ー-`_ー-- 、_ _,._-ー '_ ,. - '´ /ヽ、 『不思議な力』の存在を、二人は互いに協力し合いながら隠していたが、
!ヽ,  ̄` ー--- ̄- ̄-─ ' "´ / ヽ、 『とある事件』がきっかけとなり、二人は気ままな放浪の旅に出る事になったという。
| ` - 、 ,. ヾ、 |
| ,. - 、! ` - 、__ _,. -ー' ´ \\ !
ソ ヾ `ヾ ' ー--丶 ̄ヾ`' - 、. / ヽヽ | 「すごい、すごいや、やる夫!
/ ト l \ \ `'フ,ィ7´7 ̄ ̄ ヽ! それじゃあ次は、ボクの番だねっ!」
/ !ヽ  ̄ヾ ̄ ' ─- 、\ \ イ:ン, !、ヽ '
/ / \ ヽィ'〒.'.:テヽ ` ー-ゝ `´ l ヾ`ヽ、
/ `ヽ/ ∧、 \\ \:.:'''.:ノ ヽ / \ `
_,. r' ヽ /‐-ヽ、 \\ `゙\"´ / 『とある事件』については、語る機会があったとしたら、またその時に語ろうと思う。
ヽ ! ∠ ` ー-ヾ、\ ヾ、 r_‐',イ、|-、.
ヽ t'"ヽ >´ ̄ `ヽ `ー\ ヽ -- ー' ヾ、ノ ヽ、
ヽ ノ / ´ ! r ヽ ヽ-r─-- 、_.ヽ`ソ \
、 /ヽ - '"ノ゙ _ ,. -‐' ! | \ \戈、`- 、 `ヽ、__ \_
ヽ '" / / ,> ヽ ! | ` ヾヽ、`ヽ、 \ l ヽ ヾ、
´ _,. -" ヽ ヽ ヽ`ヽ、 | | >、 \_ノ !<、
/ } ヽ ヽ、ヽノ ! `7`ヽ、 / -'
/ \ 『不思議な力』は、物心ついた頃から備わっていた。
/ \ , , /\
/ (ー) (ー) \
| (__人__) | 「はぁっ!」
\ ` ⌒ ´ ,/
. /⌒~" ̄, ̄ ̄〆⌒,ニつ その力は、歳を重ねるごとに段々と強くなっていき、
| ,___゙___、rヾイソ⊃ それと同時に、コントロールする術も身に着けていったという。
| `l ̄
. | | ボン!
/ { \ / / /ヽ
ヽ ヽ ヾー 、__ _,. -‐ ' / / /
\ \ \ ` ー-- 、___,. -ー '" _/ ./ /
\ `ヽ、 ヽ、 ,. - ' / /
\ ` ー-`_ー-- 、_ _,._-ー '_ ,. - '´ /ヽ、 『不思議な力』の存在を、二人は互いに協力し合いながら隠していたが、
!ヽ,  ̄` ー--- ̄- ̄-─ ' "´ / ヽ、 『とある事件』がきっかけとなり、二人は気ままな放浪の旅に出る事になったという。
| ` - 、 ,. ヾ、 |
| ,. - 、! ` - 、__ _,. -ー' ´ \\ !
ソ ヾ `ヾ ' ー--丶 ̄ヾ`' - 、. / ヽヽ | 「すごい、すごいや、やる夫!
/ ト l \ \ `'フ,ィ7´7 ̄ ̄ ヽ! それじゃあ次は、ボクの番だねっ!」
/ !ヽ  ̄ヾ ̄ ' ─- 、\ \ イ:ン, !、ヽ '
/ / \ ヽィ'〒.'.:テヽ ` ー-ゝ `´ l ヾ`ヽ、
/ `ヽ/ ∧、 \\ \:.:'''.:ノ ヽ / \ `
_,. r' ヽ /‐-ヽ、 \\ `゙\"´ / 『とある事件』については、語る機会があったとしたら、またその時に語ろうと思う。
ヽ ! ∠ ` ー-ヾ、\ ヾ、 r_‐',イ、|-、.
ヽ t'"ヽ >´ ̄ `ヽ `ー\ ヽ -- ー' ヾ、ノ ヽ、
ヽ ノ / ´ ! r ヽ ヽ-r─-- 、_.ヽ`ソ \
、 /ヽ - '"ノ゙ _ ,. -‐' ! | \ \戈、`- 、 `ヽ、__ \_
ヽ '" / / ,> ヽ ! | ` ヾヽ、`ヽ、 \ l ヽ ヾ、
´ _,. -" ヽ ヽ ヽ`ヽ、 | | >、 \_ノ !<、
/ } ヽ ヽ、ヽノ ! `7`ヽ、 / -'
19 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土)
12:14:13 ID:Gq7BeRy2
〉 <三三三三三三三三三三三三三三〉〉
, <三三三三三三三三三三三三三三三7/´
〈 〈三三三三≧.イ"´ ̄ ヽ. 、 i`Y/ ついでに蒼星石は、自身の『不思議な力』も
\、三三=彳 i 、 '. } ハ 見せてくれる事となった。
ヽ./ i ハ \ 、 ヽ ' ! .ハ
/ / i/ /i ハ. ヽ \、 ヽ . i i i
′ i′' j ' \ ヽ丶、\ ┼f ┼ :! :i i 「じゃあお兄さん、その缶ジュース、ちゃんと持っててねっ!」
i i / /_/_/__ ヽ \ >x≧f斗} i i i
l |i / イノ∠_云ミ、 \、 イ_ぃハ 癶 / l i
{ ハノ´ 小 {_??゚} 弋__ノ イ i l l
V i \ ヽ 弋ノ /i ! | ! __
i i ハ\_ ' ; --、// i´i⌒l .r=i
i l l ヽ r _ ヲ ィ.|l⌒l l | ゙ー '| | L.」 ))
l ト、 ハヽ > _ _. イ/j/|.ー‐' | | | ! l
|l } ./ ヽ>ヽハ`¨´ _⊥.|"'| l │ |. i 」 ,. -‐;
i/ , v⌒ -‐' {_. ´ i ! l _| l. | | / //
,孑'"´ /_ノ7ー 、. │ l l、'´j、| | } |,.{ / ))
/) / // ハ 「ヽ } |__,.ヽ、__,. ヽ_」 レ' ; /
/ ̄ ̄\
. ./ _ノ ヽ 俺がしっかりと缶を手で固定させたのを確認した
| ( ●) (●) 蒼星石は、すっと目を閉じ、
| (__人__)
| u `⌒´ノ 「こ、こうか?」
. ヽ } | ̄|
ヽ ノ |_|) 手を開き指をピッタリとくっつけ、手刀の様な形を作った後、
____/ イー┘ | その場からニ、三歩後ずさり、その手を振り下ろし――
| | / / ___/
| | / / |
| | (  ̄ ̄ ̄⌒ヽ
, <三三三三三三三三三三三三三三三7/´
〈 〈三三三三≧.イ"´ ̄ ヽ. 、 i`Y/ ついでに蒼星石は、自身の『不思議な力』も
\、三三=彳 i 、 '. } ハ 見せてくれる事となった。
ヽ./ i ハ \ 、 ヽ ' ! .ハ
/ / i/ /i ハ. ヽ \、 ヽ . i i i
′ i′' j ' \ ヽ丶、\ ┼f ┼ :! :i i 「じゃあお兄さん、その缶ジュース、ちゃんと持っててねっ!」
i i / /_/_/__ ヽ \ >x≧f斗} i i i
l |i / イノ∠_云ミ、 \、 イ_ぃハ 癶 / l i
{ ハノ´ 小 {_??゚} 弋__ノ イ i l l
V i \ ヽ 弋ノ /i ! | ! __
i i ハ\_ ' ; --、// i´i⌒l .r=i
i l l ヽ r _ ヲ ィ.|l⌒l l | ゙ー '| | L.」 ))
l ト、 ハヽ > _ _. イ/j/|.ー‐' | | | ! l
|l } ./ ヽ>ヽハ`¨´ _⊥.|"'| l │ |. i 」 ,. -‐;
i/ , v⌒ -‐' {_. ´ i ! l _| l. | | / //
,孑'"´ /_ノ7ー 、. │ l l、'´j、| | } |,.{ / ))
/) / // ハ 「ヽ } |__,.ヽ、__,. ヽ_」 レ' ; /
/ ̄ ̄\
. ./ _ノ ヽ 俺がしっかりと缶を手で固定させたのを確認した
| ( ●) (●) 蒼星石は、すっと目を閉じ、
| (__人__)
| u `⌒´ノ 「こ、こうか?」
. ヽ } | ̄|
ヽ ノ |_|) 手を開き指をピッタリとくっつけ、手刀の様な形を作った後、
____/ イー┘ | その場からニ、三歩後ずさり、その手を振り下ろし――
| | / / ___/
| | / / |
| | (  ̄ ̄ ̄⌒ヽ
20 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土)
12:14:57 ID:Gq7BeRy2
\\
. \\
,. \\从/
. そ て
ゝ, そ
"`/'^r \
. \\
. \\
\\
\\キンッ
\\
..\\
\\从/
そ て
ゝ, そ
"`/'^r .\
\\
\\
\\
\\
/ ̄ ̄\
. ./ u _ノ ヽ 缶ジュースは、鋭利な刃物で切ったかの様に、真っ二つに割れた。
