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やらない夫は人生のまとめに入るようです 1話

2010 06 05  目次ページ ⇒ 最初から読む   タブレット ⇒ モバイルやる夫Viewerで変換して読む or スマホ版で変換して読む   タグ:◆.9jeLz5xws, 完結作品1話目, |
4 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:01:08 ID:Gq7BeRy2





          『俺はこの世界の、主役じゃなかった』




.


5 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:01:43 ID:Gq7BeRy2
     / ̄ ̄\
   /   _ノ  \  ( ;;;;(     そんな事をはっきりと自覚したのは、一体いつからだったろうか。
   |    ( ─)(─  ) ;;;;)   
   |      (__人__) /;;/    
.   |        ノ l;;,´       大学受験に失敗した時だろうか?
    |     ∩ ノ)━・'      
  /    / _ノ´         愛し合っていると思っていた彼女が、
  (.  \ / ./   │         二股をかけていた事が分かった時だろうか?
  \  " /___|  |
.    \/ ___ /



     / ̄ ̄\
   /   _ノ  \       一生をかけようと思っていたバンドが、
   |    ( ー)(ー)      下らない理由であっさりと解散してしまった時か?
.   |     (__人__)      
    |     ` ⌒´ノ      就職先が見つからず、仕方なく今の職業に
   .l^l^ln      }       就く事を決意せざるをえなかった時だろうか?
.   ヽ   L     }       
    ゝ  ノ   ノ
   /  /    \        …いや、本当はもっと早く気付いていたのかもしれない。
  /  /       \       
. /  /      |ヽ、二⌒)、   ただ、その事を、どうしても、認めたくなかっただけで。
 ヽ__ノ

6 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:02:35 ID:Gq7BeRy2
       / ̄ ̄\
     /     _ノ ヽ
     |     ( ●) |     俺は違う、俺だけは違うと、
     |      (__人)     無駄にあがき続けた俺の今までの人生。
     |        ⌒ノ
     ン        ノ      凡人は凡人なりに必死になって積み重ねた努力は、
    /⌒ヽ、    _ノ       その殆どが『無駄』としか言い様が無いものに成り果てた。
   /   ノ \__ィ ´
  /  /    '|.          
 (  y      |.          …今の俺は、無駄に年齢だけを積み重ねた、
   \ \    |         凡人以下の存在だ。
    \ィン、__)、
     .|     ij ,ノ



        / ̄ ̄\
      /  _ノ ,ヽ\     日々の安定も将来の希望も無く、
      |   ( ●)(●)    昔の仲間の様に、叶わぬ夢を
. \    |     (__人__)    追い続ける事すらも許されず。
   .\  .|     ` ⌒ノ
   . \ ヽ       }      搾取されている事が分かっていながら、
      .\_,ゝ     ノ      それでも日々の飯銭の為に、
      /, r、    く       下らない仕事を機械的にやり続ける毎日…
     ./ 〈  \    i
    . ヽ、 .ヽ   \ i..|
       .て_)   \ノ       俺は、そんな男だった。
             \
               \     どこにでもいる、一人の敗北者だった。
                 \

7 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:02:54 ID:Gq7BeRy2







           "やらない夫は人生のまとめに入るようです"






.

8 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:03:58 ID:Gq7BeRy2
   / ̄ ̄\
 /   _ノ  \       その日も俺は店を閉め、暗い夜道を一人、
 |    ( ー)(ー)      すっかり寝るぐらいしか使い所のなくなった
. |     (__人__)       狭く汚いアパートに帰る所だった。
  |     ` ⌒´ノ
.  |       nl^l^l     「ふぅ…」
.  ヽ      |   ノ
   ヽ    ヽ く       最近また溜め息をつく事がふえたなとか、
   /     ヽ \     そんな下らない事を考えながら。



            / ̄ ̄\
          / _ノ  ヽ、_\    力強く生きる気力などとうになく、
          .|  (●)(●)  |    さりとて命を絶つ勇気も無く、
          |  (__人__)  |     ただただ生き延ばしの毎日…
          っ   `⌒´   |
         / ミ)       /     「んっ…? なんだ、あいつら?」
        / ノヽ      /
        | |/      ヽ     だが、俺は出会ってしまった。
        |  | /|     | |     ――そう、あいつらに。

9 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:04:31 ID:Gq7BeRy2
      ___
    /     \      背格好は、15~16歳前後。
   /  _ノ '' 'ー \    
 /  (●)  (●)  \  「いい加減諦めるお、蒼星石」
 |      (__人__)    |
 \      ` ⌒´   /  少し小汚い格好をした、どこにでもいそうな二人だった。




                        ____
                         /::::::::::::::::::::::::`丶、        金を入れてもジュースが出なかったのか、少年の様な外見の少女は、
                   , --‐'――─‐--- 、:::::::\       地面に倒れ込み、稚児の様に駄々をこねていた。
                  ,イィ_二仁 イ 二― `ヽ::::\::::::}       
       _          〃,lト、 ヽ \ ヽヾ `!::i:い::::::i/       …若いというだけで、根拠の無い希望に満ち溢れていたあの頃。
      {  ⌒}       /:/=冬フ`ヾ! ‐ゝ七、ト!:リ !|:::|        あいつらもいずれ、俺みたいに現実に直面し、絶望するのだろうか。
     (`   `i       .イrっ==`   ≪´ ̄ |:イノ レ´        いやその前に、現実と妥協し、それなりに上手くやっていくのだろうか。
      {__,、_ァ- ′/ {`>_ Y´  /> -- ‐- 、`ヾつ!:. :ト'         
        /´X //く/ 八   {       }   jレヘ⌒}        
        {:// \'ィ、_Y__>,ミ - .. __ノ _.. イ トヽ:.V         「いやだいやだいやだっ!
          /V   ト、_ >、_ || (<_仆_>)、 //::_/ ヽ>イ ハ  r‐v‐ 、   ボクはこのジュースが飲みたいんだいっ!」
        { ハ _ノ::.::.::.:ト.ハ トヽィ/l 廴__//::.:/ニ <イ/ |ハ r'    } 
  r'⌒ヽ-、|!  ヽ::.::.::.::.::.:\jノ::Lノー─‐::''/´    //'7-、|| ヽ_ィ  フ 
  r'    j  | ヽ  \_::.:ト、:ー: :`ヽ、;;;ヽ、::.:ァァー----Ll_/ー'    ー'   …まあ、俺にも、そしてあいつらにも関係の無い話だ。
  7   i′  l!     >=ニ::. ::. {、;;;;;/                  すぐに視界と意識から二人を外し、通り過ぎようとした時――
   ー^ー ′  _l!.斗‐.<::.::.::.::.::. :. :.リ/                   
         ハ     }::.::.::_::.:/´                     少年の発したある言葉が、
         ヽ:_ヽ__ ,⊥-´                         すっかりくたびれてしまった耳に入り込んできたのだった。
           `\

10 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:05:16 ID:Gq7BeRy2
       ____
     /     \                
   /_ノ  ヽ、_   \    「仕方ないお… 『やってやる』から、
  /(●)三(●))   .\    ちょっと待ってろお」
  |   (__人__)      |
  \ ヽ|r┬-| /   /    …やってやる?
  /   `ー'´      \    何をやるというのだろうか?




