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　　　　　,iillllllllllllllllllllllllllll!lﾞ”　　ザリッ、ザリッ
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この玉砂利というのは、踏むと音がするので、泥棒が裏口から忍び込んだ際、
庭などに敷かれていると、踏みつけたときの音で家人に感づかれる場合も多く、
これをどうするかと江戸当時の泥棒たちは頭を悩ませていた。
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ただ、どの世界にも知恵の回る者、職人芸を誇る者はいる。
この場合は泥棒なので、職人芸ならぬ盗人芸といったところか。
そしてこの羽韮という男は、その盗人芸を身に付けた泥棒のひとりだった。
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冬の季節はこの男にとって、稼ぎ時だった。寒い時期だと、玉砂利にかけた脂が固まるからだ。
こうなればしめたもので、どんな屋敷にも潜り込んでしまえる。
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　　　　　 ヽ, ､!､　　｀ﾆﾆﾆﾆﾞ　　,!
　　　　　　　 |｀＼　　 ﾞﾞﾞﾞ　 　,イ
　 　 　 　 　 ト､　｀＼＿__／´ ,|
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男が慣れた手つきで裏の引き戸にも油を垂らし、
音を消してからそっと戸を開けた。
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　　二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二
　　　| |　|三三三／／::三三三三三三 !ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆl
　　　| |　|ﾆﾆﾆ,／／ヽ三三三三三三三ゞﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆヽ
　　　| |　|二／／二 |＿_＿_＿_ ＿_._　| |l| ,ノ￣￣￣ヽ、!
　　　| |　|／／　　 |::|:::::||::::||:::::||::::||::::|｜|!|:|　　　　　　 | |
　　　| |　|／ 　 　 ｜|二 二 二 二 二; | |l| |　　 　　　　| |
　　　| |　| 　 　 　 ｜|:::::||::::||:::::||::::||::::|;;| |l| |　　　　　 　| |
　　　| |　| 　 　 Q ｜|二 二 二 二!￣! | |l| |　　 　Q　　| |
　　　| |　| 　 　 　 ｜|:::::||::::||:::::||::::| Q|;;| |l| |　　　　　　 | |
　　　| |　| 　 　 　 ｜|二 二 二 二!___|;;| |l| |　　　　　　 | |
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　　　| | ｜ 　 　 　　 |―┴―┴─┘　| |l|'　 　 　 　　 　|
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 (二二二ﾆ/二二ﾆ/二｜二二ヽ二ヽ二ニニ)
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　　　二二二ﾆ/二二ﾆ/二二二//＿/__//＿/__//＿/＿| |＿_ヽ＿ヽヽ＿_ヽヽ＿ヽヽヽ二二ヽ二二ヽ二二ヽ二二ヽ
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場所は新発田藩十万石溝口従五位下を頂く大名のやってられっか夫の下屋敷である。
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屋敷の中をうろうろせず、あらかじめ下見をしておいた部屋へと真っ直ぐ行き、
手文庫を開けると中に入っていた金を取る。
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　　　　　　　　　　 ,;'´　　　　　　　　　　　　　　::::ヽ,.
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　　　　　　　　 ;　　　　　　　　　　　　　　　　　.,,.:::::::::i'
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　　　　　　　 　 ';　　　 ,..､;　=',;ー_､　 ´'' '' '_,ﾐ !::::::::;´
　　　　　　　　　｀';　 ,/, ﾍ} ,;'　ｲ･ﾅ';`ｰ　,ｨﾗ'; /,;'_､''
　　　　　　　　　　｀'､_! ;'r.ｌ　|　｀"''´, -　(,.｀´f';"
　　　　　　　　　　　 _,ヽ'-|　i! ,;_＿ ｀ "r‐'　ｲ´＿　　　あんまり欲張ってもしょうがねえ。
　＿＿ ,,,, ...,,, ,. -‐''"／ヽ'从、　　 ｀二ｰ' ノ';';';,::´';'　　二百両で勘弁してやるか。
"､:::::::::::::::::::::::::::::::::::::{´ 　　:　::｀ヽ､　　 /´;';';';';';';';'
　ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ　　　:　:::::;''ｶﾞ;─';';';';';';';';';';'
　　ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::l　　　､..::::/::'l;';';';';';';';';';';';';';
　　　'､::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ　　　　/　 |''';';';';';';';';';';';'
　　　 ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ'' - ､　,.-'l::::::::..';'';';';';';'

　　／　　　　　/　　　　　　　　　　　　　　　　　 , /　　　　　　　　　　｀i
　/´　　　　　 /l !　　　　　　　　　　　　　　 　// ﾞ　　　　　　　　　　　〈
li　　　 　 　 　 !丶　　　　　　　　　　　　　　´　　　　　　　　　　　　　 li
,li　　　　　　　 ､　　　　　　　　　　　　　　　._,,,,,,,.　　　　 　 　 　 　 　 ｀|
l´ 　 　　　　　i, l､ ､　　　　　　　　　 , -‐'''´　　｀i　　　　　　　　　　　 li
l　　　　　　　 /｀ ｀ﾞﾞ‐-;､_　 　 ,_,,‐'''´　　　　　　 l　　　　　　　　　　　 !.
丶, 　　　　.　/　　　　　´ ￣｀´(.､__, ‐''''-､,,.　 　 i　　　　　　　　　　　〈
　i　　　　 /　i　　,＝＝´　　　　＼｀ ´_ﾆ_｀｀ヽ､　i　!.　　　　　　　　　　i
　ヽ,　　　i　 li ／ ,/⌒ヽ､　 　　　　　 , ⌒｀､　ヽ ｀､;､､　　　　　　　　_,!
　　ヽ､　 i　 ｀i　 ´,イ￣い　　　　, 　 l （⌒い〉　 　〉､｀丶;　　　　　, ,´
　　　｀!　｀ヽ. ｀!　､_ゝ-｀ノ〉　 　 ´､　　､｀_´ノﾉ　　,〉　/´￣i!　／,/´!
　　　　｀､ i´丶i ,, , , ￣,. /´￣｀　 ,,､.　 - ‐ ´　　 /´/ , -　 li　　,／
　　　　　ヽi ｀i |´　　　( ,,l､ ＿ , --､｀)　　　　　 ,/　 i/､　　!i　 /ﾞ
　　　　　　｀､i i　　　　　　　ヽ　　　｀　　 ､.　　i （　 / ﾉﾉ 　/／ 　　それじゃあ、お暇するかね。
　　　　　　　｀､ヽ 　(_ , - ‐─- --─ ‐,ァ｀　　i i! / ／　 ／
　　　　　　　　＼､　 ｀丶￣￣￣￣,´／　　 　 ｀,｀ 　, _ノﾞ
　　　　　　　　　　｀,　　 ｀￣￣￣´　　　　　　,/〉_-＜´
　　　　　　　　　 　 ﾄ　　丶─-　　　　　　 ,／　l
　　　 　 　 　 　 　 i ｀i. 　 　 　 　 　 ,／ﾞﾞ´　/　|
　　　　　　　　　　 i　 !　 　 　 　 _,／　 　 　 　 |
　　　　　　　　　　 |　 ｀ ￣￣￣´　　　　　/,　 │
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二百両を懐にいれ、元来た道を戻ると、男が屋敷から出て行く。
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　　　ゞＷﾉ
　　　 |三|
　　　 |三|
　　 ／ヽ￣￣＼
　／:::::::ヽ＿　＿＼
　|:::::::::::/　･　　・　|
　|::::::::＠　 （__人_）
　|:::::ノ　　　｀ ⌒´/　　ふむ、昨夜、何者かが屋敷に忍び込み、二百両盗んでいきよったわい。
　|　　　　　　 　 }
　ヽ　　　　　 　 }
　　ヽ　　　　　ノ
　　　/　　　 く ＼
　　　|　　　　　＼ ＼
　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)､




　　　　　　　　　　　　　　___
　　　　　　　　　　　 ,..イ,ｒ /　　 ＿_
　　　　　　　　　 ／　／ }/__,イr'"´}
　　 　　　　,.　´/　 /‐''"'　　 {"､　ｉ}
　　　 　 ／　　'　　 /　　　　　　 ヾ}
　　　　/　　 /　　 /　　,/ |　 | }　,ハ
.　　　/ /　 ,′　 ,'　/ |l|　| | l| |　　||
　　 　 ,′! ′ 　f' /! _|｣　| L｣_|　　ｌ!
　　　　　 | |　 　 l7テ_｣ﾉノ}ﾉ _｣|!　/′
　　 　 　 | |　 　 lr升(｀`　　ﾊ)ﾉイ
　　　　　,'│　 　|ヾｚｸ　　　ﾏ {　',
　　　　 / ,ﾊ.　 　| ｘｘｘ.　　　'丿　ヽ　　大名の屋敷に盗みに入るとは大胆不敵な奴でありんす。
.　　　 / / ム,　　', -='''"""''''ヽｎ　 ヽ
　 　 　 /r'": :'．　 ヾｰ ､　　　　|ﾉ`!、 '．
　　　／/: : : : :ヽ　　ヽ_......___ 　 し'ノ': ,'．
.　　　rく__: : : : : :.＼　 ＼-‐く　　　　 　':,
　 　 ′　 ｀ヽ : : : : :＼　 ヾつ、　　 , ,',',',':,

　　 ／￣￣＼
　／　　　　　__＼
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　|　　　 ＠ （__人_）
　|　　　　　　｀ ⌒.
　|　　　　　　 　 }　　　まあ、金は取られたが、命までは取られなかったから、
　ヽ　　　　　 　 }　　　それでよしとするか。
　　ヽ　　　　　ノ
　　　/　　　 く ＼
　　　|　　　　　＼ ＼
　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)､



　　　　　　　　　　　　　　　　　　_
　　　　　　　　　　　 /＼ ＿＿_/ ＼
　　　　　　　　　　　｛ﾚ'´: : : : : :｀丶}｝
　　　　　 　 　 　 ／: : : : : : : : : : : : :＼
　　　　　　　　　/: : : :､,i :/＼:i:､, : : : :小
　　　　 　 　 　 lｲ: :N ◯　　　◯ー|: :.:|:|
　　　　　　　　_　|: :|""　　　　　"" |: :.:|:ﾚ‐､　　さすがお殿様、太っ腹でありんす。
　 　 　 　 　 （／| 人　　`^''′　　│: :｢＼ﾉ
　　　　　　　　∨|: : /≫　__,　‐=≦|: :.:|／:＼
　　　　　　　　｛八: :|　`¨¨大¨¨´　:|: :/ : :i＼｝
　 　 　 　 　 　 ＼ヽ{＿／∧ ＼＿j_/ : : :|
　　　　　 　 　 　 八:_{　 （＿）　　 八: : : :|
　　　　　　　　　　　｛ `ー---一'´ ,ノﾍ :.:ﾉ

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　　　　　　　　 rヽ　　／　＿　＿　＼
　　　　　　　　 i　!　　|　　 ･　　・　　 |
　　　　　 r;r‐r/　|. 　|＠ （__人_）◎ ｌ
　 　 　 〈_L (｀ヽ .}　　|　　 ｀ ⌒´　　|　　それよりも最近、ずっと屋敷にいて退屈しておった。
　　　　　l｀ （ ｀`/　.　 |　　　　　　　 }　　何か面白い事はないか。
　　　　　ヽ 　　l　　.　ヽ　　　　　 　 }
　　　　　　|,. 　 l　　 /⌒　 　ー‐　　ｨ ヽ



　　 　 /　/ ,　/　/　/ ,イ : /　.,'イ .|　 l　: : iﾄ､　 :ﾄ 　|　: :|　:i: :
　　　 　 / / /　/　/ / ｲ :/ 　 !　l　l　 | ＿ |! |　.:| |　l　 : |　:i: :
　　　 　ｊ ,' ./　,' , /_/!⌒　　　　　ヾ|　 ´　 ｀　ﾄ､:ﾉ |　|　: :ｊ　 |: :
　　 　 //　i . :| :ト|'　　　__　ﾞ　　　　　　　＿　　　ﾞﾒ､/ : :,' :　:|: :
.　　　/ｲ　 l　 ﾄ､ :l　,,ィﾆヾ､　　　　　　 ィ"テ≧ﾄ､　/ﾄ､/　: : :|: :
　 　 　 |　 |　　: : |〃ろ;;::::}　　　　　 　 ' ろ;;:::::ﾊヾﾄ　 ,'　; : : .!: :
　 　 　 |　 |　　: : |ﾍ弋ゞ''ﾉ_ﾉ　　　　　　{::::ゞｲ:::ﾉ　》｀/ /　: : j :
　 　 　 |　 |　　: : ｊ　 ﾞ''　 l　::::..　　　　　 ''ー―'　　 / /　 : :.,': :
　 　 　 | 　|　　: :,' :::::::::::　　　　　　　　:::::::::::::::::: 　/ /　 : : /: :
　　　　 !; :ﾘ　: : :i　　＿ ｆv￣ ｀vヽ.　　::::::::::::::::::　/ ｲ　 : : /: :　　　面白い事でありんすか。
　　　　　 ハ＼ｒ::´,:::::::::::￣｀ヽ. 　　ヽ　　　 　 　// .| : : :./: :　　　 お殿様はどんな事がしたいでありんすか。
　　　　,､;...::´::::＼,ｲ:::::::...:::..　... V´｀ ハ.　 　 　//　 |: : :/: : :
　　 ノY´::::::::::⌒｀:::::::::::::::::::::::::::::....　　 | 　 　 /,''　 ,': : /: : :
　ｒノ｀i|::::　　　　:::::::::::::::::::::::（'＼:::Yヽ .:! 　 .ノ'　　/: : /: : : :
　!|　ｲ!:::::::.........:::::::::::::::('＼::::::ヽ. ＼　Ｖ　　　 　..ｲ: : /: : : :
ノﾉ /'）:::::::::::::::::::::::::::::(ﾞ＼ ｀ヽ、ヽ　｀ヽ＼ ... イ /: :./: : : : :

　　　　　 　 ＿＿|＿
　　　　　 ／　　　　　＼
.　　　 　.|　　　　 _ノ　　ヽ
　　　　　| 　　　 　・　　・ |
　　　　　| 　　＠　（__人__） , -―ーっ
　　　 　　|　　　　 ｀ ⌒´ﾉ （ ゝ彡￣　　また両国にいって遊ぶというのも悪くはないが、
.　　　　　 ﾝ　　 　 　 　 } ﾞ|￣'|　　　　　それではちと芸がないのう。
　　　 ／⌒ヽ､ 　　　 ノ　 .|,　 |
＿＿/　　　ﾉ ＼_ィ ´ー‐ｨ'　　 ∫
| |　 /　　 /　　　　r_＿＿__ ∬
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| | （　〆⌒'──r─≒､.（(| 　 |
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣└‐┘￣￣￣￣￣￣



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　　　 |三|
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　　 ／ヽ￣￣＼
　／:::::::ヽ＿　＿＼
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　|::::::::＠　 （__人_）
　|:::::ノ　　　｀ ⌒´/
　|　　　　　　 　 }　　それよりもわしは湯屋にいってみたい。
　ヽ　　　　　 　 }　　それと、またお主に生栗を食べさせて……ｺﾞﾆｮｺﾞﾆｮ
　　ヽ　　　　　ノ
　　　/　　　 く ＼
　　　|　　　　　＼ ＼
　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)､

　　　　　　　　　　　　 　 　 　 イレ'^!
　　　　　　　 　 　 　 　 x＜　　 ;　 /
　　　　　　　 　 　 _ ,／: : : 〉／;:ﾊ/￣ ｀丶､　＿＿_
　　 　 　 　 　 ／, :´ : : : ／;:;:;;;':/: : : : : : : : ヽ　: : : : :く二ﾆZ
.　　　　　　 ／: : : : : : ／'"´: ￣: : : : : : : : : : : :＼;;-‐;;:'"／
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　　　　 i: : : : : :/ : : : /:/:ｌ::::八! |: : {:: : : j:: : :|:: |:: :|:: ｌ: :|
.　　　　ｌ: : : : .:,':: : : : l: |l::|::::|:::j/|: :,'!:: : /ｌ:: ::,':: j: : |:: j: :|
　　　　j: : : : .:ｌ :: : : : l: |ﾚ∨|:‐ト|: ハ:::.:!│:/_;.ｲ:: /::/: ,′
　　　 ,' : : /.::,'!::: : : : l: L二._Ⅵ_V｀ヽヽ{ 匕Ⅳ ﾚｲ::/} /
{￣ ∨: : /.::/::|::: : : : l: |l代ぅ:歹￣`　　弋歹＾ｱ/:ｲ／
l:::::::├＜.::/:::,'|::: : : : l: | 　 ¨¨＾　　　　　 `¨　,':: : |
ｌ:::::::∧::::::::｀ヽ:|::: : : : l: |　　　　　　　　 〉　　 :::: : :|
'::::::::::::}::::::::::::: `ｌ: : : : l: ﾄ､　 　 、　　 _,　　 ｲ::: : : :!　　　　お殿様は本当に好き者でありんす。
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ヽ／::::::::::::::::::::∧: : : :l: |　　ハ/　　 ∨ヽ ｝:ｌ::::.: : :|
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　 　 　 　 　 | : :i　ﾘ ξ::::::::/ :/::::::::::::,γ"""ﾞ'',:ﾞ';,:. : ＼　　　　／　　　 ／
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　　　　　 　 　　 |,　 　　 　｀ ⌒´ﾉ
　　　　　　 　　 │ 　　　　 　　 ｝　　うむ、気に入った。
　　　　　 　　　　 ヽ､　　　 　　ｿ　　芋やゴボウも面白そうじゃ。
　　　　　　　 　 ｲ斗┴r┐｀ .;
　　　　／￣`ーゞ､　 /　|__ 〈ー─r､
　　　/　　　　　＼ ∨＼ 　|,ベ._ /　|
　　 ｛　　　 . : : : . ヽ＞ｰ＼[￣{ 〉＼|､_
　　　| 　 　 　　 ｀丶}＼　 __＼_]~∨'＼｀ヽ
　　　:|　　　._　　　　＼_}/r‐-}＼　ﾞ,`''く l　ﾞ,
　　　 ﾄ､: :./ ／￣｀` ぐ└f'二）::{　 ',　 | !,ゞ┐
　　　 `､∨ ´　,.､-''"~￣}_｛‐''く:::{_　 ', _|_|_,rｰ'､_
　　　　 }｛　／　_､-'''"~￣{_＼;;;;;ｊ;＞＜;:::::＼:::ﾍ}＼
　　 　 　}∨: ／　　_､-''ﾞ~￣￣　　　　　＼::::},之_　ヽ
　　 　 　 〉∨ 　 ／　　 　 　　　　　　,.､イ;;ノ_ 　 ｀ヽ}
　　　　　{:　＼,/＼　　-‐　'"　　　／｀￣　　　 　　:.:｝



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　　 　 　 　 　 　 　 　 i:.:.| . . : : |:.:. :/:i: :|: : : |: : : : : : : : : :'
　　　　　　　　　　　　 l....|:. : : : :|:.: /:/|:. !:. : :}: :./:|:|:.|: :. : :.',
　　　　　　　　　　　　 {:.:.|:. : : : :|:./ｲﾆ|从:.:./|:,ｲ:/卞|:|!: /ハ
　　　　　 　 　 　 　 　 ':.:.|:. : : : |/ｨﾃOﾄヽV　ﾘﾙﾃﾇ､}ﾙ///
　　　　　　　　　　　　　|:.:|:. : : : |!弋z;ｿ　　 　　ﾋz:;ﾀ'|://ﾉ
　　　 　 　 　 　 　 　 　|:.:|:.:. : : :|　￣ 　　　 ､　￣´ |: :!
　　　　　　　　　 　 　　 }:.:|:.:. : : :|　　　　　　/　　　 ∧|　　　外でまた尻を叩くのも込みかや？
　　　　　　　　　　　　　ﾉ:_:＞-‐┴―‐､v――y-―'ー'‐--　 ､
-　 _ 　 __　-ｧ――／￣　　　　＜_入´ ￣￣´｀スＴ:＞‐　　　 `ｰ　､r――､---=＝⌒ヽ
￣￣￣　┌'──/　　 　 　 　 ＼ヽ 　＞ -ｧ ´:.:.|:.|:.:＼=‐　　　　　　 ヽ─‐ﾞー┐　　　 丶
　　　 　 　 ｢￣￣}＿　　　_ｨ､ ＼ノ´　　　 ∧ｰ--!:.|: : :く_,. イ　　　　　　}￣￣|´　　　　　ハ
　　 　 　＝|===={　 /￣´|:.ゝ-:':ﾄ､　 　 　 {　i!　　|:.|: : : :ト､彡⌒ー┬‐´l==＝|＝　　　　 ノ
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　　 ` ｰ―┴､＿ソ　 　 ;:.:.:;: : {　　 ヾ＼V ／i!　　 ',:.:.ヽ:.:.:V　 _ -‐´￣ゝ‐‐‐´￣
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　　　ゞＷﾉ
　　　 |三|
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　 t`ｰ;-､_　　_ノ:::::::::＼ﾆ三ハ､:..:＼
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　　　　　　　　　　 /／:.ヽ:.:.:.:.:::i ｉ: ::!ｉ|: ﾄ/ｲハ: : ﾘ!:!:.:;ｲ::川: : : :.:i: :::r'´:.:.:.:.ヽ./
　　　　　　　　 ,. .:'´:.:.:.:.:.::l.::::::;.ｲﾊ.:j从ｆトミ{　{､厶ﾑ/-}::ﾘ:ji: : : :::|: /:.:.:.:.:.:.:.:::}　　　（また、十日はまともに座れぬな）
　 　 　 　 ,. .:'´.:.:.:.:.:.:.:.:.:::;_j／　Ⅵ｀ヽﾍﾞ_ﾏﾘ　 ﾘ ｧ示=‐</｣u : : !:r'; -― ､:.::;ﾊ
.　　 　 ／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::::／　　　　　!::.|: :i ＾¨ﾉ　　 ､ ﾏ沙'ﾉﾏ : : ,'::i〉:.:.:.:.:.:.:.:V:..:',
　　 ／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::::∠ー-<^ヽ-‐/::.:!: : ､ ヽ 　 　 ＾￣´ /: :: /_/:.:.:.:.:.:.:.:/ｲ:..:..}　　わかったでありんす。
　 /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::::／:.､｀ヽ三ヘ:.ヽ{:::.::.',: : :＼ヽｰ-,　u　/: ;イ´/:.:.:.:.:.:.:.:.;':::::::_ノ
　 ヽ､:.:.:.:.-:一:'´:.:.:.:.:.:.:.:.:ﾏ三∧:.i｀ヽ､ヽ: ::::{::ヽご　-‐/: :{/,.V:.:.:.:.:.:.:.:.:ｉ{｀¨｢
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　　　　　　　　丁:ー-　:__ヽV-/ﾊ:.､:..:..:,ﾍ:_いｖ' ／:;. -―‐7:ｉ:::.:.:.:.:.:.:.:.ハ:..:..:.i
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　　　..|;|　　　|　|　 　||　 　|　|　　　| |　| | 　 　 | |　　,,_∥._,,rﾞﾞﾞﾞヾﾞ^ﾞヽ　 - - - - -''"''yi''-"''yi''
　　　..|;|　　　|　|　 　||　 　|　|　　　| |,,,r''''' .ﾞ'ﾞﾞﾞ　"""　　 ﾞ^ﾞヽ'"ﾞ~' ′'"ﾞ~' ′、　　　.,..ili 　.,,,.il
　　　..|;|　　　|　|　　 ||　　r'''ﾞ~　,,.　| |､　 ;;'"ﾞ~' ′　　ﾞ^ﾞヽ"""　　　ﾞ^ﾞヽ""　;ヾ　　'"''"'"'"''""'"''
　　　;;'"ﾞ~' 　　　 ﾞヽ"^ﾞヽ""""""　　　""""　　　　　　　"""　:;;､":. ;,:;;､:. ;,:;;､:. ;,~)　　　　　　''"'''
｀'''ｰ　　　　　　:;､:. ;,:;.;､　　　　:. ;,:;;､:;;､:　´､:. ;;'"ﾞ~;,ﾞ^ﾞヽ;;､:,:;;､:. ;,:;;　　､:. ;,:;　;､:. ;,:;;､:.)　　''"
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''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"""''""''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"""''""''"""''''""''''

┌────────────────────────────────┐
│隅田川のはずれにある寺は、きめえ夫が住職を勤めている寺である。　　 　 .│
│その名も捨武（しゃぶ）寺だ。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　....│
└────────────────────────────────┘

