ショートカット ・第二章 その１ ・第二章 その２ ・第二章 その３ ・第二章 その４

二２．
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 N
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 Δ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　─┼─
　 ー-..、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 │
　　　　 `ｰ..、　　　　　　　＿＿　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│
　　　　　　　）''''"丶---‐''　　　' ､＿..-..＿＿＿_＿＿＿___....-....＿＿＿＿＿__..-
　　　　　 ／　　　　　　　　　　　　◎　　　　　　　　　　　　　　　/
　　　　 ／　　　　　　　　　マリアンデール　　　　　　　 　 　 _..ﾉ
　　　 ./　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _..-‐'"
　　　 ヽ、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＜
　　　　 ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_..-′
＿__　　　ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヒ二　　　　　　　　　　　　　　 __..-ｒ=ｒ
￣ﾞﾞﾞﾞ＼　　!　　　　　　王都カーディナル　　　　 　 丿　　　　　　　　　　　 _=´　　
　　　 　ゝ､ﾉ　　　　 __..-=====＿◎　　　　　　　　　'ゝ､＿＿　　　　　　 _ｙl''´
　　　　　'广`ｰ'宀'~~　　　　　　 ""ヽ､、　　　　　　　　　　　 ヽ　　　__=l广　　　　　　　
　　　　　 ヽ　　　　　　　　　　　　　　 　ﾞ'+=================――=n-＿＿＿
　　　　　　く　　　　　　　　　　　　　　　　テレジア河 　　　 ヽ---..、　　　　　　　　￣
　　　　　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ゝ
　　　　　　｜　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/
　　　　　　｜　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　　　　　　　
　　　　　 ノ　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ┌────────┐、
　　　　　 '、　　　　　　　　　　　　　　　　　│　ローゼン王国　.....│＼
　　　　　　'、　　　　　　　　　　　　　　　　 └────────┘　　`ヽ　　　　　　
　　　　　　 │　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 `ヽ



王城を後にした二人は、その足で町を出ていた。

二３．
カーディナル城塞から徒歩十分、街道から外れたテレジア河畔を見回したやらない夫は
ここらで良いだろ、とジュンを振り返る。



　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　／ ヽ､.　_ノ　＼
　　　　　　　|　 （●）（●）　|
　　　　　　　|　　（__人__）　｜　　　　　　　　　　「ここらで良いだろ。
　 　 　 　 　 |　　 ｀ ⌒´　　|　　　　　　　　　　　早速始めようか」
　　　　　　　 |　　　　　　 　}
　　　　　　　 ヽ　　　　　 　}
　　　　　　　　人＿__＿_ノ"⌒ヽ
　　　　　　／　　　　　　　　　　　＼
　　　　　/ 　　　　　　　　　　 へ　　＼
　　　　 （　　ヽγ⌒)　　　　　| 　＼ 　 ＼



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,／/: :ヽ: : Y: /:､: : : : : : : :＼: : : : : : : : ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／: :/: : : ∧: : ;′1: : : : : : : : : l: : : : : : : : : :∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∠二ィ: : : : l::∧: :!:::::l: : : : : : : : : :|: : :ヽ: : : : : : :∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /.: : : : :|::::::∨::::::l: : : : : : : : : :l: : : : ∨: : : : : :∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,r': : : : : : 「¨¨｀""¨1: : : : : : : : : l: : : : : ∨: : : : : :∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |! : : : : : : l 　 　 　 l: :;ｨ: : : :∧ : | : : : : : ∨: : :ヾ : ∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｲ!: : : : :i: : !.　 　 　 !:/ l: : :/　ヽ: ﾄ、 : : : : ∨: : : :＼;ﾊ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/l: : : :,∧:厶-‐､　　ﾚ'　!‐ナ―-ゞ! ヽ、: : : :i: : : : : :l ヾ
　　　　　　　　　　　　　「よろしく」　　　　 　 !.:!: : ;ｨ: : ト1===ミ:、 　 l.:/彡＝=｀=ﾐ:､ヽ : : l.: : : : : |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .l.;ｲ : ;ハ ｲl:iﾞ '乍ミ1L..../;」i　ｨ卞ぅｘ､ ! ヽﾄ、:l: : : : : :|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .ﾚ'l: :/　 ﾘ |:|　 ﾋ;ﾘ |「￣"ﾞ1l　　ﾋｚﾘ｀ l l｀ゞ- ､.: : :lヽ:.!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾚ'’　　 ヾ ＿__ノ.'　　　ヾ: ､＿＿.ノﾉ　´rﾊ !:、:| ヾ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i￣￣ i　　　　　 ￣￣￣　　ムｿ:.;ﾊﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ､　　　　　　　　　　　　　r彡;〃´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　 ヾﾆフ　　　　 　 ﾉﾚ'´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　 　 ´ ,L. -‐ ､_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ . _　，　 　, ィ´　　　,.､二ミ:ｫ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,.-‐=ﾆj,.ィ'´　　 ／￣ "¨ヾ＼L、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _r'´　 レ"　　 _ﾆ=′　　　 二ﾆ= 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　rく ヽ 　 j　,-=ﾆ¨ 　 　 　 イ=‐- ､　 　 >"

二４．
手ぶらのまま、勢いにつられてここまで出てきたジュンは
修行の旅と言うから何処まで行くのかと不安に思っていたのだが、
意外に近場なのでなんだ、と少し気抜けしてしまう。



　　/ ／.:/.: 　 i.:.:.:l.:.:.:l.:.:.:/ l.:.:.:.:.:.:｀`´.:.:.:.:.:.: |.:.:.､.:.:.:.＼
　 　 l.:.:./ .:.:　.|.:.:.:l..:/l.:.:/　|.:/l.:.:.l.:l.:.ﾄ､.:.:.:.:. |.:.:.:.＼ ￣
　　./.:./ :. :.: :|.:.:.:l/ .l.:/　 |/　l.:.:N.::.|__＼.:.::|.:.:.:.:.:.:l
　 /.:./ .: .:.:.: :|.:.:.:仁l/二ﾆ　　l.:仁l:/=== ヽ:!.:.:.|＼|　　　「こんなところでやるんなら、
　 l:/.l.:.:.:.:.:.:. .ﾄ､.:.l ﾃ示ﾐヽ1 Ll/ l 「 戍ﾃﾐ　lﾄV　　　　　　家でも変わらないんじゃない？」
　　　l.:.:/l .:　ﾊ:lN{　辷ｿ ﾉ ! 「￣l |弋辷ｿ　l1 l
　　　l:/　l.:/　　 lL_ ＿＿ノ　 ,　　ヽ _二 ノ.:.:.
　 　　 　 l/　､__',　　　　　　　 　 　 　　 /　.:.:.
　 　 　 　　　　　ヽ　　　　　r‐‐ｯ　　　/.
　 　 　 　　　　 　 入　　　　　　　 ,..ｲ.:.
　 　 　 　　　.　'´　i.:.＼＞ -- ＜/
　 　 　 　／　　 　 |.:.／＼　 　 ノ.:



だが、そうでも無いぞ、とやらない夫は腕を組んだ。



　　　 ／￣￣＼
　　／　　 _ノ　　＼
　　|　　　 （ ●）（●）　　　「町中は人や雑音が多すぎる。
　.　|　　　　 （__人__）　　　　気配を探るのを学ぶには向いてないし
　　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　それに―――」
　.　 |　　　　　　 　 }
　.　 ヽ　　　　　 　 }
　　　 ヽ　　　　　ノ
　　 　 i⌒＼ ,__(‐- ､
　　 　 l ＼　巛ー─;＼
　　　 　|　｀ヽ-‐ーく＿）
　.　　　 |　　　　　　l

二５．
　　 　 ＞'´　／　　 ∧　 　 ｜　　　　i|　ヽ.　 　 　 ＼
　　／ 　 ／ 　 　 /::::ヽ　_,斗:.:.:.: : 　 |　　 !　　:...　　 ＼
　 〉 　 　　　　::ー‐^´¨　|:.: : !:.:..　ﾄ､　 |　　 :.:.:...　: :..｀ー-､
　 |　　　| 　ｉｌ　　::|　　 　 　 ! ::∧:. :. 　,=‐ｉ　　　:.:.:.:.:...:.:.:..:.:.／
　 /　.:.:.:.:|　 i| 　 ::| 　 　　　 | / ,ｨ|,.イ´__ ∧　 ..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／　　　　「それに？」
　/ :::／イl|　 ｌ|　 ::|=､＞ｰ=､ ｉ′|:rレ弍¨ヽ ﾄ :.:.:.:.:.:.:.:.:.／
./::／　 /　　　|　　|´戈¨Ｔ |ﾄ==､||　弋__ソ‐|/.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼
ﾚ'゜ 　 /　／　 iヾヽ! 辷_ソ｣|　　 ヽ=＝＝=='　ﾏヽ.:.:r-‐'´
　　 　 レ'　ﾚ'〉　! ヾﾆ==＝ ′〈　　　　 　 　 　 'ノ::;;;>
　 　 　 　 　 ￣ヾﾇ、　　　　　 ｀　　　　　　　,/‐'´
　　　　　　 　 　 ￣ヽ　　 　 　 ー‐　　　 　 /
　　　　　　　　　　 　 ＼　　 　 　 　 　 _, ィ´
　　　　　　　　　 　 　 　 ｀¨ﾆt-　　-‐'　ﾄ-┐
　　　　　　　　　　＿　 　/´iイ　　　　　 |/　ヽ―-- ､__
　　　　　 　 　 ／i　 ゞ7″ | ′　　 　／　 　 |　　　 　｀ヽ、
　　　　　 　 ／　 i　　/　,ﾍ |＿___,_／ |―､　 |　　　　/　　ヽ.



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　／　 ヽ､_　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 （●）（● ）　　　|
　　　　　　　　　　　　　　「ギャブレットの間者も　　　 　　　　　 （__人__）　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　ここなら潜みようがないしな」　　 　　（　　　　　 　 　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　{　　　 　 　 　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ⊂ ヽ∩　　 　 く
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 | '､＿ ＼　／　 )
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　|　 |_＼　 “　.／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ヽ､ ＿_＼_／

二６．
　　　　〃::::::::/::::ヾ:::i::::ヽ:::::::::::::::::::::ヾ:::::::::::::::::::＼::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　／:::::::::/:::::::::i:::｀:::::::}::: ﾄ:::::::::::::::::::i:::::::::::::::::::::::ヾ:::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　/:::::::::ｨ/:/:::::::: L:＿ ∧:ﾊ::::::::::|ヾ:: l>､::ﾐ､:::::::::::::::V:＿:::::::::::::::::::::::::i
.　/:::／ /::/::::::::::::ﾊ　　　 il　i::::::: l　刈　　≧ﾐ> ､::::::::<　 ヽ::::::::::::i＼ |　　　　　「間者だって？
../／　./:::::i::::::::::::ﾄ:ﾊ 　 　 　 l::::://_ ィ=彳司 ||＝=￣｀{　i }:::::|＼ゝ. ｀　　　　　　まさかそんな大げさな」
　　　 i ::::::ﾊ:::::::::::|＼ゝ＿__　 |:/　r/ ´ ｲt jﾊ ||　　　　ﾉ //::::::i
　　　 l:::::::::::ヾ:::::::|::::::ヾ´ ≧ミ､ィ'''ヾ　　 ゞ┴ﾉﾉ　　　　｀./:::ノ｀
　　　 |::::::／i::＼:::V::::彳 ｨ芯､}}　　 ｀ミ＝＝''　　　　　r'´:/
　　　 |:::/　　|::::::>:K ヾ､　_ゞノ　, 　　　　　　　　　　　 |／
　　　 |/　　　ヽ/　ヾ　｀ーt　　　｀ _　ノ ﾌ　 　　　 /　 |　＿＿＿＿
　　　　　　　　 ｀　　　　　　ヽ　　　｀ー´　　　　　　 ／￣　　　 _　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　｀　 ､　　　　　ノ　　/　　　　 ／　￣￣ ヽ＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＞-イ |　　〃　　 .／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /￣il　 /／　／-= ' ´　 ＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　 V/ ヽ=.//　　　／￣￣￣＞＝-　､



大げさすぎるよ、と笑ったジュンに、しかしやらない夫は至極真面目に言った。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /ﾉ　 ヽ､_　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. （●）（● ）　　　|
　　　　　　　　　　　　　　「居たぞ？　　　　　　　　　　　　. （人__）　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　城を出た時から　　　　　　　 　 |⌒´　　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　町の門をくぐる直前まで　　　　 |　　　 　　　　/
　　　　　　　　　　　　　　　茶色い服を着た男に　　　　.　 ヽ　　　　　　/
　　　　　　　　　　　　　　　付けられてた」　　　　　　　　　　 ヽ　　　　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.>　　　 <
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　　 |

二７．
: : : : :: : :、: : : ::::::,lll,,,,,,,,,,,,,__
: : ::_、,,､‐,l,: : : :,,ll,i,_ﾞﾞﾞllllllil,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,__
,,llll,,,lll,,i´,ll,ﾞl,、:,illilllllli,l,: ,lliillﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾟ”￣
lllil!llilﾞ゜:lllllllilll,.:llllllllllllllll::llllll!llii,,l,i､
l!lilllﾞιllllllllllllllillllll!lllllllll!,lllﾞ!liill!llllil,i､
illll!`lll:,lllllll!ﾞﾞlﾞ!!ﾞlllllﾞ!lllllll,llll,,ﾞ!lliﾞllll!llil,i､
!l】l::lllﾞllllllll:: : : : : : :|llllllllllllil,,ﾞlli、ﾞﾞlllll,,、
ilﾟ,ll:lll|llllllll: .: : : : :.::|'lllllllllll!lili,ﾞlll　　ﾞﾞﾞ!l,,、
lﾞ,lllllll|llllllll:.､:::x,、:､:|'llllllllll.lllllli,lli,　　　 ﾟﾞ=:
,,llll!,lllllllllll: : : : ﾞ'N,,,.,lllllilll|:l!ll!lli,li,　　　　　　　　　「ええっ！？
illlilil!llllllllll、::::::::.,,.::_ll!,lﾞ'llli,"ll｀ .'!li,,
llilllll:ﾞllllllllll､､:､:ハ::ﾞi!ﾞ,l｀|lli"ll　　　　　　　　　　　　全然気がつかなかったよ」
lllllll:_,ﾞllllllll〆":'│::.ﾞ.:｀､.＝,｢
!|llll'｀::'!llllﾞli､丶'|,!::::::::::::::i!lﾞ,!
::)ll′: :ﾞ!llﾞﾞl: : ::|:．: : : : :`|::l、
、'l、:: : :ﾞ!!::｀::、U,、,:、..,i,|、ﾞi,、
、::｀::: 丶丶丶:::ﾞ!i{h,､_,ｼ｀::::::.|
: : : : : : : : : : : : : : : : ｀: : : : :lﾞ
: : :｀: : : ::｀: : : : : : : : : : : : :/
: : : : : : : : : : : : : : : : :: : :: ,″
: : : : : : : : : : : : : : : : : △:′
､、: : : ::::::::｀:::::::::::::::::: ,,-｀
: ｀"'ヽ,,: : : : : : :｀:_,,r,i´
: : : : : :ﾞ・: : : ::‐'''~｀



　　　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　 rヽ　　／　ノ　　＼ ＼
　　　　　　　　 i　!　　|　 （●）（●）　|　　　　「数日もすればジュンも分かるぐらいになるさ」
　　　　　 r;r‐r/　|. 　|　　（__人__）　 |
　 　 　 〈_L (｀ヽ .}　　|　　 ｀ ⌒´　　ﾉ
　　　　　l｀ （ ｀`/　.　 |　　　　　　　 }
　　　　　ヽ 　　l　　.　 ヽ　　　　　 　}
　　　　　　|,. 　 l　　 /⌒　 　ー‐　　ｨ ヽ



何を狙っているのかも分からないし、手の内を知られるのも面白くないしな、とやらない夫は
それから鎧を外して身軽な格好になると、木刀を二本取り出して一方をジュンに放り投げる。

二８．
　　 ／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　 （ ●）（●）　　　「ジュンは基本は十分だろ。
.　|　　　　 （__人__）　　　　むしろどうして次の段階に進んでなかったのか
　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　分からないんだが」
.　 |　　　 　　　　 }
.　 ヽ　　　　　 　 }
　　 ヽ　　　　　ノ
　　　.>　　　 <
　　　|　　　　 |
　 　 |　　　　 |



今朝の訓練で彼の実力の大体は把握できていたのでそう言うと、
あー、と呟いたジュンは少し困ったように答える。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　Λ／　〈 へ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヘ|　　 　　　　 ,＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　∠　　/　　　〉ヽ　 ￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　ノ〈 |＾＾| /＼ﾄ､　　ﾄ､l
　　　　　　　　　　　　　「父さん、手加減が下手なんだ、　|／| .ﾊ|__ |/＿__　ヽ　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　堅物だから」　　　　　　　　　　　 　　　l/　　|‐|　　 |―ヽ＿|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 | ￣ c　￣　　　6 l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　ヽ (＿＿＿_　　,-′
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ ＿＿＿ ／ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ ＼∨／　l ＾ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　|　　　　　 |　　|


　　　 　　　　　 ／￣￣＼
　　　　 　　　／　_ノ　 ヽ､.＼
　 　 　 　 　 | 　（●）（●）　.|　　　「あー、なるほ………いや、
　　　　　　 　!　　（__人__）　 |　　　　堅物は関係ない？と思うが」
　 　 　 　 　 , っ　 ｀⌒´　　 |
　　　　　　 /　ミ）　　 　　　/
　　　　 　./　ノゝ　　　　　/
　　　　 　i　ﾚ'´　　　 　　ヽ
　　　 　　|　|／|　　　　 |　|



それで、模擬試合とかがやりづらくてね、と肩をすくめた彼に、
苦笑いのやらない夫もどう言葉を返せば良いのかいまいち分からない。

二９．
話題を戻そうと眉を動かした彼は、目の前のジュンと先程手合わせしたシンジとを頭の中で比べながら、
まず不足している部分を説明しようと口を開いた。



　　　　　 　 　　 　 /|,　-──---,　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 r:::::､　 ＿
　　　　　　　　　　〈　　. :.::::.:.:.:.｀`く　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 r:::::::::::ミ´::::::::::ヽ
　　　　　　　　 , ..-' .:.:.:::::::::::::::::.:.:.:. ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 {:::::::::ﾐ::::::::ヾ:::::::::ヽ
　　　　　　　∠.:／.::ﾊﾊ|:::::::::1::::.:.:.:.　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ﾉ:::::::Yﾍ::::､::::j:::::::::::::)
　　　　　　　　ム:从r'''''|/Ｎ:::|.;;;!;;;;;;;「￣　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（:ﾊ:::::(　j:::::}::::}:::::::::::::ゝ
　　　　　　 　　l/N￣|__r─|/ヾ|;;;;lヾ|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 〈::ｨ::,ｨ　ヾNゝﾐ::::::::::从
　　　　　　　　　 `|￣ﾉ└‐┘｀`ウ'ﾞ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾈjfｦ　 ( fｦYﾊ ^〉/
　　　　　　　 　 　 ＼ ー' ,..ィ二［　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　r　 　 　 　 <__
　　　　　　　　　　　　￣r'"´,. -‐L_　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼ﾏﾕ　／ .／:::ゝｰ､＿
　　　　　　　　　　　　∠二　　 　 1i　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　/.:.:.:ゝﾍ__／::／.:.:.:.:.:.:.:.:.:ゝ､
　　　　＿ノ⌒丶、＿ノ⌒丶、＿ノ⌒丶、＿ノ⌒丶、＿ノ⌒丶、＿ノ⌒丶、＿ノ⌒丶、＿ノ⌒丶、＿ノ⌒丶、＿ノ⌒
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　○
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　о
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｡
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ _ノ　 .ヽ、＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　 （●）（●）　|　　　　　　　「実戦経験の差がかなり大きいな。
　　　　　　　　　　　　.　　　　　　　　　　　　　　　　|　　（__人__）　.|　　　　　　　シンジはおそらく人を斬った事があるだろ」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　 ｀ ⌒´ 　ﾉ
　　　　　　　　　　　　.　 　 　　 　 　 r─一'´￣`＜ヽ　　　　　　}
　　　　　　　　　　　　.　　　　 　　 　 `ー‐ｧ　　 ,　 　 )　　　 　, -'~⌒ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ノ　　　{. 　 ,ﾍ　　　　,l.　ゝ、_ .'ヽ).
　　　　　　　　　　　　. 　 　 　 　 　　 ／, ､　_　　　/. |　　 　.　',　　.　..　 .ヽ、
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　　 （／ / // / /　...|　 　 　 ...|＼..＼＼ ＼_)
　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　　 　 / // / /　　　　　　 　 . .　＼_＼_)､_）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　 ｰ' {_/ノ　　　　　　　　　 　 　　."´

二１０．
: : : : : : /　　　　　l.:::＼ | |.:.:.:.:.:.:＼
: : : : : /　　　　　　l.:.::::::ﾘ |/´ ￣｀`,　　.:.:.:.::.:.:.:＼
: : : : /　　　　　　　l.:.:／　　　　　　',　　　　.:.:.:.:.:.:＼
: : : /　　　　　　　　＼　　　　　　　 ',　　　　　.:.:.:.:.::::ヽ
: : 〈　　　　　　　　　　＼　　　　　　 ', .:.::::::::::::::::::|＼.::.:|
: : : :',　　　　　　 .:.:.:.:.:　 ＼　　　　　 ',::::::::ﾄ､.::::::::|　ﾊ:.:l
: : : : :',　　　　　 .:.:.:.:.:.:.ﾄ､　＼　　　　 ',::::::lﾆ＼:::::|
: : : : : .',　　　　　.:.:.:.:.:.:l　＼　＼／　　',::::l　　 ﾄ､|　　　　「それは、強くなるのに
: : : : ::::::',　　　　 .:.:.:.:.:.:l　　　`y':／ﾆヽ ',::l1 　 l |　　　　　必要な事なのかな」
.:.:.:.:::::::::∧ 　　　 .:.:.:.:.:.:l　 ／／／　 い / l　　l |
:.:.:.::::::::/　ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l ..／∠　　　 い /ハノ/
.:.::::::::./　　　＼.:.:.:.:.:.:.:.:.:V彳o:::ヽ　　　j! !　　`ヽ
.:::::::::〈 　　 　　 ＼.:.:.:.:.:.:.:}ﾑ:::::::ノ´ ／／　　　 /
､::::::::::.＼_,,　-‐　　＼.:.:.:.:l　￣　／／　　 　 ,.ｲ
　ヽ　　　　　　 　 　 　＼:L＿／／　　　　　 /
　　＼　　　　　　　　　　└＝＝'　　　　 ／/
　　　 ＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /
　　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　 ,′
　　　　　　 ＼　　　　　　　　　　　　　　 ,′
　　　　　　　　＼`ー--------r---‐‐'´
　　　　　　　　　 ＼　　　　　 ∠￣`ヽ



その意味が、他人を殺めた事があるかどうかだと察したジュンは表情を強ばらせた。
彼は、自分の手で人を殺める事がどれほど重い事かエンジュから繰り返し聞かされているのだ。

二１１．
　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　／ _ノ　 .ヽ、＼
　　　　　　|　 （●）（●）　|　　　　　「別に他人を殺めたら剣の腕が高まる訳じゃないぞ？
.　　　　　　|　　（__人__）　.|　　　　　　関係してくるのは覚悟の問題だけだし。
　　　　　　 |　 .　'´ｎ｀'　 .ﾉ　　　　　　人殺しの経験よりも大事な事がある」
　　　　　　 .ヽ　. 　| |　　}
　　　　　　　 ヽ..　ﾉ .ュノ
　　　　　　　　/　{ ..ﾆj､
　　　　　　　　|.　| "ﾂ　＼
　　　　　　　　|.　| .l　　|ヽ、二⌒)



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＞'´　／　　 ∧　 　 ｜　　　　i|　ヽ.　 　 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ 　 ／ 　 　 /::::ヽ　_,斗:.:.:.: : 　 |　　 !　　:...　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 〉 　 　　　　::ー‐^´¨　|:.: : !:.:..　ﾄ､　 |　　 :.:.:...　: :..｀ー-､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　| 　ｉｌ　　::|　　 　 　 ! ::∧:. :. 　,=‐ｉ　　　:.:.:.:.:...:.:.:..:.:.／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　.:.:.:.:|　 i| 　 ::| 　 　　　 | / ,ｨ|,.イ´__ ∧　 ..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ :::／イl|　 ｌ|　 ::|=､＞ｰ=､ ｉ′|:rレ弍¨ヽ ﾄ :.:.:.:.:.:.:.:.:.／
　　　　　　　　　　　　「それは？」　　　　　　　　　./::／　 /　　　|　　|´戈¨Ｔ |ﾄ==､||　弋__ソ‐|/.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾚ'゜ 　 /　／　 iヾヽ! 辷_ソ｣|　　 ヽ=＝＝=='　ﾏヽ.:.:r-‐'´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　レ'　ﾚ'〉　! ヾﾆ==＝ ′〈　　　　 　 　 　 'ノ::;;;>
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣ヾﾇ、　　　　　 ｀　　　　　　　,/‐'´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ￣ヽ　　 　 　 ー‐　　　 　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　 　 　 　 　 _, ィ´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀¨ﾆt-　　-‐'　ﾄ-┐
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿　 　/´iイ　　　　　 |/　ヽ―-- ､__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／i　 ゞ7″ | ′　　 　／　 　 |　　　 　｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　 i　　/　,ﾍ |＿___,_／ |―､　 |　　　　/　　ヽ.

二１２．

　　　　　　 （⊃￣￣＼
　　　　　（⊃　　 _ノ　　＼
　　　　（⊃　　 （ ●）（●）　　　　　　「実戦によって培われる勘の様なものと、
　　　　　|　　　　 （__人__）　　　　　　　様々な状況を把握する力だ。
　　　　　|　　　　　｀ ⌒´ﾉ
　　 　 　 |　　　　　　 　 } ＼　　　　　　そこから判断、予測、対応が生まれるんだろ」
　　　　 ／ヽ　　　　　　 }　　＼
　　　／ 　　ヽ､＿＿__ノ　　 　 ）
　 ／　　　　　　　　.　 　|　＿／
　|　 　　　　　　　／￣￣（＿)
　 ＼　　　＼　／|　ＪＪＪ　（
　　　＼　　／　　 ／⊂＿）



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i::::＼　　　 r::'::´::::::::::::::::::::::／＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ:::::::＼.　 |::::::::::::::::＞-...':::´:::::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿ ≧::::::::＼i!:::::::::r､'::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::::::/＼:::::::::|:::::: /:::::::＼::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／::::::::::::::::／:::::::::＼::::::::/:::i:::::::::::＼::::::::::::::::::::::::::::...::::｀:::-.._
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ／_:: -─ｲ::/::::::::::::::i::::::＼/:::::|::::::::::::::: ＼:::::::::::::::::::::::＼＿＿＿::＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣,...-:':´:／::::::::::::::::|:::::::::V:/: |:::::::::::::::::::::ﾊ::::::＼:::::::::::::::::｀:-._
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::: /::::::::::::::::::::::|:::::_:ｨ=-.-|::::::::::::::::::::::::i:::::::::::＼:::::::::::::::::::: ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /:::::::::::::i::::::::::::::::::::::::|'´　　 　 .|:::::::::::::::::::::: :|:::::::::::::::ヽ:::::::::::::::::::ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /::::::::::::::::ﾊ:::::::::::::::､:::::| 　 　 　 .|:::::::::::::::::::::::::|:::::::::::::::::::＼::::::::::::::::ﾍ
「培われる勘と、　　　　　　　　　　/:::::::::::::::::::::ﾊ:::::::::::::i ＼ヽ　　　　.|:::::ｲ::::::::::: ﾊ:::|::::::::::::::::::::::::i::::::::::::::::::＼
状況を把握する力………」　　 ／::::::::::::::::::::::::::ﾊ:::::::::::|＿_ゞ'＿＿　|::/ i:::::::::/＿ヾﾄ::::::::::::::::::: |::::::::i ヽ::::::ﾊ
　　　　　　　　　　　　　　　　. ／:::::_::_:: - ﾌ:::::::::::::::ﾄ-三ﾆニ＝＝≦　ﾚ　|::::三ニニニ=ヾ:::::::::::::|::::::: |　 ｀ー-｀-
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::::::::| |r::::|て芯ミヾ Y}　　 .|::::/ ≧ニニ＝ﾐヾ::::::: |::::::::ﾊ
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /:::::;:::::::::＿| |　ヾ i!;;;....;;}　 i }ニニニi」 ｛ﾋｲ:::::｝ >　i l＼::|::::::::::ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/／ /::::::/>‐ﾊi　　　ゞー'　<iﾘ　 　 ﾚi l　　廴../ ｲ　//::::::ゞ:::::::::::ﾊ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　ﾊｨ::::i　-ﾊヾニニニニ彡　　 i　　 ミ､＿＿＿_.//-､::::::::ヽ￣ ￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヾ i　- ﾍ　　　　　 　　　　 ;　　　 ￣￣￣￣/ハ i:::::i￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ヾ､∧　　　　　　　　 ＿　　　　　　　　/　　ﾉ-''´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ーヽ　　　　　　　´　 ｀　　　　　　 /-'／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　 ..::　　　　 　　/-'´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿　　　｀　､　　　　　　　　　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／: : :｀: -..､　　｀i'　､　　　,　ィ' ´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /: : : : : : : : : :｀: x.ﾉ　　｀　´　　|　　　　　　＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,...-::'::´:::￣::｀::-::::_: : : : : : : : :＼＿　　　　 ﾄ､　　 ／: : : :ヽ

二１３．


　　　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　 rヽ　　／　ノ　　＼ ＼　　　　「そうだ。
　　　　　　　　 i　!　　|　 （●）（●）　|　　　　　いくら肉体を鍛えても
　　　　　 r;r‐r/　|. 　|　　（__人__）　 |　　　　　自分、相手、周囲の状況を把握、判断して
　 　 　 〈_L (｀ヽ .}　　|　　 ｀ ⌒´　　ﾉ　　　　　命令を下す為の頭脳が鍛えられていなければ意味がない」
　　　　　l｀ （ ｀`/　.　 |　　　　　　　 }
　　　　　ヽ 　　l　　.　 ヽ　　　　　 　}
　　　　　　|,. 　 l　　 /⌒　 　ー‐　　ｨ ヽ




肉体的な修行は日頃の鍛錬の積み重ね以外にはどうしようもないが、
頭脳はふとしたきっかけがあれば短期間に驚くほど成長出来る部分でもある。

脳みそと反射神経まで筋肉の相手に剣の実力が多少劣っていようとも、
判断力、予測力、戦術が優れていれば十分過ぎるほど勝機を見いだすことが出来る。
そしてそれは、その伸びしろを大幅に残しているジュンに勝ち目があると
やらない夫が確信している裏付けでもあった。

二１４．
　 　／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　 （ ●）（●）　　　　「ああ、もちろん身体の方もびしばしいくぞ？
.　|　　　　 （__人__）　　　　　翌日には残さない程度にするが、
　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　疲れて足腰が立たなくなるぐらいは覚悟してくれな」
.　 |　　　　　　 　 }
.　 ヽ　　　　　 　 }
　　 ヽ　　　　　ノ　　ｍm
　　　/　　　￣￣￣　つﾉ
　　　|　　　　|￣￣￣



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 //
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::ｌ　＿,　 - ア ¨’；
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ＿ /:::::!｢::::::::::::／─‐…ｧ　：
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　､___∠::::::〈:::::::|::::::::::::::::::::::::＜´　　：
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ／::::::::::::::: 〉､::ヽ-..､::::::::::::::::::::＼　　：
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ∠　ｧ¨´::::;:ィ::::;､ヽ::∧::＼:::::::::::ﾄ､::;;>　：
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::::::::/:::|::::{┴'┴l:!::::::}i::::::::::::::＼　：
　　　　　　　　　　　　　　　　　　「りょ、了解………」.　　　　　/::::::::::∧::下仁､　ｲﾙ二ﾊ::::::::ｌ:::::::::ヽ　：
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::;ｲ:::/;;:ﾊ:{廴__j｢¨f廴__j}ハ::::::ト､::::::::',　：
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .厶ｲ/::/::{ （Y ｀￣/|　 ﾄ￣´　Yﾍ::::l/:＼::::! ：
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ⌒ヽﾍ　トｰ‐　 ! 　! 　 ｰ-１ /∧:: ハ:|　：
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 Vヾ{　U 　{ _ _〉 　 　 };ｲ/　∨　 ′：
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Ｖ:::ﾄ､ }　r―‐ｧ　 { /::/　　：
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ:} ヽ　}　　 |　 /|:/　　　：
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ／! iハ､｀＿´ ｲ ｉ|＼　　：
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _/ {〈　ｌ 　 {　　　　ﾄ､∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／￣　| 　 ヽ._　 ゝ　 　 _!ｲ〉 ｢￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_　　-　´￣ヽ　 ト､ 　 ＼二二二 ／ /　　　 ｀　-　､_

二１５．
夕べ聞かされたような、やらない夫の父親みたいな修行だったら命がいくつあっても足りやしない。
思い出すだけでげっそりとやつれそうなジュンが顔を青ざめさせたので、
何を想像したのか分かったやらない夫は心配するな、と保障がある事を告げた。



　　　 ／￣￣＼
　　／　　 _ノ　　＼
　　|　　　 （ ●）（●）　　　「なに、どうしても死にそうになったら
　　|　　　　 （__人__）　　　　回復の霊薬があるから心配するな」
　　|　　　　　　　　　ﾉ
　　|　　 　 ∩ノ ⊃ }
　 /ヽ　　 ／ ＿ノ }
　(　ヽ　 /　　/　ノ
　　ヽ　“　　/＿|　 |
　　　＼＿_/＿＿ /



瞬時に体力や精神力を回復させたり、怪我や病気の治癒、
高額なものになると失われた手足などを再生する効果のある霊薬の事はジュンも知っていたが。

二１６．
薬漬けの修行なんか嫌だなぁ、と思った彼ははそこで、市場や薬師の店で見たことがある
霊薬の値段を思い出した。



　　　　　　　〓　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　п
　　　　　　｜ ｜　　　　　　　　　　　　　　　　　　｜ ｜　　　　　　　　　　　　　　　　　　.「b
　　　　　　｜ ｜　　　　　　　　　　　　　　　　　　｜ ｜　　　　　　　　　　　　　　　　　 .〈__〉
　　　　　　　￣　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣
┌─────────┐　　　　　　┌───────┐　　　　　　　　　┌───────┐
│体力回復の霊薬　 　 │　　　　　　│治癒の霊薬　 　 │　　　　　　　　　│再生の霊薬　 　 │
│金貨200枚　　　　　　..│　　　　　　│金貨500枚　　......│　　　　　　　　　│金貨2000枚　 　 │
└─────────┘　　　　　　└───────┘　　　　　　　　　└───────┘

※カーディナル薬屋調べ


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　Λ／　〈 へ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヘ|　　 　　　　 ,＞
　　　　　　　　　　　　　　　　「霊薬って結構高くなかった？」　　　　∠　　/　　　〉ヽ　 ￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　ノ〈 |＾＾| /＼ﾄ､　　ﾄ､l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|／| .ﾊ|__ |/＿__　ヽ　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l/　　|‐|　　 |―ヽ＿|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 | ￣ c　￣　　　6 l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　ヽ (＿＿＿_　　,-′
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ ＿＿＿ ／ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ ＼∨／　l ＾ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　|　　　　　 |　　|

二１７．
　　 ／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　（ ●）（●）
.　|　　　　（__人__）　　　「そうか？
　 |　　　　 ｀ ⌒´ﾉ　　　　ピンキリだけど消耗品として
.　 |　　　 　　　　 }　　　　割り切れる程度だろ。
.　 ヽ　　　　　 　 }
　　 ヽ　　　　　ノ　　　　　俺は一人で旅してたから
　　　.>　　　 <　　　　　　　他の冒険者より持ってる量は
　　　|　　　　 |　　　　　　　多いかも知れないけど」
　 　 |　　　　 |




標準的な品質の体力回復の霊薬ですら、一般的市民の一月の手取りが丸々飛んでいく額である。
恥ずかしながら、働いて自分で収入を得たことがないジュンは、
冒険者の金銭感覚はそんなもんなのかとも思ったが。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : |: : : : : |: : : : ヽ: : ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　: : : : : : : : : : : : : : : :./＼: : : : : ﾄ､: : : : ﾄ､: : /: :∨ :.l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　: : : : : :∧: : /──{/､.　 ＼ : : |.-＼: : |ｰ∨､: : : : : |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　: : : : :./　1/　　　　　.i　　　l＼:|　　 ＼|　　　|: : |＼;!
「わ、割り切れる額じゃないだろ。　　　　　　　　　　　　　　　: : ,､: :{　　 　 　 　 　 |-‐‐-|　　　　　　　　　.|:ヽｉ
　もし僕が使ったら、父さんにお願いして　　　　　　　　　　　: :{　ヽ'　　 　 　 　 　 !　　　|　　　　　　　　　ﾊ:_}
　その分のお金を払った方がいいんじゃないか」　　　　　　ﾊヽ　ヽ＿＿＿＿＿,ﾉ　　　ヽ＿＿＿＿___ﾉ　}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ハ: :｀-',　 ! | | 　! !　　　　　　' ! |' | |　川/　ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 〉: :.:∧　　　〃'ー──-----､　　　 ,ｲ"´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣　　＼　 ヽ＿＿＿＿＿_丿　 ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＞､　　　　　　　 　,イ´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,────､＿_｀ ,‐──┬'"´　＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　| 　 !　　 　 |￣l￣　 　 ｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　　　 |　　ｰ──' 　ﾘ　　　　　　}

二１８．
　 　／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　 （ ●）（●）　　「良いって良いって。
.　|　　　　 （__人__）　　　大した値段でもないし、
　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　もともと薬頼りにするつもりもないだろ」
.　 |　　　　　　 　 }
.　 ヽ　　　　　 　 }
　　 ヽ　　　　　ノ　　ｍm
　　　/　　　￣￣￣　つﾉ
　　　|　　　　|￣￣￣



: : : : :: : :、: : : ::::::,lll,,,,,,,,,,,,,__
: : ::_、,,､‐,l,: : : :,,ll,i,_ﾞﾞﾞllllllil,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,__
,,llll,,,lll,,i´,ll,ﾞl,、:,illilllllli,l,: ,lliillﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾟ”￣
lllil!llilﾞ゜:lllllllilll,.:llllllllllllllll::llllll!llii,,l,i､
l!lilllﾞιllllllllllllllillllll!lllllllll!,lllﾞ!liill!llllil,i､
illll!`lll:,lllllll!ﾞﾞlﾞ!!ﾞlllllﾞ!lllllll,llll,,ﾞ!lliﾞllll!llil,i､
!l】l::lllﾞllllllll:: : : : : : :|llllllllllllil,,ﾞlli、ﾞﾞlllll,,、
ilﾟ,ll:lll|llllllll: .: : : : :.::|'lllllllllll!lili,ﾞlll　　ﾞﾞﾞ!l,,、
lﾞ,lllllll|llllllll:.､:::x,、:､:|'llllllllll.lllllli,lli,　　　 ﾟﾞ=:
,,llll!,lllllllllll: : : : ﾞ'N,,,.,lllllilll|:l!ll!lli,li,
illlilil!llllllllll、::::::::.,,.::_ll!,lﾞ'llli,"ll｀ .'!li,,　　　　　（いやいやいや。大した値段じゃなかったら
llilllll:ﾞllllllllll､､:､:ハ::ﾞi!ﾞ,l｀|lli"ll　　　　　　　　　どうして冒険者の一行に必ずと言っていいほど、
lllllll:_,ﾞllllllll〆":'│::.ﾞ.:｀､.＝,｢　　　　　　　　　神官や司祭が含まれてるんだ？
!|llll'｀::'!llllﾞli､丶'|,!::::::::::::::i!lﾞ,!
::)ll′: :ﾞ!llﾞﾞl: : ::|:．: : : : :`|::l、　　　　　　　　　基本、回復や治癒は神聖魔法頼りで、
、'l、:: : :ﾞ!!::｀::、U,、,:、..,i,|、ﾞi,、　　　　　　　　霊薬とかは緊急時のみの利用だと想像してたんだけど………）
、::｀::: 丶丶丶:::ﾞ!i{h,､_,ｼ｀::::::.|
: : : : : : : : : : : : : : : : ｀: : : : :lﾞ
: : :｀: : : ::｀: : : : : : : : : : : : :/
: : : : : : : : : : : : : : : : :: : :: ,″
: : : : : : : : : : : : : : : : : △:′
､、: : : ::::::::｀:::::::::::::::::: ,,-｀
: ｀"'ヽ,,: : : : : : :｀:_,,r,i´
: : : : : :ﾞ・: : : ::‐'''~｀



そのぐらいは知っていたが、取りあえず自分が頑張れば霊薬を使うことはないだろうと
修行の開始を促すことにした。

二１９．

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ ／.:/.: 　 i.:.:.:l.:.:.:l.:.:.:/ l.:.:.:.:.:.:｀`´.:.:.:.:.:.: |.:.:.､.:.:.:.＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 l.:.:./ .:.:　.|.:.:.:l..:/l.:.:/　|.:/l.:.:.l.:l.:.ﾄ､.:.:.:.:. |.:.:.:.＼ ￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./.:./ :. :.: :|.:.:.:l/ .l.:/　 |/　l.:.:N.::.|__＼.:.::|.:.:.:.:.:.:l
　　　　　　「そろそろ始めないか？　　　　　　　　　 /.:./ .: .:.:.: :|.:.:.:仁l/二ﾆ　　l.:仁l:/=== ヽ:!.:.:.|＼|
　　　　　　　実は、さっきの君の試合を見て、　　 l:/.l.:.:.:.:.:.:. .ﾄ､.:.l ﾃ示ﾐヽ1 Ll/ l 「 戍ﾃﾐ　lﾄV
　　　　　　　身体がうずうずしてるんだ」　　　　　　　　l.:.:/l .:　ﾊ:lN{　辷ｿ ﾉ ! 「￣l |弋辷ｿ　l1 l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l:/　l.:/　　 lL_ ＿＿ノ　 ,　　ヽ _二 ノ.:.:.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　 l/　､__',　　　　　　　 　 　 　　 /　.:.:.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　　　　　ヽ　　　　　r‐‐ｯ　　　/.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　　　　 　 入　　　　　　　 ,..ｲ.:.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　　　.　'´　i.:.＼＞ -- ＜/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　／　　 　 |.:.／＼　 　 ノ.:



　　　　　　　　　　　　 　 　 ,ｨ7
　　　　　　　　　 　 　 　 ／,/
　　　　　　　　　　　　　/　/
　　　　　　 　 　 　 　 /　/
　.　　　　 　 　 　 　 /　/
　　　　　　 　 　 　 /　/
　　　　　 　 　 　 ／￣￣＼
　　 　 　 　 　 ／＼　 ／　 ＼　　　　「望むところだろ！」
　.　　 　 　 　 | （●）（●） 　│
　. 　 　 　 　 /| （__人__）　　 .|　　　　
　　 　 　 　 / ,|　｀ ⌒´ 　 　 |　　　　
　.　　　　ィ´ /''ヽ　　　　　　ﾉ
　　　　(⌒) ｲi一‐ヽ、　　　/
　　　　　7 .K.`ｰ--→―― ）
　　　　　ヽ/ ヾ--‐―‐　　/
　.　　　　　 　/　　 　　　/
　　　　　　　/　　　　　 /

二２０．

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|::ヽ／::::::〈 へ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,-┘:::::::::::::::::::::::::::｀＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　∠::::::/::::::::::::::::〉ヽ::::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::〈:::|＾＾|:::::/＼ﾄ､ヽ::::::>
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／::::::ﾊ|＿l/l/.＿_-ヽ|:::」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼＼　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 .￣7/.|＿_|─|＿_|- lj/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼＼　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ﾍ. 　__;_＿、 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼＼　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ﾌヽ辷フイ{ヾ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼＼　　　 　 　 　 　 　 　 　 ／::::〈｀l7:´::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　「遠慮無く行くよ！」　　　　　　　　　 ＼＼　　　　　　　　　　　 ﾉ::::::::::::V::/:::::::::::〉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼＼　　　 　 　 　 　 /:::::::::::7::ﾄ/:::::::::::/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼＼　　　　 　 　 /::::::::::/:::::/::::::::://
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼＼ 　　　 ／::::::::::／l ／:::::::::/::l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∠二フ　／:::::::::::::/　／:::::::::／::::!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ,'~つﾆ〉ヾ::::::::/／::::::::::／::::::::j
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞへノ7 　ヽノ<::::::::::／ヾー--￢
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 くヲ｀`　 ヽ＜／^ヾフ=／{
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_,. -ヾソ　　ノ:::::::::::::::::::::::::::::::ヽ,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　r ' ´:::::::::::::`ｰ‐'´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀`丶
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l::::::::::::::::::::::::::::::::::_,. -─- ､_:::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l:::::::::::::::r -- ' ´　　　　　　　｀`'ｰ､:::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::::::::::::l　　　　　　　　　　　　　　 l::::::::::::


二人は試合のように向き合うと、足下の砂を踏みしめて気合いを入れる。
そして一日目の修行が始まった。


━━━━━━━━━━━……
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

二２１．
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━……



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : |: : : : : |: : : : ヽ: : ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　: : : : : : : : : : : : : : : :./＼: : : : : ﾄ､: : : : ﾄ､: : /: :∨ :.l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　: : : : : :∧: : /──{/､.　 ＼ : : |.-＼: : |ｰ∨､: : : : : |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　: : : : :./　1/　　　　　.i　　　l＼:|　　 ＼|　　　|: : |＼;!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「ぶはっ！　　　　　　　: : ,､: :{　　 　 　 　 　 |-‐‐-|　　　　　　　　　.|:ヽｉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さすがに限界！」　　 :{　ヽ'　　 　 　 　 　 !　　　|　　　　　　　　　ﾊ:_}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾊヽ　ヽ＿＿＿＿＿,ﾉ　　　ヽ＿＿＿＿___ﾉ　}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ハ: :｀-',　 ! | | 　! !　　　　　　' ! |' | |　川/　ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 〉: :.:∧　　　〃'ー──-----､　　　 ,ｲ"´　　ﾊｧｰﾊｧｰ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣　　＼　 ヽ＿＿＿＿＿_丿　 ／　　　ｾﾞｪｰｾﾞｪｰ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＞､　　　　　　　 　,イ´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,────､＿_｀ ,‐──┬'"´　＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　| 　 !　　 　 |￣l￣　 　 ｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　　　 |　　ｰ──' 　ﾘ　　　　　　}



あたりに夕闇が迫り始めた頃、木刀を持ち上げることすらままならないジュンが地面に転がったので
やらない夫は満足そうな表情で褒めた。



　　 ／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　 （ ⌒）（⌒)　　　「よく頑張ったなぁ。
.　|　　　　（__人__)　　　　そろそろ飯にするだろ」
　 |　　　　　 |r┬|}
　 |　　　　　 |　| |}
.　 ヽ　　　　　｀ﾆ}
　　 ヽ　　　　　ノ
　　　/　　　 く
　　　|　　　　 ＼
　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)､



やっぱり体力回復の霊薬が欲しくなった彼が半分ほど地平に沈んだ太陽を横目で見ていたら、
魚でも捕ってくると言ったやらない夫は木刀を片手に、あかね色に染まる河へざぶざぶと入っていってしまい、

二２２．
木刀でどうやって魚を、とジュンが上半身を起こした時にはもう、
一匹目の魚がその目の前に落ちてきた。




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_,,,... --─-- ..､,,＿_, -､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　／ 　 　 　 __＿＿二/ ,イニ＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /,. -‐''"¨￣ 　 　 ﾉ¨/ノ )´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/´　 　 　 　 　 .／´::::¨／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／￣￣＼　　　　　　　　　　　 　 　 ／:::::::,;;;/
　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ／　　　＼　ノ　　　　　　　　　　　 , ｰ'´::::::::,;;;;/
　　　　　「よっ」 　　　 　 　 　 　 　 |　　　（●）（●）　　　　　＿, -'""´ ::::::::::::,;;;;;/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　| ＿__　（___)､_） -ー'¨ﾞﾞﾞ′ .:::::::::::::::::::,,,,,,;;;／
　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ＿/:::::::::｀:ｰ-､／::::::::::::::::::::::::::::::,::::::::,,,;;;;;;;／
　　　　　　　　　　　　　　　　　／:::::`ー-──'" .:::::::;::;:::::::::::::::::::,;::::,,;;;;;;;／
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,;;;;:::::::::,,,;;;;;;,,;;;;;;／
　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 iヽ:::::::::::::::::::::::::::::::;;;;,,,:::::,;;;;;;::,,,,;;;;;;;;;;;;;／
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ノ!;;;;,::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;,,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;／
　　　　　　　　　　　　 , -'　 ;;;;;;;,ヽ:::::::::::::::::::::::｀;;;;;;;;;;;;;;;;;;;､／　　　　　　　　　　ﾍﾟﾁﾝｯ
　　　　　　　　　 　 ／,,,,,,,,,;;ヽ;;;;;,::i::::::::::::::::::::::::,,,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;!
　　　　　　　　　　/ ,,,;;;;;;;;;;;;;;;＞、!::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;/
　　　　　　 　 　 / ,;;;;;;;;;;;;;;;__ﾉ¨￣i:::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;/
　　　　　　　　　 `ー─‐'"　 　 　 〉:::::::::::::::::::::::::::::::::::::!
　　　＿＿　　　 　 　 　 　 　 　 /ﾉ::::::::::::::::::::,,;;;;;;;;;;,イ
　／⌒＼:::¨ﾞ''‐-､　　　 　 　　／::::::::::::::::::::::::::::::／ ｛
/;;;;;;;;;;;;;;;;;`ー､:::::::¨ﾞﾞ''─-─''":::::::::::::::::::::::::::::::: /;;;;;;;;;;｀ヽ
i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／;;;;;;;;;;;;／;;;;＼
乂;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;｀ﾞﾞ''‐-､:::::::::::::::::::::::::::::::::: ノ´;;;;;;;;／;;/;;;／´;;;;`ｰ ､
　 `};;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;¨ﾞ'7‐-､ _;;::-─'";;;;;;;;;;;;/;;;;;;;i;;/;;;;;;;;//;;;/;;i＼
　　 !;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ゝ、;;;;;;;; /;;;;;;;;;;i;;;;;;;;;;;/;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼

二２３．
「はっ」　ﾍﾟﾁﾝｯ。
「ほっ」　ﾍﾟﾁﾝｯ。
「とっ」　ﾍﾟﾁﾝｯ。


時折場所を移動しては、一分も経たないうちに次の獲物を仕留める。
柔らかい腕の振りと、寸分違わず自分の目の前に落ちてくる魚達を見ればジュンにも分かった。
彼ははじき出しているのではなく、すくい上げているのだ。



::::::::::::::::::::::::::ﾊ::::::::::::::/i/／ i:::::::::::::::::::::::::|::::::|:::::::::::::::::ヽ:::::::::::::::＼
::::::::::::::::::::::::::::ﾊ;;;;;;;;;/-'´ 　 .|::::::::::::::::::::::::ﾄ::::: ﾄ::::::::::::::::::::i:::::::::::::::::::ヽ
::::::::::::::::::::::::::::::ﾊ￣　　 　 　 |::::::ﾊ::::::::::::::|　＼i ＼::::::::::::|:::::::::::::::::::::ﾊ
::::::::::::::::::::::::::::;:::ﾊ　　　 　 　 |:::/　V::::::::::ﾘ　　　　ｨ=ﾊ:::: |::::::::::::::::::::::::＼
:::::::::::::::::::::::::::::iヽ:ﾍ　　　　　 |:/　　 V::::::/　　　/ｲ＝ﾌi｝ヾ─────'｀　　　（まるで草刈りだ）
ヽ:::::::::::::::::::::::::|　＼ヽ　　 　 |i!　　　 ｝::/　　　r''´ゞハi l:ヽ
::::＼::::::::::::::::::::|　　 ＼　　　＿＿ニ三ｲ　　　||r j｝i|　.i lヾ｝
::::::::::＼::::::::::::: |　　　／::::＿,,,ィ彡=''´i/il_,=＝|.しｿﾊ ﾉﾉ-､
:::::::::::/ ＼::::::::::ヾ ／:- ''´＞''´ -=ｲ｀　 ||r'´｀ ﾊ彡　ｙ/: : : :＼ニニミ-､
::::::::/　　　｀ー- xゝ rィ彡''´イッ:::ﾘ　　/i　　　ミー=´i: : : : : : :｀:-:､: : :｝ｿヽ
:::::/::ﾊ＿＿＿＿＿/ /　 /　ﾋ:::..ソﾉ　｛.ﾘ　　　　｝.　 l-､: : : : : : : : i: ://: :ﾊ
￣ヽ──────､ﾊ　ヾ　　ゞ''´　 ノﾉ　　　 ./　 ./: :ﾉ: : : : : : : : l: i l: : : ﾊ
i ヽ　｀ -ゝ　　　　　　ヽヽ　ミ=''´　／／　　　　 　 /: : i: : : : : : : : : l: i l: : : : :ヽ､
｛　　ﾊ　　　　　　　　　＼＼＿_／／　　　　, ィ　/: : :/: : : : : : : : : : /: : : : : : : : ＼
　｀　　 廴　　　　　し　　　ー─''´　　　 ir'_´'´ ./: : :/: : : : : : : : : : /: : : : : : : : : : /
>､＿　　　ー　　　　　　　　　　　 　 　 　　 　 /: : :/: : : : : : : : ::／: : : : : : : : : : :/
: : : : : ＞-､＿ハ､　　　　　　　　　　　　　　　ハ／: : : : : : : :／: : : : : : : : : : : :/ハ



動かない相手を狙っているのならまだしも、相手は生きて動く魚である。
川面の屈折で正しい位置を把握する事すら難しいはずの相手を、
いとも簡単にすくい上げ続けるやらない夫を見て呆れるしか無かった。

二２４．
合計八匹の魚を捕った彼が河から上がってきたので
強い空腹感を覚えていたジュンは料理はどうするんだろう、と期待に目を輝かせたのだが、



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,／/: :ヽ: : Y: /:､: : : : : : : :＼: : : : : : : : ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／: :/: : : ∧: : ;′1: : : : : : : : : l: : : : : : : : : :∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∠二ィ: : : : l::∧: :!:::::l: : : : : : : : : :|: : :ヽ: : : : : : :∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /.: : : : :|::::::∨::::::l: : : : : : : : : :l: : : : ∨: : : : : :∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,r': : : : : : 「¨¨｀""¨1: : : : : : : : : l: : : : : ∨: : : : : :∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |! : : : : : : l 　 　 　 l: :;ｨ: : : :∧ : | : : : : : ∨: : :ヾ : ∧
　　　　　　　　　　「どうやって食べるんだい？　 　　　ｲ!: : : : :i: : !.　 　 　 !:/ l: : :/　ヽ: ﾄ、 : : : : ∨: : : :＼;ﾊ
　　　　　　　　　　　ソテーかムニエル？　　　　　　　　/l: : : :,∧:厶-‐､　　ﾚ'　!‐ナ―-ゞ! ヽ、: : : :i: : : : : :l ヾ
　　　　　　　　　　　あ、パイ包みとか？」　　　　　 　 !.:!: : ;ｨ: : ト1===ミ:、 　 l.:/彡＝=｀=ﾐ:､ヽ : : l.: : : : : |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .l.;ｲ : ;ハ ｲl:iﾞ '乍ミ1L..../;」i　ｨ卞ぅｘ､ ! ヽﾄ、:l: : : : : :|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .ﾚ'l: :/　 ﾘ |:|　 ﾋ;ﾘ |「￣"ﾞ1l　　ﾋｚﾘ｀ l l｀ゞ- ､.: : :lヽ:.!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾚ'’　　 ヾ ＿__ノ.'　　　ヾ: ､＿＿.ノﾉ　´rﾊ !:、:| ヾ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i￣￣ i　　　　　 ￣￣￣　　ムｿ:.;ﾊﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ､　　　　　　　　　　　　　r彡;〃´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　 ヾﾆフ　　　　 　 ﾉﾚ'´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　 　 ´ ,L. -‐ ､_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ . _　，　 　, ィ´　　　,.､二ミ:ｫ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,.-‐=ﾆj,.ィ'´　　 ／￣ "¨ヾ＼L、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _r'´　 レ"　　 _ﾆ=′　　　 二ﾆ= 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　rく ヽ 　 j　,-=ﾆ¨ 　 　 　 イ=‐- ､　 　 >"



　　　 　　　　　 ／￣￣＼
　　　　 　　　／　_ノ　 ヽ､.＼
　 　 　 　 　 | 　（●）（●）　.|　　　「いや、そんな手の込んだのは
　　　　　　 　!　　（__人__）　 |　　　　家のメイドさんにお願いして欲しいだろ。
　 　 　 　 　 , っ　 ｀⌒´　u |　　　　串焼きだよ串焼き」
　　　　　　 /　ミ）　　 　　　/
　　　　 　./　ノゝ　　　　　/
　　　　 　i　ﾚ'´　　　 　　ヽ
　　　 　　|　|／|　　　　 |　|



面食らったやらない夫は勘弁してほしいだろ、と頬をかいた。

124 名前なんて無いだろ常識的に考えて 10/08/02 22:53:54 ID:yMCw9/3T こいつらいいコンビだなｗｗ

二２５．

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ＞'´　／　　 ∧　 　 ｜　　　　i|　ヽ.　 　 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　／ 　 ／ 　 　 /::::ヽ　_,斗:.:.:.: : 　 |　　 !　　:...　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　 〉 　 　　　　::ー‐^´¨　|:.: : !:.:..　ﾄ､　 |　　 :.:.:...　: :..｀ー-､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 |　　　| 　ｉｌ　　::|　　 　 　 ! ::∧:. :. 　,=‐ｉ　　　:.:.:.:.:...:.:.:..:.:.／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 /　.:.:.:.:|　 i| 　 ::| 　 　　　 | / ,ｨ|,.イ´__ ∧　 ..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ :::／イl|　 ｌ|　 ::|=､＞ｰ=､ ｉ′|:rレ弍¨ヽ ﾄ :.:.:.:.:.:.:.:.:.／
　　「串焼き？　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./::／　 /　　　|　　|´戈¨Ｔ |ﾄ==､||　弋__ソ‐|/.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼
　　　食べたことないな………」　　 　　　　　　　　ﾚ'゜ 　 /　／　 iヾヽ! 辷_ソ｣|　　 ヽ=＝＝=='　ﾏヽ.:.:r-‐'´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｒr‐、 　 　 　 　 　 レ'　ﾚ'〉　! ヾﾆ==＝ ′〈　　　　 　 　 　 'ノ::;;;>
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾄ'　| 　 　 　 　 　 　 　 　 ￣ヾﾇ、　　　　　 ｀　　　　　　　,/‐'´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　| 　|　　　　　　　　　　　 　 　 ￣ヽ　　 　 　 ー‐　　　 　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..ﾉ 　l'⌒!　　　　　　　　　　　　　 　 ＼　　 　 　 　 　 _, ィ´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　´　ノ^ヽ '､　　　　　　　　　　　 　 　 　 ｀¨ﾆt-　　-‐'　ﾄ-┐
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／｀ヽ.ヽ、　　　　　　　　　　＿　 　/´iイ　　　　　 |/　ヽ―-- ､__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ‐'´｀ヽ. ｉ､　　　　　 　 　 ／i　 ゞ7″ | ′　　 　／　 　 |　　　 　｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼ 　　イ-' 　ヽ　　　　 　 ／　 i　　/　,ﾍ |＿___,_／ |―､　 |　　　　/　　ヽ.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ.　 ″　 　 ｌ　　 　 ／-‐'´ | .//／　ヽﾄ-―/ニ,ﾉ　　＼| 　 　 /　　 ＼'､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　 　 　 l.　,.-‐' 　 　 :　ﾚ' ′　　く !　 //　　　　　　　 　 / 　 　 　 ヾ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 |　　　　.ﾄ''　　　　　　! .|　r―┐　 | ,//　　　　　　:. ｌ　 /　　　　　　　｀ヽ、