      / ̄ ̄\
     /  u  ノ \
     |    .u ( ●) |     「おいおい、マジかよ、面倒くせーな…」
.     |      (__人_)
     |      ` ⌒ノ     彼が一体、何をやろうとしたのかは分からなかった。
      |        }      だが少なくとも、真っ当な手段でなさそうなのは確かだった。
      ヽ u      }
       ヽ     ノ      注意する、制止に入るなどという選択肢は初めから無く、
      ノ     \      一体どうやってこの場から離れようかと、疲労と眠気で
     /´        ヽ    少しぼんやりとした頭を必死で動かそうとしていたその時――

11 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:05:44 ID:Gq7BeRy2
                \  ゚  o 。| 。   /  。  /
                  ○  。 ゚  |゜ O / o  / 。゜
              ゜   。 \   o ゚ O ゚ 。 /゚  。   O      シュッ――
                ゚  。  \     |   ゚ o /  ゚  。 ゜
               。 ゜  。   。 。 ゚      。o   ゜
            __。___   ゚ 。   ゜  ―O――――
              ゜ o 。    o   ゚   。  ゚  。 ゚
              ゚ 。 O  /  。 |゜ 。゚ \゜  O  ゜
             ゜  。   / 。 /  ○゚   O \ 。 ゜
                 O ゜。 / ゚ | 。゜  ゚ 。 o
                /   o  。゜ |   o ゜    \





       ____
    /     \          少年の手が、一瞬だけ強く、しかしはっきりと光った。
   /   ー,  ー\    rnm  
 /   ( ー) (ー)\ rl  |   「まったく… 最後の200円を吸い込みやがった
 |      (__人__)   | ゝ .|    お前が悪いんだお…」
 \     ` ⌒´   ,/_ |   |   
   ヽ          i    丿    まずその事に驚き視線を向け続けていると、
  /(⌒)        / ̄ ̄´     少年は、その手をゆっくりと自動販売機の
 / /       /          コイン投入口にかざし――

12 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:06:19 ID:Gq7BeRy2





                        _  _
               / ̄ ̄/   /_/ /_/
              /   / | ̄|
             /   /   |  \
            /   /   \   \
            /__/      \_/  
               
                        `
                         \ ,,_人、ノヽ
                          )ヽ    (
                       - <       >─
                          )     て
                         /^⌒`Y´^\
                                         __
                                        |__|
                                                /\
                                              / /
                                         ___/ /
                                         |___/




.

13 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:07:34 ID:Gq7BeRy2
     ____
   /      \      小さい破裂音と共に、かざしただけで
  /   ノ   ヽ__\    直接触れてはいない筈の自販機が、揺れた。
/    (ー)  (ー) \   
|       (__人__)    |   「…よし、出てきたお」
./     ∩ノ ⊃  /
(  \ / _ノ |  |     そして数秒後、機械が軋む様な異音と共に、
.\ "  /__|  |     大量の硬貨とジュースが、釣銭口や
  \ /___ /     取り出し口から溢れ出していった。



        〉 <三三三三三三三三三三三三三三〉〉
      , <三三三三三三三三三三三三三三三7/´  次々と溢れ出る硬貨や缶を、背にしょった
    〈 〈三三三三≧.イ"´ ̄   ヽ.    、   i`Y/    リュックサックに片っ端から詰める少女。
     \、三三=彳  i        、  '.   } ハ
       ヽ./  i  ハ \ 、     ヽ  '   ! .ハ   「おお~こりゃまたたくさん出てきたねっ!」
       / /   i/ /i ハ.  ヽ \、   ヽ  .   i i i
        ′  i′' j ' \ ヽ丶、\ ┼f ┼ :! :i i   そしてそれを、平然とした顔で眺める少年。
       i  i  / /_/_/__ ヽ \ >x≧f斗}  i i i
       l  |i / イノ∠_云ミ、  \、 イ_ぃハ 癶 / l i   二人の表情からは、罪悪感など微塵も感じられなかった。
       { ハノ´ 小 {_??゚}      弋__ノ イ i  l l
       V i  \ ヽ 弋ノ          /i !  | !  __
         i i   ハ\_     '      ; --、// i´i⌒l  .r=i
         i l   l ヽ      r _ ヲ    ィ.|l⌒l l  | ゙ー '|  | L.」 ))
         l ト、  ハヽ >  _   _. イ/j/|.ー‐' |  |   |  !   l
         |l  } ./   ヽ>ヽハ`¨´ _⊥.|"'|   l   │  |. i   」  ,. -‐;
              i/ , v⌒ -‐' {_.  ´   i  !   l  _|   l. |  | /  //
             ,孑'"´ /_ノ7ー 、.   │ l   l、'´j、|   | }  |,.{  / ))
           /) /  // ハ 「ヽ }    |__,.ヽ、__,. ヽ_」   レ'   ;   /

14 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:08:48 ID:Gq7BeRy2
..      ____
     / ―  -\      俺があまりにも現実離れした光景に、
.  . /  (ー)  (●)      声も出せないまま驚いていると、
  /     (__人__) \
  |       ` ⌒´   |    「蒼星石、そろそろ行くお――」
.  \           /     …なんだお、あんた?」
.   ノ         \
 /´            ヽ    少年が、俺に気付いた。




           ,. - ──── - 、
          /              \
         |                〉
         |                   /
         |    _ _  - ──-、/      そのままずっと、無言でこちらを見つめる少年。
       _ _[二二 _ _ , -───‐- 、
    (´ ̄                       \   しばしの沈黙、一瞬で高まる緊張感。
    \   , ィ´  ̄ ̄ ̄ ̄``ー-.. 、 _  _/
     `y'´ /  /.ハ、.: .:.、  . :.:.::::ヽ::ヽ::::<
     /  /  /:/;ハト,ヽ:、\ . :.:.:::::::|::::|::::::|    「…ひょっとして、見てた?」
      i   ! /.:// \ト、ト、:.\:.:.:.::::!::::|::::::!
     |  l/::// __, ヾ! ‐ゝ-ト、:_:_|::::|::::::|
     | / .,:ィ厂_ _     `二ニ!::::!::::::!    俺は少女の問いに、顔を冷や汗でベトベトに濡らしながら、
     ト、 ̄.::/:!ヾテ。::.フ   ヽ辷フ 7:::,'::::/     ただこくこくと頷くしかなかった。
     l/|.:.:::/:::|              /::/:::/  
      |.::/.:.:::ト、         /::/:::/
      l/ヽ.::::l/ト 、  (⌒ヽ , ..イ::/l::/
         \N  `コ ー-‐<l:::/l/ |/
        _ _/  ̄`フ杯ト、 _
       _「ハ_     ,イ  j1ト、 \ ト、
      l/.:.:.:.::::)ト、  //  //j。jト、//.:.:!
     /.:.:::::::::::::Yト、l ト、 // j。 i|V/.::::::|