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/A ﾍ∧ ﾍ_ﾍ_ﾍ_ﾍ_ﾍ_ﾍ_ﾍ_ﾍ_ﾍ_ﾍへ:::;:::::::::::::;;::::::::;;爻爻爻炎炎粂粂炎
::::::::::::::::::::::::::::::::::く`７７/''λ_ﾍ_ﾍ_ﾍ_ﾍ_ﾍ_ﾍ_ﾍ_ﾍ_ﾍ_ﾍへ::::::;::::*:::\;;::爻爻乂jj爻爻炎粂乂ﾒ
::::::::::;:::::::::::::::::::く７７７/⌒λﾍ_ﾍ_ﾍ_ﾍ_ﾍ_ﾍ_ﾍ_ﾍ_ﾍ_ﾍ_ﾍへ:::::;;;;彡ﾐ;;爻爻爻爻炎炎粂粂粂
::::::::::::::::::::::::::くﾞ７７７/⌒ﾞλﾍ_ﾍ_ﾍ_ﾍ_ﾍ_ﾍ_ﾍ_ﾍ_ﾍ_ﾍ_ﾍ_ﾍへ''彡炎;爻乂!爻炎炎"粂炎粂粂
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;;;;;乂んんんんん乂(0)んゝ,ゝ,ゝ,ゝ,ゝ,ゝ,ゝ,ゝ,ゝ,ゝ,ゝ,ゝ,ゝ,ゝ,ゝ_(,,ﾉ;;;;;;;;ゞ爻爻爻炎粂爻
:;;;;;:;;;;;:ﾛ/ ﾛ/ ﾛ/ ﾛ/─|"|""|-ヾﾛ-ヾﾛ-ヾﾛ-ヾﾛ-ヾﾛ-ヾﾛ-ヾﾛ''''':;;:;;;;;:;;;;;:;;:; ゞ爻|,　ﾞﾚ爻
:;;::;;:;;:;;;::|"||r────|. | 　|￣￣||￣￣￣|￣￣￣||￣| 　| : :::;:;;::;::;;::;;;;;;;:::;::;;爻|'''(:)"i;::
::::::::::::::::|. ||　r──┐ |. | 　| 　 　||「「「「「「|「「「「「「||　 |　 | .:::::::;::;::;::;;:;;::;;::;;:;;;;:;;.|...:;|:::|;:;:
::::::::::::::::|. ||　|「「「「「|　|. | 　|　 　 ||「「「「「「|「「「「「「||　 |　 | : :::;::::;:::;:::;::;:::;:;_:;::::::.!..,;;|:;;!;;
::::::::::::::::|. ||　|l_l_l_l_l_|　|. | 　|　 　 ||「「「「「「|「「「「「「||　 |　 | ..::::::::::::::::::::::::::|,.|￣|!,,,;;|:::l::::
::::::::C=============○===Ω　||「「「「「「|「「「「「「||　 |Ω==○ : ::::::::::::::::|:;|捨|:;;;;;ｌ::::::;;
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:::::『[[[[[[[[[[[[[[[[[[[[[[[【】]]]]]]]]]]]]￣|￣￣￣￣￣￣￣|]]]]]]]]]] : : ::::::::::|:.|武|::::::;i;::::::
: : : | | ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|. | 　|;;;;;;;;; |　　￣|￣￣￣￣￣￣￣|;|　| : : : : : : : |::|　 |::::::;;::::y:::
　 . | | 二二二二二二|. | 　|二二| 　 　: ￣|￣￣￣￣￣￣￣|| . 　 　 　 |;:|寺|::::::;;::::::::

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この寺は表向きはただの小さな古寺だが、裏では鉄火場を開いていた。
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　　　　　　,-'"　　 　 　 　 　 　｀':;,.
　　　　 ,;'´ 　 ,　　　　　　　　　　 ヽ,.
　　　 ;'´　ミ　　　　　 　　　_　　　　::i,
　　 ,;'　,;'　｀　　 　　　､__ l!　　　　　 :';
　　 ;,'　　　,,､_　　 　 ﾞ,ﾞ,_,､--,　　ノﾉ /ヽ,
　　,;,､　　,;'__ ｀ﾞ‐--‐ﾞ´_＿.　i!　､　 /　/ヽ.
　　　'; ,＿l＿ユ___┌┴‐--､i!､__ ノ　/　.;'
　　　',;!i::::::Ｙて〉,_::::´(ひｊ)::::〕ﾆて ,入´　 ;,
　　　　｀iﾞ､__｀／ ＼::::二 - ´ヽ〈〈　ヾ,　,´
　　　　〈　〈￣､.,-‐｀　_, -,　〈´〈〈◎〉,,ﾞ´
　　　　　＞､,　-‐-‐'"‐‐´　入ヽ_／ ,-　　邪魔するぜ。
　　　　／ﾞ´ ｿ ｀￣´,,__ , -┘ t‐＼´´
　　 ／　　 └-‐┬´　 人ノ´　,i!:::::＼_.
　　ﾞﾞﾞ´　　　　 ,_,-〉｀ソ　 /　　/:::::::::,／
　　　　　　, ／:::::::〉!､　 /　　/::::ヽ､.>‐---､_
　　　　　／:::::::::::::l ヾ､/　　/:::::::::::::｀ゝ_,-'"´ﾞﾞ｀'‐､

　　　　　 ,.⌒ヽ　　　　　 γ⌒ ヽ
　　　　　〈 ● ﾉ＼　　　／＼●　〉
　　　　　 ヽ彡'　　ヽ　/　 　ヾ_ノ
.　　　　　　）　　　　Y　　　 （
　　　　 ／γ⌒　 　　　⌒ヽ＼
.　　　 /　　|　　　　　　　　　|　 ヽ
.　　　 |　　 ヽ＿＿人＿＿ノ　　 |　　おう、羽韮さんかい。あんたも好きだねえ。
　　　　＼　　　　 `ー'´ 　　　　／
　　 　 /⌒ヽ　　　ー‐ 　　　ｨヽ
　 　　/ 　　　 　,⊆ニ_ヽ、　　　|
　　　/　 　 　／　r─--⊃、　　|
　　　|　　ヽ,.ｲ　　 ｀二ﾆﾆうヽ.　 |





,li　　　　　　　 ､　　　　　　　　　　　　　　　._,,,,,,,.　　　　 　 　 　 　 　 ｀|
l´ 　 　　　　　i, l､ ､　　　　　　　　　 , -‐'''´　　｀i　　　　　　　　　　　 li
l　　　　　　　 /｀ ｀ﾞﾞ‐-;､_　 　 ,_,,‐'''´　　　　　　 l　　　　　　　　　　　 !.
丶, 　　　　.　/　　　　　´ ￣｀´(.､__, ‐''''-､,,.　 　 i　　　　　　　　　　　〈
　i　　　　 /　i　　,＝＝´　　　　＼｀ ´_ﾆ_｀｀ヽ､　i　!.　　　　　　　　　　i
　ヽ,　　　i　 li ／ ,/⌒ヽ､　 　　　　　 , ⌒｀､　ヽ ｀､;､､　　　　　　　　_,!
　　ヽ､　 i　 ｀i　 ´,イ￣い　　　　, 　 l （⌒い〉　 　〉､｀丶;　　　　　, ,´
　　　｀!　｀ヽ. ｀!　､_ゝ-｀ノ〉　 　 ´､　　､｀_´ノﾉ　　,〉　/´￣i!　／,/´!
　　　　｀､ i´丶i ,, , , ￣,. /´￣｀　 ,,､.　 - ‐ ´　　 /´/ , -　 li　　,／
　　　　　ヽi ｀i |´　　　( ,,l､ ＿ , --､｀)　　　　　 ,/　 i/､　　!i　 /ﾞ
　　　　　　｀､i i　　　　　　　ヽ　　　｀　　 ､.　　i （　 / ﾉﾉ 　/／
　　　　　　　｀､ヽ 　(_ , - ‐─- --─ ‐,ァ｀　　i i! / ／　 ／
　　　　　　　　＼､　 ｀丶￣￣￣￣,´／　　 　 ｀,｀ 　, _ノﾞ　　　そりゃもう、三度の飯より、おらあこっちのほうが好きでな。
　　　　　　　　　　｀,　　 ｀￣￣￣´　　　　　　,/〉_-＜´
　　　　　　　　　 　 ﾄ　　丶─-　　　　　　 ,／　l
　　　 　 　 　 　 　 i ｀i. 　 　 　 　 　 ,／ﾞﾞ´　/　|

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
羽韮がきめえ夫に壷を振る真似をしてみせる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

　　　　　　　　　,.⌒ヽ　　　　　 γ⌒ ヽ
　　　　　　　　〈 ● ﾉ,＼　　　 人 ●　〉
　　　　　　　 　 ヽ彡'　　ヽ　/　 　ヾ_ノ
　　　　　　　　　　）　　　　Y　　　 （
　　　　　　　　 ／γ⌒　 　　　⌒ヽ＼
　　　　　　　 /　　|　　　　　　　　　|　 ヽ
　　　　　　　 |　　 ヽ＿＿人＿＿ノ　　 |　　景気の良いこった。
　　　　　　　 ＼　　　　、`ー'´, 　　　／　　腕の良い職人ってな、そんなに儲かるのかい。
　r､　　　 　r､／　　　　　　　　　　 <
　ヽヾ　三　|:l1　　　　　　　　 　　　　ヽ
　　＼>ヽ/ |｀ ｝　　　　　　　　　 　　|　|
　　　ﾍ　lノ `'ｿ 　　　　　　　 　　　　|　|
　　　　/´　 /　　　　　　　　　　　　 |.　|
　　　　＼. ｨ 　　　　　　 　 　 　 　　|　 |
　　　 　 　 |　　　　　　　 　 　 　 　 | 　|



　　　　　　　　　　　　　　,,. -‐'''"""´"'' - ､_
　　　　　　　　　　　　,-'"　　　　　　　　　　 ｀':;､,.
　　　　　　　　　　 ,;'´　　　　　　　　　　　　　　::::ヽ,.
　　　　　　　　　 ;'´　　　　　　　　　　　　　　　,;:::::::::i,
　　　　　　　　 ,;'　　　　　　　　　　　　　　　　　,,::::::::';
　　　　　　　　 ;　　　　　　　　　　　　　　　　　　.:::::::::i!
　　　　　　　　 ;　　　　　　　　　　　　　　　　　.,,.:::::::::i'
　　　　　　　　 ';　　　　　　　　,;'｀"'､.,,,　　　,,..=;''::::::::;'
　　　　　　　 　 ';　　　 ,..､;　=',;ー_､　 ´'' '' '_,ﾐ !::::::::;´
　　　　　　　　　｀';　 ,/, ﾍ} ,;'　ｲ･ﾅ';`ｰ　,ｨﾗ'; /,;'_､''
　　　　　　　　　　｀'､_! ;'r.ｌ　|　｀"''´, -　(,.｀´f';"
　　　　　　　　　　　 _,ヽ'-|　i! ,;_＿ ｀ "r‐'　ｲ´＿　　　まあな。
　＿＿ ,,,, ...,,, ,. -‐''"／ヽ'从、　　 ｀二ｰ' ノ';';';,::´';'
"､:::::::::::::::::::::::::::::::::::::{´ 　　:　::｀ヽ､　　 /´;';';';';';';';'
　ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ　　　:　:::::;''ｶﾞ;─';';';';';';';';';';'
　　ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::l　　　､..::::/::'l;';';';';';';';';';';';';';
　　　'､::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ　　　　/　 |''';';';';';';';';';';';'
　　　 ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ'' - ､　,.-'l::::::::..';'';';';';';'
　　　　　ヽ､::::::::::::::::::::::::::':.､　 ヽ　l::::::::::::::::';';''.;
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この男、泥棒家業以外にもきちんとした正業を持っていた。
いわゆる植木職人なのだが、この植木職人、
腕の良い職人にもなると結構な稼ぎを得られた。
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　 　 　 　 艸艸艸艸
　 　 艸艸艸艸艸艸艸
　　　 ｀＝'｀,ﾘｒi´￣
　　　　　　ノﾉﾉ..
　　　　　（（ （　,.へ艸艸艸
　　　　　 ヽヽヽ´＾艸艸艸艸
　艸艸艸艸,_)/ i
艸艸艸艸艸/i´
　　　　　 ,メ 八
　　　　／＜^｀ヽ, 、
　ｒ ＜ｒ'´　ソ）　/へゝ


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泥棒家業を専門にしている者ほど、きちんとした正業についている事が多い。
それは盗んだ金を使った場合、その出所を探られないようにする為である。
江戸時代では盗人は大抵が金の出所を探られて御用とやられたからだ。
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l　　　　　　　 /｀ ｀ﾞﾞ‐-;､_　 　 ,_,,‐'''´　　　　　　 l　　　　　　　　　　　 !.
丶, 　　　　.　/　　　　　´ ￣｀´(.､__, ‐''''-､,,.　 　 i　　　　　　　　　　　〈
　i　　　　 /　i　　,＝＝´　　　　＼｀ ´_ﾆ_｀｀ヽ､　i　!.　　　　　　　　　　i
　ヽ,　　　i　 li ／ ,/⌒ヽ､　 　　　　　 , ⌒｀､　ヽ ｀､;､､　　　　　　　　_,!
　　ヽ､　 i　 ｀i　 ´,イ￣い　　　　, 　 l （⌒い〉　 　〉､｀丶;　　　　　, ,´
　　　｀!　｀ヽ. ｀!　､_ゝ-｀ノ〉　 　 ´､　　､｀_´ノﾉ　　,〉　/´￣i!　／,/´!
　　　　｀､ i´丶i ,, , , ￣,. /´￣｀　 ,,､.　 - ‐ ´　　 /´/ , -　 li　　,／
　　　　　ヽi ｀i |´　　　( ,,l､ ＿ , --､｀)　　　　　 ,/　 i/､　　!i　 /ﾞ
　　　　　　｀､i i　　　　　　　ヽ　　　｀　　 ､.　　i （　 / ﾉﾉ 　/／
　　　　　　　｀､ヽ 　(_ , - ‐─- --─ ‐,ァ｀　　i i! / ／　 ／　　さてと、今日も仕事に精を出すか。
　　　　　　　　＼､　 ｀丶￣￣￣￣,´／　　 　 ｀,｀ 　, _ノﾞ
　　　　　　　　　　｀,　　 ｀￣￣￣´　　　　　　,/〉_-＜´
　　　　　　　　　 　 ﾄ　　丶─-　　　　　　 ,／　l
　　　 　 　 　 　 　 i ｀i. 　 　 　 　 　 ,／ﾞﾞ´　/　|

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　　　　　　　　 ;　　　　　　　　　　　　　　　　　　.:::::::::i!
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　　　　　　　　 ';　　　　　　　　,;'｀"'､.,,,　　　,,..=;''::::::::;'
　　　　　　　 　 ';　　　 ,..､;　=',;ー_､　 ´'' '' '_,ﾐ !::::::::;´
　　　　　　　　　｀';　 ,/, ﾍ} ,;'　ｲ･ﾅ';`ｰ　,ｨﾗ'; /,;'_､''
　　　　　　　　　　｀'､_! ;'r.ｌ　|　｀"''´, -　(,.｀´f';"
　　　　　　　　　　　 _,ヽ'-|　i! ,;_＿ ｀ "r‐'　ｲ´＿　　　岡引に捕まる奴はただのトンマだぜ。
　＿＿ ,,,, ...,,, ,. -‐''"／ヽ'从、　　 ｀二ｰ' ノ';';';,::´';'
"､:::::::::::::::::::::::::::::::::::::{´ 　　:　::｀ヽ､　　 /´;';';';';';';';'
　ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ　　　:　:::::;''ｶﾞ;─';';';';';';';';';';'
　　ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::l　　　､..::::/::'l;';';';';';';';';';';';';';
　　　'､::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ　　　　/　 |''';';';';';';';';';';';'
　　　 ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ'' - ､　,.-'l::::::::..';'';';';';';'
　　　　　ヽ､::::::::::::::::::::::::::':.､　 ヽ　l::::::::::::::::';';''.;
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
盗みが数えるほどの藤四郎（素人）働きならともかく、
この世界で長く泥棒を続けるならば、正業に就くことは必須ともいえた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

　　 ,.⌒ヽ　　　　　 γ⌒ ヽ
　　〈●　ﾉ＼　　　人　●　〉
　　 ヽ彡'　　ヽ　/　 ヾ___ノ
.　　　）　　　　Y　　　 （
　 ／γ⌒　 　　　⌒ヽ＼
. /　　|　　　　　　　　　|　 ヽ　　今はちょいと客が多くて張る席がねえ。
. |　　 ヽ＿＿人＿＿ノ　　 |　　よかったら、奥で寿司でもつまんでてくれよ。
　＼　　　　 `ー'´ 　　　　／　　　　　　　　＼
　　/　　　　　　　　　　 く　　＼　　　　.　　　 ＼
　　|　　　　 　　　　　　.　＼ 　 ＼ 　 　　　　　　＼
　　|　　　　　　　　　　.　|ヽ、二⌒)､　 　 　　　　　 ＼



　　　　　　　　,,. -‐'''"""´"' - ､_
　　　　　　,-'":: 　 　 　 　 　 　 ｀':;､,.
　　　　 ,;'´:::::::　　　　　　　　　　　　ヽ,.
　　　 ;'´:::::::　　　　　　　　　　　　　　::i,
　　 ,;'::::::::,;ﾞ　　　　　　　　　　　　　　　:';
　　 ;:::::::::ゞ　　　　　　　　　　　　　　　　i!
　　 ;::::::::::ヾ　　　　,,,,､''''''､　　　　　　,;´:i'
　　 ';:::::::´ゝ､,,　,,,;'｀/´￣ '　　　ヽ,_､''　;'
　　　';　　ア,..､;｀　´ててヽﾞ､┌ﾞﾞ｀l'´　;´
　　　｀';　 ､｀‐ｔｿ､　 ｀--｀´ i i〉アl　_､''
　　　　　｀､_｀￣､,ノ´　,_,,　!´と//r';"　　あいよ。
　　　　　　 ilヽヽ､_,,,／　　 ｀ソr';"
　　　　　　´"ﾞ'＼--´　 ,_,‐'　　 :i,
　　　　　　　 　 人__,,ノ´　　　　 |＿　 ,__,,. -‐'''""´"ヽ.､
　　　　　　　　　　 　 i　　　　　　＞ ｀´　　　　／￣＼　!
　　　　　　　　　 　　人　　　　／　　　　　　 ,/　　　　＼l
　　　　　　　　,. -‐'''　/ﾞ　 　 /　　　　　 　　/　　　　　　i
　　　 　 ,,. -‐'　　 　 l´　 　/´　　　　　　　/＼　　　　　ｌ
　　　 　 ;,.　　　　　 i´　　/´ 　 　 　 　　　/´ , "' -､､_ノ
　　　 ／ :i,　　　 　 'l:　' /´　　　　　　´　/　　　ヽ　 〈

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　　_,.､-=二_ー‐-､
　ノ　　　　　｀ｰ-､::｀ヽ、
　ヽ､_　　　　　 　 ｀ ヽ::＼
　　　 l不ｱ､　　　　　　ヾ::＼
　　　 ゝ､）ﾄ､＞、　　 　　ヽ:::i、
　　　　　 ｀ｰﾚIﾉﾍ　　　　　ヽ::::!
　　　　　　　　 ｀ｰi、　　 　　ヽ:::ヽ、
　　　　　　　　　　　!　　　　　 ヽ､:::i
　　　 　　 　　　　　 |　　　　　　_,.フ
　　　　　　　　　　　 ｀ー--一'´
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さて、この寿司であるが、江戸では現在のような生のネタは扱わなかった。
酢で絞めたり、炙ったり、醤油に漬けたりで何かしらの調理を行った。
今のように新鮮な生の寿司ネタを食べさせるようになったのは、
明治に入ってからである。
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾄ-､___
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　_,,-‐‐‐‐‐‐ｔ-:､_ `‐､､_
　　　　　　　　　　　　　　　　__,,,-‐'´　　　　　.:.　,,:.:｀`‐､;:;:;ヽ_
　　,,,_____,,..､_,,,,,-‐‐‐-､､_,,-'´　　　　............:.:/:　.:.　　　　 ｀｀｀`ヽ､_
　〈=__,,,,__,,,,,,,,,,,,..::::::::::...　　;.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:,;ノ::.　　　　　　　　　　　　`‐､､
／　.._____.. .. .　｀｀```ヽ- '--‐‐'''''~~~'`::::ヽ:.:.:.....　　　　　　　　､　　　　 ヽ､
ヒ;-'´　　｀｀``:‐:‐:-:-.:__,,､､､､､　　....:.:.:.:.:.:.`:.:.:.:,;,;,;,;.:.:.;,;...........ヽ､ヽＴ　　 ◎ ヽ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　｀｀``‐--:-:‐:':´:｀:｀´:: :::｀`:..､_:.:.:.:.:.:.:.ヽ､__　,-==, 　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,' ´　."　` ^ '´ '~ "´ ~　 `丶:‐‐-:-:-:-:‐"
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　; 　 .　　'　　　. 　 　　;　　 　;
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ! 　 　. 　'　　 .　　　,　 ' 　　,'
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ヽ､ . ..,. .,,_ ,. _., ,　,._ . , .,.. ノ

　　／　　　　　/　　　　　　　　　　　　　　　　　 , /　　　　　　　　　　｀i
　/´　　　　　 /l !　　　　　　　　　　　　　　 　// ﾞ　　　　　　　　　　　〈
li　　　 　 　 　 !丶　　　　　　　　　　　　　　´　　　　　　　　　　　　　 li
,li　　　　　　　 ､　　　　　　　　　　　　　　　._,,,,,,,.　　　　 　 　 　 　 　 ｀|
l´ 　 　　　　　i, l､ ､　　　　　　　　　 , -‐'''´　　｀i　　　　　　　　　　　 li
l　　　　　　　 /｀ ｀ﾞﾞ‐-;､_　 　 ,_,,‐'''´　　　　　　 l　　　　　　　　　　　 !.
丶, 　　　　.　/　　　　　´ ￣｀´(.､__, ‐''''-､,,.　 　 i　　　　　　　　　　　〈
　i　　　　 /　i　　,＝＝´　　　　＼｀ ´_ﾆ_｀｀ヽ､　i　!.　　　　　　　　　　i
　ヽ,　　　i　 li ／ ,/⌒ヽ､　 　　　　　 , ⌒｀､　ヽ ｀､;､､　　　　　　　　_,!
　　ヽ､　 i　 ｀i　 ´,イ￣い　　　　, 　 l （⌒い〉　 　〉､｀丶;　　　　　, ,´
　　　｀!　｀ヽ. ｀!　､_ゝ-｀ノ〉　 　 ´､　　､｀_´ノﾉ　　,〉　/´￣i!　／,/´!
　　　　｀､ i´丶i ,, , , ￣,. /´￣｀　 ,,､.　 - ‐ ´　　 /´/ , -　 li　　,／
　　　　　ヽi ｀i |´　　　( ,,l､ ＿ , --､｀)　　　　　 ,/　 i/､　　!i　 /ﾞ
　　　　　　｀､i i　　　　　　　ヽ　　　｀　　 ､.　　i （　 / ﾉﾉ 　/／　　なんか、このコハダ、やけに酸っぱくねえか？
　　　　　　　｀､ヽ 　(_ , - ‐─- --─ ‐,ァ｀　　i i! / ／　 ／
　　　　　　　　＼､　 ｀丶￣￣￣￣,´／　　 　 ｀,｀ 　, _ノﾞ
　　　　　　　　　　｀,　　 ｀￣￣￣´　　　　　　,/〉_-＜´
　　　　　　　　　 　 ﾄ　　丶─-　　　　　　 ,／　l
　　　 　 　 　 　 　 i ｀i. 　 　 　 　 　 ,／ﾞﾞ´　/　|
　　　　　　　　　　 i　 !　 　 　 　 _,／　 　 　 　 |
　　　　　　　　　　 |　 ｀ ￣￣￣´　　　　　/,　 │
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寿司をつまみ、酒を飲みながら暇をつぶす。
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　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　 ／　　 _ノ　　＼
　　　　　　 |　　　 （ ●）（●）
　　　　　　 |　　　　 （__人__）
　 　　 　 　 |　 　　　｀ ⌒´ﾉ　　　そのコハダは食わねえほうがいいぞ。
　　　　　　　|　　　　　　 　 }
　　　　　　　ヽ　　　　　　　}
　　　　　　　　ヽ　　　　　ノ
　　　　＿,---/ﾍﾍ　　　//＼
　/ ´: : : : : : :ﾍ: ﾍﾍ.　 //: /: : ￣ヽ
ノ: : : : : : : : : : ﾍ: ﾍﾍ//: /: : : ヽ: : ヽ
: : : : : : : : : : : : : ﾍ: ﾍ/: /: : : : : i: : : |
: : : : : i : : : : : : : : ﾍ/.: /: : : : : : :i: : : l
: : : : : i : : : : : : : : /: : /: : : : : : : : |: : : i
: : : : : ﾍ: : : : : : :/: : /: : : : : : : : : : :i : : |
: : : ゝ : : : : : : /: : /: : : : : : : : : : : : l: : : i
: : : : ヽ: : : :/: : : /: : : : : : : : : : : : /: : : : |