| ( ○) (●) 蒼星石の言う所の『見えない刀』が、彼女の能力だという。
| (__人__)
| u `⌒´ノ 「マ、マジかよ…」
. ヽ u } プシュー…
ヽ ノ |_|)
____/ イー┘ | 俺は自分の手が色付きの砂糖水で濡れるのも気にせず、
| | / / ___/ ひたすら目の前の驚愕の事実に、ただただ見入っていた。
| | / / |
| | (  ̄ ̄ ̄⌒ヽ
. \\
,. \\从/
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. ./ u _ノ ヽ 缶ジュースは、鋭利な刃物で切ったかの様に、真っ二つに割れた。
| ( ○) (●) 蒼星石の言う所の『見えない刀』が、彼女の能力だという。
| (__人__)
| u `⌒´ノ 「マ、マジかよ…」
. ヽ u } プシュー…
ヽ ノ |_|)
____/ イー┘ | 俺は自分の手が色付きの砂糖水で濡れるのも気にせず、
| | / / ___/ ひたすら目の前の驚愕の事実に、ただただ見入っていた。
| | / / |
| | (  ̄ ̄ ̄⌒ヽ
21 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土)
12:16:15 ID:Gq7BeRy2
ヽ 三_,. - " 三三三三__三三_三_三三三ヽ
,V´三三三,. -─' ´ :.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.ヽ 三 ノ
|_三三 ,. イ,:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.::.::.:\:.:.:.:Y 彼らの話を聞かせてくれたお返し、
l _三:: ':.:.:.:/:.:.:.:.:.:l!:.:.:.:.:.:.、:.:.:.:.:\:.:.:.:.ヽ:.::.゙ という訳ではないが、今度は自分の話をしてみた。
ゝ三 |:.::./:.:.:./.:.:.ハ:.:l!:.:.: i -.- .、::ヽ:.:.:.:.!:.:.:|
ヽll !:.イ::.!: ,. -,‐‐l:.i! :.: | ヽ.:.:.::.:ハ:.:.:|:.:.:| 「へぇ~そうなんだぁ」
Y:.|!:.:.|:.:|:./_ !:|!、:.:.| ,._=ー,、:.:ヾl:.:.:l
l:.イ!:.:.l.:.レ =_.、ゝ ゝ! ォ::::リ !:.:.:..|:.,リ 俺がやらない夫いう名前だという事、自分の事、
∨ V:.:イ! フ..ノ  ̄"イ:.:.:レ 何故あの時間にあの場所を歩いていたかという事、
_ゞ.:.:ゝ" 、 イ:.:/ 今の仕事の事、昔バンドをやっていたという事、
イ ハ:.:ハ!-、 ー ' ∠:l:/ でも今は家にギターの一本も無い様な生活をしているという事、
/: :.l r'{ レ l ´`ー-、 __ イ l!' `ーr⌒ヽ もう何年も帰っていない地元の事、同じく何年も顔を見ていない親の事、
, : : : :フ! ゝ. _ \ / ヒ ハ 数年前までいた彼女の事、その彼女にフラれた時の事、
|: : : : ゝゝ _> ノr===,、 iト、〈: : ヽ 新しく入って来た使えないバイトの事、そのバイトが自分の悪口を
人: : : : : \r‐'/´  ̄ `<.li! |:! !|_ノ : : :.1 吹聴していた所を聞いてしまった時の事、そしてまた自分の事――
/: : : : : : : :「ヽ./ o ヽヾ_ ノj ノ`! } : : : :|
(: : : : : : : : : :: ン' /!| ̄ r'__,-_、フ: : : : :.| ロクに話す知り合いもいなかった俺は、よっぽど溜まっていたのだろう。
ヽ: : : : : : : : ::L7 / !| r ´. .! : : :!` ! : : : | 初対面であるにも関わらず、堰を切ったようにとにかく喋りまくった。
\: : : : : :イ /. !| |ゝー!`:‐::!: :| : : : :! 聞き役の蒼星石が、一々物珍しそうに頷いてくれていたのも、それに拍車をかけていた。
____
/ \ …やる夫の方は、本当に退屈そうな顔だったが。
/ ⌒ ⌒ \
/ (ー) (ー) /^ヽ 「ふう……」
| (__人__)( / 〉|
\ ` ⌒´ 〈 / ⌒^ヽ やがて、空が少しずつ青く染まっていき、周囲を薄明かりが包み始めた。
\ _ _ _ ) 夜が明け、朝がやって来たのだった。
,V´三三三,. -─' ´ :.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.ヽ 三 ノ
|_三三 ,. イ,:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.::.::.:\:.:.:.:Y 彼らの話を聞かせてくれたお返し、
l _三:: ':.:.:.:/:.:.:.:.:.:l!:.:.:.:.:.:.、:.:.:.:.:\:.:.:.:.ヽ:.::.゙ という訳ではないが、今度は自分の話をしてみた。
ゝ三 |:.::./:.:.:./.:.:.ハ:.:l!:.:.: i -.- .、::ヽ:.:.:.:.!:.:.:|
ヽll !:.イ::.!: ,. -,‐‐l:.i! :.: | ヽ.:.:.::.:ハ:.:.:|:.:.:| 「へぇ~そうなんだぁ」
Y:.|!:.:.|:.:|:./_ !:|!、:.:.| ,._=ー,、:.:ヾl:.:.:l
l:.イ!:.:.l.:.レ =_.、ゝ ゝ! ォ::::リ !:.:.:..|:.,リ 俺がやらない夫いう名前だという事、自分の事、
∨ V:.:イ! フ..ノ  ̄"イ:.:.:レ 何故あの時間にあの場所を歩いていたかという事、
_ゞ.:.:ゝ" 、 イ:.:/ 今の仕事の事、昔バンドをやっていたという事、
イ ハ:.:ハ!-、 ー ' ∠:l:/ でも今は家にギターの一本も無い様な生活をしているという事、
/: :.l r'{ レ l ´`ー-、 __ イ l!' `ーr⌒ヽ もう何年も帰っていない地元の事、同じく何年も顔を見ていない親の事、
, : : : :フ! ゝ. _ \ / ヒ ハ 数年前までいた彼女の事、その彼女にフラれた時の事、
|: : : : ゝゝ _> ノr===,、 iト、〈: : ヽ 新しく入って来た使えないバイトの事、そのバイトが自分の悪口を
人: : : : : \r‐'/´  ̄ `<.li! |:! !|_ノ : : :.1 吹聴していた所を聞いてしまった時の事、そしてまた自分の事――
/: : : : : : : :「ヽ./ o ヽヾ_ ノj ノ`! } : : : :|
(: : : : : : : : : :: ン' /!| ̄ r'__,-_、フ: : : : :.| ロクに話す知り合いもいなかった俺は、よっぽど溜まっていたのだろう。
ヽ: : : : : : : : ::L7 / !| r ´. .! : : :!` ! : : : | 初対面であるにも関わらず、堰を切ったようにとにかく喋りまくった。
\: : : : : :イ /. !| |ゝー!`:‐::!: :| : : : :! 聞き役の蒼星石が、一々物珍しそうに頷いてくれていたのも、それに拍車をかけていた。
____
/ \ …やる夫の方は、本当に退屈そうな顔だったが。
/ ⌒ ⌒ \
/ (ー) (ー) /^ヽ 「ふう……」
| (__人__)( / 〉|
\ ` ⌒´ 〈 / ⌒^ヽ やがて、空が少しずつ青く染まっていき、周囲を薄明かりが包み始めた。
\ _ _ _ ) 夜が明け、朝がやって来たのだった。
22 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土)
12:17:42 ID:Gq7BeRy2
___
/ ヽ、_ \ 「ふわあ~ぁ、もう朝かお。
/(● ) (● ) \ それじゃ、そろそろ行こうかお」
/:::⌒(__人__)⌒::::: \
| l^l^lnー'´ | 行く? 一体どこへ?