興味深そうに見物しているジュンはまだ生きている魚をどうするのだろうと思ったが、
慣れた様子の彼はまあ見てろ、と鰓に指を突っ込む。



　　 ／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　（ ●）（●）　　　「まずこうやって鰓を千切るだろ。
.　|　　　　（__人__）　　　　難しかったら細い木の棒二本を
　 |　　　　 ｀ ⌒´ﾉ　　　　口から突っ込んで捻ると、
.　 |　　　 　　　　 }　　　　腸ごと簡単に引っこ抜けるぞ。
.　 ヽ　　　　　 　 }
　　 ヽ　　　　　ノ　　　　　鱗が細かい魚だから取る必要はないな」
　　　.>　　　 <
　　　|　　　　 |
　 　 |　　　　 |

二２６．
　　　 　 　 ／￣￣＼
　　　　　 ノ　　＼_ 　 ＼
　　　　 （●）（● ）.　　 |　　　　　「岩魚は肉食性だからな、
　　　　　(_人__)　　　　　|／|　　　　こうやって肛門から腹を切って、
　　　　　（｀⌒´　　　　／ /　　　　　中の腸を取り出すんだ」
　　　 　　{　　 　 　 ／　 /
　　　　　 {　　 　 ／　　/
　　　　　 _ヽ　／　　　/
　　　　／_ ／＼　　 /
　　 ／　/ ヨ／　＼/＼
　　（　ヽノ／　　　　　　＼
　　　￣　|　　　　　　|＼　＼



腸はたき火に投げ込み、河で軽く洗ってまず一匹。



　　 ／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　 （ ●）（●）　　　　　「鮎は川藻とか微生物を食べるので
.　|　　　　 （__人__）　　　　　　腸ごと食えるぞ、苦いけどな。
　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　　親父は好きだったけど俺は苦手だろ」
.　 |　　　　　　 　 }
.　 ヽ　　　　　 　 }
　　 ヽ　　　　　ノ　 　 　　　／
　　　/　　　 く＿＿,-ｭ__ ／　
　　　|　　　　＿＿＿ 三）
　 　 |　　　　|　 　 　 ￣　



たき火用に集めた薪を手早く削り、作った串で踊り刺しにしてもう二匹。

二２７．

　　　　　　　 ／:.:.:.:.:.:.:.:|ヾ:.:.:.:/:::::|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼
　　　　 　 ／:.:..:.:..:.:.:.:.:.:|:::::>/-''｀.|:.:.:. /:.::.:.:.:.:i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼
　　　　 ／ -''´:.:.:.:.:.::.:.:.|／　　 　 |:.:/:.:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.::.:ヾ:.:.:.:.:.::.､:.:.:::＼
　　　　 ￣/:.:.:.:.:.:.:.:.V:.:.|　　 　 　 |:/:.:.:.:.:,､:.:.:|:.:.:.:.:.:.:.::.:V:.:.:.:.:.:ヽ ￣
.　　 　 　/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ﾄ:.:ヽ　＿＿/ﾊ:.:.:.:.: /__V:|≧､:.:.:.:.:.:.V:.:.:.:.:.∧
　　　　 /:.:.:.:.:.:.::V:.:.├弋￣＿＿/ .V:.:/＿ _V=- ､V:.:.:.:.:V:.:.:.:.:.∧　　　　「うわー？
　 　　 /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:V:.:ﾚ-=≦￣￣||　i:./i | ゞﾃ=､-､ ||ヾ:.:.:.:|:.:.:.:.:.:.∧　　　　川魚ってこうやって処理するんだ！？」
.　　　/,;,;:.::.-' /:.:.:.:.Vゞr'て・) }　 ||=イ=|.|　{ ・ .) / || V:.:./ヾ:.:.:.:.:.:.::ゝ
　　　 ￣　 　/:.:／/∧　｀== ´　/　　　廴=三三=/　r─､:./￣￣ ´
.　　　　　　 /／　{　ヾー＝＝''´　 {　　　￣￣￣　　 r　 }´
　　　　　　　　　　 ヽ .|　　　　　　 ＿＿　　　　　　 /／/
　　　　　　　　　 　　 ∧　　　　　 {=---ｧ}　　　　 /__／
　　　　　　　　　　　　　ヽ､　　　　 ─= ‐　　　　ノ
　　　　　　　　　　　　　　　｀　､　　　　　　　, イ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　|> ､ _ , ィ´　 .|
　　　　　　　　　　　　　　　　r─|　　 　 　 　 ├‐ ､
　　　　　　　　　　　 　 　　 / ..| .}　　　　　　　 V 　 }
　　　　　　　　　　　　　 ／　 　V､　　　　 　／/　　 |＼



慣れた様子の手際に感心するより、
まだ生きている魚の腹を割き、串を打って塩を振りかける様子に
ジュンは少なからず衝撃を受けた様子だった。

二２８．



　　　　　　　　　　ﾊﾟﾁﾊﾟﾁ……

　　　　　　　　　　（(
　　▽　　　　　　　）　) 　　　　　　　　　 |`ゝ
　　/ヾ、　　 　　ノ 　　　　　　　　　　　_／/´
　 〔!;;;;ぅ　　 　 (（　　(( 　　　　　　　／ :;/'
　 λ。ﾉ　 　　 ）　　　　）　丿　　/@,;)ゞ　ｼﾞｭｳｩｩ
　　　Y　　　（( ( 　　　ノノ 　　　/
　　　｜　　　　　∴∵ 　　　　　/
　　　　　　　／/》||ヾミ＼

　　　　　　　 ＿/
　　　　　_／;@/
　　　　 /",:;ン　ｼﾞｭｳｳ
　　　　/,／
　　　`V



辺りが夕闇に包まれ、たき火のはぜる音と虫の音とが辺りを包む。

二２９．
オレンジ色の光が照らし出す狭い範囲に香ばしい匂いが立ちこめ、
我慢できない様子のジュンが五秒ごとに魚とやらない夫とを見比べている。
空腹もあってか、脂がしたたり皮がふくらむ様子に興奮が隠せないようだ。



　　/ ／.:/.: 　 i.:.:.:l.:.:.:l.:.:.:/ l.:.:.:.:.:.:｀`´.:.:.:.:.:.: |.:.:.､.:.:.:.＼
　 　 l.:.:./ .:.:　.|.:.:.:l..:/l.:.:/　|.:/l.:.:.l.:l.:.ﾄ､.:.:.:.:. |.:.:.:.＼ ￣
　　./.:./ :. :.: :|.:.:.:l/ .l.:/　 |/　l.:.:N.::.|__＼.:.::|.:.:.:.:.:.:l
　 /.:./ .: .:.:.: :|.:.:.:仁l/二ﾆ　　l.:仁l:/=== ヽ:!.:.:.|＼|
　 l:/.l.:.:.:.:.:.:. .ﾄ､.:.l ﾃ示ﾐヽ1 Ll/ l 「 戍ﾃﾐ　lﾄV　　　　「あぁ、良い匂いだなぁ。
　　　l.:.:/l .:　ﾊ:lN{　辷ｿ ﾉ ! 「￣l |弋辷ｿ　l1 l　　　　　家にいた頃はこんな野性的な
　　　l:/　l.:/　　 lL_ ＿＿ノ　 ,　　ヽ _二 ノ.:.:.　　　　　　食事なんて想像もしなかったよ」
　 　　 　 l/　､__',　　　　　　　 　 　 　　 /　.:.:.
　 　 　 　　　　　ヽ　　　　　r‐‐ｯ　　　/.
　 　 　 　　　　 　 入　　　　　　　 ,..ｲ.:.
　 　 　 　　　.　'´　i.:.＼＞ -- ＜/
　 　 　 　／　　 　 |.:.／＼　 　 ノ.:



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　／　 ヽ､_　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 （●）（● ）　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　「野性的、ねぇ」　　　　 （__人__）　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　（　　　　　 　 　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　{　　　 　 　 　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ⊂ ヽ∩　　 　 く
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 | '､＿ ＼　／　 )
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　|　 |_＼　 “　.／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ヽ､ ＿_＼_／




冒険者や街道を行く商人、旅人なら当然の野営も貴族育ちのジュンには別世界だったらしい。
苦笑してしまうやらない夫の横、腹ぺこの彼は口の中を唾で一杯にして魚が焼けるのを待ちわびていた。

二３０．


　　　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　　　　 ／　⌒　　⌒＼
　　　　　　　　　 |　 （●） （●）　|　　　「そろそろいいか、食べようぜ」
.　　　　　　　　 　|　　（__人__）　 |
　　　　　　　　　　|　　 |r┬-| 　 |
.　　　　　　　　　　|　　 `ー'´ 　 }
.　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　 }
　　　　　　　　 　　_ ゝ　　 　　ノ
　　　　　　　 　／　　 　　　　　｀ヽ



具合良く焼けた串を取り、まずはジュンに手渡す。
ありがとう、と受け取ったジュンは一瞬食べ方が分からずに戸惑ったのだが、
自分の分を手に取ったやらない夫がするようにかぶりついて、一言。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i: : : : : : : :',　　　 ＼: : : : : : : : ヾ: :＼'´＼:＼＼,ﾍ: ＼: : :r-､＼: : : ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. ,':ﾊ: : : : : : :',　　　　 ＼＼: :＼: : :＼: :＼r''ｨ＝=..､￣ヾ＼:ヽ ｀i: ＼: l￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/:/ l: : : : : : : :',　　　＿_ ＼＼: :ヽ＞､:ゝ/　llっ::::芯}　　ll　iー｀.|:＼::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:/　.|: ﾊ: : : : : ::',ｨ''´　　＿ミヽ ＼:ヽ　　ﾒ　　ゞﾐ=歹　　.ll　l　}　l: /:＞- '
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.|::i .',: : : : : : ', 　 ｨ彳＝ﾐ　ヽイ ￣　ヾ　 　￣　　　 ﾉ　|　 ./i: l＼i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |:|　',: : : : : ﾄゝ/　{il::::::と､　 ',　　　 　 ＼＿＿＿／　 |､_/:/:/＞ゝ
　　　　　　　　　　　　　　「旨い！」　　　　 |:|　 ',: :ﾊ: : :ﾄ､　　ﾍﾐ=夕　　 i　　　　　　　　　　　　　il: : /:/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |i　　 ',;i　ヾ: i ﾍ　　 ￣　　 ／　　｀　　　 _　 　 　 　 ∧从/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　　　 ';　　从＼＿＿ _ィ'´　　　　_ ィ''´ /. 　 　 　 /　i/　　　　,- ─ '
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀,_　＼　　　　　　　 ｀- 　　 　 　 　 /　　ﾄ- - -/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣ ヽ.>､　　　　　　　　　　　　　／　　　ヽr=''´￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ',ﾊ＞-　 _　　　　　　　／　　　　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ:ﾊ　 ヽ｀　　ー　　　　　　　 /　　　　　／￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 r＝-､ >､　 ＿ ＿ ,,　　　 ./　　　　／　￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ＿＿／　　　　＿ヽ＿　 　 　　　./　　　／　　　＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　＼　　　／　　　　　　／ ..ー
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ＼''´　　　　 ｨ ' ´

二３１．
しばしの沈黙の後。



: : : : :: : :、: : : ::::::,lll,,,,,,,,,,,,,__
: : ::_、,,､‐,l,: : : :,,ll,i,_ﾞﾞﾞllllllil,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,__
,,llll,,,lll,,i´,ll,ﾞl,、:,illilllllli,l,: ,lliillﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾟ”￣
lllil!llilﾞ゜:lllllllilll,.:llllllllllllllll::llllll!llii,,l,i､
l!lilllﾞιllllllllllllllillllll!lllllllll!,lllﾞ!liill!llllil,i､
illll!`lll:,lllllll!ﾞﾞlﾞ!!ﾞlllllﾞ!lllllll,llll,,ﾞ!lliﾞllll!llil,i､
!l】l::lllﾞllllllll:: : : : : : :|llllllllllllil,,ﾞlli、ﾞﾞlllll,,、
ilﾟ,ll:lll|llllllll: .: : : : :.::|'lllllllllll!lili,ﾞlll　　ﾞﾞﾞ!l,,、
lﾞ,lllllll|llllllll:.､:::x,、:､:|'llllllllll.lllllli,lli,　　　 ﾟﾞ=:
,,llll!,lllllllllll: : : : ﾞ'N,,,.,lllllilll|:l!ll!lli,li,　　　　　　　　　　　「ちょっと、
illlilil!llllllllll、::::::::.,,.::_ll!,lﾞ'llli,"ll｀ .'!li,,　　　　　　　　　　　足りない………かな？」
llilllll:ﾞllllllllll､､:､:ハ::ﾞi!ﾞ,l｀|lli"ll
lllllll:_,ﾞllllllll〆":'│::.ﾞ.:｀､.＝,｢
!|llll'｀::'!llllﾞli､丶'|,!::::::::::::::i!lﾞ,!
::)ll′: :ﾞ!llﾞﾞl: : ::|:．: : : : :`|::l、
、'l、:: : :ﾞ!!::｀::、U,、,:、..,i,|、ﾞi,、
、::｀::: 丶丶丶:::ﾞ!i{h,､_,ｼ｀::::::.|
: : : : : : : : : : : : : : : : ｀: : : : :lﾞ
: : :｀: : : ::｀: : : : : : : : : : : : :/
: : : : : : : : : : : : : : : : :: : :: ,″
: : : : : : : : : : : : : : : : : △:′
､、: : : ::::::::｀:::::::::::::::::: ,,-｀
: ｀"'ヽ,,: : : : : : :｀:_,,r,i´
: : : : : :ﾞ・: : : ::‐'''~｀



夢中で口を動かす事に没頭してあっという間に四匹を平らげたジュンが、
物足りなさそうな顔で自分と自分が食べる最後の一匹を見つめるので、
思わず吹き出したやらない夫は携帯食を手渡してやった。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　 ヽ､_　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（●）（● ）　　　|
　　　　　　　　　　　　「んじゃ干し肉と乾パンでも食べとけ。　　　　　 　　　　（__人__）　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 （｀⌒ ´　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　実は昨日町に入ってから　　　　　　　　　　　　.　 　 　 {　　　 　 　 　 |
　　　　　　　　　　　　　市場に行ってないんで　　　　　　　　　　　　　　　　　　　{　　 　 　 　 ﾉ
　　　　　　　　　　　　　芋とかの手持ちがあんまり無いんだよ」　　　　 mｍ 　 ヽ 　 　 　ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（⊂　￣￣￣　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　￣￣￣|　　　　|

二３２．
明日市場に行ってくるとのやらない夫に、固くて味の濃い干し肉と、
逆に全く味のない乾パンを囓るジュンは今日は非常事態なんだね、と納得したが。



　　／::::::::::::::::::::::::::::/::::＼:::::|::::::ヽ:::::::::::::::::＼::::::::-──
　_,,- -ィ::::::::::::::::::::/::::::::::i:::V::::::::::::>:::::::::::::::::: ＼:::::＼
　　／::::::::::::::::::::／::::::: : :|:::::V/￣　V:::::::::::::::::::::::＼::::ヽ
　/::::::ィ:::::::::::::::{:::::::::::::::i: |￣　　　　 V::ﾄ:::::::::::ﾊヽ;;::ゞ:::ﾍ
　:::／:::::::::::::::::::|::::::::::::::ﾊ:|　　 　 　　 |::i　＼:::::::}:::::ﾄ-;;::::ﾊ
　/:::::::::::::::::::::::: |:::::::::::::| ﾘ───''　 i:ﾘ　ﾆ彡:::iト､;ヽ ＼::i　　　　「なんだ、だから魚なんだね。
　:::::::::::::::::::::::::::::|::::::: :: |＿,,,-＝＝=ヽ/　_||=__ﾒ:|　||　　　ヾ　　　　明日は出店で何か買ってきてよ」
　::::::::::::::::::::::::::::ハ:::::-::|＞''￣=.ィ-　 ||＝||{t..:jｱ　||
　::::::::::::::::::::::::::::i＞＼:: |||ﾏﾊ廴ｿ　　..川　ﾊ￣　iノﾉ
　:::::::::::::::::::::::r-､}''´　＼||　￣　　　 //　 ﾉ ｀￣ |´
　::::/i:::::::::::::::| /ヽ　　　　ヾ＝=─''´´　　　　　 /
　:/　|::;;::::::::::ヽ　　＞　　　　　　　 ｀ー -　　／
　　　ﾚハ:::::/i::::::≧::-:､　　　　　　　　　　／
　　　　　 ﾚ'　￣￣￣Yi　　　　　　_＿__./ ＿
　　　　　　_...-:::'´￣￣｀:-..､　　　 |ー-　∧　}､＿
　　　　 i: : : : : : : : : : : : : : : : ｀::-.┴..､: /: :}: :}: : : ヽ
　　　 /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :: : ヽ　/::/: : : : ∧



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　 ヽ､_　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（●）（● ）　　　|
　　　　　　　　　　　　　「買ってくるのは野菜と携帯食だけだぞ。　　 　　　　（__人__）　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　明日からはジュンが魚捕りをするんだ」　　 　　 　 （｀⌒ ´　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　 { 　 　 　 　 　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　{　　　　　 　 ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　　 　ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾉ　 　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /　　　　　 |


修行だ修行、と当たり前のように言うやらない夫。

二３３．

::::::::::::::::::::::::::ﾊ::::::::::::::/i/／ i:::::::::::::::::::::::::|::::::|:::::::::::::::::ヽ:::::::::::::::＼
::::::::::::::::::::::::::::ﾊ;;;;;;;;;/-'´ 　 .|::::::::::::::::::::::::ﾄ::::: ﾄ::::::::::::::::::::i:::::::::::::::::::ヽ
::::::::::::::::::::::::::::::ﾊ￣　　 　 　 |::::::ﾊ::::::::::::::|　＼i ＼::::::::::::|:::::::::::::::::::::ﾊ
::::::::::::::::::::::::::::;:::ﾊ　　　 　 　 |:::/　V::::::::::ﾘ　　　　ｨ=ﾊ:::: |::::::::::::::::::::::::＼
:::::::::::::::::::::::::::::iヽ:ﾍ　　　　　 |:/　　 V::::::/　　　/ｲ＝ﾌi｝ヾ─────'｀
ヽ:::::::::::::::::::::::::|　＼ヽ　　 　 |i!　　　 ｝::/　　　r''´ゞハi l:ヽ　　　　　　　　　　　　「ええっ？
::::＼::::::::::::::::::::|　　 ＼　　　＿＿ニ三ｲ　　　||r j｝i|　.i lヾ｝　　　　　　　　　　　　で、できるかなぁ」
::::::::::＼::::::::::::: |　　　／::::＿,,,ィ彡=''´i/il_,=＝|.しｿﾊ ﾉﾉ-､
:::::::::::/ ＼::::::::::ヾ ／:- ''´＞''´ -=ｲ｀　 ||r'´｀ ﾊ彡　ｙ/: : : :＼ニニミ-､
::::::::/　　　｀ー- xゝ rィ彡''´イッ:::ﾘ　　/i　　　ミー=´i: : : : : : :｀:-:､: : :｝ｿヽ
:::::/::ﾊ＿＿＿＿＿/ /　 /　ﾋ:::..ソﾉ　｛.ﾘ　　　　｝.　 l-､: : : : : : : : i: ://: :ﾊ
￣ヽ──────､ﾊ　ヾ　　ゞ''´　 ノﾉ　　　 ./　 ./: :ﾉ: : : : : : : : l: i l: : : ﾊ
i ヽ　｀ -ゝ　　　　　　ヽヽ　ミ=''´　／／　　　　 　 /: : i: : : : : : : : : l: i l: : : : :ヽ､
｛　　ﾊ　　　　　　　　　＼＼＿_／／　　　　, ィ　/: : :/: : : : : : : : : : /: : : : : : : : ＼
　｀　　 廴　　　　　し　　　ー─''´　　　 ir'_´'´ ./: : :/: : : : : : : : : : /: : : : : : : : : : /
>､＿　　　ー　　　　　　　　　　　 　 　 　　 　 /: : :/: : : : : : : : ::／: : : : : : : : : : :/
: : : : : ＞-､＿ハ､　　　　　　　　　　　　　　　ハ／: : : : : : : :／: : : : : : : : : : : :/ハ




木刀一本で水面下を通る魚をはじき出すなんて、もちろんやった事は無いが
簡単にできそうにない事は想像に難くない。

不安で仕方がないジュンに、腕を組んで大丈夫さと言ったやらない夫は
腹が落ち着いたようなので続きをするぞと椅子代わりの岩から立ち上がった。

二３４．

　　　　　　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　　　　 　 　 _ノ　　ヽ、　　＼　 　,.:┐
　　　　　　　　　　　 .（ ●）（ ●）　　..|　／　｜　　「さて、次は気配を探る方法だ。
　　　　　　　　　　　 （__人__） 　　　　.|./　　 /　　　そしてこれは、繰気技術の初歩でもある」
　　　　　　　　　　　　 i⌒ ´ .r－､　　|/　 ／
　　　　　　　　　　　　 { 　 　 ヽ,　',. .,/　:/',
　　　　　　　　　　　　 .ヽ　　　.|　 l_/_, -‐､',
　　　　　　　　　　　　　 .ヽ　.　| 　 / , -－'i|
　　　　　　　　　　　　　　/　　 {　　V , -－ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　|　　　ヽ　 Ｌ|　r=　|


繰気技術。
生物が発する生体エネルギーを操作して攻撃や防御、肉体の強化などを行う、
戦士には必須の技術の始まりを告げられ、ジュンはいよいよか、と姿勢を正した。

先天性でしか得ることの出来ない才能、『魔力』を持たなければ行使できない理力魔法や
神々と契約しなければ扱うことの出来ない神聖魔法など、
何らかの前提条件が必要となる魔法とは異なり、理屈上は誰でも習得が可能である。
だからこそ人は繰気技術を用いた戦技を発達させ、外敵への対抗手段としているのだ。

二３５．

　　　　 ／￣￣＼
　　　／　　 _ノ　　＼
　　　|　　　 （ ●）（●　　　「実際に相手が見えていると
　　　|　　　 　 （__人__）　　　必要ない思うかも知れないが、そんな事はない。
.　　　|　　　　　　　　ﾉ　　　　相手がいつ打ち込んでくるか分かるようになったり、
　　　 |　 　 　 ∩ ノ ⊃　　　後の先、先の先を取って攻撃する事だって可能なんだぜ」
　　／ 　 　 .／　＿ノ
　 (.　 ＼ ／　.／_ノ │
　　＼　 “　／_＿_|　 |
.　　　 ＼／ ＿＿＿ /


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 __ 　 -─-　_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 -=ニ二::::::::::::::::::::::::::::_＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ／:::::::::::::___:::::::::::::::::｀７
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「ごのせん？　　　　　　　　／::::::::::::::::f┴‐ﾍ::::::::::::::厶
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　せんのせん？」 　 　 ∠ イ::::::::ｉ:::::::|_,.∠､ﾍ:::-､:::::/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 |:::::::::|ｌ:::ﾄ〈　 　 } Ⅵ }::/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 lハ::::|｢｀Y、 ¨´　　｀y'´￣￣｀i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ヽ个‐'　_ .ィ　 //　/／　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 V ﾉ＞ ､__.. </　 '　　　　　{
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /　/　　　　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　　　　　　 }
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 l　　　　　　　　 |



分からないジュンが首を傾げたので、ああ、と頷いたやらない夫は補足を入れてやった。

二３６．

　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　／ _ノ　 .ヽ、＼　　　　　「これについては諸説あるらしいが、
　　　　　　|　 （●）（●）　|　　　　　親父から教わった事そのままだと
.　　　　　　|　　（__人__）　.|　　　　　こういう事らしい」
　　　　　　 |　 .　'´ｎ｀'　 .ﾉ
　　　　　　 .ヽ　. 　| |　　}
　　　　　　　 ヽ..　ﾉ .ュノ
　　　　　　　　/　{ ..ﾆj､
　　　　　　　　|.　| "ﾂ　＼
　　　　　　　　|.　| .l　　|ヽ、二⌒)

　┌──────────────────────────┐
　│先の先：単純な先手ではなく、相手の動きだしに先んずる　　.....│
　│後の先：相手が動き出してからカウンターを取る　　　　　　　 　 │
　└──────────────────────────┘



: : : : :: : :、: : : ::::::,lll,,,,,,,,,,,,,__
: : ::_、,,､‐,l,: : : :,,ll,i,_ﾞﾞﾞllllllil,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,__
,,llll,,,lll,,i´,ll,ﾞl,、:,illilllllli,l,: ,lliillﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾟ”￣
lllil!llilﾞ゜:lllllllilll,.:llllllllllllllll::llllll!llii,,l,i､
l!lilllﾞιllllllllllllllillllll!lllllllll!,lllﾞ!liill!llllil,i､
illll!`lll:,lllllll!ﾞﾞlﾞ!!ﾞlllllﾞ!lllllll,llll,,ﾞ!lliﾞllll!llil,i､
!l】l::lllﾞllllllll:: : : : : : :|llllllllllllil,,ﾞlli、ﾞﾞlllll,,、
ilﾟ,ll:lll|llllllll: .: : : : :.::|'lllllllllll!lili,ﾞlll　　ﾞﾞﾞ!l,,、
lﾞ,lllllll|llllllll:.､:::x,、:､:|'llllllllll.lllllli,lli,　　　 ﾟﾞ=:　　　　「単純な先手では無いって？」
,,llll!,lllllllllll: : : : ﾞ'N,,,.,lllllilll|:l!ll!lli,li,
illlilil!llllllllll、::::::::.,,.::_ll!,lﾞ'llli,"ll｀ .'!li,,
llilllll:ﾞllllllllll､､:､:ハ::ﾞi!ﾞ,l｀|lli"ll
lllllll:_,ﾞllllllll〆":'│::.ﾞ.:｀､.＝,｢
!|llll'｀::'!llllﾞli､丶'|,!::::::::::::::i!lﾞ,!
::)ll′: :ﾞ!llﾞﾞl: : ::|:．: : : : :`|::l、
、'l、:: : :ﾞ!!::｀::、U,、,:、..,i,|、ﾞi,、
、::｀::: 丶丶丶:::ﾞ!i{h,､_,ｼ｀::::::.|
: : : : : : : : : : : : : : : : ｀: : : : :lﾞ
: : :｀: : : ::｀: : : : : : : : : : : : :/
: : : : : : : : : : : : : : : : :: : :: ,″
: : : : : : : : : : : : : : : : : △:′
､、: : : ::::::::｀:::::::::::::::::: ,,-｀
: ｀"'ヽ,,: : : : : : :｀:_,,r,i´
: : : : : :ﾞ・: : : ::‐'''~｀

二３７．
先に攻撃したら先手でしか無いんじゃないのかなぁ、いまいち掴めないジュンに、
やらない夫はつまりこういう事だ、と指を突きつけた。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,, -‐ ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/'　　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼ 　　　　 ./　　　　　 i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ ._ノ　　ヽ､＼ 　　 /　　　 ...........i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　 （●）（●）　|　　/　　 ..:::::::::::::::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　（__人__）　 | 　/　　..::::::::::::::::::l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.|　　 ｀ ⌒´　　.} ./　　..::::::::::::::::::::!
　　　　　　　　「未発の気、つまり相手の　　　　　　 　　　　　 |　　　　　　 　 }/　　.::::::::::::::::::::/
　　　　　　　　　『今から攻撃を開始する』気配を　　　　　　　 ヽ　　　　　　 ./　　 .:::::::::::::::::::/
　　　　　　　　　読んで、その隙を突くって事だ。　　　　　　　　.ヽ　　　　. .／　　.:::::::::::::::::::/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,. ‐'"´　 `'‐,r''"~　　　.:::::::::::::::::／
　　　　　　　　　攻撃に出る瞬間って意外に　　　　 ..:.／,. -‐‐- ､　l′　　 　 ..:::::::::::::／|
　　　　　　　　　隙が多いもんだろ」　　　　　　　　　 :,'　　　　　　／　　　　 　 !.:::::::／:i..:..l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　r　　　､　 / 　 　 　 　　　 !:::::::::::　i..:..i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l　　.......`:i　　　 i 　 　 　 　 !::::::::::　ﾞ､:.i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　!　 ::::::::::/　　　　i　　　　　　 i::::::::::　ヽ:i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.!　::::::::/　　　　　i　　　　　 .....i:::::::::::　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.ヽ ::::::|　　`､　　 `､　 .....::::::::::::l:::::::::::: 　`,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ ＼:::l.　　 `､　　　ヽ::::::::::::::::::::l::::::::::: 　/'''ー─----､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　`ヽ　　 `､　　.::::＼:::::::::::::::|:::::::::　/,,　　　,. ‐;''

二３８．

　　　　　　　　　　 　 ＞'´　／　　 ∧　 　 ｜　　　　i|　ヽ.　 　 　 ＼
　　　　　　 　　　　／ 　 ／ 　 　 /::::ヽ　_,斗:.:.:.: : 　 |　　 !　　:...　　 ＼
　　　　　　 　　 　 〉 　 　　　　::ー‐^´¨　|:.: : !:.:..　ﾄ､　 |　　 :.:.:...　: :..｀ー-､
　 　 　 　 　 　 　 |　　　| 　ｉｌ　　::|　　 　 　 ! ::∧:. :. 　,=‐ｉ　　　:.:.:.:.:...:.:.:..:.:.／
　　 　 　 　 　 　 /　.:.:.:.:|　 i| 　 ::| 　 　　　 | / ,ｨ|,.イ´__ ∧　 ..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／　　　「なるほど。
　　　　　　　　　/ :::／イl|　 ｌ|　 ::|=､＞ｰ=､ ｉ′|:rレ弍¨ヽ ﾄ :.:.:.:.:.:.:.:.:.／　　　　　だから君は今日、
　　　　　　　　./::／　 /　　　|　　|´戈¨Ｔ |ﾄ==､||　弋__ソ‐|/.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼　　　　　シンジのオーラスマッシュを
　　　　　　　　ﾚ'゜ 　 /　／　 iヾヽ! 辷_ソ｣|　　 ヽ=＝＝=='　ﾏヽ.:.:r-‐'´　　　　　易々と受け止めたのか」
　ｒr‐、 　 　 　 　 　 レ'　ﾚ'〉　! ヾﾆ==＝ ′〈　　　　 　 　 　 'ノ::;;;>
　ﾄ'　| 　 　 　 　 　 　 　 　 ￣ヾﾇ、　　　　　 ｀　　　　　　　,/‐'´
　| 　|　　　　　　　　　　　 　 　 ￣ヽ　　 　 　 ー‐　　　 　 /
..ﾉ 　l'⌒!　　　　　　　　　　　　　 　 ＼　　 　 　 　 　 _, ィ´
´　ノ^ヽ '､　　　　　　　　　　　 　 　 　 ｀¨ﾆt-　　-‐'　ﾄ-┐
　　／｀ヽ.ヽ、　　　　　　　　　　＿　 　/´iイ　　　　　 |/　ヽ―-- ､__
　　 ‐'´｀ヽ. ｉ､　　　　　 　 　 ／i　 ゞ7″ | ′　　 　／　 　 |　　　 　｀ヽ、
＼ 　　イ-' 　ヽ　　　　 　 ／　 i　　/　,ﾍ |＿___,_／ |―､　 |　　　　/　　ヽ.
　 ヽ.　 ″　 　 ｌ　　 　 ／-‐'´ | .//／　ヽﾄ-―/ニ,ﾉ　　＼| 　 　 /　　 ＼'､
　　　＼　 　 　 l.　,.-‐' 　 　 :　ﾚ' ′　　く !　 //　　　　　　　 　 / 　 　 　 ヾ、



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　ヽ､_　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. （　（● ）　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. （人__）　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　「見切りはまたその応用なんだけど、　　　　　　　　 r-ヽ　　　　　 　　 |
　　　　　　　　　　　　　　まぁ要するにそういう事だろ」　　　　　　　　　　 　 （三） |　　　 　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　>　ノ　　　　　　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ 　/ ヽ　　　　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ 　/　へ>　　　 <
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|＿__ヽ　　＼／　 )
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|＼　　　／|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　 ＼_／　|

二３９．


: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : |: : : : : |: : : : ヽ: : ヽ
: : : : : : : : : : : : : : : :./＼: : : : : ﾄ､: : : : ﾄ､: : /: :∨ :.l
: : : : : :∧: : /──{/､.　 ＼ : : |.-＼: : |ｰ∨､: : : : : |
: : : : :./　1/　　　　　.i　　　l＼:|　　 ＼|　　　|: : |＼;!　　　「あのさ、聞いてると
: : ,､: :{　　 　 　 　 　 |-‐‐-|　　　　　　　　　.|:ヽｉ　　　　　　とても僕に出来そうにないんだけど？」
: :{　ヽ'　　 　 　 　 　 !　　　|　　　　　　　　　ﾊ:_}
ﾊヽ　ヽ＿＿＿＿＿,ﾉ　　　ヽ＿＿＿＿___ﾉ　}
ハ: :｀-',　 ! | | 　! !　　　　　　' ! |' | |　川/　ノ
　 〉: :.:∧　　　〃'ー──-----､　　　 ,ｲ"´
　　￣　　＼　 ヽ＿＿＿＿＿_丿　 ／
　　　　　　　 ＞､　　　　　　　 　,イ´
　,────､＿_｀ ,‐──┬'"´　＿＿
/　　　　　　　　| 　 !　　 　 |￣l￣　 　 ｀ヽ
.　　　　　　　　 |　　ｰ──' 　ﾘ　　　　　　}



一流の戦士の技術じゃ無いか、と顔を青ざめさせるジュンにやらない夫は平然と言い放つ。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 rヽ　　／　ノ　　＼ ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　!　　|　 （●）（●）　|
　　　　　「いや、コツさえ掴めば簡単だろ。　　　　　　　　　　　　　 r;r‐r/　|. 　|　　（__人__）　 |
　　　　　　まずは楽な姿勢で座って目を閉じてくれ」　　 　 　 　 〈_L (｀ヽ .}　　|　　 ｀ ⌒´　　ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l｀ （ ｀`/　.　 |　　　　　　　 }
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ 　　l　　.　 ヽ　　　　　 　}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|,. 　 l　　 /⌒　 　ー‐　　ｨ ヽ




半信半疑ではあるが、彼の言うとおりにしようと決めてここに居るのだ。
砂地に座って目を閉じたジュンが深く呼吸を繰り返すと、やらない夫の静かな声が耳に届いてきた。

二４０．
┏──────────────────────────────────────────────┓

　　　　まずは心を落ち着けようか。
　　　　緊張するのは仕方がないが、そのせいで身体まで萎縮させたら駄目だろ、
　　　　緊張なんてのは気の持ちようでそのうち楽しめるようになるもんだ。

┗──────────────────────────────────────────────┛




　　　　　　　　　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ|:.:.＼
　　　　　　　　_ - ' ´:.:.::.:.:.:.:.:.:.:_:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヾ:.:.::＼　　 ,
　　　　　　　ヾ､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::､:.:.:.:/ ／/
　　　　　　　　　＞:.:.:.:.:.:／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／:.:./:.:.:.:.:.:.:.:ﾚ:.:.:/
　　　　　　　　 /:.:.:.:.:.:./:.:.:.:._;,;,-‐''''´:.:.:.:.:./:.:.:./:.:.:.:.-='´
　　　　　　　　｀ -､:.:.:/:.／/ ゞ:.x ､-ー ''´|:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.＼
　　　　　　　　　　ﾚ､:ﾚ´∧ /　｀　 ＼　.ヾ|:.:/|:.:.:.:.:.|:.:.:r､_::ゝ　　　（……………）
　　　　　　　　　　　 ミ,;,;:.::|　　　　 　 ｀＞ミ_.|:.:.∧|:.:.:.:}
　　　　 ,＿＿ r‐─ v'´　 ヽ　　　　　／ヽ∠.|:/|:./:.:.:.:.|
　 　 /.: : : : : : ＼: : : :＼ 　 ､　　　　　ヽ ' |'' ´ ﾚハ:.:./
　　/／＼: : : : : : ＼: : :: :>v ＼　 ヽ_ , -―
　.//: : : : :＼: : : : : : V/: : K: : : ミ'´
../: : : : : : : : :＼: : |: : V: ∨: V: 入
/: : : : : : : :: ::: : :V: : : : : : ＼//: :/ヽ



┏──────────────────────────────────────────────┓

　　　　それから耳で聞き、肌で感じるんだ。
　　　　目に見えるものに頼っているようでは遅い。

┗──────────────────────────────────────────────┛

二４１．
┏──────────────────────────────────────────────┓

　　　　川のせせらぎは聞こえるか？

┗──────────────────────────────────────────────┛



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,,....;:''''"~￣~`''
　　　　　_,,....;:''''"~￣~`''-､_　　　　　　　　　　_,,....;:''''"~￣~`''-､__,,....;:''''"~
　_,,....;:''''"へ/二| へ＾i　　　￣~`''-､__,,....;:''''"~　　　　　　　　　　　　　`''-､
￣~`''ｰ-|Π|　　||Πi￣!　_,,....;:''''"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　`''；';.,,;；`;
　　,.;;.;i；';.,,;；`;；i`、､_　　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿__.;；:｡;:；;:：､;；:`''-､__
_,._,._,.,;:;；`;；i`:;：i;,|i!''",.／|＼|／|＼|／|＼|／|＼|／|＼／|＼|＼|／|＼|／|＼:;；`;；i`:;：;,i
　　　　　_,,...--―.;.;.-'"~￣~`''-､_￣ ￣ ￣ ￣ ￣ ￣ ￣ ￣ ￣ ￣ ￣ ￣ ,r'''''lｲﾄｌi"~~`''-､__
--―''''"~_,,...i''''"~　　　　　　　　　 ~`''-､,''",''"ﾞヽ,_,._,._,._,.._,.,._,._,_,_,,,r''"ﾞヽ,.r'''
_,,...!''''"~　　　　　　　　　_,,....;:''''"~,''"ﾞヽ, '""~""~'　　　　　　　　,''"ﾞヽ　,''",''"ﾞヽ,,._,._,
　　　　　　　　_,,....;:''''"~　　　　 　~"'"~　　　　　　　　　　　　　 ~"'"~　'""~""~　;:''''"~
　　　　　　　（　　　　　:.:.:.:.:.:.:　　　　　　　　:.:.:.:.:.:.:　　　　　　　　　　　　　;:''''"~
　　　　　　　　`''-､_　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　`''--､
　　　　　　　　　　　"''-､_　　　:.:.:.:.:.:.:　　　　　　　　:.:.:.:.:.:.:　　　　　　　　:.:.:.:.:.:.　`''--､
　　　　　　　　　　　　　　`''-､

二４２．
┏──────────────────────────────────────────────┓

　　　風のさわめき、匂いはお前に何を語りかけている？

┗──────────────────────────────────────────────┛



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,::::.:::::::::::::::::::.::::::::.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.::::::::::::::::::::::::::。::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::o。.::::,。::::::::::::::::。ﾟ::::ﾟ::::::::。:::::::::::::::::::::::.:::::::::::::::::::,:::::::::::::::::::::::::::.::::。::::°::::.ﾟ。。＋o:::::::::::::::::::
:::::．o::::.::::。::::*。::::o::::.。::::,::::ﾟ::::::::::::::::::::::::::::::ﾟ::::。::::::::::::::::::::::::::::::.．:::::::::::::::::::::::::::::::::::::o:::::::::::::::。．:::::
::::::::::::.::::．::::。::::::::::::::．*::::。:::::::::::oﾟ.::::．::::::::。:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.:::::::::::。::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:,.:,; ' ''..　.,;.'..:⌒`;,: .　　..;;.,　　　　　:::::::::::::::::。::::::::．::::::::::::::::::::::::::::.:::::::::::.::::．:::::::::::::::::::::::::::::::::::::.::::。::
.ﾟ::,,.;. ; :.,　　　.. .''... .. '　　 ..;,):　　　:::::::::::,::::::::::::::::.。::::*::::::::::::::::::::::::ﾟ::::。+::::::::.::::::::ﾟ:::::::::::。::::::::ﾟ:::::::::::::
:。.::::。:::::::::::::::''　　'.': ;,::.　. 　..., ;)　::::o::::::::.。::::::::::::｀::::,。::::*。::::::::::::::::::::::::::.ﾟ。:::::::::::。::::.:::::::::::.::::::::。::
:::::.''.:.:´⌒`.: .: ...　　　　. ...,. . ,;　　:::::::::::::::::::+::::o:::::::::::::::::::::o。.::::,。::::::::::::::::。ﾟ::::ﾟ::::::::。:::::::::::::::::::::::.:::::
:.''':.　.,'''.:;.　.::　.'.　,.:,;　　...,; ''　　　:::,.ﾟ。:::::::::::::::::ﾟ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::。::::*::::。+::::.。::::+::::ﾟ。::::::::ﾟ::::ﾟ.::::ﾟ:
:-'' ' '　　　ー''　ｰ　 '''　'' 　　　　　::::::::::::::::,:::::::::::::::::::.:::::::::::::::::::::::。::::::::ﾟ::::ﾟ。::::::::::::::::。,::::.。 o::::::::::::::::::
::::::::::::::,:::::::::::::::::::::::::::.::::。::::°::::.ﾟ。。＋o:::::::::::::::::::::::::::::。::::ﾟ.。::::::::::::::::::::ﾟ。*ﾟ.。。 o:::.:: ..'...:⌒`　　: .: ..,,;.,
:。.::::。:::::::::::::::::::::::::+。ﾟ::::.。。::::::::::::::::o::::::::.。::::::::::::｀::::,。::::*。::::::::::::::::::::::::::..: ...:::⌒`　''　　　　　　　　　 　'.':. .,.; ,..
::::::::::::::::。:::::::::::,:::::::::::ﾟ:::::::::::::::::.::::::::,.:::::::::::::::ﾟ:::::::::::。::::+。::。 o:::::::::::.(　　　 .: .....:　　　...:.: .: ⌒` .: ..:.: .: ...　.　 .:.:.
.ﾟ::::::::::::::。*::::::::::::::。::::.+: :::ﾟ。:::::::::::::::::::::::,::::::::::::::::.。::::*::::::::::::::::::::::::ﾟ::::(.,　.: ...　: .　 .:　 .　　::: ....::..　: 　.　.:　... .. .
::::::::::::::::::o。.::::,。::::::::::::::::。ﾟ::::ﾟ::::::::。:::::::::::::::::::::::.:::::::::::::::::::,:::::::::::::::::::::::::::.::::。｀　.　:. .;;,　　.:;. 　 .　　.　 .: 　　　.　..::
:::::::::::::::::::o＋。。ﾟ.::::°::::。::::.:::::::::::::::::::::::::::,:::::::::::::::::::.:::::::::::::::::::::::。::::::::ﾟ::::ﾟ。:::::::::::::::: '' ' 'ー　'''　　''　―'''　''　‐-''
::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾟ::::::::。::::ﾟ::。ﾟ::::。::::。::::ﾟ+:::::::::::::::::::::::::。ﾟ。:::::::::::::::::::::::::::::.ﾟ。ﾟ。:::::::::::::::::::::::::*::::ｏ::::.ﾟ
:::。:::::::::::::::::::::::::.::::::::.:::::::::::::::::::.::::::::,:::::::::::.::::::::ﾟ:::::::::::::::::.::::::::ﾟ::::.::::.ﾟ::::.ﾟ.:::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾟ.:::::::::::::::::::::::::

二４３．
┏──────────────────────────────────────────────┓

　　　　全ての事柄に神経を集中させ、同時に一つに神経を集中させないようにするんだ。
　　　　周りと自分が一体化していくのを感じるだろう―――

┗──────────────────────────────────────────────┛




　　　　　　　　　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ|:.:.＼
　　　　　　　　_ - ' ´:.:.::.:.:.:.:.:.:.:_:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヾ:.:.::＼　　 ,
　　　　　　　ヾ､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::､:.:.:.:/ ／/
　　　　　　　　　＞:.:.:.:.:.:／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／:.:./:.:.:.:.:.:.:.:ﾚ:.:.:/
　　　　　　　　 /:.:.:.:.:.:./:.:.:.:._;,;,-‐''''´:.:.:.:.:./:.:.:./:.:.:.:.-='´
　　　　　　　　｀ -､:.:.:/:.／/ ゞ:.x ､-ー ''´|:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.＼
　　　　　　　　　　ﾚ､:ﾚ´∧ /　｀　 ＼　.ヾ|:.:/|:.:.:.:.:.|:.:.:r､_::ゝ　　　（やらない夫………歩いてる。
　　　　　　　　　　　 ミ,;,;:.::|　　　　 　 ｀＞ミ_.|:.:.∧|:.:.:.:}　　　　　　　今、僕の少し後ろかな）
　　　　 ,＿＿ r‐─ v'´　 ヽ　　　　　／ヽ∠.|:/|:./:.:.:.:.|
　 　 /.: : : : : : ＼: : : :＼ 　 ､　　　　　ヽ ' |'' ´ ﾚハ:.:./
　　/／＼: : : : : : ＼: : :: :>v ＼　 ヽ_ , -―
　.//: : : : :＼: : : : : : V/: : K: : : ミ'´
../: : : : : : : : :＼: : |: : V: ∨: V: 入
/: : : : : : : :: ::: : :V: : : : : : ＼//: :/ヽ

二４４．
┏──────────────────────────────────────────────┓

　　　　―――この世界は命に満ちている。ジュン、お前もその中の一つなんだ。

┗──────────────────────────────────────────────┛



　　　　　　　　　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ|:.:.＼
　　　　　　　　_ - ' ´:.:.::.:.:.:.:.:.:.:_:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヾ:.:.::＼　　 ,
　　　　　　　ヾ､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::､:.:.:.:/ ／/
　　　　　　　　　＞:.:.:.:.:.:／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／:.:./:.:.:.:.:.:.:.:ﾚ:.:.:/
　　　　　　　　 /:.:.:.:.:.:./:.:.:.:._;,;,-‐''''´:.:.:.:.:./:.:.:./:.:.:.:.-='´
　　　　　　　　｀ -､:.:.:/:.／/ ゞ:.x ､-ー ''´|:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.＼
　　　　　　　　　　ﾚ､:ﾚ´∧ /　｀　 ＼　.ヾ|:.:/|:.:.:.:.:.|:.:.:r､_::ゝ　　　（なんだ―――？）
　　　　　　　　　　　 ミ,;,;:.::|　　　　 　 ｀＞ミ_.|:.:.∧|:.:.:.:}
　　　　 ,＿＿ r‐─ v'´　 ヽ　　　　　／ヽ∠.|:/|:./:.:.:.:.|
　 　 /.: : : : : : ＼: : : :＼ 　 ､　　　　　ヽ ' |'' ´ ﾚハ:.:./
　　/／＼: : : : : : ＼: : :: :>v ＼　 ヽ_ , -―
　.//: : : : :＼: : : : : : V/: : K: : : ミ'´
../: : : : : : : : :＼: : |: : V: ∨: V: 入
/: : : : : : : :: ::: : :V: : : : : : ＼//: :/ヽ

二４５．


　　　　　　　　　　　　　 ／:::::::::::＼
　　　　　　　　　　　　／:::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　|::::::::::::::::::::::::::::::|
　　　　　　　　　　　　|　　　 　　（__人）
　　　　　　　　　　　　|::::::::::::::::::::::::::::ﾉ
　　　 　 　 　 　 　 　 ヽ:::::::::::::::::::::ノ
　　　　　　　　　　　　 /.:.:::::::::::::::/
　　　　　　　　　　 _,r'ﾞ.:.:::::::::::::.:.:.＼
　　　　　　 ,．-‐'´.:.::::::::::::::::::::::::::::.:..`ヽ､
　　　　　 /.:.:.:.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.:.＼



やらない夫の立つあたりに、何かが感じられる。
強く猛々しい、脈動するのような力の波。

二４６．



　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾘｰﾝ…
　:　:　:　　:　:　　:　　:　:　 :　　::: :ﾘｰﾝ…　　:
～~~~~～~~~~～～''~~~~～'''~~~''~~～～～~~~''~
::;;; : ;;:::: ::;;; : ;;:::: ::;;;　ﾟ:: ::;;; : ;;::: :;;; : ;;w　::::;;:::: ﾟﾟ。
;; : ;;:::: ::;;; : ;;:::: ::;;; ,,ﾟﾟ::;;; :　v;;:::: 。 ;;:::: ::;;; : ;;:v.;;:::: ;
;;; : ;;:::: ::;;; : ;;:::: ::;;; : ;;:::: ::;;; : ;;:::: ::;::;;; : ;;: ;;; : ;;; : ;;::
　　　ｺﾛｺﾛｺﾛ…



虫の声が聞こえる草むらには、小さな小さな水滴のような気配。

二４７．
そして、自分の中で脈打つ炎。



　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,,、､-‐‐‐‐-　､.,_
　　　　　　　　　 　 　 　 _､-'' ｀　　　　　　　　　　´''‐ ,_
　　　　　　　　　　　 _､‐｀　　　　　　　　　　　　　 　 　 ´'‐,_
　　　　　　　　　　､ ｀　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　^ _
　　　　 　 　 　 ､｀　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　´ ,
　　　　　　　　,｀　　　　　　　　　　　　　,'　　　　　　　　　 　 　 ´_
　 　 　 　 　 ,｀　　　　　　　　　　　　　 (:'　　　　　　　　 　 　 　 　 ',
.　　 　　　　,′　　　　　　　　　　　',　　)）　　　　　　 　 　 　 　 　 '.
　　　　　　 ;　　　　　　　　　　　　　}　 /(　　　ボ　　　　　　 　 　 　 :
　　　 　 　 !　　　　　　　　　　　,'　ﾉし': :ヽ　 　　 オ　　　　　　　　　ｉ
　　　 　 　 !　　　　　　　　　　（(,ｲ: :　　:: :V）　　 ォ　　　　　　　　　ｉ
　　　　　　 ,　　　　　　　　　　､ゝ: :　　　: :(ﾉ}　ォ　　　　　　　　　　 ;
.　　　 　 　 '.　　　　　　　　　　ヽ: :: :　 : :: :/　　ォ　　　　　　　　 　,′
　 　 　 　 　´,　　　　　　　　　　 ゝ;:; :;从;ノ　　ｫ　　　　　 　 　 　 ,'
　　　　　　　 ´_　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 _｀
　　　　　　　　 ^､　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　､｀
　　　　　 　 　 　 ' _　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　_ ｀
　　　　　　 　 　 　 ´-._　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ､‐｀
　　　　　 　 　 　 　 　 ´‐､,_　　　　 　 　 　 　 　 　 _,､‐'｀
　　　　　　　　　　　　　　　 ´''‐- ､、.,,_____,,..､､-‐ ''｀

二４８．


　　　　　　　　　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ|:.:.＼
　　　　　　　　_ - ' ´:.:.::.:.:.:.:.:.:.:_:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヾ:.:.::＼　　 ,
　　　　　　　ヾ､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::､:.:.:.:/ ／/
　　　　　　　　　＞:.:.:.:.:.:／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／:.:./:.:.:.:.:.:.:.:ﾚ:.:.:/
　　　　　　　　 /:.:.:.:.:.:./:.:.:.:._;,;,-‐''''´:.:.:.:.:./:.:.:./:.:.:.:.-='´
　　　　　　　　｀ -､:.:.:/:.／/ ゞ:.x ､-ー ''´|:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.＼
　　　　　　　　　　ﾚ､:ﾚ´∧ /　｀　 ＼　.ヾ|:.:/|:.:.:.:.:.|:.:.:r､_::ゝ　　　（僕の中に―――
　　　　　　　　　　　 ミ,;,;:.::|　　　　 　 ｀＞ミ_.|:.:.∧|:.:.:.:}　　　　　　　―――何か、ある。
　　　　 ,＿＿ r‐─ v'´　 ヽ　　　　　／ヽ∠.|:/|:./:.:.:.:.|　　　　　　　　小さな、だけど燃えさかる炎―――）
　 　 /.: : : : : : ＼: : : :＼ 　 ､　　　　　ヽ ' |'' ´ ﾚハ:.:./
　　/／＼: : : : : : ＼: : :: :>v ＼　 ヽ_ , -―
　.//: : : : :＼: : : : : : V/: : K: : : ミ'´
../: : : : : : : : :＼: : |: : V: ∨: V: 入
/: : : : : : : :: ::: : :V: : : : : : ＼//: :/ヽ



それに気がついた瞬間だった。
不意に、虫の音がピタリと止み―――

149 名前なんて無いだろ常識的に考えて 10/08/02 23:17:26 ID:uLaF8PkF 師のできもいいんだろうが、一日でここまでいけるってことは、 ジュンも良い素質持ってるのかな。 それとも、これまでの地道な努力が実ってたのかな。

二４９．
―――背後に立つやらない夫が、冷たい刃を自分の首筋に当てている事を知る。


　　　　　　　　　　 ＿,　 　 ＿, 　 　 ＿　 　 ＿ 　 　 ＿ 　　 ＿,　 　 ＿　 　 ＿
　　　　　　　　　　 |_|_|　　 |_|_| 　　 |_|_|　　 |_|_| 　　 |_|_|　　 |_|_|　　 |_|_|　　 |_|_|
　　　　　　　　|￣|＿　|￣|＿　|￣|＿　|￣|＿　|￣|＿　|￣|＿　|￣|＿　|￣|＿
　　　　　　　　|　 ＿|　|　 ＿|　|　 ＿|　|　 ＿|　|　 ＿|　|　 ＿|　|　 ＿|　|　 ＿|
:;:;:;:;:;:;:;:　　　　|＿|　　 |＿|　　 |＿|　　 |＿|　　 |＿|　　 |＿|　　 |＿|　　 |＿
:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;／:;:;:;:;:;:;＼:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;
:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;;;:;:;:;:;:;／:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;＼:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;
:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;::;:;:;:;|:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;|:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:
:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;;:;;:;|:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;○:;:;:;:;|:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:
:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;::;|:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;|:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:
:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;;|:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;|:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:
:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;{:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;}:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;
:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ヽ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:; ノ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;
:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;,へ:;:;:;:;、:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;／⌒ ´:;:;:;:;:;:;:;:;:;｀ ⌒ヽ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;,.:;:;:;:;:;へ,:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:
:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;＼／／, ヽ._:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;::;:;:;:;:;:;:;_.,r' ,＼＼／:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;
:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;〈　' ／／〉:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:; 〈＼ ＼ '　〉:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;
:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;／ ＼　　　 /:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;::;:;:;:;:;:;:;:;ﾞｉ 　　　／ ＼:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:
:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;／　　 　 `ー‐く ＼へ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;へ／ ﾝ‐ー` 　 　　＼:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;
:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:{　　 　 　／:;:;:;:;＼　　＼:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:／　　／:;:;:;:;＼ 　 　　　}:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;
:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;＼　＿／:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;＼　　＼:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:／　　／:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;＼＿　／:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ＼　　＼　　 　 ／　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ＼　　＼ .／　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼　／　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ／　　／＼
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ／　　／＼　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　／ 　 　 ＼　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／　　／　　　　　　 ＼　　＼
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ／　　／　　 　 　 　 　 　 ＼　　＼
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／　　／　　　　　　　　　　　 　 ＼　　＼
　　　　　　　　　　　　　　 │　／　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ＼　│
　　　　　　　　　　　　　　　|／　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ＼|

二５０．



　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　,,ィ
　　　　　　　　　　　　　　　　　〃　 ,,ィ;;''´
　　　　　　　　　　　　　　　　,ｲ; ／;;''´,,;;＝=-
　　　　　　　　　＿＿＿＿__iv;/::/r＝=-::...,,,,,_
　　　　　　　　　｀'''- ;;;;: : ィ il: V: ilﾊ: : : : :ミ: : : ｀ﾆ=-...､
　　　　　　　　　　,,ィ彡イ: /llMⅥll ﾊ; ; ;i: :ヾ＼: : ｀ヽ
　　　　　　　　,,ｨ;;''´ﾌ: :/:∧.ll　　 ﾊl;;l; ; ;lヾ: :ﾏヾ＞､;; ;｀;-,､
　　　　　　　 　 ／ｲ: :/:/: /il　u ,i jﾊ: :',;l; ; ; ∧: : : ﾊ: ﾄ､￣　　　　　「うわぁ！
　　　　　　 　 /　/: 〃::ﾚﾊ　',　　l: 从:ヾ: :::乂::ヾ : ﾊ ';: ﾄ'､　　　　　　　うわああああっ！？」
　　　　　　　　　/ｲ: : ://≧=､ 　 i: ::ﾊ: : ＼: lj: :'; : :';: ::ハ
　　　　　　　　　 /ハﾐ/　(::) ﾉヾ'' ヾ/ ヾﾊt:j i:!: :ヽ: : : ',
　　　　　　　　　　从iヽ """　/　､, z≧＝<ﾊ: : : : ';: : ﾐ;､
　　　　　　　　　　 ハ　￣￣- ､　　/ (::) ﾉハ: : :jハ: : il≪(_　　　　　　＿＿
　　　　　　　　 　, -､ﾊ.u　/　　 ヽ ヽ """ /:∧: ﾊjﾘヾﾊ　　 ＼.,　　　　/　／　　 ／|　＿
　　　　　 r- ､ /　　 ＼､ .i　　　 ﾉ　　ニ／ノﾊ ヾ',ij 　 'ヾ　　　Ｖ 　　 /　/ ／ヽ　|/　/ /　　 ＿　／|
　　＿ ノ　　 ''::::...　　/　＼｀ー'　　__／ヽ　 _　　　　　　　　　　}　　　/　/　＼　|　　 ￣　/|　| / / /
／　　,,-　─　　　　 i　ヾ;　￣ ￣　　　　　　　　'ーﾐ､　　　　　/　　 /　/　　 ヽ |　　　　　| |　|/ / /
　　　 ヾ ､:::::::::...　 ､　ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　/　/　　　　| ヽ　　　　|/　　/ /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　‐　―≪´　　 ./／　　　　　 |　〉　　　　　　|／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　|/