　　　　　　　　,,. -‐'''"""´"' - ､_
　　　　　　,-'":: 　 　 　 　 　 　 ｀':;､,.
　　　　 ,;'´:::::::　　　　　　　　　　　　ヽ,.
　　　 ;'´:::::::　　　　　　　　　　　　　　::i,
　　 ,;'::::::::,;ﾞ　　　　　　　　　　　　　　　:';
　　 ;:::::::::ゞ　　　　　　　　　　　　　　　　i!
　　 ;::::::::::ヾ　　　　,,,,､''''''､　　　　　　,;´:i'
　　 ';:::::::´ゝ､,,　,,,;'｀/´￣ '　　　ヽ,_､''　;'
　　　';　　ア,..､;｀　´ててヽﾞ､┌ﾞﾞ｀l'´　;´
　　　｀';　 ､｀‐ｔｿ､　 ｀--｀´ i i〉アl　_､''　　こりゃ、やらない夫の旦那、ご機嫌さんで。
　　　　　｀､_｀￣､,ノ´　,_,,　!´と//r';"
　　　　　　 ilヽヽ､_,,,／　　 ｀ソr';"
　　　　　　´"ﾞ'＼--´　 ,_,‐'　　 :i,
　　　　　　　 　 人__,,ノ´　　　　 |＿　 ,__,,. -‐'''""´"ヽ.､
　　　　　　　　　　 　 i　　　　　　＞ ｀´　　　　／￣＼　!
　　　　　　　　　 　　人　　　　／　　　　　　 ,/　　　　＼l
　　　　　　　　,. -‐'''　/ﾞ　 　 /　　　　　 　　/　　　　　　i
　　　 　 ,,. -‐'　　 　 l´　 　/´　　　　　　　/＼　　　　　ｌ
　　　 　 ;,.　　　　　 i´　　/´ 　 　 　 　　　/´ , "' -､､_ノ
　　　 ／ :i,　　　 　 'l:　' /´　　　　　　´　/　　　ヽ　 〈



　　　　　　　　,,. -‐'''"""´"' - ､_
　　　　　　,-'"　　 　 　 　 　 　 ｀':;､,.
　　　　 ,;'´ 　 ,;'´　　　　　　　　　　 ヽ,.
　　　 ;'´　　　　';　　　　　　　　;´　　 ::i,
　　 ,;'　　　　 ､.　　　　　　　　 ´,　　　:';
　　 ;　　　　　';"""' - ､_,,. -‐'''" '; 　 　i!
　　 ;　　　　_､',,--,､,-　　､,-､_..　';ﾞﾞ"'　i'
　　 '; 　 ' "　〉　,イｊ i ､ 　,/ i_ｔ l　〈; , 　;'
　　　';　　,　〈　､_｀ノ　〉 〈ヽ＿ﾉ　 〉　 ;´
　　　｀';　´,,｀,l　　　　´ﾞ-ﾞ｀ 　　　 l.　_''　　　今日はなにやら賭場が立て込んでるようにござんすが、
　　　　｀':;.　（ｌ　υ　,　─　､　　 l）;´　　　　どうかしたんで？
　　　　　 ヽ, ､!､　　｀ﾆﾆﾆﾆﾞ　　,!
　　　　　　　 |｀＼　　 ﾞﾞﾞﾞ　 　,イ
　 　 　 　 　 ト､　｀＼＿__／´ ,|

　　　　　　　　　　 　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　 ／　_ノ　 ⌒ ＼
　　　　　　　　　　 |　（ ●）　（●） |
　　　　　　　　　　. |　　 （__人__）　 |
　　　　　　　　　 　 |　　　｀ ⌒´　　|
　　　　　　　　　 　. |　　　　　　 　 }　　　ほろの連れてきた客の侍ってのが、どうやらお大尽らしくてな。
　　　　　　　　　 　. ヽ　　　　　 　 }　　　これがまた強い。
　　　　 　 　 　 　_, ´: :ヽ　　　　ノ:＼
　　 　 　　　 _, -　ﾍ: : :ヽﾍ　　//: : :/: : ゝ 、
　　　　　　 ´ : : : : : :ﾍ: : :ﾍﾍ//: : :/: : : : : ｀ヾ
　　　 　　!: : : : : : : : :ﾍ : : :ﾍ/: : :/　: : : : : : : : : !
　　　 　| : : : : : : : : : : : ﾍ: :/: : :/　: : : : : : : : : : : |
.　　 　 |: : : : : i: : : : : : : .ﾍ/: : :/　: : : : : : : : : : : : i
　　 　 i: : : : : : : i: : : : : : /: : :/　: : : : : : : : i: : : : : |






丶, 　　　　.　/　　　　　´ ￣｀´(.､__, ‐''''-､,,.　 　 i　　　　　　　　　　　〈
　i　　　　 /　i　　,＝＝´　　　　＼｀ ´_ﾆ_｀｀ヽ､　i　!.　　　　　　　　　　i
　ヽ,　　　i　 li ／ ,/⌒ヽ､　 　　　　　 , ⌒｀､　ヽ ｀､;､､　　　　　　　　_,!
　　ヽ､　 i　 ｀i　 ´,イ￣い　　　　, 　 l （⌒い〉　 　〉､｀丶;　　　　　, ,´
　　　｀!　｀ヽ. ｀!　､_ゝ-｀ノ〉　 　 ´､　　､｀_´ノﾉ　　,〉　/´￣i!　／,/´!
　　　　｀､ i´丶i ,, , , ￣,. /´￣｀　 ,,､.　 - ‐ ´　　 /´/ , -　 li　　,／
　　　　　ヽi ｀i |´　　　( ,,l､ ＿ , --､｀)　　　　　 ,/　 i/､　　!i　 /ﾞ
　　　　　　｀､i i　　　　　　　ヽ　　　｀　　 ､.　　i （　 / ﾉﾉ 　/／
　　　　　　　｀､ヽ 　(_ , - ‐─- --─ ‐,ァ｀　　i i! / ／　 ／
　　　　　　　　＼､　 ｀丶￣￣￣￣,´／　　 　 ｀,｀ 　, _ノﾞ　　へえ、そりゃまた。
　　　　　　　　　　｀,　　 ｀￣￣￣´　　　　　　,/〉_-＜´
　　　　　　　　　 　 ﾄ　　丶─-　　　　　　 ,／　l
　　　 　 　 　 　 　 i ｀i. 　 　 　 　 　 ,／ﾞﾞ´　/　|
　　　　　　　　　　 i　 !　 　 　 　 _,／　 　 　 　 |
　　　　　　　　　　 |　 ｀ ￣￣￣´　　　　　/,　 │

　　　　　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　 　 　　　　 ／　　ヽ_　　.＼
　　　　　　 　 　　 （ ●）（ ●）　　｜
　　　　　　　　　　 （__人__）　 　 　 |
　　　　　　 　 　　　ｌ｀ ⌒´　　　　｜
　　　　　　　　　　　{　　 　 　 　 ｜　　何の気負いもなく、十両、二十両を平気で張るし、
　　　　　　　　　　　{　　　　　　 /　　　勝っても負けても平気の平左だ。
　　　　　　　_. -: ´Λ　　　　 _.へ｀　、
　　　 　 r　: :: : : :|: :ﾍ ￣r'　 　 ＼ : ＼
　　　　/: : :: : : : :　ﾍ: ﾍ >、　 　 >ﾍ: :Λ
　　 　/: : : ﾄ､: : : : : : ヽ／:／`ｰ／ : : V: |
　 　 〈: : : :::: _ -￢-－―-､: : : | : : :: : ヽ: ｝
　　　 /: : :_ン´: : : : ＼ ,___, ｨ ）:く : : :: : : ヘ|
　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣



　　　　　　　　　　　　　　,,. -‐'''"""´"'' - ､_
　　　　　　　　　　　　,-'"　　　　　　　　　　 ｀':;､,.
　　　　　　　　　　 ,;'´　　　　　　　　　　　　　　::::ヽ,.
　　　　　　　　　 ;'´　　　　　　　　　　　　　　　,;:::::::::i,
　　　　　　　　 ,;'　　　　　　　　　　　　　　　　　,,::::::::';
　　　　　　　　 ;　　　　　　　　　　　　　　　　　　.:::::::::i!
　　　　　　　　 ;　　　　　　　　　　　　　　　　　.,,.:::::::::i'
　　　　　　　　 ';　　　　　　　　,;'｀"'､.,,,　　　,,..=;''::::::::;'
　　　　　　　 　 ';　　　 ,..､;　=',;ー_､　 ´'' '' '_,ﾐ !::::::::;´
　　　　　　　　　｀';　 ,/, ﾍ} ,;'　ｲ･ﾅ';`ｰ　,ｨﾗ'; /,;'_､''
　　　　　　　　　　｀'､_! ;'r.ｌ　|　｀"''´, -　(,.｀´f';"
　　　　　　　　　　　 _,ヽ'-|　i! ,;_＿ ｀ "r‐'　ｲ´＿　　　へえ、今時の腑抜けたお侍と違って、
　＿＿ ,,,, ...,,, ,. -‐''"／ヽ'从、　　 ｀二ｰ' ノ';';';,::´';'　　まるで博打打ちの鑑みたいなお人ですね。
"､:::::::::::::::::::::::::::::::::::::{´ 　　:　::｀ヽ､　　 /´;';';';';';';';'
　ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ　　　:　:::::;''ｶﾞ;─';';';';';';';';';';'
　　ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::l　　　､..::::/::'l;';';';';';';';';';';';';';
　　　'､::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ　　　　/　 |''';';';';';';';';';';';'
　　　 ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ'' - ､　,.-'l::::::::..';'';';';';';'
　　　　　ヽ､::::::::::::::::::::::::::':.､　 ヽ　l::::::::::::::::';';''.;
　　':　　　　｀ヽ､:::::::::::::::::::::::ヽ、 l l::::::::::::::::'/　;
　　 ';　　　　 　 ｀ヽ､;:::::::::::::::::::ヽ/::::::::::::／　,;'

　　　　　 ,.⌒ヽ　　　　　 γ⌒ ヽ
　　　　　〈 ● ﾉ＼　　　／＼●　〉
　　　　　 ヽ彡'　　ヽ　/　 　ヾ_ノ
.　　　　　　）　　　　Y　　　 （
　　　　 ／γ⌒　 　　　⌒ヽ＼
.　　　 /　　|　　　　　　　　　|　 ヽ 　　おい、席が空いたぜ。
.　　　 |　　 ヽ＿＿人＿＿ノ　　 |
　　　　＼　　　　 `ー'´ 　　　　／
　　 　 /⌒ヽ　　　ー‐ 　　　ｨヽ
　 　　/ 　　　 　,⊆ニ_ヽ、　　　|
　　　/　 　 　／　r─--⊃、　　|
　　　|　　ヽ,.ｲ　　 ｀二ﾆﾆうヽ.　 |



　　　　　　　　,,. -‐'''"""´"' - ､_
　　　　　　,-'"　　 　 　 　 　 　 ｀':;､,.
　　　　 ,;'´ 　 ,;'´　　　　　　　　　　 ヽ,.
　　　 ;'´　　　　';　　　　　　　　;´　　 ::i,
　　 ,;'　　　　 ､.　　　　　　　　 ´,　　　:';
　　 ;　　　　　';"""' - ､_,,. -‐'''" '; 　 　i!
　　 ;　　　　_､',,--,､,-　　､,-､_..　';ﾞﾞ"'　i'
　　 '; 　 ' "　〉　,イｊ i ､ 　,/ i_ｔ l　〈; , 　;'
　　　';　　,　〈　､_｀ノ　〉 〈ヽ＿ﾉ　 〉　 ;´
　　　｀';　´,,｀,l　　　　´ﾞ-ﾞ｀ 　　　 l.　_''
　　　　｀':;.　（ｌ　υ　,　─　､　　 l）;´　　あいよ。
　　　　　 ヽ, ､!､　　｀ﾆﾆﾆﾆﾞ　　,!
　　　　　　　 |｀＼　　 ﾞﾞﾞﾞ　 　,イ
　 　 　 　 　 ト､　｀＼＿__／´ ,|

　　　　　　　　∽∝∞∝∽∽∝∞∝∽∽∝∞∝∽∽∝∞
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男が賭場へと顔を出し、畳の上にどかりと腰を下ろす。
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　　　　 ,;'´:::::::　　　　　　　　　　　　ヽ,.
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　　 ';:::::::´ゝ､,,　,,,;'｀/´￣ '　　　ヽ,_､''　;'
　　　';　　ア,..､;｀　´ててヽﾞ､┌ﾞﾞ｀l'´　;´
　　　｀';　 ､｀‐ｔｿ､　 ｀--｀´ i i〉アl　_､''　　へえ、あれがか。
　　　　　｀､_｀￣､,ノ´　,_,,　!´と//r';"
　　　　　　 ilヽヽ､_,,,／　　 ｀ソr';"
　　　　　　´"ﾞ'＼--´　 ,_,‐'　　 :i,
　　　　　　　 　 人__,,ノ´　　　　 |＿　 ,__,,. -‐'''""´"ヽ.､
　　　　　　　　　　 　 i　　　　　　＞ ｀´　　　　／￣＼　!
　　　　　　　　　 　　人　　　　／　　　　　　 ,/　　　　＼l
　　　　　　　　,. -‐'''　/ﾞ　 　 /　　　　　 　　/　　　　　　i
　　　 　 ,,. -‐'　　 　 l´　 　/´　　　　　　　/＼　　　　　ｌ
　　　 　 ;,.　　　　　 i´　　/´ 　 　 　 　　　/´ , "' -､､_ノ
　　　 ／ :i,　　　 　 'l:　' /´　　　　　　´　/　　　ヽ　 〈

　　　　 　 　 　 　 x‐　　　　　　 ‐x
　　　　　　　　　X　　　　　　　　　　X
　　　　　　　　　 　 {⌒＞==＜ﾞ⌒７
　　　　　　　　　　　∨从∧从:＼/
　　　　　　　　 　 (ヽ|:Y○　○| l/ﾞ）
　　　　 　 　 　 　 ∨人 `^′_| |７　　また勝ったでありんす。
　　　　　　　　　　　Ⅵ､:::兀::::ﾉ:八
　　　　　　　　　　 /: :7〈_〉＿∨: :l＼
　　 　 　 　 　 　 /ｨ∨`ー‐一ﾍ N_,､
　 　 　 　 　 　 　 　 |　　　　　　}":ノ
　　　　　　　　　　　 (＞ｰ―‐＜厂



　　　ゞＷﾉ
　　　 |三|
　　　 |三|
　　 ／ヽ￣￣＼
　／:::::::ヽ＿　＿＼
　|:::::::::::/　･　　・　|
　|::::::::＠　 （__人_）
　|:::::ノ　　　｀ ⌒´/　　お前の運がついておるおかげじゃな。
　|　　　　　　 　 }
　ヽ　　　　　 　 }
　　ヽ　　　　　ノ
　　　/　　　 く ＼
　　　|　　　　　＼ ＼
　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)､

　　　　　　　　　　　　　　,,. -‐'''"""´"'' - ､_
　　　　　　　　　　　　,-'"　　　　　　　　　　 ｀':;､,.
　　　　　　　　　　 ,;'´　　　　　　　　　　　　　　::::ヽ,.
　　　　　　　　　 ;'´　　　　　　　　　　　　　　　,;:::::::::i,
　　　　　　　　 ,;'　　　　　　　　　　　　　　　　　,,::::::::';
　　　　　　　　 ;　　　　　　　　　　　　　　　　　　.:::::::::i!
　　　　　　　　 ;　　　　　　　　　　　　　　　　　.,,.:::::::::i'
　　　　　　　　 ';　　　　　　　　,;'｀"'､.,,,　　　,,..=;''::::::::;'
　　　　　　　 　 ';　　　 ,..､;　=',;ー_､　 ´'' '' '_,ﾐ !::::::::;´
　　　　　　　　　｀';　 ,/, ﾍ} ,;'　ｲ･ﾅ';`ｰ　,ｨﾗ'; /,;'_､''
　　　　　　　　　　｀'､_! ;'r.ｌ　|　｀"''´, -　(,.｀´f';"　　
　　　　　　　　　　　 _,ヽ'-|　i! ,;_＿ ｀ "r‐'　ｲ´＿　　なあ、お侍さん、ちょいとおいらと勝負してみねえか？
　＿＿ ,,,, ...,,, ,. -‐''"／ヽ'从、　　 ｀二ｰ' ノ';';';,::´';'
"､:::::::::::::::::::::::::::::::::::::{´ 　　:　::｀ヽ､　　 /´;';';';';';';';'
　ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ　　　:　:::::;''ｶﾞ;─';';';';';';';';';';'
　　ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::l　　　､..::::/::'l;';';';';';';';';';';';';';
　　　'､::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ　　　　/　 |''';';';';';';';';';';';'
　　　 ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ'' - ､　,.-'l::::::::..';'';';';';';'
　　　　　ヽ､::::::::::::::::::::::::::':.､　 ヽ　l::::::::::::::::';';''.;
　　':　　　　｀ヽ､:::::::::::::::::::::::ヽ、 l l::::::::::::::::'/　;
　　 ';　　　　 　 ｀ヽ､;:::::::::::::::::::ヽ/::::::::::::／　,;'
　　　':､　　　　　　　　''‐:､;;::::::::::':::::::／´　 ,:'

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山と積まれたやってられっか夫の駒を見、
羽韮が勝負を申し入れる。
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　　　ゞＷﾉ
　　　 |三|
　　　 |三|
　　 ／ヽ￣￣＼
　／:::::::ヽ＿　＿＼
　|:::::::::::/　･　　・　|
　|::::::::＠　 （__人_）
　|:::::ノ　　　｀ ⌒´/　　かまわぬぞ。
　|　　　　　　 　 }
　ヽ　　　　　 　 }
　　ヽ　　　　　ノ
　　　/　　　 く ＼
　　　|　　　　　＼ ＼
　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)､

　　／　　　　　/　　　　　　　　　　　　　　　　　 , /　　　　　　　　　　｀i
　/´　　　　　 /l !　　　　　　　　　　　　　　 　// ﾞ　　　　　　　　　　　〈
li　　　 　 　 　 !丶　　　　　　　　　　　　　　´　　　　　　　　　　　　　 li
,li　　　　　　　 ､　　　　　　　　　　　　　　　._,,,,,,,.　　　　 　 　 　 　 　 ｀|
l´ 　 　　　　　i, l､ ､　　　　　　　　　 , -‐'''´　　｀i　　　　　　　　　　　 li
l　　　　　　　 /｀ ｀ﾞﾞ‐-;､_　 　 ,_,,‐'''´　　　　　　 l　　　　　　　　　　　 !.
丶, 　　　　.　/　　　　　´ ￣｀´(.､__, ‐''''-､,,.　 　 i　　　　　　　　　　　〈
　i　　　　 /　i　　,＝＝´　　　　＼｀ ´_ﾆ_｀｀ヽ､　i　!.　　　　　　　　　　i
　ヽ,　　　i　 li ／ ,/⌒ヽ､　 　　　　　 , ⌒｀､　ヽ ｀､;､､　　　　　　　　_,!
　　ヽ､　 i　 ｀i　 ´,イ￣い　　　　, 　 l （⌒い〉　 　〉､｀丶;　　　　　, ,´
　　　｀!　｀ヽ. ｀!　､_ゝ-｀ノ〉　 　 ´､　　､｀_´ノﾉ　　,〉　/´￣i!　／,/´!
　　　　｀､ i´丶i ,, , , ￣,. /´￣｀　 ,,､.　 - ‐ ´　　 /´/ , -　 li　　,／
　　　　　ヽi ｀i |´　　　( ,,l､ ＿ , --､｀)　　　　　 ,/　 i/､　　!i　 /ﾞ
　　　　　　｀､i i　　　　　　　ヽ　　　｀　　 ､.　　i （　 / ﾉﾉ 　/／　　
　　　　　　　｀､ヽ 　(_ , - ‐─- --─ ‐,ァ｀　　i i! / ／　 ／
　　　　　　　　＼､　 ｀丶￣￣￣￣,´／　　 　 ｀,｀ 　, _ノﾞ　　へへへ、そうこなくちゃ。
　　　　　　　　　　｀,　　 ｀￣￣￣´　　　　　　,/〉_-＜´
　　　　　　　　　 　 ﾄ　　丶─-　　　　　　 ,／　l
　　　 　 　 　 　 　 i ｀i. 　 　 　 　 　 ,／ﾞﾞ´　/　|
　　　　　　　　　　 i　 !　 　 　 　 _,／　 　 　 　 |
　　　　　　　　　　 |　 ｀ ￣￣￣´　　　　　/,　 │




　　　　　　　　　　　┌────────────────────────────────┐
　　　　　　　　　　　│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 │
　　　　　　　　　　　│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 │
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　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 │　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 │
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 └────────────────┘

　　　　　　　　,,. -‐'''"""´"' - ､_
　　　　　　,-'"　　 　 　 　 　 　 ｀':;､,.
　　　　 ,;'´ 　 ,　　　　 　 　 　 　 　 ヽ,.
　　　 ;'´　　　　　　 　　　　_　　　　　::i,
　　 ,;'　,;'　　　u 　　　､__ -　　　　　　:';
　　 ;　　;　　　　　　_,,'''__∠ ､　　　　 　i
　 　 ';　 ';　"' ､､__､-‐ﾞ〆､｀ト､_　　　　.;'
　　　ヽ　　　/,､_　l u ,。‐､ﾞ〉├)､　　_''　　　な、ななっ……
　　　　´ヾ　〈´( ﾟ)〉､ ´─´（　 iｙ!ｌ　 ;´　,__,,. -‐'''""´"ヽ.
　 ,,,. ,,,,,＿｀ﾞ〈〉 └､´　, _ ,　´-ﾞ´‐-‐'''"´　　　　　　入　ｌ
　|─､　　´"' ＼ ､_,∠,,. -｀,_亅 ｿ　　　　　 　 　 ／　 ＼|
　 ';／＼　　　　ヽ--‐　／ l　　/　 　 　 　 　 ／　　　　｀i
　∠ --┤　　　 └‐‐'< 　i　／|　　　　　　／＼　　　　　ｌ
'''"´　-､ ＼　　　　　ト､｀､／　ﾉ　　　　　 l´ ,　　"' -､､_ノ
　　　　　　刀　　　　';､｀　l　 /　　　　　　/ソ　　　ヽ　 〈



　　 ／￣￣＼
　／　＿　＿　＼
　|　　 ･　　・　　 |
　|＠ （__人_）◎ ｌ
　|　　 ｀ ⌒´　　 |　　二百両の負けじゃな。
　|　　　　　　 　 }　　お主に払えるか？
　ヽ　　　　　 　 }
　　ヽ　　　　　ノ
　　　/　　　 く ＼
　　　|　　　　　＼ ＼
　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)､