\ヽ L /
ゝ ノ 俺が疑問を口にすると、
/ /
,. -──-.. 、
,.'´. : : : : : : : : : : .`ヽ
/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
/.:.:/.:.:.::/.:.:.ハ.:.:.l.:.:.:.:.:.::.:.:l.:l.:.:.', 「さあ? とりあえず今日は、あっちの方に行ってみようかな」
l.:./.:.:.:./.:‐/、 ',.:.ト、__.:.::l.:.:l.:l.:.l.:l
l/l.:.{.:..レ'l/ リ `ヽ.:`T:/.:l.:.l.:l
l/ N{,r==ミ r==ヽ:l/.:/.:/リ と言って、俺が勤めている店がある方を指差した。
l.:ト、' ' ' ' ' ' 〉:l.:/./
l∧.ゝ、 ,r‐ァ _,..イ.イイノ やる夫は軽く伸びをして、もう今すぐにでも
,.ィ´ ヽニノ <l/ この場を立ち去りたがっている様に見受けられた。
/.:{j ,.イ介ト、 j}ヽ
/.:.:{j レイXトV j}.:.:.ヽ
/.:.:.:.ヽェェイXLェェイ.:.:.:.:.:.', 俺は、何故か、彼らとこのまま別れたくない、
/ `ヽ.:.:.:.:/Ⅹ〔.:.:.:.:.:.:.:.:.: ノ 別れてはいけないと、瞬間強烈に思った。
〈 L.:.:.〔 {y}〕.:.:.「~~T´
/ `ヽjニ三三三ニ !,.ィハ そして頭で考えるよりも先に、馬鹿な提案が口をついて出ていた。
/ 。゚/.:Lニ三三三ニレイ 〉
ノ /.:.:.:.:ヽニ」.:lニ/.:.:.!``1
{ `ヽ/.:.:.:.:.:.:.:、.:., .:.:.:.:.:l l
〈 ,.イ.:.:.:.:.:.:.:.:.:./.:.:.:.:.:.:.:.:.:!゚。 ト、
/.:.:.:.:.:.:.:.:.:;.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.にニハ}
〈.:.:.:.:.:.:.:.:.:ノ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./ハハJ
`ー--‐' ヽ.:.:.:.:.:.:ノ
/ ヽ、_ \ 「ふわあ~ぁ、もう朝かお。
/(● ) (● ) \ それじゃ、そろそろ行こうかお」
/:::⌒(__人__)⌒::::: \
| l^l^lnー'´ | 行く? 一体どこへ?
\ヽ L /
ゝ ノ 俺が疑問を口にすると、
/ /
,. -──-.. 、
,.'´. : : : : : : : : : : .`ヽ
/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
/.:.:/.:.:.::/.:.:.ハ.:.:.l.:.:.:.:.:.::.:.:l.:l.:.:.', 「さあ? とりあえず今日は、あっちの方に行ってみようかな」
l.:./.:.:.:./.:‐/、 ',.:.ト、__.:.::l.:.:l.:l.:.l.:l
l/l.:.{.:..レ'l/ リ `ヽ.:`T:/.:l.:.l.:l
l/ N{,r==ミ r==ヽ:l/.:/.:/リ と言って、俺が勤めている店がある方を指差した。
l.:ト、' ' ' ' ' ' 〉:l.:/./
l∧.ゝ、 ,r‐ァ _,..イ.イイノ やる夫は軽く伸びをして、もう今すぐにでも
,.ィ´ ヽニノ <l/ この場を立ち去りたがっている様に見受けられた。
/.:{j ,.イ介ト、 j}ヽ
/.:.:{j レイXトV j}.:.:.ヽ
/.:.:.:.ヽェェイXLェェイ.:.:.:.:.:.', 俺は、何故か、彼らとこのまま別れたくない、
/ `ヽ.:.:.:.:/Ⅹ〔.:.:.:.:.:.:.:.:.: ノ 別れてはいけないと、瞬間強烈に思った。
〈 L.:.:.〔 {y}〕.:.:.「~~T´
/ `ヽjニ三三三ニ !,.ィハ そして頭で考えるよりも先に、馬鹿な提案が口をついて出ていた。
/ 。゚/.:Lニ三三三ニレイ 〉
ノ /.:.:.:.:ヽニ」.:lニ/.:.:.!``1
{ `ヽ/.:.:.:.:.:.:.:、.:., .:.:.:.:.:l l
〈 ,.イ.:.:.:.:.:.:.:.:.:./.:.:.:.:.:.:.:.:.:!゚。 ト、
/.:.:.:.:.:.:.:.:.:;.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.にニハ}
〈.:.:.:.:.:.:.:.:.:ノ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./ハハJ
`ー--‐' ヽ.:.:.:.:.:.:ノ
23 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土)
12:19:12 ID:Gq7BeRy2
/ ̄ ̄\
_ノ ヽ、 \
( ●)( ●) u | 「3日…いや、1日だけ待ってくれ。
(__人__) | ../} それまでに、身の回りを整理する。
_ ヽ`⌒ ´ u | / / __ だから…お前達の旅に、俺を連れて行ってくれ!」
(^ヽ{ ヽ { u ./ / . / .ノ
( ̄ ヽ ヽ i ヽ / 厶- ´ /
.(二 ヽ i i |,r‐i ノ. ヽ / / 我ながら、非常に馬鹿らしい懇願だったと思う。
ヽ / ノ / r一'´ ー 、  ̄ ̄ ̄) 大の大人が、たかだが15、6歳の少年少女に、
i { イ―イ / .`ー―. 、__ .〈 ̄ ̄ お前達に着いて行って良いかと、頭を下げる。
ヽ. `ー '/ / /\ \
`ー '  ̄ ̄! | ヽノ 傍から見ていたら、失笑すら漏れない程のお寒い光景だっただろう。
____
/ \ 「…それ以上は待たねーお」
/ ─ ─ \
/ (●) (●) \ だが意外な事に、やる夫は少し眉を顰めただけで、
| (__人__) | 俺の頼みをとりあえず引き受けてくれた。
\ ` ⌒´ ,/
/ ー‐ \ …てっきり気味悪がられるだけだと思ったのに、意外だ。
__ __
,.. -‐':.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.::: 、
/:.:.:.:.::.:.:.:.:.::.:.:.:.::.:.:.:.::.::.\ 「そんじゃーね、やらない夫~」
':.:.:.:.:/:.:.:.:|:.:.l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:...:.:.ヽ
':.:.:.:.:::':.:.:.:.:.:.:|:.:.|:!.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:..:.',
.'.:.:.:.:./:.:.://ハ:.:|:lヾ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l.:.:.::| だが、この嬉しい誤算を逃す気は更々なかった。
l:.:.|:.:.レナナ'‐ l:.ト! \:.__:.:.:.:|.:.:.:|
|:.:.:ィ升Krォァ=、 ヾ!\´ _ゝ_ ` .:, .:.:.,' 俺は、いつの間にか呼び捨てにされているのも気にせず、
|:.:.ハ:.:| 辷'ノ 丶 イt::_iヾレ:.::.::, 蒼星石に笑顔で大きく手を振って、自宅へと走って行った。
|:.:.:.:l:.| :::::: ゞ-' !:.:.:.:.:イ
l.:i:.:.:.|ヽ. _ ′ ::::: ハ:..:./ …少し走ったらもう息が切れてしまったので、
. |:l:.:.:.|:.:.\  ̄ イ:::::/ たまたま通りがかったタクシーに手を上げて乗ってしまったけど。
ヾ!.:,|ハ..:.:.|ゝ、 _ ...ィ/:.:.レ:j/
_ _ _ゞ\ー- 、 |:./レl:.:..:/
_レーハヽ ヽォ_ー 、. |:.:/
/::::::::::つ /,イjくヾ\'_
_ノ ヽ、 \
( ●)( ●) u | 「3日…いや、1日だけ待ってくれ。