思わず悲鳴を上げて目を開けた。
弾けるように後ろを振り向くと、




　　 ／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　 （ ー）（ー）　　　　　「どうした、そんなに慌てて？」
.　|　　　　 （__人__）
　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ
.　 |　　　　　　　ｎｌ^l^l
.　 ヽ　　　　　 |　　 ﾉ
　　 ヽ　　　　ヽ　く
　　　/　　　　　ヽ　＼



彼は数歩離れた場所で立っているだけ。

二５１．
::::::::::::::::::::::::::ﾊ::::::::::::::/i/／ i:::::::::::::::::::::::::|::::::|:::::::::::::::::ヽ:::::::::::::::＼
::::::::::::::::::::::::::::ﾊ;;;;;;;;;/-'´ 　 .|::::::::::::::::::::::::ﾄ::::: ﾄ::::::::::::::::::::i:::::::::::::::::::ヽ
::::::::::::::::::::::::::::::ﾊ￣　　 　 　 |::::::ﾊ::::::::::::::|　＼i ＼::::::::::::|:::::::::::::::::::::ﾊ
::::::::::::::::::::::::::::;:::ﾊ　　　 　 　 |:::/　V::::::::::ﾘ　　　　ｨ=ﾊ:::: |::::::::::::::::::::::::＼
:::::::::::::::::::::::::::::iヽ:ﾍ　　　　　 |:/　　 V::::::/　　　/ｲ＝ﾌi｝ヾ─────'｀　　　　　「わ、わかんないけど………！」
ヽ:::::::::::::::::::::::::|　＼ヽ　　 　 |i!　　　 ｝::/　　　r''´ゞハi l:ヽ
::::＼::::::::::::::::::::|　　 ＼　　　＿＿ニ三ｲ　　　||r j｝i|　.i lヾ｝
::::::::::＼::::::::::::: |　　　／::::＿,,,ィ彡=''´i/il_,=＝|.しｿﾊ ﾉﾉ-､
:::::::::::/ ＼::::::::::ヾ ／:- ''´＞''´ -=ｲ｀　 ||r'´｀ ﾊ彡　ｙ/: : : :＼ニニミ-､
::::::::/　　　｀ー- xゝ rィ彡''´イッ:::ﾘ　　/i　　　ミー=´i: : : : : : :｀:-:､: : :｝ｿヽ
:::::/::ﾊ＿＿＿＿＿/ /　 /　ﾋ:::..ソﾉ　｛.ﾘ　　　　｝.　 l-､: : : : : : : : i: ://: :ﾊ
￣ヽ──────､ﾊ　ヾ　　ゞ''´　 ノﾉ　　　 ./　 ./: :ﾉ: : : : : : : : l: i l: : : ﾊ
i ヽ　｀ -ゝ　　　　　　ヽヽ　ミ=''´　／／　　　　 　 /: : i: : : : : : : : : l: i l: : : : :ヽ､
｛　　ﾊ　　　　　　　　　＼＼＿_／／　　　　, ィ　/: : :/: : : : : : : : : : /: : : : : : : : ＼
　｀　　 廴　　　　　し　　　ー─''´　　　 ir'_´'´ ./: : :/: : : : : : : : : : /: : : : : : : : : : /
>､＿　　　ー　　　　　　　　　　　 　 　 　　 　 /: : :/: : : : : : : : ::／: : : : : : : : : : :/
: : : : : ＞-､＿ハ､　　　　　　　　　　　　　　　ハ／: : : : : : : :／: : : : : : : : : : : :/ハ



君が僕を殺そうとしているように感じられた、とは言いづらくて言葉を濁したが、
彼はにこり、と笑うとその通りだと言った。



　　　　　　　　　　　　　 　／￣￣＼
　　　　　　　　　　 　 　_ノ　　ヽ、　　＼
　　　　　　　　　　　　（ ●）（ ●）　　　|　　　　　　　　　　　「その通り。
　　　　　　　　　　　　（__人__） 　　　　 | ..／}　　　　　　　　　俺は今、ジュンに殺気をぶつけていただろ。
　　　　　 _　 　　　 　ヽ｀⌒ ´　　　　　| /　/ 　　　__
　　 (＾ヽ{　ヽ　　　　　 {　　　　　　　　./　/　 .　／ .ﾉ　　　　　その反応が出来れば合格だ」
　(￣ ヽ ヽ　i　　　　　　ヽ　　　　　　/　厶-　´ ／
.(二 ヽ　i　i　|,r‐i　　　　ﾉ.　　　ヽ /　　　　 ／
　　ヽ　　 ／　 ノ　　／　　 　r一'´　ー ､　　￣￣￣）
　　 i 　 {　　 ｲ―イ　/　 　.`ー―.　､＿_　.〈￣￣
　　　ヽ.　`ｰ '/　　　/　　　　　　　　　 　/＼ ＼
　　　　　 `ー ' ￣￣!　 　　　　　　　　　|　　ヽノ

二５２．

: : : : :: : :、: : : ::::::,lll,,,,,,,,,,,,,__
: : ::_、,,､‐,l,: : : :,,ll,i,_ﾞﾞﾞllllllil,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,__
,,llll,,,lll,,i´,ll,ﾞl,、:,illilllllli,l,: ,lliillﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾟ”￣
lllil!llilﾞ゜:lllllllilll,.:llllllllllllllll::llllll!llii,,l,i､
l!lilllﾞιllllllllllllllillllll!lllllllll!,lllﾞ!liill!llllil,i､
illll!`lll:,lllllll!ﾞﾞlﾞ!!ﾞlllllﾞ!lllllll,llll,,ﾞ!lliﾞllll!llil,i､
!l】l::lllﾞllllllll:: : : : : : :|llllllllllllil,,ﾞlli、ﾞﾞlllll,,、
ilﾟ,ll:lll|llllllll: .: : : : :.::|'lllllllllll!lili,ﾞlll　　ﾞﾞﾞ!l,,、
lﾞ,lllllll|llllllll:.､:::x,、:､:|'llllllllll.lllllli,lli,　　　 ﾟﾞ=:
,,llll!,lllllllllll: : : : ﾞ'N,,,.,lllllilll|:l!ll!lli,li,　　　　　　　　「た、試してたのか………」
illlilil!llllllllll、::::::::.,,.::_ll!,lﾞ'llli,"ll｀ .'!li,,
llilllll:ﾞllllllllll､､:､:ハ::ﾞi!ﾞ,l｀|lli"ll
lllllll:_,ﾞllllllll〆":'│::.ﾞ.:｀､.＝,｢
!|llll'｀::'!llllﾞli､丶'|,!::::::::::::::i!lﾞ,!
::)ll′: :ﾞ!llﾞﾞl: : ::|:．: : : : :`|::l、
、'l、:: : :ﾞ!!::｀::、U,、,:、..,i,|、ﾞi,、
、::｀::: 丶丶丶:::ﾞ!i{h,､_,ｼ｀::::::.|
: : : Ｕ: : : : :u : : : : : : :u : : :lﾞ
: : :｀: U: : ::u｀: :u : : : : :: :: :/
: : : : : :u : : : : : : :U : : : ::: ,″
: :U : : : : : : : :u : : : : : △:′
､、: : : ::::::::｀:::::::::::::::::: ,,-｀
: ｀"'ヽ,,: : : : : : :｀:_,,r,i´
: : : : : :ﾞ・: : : ::‐'''~｀



今になって、背中が冷や汗でびっしょりだと気がついた。
訓練のためとは分かっているが、やらない夫の殺気をまともにぶつけられたせいか、
恐怖で強ばった身体から緊張がなかなか抜けようとしない。



　　　　　　　 ／l
　　　 　Λ／　〈 へ、
　　　ヘ|　　 　　　　 ,＞
　∠　　/　　　〉ヽ　 ￣＼
　/　ノ〈 |＾＾| /＼ﾄ､　　ﾄ､l　　　　（訓練でこんなんだもの、
　|／| .ﾊ|__ |/＿__　ヽ　 ヽ　　　　　まともに浴びたシンジは怖かっただろうなぁ………）
　　　l/　　|‐|　　 |―ヽ＿|
　　　 | ￣ c　￣　　　6 l
.　　　ヽ (＿＿＿_u　,-′
　　　　 ヽ ＿＿＿ ／ヽ
　　　　　／ ＼∨／　l ＾ヽ
　　　　　|　|　　　　　 |　　|



自分だったら失禁せずに済んだだろうか。
思わず昼間の事を思い出したジュンは、少しだけシンジに同情したくなった。

二５３．

　　　　　　　　　 　　,, -─- ､._　〃"
　　　　　　　　"ミ ／　　　　　　ヽ　　　　　「それじゃそろそろ休むだろ。
　　　　　　　 　　 |　　⌒　⌒　　ヽ　　　　　しっかり睡眠を取って明日に備えないとな」
　　　　　　　 　　 |　（●）（●）　 |
　　　　　　　　　　|　 （__人__）　　|
　　　　　　　　　　ヽ　 ｀⌒´　　 ﾉ
　　　　　　　　　　/　　 　 　　 ヽヽ,　） ）"
　　　　　 "（ （　（　ヽ　 　　　／.／
　　　　　　　　　　＼ ＼　゛／／
　　　　　　　　　　／ / ヽ　＼ 　　ｺﾞｿｺﾞｿ
　　　　　　　　　 |　　　　　　 |
　　　　　　　　　 ヽ＿＿＿／



初日の終わりを宣言したやらない夫は、これを使えと毛布を取り出してジュンに手渡したのだが。
それを受け取りながら、彼の腰の辺りをじっと見つめたジュンは目を白黒させている。




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ＞'´　／　　 ∧　 　 ｜　　　　i|　ヽ.　 　 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　／ 　 ／ 　 　 /::::ヽ　_,斗:.:.:.: : 　 |　　 !　　:...　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　 〉 　 　　　　::ー‐^´¨　|:.: : !:.:..　ﾄ､　 |　　 :.:.:...　: :..｀ー-､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 |　　　| 　ｉｌ　　::|　　 　 　 ! ::∧:. :. 　,=‐ｉ　　　:.:.:.:.:...:.:.:..:.:.／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 /　.:.:.:.:|　 i| 　 ::| 　 　　　 | / ,ｨ|,.イ´__ ∧　 ..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ :::／イl|　 ｌ|　 ::|=､＞ｰ=､ ｉ′|:rレ弍¨ヽ ﾄ :.:.:.:.:.:.:.:.:.／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./::／　 /　　　|　　|´戈¨Ｔ |ﾄ==､||　弋__ソ‐|/.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼
　　「さっきから気になってたんだけど、　　　　　　　　　　　　　ﾚ'゜ 　 /　／　 iヾヽ! 辷_ソ｣|　　 ヽ=＝＝=='　ﾏヽ.:.:r-‐'´
　　一体どこから毛布なんて取り出してる？」　 　ｒr‐、 　 　 　 　 　 レ'　ﾚ'〉　! ヾﾆ==＝ ′〈　　　　 　 　 　 'ノ::;;;>
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾄ'　| 　 　 　 　 　 　 　 　 ￣ヾﾇ、　　　　　 ｀　　　　　　　,/‐'´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　| 　|　　　　　　　　　　　 　 　 ￣ヽ　　 　 　 ー‐　　　 　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..ﾉ 　l'⌒!　　　　　　　　　　　　　 　 ＼　　 　 　 　 　 _, ィ´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　´　ノ^ヽ '､　　　　　　　　　　　 　 　 　 ｀¨ﾆt-　　-‐'　ﾄ-┐
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／｀ヽ.ヽ、　　　　　　　　　　＿　 　/´iイ　　　　　 |/　ヽ―-- ､__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ‐'´｀ヽ. ｉ､　　　　　 　 　 ／i　 ゞ7″ | ′　　 　／　 　 |　　　 　｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼ 　　イ-' 　ヽ　　　　 　 ／　 i　　/　,ﾍ |＿___,_／ |―､　 |　　　　/　　ヽ.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ.　 ″　 　 ｌ　　 　 ／-‐'´ | .//／　ヽﾄ-―/ニ,ﾉ　　＼| 　 　 /　　 ＼'､

155 名前なんて無いだろ常識的に考えて 10/08/02 23:22:54 ID:uLaF8PkF 無限の袋でも持ってんのかね

二５４．
ここにはそんな大荷物は持ってきていなかったはずである。
君は魔法使いかと驚くジュンに笑いながら、やらない夫は腰に付けられていた
ポーチを取り出して仕掛けを説明した。




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l￣￣ﾞﾞﾞﾞ''ー--､_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　, -､ | 　　　　　　　　 `l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　, - 　 ／ ／　＼　四次元　　ﾉ
　　　　　　　　 　 ／￣￣＼　　　　　 /　ﾉ／ ／　　　　ヽ､_　　　___／
　　　　　　　　 ／ノ,､＼_　　＼　　　 /　/　／｀ヽ　　　　　　￣￣
　　　　　　 　 ( ●）（ ●）　 　 |　　　{　　　　（__／}
　　　　　　　　（__人__）　　　　 |　　　{　　　　（__／}　　　　　「こいつはホールディングバッグと言う、
　　　　　　　　 (｀⌒ ´　　　　　|　　　/　　　　 （__.ノ　　　　　中は別のところに繋がっている
　　　　　　　　　 {　　　　　　　 |　　　/　 　,;-ｰ'´　　　　　　　魔法の道具入れだ。
　　　　　　　　　　{ 　 　 　 　 /　　. /　 . ノ
　　　　　　　　　　 ヾ　 　 　 /　　／　.／　　　　　　　　　　　だから重さも感じなければ
　　　　　　　　　　 ｿｇﾍ二ﾆ=7.／　 ／　　　　　　　　　　　　大きな物を入れておく事も可能なんだろ」
　　　　　　　　　 ∧ii/　oィ/厂　 ／
　　　　　　　　　/ .|/／＝≠.　r'´
　　　　　　　　　l 　|｡　　 　 ｀~/
　　　　　　　　 /　 |｡　　 　 　/




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ ／.:/.: 　 i.:.:.:l.:.:.:l.:.:.:/ l.:.:.:.:.:.:｀`´.:.:.:.:.:.: |.:.:.､.:.:.:.＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 l.:.:./ .:.:　.|.:.:.:l..:/l.:.:/　|.:/l.:.:.l.:l.:.ﾄ､.:.:.:.:. |.:.:.:.＼ ￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./.:./ :. :.: :|.:.:.:l/ .l.:/　 |/　l.:.:N.::.|__＼.:.::|.:.:.:.:.:.:l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /.:./ .: .:.:.: :|.:.:.:仁l/二ﾆ　　l.:仁l:/=== ヽ:!.:.:.|＼|
　　　　　　　　「あ、聞いたことあるある。　　 l:/.l.:.:.:.:.:.:. .ﾄ､.:.l ﾃ示ﾐヽ1 Ll/ l 「 戍ﾃﾐ　lﾄV
　　　　　　　　　冒険者必携の道具だって」　　　l.:.:/l .:　ﾊ:lN{　辷ｿ ﾉ ! 「￣l |弋辷ｿ　l1 l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l:/　l.:/　　 lL_ ＿＿ノ　 ,　　ヽ _二 ノ.:.:.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　 l/　､__',　　　　　　　 　 　 　　 /　.:.:.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　　　　　ヽ　　　　　r‐‐ｯ　　　/.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　　　　 　 入　　　　　　　 ,..ｲ.:.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　　　.　'´　i.:.＼＞ -- ＜/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　／　　 　 |.:.／＼　 　 ノ.:

二５５．
毛布にくるまり、横になってから結構出回ってるんだって？と尋ねると、
頷いたやらない夫は自分の分の毛布を取り出しながらそうだな、と答える。



　　　　 ／￣￣＼
　　　／　　 _ノ　　＼
　　　|　　　 （ ●）（●　　　　　「冒険者の一行や輸送する商人の
　　　|　　　 　 （__人__）　　　　　二割から三割は多分持ってるだろ。
.　　　|　　　　　　　　ﾉ
　　　 |　 　 　 ∩ ノ ⊃　　　　　定住している人には殆ど意味がないが、
　　／ 　 　 .／　＿ノ　　　　　　旅をしている俺らにはとても便利な道具さ」
　 (.　 ＼ ／　.／_ノ │
　　＼　 “　／_＿_|　 |
.　　　 ＼／ ＿＿＿ /



　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　　l: : : : : |, ｲ＿＿, -＝ '´　／
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　　!: : : : /l: : : : : : : : : . . . .＼
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 /ヽ: : /　!: : ､: : : : : : : : : : .　丶 ＿
　　　　　　　　　　　　　 「ぐぅ………」 　 　 , -. :l　　 ヽ　　V　 ト -　､. 　 ､_　　　　 _｀ゝ
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　　＿ヽ: :　 　,/ /!　　 　ト､　 　｀　 : .T　￣
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 / 　 / ＼ ' ／/　　/!｜＿－- ､　　｀丶､
　　　　　　　　　　　　　 　 　　　　　　　　/￣ 〈　　　|￣ l　／´|/　, -－ ￢ﾄ､ ,- '
　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　/　　　l ／|/ - ､ __｣　 　　　 |ﾊ|
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 /　　　 l ｒ'´ , 　､ ',　ヽ、＿_ノ!ｲ
　　　　　　　　　　　　_＿　 　 　 　 　 　 　 　 ￣ ヽ ｒ'ﾊ　　　ノ　, 　 　　　!　　　
　　　　　　　　　　　　　　 ￣　 　－-　　　 _＿　　￣ 丶Ｔ ´　　　 _,-､　, ｲ_／ヽ　
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ￣　¨ 二 ゝ.、＿ 'ｰ_'／-‐'ﾞ 　＿＼　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 ￣ ¨ヽ!／-‐i'´ ￣　　　　l
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　／　 　 　 　/　l/　　|　　　　　　　 ト、



　　 ／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　 （ ⌒）（⌒)
.　|　　u　 （__人__)　　　　「っと、もう寝てるのか。
　 |　　　　　 |r┬|}　　　　　………おやすみ」
　 |　　　　　 |　| |}
.　 ヽ　　　　　｀ﾆ}
　　 ヽ　　　　　ノ
　　　/　　　 く　　＼
　　　|　　　　 ＼ 　 ＼
　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)､



しかし、言い終わった時には、ジュンは寝息を立てていた。
横になったとたん疲れが一気に襲いかかってきたのだろう、墜落するように眠ってしまった彼を
本当に頑張ったもんなあ、とねぎらったやらない夫もそろそろ休む事にした。

━━━━━━━━━━━……
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

158 ◆GV1zPRS/Lk 10/08/02 23:25:07 ID:dwLZIUfv 本日の投下は以上です。 閲覧ありがとうございました。 次回は第二章その２になります。 159 名前なんて無いだろ常識的に考えて 10/08/02 23:27:36 ID:0vRKma/o 乙！ 次が気になる幕引きですな～ 次回楽しみにしてます 160 名前なんて無いだろ常識的に考えて 10/08/02 23:27:36 ID:yMCw9/3T 乙でした。 やらない夫とジュンがすっかり打ち解けていて、 見てるだけで嬉しいｗ。 次回もｗｋｔｋしてお待ちしています 162 名前なんて無いだろ常識的に考えて 10/08/02 23:30:15 ID:rQdXXp9/ 乙でしたー 師弟であり友達って言う関係がなんかいいな！ 163 名前なんて無いだろ常識的に考えて 10/08/02 23:34:40 ID:uLaF8PkF 乙でした。 つい数日前に出会ったばかりとは思えない仲の良さで、 見ていて気分がいいです。 164 ◆GV1zPRS/Lk 10/08/02 23:39:31 ID:dwLZIUfv >>159-163 皆様閲覧ありがとうございました。 ジュン（元引きこもり）とやらない夫（一人の冒険者）については、 それぞれ今まで同世代の友達が居なかったのでしょう。 お互い初めてのお友達なので嬉しくて仕方がないのかもしれません。 167 名前なんて無いだろ常識的に考えて 10/08/03 13:45:21 ID:yrLVuuTO TRPGネタがチラホラ見えて楽しいｗ 168 ◆GV1zPRS/Lk 10/08/03 18:48:39 ID:/MRM43XA >>165-167 こんばんは、皆様閲覧ありがとうございました。 >>167 さすがに10ﾌｨｰﾄ棒は出てきませんからね！

二５６．
━━━━━━━━━━━……
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

翌朝。
起床し、冷たい河の水で顔を洗ったジュンにやらない夫が魚捕りを命じてから、もう数十分も経っただろうか。
木刀を片手に河に入った彼は時折、ばしゃばしゃと水面を叩いてはいるのだが、
未だ一匹も捕まえられていないでいる。



　　､＿＿／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|::::::::::::::::::::::/: /::/::::::＼ﾍ
　　 ＞::::::／::::::::/::::::::::/::::::::::::::::: |:::::::::::::::::::/::::V:::/:i::::::ﾍ:::＼
　　　 ／:::::::::::::/::::::::::/::::::::::::::::: : |::::::::::::::ﾄ::iト::┴<:::|:::i::::::＼::＼
　　 /:::::::::::::::::/:::::::: /::::::::::::::::::: ::ｲ::::::::::::::ﾊ::|　 　 Vﾉ: |:::::::::ﾊ￣
.　 /:::::::ｨ:::::::/::::::::: /::::::::::::::::::::::/-∠ヽ:::::',　ヽ　　.ｲ:::/:::::::::i::ヽ　　　　「う～～～！
　/:::／ |::::: {::::::::::::i:::::::::::::::::::／＿＿≧:::::ﾊ　 ＿∠:/:::::::::人:::::ゝ　　　魚の癖に生意気だ！」
./／　　.}::::::i::::::::::::|::::::::::::／ ||' r￣ (:::). Yヾ:::i　 r===ﾚi::::::/:}＼i
　　　　 ﾉ::::::|::::::: : |::::::／|　 .||　＼　＿　i　ﾊﾄ=ｲ(::)ヽ{:l:: /:::i
　　 　 ハ:::/i::::::::::ﾊ／ヽ/　　ヾ＿＿＿ノ　　　}､-　i::./ハ.|
　　　／=＼ ﾚﾍ::ﾊ ヽ　{　　　　￣￣￣　　　 ノ　　|'´
　　/'´　　　＼＼::::ヽ ヽi　　　　　　　　_ ＿　　　 /
　　{　　　　　　￣＼￣｀ー ､　　　　　 'ー-' 　 ／
　 ノ｀ー ─　ミ､　　.＼＼　 ￣}　　　　　｀　／┐
. (　／　　　　　 ＼　　 ＼＼　 i　　>──'´　　ヽr-､
　.Y　　　　　　　　 ＼　　 ＼＼廴r　＞'´　　　/　　 /
　/　　　　　　　　　　ﾊ　　　　ミ＝V　　　 /／　　イ



　　　　 ／￣￣＼
　　　／　　 _ノ　　＼
　　　|　　　 （ ●）（●
　　　|　　　 　 （__人__）　　　　「おーい、
.　　　|　　　　　　　　ﾉ　　　　　落ち着けよ」
　　　 |　 　 　 ∩ ノ ⊃
　　／ 　 　 .／　＿ノ
　 (.　 ＼ ／　.／_ノ │
　　＼　 “　／_＿_|　 |
.　　　 ＼／ ＿＿＿ /

二５７．
だんだん口調が荒っぽくなってきたジュンに、たき火の前で腕を組んでいたやらない夫が
助言を飛ばした。



　　　　　　　 　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　 　　／　 _ノ　ヽ､.＼
　　　　　　　　 　|　　（●）（●） |
　　　　　　　　　 |　　 （__人／,〉.|
　　　　　　　　　 {　　　´フ´ ./._ }　　　　　　　「夕べやったろ？
　　　　　 　　　　ヽ　 .／,二ニソ}　　　　　　　目に見えるものに頼るんじゃない。
　　　　　　　　　　_ヽ/　 ,-― ､}ﾉ　　　　　　　心の眼で見ろって剣聖カイエンも言ってるだろ」
　　　　　　　　 ／:;:{'　　 ノｰﾍJ:;:;ヽ
　　　　　 　 ／:;:;:;:;:;|　 _,イ{:;::;:;:;:;l:;:;}
　　　　　　/:;:;:;:;:;:;:;:;:＼＿/:;:;:;::;:;i:;/＼
　　　　 　 {:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;／:;:;:;:;:;:;:;〈:;:;:;:;:＼
　　　　　　ﾍ:;:;:;:;:;:;:;:;／:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:i;:＼:;／ヘ、
　 　 　 　 　 ￣￣7:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;l;:;::;ゝ、`ｰj
　　 　 　 　 　 　 /:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;l:;:;:;:;:;:＼~
　　　　　　　　　/:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:|ヾ:;:;:;／



　　　　　　　　　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ|:.:.＼
　　　　　　　　_ - ' ´:.:.::.:.:.:.:.:.:.:_:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヾ:.:.::＼　　 ,
　　　　　　　ヾ､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::､:.:.:.:/ ／/
　　　　　　　　　＞:.:.:.:.:.:／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／:.:./:.:.:.:.:.:.:.:ﾚ:.:.:/
　　　　　　　　 /:.:.:.:.:.:./:.:.:.:._;,;,-‐''''´:.:.:.:.:./:.:.:./:.:.:.:.-='´　　　　　「あ～～～………
　　　　　　　　｀ -､:.:.:/:.／/ ゞ:.x ､-ー ''´|:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.＼　　　　　もうっ！」
　　　　　　　　　　ﾚ､:ﾚ´∧ /　｀　 ＼　.ヾ|:.:/|:.:.:.:.:.|:.:.:r､_::ゝ
　　　　　　　　　　　 ミ,;,;:.::|　　　　 　 ｀＞ミ_.|:.:.∧|:.:.:.:}
　　　　 ,＿＿ r‐─ v'´　 ヽ　　　　　／ヾ∠.|:/|:./:.:.:.:.|
　 　 /.: : : : : : ＼: : : :＼ 　 ､　　　_　ヽ '´ |'' ´ ﾚハ:.:./
　　/／＼: : : : : : ＼: : :: :>v ＼　 ヾ_ , -―
　.//: : : : :＼: : : : : : V/: : K: : : ミ'´
../: : : : : : : : :＼: : |: : V: ∨: V: 入
/: : : : : : : :: ::: : :V: : : : : : ＼//: :/ヽ



確かにこの精神状態では本来見えるものも見えやしないだろう。
苛立っていた事を自覚したジュンは大声を出すことで切り替えたようだ、
目を閉じて心を落ち着かせると呼吸をゆっくりにして集中を高めてみる。

232 名前なんて無いだろ常識的に考えて 10/08/06 22:58:18 ID:uVvMz3vx しかし、>>179の剣聖はヒッター子爵とか別名を持っているんだろうか？ >>232 でも、シュペルターは出てきませんよ！

二５８．
だが、夕べはあれほど簡単に感じられた周りの気配も、今はさっぱり伝わってこようとはしない。



　　　　　　　　　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ|:.:.＼
　　　　　　　　_ - ' ´:.:.::.:.:.:.:.:.:.:_:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヾ:.:.::＼　　 ,
　　　　　　　ヾ､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::､:.:.:.:/ ／/
　　　　　　　　　＞:.:.:.:.:.:／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／:.:./:.:.:.:.:.:.:.:ﾚ:.:.:/
　　　　　　　　 /:.:.:.:.:.:./:.:.:.:._;,;,-‐''''´:.:.:.:.:./:.:.:./:.:.:.:.-='´
　　　　　　　　｀ -､:.:.:/:.／/ ゞ:.x ､-ー ''´|:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.＼
　　　　　　　　　　ﾚ､:ﾚ´∧ /　｀　 ＼　.ヾ|:.:/|:.:.:.:.:.|:.:.:r､_::ゝ　　　「どうして………
　　　　　　　　　　　 ミ,;,;:.::|　　　　 　 ｀＞ミ_.|:.:.∧|:.:.:.:}　　　　　　夕べ出来た事が出来ないんだ？」
　　　　 ,＿＿ r‐─ v'´　 ヽ　　　　　／ヽ∠.|:/|:./:.:.:.:.|
　 　 /.: : : : : : ＼: : : :＼ 　 ､　　　　　ヽ ' |'' ´ ﾚハ:.:./
　　/／＼: : : : : : ＼: : :: :>v ＼　 ヽ_ , -―
　.//: : : : :＼: : : : : : V/: : K: : : ミ'´
../: : : : : : : : :＼: : |: : V: ∨: V: 入
/: : : : : : : :: ::: : :V: : : : : : ＼//: :/ヽ

二５９．


　　　　　　　　　　　　　 ＿＿
　　　　 　 　 　 　 　 ／　　　 ＼
　　　　　　　　　　／　 　　 　 　 ＼
　　　　　　　　　　|　　　　　:　:::::::::::|
　　　　　　　　　　|　　　　　:::::::::::::::|
　　　　　　　　　　|　　　　::::::::::::::::::|
　　　　　　　　　　|　　　::::::::::::::::::::::|ヽ　　　　　　　「極端に疲労していると、余分な力が抜けるのと、
　　　　 　 　 　 　 ヽ　　　　　　 /_./|:＼　　　　　　生命の危険を感じた肉体が潜在能力を解放するせいで
　　　　 　 　 　 　 　 ＼＿＿,-‐´~/:::::::＼　　　　　感覚が鋭くなるんだ。
　　　　　　　　　　 ∠＿＿＿ ,-‐'~.:::::::::::::::)　　　　
　　 　 　 　 　 　 /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/　　　　　逆に言えば体力がきちんと回復できたって事だろ」
　　　　 　 　 　 /::::＿＿::::::::::::::::.::::::::::::::/
　　　　　　　　/／:::::::::::::＼::::::::::::::::::::::/
　　　　　　　　|:::::::::::::::::::::::::＼:::::::::::::::|
　　　　　　　　ヽ:::::::::::::::::::::::::::＼::::::::::|
　　　　　　　　　|＼::::::::::::::::.:::::::::＼:::::|._
　　　　　　　　　 |::::＼＿::::::::::::::::::::＼|:＼
　　　　　　　　　〈:::::::::::＼:::::::::::::::::::::::|::::::::|
　　　 　 　 　 　 /:::::::::::::::::::/:::::::::::::::::|::::::::＼
　　　 　 　 　 　 /:::::::::.::::::::|::::::::::::::::::|:::::::::::｀|
　　　　　　 　 　 |:::::::::::::::::::|::::::::::::::::::|:::::::::::::/、
　　 　 　 　 　 　 ＼:::::::::::::|::::＿＿／|＿／:::::ヽ
　　　　　　　　　　 　/＿_|￣＿＿__/::::::::::::::::::::ヽ
　　 　 　 　 　　　　　ヽ:::::::￣|　　 |::/＼＿:::::::::::::＼
＿＿＿＿＿＿＿＿＿ヽ／|/　　　＼＿__＼:::::::::::::::ヽ　ｻﾞﾌﾞｻﾞﾌﾞ………
　　 　 　 　　　　　　　|　|　|￣〉 〉 〉〉〉＿| 　＼:::::::::::::ヽ
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ|￣::´::´´´ヽ　　　　＼:::::::::::ヽ
　　　　　　 　　　. 　　　　　 ヽ:::::::::::::::::::ヽ　　　　　 ヽ:::::::::::ヽ
　　　　 　　　　　　　　　　　　 ヽ::::::::::::::::::::ヽ　　　　　ヽ:::::::::::ヽ



昨日、せっかく掴めた次への第一歩を簡単に失って自分に腹を立てるジュンのところへ
木刀を持ったやらない夫がやってきてそう説明した。



　　　　　　　　　　 　 ＞'´　／　　 ∧　 　 ｜　　　　i|　ヽ.　 　 　 ＼
　　　　　　 　　　　／ 　 ／ 　 　 /::::ヽ　_,斗:.:.:.: : 　 |　　 !　　:...　　 ＼
　　　　　　 　　 　 〉 　 　　　　::ー‐^´¨　|:.: : !:.:..　ﾄ､　 |　　 :.:.:...　: :..｀ー-､
　 　 　 　 　 　 　 |　　　| 　ｉｌ　　::|　　 　 　 ! ::∧:. :. 　,=‐ｉ　　　:.:.:.:.:...:.:.:..:.:.／
　　 　 　 　 　 　 /　.:.:.:.:|　 i| 　 ::| 　 　　　 | / ,ｨ|,.イ´__ ∧　 ..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／　　　「じゃあ、また今日一日頑張れば
　　　　　　　　　/ :::／イl|　 ｌ|　 ::|=､＞ｰ=､ ｉ′|:rレ弍¨ヽ ﾄ :.:.:.:.:.:.:.:.:.／　　　　　あの感覚を取り戻せる？」
　　　　　　　　./::／　 /　　　|　　|´戈¨Ｔ |ﾄ==､||　弋__ソ‐|/.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼
　　　　　　　　ﾚ'゜ 　 /　／　 iヾヽ! 辷_ソ｣|　　 ヽ=＝＝=='　ﾏヽ.:.:r-‐'´
　ｒr‐、 　 　 　 　 　 レ'　ﾚ'〉　! ヾﾆ==＝ ′〈　　　　 　 　 　 'ノ::;;;>
　ﾄ'　| 　 　 　 　 　 　 　 　 ￣ヾﾇ、　　　　　 ｀　　　　　　　,/‐'´
　| 　|　　　　　　　　　　　 　 　 ￣ヽ　　 　 　 ー‐　　　 　 /
..ﾉ 　l'⌒!　　　　　　　　　　　　　 　 ＼　　 　 　 　 　 _, ィ´
´　ノ^ヽ '､　　　　　　　　　　　 　 　 　 ｀¨ﾆt-　　-‐'　ﾄ-┐
　　／｀ヽ.ヽ、　　　　　　　　　　＿　 　/´iイ　　　　　 |/　ヽ―-- ､__
　　 ‐'´｀ヽ. ｉ､　　　　　 　 　 ／i　 ゞ7″ | ′　　 　／　 　 |　　　 　｀ヽ、

二６０．
そういう事だ、と頷いたやらない夫は同時にペチン、と魚をすくい上げてしまう。
容易いと思える彼の手際に、しかし実際はとてつもない技術を要すると知ったジュンは改めて
やらない夫の腕の確かさに感嘆のため息をはき出していた。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 rヽ　　／　ノ　　＼ ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　!　　|　 （●）（●）　|
　　　　　　　　　　「目で追っても無理だろ。　　　　　　　　 r;r‐r/　|. 　|　　（__人__）　 |
　　　　　　　　　　　集中は決して魚ではなく　　　　　 　 〈_L (｀ヽ .}　　|　　 ｀ ⌒´　　|
　　　　　　　　　　　この場全体に向けるんだ」　　　　　　l｀ （ ｀`/　.　 |　　　　　　　 }
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ 　　l　　.　 ヽ　　　　　 　}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|,. 　 l　　 /⌒　 　ー‐　　ｨ ヽ




ジュンは言われた事を実践すべくまた水面に視線を落とし、
河から上がったやらない夫は川縁でぴちぴちと跳ねていた魚を串に刺すとたき火の側に突き立てる。

二６１．



　　 　 　 　 , -―- ､
　　　　　　/　　　　　＼
　　　　　 /　　＼_　　　|
　　　 　 (●) （●）　　 |　　　　　　「ちょっと市場にでも行ってくるだろ。
　　　 　　(_人__)　　　 /　　　　　　　俺が戻ってくるまで魚を捕ってるか、
　　　　　 l｀⌒´　　　 /　　　　　　　　瞑想して夕べの復習をしててくれな。
　　　　　　|　　　　　　ヽ
　 　　　　__!､＿___／　　＼　　　　　ああそうそう、魚は食べちゃっていいぞ」
　　　　／､ ヽ　　　　　r ､　ヽ
　　 　ﾊ ヽ Y｀l　　　　 |　 >　 Y
　　　{　ヽ_ゾﾉ　　　　　|　ﾚi i i}
　　　｀¨´　　ヽ　　　　ハ　 `'''
　　　　　　　 　>　　 /　ﾍ
　　　　　　　　/　　/ヽ　 ﾍ
　　　 　　　 _,/　　/　ご_ノ
　　　　　　（　ヽ　/
　　　　　　 ＼__ノ


そう言い残したやらない夫はブーツを履くと、バスタード・ソードを背中に装備して町に向かって歩き出し、
一言、分かったよと返事をしたジュンは自分を叱咤しながら何度も何度も水を叩いていた。




　　　 　　　　　 |::ヽ／::::::〈 へ、　　　　　 ／
　　　　　　　　 /7､　　ブ　　　　　 ,-┘:::::::::::::::::::::::::::｀＞　　 .
　　　　　　　　〈〈::ヽ彡　ブ　　　∠::::::/::::::::::::::::〉ヽ::::::::＼
　　　　　　　　 ヽヾ:;ヽ 　 　ン 　　/::〈:::|＾＾|:::::/＼ﾄ､ヽ::::::>
＼　　　　　 　 彡ヽヾ::ヽ彡　　 ／::::::ﾊ|＿l/l/.＿_-ヽ|:::」　//
＼＼彡　　　 　 彡ヽヾ::ヽ彡　 .￣7/.|＿_|─|＿_|- lj/彡///
　 ＼＼　　　　　 　彡ヽヾ::ヽ　　　　　ﾍ. 　__;_＿、u/ﾐ　 /// 　　　「魚め！
　 彡＼＼彡　　 　 　　ヽヾ::ヽ　　　　　ﾌヽ辷フイ{ヾ　 ///彡　　　　覚悟しろぉ！」
　　　彡＼＼彡　　　　彡ヽヾ::ヽ彡　 ／::::〈｀l7:´::::::ヽ ///
　　　　 彡＼＼彡　　　　彡ヽヾ:ヽ　ﾉ::::::::::::V::/:::::::::::〉//彡 /
　　　　　　彡＼＼彡　ブ　 彡ヽヾ /:::::::::::7::ﾄ/:::::::::::/　/　 〈
　　　　　　 　彡＼＼彡ン 　　　 ／::::::::::/:::::/::::::::://　 ／／
`丶､.彡 　 　　 　 ＼＼ 　　　 ／::::::::::／l ／:::::::::/::l ／／彡
`丶､`丶､ 彡　　　∠二フ　／:::::::::::::/　／:::::::::／::::! ／
　彡`丶､`丶彡　　ヽ,'~つﾆ〉ヾ::::::::/／::::::::::／::::::::j　_,. - ' ´
　　　　彡`丶､`丶彡 ﾞへノ7 　ヽノ<::::::::::／ヾー--￢_,- ' ´
　　　　　　　彡`丶､`丶､彡くヲ｀`　 ヽ＜／^ヾフ=／{
　　　　　　　　　　　彡　_,. -ヾソ　　ノ:::::::::::::::::::::::::::::::ヽ,
　　　　　　　　　　　r ' ´:::::::::::::`ｰ‐'´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀`丶
　　　　　　　　　　　l::::::::::::::::::::::::::::::::::_,. -─- ､_::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　 　 　 　 　 l:::::::::::::::r -- ' ´　　　　　　　｀`'ｰ､::::::::::::::
　　　　　　　　　　　/::::::::::::::l　　　　　　　　　　　　　　 l::::::::::::



こうして、二日目の修行が幕を開けた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━……

二６２．
━━━━━━━━━━━……
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

今日は休日の中間日とあって、午前七時の朝市は大変賑わっていた。
やらない夫は両側でひっきりなしに声を上げる店員、売り子と値切ったり品定めをする客との
やり取りを冷やかしつつ、まずは適当に回ってみる事にする。



　　　　　　　　　　　　　　　(,,ﾟ∋)
　　　　　　　　　　　　　　ノﾉﾉ;丿　　　／／　　　　　　　　　　　　　 ＼＼
　　　＿＿＿＿＿＿　　〃YY　　 .／／　　　 　 　 　 　 　 ＼ヽ∧ ∧＼＼
　　　)　　　　.∧ ∧ |　　　´`´`.／／ .∧＿∧　 /／　　　　　　(ー^*)《》＼＼
　　　)　l><三(,,ﾟДﾟ).|　 　 　 ／／∈!,（*　´∀）')　　　　　　／/と_,ii. |.lﾞ:ﾞl《》＼＼
　　　)＿＿＿＿＿__|　　 .／／|:|(≡),（＿ii＿ii　ヽ＼　　　　　　 [__ﾉ..|ﾉノlﾞ:ﾞl＠＼＼
　　　　　　　　　　 | |　 ／／〆）/|XXﾉ|;;;;;;;;;;;;;|　　　　　　　　　　U´ヽ)|`ﾉノ＠＠ ＼＼
　　　　　　　　　　 | |／／!.〆）/ !|　.__（＿）＿）　　　　　　　　　　　　 .|　 ＼＠＠＠＼＼
　　　二二二二二ﾐﾉ／ ∧ ∧　 /　.|新|　　　　　　　　　　　　　　　　ヾｿ__/￣~ヽ　　　＼＼
　　　　 | |l><三ﾟ<　　＿(；ﾟДﾟ) /　./|鮮|　　　　　　　　　　　　　　 　 i´｀i（・∀・*） .（()'）()＼＼
　　　　 | |<l><三;ﾟ<（　　）_ii_ii∧＿∧￣　　　　　∧ ∧　　　　　 　 　|;:;.:|ヽ　　　）＼ヾｿヾｿ__＼＼
　　　l>_| |><三;ﾟ< |　)　ﾟ=3::::';';';';　 ；）　　　　　　(ﾟ *　) ｱﾗ　　　　　 ﾉ;ノ　 Ｙ　./ヽ　|＿＿＿＿＼＼
　　　￣| |￣￣|　ヽＸＸ))Ｘノ と/⌒　）　　　　　　ﾉ_,._,.ゝ　ｱﾗ　　　　（,∧∧ﾍ∧　＿ |＼〈;:'.:〉:'.:〉.:〉＼＼
　　　＿| |＿＿|／　　 ﾞ　　　（＿）ヽ_つ　　　　　ﾉ,_,_,_ゝ　　　　　　　(ﾟ∀ﾟ*)ﾟДﾟ)/豆| 　.＼|芋|〈;:'.:〉　＼＼
　　　　 [:]　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　U U　　　　　　　　ヽXXXXXﾉ´￣ |　　　＼〈;:'.〈;:'.:〉'.:〉＼＼

二６３．
十分ほど歩いただろうか、広場からどよめきが聞こえてきたので行ってみると、
ちょうど肉の競りが行われているところのようだ。



　　 /　　三　ノ／　ヽ､::::i
　　.|彡ー"￣　　　　 ｌ:::::::;
　　l:ｲ,　　～ ー _ 　 ゝ:::::}　　　　　　　　「さぁ次は本日の目玉！
　　i:::r ,ｰ､,,_, i__ ,,,,ﾍ､ ヽ::;ヽ　　　　　　　　湿原帰りの冒険者が売りに出した
　 （v'"'-=ゝj, ヽ r.=ｧ 　vｒ ）　　　　　　　　イエロードラゴンの尻尾、四キロだ！」
　　ヽi ｀ー ;　.:: ｀ｰ '　;　}_ﾉ
　　　'i､　 ﾉﾑ ,､)ヽ ;"　.ｲ
　　　 l.vｲ　　i;､ 　）　 _i＼
　　　 ヽ , r;=v=-､ﾉ ,ﾉ/. |　ー､＿
ー￣/＾ ゝ､⌒, ;　ノ./　 l::::::;::::;:::::::::.....
;:::;::/:;:;;|　ｌヽ､＾:::　へ 　 i:::::;:::::;:::::::::
:::/:::／:|ﾉ＾ヽ、／,:::　＼ｌ＼



鶏、豚、牛、羊の他、時には高級食材ともなる珍獣、魔獣などの肉も売りに出される今日の目玉に、
なんと竜の尻尾が出ているらしい。

すでに鱗ははぎ取られて赤黒い肉が見えている黄竜の尻尾はかなり小振りで先端が切り落とされている、
おそらくは獲物を手に入れた冒険者達がまず、味わったに違いない。

二６４．
残り少ないとあっても、この世に存在する究極の料理、至高の一品と美食家、王侯貴族達の間で
垂涎の的であるドラゴンステーキ何食分かにはなるだろう。
競りが始まったとたんあちこちからとんでもない額の入札が上がり、広場は一気に騒がしくなっていく。



　　　　　＿-三三三三三三三三三三　　　＿ゝ
　　　　_,∠三三三三三三/〃／／三三　　__)
　　　 　/イ 〃^'^'^'^'^'^'^'^'^'^'^'　ゝ三三＿＞　　金貨二千！
　　　　　 l/,.へ、　　　　　,;彡⌒'　　}三三　＼
　　　　　 l⌒' ミ;,_ 　　、,_ｼ／-､　　ヾ三三　＜
　　　　　:l　∠ュゝ)　　　ムュ-‐丶 　l三　　∠
　　　　 〆　　,　''´　　　　 　 　 ｀｀'　 |／　 　ア
　　　　{;'　 　｛　　　　　　）　　　　　　　　　　／へ
　　 　 .l　 　　｀ー── '_,, --､ 　 　 　 ､　　　 　/⌒
　　 　 :| 　　∠⌒ニニ＝＝＝ ゝ　 　　 }l
　 　 　 ',　 ｛　　　　 　　 　　　　} 　　　,;
　　　　 丶　ヽ、＿＿,∠三三ヲ　　　,〃
　　　　　　ヽﾐ　　　-=─　　　　　_,ノ
　　　　　　 ,.へ,_　　　　　 　_,ノ=７'´ 　/三
　　　　 ／ 三|＼ ￣￣￣　　／ 　 　/三
　　 　 三三三| 　 ＞──≦、　　　/三三


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　∧∧∧∧∧∧∧∧∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜　　金貨二千五百！　 ＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ＶＶＶＶＶＶＶＶＶＶＶＶＶ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　r～⌒'⌒ヽ-､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／ ￣￣￣｀ヽ、: :L
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,.Zﾞ>､_、､_∠二、 l: : : ｝
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. 　 　 {｛ r'｀｡Y^ｆY｡⌒) Ｈ: : : :｝
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　 ゝﾆｱ⌒ ┐ﾆニノ | : : 〈
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 (⌒　‘ー'⌒ 　 　 r ｌ'⌒Y
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀Tiァｰ=ﾆ二＞､ 　 )´ ﾘ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　 　 　 ,､__｝＿__r'二〉 /ｧィ′
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ.` ー─‐'´／:/　ﾄ､_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀フＴ::ブ´　　　/ /　＼＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　│　　 　 ／ /

二６５．
　　　　　　　　　　 ,　, , -‐==- ．_
　　　　　　　　　　/.//ｲイ≦三≡=‐=‐-.._
　　　　　　　　　 ｉ .川/〃イ三≧三三二≧､
　　　　　　　　, -ゝｌｌｌｌｌﾍヘヘへミﾐミミﾐ､ミﾐ､､ミ
　　　　　　　ｲイﾌｼﾞﾞﾞ''　ﾍ. ＼＼｀ヽﾞﾞﾞ三ミﾐヾヾミ　　　　「金貨五千」
　　　　　　　´ｲ// 　 /　,イ´ヽ　｀　　ヾ　､｀ヾミﾐﾐ
　　　　　　　　llﾚ__｀ {　´ _,,イ二ヽ　ヾミﾐ､　ヽヾミﾐ
　　　　　　　　 {三≧　=≦竺o=''　 三ミﾐ､ミﾐ､ミﾐﾐ
　　　　　　　　 .〉ｰ ﾟ'　　　､　　ノ 　 三ミ､ミﾐ､ミﾐ､ﾐ
　　　　　　　　.( ｀_/..　　　 ｀¨　　　 三三F lミヾミミ
　　　　　　　　 l (　 ＿__)ヽ　､　　　三-､　.ﾘヽヾヾヾ､
　　　　　　　　 l/ ￣＿_ _　｀ｰ､　　.三　'　/川川ﾊﾊヾ
　　　　　　　　 l　´ ＿ 　 ｀　 　l　　　ゝ-ｲ川 川川ハﾊ
　　　　　　　　 ｌ　　 ¨　　　　　　 ___ ノﾉノﾉﾉ川 l || l i ハ
　　　　　　　　 ゝ．_　　　　 __　 ､二ンノｲノﾉﾉ川 川 l川
　　　　　　　　　　　　Т ￣　 ／／　｀ｰｲノﾉﾉﾉﾊﾉﾉﾊﾉﾉ
　　　　　　　ｒ‐‐- - -┴────-=＝─ｲイノﾉハﾉﾊ
　　　　　　　jl｀ヽ: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
　　　　　　 ﾉj 　 ヽ: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :



　　 /　　三　ノ／　ヽ､::::i
　　.|彡ー"￣　　　　 ｌ:::::::;
　　l:ｲ,　　～ ー _ 　 ゝ:::::}　　　　　　　　「さぁ五千！五千でました！
　　i:::r ,ｰ､,,_, i__ ,,,,ﾍ､ ヽ::;ヽ　　　　　　　　他に無いか他に無いか！？」
　 （v'"'-=ゝj, ヽ r.=ｧ 　vｒ ）
　　ヽi ｀ー ;　.:: ｀ｰ '　;　}_ﾉ
　　　'i､　 ﾉﾑ ,､)ヽ ;"　.ｲ
　　　 l.vｲ　　i;､ 　）　 _i＼
　　　 ヽ , r;=v=-､ﾉ ,ﾉ/. |　ー､＿
ー￣/＾ ゝ､⌒, ;　ノ./　 l::::::;::::;:::::::::.....
;:::;::/:;:;;|　ｌヽ､＾:::　へ 　 i:::::;:::::;:::::::::
:::/:::／:|ﾉ＾ヽ、／,:::　＼ｌ＼


殺気立った声を遮るかのように風格のある男性が五千を告げ、結局そこで落札となった。
どうやら有名人なのだろう、周囲の好奇と妬みの視線を平然と跳ね返す彼は
従者らしき若者に支払いと引き取りを命じると、悠々とその場から引き上げて行く。

二６６．



　　 ／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　 （ ⌒）（⌒)
.　|　　u　 （__人__)　　　　　「みんな殺気立ってただろ。
　 |　　　　　 |r┬|}　　　　　まぁドラゴンステーキは美味いからなぁ」
　 |　　　　　 |　| |}
.　 ヽ　　　　　｀ﾆ}
　　 ヽ　　　　　ノ
　　　/　　　 く
　　　|　　　　 ＼
　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)､



父親に食べさせてもらった事があるやらない夫は無理もないかと納得した後、
ふと今も空きっ腹を抱えて剣を振るっているはずのジュンを思い出し、肉屋に寄ってみる事にした。



　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　／　　 ヽ_　　＼
　　　　　　　|　　　 （⌒ ）（⌒）
　　　　　　.　|　　　　 （__人__）　　　　　　　　　「夕べはああ言ったけど、
　　　　　　　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　　　　　肉も食わなきゃ力でないしな。
　　　　　　.　 |　　　　　　 　 }　　　　　　　　　　買っていってやるか」
　　　　　　.　 ヽ　　　　　 　 }
　　　　　　　　 ヽ 　　　　　ノ
　　　　　　_,,,,ノ|､￣／/／/ ＼、
　　_,,..r''''"/　|　＼`'／　 /　 | ￣`''ｰ-､|
　 / 　 　 /　 |　 ／＼　 / ／　　 　/　ヽ
　ﾉ　|　　＞　|／）::::/＼/　＼ 　　ノ　／}
　{ 　 |　{　　 | ,r":::ヽ　/ 　 /　　/　// ハ

二６７．

__i,,,,_＿i,,__＿.,,_＿i,,__＿＿_i,,,,_＿i,,__人_i,,,,_＿i,,__＿_i,,,,_ﾞl__i,,,,_＿i,＿i,,__＿_i,,,,_ﾞl__i,,,,_＿i
,,_＿i,,,__＿i＿,/::::`、,__＿i＿＿_i,,,,_＿i,,__＿,_i,,,_＿i,,__＿_i,,,,_:.＿i,,,__＿　,,,i,,,,_　ﾞl,,_＿i,,＿
__i,,,,_＿i,,__＿_i,,, ／Ｖ＼＿,_i,,,,_＿i,,__/＿_i,,,,_＿i,,__.:.:.:.:.:.　ﾞl__i,,,,_＿i,,___i,,,,_＿i,,__人_i,,,,_＿
,,_＿i,,,__＿i＿　（・－・　）＿＿_i,,,,_＿i,,__＿,_i,,, ∧＿∧_i,,,,_　ﾞl,,_＿i,,,__＿＿ ／■＼_＿i,
ｺﾆiﾆﾆiﾆﾆiﾆﾆiﾆU 　 U ）ﾆﾆiﾆﾆﾆﾆiﾆﾆiﾆﾆﾆi （´く_｀　）ﾆiﾆﾆiﾆﾆiﾆﾆiﾆﾆiﾆ.（´∀｀* ）ﾆﾆiﾆ
　 . /￣￣￣￣（_⊂二_）"￣ /　,,/￣￣￣￣ ∪ ∪　）￣'''/　 /￣￣￣￣と　　　ヽ￣￣
　 /　[二二]　θ　　　　Ψ　/wiｉ/§　§　§ （__（＿,,⊃　/､ ./　ζζζ と_と＿ﾉ､_）() ()
. / 　 |＿_;;;| ＿_　（oﾟ｡） 　 /　 /　 <l=- <l=- <l=- <l=-　/,,_ /　 ○○　l二二二l　ΥΥΥ
/　⊿⊿ 　 〈;;;;;+〉　　　　 /　 /　жжж　（＊）＊）＊）/vv/　 ○○○ |_(ﾟдﾟ)_| УУУ
￣￣￣￣￣￣￣￣∧ ∧Σ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣,,...,,￣￣∧＿∧￣￣￣￣￣￣
　,,_　　　　　　　((　 (ﾟ*　 )　　　　_wii,,　　　　　　　　　　　　　　（∀・　；）　))　　　　,,,...wii
　((　∧＿∧　　　　/＾　ﾊ　　　　　　　　　Α＿Α　))　vv,, 　　（　　 　 ）　　　∧ ∧



　　　　 ／￣￣＼
　　　／　　 _ノ　　＼
　　　|　　　 （ ●）（●
　　　|　　　 　 （__人__）　　　　「野菜も一通り買ったし………
.　　　|　　　　　　　　ﾉ　　　　　おっ、果物屋か。
　　　 |　 　 　 ∩ ノ ⊃
　　／ 　 　 .／　＿ノ　　　　　　柑橘は疲労を取るのに良いだろ」
　 (.　 ＼ ／　.／_ノ │
　　＼　 “　／_＿_|　 |
.　　　 ＼／ ＿＿＿ /



肉屋を出て野菜などを買い足しながら露店を眺めて周り、果物や調味料、携帯食料なども手持ちに足した。
そういえば昨日の串焼きに随分戸惑ってたっけ、と思い返して野外用の食器なども一通り揃えて、
次の目的地へ向かおうと反対側の通りへ抜ける。

二６８．
サクラダ家の方はどっちだっけ、と王城の位置を確認したところで東方風の店先が視界に飛び込んできた。


　　　　　 ,,,,, ,,,,, ,,,,, ,,,,, ,,,,, ,,,,, ,,,,, ,,,,, ,,,,, ,,,,, ,,,,, ,,,,, ,,,,, ,,,,, ,,,,, ,,,,, ,,,,,, ,,,,
　　　　／,,,,, ,,,,, ,|￣人￣￣￣￣￣￣￣￣￣|,,,, ,,,,, ,,,,, ,,,,, ,,,,, ,,,, ／ ）
　　 ／,,,,, ,,,,, ,,,,, |. （＠）　須　来　無　屋　　 |,,, ,,,,, ,,,,, ,,,,, ,,,,,　／.／
　／,,,,, ,,,,, ,,,,, ,,,,,|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿| ,,,,, ,,,,, ,,,,, ,,,,,,／.／
（;;;;; ;;;;; ;;;;; ;;;;; ;;;;; ;;;;; ;;;;; ;;;;; ;;;;; ;;;;; ;;;;; ;;;;; ;;;;; ;;;;; ;;;;; ;;;;; ;;;;; ;;;;;）／/＼
　　|　| | |　 　 ||　 　 ||　 　 ||　 　 ||　　　　　　人　.|.　　 | | 　 / す/＼
　　|　| | | 苺　|| 水　|| 銅　|| 串　|| すら.　　（＠）..|.　　 | |.　/ ら / す/
　　|　| | | 大　|| 羊　|| 鑼　|| 団　||　　 いむの　　|.　　 | | / い / ら /
　　|　| | | 福　|| 羹　|| 焼　|| 子　|| 　 　 　 　 雫　|. 　　| |/ む /い /
　　|　| | |＿＿||＿＿||＿＿||＿＿||＿＿＿＿＿＿|.　　 | | の /む /
　　|　| |　　　　　　　　入ヾ　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 | |雫 /の /
　　|　| | 　　　　　　／oﾟ ＼　　　　　　　　　　　 λﾞ　　　| |　/雫 /
　　|　| | 　　　　　 （ﾟД>ﾟＯ）　　　　　 　 　　 ／oﾟ ＼ 　 | |~//～
　　|　| |￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|　（＾∀(＾0）　ﾞ| |//
　　|　| |(o0)(o0)／[][][]／＠＠／■■ ...| ⊂|| У ||⊃ .| |/
　　|　| |＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝| 　ﾉ'須~/）～ | |
　　|　| |.| | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | |.|　 ~∪∪　 　 | |
　|三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三|

二６９．



　　 ／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　（ ●）（●）　　　「東方菓子屋まであるのか」
.　|　　　　（__人__）　　　　
　 |　　　　 ｀ ⌒´ﾉ
.　 |　　　 　　　　 }
.　 ヽ　　　　　 　 }
　　 ヽ　　　　　ノ
　　　.>　　　 <
　　　|　　　　 |
　 　 |　　　　 |



餡や餅米、小豆などを中心に使うミツカミ国の菓子は、
卵、小麦粉、乳製品を使う他の国の物とは味も作りも大きく異なっている。

値段はややお高いが、平民から貴族まで根強い愛好者が多いのも事実で、
他国に出店した東方菓子屋は何処の町でも人気を集めているのが現状だ。

二７０．


　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　　 ／　　 _ノ　　＼
　　　　　　　 |　　　 （⌒ ）（⌒）
　　　　　　　 |　　　　 （__人__）
　 　　　 　 　 |　 　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　　　　　（菓子か、あの人が好きだったなぁ………）
　　　　　　　　|　　　　　　 　 }
　　　　　　　　ヽ　　　　　ﾍミ|
　　　　　　　　／,`　、` -`,--` ,
　　＿＿,---/;;;;;`　　`-,-/ニﾆ |
　/;;;;;::::、:::::::::|、_ ,＞、 /::l,_l･　,<、__
ノ;;;;;;;;;;;;:::|::::::::::＜:::::::ヽ``l::::|　　|`l,::::ヽ
|;;;;;;;;;;;;;;:::::|:::::::::::::ヽ:::::::＼|:::|`-‐'/::ヽ::::|
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|;:::::::::::::::::::-、:::`;:ヽ;-';;;;;:::ヽ::l
;;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;;:::::::::::::::::::::`、;`l;;;;;8;;;;;::::`ヽ
;;;;;;;;;;;;/、;;;;;;;;;;;;::::::::::::::::::::::;`l;;;|;;;;;;;;;;;::::: `l|、
;;;;;/'　 `,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::::|;;;::l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::l
;;;く　　　';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::::::::::;;;;;;;l;;;;;;;;;;;;;;;;;;/
　　　　 o
　　　　　 Ｏ
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣

二７１．
┏──────────────────────────────────────────────┓

　　　や、やらない夫？古文書の解読ばかりでは気も滅入るだろう。
　　　甘い物は頭を使った後に良いと言う、その………茶を点てるので、良かったら一緒に食べないか？

┗──────────────────────────────────────────────┛
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　東方異聞録　―――やらない夫と賢者の石②―――

　　　　　　 |二ﾆ　-────-　__|＿
　　　 =＝￣ ─ '''' 　￣￣￣￣　 ''' 　-＝=
　　　　` -　､_ ,,　-─────--　　ｨ ' ´
　　　　　　 ,-l　　 ＿＿＿＿＿＿　　 ト、
　　　　　／ 　7￣　 /.　　　　',ヽ. ￣ヽ　 ヽ
　.　　　/　　 /　　 ,/　　　　　.l ',　　', ',　　 ＼
　　　 / /　 ,'　　,' ,'l　　　　　 .l､ l　　', l　　　 ヽ
　　　,' ｲ　　l　　 lハ l　　 　　ハﾊ l　 l l　　l l　',
　　　lﾊ　　 l/. l. ll　,lＡヽ　　　ﾄ､ll_',l､ l､l　　ハ　l　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　|| ',　 Aﾊ. l,イ厂ヽ､.　　/,-ｲ￣Tﾍ', 　,' A. ,'　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　ヽ_　　.＼
　　　|l　',. ./. ∨l l勹;;;l　＼/. 　 l乂;;l　ﾊ　/ ﾊ/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（ ●）（ ●）　　｜
　　　　　lⅥ.　`　弋_ノ　　　　　弋_ノ　l レ∨ l　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（__人__）　 　 　 |
　　　　　|　l 　 l∧///　　 '　　//∧/ l　　l. 　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｌ｀ ⌒´　　　　｜
　　　　　|　|.　 ﾄ、　　　　 ＿　　　　　ｲ.　 |.　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　{　　 　 　 　 ｜
　　　　　|　|.　 | ヽ　　　 ´　 `　　, -´l　　 | 　 l　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　{　　　　　　 /
　　　　　|　|　　l　　 `　-r __ ,, r''　　 l　　 l.　　l　　　　　　　　　　　　　　　　　_. -: ´Λ　　　　 _.へ｀　、
　　　　　|.　|　　l　　　ノ Ｔ　　　l~ヽ　ll　　l.　　 l　　　　　　　　　　　　　　　r＜: : : : /:|: :、 ￣r'　 　 ＼ :＼_
　.　　　 l 　 ll.　 l- 'T　　l　　　 y　 `7　l　L__　 l　　　　　　　　　　　　　　/: : :ｌ : : : : : :＼`IエL>、　 　 >ﾍ::Λ
　　　　 l　 /ll　　l＞l　　 l　 　 /　　 ll　l　l　　ヽl　　　　　　　　　　　　　　|: : : ﾄ､: : : : : : : : : : : : : `ｰ／ : : V　|
　.　　　l ./　 ヽ　l（└,,　 l　　 /　 __l/ / /　　　 ＼　　　　　　　　　　　〈: : : :::: _ -￢-－―-､: : く:r ､: : : V ｝
　　　　l/　　 ＞､l'''￣` '' ヽ、/　　ヽl./ｲ　　　　　　　　　　　　　　　　　　/: : :_ン´: : : : ＼ ,___, ｨ ）: : :`く : : : ヘ|
　　　　l　　 （/ / ,､_　　　　　ヽ　 ノ,ﾚ' ヽ　　　　　　　　　　　　　　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
　.　　 l　　　ヾムヽ､￣'' ヽ　　 く∧ノ　　',
　　　　ｱ､　　l　 l￣ `'''7　ヽ、　 ＼　　 　l
　　　　 ﾚ ＼　　 l　　 /　　 ﾊ　　　ヽ　　/


┏──────────────────────────────────────────────┓

　　　ああ、もうこんな時間ですか。毎日ありがとうございます。

┗──────────────────────────────────────────────┛

二７２．
ふと東方にいた頃の記憶が頭をよぎり、ジュンに買っていってやろうと適当に包んで貰った。



＼　まいどありーーー！　／
　　　　　　　　　　　　（（　　）
　　　　　　　　　　　　　(　ノ
　　　　　入ヾ l⌒l　　　 (
　　　 ／oﾟ ＼ヽ/┏⊂ﾆﾆﾆﾆ⊃┓
　　　（Ｏﾟ<Дﾟ）|| ┗|＿＿＿＿|┛
　　　 ||⊃У||⊃　　　|~从从~|
　　～（|~'須~| 　　　 「￣￣￣］
　　　　 ∪∪　　　　 |　　　　.｜



　　 　 　 　 , -―- ､
　　　　　　/　　　　　＼
　　　　　 /　　＼_　　　|
　　　 　 (●) （●）　　 |
　　　 　　(_人__)　　　 /　　　　　「さて、次はジュンの家だな」
　　　　　 l｀⌒´　　　 /
　　　　　　|　　　　　　ヽ
　 　　　　__!､＿___／　　＼
　　　　／､ ヽ　　　　　r ､　ヽ
　　 　ﾊ ヽ Y｀l　　　　 |　 >　 Y
　　　{　ヽ_ゾﾉ　　　　　|　ﾚi i i}
　　　｀¨´　　ヽ　　　　ハ　 `'''
　　　　　　　 　>　　 /　ﾍ
　　　　　　　　/　　/ヽ　 ﾍ
　　　 　　　 _,/　　/　ご_ノ　　ﾓｷｭﾓｷｭ
　　　　　　（　ヽ　/
　　　　　　 ＼__ノ



今度こそ、向かうはサクラダ家である。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━……

二７３．
━━━━━━━━━━━……
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

活気のある通りを後にしてしばし、静かな高級住宅街の奥にあるサクラダ家へと到着する。



　　　　／||ミ
　　 ／ ::::||
　／:::::::::::||＿＿＿＿
　|:::::::::::::::||／￣￣＼|| ｶﾞﾁｬ
　|:::::::::::::::||　_ノ　　＼＼
　|:::::::::::::::||（ ●）　（●）|　　　　「おはようございます………」
　|:::::::::::::::||　 （__人__）　 |
　|:::::::::::::::||　　｀ ⌒´　　|
　|:::::::::::::::||　　　　　　　}
　|:::::::::::::::||　　　　　 　 }
　|:::::::::::::::||ヽ＿__　　ノ
　|::::::::::::::(___＿＿ノ´||
　|::::::::::::::(_ノ ／ . . . ||
　|:::::::::::::::||／　　　　||
　|:::::::::::::::||　　　　　 ||
　|:::::::::::::::||　　　　　 ||
　＼:::::::::::||　　　　　 ||
　　 ＼ ::::||￣￣￣￣
　　　　＼||



市場で夢中になっていたせいか、すでに八時を回っている。
さすがに皆さん起きているだろうと遠慮がちに扉をあけると執事達に迎えられた。



　　　　　　　　　,　-─-─-　、
　　　　　　　 , ':::::::::::::::::::::::::::::::`、
　　　　　　/:::::/、＼、, ,／＼ ::::ヽ、
　　　　　/:::::::::|　　　　　　　　| ::::::`、
　　　　　|:::::::::|　　　　　　　　|::::::::::|
.　　　　　|:::::::::|─-　　　,-─|:::::::::|
　　　　　　|:::::::|=ｪｪ-　　-ｪｪ=|:::::::|　　　　　「やらない夫様、お帰りなさいませ。
..　　　　　　|:::::|⊂⊃'⌒⊂⊃|::::::|　　　　　　おや、ジュン様はご一緒じゃないのですね」
　　　　　　　|::::|　　　 l　　　 |::::|
..　　　　　　　|::|＼　 ー　 ／|::|
.　　　　　　　　|　　lヽ _　'l　　|
,.　　　　　　　　　／＼..／＼
　　　　　　　　／|　／Ｙ＼　|＼
　　　　__,,-'''|:::::::|ﾚ　ムムＶ|:::::::|`-、
　 _,,-'　　　|:::::::::＼　|　| ／::::::::::|　　`-、
　|ヽ　　　　|:::::::::::::::＼／:::::::::::::::::|　　　/`、
　|　l　　　|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|　　/　　、
　|　 |　　|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|　/　　　`、
　|　　|__|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|/　　　　ヽ
　|　　　 | ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|＼　　　　　＼
　|　　　　| :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|　　＼＿　　　＼
　|　　　　|| ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|　　　／　　　　　/
　|　　　　| | .............::::::::::::::::::::::::::::::::|　　／　　　　　／

二７４．
　　 ／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　 （ ●）（●）
.　|　　　　 （__人__）　　　「ちょ、ちょっと用事で戻ってきただけなので。
　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　エンジュ様はご在宅ですか？」
.　 |　　　 　　　　 }
.　 ヽ　　　　　 　 }
　　 ヽ　　　　　ノ
　　　.>　　　 <
　　　|　　　　 |
　 　 |　　　　 |




　　|:i
　　|:i
　　|:i　　　　　　　　_ ＿＿ ＿＿
　　|:i　　　　,.　.:.´::::::::::::::::::::::::::::::.:.:.｀`ヽ
　　|:i　　／.:.:.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.:.｀丶､
　　|:i　 /.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.:.`ヽ
　　 |:i.:./.:.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: /｀｀｀''''''''`ヽ:::::::::!
　　 |:i/.:.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/　　　　　　 i::::::::::!
　　|/.:.:.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l　 　 　 　　　l::::::::::!　　　「いらっしゃいますよ。
　　|!.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./l.:.l─- ､　　　　!:::::H::!　　　出られる準備の最中かと思います。
　　|!.:.:.:.:.:.:.l.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l　l/tｪｭ､_　　-‐ ｲ::::::l l::!　　　入れ違いにならなくて良かったですね」
　　|ﾄ､.:.:.:.:.:l.:.l.:.:.:.:.:.:.:.:.:..:.:.!　　　　　　,rｪｯ/::.::::l l::l
　　|:i `:､:::::l:::l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|　　　　　　 :　 l.::::::::l l/
　　|:i　　V:::::l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::N　　　　　　　ゝﾉ.:::::/
　　|:i　　 `ヾl.:.:.:.:.:./ヽ.:.:|　　　`ー-- ,.ｲ.:/l.:/
　　|:i　　　　 `7"´　　ヽ|　　　　　 ／　l/ l/
　　|:i　　　　 /　　　 　　　r─一 ' 　　 ′
　　|:i　　　 /´￣￣￣￣｀`ヽ
　　|:i.　　 / _ ＿ ＿　　　　　 ＼
　　|:i　　 「　　　__／.::::::::::`ヽ　　＼
　　|:i　 /.:::::::::::::::::::::::::::::::.::::::::::＼＿＼
　　|:i ./.::::::::::::::::::::::::::／´￣￣ ￣｀`ヽ|.　　.
　　|:i/.::::::::::::::::::::::::::/　　　　　 ,．'´　 `ヽ
　　|/::::::::::::::::::::::::::/　　　　　 /　　　　　 i　.
　 /:::::::::::::::::::::::::::::l　　　　　/　　　　　　 |　.
　l::::.:::::::::::::::::::::::::::l　　　　/　　　　　　　 |　.: .
　l.:::.:::::::::::::::::::::::::::| 　　 /　　　　　　　　 |　.
　l.:::::::::::::::::::::::::::::::|　　/　　　　　 　 　　 |　.




こちらです、と執事に案内され、やらない夫はエンジュの私室に通された。
遠慮がちのノックの後、失礼しますと扉を開けてみると書類の山に囲まれたエンジュが
どうした、と声を出してくる。

二７５．
　　　　　　 　　 _ ＿＿ _ _
　　　　　　,．'"´ 　 　　　　､`ヽ､
　　　　　/　　　i　　　　ﾘ ヽ ､　　＼
　　　　/　　 　.:ﾚ′ 　 j　　i !.:. 　　i
　　 　 l　　 　.:/　　 , /　 i .::|:::.:l　　|　　　　「おはよう。どうしたのかな？
　　 　ﾉ　　　 ,.ｨｲ.:::/　　.::l.:|:|::::::|:::.　ﾄ､　　　夕べは帰らなかったようだが」
　　 彳　　,ｨｲ 1:|::,'　 .:;ｨｲハi::::::|::.:.:.ヽ|
　　　|.:.:|, ｲ‐ﾘ-ﾄﾄ､::.;ｨｲ仁＝ト-ヾ::::.:.:.ﾄ､
　　　ﾄ､:i　{ r‐ェﾃ ヽl/　''ﾃェ‐ｧ .:!.:ﾄ､:;!/
　 　　 ヾ::､　　　　,　　　　　　　　!/::／
　　　　　 仆　　 　:j ､　　　　　　ｲ:/
　　 　 　 　 `､　　　_ _　　　　　/i,ハ
　　　　　　　　ヽ　　ｰ ｀　　 ／ .|;;;:;:|
　　　　　　　　　`ﾄ､ ＿__ ／　　 !;;:/､
　 　　　 　 　 /.::::|　ヽ　　 /　　 l::::.:.L




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　 ヽ､_　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（●）（● ）　　　|
　　　　　　　　　　　　　　「町を出て河の側で野営をしています。　　　　　　（__人__）　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　ジュンは今、木刀で魚を捕る練習に　　　 　　 　 （｀⌒ ´　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　入ったところですよ」　　　　　　　　　　　　　.　　　　 { 　 　 　 　 　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　{　　　　　 　 ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　　 　ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾉ　 　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /　　　　　 |

二７６．
やらない夫の言う修行内容がいきなり高度な内容だったので、目を丸くしたエンジュはしばし言い悩んで、
気になる事を問いかけてみた。



　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ＿__
　　　　　　　　　　　　 _　-―――――-＜￣} }!
　　　　　　　　　　　 ´　　　　　 -――７　 く.７./-､
　　　　　 　 ,　 ´　　　　　￣　　,. -―/　　　Ｙ´ ＼＼
　　　 　　 /　　　　　,　　　,　 イ　　 /　　　　　　　 ヽ.｀　､＿.ノ
　　　　　/ 　　　 ,／　　／ 　,/ 　　 { 　 {　　　　　　　＼￣
　　　　 /　　　　/ 　 　 　 　,ﾉ　　　 }　　ﾊ　 }　　　　　、ヽ.
　　　　 |! 　 　 /　　　 　_.／ ,ｨ /　/　　　}　 !　　　　　 ヽ.}ヽ、
　　　　 |　　　/　 　 　｀才　 /:/　,　　 　/　/　　　　ヽ. 　ヽ.　}　　　「もうそんな事をしているのか。
　 　 　 {　 　/　　､　.＿__.／ /　/ ,.　__/　ハ　　ハ 　 }!　i {
.　　　　 Ｙ　/　　　｀　.ナｰ-r七´ /／７ :/二.!_/}!　}　 ハ ﾊ!　　　　　………で、君の目から見て、
　　　　　| /　,　-―　〈 /　 {!　 ,ｲ | ／ ´tﾃ::ナ}ﾉ ./　/　ﾘ ﾉ　　　　　ジュンには才能があるだろうか」
　　　,イ⌒Y´￣￣　　ハヽ (ヽ. i ヾ ､_　　 ￣ ノイ}／　
　　〈　　　人　　――-　ヽゝxくヽ、　　　　　　 　∨
　　 }!　　∧_ ヽ. ,ｘxzrく⌒´ヽ!　　 　 　 　 　 　 ／
　　八　{〈 　 ,.イ}　　 ｀　　　 {　 　 　 　 , 　 _ '´
　　　 }ハﾘ　{´　i　　　　　　　ヽ　　　　　　 /
　　 ノ'　 }! 　ヽ/　　　　　　　　{ヽ.　＿＿_/
　 　 　 　 ＿∠__＿＿＿　　　 ヽ.
　　　　　/: : : : : : : : : : : : ￣￣￣＼
　　　　 入 ＿ ＿＿＿＿＿　　　＿厶、
　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:￣￣:.:.:.:.:.:.:＼

二７７．
ああ、親なんだな、と自然に微笑んだやらない夫は冗談でも誇張でもなく、
自分の素直な感想と判断を答える。



　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　　 ／　　 _ノ　　＼
　　　　　　　 |　　　 （⌒ ）（⌒）
　　　　　　　 |　　　　 （__人__）
　 　　　 　 　 |　 　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　　　　　「大丈夫ですよ、明日には魚が捕れるように
　　　　　　　　|　　　　　　 　 }　　　　　　　　　　なりそうです。
　　　　　　　　ヽ　　　　　ﾍミ|
　　　　　　　　／,`　、` -`,--` ,　　　　　　　　　それから実戦経験を繰り返して、
　　＿＿,---/;;;;;`　　`-,-/ニﾆ |　　　　　　　　　試験までに剣技を覚えて貰おうと思っています」
　/;;;;;::::、:::::::::|、_ ,＞、 /::l,_l･　,<、__
ノ;;;;;;;;;;;;:::|::::::::::＜:::::::ヽ``l::::|　　|`l,::::ヽ
|;;;;;;;;;;;;;;:::::|:::::::::::::ヽ:::::::＼|:::|`-‐'/::ヽ::::|
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|;:::::::::::::::::::-、:::`;:ヽ;-';;;;;:::ヽ::l
;;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;;:::::::::::::::::::::`、;`l;;;;;8;;;;;::::`ヽ
;;;;;;;;;;;;/、;;;;;;;;;;;;::::::::::::::::::::::;`l;;;|;;;;;;;;;;;::::: `l|、
;;;;;/'　 `,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::::|;;;::l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::l
;;;く　　　';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::::::::::;;;;;;;l;;;;;;;;;;;;;;;;;;/



だがそれに、さすがのエンジュも一瞬えっ、と驚いた声を出した。
たかが九日間の修行で剣技を一つ習得するなど、どれだけの努力と才能が必要なのか
分からなかったのだ。

二７８．
しかしすぐに考えを改める。
この少年が「約束する」と言ったのだ。
自分はただ、彼を信じて、息子に期待して待ってれば良い。



　　　　　　 　　 _ ＿＿ _ _
　　　　　　,．'"´ 　 　　　　､`ヽ､
　　　　　/　　　i　　　　ﾘ ヽ ､　　＼
　　　　/　　 　.:ﾚ′ 　 j　　i !.:. 　　i
　　 　 l　　 　.:/　　 , /　 i .::|:::.:l　　|
　　 　ﾉ　　　 ,.ｨｲ.:::/　　.::l.:|:|::::::|:::.　ﾄ､　　　　「やはり教師が有能だと、
　　 彳　　,ｨｲ 1:|::,'　 .:;ｨｲハi::::::|::.:.:.ヽ|　　　　　生徒の進歩も早いものなのだな………」
　　　|.:.:|, ｲ‐ﾘ-ﾄﾄ､::.;ｨｲ仁＝ト-ヾ::::.:.:.ﾄ､
　　　ﾄ､:i　{ r‐ェﾃ ヽl/　''ﾃェ‐ｧ .:!.:ﾄ､:;!/
　 　　 ヾ::､　　　　,　　　　　　　　!/::／
　　　　　 仆　　 　:j ､　　　　　　ｲ:/
　　 　 　 　 `､　　　_ _　　　　　/i,ハ
　　　　　　　　ヽ　　ｰ ｀　　 ／ .|;;;:;:|
　　　　　　　　　`ﾄ､ ＿__ ／　　 !;;:/､
　 　　　 　 　 /.::::|　ヽ　　 /　　 l::::.:.L



納得するように頷きを繰り返すエンジュとて、親衛騎士以外の騎士団の中では五本の指に入る腕前である。
しかしながら、腕の立つ者が有能な教師になれるかと言うと、必ずしもそうではない。
どこかの剣術道場に居た経験がないにしてはよく教えている方であろうが、
どうしても基本重視の訓練になってしまうのは性格の事も相まって仕方のない事かもしれなかった。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　 ヽ､_　　＼
　　　　　　　　　　　　「それもジュンの努力、集中力、　　　　　　　　　　　　　　　　（●）（● ）　　　|
　　　　　　　　　　　　今までの基本の下積みがあっての事ですよ。　　　　　　　　（__人__）　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 （｀⌒ ´　　　　　|
　　　　　　　　　　　　………ところで、その」　　　　　　　　　　　　　　　　　.　 　 　 {　　　 　 　 　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　{　　 　 　 　 ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 mｍ 　 ヽ 　 　 　ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（⊂　￣￣￣　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　￣￣￣|　　　　|

二７９．
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　／　_ノ　 ヽ､.＼
　　　　　　　　　　　「騎士募集試験の登録、と言うか申し込みは　 　 　 　 　 　 | 　（●）（●）　.|
　　　　　　　　　　　いつどのようにすれば良いのでしょうか？」 　　　　　　　　 　!　　（__人__）　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 , っ　 ｀⌒´　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　ミ）　　 　　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　./　ノゝ　　　　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　i　ﾚ'´　　　 　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　|　|／|　　　　 |　|



　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ＿__
　　　　　　　　　　　　 _　-―――――-＜￣} }!
　　　　　　　　　　　 ´　　　　　 -――７　 く.７./-､
　　　　　 　 ,　 ´　　　　　￣　　,. -―/　　　Ｙ´ ＼＼
　　　 　　 /　　　　　,　　　,　 イ　　 /　　　　　　　 ヽ.｀　､＿.ノ　　「ああ、それなら私が昨日済ませておいた。
　　　　　/ 　　　 ,／　　／ 　,/ 　　 { 　 {　　　　　　　＼￣
　　　　 /　　　　/ 　 　 　 　,ﾉ　　　 }　　ﾊ　 }　　　　　、ヽ.　　　　　身元保証人と推薦状が必要なのだが、
　　　　 |! 　 　 /　　　 　_.／ ,ｨ /　/　　　}　 !　　　　　 ヽ.}ヽ、　　　私が君の分も兼ねておいたので問題ないと思う」
　　　　 |　　　/　 　 　｀才　 /:/　,　　 　/　/　　　　ヽ. 　ヽ.　}
　 　 　 {　 　/　　､　.＿__.／ /　/ ,.　__/　ハ　　ハ 　 }!　i {
.　　　　 Ｙ　/　　　｀　.ナｰ-r七´ /／７ :/二.!_/}!　}　 ハ ﾊ!
　　　　　| /　,　-―　〈 /　 {!　 ,ｲ | ／ ´tﾃ::ナ}ﾉ ./　/　ﾘ ﾉ
　　　,イ⌒Y´￣￣　　ハヽ (ヽ. i ヾ ､_　　 ￣ ノイ}／
　　〈　　　人　　――-　ヽゝxくヽ、　　　　　　 　∨
　　 }!　　∧_ ヽ. ,ｘxzrく⌒´ヽ!　　 　 　 　 　 　 ／
　　八　{〈 　 ,.イ}　　 ｀　　　 {　 　 　 　 , 　 _ '´
　　　 }ハﾘ　{´　i　　　　　　　ヽ　　　　　　 /
　　 ノ'　 }! 　ヽ/　　　　　　　　{ヽ.　＿＿_/
　 　 　 　 ＿∠__＿＿＿　　　 ヽ.
　　　　　/: : : : : : : : : : : : ￣￣￣＼
　　　　 入 ＿ ＿＿＿＿＿　　　＿厶、
　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:￣￣:.:.:.:.:.:.:＼

二８０．
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 _ノ　　ヽ、　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　（○）（○ ）　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　 （__人__）　 　u　 .|
　　　　　　　　　「そうなのですか。　　　　　　　　　　　　.　　　　　　　 ヽ｀⌒ ´　　　　|
　　　　　　　　　俺の様な身元が不確かな冒険者の　　　　　　　　　｛　　　　　　　/
　　　　　　　　　保証人になっていただけるなんて、　　　　　　　　　　lヽ、　　,ｨ'.) ./
　　　　　　　　　感謝の言葉もありません」　　　　　　　 　　　　　　　　j　.}ﾝ／／　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　ﾉ　'"´ ￣〉　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　 　 {　　　　 勹..　｜
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　　 ヽ　､＿_,,ﾉ　.　|




　　　　　　　　　 　 　 _,　　　~￣￣￣¨　 　､
　　　　　　　　　　. -=ミ　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　⌒＼　　　 ＼
　　　　　　 ／　　　/　　　　 　 　ヽ　 ＼　＼　　　‘,＿
　　　 ｰ=彡' ／ 　 ′　　　　　　　八　　　　　 　 　 ∨ﾐﾒ　　　　「何を言っているんだ、
　　　　　 / /　　　ｉ　　　　　 | l 　 　 ＼　 ＼　 　　　|　　ﾊ　　　感謝するのはこちらの方なのに。
　　　　　　 ′　　 |l　 |　　　ﾘ ﾄ　　 ＼ 　 、 ヽ乂_　ﾘ　　 ﾘ
.　　 　 　 } i　　 | 八　|　　 '/ 八＼　_ 　 、＼ 介廴'　　 /　　　　私にはこのような事しか出来ないが、
.　　　　　ﾉ人　 戈トﾐ人　/_以rｾ爪ヽ　|　＼ 介ﾄ /　　 ｛　　　　　可能な限り協力をさせて貰うよ」
　 　 　 〃　 } l　 弋均ﾊ/ / 法功㌃ ｝ |　 爪ト　/　　 　、
　　 　 　 　 ﾉ人个ト　/　 　 　 　 　 ﾉ ﾉ　/ﾉﾘ　/　　 　 i|
.　 　 　 　 　 　 }乂_ /　　　　 　 　 _彡ｲ厶ｨ 　｛ 　 　 j从
　 　 　 　 　 　 八人 ヽ 　 　 　 　 　 　 /　乂从ﾊ }　 |
　　　　 　 　 　 　 　 ＼｀~`'　　 　 　 , 　 ／　 ￣V八ﾘ
　　　　　　　 　 　 　 　 ＼　　 　. イ 　 '｀ 　 　 　 ∨/
　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ｀´　r‐ '"　 　 　 　 　 '¨￣＼､
　　　　　　　　　　　　　 　 　 厶＿..　 -‐' '` 　 　 　 　 } :ヽ
　　　　　　　　　　 　 　 　 _,厶;_: : : : ＼　　　　　　　　 { : :lﾍ
　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／　　　 ＼ : : : ＼　　　　　　　| : :}　'



エンジュがそう答えるのも当然だった。
それだけの恩義はすでに受け取っている事を、息子と自分を救われた彼は確信しているのだから。

二８１．
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ ヽ､.　_ノ　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　 （●）（●）　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　（__人__）　｜
　　　　　　　　　　　　「ありがとうございます、エンジュ様」　　　　　　　　 　 　 　 |　　 ｀ ⌒´　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　　　　 　}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　　　　 　}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　人＿__＿_ノ"⌒ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ 　　　　　　　　　　 へ　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 （　　ヽγ⌒)　　　　　| 　＼ 　 ＼



だがそれでも、やらない夫は深々と頭を下げた。
自分がした事などなんでもない、恩を感じる必要はないと無言で返したのだ。



　　　　　　 　　 _ ＿＿ _ _
　　　　　　,．'"´ 　 　　　　､`ヽ､
　　　　　/　　　i　　　　ﾘ ヽ ､　　＼
　　　　/　　 　.:ﾚ′ 　 j　　i !.:. 　　i　　　　　（参ったな。
　　 　 l　　 　.:/　　 , /　 i .::|:::.:l　　|　　　　　　とんでもない器だぞ、この少年は）
　　 　ﾉ　　　 ,.ｨｲ.:::/　　.::l.:|:|::::::|:::.　ﾄ､
　　 彳　　,ｨｲ 1:|::,'　 .:;ｨｲハi::::::|::.:.:.ヽ|
　　　|.:.:|, ｲ‐ﾘ-ﾄﾄ､::.;ｨｲ仁＝ト-ヾ::::.:.:.ﾄ､
　　　ﾄ､:i　{ r‐ェﾃ ヽl/　''ﾃェ‐ｧ .:!.:ﾄ､:;!/
　 　　 ヾ::､　　　　,　　　　　　　　!/::／
　　　　　 仆　　 　:j ､　　　　　　ｲ:/
　　 　 　 　 `､　　　_ _　　　　　/i,ハ
　　　　　　　　ヽ　　ｰ ｀　　 ／ .|;;;:;:|
　　　　　　　　　`ﾄ､ ＿__ ／　　 !;;:/､
　 　　　 　 　 /.::::|　ヽ　　 /　　 l::::.:.L



つい昨日感じた予感が確信に変わった。彼は将来大物になる。
息子のみならず、自分もやらない夫と出会えた事に感謝するべきだとはっきり分かった。

二８２．
だが、その大きな器を自分は上手く扱うことが出来るだろうか？
ふとした疑問が頭をもたげ、エンジュは内心悩み始めていた。



　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ＿__
　　　　　　　　　　　　 _　-―――――-＜￣} }!
　　　　　　　　　　　 ´　　　　　 -――７　 く.７./-､
　　　　　 　 ,　 ´　　　　　￣　　,. -―/　　　Ｙ´ ＼＼
　　　 　　 /　　　　　,　　　,　 イ　　 /　　　　　　　 ヽ.｀　､＿.ノ
　　　　　/ 　　　 ,／　　／ 　,/ 　　 { 　 {　　　　　　　＼￣
　　　　 /　　　　/ 　 　 　 　,ﾉ　　　 }　　ﾊ　 }　　　　　、ヽ.　　　　　（私の部下にして………
　　　　 |! 　 　 /　　　 　_.／ ,ｨ /　/　　　}　 !　　　　　 ヽ.}ヽ、　　　　それで果たして、彼のためになるのだろうか）
　　　　 |　　　/　 　 　｀才　 /:/　,　　 　/　/　　　　ヽ. 　ヽ.　}
　 　 　 {　 　/　　､　.＿__.／ /　/ ,.　__/　ハ　　ハ 　 }!　i {
.　　　　 Ｙ　/　　　｀　.ナｰ-r七´ /／７ :/二.!_/}!　}　 ハ ﾊ!
　　　　　| /　,　-―　〈 /　 {!　 ,ｲ | ／ ´tﾃ::ナ}ﾉ ./　/　ﾘ ﾉ
　　　,イ⌒Y´￣￣　　ハヽ (ヽ. i ヾ ､_　　 ￣ ノイ}／　
　　〈　　　人　　――-　ヽゝxくヽ、　　　　　　 　∨
　　 }!　　∧_ ヽ. ,ｘxzrく⌒´ヽ!　　 　 　 　 　 　 ／
　　八　{〈 　 ,.イ}　　 ｀　　　 {　 　 　 　 , 　 _ '´
　　　 }ハﾘ　{´　i　　　　　　　ヽ　　　　　　 /
　　 ノ'　 }! 　ヽ/　　　　　　　　{ヽ.　＿＿_/
　 　 　 　 ＿∠__＿＿＿　　　 ヽ.
　　　　　/: : : : : : : : : : : : ￣￣￣＼
　　　　 入 ＿ ＿＿＿＿＿　　　＿厶、
　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:￣￣:.:.:.:.:.:.:＼




彼の父、ラオウが何者かの推測も立っていた事もあり、その疑念はしばらくエンジュを悩ませる事となる。

二８３．
しばし考え込んでいたエンジュが我に返り、それで集合すべき日時と場所を聞いたやらない夫は
要項などが書いてある書類を受け取って部屋を出た。



　　　　／||ミ
　　 ／ ::::||
　／:::::::::::||＿＿＿＿
　|:::::::::::::::||／￣￣＼||
　|:::::::::::::::||　_ノ　　＼＼
　|:::::::::::::::||（ ●）　（●）|　　　「取りあえず試験の日の朝に戻ってくるつもりです。
　|:::::::::::::::||　 （__人__）　 |　　　きっとジュンは見違えるほどになっていますよ」
　|:::::::::::::::||　　｀ ⌒´　　|
　|:::::::::::::::||　　　　　　　}
　|:::::::::::::::||　　　　　 　 }
　|:::::::::::::::||ヽ＿__　　ノ
　|::::::::::::::(___＿＿ノ´||
　|::::::::::::::(_ノ ／ . . . ||
　|:::::::::::::::||／　　　　||
　|:::::::::::::::||　　　　　 ||
　|:::::::::::::::||　　　　　 ||
　＼:::::::::::||　　　　　 ||
　　 ＼ ::::||￣￣￣￣
　　　　＼||



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　rf(￣ヽ　-―　´￣￣　｀ ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,へく入/￣￣￣￣　｀ヽ、　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　／　イ　　　　　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.、　 ∠ 　/ 　　　　｝　ヽ　　　｀ヽ、　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣.フ´./ 　 　 　 /　　ﾊ　　 V　 ＼　 　 ヽ. 　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ ／　　　　　 /　　　 {　　　ヽ、 　　　　 ヽ 　　　:.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. '/{/　　 　 　 　 i　{ 　 　 ＼　＼ ＼＿.ノ　　 ＼　　 }
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.八 }　　/　　　　 !　Ｖ　 　 　＼　} ￣｀　　＿ ＼.ヽ.　l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　 ,ｲ.　　　i　/＼_ヽ_.､.　　　ヽ!　＿ ノ　　　　、.、ﾘ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. 厶.イ八 　i　| ,イ￣ヽ.＼＼i ヽー―く￣　￣　ヽ、∨
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　ヽ{　ヽ. {八 { ﾃt::: ｧヾ. ､.!　　}、　>) ｀ヽ＿＿_ ヾ{__
　　　　　　「ああ、信じてるとも」　　 　　　 ｀　　ヾ!　ヽ、 ￣ 　 　 ﾉﾊ ﾉ ） //　　　　 ￣｀Ｙ　｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　 　 　 　 　 　 ノく.＿〃-――　 　, ｲ　　　〉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ.　 　 　 　 　 ´ 　　/￣フﾌﾂxz､／ .ノヽ　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼ _ _　　　　　　 /: : : : : : 　 {ト､ 　 　 ｿ人
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　ノ: : : : : :　　 ∧. }! 　　(’
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ヽ -― く´: : : : : : :　 　　∧ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　}＿＿＿＿＿＿_∧＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　∠ ＿＿＿:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＿_ヽ.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::::::::::::::::￣￣￣￣￣::::::::::::::ヽ


扉が閉まり、少年の気配が立ち去ってしばし。
腕を組んで窓の外を見上げたエンジュは、彼が自分の部下に欲しいと言う思いと、
大きな器はしかるべき場所で発揮されるべきと言う思いとを真剣に選ばなければならなかった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━……

二８４．
━━━━━━━━━━━……
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


::::: ::: :. 　 　　　 　 　 |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;: |
::::: ::: :. 　 　　　 　 　 |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;: |
::::: ::: :. 　 　　　 　 　 |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;: |
::::: ::: :. 　 　　　 　 　 |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;: |
::::: ::: :. 　 　　　 　 　 |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;: |　　　　　　　　　　　　　, -―- ､
::::: ::: :. 　 　　　 　 　 |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;: |　　　　　　　　　　　　/　　　　　＼
::::: ::: :. 　 　　　 　 　 |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;: |　 　 　 　 　 　 　 　 /　　＼_　　　|
::::: ::: :. 　 　　　 　 　 |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;: |　 　 　 　 　 　 ／　(●) （●）　　 |
::::: ::: :. 　 　　　 　 　 |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;: |　 　 　 　 　 ／／　 (_人__)　　　 /　　　　　　　「ジュンは魚、捕れたかなぁ」
::::: ::: :. 　 　　　 　 　 |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;: |　 　 　 　 ／／　　　l｀⌒´　　　 /
:: :::: 　 　　　　　　 　 |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::: |　 　 　 ／／　　　　　|　　　　　　ヽ
: :::　　 ／]　　　　　　|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::　|　 　 ／／　　　　　　__!､＿___／　　＼
　 　／／i|　　　　 　 |;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::　|　 ／／　　　　　　／､ ヽ　　　　　r ､　ヽ　　　　　　　　　　　　　　ﾄﾃﾄﾃ
　／／ 　i|　　　　 　 |;;;;;;;;;;; ;;;;: ::: . |／／　　　　　　　ﾊ ヽ Y｀l　　　　 |　 >　 Y
　／ 　 　i|　　　　 　 |;;;;;;;;; ;;;:;: :::. . |／　　　　　　　　{　ヽ_ゾﾉ　　　　　|　ﾚi i i}
　 　 　 　i|　　　　 ＿|￣￣￣￣￣　　　　　　　　　 ｀¨´　　　ヽ　　　　ハ　 `'''
　 　 　 　i|　　　／ ／丶　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　　　>　　 /　ﾍ
　 　 　 　i|　 ／ ／　 ／|　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／　/　　/ヽ　 ﾍ
　 　 　 ／　 |￣丶,／　 |　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ／　_,/　　/　ご_ノ　　ﾓｷｭﾓｷｭ
　 　 ／　 　 | 　 　l　 　 |　　　　　　　　　 　 　 　 　 ／　（　ヽ　/
　 ／　 　 　 |　 　 |　 ／　　　　　　　　　　　　　　／　　　＼__ノ
　 　 　 　 ／|＿＿|／　　　　　　　　　　　　 　 ／
　 　 　 ／／　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／
　 　 ／／　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／
　 ／／　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ／

二８５．
サクラダ家を出て三十秒。
やらない夫は自分が誰かにつけられている事に気づいた。



　　　 　　　　　 ／￣￣＼
　　　　 　　　／　_ノ　 ヽ､.＼
　 　 　 　 　 | 　（●）（●）　.|　　　　（付けられてるだろ。
　　　　　　 　!　　（__人__）　 |　　　　　またギャブレットの間者か？）
　 　 　 　 　 , っ　 ｀⌒´　　 |
　　　　　　 /　ミ）　　 　　　/
　　　　 　./　ノゝ　　　　　/
　　　　 　i　ﾚ'´　　　 　　ヽ
　　　 　　|　|／|　　　　 |　|



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　 　 　 　 i　　　 　 l　　　　i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ｉ　 　 　 | 　 　 　 | 　 　 
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ＿_,」＿_ ___,.| 　 　 　 | ＿＿..ト ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　 　 〈匸[小､ ___,ノ|　　　 　 |＼__／|廴}〉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 〃/' |_／　＼! 　 　 　 |／　＼!l| ||
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 〃〃　| ＼__／|　　　 　 |＼__／||| ||
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 〃〃　　|__ ／　 |　　　 　 |／　＼!{l ﾘ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　{{　{{　　 ｊ　 　 　 {　　　 　 {　　　　',ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾊ　　　　', 　 　 　 |　 　 　 i　　　ﾋﾟﾀｯ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Vﾍ　　　 ヽ　　 　 |i -─‐-ﾊ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 Ｖﾍ_　---ﾍ　　　ｌ:::::::::::::::::::}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 }::::::::::::::::::::|　 　 ヽ ::::::::::::/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ゝ::::::::::::::ノ　　　　 ｀ ￣´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ｀￣ ´


振り返らないまま足を止めると、後方の追跡者も同時に足を止める。

二８６．
一緒に足を止めてしまっては、やらない夫を付けていると答えたようなものである。
大した事がない相手だと察したやらない夫は、万が一この場で戦闘になっても
辺りに被害が及ばない事を確認してから路地裏へ続く細い道へと踏み込んだ。





　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|::　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|::　　　　 ／　　ヽ_　　.＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|::　　　　（ ●）（ ●） 　｜　　（ついでに正体を
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|::　　　　（__人__）.　 　　 |　　　　暴かせてもらう………って）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|::　　　　 　｀ ⌒´　 　　｜
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|:::　　　　　{　　 　 　 　 ｜
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|:::　　　　　{　　　　　　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|::::　　　　　ヽ　　　　 ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|/⌒￣￣￣　　　　　￣￣￣￣￣⌒ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|＿ﾉ￣￣￣|　　　　　　|￣￣￣￣ヽ＿）



さらに奥の小道に飛び込み、気配を殺して追跡者の姿を確認すると―――

二８７．

　　　　　　　　　　　　　 ＿_　,-､＿, - ､__　__　__
　　　　　　 　 　 　 ___/￣｀ ＜こ>　__ ﾆ -: :¨´￣}
　　　　　　　　　／: :/: : : : : : :｀Y＾Y´: : : : : : :.:.:.:.L
　　　　　　　　人_:_: |: : : : : : :_:_;Ｌ._|: : : : : :.:.:.:.:.:∧ﾍ
　 　 　 　 　 〈_＿／|_:_:_: -ｧt__人_｣＼: : : : :.:.:./ : Vﾍ　　　　キ
　　　　　　　　〉-─厶イﾉ ′|ｉ　|l　| | ｉﾄ､: : :.:.｣:r┬'ｰヘ　　　ョ
.　　　　　　　人.＼ |　i｜｜i |ｉ　|l　| | ｉ| l ｢ﾍく:｜j |i ィ´　 　 ロ
　　 キ 　 　 廴_＼}|　i├十i |ｉ　|l 卞ー､｜ }-Vヽ小/
　　　ョ　　　ィ ￣）ハ∧ ｘ:=､ｌﾄ ハﾉ,≧､| |,/ __／⌒＞　　） ）
　 　 ロ　　　ゝ-く´　ﾉ_ﾊ h:::j　　　 h:::::} 〃　/ ∠工
　　　 ：　　　　　(_）{___,ハ｀¨ 　 __　｀¨ﾟ （(　/ 厶ィ‐┘
　　　　　 　 　 　 └く: : :_;＞, -ﾆ’_. イ: :`く__＿＾)）
　　　 　 　 　 　 　 　 ﾝ: : :r┴‐-､}二]: : : : :.:/
　　　　　　 　 　 　 　 ＼: :｢￣￣下､: :.:.: : : _〉　．
　　　　　　　　 　 　 ;　,ｲ: :l: : : :.:r⌒Y;.:.:.: :/:|　　;
　　　　　　　　　　, '／: |: : : : :.:.:{　　j: ＼/: :ﾄ､　 ,
　　　　　　　　　 ／: : :.:|: : : : : : ﾊ孑|: : ∧: :.:.:ﾍ　'
　　　　　　　｢了{: : : :.:.:.ﾄ､:_:_:_:/弋:_:_:,ノ:::|i: : :.: ﾍ　',
　　　　 　 　 ）( |: : : :.:.: :/:::/ |　ｌ |: : : l::::::|l: : : : : :ヽ
　　 　 　 　 ｆ　( ｌ: : :.:.:.:/:::/: :|　　|: : : :l::::::l: : : : : : : :＼
　　 　 　 　 ゝ-ゝ＼: :/:::/: : | ｌ　 |: : : :.l::::::l: : : : : : : ／）
　　　　　 　 　 しﾍ　＼:/: : :.| ｌ　｜: : :.:l:::::::l : : : ＜ﾉ丁
　　　　　　 . : : : :└くｰ ニフ″　l|:-─┴‐┴'´rｰﾍ¨´
　　　　　 . : : : : : : : : }___/X廴＿｣｀¨了⌒´[入_广′: : .
　　 　 　 : : : : : : : : : : : Vｰ‐１: : :Tく⌒｢￣´: : : : : : : : : : .
　　　 　 　 : : : : : : : : : : :`ｰ‐' : : 人_＞|: : : : : : : : : : : :
　　　　　 . : : : : : : : : : : : : : : : :.:ハ. ＼j: : : : : : : : : : :
　　　　　　 : : : : : : : : : : : : : : : :{::::::｀フ: : : : : : : : : :
　　　　　　　　　: : : : : : : : : : : : :｀¨´: : : : : : : :
　　　　　　　　　　　　: : : : : : : : : : : : : :

―――自分を見失って辺りを見回しているのはなんと、ジュンの妹であった。

二８８．
そのままさらに路地の奥へと入っていこうとするので、そいつは良くないと姿を現した彼に、



　　　　　　　　　　　　　 　／￣￣＼
　　　　　　　　　　 　 　_ノ　　ヽ、　　＼
　　　　　　　　　　　　（ ●）（ ●）　　　|
　　　　　　　　　　　　（__人__） 　　　　 | ..／}　　　　　　　　「おっと、そっちじゃないだろ」
　　　　　 _　 　　　 　ヽ｀⌒ ´　　　　　| /　/ 　　　__
　　 (＾ヽ{　ヽ　　　　　 {　　　　　　　　./　/　 .　／ .ﾉ
　(￣ ヽ ヽ　i　　　　　　ヽ　　　　　　/　厶-　´ ／
.(二 ヽ　i　i　|,r‐i　　　　ﾉ.　　　ヽ /　　　　 ／
　　ヽ　　 ／　 ノ　　／　　 　r一'´　ー ､　　￣￣￣）
　　 i 　 {　　 ｲ―イ　/　 　.`ー―.　､＿_　.〈￣￣
　　　ヽ.　`ｰ '/　　　/　　　　　　　　　 　/＼ ＼
　　　　　 `ー ' ￣￣!　 　　　　　　　　　|　　ヽノ



悔しそうな少女は頬をぷっと膨らませる。



　　　　　　　　　___,..　--───-､　　　　　 ,.-───--　..__
　　　　　　　　　 ヽ　　　　　　　　　　＼(こ)／　　　　　　　　　/
　　　　　　　　　　 ヽ　　　　　　　　 ＼_　 _／　　　　　　　 　/
　　　　　　　　　　　|　　　　 _,.　-─ ｧ' ￣ヽー--　 ..._ 　 　 !
　　　　　　　　　 ／|_,. -‐ '´　 　 ／-──- ＼　　　　｀　 ､|
　　　　　　　　／　 ヽ.　　　　 ／　　　　　　　　 ＼　　　　／＼
　　　　　　　　 ＼　　 ＼　,.イ　 ／　　　　　　　　　ヾ､.／　　___ヽ
　　　　　　　　　 /　__,rｯ'´　　 /　　/　　　 　 i　　　 i ﾞヾ　　 |
　　　　　　　　 厶r'ﾞ7　 　 　 /　　 i　　　　　　l 　 　 l 　 ﾄ､　|
　　　　　　　／ 　 !/　　　　/　　　!　　　 　 　 l 　 　 ! 　 l　`＼
　　　　　 ／　　　 |! ｌ　　　 |　　　i| l　　　　 j　|　　　l　　 !　 　 ＼　　　　　「なぁんだ、気づかれてたの」
　　　　／　　　　　l　ト l､∧　 |ヽ　{　 　 　 }　} ヽ, 斗-┼j　　　　　＼
　　　/__ ___　 　 　　|　lヾ ＞k{_ ＼　　　　ﾉ_ﾙ＜ハj　/ /　　 　 　 　 ヽ
　 　 {-─ ‐- =- ､.__∨ ‐〒示心ｰ＼／戈云ﾃテ‐ﾚ' 　　　　　 　 　 　 i
　　　＼_,.=ﾆｰ- ､.._く　', 　 ゞー'´　　　　 ゞー'' 　 /　 シｒ=_,ニ二二ﾆ　j
　　　 　 r─二ニｰ-干ｰ∨／/／　　　　　 ／/／ /　　　　　 ＿　　／
　　　　　ヽ=ヘ三ニ-＼ﾍ　　　 　 　 ＿__ 　 　　∠ｰニ-=ニZ_　￣｀
　　　　　　　　 ` ー-ｭ-个 ,、　rｰ'´＿＿う　 ,.へァ'了--= _　　｀ヽ
　　　　　　　　　　／　 　 　 　＞ ー-- ‐ｧ＜ｒ'´￣￣＼こ>‐ー '"
　　　　　　　　　 ヽ.　　　　　 　 ＼__　　__,／　　　　　　＼
　　　　　　　　 ,. ィ⌒ヽr=､_ _,. -─-ﾕ.fﾆ─-､.　　　　 /_,ノ
　　　　　　 　 {　　　　 　 ／／￣｀７トlく⌒ヽ､.＼　 ／/ ｀ヽ、
　　　　　　　　ヽ､_ﾊ l // ／　　　/ /　!ﾊ　 　 ＼＼　　 　 _ノ
　　　　　　　　／　　　 Nヽ　　　/ /|　i|　!　　　　〉 }_,L_,. く
　　　　　　 ／　　　　　 |ヽ.＼／,.ｲ |　| ﾄ､＼ ／,.イ　　　　 ＼
　　　　　 /　　　　　　　j　 `ｰ-' /　|　| |　＼ ／　|　　　　　　 ヽ

二８９．
　　　　 ／￣￣＼
　　　／　　 _ノ　　＼
　　　|　　　 （ ─）（─
　　　|　　　 　 （__人__）　　　　「まあね。
.　　　|　　　　　　　　ﾉ　　　　　で、雛苺お嬢様は家を抜け出して
　　　 |　　　　　∩ ノ)　　　　　こんなところで何をしているのかな？」
　　／　　　　／ ＿ノ´
　 (.　 ＼ ／　.／ 　 │
　　＼　 “　／_＿_|　 |
.　　　 ＼／ ＿＿＿ /



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　 ＼ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　く　　　　　　　　＿＿＿_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_／　　　　＿　　ヽ 　　　,　　´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 {　　　　　　　　 ヽ /二ﾌ´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 Lュニニニニゝ　〈＿/＝-
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＜ ＿_　　　　　´ ﾆ L　＼ _
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ ／ 　 ／　 ヽ　ヽ. ＼ ヽ.　　　　　 ／
　　　　　　　　　「お兄様をどこへやったの？」　　　　　　　　　 ∠ イ／ ／ 　 　 　 　　',　',ヽ　ー―‐く{
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　 /　　　　　　| |　 ヽ ヽ ヽ.＿＿_ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 N　|!　|　　　　 //　　 }　 |　　　＼＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ l　l|　　　ィ::7!　　 /　 |､　r ､　|ヽ ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　代1_ ノ:::::r-/　ﾉ/ / / .∨ヽヽj　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　く ／./ ｰ　.:::::::: 弋ソV ｲ /　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 く/ミﾐ ヽ　　'　　　 ー彡 ｊ/| 　　　　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ゝ-ﾐ　＼` =　　 ゝ- 彡ﾘ　　　　　 イヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼ ＞― ァ ﾁﾆ彡　　,　 ＜　ル
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　, --く{二 ス ヽ　斗ﾍ、＿ 彡
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　／ /､,ヽ＼}} / ／　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ 　 . く＿/　l!　VV/ /　　　 　 　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　　　　//　 /　/〉,　 ! 　 　 　 　 　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 く　　　　　　/// ./　// l!　l　　　　　　　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼ 　 　　///　　.〈/　l　 | 　 　 　 　 　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 〈ヽ　　/ V　　　　　 |　 `ーr-　　　 へ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　/　/ 　 　 　 　| 　　　{　　　　　　 ヽ

二９０．
　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　／ _ノ　 .ヽ、＼
　　　　　　|　 （●）（●）　|　　　　「エンジュ様から聞いてないのか？」
.　　　　　　|　　（__人__）　.|
　　　　　　 |　 .　'´ｎ｀'　 .ﾉ
　　　　　　 .ヽ　. 　| |　　}
　　　　　　　 ヽ..　ﾉ .ュノ
　　　　　　　　/　{ ..ﾆj､
　　　　　　　　|.　| "ﾂ　＼
　　　　　　　　|.　| .l　　|ヽ、二⌒)



ああ、昨日帰らなかったジュンを心配したんだな、と納得したやらない夫に
事情は聞いていた彼女はやや俯いて答える。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　　　　　　　　　 ___ ＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　　,.--r^Y^r＜: : : : : ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　に二ﾌﾞ⌒|￣＼: : : : : :＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. 　 　　　　　レ'て_)（_弋_＿_）, =＝‐-ﾄ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. 　 　 　 　 _/´ ｌi　　　､ ､｀¨¨{: : : : :_: : |ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　f´/il|l | ｉ l　| ｉヽ　 ﾞ､: :./ l ヽ|　}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　ﾉ'ｉ　l｜|l | ｌ_|__ｌ_|1ﾊ　ハ/　'! ／,小
　　　　　　　「聞いたの。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　{_|　l人|ｘ| ｌ l,ニ､川}/／／ l/／ 入
　　　　　　　貴方から、強くなる為の特訓を受けてるって。　　　　 　 　 　７ニヽヾ;　　Ｌハ 厶ィ´─〈/ ／_〉
　　　　　　　試験のある日まで家には戻ってこないだろうって」　 　　　　{´三ヽ八　_　 u ∠二二下（廴)）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　　￣）ﾉ7)）＼＿　ィ f三三〕ゝｰ‐'
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. 　　　　　　　　　ィ ﾆ圷､ヽ/: : :_ｿﾉ:＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /:〈〈 //{: : 〉〉: : : : : : : :〉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　　r‐!/:.Ｖ/:ゞﾆ'ノ｣: : : : : : :/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. 　 　 　 　　j: ｣: : :}/: j/: :f: : : : : : :.:ﾊ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /:/: ,.イ: :〃: :.:∨: : : : : :ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／:/:./:::/: /|: : : :.,′ : : : : |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／ : /:./:::/: ｲ::|: : : /: : : : : : :.|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　 ／: : : /: :|／:./:|:::|: : / : : : : : : : |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／: : : : :/: : : : :.:{ : ヽ!: /: : : : : : : : :|


さすがに少し慣れたのか、それとも家の外で緊張しているのか、
昨日の食事時のような態度は形をひそめており、
そこには純粋に兄を心配する一人の妹が立っているだけだった。

二９１．

　　 ／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　 （ ⌒）（⌒)　　　「その通りだろ。
.　|　　u　 （__人__)　　　　君のお兄さんは今、シンジに勝つために
　 |　　　　　 |r┬|}　　　　修行してるんだ。
　 |　　　　　 |　| |}　　　　シンジは知ってる？」
.　 ヽ　　　　　｀ﾆ}
　　 ヽ　　　　　ノ
　　　/　　　 く　
　　　|　　　　 ＼
　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)､



　　　　　　　　　___,..　--───-､　　　　　 ,.-───--　..__
　　　　　　　　　 ヽ　　　　　　　　　　＼(こ)／　　　　　　　　　/
　　　　　　　　　　 ヽ　　　　　　　　 ＼_　 _／　　　　　　　 　/
　　　　　　　　　　　|　　　　 _,.　-─ ｧ' ￣ヽー--　 ..._ 　 　 !
　　　　　　　　＿／|_,. -‐ '´　 　 ／-──- ＼　　　　｀　 ､|
　　　　　　　　|　l│└ ┐　　.／ 　 　　　　　　 ＼　　　　／＼
　　　　　┌‐┘ ﾉ.｀ｰ─┘,.イ　 ／　　　　　　　　　ヾ､.／　　___ヽ　　　「知ってるのー！！
　　　　　└―イ/　.|￣￣|　　/　　/　　　 　 i　　　 i ﾞヾ　　 |　　　　　　あの独りよがりの
　　　　　　／￣￣|│ ｢￣ 　/　　 i　　　　　　l 　 　 l 　 ﾄ､　|　　　　　　オタンコナス！」
　　　　　　ヽ/￣|.│ヽ_>　　/　　　!　　　 　 　 l 　 　 ! 　 l　`＼
　　　　　 ／　 └┘ｌ.　　　 |　　　i| l　　　　 j　|　　　l　　 !　 　 ＼
　　　　／　　　　　l　ト l､∧　 |ヽ　{　 　 　 }　} ヽ, 斗-┼j　　　　　＼
　　　/__ ___　 　 　　|　lヾ ＞k{_ ＼　　　　ﾉ_ﾙ＜ハj　/ /　　 　 　 　 ヽ
　 　 {-─ ‐- =- ､.__∨ ‐〒示心ｰ＼／戈云ﾃテ‐ﾚ' 　　　　　 　 　 　 i
　　　＼_,.=ﾆｰ- ､.._く　', 　 ゞー'´　　　　 ゞー'' 　 /　 シｒ=_,ニ二二ﾆ　j
　　　 　 r─二ニｰ-干ｰ∨／/／　　　　　 ／/／ /　　　　　 ＿　　／
　　　　　ヽ=ヘ三ニ-＼ﾍ　　　 　 　 ＿__ 　 　　∠ｰニ-=ニZ_　￣｀
　　　　　　　　 ` ー-ｭ-个 ,、　rｰ'´＿＿う　 ,.へァ'了--= _　　｀ヽ
　　　　　　　　　　／　 　 　 　＞ ー-- ‐ｧ＜ｒ'´￣￣＼こ>‐ー '"
　　　　　　　　　 ヽ.　　　　　 　 ＼__　　__,／　　　　　　＼
　　　　　　　　 ,. ィ⌒ヽr=､_ _,. -─-ﾕ.fﾆ─-､.　　　　 /_,ノ
　　　　　　 　 {　　　　 　 ／／￣｀７トlく⌒ヽ､.＼　 ／/ ｀ヽ、
　　　　　　　　ヽ､_ﾊ l // ／　　　/ /　!ﾊ　 　 ＼＼　　 　 _ノ



以前何かあったのだろうか、シンジの名前が出ただけで顔を真っ赤にして怒り始めた雛苺に、
厄介な話題を持ち出してしまったとやらない夫は少し後悔してしまう。

二９２．

　　　 ／￣￣＼
　　／　　 _ノ　　＼
　　|　　　 （ 一）（●）
　　|　　　　 （__人__）　　　　　　「絶対にジュンは負けるわけにはいかないからさ、
　　 |　　　　　｀⌒´ﾉ　　　　　　　本当に頑張ってるだろ」
　　 |　　　,.<))／´二⊃
　 　ヽ　/ ／　 '‐､ﾆ⊃
　　　ヽ､ｌ　　　　´ヽ〉
''"::l:::::::/　　　 __人〉
:::::::::|_/ヽ. 　 /|||||ﾞ!:ﾞ､-､_
:::::::/´∨/`ｰ'〉ﾞ||i l＼>::::ﾞ'ｰ､
:::ｙ′.: ',ゝ､_/ヽ.||||i|::::ヽ::::::|:::!
／: :／/: : : :|:::ヽ|||||:::::/::::::::i::|