　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ハヽ.　　　　　　　　　　　　　　　　　／.' {
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / '´ﾍ ＼　 ,..　-― －‐-　 .._　　 ／／､　',
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ,'　　　ヽ　'´ : : : : : : : : : : : : : : ｀:'´／　　ｉ,　i
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 丨　 , . : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :＾ヽ　　　｜
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 l,. : : ／ : : : : i : : i: : : : : : : : : : : : : : : : ､　　;j
　　　　　　　　　　　　　　　　　 /: : :i′: i: : : : !: : :l: : : : l: : : : :i: : : : ヽ: : :ヽ ,ハ
　　　　　　　　　　　　　　　　　,: : : :i: : : | : : :￤: : l: : : : :!: : : :｜: :|: : :l: : : : ｉ: :.:',
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 i: : : :l: : : l : : : i| : : ｉｌ: : : : |: : : : :!: : :!: : ｌ: : : : ｌ: ｉ: i
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 i : : : l: :_;.∟:.Ｌ｣ｌ: : :i |: : : : !: : : : |: : :|: :i:|: : : : |: l: :i
　　　　　　　　　　　　　 　 　 ｌ : : : |'´:/|: : :!/ |: : |　!: : : :|i´￣下:￢:､ｉ|: : : :｜: :￤
　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 l: : : : !ｧ''ﾃ示ﾐ､、! : !　 ﾄ､: ;ハ_;.:⊥∟L: :i: : : : :! :. i i
　　　　　　　　　　　　　　　　|: : !:.ｲ{　i:{ t.:ﾊ:iヽ ┘　　 ´ァ7ｽ.だ:ﾊ ヾ;_!: : : : l: :. l:.|
　　　　　　　　　　　 　 　 　 |: :.ｉ .:ﾘ　 ぃ辷ｯﾘ　　　　　 　 {:{. し' }ﾘ　 }f:i: : !:｜:.: ! l
　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 |: :,ﾚく ,,,,,, ｀－'´　　 j　　　 　 ヾ辷ッ　　_」j: :,: :!l:. :..i: |
　　　　　　　　　　　　 　 　 ／､ ,、ヽ 　 　 　 　 〈　　　　　 　 '''''' i'´ , ､∨: :!|:.!:.:.!:.l　　いやあ、見事などんでん返しの勝負じゃったのう。
　　　 　 　 　 　 　 　 　 r'´⌒ヽヽ〉┘ 　 ___　　　　　　　 　 　 　 l／,.ヘヽ: :!|:.i:.:.:ｉ:.l
　　　　　　　　　　　　　 |　7´,ｨ' /'、　 　 ∨ﾆ辷＿￣¨_二ﾏ　 　 ヽ〈　r'´ヽ:l:!:.l:.ｉ:.ｌ:.|
　　　　 　 　 　 　 　 　 l　 `ｉ└ｸ　l＞ .._ 　 　 　 －￣　　　　　 _,.イﾍ}　}　V:.:.!:.l:.ｌ:.l
　　　　　　　　　　　 　 ｌ　　 ∨ 　 |｢"´{ﾑ＞ ､　 　 　 　 _,..　 爪}　 ヽ冫′ 广¨ﾞﾊ:.:.|
　　　　　　　　　 　 ,.-┤　 　 !　　j |::::::!::{:::::ぃ｀　ｰ　'"´　　 /::/ 　 ／　　 /_ : /:ハ:.l
　　　　　　　　　　 ﾉ: : !　 　 ﾉ 　 ,':.:l::::::∨こハ､　',　　　　 /_八.　/　　　 ﾑ :V ; : : ',:|
　　　　　 　 　 r‐': ｉ: : :',　　'　, イ;i:.:.:!:::::::｝ﾍ__ ヽヽ}　,.-‐／r‐‐:ヘ{　　 _ノ/: : ヽ:._ : : ､
　　　　　　　　,|: : : !: : : ､　 /:j }:!:|i:.:.:i:::::::: : :､::::} ｀:ー=彳: _;〉::::::| ﾄ＼　 /: : : : : : :i､: :ﾍ
　 　 　 　 　 / ｌ: : :､: : : : V:／:ﾉ:.:i:l :.:.!:::::::､:.. ヽ:ｰ－┘::｀´: : : :｜!::j::::>': : : : : : : : |:＼:ヘ
　 　 　 　 ／: : ! : : ｀ー:::.:..:／i|:. :!|i: : l:::::::::＼__;二:::-‐:'´: : : : : l:.ﾄ､'´_;,: :, : : : : : : j : : ＼ ＼
　　 　 ,／: : : : :ｌ : : : : : :::::::::::ﾘl: : !l:l : :|::::::::::::::::::; : :´: : :／ : : : i: |: `辷_´::: : : _;／: : : : : :｀ｰ-､
　　 ／: : : : : : : `ｰ- : __;;:::イ/.l: : 川 : :!:::::::::: : : : : :, : '´ : : : : : |: :!: : |:.:i｀ヾ¨´::: : : : : : : : : : : : :＼

　　　　　　　　　　　　　　,,. -‐'''"""´"'' - ､_
　　　　　　　　　　　　,-'"　　　　　　　　　　 ｀':;､,.
　　　　　　　　　　 ,;'´　　　　　　　　　　　　　　::::ヽ,.
　　　　　　　　　 ;'´　　　　　　　　　　　　　　　,;:::::::::i,
　　　　　　　　 ,;'　　　　　　　　　　　　　　　　　,,::::::::';
　　　　　　　　 ;　　　　　　　u　　　　　　　　　　.:::::::::i!
　　　　　　　　 ;　　　　　　　　　　　　　u　　　.,,.:::::::::i'
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　　　　　　　 　 ';　　　 ,..､;　=',;ー_､　 ´'' '' '_,ﾐ !::::::::;´
　　　　　　　　　｀';　 ,/, ﾍ} ,;'　ｲ･ﾅ';`ｰ　,ｨﾗ'; /,;'_､''
　　　　　　　　　　｀'､_! ;'r.ｌ　|　｀"''´, -　(,.｀´f';"
　　　　　　　　　　　 _,ヽ'-|　i! ,;_＿ ｀ "r‐'　ｲ´＿　　お、俺も江戸っ子だっ、賭場の借りはきっちり返すぜっ！
　＿＿ ,,,, ...,,, ,. -‐''"／ヽ'从、　　 ｀二ｰ' ノ';';';,::´';'
"､:::::::::::::::::::::::::::::::::::::{´ 　　:　::｀ヽ､　　 /´;';';';';';';';'
　ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ　　　:　:::::;''ｶﾞ;─';';';';';';';';';';'
　　ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::l　　　､..::::/::'l;';';';';';';';';';';';';';
　　　'､::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ　　　　/　 |''';';';';';';';';';';';'
　　　 ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ'' - ､　,.-'l::::::::..';'';';';';';'
　　　　　ヽ､::::::::::::::::::::::::::':.､　 ヽ　l::::::::::::::::';';''.;
　　':　　　　｀ヽ､:::::::::::::::::::::::ヽ、 l l::::::::::::::::'/　;
　　 ';　　　　 　 ｀ヽ､;:::::::::::::::::::ヽ/::::::::::::／　,;'




　　　ゞＷﾉ
　　　 |三|
　　　 |三|
　　 ／ヽ￣￣＼
　／:::::::ヽ＿　＿＼
　|:::::::::::/　･　　・　|
　|::::::::＠　 （__人_）
　|:::::ノ　　　｀ ⌒´/　　　うむ、その心意気やよし。
　|　　　　　　 　 }
　ヽ　　　　　 　 }
　　ヽ　　　　　ノ
　　　/　　　 く ＼
　　　|　　　　　＼ ＼
　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)､

　　　　　 ,.⌒ヽ　　　　　 γ⌒ ヽ
　　　　　〈 ● ﾉ＼　　　／＼●　〉
　　　　　 ヽ彡'　　ヽ　/　 　ヾ_ノ
.　　　　　　）　　　　Y　　　 （
　　　　 ／γ⌒　 　　　⌒ヽ＼
.　　　 /　　|　　　　　　　　　|　 ヽ
.　　　 |　　 ヽ＿＿人＿＿ノ　　 |　　本当に強いな、あの旦那。
　　　　＼　　　　 `ー'´ 　　　　／
　　 　 /⌒ヽ　　　ー‐ 　　　ｨヽ
　 　　/ 　　　 　,⊆ニ_ヽ、　　　|
　　　/　 　 　／　r─--⊃、　　|
　　　|　　ヽ,.ｲ　　 ｀二ﾆﾆうヽ.　 |





　　　　　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　 　 　　　　 ／　　ヽ_　　.＼
　　　　　　 　 　　 （ ●）（ ●）　　｜
　　　　　　　　　　 （__人__）　 　 　 |
　　　　　　 　 　　　ｌ｀ ⌒´　　　　｜
　　　　　　　　　　　{　　 　 　 　 ｜　　　あれほどの博打打ちがいたとはな、いやあ、江戸は広いぜ。
　　　　　　　　　　　{　　　　　　 /
　　　　　　　_. -: ´Λ　　　　 _.へ｀　、
　　　 　 r　: :: : : :|: :ﾍ ￣r'　 　 ＼ : ＼
　　　　/: : :: : : : :　ﾍ: ﾍ >、　 　 >ﾍ: :Λ
　　 　/: : : ﾄ､: : : : : : ヽ／:／`ｰ／ : : V: |
　 　 〈: : : :::: _ -￢-－―-､: : : | : : :: : ヽ: ｝
　　　 /: : :_ン´: : : : ＼ ,___, ｨ ）:く : : :: : : ヘ|
　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣

　　　　　　　　/: : /: :.| 　 　 ／: : : : : :/: : : : : : : : : : : ＼: : : :＼
.　　　　　 　 /: : /: : : !　　 /: : : : : : :/: : : :/: : : : : : : : : : ヽ: :ヽ: ＼
. 　 　 　 　 ,': : : : : : : ｉ:　 /: : : : : : :/:ｌ: : : :|: : : : : : :＼: : : : : : :ｌ: :ド:ヽ
　　　　　　 ｉ: : : : : : : :ｉ　/ : : : : : : ,': :|: : : :|: : :l: :ヽ: : : ヽ : : l : |: :|　 l|
　　　　　　 |: : : : : : : :∨ : : : : : : :ﾊ: :|: : : :|: : :| : ハ　: :|_＼:l : |: :l　 ||
　　　　　　 |: : : : : : : : | : : : : : : : |: l: |: : : :|: : :|: :|　| ;.イ∨从:∧/　 ﾘ
　　　　　　 |: : : : : : : : | : : : : : : : |: l: |: : : :|: : :|:八 j/Vｨて㍉/ : !
.　　　 　 　 ｉ: : : : : : : :.| : : : : : : : l: :斗七:丁厂⌒｀　 fﾄ::ﾟﾘ ｲ: : :|
　　　　　　　ｌ: : : : : : : :l : : : : : : : | ∨ィチてヾ　　　　 ゞ='^ | : : |
.　　　　　 　 l : : : : : : : ｉ:.: : : : : : :|Y圦iド:;ｲﾘ　　　　　、　　 } : : |
　　　　 　 　 l: : : : : : : : : : : : : : : :Vヾゞ辷ﾝ^　　　　　 〉　 /: : : |
　　　　　　　 | : : : : : : : : ':, : : : : : : .　 　 　 　 　 　 __　　 ′: : :|　　なんだかんだで二百五十両は勝ったのう。
　　　　　　　ハ: : : : : : : :.い : : : : : : '. ､　　　　＜ _／　ｲ: :l: : : :|
　　　　　　　l : '.: : : : : : : l:ハ : : : : : : ∨＞　､_　　 ／::∧: :l : : :|
　　　　　　　|: : ｌ : : : : : : /: ∧ : : : : : : '.　　 　 丁ヽ::::/::∧ l: : :.|
　　　　　　　|: : | : : : : : /: /::∧ : : : : : : :　　　　{　八::::/::∧:l: :│
　　　 　 　 /: : :l : : : : /／:::/::∧: : : : : : ∨　　 ∨ 《Ⅸ:::/:∧: :│
.　　 　 　 /: : :/| : : : /ﾉ :::::::::/::∧: : : : :ｌ: |-─＿＿》　V::/::∧ │
　　　　　/: : :/│: : 〃::＼::::::::/::::|: : : : :ｌ: |:＼{{二¨7＿_V:::::::::ヽ |
　　　　./: : / 　j: : /::::::::::::丶 ::::::::|: : : : :ｌ: |　　＼　{{￣ }}ﾍ､_::::::::＼





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　／　＿　＿　＼
　|　　 ･　　・　　 |
　|＠ （__人_）◎ ｌ
　|　　 ｀ ⌒´　　 |　　ご住職、駒を金に換えてくれ。
　|　　　　　　 　 }
　ヽ　　　　　 　 }
　　ヽ　　　　　ノ
　　　/　　　 く ＼
　　　|　　　　　＼ ＼
　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)､

　　　,.⌒ヽ　　　　　γ⌒ ヽ
　　〈　●ﾉ＼　　　 人. ●　;∩＿
　 　 ヽ彡'　　ヽ　/　　ヾ__ノ〈〈〈　ヽ
　　　　）　　　　Y　　　 （　 〈⊃　　}
　　 ／γ⌒　 　　　⌒ヽ＼　|　　.|
　 /　　|　　　　　　　　　|　 ヽ　　｜
　 |　　 ヽ＿＿人＿＿ノ　　 |　　｜　　へい、ちょいと待ってておくんなさい。
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　 ／＿＿｀ ー―ー'´　　　　　／
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　　　,i'二,_,二,_,二,_,二,_,二,_,二,_,（(_）　　　　／　　　　　　＼;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､
　　,､＿､＿,､＿,､＿,､＿,､＿,､＿,､/ ヽ　　／　　　　　　　　　＼;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､
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　　　|L;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊ／|＼;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､
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　　　|L;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊ／| :.:|　 ￣"￣"￣'￣"￣"￣"￣"￣"￣"￣"￣"￣"￣"￣
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　　　|L;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊ／| :.:|:.:;:.　　;..;.;.　|￣￣￣￣|:　　　　.:;:.　　　　;..;.;.　|￣￣￣￣|
　　　|L;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊ／|`､|,　　　　　　.|＿＿＿＿|:;..　　　;.;..　　　:;:.　　　|＿＿＿＿|
　　/￣`ｙー';:/ .~"''ヽ(:.:....'i,"'"'`ｙー';　;:;i.;.;.
　.:.i ;:;:; :.:'i ;:;;/ヽ　;:.:.:ﾉヽ;:;:;ヽ__,,/,,., /:.:.ヽl.;.;.
　 /ヽ,,_／ヽ /.:.:`ー'ｊ::...:. .:. :..:i, ;:.:. .:.ヽ／ヽ
　 i::.:... .:; :.:.Ｙ::....:.. ／ヽ:...,.,.／:.:. .:. .:.:..j::.::../i'＝;:;=＝=,＝､＝=＝=＝＝=＝=＝=＝＝=＝=＝=＝==＝=
＝=＝=＝=＝=＝=＝＝=＝=＝＝=＝=＝'　　＿_＿___,.＿_＿___,.＿_＿___,.＿_＿___,.＿_＿___,.＿__,.＿_
＿_＿_＿＿_＿___,._＿___,._＿_＿___,.＿_＿___,./

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│南町奉行所　 　 │
└───────┘

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 (二二二ﾆ/二二ﾆ/二｜二二ヽ二ヽ二ニニ)
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　//＿/__//＿/__//＿/_| |__ヽ＿ヽヽ＿ヽヽ＿ヽヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 //＿/__//＿/__//＿/__| |＿ヽ＿ヽヽ＿_ヽヽ＿ヽヽ
　　　二二二ﾆ/二二ﾆ/二二二//＿/__//＿/__//＿/＿| |＿_ヽ＿ヽヽ＿_ヽヽ＿ヽヽヽ二二ヽ二二ヽ二二ヽ二二ヽ
　　 //＿/__//＿/__//＿/__///＿/＿//＿/__//＿/＿ | |＿_＿ヽ＿ヽヽ＿ヽヽ＿ヽヽヽヽ＿ヽヽ＿ヽヽ＿ヽヽ＿ヽヽ
　　//＿/__//＿/__//＿/__//○====○====○======.○=====○===○===○===○ヽヽ＿ヽヽ＿ヽヽ＿ヽヽ＿ヽヽ
　 //＿/__//＿/__//＿/__//＿|　　　|┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬|＿＿|＿ヽヽ＿ヽヽ＿ヽヽ＿ヽヽ＿ヽヽ
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　　　　 　 　 　 　 |　　　　|
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　　　　　　　　　／ ￣ ￣　＼
　　　　　　　 ／　 ::＼:::／:: 　＼
　　　　　　／ 　.<●>::::::<●>　 ＼
　　　　　　|　　　　（__人__）　　 　　|　　ああ、忙しいったらありゃしねえや。
　　　　　　＼　　　 ｀ ⌒´　　　　／　　こんなくそ寒い時によ。
　　　　　　 /,,―　-ー　　､　,　-‐ ､　　その点、お前はいいよな。
　　　　　 （　　　,　-‐　'"　　　　　 ）　日がな一日中、部屋で調べ物をするだけだからな。
　　　　　　 `;ー"　`　ー-ー　-ー'
　　　　　　　l　　　　　　　　　　　l

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
南町奉行所の定回り同心を勤める遣瑠尾風名（やるおぷーな）が、
同じ同心であるできない夫に嫌味をぶつけた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
　　　　　　／￣￣＼
　　　　 ／　u　　　　＼
　 　 　 |　 　 -‐' 　へ　|
　 　 　 |　 （● ) (● ） |
　 　 　 |　　　　 ｜　　│
　 　 　 |　　　 __´___ 　 ｌ
　　　　 ヽ　　　　　　　 !　　……
　　　　　 ヽ　　 　 　 ノ
　　　　　　/　 　 　 く
　　　　 　/　 　 　 　 ヽ

　　　　　　／￣￣＼
　　　　 ／　　　　　　＼
　 　 　 |　 　 -‐' 　へ　|
　 　 　 | u.（● ) (● ） |
　 　 　 |　 　 　 ｜　u　|
　 　 　 l　Ｕ　 __´___ 　 ｌ
　　　　 ヽ　　　　　　　 !　　……
　　　　　 ヽ　　 　 　 ノ
　　　　　　/　 　 　 く
　　　　 　/　 　 　 　 ヽ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
できない夫が何も言い返さずに口をつぐむ。
このふたり、同じ同心者でも随分と役目が違った。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
　　　　　　　　　　 ／￣＼
　　　　 　 　 　 　 |　　　　|
　　　　　　　　　　 ＼＿／
　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　／ ￣ ￣　＼
　　　　　　　 ／　 ::＼:::／:: 　＼
　　　　　　／ 　.<●>::::::<●>　 ＼
　　　　　　|　　　　（__人__）　　 　　|　　ふん。
　　　　　　＼　　　 ｀ ⌒´　　　　／
　　　　　　 /,,―　-ー　　､　,　-‐ ､
　　　　　 （　　　,　-‐　'"　　　　　 ）
　　　　　　 `;ー"　`　ー-ー　-ー'
　　　　　　　l　　　　　　　　　　　l

　　　　　　　　 ／￣＼
　　　　　　　　|　　　 　|
　　　　 　　 　 ＼＿／
　　　　　　　　　＿|＿__
　　　　　　　／　　　　　＼
　　　　　 ／　　::＼:::::::／::＼
　　　　／　 　 <●>::::::<●> ＼
　　 　 |　　 　 　 （__人__）　　　|
　 　 　 ＼　 　 　 ` ⌒ ´　　,／　　よしっ、下手人をひっ捕らえろっ！
.　　　 　 /⌒～"￣,￣￣〆⌒,ﾆつ
　　　 　 |　　,＿_＿ﾞ＿__､rヾｲｿ⊃
　　　　　| 　 　 　 　 　 　｀l￣
.　　　 　 |　　　　　　　　　 |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
尾風名は同心の中で花形職と呼ばれる三廻りの一つである
「定廻り」のひとりだった。
「定廻り」の仕事は市中の見回りと下手人の捕縛である。
時代劇に出てくる同心は、大体がこの定廻りである。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




　　 　／￣￣＼
　　／　　 「　　 ＼
　　|　 　 （ ●）（●）
　　|　　　　 　 ｜　|
　　|　　　　　__´___ﾉ　　ふむ、寛政の先例はと。
　　|　　　　　`ー'´}
　　ヽ　　　　　 　 }
　　　ヽ　　　　　ノ　　　　　　　　＼
　　　　/　　　 く　　＼　　　　　　　 ＼
　　　　|　　　　 ＼ 　 ＼ 　 　　　　　　＼
　　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)､　 　 　　　　　 ＼

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
対して、このできない夫、苗字は不動というのだが、
この同心者の役職は「例繰方」であり、
「例繰方」とは判例、先例を調べたり、
整理するのが、奉行所から与えられた役目であった。
正直、奉行所の中で一番地味な仕事なのである。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

　　　　　　　　／￣＼
　　　 　 　 　 |　　　　|
　　　　 　　　 ＼＿／
　　　　　 　 　　　|　　　　　　　　　/)
　　　　　 　／ ￣ ￣　＼　　　　( i )))
　　　　　／　 ::＼:::／:: 　＼　　 /　/
　　　 ／　 <●>::::::<●> 　 ＼ﾉ　/
　　　 |　　　　（__人__）　　 　　| .,/
　　　 ＼　　　 ｀ ⌒´　　　　／　　　ふん、今年の付け届けはこんなもんか。
　 　　／＿＿　 　　　　 /´
　　　(＿＿＿）　　　　 /
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定廻りと例繰方とでは、同じ三十俵二人扶持（一人扶持は五俵）であっても、
役柄も収入も格段の差があった。三廻りの場合は方々からの付け届けがあり、
お上から頂いている家禄以外にも、年間に七十両から八十両ほどのの余禄があった。
また、三廻りは当時の出世コースの一つでもある。
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　　 ／￣￣＼
　／　　 ｢ 　 　＼
　|　　　 （ ●）（●）
.　|　　U 　 　 ｜│
　 |　　　　　___´__|
.　 |　u.　　´　 　 }　　今月も厳しいな……
.　 ヽ　　　　　u　}
　　 ヽ　　　　　ノ
　　　/　　　 く　　＼
　　　|　　　　 ＼ 　 ＼
　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)､

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逆に「例繰方」には付け届けなどはなかった。収入といえば、家禄のみである。
三十俵二人扶持は俵に直せば四十俵だ。
文政年間当時では、札差による米の引き取り額は百俵で三十両余りである。
四十俵では、長屋に住む八公、熊公よりも収入が低い。
当然だが、生活は苦しい。そして「例繰方」は今で言う窓際でもあった。
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　　　　　　　　　／￣＼
　　　　 　 　 　 |　　　　|
　　　　　　　　　＼＿／
　　　　　　　　　　　|
　　　　　　　／￣￣￣ ＼
　　　　　 ／　　 ::＼:::／::::＼
　　　　／　　 <●>::::::<●>　＼
　　　　|　　　　　（__人__）　 　　|　　へっ、例繰方め。
　　　　＼　　　　 ｀ ⌒´　　　／
　　　　　 ￣（⌒`::::　　⌒ヽ
　　　　　　　 ヽ:::: ~~⌒γ⌒）
　　　　　　　　 ヽー―'^ー-'
　　　　　　　　　 〉　　 　│

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尾風名にこのような態度を取られても、
同じ同心のできない夫が言い返せないのはこのような理由があるからだ。
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　　 ／￣￣＼
　／　　 ｢ 　 　＼
　|　　　 （ ●）（●）
.　|　　U 　 　 ｜│
　 |　　　　　___´__|
.　 |　u.　　´　 　 }　　しょうがない……あっちは定廻り、
.　 ヽ　　　　　u　}　　俺は例繰方だからな。
　　 ヽ　　　　　ノ
　　　/　　　 く　　＼
　　　|　　　　 ＼ 　 ＼
　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)､

　　　　　　　　　／￣＼
　　　　 　 　 　 |　　　　|
　　　　　　　　　＼＿／
　　　　　　　　　　　|
　　　　　　　／￣￣￣ ＼
　　　　　 ／　　 ::＼:::／::::＼
　　　　／　　 <●>::::::<●>　＼
　　　　|　　　　　（__人__）　 　　|　　家禄がまた増米されるか。
　　　　＼　　　　 ｀ ⌒´　　　／　　出世に一歩前進したな。
　　　　　 ￣（⌒`::::　　⌒ヽ
　　　　　　　 ヽ:::: ~~⌒γ⌒）
　　　　　　　　 ヽー―'^ー-'
　　　　　　　　　 〉　　 　│

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では同心はどのようにすれば、出世が叶うのか。
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　　 ／￣￣＼
　／　　 ｢ 　 　＼
　|　　　 （ ●）（●）
.　|　　U 　 　 ｜│
　 |　　　　　___´__|
.　 |　u.　　´　 　 }　　他の役目につきたいもんだ……
.　 ヽ　　　　　u　}　　
　　 ヽ　　　　　ノ
　　　/　　　 く　　＼
　　　|　　　　 ＼ 　 ＼
　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)､