15 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:09:52 ID:Gq7BeRy2
       (⊃ ̄ ̄\
     (⊃   _ノ  \      とりあえずその場から共に離れ、
    (⊃   ( ●)(●)      数分程歩いた所にある公園のベントに腰を下ろし、
     |     (__人__)      近くの自販機でちゃんと金を出して買った
     | u    ` ⌒´ノ      缶コーヒーの蓋をあけながら、俺は、
       |      u  } \
     /ヽ       }  \   
   /   ヽ、____ノ     )   「その力は…一体何なんだ?」
  /        .   | _/
 |         / ̄ ̄(_)    
  \   \ /| JJJ (      と、単刀直入に二人尋ねた。
   \  /   /⊂_)



    _.. ‐'''''''''''' ‐ 、
   ,r'        \      「まあ、見ての通りだお…
  /_,ノ  ,,       ヽ,     超能力だのESPだの言った方が、
  ( о) ミ ヽ、,,,_    ..i     おっちゃんには分かり易いかお?」
  i.   ミミ( ○)    .|   
  \(_入_ノ      /     返って来たのは、シンプルな答え。
    ノ__,,/,____/      まあ手品の類などとごまかされなかっただけ、
    ./ゝ/ノ:::::::::::::::::\      よしとしておこうか。

16 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:10:41 ID:Gq7BeRy2




               | 三三三三三三三三三三三三三三三. /
               | 三三三三三三三三三三三三三三三 /
            __ |` ー-- 、..三三三三三三三三三三三'      それきり少年は押し黙ったまま、口を開こうとはしなかった。
         r__─ /       ` ー── - _ 三三三三三l      
          |  `ー---... _                       |      少年の代わりに、それまで彼の横に大人しく
          | 三三三三.... `= ー― -- ..、          ト._.\   ちょこんと座っていたボーイッシュな少女が、
         ' 三三三三三三三三三三 `ニニ=ー───---` .)   俺の目の前に立って、俺が知りたかった事の大体を、
         ヽ___ 三三三三三三三三三三三三三三三三  /   聞いてもないのに向こうから色々と話してくれた。
           /::::` -..、_三__三三三三三三三三三三三三 /    
         /:::::::::::/::/:::::::::人::: ̄\--- ..、___三三_三三._/     
        ' :::::::::::::::/:__:/  |::::::::::::ヽ::::::::::::::::::::ヽ:::::::::: ̄ヽ
        '::::::::::: :,. '::::/:/ ` |::|:::::::ト , ----- 、 :::l ::::::::::::::::゙      「んーとね、んーとね――」
          |::|:::::::ノ::_/, ' __  |::l::ヽ::ヽ \ ::::::::::::::: | ::::::::::::::::|      
       丁! ̄::!::/イ,.ィ´ `ヾ|::ヽ:::ヾ::\_`_ヽ ::::::::| ::::::::|::::: |
        |ヘ:::::ヽ:::::::| ト ィ_、| ヽ| \!` 7:::::::`ヾ、::ノ ' ::::::|::::: |      
        ハ:::N\::l ゝ_..ノ       ハ::_,ヘ| ハi /::::::::,. ::::,       どうやら彼女は少年と違い、なかなかの饒舌なようだった。
        l::::::ヽ::::::::ヽ           ゝ __.ノ,.'::::::::::::./:::::/       おまけに妙に人懐っこい。
        |:::∧:::::::::::;ヘ      '       /イ:::::::::::/::イ::|        俺にもこんな愛嬌があったら、
.          レ'. │:::::::|::::ヽ.    ,- 、     フ:::::/::::::小/∨        もう少しまともな人生を送れたのだろうか。
           |:::::::.ハ/ヽl >._j /    イ:://::::イ/          
           |::::/   /  ノ /フT   /,':::::_イレ            
             V  _ ノ ー<'/ノ , 介 ̄ l::/´ \            
          , -ーf  ー-ノ !-イ/l::!ヽ  レ    \          
          |三r |  、__ ノノ //_j|:|ヾ:ヽ                 
       γ´ ゝrゝl  ノ|  /イ/{.|:|                   
       (j   入(^つ-rく> ´//`l{´|:|                   



.

17 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:11:30 ID:Gq7BeRy2
     |      ,.  ' "´ ̄             /
   _ ⊥. '"´                 /
  〈           ,.   - ────く
   ',:::::.:.   ,  '"´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::;i.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ    
   ',::::::,  ".:i.:.:.:.:.:.:.:i .:.:.:.:.:.:.:./:|i::::::::::::::l::i:.:.:.',    少し舌足らずな彼女が話してくれた内容を整理すると、
    V:.:.:.:.:.:.:.|.:.:.:.:.:.:.l.::::::::;::::/ハ:l:::::::::::.:|::|::.:.:.!    まず少年の名はやる夫、少女は蒼星石というらしい。
    !:.:.:.:.:.:.:.|::::i::::::::|.:::::/.://  i:l::::::::::: |::!:::::::!
    !::::::::::::::|:i::l::::::::|:フナナ'ー l:トヽく::::l::l:::ハ:|   
    ヽ:::::::::::|:l::l::::::::レzr==ミ リ rzトV/l/
     ヽ:::::::::|:|::ト、:::::l ヽトーイソ    ヒ1:::| ′      「ねぇねぇやる夫っ、早く遊ぼうよぅ~」
      ヽ:::::|:|::l:::',::::',   ̄     ,' !:::|
       \ト、:ト、:';::::',.      _ _ /::::|
         ヽヽ::ト:;::::L_     ,..イ::::::::/
          ,r一ヽヽ::::|  ``7´ヽ:/1::/         教えてくれたのは下の名前だけで、
        ノ     \:::|ー‐介ヽ  l/          苗字に関しては結局教えてくれなかった。
    _∠二ニヽ、.   ':;|  /:ハト、\
    厂 , '⌒ヽX、_   /:/i i::ト、 \          まあ、この辺は別段問題はないだろう。
    / /.:.::::::::.:.ヽX_}、 l:/ i i:! l   fヘ        
    ヽ/.:.:::::::::::::::.:.ヽX_} l:l  i i」 l   fヘ}



         ___
       /      \            やる夫と蒼星石は、共に貧しい団地で生まれ育ち、
      /  ─   ─ \           それこそホクロの数から、尻にある痣の形まで知っている仲だという。
    /    (●) (●) \
    .|      (__人__)   |    __   
     \     ` ⌒/ ̄ ̄⌒/⌒   /   「ちょっと待つお、蒼星石。
    (⌒      /  SM / スカトロ /    この裏庭で拾ったHな雑誌を読み終えるまでは――」
    i\  \ ,(つ     /   ⊂)
    |  \   y(つ__./,__⊆)
    |   ヽ_ノ    |           そういえば、あいつと会ったのはいつが最後だったかなと、
    |           |_           何年も会っていない、一番仲が良かった元バンド仲間の事を、
     ヽ、___     ̄ ヽ ヽ          少しだけ思い出した。
     と_______ノ_ノ

18 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:13:38 ID:Gq7BeRy2
         ___
       /     \        『不思議な力』は、物心ついた頃から備わっていた。
      /   \ , , /\       
    /    (ー)  (ー) \
     |       (__人__)   |     「はぁっ!」
      \      ` ⌒ ´  ,/
.      /⌒~" ̄, ̄ ̄〆⌒,ニつ    その力は、歳を重ねるごとに段々と強くなっていき、
      |  ,___゙___、rヾイソ⊃    それと同時に、コントロールする術も身に着けていったという。
     |            `l ̄     
.      |          |     ボン!