話題をジュンに戻そう、と言った言葉がまた気に入らなかったらしい。



　　　　　　　 　./　 ＼/　　　 ./　　　　　　 .}　　 |ヽ　 .|　 　 !　 ｌ　l　　! l |
　　. -=≧ﾁ去左≧ﾐkl＼ :／/　　　　　　　/!　　.|　j／!＼ .丶､/ ,/　 / ,'
　　　　　x彳丁|　./ ア㍉＼/　　　　　　 ./　|　　j／,,斗≦= ./ヽ'　/ /
　　　.＿＿　|　∨〃　{:.外､ヾ/　　　　　/　j_,ｨ≦气Ⅳﾄﾐ　／　 ／／
　　. ´_ニ＝‐｝ 　∧.　 V小ヾj{＼_,､/／　 /升'＾ﾊ　jｼﾘ　￣´／ >　　　　　　「たとえそうだとしても、
　　二_.‐＝ﾆ>.　 {i ﾍ　イ刋　　　　　　　 .ｲ{　　ﾉﾘ　　　 二_ ‐＝｝　　　　　　貴方なんかに教わる事なんか
　　. ＿,二ニ＝ _弋ﾋ辷ユｿ　　　　　　 　 {ｉﾄイjソ　　　 {＿,二ニj　　　　　　　何一つ無いはずなのよ！
　　　 . :l 　 　 　／/／/／　　　　　 　 　 `ー='ｰ　　 　 |／　彡
　　_⌒ー＝＜二 　 　 ＿　　 　 　 　 　､　／/／/／　 |⌒ー＝》　　　　　　　サクラダ家は代々騎士の家柄の
　　　｀二ﾆ＝‐　　　 , ﾍ／｀ヽ､_＿＿＿＿_,　　　　　　 ,j｀二ﾆ＝‐　　　　　　　由緒正しい貴族なの！」
　　.＝´､＿:.:ヽ.　 ／ 　　 　　　 　　 ｀ヽ:: /　　　　　 イ ´､＿
　　. ノ　　｀＞: `（　　　　　　　　　　　　∨　　　　＜└-´ノ　｀＞
　　."ｰ＝≪:.:.:.:.:.:.ヽ　　　　　　　　　　／　　＜ : :.∧　 "ｰ＝≪
　　　　　　〉:.:.:.:.:.:.:.:ﾍ＞　　　　　　_∠z＜ : : : : : : :.∧ ＼　　　〉
　　　　:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. ∨＼¨ア￣　　　|: : : : : : : : : : : ∧　＼



顔を真っ赤にして食ってかかる彼女に、さすがのやらない夫も手で顔を覆ってしまった。



　　　　 　＿＿
　　　 .,／,-､　 ＼
　　／ ﾉ:/　ﾉfヽ.. ＼
　　|　/:/　/...|　|　　|　　　「やれやれ………」
　　l　ﾚ　./..ノ .,''´}　i
　　l　　　' ´ .〃 /　|
　　ヽ.　 　 　.　〈　.ﾉ
　　　 ＼.,_　　._ﾉ /
　　　 　/　　/　 ヽ
　　　 ./　　/　　　|
　　 　i　.／　　.　 |

二９３．
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　 ＼ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　く　　　　　　　　＿＿＿_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_／　　　　＿　　ヽ 　　　,　　´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 {　　　　　　　　 ヽ /二ﾌ´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 Lュニニニニゝ　〈＿/＝-
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＜ ＿_　　　　　´ ﾆ L　＼ _
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ ／ 　 ／　 ヽ　ヽ. ＼ ヽ.　　　　　 ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∠ イ／ ／ 　 　 　 　　',　',ヽ　ー―‐く{
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　 /　　　　　　| |　 ヽ ヽ ヽ.＿＿_ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 N　|!　|　　　　 //　　 }　 |　　　＼＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ l　l|　　　ィ::7!　　 /　 |､　r ､　|ヽ ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　代1_ ノ:::::r-/　ﾉ/ / / .∨ヽヽj　 ＼
　　　　　　　　　「そんなにヒナと話すのが苦痛なの？」　　　　　く ／./ ｰ　.:::::::: 弋ソV ｲ /　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 く/ミﾐ ヽ　　'　　　 ー彡 ｊ/| 　　　　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ゝ-ﾐ　＼` =　　 ゝ- 彡ﾘ　　　　　 イヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼ ＞― ァ ﾁﾆ彡　　,　 ＜　ル
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　, --く{二 ス ヽ　斗ﾍ、＿ 彡
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　／ /､,ヽ＼}} / ／　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ 　 . く＿/　l!　VV/ /　　　 　 　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　　　　//　 /　/〉,　 ! 　 　 　 　 　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 く　　　　　　/// ./　// l!　l　　　　　　　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼ 　 　　///　　.〈/　l　 | 　 　 　 　 　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 〈ヽ　　/ V　　　　　 |　 `ーr-　　　 へ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　/　/ 　 　 　 　| 　　　{　　　　　　 ヽ



自分の態度を棚に上げて、失礼な奴と鼻を鳴らす雛苺。
だが、それを物ともせずにやらない夫は小さく首を振った。



　　　 　　　　　 ／￣￣＼
　　　　 　　　／　_ノ　 ヽ､.＼
　 　 　 　 　 | 　（●）（●）　.|　　　「いやいや、そうやって頭ごなしに
　　　　　　 　!　　（__人__）　 |　　　　決めつけられると困っちゃうって事だろ」
　 　 　 　 　 , っ　 ｀⌒´　　 |
　　　　　　 /　ミ）　　 　　　/
　　　　 　./　ノゝ　　　　　/
　　　　 　i　ﾚ'´　　　 　　ヽ
　　　 　　|　|／|　　　　 |　|




もちろん彼女とのやり取りを苦痛になどこれっぽっちも思っておらず、
どちらかと言えば心からジュンを心配する妹さんの様子に微笑ましくすら思っているのだが
その余裕も雛苺は気に入らないようだ。

二９４．



　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　　 ／　　 _ノ　　＼
　　　　　　　 |　　　 （⌒ ）（⌒）
　　　　　　　 |　　　　 （__人__）　　　　　　　　「とにかく今日は家に帰るだろ。
　 　　　 　 　 |　 　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　　　　　試験の日には強くなったジュンが戻るからさ」
　　　　　　　　|　　　　　　 　 }
　　　　　　　　ヽ　　　　　ﾍミ|
　　　　　　　　／,`　、` -`,--` ,
　　＿＿,---/;;;;;`　　`-,-/ニﾆ |
　/;;;;;::::、:::::::::|、_ ,＞、 /::l,_l･　,<、__
ノ;;;;;;;;;;;;:::|::::::::::＜:::::::ヽ``l::::|　　|`l,::::ヽ
|;;;;;;;;;;;;;;:::::|:::::::::::::ヽ:::::::＼|:::|`-‐'/::ヽ::::|
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|;:::::::::::::::::::-、:::`;:ヽ;-';;;;;:::ヽ::l
;;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;;:::::::::::::::::::::`、;`l;;;;;8;;;;;::::`ヽ



見違えたジュンを見たら驚くだろうな、喜ぶだろうな、とその瞬間を想像して
にっこり微笑みながらのやらない夫の提案を、

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　___,..　--───-､　　　　　 ,.-───--　..__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　　　　　　　　　＼(こ)／　　　　　　　　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　　　　　　　 ＼_　 _／　　　　　　　 　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　　 _,.　-─ ｧ' ￣ヽー--　 ..._ 　 　 !
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／|_,. -‐ '´　 　 ／-──- ＼　　　　｀　 ､|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　 ヽ.　　　　 ／　　　　　　　　 ＼　　　　／＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼　　 ＼　,.イ　 ／　　　　　　　　　ヾ､.／　　___ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　__,rｯ'´　　 /　　/　　　 　 i　　　 i ﾞヾ　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 厶r'ﾞ7　 　 　 /　　 i　　　　　　l 　 　 l 　 ﾄ､　|
　　　　　　　「お断りなのよ。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ 　 !/　　　　/　　　!　　　 　 　 l 　 　 ! 　 l　`＼
　　　　　　　お兄様の口から、貴方に教わった方が　　　　　 ／　　　 |! ｌ　　　 |　　　i| l　　　　 j　|　　　l　　 !　 　 ＼
　　　　　　　お父様に教わるよりも為になると　　　　　　　／　　　　　l　ト l､∧　 |ヽ　{　 　 　 }　} ヽ, 斗-┼j　　　　　＼
　　　　　　　聞くまでは絶対に帰らないのー！」　　　　　/__ ___　 　 　　|　lヾ ＞k{_ ＼　　　　ﾉ_ﾙ＜ハj　/ /　　 　 　 　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 {-─ ‐- =- ､.__∨ ‐〒示心ｰ＼／戈云ﾃテ‐ﾚ' 　　　　　 　 　 　 i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼_,.=ﾆｰ- ､.._く　', 　 ゞー'´　　　　 ゞー'' 　 /　 シｒ=_,ニ二二ﾆ　j
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 r─二ニｰ-干ｰ∨／/／　　　　　 ／/／ /　　　　　 ＿　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ=ヘ三ニ-＼ﾍ　　　 　 　 ＿__ 　 　　∠ｰニ-=ニZ_　￣｀
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ` ー-ｭ-个 ,、　rｰ'´＿＿う　 ,.へァ'了--= _　　｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　 　 　 　＞ ー-- ‐ｧ＜ｒ'´￣￣＼こ>‐ー '"
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ.　　　　　 　 ＼__　　__,／　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,. ィ⌒ヽr=､_ _,. -─-ﾕ.fﾆ─-､.　　　　 /_,ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 {　　　　 　 ／／￣｀７トlく⌒ヽ､.＼　 ／/ ｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ､_ﾊ l // ／　　　/ /　!ﾊ　 　 ＼＼　　 　 _ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　 Nヽ　　　/ /|　i|　!　　　　〉 }_,L_,. く
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　　　　 |ヽ.＼／,.ｲ |　| ﾄ､＼ ／,.イ　　　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　j　 `ｰ-' /　|　| |　＼ ／　|　　　　　　 ヽ



雛苺は一蹴。

二９５．
あまりの即答にこりゃ駄目だろ、と彼女の不退転の決意を察したやらない夫はしばし考えて、
連れて行ってやる事にした。



.　　　 　 　 ／￣￣＼
　　　　 . ／　ノ　　＼ ＼／｀i
　　　　　|　 （●）（●）./　　ﾘ　　　　　「わかった、案内するだろ。
　　　　.　|　　（__人__）..|　　/
　　　　　 |　　 ｀ ⌒´　ﾘ　 ﾋ　　　　　　　でも一つだけ、約束してくれ」
　　　　.　 ヽ　　　　 ／/　　,｀弋ヽ
　　　＿＿ ヽ　　- ′.Ｙ´　 ,　｀ヽ｀.ｌ
　 ／ :　　: :介〈　　`ｰ〈::....ノ　　　Ｖヽ
　 | : : : : ::〈　｢｀ヽ_ｰ ､ ｀ヾ＿/　//:|
　 | : : : : : /: |　{::::}　ﾌ-､｀ｰ┴‐- │
　 | : : :　〈: :│ {::::l /. :`ー‐一′ ::|



瞬間、路地裏の空気が張り詰め、十四歳の娘はそれを明確に感じとった。

先程と雰囲気は変わらないはずの、彼の言う「約束」と言う言葉を
自分の心が最優先事項として捉えていたのだ。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　　　　　　　　　 ___ ＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　　,.--r^Y^r＜: : : : : ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　に二ﾌﾞ⌒|￣＼: : : : : :＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. 　 　　　　　レ'て_)（_弋_＿_）, =＝‐-ﾄ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. 　 　 　 　 _/´ ｌi　　　､ ､｀¨¨{: : : : :_: : |ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　f´/il|l | ｉ l　| ｉヽ　 ﾞ､: :./ l ヽ|　}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　ﾉ'ｉ　l｜|l | ｌ_|__ｌ_|1ﾊ　ハ/　'! ／,小
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　{_|　l人|ｘ| ｌ l,ニ､川}/／／ l/／ 入
　　　　　　　　　　　「な、何なのー？」　　 　 　 　７ニヽヾ;　　Ｌハ 厶ィ´─〈/ ／_〉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　{´三ヽ八　_　 u ∠二二下（廴)）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　　￣）ﾉ7)）＼＿　ィ f三三〕ゝｰ‐'
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. 　　　　　　　　　ィ ﾆ圷､ヽ/: : :_ｿﾉ:＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /:〈〈 //{: : 〉〉: : : : : : : :〉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　　r‐!/:.Ｖ/:ゞﾆ'ノ｣: : : : : : :/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. 　 　 　 　　j: ｣: : :}/: j/: :f: : : : : : :.:ﾊ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /:/: ,.イ: :〃: :.:∨: : : : : :ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／:/:./:::/: /|: : : :.,′ : : : : |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／ : /:./:::/: ｲ::|: : : /: : : : : : :.|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　 ／: : : /: :|／:./:|:::|: : / : : : : : : : |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／: : : : :/: : : : :.:{ : ヽ!: /: : : : : : : : :|



まるで言霊に操られるかのように急速に敵意を失った雛苺は二歩、三歩と後ずさった後、
おそるおそるその内容を尋ねてみる。

二９６．
　　　　　　　　 　 　 　 ￣　 　 ､
　 　 　 　 　 　 ´　　　　　 　 　 ＼
　　　　　／　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ
　 　 　 /　　　　　　　　　　　､＿　　ヽ
　　　　'　　　　　　　　　　　　　　 ｀　､ヽ
　　　 l　　　　　　　　　　　　　　,‐-,.._ ゞ
.　　　l　　　　　　　　　　　　　　l　弋心 l　　　　「今ジュンは、凄い早さで成長してるんだ。
.　 　 l　　　　　　　　　　　　　　冫.ー　く　　　　決して、その邪魔をしては駄目だろ」
　　　l　　　　　　　　　　　　　　 l　　　　ﾉ!
　　　l　　　　　　　　　　　　　　 ｀ー‐ f ｒ'
　　　l　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾉ'
　　　!　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 /
　　 ,'　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /
￣　｀ー -　　　　　　　　　　 　 　 /
　　　　　　　 ｀　 ､　　　　　　　　/
:.:.:.:.:.:...　　　　　　　　､　 　 　 ／
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..　　　　　　.:.:ヽ _　´
ー-　:.:.:.:.:.:.:.:..　　　..:.:.:.:.:.:ヽ
　　　 ｀　､:.:.:.:.:.:.:...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
　　　　　　　､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼
　　　　　　　..:.｀:.:､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
　　　　　　..:.:.:.:.:.:.:.｀:.:､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ,,.._
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／＼｀'ｰ-‐=ｙ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _　　　__　　　/　 　 `j　　　 ）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Y´_｀'ｰ'"　ヽ__/／ ∠´ ｝　: : /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .｛　 .ト､_,,=宀ト iヽ=v＝ﾉ　　 〈
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＞､<~てjｰ し'へとケヽ==-.ζY
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿_,. '´,ゝ ﾞT ,　　',　　,　　ヽ　　｀丶,　.{
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.＼　　　/　.,' i　i!　　i」__ ',　　 ｝　　　,ヘ､,}ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　`ゝ.,','　/_|_,,].ｪ、 'i ヽ｢Τ　ﾉ_,.kK"　ヽ、　｀>‐-、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /_i i .T「',ヽ､| ＼ ｪ示抃ゝ¨ 》 ヾ､､　 ＼、ﾞヘλ_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 | !, .|丶汽》!　 ｀' ｋ州ｊﾞii ル　 !ヾ､,_　 ヾ,ｰ _　 ,）
　　　　　　「わ、分かったのよ」　　　　　　　　 ',.|ヽ.!ヾ!狄j　　　 ゞ=″j）ミ｀'x　二ﾆ=‐-､ヽﾐ､k
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .N_ >ゝ|｀¨ 、　　　　　 !ミｰﾍ ﾍ彡 ﾆ.‐ ﾆ ｀}ミ,),〕
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ）ミ- .!　　∈つ　　　 乍ﾐ≧「j´,", ｷ　ミ ｝ミｿ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｀>-‐ ﾞゝ､,_　　　　_,,..　ソ≡ゞ!､i' y彡 ミ jτ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.ヽ,彡_儿ミ＞≦┐_ _ ＿いミﾉヘ((_＠、）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ζ( ξ/´￣｀＼,　　 ￣ｊ､_　　　　ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ､=-一へi　　　　　 ヽ:.:.. - ´　Y
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Ｌニ／丿　　　　　 ::..　 　 　. |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_,,.．≦ﾆ＞イ"　<　.:.　　　 :.::　ﾉ　　　,'　!,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 <'" ,ィ´ _　 ﾞ',ｲ　　 へ ::.. .::. .:: :::i"　　 ./　　）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　!／　　ヽﾞ7'　　　 ./´　 ::　　 ':' ﾞ>　 ./　.::./
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .）'　　　　へ、　..:　　　く　 /　　'':ヽ



意味はよく分からないながらも、気迫に圧されて頷く。
沈黙が立ちこめ、雛苺の毒気が抜けてしまってしばし。

二９７．

　　　　　　　　　　　　　￣￣ 　 ､
　　　　　　　　 ´　　　　　　　　　 ＼
.　　　　 　 /　　　　　　　　　　　　　 ＼
　　　　　 /　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ
　　 　 　 ｉ　　　　　　　　　　　　　　　　　丶
　　 　 　 l　　　　　　 ／ ￣　　 　 　 　 　 丶　　　　　　　「それじゃ、行くとするだろ。
　　 　 　 |　　_＿ 　 　 　 　 _　ヽ　　　 　 　 丶　　　　　　案外ジュンの奴、雛苺ちゃんに応援されて
　　 　 　 ヽ/　　　　　　 ｉ　ｲ::::ヽ l　　　　　　　丶　　　　　ますます張り切っちゃうかもな」
　　　 　 　 ヽ　 　 _　 ヽ ゝ_ゞ::ノ '　　 　 　 　 　 ',
　　　　　　　丶ｉ ｲ:::ヽ　l　 　 ｀ヽ　　　 　 　 　 　 ヽ
　　　　　　　　 ゝ ゞ ',　ヽ _　　丿　　　　　 　 　 　 ＼‐､-..､
　　　　　　　　　ヽ　 ゝ ﾉ , ‐ ´　　　　　　　　　　　 　 ソ:.:.:.:＼
　　　　　　　　　　ヽ　　´　 　 　 　 　 　 　 　 '　　　 /:.:.:.:.:.:／＼
　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　　　　　　/　　 ／:.:.:.:.／:.:.:.:.:.:.ヽ､
　　　　　　　　　　　　 ＼　　　　　　　　　　/　 ／:.:.:.:.／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ヽ､
　　　　　　　　　　　　 　 ヽ　　　　 　 　 ／　 /:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ヽ､
　　　　　　　　　 　 　 　 　 ヽ　_＿　 ィ　　　/:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:



微笑むやらない夫が歩き出し、交渉が成立したはずの雛苺が不満そうに続いた。



　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　/　　　　　　 !　　　 }ﾐﾒ､: :/: : ::ｨ: '::´:{{ハ
　　 　 　 　 　 　　 /　　/　　　　 i　　　　 　 　 l　　　　 ゞ:V:_:ｨ'´: : _: : : :ﾒハ
　　　　　　　　　　//　 i　　　　 乂. 　 　　　　　|　　　 　 ヽ: : : : ／iヽ￣ ｀　 i
　　　　　 　 　 　 iｲ 　 l 　 　＿_ﾊ　　　 　 　　/　ｨ　　　　　>.／　 ,|ハ　　　　＼
　　　 　 　 　　　 {'i .　 l　　　从八ヾ　　､_＿ｨ＿/_i　　/　 |￣ 　　 |　 ＼　　　　＼
　　　 　 　 　 　 　 ',　　　　.li ｨ=ﾐﾒ､　　　 .//イ /￣〃　 /　　　　/　　　 ＼　　　　　「むー」
　　　　　　　　　　　ゝ､ﾊ　 ﾄ､ilけk}ヽ　 ／彳ミﾒ､ ィ' 　 ./　　　　/　　　　　　｀ｰ ､ _
　　　　　　　　　　　　＞ >､', 弋ソ　 ｀"　 {{けオﾐ､イ.／　,　　／
　　　　　　　　　　／-'´￣ ト' "" 　　　　　 辷ツ　 〃彡''_.／ｲ　　　　　　　＿＿ _
　　　　　　　　　/　　ヽニ彡､　　 ､　　　　　"" 　 イノイ≦　 il＿　,,　ィ ''´￣ ￣ ｀
　　　　　　　　　{　-＝彳_ィハ　　 -(　 　 　　　　　ﾉ＿　　　　＞￣
　　　　　　　　　 Y´　,,_≠〃フ＞､　　　　　　　　イー＜＞_/ハ￣ ＞- ､　　　　／
　　　　　　　　　　ヽイ三＝≠＝-､ ー -,―　 ´　 |＞､ノﾌ｀ー -ミ''ー　､ _ ｀ ー'
　　　　　　　　　　　　 >=／: : : : : : ＞イi　　　　　 >=-''´￣ヽ＿}}　　　　 ＞
　　　　　　　　　 　 　 ／: : : : : : : ´: : :il　_. . .ｨ: ':´/: : : : : : : : :ヾー＝-'' ´
　　　　　　　　　　　 /: : : : : :ｨ＝＝v＝ﾐﾒ､: : :r': ´: : : : : : : : : : : ヽ



自分がやらない夫に対して敵愾心むき出しだった自覚はある。
だがそれを意にも介していない様子なので、独り相撲を取っていたと思い知らされて
少し恥ずかしくなったのだ。

二９８．
貴族学級の同世代男子には決してない余裕。
父の余裕、母の愛、姉の脳天気、兄の優しさとも違う受け止め方。
自分にとって初めての反応を返され、どうやって接すれば良いのか分からなくなった雛苺は、



　　　　　　　　　　　fzfzィ彡､-‐ｧ´　　　　　　　　　　 ヾﾂｆz
　　　　　　　　　ｆｚｲ¨"　　.:.:{　.:.ixz､..__　　　　　　　.:.:.: Yゞfzfzx
　　　　　　　 fzﾂ　　　　 ,ｨf厂丁`ヾfzゞfzx:､　　 　 .:.:.:.:|:.　｀ヾﾐz
　　　　　　　 Y　　　　xfﾂｲ' ﾊ ヾ:､ ヽゝ八fz小、 　.:.:.:.:.|'　 _＿__
.　　　　　　　 |　　 xfﾂ"く　ﾑ┤ ﾄｽノ´　　　fz圦　 .:.:.:.:.|　 「ヾ、
　　 　 　 　 ,ｨ! 　 ｲfxﾚ1辷i　 し’ 、 :､　　 　 ﾞfzX　.:.:.:人_.:|＼ `
　　　　fxzﾚ"|!　,f才ﾝ 　 ヾ　　i! i| ﾊ　ヾ:、 　 八fz}_／　 ヾﾘ　ヽ
　　,ｨxfイ.:　.:| rf;{"　i　　 ﾊ　　i! |i　ﾊ　 ヽ:、 ｲ　j;｝i 　 ／' 　 )　ﾉ
　　{f∠ィ' ¨ヾ:ｲｧ'　 l 　　i! il　 i| i|!　 }!ヽ　)}　i!　{i从 ′　 ／ }　　　　　（変な人、なの）
　　　　　　　 /,ｲ{　 i{　　i|　!i　 i! l!i　 ハヽ_j斗!　ｊヾ ヽィ　　,ｲ{
.　　　　　　 //i {!　 i|　i　il　i|　 |j､l iｧﾅ乃工ﾉﾘ ｲ　)} /'　 イ　i,ｨ
　　　　　　〈' {i八　い:､ヽ i!_,.!i;　ﾘﾊﾘjｲ;乍夾ﾊ〉ﾘ ｲ〃 ／　 ／/
　　　　　 ／ﾒ{　 ヽ ヽミ;匕ヾハiﾉ　ﾘ ｿ　ヾﾆ''’厶┴ュ/　／ ーｧ
　 　 　 ,:／ 大ｰ:､ ヾ ヾミ;ｲ示ﾐj　 　 　 　 "" ら≡≠）/ムく二_
　　　　;厶-―‐-､｀ヾ. _ﾘ"ヽ ゞ’　　,　　　　-=≦ヲ く＜=＝ｧ/ﾑ
　　　　　r‐-｀二ﾆ}　ﾉ ﾉ /'/　､""　　- ‐　　 ／､_;ノ てﾑハ（_ノj
　　　　　 ￣｀ヾｰｬ-ｧ､{斗ｧZ＞≧=ｰ- ..__..イ:.　　／´: : : : : : : :｀ヽ
　　　　　 ゞ=＝ミｭ､〉〃ム三≧ヾく二ゝ _j'' 　 ／: : : : : : : : : : : :
　　　　　　　　　　 半ｧ／: ｀てﾗ’_.=≠＞个≠!: : : : : : : : : : : : : :
　　　　 　 　 　 　 ({／: : : : : : : {:r''" /,ｲ:i ﾄヽ |.:.:.:.:.､: : : : : : : : : :
　　　　 　 　 　 　 〈.:.:. .:.:. .:.:.:.:. |:{: ://:./ﾘ }:jヾヽ.:.:. :ヽ: : ヽ.:.:.:.:. :
　　　　　　　　　 　 ヾ:ヽ.:.:.:.:.:.:.:.ヾ彡': :i:/ i:::!.: :ヾ>: 〈::': : .::::＼.:.:.:.
　　　　　　　　　　 ／: ﾉ: : : : : : : i : : :,ﾒ　l:::i : : ﾉ: : :ｲ: :i : : : : : : :
　　　　　　　　　 く: : :': : : : : : i : :{!: :./!　 |:::! :Y:::::/: j: ::|: : : ::ﾍ: :
　　　　　　　 　 　 ｷ: : : : : : : :|: : i! /::j 　 !::{ : |:::/: :': : :|: : : : :::j : :
　　　　　　　　　　 入: : i: : : :.:|: : ': {:::{ 　 |:::| : Ⅵ: : : : :.!: : : : : : : :



取りあえず、そう位置づけておくことにした。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━……

227 ◆GV1zPRS/Lk 10/08/06 22:44:55 ID:TCmfuxpX 本日の投下は以上です。 推敲不足で誤字三発とか済みませんでした。 228 名前なんて無いだろ常識的に考えて 10/08/06 22:45:48 ID:Qr92SrUt 乙でした 229 名前なんて無いだろ常識的に考えて 10/08/06 22:46:46 ID:5oXIekXC 乙 230 名前なんて無いだろ常識的に考えて 10/08/06 22:46:56 ID:94uz7bD+ 乙でした 丁寧な作風に好感度大 次回も期待してます 231 名前なんて無いだろ常識的に考えて 10/08/06 22:49:18 ID:4a4K70de 乙でした。 このやらない夫の器のでかさが物凄い。 これでまだ未完の大器なんだろうと思うとわくわくするｗ 235 名前なんて無いだろ常識的に考えて 10/08/06 23:05:20 ID:jzO9bmT3 乙～ 天位をもらう機会があるかもしれんのか 236 名前なんて無いだろ常識的に考えて 10/08/06 23:05:21 ID:RCfQcyrX 乙 ここのやらない夫はもしかしなくてもフラグメイカー？ 237 ◆GV1zPRS/Lk 10/08/06 23:11:13 ID:TCmfuxpX >>233,235-236 閲覧ありがとうございました。 >>236 やらない夫は多分チートです。 さて、明日も六時出のため今夜はこれにて失礼します。 また書きためが出来たらアナウンスしますね。 ではでは　ﾉｼ 242 名前なんて無いだろ常識的に考えて 10/08/07 22:54:30 ID:lRvcOv85 乙。オススメスレからきて追いついてしまった。 話の素材自体は良くある物だが・・・。 それが面白いかどうかは料理人の腕によるよねやっぱ。 王道で面白いってのは貴重なんで応援するぜ 243 ◆GV1zPRS/Lk 10/08/08 05:39:15 ID:6IVSVo12 >>241-242 おはようございます。 閲覧ありがとうございました。 ・・・おすすめスレ！？(･ω･ﾉ)ﾉ いつの間にそんな事にとびっくりです。 おすすめしてくださった方も、読んでくださった方も 本当にありがとうございます。 お礼を言うことと、なるべく面白い物を投下するべく 頑張ることしか出来ませんが、よければ今後とも見てやってください。

二９９．
━━━━━━━━━━……
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

一方その頃―――



　　　　　　　　　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ|:.:.＼
　　　　　　　　_ - ' ´:.:.::.:.:.:.:.:.:.:_:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヾ:.:.::＼　　 ,
　　　　　　　ヾ､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::､:.:.:.:/ ／/
　　　　　　　　　＞:.:.:.:.:.:／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／:.:./:.:.:.:.:.:.:.:ﾚ:.:.:/　　　（一体何が足りない？
　　　　　　　　 /:.:.:.:.:.:./:.:.:.:._;,;,-‐''''´:.:.:.:.:./:.:.:./:.:.:.:.-='´　　　　 集中力？
　　　　　　　　｀ -､:.:.:/:.／/ ゞ:.x ､-ー ''´|:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.＼　　　　腕の振り？
　　　　　　　　　　ﾚ､:ﾚ´∧ /　｀　 ＼　.ヾ|:.:/|:.:.:.:.:.|:.:.:r､_::ゝ　　狙う場所？
　　　　　　　　　　　 ミ,;,;:.::|　　　　 　 ｀＞ミ_.|:.:.∧|:.:.:.:}　　　　　向き？
　　　　 ,＿＿ r‐─ v'´　 ヽ　　　　　／ヾ∠.|:/|:./:.:.:.:.|　　　　　立ち位置？）
　 　 /.: : : : : : ＼: : : :＼ 　 ､　　　_　ヽ '´ |'' ´ ﾚハ:.:./
　　/／＼: : : : : : ＼: : :: :>v ＼　 ヾ_ , -―
　.//: : : : :＼: : : : : : V/: : K: : : ミ'´
../: : : : : : : : :＼: : |: : V: ∨: V: 入
/: : : : : : : :: ::: : :V: : : : : : ＼//: :/ヽ



ジュンは未だに一匹の魚も捕まえる事が出来ずに苛立っていた。
何度もやらない夫に教わった事を繰り返し呟き、集中を高めるも魚にはかすりもしない。

二１００．
　　　　　　　　　 ＞ -:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∧ /:.:.:|
　　　　　　　　　 >:.-:.－:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∧i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀´:.:./
　　　　 　　 r‐ ':.´:.:.:.:.:.:.:.:.::./:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:|:::ヾ:.:.／::|:.:.:.:.:.:.:／
　　　　　　/:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:..|:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:|￣｀''- ､;i:.:.:.:.:.:.:.:.￣ヽ
　 　 　 　/:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:ﾊ:.:.:.|　　　　　 |∧:.:.:.:.:|:.:.:.:.:}
　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::V:.:.:./ -V:|_　　　　//:::.:.:.:.:.:K:.:.:.:|
　　 ／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∠V:./={´rvミ､=､_,, ,/　|:.:.:.:.:.:.ヾ:.:.:.|　　　　「ハッ！」
　 /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/´＼-;/￣ V￣ | |ｲ≧ミ=､/ 　 |:.:.:/:.:.:<´ヾ|
　 ｀ '' 'ー -ァ:.:.:/:::r::j::./:::::::.　　　 | | 辷り｀ |}_　r-Vｿ:.:∧}
　　　　　 ／:.:.:.:ヽ::::::::::i:::::::::::　　　 ヽ廴_　 <ﾃ=/rァヾ:∧:.|
　　　　　 フ/:.:.:.:.:.＼::::::::::::::::　　　　　￣ヾ=ﾉ　 <-ﾝ /:| .V
　　　　　　´''- ､:.:.:.:./::::::::::::::::　　　　　　　　　　/=テヾ|
　　　　　　　　　 ヾ/:::::::＼::::::..　　　　　ー -　 　 /
　　　　　　　 　 　/:::::::::::::::::::::::::...　　　　 -　　.／
　　　　　　／＼./::::::::::::::::::::::＼:::::::::...　　 　／
　　　　 ／　　　∧:::::::::::::::　　 /｀ 'ー - ' ´
　　　ノ |　　　　　 }ヽ::::　　 　/_
￣￣　 .|　　　　　　 ＼　　　{　ヽ
　　　　 .|　　　　　　/　｀ ー='´　 ＼



渾身の一撃はしかし、また空振り。

二１０１．

::::::::::::::::::::::::::ﾊ::::::::::::::/i/／ i:::::::::::::::::::::::::|::::::|:::::::::::::::::ヽ:::::::::::::::＼
::::::::::::::::::::::::::::ﾊ;;;;;;;;;/-'´ 　 .|::::::::::::::::::::::::ﾄ::::: ﾄ::::::::::::::::::::i:::::::::::::::::::ヽ
::::::::::::::::::::::::::::::ﾊ￣　　 　 　 |::::::ﾊ::::::::::::::|　＼i ＼::::::::::::|:::::::::::::::::::::ﾊ
::::::::::::::::::::::::::::;:::ﾊ　　　 　 　 |:::/　V::::::::::ﾘ　　　　ｨ=ﾊ:::: |::::::::::::::::::::::::＼
:::::::::::::::::::::::::::::iヽ:ﾍ　　　　　 |:/　　 V::::::/　　　/ｲ＝ﾌi｝ヾ─────'｀
ヽ:::::::::::::::::::::::::|　＼ヽ　　 　 |i!　　　 ｝::/　　　r''´ゞハi l:ヽ
::::＼::::::::::::::::::::|　　 ＼　　　＿＿ニ三ｲ　　　||r j｝i|　.i lヾ｝　　　　　　　　　　　　　「くそっ！」
::::::::::＼::::::::::::: |　　　／::::＿,,,ィ彡=''´i/il_,=＝|.しｿﾊ ﾉﾉ-､
:::::::::::/ ＼::::::::::ヾ ／:- ''´＞''´ -=ｲ｀　 ||r'´｀ ﾊ彡　ｙ/: : : :＼ニニミ-､
::::::::/　　　｀ー- xゝ rィ彡''´イッ:::ﾘ　　/i　　　ミー=´i: : : : : : :｀:-:､: : :｝ｿヽ
:::::/::ﾊ＿＿＿＿＿/ /　 /　ﾋ:::..ソﾉ　｛.ﾘ　　　　｝.　 l-､: : : : : : : : i: ://: :ﾊ
￣ヽ──────､ﾊ　ヾ　　ゞ''´　 ノﾉ　　　 ./　 ./: :ﾉ: : : : : : : : l: i l: : : ﾊ
i ヽ　｀ -ゝ　　　　　　ヽヽ　ミ=''´　／／　　　　 　 /: : i: : : : : : : : : l: i l: : : : :ヽ､
｛　　ﾊ　　　　　　　　　＼＼＿_／／　　　　, ィ　/: : :/: : : : : : : : : : /: : : : : : : : ＼
　｀　　 廴　　　　　し　　　ー─''´　　　 ir'_´'´ ./: : :/: : : : : : : : : : /: : : : : : : : : : /
>､＿　　　ー　　　　　　　　　　　 　 　 　　 　 /: : :/: : : : : : : : ::／: : : : : : : : : : :/
: : : : : ＞-､＿ハ､　　　　　　　　　　　　　　　ハ／: : : : : : : :／: : : : : : : : : : : :/ハ



悠々と泳ぐ魚が憎たらしくて側の岩を蹴っ飛ばすが、悔しがっても魚は捕まらない。
深呼吸をして気持ちを入れ替えると、再び視線を向けて魚を追い始める。
すでに時刻は十時に差し掛かろうとしていた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━……

二１０２．
━━━━━━━━━━……
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

町の出口を過ぎたところで、やらない夫は数歩後ろをつかず離れずの雛苺をちらりと振り返った。



　　 　／￣￣￣＼
　　／　　　　 　 　 ＼
　 /ﾉ　 ヽ､_　　　　　 ヽ
　（ ●）（ ●）　　 　 　|
　 | {　.!　　)　 　 　 　 |.
　 |. ¨´ ｀¨´　　　　　 l.
.　 |　　　　　　　　　 /.
　　|　　　　　 　 　 /
　 　＼__　　　 　 （
　　　　 _）_ =＝＝＼
　　 　／　 　 　 　 　 ＼
　 　/　　　　　　　 　 　 ヽ
　　 |　　　　,　　　　　　　 i
　　 |　　 　 |　　　　　 　 l.|
　 　|　　 　 l　　 　 　 　 | |
　 　|　　 　 |.　　　 　 　 |. l
　　 l　　　　|　　　　　　 |.│
　　/　　　 ﾉ　　　 　 　 |　|
　 / 　 　 /　　　　　 　 l /
　（ヽ､__,/＿＿__ 　_＿,У
　 ヽ_ｨ　 __ __￣￣_￣_,|
　 　 　　j l　 　|



同時に雛苺も立ち止まり、二人の距離は縮まろうとしない。



　　　　　　　　　 　 _＿__　　　　＿__
　　　　　　　　　_｣´: : : : :｀Y＾Y´: : : :｀i_
　　　　　　　 ／: l: : : : ;. イ⌒>､: : : : :l :＼
　 　 　 　 　 ＞:rL. ィ´ん'⌒Jし｀卞､:｣ :＜
　 　 　 　 　 Ｌ:.:|_ﾌｉ ｌi｜ｉ| | |ｉ l l! ｌ l ∨/:ノ
　　　　 　 /￣「| l lｌ |l｜ｌ| | |ｌ l l! | l i }{ l ヽ
　　　　 　 ﾌ入l１ﾊl斗┼ｌ| | |l十ト､ｲノ7ｰ┐ゝ
　　　　　く〈二ヽﾍヽｌィf T｜|l Ｔﾊﾄ !Ｙ´二入
　　　　 　 ｀ヽ>ｿ八ﾍ.ゝ┘ 　 └ ' ∠ィ三三]l
　　　　　 　 〈〈,-＝､ﾊ　　 ー 　 .ｲ___辷￢イ
　　　　　　　 ヽ　‐r'´: :｀ィ.TＴｆ´く: : : :＼ｿノ
　　　　 　 　 　 ｀/: : :.〈〈_,1:j:L._〉〉: : : : ヽ
　　　　　　　　 . ｌ : : : :.｀ｰ'ｌ::ｉﾍ‐ｆﾞ:i: : : : : :l
　　　　　　　　　 ト : : : : ｉ:.|::|: ｌ::|: |:_: : : ,ｲ
　　　　　　　　　　! : : : : |:.|::|: |::|: ｢: : : : :|
.　 　 　 　 　　　　l : : : : ｌ:.|::|:ﾉ:ﾉ:.j: : : : : |
.　　　　　　　　　　l: : : : :ﾏ￣￣ﾌ: : : : : ｉl　　ﾋﾟﾀｯ
　　　　　　　　　　 l: : : : :.ヽ　 /: : : : : : :ﾘ
　　　　　　 　 　 　 l: : : : : : :y': : : : : : :./

二１０３．
何も言わず、再び前を向いて足を踏み出す。



　　 　／￣￣￣＼
　　／　　　　 　 　 ＼
　 /　　 　　　　　　　 ヽ
　 |　　　 　　　　 　 　 |
　 | 　 　 　 　 　 　 　 |
　 | 　 　 　 　 　 　 　l
　 |　　　　　　　　　 /
　 |　　　　　 　 〃/
　 ＼、__　　　　 （
　　　　 _）_ =＝＝＼
　　 　／　 　 　 　 　 ＼
　 　/　　　　　　　 　 　 ヽ
　　 |　　　　,　　　　　　　 i
　　 |　　 　 |　　　　　 　 l.|
　 　|　　 　 l　　 　 　 　 | |
　 　|　　 　 |.　　　 　 　 |. l
　　 l　　　　|　　　　　　 |.│
　　/　　　 ﾉ　　　 　 　 |　|
　 / 　 　 /　　　　　 　 l /　　ｺﾂ………
　（ヽ､__,/＿＿__ 　_＿,У　　　ｺﾂ………
　 ヽ_ｨ　 __ __￣￣_￣_,|
　 　 　　j l　 　|



沈黙が気まずいが、何を話しかければいいのかよく分からない。
仕方なしにこの距離を享受してはいるが、街道の石畳を踏みしめる足音が
妙にうるさいなとやらない夫は思った。

二１０４．
実はその時、雛苺も頭の中で話題を探していた。



　　　　　　　　　　　fzfzィ彡､-‐ｧ´　　　　　　　　　　 ヾﾂｆz
　　　　　　　　　ｆｚｲ¨"　　.:.:{　.:.ixz､..__　　　　　　　.:.:.: Yゞfzfzx
　　　　　　　 fzﾂ　　　　 ,ｨf厂丁`ヾfzゞfzx:､　　 　 .:.:.:.:|:.　｀ヾﾐz
　　　　　　　 Y　　　　xfﾂｲ' ﾊ ヾ:､ ヽゝ八fz小、 　.:.:.:.:.|'　 _＿__
.　　　　　　　 |　　 xfﾂ"く　ﾑ┤ ﾄｽノ´　　　fz圦　 .:.:.:.:.|　 「ヾ、
　　 　 　 　 ,ｨ! 　 ｲfxﾚ1辷i　 し’ 、 :､　　 　 ﾞfzX　.:.:.:人_.:|＼ `
　　　　fxzﾚ"|!　,f才ﾝ 　 ヾ　　i! i| ﾊ　ヾ:、 　 八fz}_／　 ヾﾘ　ヽ
　　,ｨxfイ.:　.:| rf;{"　i　　 ﾊ　　i! |i　ﾊ　 ヽ:、 ｲ　j;｝i 　 ／' 　 )　ﾉ　　　（どうするのー？
　　{f∠ィ' ¨ヾ:ｲｧ'　 l 　　i! il　 i| i|!　 }!ヽ　)}　i!　{i从 ′　 ／ }　　　　　どうすればいいのよー？
　　　　　　　 /,ｲ{　 i{　　i|　!i　 i! l!i　 ハヽ_j斗!　ｊヾ ヽィ　　,ｲ{
.　　　　　　 //i {!　 i|　i　il　i|　 |j､l iｧﾅ乃工ﾉﾘ ｲ　)} /'　 イ　i,ｨ　　　　　今、隣に行った方が良かったの？）
　　　　　　〈' {i八　い:､ヽ i!_,.!i;　ﾘﾊﾘjｲ;乍夾ﾊ〉ﾘ ｲ〃 ／　 ／/
　　　　　 ／ﾒ{　 ヽ ヽミ;匕ヾハiﾉ　ﾘ ｿ　ヾﾆ''’厶┴ュ/　／ ーｧ
　 　 　 ,:／ 大ｰ:､ ヾ ヾミ;ｲ示ﾐj　 　 　 　 "" ら≡≠）/ムく二_
　　　　;厶-―‐-､｀ヾ. _ﾘ"ヽ ゞ’　　,　　　　-=≦ヲ く＜=＝ｧ/ﾑ
　　　　　r‐-｀二ﾆ}　ﾉ ﾉ /'/　､""　　- ‐　　 ／､_;ノ てﾑハ（_ノj
　　　　　 ￣｀ヾｰｬ-ｧ､{斗ｧZ＞≧=ｰ- ..__..イ:.　　／´: : : : : : : :｀ヽ
　　　　　 ゞ=＝ミｭ､〉〃ム三≧ヾく二ゝ _j'' 　 ／: : : : : : : : : : : :
　　　　　　　　　　 半ｧ／: ｀てﾗ’_.=≠＞个≠!: : : : : : : : : : : : : :
　　　　 　 　 　 　 ({／: : : : : : : {:r''" /,ｲ:i ﾄヽ |.:.:.:.:.､: : : : : : : : : :
　　　　 　 　 　 　 〈.:.:. .:.:. .:.:.:.:. |:{: ://:./ﾘ }:jヾヽ.:.:. :ヽ: : ヽ.:.:.:.:. :
　　　　　　　　　 　 ヾ:ヽ.:.:.:.:.:.:.:.ヾ彡': :i:/ i:::!.: :ヾ>: 〈::': : .::::＼.:.:.:.
　　　　　　　　　　 ／: ﾉ: : : : : : : i : : :,ﾒ　l:::i : : ﾉ: : :ｲ: :i : : : : : : :
　　　　　　　　　 く: : :': : : : : : i : :{!: :./!　 |:::! :Y:::::/: j: ::|: : : ::ﾍ: :　　　ﾃｸ………
　　　　　　　 　 　 ｷ: : : : : : : :|: : i! /::j 　 !::{ : |:::/: :': : :|: : : : :::j : :　　　ﾃｸ………
　　　　　　　　　　 入: : i: : : :.:|: : ': {:::{ 　 |:::| : Ⅵ: : : : :.!: : : : : : : :



最初は隣を歩いていた。
だがお互いに話題を探す間に距離が開いてしまい、今では五メートル程の不自然な間がある。
結局、あれこれと考える間にテレジア河が近づき、会話を交わすことが出来ない二人のままだった。

二１０５．


　　　　　　　　　　.　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　.／ _ノ　 .ヽ、＼
　　　　　　　　　　.|　 （●）（●）　|
.　　　　　　　　　　.|　　（__人__）　.|　　　「ほら、ジュンがあそこに居るのが見えるかい？」
　　　　　　　　　　 .|　　 ｀ ⌒´ 　ﾉ
　　　　　　　　　　　ヽ　　._　　　.}
　　　　　　　　　　　　ヽ_/ }　.　ﾉ
　　　　　　　　　　　 ／､ 〈　　く
　　　　　　　　　　　ﾊ ヽ Y｀ー.､i
　　　　　　　　　　　{　ヽ_ゾﾉ-‐１
　　　　　　　　　　　｀¨´┬'　.　｜




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　　　　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　＼　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　--　　　-　　　○　　ー　＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　|

:.:.. .:. ...:..::::::...::..:: .:: : .. .. .　　..　　　　　　　　　　　　　　　,,､､,,,,;;;´"
...::..:::..:::.. . ..::...::.: .: . ... 　　　　　　　　　　　　　　　　　,;;'":::.:.....::.::...
,.,,　:.. . ..::...::.: .: . ...　　　　　　　　　　　　　　　　 ,,.r'":::.:.....::.::....::...
;;;,;ヽ､　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,､､-'';":`::::::.:.....::.::...:...,..::...
;;;;,';;;;ヽ;,　　　　　　　　　　　　　　 ,..-''"::::::.:.:.:..:....::..::...:...,..:..:....::...::...
======================,;;r''"::::::.:.:.:..:....::..::...:...,.:...:...,..:..:....::...::...
;;;ii ;;;;;ii,;;;;;,ii.;;;;;ii.;;;;;.ii .;;;;;,ii.;;;;;(　::::::.:.:.:..:....::..::...:...,:...:...,.,,..:..:....::...:..:....::..
''_'''''_'''_'',.'''_''''_''_'''''_'',.'''_''''_''_''''',;;;"''ｰ-l､,,'""'ﾞ,ﾞ'""'"､.wiﾙv,iﾙwviw.:
__-　=_≡　_-　_-_=_　= -　_-_ -_　=≡_-;`--_ _､., ＿,__　￣`￢.,v:.:
^ _　_　-_ ^　_ _=_　-_^__　=_　- _ - 　　　　　≡　　　　　　 　 Y,.,lji,; 丱
=__-_ -_　_○ -　__ -_　=_　-_ ^__-_=　　-ｰ"`ﾞ　　　　　　　　　　 i ,.,...ﾕiW
_　-_　_＼ﾉﾉ）__←あそこ___ 　　_,,､。"`ﾞ　::: 　　::: 　　　　　　　　∥,,::iﾘv,i
_ =　_ -_ _　_ = __ __,,､｡-ｰ''"`ﾞ:::　　　　 　　　　　　　　　　　　　」:.::.ｖﾉiVi
　 _,,.,..､｡v-ｰ''"ﾞ~　::　'　::: :　:::　::: 　　　::　　:::: ::　:::　　　　　　「;;,,;;:ｙﾊiW
`"ﾞ　　:::: ::　:::'　,::　::::　　:　::: :　≡'　　　　　　　　　　　　　　 /,:.;,:.;,:.ﾅｗｙ

二１０６．
やらない夫が指さした方を見れば確かに人影が辛うじて見えるのだが、
それが兄かどうかまでは判断が付かない雛苺は判らない、と後ろから声を出した。




　　　　　　　　　___,..　--───-､　　　　　 ,.-───--　..__
　　　　　　　　　 ヽ　　　　　　　　　　＼(こ)／　　　　　　　　　/
　　　　　　　　　　 ヽ　　　　　　　　 ＼_　 _／　　　　　　　 　/
　　　　　　　　　　　|　　　　 _,.　-─ ｧ' ￣ヽー--　 ..._ 　 　 !
　　　　　　　　　 ／|_,. -‐ '´　 　 ／-──- ＼　　　　｀　 ､|
　　　　　　　　／　 ヽ.　　　　 ／　　　　　　　　 ＼　　　　／＼
　　　　　　　　 ＼　　 ＼　,.イ　 ／　　　　　　　　　ヾ､.／　　___ヽ
　　　　　　　　　 /　__,rｯ'´　　 /　　/　　　 　 i　　　 i ﾞヾ　　 |
　　　　　　　　 厶r'ﾞ7　 　 　 /　　 i　　　　　　l 　 　 l 　 ﾄ､　|　　　　「こんな遠くから判るわけないのよ！
　　　　　　　／ 　 !/　　　　/　　　!　　　 　 　 l 　 　 ! 　 l　`＼　　　　人がいるかどうかも
　　　　　 ／　　　 |! ｌ　　　 |　　　i| l　　　　 j　|　　　l　　 !　 　 ＼　　　やっと気がつくぐらいじゃないの」
　　　　／　　　　　l　ト l､∧　 |ヽ　{　 　 　 }　} ヽ, 斗-┼j　　　　　＼
　　　/__ ___　 　 　　|　lヾ ＞k{_ ＼　　　　ﾉ_ﾙ＜ハj　/ /　　 　 　 　 ヽ
　 　 {-─ ‐- =- ､.__∨ ‐〒示心ｰ＼／戈云ﾃテ‐ﾚ' 　　　　　 　 　 　 i
　　　＼_,.=ﾆｰ- ､.._く　', 　 ゞー'´　　　　 ゞー'' 　 /　 シｒ=_,ニ二二ﾆ　j
　　　 　 r─二ニｰ-干ｰ∨／/／　　　　　 ／/／ /　　　　　 ＿　　／
　　　　　ヽ=ヘ三ニ-＼ﾍ　　　 　 　 ＿__ 　 　　∠ｰニ-=ニZ_　￣｀
　　　　　　　　 ` ー-ｭ-个 ,、　rｰ'´＿＿う　 ,.へァ'了--= _　　｀ヽ
　　　　　　　　　　／　 　 　 　＞ ー-- ‐ｧ＜ｒ'´￣￣＼こ>‐ー '"
　　　　　　　　　 ヽ.　　　　　 　 ＼__　　__,／　　　　　　＼
　　　　　　　　 ,. ィ⌒ヽr=､_ _,. -─-ﾕ.fﾆ─-､.　　　　 /_,ノ
　　　　　　 　 {　　　　 　 ／／￣｀７トlく⌒ヽ､.＼　 ／/ ｀ヽ、
　　　　　　　　ヽ､_ﾊ l // ／　　　/ /　!ﾊ　 　 ＼＼　　 　 _ノ
　　　　　　　　／　　　 Nヽ　　　/ /|　i|　!　　　　〉 }_,L_,. く
　　　　　　 ／　　　　　 |ヽ.＼／,.ｲ |　| ﾄ､＼ ／,.イ　　　　 ＼
　　　　　 /　　　　　　　j　 `ｰ-' /　|　| |　＼ ／　|　　　　　　 ヽ

二１０７．
困ったように頬をかくやらない夫はしかし、河の中のジュンが苛ついた表情なのも、
燃え尽きた焚き火の側で魚が消し炭になっているのも見て取れている。



　　　 　　　　　 ／￣￣＼
　　　　 　　　／　_ノ　 ヽ､.＼
　 　 　 　 　 | 　（●）（●）　.|　　　　（唇が紫色になってるな、
　　　　　　 　!　　（__人__）　 |　　　　　魚も食わずにずっとやってたのか）
　 　 　 　 　 , っ　 ｀⌒´　　 |
　　　　　　 /　ミ）　　 　　　/
　　　　 　./　ノゝ　　　　　/
　　　　 　i　ﾚ'´　　　 　　ヽ
　　　 　　|　|／|　　　　 |　|



集中力が高まっているのか、自分の状態が分からないほど遮二無二なっているのかは分からない。
だいぶ冷えているようだし少し休ませた方が良いな、と判断したところで雛苺が川岸へと走っていった。



　　　　　　　　　　　,,,,,,:,,　 ,,,,,,,,
　　　　　　　 　 ,,,',/　.,,,ﾞ!l"　　　l
　　　　 ス　　　 >,l-‐ﾞﾞ"'-ﾞ`‐-ｙ,　 ､_人__人__人__人__人__,
　　 　 タ　 　 ;'''',,ll|lﾞﾞﾞﾞｿ'ﾞ／:,|l,`l　_）　　 　 　 　 　 　 　 （_
　　　 タ　　　　｀ﾞﾞ',!!,,,,l|,,,,,,l,l"fノ　_）　お兄様！　　　　（　_
　　　タ　　　　　,!'li'''',,''''il"／　　　_）　お兄様ったら！ （_
　　 タ　　 　 　,/　ﾞﾞ/l ﾞﾞ　|　　　　 _）　 　　　　　　　　　　（_
　　　　 　 　 .／|　/ |　　 | 　　　　⌒Ｙ⌒Ｙ⌒Ｙ⌒Ｙ⌒Ｙ⌒
　　 　.レ-‐″　／　|　　　|　　　　
　　　　れ,,,,. ／,,,, ,,,|i:､.、　l
　　 　 ‐″ザﾊ =,,:::i!ｙｰ'llli/
　　　　　　⌒'`/,　/[.,,,!,ll/
　 　 　 / //　/　//⌒⌒´
　　　　' //　/　//　/
　　　　//　/　/ '
.　　　/

二１０８．
ｲィ-'　/　　 /　/　　　　　l　ヽ　　ヽ ヽjヽ
　　　 l　　　j ,ｲ|　　　　　||　ヽ!　　 |　　 |＼
　　　 !　l　 ﾊ| {l.ノ　　 ヽﾘ|　ﾉl|　　 l　 　 !ヽ
ﾄ､　　{弋ﾄ_ｴj≦ﾄヽ　 /ﾉ ﾉ7ﾅ十‐ｲ'　 //　　　　　「お兄様！」
＼ヽ､ヽ 7,＜:ヽヽ　｀´　/,＜:ヽjく ﾉ_ ｲ'′
＿ ソ T　l::T:}.:|　　　　　{::T:}.:} ﾉ'7ヽ/　_　-
- {二ヽl､ ゞ--'　　　、　　ｰ‐'-　/‐_ 二{ ＿
二}ニｰ<〈 '''''　　/ ー ﾍ　 '''''　/r‐_'_-j‐--'
./＞＞｀ノヽ、　 {　　　 }　 ,　く'-ｧ＞r_ｰﾆ=
　￣　　　　 ,.＞‐｀_ｰ_´＜､　　￣　　　｀}￣
、 ､　　　//ィ　￣/ Hヽ￣ヽ＼　,



だが、十数メートルまで近づいた雛苺がいくら兄を呼んでも、彼は水面を見つめたまま微動だにしない。
追いついたやらない夫はさらに大声で呼ぼうとした彼女の肩を叩き、口に指を当てて小さく首を振った。



　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　／ _ノ　 .ヽ、＼
　　　　　　|　 （●）（●）　|
.　　　　　　|　　（__人__）　.|　　　　「駄目だろ、今は。
　　　　　　 |　 .　'´ｎ｀'　 .ﾉ　　　　かなり集中力が高まってるんだ、
　　　　　　 .ヽ　. 　| |　　}　　　　　俺達の事は眼にも耳にも入っていないらしい」
　　　　　　　 ヽ..　ﾉ .ュノ
　　　　　　　　/　{ ..ﾆj､
　　　　　　　　|.　| "ﾂ　＼
　　　　　　　　|.　| .l　　|ヽ、二⌒)



果たしてそれは視野が狭くなっているのか、
それとも不要な情報を遮断する程までに集中が高まっているのか。

二１０９．
情報の取捨選択は簡単に会得できる技術ではない、
落ちる一滴の水を見極める集中力と職人芸とも言える五感と脳の連携が必要になる。

もしかしたらジュンは集中力に関してかなりの才能を持っているのかも知れない、と
やらない夫は残してあった木刀を拾い上げると―――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞｉ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞｉ　(,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i 　ﾞｉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i|　　i,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i|　　',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i| 　　|i
　　　　　　　　　　「ハッ！」　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i|.　　　|i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　 ＼＼　　　　　　　　　　　　　　　　 ,.i.　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　 　　　（●）　　　　　　　　　　　　　　　,.i 　　　　ゝ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　|　　　　　　 （___ﾉ　　　　　　　　　　　　　ゝ 　　　　　|i.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　　　　　 ´ﾉ　　　　　　　　　　　　 , ' 　　　　　　|i.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　 |　　　　　　 　 }　　　　　　　　　　　 ／　　　　　　　|i.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　､－―ﾞ―ﾞﾞ￣＼　　　　　　　　　　, '　　　　　　　　|i.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　　　　　　　 　＼　　　,, ,. ,., ' , ' 　　　　　　　　|i.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ 　　　　　　　　　　　　＼　 `ﾞｨ／　　　　　　　　　|i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　　　　　　／´＼　　 　, ,. ,.　／`　　　　　　　 ,.|i　　ﾌﾞﾝｯ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　| 　　　　　　､ト　ﾞ）　　＼　ﾞｨ／`, ' `　　　　　　　ゝ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　`　, ' ／ﾐ　　　.,　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　, ' ` ,.　　, ' ／, ' ;`
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　, ' 　／



　　　　　　　　　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ|:.:.＼　　　　　　　　　　__
　　　　　　　　_ - ' ´:.:.::.:.:.:.:.:.:.:_:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヾ:.:.::＼　　 ,　　　　　/　/
　　　　　　　ヾ､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::､:.:.:.:/ ／/　　　　 /　/
　　　　　　　　　＞:.:.:.:.:.:／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／:.:./:.:.:.:.:.:.:.:ﾚ:.:.:/　　　 　L/
　　　　　　　　 /:.:.:.:.:.:./:.:.:.:._;,;,-‐''''´:.:.:.:.:./:.:.:./:.:.:.:.-='´　　　　∠ﾌ
　　　　　　　　｀ -､:.:.:/:.／/ ゞ:.x ､-ー ''´|:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.＼
　　　　　　　　　　ﾚ､:ﾚ´∧ /　｀　 ＼　.ヾ|:.:/|:.:.:.:.:.|:.:.:r､_::ゝ
　　　　　　　　　　　 ミ,;,;:.::|　　　　 　 ｀＞ミ_.|:.:.∧|:.:.:.:}
　　　　 ,＿＿ r‐─ v'´　 ヽ　　　　　／ヽ∠.|:/|:./:.:.:.:.|
　 　 /.: : : : : : ＼: : : :＼ 　 ､　　　　　ヽ ' |'' ´ ﾚハ:.:./
　　/／＼: : : : : : ＼: : :: :>v ＼　 ヽ_ , -―
　.//: : : : :＼: : : : : : V/: : K: : : ミ'´
../: : : : : : : : :＼: : |: : V: ∨: V: 入
/: : : : : : : :: ::: : :V: : : : : : ＼//: :/ヽ