　　　 　 　 　 　 　 , '::::;:;:::::::::::;:;:;:;:;:;:;;;;;;:;;;;::::;:;::::;;ヽ
　　　 　 　 　 　 , ';;;;;;;;;;:::;;;;;;:;:;:;;;;;;;;:;:;;;;;;;:::::.;;:;;;;､;;;;;:ヽ
　　　　　　　　 /;;;;;;;;;;:　;;;;;;;;;;;;:::;;;;;;;;;;::::..;;.　　 ;;_::;;;;;;.i､
.　　　　　　 　 i;;;;;:;;;;l＼ ...　 ;;;;;:::: :::;:;:;　..　／　}_;;;;;;;;i
.　　　 　 　 　 i;;;;;;;;;;i､　＞ ､　　　　._,.．-'' 'i, .〈;;;;;;;;;;;l
　　　　　　　　i;;;;;;;;,r'　/　　 i~"'''"~　 i　 　 i　 ヽ;;;;;;;l
　　　　　　　　i;;;:;;;r' ,/ 　 　,l　　　 　 .',　 　 ',　 i;;;;;;;;l
　　　　 　 　 ,-､::::!　"'''- ． l. ,　　　/ ,l _．-''i"　l::,r'ヽ
.　　　　　 　 l ﾊ'i;;ｌ ,' ､-､__,ﾐi_./　　　 .''i_,, ．十, ;l/ ﾙ l
.　　　　　 　 l l ' l:ｌ i　 `--‐.l'"　　　　`ト`ﾆ イ　;;ﾘ ,' /
　　　　　　　ヽ l　l l　　 　 /l　　　 |;;;;　iヽ　::;:l 　.l /,/l　　　　 　 , - ．_
　 　 　 　 　 　 ‐ l l　ヽ　 ' l　　　 .|;;;;;　l　'　/l　 l／l;: .l'- ､_,.-'''"::::::::::::
.　　　　 　 　 　 _` ll 　 ヽ　l　　　 .|;;;;　 l　 / ,l ./ヽ;.l ::::l;;;;;;l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
.　　　　　 　 ／l// l ', 　 ヽl 　　 ､_/ 　 .l / 　 /巛ヽ.l;;;;;l;;;;;;ヽ;;;;;;_/ "'''‐
　　　　　 ／;;;;ｉ//:::ｉｌ/ ヽ　 l　　 ＿＿　 l　　 /　　l　.i;;;;;;;l;;;;　,!/___;;;;;;;;;;
,r-┘￣´ｌ/;;;;;;;ｌ ｌ / :ｌｌ;;;;;;ヽ ｌ 　´ 　 　 ｀　　./　　　 /;;;;;;/;;;..;;......;;;;;;;.;;;;.;
, ;;;;;;;;;;;;／;;;;;;;;;;l丶;:;:'ｌ ｌ'　ｌ, ヽ.　 　￣　　　./　　　 /;;;;;;/;;;;;..;;......;;;;;;;.;;;;;;;
_,.．-''";;;;;;;...;;;; l:::::l;:;::: 　 l 　 ヽ　　 　 　 ./　　　 /;;;;;;/;;;;;;...;;;;;;;;;;;;;;;..;;;;;;
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一つは賄賂、もう一つはどれだけ腕の良い岡引を抱え込めるかだ。
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八丁堀の近くにある居酒屋で、尾風名と一が酒を一杯引っ掛ける。
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　　　 　　　 ＼＿／
　　　　 　 　＿_|＿_
　　　　　／　　 　 　＼
　　　 ／　　 :::─:::::::─＼
　　／ 　　 <●>:::::<●> ＼
　　|　 　　 　 （__人__）　 　|
　　/　　　　 ∩ノ ⊃　　／　　それでよ、またぞろ手柄を立てたいんだがな。
　 (　 ＼　／ ＿ノ　|　 |
　　.＼　“　　／＿__|　 |
　　　　＼ ／＿＿＿ ／

;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;r､;;;;;;;;;;;;;ﾍ
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;'　ヽ;;;;;;;;;;;;;;ﾍ
;;;;;;γ二ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;''　 ／ヽ;;;;;;;;;;;｝
;;;;;;;i /⌒}｝;;;;;;''"´　 ／　　 ∨ｿソ
;;;;;;;i　　ﾉ/〃　　　/ヘ、　　 ﾄヾ、
;;;;;;;;!､ｰゝ　 :　　 / 弋ｧﾄ、　ハ:i ヽ、
;;;;;;;;;;;〉7　　 :　 /　 　∨ｿノ 　i| 　 ';
;;;;;;;;;/ !　　 ::　/　 　 　　i′　il　　 i!
;;/!/　i　　 :　/　 　 　 　 !　　i|　　 |!
//　 ﾍ.　 　 i:　　　　 　　!　　i!　　 i!
.　　 　ﾍ.　　i　─ ､,,,ｒｰ-ゝ　/　　 /
ヽ　　　 ﾍ　 !　　　r'"ヘ　　/　　 /
;;;;＼／⌒;、 　　 /　　　＼
;;;;;;;;;;＼;＼ ＼_ _ﾉ　　　　　＼　　俺に何かやらせてえみたいだが、何をさせる気だい、
ヽ;;;;;;;;;;;;;＼＼　　　　　　　　　　　尾風名の旦那よ。
;;;;;;＼;;;;;;;;;/;;/
;;;;;;;;;;;;＼;/;;く
;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼;;;＼




　　　　　 　 　 　 ／￣＼
　　　　　　　　 　|　　　 　|
　　　　 　　　　　 ＼＿／
　　　　　　　 　 　＿_|_＿_
　　　　　　　　／　　 　 　＼
　　　　　 　／　─　 　 ─　＼
　　　　　／ 　 <●> 　<●>　 ＼
　　　　　|　 ::::::　（__人__）　 ::::::　|　　泥棒をひっ捕まえたいだけさ。
　 　　　 ＼.　　　　`ー'´　 　　／ヽ
　　　　　　（ヽ、　　　　　　/￣）　　|
　　　　　　 |　｀`ー――‐''|　　ヽ、. |
　　　　　　 ゝ　ノ　　　　 　ヽ　 ノ　 |
　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣

　　　　　　　／￣＼
　　　　　 　|　　　 　|
　　　 　　　 ＼＿／
　　　　 　 　＿_|_＿
　　　　　／　　 　 　＼ （ ;;;;(
　 　　／　　　_ノ ,､ヽ､_＼) ;;;;）
　　／　 　;;;（○）::::::（○/;;／
　　|　　　　:;:, （__人__） l;;,´|
　　＼.　 ∩　 |++++━・／　　　剛斗（ごうと）のとっつぁん達、もうそろそろ捕まえても良い頃合だろうぜ。
,,.....イ ヽ .|｜　`ー‐´ ／-､.
:　 　|　'ｆ｢| |^ﾄ、__ ノ .| ヽ　i
　 　 |　|:. ::　 ! }__)＼,| 　i　|
　 　 ＞.ヽ　　,ｲハ　 | 　 |｜




;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;r､;;;;;;;;;;;;;ﾍ
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;'　ヽ;;;;;;;;;;;;;;ﾍ
;;;;;;γ二ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;''　 ／ヽ;;;;;;;;;;;｝
;;;;;;;i /⌒}｝;;;;;;''"´　 ／　　 ∨ｿソ
;;;;;;;i　　ﾉ/〃　　　/ヘ、　　 ﾄヾ、
;;;;;;;;!､ｰゝ　 :　　 / 弋ｧﾄ、　ハ:i ヽ、
;;;;;;;;;;;〉7　　 :　 /　 　∨ｿノ 　i| 　 ';
;;;;;;;;;/ !　　 ::　/　 　 　　i′　il　　 i!
;;/!/　i　　 :　/　 　 　 　 !　　i|　　 |!
//　 ﾍ.　 　 i:　　　　 　　!　　i!　　 i!
.　　 　ﾍ.　　i　─ ､,,,ｒｰ-ゝ　/　　 /
ヽ　　　 ﾍ　 !　　　r'"ヘ　　/　　 /　
;;;;＼／⌒;、 　　 /　　　＼
;;;;;;;;;;＼;＼ ＼_ _ﾉ　　　　　＼　　　旦那、あんた、あいつらから袖の下貰ってたんじゃねえのか？
ヽ;;;;;;;;;;;;;＼＼
;;;;;;＼;;;;;;;;;/;;/
;;;;;;;;;;;;＼;/;;く
;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼;;;＼

　　　　　　　　　／￣＼
　　　　 　 　 　 |　　　　|
　　　　　　　　　＼＿／
　　　　　　　　　　　|
　　　　　　　／￣￣￣ ＼
　　　　　 ／　　 ::＼:::／::::＼
　　　　／　　 <●>::::::<●>　＼
　　　　|　　　　　（__人__）　 　　|　　だからおめえ、これまでお目こぼししてきたんだろうがよ。
　　　　＼　　　　 ｀ ⌒´　　　／
　　　　　 ￣（⌒`::::　　⌒ヽ
　　　　　　　 ヽ:::: ~~⌒γ⌒）
　　　　　　　　 ヽー―'^ー-'
　　　　　　　　　 〉　　 　│

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定廻り同心である尾風名は、悪徳同心のひとりだ。
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　　　 　 　 　 |　　　　|
　　　　 　　　 ＼＿／
　　　　　 　 　　　|　　　　　　　　　/)
　　　　　 　／ ￣ ￣　＼　　　　( i )))
　　　　　／　 ::＼:::／:: 　＼　　 /　/
　　　 ／　 <●>::::::<●> 　 ＼ﾉ　/
　　　 |　　　　（__人__）　　 　　| .,/　　でもなあ、そろそろ見切り時って奴だろうぜ。
　　　 ＼　　　 ｀ ⌒´　　　　／
　 　　／＿＿　 　　　　 /´
　　　(＿＿＿）　　　　 /

:::::"'-────　-'" 　ヽ 　 /;;;;;;;;;;;;;;;;',
::/ :::. /　　　　　 ﾞl　　　　',.　.';;;;;;;;;;;;;;;;;;:l
/ ､:: ,! 　 　 　 　 ,i／　 　 ', 　l;;;;;;;....;;;;;;;l
::::::ヽi,　　 　 　 ／l　　　 　 ',　l;;;;;;;_,.． ､
: : ::::l　　　　／ 　 l　 .__._,　 .i　ヽ;;ﾉ/:::　',
"'!=iit.:．　　,' _,._= iﾆ__,,二￣l　 l/. l:::::　,'
ヽ,ﾆl=''　　　 '‐‐､,''i｀-' ,,-'"　l　 l i/／ /
:;::ヽ;l/::'　　　　ヽ　|￣´ 　 　 l　l l l　 /
:::::;;/l;;;;;;|　 　 　 ヽ|　 　 　 / |　| / ./
::::/;;;l::;;;;|　　　　　 ｌヽ　　 /　:| //;:;:l
'': ::　ｌ;;;;;|　　 　 　 ｌ　　　/:　 .l/ ;;i;;;;;l
　 　 ｌ ;;;|　　 　 　 l　 　/;:;　 .l;;;;;;;l:､ !　　　……旦那、あんた誰からいくら貰ったんだい？
　　 　 , !　_,..　 　 l 　 ,':::: 　.,'l;;;;;,' :|,l
: :: 　 　 ｀´　　 　 　 ,,':::　　/ l;;;;;ll::l l
;;;;　　"￣￣￣'　　 　 　 ／　l::i}:l.l;'
. :;:;;;:　　─'　　　　 　 ／/ 　 l 'l'l l
ヽ;;;;;;:;::　 　 　 　 　 ,r'　/::::　 lﾐ-､
;;;;ヽ.;;;;;;;;　　　　　／　 /;;;;:;:　.l "'ヾ',
;;;;;;;;ヽ ::　　 　 ／ 　 ,/ ::::::　_ l -'";;|
　 　 :　''‐-‐''"　　　　 : :: / ;.......,,.　|





　　　　　　／￣＼
　 　 　 　 |　　　　|
　　　　　　＼＿／ ＼
　　　　　η^′　　　　 ＿＿＿_
　　　　　ﾉ, ∃ 　　　／　─　─＼
　　　／　/i　　　 ／　(●） 　(● )＼
　　 （　　〈　　 ／　 　 　（__人__） 　　＼
　　.　ヽ　　ヽ, |　　　 　　 ｀ ⌒　　 　 　|　　　そんなこたあ、どうでもいいじゃねえか。
　　　　 ＼　 　＼　 　 　　　　　　 　／　　　 俺もお前も本来の務めを果たす、それだけのこった。
　　　　　　ヽ 　　 　 　 　　　　 　　 ＼.

　　　 　 　 　 　 　 , '::::;:;:::::::::::;:;:;:;:;:;:;;;;;;:;;;;::::;:;::::;;ヽ
　　　 　 　 　 　 , ';;;;;;;;;;:::;;;;;;:;:;:;;;;;;;;:;:;;;;;;;:::::.;;:;;;;､;;;;;:ヽ
　　　　　　　　 /;;;;;;;;;;:　;;;;;;;;;;;;:::;;;;;;;;;;::::..;;.　　 ;;_::;;;;;;.i､
.　　　　　　 　 i;;;;;:;;;;l＼ ...　 ;;;;;:::: :::;:;:;　..　／　}_;;;;;;;;i
.　　　 　 　 　 i;;;;;;;;;;i､　＞ ､　　　　._,.．-'' 'i, .〈;;;;;;;;;;;l
　　　　　　　　i;;;;;;;;,r'　/　　 i~"'''"~　 i　 　 i　 ヽ;;;;;;;l
　　　　　　　　i;;;:;;;r' ,/ 　 　,l　　　 　 .',　 　 ',　 i;;;;;;;;l
　　　　 　 　 ,-､::::!　"'''- ． l. ,　　　/ ,l _．-''i"　l::,r'ヽ
.　　　　　 　 l ﾊ'i;;ｌ ,' ､-､__,ﾐi_./　　　 .''i_,, ．十, ;l/ ﾙ l
.　　　　　 　 l l ' l:ｌ i　 `--‐.l'"　　　　`ト`ﾆ イ　;;ﾘ ,' /
　　　　　　　ヽ l　l l　　 　 /l　　　 |;;;;　iヽ　::;:l 　.l /,/l　　　　 　 , - ．_　　……月に三両、そんなとこか？
　 　 　 　 　 　 ‐ l l　ヽ　 ' l　　　 .|;;;;;　l　'　/l　 l／l;: .l'- ､_,.-'''"::::::::::::
.　　　　 　 　 　 _` ll 　 ヽ　l　　　 .|;;;;　 l　 / ,l ./ヽ;.l ::::l;;;;;;l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
.　　　　　 　 ／l// l ', 　 ヽl 　　 ､_/ 　 .l / 　 /巛ヽ.l;;;;;l;;;;;;ヽ;;;;;;_/ "'''‐
　　　　　 ／;;;;ｉ//:::ｉｌ/ ヽ　 l　　 ＿＿　 l　　 /　　l　.i;;;;;;;l;;;;　,!/___;;;;;;;;;;
,r-┘￣´ｌ/;;;;;;;ｌ ｌ / :ｌｌ;;;;;;ヽ ｌ 　´ 　 　 ｀　　./　　　 /;;;;;;/;;;..;;......;;;;;;;.;;;;.;
, ;;;;;;;;;;;;／;;;;;;;;;;l丶;:;:'ｌ ｌ'　ｌ, ヽ.　 　￣　　　./　　　 /;;;;;;/;;;;;..;;......;;;;;;;.;;;;;;;
_,.．-''";;;;;;;...;;;; l:::::l;:;::: 　 l 　 ヽ　　 　 　 ./　　　 /;;;;;;/;;;;;;...;;;;;;;;;;;;;;;..;;;;;;
;;;;;;;...;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ　ヽ:::::　l　 　 ヽ＿＿_ /　　　 /;;ヽ/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;:;:;:::::::::;:;::::ヽ　ゝ:　 〉 　 　 　 　 　 　 　 /::::;:/;;:::::;;;;;;;;;;;;;;;::::::;;;;;;;;;;




　 　　 　　　　 ＿＿＿
　　　　　　　／　　　　 ＼
　　　　　 ／　　丿 　 ｀ヽ＼　　ご名答。相手が倍払うっていうもんでな。
　　　　／　 　(●） 　(●)　＼　　　　 　　／￣＼
　　　　|　　　 　 （__人__）　 　| 　 ηノ─┤　　　│
　　　　＼　 　 　 ｀ ⌒´　　／　　ﾉ, .∃　 ＼＿／
　　　 ／ 　 　 　　　　 　　 ＼.／　/´

　　　　　　　　　　　　　 __＿___
　　　　　　　　　　 ／::::::::::::::::::::::::丶
　　　　　　　　　 /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
　 　 　 　 　 　 /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::',
　　　　　　　　/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i
　　　　　　　 ｒ ⌒:::::::::r‐‐‐ 、:::、:::::;::::::::,'
　　　　　　　 i:::::::´::::::::::ｰ―ﾟ′::｀:r --v
　　　　　 　　 ',:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽﾟｰ/　
　　　　　　　　 >:::::::::::::::__:::::::::::::::::__>ﾘ
　　　　　　　 /::::ヽ:::::::::::::‐--- 、::::::/
　　　　　 　./::::::::::::ヽ:::::::::｀ ￣´:::::/　　　
　　　　 　 人:::::::::::::::::',:::::::::::::::::::::/　　　　八丁堀の旦那、何かあったらよろしくお願いしますよ。
　　_____／::::::i:::::::::::::::::::＼::::::::::::/
／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ー<´
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ハ
::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ::::::::::::::::::::/::::::＼
::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼::::::::::::::::::::::::::::＼
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ー 、
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼

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この「付け届け」にも種類があり、
一つは商家などの堅気の商売をしている者からの付け届けである。
これは何かあったら力を貸してくださいという意味があり、
三廻りであれば、誰もが貰っていた。付け届けの金額も月に二分あればいいほうだ。
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
もう一つは言ってみれば、岡場所、盗品専門の故買屋等の
日陰の家業からの付け届けである。
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　　　　　　　　　　 _ ＿ _,.
　　　　　　　 _,,;;';;';;''　　　"'''-;;,,
　　　　　　,;;';';';;';;';;,,　　　　　　"''z
　　　　_,ノ';;';;';;'i';;ri;;ri, i　　ヾ; };};､{,.
　　　　,ﾌ;;';;';;';"l;;;i i;;!,'､;';, ､ ,ﾊ;'' ヽ;'!,
　　　　ｼ;;';;';;i'　｀ヾ "'　 "' ｀' ,;=､　i!'iヽ
　　 ／';;';;';;';i, .;'　 ＿_ 　　 ,;',.=､,｀ ! |､ ヽ、
　 /　　,!;;';;';;';| ,;'",.-｡=i`　く ､･_,'　{,"';,.　 ヽ
　/　 /';.ﾆヽ;;{　 ｀ -‐ ´,;　　ヽ,_,.　 ヽ r' ,.　 ヽ
..l　　 ! 'f上;' "',　 _,,.ノゝ-=..ノ´ ,''　　},;',;´　　 ヽ　　どうか末永い付き合いを。
.|　 　 ヽ､ヾ;;' "}　,;'＿＿＿_ ／,.　　/,ノ　　／´
.|　　　、 ヽ=i,;ﾒﾞ　　　＝─;,‐;'"　,;/´　 .／;;i
.L＿　 ｀ヽ､ ヽヽ､_　.,;"､_,,:'　`-'";:'　／;;;;;;;;;;;!
-';;;;;;;`;;;-;;､_`_-｀､;;''ﾆ''､,,,,,_...=-''^／;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;｀';;;-,､:;;,';;';;';;';;'''／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;-;,,.-'";;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;''
;;;ノ';;';;';;';;';;';;';;';;';;';;';;';;';;';;';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;'''
;;;;;;;;;''⌒ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;''''
'';;;;;;;､ 　.ﾉ,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;'''''
　''';;;;;;;";;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;''''''

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これ等を生業にする者たちは、同心、岡引との間に必ずといって良いほど、
垣根を作った。
この「垣根を作る」とは同心風、岡引風を防ぐという意味の符丁である。
勿論、付け届けの金額も多かった。
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　　　　　　　／￣＼
　　　　　 　|　　　 　|
　　　 　　　 ＼＿／
　　　　 　 　＿_|＿_
　　　　　／　　 　 　＼
　　　 ／　　 :::─:::::::─＼
　　／ 　　 <●>:::::<●> ＼
　　|　 　　 　 （__人__）　 　|
　　/　　　　 ∩ノ ⊃　　／　　　剛斗のとっつぁん達もよ、
　 (　 ＼　／ ＿ノ　|　 |　　　　 月に一両二分ばかり付け届けてくれてたんだがな。
　　.＼　“　　／＿__|　 |　　
　　　　＼ ／＿＿＿ ／




　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 __＿ ........... _
　　　　　　　　　　　　　　　／:::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ
　　　　　　　　　　 　 　 ／::::::::､丶ヽ＼＼ヽ､、::::::ﾉ＼
.　　　　　　 　 　 　 　 /:::::::::-=≠ミＹミミＹ7､、Ｙ/::::::/
　　　　　　　 　 　 　 / :::::::::::／::ｲ /　 　 ||　　｀"´Ⅵ＼
.　　　　　　 　 　 　 /ｲ :::: イ::::彡| |＿_　 ||、　　 　 Ⅵハ
　 　 　 　 　 　 　 　 ｲ :::::/⌒Ｙ　|ｰ=ﾞ㍉>|| :>　,ｨzｰ从　 ',
　 　 　 　 　 　 　 　 从::｛⌒Ｙﾐ、| l　　　 ||´　〈`ﾟ"´}ﾊ:!　 ',
　　　　 　 　 　 　 　 |//∧て､ 　| l、　　 |i　　 ∨ /　|l　　i
　 　 　 　 　 　 　 　 { Ⅳ:: `ｰﾍ　| ｌｉ　　　|i 　 ___＼　 !! 　 |
　　　　　 　 　 　 　 　 Ⅵ::::::/ ﾊ | l:i　　 _|ｉ_＿,､ /　　|!　　|
　　　　　　　 　 　 　 　 ∨:::i|　 ﾍ 八.　´ |! ー゛/　　 ﾉ 　 ﾉ
　　　　　　　　　　 　 　 八ﾉi|　　 ＼　　　!　　 ′　　　　　新しく入り込んできた連中のほうが多く出すから、
　　　　　　　　　　　「￣￣￣￣ミ　. ＼　　　 ,′　　　　　ここらで見切りを付けるってとこか。
.　　　　　　 　 　 　 |::::::::::::::::::::::::::::::::＼　ー＜＿＿__
　　　　　　　　_＿ ノ￣￣ミ　､:::::::::::::: /　ハ:::::::::::::::::|
　　--=＝ ￣　:::::::::::::::::彡'´￣￣ミ、〈､ ｛｀ヽ:::::::::::::::|
　　__ ...　-=＝ニ二￣::::::::::::::::::::::::::::￣￣|__彡ヽ::::::::j､_＿_
　 . .:.:.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ==::|圭圭h::::::::::::::::::::}、
　 . .:.:.:.:.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|圭圭从::::::::::::: /、ヽ､＿
　 . .:.:.:.:.:.:.:.:.::::::::::::::::::::::::::::::::::: ＼:::::::::::::::::|圭圭圭!::::::::::::,::::::`ー--ﾍ
　 . .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:::::::::::::::::ヽ:::::::::::: ＼:::::::::::|圭圭圭!:::::::::/::::::::::::::::::::::∧

　　　　　 　 　 　 ／￣＼
　　　　　　　　 　|　　　 　|
　　　　 　　　　　 ＼＿／
　　　　　　　 　 　＿_|_＿_
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　　　　　 　／　─　 　 ─　＼
　　　　　／ 　 <●> 　<●>　 ＼
　　　　　|　 ::::::　（__人__）　 ::::::　|　　　　まあな。別にいいじゃねえか。
　 　　　 ＼.　　　　`ー'´　 　　／ヽ　　　袖の下を貰う相手が変わるだけだしよ。
　　　　　　（ヽ、　　　　　　/￣）　　|
　　　　　　 |　｀`ー――‐''|　　ヽ、. |
　　　　　　 ゝ　ノ　　　　 　ヽ　 ノ　 |
　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣



　　　　　　　／￣＼
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　　　　 　 　＿_|＿_
　　　　　／　　 　 　＼
　　　 ／　　 :::─:::::::─＼
　　／ 　　 <●>:::::<●> ＼
　　|　 　　 　 （__人__）　 　|　　　それにあいつら、これまで色々とやってるはずだ。
　　/　　　　 ∩ノ ⊃　　／　　　ずいぶんと泳がせてたからな。
　 (　 ＼　／ ＿ノ　|　 |　　　　　積もり積もった悪事を吐かせりゃ、俺のお株もまた上がるぜ。
　　.＼　“　　／＿__|　 |
　　　　＼ ／＿＿＿ ／