     /  {    \                        /   /  /ヽ
     ヽ  ヽ    ヾー 、__                _,. -‐ '   /  / /
      \  \   \  ` ー-- 、___,. -ー '"     _/ ./  /
        \  `ヽ、 ヽ、                 ,. - '  /   /
         \   ` ー-`_ー-- 、_     _,._-ー '_ ,. - '´    /ヽ、     『不思議な力』の存在を、二人は互いに協力し合いながら隠していたが、
           !ヽ,       ̄` ー--- ̄- ̄-─ ' "´       /  ヽ、     『とある事件』がきっかけとなり、二人は気ままな放浪の旅に出る事になったという。
           |  ` - 、                     ,. ヾ、    |   
           | ,. - 、! ` - 、__           _,. -ー' ´  \\   !     
           ソ   ヾ      `ヾ ' ー--丶 ̄ヾ`' - 、.   /   ヽヽ |      「すごい、すごいや、やる夫!
          /     ト       l      \ \  `'フ,ィ7´7 ̄ ̄ ヽ!      それじゃあ次は、ボクの番だねっ!」
         /     !ヽ     ̄ヾ ̄ ' ─- 、\ \  イ:ン, !、ヽ   '     
         /     / \      ヽィ'〒.'.:テヽ  ` ー-ゝ `´ l ヾ`ヽ、   
   / `ヽ/       ∧、  \\    \:.:'''.:ノ      ヽ  /   \ `
_,. r'     ヽ    /‐-ヽ、  \\   `゙\"´       /             『とある事件』については、語る機会があったとしたら、またその時に語ろうと思う。
  ヽ      !   ∠     ` ー-ヾ、\   ヾ、   r_‐',イ、|-、.
   ヽ      t'"ヽ >´ ̄ `ヽ    `ー\   ヽ -- ー'  ヾ、ノ ヽ、
    ヽ    ノ / ´       !      r ヽ  ヽ-r─-- 、_.ヽ`ソ \
、   /ヽ - '"ノ゙     _ ,. -‐'       ! | \ \戈、`- 、 `ヽ、__ \_
 ヽ '"    /     / ,> ヽ        ! |  ` ヾヽ、`ヽ、 \ l ヽ  ヾ、
      ´   _,. -"   ヽ ヽ       ヽ`ヽ、 | | >、 \_ノ !<、
         /       }  ヽ        ヽ、ヽノ ! `7`ヽ、 / -'

19 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:14:13 ID:Gq7BeRy2
        〉 <三三三三三三三三三三三三三三〉〉
      , <三三三三三三三三三三三三三三三7/´
    〈 〈三三三三≧.イ"´ ̄   ヽ.    、   i`Y/     ついでに蒼星石は、自身の『不思議な力』も
     \、三三=彳  i        、  '.   } ハ      見せてくれる事となった。
       ヽ./  i  ハ \ 、     ヽ  '   ! .ハ
       / /   i/ /i ハ.  ヽ \、   ヽ  .   i i i
        ′  i′' j ' \ ヽ丶、\ ┼f ┼ :! :i i     「じゃあお兄さん、その缶ジュース、ちゃんと持っててねっ!」
       i  i  / /_/_/__ ヽ \ >x≧f斗}  i i i
       l  |i / イノ∠_云ミ、  \、 イ_ぃハ 癶 / l i
       { ハノ´ 小 {_??゚}      弋__ノ イ i  l l
       V i  \ ヽ 弋ノ          /i !  | !  __
         i i   ハ\_     '      ; --、// i´i⌒l  .r=i
         i l   l ヽ      r _ ヲ    ィ.|l⌒l l  | ゙ー '|  | L.」 ))
         l ト、  ハヽ >  _   _. イ/j/|.ー‐' |  |   |  !   l
         |l  } ./   ヽ>ヽハ`¨´ _⊥.|"'|   l   │  |. i   」  ,. -‐;
              i/ , v⌒ -‐' {_.  ´   i  !   l  _|   l. |  | /  //
             ,孑'"´ /_ノ7ー 、.   │ l   l、'´j、|   | }  |,.{  / ))
           /) /  // ハ 「ヽ }    |__,.ヽ、__,. ヽ_」   レ'   ;   /




     / ̄ ̄\
.   ./   _ノ  ヽ         俺がしっかりと缶を手で固定させたのを確認した
    |    ( ●) (●)        蒼星石は、すっと目を閉じ、
    |      (__人__)  
    | u    `⌒´ノ        「こ、こうか?」
.   ヽ         } | ̄|
     ヽ     ノ |_|)      手を開き指をピッタリとくっつけ、手刀の様な形を作った後、
____/      イー┘ |      その場からニ、三歩後ずさり、その手を振り下ろし――
| |  /  /     ___/
| |  /  /      |
| | (    ̄ ̄ ̄⌒ヽ

20 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:14:57 ID:Gq7BeRy2
\\
 . \\
   ,. \\从/
.     そ   て
     ゝ,    そ
     "`/'^r  \
        .    \\
.            \\
                \\
                 \\キンッ
                  \\
                   ..\\
                    \\从/
                     そ   て
                     ゝ,    そ
                       "`/'^r .\
                             \\
                             \\
                             \\
                                  \\




     / ̄ ̄\
.   ./  u _ノ  ヽ       缶ジュースは、鋭利な刃物で切ったかの様に、真っ二つに割れた。
    |    ( ○) (●)      蒼星石の言う所の『見えない刀』が、彼女の能力だという。
    |      (__人__)      
    | u    `⌒´ノ      「マ、マジかよ…」
.   ヽ      u  }  プシュー…
     ヽ     ノ |_|)
____/      イー┘ |    俺は自分の手が色付きの砂糖水で濡れるのも気にせず、
| |  /  /     ___/    ひたすら目の前の驚愕の事実に、ただただ見入っていた。
| |  /  /      |
| | (    ̄ ̄ ̄⌒ヽ