(__人__) | ../} それまでに、身の回りを整理する。
_ ヽ`⌒ ´ u | / / __ だから…お前達の旅に、俺を連れて行ってくれ!」
(^ヽ{ ヽ { u ./ / . / .ノ
( ̄ ヽ ヽ i ヽ / 厶- ´ /
.(二 ヽ i i |,r‐i ノ. ヽ / / 我ながら、非常に馬鹿らしい懇願だったと思う。
ヽ / ノ / r一'´ ー 、  ̄ ̄ ̄) 大の大人が、たかだが15、6歳の少年少女に、
i { イ―イ / .`ー―. 、__ .〈 ̄ ̄ お前達に着いて行って良いかと、頭を下げる。
ヽ. `ー '/ / /\ \
`ー '  ̄ ̄! | ヽノ 傍から見ていたら、失笑すら漏れない程のお寒い光景だっただろう。
____
/ \ 「…それ以上は待たねーお」
/ ─ ─ \
/ (●) (●) \ だが意外な事に、やる夫は少し眉を顰めただけで、
| (__人__) | 俺の頼みをとりあえず引き受けてくれた。
\ ` ⌒´ ,/
/ ー‐ \ …てっきり気味悪がられるだけだと思ったのに、意外だ。
__ __
,.. -‐':.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.::: 、
/:.:.:.:.::.:.:.:.:.::.:.:.:.::.:.:.:.::.::.\ 「そんじゃーね、やらない夫~」
':.:.:.:.:/:.:.:.:|:.:.l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:...:.:.ヽ
':.:.:.:.:::':.:.:.:.:.:.:|:.:.|:!.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:..:.',
.'.:.:.:.:./:.:.://ハ:.:|:lヾ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l.:.:.::| だが、この嬉しい誤算を逃す気は更々なかった。
l:.:.|:.:.レナナ'‐ l:.ト! \:.__:.:.:.:|.:.:.:|
|:.:.:ィ升Krォァ=、 ヾ!\´ _ゝ_ ` .:, .:.:.,' 俺は、いつの間にか呼び捨てにされているのも気にせず、
|:.:.ハ:.:| 辷'ノ 丶 イt::_iヾレ:.::.::, 蒼星石に笑顔で大きく手を振って、自宅へと走って行った。
|:.:.:.:l:.| :::::: ゞ-' !:.:.:.:.:イ
l.:i:.:.:.|ヽ. _ ′ ::::: ハ:..:./ …少し走ったらもう息が切れてしまったので、
. |:l:.:.:.|:.:.\  ̄ イ:::::/ たまたま通りがかったタクシーに手を上げて乗ってしまったけど。
ヾ!.:,|ハ..:.:.|ゝ、 _ ...ィ/:.:.レ:j/
_ _ _ゞ\ー- 、 |:./レl:.:..:/
_レーハヽ ヽォ_ー 、. |:.:/
/::::::::::つ /,イjくヾ\'_
24 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土)
12:20:59 ID:Gq7BeRy2
∩
|| / ̄ ̄\ 無論、俺の本音としては、
|| / _ノ \ 今すぐあの場で彼らに着いて行きたかった
/〔| ( ●)(●)
〔ノ^ゝ (__人__) 「あっ、もしもし、やらない夫ですが――」
ノ ノ^,- ` ⌒´
/´ ´ ' , ^ヽ } だけど俺は、これでも一応社会人。
/ ノ'"\. ⌒ 旅に出るにしても、せめて最低限の
人 ノ \/,_ __ノ 身辺整理ぐらいはしておかなければならないのだ。
/:::::\_/l:::::::\ー-.,ノ、゙,
,/::::::::::ノ::::|_:::;、>、_ l|||||゙!:゙、-、_ まったく、本当に面倒な話だ。
_____
.。 / \
┃ i ヽ 本部に辞職の旨を一方的に伝え、
.,-' ,‐i" _ノ ヽ、_ i アパートの大家に敷金はいらないから
./ //´l (ー) (ー) i 家具を適当に処分してくれと交渉し、
.l '-;;;;l (__人___) i すぐ金になりそうな電化製品やCD,DVDなどを
l │;;;;|,,'`⌒ ´ i 売り払い現金に換えたりなどをしていると、
l \⊥ ,i
/ / iヽ, / 「――という事で、よろしくお願いします、はい」
.,、 i .' /,‐'.l\ /l )),
.l \ .i、 ム `‐、_` ̄ ̄´-‐'´ .ヽ もう既に外はすっかり暗くなっていた。
.l `‐-'i _.-ヽ .,-、i i,‐、 . / .`‐、_ そういえばあれから、一睡もしていなかった。
.l .i l l l l l / `‐、_
.l .l .l/ ヽ ,' .l/ , , `‐、_
/l .l /‐-l . .,.' .,' ,-‐`i
. i.,' .l 、 l;;;;;;;;l ' , ' ,.' .,.' .i
/ ̄ ̄ ̄\
,r'⌒ ⌒ ゙i (⌒ヽ:::::::::::::::::::::'''''-,, やるべき事を全て終え、大量分泌されていた
|( ー)( ー) ゙i´ ̄ ̄ ̄\ ::::::::::::::::::::::::::::ヽ アドレナリンが一旦収まった途端、急に眠気が襲って来た。
{ (__人__) | ハ::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ,
._____,{ `⌒ ´ i ハ::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ, 昨日の服のまま、万年床に潜り横になった。
,r' 、──── ハ::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ, あっという間に、俺は夢の中。
`゛───( / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄(________)
|| / ̄ ̄\ 無論、俺の本音としては、
|| / _ノ \ 今すぐあの場で彼らに着いて行きたかった
/〔| ( ●)(●)
〔ノ^ゝ (__人__) 「あっ、もしもし、やらない夫ですが――」
ノ ノ^,- ` ⌒´
/´ ´ ' , ^ヽ } だけど俺は、これでも一応社会人。
/ ノ'"\. ⌒ 旅に出るにしても、せめて最低限の
人 ノ \/,_ __ノ 身辺整理ぐらいはしておかなければならないのだ。
/:::::\_/l:::::::\ー-.,ノ、゙,
,/::::::::::ノ::::|_:::;、>、_ l|||||゙!:゙、-、_ まったく、本当に面倒な話だ。
_____
.。 / \
┃ i ヽ 本部に辞職の旨を一方的に伝え、
.,-' ,‐i" _ノ ヽ、_ i アパートの大家に敷金はいらないから
./ //´l (ー) (ー) i 家具を適当に処分してくれと交渉し、
.l '-;;;;l (__人___) i すぐ金になりそうな電化製品やCD,DVDなどを
l │;;;;|,,'`⌒ ´ i 売り払い現金に換えたりなどをしていると、
l \⊥ ,i
/ / iヽ, / 「――という事で、よろしくお願いします、はい」
.,、 i .' /,‐'.l\ /l )),
.l \ .i、 ム `‐、_` ̄ ̄´-‐'´ .ヽ もう既に外はすっかり暗くなっていた。
.l `‐-'i _.-ヽ .,-、i i,‐、 . / .`‐、_ そういえばあれから、一睡もしていなかった。
.l .i l l l l l / `‐、_
.l .l .l/ ヽ ,' .l/ , , `‐、_
/l .l /‐-l . .,.' .,' ,-‐`i
. i.,' .l 、 l;;;;;;;;l ' , ' ,.' .,.' .i
/ ̄ ̄ ̄\
,r'⌒ ⌒ ゙i (⌒ヽ:::::::::::::::::::::'''''-,, やるべき事を全て終え、大量分泌されていた
|( ー)( ー) ゙i´ ̄ ̄ ̄\ ::::::::::::::::::::::::::::ヽ アドレナリンが一旦収まった途端、急に眠気が襲って来た。