殺気を漲らせてジュンへ投げつけた。

二１１０．
　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/
　　 ＼　　丶　　　　 　 i.　　 |　　　　　 /　　 　 ./　　　　 　 ／
　　　　＼　　ヽ　　　　　i. 　 .|　　　　　/　　　 /　　＿＿＿＿＿＿＿　　/￣／
　　　　　 ＼　　ヽ　　　　i　　|　　　　 /　　　/　　/　　　　　　　　　　/　/　／
　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　/　/ﾚ/　/￣／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /＿＿＿＿＿　　 /　　　　 /　／
　　ー　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　/
　_＿　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　/　＝　二
　　　　　二　　　　　　　　　　　∧　　　　　 ＿＿＿＿＿/　　/
　　￣　　　　　　　　　　　　 　 |.|.|　　　　　/ 　 　 　 　 　 　 /
　　　　-‐　　　　　　　　　　　　∨　　　　　/＿＿＿＿＿＿_/　　　--
　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_从
　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　　　/　/ _从＿＿　　　　　￣
　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　丶./,.,//　//　 ／　　‐-
　　 ／　　　/　　　 /　　　　　　|　　　i,　　　 　 ."　/,､/'´ ／
　／　　　 /　　　　/　　　　　　 |　　　 i,　　　　　　 ﾞ　/／



狙い違わず背中に向かってまっすぐに飛んだ木刀は―――




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 /￣ ~/　 　＿＿ ＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 /_＿_./　　//　　/
　　　　　　　　　　.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/￣￣　　　　 　 /　　//　　/
　　　　　　　　　　　　＼.. 　　　　　　　　　　　　　 　／　　　　 　 　 /＿＿　　　＿_　/　　//　　/
　　　　　　　　　　　　　＼＼.. 　　　　　　　　 　 ／／　　　　　　　　　　 /　　 /　/ /._Ｍ//_Ｍ/
　　　　　　　　　　　　　　＼＼...　o　|　　　　／／　　　　 　 　 　 　 　 /　　 /　/　　 /
　　　　　　　　　　　　　　　＼　＼　 。/　／　／　　　　　　　　　　　　/　　 /　/　　 /
　　　　　　　　　　　　　ヽ　　 ＼　　＼　.。　／　　　　　　　　　　　　./　　 /　/　　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ＼　　　　／　　　　　　　　　　　　 /μM/　/　　 /　＿　＿　＿
　　　　　　　　　　　　　- -二 　　　　　　　　二 - -　　 　　　　　　　　　　./μM/　/　//　//　/
　　　　　　　　　　　　　　　o　　　　　　　　＼　。　　　　　　　　　　　　　　　　　　./M//M//　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　o　 ＼　 ＼.　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 /　/
　　　　　　　　　　　　　　／　／。/　　　　　＼ ＼.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /M/
　　　　　　　　　　　　／　／　　　　　｀~´　　　＼＼
　　　　　　　　　　　／／　　　　/　。　 　　　 　　 ＼＼
　　　　　　　　　／／　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　／



雛苺の危ない、と言う声よりも早く振り向いたジュンの木刀によって見事たたき落とされる。

二１１１．



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|::ヽ／::::::〈 へ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,-┘:::::::::::::::::::::::::::｀＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　∠::::::/::::::::::::::::〉ヽ::::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::〈:::|＾＾|:::::/＼ﾄ､ヽ::::::>
　　　　　　　　　　　　　　　　　 |＼　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／::::::ﾊ|＿l/l/.＿_-ヽ|:::」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼＼　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 .￣7/.|＿_|─|＿_|- lj/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼＼　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ﾍ. 　__;_＿、 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼＼　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ﾌヽ辷フイ{ヾ　　　　　「………あ？」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼＼　　　 　 　 　 　 　 　 　 ／::::〈｀l7:´::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼＼　　　　　　　　　　　 ﾉ::::::::::::V::/:::::::::::〉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　＼＼　　　 　 　 　 　 /:::::::::::7::ﾄ/:::::::::::/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼＼　　　　 　 　 /::::::::::/:::::/::::::::://
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼＼ 　　　 ／::::::::::／l ／:::::::::/::l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ∠二フ　／:::::::::::::/　／:::::::::／::::!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　ヽ,'~つﾆ〉ヾ::::::::/／::::::::::／::::::::j
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞへノ7 　ヽノ<::::::::::／ヾー--￢
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 くヲ｀`　 ヽ＜／^ヾフ=／{
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_,. -ヾソ　　ノ:::::::::::::::::::::::::::::::ヽ,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　r ' ´:::::::::::::`ｰ‐'´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀`丶
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l::::::::::::::::::::::::::::::::::_,. -─- ､_:::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l:::::::::::::::r -- ' ´　　　　　　　｀`'ｰ､:::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::::::::::::l　　　　　　　　　　　　　　 l::::::::::::



当のジュンは、何があったのかよく分からない様子で木刀を構えたまましばらく惚けていた。

やがて緊張の糸が切れたのか疲れた表情で肩の力を抜き、そこでやっと妹の姿に気がついたらしい。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : |: : : : : |: : : : ヽ: : ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　: : : : : : : : : : : : : : : :./＼: : : : : ﾄ､: : : : ﾄ､: : /: :∨ :.l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　: : : : : :∧: : /──{/､.　 ＼ : : |.-＼: : |ｰ∨､: : : : : |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　: : : : :./　1/　　　　　.i　　　l＼:|　　 ＼|　　　|: : |＼;!
　　　　　　　　　　　　「………なんだ、やらない夫か。　　　　: : ,､: :{　　 　 　 　 　 |-‐‐-|　　　　　　　　　.|:ヽｉ
　　　　　　　　　　　　　もう戻ってきたの？　　　　　　　　　　 : :{　ヽ'　　 　 　 　 　 !　　　|　　　　　　　　　ﾊ:_}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾊヽ　ヽ＿＿＿＿＿,ﾉ　　　ヽ＿＿＿＿___ﾉ　}
　　　　　　　　　　　　　ってヒナ！？どうしてここに？」　　　　ハ: :｀-',　 ! | | 　! !　　　　　　' ! |' | |　川/　ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 〉: :.:∧　　　〃'ー──-----､　　　 ,ｲ"´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣　　＼　 ヽ＿＿＿＿＿_丿　 ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＞､　　　　　　　 　,イ´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,────､＿_｀ ,‐──┬'"´　＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　| 　 !　　 　 |￣l￣　 　 ｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　　　 |　　ｰ──' 　ﾘ　　　　　　}

二１１２．

　 　.rf´￣￣if'⌒ヽ)_
　　 ｛|.　　　 |ﾖ　 　＼)_
　　 E〉　　 　}｝　　　　ヽ｝　rァ-─‐_=- ､
　　 t/　 　 ,ｲ　　＼　 　 i-く,.ｲ≠￣　 　 ￣ﾌ
rv､f｣＿＿_|｢,.　-─｀∠ヽ!-ﾉ-┐　　　　　 /
￣　　 , イｱ　　　　　　　 ￣｀ ＜こ）　　　/
>､__∠ﾌ　　　 　 　 　 /　 　 　 　 ｀丶、 .|
　　 / /　　/　　/ 　 /　 　 　　 　　　　ヽl
　　 | | 　 ｜　 /l 　/.| /　　　　　 |　　　　＼
　 .,ｲ |!　　|　　| |　|　| |　　 　 　 /　 i　　　 ヽ　　　　「お兄様を迎えにきたのー！」
　/ハj　　 |, -┼ゝiﾄ､l∧　　　　/　//　　　　 ',ゝ
V|f　ゝ＞.｣ ＼｣ ＿　 　 ヽ　 ／ ／/　　　 l　| |
-亠＜_ ／ ,.ｨ=＝ミ､　 　 |／ﾌフV　／　 / /|/
＝==ﾐ､｀ヽ、　　　　　　　 　 _ 〃ハﾉ　／／ノ
＼∠_≧＞'　　　 _　 　 , 　　 ｀ヾ∠ｨＺ／ヽ
　 ＼ ｀ヽ!　　 　｛　｀ 　 ｧ　　　　 /-亠‐┐ ＼
　　　　　 l＼　　 丶__ ノ　　　　 /r‐┬-ァ -‐'＼
　 　 　 　 !＞─ ､　　　　 _,. ∠_f二ニﾆ],. -‐'了ゝ
　　　　　　|　i⌒ヽャァ=ﾆ─‐､　 Ｚ≦＿＿__／
　　　　　　|　|　　 >LK´￣ ｀ヽ＼ゝ ヽ 　　ゝ
　 　 　 　 ヽ ヽ／/八＼　 　 / /　　　＼ 　 〉
　　-‐'´　　 ｀ー〃!　!lヽ＼.ノ／　　　　 /　ノ



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ ／.:/.: 　 i.:.:.:l.:.:.:l.:.:.:/ l.:.:.:.:.:.:｀`´.:.:.:.:.:.: |.:.:.､.:.:.:.＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 l.:.:./ .:.:　.|.:.:.:l..:/l.:.:/　|.:/l.:.:.l.:l.:.ﾄ､.:.:.:.:. |.:.:.:.＼ ￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./.:./ :. :.: :|.:.:.:l/ .l.:/　 |/　l.:.:N.::.|__＼.:.::|.:.:.:.:.:.:l
　　　　　　　　　　「迎えに？　　　　　　　　　　 /.:./ .: .:.:.: :|.:.:.:仁l/二ﾆ　　l.:仁l:/=== ヽ:!.:.:.|＼|
　　　　　　　　　　　どうして？」　　　　　　　　 l:/.l.:.:.:.:.:.:. .ﾄ､.:.l ﾃ示ﾐヽ1 Ll/ l 「 戍ﾃﾐ　lﾄV
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l.:.:/l .:　ﾊ:lN{　辷ｿ ﾉ ! 「￣l |弋辷ｿ　l1 l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l:/　l.:/　　 lL_ ＿＿ノ　 ,　　ヽ _二 ノ.:.:.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　 l/　､__',　　　　　　　 　 　 　　 /　.:.:.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　　　　　ヽ　　　　　r‐‐ｯ　　　/.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　　　　 　 入　　　　　　　 ,..ｲ.:.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　　　.　'´　i.:.＼＞ -- ＜/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　／　　 　 |.:.／＼　 　 ノ.:

二１１３．
　　　　　　　　　　　 ＿＿＿　　　　　　 ,.. -───- ､
　　　　　　　　,. -‐': : : : : : : : ｀ヽ' ⌒ V: : : : : : : : : : : : ヽ
　　　　　　　　|: : : : :: : : : : : : : : : 「: :|: : : : : : : : : : : : : : :j
　　　　　　　　ゝ: : : : : : : : : : _: _: j: : j -----.. _、: : : : :/
　　　　　　　　　|: : : , -‐ '' : : :_:ノ ｀~ヽ: : : : : : : :ヽ:_:_:_:L
　　　　　　　　 _j ／: : : : : :: ｨ_j__ｒ ｔ,___r＼ : : : : : : j: : : : ゞ　　　　　「決まってるのー！
　　　　　　　r': : :＼: : : :;／r′　　　　　　 ＼: : : ノ: : :,.ィ　　　　　　こんなどこの馬の骨とも限らない男に
　　　　　　　ヽ: : : : :＼/_j´ 　 ::;' 　　　│　　 ~~＼: :.∧　　　　　　　教えて貰うよりも、
　　　　　　　 入: : _ .ｨr' T 　 :::l! 　　 　::l: 　 ,　　　∨ 　 ヽ.　　　　　 お父様に教えて貰った方が
　　　 　 　 ′　V`´　,　 |　_i__/! 　 　 ::,' _ /j:::: 　 i:　i 　 　 ヽ　　　　何十倍も為になるのよー！」
.　　 　／　　　 {　　＼l イゝﾄ､l ゝ　 ::::/j_./j メ 　ノ　 l 　 　　　＼
　　／　　　　 　ﾊ　　トゝｨ,二 ヽ ヽ..ノ　',..二ヽﾚイ::::ノ　. 　　 　　 '.
　 '　 ＿＿＿　　 ::ゝ..ゝi! ﾄrtﾚ!　 　　 　ﾄｨt::! l!j ィ 　　 　,.. -─‐ j
　 {　　　:::::::::::　ヽ__:_ノム ゝ-'　　　.　　 ゞ-　少ｰゝ . ／::::::::: 　ノ
　　ゝ＿＿＿＿ ::::::: > -..> ::::: 　rー‐ . 　::::　ゝ=--'_´_::::＿_∠
　　　　　ノ:::::::::....　　　フ ゝ､　　 ､＿ ﾉ 　 ,∠ﾄ ､./´::::＿＿___ﾉ
　　　　　 ￣￣ _＞ ' ⌒`ヽ, -v- ､ ___ .ィ=v ´ ⌒ヽ二二r､__
　　　　　　　　　／: : : : : :/　　へﾑ　 _r'_ヽヽ: : : : : :＼
　 　　 　　 　 ,.': : : : : : ∧　　　´,_j､_ﾄ 　｀　 |-､ : : : : :ヽ
　　　　　 　 （: : : : : : :∧ゝ7_ 　´ ﾉr弋. 　 ,.-k^ｲ!: : : : : j
　　　　　　 　 ＼ : : :/∧＼ゞ7_イィ介∧_rﾚ´／|～: : :.ノ
　　　　　　　　　　j: :|!: : ＼ ＼ｰtrﾌrr7〆　' .／|: : : :7
　　　　　　　　　　| :.|l: : : : : ゝ.＼` Y´ ／ ／.: :.|: : : :|



自信満々、自分の正しさを疑わない雛苺。
だが、目を白黒させた兄は全く予想もしなかった反応を見せる。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〃::::::::/::::ヾ:::i::::ヽ:::::::::::::::::::::ヾ:::::::::::::::::::＼::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／:::::::::/:::::::::i:::｀:::::::}::: ﾄ:::::::::::::::::::i:::::::::::::::::::::::ヾ:::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/:::::::::ｨ/:/:::::::: L:＿ ∧:ﾊ::::::::::|ヾ:: l>､::ﾐ､:::::::::::::::V:＿:::::::::::::::::::::::::i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　/:::／ /::/::::::::::::ﾊ　　　 il　i::::::: l　刈　　≧ﾐ> ､::::::::<　 ヽ::::::::::::i＼ |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　../／　./:::::i::::::::::::ﾄ:ﾊ 　 　 　 l::::://_ ィ=彳司 ||＝=￣｀{　i }:::::|＼ゝ. ｀
　　　「はは。　　　　　　　　　　　 　　　 i ::::::ﾊ:::::::::::|＼ゝ＿__　 |:/　r/ ´ ｲt jﾊ ||　　　　ﾉ //::::::i
　　　　ははははは、　　　　　　　　　　 l:::::::::::ヾ:::::::|::::::ヾ´ ≧ミ､ィ'''ヾ　　 ゞ┴ﾉﾉ　　　　｀./:::ノ｀
　　　　あははははははは！」　　　　 |::::::／i::＼:::V::::彳 ｨ芯､}}　　 ｀ミ＝＝''　　　　　r'´:/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |:::/　　|::::::>:K ヾ､　_ゞノ　, 　　　　　　　　　　　 |／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |/　　　ヽ/　ヾ　｀ーt　　　｀ _　ノ ﾌ　 　　　 /　 |　＿＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｀　　　　　　ヽ　　　｀ー´　　　　　　 ／￣　　　 _　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀　 ､　　　　　ノ　　/　　　　 ／　￣￣ ヽ＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＞-イ |　　〃　　 .／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /￣il　 /／　／-= ' ´　 ＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　 V/ ヽ=.//　　　／￣￣￣＞＝-　､

二１１４．
　　　　　　　　　___,..　--───-､　　　　　 ,.-───--　..__
　　　　　　　　　 ヽ　　　　　　　　　　＼(こ)／　　　　　　　　　/
　　　　　　　　　　 ヽ　　　　　　　　 ＼_　 _／　　　　　　　 　/
　　　　　　　　　　　|　　　　 _,.　-─ ｧ' ￣ヽー--　 ..._ 　 　 !
　　　　　　　　＿／|_,. -‐ '´　 　 ／-──- ＼　　　　｀　 ､|
　　　　　　　　|　l│└ ┐　　.／ 　 　　　　　　 ＼　　　　／＼
　　　　　┌‐┘ ﾉ.｀ｰ─┘,.イ　 ／　　　　　　　　　ヾ､.／　　___ヽ
　　　　　└―イ/　.|￣￣|　　/　　/　　　 　 i　　　 i ﾞヾ　　 |　　　　　　「ど、どうして笑うのー！？
　　　　　　／￣￣|│ ｢￣ 　/　　 i　　　　　　l 　 　 l 　 ﾄ､　|
　　　　　　ヽ/￣|.│ヽ_>　　/　　　!　　　 　 　 l 　 　 ! 　 l　`＼　　　　　ヒナ、間違ったこと言ったの！？」
　　　　　 ／　 └┘ｌ.　　　 |　　　i| l　　　　 j　|　　　l　　 !　 　 ＼
　　　　／　　　　　l　ト l､∧　 |ヽ　{　 　 　 }　} ヽ, 斗-┼j　　　　　＼
　　　/__ ___　 　 　　|　lヾ ＞k{_ ＼　　　　ﾉ_ﾙ＜ハj　/ /　　 　 　 　 ヽ
　 　 {-─ ‐- =- ､.__∨ ‐〒示心ｰ＼／戈云ﾃテ‐ﾚ' 　　　　　 　 　 　 i
　　　＼_,.=ﾆｰ- ､.._く　', 　 ゞー'´　　　　 ゞー'' 　 /　 シｒ=_,ニ二二ﾆ　j
　　　 　 r─二ニｰ-干ｰ∨／/／　　　　　 ／/／ /　　　　　 ＿　　／
　　　　　ヽ=ヘ三ニ-＼ﾍ　　　 　 　 ＿__ 　 　　∠ｰニ-=ニZ_　￣｀
　　　　　　　　 ` ー-ｭ-个 ,、　rｰ'´＿＿う　 ,.へァ'了--= _　　｀ヽ
　　　　　　　　　　／　 　 　 　＞ ー-- ‐ｧ＜ｒ'´￣￣＼こ>‐ー '"
　　　　　　　　　 ヽ.　　　　　 　 ＼__　　__,／　　　　　　＼
　　　　　　　　 ,. ィ⌒ヽr=､_ _,. -─-ﾕ.fﾆ─-､.　　　　 /_,ノ
　　　　　　 　 {　　　　 　 ／／￣｀７トlく⌒ヽ､.＼　 ／/ ｀ヽ、
　　　　　　　　ヽ､_ﾊ l // ／　　　/ /　!ﾊ　 　 ＼＼　　 　 _ノ
　　　　　　　　／　　　 Nヽ　　　/ /|　i|　!　　　　〉 }_,L_,. く
　　　　　　 ／　　　　　 |ヽ.＼／,.ｲ |　| ﾄ､＼ ／,.イ　　　　 ＼
　　　　　 /　　　　　　　j　 `ｰ-' /　|　| |　＼ ／　|　　　　　　 ヽ



至って真剣な意見を笑い飛ばされて不機嫌になった彼女は説明を求めたが、
岸へと上がったジュンが笑い止んだのは、それからすこし経ってからだった。

二１１５．

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i: : : : : : : :',　　　 ＼: : : : : : : : ヾ: :＼'´＼:＼＼,ﾍ: ＼: : :r-､＼: : : ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. ,':ﾊ: : : : : : :',　　　　 ＼＼: :＼: : :＼: :＼r''ｨ＝=..､￣ヾ＼:ヽ ｀i: ＼: l￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/:/ l: : : : : : : :',　　　＿_ ＼＼: :ヽ＞､:ゝ/　llっ::::芯}　　ll　iー｀.|:＼::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:/　.|: ﾊ: : : : : ::',ｨ''´　　＿ミヽ ＼:ヽ　　ﾒ　　ゞﾐ=歹　　.ll　l　}　l: /:＞- '
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.|::i .',: : : : : : ', 　 ｨ彳＝ﾐ　ヽイ ￣　ヾ　 　￣　　　 ﾉ　|　 ./i: l＼i
　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 |:|　',: : : : : ﾄゝ/　{il::::::と､　 ',　　　 　 ＼＿＿＿／　 |､_/:/:/＞ゝ
　　　　「ヒナはまだ子供だから、　　　　　　　 |:|　 ',: :ﾊ: : :ﾄ､　　ﾍﾐ=夕　　 i　　　　　　　　　　　　　il: : /:/
　　　　やらない夫の本当の強さを　　　　　　 |i　　 ',;i　ヾ: i ﾍ　　 ￣　　 ／　　｀　　　 _　 　 　 　 ∧从/
　　　　知らないんだ。　　　　　　　　　　　　　 i　　　 ';　　从＼＿＿ _ィ'´　　　　_ ィ''´ /. 　 　 　 /　i/　　　　,- ─ '
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀,_　＼　　　　　　　 ｀- 　　 　 　 　 /　　ﾄ- - -/
　　　　やらない夫が本気で戦ったなら、　　　　　　　　　　　￣ ヽ.>､　　　　　　　　　　　　　／　　　ヽr=''´￣
　　　　父上だって足下にも及ばないよ」　　　　　　　　　　　　　　 ',ﾊ＞-　 _　　　　　　　／　　　　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ:ﾊ　 ヽ｀　　ー　　　　　　　 /　　　　　／￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 r＝-､ >､　 ＿ ＿ ,,　　　 ./　　　　／　￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ＿＿／　　　　＿ヽ＿　 　 　　　./　　　／　　　＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　＼　　　／　　　　　　／ ..ー
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ＼''´　　　　 ｨ ' ´



　　　　　　　　　　　　　　　 /｀ヽ､
　　　　　　　 　 　 　 　 　 /_ 　　 ＼
　　　　　 　 　 　 　 ､-‐'´/　｀`丶､　ヽ_r┐
　　　　　　　　ﾉ^ｰ＜〉　 Ｌ＿＿＿_｀ヽ))ｰ'-､
　　　　　　　 ヽ＼ ∠_＿／　／／　,｀`ﾊヽ　 ＼　　　　「嘘は良くないのよ。
　　　　　　　　ハ ヽハ// // ／/／///ハ ヽ 　 ＼　　　こんな貧乏そうで地位も名誉もない
　　　　　　　く ＼､ }　|{ l|l,{∠メL//' 〃/ハ.　!　}／　　　男がお父様より強いはずないのー」
　　　　　　　人ヽ 〉' 亡>j〈;;'ｿ〉/ /'ノ////　}　} ハ
　　　　　　　 ＼)八),ト､〉　´ 　 ´ノ_ﾉ乂〃ハノ' r-ゝ
　　　　　　　　 　 ､ノ（{ﾉ 　 c　' 〈;;ソﾙノ ﾉ､ L,/
　　　　　 　 r ''',ニ=､'′ヽ､__　 _,.ｒく{ _∠__ }　}
　　　　　 .r┴/ ヽ>'⌒ヽノ/ ￣ヽＮ}入ﾆ＜（乙、
　 　 　 　 ﾄ､_{ ｀'{　,. -┴v　{ 　 　ヽて｀ヽ}　￣
　　　　　〈ヽ　＞'"　　l　 | ノ　　／ .〉
　　　　　　V〈　　　　 l 　 !　　　　く
　　　　　　 }　ヽ　　　| 　 |／／ //
　　　　　　ﾉ　　ヽ　　 　　ト､ 　 { {=､、
　　　　 　 }　　　 ヽ　　　 |!{ ヽ　 |ﾄ､}}
　　　　　_ハ　＼　 >、　　　　　 / ヽ、
　　　／/　　ヽ＞'"　 ヽ、　 　／l|　ヽ＼

二１１６．

　　 ／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　 （ ⌒）（⌒)
.　|　　u　 （__人__)　　　　　「あはは………」
　 |　　　　　 |r┬|}
　 |　　　　　 |　| |}
.　 ヽ　　　　　｀ﾆ}
　　 ヽ　　　　　ノ
　　　/　　　 く　
　　　|　　　　 ＼
　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)､



冒険者にとっては財力こそその生死や戦力に関われど、地位も名誉も腕っ節には無関係である。
まあ、分からないだろうなぁとやらない夫が苦笑いを浮かべたので、
彼が隣に立っていた事を思い出した雛苺はハッと振り返り、少し申し訳なさそうにぼそぼそと言った。



.　　　　　　　　　　　　　　 ___ ＿
　 　 　 　 　　,.--r^Y^r＜: : : : : ＼
　　　　　　　に二ﾌﾞ⌒|￣＼: : : : : :＼
. 　 　　　　　レ'て_)（_弋_＿_）, =＝‐-ﾄ､
. 　 　 　 　 _/´ ｌi　　　､ ､｀¨¨{: : : : :_: : |ヽ
　　　　　f´/il|l | ｉ l　| ｉヽ　 ﾞ､: :./ l ヽ|　}
　 　 　　ﾉ'ｉ　l｜|l | ｌ_|__ｌ_|1ﾊ　ハ/　'! ／,小　　　「ちょ、ちょっと言い過ぎた？の………」
　　　　　{_|　l人|ｘ| ｌ l,ニ､川}/／／ l/／ 入　　　
　 　 　 　７ニヽヾ;　　Ｌハ 厶ィ´─〈/ ／_〉
　 　　　　{´三ヽ八　_　 u ∠二二下（廴)）
　 　 　　　￣）ﾉ7)）＼＿　ィ f三三〕ゝｰ‐'
. 　　　　　　　　　ィ ﾆ圷､ヽ/: : :_ｿﾉ:＼
　　　　　　　　 /:〈〈 //{: : 〉〉: : : : : : : :〉
.　　　　　　　r‐!/:.Ｖ/:ゞﾆ'ノ｣: : : : : : :/
. 　 　 　 　　j: ｣: : :}/: j/: :f: : : : : : :.:ﾊ
　　　　　　 /:/: ,.イ: :〃: :.:∨: : : : : :ノ
　　　　　／:/:./:::/: /|: : : :.,′ : : : : |
　　　 ／ : /:./:::/: ｲ::|: : : /: : : : : : :.|
.　 ／: : : /: :|／:./:|:::|: : / : : : : : : : |
／: : : : :/: : : : :.:{ : ヽ!: /: : : : : : : : :|

二１１７．

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,／/: :ヽ: : Y: /:､: : : : : : : :＼: : : : : : : : ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／: :/: : : ∧: : ;′1: : : : : : : : : l: : : : : : : : : :∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∠二ィ: : : : l::∧: :!:::::l: : : : : : : : : :|: : :ヽ: : : : : : :∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /.: : : : :|::::::∨::::::l: : : : : : : : : :l: : : : ∨: : : : : :∧
　　　　　　「嘘じゃないよ。　　　　　　　　　　　　　　　 ,r': : : : : : 「¨¨｀""¨1: : : : : : : : : l: : : : : ∨: : : : : :∧
　　　　　　それにやらない夫は　　　　　　　　　　　　 |! : : : : : : l 　 　 　 l: :;ｨ: : : :∧ : | : : : : : ∨: : :ヾ : ∧
　　　　　　父さんから学べないことを　　　　　 　　　ｲ!: : : : :i: : !.　 　 　 !:/ l: : :/　ヽ: ﾄ、 : : : : ∨: : : :＼;ﾊ
　　　　　　たくさん教えてくれるんだ。　　　　　　　　/l: : : :,∧:厶-‐､　　ﾚ'　!‐ナ―-ゞ! ヽ、: : : :i: : : : : :l ヾ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 !.:!: : ;ｨ: : ト1===ミ:、 　 l.:/彡＝=｀=ﾐ:､ヽ : : l.: : : : : |
　　　　　　世話になっているのはこっちだよ」 　　 .l.;ｲ : ;ハ ｲl:iﾞ '乍ミ1L..../;」i　ｨ卞ぅｘ､ ! ヽﾄ、:l: : : : : :|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .ﾚ'l: :/　 ﾘ |:|　 ﾋ;ﾘ |「￣"ﾞ1l　　ﾋｚﾘ｀ l l｀ゞ- ､.: : :lヽ:.!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾚ'’　　 ヾ ＿__ノ.'　　　ヾ: ､＿＿.ノﾉ　´rﾊ !:、:| ヾ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i￣￣ i　　　　　 ￣￣￣　　ムｿ:.;ﾊﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ､　　　　　　　　　　　　　r彡;〃´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　 ヾﾆフ　　　　 　 ﾉﾚ'´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　 　 ´ ,L. -‐ ､_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ . _　，　 　, ィ´　　　,.､二ミ:ｫ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,.-‐=ﾆj,.ィ'´　　 ／￣ "¨ヾ＼L、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _r'´　 レ"　　 _ﾆ=′　　　 二ﾆ= 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　rく ヽ 　 j　,-=ﾆ¨ 　 　 　 イ=‐- ､　 　 >"



それでも納得がいかない様子の妹に昨日の城での出来事を一部始終放して聞かせたのだが、
まだ彼女は疑惑の視線を投げかけている。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　/　　　　　　 !　　　 }ﾐﾒ､: :/: : ::ｨ: '::´:{{ハ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 /　　/　　　　 i　　　　 　 　 l　　　　 ゞ:V:_:ｨ'´: : _: : : :ﾒハ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　//　 i　　　　 乂. 　 　　　　　|　　　 　 ヽ: : : : ／iヽ￣ ｀　 i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 iｲ 　 l 　 　＿_ﾊ　　　 　 　　/　ｨ　　　　　>.／　 ,|ハ　　　　＼
　　　　　「怪しいのよ。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 {'i .　 l　　　从八ヾ　　､_＿ｨ＿/_i　　/　 |￣ 　　 |　 ＼　　　　＼
　　　　　　どうして昨日知り合ったばかりの　　　　 　 　 　 ',　　　　.li ｨ=ﾐﾒ､　　　 .//イ /￣〃　 /　　　　/　　　 ＼
　　　　　　サクラダ家にそこまでしてくれるの？」　 　　　　　ゝ､ﾊ　 ﾄ､ilけk}ヽ　 ／彳ミﾒ､ ィ' 　 ./　　　　/　　　　　　｀ｰ ､ _
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＞ >､', 弋ソ　 ｀"　 {{けオﾐ､イ.／　,　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／-'´￣ ト' "" 　　　　　 辷ツ　 〃彡''_.／ｲ　　　　　　　＿＿ _
　　　　　（もしかしてお兄様を狙う間者！？　　　　 　　　/　　ヽニ彡､　　 ､　　　　　"" 　 イノイ≦　 il＿　,,　ィ ''´￣ ￣ ｀
　　　　　　きっとそうなのよ！）　　　　　　　　　　　　　　　{　-＝彳_ィハ　　 -(　 　 　　　　　ﾉ＿　　　　＞￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 Y´　,,_≠〃フ＞､　　　　　　　　イー＜＞_/ハ￣ ＞- ､　　　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽイ三＝≠＝-､ ー -,―　 ´　 |＞､ノﾌ｀ー -ミ''ー　､ _ ｀ ー'
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 >=／: : : : : : ＞イi　　　　　 >=-''´￣ヽ＿}}　　　　 ＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／: : : : : : : ´: : :il　_. . .ｨ: ':´/: : : : : : : : :ヾー＝-'' ´

二１１８．

　　　　　 　./　 ＼/　　　 ./　　　　　　 .}　　 |ヽ　 .|　 　 !　 ｌ　l　　! l |
. -=≧ﾁ去左≧ﾐkl＼ :／/　　　　　　　/!　　.|　j／!＼ .丶､/ ,/　 / ,'
　　　x彳丁|　./ ア㍉＼/　　　　　　 ./　|　　j／,,斗≦= ./ヽ'　/ /
　.＿＿　|　∨〃　{:.外､ヾ/　　　　　/　j_,ｨ≦气Ⅳﾄﾐ　／　 ／／　　　　「正体見たりなの！
. ´_ニ＝‐｝ 　∧.　 V小ヾj{＼_,､/／　 /升'＾ﾊ　jｼﾘ　￣´／ >
二_.‐＝ﾆ>.　 {i ﾍ　イ刋　　　　　　　 .ｲ{　　ﾉﾘ　　　 二_ ‐＝｝　　　　　　間者やらない夫、
. ＿,二ニ＝ _弋ﾋ辷ユｿ　　　　　　 　 {ｉﾄイjソ　　　 {＿,二ニj　　　　　　何を企んでるかは知らないけど
　 . :l 　 　 　／/／/／　　　　　 　 　 `ー='ｰ　　 　 |／　彡　　　　　　　お兄様に適うはずがないの！
_⌒ー＝＜二 　 　 ＿　　 　 　 　 　､　／/／/／　 |⌒ー＝》　　　　　　観念するのよ！」
　｀二ﾆ＝‐　　　 , ﾍ／｀ヽ､_＿＿＿＿_,　　　　　　 ,j｀二ﾆ＝‐
.＝´､＿:.:ヽ.　 ／ 　　 　　　 　　 ｀ヽ:: /　　　　　 イ ´､＿
. ノ　　｀＞: `（　　　　　　　　　　　　∨　　　　＜└-´ノ　｀＞
."ｰ＝≪:.:.:.:.:.:.ヽ　　　　　　　　　　／　　＜ : :.∧　 "ｰ＝≪
　　　　〉:.:.:.:.:.:.:.:ﾍ＞　　　　　　_∠z＜ : : : : : : :.∧ ＼　　　〉
　　:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. ∨＼¨ア￣　　　|: : : : : : : : : : : ∧　＼



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　／　ノ　　＼ ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　|　 （●）（●）　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　　　　　　　 |　u.（__人__）　.|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 r､ 　　 　　|　　 ｀ ⌒´ 　.|
　　　　　　　　「えっ？」　　　　　　　　　 ,.く＼＼r､　　 ヽ　　　　　　ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼＼＼ヽ}　　　ヽ　　　 　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 rヽ ` 　 ヽ　　/　　　ｧ'´ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 └'｀{　 . 　 ＼.|　　　/　 　i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ､._　　　ヽ､_,r'　　　.|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ヽ､　　　／' 　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｀'ｰ'´



突然矛先を向けられたやらない夫は目を白黒させて俺？と戸惑ったのだが。

二１１９．


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ＞'´　／　　 ∧　 　 ｜　　　　i|　ヽ.　 　 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　／ 　 ／ 　 　 /::::ヽ　_,斗:.:.:.: : 　 |　　 !　　:...　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　 〉 　 　　　　::ー‐^´¨　|:.: : !:.:..　ﾄ､　 |　　 :.:.:...　: :..｀ー-､
「ヒナ！　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 |　　　| 　ｉｌ　　::|　　 　 　 ! ::∧:. :. 　,=‐ｉ　　　:.:.:.:.:...:.:.:..:.:.／
僕の話の何を聞いていたんだ！ 　　 　 　 　 　 　 /　.:.:.:.:|　 i| 　 ::| 　 　　　 | / ,ｨ|,.イ´__ ∧　 ..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ :::／イl|　 ｌ|　 ::|=､＞ｰ=､ ｉ′|:rレ弍¨ヽ ﾄ :.:.:.:.:.:.:.:.:.／
父さんだってやらない夫の事を　 　　　　　　　　./::／　 /　　　|　　|´戈¨Ｔ |ﾄ==､||　弋__ソ‐|/.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼
信頼しているんだぞ、　　　　　　　　　　　　　　　ﾚ'゜ 　 /　／　 iヾヽ! 辷_ソ｣|　　 ヽ=＝＝=='　ﾏヽ.:.:r-‐'´
怪しい奴を客として招待するはず　ｒr‐、 　 　 　 　 　 レ'　ﾚ'〉　! ヾﾆ==＝ ′〈　　　　 　 　 　 'ノ::;;;>
ないだろう！」　　　　　　　　　　　　　ﾄ'　| 　 　 　 　 　 　 　 　 ￣ヾﾇ、　　　　　 ｀　　　　　　　,/‐'´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　| 　|　　　　　　　　　　　 　 　 ￣ヽ　　 　 　 ー‐　　　 　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..ﾉ 　l'⌒!　　　　　　　　　　　　　 　 ＼　　 　 　 　 　 _, ィ´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　´　ノ^ヽ '､　　　　　　　　　　　 　 　 　 ｀¨ﾆt-　　-‐'　ﾄ-┐
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／｀ヽ.ヽ、　　　　　　　　　　＿　 　/´iイ　　　　　 |/　ヽ―-- ､__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ‐'´｀ヽ. ｉ､　　　　　 　 　 ／i　 ゞ7″ | ′　　 　／　 　 |　　　 　｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼ 　　イ-' 　ヽ　　　　 　 ／　 i　　/　,ﾍ |＿___,_／ |―､　 |　　　　/　　ヽ.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ.　 ″　 　 ｌ　　 　 ／-‐'´ | .//／　ヽﾄ-―/ニ,ﾉ　　＼| 　 　 /　　 ＼'､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　 　 　 l.　,.-‐' 　 　 :　ﾚ' ′　　く !　 //　　　　　　　 　 / 　 　 　 ヾ、



　　_＿_
　　{l:.:....　:￣:ｌ}^^'ヽ、　　 ,ｨ= ､_
. 　 {l:.:　 　 :.:ｌ}:.:､:.:.:.:.ヽ_〃　／.:｀^冖=.､、
　 〃　　　..:〃-:-`‐:.:.:{|:.Y__:_:_:_:_:_:.:.:.:〃
,.ィl　　　　 :.ｌ} , ｨｱ´丁ﾌヽしヽ丁ｽ:.:.:.:.ｌ}
　ア　￣｀`┴／　　　　　　　　　 ヽヽｊ｝
:,:フ:.:‐.､　:.〃/ 　 　 　 /　　　　 　 ヽ>
　　　 .:/ヽ'' /:　 　 　 / /　　　　　　 ヽ
　　..:.:.ｌ:l.:.:　l:.: 　 :　 / /:　　 　 　 i　　 ',
､:.:.:.:.:.:|:l:.:.:..!ｌ.:　 :.:　!l ｌ.|.: 　: 　 　 l　 　 |　　　　　「でも、でも～………」
:.:＼:.:.:ｌ:l:.:.:.:l !.:__:._:_l_l_l_レ .:|　 　/　:/.:.!|
:.:.:.:.:Y_ヽヽ､ヽヽﾄ､Ｎ ｌ:ｌ l:.:.:/:/､〃:.:/:.:/ﾘ
ニ._-}二二ア ｃ＝=ュ` ∨_/∠7／イ、
‐-:.:.:_Y二ｱ､　 " " "　　'////ヽｰァ:.:.＼
三-_　 て＼_丶、 　 ‐-_ヽ!｣｣ﾉ_ l､￣:.＞′
'　　　　　　 ヽヽ/T二´:..｀Y|ヽｭ　lヾく
:.:...　:. l.;.:..　./ /Llノﾌ´ヽ,く |ヽ ヾｭ!. ヾｭ
へ/:.:` 　 ＜/_/|ノｭ　　 }　,l　:.:ヽ､:ヾｭｌ}
､/:.　　　　.:　／｀ヽヽヽﾉ　l l :.:.:.:.:.:ヽ／
,:ヽ､:.:.......;.-/　　 　.ヽヽﾄ:.:.l　　 .:.:.:/
:.:.:.:.:ヽ:.://　　 ..:.:.:.:.:.|::|:ｌ}､:.:.:.:.:.:.:/
　　:.:.:.〈:.: 　 　 ..:.:.:.:.:|::|:|}、｀` ｰ′



聞き分けのない妹にとうとう兄の怒りが爆発した。
滅多にない、ジュンの怒声に縮み上がった雛苺は泣きそうな顔をして俯くが、
それでもまだ納得しようとしない。

二１２０．
そんなやり取りを見ていたやらない夫は、息を吐いたジュンにそんなに強く言うなよと肩をすくめ、雛苺に微笑んだ。



　　　　　　　　　　　　　￣￣ 　 ､
　　　　　　　　 ´　　　　　　　　　 ＼
.　　　　 　 /　　　　　　　　　　　　　 ＼
　　　　　 /　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ　　　　　　　　　　「ジュン。
　　 　 　 ｉ　　　　　　　　　　　　　　　　　丶　　　　　　　　　　妹さんは寂しいんだろ」
　　 　 　 l　　　　　　 ／ ￣　　 　 　 　 　 丶
　　 　 　 |　　_＿ 　 　 　 　 _　ヽ　　　 　 　 丶
　　 　 　 ヽ/　　　　　　 ｉ　ｲ::::ヽ l　　　　　　　丶
　　　 　 　 ヽ　 　 _　 ヽ ゝ_ゞ::ノ '　　 　 　 　 　 ',
　　　　　　　丶ｉ ｲ:::ヽ　l　 　 ｀ヽ　　　 　 　 　 　 ヽ
　　　　　　　　 ゝ ゞ ',　ヽ _　　丿　　　　　 　 　 　 ＼‐､-..､
　　　　　　　　　ヽ　 ゝ ﾉ , ‐ ´　　　　　　　　　　　 　 ソ:.:.:.:＼
　　　　　　　　　　ヽ　　´　 　 　 　 　 　 　 　 '　　　 /:.:.:.:.:.:／＼
　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　　　　　　/　　 ／:.:.:.:.／:.:.:.:.:.:.ヽ､
　　　　　　　　　　　　 ＼　　　　　　　　　　/　 ／:.:.:.:.／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ヽ､
　　　　　　　　　　　　 　 ヽ　　　　 　 　 ／　 /:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ヽ､
　　　　　　　　　 　 　 　 　 ヽ　_＿　 ィ　　　/:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:



彼に他意はなかったのだが、真っ直ぐで黒々とした瞳に見つめられた彼女は
図星を突かれた事もあって、頬を真っ赤に染めるとぷいとあっちを向いてしまう。



　　　　　　　　　　　fzfzィ彡､-‐ｧ´　　　　　　　　　　 ヾﾂｆz
　　　　　　　　　ｆｚｲ¨"　　.:.:{　.:.ixz､..__　　　　　　　.:.:.: Yゞfzfzx
　　　　　　　 fzﾂ　　　　 ,ｨf厂丁`ヾfzゞfzx:､　　 　 .:.:.:.:|:.　｀ヾﾐz
　　　　　　　 Y　　　　xfﾂｲ' ﾊ ヾ:､ ヽゝ八fz小、 　.:.:.:.:.|'　 _＿__
.　　　　　　　 |　　 xfﾂ"く　ﾑ┤ ﾄｽノ´　　　fz圦　 .:.:.:.:.|　 「ヾ、
　　 　 　 　 ,ｨ! 　 ｲfxﾚ1辷i　 し’ 、 :､　　 　 ﾞfzX　.:.:.:人_.:|＼ `
　　　　fxzﾚ"|!　,f才ﾝ 　 ヾ　　i! i| ﾊ　ヾ:、 　 八fz}_／　 ヾﾘ　ヽ
　　,ｨxfイ.:　.:| rf;{"　i　　 ﾊ　　i! |i　ﾊ　 ヽ:、 ｲ　j;｝i 　 ／' 　 )　ﾉ
　　{f∠ィ' ¨ヾ:ｲｧ'　 l 　　i! il　 i| i|!　 }!ヽ　)}　i!　{i从 ′　 ／ }
　　　　　　　 /,ｲ{　 i{　　i|　!i　 i! l!i　 ハヽ_j斗!　ｊヾ ヽィ　　,ｲ{　　　　　　「うー」
.　　　　　　 //i {!　 i|　i　il　i|　 |j､l iｧﾅ乃工ﾉﾘ ｲ　)} /'　 イ　i,ｨ
　　　　　　〈' {i八　い:､ヽ i!_,.!i;　ﾘﾊﾘjｲ;乍夾ﾊ〉ﾘ ｲ〃 ／　 ／/
　　　　　 ／ﾒ{　 ヽ ヽミ;匕ヾハiﾉ　ﾘ ｿ　ヾﾆ''’厶┴ュ/　／ ーｧ
　 　 　 ,:／ 大ｰ:､ ヾ ヾミ;ｲ示ﾐj　 　 　 　 "" ら≡≠）/ムく二_
　　　　;厶-―‐-､｀ヾ. _ﾘ"ヽ ゞ’　　,　　　　-=≦ヲ く＜=＝ｧ/ﾑ
　　　　　r‐-｀二ﾆ}　ﾉ ﾉ /'/　､""　　- ‐　　 ／､_;ノ てﾑハ（_ノj
　　　　　 ￣｀ヾｰｬ-ｧ､{斗ｧZ＞≧=ｰ- ..__..イ:.　　／´: : : : : : : :｀ヽ
　　　　　 ゞ=＝ミｭ､〉〃ム三≧ヾく二ゝ _j'' 　 ／: : : : : : : : : : : :
　　　　　　　　　　 半ｧ／: ｀てﾗ’_.=≠＞个≠!: : : : : : : : : : : : : :
　　　　 　 　 　 　 ({／: : : : : : : {:r''" /,ｲ:i ﾄヽ |.:.:.:.:.､: : : : : : : : : :
　　　　 　 　 　 　 〈.:.:. .:.:. .:.:.:.:. |:{: ://:./ﾘ }:jヾヽ.:.:. :ヽ: : ヽ.:.:.:.:. :
　　　　　　　　　 　 ヾ:ヽ.:.:.:.:.:.:.:.ヾ彡': :i:/ i:::!.: :ヾ>: 〈::': : .::::＼.:.:.:.
　　　　　　　　　　 ／: ﾉ: : : : : : : i : : :,ﾒ　l:::i : : ﾉ: : :ｲ: :i : : : : : : :
　　　　　　　　　 く: : :': : : : : : i : :{!: :./!　 |:::! :Y:::::/: j: ::|: : : ::ﾍ: :
　　　　　　　 　 　 ｷ: : : : : : : :|: : i! /::j 　 !::{ : |:::/: :': : :|: : : : :::j : :
　　　　　　　　　　 入: : i: : : :.:|: : ': {:::{ 　 |:::| : Ⅵ: : : : :.!: : : : : : : :

二１２１．
それで会話が止まったので、ガチガチと震えているジュンを呼んだやらない夫は
焚き火の跡に薪をくべると発火の粉を振りかけた。

┌───────────────────────────────┐
│※発火の粉：硝石、硫黄、木炭などを一定の比率で混ぜた粉。　　　　　　　.│
│　　　　　　　　火種に振りかける一気に燃え上がるため注意が必要。　　 　 │
└───────────────────────────────┘



　 　／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　 （ ●）（●）
.　|　　　　 （__人__）　　　　　「とにかくジュンは暖まれよ。
　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　ずっと水に浸かってたんだろ」
.　 |　　　　　　 　 }
.　 ヽ　　　　　 　 }
　　 ヽ　　　　　ノ　　ｍm
　　　/　　　￣￣￣　つﾉ
　　　|　　　　|￣￣￣



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : |: : : : : |: : : : ヽ: : ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　: : : : : : : : : : : : : : : :./＼: : : : : ﾄ､: : : : ﾄ､: : /: :∨ :.l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　: : : : : :∧: : /──{/､.　 ＼ : : |.-＼: : |ｰ∨､: : : : : |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　: : : : :./　1/　　　　　.i　　　l＼:|　　 ＼|　　　|: : |＼;!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　: : ,､: :{　　 　 　 　 　 |-‐‐-|　　　　　　　　　.|:ヽｉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　: :{　ヽ'　　 　 　 　 　 !　　　|　　　　　　　　　ﾊ:_}
　　　　　　　　　　　「は、はくしょん！」　　　ﾊヽ　ヽ＿＿＿＿＿,ﾉ　　　ヽ＿＿＿＿___ﾉ　}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ハ: :｀-',　 ! | | 　! !　　　　　　' ! |' | |　川/　ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 〉: :.:∧　　　〃'ー──-----､　　　 ,ｲ"´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣　　＼　 ヽ＿＿＿＿＿_丿　 ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＞､　　　　　　　 　,イ´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,────､＿_｀ ,‐──┬'"´　＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　| 　 !　　 　 |￣l￣　 　 ｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　　　 |　　ｰ──' 　ﾘ　　　　　　}



思い出したように大きなくしゃみをした彼は燃え上がった焚き火で暖を取り始め、
雛苺も様子を窺いながらその隣にやってくる。

二１２２．
発火の粉が完全に燃え切り火力が安定した事を確認したやらない夫は
早速役に立つなと道具入れからコッヘルを取り出し、川の水で軽く洗い流してから
ミルクと蜂蜜を入れて横に渡した鉄柱へかける。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヾ.v.>
　　　　　　　　　　　　　　　　　／／.| |
　　　　　　　　　　　　　　　／ く　　.| |
　　　　　　　　　　　　　./'"／ 丶　 .| |
　　　　　　　　　　　／ ﾉl.（---ﾍﾞ、 .| |
　　　　　　　　　／／　ﾍx-----ｨ’ .| |
　　　　　　　ヾ.v.>　　　|　　　 　.!　 .| |
　　　　　　　　| |　　　　ﾍ..＿__,.ｨ　　| |
　　　　　　　　| |　　　 ）　　　）丿　,,|,」,
　　　　　　　　| |　　　（( ( 　　ノノ
　　　　　　　　| |　　　　　∴∵
　　　　　　　　| |　　　／/》||ヾミ＼　　ﾊﾟﾁﾊﾟﾁ…
　　　　　　 　,,|,」,

二１２３．
くつくつとミルクが煮える音に、ガチガチと言う歯の根の合わない音が混じる。
完全に体温を失って震えているジュンを見て、片目をつむったやらない夫は注意じみた事を口にするが、



　 　　 ／￣￣＼
　 　／　　 _ノ　　＼
　 　|　　　 （ ー）（●）
.　 　|　　　　 （__人__）　　　　「頑張るのは良いけど
　 　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　風邪でもひいたら大変だろ」
　 　.ｌ^l^lｎ　　　 　　}
.　　 ヽ 　 L　　　 　}
　 　　ゝ 　ﾉ　　　ノ
　 　／ 　/　　　 ＼
　 ／　 /　　 　 　　＼
. /　　/　　　　　　|ヽ、二⌒)､
　ヽ＿＿ﾉ



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,／/: :ヽ: : Y: /:､: : : : : : : :＼: : : : : : : : ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／: :/: : : ∧: : ;′1: : : : : : : : : l: : : : : : : : : :∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∠二ィ: : : : l::∧: :!:::::l: : : : : : : : : :|: : :ヽ: : : : : : :∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /.: : : : :|::::::∨::::::l: : : : : : : : : :l: : : : ∨: : : : : :∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,r': : : : : : 「¨¨｀""¨1: : : : : : : : : l: : : : : ∨: : : : : :∧
　　　　　　　　「ああ、うん。　　　　　　　　　　　　　　　　 |! : : : : : : l 　 　 　 l: :;ｨ: : : :∧ : | : : : : : ∨: : :ヾ : ∧
　　　　　　　　　途中でそう思ったんだけどさ。　　　　　ｲ!: : : : :i: : !.　 　 　 !:/ l: : :/　ヽ: ﾄ、 : : : : ∨: : : :＼;ﾊ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/l: : : :,∧:厶-‐､　　ﾚ'　!‐ナ―-ゞ! ヽ、: : : :i: : : : : :l ヾ
　　　　　　　　　もし風邪をひいたら　　　　　　　　　 　 !.:!: : ;ｨ: : ト1===ミ:、 　 l.:/彡＝=｀=ﾐ:､ヽ : : l.: : : : : |
　　　　　　　　　治療の霊薬貰えば良いかなって」　　 .l.;ｲ : ;ハ ｲl:iﾞ '乍ミ1L..../;」i　ｨ卞ぅｘ､ ! ヽﾄ、:l: : : : : :|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .ﾚ'l: :/　 ﾘ |:|　 ﾋ;ﾘ |「￣"ﾞ1l　　ﾋｚﾘ｀ l l｀ゞ- ､.: : :lヽ:.!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾚ'’　　 ヾ ＿__ノ.'　　　ヾ: ､＿＿.ノﾉ　´rﾊ !:、:| ヾ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i￣￣ i　　　　　 ￣￣￣　　ムｿ:.;ﾊﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ､　　　　　　　　　　　　　r彡;〃´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　 ヾﾆフ　　　　 　 ﾉﾚ'´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　 　 ´ ,L. -‐ ､_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ . _　，　 　, ィ´　　　,.､二ミ:ｫ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,.-‐=ﾆj,.ィ'´　　 ／￣ "¨ヾ＼L、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _r'´　 レ"　　 _ﾆ=′　　　 二ﾆ= 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　rく ヽ 　 j　,-=ﾆ¨ 　 　 　 イ=‐- ､　 　 >"



しれっと答えた彼の覚悟が昨日と異なっている事を気づかされた。

二１２４．
その覚悟があるなら良いだろ、と手渡したミルク入りのマグカップをふぅふぅと啜るジュンを眺め、
顎に手をやって少し考え込んだ。



　　　　 ／￣￣＼
　　　／　　 _ノ　　＼
　　　|　　　 （ ●）（●　　　　（さっきの動きは………）
　　　|　　　 　 （__人__）
　　　|　　　　　　　　ﾉ
　　　 |　 　 　 ∩ ノ ⊃
　　／ 　 　 .／　＿ノ
　 (.　 ＼ ／　.／_ノ │
　　＼　 “　／_＿_|　 |
.　　　 ＼／ ＿＿＿ /



先程、雛苺に全く反応しなかったジュンは、後ろから投げつけられた木刀には反応した。
刹那の動きを思い返し、その切っ掛けとなったのが何だったのかを分析しなければならない。



　　 ／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　 （ ー）（ー）
.　|　　　　 （__人__）　　　　（気配なら繰気技術への目覚め、
　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　音なら集中力の証、
.　 |　　　　　　　ｎｌ^l^l　　　　両方なら………）
.　 ヽ　　　　　 |　　 ﾉ
　　 ヽ　　　　ヽ　く
　　　/　　　　　ヽ　＼



もしかしたら成長の伸びしろのみならず、非凡な才能が隠されている。
三十秒ほど目を閉じていたやらない夫はやがて、即断せずに少し話を聞いてみる事に決めた。

二１２５．


　　 ／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　 （ ●）（●）　　　　「ジュン。
.　|　　　　 （__人__）　　　　　さっき俺が投げつけた木刀に反応出来たよな。
　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　何か掴めたのか？」
.　 |　　　 　　　　 }
.　 ヽ　　　　　 　 }
　　 ヽ　　　　　ノ
　　　.>　　　 <
　　　|　　　　 |
　 　 |　　　　 |



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,／/: :ヽ: : Y: /:､: : : : : : : :＼: : : : : : : : ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／: :/: : : ∧: : ;′1: : : : : : : : : l: : : : : : : : : :∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∠二ィ: : : : l::∧: :!:::::l: : : : : : : : : :|: : :ヽ: : : : : : :∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /.: : : : :|::::::∨::::::l: : : : : : : : : :l: : : : ∨: : : : : :∧
　　「………ああ、さっきの？　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,r': : : : : : 「¨¨｀""¨1: : : : : : : : : l: : : : : ∨: : : : : :∧
　　　よく分からないよ、身体が勝手に動いてた」　　　　　 |! : : : : : : l 　 　 　 l: :;ｨ: : : :∧ : | : : : : : ∨: : :ヾ : ∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｲ!: : : : :i: : !.　 　 　 !:/ l: : :/　ヽ: ﾄ、 : : : : ∨: : : :＼;ﾊ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/l: : : :,∧:厶-‐､　　ﾚ'　!‐ナ―-ゞ! ヽ、: : : :i: : : : : :l ヾ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 !.:!: : ;ｨ: : ト1===ミ:、 　 l.:/彡＝=｀=ﾐ:､ヽ : : l.: : : : : |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .l.;ｲ : ;ハ ｲl:iﾞ '乍ミ1L..../;」i　ｨ卞ぅｘ､ ! ヽﾄ、:l: : : : : :|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .ﾚ'l: :/　 ﾘ |:|　 ﾋ;ﾘ |「￣"ﾞ1l　　ﾋｚﾘ｀ l l｀ゞ- ､.: : :lヽ:.!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾚ'’　　 ヾ ＿__ノ.'　　　ヾ: ､＿＿.ノﾉ　´rﾊ !:、:| ヾ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i￣￣ i　　　　　 ￣￣￣　　ムｿ:.;ﾊﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ､　　　　　　　　　　　　　r彡;〃´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　 ヾﾆフ　　　　 　 ﾉﾚ'´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　 　 ´ ,L. -‐ ､_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ . _　，　 　, ィ´　　　,.､二ミ:ｫ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,.-‐=ﾆj,.ィ'´　　 ／￣ "¨ヾ＼L、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _r'´　 レ"　　 _ﾆ=′　　　 二ﾆ= 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　rく ヽ 　 j　,-=ﾆ¨ 　 　 　 イ=‐- ､　 　 >"

二１２６．

　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　／ ヽ､.　_ノ　＼
　　　　　　　|　 （●）（●）　|　　　　　　　　　「重要な事なんだ、よく思い出せ。
　　　　　　　|　　（__人__）　｜
　 　 　 　 　 |　　 ｀ ⌒´　　|　　　　　　　　　　あの時、避ける事も出来たはずだ。
　　　　　　　 |　　　　　　 　}　　　　　　　　　　どうして振り返ってたたき落とす事を選んだ？」
　　　　　　　 ヽ　　　　　 　}
　　　　　　　　人＿__＿_ノ"⌒ヽ
　　　　　　／　　　　　　　　　　　＼
　　　　　/ 　　　　　　　　　　 へ　　＼
　　　　 （　　ヽγ⌒)　　　　　| 　＼ 　 ＼



やらない夫の真剣な声で目を閉じたジュンはうーん、と思い返し、かなり間が空いてから
一つ一つ確かめるように答える。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ＞'´　／　　 ∧　 　 ｜　　　　i|　ヽ.　 　 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　／ 　 ／ 　 　 /::::ヽ　_,斗:.:.:.: : 　 |　　 !　　:...　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　 〉 　 　　　　::ー‐^´¨　|:.: : !:.:..　ﾄ､　 |　　 :.:.:...　: :..｀ー-､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 |　　　| 　ｉｌ　　::|　　 　 　 ! ::∧:. :. 　,=‐ｉ　　　:.:.:.:.:...:.:.:..:.:.／
「やらない夫が夕べみたいに　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 /　.:.:.:.:|　 i| 　 ::| 　 　　　 | / ,ｨ|,.イ´__ ∧　 ..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／
　殺気をぶつけてきたのは分かった。　　　　　　　　　/ :::／イl|　 ｌ|　 ::|=､＞ｰ=､ ｉ′|:rレ弍¨ヽ ﾄ :.:.:.:.:.:.:.:.:.／
　あからさまだったから」　　　　　　　　　　　　　　　　./::／　 /　　　|　　|´戈¨Ｔ |ﾄ==､||　弋__ソ‐|/.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾚ'゜ 　 /　／　 iヾヽ! 辷_ソ｣|　　 ヽ=＝＝=='　ﾏヽ.:.:r-‐'´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｒr‐、 　 　 　 　 　 レ'　ﾚ'〉　! ヾﾆ==＝ ′〈　　　　 　 　 　 'ノ::;;;>
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾄ'　| 　 　 　 　 　 　 　 　 ￣ヾﾇ、　　　　　 ｀　　　　　　　,/‐'´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　| 　|　　　　　　　　　　　 　 　 ￣ヽ　　 　 　 ー‐　　　 　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..ﾉ 　l'⌒!　　　　　　　　　　　　　 　 ＼　　 　 　 　 　 _, ィ´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　´　ノ^ヽ '､　　　　　　　　　　　 　 　 　 ｀¨ﾆt-　　-‐'　ﾄ-┐
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／｀ヽ.ヽ、　　　　　　　　　　＿　 　/´iイ　　　　　 |/　ヽ―-- ､__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ‐'´｀ヽ. ｉ､　　　　　 　 　 ／i　 ゞ7″ | ′　　 　／　 　 |　　　 　｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼ 　　イ-' 　ヽ　　　　 　 ／　 i　　/　,ﾍ |＿___,_／ |―､　 |　　　　/　　ヽ.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ.　 ″　 　 ｌ　　 　 ／-‐'´ | .//／　ヽﾄ-―/ニ,ﾉ　　＼| 　 　 /　　 ＼'､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　 　 　 l.　,.-‐' 　 　 :　ﾚ' ′　　く !　 //　　　　　　　 　 / 　 　 　 ヾ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 |　　　　.ﾄ''　　　　　　! .|　r―┐　 | ,//　　　　　　:. ｌ　 /　　　　　　　｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l　 　 　 l､__　　 　 　 ﾚ' 　|　　|　　i/o’　 　 　 　 :.:. !　|　　　　　　　　 　 ヽ、