　　　　　　　　／￣＼
　　　 　 　 　 |　　　　|
　　　　 　　　 ＼＿／
　　　　　 　 　　　|　　　　　　　　　/)
　　　　　 　／ ￣ ￣　＼　　　　( i )))
　　　　　／　 ::＼:::／:: 　＼　　 /　/
　　　 ／　 <●>::::::<●> 　 ＼ﾉ　/
　　　 |　　　　（__人__）　　 　　| .,/　　うまくやりゃ、他の連中も芋づる式に引っ張れるしな。
　　　 ＼　　　 ｀ ⌒´　　　　／
　 　　／＿＿　 　　　　 /´
　　　(＿＿＿）　　　　 /

　　　　　　　　　 |:;:;::::l　　　/､　　l　 　 　 　 i　 ,､ ,>　 ;:::　::::|
　　　　　　　　　 |:::::::|　　 :/:::＼ .l　　　　　 _l'"´ 　 |　 !:::::;::;:|
　　　　　　　　　 |;;;;;;;l .--､l_ :::::::/､　　　　 /　i　　 _l=　.l''''-:(
　　　 　 　 　 　 il､ . il　　.ﾄ､｀ﾞ‐.l,_ijl　　　l",__,ﾄ-__´,,,l　 .|;゛ ､ }
　　　　 　 　 　 <" .>ﾈ.　 ] ミ｀‐□､ヽ　 〟゛‐Iｴ‐／ }　 lli/,　!
　　　　　　　　 　 l l　!　''.|　 　 .|,r'::'''｀l　 　 ヽ l　　　.l,　/./ .|
　　　　　　　　　　ヽ'　! :: lヽ　/ |;;;:::;;;;::i　　 　 l{　　 ./! /^.／
　　　　　　　　　　　｀,:::|　!::',　　l::　;;;;;;;!　 　 　 !'　 /:::|ﾚ'.{
　　　　　　　 　 　 　 l::::| |'''':l　 |　　'''''|　　　　 !　/::::/l:::::l
　　　　　　　　　　　 |:;;:::l | :;;;ゝ.!　　　　/　　　 ! .l:;:;:/::!:;:;:l
　　　　　　　　　　　 !il::;::::l､::::::l ! ---､､ヽ--‐‐.| l:::/.!::!､､:!　　　で、俺の取り分はいくらだ？
　　　　　　　　　　　 l.l.l!'''::l:ヽ､　' .... ...'‐‐　　　 ! ./　|'':叩:|
　　　　　　　　　　　　!!:! li:ﾘ;;::ヽ　　;::;;:::　　　　`/,　 |:j|:|!:l}
　　　　　　　　　　　_,,|!:|l:l::!::::::|::ヽ　 ;;;;;　　　　/ .l.　.|;!l ゝﾐ､
　　　　　　　　　 ,ィ´/ﾘ;:::::|:::::::::l ::＼ '''' 　 　 / ./　 .|..;;;...`l:::ヽ
　　　 　 　 　 　 }:::::＼:;:::::' ;:: : ;;:l :::::｀――'"　.l　　　'　::;;/ ;;::|
　　　　　　　　　.|::::;:;::::｀ ‐.､__　::::l ;:;:;:　　　　 / ,,, -'' ￣ ::::;:;;;:!
　　　　　i ,y､y､..l;;::;:::;;;;;;;;;;;;;;;;;;｀l　 l ::;;:　　　 / ｀l;;;:::::::;::::::::::::::::|_
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　　　　|　　　　　（__人__）　 　　|
　　　　＼　　　　 ｀ ⌒´　　　／　　金の話は後でいいじゃねえかよ。
　　　　　 ￣（⌒`::::　　⌒ヽ
　　　　　　　 ヽ:::: ~~⌒γ⌒）
　　　　　　　　 ヽー―'^ー-'
　　　　　　　　　 〉　　 　│
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この同心、金に関しては汚かった。
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;;;;;;γ二ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;''　 ／ヽ;;;;;;;;;;;｝
;;;;;;;i /⌒}｝;;;;;;''"´　 ／　　 ∨ｿソ
;;;;;;;i　　ﾉ/〃　　　/ヘ、　　 ﾄヾ、
;;;;;;;;!､ｰゝ　 :　　 / 弋ｧﾄ、　ハ:i ヽ、
;;;;;;;;;;;〉7　　 :　 /　 　∨ｿノ 　i| 　 ';
;;;;;;;;;/ !　　 ::　/　 　 　　i′　il　　 i!
;;/!/　i　　 :　/　 　 　 　 !　　i|　　 |!
//　 ﾍ.　 　 i:　　　　 　　!　　i!　　 i!
.　　 　ﾍ.　　i　─ ､,,,ｒｰ-ゝ　/　　 /
ヽ　　　 ﾍ　 !　　　r'"ヘ　　/　　 /
;;;;＼／⌒;、 　　 /　　　＼
;;;;;;;;;;＼;＼ ＼_ _ﾉ　　　　　＼　　　……旦那。
ヽ;;;;;;;;;;;;;＼＼
;;;;;;＼;;;;;;;;;/;;/
;;;;;;;;;;;;＼;/;;く
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　　　　　　　　／￣＼
　　　 　 　 　 |　　　　|
　　　　 　　　 ＼＿／
　　　　　 　 　　　|　　　　　　　　　/)
　　　　　 　／ ￣ ￣　＼　　　　( i )))
　　　　　／u ::＼:::／:: 　＼　　 /　/
　　　 ／　 <●>::::::<●> 　 ＼ﾉ　/
　　　 |　　　　（__人__）　　 　　| .,/　　わかってらあな。へっ、全くがめつい野郎だ。
　　　 ＼　　　 ｀ ⌒´　　　　／　　　　切り餅一つと月に一両、これでどうだ。
　 　　／＿＿　 　　　　 /´
　　　(＿＿＿）　　　　 /

　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 __＿ ........... _
　　　　　　　　　　　　　　　／:::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ
　　　　　　　　　　 　 　 ／::::::::､丶ヽ＼＼ヽ､、::::::ﾉ＼
.　　　　　　 　 　 　 　 /:::::::::-=≠ミＹミミＹ7､、Ｙ/::::::/
　　　　　　　 　 　 　 / :::::::::::／::ｲ /　 　 ||　　｀"´Ⅵ＼
.　　　　　　 　 　 　 /ｲ :::: イ::::彡| |＿_　 ||、　　 　 Ⅵハ
　 　 　 　 　 　 　 　 ｲ :::::/⌒Ｙ　|ｰ=ﾞ㍉>|| :>　,ｨzｰ从　 ',
　 　 　 　 　 　 　 　 从::｛⌒Ｙﾐ、| l　　　 ||´　〈`ﾟ"´}ﾊ:!　 ',
　　　　 　 　 　 　 　 |//∧て､ 　| l、　　 |i　　 ∨ /　|l　　i
　 　 　 　 　 　 　 　 { Ⅳ:: `ｰﾍ　| ｌｉ　　　|i 　 ___＼　 !! 　 |
　　　　　 　 　 　 　 　 Ⅵ::::::/ ﾊ | l:i　　 _|ｉ_＿,､ /　　|!　　|
　　　　　　　 　 　 　 　 ∨:::i|　 ﾍ 八.　´ |! ー゛/　　 ﾉ 　 ﾉ
　　　　　　　　　　 　 　 八ﾉi|　　 ＼　　　!　　 ′　　　　　　五十両がとこは欲しいぜ、旦那。
　　　　　　　　　　　「￣￣￣￣ミ　. ＼　　　 ,′
.　　　　　　 　 　 　 |::::::::::::::::::::::::::::::::＼　ー＜＿＿__
　　　　　　　　_＿ ノ￣￣ミ　､:::::::::::::: /　ハ:::::::::::::::::|
　　--=＝ ￣　:::::::::::::::::彡'´￣￣ミ、〈､ ｛｀ヽ:::::::::::::::|
　　__ ...　-=＝ニ二￣::::::::::::::::::::::::::::￣￣|__彡ヽ::::::::j､_＿_
　 . .:.:.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ==::|圭圭h::::::::::::::::::::}、
　 . .:.:.:.:.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|圭圭从::::::::::::: /、ヽ､＿
　 . .:.:.:.:.:.:.:.:.::::::::::::::::::::::::::::::::::: ＼:::::::::::::::::|圭圭圭!::::::::::::,::::::`ー--ﾍ
　 . .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:::::::::::::::::ヽ:::::::::::: ＼:::::::::::|圭圭圭!:::::::::/::::::::::::::::::::::∧

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本来であれば、岡引風情が手札を貰っている同心にこんな口の聞き方などできやしないのだが、
この一という岡引だけは特別だった。
尾風名が増米に預かり、出世街道を渡っていられるのも一の功績が大きかったのだ。
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　　　　　　　　　 ／￣＼
　　　　　　　　　 | 　　　 |
　　　　　/≡)　　＼＿／　/ミ ヽ
　　.　／＿ノ　　＿__|＿__ ヽ＿　＼
　　／ ／　　 ／::＼::::::／::＼　 ＼ ＼
　 ( 　く　　.／< ＞>:::::<＜>u＼　 .>　）　（くそっ、足元見やがってっ）
　　＼　 ／ u　　（__人__).　　　 ＼'.／
　　　 ヽ|　　　　　 ｀⌒´　　u　　　|/　　
　　　 　 ＼　　　　　　　 　 　 　／

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　　　　　　　　　　　│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 │
　　　　　　　　　　　│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 │
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　　　　　　　　,,. -‐'''"""´"' - ､_
　　　　　　,-'"　　 　 　 　 　 　 ｀':;､,.
　　　　 ,;'´ 　 ,;'´　　　　　　　　　　 ヽ,.
　　　 ;'´　　　　';　　　　　　　　;´　　 ::i,
　　 ,;'　　　　 ､.　　　　　　　　 ´,　　　:';
　　 ;　　　　　';"""' - ､_,,. -‐'''" '; 　 　i!
　　 ;　　　　_､',,--,､,-　　､,-､_..　';ﾞﾞ"'　i'
　　 '; 　 ' "　〉　,イｊ i ､ 　,/ i_ｔ l　〈; , 　;'
　　　';　　,　〈　､_｀ノ　〉 〈ヽ＿ﾉ　 〉　 ;´
　　　｀';　´,,｀,l　　　　´ﾞ-ﾞ｀ 　　　 l.　_''
　　　　｀':;.　（ｌ　υ　,　─　､　　 l）;´　　ああ、せっかく稼いだ二百両、全部吐き出す羽目になるとはな。
　　　　　 ヽ, ､!､　　｀ﾆﾆﾆﾆﾞ　　,!
　　　　　　　 |｀＼　　 ﾞﾞﾞﾞ　 　,イ
　 　 　 　 　 ト､　｀＼＿__／´ ,|

　　　　　　　　　　　 ＿,.．-―――― - ､
　　　　　　　　　　　 ＞ 　　　　　　　　　　ヽ.
　　　　　　　　　　,ｨ' ,イ/|,.ｲﾊﾙ､,､,._,.、　　　l
　　　　　　　　　　7/　´　 　 　 　　　 ヽ 　　|
　　　　　　　　　　l !_ 　　　　,.=＝､、　｜ 　 ヽ、
　　　　　　　　　ノ l'=ﾐﾝ 　 　ﾝ'＾ヽ ヽ ,.ﾉ 　 　　}､
　　　　　　　　,.' ,'´ 　j　 　 ､`ー ﾟ'　 ,! r'｀ヽ　 ,ゝ ヽ、
　　　　　　　 ｨ　i　　人__,.．ﾍ.`ｰ　ｨ'´　k' j |　 } 　 　!　　全く馬鹿だねえ、お前さんも。
　　　　　　　 {　 !　,　 　 　 　 ｀i　 {　　}_,ンﾙ'´ 　 　l
　　　　　　／｀' ﾍ　￣｀ヽ、　　　　j　,.ｲ 　 / 　 　 　|ー-
　　　　　/　　　　j､_,ｨ"t　｀ ｰ ｀　 ﾞ^' ﾉ 　/　 　 　　j:.:.:.:.:
　 　 　 /　　　　　ゝ.＿ ｀ヽ-‐'ン-‐'´　／　 　　　／:.:.:.:.:.
　　　　＞ー- ､　　　ﾊ ｀ー　'´　　　／　 　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.




l´ 　 　　　　　i, l､ ､　　　　　　　　　 , -‐'''´　　｀i　　　　　　　　　　　 li
l　　　　　　　 /｀ ｀ﾞﾞ‐-;､_　 　 ,_,,‐'''´　　　　　　 l　　　　　　　　　　　 !.
丶, 　　　　.　/　　　　　´ ￣｀´(.､__, ‐''''-､,,.　 　 i　　　　　　　　　　　〈
　i　　　　 /　i　　,＝＝´　　　　＼｀ ´_ﾆ_｀｀ヽ､　i　!.　　　　　　　　　　i
　ヽ,　　　i　 li ／ ,/⌒ヽ､　 　　　　　 , ⌒｀､　ヽ ｀､;､､　　　　　　　　_,!
　　ヽ､　 i　 ｀i　 ´,イ￣い　　　　, 　 l （⌒い〉　 　〉､｀丶;　　　　　, ,´
　　　｀!　｀ヽ. ｀!　､_ゝ-｀ノ〉　 　 ´､　　､｀_´ノﾉ　　,〉　/´￣i!　／,/´!
　　　　｀､ i´丶i ,, , , ￣,. /´￣｀　 ,,､.　 - ‐ ´　　 /´/ , -　 li　　,／
　　　　　ヽi ｀i |´　　　( ,,l､ ＿ , --､｀)　　　　　 ,/　 i/､　　!i　 /ﾞ
　　　　　　｀､i i　　　　　　　ヽ　　　｀　　 ､.　　i （　 / ﾉﾉ 　/／　　　ああ、全くだ。本当に馬鹿みたぜ。
　　　　　　　｀､ヽ 　(_ , - ‐─- --─ ‐,ァ｀　　i i! / ／　 ／
　　　　　　　　＼､　 ｀丶￣￣￣￣,´／　　 　 ｀,｀ 　, _ノﾞ
　　　　　　　　　　｀,　　 ｀￣￣￣´　　　　　　,/〉_-＜´
　　　　　　　　　 　 ﾄ　　丶─-　　　　　　 ,／　l
　　　 　 　 　 　 　 i ｀i. 　 　 　 　 　 ,／ﾞﾞ´　/　|
　　　　　　　　　　 i　 !　 　 　 　 _,／　 　 　 　 |
　　　　　　　　　　 |　 ｀ ￣￣￣´　　　　　/,　 │

　　　　　　　　　　 _ ＿ _,.
　　　　　　　 _,,;;';;';;''　　　"'''-;;,,
　　　　　　,;;';';';;';;';;,,　　　　　　"''z
　　　　_,ノ';;';;';;'i';;ri;;ri, i　　ヾ; };};､{,.
　　　　,ﾌ;;';;';;';"l;;;i i;;!,'､;';, ､ ,ﾊ;'' ヽ;'!,
　　　　ｼ;;';;';;i'　｀ヾ "'　 "' ｀' ,;=､　i!'iヽ
　　 ／';;';;';;';i, .;'　 ＿_ 　　 ,;',.=､,｀ ! |､ ヽ、
　 /　　,!;;';;';;';| ,;'",.-｡=i`　く ､･_,'　{,"';,.　 ヽ
　/　 /';.ﾆヽ;;{　 ｀ -‐ ´,;　　ヽ,_,.　 ヽ r' ,.　 ヽ　　　まあ、金ならまた稼げばいいじゃねえか。
..l　　 ! 'f上;' "',　 _,,.ノゝ-=..ノ´ ,''　　},;',;´　　 ヽ　　お前の腕なら、まだまだ稼げるはずだぜ。
.|　 　 ヽ､ヾ;;' "}　,;'＿＿＿_ ／,.　　/,ノ　　／´
.|　　　、 ヽ=i,;ﾒﾞ　　　＝─;,‐;'"　,;/´　 .／;;i
.L＿　 ｀ヽ､ ヽヽ､_　.,;"､_,,:'　`-'";:'　／;;;;;;;;;;;!
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　　　　　　　　　｀';　 ,/, ﾍ} ,;'　ｲ･ﾅ';`ｰ　,ｨﾗ'; /,;'_､''
　　　　　　　　　　｀'､_! ;'r.ｌ　|　｀"''´, -　(,.｀´f';"
　　　　　　　　　　　 _,ヽ'-|　i! ,;_＿ ｀ "r‐'　ｲ´＿　　　そうだな。また稼げばいいか。
　＿＿ ,,,, ...,,, ,. -‐''"／ヽ'从、　　 ｀二ｰ' ノ';';';,::´';'　　でも、流石に二百両は痛ましかったな……
"､:::::::::::::::::::::::::::::::::::::{´ 　　:　::｀ヽ､　　 /´;';';';';';';';'
　ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ　　　:　:::::;''ｶﾞ;─';';';';';';';';';';'
　　ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::l　　　､..::::/::'l;';';';';';';';';';';';';';
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　　　 ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ'' - ､　,.-'l::::::::..';'';';';';';'
　　　　　ヽ､::::::::::::::::::::::::::':.､　 ヽ　l::::::::::::::::';';''.;
　　':　　　　｀ヽ､:::::::::::::::::::::::ヽ、 l l::::::::::::::::'/　;

　　　　　　　　,,. -‐'''"""´"' - ､_
　　　　　　,-'":: 　 　 　 　 　 　 ｀':;､,.
　　　　 ,;'´:::::::　　　　　　　　　　　　ヽ,.
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　　　';　　ア,..､;｀　´ててヽﾞ､┌ﾞﾞ｀l'´　;´
　　　｀';　 ､｀‐ｔｿ､　 ｀--｀´ i i〉アl　_､''　　　ところでとっつぁん、そっちの景気はどうだい？
　　　　　｀､_｀￣､,ノ´　,_,,　!´と//r';"
　　　　　　 ilヽヽ､_,,,／　　 ｀ソr';"
　　　　　　´"ﾞ'＼--´　 ,_,‐'　　 :i,
　　　　　　　 　 人__,,ノ´　　　　 |＿　 ,__,,. -‐'''""´"ヽ.､
　　　　　　　　　　 　 i　　　　　　＞ ｀´　　　　／￣＼　!
　　　　　　　　　 　　人　　　　／　　　　　　 ,/　　　　＼l
　　　　　　　　,. -‐'''　/ﾞ　 　 /　　　　　 　　/　　　　　　i
　　　 　 ,,. -‐'　　 　 l´　 　/´　　　　　　　/＼　　　　　ｌ
　　　 　 ;,.　　　　　 i´　　/´ 　 　 　 　　　/´ , "' -､､_ノ
　　　 ／ :i,　　　 　 'l:　' /´　　　　　　´　/　　　ヽ　 〈



　　　　　 　l､|ヽlヽ-‐'´￣￣ ｀ヽ、
　　　　　　 ＞　　　　　　　　　　 ＼
　 　 　　　' 7ｲ/jノ!/'<,、 　 　　　　 ヽ
　 　 　　　/ 　 _ 　 　 　} 　 　　　　　 i
　　　　　 j　,ｨ',.､｀ヽ 　ノ 　 　 　 　 　 |
　　　　／　　l　･〉　 〈　　_　　　 　　　|
　　　 （＿ ノ､` ´　r‐'　(´ｨ,ヽ 　 　　　|-､　　　悪くはねえぞ。
　　　　_j　　　!　　ﾉｲ　　!　} l　　　　　|　 〉
　　 ／ ゝ-―' `ｰ'　}　,ｲ ﾝ ﾉ､ﾄl､,､,.､トl ノ|
　／　ノゝ 　 　　 　 ﾞｰ' ,ﾆ´＿＿,．-'´:.:.:/
　＼　!　ゝ-ｲ 　 　　 ／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ノ、
　　 ＼`ｰ‐‐'r‐―'／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／:.:.:.ヽ
　　　　ヽ. 　 ﾄ､／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／:.:.:.:.:.:.:.:.:＼

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　　　　　　　　　｀';　 ,/, ﾍ} ,;'　ｲ･ﾅ';`ｰ　,ｨﾗ'; /,;'_､''
　　　　　　　　　　｀'､_! ;'r.ｌ　|　｀"''´, -　(,.｀´f';"
　　　　　　　　　　　 _,ヽ'-|　i! ,;_＿ ｀ "r‐'　ｲ´＿　　　そりゃ、また結構なことで。
　＿＿ ,,,, ...,,, ,. -‐''"／ヽ'从、　　 ｀二ｰ' ノ';';';,::´';'
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　ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ　　　:　:::::;''ｶﾞ;─';';';';';';';';';';'
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│向両国　 　 │
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　　　　　　　|　.|幵幵|　| |ミ|i｀　､　　ｏ　　　＝　　　　 目 ,'　,.' 　 　 　 　 Г」　 _,．-'''"　　　 　 　 .ｒ‐'''"~ 　 |.|
~|¨|¨"i　| ,..'.|　.|幵幵|　| |ミ|　||.ｉｎ` r　~‐-,　 ~- 　 　 8 ,' .,.'　　,. ．r'"　　　　'"''''''''''''''''''i――┐.　.|　　　 　 |.|
. ! .!　 ! , 'ттттттr .h．.,_ｕ !!! |_|i` ､ "　 "　　 .ﾟ.,'.,.', -'"._,Ｌ ‐''"＝＝'''Ｔ "Ｔ　|＿| 　 　 |..　..|　r.1. 　 .!.!
. ! ｰ!┌.――.―‐r.-　　 .|. i⌒j―~┤ｒ-　_ ｭｮ"' ｰ-　．',.'　レ"~ r.1 ｢~.|-.ｎ-|｢Γｌ |　.|,．､ 　 　 |　　|　|^|　,...､ |
_ﾚさ/.|　.(ｪ)Aﾂ　 |　.|　　.|,<ゝ'＿ｲｨ_＿_.i⌒Ｌ　 ､．,．　　　 (.ｦ,-､,.､ /¨)ﾉ.)-､ｭ ! .|〈ｆ ),ﾄ､ﾉヽ,r>',.!　.,ｆ ζ.ヽﾄ._,ｨ.| ,､ヽ
.　 ',ｉ .| ｆ i ヾ.ﾍ、...|　.|　　.|l,.,_.|　　__　　　　　 |〉-.r '''''''ヽ='ィ `､ぅ`,'.} Y{ ''ｒ'.Yヽiﾆ./'｝f''｛ ｝ｆ,.)､><ﾆェェ f_,.-'-亠,､(ノ
┌─r''1.i__.| ノ}.　|　.|_,...._,Ｌヽ.,'´　　 ヽ‐_.ｉ1_┘､_i二二っ_ヾi¨¨i　},'/..l　l.ﾋi　 .l'f､)ィ' i'"1 i ｌ. i `i i.',ヽ~,.' .ｨ 　 　 i.i-
｜　 |_,.|ｺっ,,１i_　|　.|￣ Ｔ,､mi　 　 　 i_ ,.7A.fヽ_―――．< ~ヽi.゛1　l　l ｌl,.､ i.iｰ'ヽﾆ、､i.l .l_.l　lll.',ヽ'<_/j　　　 ﾄi′
⊥．⊥L．‐ ''" l　|　.|　 /皿皿` ．_,ィ(,,,,､)_., ､|ｽ.｢｢￣「￣|__}ｆ"ヽ_ .i　^ﾄ|ｲﾄ､|./. <ﾉ､ﾂくヽﾞ､.i i.ﾉﾘ "lﾖ.ﾉ〈_　　　,' .|￣
- ．_　　　_,.．-'''ｰ-‐Ｌ」口 , -'"_ﾌζ(`ｰ'―`-'"~| l　 .|　 .| |ニニｺ¨　 Ц~i ii.Ｔтl只´ l.l　_〉J',l ll　l　~ l　､￣.ﾄ､|ニ
．_ _,.｀＞´　| .}_ｔ_　　　|,ｨ'＿＿｀'＿`´_`ー_―_''_'ﾄ.ト_''_''"¨_┐ィ=.l　　 　 └｀.}_ﾉ ｉ.Y_ _j `i´.,'　}i l'./| 　 l　 l',　.',
‐'"　 　 |　._j　　　 ｢￣|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿_|┘<ヽl―.､.　　 　 Ｊl.l　ｌ. ｉ. l"''~l　 i｀ﾄi　ﾄ.､　ｉ　l ',　.ｉ---
　 　 　 .|'　,．．．_,r''>-､　　　.| ｆ.Y iYﾞ､ヽ〉Ｖ.>ヽi i ﾉ┌.────┐　ﾞ､　 　 　 　 Ｌj､ﾉ　└､_)　　　　｀ l　l .i　.l"""
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　　　／､,>｀ﾄ､ﾉ_, ノ､( ヽ_ヽ‐/j　 ｎ　.|l ,.-L__l ,r-__,..､l',(　__,<　),.>ｸ､-.､,..`､　　　　　　　　　　　　　　　　　~ ｀"´
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ふぁか夫とこな太が見世物小屋へと向かっていった。
人垣を掻き分けながら、進む様はまるで地を這う蟻である。
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∨:〃::/:.:./ｵ≡≡ ｊ;/　≡≡|:.∨::/
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　 |::/.:.:/::.:|､゛　　 ｰ'ｰ'　　 ィ|::.:|

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　　　　 　 |: : :| :|: : :// |/ 八:|: : //＿_∨|: : : :.∧＼|
.　　　　 　 , :.∧:!: :/≦==＝' |: / |'〒ﾃ〒7: : : :.:.|　｜
.　 　 　 　 ∨: ﾊ| : ∧ bﾍﾉ|　|/　　 PＵ'| ,: : :|＼:|
　　　　　 　 ∨ ﾍ /| l　V:ソ 　 　 　 ー‐･|∨:|　 '|
　　 　 　 　 /へ .∨∧ ""　　　　　　 "" |:.Ⅳ 　　　それで今日の見世物だけどさ
　　　　　 　 ／: :ﾍ|:.:.∧ ..　　 (⌒)　 . イ:.|: |
　　　　　　（: : : : >V: : |＿ ≧― ≦＞ |:.:|: ﾄ､