{ (__人__) | ハ::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ,
._____,{ `⌒ ´ i ハ::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ, 昨日の服のまま、万年床に潜り横になった。
,r' 、──── ハ::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ, あっという間に、俺は夢の中。
`゛───( / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄(________)
25 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土)
12:23:55 ID:Gq7BeRy2
_, -‐
_, -‐  ̄ ‐=ニ=-
/ ̄ ̄ ̄\ _, -‐  ̄‐=ニ二ニ=- _, -‐  ̄
/ ヽ ,~'_, -‐  ̄`ー-----― '
/ 丶 _,~'_ッ'-
| _ノ ( ●) .厂
i ( ●) ! .⊃ 次の日、ちょうど仕事を終えて帰宅している
| (__人_) /〉 ぐらいの時間に起きた俺は、風呂に入り、
/∧ ,.<))/´二//⊃ 汗臭く皺くちゃになった服を着替え、
/ : | ヽ / / '‐、二ニ⊃` 現金や通帳、カード、携帯等を持ち、家を出た
, -‐'´: : : : :l 丶l ´ヽ〉: : : : \
/: : : : : : : : :| /_/ __人〉|: : : : :| 「…さて、どこにいるんだろ」
「ヾ: : : : : : : : : :l_/:_/ヽ. /´ | : : : : :|
〈\ : : : : : : : :,、: :/´∨/`ー'〉 |_| |: : : : :| あの公園に辿り着き、周囲を見渡す。
!: : :ミヽ: : :/ `y′.: ',ゝ、_/ l: : : : : :| 辺りには、人の気配すら無い。
! ⌒ヽ: : : :.ヾ/: ://: : : :| l: : : : : :
/ ̄ ̄\.
/ _ノ \.........:::::::::::.... ....... 「やはり…ダメだったか」
|::::::: : ( ●)) .... .........::::::::::...r‐ ' _ノ.
. |::::::::::::: (__ノ_) .... .........::::::::_ ) (_ そりゃそうだ。
|::::::::::::: `⌒ノ ..... ......:::(⊂ニニ⊃) こんな落ち目の冴えない大の大人となど、誰だって旅をしたくはない。
. |::::::::::::::: } ..... ......: ::::`二⊃ノ.
. ヽ____ } ..... ......: :::: ((  ̄ おそらく彼らは、内心気味悪がりながらも適当に話を合わせ、
r'ニニヽ._\. ノ.. ..... ......: :::::: ;;. その後何処かに去ってしまったのだろう。
r':ニニ:_`ー三`:く._ [l、.
/: : : : : : :`,ニ、: :_:_;> /,ィつ 後に残されたのは、職と家を失った、一人の元居酒屋店長だけ。
. /: : : : : : : : / : : : ヽ\ ,∠∠Z'_つ
| : :.:.:.:.:.: . :/: : : : : : l : ヽ. / .r─-'-っ やはり、あの時着の身着のままでも良いから着いていけばよかった。
. |:.:.:.:.:.:.:.:.:.,' ''" ̄: : :l: : : :l / ):::厂 ´
|:.:.:.:.::.:.:.:l -─-: : /:_:_:_:_l / ̄`Y´ …後悔しても、もう遅いのだけど。
. |:.:.::.:.::.::l.__: : : :/::: : : : :l/⌒ヽ: :
|::.:::.::.::l: : : : : : /:::: : : : : |: : : : ゙/
_, -‐  ̄ ‐=ニ=-
/ ̄ ̄ ̄\ _, -‐  ̄‐=ニ二ニ=- _, -‐  ̄
/ ヽ ,~'_, -‐  ̄`ー-----― '
/ 丶 _,~'_ッ'-
| _ノ ( ●) .厂
i ( ●) ! .⊃ 次の日、ちょうど仕事を終えて帰宅している
| (__人_) /〉 ぐらいの時間に起きた俺は、風呂に入り、
/∧ ,.<))/´二//⊃ 汗臭く皺くちゃになった服を着替え、
/ : | ヽ / / '‐、二ニ⊃` 現金や通帳、カード、携帯等を持ち、家を出た
, -‐'´: : : : :l 丶l ´ヽ〉: : : : \
/: : : : : : : : :| /_/ __人〉|: : : : :| 「…さて、どこにいるんだろ」
「ヾ: : : : : : : : : :l_/:_/ヽ. /´ | : : : : :|
〈\ : : : : : : : :,、: :/´∨/`ー'〉 |_| |: : : : :| あの公園に辿り着き、周囲を見渡す。
!: : :ミヽ: : :/ `y′.: ',ゝ、_/ l: : : : : :| 辺りには、人の気配すら無い。
! ⌒ヽ: : : :.ヾ/: ://: : : :| l: : : : : :
/ ̄ ̄\.
/ _ノ \.........:::::::::::.... ....... 「やはり…ダメだったか」
|::::::: : ( ●)) .... .........::::::::::...r‐ ' _ノ.
. |::::::::::::: (__ノ_) .... .........::::::::_ ) (_ そりゃそうだ。
|::::::::::::: `⌒ノ ..... ......:::(⊂ニニ⊃) こんな落ち目の冴えない大の大人となど、誰だって旅をしたくはない。
. |::::::::::::::: } ..... ......: ::::`二⊃ノ.
. ヽ____ } ..... ......: :::: ((  ̄ おそらく彼らは、内心気味悪がりながらも適当に話を合わせ、
r'ニニヽ._\. ノ.. ..... ......: :::::: ;;. その後何処かに去ってしまったのだろう。
r':ニニ:_`ー三`:く._ [l、.
/: : : : : : :`,ニ、: :_:_;> /,ィつ 後に残されたのは、職と家を失った、一人の元居酒屋店長だけ。
. /: : : : : : : : / : : : ヽ\ ,∠∠Z'_つ
| : :.:.:.:.:.: . :/: : : : : : l : ヽ. / .r─-'-っ やはり、あの時着の身着のままでも良いから着いていけばよかった。
. |:.:.:.:.:.:.:.:.:.,' ''" ̄: : :l: : : :l / ):::厂 ´
|:.:.:.:.::.:.:.:l -─-: : /:_:_:_:_l / ̄`Y´ …後悔しても、もう遅いのだけど。
. |:.:.::.:.::.::l.__: : : :/::: : : : :l/⌒ヽ: :
|::.:::.::.::l: : : : : : /:::: : : : : |: : : : ゙/
|
27 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土)
12:26:09 ID:Gq7BeRy2
/::::::::::::::::::::::::::::..... |
/::::::::::::::::::::::::::::.... _ -‐ 二>‐- __
. /::::::::::::::::::::::::::::_ -‐'´_ -‐ ' ´  ̄ヽ
/::::::::::::::::::::::; < , < /
.〈:::::::::::::::::::/ /:::::::::... _ - ‐ - 、 〈
\::::::::/ /:::::::::::::.... , ‐ ' "´ `\
\/ /:::::::::::.. , ' ´ l \ ヽ
`>'::::::::::. / . .l | i ヽ ` 、
/:::::::::. / | .:::/ /、 |\ , -‐ ! :.. 、 !