21 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:16:15 ID:Gq7BeRy2
   ヽ 三_,. - " 三三三三__三三_三_三三三ヽ
    ,V´三三三,. -─' ´ :.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.ヽ 三 ノ
   |_三三 ,. イ,:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.::.::.:\:.:.:.:Y       彼らの話を聞かせてくれたお返し、
   l _三:: ':.:.:.:/:.:.:.:.:.:l!:.:.:.:.:.:.、:.:.:.:.:\:.:.:.:.ヽ:.::.゙       という訳ではないが、今度は自分の話をしてみた。
    ゝ三 |:.::./:.:.:./.:.:.ハ:.:l!:.:.: i -.- .、::ヽ:.:.:.:.!:.:.:|
     ヽll !:.イ::.!: ,. -,‐‐l:.i! :.: |  ヽ.:.:.::.:ハ:.:.:|:.:.:|       「へぇ~そうなんだぁ」
        Y:.|!:.:.|:.:|:./_  !:|!、:.:.|  ,._=ー,、:.:ヾl:.:.:l
      l:.イ!:.:.l.:.レ =_.、ゝ ゝ!   ォ::::リ !:.:.:..|:.,リ       俺がやらない夫いう名前だという事、自分の事、
      ∨ V:.:イ! フ..ノ        ̄"イ:.:.:レ        何故あの時間にあの場所を歩いていたかという事、
        _ゞ.:.:ゝ"    、      イ:.:/         今の仕事の事、昔バンドをやっていたという事、
       イ ハ:.:ハ!-、   ー '   ∠:l:/          でも今は家にギターの一本も無い様な生活をしているという事、
     /: :.l r'{ レ l ´`ー-、 __ イ  l!' `ーr⌒ヽ     もう何年も帰っていない地元の事、同じく何年も顔を見ていない親の事、
     , : : : :フ! ゝ. _      \ /      ヒ ハ    数年前までいた彼女の事、その彼女にフラれた時の事、
     |: : : : ゝゝ   _>     ノr===,、    iト、〈: : ヽ   新しく入って来た使えないバイトの事、そのバイトが自分の悪口を
    人: : : : : \r‐'/´  ̄ `<.li!   |:!    !|_ノ : : :.1   吹聴していた所を聞いてしまった時の事、そしてまた自分の事――
   /: : : : : : : :「ヽ./ o     ヽヾ_ ノj  ノ`!  } : : : :|
  (: : : : : : : : : :: ン'        /!| ̄ r'__,-_、フ: : : : :.|   ロクに話す知り合いもいなかった俺は、よっぽど溜まっていたのだろう。
  ヽ: : : : : : : : ::L7         / !| r ´. .! : : :!` ! : : : |   初対面であるにも関わらず、堰を切ったようにとにかく喋りまくった。
    \: : : : : :イ        /.  !| |ゝー!`:‐::!: :| : : : :!   聞き役の蒼星石が、一々物珍しそうに頷いてくれていたのも、それに拍車をかけていた。




       ____
      /      \         …やる夫の方は、本当に退屈そうな顔だったが。
     / ⌒  ⌒   \       
   /  (ー) (ー) /^ヽ      「ふう……」
  |   (__人__)( /   〉|
  \   ` ⌒´  〈 / ⌒^ヽ     やがて、空が少しずつ青く染まっていき、周囲を薄明かりが包み始めた。
            \ _ _ _ )    夜が明け、朝がやって来たのだった。

22 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:17:42 ID:Gq7BeRy2
       ___
     /   ヽ、_ \      「ふわあ~ぁ、もう朝かお。
    /(● ) (● ) \      それじゃ、そろそろ行こうかお」
  /:::⌒(__人__)⌒::::: \
  |  l^l^lnー'´       |    行く? 一体どこへ?
  \ヽ   L        /
     ゝ  ノ            俺が疑問を口にすると、
   /   /



           ,. -──-.. 、
          ,.'´. : : : : : : : : : : .`ヽ
        /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
      /.:.:/.:.:.::/.:.:.ハ.:.:.l.:.:.:.:.:.::.:.:l.:l.:.:.',   「さあ? とりあえず今日は、あっちの方に行ってみようかな」
       l.:./.:.:.:./.:‐/、 ',.:.ト、__.:.::l.:.:l.:l.:.l.:l
       l/l.:.{.:..レ'l/   リ `ヽ.:`T:/.:l.:.l.:l   
        l/ N{,r==ミ   r==ヽ:l/.:/.:/リ    と言って、俺が勤めている店がある方を指差した。
         l.:ト、' ' '    ' ' ' 〉:l.:/./
         l∧.ゝ、 ,r‐ァ _,..イ.イイノ      やる夫は軽く伸びをして、もう今すぐにでも
           ,.ィ´ ヽニノ <l/        この場を立ち去りたがっている様に見受けられた。
          /.:{j ,.イ介ト、  j}ヽ
            /.:.:{j レイXトV  j}.:.:.ヽ     
         /.:.:.:.ヽェェイXLェェイ.:.:.:.:.:.',     俺は、何故か、彼らとこのまま別れたくない、
        / `ヽ.:.:.:.:/Ⅹ〔.:.:.:.:.:.:.:.:.: ノ     別れてはいけないと、瞬間強烈に思った。
       〈   L.:.:.〔 {y}〕.:.:.「~~T´
        / `ヽjニ三三三ニ !,.ィハ       そして頭で考えるよりも先に、馬鹿な提案が口をついて出ていた。
         / 。゚/.:Lニ三三三ニレイ 〉
       ノ  /.:.:.:.:ヽニ」.:lニ/.:.:.!``1
     { `ヽ/.:.:.:.:.:.:.:、.:., .:.:.:.:.:l  l
     〈 ,.イ.:.:.:.:.:.:.:.:.:./.:.:.:.:.:.:.:.:.:!゚。 ト、
       /.:.:.:.:.:.:.:.:.:;.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.にニハ}
       〈.:.:.:.:.:.:.:.:.:ノ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./ハハJ
       `ー--‐'  ヽ.:.:.:.:.:.:ノ

23 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:19:12 ID:Gq7BeRy2
               / ̄ ̄\
              _ノ  ヽ、  \
            ( ●)( ●) u  |          「3日…いや、1日だけ待ってくれ。
            (__人__)      | ../}        それまでに、身の回りを整理する。
      _       ヽ`⌒ ´   u  | / /    __    だから…お前達の旅に、俺を連れて行ってくれ!」
   (^ヽ{ ヽ      {   u     ./ /  . / .ノ
 ( ̄ ヽ ヽ i      ヽ      / 厶- ´ /
.(二 ヽ i i |,r‐i    ノ.   ヽ /     /        我ながら、非常に馬鹿らしい懇願だったと思う。
  ヽ   /  ノ  /    r一'´ ー 、   ̄ ̄ ̄)    大の大人が、たかだが15、6歳の少年少女に、
   i   {   イ―イ /   .`ー―. 、__ .〈 ̄ ̄      お前達に着いて行って良いかと、頭を下げる。
   ヽ. `ー '/   /           /\ \
      `ー '  ̄ ̄!           |  ヽノ       傍から見ていたら、失笑すら漏れない程のお寒い光景だっただろう。




           ____
         /      \     「…それ以上は待たねーお」
        / ─    ─ \
      /   (●)  (●)  \   だが意外な事に、やる夫は少し眉を顰めただけで、
      |      (__人__)     |   俺の頼みをとりあえず引き受けてくれた。
      \     ` ⌒´   ,/
      /     ー‐    \   …てっきり気味悪がられるだけだと思ったのに、意外だ。



             __ __
         ,.. -‐':.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.::: 、
       /:.:.:.:.::.:.:.:.:.::.:.:.:.::.:.:.:.::.::.\        「そんじゃーね、やらない夫~」
       ':.:.:.:.:/:.:.:.:|:.:.l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:...:.:.ヽ
      ':.:.:.:.:::':.:.:.:.:.:.:|:.:.|:!.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:..:.',
     .'.:.:.:.:./:.:.://ハ:.:|:lヾ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l.:.:.::|      だが、この嬉しい誤算を逃す気は更々なかった。
     l:.:.|:.:.レナナ'‐  l:.ト! \:.__:.:.:.:|.:.:.:|
     |:.:.:ィ升Krォァ=、 ヾ!\´ _ゝ_ ` .:, .:.:.,'      俺は、いつの間にか呼び捨てにされているのも気にせず、
     |:.:.ハ:.:|  辷'ノ   丶 イt::_iヾレ:.::.::,       蒼星石に笑顔で大きく手を振って、自宅へと走って行った。
     |:.:.:.:l:.| ::::::        ゞ-' !:.:.:.:.:イ
     l.:i:.:.:.|ヽ.    _  ′ :::::  ハ:..:./        …少し走ったらもう息が切れてしまったので、
.     |:l:.:.:.|:.:.\     ̄    イ:::::/         たまたま通りがかったタクシーに手を上げて乗ってしまったけど。
     ヾ!.:,|ハ..:.:.|ゝ、  _ ...ィ/:.:.レ:j/
    _ _ _ゞ\ー- 、   |:./レl:.:..:/
   _レーハヽ     ヽォ_ー 、. |:.:/
   /::::::::::つ    /,イjくヾ\'_