二１２７．


　　　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　 rヽ　　／　ノ　　＼ ＼　　　　「木刀については？」
　　　　　　　　 i　!　　|　 （●）（●）　|
　　　　　 r;r‐r/　|. 　|　　（__人__）　 |
　 　 　 〈_L (｀ヽ .}　　|　　 ｀ ⌒´　　ﾉ
　　　　　l｀ （ ｀`/　.　 |　　　　　　　 }
　　　　　ヽ 　　l　　.　 ヽ　　　　　 　}
　　　　　　|,. 　 l　　 /⌒　 　ー‐　　ｨ ヽ




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |:.:.:.:.∧:.:|　　　 |:.::∧:.:.:.:.:.| ≧:.:L-＼:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 }:.:.:.:.ヾ:.:.:',　　　|:./　.V:.:.:.:|ﾆ-=＝＝=＼:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 >:.:.:.:.:.|ヾ:.V=＝/ニ　 V:.:.:i{　ゞテ＝ァ　||＼:.:.:.ヽ:.:.:.:.:.:.∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /:.::V:.:.:.:ﾚ'´>=ﾆ示 ヽ､＿V:.||　 {辷zり　 .||　ﾚr -､V:.:.:.:.:.:∧
「そっちはよく分からないけど………　　　　.　 　/:.:.:.:.:V∧:.r'´ /ひｮリ ||￣ .ヾ∧＿＿＿ //　　／ .}:|:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
　静まりかえった中、　　　　　　　　　　　　　 　　/:.:.:.:.:.:.:..:/ヾ::>　 ゞ' ´　|| {　　　 ￣￣￣￣　　 入 ソ/:.:.:.:._＿／
　後ろから風を切る音が聞こえたんだ。　　　　￣￣￣ |:.:.:∧ヽ＿ -=''´ ヽ　　　　　　　　　 　/　／:.:ヽ￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾚ'´ ヽ |　　　　　　　 ＿　　　　　 　 /-'´／￣
　気になって振り返ったら、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　 　 ￣_　　　 　 　 　/￣゛゛
　目の前に何かが飛び込んできた。　　　　 　　　　　　　 　 　 　　＼　　　　　　　　　　_　ィ|
　木刀に当たったのは多分偶然だよ」　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｀ 　 ､　　　　 イ　　　ｙ入
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ニi　´　　　　／　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／/　}　　 　　/　　　　|＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　/　/　ﾉ　　　　/　　　　　|　 ￣ ' - ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/　　V'´￣￣ ../　 　 　 　 |　　　　　　｀ ' - ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／/　 　/::::::::::::::／＿＝=-､＿ |　　　　　　 　　/ヽ

二１２８．


　　 ／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　 （ ー）（ー）　　　　（なるほど、ジュンはゾーン持ちなのか）
.　|　　　　 （__人__）
　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ
.　 |　　　　　　　ｎｌ^l^l
.　 ヽ　　　　　 |　　 ﾉ
　　 ヽ　　　　ヽ　く
　　　/　　　　　ヽ　＼



これで答えが得られたやらない夫は、ジュンが集中力に対して非凡な才能を持っていると知った。
訓練を積み重ねて到達する超集中の世界でなければ、雑音を遮断して必要な情報だけを感知する事は出来ない、
それを今の時点で発揮していると言うことは先天的な能力なのだろう。

どうりで教える事への吸収も早いはずだと色々納得しできたが、
八日後に彼の相手をしなければならないシンジが少し哀れになった。

二１２９．


　　　　 ／￣￣＼
　　　／　　 _ノ　　＼
　　　|　　　 （ ●）（●
　　　|　　　 　 （__人__）　　　「昨日に比べて格段の進歩だろ。
.　　　|　　　　　　　　ﾉ　　　　明日には魚も捕れるようになるだろうな」
　　　 |　 　 　 ∩ ノ ⊃
　　／ 　 　 .／　＿ノ
　 (.　 ＼ ／　.／_ノ │
　　＼　 “　／_＿_|　 |
.　　　 ＼／ ＿＿＿ /



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〃::::::::/::::ヾ:::i::::ヽ:::::::::::::::::::::ヾ:::::::::::::::::::＼::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／:::::::::/:::::::::i:::｀:::::::}::: ﾄ:::::::::::::::::::i:::::::::::::::::::::::ヾ:::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/:::::::::ｨ/:/:::::::: L:＿ ∧:ﾊ::::::::::|ヾ:: l>､::ﾐ､:::::::::::::::V:＿:::::::::::::::::::::::::i
　　　　　　　　「そ、そうかな？　　　　　　　　　　　　　 .　/:::／ /::/::::::::::::ﾊ　　　 il　i::::::: l　刈　　≧ﾐ> ､::::::::<　 ヽ::::::::::::i＼ |
　　　　　　　　自分では実感ないけれど………」　　　../／　./:::::i::::::::::::ﾄ:ﾊ 　 　 　 l::::://_ ィ=彳司 ||＝=￣｀{　i }:::::|＼ゝ. ｀
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i ::::::ﾊ:::::::::::|＼ゝ＿__　 |:/　r/ ´ ｲt jﾊ ||　　　　ﾉ //::::::i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l:::::::::::ヾ:::::::|::::::ヾ´ ≧ミ､ィ'''ヾ　　 ゞ┴ﾉﾉ　　　　｀./:::ノ｀
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |::::::／i::＼:::V::::彳 ｨ芯､}}　　 ｀ミ＝＝''　　　　　r'´:/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |:::/　　|::::::>:K ヾ､　_ゞノ　, 　　　　　　　　　　　 |／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |/　　　ヽ/　ヾ　｀ーt　　　｀ _　ノ ﾌ　 　　　 /　 |　＿＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｀　　　　　　ヽ　　　｀ー´　　　　　　 ／￣　　　 _　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀　 ､　　　　　ノ　　/　　　　 ／　￣￣ ヽ＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＞-イ |　　〃　　 .／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /￣il　 /／　／-= ' ´　 ＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　 V/ ヽ=.//　　　／￣￣￣＞＝-　､


それでも達人のお墨付きに口元は自然にほころんだが、同時にジュンも一つの確信を得る事となった。

二１３０．
過去の伝承を伝える詩にあった。
自分のみならず、他人の才能をも満遍なく発揮、覚醒させ、さらにはその限界すら突破させる希有な存在。



　　　　　　　　　 ＞ -:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∧ /:.:.:|
　　　　　　　　　 >:.-:.－:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∧i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀´:.:./
　　　　 　　 r‐ ':.´:.:.:.:.:.:.:.:.::./:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:|:::ヾ:.:.／::|:.:.:.:.:.:.:／
　　　　　　/:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:..|:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:|￣｀''- ､;i:.:.:.:.:.:.:.:.￣ヽ
　 　 　 　/:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:ﾊ:.:.:.|　　　　　 |∧:.:.:.:.:|:.:.:.:.:}
　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::V:.:.:./ -V:|_　　　　//:::.:.:.:.:.:K:.:.:.:|
　　 ／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∠V:./={´rvミ､=､_,, ,/　|:.:.:.:.:.:.ヾ:.:.:.|　　　（僕は今、やらない夫の力に
　 /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/´＼-;/￣ V￣ | |ｲ≧ミ=､/ 　 |:.:.:/:.:.:<´ヾ|　　　 引っ張られて成長してる）
　 ｀ '' 'ー -ァ:.:.:/:::r::j::./:::::::.　　　 | | 辷り｀ |}_　r-Vｿ:.:∧}
　　　　　 ／:.:.:.:ヽ::::::::::i:::::::::::　　　 ヽ廴_　 <ﾃ=/rァヾ:∧:.|
　　　　　 フ/:.:.:.:.:.＼::::::::::::::::　　　　　￣ヾ=ﾉ　 <-ﾝ /:| .V
　　　　　　´''- ､:.:.:.:./::::::::::::::::　　　　　　　　　　/=テヾ|
　　　　　　　　　 ヾ/:::::::＼::::::..　　　　　ー -　 　 /
　　　　　　　 　 　/:::::::::::::::::::::::::...　　　　 -　　.／
　　　　　　／＼./::::::::::::::::::::::＼:::::::::...　　 　／
　　　　 ／　　　∧:::::::::::::::　　 /｀ 'ー - ' ´
　　　ノ |　　　　　 }ヽ::::　　 　/_
￣￣　 .|　　　　　　 ＼　　　{　ヽ
　　　　 .|　　　　　　/　｀ ー='´　 ＼



運命の大河を渡り、宿命を打ち払い、人と大地と世界を導く「英雄」のみに与えられると言う力の片鱗が
目の前のやらない夫から感じられる。

彼と共に居るだけで不思議な力が湧いてくる。
激励されると強い気持ちが生まれてくる。
期待に応えたいと思う。
それは決して気のせいではない、と誰よりも近いジュンが思い始めていた。

二１３１．
二人が相手の才能に感じ入り、自らの力も進歩させていたところに、



　　　　　　　　　　　　　　　 /｀ヽ､
　　　　　　　 　 　 　 　 　 /_ 　　 ＼
　　　　　 　 　 　 　 ､-‐'´/　｀`丶､　ヽ_r┐
　　　　　　　　ﾉ^ｰ＜〉　 Ｌ＿＿＿_｀ヽ))ｰ'-､
　　　　　　　 ヽ＼ ∠_＿／　／／　,｀`ﾊヽ　 ＼
　　　　　　　　ハ ヽハ// // ／/／///ハ ヽ 　 ＼
　　　　　　　く ＼､ }　|{ l|l,{∠メL//' 〃/ハ.　!　}／　　　　「お兄様？
　　　　　　　人ヽ 〉' 亡>j〈;;'ｿ〉/ /'ノ////　}　} ハ　　　　　こんな食べ物も満足に無いとこで
　　　　　　　 ＼)八),ト､〉　´ 　 ´ノ_ﾉ乂〃ハノ' r-ゝ　　　　本当に大丈夫なのー？」
　　　　　　　　 　 ､ノ（{ﾉ 　 c　' 〈;;ソﾙノ ﾉ､ L,/
　　　　　 　 r ''',ニ=､'′ヽ､__　 _,.ｒく{ _∠__ }　}
　　　　　 .r┴/ ヽ>'⌒ヽノ/ ￣ヽＮ}入ﾆ＜（乙、
　 　 　 　 ﾄ､_{ ｀'{　,. -┴v　{ 　 　ヽて｀ヽ}　￣
　　　　　〈ヽ　＞'"　　l　 | ノ　　／ .〉
　　　　　　V〈　　　　 l 　 !　　　　く
　　　　　　 }　ヽ　　　| 　 |／／ //
　　　　　　ﾉ　　ヽ　　 　　ト､ 　 { {=､、
　　　　 　 }　　　 ヽ　　　 |!{ ヽ　 |ﾄ､}}
　　　　　_ハ　＼　 >、　　　　　 / ヽ、
　　　／/　　ヽ＞'"　 ヽ、　 　／l|　ヽ＼




雛苺がのけ者はごめんなのと割り込んできたので、
大きくため息を吐いて見せたジュンはいい加減にしてくれと苦笑を浮かべてしまう。

二１３２．

: : : : :: : :、: : : ::::::,lll,,,,,,,,,,,,,__
: : ::_、,,､‐,l,: : : :,,ll,i,_ﾞﾞﾞllllllil,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,__
,,llll,,,lll,,i´,ll,ﾞl,、:,illilllllli,l,: ,lliillﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾟ”￣
lllil!llilﾞ゜:lllllllilll,.:llllllllllllllll::llllll!llii,,l,i､
l!lilllﾞιllllllllllllllillllll!lllllllll!,lllﾞ!liill!llllil,i､
illll!`lll:,lllllll!ﾞﾞlﾞ!!ﾞlllllﾞ!lllllll,llll,,ﾞ!lliﾞllll!llil,i､
!l】l::lllﾞllllllll:: : : : : : :|llllllllllllil,,ﾞlli、ﾞﾞlllll,,、
ilﾟ,ll:lll|llllllll: .: : : : :.::|'lllllllllll!lili,ﾞlll　　ﾞﾞﾞ!l,,、　　　　「ヒナはどうしても僕を連れて帰りたいんだね」
lﾞ,lllllll|llllllll:.､:::x,、:､:|'llllllllll.lllllli,lli,　　　 ﾟﾞ=:
,,llll!,lllllllllll: : : : ﾞ'N,,,.,lllllilll|:l!ll!lli,li,
illlilil!llllllllll、::::::::.,,.::_ll!,lﾞ'llli,"ll｀ .'!li,,
llilllll:ﾞllllllllll､､:､:ハ::ﾞi!ﾞ,l｀|lli"ll
lllllll:_,ﾞllllllll〆":'│::.ﾞ.:｀､.＝,｢
!|llll'｀::'!llllﾞli､丶'|,!::::::::::::::i!lﾞ,!
::)ll′: :ﾞ!llﾞﾞl: : ::|:．: : : : :`|::l、
、'l、:: : :ﾞ!!::｀::、U,、,:、..,i,|、ﾞi,、
、::｀::: 丶丶丶:::ﾞ!i{h,､_,ｼ｀::::::.|
: : : : : : : : : : : : : : : : ｀: : : : :lﾞ
: : :｀: : : ::｀: : : : : : : : : : : : :/
: : : : : : : : : : : : : : : : :: : :: ,″
: : : : : : : : : : : : : : : : : △:′
､、: : : ::::::::｀:::::::::::::::::: ,,-｀
: ｀"'ヽ,,: : : : : : :｀:_,,r,i´
: : : : : :ﾞ・: : : ::‐'''~｀



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　/　　　　　　 !　　　 }ﾐﾒ､: :/: : ::ｨ: '::´:{{ハ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　 /　　/　　　　 i　　　　 　 　 l　　　　 ゞ:V:_:ｨ'´: : _: : : :ﾒハ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　//　 i　　　　 乂. 　 　　　　　|　　　 　 ヽ: : : : ／iヽ￣ ｀　 i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 iｲ 　 l 　 　＿_ﾊ　　　 　 　　/　ｨ　　　　　>.／　 ,|ハ　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 {'i .　 l　　　从八ヾ　　､_＿ｨ＿/_i　　/　 |￣ 　　 |　 ＼　　　　＼
　　「当然なのよ。　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ',　　　　.li ｨ=ﾐﾒ､　　　 .//イ /￣〃　 /　　　　/　　　 ＼
　　名門サクラダ家の跡継ぎがこんなとこで　　　　　ゝ､ﾊ　 ﾄ､ilけk}ヽ　 ／彳ミﾒ､ ィ' 　 ./　　　　/　　　　　　｀ｰ ､ _
　　こんな事をしてるとご近所様に知られたら、　　　　＞ >､', 弋ソ　 ｀"　 {{けオﾐ､イ.／　,　　／
　　何を言われるか分からないのー」　　　　　　　　　／-'´￣ ト' "" 　　　　　 辷ツ　 〃彡''_.／ｲ　　　　　　　＿＿ _
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　ヽニ彡､　　 ､　　　　　"" 　 イノイ≦　 il＿　,,　ィ ''´￣ ￣ ｀
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　{　-＝彳_ィハ　　 -(　 　 　　　　　ﾉ＿　　　　＞￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 Y´　,,_≠〃フ＞､　　　　　　　　イー＜＞_/ハ￣ ＞- ､　　　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽイ三＝≠＝-､ ー -,―　 ´　 |＞､ノﾌ｀ー -ミ''ー　､ _ ｀ ー'
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 >=／: : : : : : ＞イi　　　　　 >=-''´￣ヽ＿}}　　　　 ＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／: : : : : : : ´: : :il　_. . .ｨ: ':´/: : : : : : : : :ヾー＝-'' ´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /: : : : : :ｨ＝＝v＝ﾐﾒ､: : :r': ´: : : : : : : : : : : ヽ



貴族の娘らしい発言と子供っぽい話し方が、揺れ動く多感な思春期を象徴しているようだった。
そしてその考えに、数日前の兄だったら同意していたに違いない。

二１３３．
しかし、首を小さく二度、横に振ったジュンは妹を諭すように言った。



　　　　　　　　　 ＞ -:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∧ /:.:.:|
　　　　　　　　　 >:.-:.－:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∧i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀´:.:./
　　　　 　　 r‐ ':.´:.:.:.:.:.:.:.:.::./:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:|:::ヾ:.:.／::|:.:.:.:.:.:.:／
　　　　　　/:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:..|:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:|￣｀''- ､;i:.:.:.:.:.:.:.:.￣ヽ　　　　　「ヒナ、いいかい？
　 　 　 　/:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:ﾊ:.:.:.|　　　　　 |∧:.:.:.:.:|:.:.:.:.:}　　　　見た目、見かけだけで判断する様な輩には
　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::V:.:.:./ -V:|_　　　　//:::.:.:.:.:.:K:.:.:.:|　　　　　好き放題言わせてても良いんだ。
　　 ／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∠V:./={´rvミ､=､_,, ,/　|:.:.:.:.:.:.ヾ:.:.:.|
　 /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/´＼-;/￣ V￣ | |ｲ≧ミ=､/ 　 |:.:.:/:.:.:<´ヾ|　　　　もっと事柄の本質を見極めて、
　 ｀ '' 'ー -ァ:.:.:/:::r::j::./:::::::.　　　 | | 辷り｀ |}_　r-Vｿ:.:∧}　　　　　　自分で何が大切かを選べる力を
　　　　　 ／:.:.:.:ヽ::::::::::i:::::::::::　　　 ヽ廴_　 <ﾃ=/rァヾ:∧:.|　　　　　　身につけるんだ」
　　　　　 フ/:.:.:.:.:.＼::::::::::::::::　　　　　￣ヾ=ﾉ　 <-ﾝ /:| .V
　　　　　　´''- ､:.:.:.:./::::::::::::::::　　　　　　　　　　/=テヾ|
　　　　　　　　　 ヾ/:::::::＼::::::..　　　　　ー -　 　 /
　　　　　　　 　 　/:::::::::::::::::::::::::...　　　　 -　　.／
　　　　　　／＼./::::::::::::::::::::::＼:::::::::...　　 　／
　　　　 ／　　　∧:::::::::::::::　　 /｀ 'ー - ' ´
　　　ノ |　　　　　 }ヽ::::　　 　/_
￣￣　 .|　　　　　　 ＼　　　{　ヽ
　　　　 .|　　　　　　/　｀ ー='´　 ＼



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　　　　　　　　　 ___ ＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　　,.--r^Y^r＜: : : : : ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　に二ﾌﾞ⌒|￣＼: : : : : :＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. 　 　　　　　レ'て_)（_弋_＿_）, =＝‐-ﾄ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. 　 　 　 　 _/´ ｌi　　　､ ､｀¨¨{: : : : :_: : |ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　f´/il|l | ｉ l　| ｉヽ　 ﾞ､: :./ l ヽ|　}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　ﾉ'ｉ　l｜|l | ｌ_|__ｌ_|1ﾊ　ハ/　'! ／,小
　　　　「じゃ、じゃあ、　　　　　　　　　　　　　　{_|　l人|ｘ| ｌ l,ニ､川}/／／ l/／ 入
　　　　お兄様には本質がきちんと　　　 　 　 　７ニヽヾ;　　Ｌハ 厶ィ´─〈/ ／_〉
　　　　掴めてるの？」　　　　　　　　　　 　　　　{´三ヽ八　_　 u ∠二二下（廴)）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　　￣）ﾉ7)）＼＿　ィ f三三〕ゝｰ‐'
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. 　　　　　　　　　ィ ﾆ圷､ヽ/: : :_ｿﾉ:＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /:〈〈 //{: : 〉〉: : : : : : : :〉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　　r‐!/:.Ｖ/:ゞﾆ'ノ｣: : : : : : :/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. 　 　 　 　　j: ｣: : :}/: j/: :f: : : : : : :.:ﾊ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /:/: ,.イ: :〃: :.:∨: : : : : :ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／:/:./:::/: /|: : : :.,′ : : : : |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／ : /:./:::/: ｲ::|: : : /: : : : : : :.|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　 ／: : : /: :|／:./:|:::|: : / : : : : : : : |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／: : : : :/: : : : :.:{ : ヽ!: /: : : : : : : : :|

二１３４．

: : : : : : /　　　　　l.:::＼ | |.:.:.:.:.:.:＼
: : : : : /　　　　　　l.:.::::::ﾘ |/´ ￣｀`,　　.:.:.:.::.:.:.:＼
: : : : /　　　　　　　l.:.:／　　　　　　',　　　　.:.:.:.:.:.:＼
: : : /　　　　　　　　＼　　　　　　　 ',　　　　　.:.:.:.:.::::ヽ
: : 〈　　　　　　　　　　＼　　　　　　 ', .:.::::::::::::::::::|＼.::.:|
: : : :',　　　　　　 .:.:.:.:.:　 ＼　　　　　 ',::::::::ﾄ､.::::::::|　ﾊ:.:l　　　　「全部がそうとはもちろん言えないよ。
: : : : :',　　　　　 .:.:.:.:.:.:.ﾄ､　＼　　　　 ',::::::lﾆ＼:::::|　　　　　　　大体、そう知ったのは
: : : : : .',　　　　　.:.:.:.:.:.:l　＼　＼／　　',::::l　　 ﾄ､|　　　　　　　やらない夫に出逢ってからだしね。
: : : : ::::::',　　　　 .:.:.:.:.:.:l　　　`y':／ﾆヽ ',::l1 　 l |
.:.:.:.:::::::::∧ 　　　 .:.:.:.:.:.:l　 ／／／　 い / l　　l |　　　　　 　　でも今は分かる。
:.:.:.::::::::/　ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l ..／∠　　　 い /ハノ/　　　　　　　　今までの僕が、どんなに世間知らずで
.:.::::::::./　　　＼.:.:.:.:.:.:.:.:.:V彳o:::ヽ　　　j! !　　`ヽ　　　　　　　　ちっぽけだったか分かる」
.:::::::::〈 　　 　　 ＼.:.:.:.:.:.:.:}ﾑ:::::::ノ´ ／／　　　 /　
､::::::::::.＼_,,　-‐　　＼.:.:.:.:l　￣　／／　　 　 ,.ｲ
　ヽ　　　　　　 　 　 　＼:L＿／／　　　　　 /
　　＼　　　　　　　　　　└＝＝'　　　　 ／/
　　　 ＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /
　　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　 ,′
　　　　　　 ＼　　　　　　　　　　　　　　 ,′
　　　　　　　　＼`ー--------r---‐‐'´
　　　　　　　　　 ＼　　　　　 ∠￣`ヽ



堂々とそこまで言われては、雛苺も説得が不可と悟るしか無かった。
今まで一緒に育ってきたのである、兄の頑固さはたとえ父の説得ですら容易に受け付けないと
知っているのだ。

二１３５．

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　/　　　　　　 !　　　 }ﾐﾒ､: :/: : ::ｨ: '::´:{{ハ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 /　　/　　　　 i　　　　 　 　 l　　　　 ゞ:V:_:ｨ'´: : _: : : :ﾒハ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　//　 i　　　　 乂. 　 　　　　　|　　　 　 ヽ: : : : ／iヽ￣ ｀　 i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 iｲ 　 l 　 　＿_ﾊ　　　 　 　　/　ｨ　　　　　>.／　 ,|ハ　　　　＼
　「わかったの。　　　　　　　　　　 　　 {'i .　 l　　　从八ヾ　　､_＿ｨ＿/_i　　/　 |￣ 　　 |　 ＼　　　　＼
　　お兄様がそこまで言うなら、　 　 　 ',　　　　.li ｨ=ﾐﾒ､　　　 .//イ /￣〃　 /　　　　/　　　 ＼
　　ヒナもここに居てあの男から　　　　　ゝ､ﾊ　 ﾄ､ilけk}ヽ　 ／彳ミﾒ､ ィ' 　 ./　　　　/　　　　　　｀ｰ ､ _
　　どんなことを教わるのか　　　 　　　　　＞ >､', 弋ソ　 ｀"　 {{けオﾐ､イ.／　,　　／
　　きちんと見てるのー」　　　　　 　　　／-'´￣ ト' "" 　　　　　 辷ツ　 〃彡''_.／ｲ　　　　　　　＿＿ _
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　ヽニ彡､　　 ､　　　　　"" 　 イノイ≦　 il＿　,,　ィ ''´￣ ￣ ｀
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　{　-＝彳_ィハ　　 -(　 　 　　　　　ﾉ＿　　　　＞￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 Y´　,,_≠〃フ＞､　　　　　　　　イー＜＞_/ハ￣ ＞- ､　　　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽイ三＝≠＝-､ ー -,―　 ´　 |＞､ノﾌ｀ー -ミ''ー　､ _ ｀ ー'
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 >=／: : : : : : ＞イi　　　　　 >=-''´￣ヽ＿}}　　　　 ＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／: : : : : : : ´: : :il　_. . .ｨ: ':´/: : : : : : : : :ヾー＝-'' ´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /: : : : : :ｨ＝＝v＝ﾐﾒ､: : :r': ´: : : : : : : : : : : ヽ



最後の手段に打って出た彼女に、ええっ、と驚いたジュンは判断が出来ずにやらない夫を振り返る。



: : : : :: : :、: : : ::::::,lll,,,,,,,,,,,,,__
: : ::_、,,､‐,l,: : : :,,ll,i,_ﾞﾞﾞllllllil,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,__
,,llll,,,lll,,i´,ll,ﾞl,、:,illilllllli,l,: ,lliillﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾟ”￣
lllil!llilﾞ゜:lllllllilll,.:llllllllllllllll::llllll!llii,,l,i､
l!lilllﾞιllllllllllllllillllll!lllllllll!,lllﾞ!liill!llllil,i､
illll!`lll:,lllllll!ﾞﾞlﾞ!!ﾞlllllﾞ!lllllll,llll,,ﾞ!lliﾞllll!llil,i､
!l】l::lllﾞllllllll:: : : : : : :|llllllllllllil,,ﾞlli、ﾞﾞlllll,,、
ilﾟ,ll:lll|llllllll: .: : : : :.::|'lllllllllll!lili,ﾞlll　　ﾞﾞﾞ!l,,
lﾞ,lllllll|llllllll:.､:::x,、:､:|'llllllllll.lllllli,lli,　　　 ﾟﾞ=:　　　　「やらない夫、どうしよう？
,,llll!,lllllllllll: : : : ﾞ'N,,,.,lllllilll|:l!ll!lli,li,　　　　　　　　　邪魔になるんじゃないか？」
illlilil!llllllllll、::::::::.,,.::_ll!,lﾞ'llli,"ll｀ .'!li,,
llilllll:ﾞllllllllll､､:､:ハ::ﾞi!ﾞ,l｀|lli"ll
lllllll:_,ﾞllllllll〆":'│::.ﾞ.:｀､.＝,｢
!|llll'｀::'!llllﾞli､丶'|,!::::::::::::::i!lﾞ,!
::)ll′: :ﾞ!llﾞﾞl: : ::|:．: : : : :`|::l、
、'l、:: : :ﾞ!!::｀::、U,、,:、..,i,|、ﾞi,、
、::｀::: 丶丶丶:::ﾞ!i{h,､_,ｼ｀::::::.|
: : : : : : : : : : : : : : : : ｀: : : : :lﾞ
: : :｀: : : ::｀: : : : : : : : : : : : :/
: : : : : : : : : : : : : : : : :: : :: ,″
: : : : : : : : : : : : : : : : : △:′
､、: : : ::::::::｀:::::::::::::::::: ,,-｀
: ｀"'ヽ,,: : : : : : :｀:_,,r,i´
: : : : : :ﾞ・: : : ::‐'''~｀

二１３６．
そしてその問いかけに、縋るような視線の妹と、出来れば家に帰したい表情の兄とを見比べたやらない夫は、



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣￣ 　 ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ´　　　　　　　　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　 　 /　　　　　　　　　　　　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ｉ　　　　　　　　　　　　　　　　　丶
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 l　　　　　　 ／ ￣　　 　 　 　 　 丶
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 |　　_＿ 　 　 　 　 _　ヽ　　　 　 　 丶
　　　　　　「邪魔になんかならないさ。　　　 　 　 ヽ/　　　　　　 ｉ　ｲ::::ヽ l　　　　　 　 丶
　　　　　　　約束したもんな？」　　　　　　　　 　 　 ヽ 　 　 　 ヽ ゝ_ゞ::ノ '　　 　 　 　 　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　丶ｉ ｲ｀丶 l　 　 ｀ヽ 　 　 　 　 　 　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ゝ　　,　ヽ _　　丿　　　　　 　 　 　 ＼‐､-..､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　 ゝ ﾉ , ‐ ´　　　　　　　　　　　 　 ソ:.:.:.:＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　´　 　 　 　 　 　 　 　 '　　　 /:.:.:.:.:.:／＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　　　　　　/　　 ／:.:.:.:.／:.:.:.:.:.:.ヽ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼　　　　　　　　　　/　 ／:.:.:.:.／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ヽ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ヽ　　　　 　 　 ／　 /:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ヽ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ヽ　_＿　 ィ　　　/:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:



当然のように雛苺の味方になった。

二１３７．
片目をつむって微笑んだ彼に、今ばかりは心強い援軍を得たと流れに乗る雛苺。



　　　　　　, ィi^ヽ､.　　　 {ﾘ:::::::::::::::.:.＼　　　　_／.:.:.:::::::::::::::::::jﾘ
　　　　　 /l しJ!ヽ|　　 　{ﾘ:::::::::::::::::.:.:iヽ:只ソィ´　￣｀`.:.:.::::::jﾘ
　　　　 .〈!jヽV/　 Lｪｭ､ 「{ﾘ::.:,:ｪェーェｭJ⌒7>‐ｭ､_　　　 .:.:/
　　　　　　ト､　　 〈.:::jﾘ　ヽ￣｀フ"´￣　　　　 　 　 ｀ヽ _.::/^ヽ
　　　　　 _j／ヽ ノT/.:ﾄ､　ﾚ'´　　 　 /　　　　ヽ　　　 　＼　 　 ＼　　　　　「そうよー！
　　　　 _j/.:.:.::ノ」／／ ／ 　/　 i 　 |　　　　　 i　　 、　　ﾄ､　「￣　　　　　　約束したの！
　　　　i/.:.::::/7 /／　/　/　l　/ | 　 |　　l |　　 |　　 l|　　 |ﾊ_」､
　　　 /.:.::::/7 //　 ./1 /! i | /_」| -┼-､ﾄﾄ､　┼- ､ﾘ　　 jj 7::! ＼　　　　　　だから見学するのよ！」
　　　 .:::::ノ7 //　　　 |/ ﾄ､ lN/l/ﾘヽ|　　 ｀＼/l / ハ ; ｲ//.:::'　　 ＼
　　　｀`ヽ､ _ノ　　　　　　　`ﾄ;〉 ,r=＝´　 .　 `≡=ｭ _/　l:/.:.::'ー─- ､ヽ
　　　　　　 ＼ 　 　 　 　 r‐'‐ｭ　 ' ' ' '　r─┐' ' ' {ﾆ二ﾐ}::,:'´￣￣｀`y'′
　　　　　　　　＼_ 　 　 　｀二孑､　　　 l.::::.:ﾉ　　 {二三ﾐ}´￣｀`ヽ,／
　　　　 　 　 　 　 ＼　　　　｀孑j >､_ 　 ￣　　(ヽ 孑そ´ ￣｀`＜
　　　　　　 　 　　　〈　　　 　 　 　 ヽl〕 ー‐r＜::／⌒ヽ二ﾆヽ_／
　　　　　　　　　　　 ヽ　　　　　/　　 ｀ー一'ヘ-─- ､　 孑´`
　　　　　　　 　 　 　　 ｀辷_j　/　　,　-‐r‐r‐- ､　　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　 ﾚ′　/:,r' 7:介ﾄ､`ヾヽ　　　/
　　　　　　　　　　　　　 　 /　　 /:/　/:/　|:::|　 i:::|　　〈
　　　　 　 　 　 　 　 　 　/　　 /:/　 |:::|　 |:::|　 |:::|　　 |



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　Λ／　〈 へ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヘ|　　 　　　　 ,＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　∠　　/　　　〉ヽ　 ￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　ノ〈 |＾＾| /＼ﾄ､　　ﾄ､l
　　　　　　　　　「君が良いなら良いけどさ」　　　|／| .ﾊ|__ |/＿__　ヽ　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l/　　|‐|　　 |―ヽ＿|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 | ￣ c　￣　　　6 l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　ヽ (＿＿＿_　　,-′
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ ＿＿＿ ／ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ ＼∨／　l ＾ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　|　　　　　 |　　|


機嫌がくるくる変わるのが妹の性格とは言え、ジュンが現金なやつだなぁと呟くのも無理は無い。
それでも、少しは二人が和解した様子なので安心した彼は、まぁいいかと深く考えないことにした。

二１３８．
十分に休息を取り、ミルクを二杯飲んだジュンが回復したようなので、
今日の昼食は少し早めにしようと考えたやらない夫は訓練の再開を告げる。



　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　／ ヽ､.　_ノ　＼
　　　　　　　|　 （●）（●）　|
　　　　　　　|　　（__人__）　｜　　　「そろそろ身体も温まっただろ。
　 　 　 　 　 |　　 ｀ ⌒´　　|　　　　続きを始めるぞ」
　　　　　　　 |　　　　　　 　}
　　　　　　　 ヽ　　　　　 　}
　　　　　　　　人＿__＿_ノ"⌒ヽ
　　　　　　／　　　　　　　　　　　＼
　　　　　/ 　　　　　　　　　　 へ　　＼
　　　　 （　　ヽγ⌒)　　　　　| 　＼ 　 ＼



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,／/: :ヽ: : Y: /:､: : : : : : : :＼: : : : : : : : ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／: :/: : : ∧: : ;′1: : : : : : : : : l: : : : : : : : : :∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∠二ィ: : : : l::∧: :!:::::l: : : : : : : : : :|: : :ヽ: : : : : : :∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /.: : : : :|::::::∨::::::l: : : : : : : : : :l: : : : ∨: : : : : :∧
　　　　　　　　　「よし、やろう！」　　　　 ,r': : : : : : 「¨¨｀""¨1: : : : : : : : : l: : : : : ∨: : : : : :∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |! : : : : : : l 　 　 　 l: :;ｨ: : : :∧ : | : : : : : ∨: : :ヾ : ∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｲ!: : : : :i: : !.　 　 　 !:/ l: : :/　ヽ: ﾄ、 : : : : ∨: : : :＼;ﾊ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/l: : : :,∧:厶-‐､　　ﾚ'　!‐ナ―-ゞ! ヽ、: : : :i: : : : : :l ヾ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 !.:!: : ;ｨ: : ト1===ミ:、 　 l.:/彡＝=｀=ﾐ:､ヽ : : l.: : : : : |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .l.;ｲ : ;ハ ｲl:iﾞ '乍ミ1L..../;」i　ｨ卞ぅｘ､ ! ヽﾄ、:l: : : : : :|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .ﾚ'l: :/　 ﾘ |:|　 ﾋ;ﾘ |「￣"ﾞ1l　　ﾋｚﾘ｀ l l｀ゞ- ､.: : :lヽ:.!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾚ'’　　 ヾ ＿__ノ.'　　　ヾ: ､＿＿.ノﾉ　´rﾊ !:、:| ヾ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i￣￣ i　　　　　 ￣￣￣　　ムｿ:.;ﾊﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ､　　　　　　　　　　　　　r彡;〃´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　 ヾﾆフ　　　　 　 ﾉﾚ'´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　 　 ´ ,L. -‐ ､_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ . _　，　 　, ィ´　　　,.､二ミ:ｫ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,.-‐=ﾆj,.ィ'´　　 ／￣ "¨ヾ＼L、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _r'´　 レ"　　 _ﾆ=′　　　 二ﾆ= 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　rく ヽ 　 j　,-=ﾆ¨ 　 　 　 イ=‐- ､　 　 >"

二１３９．
ゾーン持ちなら覚える事が出来るだろう、その内に影剣闘のやり方も教えてやろうと考えつつ、
今は影の役割をすべく集中の歯車を上手く制御する。



　　　　　　　 　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　 　　／　 _ノ　ヽ､.＼
　　　　　　　　 　|　　（●）（●） |
　　　　　　　　　 |　　 （__人／,〉.|
　　　　　　　　　 {　　　´フ´ ./._ }　　　　「まずは復習な。
　　　　　 　　　　ヽ　 .／,二ニソ}　　　　　打ち込む速さ、攻防の精度は
　　　　　　　　　　_ヽ/　 ,-― ､}ﾉ　　　　　シンジの八割程の設定だ」
　　　　　　　　 ／:;:{'　　 ノｰﾍJ:;:;ヽ
　　　　　 　 ／:;:;:;:;:;|　 _,イ{:;::;:;:;:;l:;:;}
　　　　　　/:;:;:;:;:;:;:;:;:＼＿/:;:;:;::;:;i:;/＼　　　　　　　　┌┐　─────────────┐
　　　　 　 {:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;／:;:;:;:;:;:;:;〈:;:;:;:;:＼　　　　 .◇´￣｀◇　　⇒ 模倣　 　 　 　 　 　 　 　 │
　　　　　　ﾍ:;:;:;:;:;:;:;:;／:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:i;:＼:;／ヘ、　　ロ 　○　 ロ　　　> シンジ＝ギャブレー 　 │
　 　 　 　 　 ￣￣7:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;l;:;::;ゝ、`ｰj　　　◇､____,.◇　 　　> ０．８倍　　　　　　　　　.│
　　 　 　 　 　 　 /:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;l:;:;:;:;:;:＼~　　　　　└┘　─────────────┘
　　　　　　　　　/:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:|ヾ:;:;:;／



昨日、合計十分にも満たない間しか剣を合わせていない相手を、完全に見切って模倣できるのもまた、
やらない夫が別格の能力を備えている証明に他ならない―――

二１４０．
―――ジュンは、やらない夫がどのような事をやって見せようとも驚かない、気にしない事に決めていた。
それでも近いうちに何度か驚かされる羽目になるのだが。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i::::＼　　　 r::'::´::::::::::::::::::::::／＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ:::::::＼.　 |::::::::::::::::＞-...':::´:::::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿ ≧::::::::＼i!:::::::::r､'::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::::::/＼:::::::::|:::::: /:::::::＼::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／::::::::::::::::／:::::::::＼::::::::/:::i:::::::::::＼::::::::::::::::::::::::::::...::::｀:::-.._
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ／_:: -─ｲ::/::::::::::::::i::::::＼/:::::|::::::::::::::: ＼:::::::::::::::::::::::＼＿＿＿::＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣,...-:':´:／::::::::::::::::|:::::::::V:/: |:::::::::::::::::::::ﾊ::::::＼:::::::::::::::::｀:-._
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::: /::::::::::::::::::::::|:::::_:ｨ=-.-|::::::::::::::::::::::::i:::::::::::＼:::::::::::::::::::: ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /:::::::::::::i::::::::::::::::::::::::|'´　　 　 .|:::::::::::::::::::::: :|:::::::::::::::ヽ:::::::::::::::::::ﾍ
（よし、集中集中！）　　　　 　 /::::::::::::::::ﾊ:::::::::::::::､:::::| 　 　 　 .|:::::::::::::::::::::::::|:::::::::::::::::::＼::::::::::::::::ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　　　/:::::::::::::::::::::ﾊ:::::::::::::i ＼ヽ　　　　.|:::::ｲ::::::::::: ﾊ:::|::::::::::::::::::::::::i::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　 ／::::::::::::::::::::::::::ﾊ:::::::::::|＿_ゞ'＿＿　|::/ i:::::::::/＿ヾﾄ::::::::::::::::::: |::::::::i ヽ::::::ﾊ
　　　　　　　　　　　　　. ／:::::_::_:: - ﾌ:::::::::::::::ﾄ-三ﾆニ＝＝≦　ﾚ　|::::三ニニニ=ヾ:::::::::::::|::::::: |　 ｀ー-｀-
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::::::::| |r::::|て芯ミヾ Y}　　 .|::::/ ≧ニニ＝ﾐヾ::::::: |::::::::ﾊ
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /:::::;:::::::::＿| |　ヾ i!;;;....;;}　 i }ニニニi」 ｛ﾋｲ:::::｝ >　i l＼::|::::::::::ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　/／ /::::::/>‐ﾊi　　　ゞー'　<iﾘ　 　 ﾚi l　　廴../ ｲ　//::::::ゞ:::::::::::ﾊ
　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　ﾊｨ::::i　-ﾊヾニニニニ彡　　 i　　 ミ､＿＿＿_.//-､::::::::ヽ￣ ￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヾ i　- ﾍ　　　　　 　　　　 ;　　　 ￣￣￣￣/ハ i:::::i￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ヾ､∧　　　　　　　　 ＿　　　　　　　　/　　ﾉ-''´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ーヽ　　　　　　　´　 ｀　　　　　　 /-'／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　 ..::　　　　 　　/-'´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿　　　｀　､　　　　　　　　　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／: : :｀: -..､　　｀i'　､　　　,　ィ' ´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /: : : : : : : : : :｀: x.ﾉ　　｀　´　　|　　　　　　＿
　　　　　　　　　　　　　　　　,...-::'::´:::￣::｀::-::::_: : : : : : : : :＼＿　　　　 ﾄ､　　 ／: : : :ヽ
　　　　　　　　　　　　　　r'´: : : : : : : : : : : : : : : :｀:ー-: : :＿: : : :｀ー. ､　.>'´: : : : : : : : : :>＿
　　　　　　　　　　　　　　｝: : : : : : :-: :､: : : : : : : : :: : : : : : : : :￣: :ヾ: ::Ⅵ: : :: : : :_: -:'´: : : : :ﾊ



昨日はその八割に滅多打ちにされた彼は、無言で気合いを入れると倒すべき相手に打ちかかる。
そうしている内に、二日目の昼が訪れようとしていた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━……

29 ◆GV1zPRS/Lk 10/08/09 23:42:42 ID:wx0vZ1UX 本日の投下は以上です。 次回は第二章その４（ラスト）になります。 閲覧ありがとうございました。 30 名前なんて無いだろ常識的に考えて 10/08/09 23:44:30 ID:+dopvME9 乙です ジュン成長してるなー 31 名前なんて無いだろ常識的に考えて 10/08/09 23:45:30 ID:FuBMbFan 乙 ＪＵＭゾーン・・・真の武器はラケットになったり 37 名前なんて無いだろ常識的に考えて 10/08/10 00:13:07 ID:gmo5hSuj 乙 >>31 最終的にはJUMファントムが炸裂するぜ 32 名前なんて無いだろ常識的に考えて 10/08/09 23:46:16 ID:RtjG33no 乙でした！ 無敵の外交スキルを誇っていたやらない夫も、幼女には弱いみたいですねｗ 相変わらずジュンとやらない夫が親友すぎて和みました 33 名前なんて無いだろ常識的に考えて 10/08/09 23:48:42 ID:qxugLHrp 乙でした。ベストキッドファンタジー版を見ている気分です。 師弟であり友人であるという関係はいいね！ 35 ◆GV1zPRS/Lk 10/08/09 23:54:33 ID:wx0vZ1UX >>30-34 閲覧ありがとうございました。 やらない夫とジュンのミックスアップは 書いている自分としてもとても楽しいです。 もう少しジュンの戦闘的なＡＡがあれば良いんですが 自作できる程のスキルも無いためちょっと悩ましい思いをしています。 トレース出来るようにならなくては！ 38 名前なんて無いだろ常識的に考えて 10/08/10 00:38:26 ID:IU7CyOAd 乙 面白い… 正統派の成長物語ですな 39 ◆GV1zPRS/Lk 10/08/10 06:43:31 ID:ut3KVHC6 >>36-38 おはようございます、閲覧ありがとうございました。 某玉子様はテニスでファンタジーしてますからねぇｗ ただこの世界にテニスは無いはずなので安心です（何が？ 40 名前なんて無いだろ常識的に考えて 10/08/10 18:45:22 ID:Au5YqQ2y このやらない夫はどれくらい強いんだろう。 レベル１０超（ロードス）行くのかな？ 41 名前なんて無いだろ常識的に考えて 10/08/10 20:02:47 ID:bZMyE+aW 短編での風格や所々出てくる大器を思わせる内容からして レベルじゃ測れないとかかもよ？ CP換算で千超えとかだったりしてｗ 42 名前なんて無いだろ常識的に考えて 10/08/10 20:07:31 ID:olZC7SA9 データのないNPCかな。絶対に倒させねぇｗ 43 名前なんて無いだろ常識的に考えて 10/08/10 20:18:18 ID:7im8o/+o なるほど、つまりＰＣはジュンと雛苺なんだな 44 名前なんて無いだろ常識的に考えて 10/08/11 07:48:15 ID:xAdZgadC >>43 あー、なるほど それしっくりくるわ 初めから高レベルなやらない夫と成長著しいジュンの対比がうまいよな 俺はやらない夫がかなりのチートなのに違和感や嫌みがないのは 短編や予告であらかじめ予定されている事だと 刷り込まれてる効果がでかいと思った むしろ今後どう成長してああなるのか気になる

二１４１．
━━━━━━━━━━……
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


　 　／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　 （ ●）（●）
.　|　　　　 （__人__）　　　　　「よーしそろそろ休憩にしよう」
　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ
.　 |　　　　　　 　 }
.　 ヽ　　　　　 　 }
　　 ヽ　　　　　ノ　　ｍm
　　　/　　　￣￣￣　つﾉ
　　　|　　　　|￣￣￣

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 //
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::ｌ　＿,　 - ア ¨’；
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ＿ /:::::!｢::::::::::::／─‐…ｧ　：
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　､___∠::::::〈:::::::|::::::::::::::::::::::::＜´　　：
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ／::::::::::::::: 〉､::ヽ-..､::::::::::::::::::::＼　　：
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ∠　ｧ¨´::::;:ィ::::;､ヽ::∧::＼:::::::::::ﾄ､::;;>　：
　　　　　　　「りょ、了解………」　　　　　　　/::::::::::/:::|::::{┴'┴l:!::::::}i::::::::::::::＼　：
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　/::::::::::∧::下仁､　ｲﾙ二ﾊ::::::::ｌ:::::::::ヽ　：
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::;ｲ:::/;;:ﾊ:{廴__j｢¨f廴__j}ハ::::::ト､::::::::',　：
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .厶ｲ/::/::{ （Y ｀￣/|　 ﾄ￣´　Yﾍ::::l/:＼::::! ：
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ⌒ヽﾍ　トｰ‐　 ! 　! 　 ｰ-１ /∧:: ハ:|　：
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 Vヾ{　U 　{ _ _〉 　 　 };ｲ/　∨　 ′：
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Ｖ:::ﾄ､ }　r―‐ｧ　 { /::/　　：
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ:} ヽ　}　　 |　 /|:/　　　ｾﾞﾊｰｯ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ／! iハ､｀＿´ ｲ ｉ|＼　　：　ｾﾞﾊｰｰｰｯ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _/ {〈　ｌ 　 {　　　　ﾄ､∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／￣　| 　 ヽ._　 ゝ　 　 _!ｲ〉 ｢￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_　　-　´￣ヽ　 ト､ 　 ＼二二二 ／ /　　　 ｀　-　､_



やっと休憩か、と呼吸すらも忘れがちになっていたジュンは、ばたりと木刀を取り落とすとその場に大の字になった。
ひたすら酸素を摂取する事に集中しないと息苦しくて仕方がない。
全身を濡らす汗の感覚も感じ取れないまま、ただ呼吸を整える事に必死になっていた。

二１４２．
一方、鼻歌交じりに昼食の準備を始めるやらない夫は、汗一つかいていないどころか
呼吸すらまったく乱れていない。
強靱な心肺機能も訓練のたまものだろうかと疲弊しきった思考で考えていたら、
ナイフを取り出した彼が向こうから声を飛ばしてきた。



　　　 　 　 ／￣￣＼
　　　　　 ノ　　＼_ 　 ＼
　　　　 （●）（● ）.　　 |
　　　　　(_人__)　　　　　|／|　　　　「昨日の半分も打ち込まれなくなったな、
　　　　　（｀⌒´　　　　／ /　　　　　明日には十割でやれそうだぞ？」
　　　 　　{　　 　 　 ／　 /
　　　　　 {　　 　 ／　　/
　　　　　 _ヽ　／　　　/
　　　　／_ ／＼　　 /
　　 ／　/ ヨ／　＼/＼
　　（　ヽノ／　　　　　　＼
　　　￣　|　　　　　　|＼　＼


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : |: : : : : |: : : : ヽ: : ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　: : : : : : : : : : : : : : : :./＼: : : : : ﾄ､: : : : ﾄ､: : /: :∨ :.l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　: : : : : :∧: : /──{/､.　 ＼ : : |.-＼: : |ｰ∨､: : : : : |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　: : : : :./　1/　　　　　.i　　　l＼:|　　 ＼|　　　|: : |＼;!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　: : ,､: :{　　 　 　 　 　 |-‐‐-|　　　　　　　　　.|:ヽｉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　: :{　ヽ'　　 　 　 　 　 !　　　|　　　　　　　　　ﾊ:_}
　　　　　　　　　「まだまだ、だよ…………」　　　　ﾊヽ　ヽ＿＿＿＿＿,ﾉ　　　ヽ＿＿＿＿___ﾉ　}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ハ: :｀-',　 ! | | 　! !　　　　　　' ! |' | |　川/　ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 〉: :.:∧　　　〃'ー──-----､　　　 ,ｲ"´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣　　＼　 ヽ＿＿＿＿＿_丿　 ／　　　　　ﾊｧﾊｧ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＞､　　　　　　　 　,イ´　　　　　　　ｾﾞｪｾﾞｪ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,────､＿_｀ ,‐──┬'"´　＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　| 　 !　　 　 |￣l￣　 　 ｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　　　 |　　ｰ──' 　ﾘ　　　　　　}



シンジの十割に手が届きそうな喜びよりも、やらない夫との差が悔しいジュンは心底そう思った。

二１４３．
だが、それを察したやらない夫はジュンを振り向くと、自制を促すように手を上げる。



　　　　　　　　　　　　　 　／￣￣＼
　　　　　　　　　　 　 　_ノ　　ヽ、　　＼
　　　　　　　　　　　　（ ●）（ ●）　　　|
　　　　　　　　　　　　（__人__） 　　　　 | ..／}　　　　　　　「目標を見誤ると過負荷で身体を壊すし
　　　　　 _　 　　　 　ヽ｀⌒ ´　　　　　| /　/ 　　　__　　　気持ちにも悪影響だぞ。
　　 (＾ヽ{　ヽ　　　　　 {　　　　　　　　./　/　 .　／ .ﾉ　　　ジュンは今、限界の速度で成長してるんだから
　(￣ ヽ ヽ　i　　　　　　ヽ　　　　　　/　厶-　´ ／　　　　 そのまま伸びてくればいいんだ」
.(二 ヽ　i　i　|,r‐i　　　　ﾉ.　　　ヽ /　　　　 ／
　　ヽ　　 ／　 ノ　　／　　 　r一'´　ー ､　　￣￣￣）
　　 i 　 {　　 ｲ―イ　/　 　.`ー―.　､＿_　.〈￣￣
　　　ヽ.　`ｰ '/　　　/　　　　　　　　　 　/＼ ＼
　　　　　 `ー ' ￣￣!　 　　　　　　　　　|　　ヽノ



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : |: : : : : |: : : : ヽ: : ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　: : : : : : : : : : : : : : : :./＼: : : : : ﾄ､: : : : ﾄ､: : /: :∨ :.l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　: : : : : :∧: : /──{/､.　 ＼ : : |.-＼: : |ｰ∨､: : : : : |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　: : : : :./　1/　　　　　.i　　　l＼:|　　 ＼|　　　|: : |＼;!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　: : ,､: :{　　 　 　 　 　 |-‐‐-|　　　　　　　　　.|:ヽｉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　: :{　ヽ'　　 　 　 　 　 !　　　|　　　　　　　　　ﾊ:_}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾊヽ　ヽ＿＿＿＿＿,ﾉ　　　ヽ＿＿＿＿___ﾉ　}
　　　　　　　　　　「う………　　　　　　　　ハ: :｀-',　 ! | | 　! !　　　　　　' ! |' | |　川/　ノ
　　　　　　　　　　　わかったよ」　　　　　　　 〉: :.:∧　　　〃'ー──-----､　　　 ,ｲ"´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣　　＼　 ヽ＿＿＿＿＿_丿　 ／　　　ﾌｩー
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＞､　　　　　　　 　,イ´　　　　　　ﾌｩー
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,────､＿_｀ ,‐──┬'"´　＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　| 　 !　　 　 |￣l￣　 　 ｀ヽ



見透かされた、と恥ずかしくなった。
言われたとおりに気持ちを入れかようとするが、そうは言っても簡単に割り切れるものでもない。
曲がりなりにもジュンだって男である、純粋な強さへの憧れはそれなりに持っているのだから。

二１４４．
次にやらない夫は焚き火に薪をくべて火力を上げたあと、
川縁から綺麗な岩を選んできてそのすぐ隣にどさり、と置いた。





　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_....nx､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,,..v+'勺)'''　! `ｰ..、
　　　　　　　　　　　　　　　　....r‐'''"　_..r''´　　　!　　 ﾞ'ヽ､
　　　　　　　　　　　　　_..r‐'´　　..r‐''´　　　　　│　　　　ﾞｰ ､
　　　　　　　　　　　_/'''`ｰ..､ _ノ´　　　　　　　　　!_　　　　　　ﾞ'ゝ､
　　　　　　　　　　丿 　　　 ｀'ｰx＿......----―‐"ヾ_　　　　　　　　ヾlｒ
　　　　　　　　　丿　　　　　　　!　　　　　　　　　　ﾍ､　　　　　　　　ヾ､
　　　　　　　　　!’　　　　　　丿　　　　　　　　　　　ヾ、　　　　　　　 ヾ､
　　　　＿,,＿∠_　　　　　　　l’　　　　　　　　　　　　ヾ 　　　　　　　　ヾ、
　　　　　　　￣￣￣ﾞ''''''''''――――――――‐'''''''''''''l冖''￣￣￣￣ﾞﾞ￣



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　Λ／　〈 へ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヘ|　　 　　　　 ,＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　∠　　/　　　〉ヽ　 ￣＼
　　　　　　　「何するんだい？」　　/　ノ〈 |＾＾| /＼ﾄ､　　ﾄ､l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|／| .ﾊ|__ |/＿__　ヽ　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l/　　|‐|　　 |―ヽ＿|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 | ￣ c　￣　　　6 l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　ヽ (＿＿＿_　　,-′
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ ＿＿＿ ／ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ ＼∨／　l ＾ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　|　　　　　 |　　|

二１４５．


　　 ／￣￣＼
　／　　 _⌒　 ＼
　|　　　（●）（●）　　　　　　「この上で肉を焼くのさ。
.　|　　 ⌒（__人__）　　　　　　　パンと野菜も買ってきたから焼いて食べよう」
　 |　　　　 |r┬| .}
.　 |　　 　　ｰ―' }
.　 ヽ　　 　　 　 }
　　 ヽ　　　 　ノ



: : : : :: : :、: : : ::::::,lll,,,,,,,,,,,,,__
: : ::_、,,､‐,l,: : : :,,ll,i,_ﾞﾞﾞllllllil,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,__
,,llll,,,lll,,i´,ll,ﾞl,、:,illilllllli,l,: ,lliillﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾟ”￣
lllil!llilﾞ゜:lllllllilll,.:llllllllllllllll::llllll!llii,,l,i､
l!lilllﾞιllllllllllllllillllll!lllllllll!,lllﾞ!liill!llllil,i､
illll!`lll:,lllllll!ﾞﾞlﾞ!!ﾞlllllﾞ!lllllll,llll,,ﾞ!lliﾞllll!llil,i､
!l】l::lllﾞllllllll:: : : : : : :|llllllllllllil,,ﾞlli、ﾞﾞlllll,,、
ilﾟ,ll:lll|llllllll: .: : : : :.::|'lllllllllll!lili,ﾞlll　　ﾞﾞﾞ!l,,、　　　　　「なんだ、結局色々買ってきたんだね」
lﾞ,lllllll|llllllll:.､:::x,、:､:|'llllllllll.lllllli,lli,　　　 ﾟﾞ=:
,,llll!,lllllllllll: : : : ﾞ'N,,,.,lllllilll|:l!ll!lli,li,
illlilil!llllllllll、::::::::.,,.::_ll!,lﾞ'llli,"ll｀ .'!li,,
llilllll:ﾞllllllllll､､:､:ハ::ﾞi!ﾞ,l｀|lli"ll
lllllll:_,ﾞllllllll〆":'│::.ﾞ.:｀､.＝,｢
!|llll'｀::'!llllﾞli､丶'|,!::::::::::::::i!lﾞ,!
::)ll′: :ﾞ!llﾞﾞl: : ::|:．: : : : :`|::l、
、'l、:: : :ﾞ!!::｀::、U,、,:、..,i,|、ﾞi,、
、::｀::: 丶丶丶:::ﾞ!i{h,､_,ｼ｀::::::.|
: : : : : : : : : : : : : : : : ｀: : : : :lﾞ
: : :｀: : : ::｀: : : : : : : : : : : : :/
: : : : : : : : : : : : : : : : :: : :: ,″
: : : : : : : : : : : : : : : : : △:′
､、: : : ::::::::｀:::::::::::::::::: ,,-｀
: ｀"'ヽ,,: : : : : : :｀:_,,r,i´
: : : : : :ﾞ・: : : ::‐'''~｀

二１４６．
てっきり今日も魚と野菜の食事と思っていたジュンは脅かすなよと文句っぽく言ったのだが、
腕を組んだやらない夫はまぁな、とその理由を口にする。



　　　　 ／￣￣＼
　　　／　　 _ノ　　＼
　　　|　　　 （ ●）（●
　　　|　　　 　 （__人__）　　　「今のジュンの運動量や疲労度、全身が鍛えられている機会に
.　　　|　　　　　　　　ﾉ　　　　 炭水化物や肉、野菜が不足するのはもったいないだろ」
　　　 |　 　 　 ∩ ノ ⊃
　　／ 　 　 .／　＿ノ
　 (.　 ＼ ／　.／_ノ │
　　＼　 “　／_＿_|　 |
.　　　 ＼／ ＿＿＿ /