. /::::::::. ,.´:::::::. | .::// _, V _メ、_ i ::: ハ ! 「ほら、やっぱり来てるじゃん!」
/:::::::.. /::::::::::::::. |ー≠‐'´__ ヾ、 -≦ュ| ::::::イl l|
|___」::::::::::::::::::. .l/_≦==z ヽ {ミカ ! .::/リ ′
|::::::::::,:::::::- ' ´ト、 \_弋;ノ  ̄ |'´| 俺が入って来たのとは反対側の入り口から、
∨:::::::':;::::::::::. ヽヽ  ̄ .l |. | 蒼星石がのんびりと歩いて来た。
∨::::::::':;::::::::::. `N r-─ァ / i、|
ヽ::::::|::':;::::::::::.. ヽ ` ´ /. / `
\l、::、':;:::::::::. i _, イ::;、/ その時の俺が浮かべていたのは、
`l/∨ヾ、:./ l´ V l/ 満面の笑みか、それとも困惑しきった表情か。
r-V _ |__
rニ´ ̄ヾ´ `>、_ソ_`ー一'、⌒i、
_)/´ ̄`ミ、 / 只__ヽ ヽ八_
( i::::::.. )ト、 / /,仆、ヽ\ ヽ )
. _)|:::::. Yゝ / / i ハヽ__〉 〉 }(_
( |:::::. }(_ 〈 〈_/ /l .ト、_/ | _)
)|:::::. | ) \_ノ|;| |;| |(
____
/ \ ( ;;;;(
/ _ノ ヽ__\) ;;;;) 「マジかおあのおっちゃん、
/ (─) (─ /;;/ 本当にきやがったのかお…」
| (__人__) l;;,´|
./ ∩ ノ)━・'/ 笑顔の蒼星石とは対照的に、やる夫の方は、
( \ / _ノ´.| | まるで小麦粉で練った糞を口に突っ込まれた様な渋い顔。
.\ " /__| |
\ /___ / しかもタバコって…お前はどう見ても未成年なんだが。
/::::::::::::::::::::::::::::.... _ -‐ 二>‐- __
. /::::::::::::::::::::::::::::_ -‐'´_ -‐ ' ´  ̄ヽ
/::::::::::::::::::::::; < , < /
.〈:::::::::::::::::::/ /:::::::::... _ - ‐ - 、 〈
\::::::::/ /:::::::::::::.... , ‐ ' "´ `\
\/ /:::::::::::.. , ' ´ l \ ヽ
`>'::::::::::. / . .l | i ヽ ` 、
/:::::::::. / | .:::/ /、 |\ , -‐ ! :.. 、 !
. /::::::::. ,.´:::::::. | .::// _, V _メ、_ i ::: ハ ! 「ほら、やっぱり来てるじゃん!」
/:::::::.. /::::::::::::::. |ー≠‐'´__ ヾ、 -≦ュ| ::::::イl l|
|___」::::::::::::::::::. .l/_≦==z ヽ {ミカ ! .::/リ ′
|::::::::::,:::::::- ' ´ト、 \_弋;ノ  ̄ |'´| 俺が入って来たのとは反対側の入り口から、
∨:::::::':;::::::::::. ヽヽ  ̄ .l |. | 蒼星石がのんびりと歩いて来た。
∨::::::::':;::::::::::. `N r-─ァ / i、|
ヽ::::::|::':;::::::::::.. ヽ ` ´ /. / `
\l、::、':;:::::::::. i _, イ::;、/ その時の俺が浮かべていたのは、
`l/∨ヾ、:./ l´ V l/ 満面の笑みか、それとも困惑しきった表情か。
r-V _ |__
rニ´ ̄ヾ´ `>、_ソ_`ー一'、⌒i、
_)/´ ̄`ミ、 / 只__ヽ ヽ八_
( i::::::.. )ト、 / /,仆、ヽ\ ヽ )
. _)|:::::. Yゝ / / i ハヽ__〉 〉 }(_
( |:::::. }(_ 〈 〈_/ /l .ト、_/ | _)
)|:::::. | ) \_ノ|;| |;| |(
____
/ \ ( ;;;;(
/ _ノ ヽ__\) ;;;;) 「マジかおあのおっちゃん、
/ (─) (─ /;;/ 本当にきやがったのかお…」
| (__人__) l;;,´|
./ ∩ ノ)━・'/ 笑顔の蒼星石とは対照的に、やる夫の方は、
( \ / _ノ´.| | まるで小麦粉で練った糞を口に突っ込まれた様な渋い顔。
.\ " /__| |
\ /___ / しかもタバコって…お前はどう見ても未成年なんだが。
28 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土)
12:27:36 ID:Gq7BeRy2
____
/ \
/ ─ ─ \ 「まあやる夫としては、やる夫達の足さえ引っ張らなきゃどうでも良いお。
/ (●) (●) \ 後、自分の飯代ぐらいは自分で稼げお」
| (__人__) |
\ ` ⌒´ ,/
/⌒ヽ ー‐ ィヽ やる夫達から提示された条件は、意外にも簡単すぎるものだった。
/ ,⊆ニ_ヽ、 |
/ / r─--⊃、 | 金づるにする価値もないと判断されたのは、
| ヽ,.イ `二ニニうヽ. | 嬉しいやら、とても情けないやら。
,. -──-.. 、
,.'´. : : : : : : : : : : .`ヽ
/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
/.:.:/.:.:.::/.:.:.ハ.:.:.l.:.:.:.:.:.::.:.:l.:l.:.:.', 「それじゃ行こっか、ない夫っ!」
l.:./.:.:.:./.:‐/、 ',.:.ト、__.:.::l.:.:l.:l.:.l.:l
l/l.:.{.:..レ'l/ リ `ヽ.:`T:/.:l.:.l.:l
l/ N{,r==ミ r==ヽ:l/.:/.:/リ いつの間にか、蒼星石には呼び捨てにされていた。
l.:ト、' ' ' ' ' ' 〉:l.:/./ しかも妙に略されてるし。
l∧.ゝ、 ,r‐ァ _,..イ.イイノ
,.ィ´ ヽニノ <l/ だがその事に対し嫌味を一切感じないのは、
/.:{j ,.イ介ト、 j}ヽ 彼女の行為に悪意というものが見当たらないからだろう。
/.:.:{j レイXトV j}.:.:.ヽ
/.:.:.:.ヽェェイXLェェイ.:.:.:.:.:.', …決して俺が、変態性癖の持ち主という訳ではないぞ。
/ `ヽ.:.:.:.:/Ⅹ〔.:.:.:.:.:.:.:.:.: ノ
〈 L.:.:.〔 {y}〕.:.:.「~~T´
/ `ヽjニ三三三ニ !,.ィハ
/ 。゚/.:Lニ三三三ニレイ 〉
ノ /.:.:.:.:ヽニ」.:lニ/.:.:.!``1
{ `ヽ/.:.:.:.:.:.:.:、.:., .:.:.:.:.:l l
〈 ,.イ.:.:.:.:.:.:.:.:.:./.:.:.:.:.:.:.:.:.:!゚。 ト、
/.:.:.:.:.:.:.:.:.:;.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.にニハ}
〈.:.:.:.:.:.:.:.:.:ノ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./ハハJ
`ー--‐' ヽ.:.:.:.:.:.:ノ
/ \
/ ─ ─ \ 「まあやる夫としては、やる夫達の足さえ引っ張らなきゃどうでも良いお。
/ (●) (●) \ 後、自分の飯代ぐらいは自分で稼げお」
| (__人__) |
\ ` ⌒´ ,/
/⌒ヽ ー‐ ィヽ やる夫達から提示された条件は、意外にも簡単すぎるものだった。
/ ,⊆ニ_ヽ、 |
/ / r─--⊃、 | 金づるにする価値もないと判断されたのは、
| ヽ,.イ `二ニニうヽ. | 嬉しいやら、とても情けないやら。
,. -──-.. 、
,.'´. : : : : : : : : : : .`ヽ
/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
/.:.:/.:.:.::/.:.:.ハ.:.:.l.:.:.:.:.:.::.:.:l.:l.:.:.', 「それじゃ行こっか、ない夫っ!」
l.:./.:.:.:./.:‐/、 ',.:.ト、__.:.::l.:.:l.:l.:.l.:l
l/l.:.{.:..レ'l/ リ `ヽ.:`T:/.:l.:.l.:l
l/ N{,r==ミ r==ヽ:l/.:/.:/リ いつの間にか、蒼星石には呼び捨てにされていた。
l.:ト、' ' ' ' ' ' 〉:l.:/./ しかも妙に略されてるし。
l∧.ゝ、 ,r‐ァ _,..イ.イイノ
,.ィ´ ヽニノ <l/ だがその事に対し嫌味を一切感じないのは、
/.:{j ,.イ介ト、 j}ヽ 彼女の行為に悪意というものが見当たらないからだろう。
/.:.:{j レイXトV j}.:.:.ヽ
/.:.:.:.ヽェェイXLェェイ.:.:.:.:.:.', …決して俺が、変態性癖の持ち主という訳ではないぞ。
/ `ヽ.:.:.:.:/Ⅹ〔.:.:.:.:.:.:.:.:.: ノ
〈 L.:.:.〔 {y}〕.:.:.「~~T´
/ `ヽjニ三三三ニ !,.ィハ
/ 。゚/.:Lニ三三三ニレイ 〉