24 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:20:59 ID:Gq7BeRy2
       ∩
       ||  / ̄ ̄\    無論、俺の本音としては、
       || /   _ノ  \   今すぐあの場で彼らに着いて行きたかった
      /〔|    ( ●)(●)  
      〔ノ^ゝ    (__人__)  「あっ、もしもし、やらない夫ですが――」
      ノ ノ^,-    ` ⌒´
     /´ ´ ' , ^ヽ      }   だけど俺は、これでも一応社会人。
     /     ノ'"\.  ⌒    旅に出るにしても、せめて最低限の
   人    ノ \/,_ __ノ   身辺整理ぐらいはしておかなければならないのだ。
   /:::::\_/l:::::::\ー-.,ノ、゙,
  ,/::::::::::ノ::::|_:::;、>、_ l|||||゙!:゙、-、_  まったく、本当に面倒な話だ。



          _____
      .。  /       \
      ┃ i         ヽ      本部に辞職の旨を一方的に伝え、
      .,-' ,‐i" _ノ  ヽ、_   i      アパートの大家に敷金はいらないから
    ./ //´l (ー) (ー)   i      家具を適当に処分してくれと交渉し、
    .l  '-;;;;l (__人___)    i      すぐ金になりそうな電化製品やCD,DVDなどを
    l │;;;;|,,'`⌒ ´    i       売り払い現金に換えたりなどをしていると、
    l  \⊥         ,i
    /   / iヽ,       /       「――という事で、よろしくお願いします、はい」
  .,、 i   .' /,‐'.l\    /l )),
  .l \  .i、 ム `‐、_` ̄ ̄´-‐'´ .ヽ    もう既に外はすっかり暗くなっていた。
  .l   `‐-'i _.-ヽ .,-、i  i,‐、 . /  .`‐、_ そういえばあれから、一睡もしていなかった。
  .l     .i   l l  l  l  l /     `‐、_
  .l     .l   .l/  ヽ ,'  .l/     ,  , `‐、_
 /l     .l      /‐-l  .     .,.' .,'  ,-‐`i
. i.,'     .l 、     l;;;;;;;;l  '    , '  ,.'  .,.'   .i




           / ̄ ̄ ̄\  
          ,r'⌒  ⌒   ゙i    (⌒ヽ:::::::::::::::::::::'''''-,,       やるべき事を全て終え、大量分泌されていた
          |( ー)( ー)  ゙i´ ̄ ̄ ̄\  ::::::::::::::::::::::::::::ヽ      アドレナリンが一旦収まった途端、急に眠気が襲って来た。
          { (__人__)   |         ハ::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ,
   ._____,{  `⌒ ´    i         ハ::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ,   昨日の服のまま、万年床に潜り横になった。
  ,r'      、────             ハ::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ,    あっという間に、俺は夢の中。
  `゛───(           / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄(________)

25 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:23:55 ID:Gq7BeRy2
                                            _, -‐
                                       _, -‐  ̄ ‐=ニ=-
              / ̄ ̄ ̄\           _, -‐  ̄‐=ニ二ニ=- _, -‐  ̄
             /         ヽ        ,~'_, -‐  ̄`ー-----― '
            /         丶    _,~'_ッ'-
            |     _ノ  ( ●)  .厂
            i     ( ●)  !  .⊃     次の日、ちょうど仕事を終えて帰宅している
             |       (__人_) /〉       ぐらいの時間に起きた俺は、風呂に入り、
           /∧     ,.<))/´二//⊃      汗臭く皺くちゃになった服を着替え、
         / : | ヽ  / /  '‐、二ニ⊃`      現金や通帳、カード、携帯等を持ち、家を出た
     , -‐'´: : : : :l   丶l    ´ヽ〉: : : : \
    /: : : : : : : : :|  /_/    __人〉|: : : : :|     「…さて、どこにいるんだろ」
   「ヾ: : : : : : : : : :l_/:_/ヽ.   /´     | : : : : :|
  〈\ : : : : : : : :,、: :/´∨/`ー'〉 |_| |: : : : :|     あの公園に辿り着き、周囲を見渡す。
   !: : :ミヽ: : :/ `y′.: ',ゝ、_/     l: : : : : :|     辺りには、人の気配すら無い。
   ! ⌒ヽ: : : :.ヾ/: ://: : : :|      l: : : : : :




        / ̄ ̄\.
      /    _ノ \.........:::::::::::.... .......         「やはり…ダメだったか」
      |::::::: :  ( ●)) .... .........::::::::::...r‐ ' _ノ.
     . |:::::::::::::  (__ノ_) .... .........::::::::_ ) (_      そりゃそうだ。
       |:::::::::::::    `⌒ノ ..... ......:::(⊂ニニ⊃)      こんな落ち目の冴えない大の大人となど、誰だって旅をしたくはない。
     .  |:::::::::::::::     }  ..... ......: ::::`二⊃ノ.     
     .  ヽ____    }  ..... ......: :::: ((  ̄       おそらく彼らは、内心気味悪がりながらも適当に話を合わせ、
        r'ニニヽ._\. ノ.. ..... ......: ::::::  ;;.         その後何処かに去ってしまったのだろう。
      r':ニニ:_`ー三`:く._           [l、.
    /: : : : : : :`,ニ、: :_:_;>      /,ィつ        後に残されたのは、職と家を失った、一人の元居酒屋店長だけ。
 .   /: : : : : : : : / : : : ヽ\     ,∠∠Z'_つ   
   | : :.:.:.:.:.: . :/: : : : : : l : ヽ.   / .r─-'-っ        やはり、あの時着の身着のままでも良いから着いていけばよかった。
 .   |:.:.:.:.:.:.:.:.:.,' ''" ̄: : :l: : : :l   /  ):::厂 ´
    |:.:.:.:.::.:.:.:l -─-: : /:_:_:_:_l / ̄`Y´           …後悔しても、もう遅いのだけど。
 .   |:.:.::.:.::.::l.__: : : :/::: : : : :l/⌒ヽ: :
    |::.:::.::.::l: : : : : : /:::: : : : : |: : : : ゙/