　 ,／:::〃::::::::::/::::∠//l:::::::::l::::i::::::!:::::::
　/::／/:;:::::::::/:::::/::/!　l、::::::!:::ト､:l:::::::::
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　　　 　 !:::::::!:::/ﾚｰ l　u !::i　l:::i　ヾ ､:::::
　　　 　 l:::::::i::::! l-　l　　 ｌ:l　 '､| __ ヾ､::::
　　　　　|::::ｲl:::ｌ .ﾄ_ｼ　 　 l 　 ｆ ､　ﾌi ∧::
　　　 　 ヽ::l||::i　　　　　　u　|　Ｊﾉ//::::!::i　　……いくら見世物でも、オナラするのって、おかしくない？
　　　　　　! ||:::＼ 　_ｰ､_,　　 ｀´・//::::::∨
　　 　 　 　 ｌ|::::::i:／/ヽ、＿_ ,..-//::::::/::!::
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　 　　／　　　⌒ｗｗ⌒　　＼　　匕ゝLL |
　　／　　 （ ◎） 　（◎）　　　＼　　`┐　|
　 /　∵∴⌒Y__人__Y⌒∵∴ 　ｌ　　 .|　 |　　　仕方ねえだろう、今日の演目は「女薬」なんだからよ。
　 |　　　　　　｝r┬-｛　　　　　　 |　　 |　 |　　　それよりも生栗食っておけよ。
　　＼ 　　　　　`ー'´ 　　　　　／　　/　 |



　　　　　　　　　　　　　　,,=＝=､､
　　　　　　　　　　　 　 //　　　　ヾ､
　　 　 　 　 　 　 　 　 l:|　　　　　　ヾ.
　 　 　 　 　 　 　 ＿＿!__/:ヽ､＿＿_l|_
　　　　　　,. -‐_´:-: : : : : l: : : : : : : : : : :`: .､
　 　 　 ／‐／: :,: : : : : :, :l: : : : : : : : : : : : : : :ヽ
　　　 　 ／: : /: : : : : /: /l: : : : ﾊ: l: : : u: : : l: :｀､
　　 　 /: ,／/: :/ : : :_LＬ_l: : : l:l レA､:_: : :､: l : : l
　　　/／//: : :l : u: ∧/　l: : : ﾘ　l: |丶:｀: : l: l: : :l
　　／　//l: : : l: : : /_V＿ヾ: : |l　_ヾ__ヽ: : : l:ll: : :l
　 　 　 /│: : ,､: : :lT亦テl ヾ: l　 T示┬l: : W :､:l
　　　　　　l : ハ: : ﾊ｀､'::,┤　ヾ 　 P:,:::ﾉ'lヽ: ﾄ｀,:x
　　　　　　 V　 ヽ:l: :l　`''´　 ,　u　`''´'．: ヽl_ノ: N　　でもさ、なんというか。
　　 　 　 　 ｀　　N: :ゝ､_　　 _　　　　.ノ : : N : : l
　　　　　　　　　│: : :|　 ≧ t　- ＜: : /: : :ﾊ: : :l
　　　 　 　 　 　 .l : : :|.／　|,─ ､./　//: : : l: l: : :l
　　　　　　 　 　 .| : : :|　　 |ィ ヽ/　// : : :/彡l､: l
　　 　 　 　 　 　 |: : : |　　.| ⌒/　//: : : /〃彡l l
　　　　　 　 　 　 |: : : |　　.|　/　// l l　/,´／　 |l

　　　　 　　 ＿＿Ω＿
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　　　 　 |＿.|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|＿|_＿＿
　 　　／　　　＼ｗｗ／　　＼
　　／　　 （ ―） 　（―）　　　＼
　 /　∵∴⌒Y__人__Y⌒∵∴ 　ｌ
　 |　　　　　‘ 〈+++ﾉ　　　　　　 |　　今更恥ずかしがることかよ、いいじゃねえか、屁の一発かますくらい。
　　＼ 　　　　　￣　 　　　　　／　　それで銭が貰えるんだからよ。



　　　　 　　　＿__Ω＿_
　　　 　　／|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|＼
　　　 　 |＿.|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|＿|_＿＿r‐r r r┐
　 　　／　　　⌒ｗｗ⌒　　＼　　匕ゝLL |
　　／　　 （ ◎） 　（◎）　　　＼　　`┐　|
　 /　∵∴⌒Y__人__Y⌒∵∴ 　ｌ　　 .|　 |　　大体、お前、一緒に布団入って合い舐め（シックスナイン）
　 |　　　　　　｝r┬-｛　　　　　　 |　　 |　 |　　してる最中にわざと俺の顔に一発かますじゃねえか。
　　＼ 　　　　　`ー'´ 　　　　　／　　/　 |

　　 ／ : ,. -／: : : : : : : : ／: /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :＼
. ／,..　'´／: : : :／: : : : /: : : l: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ
/／ 　 / : : : : /: : : : : /: : : :,! : : : : : : l: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ',
.　 　 /: : : : : /: : : : : /: : : /.|: :|: : : : : |: : : :l: : : : : : : : : : : : : : : : : l
　　 /: : : : : /: : : : : /-‐ x'　!: :|: : : : : |!: : : :l: : : : : :ヽ::::: : : : : : : : :|
　　 !: : : : :/: : : : : / : : :/ ヽ| : | : : : : | l : : : |: : : : : : :ヽ:::ヽ : : : : : |
. 　 !: : : :,.ｲ: : : : : :l : : /　　 l : !: : : : :| ,.x-‐‐!-､: : : : : ﾊ::::ﾊ: : : : : !
　　|: : :/　!: : : : : :|: : / 　 　 l: |: : : : :|　 ヽ: : !､: ヽ､ : : : l::::::l: : : : :|
　　|: :/　 |: : : : : : ! ll｀!‐- ､　l |､: : : :|　　ヽ: :| ヽ: :!: : : : :l:::::::!: : : l
　　|:/　　 l: : : : : ｲ l　|　　 ,!｀'.| ヽ: : | - ..__ヽ|　ヽ: l: : : : :l､:::::l: : :!
　　　　　　|: : : : :l l:|　 r'ｰ',ﾉ　 　 ヽ: |　 | 　｀丶､ヽ:|: : : : :|:ヽ::l : |
　　　 　 　 !: : : ,.!: |!　 ｀ '´　 　　　ヽ! 　r'､__ ,./'/l: !ヽ : : |）:ヽ|: l
　　　　　　 ', : / | : '、 '"'"　 ,　　　　　　ヽ._,. '　l:∧!: 〉､ ,.! '´ ,):|　　　だって、ふぁか夫の兄さん、そういうの好きでしょ？
　　 　 　 　 ヽ:l　!: : :｀ヽ､ 　　､_　　　　　'"'" ･ l/: : : :l／　 ／: l　　　舐めてる最中、ガチガチになるしさ。
　　　　　　　 '.|　| : : : :|:l/丶､　 `ｰ'　　　　 r‐〈: : : : /　 ／、 : |
　　　　　　　　　 l: : : : |:| l:.:.:.:.:｀ ｰ,┬　'' ´ ,〉、r'ー-'､　/=-ヽ: :!
　　　　　　　　　/! : : : |:! |:.:.:.:.:.:./　'　　 , ':/:.:.}-- ..__,　!'"　｀ヽ:|
　　 　 　 　 　 /　!: : : :|:! l:.:.:.:.:.:l｀ヽ､　 / /:.:.:.l.＿＿,.　l_,. --､:}:l
　　　　　　　　{ 　 !: : : |:| |:.:.:.:.:.| 　　｀/ /:.:.:.:.:{　　　　 l　　 　 ヽ!

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江戸時代では「屁を嗅いで気を悪くする陰間好き」という川柳がある。
気を悪くするとは文字通りの意味ではなく、興奮するということである。
ちなみに発明家であり、
「放屁論」の著者である平賀源内も陰間好きで知られていた。
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　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ヽ: :}
　　　　　　　　　 　 　 　 l｀: .､　　　　　　|:/
　　　　　 　 　 　 　 　 __|: : : :`:-:‐:''':''':'': :‐. .,,_
　　　　　 _,,. -‐'',,."￣: :.|: : : : : : : : : : : : : : : : :｀: .、
　　 ,.-,."-‐''／´: : : : : :.|: : : : : i: : : : : : : : : :､: : : : ヽ
,.-'"'" 　 ／ ;. : : : : : : : :|: i; : : : i: : . .　　　　　＼: : : :':,
　　 　 / :/:/　　. . : : : :.;|: :i; : : :.:ｉ: l; : : : : : : . . 、＼: : :',
　 　 /　/./. : : : : : i: : :.i i: :|ﾞ､: : :.:i::lﾞ:､: :､_;,.: : : :ヽ: :ヽ: :.!
　　/／j:.;'.: : : : : :.::|:_:_:ｌ　i: l. ﾞ:､: : ::!i 弋ﾞ:＼:::. : : :.ヾ: ヾ:j
　//　 .!:l: : : : : : ::::}: : 厂丁{　 ﾞ:､: ::i:!　 ヾﾍ＼:::. : : :i; : ﾞ!
..〃　　l:l: : : : : : ::::|l: :.ｌ　　Ⅵ　　 ﾞ:､:.i =キ三≠i､: : : :iﾍrゝ
/ 　 　 lj: : :,|: : : :::Ｎ: :ヒニ干ｷ　u ヾ!　 |ノしｲ| lﾞ;:､: : :iﾍ
　　　　.l: :./ !: : : ::|::}; |ﾞ:,∨しｲ}　　　　　 ヾ＿ｼ l:;::::ﾞi､: lヾ:、
　　　　 !:./　l: |; : :l::ﾊ:ﾄ、 ヾシ'　　　　　 　 　 ・,!;:::::j:,:ヾ|　`
　　　　 V　　l:.!ヽ: lj i:{::ﾞ:.　　u　　 ′　　 　 ／!; : :i: :',| 　　　でも、人前でするのはちょっとね。
　　　 　 　 　 ﾞ{　ヾ|　i:::::ト.. ,,_　　　 ＾ _,,. イ＾i:::l; : :i:::: :.i
　　　　　　　　　　　　 i: :.::l::|:::::￣:/丁　　,l'′`!: :.i::::::: :i.
　　　　　　　　　　　 　 i; : :l:|,.-''" ∠--､/ 　 . l: :.j,＞､:: i.
　　　　　 　 　 　 　 　 l::',: :.l|　　｜　　/　 　 ,.l :/,.-''"ヽ: i.
　　　　　　　　　　　　 l:::/',: :|　　 l 　 /　 ,,-'',,j:/' ,,-''"　i: :i.

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿
　面白いな。　　 　　　　　　　　 　/　　　 M＼
　　　　　　　＿＿＿　　　　　 　　|┬--＝＝＝＝
　　　　　／＿＿＿＿＼　 ／ ⌒ |_|　 　・ 　・|
　　 　 　|__| 　/　　　ヽ|／　　 ／(∂ 　 　　o | ヽ
　　　 　(∂　　　 ・　・ |　　 ／　 └,＼ └　 丿 |　　ははは。
　　　　　| 、　　　）⌒ 　） /　|　 |　/　| ￣￣ ／
　　 　 /└＼ 　 　∨／　| 　 |--|/|--|　　 ／
　 　　|　　　 　￣￣ |_|　　|ヽ-＼ ￣）/￣｀ヽ
　　　|　|─-|_＿　 　| |　／＼ (￣￣ヽ￣| 　|
　 ／|＼＼＿　 ⌒）⌒)　　 　￣￣|　 | 　|￣￣）
　　　|　 ￣ ／⌒|￣ ￣ ヽ　 　 ／|￣￣）￣￣
　 　　＼＿|__　　|─-| 　 |　 ／　　￣￣
　　　　　　／|　　|　　|￣￣）
　　 　　 　　 |￣￣）　￣￣
　　　　　　　 ￣￣
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さて、この「屁」であるが、江戸当時ではこの屁芸が見世物としては、そこそこ人気があった。
安永三年（一七七四年）に両国橋の見世物小屋で、
「霧降花咲男」という芸人がこの屁芸を売り物にしたのが皮切りである。
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　　　すげえっ
　　　　　 ,r=ヽ、　　　　　　　　　　　　r';;;:;:;;:::;;;;;;;;;;;;ヽ、
　　　　　j｡ ｡ﾞLﾞi　　　　 rﾆ二`ヽ.　　　Y",,..、ｰt;;;;;;;;;;;）
　r-=、　l≦ ﾉ6)＿　　　l_,.､ヾ;r､ﾞt　　 lｦ '・=　 ）rテ-┴- ､
　｀ﾞゝヽ、`ｰ!　ﾉ::::::｀ヽ､ L､ﾟﾞ　tﾉ`ｿﾞ`ｰ ﾞiｰ'　 ,r"彡彡三ﾐミ｀ヽ.
　　にｰ `ヾヽ'":::::::::::: ｨ"^ﾞiﾌ　 _,,ﾉ　,　　ﾞtﾌ　ﾞゞ''"´　　 ﾞifrﾐソﾍ,
　,.、　｀~iヽ､. ｀~`''"´　ﾞt　（,,￣,　frﾉ　　 ゝ-‐,i ,,.,...、　 ヾミく::::::l
　ゝヽ、__l::::ヽ｀iー- '''"´ﾞi,　ヽ　ヽ,/　　　/　　lｦ ｪ｡､　　 〉:,r-､::ﾘ　　ぎゃはははっ
　W..,,」:::::::::,->ヽi''"´::::ノ-ゝ ヽ､_ﾉｰ‐ﾃ-/　i　/ ,, 、　　 '"fっ)ﾉ::l
　　￣r＝=ミ__ｨ'{-‐ﾆ二...,-ゝ、'″ ／,/｀ヽl : :`i- ､ヽ　　,.:ﾞ''" )'^`''ｰ- :、
　　　 lﾐ､　　／ f´　 r''/'´ミ)ゝ^),ノ>''"　 ,:ｲ`i /i､ヲﾞi　.:" ,,.　/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;｀ﾞ
　　　 !　ヾ .il　　l　　l;;;ﾄ､つノ,ノ ／　　 ／:ﾄ-"ﾉﾞi　　,,.:ｨ'"　/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
.　 　 l　　　ハ.　l　　l;;;;i _,,.:イ　/　　 ／ 　,ﾚ''";;;;｀ﾞﾞ" ヽ_,,ノ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
　　 人 ヾﾆﾞi　ヽ.l　 yt,;ヽ　 ﾞv'′ ,:ｨ"　　/;;;;;;;;;;;;;;r-'"´｀i,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
　 r'"::::ゝ､_ﾉ　　ﾞi_,/　 l ヽ　　ﾞ':く´　_,,.〃_;;;;;;;;;;;;f´' 　 　 ll;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
　 ｀￣´　　　　 ／　　l　 ヽ　　　ヾ"／　 ｀ﾞ''ーハ.　　 　 l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
　　　　　　　 ／　　　 l　　ﾞt　　　 `'　　　　 ／^t;＼　　,,.ゝ;;;;;;;;;;;;;;;i;;;;;;;;;;;;

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蜀山人、太田南畝が市井の見聞きした事を集めた『半日閑話』には、
「此処両国に放屁男を見世物にす。霧降花咲男という。大いに評判あり」
と花咲男の事が書かれている。
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この花咲男、笛や三味線に合わせて自由自在に屁を鳴らしたという。
言ってみれば、屁の曲芸師である。
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　　 　 |::::::::/　⌒　　⌒　 |
　　　　|:::::::〉 （ ●） （●） |
　 　　（@　::::⌒（__人__）⌒)
　　　　 |　　　　 |r┬-|　　|　　　医者ってのは屁のことを転失気（てんしき）と呼ぶそうでございますね。
　 　　　＼ 　　　`ー'´　／　　　
　　　　　　（ヽ、　　　 / 　）|
　　　　　　 |　｀`ー''"|　　ヽ|
　　　　　　 ゝ　ノ 　 ヽ　 ノ
　

　　　　 　＿＿＿＿＿
　　　　／.::::::::::::::::::::::::::::::.ヽ
　　 　 |.:::::::::γ⌒Ｙ⌒ヽ::::.|
　　 　 |::::::::/　⌒　　⌒　 |
　　　　|:::::::〉 （ へ） （へ） |
　 　　（@　::::⌒（__人__）⌒)　　
　　　　 |　　　　 |r┬-|　　|　　ある坊さんが体が悪くて医者を呼ぶと、医者から「転失気はありましたか」と聞かれた。
　 　　　＼ 　　　`ー'´　／
　　　　　　（ヽ、　　　 / 　）|
　　　　　　 |　｀`ー''"|　　ヽ|
　　　　　　 ゝ　ノ 　 ヽ　 ノ

　　　 　＿＿＿＿＿
　　　／.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
　 　 |.:::::::::γ⌒Ｙ⌒ヽ::.|
　 　 |::::::::/　ノ　　 ―　|
　　　|:::::::〉 （ ●） （●）|
　 　（@　::::⌒（__人__）⌒)
　　　 |　　　　 |r┬-|　 |　　　ところがお坊さん、転失気って言葉がわからない。
　 　　＼ 　　　`ー'´ ／　　　その場で誤魔化して寺の小僧さんに聞いてみても、小僧さんもわからない。
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノﾞ-､.
:　 　| 　';　＼_____ ノ.| ヽ　i
　 　 |　　＼/ﾞ（__)＼,| 　i　|
　 　 ＞　　 ヽ. ハ　 | 　 |｜



　　　 　＿＿＿＿＿
　　　／.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
　 　 |.:::::::γ⌒^Ｙ⌒ヽ::.|
　 　 |::::::::ゝ　―　　―　|
　　　|::::::（ （ ●）　（●）|
　 　（@　 ::::⌒（__人__）⌒)　　坊さん、自分のことを棚に上げて小僧さんに
　 　　|　　　　 ｀ ⌒´　　|　　　「全く、お前は教えた事をすぐに忘れるな。知らないなら、門前の花屋に聞いて来い」という。
　　　 ＼ 　　　　 　　 ／
　,,.....イ.ヽヽ、___ ーノﾞ-､.
　:　 　| 　';　＼_____ ノ.| ヽ
　　 　 |　　＼/ﾞ（__)＼,| 　i

　　 　　 　＿＿＿＿＿
　　 　　／.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
　 　 　 |.:::::::γ⌒^Ｙ⌒ヽ::.|
　 　 　 |::::::::ゝ　―　　―　|
　 　　　|::::::（ （ ─）　（─）|
　 　 　（@　 ::::⌒（__人__）⌒)　　小僧さん、言われたとおりに花屋に聞きにいくんですが、
　　 　 ｌ^l^lｎ 　　 ｀ ⌒´　｜　　 花屋さんもわからない。
　　 　 ヽ 　 L　 　　　　 ／　　　花屋は花屋で「棚から落ちて割れた」なんて頓珍漢なことをいう。
　　 ,,.... ゝ 　ﾉ_、___ ーノﾞ-､
　 .i　／ 　/ ';　＼_____ ノ.|　ヽ
　 l /　　 / 　 ＼/ﾞ（__)＼,| 　 i



　　　 　＿＿＿＿＿
　　　／.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
　 　 |.:::::::γ⌒^Ｙ⌒ヽ::.|
　 　 |::::::::ゝ　―　　―　|
　　　|::::::（ （ ●）　（●）|
　 　（@　 ::::⌒（__人__）⌒)　　それで小僧さん、薬を取りに行きがてら、医者に転失気の事を聞いてみた。
　 　　|　　　　 ｀ ⌒´　　|　　 そこでまあ、転失気がオナラだってわかるわけでございます。
　　　 ＼ 　　　　 　　 ／
　,,.....イ.ヽヽ、___ ーノﾞ-､.
　:　 　| 　';　＼_____ ノ.| ヽ
　　 　 |　　＼/ﾞ（__)＼,| 　i

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　　　　　　　 ./´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　 　 　 　 ./:::::::::::;:--‐─､::::;─-､:::::',
　　 　 　 　 .ｌ:::::::／ 　 　 　 Y 　 　 ヾ::|
　 　 　 　 　 |:::::| 　 　　⌒ 　　　⌒　.',|
　 　 　 　 　 |:::::| 　 （ ≧ ）　　（ ≦　）l
　 　 　 　 　 l::::::〉　 ⌒ 　 　 　 　 　⌒)
　 　 　 　 　 （@　 　 （ __＿ 人＿_）　l　　　小僧さん、そこで花屋も坊さんも実は転失気の事を知らないな気づいて、
　　　　　　 　 .|.　　　　/ | | | | | |　　 |　　　坊さんに嘘を教えるわけでございます。
　　 　 　 　 　 |　　　　`ー―─'´　.....|　　　転失気とは「酒を飲む盃」であると。
　　　　　　　 .丶　　　　　　 　 　 　 ./
　 　 　 　 　 　 ヽ　　　　　　　　 　 ﾉ、
　　 　 　 　 ／　　 　 　 　 　 　 　 　 ＼
　　 　 　 ／　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ＼
　　　　../　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ヽ



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　　　　　　　 ./´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　 　 　 　 ./::::::::::::::::::::::;:--‐─ .､:::::::',
　　 　 　 　 .ｌ::::::::::::::::::／　　 　 　　Yヾ!
　 　 　 　 　 |:::::::::::::::::|　　 　　⌒ 　　 |
　 　 　 　 　 |:::::::::::::::::| 　　 （　●）　　l
　 　 　 　 　 l::::::::::::::::::〉　　⌒ 　 　 　 |
　 　 　 　 　 （@　 　　　　　 （ __＿ 人_）
　　　　　　 　 .|　　　　　　　　　|　r┬|　　　坊さん、すっかり小僧さんの言葉を信じ込んで、
　　 　 　 　 　 |　　　　 　 　 　 .` ー‐|　　　「そうだ、てんしきとは酒を飲む盃、呑酒器と書くのだ」なんて、
　　　　　　　 .丶　　　　　　 　 　 　 ./　　　もっともらしいことをいう。
　 　 　 　 　 　 ヽ　　　　　　　　 　 ﾉ
　　 　 　 　 ／　　 　 　 　 　 　 　 ヽ
　　 　 　 ／　　 　 　 　 　 　 　 　 　',
　　　　../　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 }

　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ＿＿＿＿＿＿＿
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　　　　　　　 　 　 　 　 　 /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
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　　 　 　 　 　 　 　 　 　 |::::/　　　　　　　　　　　　　ヽ:::::|
　　 　 　 　 　 　 　 　 　 |::::|　　￣￣ 　 　 ￣￣　 　 |:::::|
　　 　 　 　 　 　 　 　 　 |::::|　（　●　） 　 （　●　）　 |:::::!
　　 　 　 　 　 　 　 　 　 |::::〉　⌒　　　　　　　 　⌒　〈:::::|
　　　 　 　 　 　 　 　 　 （@　　　.,　　　　　　　 ､ 　　　.@）
　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 |　　　（＿＿_人＿＿_） 　 　 .|　　　それから少しして、医者が寺にやって来た時に
　　　　　　　 　 　 　 　 　 |　　 　 　 ｀　⌒　´　 　 　 　 |　　　坊さんが「我が寺の転失気をお見せしましょう」と、
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 !　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 |　　　恭しく霧の箱から立派な焼き物の盃を取り出した。
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ヽ　　　　　　　　 　 　 　 　 /
　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ヽ、　　　　　　　　　 ＿_,ｲ
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ／　　　　　　　　　　　 　　 ＼



　　　　　 　 　 　 .＿＿＿＿＿_ _
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　　 　 　 　 ./:::::::::::;:--‐─､::::;─-､:::::',
　　 　 　 　 .ｌ:::::::／ 　 　 　 Y 　 　 ヾ::|
　 　 　 　 　 |:::::| 　 　　⌒ 　　　⌒　.',|
　 　 　 　 　 |:::::| 　 （ ● ）　　（ ●　）l
　 　 　 　 　 l::::::〉　 ⌒ 　 　 　 　 　⌒)
　 　 　 　 　 （@　 　 （ __＿ 人＿_）　l
　　　　　　 　 .|　 　 　 | r─┬─| 　 |　　　医者からすりゃ、びっくりしますよね。
　　 　 　 　 　 |　　　　 ` 　ー‐ 　' 　 |　　　だって、転失気ってのは屁のことでございますからね。
　　　　　　　 .丶　　　　　　 　 　 　 ./
　 　 　 　 　 　 ヽ　　　　　　　　 　 ﾉ、
　　 　 　 　 ／　　 　 　 　 　 　 　 　 ＼
　　 　 　 ／　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ＼
　　　　../　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ヽ