ノ /.:.:.:.:ヽニ」.:lニ/.:.:.!``1
{ `ヽ/.:.:.:.:.:.:.:、.:., .:.:.:.:.:l l
〈 ,.イ.:.:.:.:.:.:.:.:.:./.:.:.:.:.:.:.:.:.:!゚。 ト、
/.:.:.:.:.:.:.:.:.:;.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.にニハ}
〈.:.:.:.:.:.:.:.:.:ノ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./ハハJ
`ー--‐' ヽ.:.:.:.:.:.:ノ
29 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土)
12:29:07 ID:Gq7BeRy2
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ⌒)(● 「それじゃあ、行こうか!」
. | (__人__)
|, ` ⌒´ノ
│ } 二人から、着いて行く理由を一切聞かれなかったのは幸いだ。
ヽ、 ソ
イ斗┴r┐` .; 何せ、俺自身にすらなかなか理屈では説明出来ないのだからな。
/ ̄`ーゞ、 / |__ 〈ー─r、
/ \ ∨\ |,ベ._ / |
{ . : : : . ヽ>ー\[ ̄{ 〉\|、_
| `丶}\ __\_]~∨'\`ヽ
:| ._ \_}/r‐-}\ ゙,`''く l ゙,
ト、: :./ / ̄`` ぐ└f'二)::{ ', | !,ゞ┐
`、∨ ´ ,.、-''"~ ̄}_{‐''く:::{_ ', _|_|_,rー'、_
}{ / _、-'''"~ ̄{_\;;;;;j;><;:::::\:::ヘ}\
}∨: / _、-''゙~ ̄ ̄ \::::},之_ ヽ
〉∨ / ,.、イ;;ノ_ `ヽ}
{: \,/\ -‐ '" /` ̄ :.:}
____
/ \ 「何いきなり場を仕切ってんだお、おっちゃん
/_ノ ヽ、_ \ おっちゃんはただ、やる夫達に黙って着いてくれば良いんだお」
/(●)三(●)) .\
| (__人__) | …まだおっちゃん呼ばわりされる歳では無い筈なんだけどなあ
\ ヽ|r┬-| / /
/ `ー'´ \
/ _ノ \
| ( ⌒)(● 「それじゃあ、行こうか!」
. | (__人__)
|, ` ⌒´ノ
│ } 二人から、着いて行く理由を一切聞かれなかったのは幸いだ。
ヽ、 ソ
イ斗┴r┐` .; 何せ、俺自身にすらなかなか理屈では説明出来ないのだからな。
/ ̄`ーゞ、 / |__ 〈ー─r、
/ \ ∨\ |,ベ._ / |
{ . : : : . ヽ>ー\[ ̄{ 〉\|、_
| `丶}\ __\_]~∨'\`ヽ
:| ._ \_}/r‐-}\ ゙,`''く l ゙,
ト、: :./ / ̄`` ぐ└f'二)::{ ', | !,ゞ┐
`、∨ ´ ,.、-''"~ ̄}_{‐''く:::{_ ', _|_|_,rー'、_
}{ / _、-'''"~ ̄{_\;;;;;j;><;:::::\:::ヘ}\
}∨: / _、-''゙~ ̄ ̄ \::::},之_ ヽ
〉∨ / ,.、イ;;ノ_ `ヽ}
{: \,/\ -‐ '" /` ̄ :.:}
____
/ \ 「何いきなり場を仕切ってんだお、おっちゃん
/_ノ ヽ、_ \ おっちゃんはただ、やる夫達に黙って着いてくれば良いんだお」
/(●)三(●)) .\
| (__人__) | …まだおっちゃん呼ばわりされる歳では無い筈なんだけどなあ
\ ヽ|r┬-| / /
/ `ー'´ \
30 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土)
12:32:07 ID:Gq7BeRy2
/ /.::; .:; .:.:::;::/i .:.:.:.:.:::::::::::::::::.:.:.``ヽ、
/ /.:::;′,.::/.:.::://.::l::i .:.:.:.:::::::::::i:::i .:.:.:::::::.:.`ヽ __/
,' /.:.:;′/:/.:.:::/:/!::::|::ト、 .:.:.:.:::::::|::|::i .:.::::::::::::::.:「
l/.:.::;'.:.:/./.:::ノ::/ |:::::|::ト、ヽ.:.::::::|:::|::|::| .:.::::.:::::::::::| 「こらこらやる夫、そんな事言わないのっ」
|:l:::::l::::|:::レ':ナナヽ|:::::l::l\ヽ.:‐:十:|十!、.::::::::::::::/
lハ::l::::|:::レ'´ ‐- |:::/l/ \::::::|:::|::|::| .:.::::.:::|:./
',l::::|:::| _ |/ `` ``7!.:.:::::.:::|/ …最初に俺は、「自分はこの世界の主役ではなかった」と言った。
ト、ト::ト、´ ̄`ヽ ‐==ミ、 ./:!:.:.::::::::| 別に世界と言っても、どこぞの大国の大統領になりたかった訳ではない。
ヽ:|:::|::! /./.:.:::::::::;′
`l:::|::ト、 _`_ /::/.:::::::/l/ 家庭…近所…職場…バンド…世間…
|:::!.l.:::>、 ` ,..イ::/::::::::/ そんな、俺にとっての『世界』の主役になりたかった、
|.::::::/:::/ニ>.--‐ <ニ7⌒:::::/ _ _ けどなれなかった、たったそれだけの、つまらない話だ。
,r‐r‐- 、|::::/´l/ L_ / |::/ ̄`ヽ `」
ノ:いぃ ̄|:/ヽ `ーrrrt7′ l/ V ̄``
___
/ \ 「だってお~ ただでさえ着いてくること自体がメンドウなのにお…」
/ _ノ '' 'ー \
/ (●) (●) \ だが、彼らは違う。
| (__人__) | 矮小且つ個人的な世界の主役にすら
\ ` ⌒´ / なれなかった俺とは違う。
/ /.:::;′,.::/.:.::://.::l::i .:.:.:.:::::::::::i:::i .:.:.:::::::.:.`ヽ __/
,' /.:.:;′/:/.:.:::/:/!::::|::ト、 .:.:.:.:::::::|::|::i .:.::::::::::::::.:「
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|:l:::::l::::|:::レ':ナナヽ|:::::l::l\ヽ.:‐:十:|十!、.::::::::::::::/
lハ::l::::|:::レ'´ ‐- |:::/l/ \::::::|:::|::|::| .:.::::.:::|:./
',l::::|:::| _ |/ `` ``7!.:.:::::.:::|/ …最初に俺は、「自分はこの世界の主役ではなかった」と言った。
ト、ト::ト、´ ̄`ヽ ‐==ミ、 ./:!:.:.::::::::| 別に世界と言っても、どこぞの大国の大統領になりたかった訳ではない。
ヽ:|:::|::! /./.:.:::::::::;′
`l:::|::ト、 _`_ /::/.:::::::/l/ 家庭…近所…職場…バンド…世間…
|:::!.l.:::>、 ` ,..イ::/::::::::/ そんな、俺にとっての『世界』の主役になりたかった、
|.::::::/:::/ニ>.--‐ <ニ7⌒:::::/ _ _ けどなれなかった、たったそれだけの、つまらない話だ。
,r‐r‐- 、|::::/´l/ L_ / |::/ ̄`ヽ `」
ノ:いぃ ̄|:/ヽ `ーrrrt7′ l/ V ̄``
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/ \ 「だってお~ ただでさえ着いてくること自体がメンドウなのにお…」
/ _ノ '' 'ー \
/ (●) (●) \ だが、彼らは違う。
| (__人__) | 矮小且つ個人的な世界の主役にすら
\ ` ⌒´ / なれなかった俺とは違う。
31 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土)
12:34:15 ID:Gq7BeRy2
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ 「ははは…まあ、今後ともよろしくなんだろ」
| ( ⌒)(⌒)
| (__人__) 普通の人間にはない、異質の能力…
| ` ⌒´ノ 自販機荒らしなど悪い事とすら思っていない様な、
,| } 俗世間の常識とはかけ離れた価値観…
/ ヽ }
く く ヽ ノ この二人はまさに、『世界の主役』だった。
\ `' く 少なくとも、俺にとっては。
ヽ、 |
| |
/ { \ / / /ヽ
ヽ ヽ ヾー 、__ _,. -‐ ' / / /
\ \ \ ` ー-- 、___,. -ー '" _/ ./ /
\ `ヽ、 ヽ、 ,. - ' / / 「よ~し、それじゃあ出発だぁ~っ!!」
\ ` ー-`_ー-- 、_ _,._-ー '_ ,. - '´ /ヽ、
!ヽ,  ̄` ー--- ̄- ̄-─ ' "´ / ヽ、
| ` - 、 ,. ヾ、 | 世界の主役どころか、端役にすらなれなかった俺。
| ,. - 、! ` - 、__ _,. -ー' ´ \\ !