でも魚は捕ってもらうぞ、と言う彼に頷いたジュンはしかし、食べ物と修行に何の関連性があるのか
さっぱり分からない。



::::::::::::::::::::::::::ﾊ::::::::::::::/i/／ i:::::::::::::::::::::::::|::::::|:::::::::::::::::ヽ:::::::::::::::＼
::::::::::::::::::::::::::::ﾊ;;;;;;;;;/-'´ 　 .|::::::::::::::::::::::::ﾄ::::: ﾄ::::::::::::::::::::i:::::::::::::::::::ヽ
::::::::::::::::::::::::::::::ﾊ￣　　 　 　 |::::::ﾊ::::::::::::::|　＼i ＼::::::::::::|:::::::::::::::::::::ﾊ　　　　（やらない夫の修行は何から何まで
::::::::::::::::::::::::::::;:::ﾊ　　　 　 　 |:::/　V::::::::::ﾘ　　　　ｨ=ﾊ:::: |::::::::::::::::::::::::＼　　　 きちんと根拠があるんだな。
:::::::::::::::::::::::::::::iヽ:ﾍ　　　　　 |:/　　 V::::::/　　　/ｲ＝ﾌi｝ヾ─────'｀
ヽ:::::::::::::::::::::::::|　＼ヽ　　 　 |i!　　　 ｝::/　　　r''´ゞハi l:ヽ　　　　　　　　　　　　ただ闇雲に剣の型を繰り返していたって
::::＼::::::::::::::::::::|　　 ＼　　　＿＿ニ三ｲ　　　||r j｝i|　.i lヾ｝　　　　　　　　　　　　そりゃぁ強くなれないわけだよ）
::::::::::＼::::::::::::: |　　　／::::＿,,,ィ彡=''´i/il_,=＝|.しｿﾊ ﾉﾉ-､
:::::::::::/ ＼::::::::::ヾ ／:- ''´＞''´ -=ｲ｀　 ||r'´｀ ﾊ彡　ｙ/: : : :＼ニニミ-､
::::::::/　　　｀ー- xゝ rィ彡''´イッ:::ﾘ　　/i　　　ミー=´i: : : : : : :｀:-:､: : :｝ｿヽ
:::::/::ﾊ＿＿＿＿＿/ /　 /　ﾋ:::..ソﾉ　｛.ﾘ　　　　｝.　 l-､: : : : : : : : i: ://: :ﾊ
￣ヽ──────､ﾊ　ヾ　　ゞ''´　 ノﾉ　　　 ./　 ./: :ﾉ: : : : : : : : l: i l: : : ﾊ
i ヽ　｀ -ゝ　　　　　　ヽヽ　ミ=''´　／／　　　　 　 /: : i: : : : : : : : : l: i l: : : : :ヽ､
｛　　ﾊ　　　　　　　　　＼＼＿_／／　　　　, ィ　/: : :/: : : : : : : : : : /: : : : : : : : ＼
　｀　　 廴　　　　　し　　　ー─''´　　　 ir'_´'´ ./: : :/: : : : : : : : : : /: : : : : : : : : : /
>､＿　　　ー　　　　　　　　　　　 　 　 　　 　 /: : :/: : : : : : : : ::／: : : : : : : : : : :/
: : : : : ＞-､＿ハ､　　　　　　　　　　　　　　　ハ／: : : : : : : :／: : : : : : : : : : : :/ハ

二１４７．


　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　 ／ 　 ノ 　ヽ ＼
　　　　　　 |　　（ ●） （●）|
　　　　　　 |　　　 （__人__） |　　　　　「さて、焼き始めるぞ」
　　　　　　 |　　　　｀ ⌒´　|
　　　　　　 |　　　　　　 　 }
　　　　　　 ヽ　　　　　 　 }
　　　　　　　 ヽ　　　　　ノ
　　　　　　／　　　　　　　＼
　　　　　　|　　　　　　　　　　|
　　　　　　|　　|　　　　　　|　 |
　　　　　 （ ￣ヽ　　　　　/￣)
＿＿＿＿ (((_|￣＼　,,―)))‐‐、＿＿
＼　 ＼￣￣￣＼　 | | ＼　　　＼　　＼
　 ＼　 ＼　　　　 ＼|　＼|￣￣￣|＼　 ＼
　　　＼　 ＼　　　　　　 　￣￣￣　　＼　 ＼
　　　　 ＼　 ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣　　　　＼
　　　　　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣



例の魔法の道具入れから色々取り出した彼は、まず大きな骨付き肉をそのまま岩の上にのせると
次に手際よく野菜やパンを切り分け、焼けた部分に並べた。

すでに熱くなり始めていた岩のせいで、辺りに肉汁の焦げる匂いが立ちこめるにそう時間はかからない。
買ってきたばかりの食器を三人分取り出してそのうちの一つを、
興味深そうに石焼きを観察している雛苺に差し出すが。



　　　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　　　　 ／　⌒　　⌒＼
　　　　　　　　　 |　 （●） （●）　|　　「雛苺ちゃんも一緒に食べよう。
.　　　　　　　　 　|　　（__人__）　 |　　　お腹、空いてるだろ？」
　　　　　　　　　　|　　 |r┬-| 　 |
.　　　　　　　　　　|　　 `ー'´ 　 }
.　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　 }
　　　　　　　　 　　_ ゝ　　 　　ノ
　　　　　　　 　／　　 　　　　　｀ヽ
　　　　　 　 ／　 / 　　　　　　　 　＼

二１４８．
朝食を取ったきりのはずの雛苺は、差し出された食器と転がるジュンとを見比べていらないのーと断った。



　　　　　　　　　___,..　--───-､　　　　　 ,.-───--　..__
　　　　　　　　　 ヽ　　　　　　　　　　＼(こ)／　　　　　　　　　/
　　　　　　　　　　 ヽ　　　　　　　　 ＼_　 _／　　　　　　　 　/
　　　　　　　　　　　|　　　　 _,.　-─ ｧ' ￣ヽー--　 ..._ 　 　 !
　　　　　　　　　 ／|_,. -‐ '´　 　 ／-──- ＼　　　　｀　 ､|
　　　　　　　　／　 ヽ.　　　　 ／　　　　　　　　 ＼　　　　／＼
　　　　　　　　 ＼　　 ＼　,.イ　 ／　　　　　　　　　ヾ､.／　　___ヽ
　　　　　　　　　 /　__,rｯ'´　　 /　　/　　　 　 i　　　 i ﾞヾ　　 |
　　　　　　　　 厶r'ﾞ7　 　 　 /　　 i　　　　　　l 　 　 l 　 ﾄ､　|
　　　　　　　／ 　 !/　　　　/　　　!　　　 　 　 l 　 　 ! 　 l　`＼　　　　　　　　（そんな不潔で野蛮な食事、
　　　　　 ／　　　 |! ｌ　　　 |　　　i| l　　　　 j　|　　　l　　 !　 　 ＼　　　　　　　冗談じゃないのー。
　　　　／　　　　　l　ト l､∧　 |ヽ　{　 　 　 }　} ヽ, 斗-┼j　　　　　＼
　　　/__ ___　 　 　　|　lヾ ＞k{_ ＼　　　　ﾉ_ﾙ＜ハj　/ /　　 　 　 　 ヽ　　　　お兄様も地面に転がるなんてはしたないのー。
　 　 {-─ ‐- =- ､.__∨ ‐〒示心ｰ＼／戈云ﾃテ‐ﾚ' 　　　　　 　 　 　 i　　　 着替えはあるの？お風呂はどうするの？）
　　　＼_,.=ﾆｰ- ､.._く　', 　 ゞー'´　　　　 ゞー'' 　 /　 シｒ=_,ニ二二ﾆ　j
　　　 　 r─二ニｰ-干ｰ∨／/／　　　　　 ／/／ /　　　　　 ＿　　／
　　　　　ヽ=ヘ三ニ-＼ﾍ　　　 　 　 ＿__ 　 　　∠ｰニ-=ニZ_　￣｀
　　　　　　　　 ` ー-ｭ-个 ,、　rｰ'´＿＿う　 ,.へァ'了--= _　　｀ヽ
　　　　　　　　　　／　 　 　 　＞ ー-- ‐ｧ＜ｒ'´￣￣＼こ>‐ー '"
　　　　　　　　　 ヽ.　　　　　 　 ＼__　　__,／　　　　　　＼
　　　　　　　　 ,. ィ⌒ヽr=､_ _,. -─-ﾕ.fﾆ─-､.　　　　 /_,ノ
　　　　　　 　 {　　　　 　 ／／￣｀７トlく⌒ヽ､.＼　 ／/ ｀ヽ、
　　　　　　　　ヽ､_ﾊ l // ／　　　/ /　!ﾊ　 　 ＼＼　　 　 _ノ
　　　　　　　　／　　　 Nヽ　　　/ /|　i|　!　　　　〉 }_,L_,. く
　　　　　　 ／　　　　　 |ヽ.＼／,.ｲ |　| ﾄ､＼ ／,.イ　　　　 ＼
　　　　　 /　　　　　　　j　 `ｰ-' /　|　| |　＼ ／　|　　　　　　 ヽ

折角歩み寄れそうだったのになと少し残念に思うも、今は無理強いしない。
一つを道具入れに戻し、もう一つをジュンに差し出して早めの昼食の開始となった。



　　 ／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　 （ ー）（ー）　　　　「そっか。
.　|　　　　 （__人__）
　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　そろそろ良い具合だな。
.　 |　　　　　　　ｎｌ^l^l　　　　ジュン、食べようぜ」
.　 ヽ　　　　　 |　　 ﾉ
　　 ヽ　　　　ヽ　く
　　　/　　　　　ヽ　＼



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ ／.:/.: 　 i.:.:.:l.:.:.:l.:.:.:/ l.:.:.:.:.:.:｀`´.:.:.:.:.:.: |.:.:.､.:.:.:.＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 l.:.:./ .:.:　.|.:.:.:l..:/l.:.:/　|.:/l.:.:.l.:l.:.ﾄ､.:.:.:.:. |.:.:.:.＼ ￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./.:./ :. :.: :|.:.:.:l/ .l.:/　 |/　l.:.:N.::.|__＼.:.::|.:.:.:.:.:.:l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /.:./ .: .:.:.: :|.:.:.:仁l/二ﾆ　　l.:仁l:/=== ヽ:!.:.:.|＼|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l:/.l.:.:.:.:.:.:. .ﾄ､.:.l ﾃ示ﾐヽ1 Ll/ l 「 戍ﾃﾐ　lﾄV
　　　　　　　「朝食べてなかったから　　　　　　l.:.:/l .:　ﾊ:lN{　辷ｿ ﾉ ! 「￣l |弋辷ｿ　l1 l
　　　　　　　　腹ぺこだったんだ！」　　　　　　l:/　l.:/　　 lL_ ＿＿ノ　 ,　　ヽ _二 ノ.:.:.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　 l/　､__',　　　　　　　 　 　 　　 /　.:.:.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　　　　　ヽ　　　　　r‐‐ｯ　　　/.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　　　　 　 入　　　　　　　 ,..ｲ.:.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　　　.　'´　i.:.＼＞ -- ＜/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　／　　 　 |.:.／＼　 　 ノ.:


待ち構えていたジュンは、がばっと身体を起こすと自分の椅子代わりの岩に腰掛けて食器を受け取り、
何から食べようかと視線を巡らせる。

二１４９．



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,／/: :ヽ: : Y: /:､: : : : : : : :＼: : : : : : : : ＼
　　「わぁすっごい肉！　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／: :/: : : ∧: : ;′1: : : : : : : : : l: : : : : : : : : :∧
　　　これ全部食べていいの？」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∠二ィ: : : : l::∧: :!:::::l: : : : : : : : : :|: : :ヽ: : : : : : :∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /.: : : : :|::::::∨::::::l: : : : : : : : : :l: : : : ∨: : : : : :∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,r': : : : : : 「¨¨｀""¨1: : : : : : : : : l: : : : : ∨: : : : : :∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |! : : : : : : l 　 　 　 l: :;ｨ: : : :∧ : | : : : : : ∨: : :ヾ : ∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｲ!: : : : :i: : !.　 　 　 !:/ l: : :/　ヽ: ﾄ、 : : : : ∨: : : :＼;ﾊ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/l: : : :,∧:厶-‐､　　ﾚ'　!‐ナ―-ゞ! ヽ、: : : :i: : : : : :l ヾ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 !.:!: : ;ｨ: : ト1===ミ:、 　 l.:/彡＝=｀=ﾐ:､ヽ : : l.: : : : : |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .l.;ｲ : ;ハ ｲl:iﾞ '乍ミ1L..../;」i　ｨ卞ぅｘ､ ! ヽﾄ、:l: : : : : :|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .ﾚ'l: :/　 ﾘ |:|　 ﾋ;ﾘ |「￣"ﾞ1l　　ﾋｚﾘ｀ l l｀ゞ- ､.: : :lヽ:.!
　　　　　　　　　　　　　　　,. -────----‐‐'"´￣｀`ヽ、　　　　 　　　　ﾚ'’　　 ヾ ＿__ノ.'　　　ヾ: ､＿＿.ノﾉ　´rﾊ !:、:| ヾ
　　　　　　　　　　　　　 ／;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:::::.. . . .::::;:;:;:;:;::;:;l　　　　　　　　　　　　　　 i￣￣ i　　　　　 ￣￣￣　　ムｿ:.;ﾊﾉ
　　　　　　　　　　　　 /:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:::::::::::::.:. . . . : : :::::;:;:;:;:;:;l‐'⌒ヽ　　　　　　　　　 　 ､　　　　　　　　　　　　　r彡;〃´
　　　　　　 __,r‐l⌒l　 |;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:::::::::.:. : : : : : .:.::::::;:;:;:;:;:;|;:..._丿　　　　　　　　　　　 ヽ　　 ヾﾆフ　　　　 　 ﾉﾚ'´
　 ,r‐､_l⌒l 　|　ﾄ-ｲ＾Y|:;:;:;;;;;;;;;;;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:::::::.:. .:.:::::::;:;:;:;:;:;:;;|　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　 　 ´ ,L. -‐ ､_
　 {　 　ヽ_j､_,ト ' ;:ﾉ ├|:;;;;;;;;;;;;;;;;;;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;::::::;:;:;:;:;:;:;:;:;;;;;;;;j　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ . _　，　 　, ィ´　　　,.､二ミ:ｫ
　　ー-''ﾍ＾´ ￣/ 　 ﾉ　l,;..;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:;:;:;;;:::___＿＿＿;;;:-‐'　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,.-‐=ﾆj,.ィ'´　　 ／￣ "¨ヾ＼L、
　　　　　 （　　 　　,ｲ　　ヽ:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;_,. -‐'"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _r'´　 レ"　　 _ﾆ=′　　　 二ﾆ= 　 ＼
　　　　　　|　　　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　rく ヽ 　 j　,-=ﾆ¨ 　 　 　 イ=‐- ､　 　 >"




順応が早いのか、野営の食事も気にならないほど空腹なのか。
巨大な骨付き肉に興味を示したジュンは、表面は焼けているそれを手にとってかなり興奮した様子だ。

72 名前なんて無いだろ常識的に考えて 10/08/14 21:13:50 ID:s0cEcXrr マンガ肉、マンガ肉じゃないかw

二１５０．


　　　　　　 （⊃￣￣＼
　　　　　（⊃　　 _ノ　　＼
　　　　（⊃　　 （ ●）（●）　　　　「好きなだけ食べて構わないぞ。
　　　　　|　　　　 （__人__）　　　　　かぶりつくんじゃなくて、そこのナイフで表面をそぎ落として
　　　　　|　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　塩と胡椒で自分で味付けするといい。
　　 　 　 |　　　　　　 　 } ＼
　　　　 ／ヽ　　　　　　 }　　＼　　　中はまだ火が通っていないから、
　　　／ 　　ヽ､＿＿__ノ　　 　 ）　　また表面を焼くんだ」
　 ／　　　　　　　　.　 　|　＿／
　|　 　　　　　　　／￣￣（＿)
　 ＼　　　＼　／|　ＪＪＪ　（
　　　＼　　／　　 ／⊂＿）



慌てるなよ、とやらない夫が食べ方を教えると、慣れないながらもそぎ落としたジュンは味付けもせずにまず一口。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〃::::::::/::::ヾ:::i::::ヽ:::::::::::::::::::::ヾ:::::::::::::::::::＼::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／:::::::::/:::::::::i:::｀:::::::}::: ﾄ:::::::::::::::::::i:::::::::::::::::::::::ヾ:::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/:::::::::ｨ/:/:::::::: L:＿ ∧:ﾊ::::::::::|ヾ:: l>､::ﾐ､:::::::::::::::V:＿:::::::::::::::::::::::::i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　/:::／ /::/::::::::::::ﾊ　　　 il　i::::::: l　刈　　≧ﾐ> ､::::::::<　 ヽ::::::::::::i＼ |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　../／　./:::::i::::::::::::ﾄ:ﾊ 　 　 　 l::::://_ ィ=彳司 ||＝=￣｀{　i }:::::|＼ゝ. ｀
　　　　　　「こりゃ美味しいよ！　　　　　　　　　　　　　　　 i ::::::ﾊ:::::::::::|＼ゝ＿__　 |:/　r/ ´ ｲt jﾊ ||　　　　ﾉ //::::::i
　　　　　　家でもお願いしたら食べられるかな？」　　　　 l:::::::::::ヾ:::::::|::::::ヾ´ ≧ミ､ィ'''ヾ　　 ゞ┴ﾉﾉ　　　　｀./:::ノ｀
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |::::::／i::＼:::V::::彳 ｨ芯､}}　　 ｀ミ＝＝''　　　　　r'´:/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |:::/　　|::::::>:K ヾ､　_ゞノ　, 　　　　　　　　　　　 |／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |/　　　ヽ/　ヾ　｀ーt　　　｀ _　ノ ﾌ　 　　　 /　 |　＿＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｀　　　　　　ヽ　　　｀ー´　　　　　　 ／￣　　　 _　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀　 ､　　　　　ノ　　/　　　　 ／　￣￣ ヽ＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＞-イ |　　〃　　 .／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /￣il　 /／　／-= ' ´　 ＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　 V/ ヽ=.//　　　／￣￣￣＞＝-　､

二１５１．
もう二きれをそぎ落とし、今度は塩と胡椒を振りかけてやらない夫に肉を渡すと、
眉を動かしてどうだろう、と答えた彼は手慣れた様子で焼けている部分を切り落とした。



　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　／ _ノ　 .ヽ、＼
　　　　　　|　 （●）（●）　|　　　　　　「んー、シュラスコ食べたいって言えば
.　　　　　　|　　（__人__）　.|　　　　　　　近いものは出てくると思う。
　　　　　　 |　 .　'´ｎ｀'　 .ﾉ
　　　　　　 .ヽ　. 　| |　　}　　　　　　　　ほんとは鉄串に刺して回しながら
　　　　　　　 ヽ..　ﾉ .ュノ　　　　　　　　　焼いて削いで食べるを繰り返すんだ」
　　　　　　　　/　{ ..ﾆj､
　　　　　　　　|.　| "ﾂ　＼
　　　　　　　　|.　| .l　　|ヽ、二⌒)



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ＞'´　／　　 ∧　 　 ｜　　　　i|　ヽ.　 　 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　／ 　 ／ 　 　 /::::ヽ　_,斗:.:.:.: : 　 |　　 !　　:...　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　 〉 　 　　　　::ー‐^´¨　|:.: : !:.:..　ﾄ､　 |　　 :.:.:...　: :..｀ー-､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 |　　　| 　ｉｌ　　::|　　 　 　 ! ::∧:. :. 　,=‐ｉ　　　:.:.:.:.:...:.:.:..:.:.／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 /　.:.:.:.:|　 i| 　 ::| 　 　　　 | / ,ｨ|,.イ´__ ∧　 ..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ :::／イl|　 ｌ|　 ::|=､＞ｰ=､ ｉ′|:rレ弍¨ヽ ﾄ :.:.:.:.:.:.:.:.:.／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./::／　 /　　　|　　|´戈¨Ｔ |ﾄ==､||　弋__ソ‐|/.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼
　「うーん、家だと大がかりか。　　　　　　　　　　　　　　　　ﾚ'゜ 　 /　／　 iヾヽ! 辷_ソ｣|　　 ヽ=＝＝=='　ﾏヽ.:.:r-‐'´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｒr‐、 　 　 　 　 　 レ'　ﾚ'〉　! ヾﾆ==＝ ′〈　　　　 　 　 　 'ノ::;;;>
　………暖炉でやったら怒られるかなあ」　　ﾄ'　| 　 　 　 　 　 　 　 　 ￣ヾﾇ、　　　　　 ｀　　　　　　　,/‐'´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　| 　|　　　　　　　　　　　 　 　 ￣ヽ　　 　 　 ー‐　　　 　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..ﾉ 　l'⌒!　　　　　　　　　　　　　 　 ＼　　 　 　 　 　 _, ィ´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　´　ノ^ヽ '､　　　　　　　　　　　 　 　 　 ｀¨ﾆt-　　-‐'　ﾄ-┐
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／｀ヽ.ヽ、　　　　　　　　　　＿　 　/´iイ　　　　　 |/　ヽ―-- ､__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ‐'´｀ヽ. ｉ､　　　　　 　 　 ／i　 ゞ7″ | ′　　 　／　 　 |　　　 　｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼ 　　イ-' 　ヽ　　　　 　 ／　 i　　/　,ﾍ |＿___,_／ |―､　 |　　　　/　　ヽ.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ.　 ″　 　 ｌ　　 　 ／-‐'´ | .//／　ヽﾄ-―/ニ,ﾉ　　＼| 　 　 /　　 ＼'､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　 　 　 l.　,.-‐' 　 　 :　ﾚ' ′　　く !　 //　　　　　　　 　 / 　 　 　 ヾ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 |　　　　.ﾄ''　　　　　　! .|　r―┐　 | ,//　　　　　　:. ｌ　 /　　　　　　　｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l　 　 　 l､__　　 　 　 ﾚ' 　|　　|　　i/o’　 　 　 　 :.:. !　|　　　　　　　　 　 ヽ、

二１５２．
そもそも料理なんてやった事無いジュンであるが、下ごしらえさえ知っておけば
肉を串に刺して焼くぐらいなら出来るだろう。
もともと器用な方らしいので、案外本気で覚えたら一通りの事はこなせるようになるかも知れない。



　　 ／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　（ ●）（●）　　　「ノリさんに相談すればいいんじゃないか？
.　|　　　　（__人__）　　　　面白がって乗ってくれる気がする」
　 |　　　　 ｀ ⌒´ﾉ
.　 |　　　 　　　　 }
.　 ヽ　　　　　 　 }
　　 ヽ　　　　　ノ
　　　.>　　　 <
　　　|　　　　 |
　 　 |　　　　 |



まずは一人でやるのは危ないからやめとけと、この間の夕食を思い出して言うと
ジュンはしばし考えて違いない、と笑った。
それからは加速した食欲が手と口をただ動かし、あれだけあった食事も二人は残さず平らげてしまった。

二１５３．
満腹の腹をさする二人。
そんな二人を見ないようにして空きっ腹を抱えていた雛苺は、やっと拷問のような時間が終わったの、
と肩の力を抜いたのだが。



　　　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　 rヽ　　／　ノ　　＼ ＼
　　　　　　　　 i　!　　|　 （●）（●）　|　　　「よーし食べ終わったら休憩………
　　　　　 r;r‐r/　|. 　|　　（__人__）　 |　　　　の前に、良いものがあったんだ」
　 　 　 〈_L (｀ヽ .}　　|　　 ｀ ⌒´　　ﾉ
　　　　　l｀ （ ｀`/　.　 |　　　　　　　 }
　　　　　ヽ 　　l　　.　 ヽ　　　　　 　}
　　　　　　|,. 　 l　　 /⌒　 　ー‐　　ｨ ヽ



　　　　　＿＿＿＿＿＿
　　　　`=､;;;;;,,,,,,,:::,,,,,;;;;;,,,,`""''';;;;,, ､__
　　　　 ,.-'ﾞ''''',='";;;;;;;;",-,,;;;;;;ﾞ;;;;;;;;;l;;;;`,､
　　　／　　　`ｰ-...,;;;;;;;;;;;;,-‐/;;;;;;';;;;;;;;;;;;
　　./　　　　　　　　　　　　　`''''''""i;;;;;;;;ヽ
　　l　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |;;;;}
　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ﾉ;;;;}
　　ヽ、　　　　　　　　　　　　　 　 _,／;;;'゛
　　　 `ヽ､_　　　　　　　　　 _,,.,;‐';;;;゛゛
　　　　　　"'''=ｰ;‐---‐‐'';';"-''"゛



不意打ちで現れた東方菓子の数々に、思わず喉が鳴った。



　　　　　　　　 　 　 ／￣￣￣＼
　　　　　　　　　　　元元込 　 ＼,／ ￣￣￣
.　　　 　 　 　 　 ＿　　　`ﾏ　　∠　　　 　_,,. 
.　　　　　＿_ ∠＞ '´ ｀＜厂｀/マ元元'´　　 　　　　　　　　　　　r⌒ヽ
.　　　　　＞x／　 ／　　　＼__/＾ヽヽ　　　　 　　　　　　　　　　 /　　ﾉ
. 　 　 ／／/ 　, '　　　　／　　　　 ｀ー　　_,. 勿、　　　　　　　　 /　／
　　　　〃 ,′ /　　　 , '　　　　　 　　　 込 ´　　 勿、　　　　　　, ｧ"~
　　　　{{　ｉ　 ,'　　　 /　　　　　 　｝ 　 　 込 　 　 ,勿、　　　　（＿ﾗ
.　　　　Ⅵｉ　 !　′　　　　　　 　 ﾉ　　　　 込／´￣　 ＼
　　　　　八　i !{　　{　　　　/　 ｲ　　　　　　}　　ヽ、　 　 ＼
.　　　 　 　 ヽ从j ﾐ从 　　ｲ／メ、　　　 　 ﾉ　　　　｀　　　　＼
　　 　 　　 　r匕Y´ﾊ ヽイ ィ=ﾐ、ﾞﾒ、 　 ／　　　丶　　　　　　く
　　　　 　 　ﾉ=ﾐ､｝ﾋﾘ　　　　rしY　ﾉﾘイ　　　　　　　｀　ｰ =＝ミ}
　　　 　 　 （=ﾐ刈""、　 　 ､_うﾉ彡く　　｝ - =＝≡ニ二三三ﾐﾉ
　　 　 　 　　｀)_人　　　 　'''''' 　 (辷_彡'__　 .　　 - =＝≡彡ﾉﾘ
　　ｺﾞｸﾘｯ　　_彡介ｎ｀　　 　　. イ=彡く　　　　　　　　　＿彡'
　　　　　 　 　 　/ ｀ﾆフ〕ｱ爪　　 )' （ミ辷=　　＿_彡'´￣´
.　　　　 　 　 　 {__'ｱ´￣￣￣｀`ー‐(ﾐ辷＝_彡' ＼
　　　　　 　 　 「／　　　　　　　 　 　j厂￣´ 　　 　＼
　　　　　　　 ／　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ! 　 　 ）
..　　　　　　,(　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i 　　〈
　　　　　　 ヽ＼　　 　 　 　 　 　 }　 　 　 　 　 i 　　ﾉ
.　　　　 　 　 ＼　 ヽ　ｌ　　/／／　　　　　　　丿 イ
　　　 　 　 　 　 〉､ 　 　 　 , <　　　 　 　 ﾉ イ　 　|
　　　　　　　　 /　　 　 　　　　＼　　　　　　 |
　　　　　　 　 ｛　　　　　　　　　丿
　　　　　　　　 ＼　　　 　 　 ／

二１５４．
もとから肉はあまり好きでは無かった為に石焼きは我慢できたが、お腹がぺこぺこの今、
大好物の東方菓子が目の前にあっては視線がそらせない。
無意識のうちに開いた口から小さく声が漏れ、その端から涎が垂れそうになってしまう。



　　ｲィ-'　/　　 /　/　　　　　l　ヽ　　ヽ ヽjヽ
　　　　　 l　　　j ,ｲ|　　　　　||　ヽ!　　 |　　 |＼
　　　　　 !　l　 ﾊ| {l.ノ　　 ヽﾘ|　ﾉl|　　 l　 　 !ヽ
　　ﾄ､　　{弋ﾄ_ｴj≦ﾄヽ　 /ﾉ ﾉ7ﾅ十‐ｲ'　 //　　　　　(あ………
　　＼ヽ､ヽ 7,＜:ヽヽ　｀´　/,＜:ヽjく ﾉ_ ｲ'′　　　　　　あ～～～………）
　　＿ ソ T　l::T:}.:|　　　　　{::T:}.:} ﾉ'7ヽ/　_　-
　　- {二ヽl､ ゞ--'　　　、　　ｰ‐'-　/‐_ 二{ ＿
　　二}ニｰ<〈 '''''　　/ ー ﾍ　 '''''　/r‐_'_-j‐--'
　　./＞＞｀ノヽ、　 {　　　 }　 ,　く'-ｧ＞r_ｰﾆ=
　　　￣　　　　 ,.＞‐υ_ｰ_´＜､　　￣　　　｀}￣
　　、 ､　　　//ィ　￣/ Hヽ￣ヽ＼　,



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ ／.:/.: 　 i.:.:.:l.:.:.:l.:.:.:/ l.:.:.:.:.:.:｀`´.:.:.:.:.:.: |.:.:.､.:.:.:.＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 l.:.:./ .:.:　.|.:.:.:l..:/l.:.:/　|.:/l.:.:.l.:l.:.ﾄ､.:.:.:.:. |.:.:.:.＼ ￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./.:./ :. :.: :|.:.:.:l/ .l.:/　 |/　l.:.:N.::.|__＼.:.::|.:.:.:.:.:.:l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /.:./ .: .:.:.: :|.:.:.:仁l/二ﾆ　　l.:仁l:/=== ヽ:!.:.:.|＼|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l:/.l.:.:.:.:.:.:. .ﾄ､.:.l ﾃ示ﾐヽ1 Ll/ l 「 戍ﾃﾐ　lﾄV
　　　　　　　　　　　　　　「あ、カシワモチ。　　　　　　　 　　　l.:.:/l .:　ﾊ:lN{　辷ｿ ﾉ ! 「￣l |弋辷ｿ　l1 l
　　　　　　　　　　　　　　東方菓子屋行ったのか」　　　　　　l:/　l.:/　　 lL_ ＿＿ノ　 ,　　ヽ _二 ノ.:.:.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　 l/　､__',　　　　　　　 　 　 　　 /　.:.:.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　　　　　ヽ　　　　　r‐‐ｯ　　　/.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　　　　 　 入　　　　　　　 ,..ｲ.:.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　　　.　'´　i.:.＼＞ -- ＜/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　／　　 　 |.:.／＼　 　 ノ.:




そんな妹の苦しみも知らず、ちょうど口の中が脂っこかったんだと一つ手に取ったジュンは
ぱくりとかぶりついて美味い、と言った。

二１５５．
やらない夫は自分が食べるよりもまず、微動だにせず唸っている雛苺の視線を追って、
それを皿に取り分けてそっと差し出した。



　　　　　　　　　　　　　￣￣ 　 ､
　　　　　　　　 ´　　　　　　　　　 ＼
.　　　　 　 /　　　　　　　　　　　　　 ＼
　　　　　 /　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ
　　 　 　 ｉ　　　　　　　　　　　　　　　　　丶
　　 　 　 l　　　　　　 ／ ￣　　 　 　 　 　 丶　　　　　　「雛苺ちゃんも一つどう？」
　　 　 　 |　　_＿ 　 　 　 　 _　ヽ　　　 　 　 丶
　　 　 　 ヽ/　　　　　　 ｉ　ｲ::::ヽ l　　　　　　　丶
　　　 　 　 ヽ　 　 _　 ヽ ゝ_ゞ::ノ '　　 　 　 　 　 ',
　　　　　　　丶ｉ ｲ:::ヽ　l　 　 ｀ヽ　　　 　 　 　 　 ヽ
　　　　　　　　 ゝ ゞ ',　ヽ _　　丿　　　　　 　 　 　 ＼‐､-..､
　　　　　　　　　ヽ　 ゝ ﾉ , ‐ ´　　　　　　　　　　　 　 ソ:.:.:.:＼
　　　　　　　　　　ヽ　　´　 　 　 　 　 　 　 　 '　　　 /:.:.:.:.:.:／＼
　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　　　　　　/　　 ／:.:.:.:.／:.:.:.:.:.:.ヽ､
　　　　　　　　　　　　 ＼　　　　　　　　　　/　 ／:.:.:.:.／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ヽ､
　　　　　　　　　　　　 　 ヽ　　　　 　 　 ／　 /:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ヽ､
　　　　　　　　　 　 　 　 　 ヽ　_＿　 ィ　　　/:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:




　　　　　　　　　　　　　　　, .. ---　.._
　　　　　　　　　　　　　／::';';';';';';';';';';':ﾞヽ
　　　　　　　　　　　　/: .:;';';';';';';';';';';';';';'; :ヽ
　　　　　　　　　　　　l: : ::';';';';';'苺';';';';';':.: : }
　　　　　 _....--‐―''''ﾞ,: : : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: : . :!''---...._
　　_..r‐"´＿--‐'''""´ヽ: : : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:. .: ノ　ﾞ''‐ｰ-..__ ｀''ｰ.._、
　　!　　　ヾ､　　　　　　　｀ﾞｰ - -- ─ '´　　　　　　　l’　　　!'
　　ﾞ''ゝ_　　 ﾞﾞ''ｰ--......＿_＿ 　　　　＿__＿....--‐''''´ 　　_..r''’
　　　　 "''‐ｰ--....,,___ 　　　 ￣￣￣　　　　__,,......--‐‐''"
　　　　　　　　　　　　￣￣ﾞﾞ''''''''''''￣￣￣´

二１５６．
目の前に、何よりも大好物な苺大福が迫る。
一秒の半分にも満たない時間で受け取ろうと手を伸ばしかけた雛苺はしかし、
自分が醜態を晒している事に気がつくと、驚くべき精神力で断った。



　　　　　　　　　　　＼　　う　に　ゅ　ー　な　の　ー　！　！　／

　　　　　　　　　　　　　　 /.:.:.:.:::::::::::::::::::::＼_／::::::::::::::::::::.:.:.ヽ
　　　　　　　　　　　　　　〉.:.:.:.:, イ￣＼.:.::::::::.:.:／￣＼.:.:.:.:.〈
　　　 　 　 　 　 　　　　　丁イ　/,ィ´￣`ー一'´￣｀ヽ"＼厂
　　　　 　 　 　 　 　 　 ／/ / /"´ 　　!　 　 　!　　!　! ＼＼
　　　 　 　 　 　 　 　 /| / / /　　|　　 !　　　　|　　 !　!　! ヽ!
　 　 　 　 　 　 　 　 |/// /　　　|　　l|　　　　j!　　 !　!: |　｀ﾄ､
.　　 　 　 　　 　 　 　 ,ｲ//　l　 　 i」, -‐ﾄ､　　/Nｰ- /､ |:.l| 　 |　＼
.　　　　　　　　　_／￣ | |/ゝ'､　,ｲ/　＼|　｀"´　 |／｀`l/:/ / /￣｀ ＼
　　 　 　 , ﾍ._ ﾄ､.　　 |/l/ﾊ ゝ‐'｀,r=＝' 　. 　　'＝=ｭ l/イ_/_ ＿ __ ,.ィ^Y⌒)
　 　 　 〈 , ィ7:7ゝ､,　-‐_丿::L　, , , ,　r──┐ , , , , /::::::.::7::.:_／::::ヽ　Yソ
.　　　　　　 〉7/:/　　 ＼_〔三二ﾆヽ　　 |.:.:.:.:.:.:.:|　　 　 !二三〕'´　 ｀ヾ::|　 !}
　　　　　　{j |::|　 　　 　 ＼〔二ﾆ〕 　　ヽ.:.:.:.:ノ　 　 ,ｲﾆ二〕　 　 　　|::|　 |}
　 　 　 　 {j |::|　　　　　　　　｀Z7二ﾆヽ､＿,r ﾆﾆ二7Z弐7. 　 　　 　!::!　 !}
　　 　 　 ,{j |::|　　　　　　　 　 　|厂￣＼只／￣￣了　　　　　　　　|::|　 !}
　　　　　 fj」::|　　　 　 　 　 　 　||　　　,ｲXﾄ､　　　 ||　 　 　 　 　 　 |::|　」}
　　　　　　 ￣｀ｰ- ､　　　　　　　＼_／/ ⌒ヽ＼_ ／　　　　　　, -‐'´￣
　　　　　　　　　　　 ￣ ＼. 　　 　 　 |.:|　　　|:.|　 　　 　 ／ ￣
　　　　　 　　　　　　 　 　 〉　　 　 　 |::|　　　|::|　　　　 〈　　　　　　　　　　　 　 ）
　（　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ）
　 丶～'⌒'〇'⌒'～'⌒'～'⌒'～'⌒'～'⌒'～'⌒'～'⌒'～'⌒'～'⌒'～'⌒～'⌒''
　　　　　　　　　　　　　　　　　 Ｏ
　　　　　　　　　　　　　　　　　 o
　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾟ
　　　　　　　　　　　 ／　 ＼ヽ
　　　　　　　　　　／　　　　　く　　　　　　　　＿＿＿_
　　　　　　　　_／　　　　＿　　ヽ 　　　,　　´
　　　　　　　 {　　　　　　　　 ヽ /二ﾌ´
　　　　　　　 Lュニニニニゝ　〈＿/＝-
　　　　　　 ＜ ＿_　　　　　´ ﾆ L　＼ _
　　　　　　　　　／ ／ 　 ／　 ヽ　ヽ. ＼ ヽ.　　　　　 ／
　　　　　　　 ∠ イ／ ／ 　 　 　 　　',　',ヽ　ー―‐く{
　　　　　　　　　 /　 /　　　　　　| |　 ヽ ヽ ヽ.＿＿_ﾉ
　　　　　　　　　 N　|!　|　　　　 //　　 }　 |　　　＼＼
　　　　　　　　　　ヽ l　l|　　　ィ::7!　　 /　 |､　r ､　|ヽ ヽ　　　　「い、いらない、のー………」
　　　　　　　　　／　代1_ ノ:::::r-/　ﾉ/ / / .∨ヽヽj　 ＼
　　　　　　　　く ／./ ｰ　.:::::::: 弋ソV ｲ /　　　　＼
　　　　　　　 く/ミﾐ ヽ　　'　　　 ー彡 ｊ/| 　　　　　 ヽ
　　　　　　　　　ゝ-ﾐ　＼` =　　 ゝ- 彡ﾘ　　　　　 イヽ
　　　　　　　　　　　　＼ ＞― ァ ﾁﾆ彡　　,　 ＜　ル
　　　　　　　　　　　, --く{二 ス ヽ　斗ﾍ、＿ 彡
　　　　　　　　　 ／　　／ /､,ヽ＼}} / ／　　　＼
　　　　　　　　／ 　 . く＿/　l!　VV/ /　　　 　 　＼
　　　　　　 ／　　　　　//　 /　/〉,　 ! 　 　 　 　 　 ヽ
　　　　　 く　　　　　　/// ./　// l!　l　　　　　　　　/
　　　　　　 ＼ 　 　　///　　.〈/　l　 | 　 　 　 　 　/
　　　　　　　 〈ヽ　　/ V　　　　　 |　 `ーr-　　　 へ、
　　　　　　　　 ヽ　/　/ 　 　 　 　| 　　　{　　　　　　 ヽ

二１５７．
普段はいくつかの種類が三つずつあったら、ノリやジュンと交換してでも苺大福を独り占めしようとする雛苺が
血の涙を流さんばかりの苦痛を耐えて断っている事を知っている兄。



　　/ ／.:/.: 　 i.:.:.:l.:.:.:l.:.:.:/ l.:.:.:.:.:.:｀`´.:.:.:.:.:.: |.:.:.､.:.:.:.＼
　 　 l.:.:./ .:.:　.|.:.:.:l..:/l.:.:/　|.:/l.:.:.l.:l.:.ﾄ､.:.:.:.:. |.:.:.:.＼ ￣
　　./.:./ :. :.: :|.:.:.:l/ .l.:/　 |/　l.:.:N.::.|__＼.:.::|.:.:.:.:.:.:l
　 /.:./ .: .:.:.: :|.:.:.:仁l/二ﾆ　　l.:仁l:/=== ヽ:!.:.:.|＼|　　　　「苺大福は大好物だろう？
　 l:/.l.:.:.:.:.:.:. .ﾄ､.:.l ﾃ示ﾐヽ1 Ll/ l 「 戍ﾃﾐ　lﾄV　　　　　　　遠慮せずもらいなよ」
　　　l.:.:/l .:　ﾊ:lN{　辷ｿ ﾉ ! 「￣l |弋辷ｿ　l1 l
　　　l:/　l.:/　　 lL_ ＿＿ノ　 ,　　ヽ _二 ノ.:.:.
　 　　 　 l/　､__',　　　　　　　 　 　 　　 /　.:.:.
　 　 　 　　　　　ヽ　　　　　r‐‐ｯ　　　/.
　 　 　 　　　　 　 入　　　　　　　 ,..ｲ.:.
　 　 　 　　　.　'´　i.:.＼＞ -- ＜/
　 　 　 　／　　 　 |.:.／＼　 　 ノ.:



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ,,.._
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／＼｀'ｰ-‐=ｙ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _　　　__　　　/　 　 `j　　　 ）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Y´_｀'ｰ'"　ヽ__/／ ∠´ ｝　: : /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .｛　 .ト､_,,=宀ト iヽ=v＝ﾉ　　 〈
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＞､<~てjｰ し'へとケヽ==-.ζY
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿_,. '´,ゝ ﾞT ,　　',　　,　　ヽ　　｀丶,　.{
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.＼　　　/　.,' i　i!　　i」__ ',　　 ｝　　　,ヘ､,}ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　`ゝ.,','　/_|_,,].ｪ、 'i ヽ｢Τ　ﾉ_,.kK"　ヽ、　｀>‐-、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /_i i .T「',ヽ､| ＼ ｪ示抃ゝ¨ 》 ヾ､､　 ＼、ﾞヘλ_
　　「い、いいのよー。　　　　　　　　　　　 | !, .|丶汽》!　 ｀' ｋ州ｊﾞii ル　 !ヾ､,_　 ヾ,ｰ _　 ,）
　　　ヒナはいらないのー」　 　　　　　　　 ',.|ヽ.!ヾ!狄j　　　 ゞ=″j）ミ｀'x　二ﾆ=‐-､ヽﾐ､k
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .N_ >ゝ|｀¨ 、　　　　　 !ミｰﾍ ﾍ彡 ﾆ.‐ ﾆ ｀}ミ,),〕
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ）ミ- .!　　∈つ　　　 乍ﾐ≧「j´,", ｷ　ミ ｝ミｿ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｀>-‐ ﾞゝ､,_　　　　_,,..　ソ≡ゞ!､i' y彡 ミ jτ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.ヽ,彡_儿ミ＞≦┐_ _ ＿いミﾉヘ((_＠、）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ζ( ξ/´￣｀＼,　　 ￣ｊ､_　　　　ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ､=-一へi　　　　　 ヽ:.:.. - ´　Y
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Ｌニ／丿　　　　　 ::..　 　 　. |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_,,.．≦ﾆ＞イ"　<　.:.　　　 :.::　ﾉ　　　,'　!,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 <'" ,ィ´ _　 ﾞ',ｲ　　 へ ::.. .::. .:: :::i"　　 ./　　）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　!／　　ヽﾞ7'　　　 ./´　 ::　　 ':' ﾞ>　 ./　.::./


口を開く度に意志が揺らぎそうになる妹はもう、涙目になりながら力なく首を振っている。

二１５８．
そんな二人のやり取りに微笑んでいたやらない夫は、震えている雛苺の手をそっと握りしめた。



　　　_____　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_　-‐ . : . : . : . : . : . :
＼　　　　　　ー‐‐--､_____　　　　　　　　　 　　　　　　　 　 , ---―- ､　　　　 _ ..　-‐　 . : . : . : . : . : . : . : . : . : . :
: : ＼　　　　　　　　　　／⌒ー‐-､_____　　　 _____　　_ -‐ｯ'　　　　　　 `ー--､}　: . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . :
: : : : ヽ　　　　　　　　,'　　　　　　　　（￣￣￣　 ￣ 　　「　　 ,.-､　　　　　　　 ', . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . :
: : : : :　ヽ　　　　　　　ヽ、　　　　　　 丶　　　 　　　　 　} 　　/　　＼　　　　　　 ､ . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . :
: : : : : : :　' ,　　　　　　 　|　　　　　　　　) 　 　 　 　　　 ｊﾉ　ノ　　　　｀丶、　　　　ヽ . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . :
: : : : : : : : 　',　 　 　 　　丿　　　　　　 /　　　　　　　　　`ﾞ´　　　　　　　 ヽ　　　　 } . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . :
: : : : : : : : :　i　　　　　　（　　　　　　　 ',　_______ 　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　　｜ . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . :
: : : : : : : : :　|　　　　　　）　　　　　　　　',　　 )　　 ヽ, -‐-､,ｒ"ヽ　　　　　　　　丶　.ィ´:､　 . : . : . : . : . : . : . : . : . :
: : : : : : : : : .|　　　　　 /　　　　　　　　　)　　/　　　〈 ⌒／ ゝ /⌒ヽ　　　 ヽ　　∨　､: ､　 . : . : . : . :_ .. -‐ ￣
: : : : : : : : : |　　　　　（　　　　　　　　　/　　　)　　　 `´{　　／ 　 ∠、　＼　 ＼__ﾉ　　＼}_ .. -‐ "
: : : : : : : : : !　　　　　　',　　　　　　　 (　　　 /　　　　　｀¨´､　／- 丿丶、　＞‐'
: : : : : : : :　,'　　　　　　　',　　　　　　　',　　ノ 　　　　　　　 ｀ﾞ'､__／`－-'￣
: : : : : : : :　',　　　　　　　　　　　　　　　',　（

二１５９．
突然の不意打ちに、真っ赤になった雛苺は顔を背けて振りほどこうとするが―――



　　　　　　　　　　　fzfzィ彡､-‐ｧ´　　　　　　　　　　 ヾﾂｆz
　　　　　　　　　ｆｚｲ¨"　　.:.:{　.:.ixz､..__　　　　　　　.:.:.: Yゞfzfzx
　　　　　　　 fzﾂ　　　　 ,ｨf厂丁`ヾfzゞfzx:､　　 　 .:.:.:.:|:.　｀ヾﾐz
　　　　　　　 Y　　　　xfﾂｲ' ﾊ ヾ:､ ヽゝ八fz小、 　.:.:.:.:.|'　 _＿__
.　　　　　　　 |　　 xfﾂ"く　ﾑ┤ ﾄｽノ´　　　fz圦　 .:.:.:.:.|　 「ヾ、
　　 　 　 　 ,ｨ! 　 ｲfxﾚ1辷i　 し’ 、 :､　　 　 ﾞfzX　.:.:.:人_.:|＼ `
　　　　fxzﾚ"|!　,f才ﾝ 　 ヾ　　i! i| ﾊ　ヾ:、 　 八fz}_／　 ヾﾘ　ヽ
　　,ｨxfイ.:　.:| rf;{"　i　　 ﾊ　　i! |i　ﾊ　 ヽ:、 ｲ　j;｝i 　 ／' 　 )　ﾉ　　　「ふ、ふえっ！？
　　{f∠ィ' ¨ヾ:ｲｧ'　 l 　　i! il　 i| i|!　 }!ヽ　)}　i!　{i从 ′　 ／ }　　　　　ふええええええ～～～！」
　　　　　　　 /,ｲ{　 i{　　i|　!i　 i! l!i　 ハヽ_j斗!　ｊヾ ヽィ　　,ｲ{
.　　　　　　 //i {!　 i|　i　il　i|　 |j､l iｧﾅ乃工ﾉﾘ ｲ　)} /'　 イ　i,ｨ
　　　　　　〈' {i八　い:､ヽ i!_,.!i;　ﾘﾊﾘjｲ;乍夾ﾊ〉ﾘ ｲ〃 ／　 ／/
　　　　　 ／ﾒ{　 ヽ ヽミ;匕ヾハiﾉ　ﾘ ｿ　ヾﾆ''’厶┴ュ/　／ ーｧ
　 　 　 ,:／ 大ｰ:､ ヾ ヾミ;ｲ示ﾐj　 　 　 　 "" ら≡≠）/ムく二_
　　　　;厶-―‐-､｀ヾ. _ﾘ"ヽ ゞ’　　,　　　　-=≦ヲ く＜=＝ｧ/ﾑ
　　　　　r‐-｀二ﾆ}　ﾉ ﾉ /'/　､""　　- ‐　　 ／､_;ノ てﾑハ（_ノj
　　　　　 ￣｀ヾｰｬ-ｧ､{斗ｧZ＞≧=ｰ- ..__..イ:.　　／´: : : : : : : :｀ヽ
　　　　　 ゞ=＝ミｭ､〉〃ム三≧ヾく二ゝ _j'' 　 ／: : : : : : : : : : : :
　　　　　　　　　　 半ｧ／: ｀てﾗ’_.=≠＞个≠!: : : : : : : : : : : : : :
　　　　 　 　 　 　 ({／: : : : : : : {:r''" /,ｲ:i ﾄヽ |.:.:.:.:.､: : : : : : : : : :
　　　　 　 　 　 　 〈.:.:. .:.:. .:.:.:.:. |:{: ://:./ﾘ }:jヾヽ.:.:. :ヽ: : ヽ.:.:.:.:. :
　　　　　　　　　 　 ヾ:ヽ.:.:.:.:.:.:.:.ヾ彡': :i:/ i:::!.: :ヾ>: 〈::': : .::::＼.:.:.:.
　　　　　　　　　　 ／: ﾉ: : : : : : : i : : :,ﾒ　l:::i : : ﾉ: : :ｲ: :i : : : : : : :
　　　　　　　　　 く: : :': : : : : : i : :{!: :./!　 |:::! :Y:::::/: j: ::|: : : ::ﾍ: :
　　　　　　　 　 　 ｷ: : : : : : : :|: : i! /::j 　 !::{ : |:::/: :': : :|: : : : :::j : :
　　　　　　　　　　 入: : i: : : :.:|: : ': {:::{ 　 |:::| : Ⅵ: : : : :.!: : : : : : : :



その隙に、すぐ隣に皿が置かれてしまう。



　　　　　　　　　　　　　　　, .. ---　.._
　　　　　　　　　　　　　／::';';';';';';';';';';':ﾞヽ
　　　　　　　　　　　　/: .:;';';';';';';';';';';';';';'; :ヽ
　　　　　　　　　　　　l: : ::';';';';';'苺';';';';';':.: : }
　　　　　 _....--‐―''''ﾞ,: : : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: : . :!''---...._
　　_..r‐"´＿--‐'''""´ヽ: : : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:. .: ノ　ﾞ''‐ｰ-..__ ｀''ｰ.._、
　　!　　　ヾ､　　　　　　　｀ﾞｰ - -- ─ '´　　　　　　　l’　　　!'
　　ﾞ''ゝ_　　 ﾞﾞ''ｰ--......＿_＿ 　　　　＿__＿....--‐''''´ 　　_..r''’
　　　　 "''‐ｰ--....,,___ 　　　 ￣￣￣　　　　__,,......--‐‐''"
　　　　　　　　　　　　￣￣ﾞﾞ''''''''''''￣￣￣´

二１６０．
そして、ゆっくりと手を離したやらない夫は戸惑う彼女に小さく頷き、食事の後片付けを始めてしまった。



　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　／　　 ヽ_　　＼
　　　　　　　|　　　 （⌒ ）（⌒）
　　　　　　.　|　　　　 （__人__）　　　　　　「ここに置いておくから
　　　　　　　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　　　良かったら食べてくれな。
　　　　　　.　 |　　　　　　 　 }
　　　　　　.　 ヽ　　　　　 　 }　　　　　　　　ジュンは休憩だ、身体をほぐしてから
　　　　　　　　 ヽ 　　　　　ノ　　　　　　　　一時間半ほど仮眠をとっとけ」
　　　　　　_,,,,ノ|､￣／/／/ ＼、
　　_,,..r''''"/　|　＼`'／　 /　 | ￣`''ｰ-､
　 / 　 　 /　 |　 ／＼　 / ／　　 　/　ヽ
　ﾉ　|　　＞　|／）::::/＼/　＼ 　　ノ　／}
　{ 　 |　{　　 | ,r":::ヽ　/ 　 /　　/　// ハ



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |:.:.:.:.∧:.:|　　　 |:.::∧:.:.:.:.:.| ≧:.:L-＼:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 }:.:.:.:.ヾ:.:.:',　　　|:./　.V:.:.:.:|ﾆ-=＝＝=＼:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 >:.:.:.:.:.|ヾ:.V=＝/ニ　 V:.:.:i{　ゞテ＝ァ　||＼:.:.:.ヽ:.:.:.:.:.:.∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /:.::V:.:.:.:ﾚ'´>=ﾆ示 ヽ､＿V:.||　 {辷zり　 .||　ﾚr -､V:.:.:.:.:.:∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　 　/:.:.:.:.:V∧:.r'´ /ひｮリ ||￣ .ヾ∧＿＿＿ //　　／ .}:|:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
　　「そうするよ。　　　　　　　　　　　　　　　　/:.:.:.:.:.:.:..:/ヾ::>　 ゞ' ´　|| {　　　 ￣￣￣￣　　 入 ソ/:.:.:.:._＿／
　　食べたらさすがに眠くなってきた」　　　　￣￣￣ |:.:.:∧ヽ＿ -=''´ ヽ　　　　　　　　　 　/　／:.:ヽ￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾚ'´ ヽ |　　　　　　　 ＿　　　　　 　 /-'´／￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　 　 ￣_　　　 　 　 　/￣゛゛
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　　＼　　　　　　　　　　_　ィ|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｀ 　 ､　　　　 イ　　　ｙ入
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ニi　´　　　　／　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／/　}　　 　　/　　　　|＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　/　/　ﾉ　　　　/　　　　　|　 ￣ ' - ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/　　V'´￣￣ ../　 　 　 　 |　　　　　　｀ ' - ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／/　 　/::::::::::::::／＿＝=-､＿ |　　　　　　 　　/ヽ



もうヒナの扱い方を覚えてきたな、と少し笑ったジュンは十分ほど身体を動かしたあと毛布に潜り込んでしまい、
桶に食器類を入れたやらない夫は重曹を片手に川岸へ行ってしまう。

二１６１．


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,, -─- ､._　〃"
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　"ミ ／　　　　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　♪　　　 | 　 ⌒ 　⌒　　|　　　～♪
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　（●）（●）　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　 （__人__）　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　♪ ヽ　 ｀⌒´　 　 ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 　 　　 ヽヽ,
　　　　　　　　　　　　　　　　　""（ （　（　ヽ　 　　　／.／
　　＼.ヽｎ 　' '　 　 　　　　　　　　　　' '＼ ＼　゛／／　 |　　　, ,
'￣ " '' '　　 　　　　　　　　　　　　, ,　　::::::::::::::o｡O::::::::○　　　　　　, ,
　　　, ,　　　　' '　　　　　　　　　　　　::::::::::::::::::ﾟ::::o:::::::::::::o:　ｼﾞｬﾌﾞｼﾞｬﾌﾞ　' '
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　::::::::::::::ﾟ::::o:::::::::::::o:
ヽヽヽぃヽヽヽヽぃヽぃヽヽヽヽヽぃヽ |　　　　　　　　　　　 |ヽヽヽヽヽぃヽヽヽヽ
.-～ー…‥―～―---―----～―|　　　　洗い桶　　 /　ー‥…～‐--―--
　　　～　　～　　　～～　　　　～～ヽ＿＿＿＿＿＿／　～～　～　　　　～～
～　　　　～～　～　　　　～　　～　　～　　～～　　　　～　　　　　～～　　～



その場に一人残された雛苺は本当に困った様子で、横の菓子と、
鼻歌交じりに洗い物をするやらない夫の背中とを見比べていた。



　　　　　　　　　　 /　　　　　　　/　　　　　　 !　　　 }ﾐﾒ､: :/: : ::ｨ: '::´:{{ハ
　 　 　 　 　 　　 /　　/　　　　 i　　　　 　 　 l　　　　 ゞ:V:_:ｨ'´: : _: : : :ﾒハ
　　　　　　　　　//　 i　　　　 乂. 　 　　　　　|　　　 　 ヽ: : : : ／iヽ￣ ｀　 i
　　　　 　 　 　 iｲ 　 l 　 　＿_ﾊ　　　 　 　　/　ｨ　　　　　>.／　 ,|ハ　　　　＼
　　 　 　 　　　 {'i .　 l　　　从八ヾ　　､_＿ｨ＿/_i　　/　 |￣ 　　 |　 ＼　　　　＼　　　（もう………
　　 　 　 　 　 　 ',　　　　.li ｨ=ﾐﾒ､　　　 .//イ /￣〃　 /　　　　/　　　 ＼　　　　　　　　　強引なの）
　　　　　　　　　　ゝ､ﾊ　 ﾄ､ilけk}ヽ　 ／彳ミﾒ､ ィ' 　 ./　　　　/　　　　　　｀ｰ ､ _
　　　　　　　　　　　＞ >､', 弋ソ　 ｀"　 {{けオﾐ､イ.／　,　　／
　　　　　　　　　／-'´￣ ト' "" 　　　　　 辷ツ　 〃彡''_.／ｲ　　　　　　　＿＿ _
　　　　　　　　/　　ヽニ彡､　　 ､　　　　　"" 　 イノイ≦　 il＿　,,　ィ ''´￣ ￣ ｀
　　　　　　　　{　-＝彳_ィハ　　 -(　 　 　　　　　ﾉ＿　　　　＞￣
　　　　　　　　 Y´　,,_≠〃フ＞､　　　　　　　　イー＜＞_/ハ￣ ＞- ､　　　　／
　　　　　　　　　ヽイ三＝≠＝-､ ー -,―　 ´　 |＞､ノﾌ｀ー -ミ''ー　､ _ ｀ ー'
　　　　　　　　　　　 >=／: : : : : : ＞イi　　　　　 >=-''´￣ヽ＿}}　　　　 ＞
　　　　　　　　 　 　 ／: : : : : : : ´: : :il　_. . .ｨ: ':´/: : : : : : : : :ヾー＝-'' ´
　　　　　　　　　　 /: : : : : :ｨ＝＝v＝ﾐﾒ､: : :r': ´: : : : : : : : : : : ヽ



しかし食事の用意も持たずに長時間居座って、二人に迷惑をかけているのは自分だとの自覚があったから
その強引さが嫌ではなかったのも確かである。

80 名前なんて無いだろ常識的に考えて 10/08/14 21:20:32 ID:s0cEcXrr お兄さん公認の仲に見えてまいりましたｗ