 
26 どこかの名無しさん 2009/10/03(土) 12:24:27 ID:6R6wX4rY
居酒屋店長だったのか
27 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:26:09 ID:Gq7BeRy2
    /::::::::::::::::::::::::::::.....      |
   /::::::::::::::::::::::::::::.... _ -‐ 二>‐- __
.  /::::::::::::::::::::::::::::_ -‐'´_ -‐ ' ´          ̄ヽ
 /::::::::::::::::::::::; < , <              /
.〈:::::::::::::::::::/  /:::::::::...      _ - ‐ - 、 〈
 \::::::::/  /:::::::::::::.... , ‐ ' "´        `\
   \/  /:::::::::::.. , ' ´     l     \     ヽ
    `>'::::::::::.  /     . .l  |  i      ヽ    ` 、
    /:::::::::. /      |  .:::/ /、 |\  , -‐ ! :.. 、 !
.   /::::::::. ,.´:::::::.    | .::// _, V  _メ、_ i  ::: ハ !     「ほら、やっぱり来てるじゃん!」
   /:::::::.. /::::::::::::::.    |ー≠‐'´__ ヾ、 -≦ュ| ::::::イl l|     
   |___」::::::::::::::::::.   .l/_≦==z ヽ  {ミカ ! .::/リ ′
       |::::::::::,:::::::- ' ´ト、 \_弋;ノ      ̄ |'´|         俺が入って来たのとは反対側の入り口から、
       ∨:::::::':;::::::::::. ヽヽ   ̄     .l  |. |         蒼星石がのんびりと歩いて来た。
       ∨::::::::':;::::::::::. `N    r-─ァ   / i、|
          ヽ::::::|::':;::::::::::.. ヽ    ` ´  /. / `
         \l、::、':;:::::::::. i     _, イ::;、/           その時の俺が浮かべていたのは、
           `l/∨ヾ、:./     l´    V l/           満面の笑みか、それとも困惑しきった表情か。
               r-V _    |__
         rニ´ ̄ヾ´    `>、_ソ_`ー一'、⌒i、
        _)/´ ̄`ミ、       / 只__ヽ   ヽ八_
          ( i::::::..  )ト、   / /,仆、ヽ\   ヽ )
.        _)|:::::.    Yゝ / / i ハヽ__〉 〉    }(_
       ( |:::::.    }(_ 〈 〈_/ /l .ト、_/     | _)
         )|:::::.     | ) \_ノ|;| |;|       |(



     ____
   /      \ ( ;;;;(
  /  _ノ  ヽ__\) ;;;;)    「マジかおあのおっちゃん、
/    (─)  (─ /;;/     本当にきやがったのかお…」
|       (__人__) l;;,´|
./      ∩ ノ)━・'/      笑顔の蒼星石とは対照的に、やる夫の方は、
(  \ / _ノ´.|  |        まるで小麦粉で練った糞を口に突っ込まれた様な渋い顔。
.\  "  /__|  |
  \ /___ /        しかもタバコって…お前はどう見ても未成年なんだが。

28 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:27:36 ID:Gq7BeRy2
         ____
       /      \
      / ─    ─ \     「まあやる夫としては、やる夫達の足さえ引っ張らなきゃどうでも良いお。
    /   (●)  (●)  \     後、自分の飯代ぐらいは自分で稼げお」
    |      (__人__)     |    
     \    ` ⌒´    ,/
     /⌒ヽ   ー‐    ィヽ      やる夫達から提示された条件は、意外にも簡単すぎるものだった。
    /      ,⊆ニ_ヽ、  |     
   /    / r─--⊃、  |     金づるにする価値もないと判断されたのは、
   | ヽ,.イ   `二ニニうヽ. |     嬉しいやら、とても情けないやら。




           ,. -──-.. 、
          ,.'´. : : : : : : : : : : .`ヽ
        /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ 
      /.:.:/.:.:.::/.:.:.ハ.:.:.l.:.:.:.:.:.::.:.:l.:l.:.:.',    「それじゃ行こっか、ない夫っ!」
       l.:./.:.:.:./.:‐/、 ',.:.ト、__.:.::l.:.:l.:l.:.l.:l
       l/l.:.{.:..レ'l/   リ `ヽ.:`T:/.:l.:.l.:l
        l/ N{,r==ミ   r==ヽ:l/.:/.:/リ     いつの間にか、蒼星石には呼び捨てにされていた。
         l.:ト、' ' '    ' ' ' 〉:l.:/./      しかも妙に略されてるし。
         l∧.ゝ、 ,r‐ァ _,..イ.イイノ 
           ,.ィ´ ヽニノ <l/         だがその事に対し嫌味を一切感じないのは、
          /.:{j ,.イ介ト、  j}ヽ       彼女の行為に悪意というものが見当たらないからだろう。
            /.:.:{j レイXトV  j}.:.:.ヽ
         /.:.:.:.ヽェェイXLェェイ.:.:.:.:.:.',      …決して俺が、変態性癖の持ち主という訳ではないぞ。
        / `ヽ.:.:.:.:/Ⅹ〔.:.:.:.:.:.:.:.:.: ノ
       〈   L.:.:.〔 {y}〕.:.:.「~~T´
        / `ヽjニ三三三ニ !,.ィハ
         / 。゚/.:Lニ三三三ニレイ 〉
       ノ  /.:.:.:.:ヽニ」.:lニ/.:.:.!``1
     { `ヽ/.:.:.:.:.:.:.:、.:., .:.:.:.:.:l  l
     〈 ,.イ.:.:.:.:.:.:.:.:.:./.:.:.:.:.:.:.:.:.:!゚。 ト、
       /.:.:.:.:.:.:.:.:.:;.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.にニハ}
       〈.:.:.:.:.:.:.:.:.:ノ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./ハハJ
       `ー--‐'  ヽ.:.:.:.:.:.:ノ

29 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:29:07 ID:Gq7BeRy2
           / ̄ ̄\
         /   _ノ  \
         |    ( ⌒)(●       「それじゃあ、行こうか!」
.         |      (__人__)
           |,      ` ⌒´ノ      
          │         }       二人から、着いて行く理由を一切聞かれなかったのは幸いだ。
           ヽ、      ソ
          イ斗┴r┐` .;         何せ、俺自身にすらなかなか理屈では説明出来ないのだからな。
    / ̄`ーゞ、  / |__ 〈ー─r、
   /     \ ∨\  |,ベ._ / |
   {    . : : : . ヽ>ー\[ ̄{ 〉\|、_
   |        `丶}\  __\_]~∨'\`ヽ
   :|   ._    \_}/r‐-}\ ゙,`''く l ゙,
    ト、: :./ / ̄`` ぐ└f'二)::{  ',  | !,ゞ┐
    `、∨ ´ ,.、-''"~ ̄}_{‐''く:::{_  ', _|_|_,rー'、_
     }{ / _、-'''"~ ̄{_\;;;;;j;><;:::::\:::ヘ}\
      }∨: /  _、-''゙~ ̄ ̄     \::::},之_ ヽ
       〉∨   /           ,.、イ;;ノ_   `ヽ}
     {: \,/\  -‐ '"   /` ̄      :.:}



       ____
     /     \      「何いきなり場を仕切ってんだお、おっちゃん
   /_ノ  ヽ、_   \     おっちゃんはただ、やる夫達に黙って着いてくれば良いんだお」
  /(●)三(●))   .\ 
  |   (__人__)      |    …まだおっちゃん呼ばわりされる歳では無い筈なんだけどなあ
  \ ヽ|r┬-| /   /
  /   `ー'´      \