ソ ヾ `ヾ ' ー--丶 ̄ヾ`' - 、. / ヽヽ | だが、『世界の主役』に成り得る可能性を大いに秘めいている
/ ト l \ \ `'フ,ィ7´7 ̄ ̄ ヽ! 彼らに着いて行く事で、何かが変わるかもしれない。
/ !ヽ  ̄ヾ ̄ ' ─- 、\ \ イ:ン, !、ヽ '
/ / \ ヽィ'〒.'.:テヽ ` ー-ゝ `´ l ヾ`ヽ、 理由など無い。理屈などとっくの昔に抜かれている。
/ `ヽ/ ∧、 \\ \:.:'''.:ノ ヽ / \ ` 論理性なんて端からある訳もない。
_,. r' ヽ /‐-ヽ、 \\ `゙\"´ /
ヽ ! ∠ ` ー-ヾ、\ ヾ、 r_‐',イ、|-、.
ヽ t'"ヽ >´ ̄ `ヽ `ー\ ヽ -- ー' ヾ、ノ ヽ、 ただその時の俺は、本気でそう思ったのだった。
ヽ ノ / ´ ! r ヽ ヽ-r─-- 、_.ヽ`ソ \
、 /ヽ - '"ノ゙ _ ,. -‐' ! | \ \戈、`- 、 `ヽ、__ \_
ヽ '" / / ,> ヽ ! | ` ヾヽ、`ヽ、 \ l ヽ ヾ、
´ _,. -" ヽ ヽ ヽ`ヽ、 | | >、 \_ノ !<、
/ } ヽ ヽ、ヽノ ! `7`ヽ、 / -'
/ _ノ \ 「ははは…まあ、今後ともよろしくなんだろ」
| ( ⌒)(⌒)
| (__人__) 普通の人間にはない、異質の能力…
| ` ⌒´ノ 自販機荒らしなど悪い事とすら思っていない様な、
,| } 俗世間の常識とはかけ離れた価値観…
/ ヽ }
く く ヽ ノ この二人はまさに、『世界の主役』だった。
\ `' く 少なくとも、俺にとっては。
ヽ、 |
| |
/ { \ / / /ヽ
ヽ ヽ ヾー 、__ _,. -‐ ' / / /
\ \ \ ` ー-- 、___,. -ー '" _/ ./ /
\ `ヽ、 ヽ、 ,. - ' / / 「よ~し、それじゃあ出発だぁ~っ!!」
\ ` ー-`_ー-- 、_ _,._-ー '_ ,. - '´ /ヽ、
!ヽ,  ̄` ー--- ̄- ̄-─ ' "´ / ヽ、
| ` - 、 ,. ヾ、 | 世界の主役どころか、端役にすらなれなかった俺。
| ,. - 、! ` - 、__ _,. -ー' ´ \\ !
ソ ヾ `ヾ ' ー--丶 ̄ヾ`' - 、. / ヽヽ | だが、『世界の主役』に成り得る可能性を大いに秘めいている
/ ト l \ \ `'フ,ィ7´7 ̄ ̄ ヽ! 彼らに着いて行く事で、何かが変わるかもしれない。
/ !ヽ  ̄ヾ ̄ ' ─- 、\ \ イ:ン, !、ヽ '
/ / \ ヽィ'〒.'.:テヽ ` ー-ゝ `´ l ヾ`ヽ、 理由など無い。理屈などとっくの昔に抜かれている。
/ `ヽ/ ∧、 \\ \:.:'''.:ノ ヽ / \ ` 論理性なんて端からある訳もない。
_,. r' ヽ /‐-ヽ、 \\ `゙\"´ /
ヽ ! ∠ ` ー-ヾ、\ ヾ、 r_‐',イ、|-、.
ヽ t'"ヽ >´ ̄ `ヽ `ー\ ヽ -- ー' ヾ、ノ ヽ、 ただその時の俺は、本気でそう思ったのだった。
ヽ ノ / ´ ! r ヽ ヽ-r─-- 、_.ヽ`ソ \
、 /ヽ - '"ノ゙ _ ,. -‐' ! | \ \戈、`- 、 `ヽ、__ \_
ヽ '" / / ,> ヽ ! | ` ヾヽ、`ヽ、 \ l ヽ ヾ、
´ _,. -" ヽ ヽ ヽ`ヽ、 | | >、 \_ノ !<、
/ } ヽ ヽ、ヽノ ! `7`ヽ、 / -'
32 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土)
12:36:21 ID:Gq7BeRy2
こうして俺達3人の、奇妙な旅は始まったのだった。
/ ̄ ̄\
,. -──-.. 、 / _ノ \
,.'´. : : : : : : : : : : .`ヽ | ( ⌒)(⌒)
/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ | (__人__) ___
/.:.:/.:.:.::/.:.:.ハ.:.:.l.:.:.:.:.:.::.:.:l.:l.:.:.', | ` ⌒´ノ / ヽ、_ \
l.:./.:.:.:./.:‐/、 ',.:.ト、__.:.::l.:.:l.:l.:.l.:l ,| } /(● ) (● ) \
l/l.:.{.:..レ'l/ リ `ヽ.:`T:/.:l.:.l.:l / ヽ } /:::⌒(__人__)⌒::::: \
l/ N{,r==ミ r==ヽ:l/.:/.:/リ く く ヽ ノ | l^l^lnー'´ |
l.:ト、' ' ' ' ' ' 〉:l.:/./ \ `' く \ヽ L /
l∧.ゝ、 ,r‐ァ _,..イ.イイノ ヽ、 | ゝ ノ
,.ィ´ ヽニノ <l/ | | / /
…続く。
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272 『やらない夫は人生のまとめに入るようです 1話』の前後エントリー2010年06月05日 20:15 -
- v やらない夫は人生のまとめに入るようです 3話 (06/05 22:15)
- v やらない夫は人生のまとめに入るようです 2話 (06/05 21:15)
- やらない夫は人生のまとめに入るようです 1話
纏め作品一覧:やらない夫は人生のまとめに入るようですの目次
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