30 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:32:07 ID:Gq7BeRy2
          / /.::;  .:; .:.:::;::/i .:.:.:.:.:::::::::::::::::.:.:.``ヽ、
        / /.:::;′,.::/.:.::://.::l::i .:.:.:.:::::::::::i:::i .:.:.:::::::.:.`ヽ __/
        ,' /.:.:;′/:/.:.:::/:/!::::|::ト、 .:.:.:.:::::::|::|::i .:.::::::::::::::.:「
         l/.:.::;'.:.:/./.:::ノ::/ |:::::|::ト、ヽ.:.::::::|:::|::|::| .:.::::.:::::::::::|    「こらこらやる夫、そんな事言わないのっ」
        |:l:::::l::::|:::レ':ナナヽ|:::::l::l\ヽ.:‐:十:|十!、.::::::::::::::/
        lハ::l::::|:::レ'´ ‐- |:::/l/  \::::::|:::|::|::| .:.::::.:::|:./
            ',l::::|:::|  _  |/       `` ``7!.:.:::::.:::|/      …最初に俺は、「自分はこの世界の主役ではなかった」と言った。
           ト、ト::ト、´ ̄`ヽ     ‐==ミ、 ./:!:.:.::::::::|       別に世界と言っても、どこぞの大国の大統領になりたかった訳ではない。
            ヽ:|:::|::!             /./.:.:::::::::;′
              `l:::|::ト、    _`_      /::/.:::::::/l/        家庭…近所…職場…バンド…世間…
           |:::!.l.:::>、     `   ,..イ::/::::::::/          そんな、俺にとっての『世界』の主役になりたかった、
           |.::::::/:::/ニ>.--‐ <ニ7⌒:::::/   _ _       けどなれなかった、たったそれだけの、つまらない話だ。
        ,r‐r‐- 、|::::/´l/  L_      /   |::/ ̄`ヽ   `」
       ノ:いぃ ̄|:/ヽ     `ーrrrt7′  l/    V ̄``




      ___
    /     \       「だってお~ ただでさえ着いてくること自体がメンドウなのにお…」
   /  _ノ '' 'ー \
 /  (●)  (●)  \    だが、彼らは違う。
 |      (__人__)    |    矮小且つ個人的な世界の主役にすら
 \      ` ⌒´   /    なれなかった俺とは違う。

31 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:34:15 ID:Gq7BeRy2
         / ̄ ̄\
       /   _ノ  \     「ははは…まあ、今後ともよろしくなんだろ」
       |    ( ⌒)(⌒)  
          |     (__人__)    普通の人間にはない、異質の能力…
        |      ` ⌒´ノ    自販機荒らしなど悪い事とすら思っていない様な、
          ,|         }     俗世間の常識とはかけ離れた価値観…
       / ヽ       }     
     く  く ヽ     ノ      この二人はまさに、『世界の主役』だった。
       \ `'     く       少なくとも、俺にとっては。
        ヽ、      |
            |       |



     /  {    \                        /   /  /ヽ
     ヽ  ヽ    ヾー 、__                _,. -‐ '   /  / /
      \  \   \  ` ー-- 、___,. -ー '"     _/ ./  /
        \  `ヽ、 ヽ、                 ,. - '  /   /     「よ~し、それじゃあ出発だぁ~っ!!」
         \   ` ー-`_ー-- 、_     _,._-ー '_ ,. - '´    /ヽ、
           !ヽ,       ̄` ー--- ̄- ̄-─ ' "´       /  ヽ、
           |  ` - 、                     ,. ヾ、    |     世界の主役どころか、端役にすらなれなかった俺。
           | ,. - 、! ` - 、__           _,. -ー' ´  \\   !
           ソ   ヾ      `ヾ ' ー--丶 ̄ヾ`' - 、.   /   ヽヽ |     だが、『世界の主役』に成り得る可能性を大いに秘めいている
          /     ト       l      \ \  `'フ,ィ7´7 ̄ ̄ ヽ!    彼らに着いて行く事で、何かが変わるかもしれない。
         /     !ヽ     ̄ヾ ̄ ' ─- 、\ \  イ:ン, !、ヽ   '
         /     / \      ヽィ'〒.'.:テヽ  ` ー-ゝ `´ l ヾ`ヽ、     理由など無い。理屈などとっくの昔に抜かれている。
   / `ヽ/       ∧、  \\    \:.:'''.:ノ      ヽ  /   \ `     論理性なんて端からある訳もない。
_,. r'     ヽ    /‐-ヽ、  \\   `゙\"´       /
  ヽ      !   ∠     ` ー-ヾ、\   ヾ、   r_‐',イ、|-、.
   ヽ      t'"ヽ >´ ̄ `ヽ    `ー\   ヽ -- ー'  ヾ、ノ ヽ、         ただその時の俺は、本気でそう思ったのだった。
    ヽ    ノ / ´       !      r ヽ  ヽ-r─-- 、_.ヽ`ソ \
、   /ヽ - '"ノ゙     _ ,. -‐'       ! | \ \戈、`- 、 `ヽ、__ \_
 ヽ '"    /     / ,> ヽ        ! |  ` ヾヽ、`ヽ、 \ l ヽ  ヾ、
      ´   _,. -"   ヽ ヽ       ヽ`ヽ、 | | >、 \_ノ !<、
         /       }  ヽ        ヽ、ヽノ ! `7`ヽ、 / -'

32 ◆.9jeLz5xws 2009/10/03(土) 12:36:21 ID:Gq7BeRy2



                 こうして俺達3人の、奇妙な旅は始まったのだった。



                               / ̄ ̄\
           ,. -──-.. 、           /   _ノ  \
          ,.'´. : : : : : : : : : : .`ヽ         |    ( ⌒)(⌒)
        /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ          |     (__人__)          ___
      /.:.:/.:.:.::/.:.:.ハ.:.:.l.:.:.:.:.:.::.:.:l.:l.:.:.',        |      ` ⌒´ノ        /   ヽ、_ \ 
       l.:./.:.:.:./.:‐/、 ',.:.ト、__.:.::l.:.:l.:l.:.l.:l          ,|         }        /(● ) (● ) \
       l/l.:.{.:..レ'l/   リ `ヽ.:`T:/.:l.:.l.:l       / ヽ       }      /:::⌒(__人__)⌒::::: \
        l/ N{,r==ミ   r==ヽ:l/.:/.:/リ     く  く ヽ     ノ       |  l^l^lnー'´       |
         l.:ト、' ' '    ' ' ' 〉:l.:/./        \ `'     く        \ヽ   L        /
         l∧.ゝ、 ,r‐ァ _,..イ.イイノ           ヽ、      |           ゝ  ノ
           ,.ィ´ ヽニノ <l/                |       |         /   /



                                                     …続く。




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35 どこかの名無しさん 2009/10/03(土) 12:50:25 ID:Gy3GOsyQ
ツカミは面白かった、続きまってるよー

39 どこかの名無しさん 2009/10/03(土) 15:20:40 ID:w.DQA44k

なかなかおもしろいw


272 『やらない夫は人生のまとめに入るようです 1話』の前後エントリー2010年06月05日 20:15

纏め作品一覧やらない夫は人生のまとめに入るようですの目次





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