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　　　　　　　 ./´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　 　 　 　 ./::::::::::::::::::::::;:--‐─ .､:::::::',
　　 　 　 　 .ｌ::::::::::::::::::／　　 　 　　Yヾ!
　 　 　 　 　 |:::::::::::::::::|　 　 　 _,,ノ　　 |
　 　 　 　 　 |:::::::::::::::::| 　　 （　⌒）　　l
　 　 　 　 　 l::::::::::::::::::〉　　⌒ 　 　 　 |
　 　 　 　 　 （@　 　　　　　 （ __＿ 人_）　　 それを見た医者が「異な事を尋ねますが、
　　　　　　 　 .|　　　　　　　　　|　r┬|　　　　愚老では転失気とは屁のことを申しますが、寺では転失気とは杯のことを
　　 　 　 　 　 |　　　　 　 　 　 .` ー‐|　　　　申すのでございましょうか？」と聞いた。
　　　　　　　 .丶　　　　　　 　 　 　 ./
　 　 　 　 　 　 ヽ　　　　　　　　 　 ﾉ
　　 　 　 　 ／　　 　 　 　 　 　 　 ヽ
　　 　 　 ／　　 　 　 　 　 　 　 　 　',
　　　　../　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 }





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　　　　　　　 ./´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　 　 　 　 ./:::::::::::;:--‐─､::::;─-､:::::',
　　 　 　 　 .ｌ:::::::／ 　 　 　 Y 　 　 ヾ::|
　 　 　 　 　 |:::::| 　 　　⌒ 　　　⌒　.',|
　 　 　 　 　 |:::::| 　 （ ● ）　　（ ●　）l
　 　 　 　 　 l::::::〉　 ⌒ 　 　 　 　 　⌒)
　 　 　 　 　 （@　 　 （ __＿ 人＿_）　l
　　　　　　 　 .|　 　 　 | r─┬─| 　 |　　　坊さんのほうは「さよう、我が寺では酒を飲む盃のことで、
　　 　 　 　 　 |　　　　 ` 　ー‐ 　' 　 |　　　呑酒器と書きます」なんて言う。
　　　　　　　 .丶　　　　　　 　 　 　 ./　　　医者が再びどういうわけか尋ねた。
　 　 　 　 　 　 ヽ　　　　　　　　 　 ﾉ、　　そこで坊さん「これを沢山重ねますとブウブウが出ます」
　　 　 　 　 ／　　 　 　 　 　 　 　 　 ＼
　　 　 　 ／　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ＼
　　　　../　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ヽ

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　　　　　　　 ./´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　 　 　 　 ./:::::::::::;:--‐─､::::;─-､:::::',
　　 　 　 　 .ｌ:::::::／ 　 　 　 Y 　 　 ヾ::|
　 　 　 　 　 |:::::| 　 　　⌒ 　　　⌒　.',|
　 　 　 　 　 |:::::| 　 （ ≧ ）　　（ ≦　）l
　 　 　 　 　 l::::::〉　 ⌒ 　 　 　 　 　⌒)
　 　 　 　 　 （@　 　 （ __＿ 人＿_）　l　
　　　　　　 　 .|.　　　　/ | | | | | |　　 |　　まあ、いつの世にも知ったかぶりするお人はいるってことです。
　　 　 　 　 　 |　　　　`ー―─'´　.....|　　特にお偉い方にはね。
　　　　　　　 .丶　　　　　　 　 　 　 ./
　 　 　 　 　 　 ヽ　　　　　　　　 　 ﾉ、
　　 　 　 　 ／　　 　 　 　 　 　 　 　 ＼
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　　　　../　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ヽ



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　　 　 　 　 ./::::::::::::::::::::::;:--‐─ .､:::::::',
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　 　 　 　 　 l::::::::::::::::::〉　　⌒ 　 　 　 |
　 　 　 　 　 （@　 　　　　　 （ __＿ 人_）
　　　　　　 　 .|　　　　　　　　　|　r┬|
　　 　 　 　 　 |　　　　 　 　 　 .` ー‐|　　さて、今日の演目は「女薬」でございます。
　　　　　　　 .丶　　　　　　 　 　 　 ./　　お客さん達からこなちゃんで是非にとの強い立っての願いということで。
　 　 　 　 　 　 ヽ　　　　　　　　 　 ﾉ
　　 　 　 　 ／　　 　 　 　 　 　 　 ヽ
　　 　 　 ／　　 　 　 　 　 　 　 　 　',
　　　　../　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 }

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　　　　　| ﾚ　|　ﾚ'　　　　 　 　 　 只　　　　　　 　 ｀ヽ. /　　　　 　 |　|
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　　　　 ／￣￣＼
　　　／　「　　 ヘ ＼
　 　 | 　（○）（●）　|
　 　 | ､､､　 ｜　､､､|
　 　 |　　　__´___　　.| 　　す、凄かったなあ。まさか、あんな可愛い子があんな事するなんて……
　 　 |　u.　`ー'´　　.|
　　　ヽ　　 　 　 　 /
.　　　　ヽ 　 　 　 /　　　　　___ 00　　 ｎ
　　　　　/　　 　く　　　　　　| ∟　　,⊆ ⊇､　 (⌒'⌒）
　　　 　 |　　　 　 |　　　　　 |_厂　　￣U￣ 　　＼／
　　　 　 |　　 　 　|

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見世物小屋での芝居を見物をし、
できない夫がその余韻に浸る。
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　　　　 ／￣￣＼
　　　／　「　　 ヘ ＼
　 　 | 　（●）（●）　|
　 　 | ､､､　 ｜　､､､|
　 　 |　　　__´___　　.|
　 　 |　　　`ー'´　　.|　　こなちゃんか……
　　　ヽ　　 　 　 　 /
.　　　　ヽ 　 　 　 /
. 　 　 　 /　　 　く
　　　 　 |　　　 　 |
　　　 　 |　　 　 　|

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　, . -───‐- ､ .
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,／'´ ￣￣￣￣ `ヽ､＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_,　-──‐-- ､　　　　　｀ヽ､､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,. '',´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀`ヽ､.　　　｀|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／／.:.:.:.:.:.:.,へ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀ヽ､　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　 .／／.:.:.:.:.:.:.:.:./.:.:.:.:＼.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:´｀ヽ､
　　　　　　　　　　　　　　　　 ./／'.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|.:.:.:.:.:.:.:`.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　 ./'´/.:.:.:.:.:.:.:,.:.:.:.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:､.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　/　/.:.:.:.:.:／.:i.‐く.|.:.:.:.:.i.:.:.:.:.:､.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:i
　　　　　　　　　　　　　　　　/.:.:.:.:.:/.:.:.:|.:/､|`.:.:.:.:|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|
　　　　　　　　　　　　　　　　|.:.:.:.:./i.:.:.:.:|,ヽ､.|.:.:.:.:.|.|ﾄ､.:.:.:.:.:i.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|
　　　　　　　　　　　　　　　　|.:.:.:.:/ |.:.:.:.:'|''1ヾ|.:.:.:.:| |.,_｀ヽ,.:.:.:l.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|
　　　　　　　　　　　　　　　　l　 /　|　 i'ﾉ､た` l　 ﾄ､!､ヽ.:.:.:ヽ|.:.:.:.|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..|
　　　　　　　　　　　　　　　　 |./　　|　|'''' `ﾞ　　! |ゞ7ヾ､.:.:.:.:|ヽ.:.:|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|
　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　| |､　 ´　　 | ,らしヾ､.:.:|/|.:.:.|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　| ,ヽ,､　　　 ヾ,,,｀"´ゞ||ﾉi|,i'ﾞ|ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.: |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.ﾄ'ﾞ'::::;ゝ‐　　　　・メ|''ﾚ'´|;;|'ノ.:.:.:.:.:.:.:　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　| 1ﾞ_;:-┘.＿_　／;;;;;|├‐|' |.:.:.:.:.:.:.:.:.:　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .|　.:::　.:::::::::::|／´￣ヽ| |.　| |.:.:.:.:.:.:.:.:.: .|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　.:::　 :::::;／/　　　　ヽ,|　|ﾉ.:.:.:.:.:.:.:.:.: |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　::;;_,.-､/,,;/　　　　　 | |'i　 .:.:.:.:.:.:.:.:.:|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾚ'´, ' ,ﾉ| ;;;,　　　　 　 ﾉ`| |　.:.:.:.:.:.:.:.: |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／　　/　|;;;/　　　 ﾞ　 /i　 |.|ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　,ノ/　ﾚ'　　　　　/' |　　|i　.:i.:.:.:.:.:.:.:|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,|　　ﾞ､'　/　　　　　/　 |　 ,,|ﾞ.:.:/.:.:.:.:.:.:.|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i|　　　.y　　　　 .／　 .|　/ﾞ|.:.:/.:.:.:.:.:.:.:|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,iﾞ|　　,,/　　　　／　　　ﾚ'ﾞ.:.:.:./.:.:.:.:.:.:.:.:.|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　|　　　　　 ./　　 ;;;／ |.:.:.:.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　ﾄ.　　　　./ ,,　 ／;;|'.:.:|.:.:.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |ﾞ |;;;i　　,ノ　 ;;　/;;;;;;;|.:.:.:|:.:.:|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　 :;;|｀ ´　　　　｀､;;;;;;|.:.:,,|::i.:|.:.:.:.:.:.:.:.:.:　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　 .|　　; |　　　　　　　､;;;;|.:.:.:|;:|;;|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|
　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　|　　　　　　　 ヽ'|　ﾉ'ﾞ|,,|:..:.:.:.:.:.:.:.:.:|
　　　　　　　　　　　　　　　　　,|　　　|　　　　　｀ﾞ ､　'´｀ヽ､|ﾉ':::..:.:.:.:.:.:.:.|
　　　　　　　　　　　　　　　　,‐:ヽ.　　|　　　　　　　　　,,　　|｀|;:::..:.:.:.:.:.:/
　　　　　　　　　　　　　,,_ -'ﾞ　;:: ｀　, |　　　　　　　　　ヽ ノ'　|｀i､.:.:.:.:./
　　　　　　　　　　　_,/´　　　;: :　　; ﾉ　　　　　　　　　　i　　//.:!ヽノ

人__人__人__人__人__人__人__人__人__人__人__人__
　　　　　　　　　　　　　　○
　　　　　　　　　　　　　ο
　　　　　　　　　　　　　ﾟ
　　　　　　　　　　　　ﾟ
　　　　 ／￣￣＼
　　　／　「　　 ヘ ＼
　 　 | 　（●）（●）　|
　 　 | ､､､　 ｜　､､､| 　　今度寄った時に何か持って行ってあげたいな。
　 　 |　　　__´___　　.|
　 　 |　　　`ー'´　　.|
　　　ヽ　　 　 　 　 /
.　　　　ヽ 　 　 　 /
. 　 　 　 /　　 　く
　　　 　 |　　　 　 |
　　　 　 |　　 　 　|



　　　　　 ／￣￣＼
　　　　 /へ 　 　 　 ＼
.　　　 （（● ）　　　　　|
　 　 　|　　　　　 　 　 |
.　　　　|｀_＿_ 　 　 　 |　　でも例繰方の俺が買えるもんなんて、高が知れてるしなあ……
.　　　　 |ー'´　　　 　 |
.　　　　 ヽ　　　　　　/
　　　　　 ヽ　　　　 /
　　　　　　.>　　　 <
　　　　　　|　　　　 |
　　　　 　 |　　　　 |

　　　 ／￣￣＼
　　／　　 _ノ　　＼
　　|　　　 （ 一）（●）
　　|　　　　 （__人__）
　　 |　　　　　｀⌒´ﾉ　　　おう、できない夫、そんなとこで何ぼけっと突っ立ってんだ？
　　 |　　　,.<))／´二⊃
　　 ヽ　/ ／　 '‐､ﾆ⊃
　 _r‐入ｌ　　　　´ヽ〉
''"::l::::l;;/　　　 __人〉
:::::::::|/|　　　/　 `ヽﾍ､_
:::::::/::::|　　/::〉　　　〉〉::::ﾞ'ｰ､
:::ｙ′.:::|　/::::|ヽ　　//:::::::::|:::!
／: :／:|/:::::::|＼ソ /:::::::::::::i::|




　　　　 ／￣￣＼
　　　／　「　　 ヘ ＼
　 　 |　（● ）（● ） |
　 　 |　 　 　 |　 　　|
　 　 |　　　__´___　　.|　　あ、これはやらない夫さん、お久しぶりですね。
　 　 |　　　`ー'´　　.|
　　　ヽ　　 　 　 　 /
.　　　　ヽ 　 　 　 /
. 　 　 　 /　　 　く
　　　 　 |　　　 　 |
　　　 　 |　　 　 　|
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このふたりは顔見知りだった。
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　　　　　　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　／ _ノ　　　　.＼　　 　 　 _,,
　　　　　　　　　　　　　　　|　（ ●）　（●） |.　 　 　 ｌ;ｌ
　　　　　　　　　　　　　　.　|　　 （__人__）　 |　　＿,_,|,|_,
　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　｀ ⌒´　　|,　ト-=y 　丶　　　しけた面してるようだが、なんぞあったか。
　　　　　　　　　　　　　　.　 |　　　　　　 　 }　 ヽ `ｉ,￣‐^ｌ
　　　　　　　　　　　　　　.　 ヽ　　　　　 　 }　　　ヾ~　`　 ｉ,
　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　　　　ノ _　　　　ヽ、　　 ;ｉ,
　　　　　　　　　　　　　　　 ,　,ｉ　　　　　y: ∧,,,__　　ヽ、　　 ;ｉ,
　　　　　　　　　　　　　　 ,/: ﾍj　　　　 /: : /: : : `ヽ､-x,,゜r　　;ｉ
　　　　　　　　　　　 　／: : ﾍ: : ﾍ　　　/: : /: : : : : : : `ヽ　`;ｉ　　ｉ,
　　　　　　　　　　,／: : : : : : ﾍ: : ﾍ　 /: : /: : : : : : : : : : `、'ｉ　　 ｉ 、
　　　　　　　　　_i: : : : : : : : : : ﾍ: : ﾍ/: : /: : : : : : : : : : : : Yrｉ　　　ｌ,ヽ、
　　　　　　　 _,,,>: : : : : : : : : : : : ﾍ:/: : /: : : : : : : : : : : : /／　 ,　´: : :i
　　　　　　 ,y`: : : : : : ,ｉ: : : : : : : /: : / : : : : : : : : : : : ／: r-　　／: : : ｌ
　　　　_／^: : : : : : : : : ｌ: : : : : :/: : /: : : : : : : : : : : : ／: : ｌ::::v'::::ｙ: : : : }
　v=4⌒ヽ、: j: : : --,,,ｉf: : : : :/: : /: : : : : : : : : : ,,: : : 〈: : : ﾍ_,、::<: : : : /







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　　 ／ 」　ヽ＼
　／　(●）（●)＼
　| 　 　 　 | 　 　 |
.　|　 　 ___´__　　|　　いつもの金欠病で悩んでただけですよ。
　 | 　　　 　 　 ｜
.　 ヽ　　　　　　ﾉ
　　 ヽ　　　 　/
　　　/　　　　ヽ
　　　|　　　　　|
　　　|　　　　　|

.　　　　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
.　　　　　　　　　　　　　／ 　　　　　 ＼
.　　　　　　　　　　　　　|　_ノ　　ヽ､ 　 |
.　　　　　　　　　　　　　|　（ー）（ー） 　|
.　　　　　　　　　　　　　| 　（__人__） 　 |　　金欠か、全く、侍には世知辛い世の中だぜ。
.　　　　　　　　　　　　　l　　｀⌒ ´　　 }　　武家は上も下もみんな空ッケツときてやがる。
.　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　　　　　./
　　　　　　　　　　　 　／ヽﾍ　　　 ノ,'ヽ､
　　　　　　　　 ,.-‐,ｨ‐"ﾍ: ヽヽ.　 //: : /｀｀｀ ‐-.
　　　 　 　 　/: : : : : : : : ﾍ: : ﾍﾍ//: : /: : : : : : : : ヽ.
　　　　　　 ﾉ.: : : : : : : : : : ﾍ: : ﾍ/: : /.: : : : : : : : : : : ﾞi
　　　　　　/.: : : : : : : : : : : : ﾍ: /: : /.: : : : : : : : : : : : ﾞ,
　　　　　　|.: : : : : : : : : : : : : : /: : /: : : : : : : : : : : : : : ､
　　　　　 l: : : : : : : : : : : : : : ./: : /: : : : : : : : : : : : : : : ﾞ,
　　　　　i : : : : : : : : : : : : : /: : /: : : : : : : : : : : : : : : : : : }
　　　　 〉 : : : : : : : : : : : : /: : /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : ｲ
　　　 / : : : : : : : :i : : : : /: : /: : : : : : : : : : : : : i: : : : : : : : |
　　　.',.: : : : : : : : i : : /: : / : : : : : : : : : : : : : : i: : : : : : : : |
　　 ',: : : : : : : : : : i /: : /: : : : : : : : : : : : : : : : i: : : : : : : : : |
　　　', : : : : : : : : : |三三三三三三三三三三|: : : : : : : : ＼
　　　} : : : : : : : : : |三三三三三三三三三三|: : : : : : : : : : 〉





　　 ／￣￣＼
　／　 「　　ヽ ＼
　|　　（●）（●）｜
　|　　　　 |　　　｜
　|　　　__´＿ 　｜　　三廻りに出世できれば、懐も暖かくなるんですがね。
　|　　　`ーｎｌ^l^l
　 ヽ　　　　|　　 |
　　 ヽ　　　ヽ　く
　　　/　　　　ヽ　＼

　　　　　　 　 　 　 ／￣￣ ＼
　　　 　 　 　 　　⌒　｀⌒　　 ＼
　　　　　　　　　(●.) (● )　　　 |
　　　　 　 　 　 （__人___）　　　　|　　　　　三廻りか。出世するにはなんぞ手柄を立てねえとな。
　　　 　　　　　　'､｀⌒ ´　　　　 |z 、
　　　　　　 　　-ｰ|　　　 　　 _,-‐、-<-、
　 　 　 　 ／　　　|　　 　 厂ヽ ヽ 'v　}　｀' -、
　　　　　〈　{　　　 >-'--く_ﾉ　}　}　}　r　　　　＼
　　　　 / 　　　　　|　λ{　　　　 ___／i　　　　　　 ヽ
　　　　」　　 ヽ　　 |　 |, ヽ　　 _,.イ　/　　 ／　　　　i
.　　　/ 　＼ゝ|　　 |　 |　 `､　　　∨　　 /　　　　　 |
　　 /　　　　ヽ,i　　|　 ｌ 　 ∧　　　∨　/ 　 　 　 　 |
.　 / 　　　　　　i　　|　 ｌ　/ ∧　　　 ｀、　.／　　 　 |
　/ 　　　　　　 ∧　 |　 y　 　∧　　　／∨　　　　　|
./　　　　　　　ｲ　}　 | /　 　/ .∧　 /　　　Y　　　　|



　　　 　　　　　 　 　 　 　 　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　 ／　 ヽ､_　　＼
　　　　　　　　　　　_　　 （⌒）（⌒ )　　　|
　　　　　　　　 _　/ / 　 （__人___） 　 　　|　　よし、おごるからよ、ちょっと一杯付き合えや。
　　　　　,.-r／γつ' 　　 '､`ｰー′　　　|　　ももんじ屋で食ったことはあるか？
　　　　 ししiン'´ /　 　 　 |　　　　　　　 |
　　　 /　7´　　丿　　　　 !　､　　　　.イ 'y､
　　 　ト　´　 ｨ'´　　　　　　`rﾆ=ｰ　7 　/　 〉-、_
　　 　 }　　　{　　　 　　　ィ´ﾄ､　　　 ／　／　　　`ｰ- 、
　　 　 |　　　|　　　　＜ /　ﾉ､_,.-'／　 ／　　　　　　　　ヽ
　　　　| 　　｜ 　 ノ/　/　/　 ／　 ／　　　　　 ／　　 　Λ
　　 　 | 　 　 ﾄr'´ /　　i　ｲ　/　 ／　　　　　　　　　　　　　}
　　 　 |　　　 iﾉ-.､i　　 i　 i/　 / 　　　　　　 /　　 　 　 　 ,'
　 　 Λ　　　ﾊ　 i　 　 | /　 /　　　　　　　∠　　　　　　 /
　　　| {　　/ ,'　 !　 　 i/　 /　　　　 _____イ　￣ヽ、　　 ｲ
　　　'; ヾ /　　　_i＿__｣＿'二ﾆ=-ﾔ´　　　｀ヾ'､　　　　|イ

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ももんじ屋は「山鯨」と称して、鹿や猪等の肉を食わせる料理屋のことだ。
江戸時代、四足の獣を食う事は忌み嫌われていたが、
江戸後期になるにつれて、それも薄れていった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

　　 ／￣￣＼
　／　　　「　　＼
　|　　　 （ ●）（●）
　|　　　　　　 |　｜
　|　　　　　__´＿ﾉ　　ももんじ屋ですか。生憎と入ったことはありません。
　|　　　　　`ーｎｌ^l^l
　 ヽ　　　　　 |　　 ﾉ
　　 ヽ　　　　ヽ　く
　　　/　　　　　ヽ　＼




　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　／　　 _ノ　　＼
　　　　　　　　　|　　　 （ ●）（●）
　　　　　　　　　|　　　　 （__人__）
　 　 　 　 　　　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　物は試しだ。一度食ってみるといい。
　 　 　 　 　 　　 |　　　　　　 　 }　　いや、これが中々うまいんだ。
　 　 　 　 　　 　 ヽ　　　　　 　 }
　　　　　　　　　　 ヽ､.,＿＿ __ノ
　　　　　　_, ､-―／ﾍﾍ 　　　//ヘ -　、
　　　　　´: : : : : : :ﾍ: : ﾍﾍ.　 //: /: : : : :ﾞ ､
　　　丿: : : : : : : : : :ﾍ: : ﾍﾍ//: /: : : : : : : :'､
.　 　i: : : : : : : : : : : : : ﾍ: : ﾍ/: /: : : : : : : : : :!
　　/ : : : : : : i: : : : : : : : :ﾍ:/: /: : : : : : : : : : : :|
　　| : : : : : : i: : : : : : : : : :/: /: : : : : : : : : }: : : ::|

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（(_）,_,二,_,二,_,二,_,二,_,二,_,二,_,二,_,二,_,二,_,,_,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　　丶;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､
　　　,i'二,_,二,_,二,_,二,_,二,_,二,_,（(_）　　　　／　　　　　　＼;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､
　　,､＿､＿,､＿,､＿,､＿,､＿,､＿,､/ ヽ　　／　　　　　　　　　＼;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､
　　７|L;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊ／|i'二,_,二,_,二,_,二,_,二,_,二,_,'二,_,二,_,二,_,二,_,二,_,二,_,二,_,二,_,二,_,
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　 /ヽ,,_／ヽ /.:.:`ー'ｊ::...:. .:. :..:i, ;:.:. .:.ヽ／ヽ
　 i::.:... .:; :.:.Ｙ::....:.. ／ヽ:...,.,.／:.:. .:. .:.:..j::.::../i'＝;:;=＝=,＝､＝=＝=＝＝=＝=＝=＝＝=＝=＝=＝==＝=
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ふたりがももんじ屋の暖簾をくぐり、上がり座敷に腰を下ろす。
やらない夫が二合銚子四本に牡丹肉と紅葉肉をそれぞれ二人前ずつ注文する。
ももんじ屋では猪を牡丹肉、鹿を紅葉肉と呼んだ。
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　　　　　 ／￣￣＼
　　　　／　 「　　ー ＼
　　　　|　 （●） （●)　|
.　 　 　|　　　　 | 　 　 |
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.　　　ｌ^l^lｎ　　　　　　|　　やらない夫さん、なんだか金回りが良いみたいですね。
.　　　ヽ 　 L　　　　　|　　着流しも棧留縞（さんとめじま）のようですし。
　　　　 ゝ 　ﾉ　　　 ノ
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　 ／　　 /　　　　　　 　＼
. /　　 　/　　　　　　　　-一'''''''ー-､.
人＿＿ﾉ　　　　　　　(⌒＿(⌒)⌒)⌒))

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できない夫がやらない夫のパリッとした粋な身形を羨ましげに見つめる。
棧留縞は今なら一反一両はするはずであった。
棧留縞とはインドのコロマンデル地方から輸入されてきた
木綿製の縞織物のことである。
聖トマスが日本に持ち込んだのがその始まりといわれている。
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　　　　　 ／￣￣＼
　　　　／　　 -‐'　　＼
　　　　|　　　 （ ＝）（＝）
.　　　　| 　　 　　 　　|　 l
　　　　 |　　　 　　___´__ﾉ
.　　　ｌ^l^lｎ　　　　　 　 }　　昔は俺と同様、貧乏で困ってたのに。
.　　　ヽ 　 L　　　　 　 }　　俺の着流しなんて、古着屋で一朱で買ってきたもんですよ。
　　　　 ゝ 　ﾉ　　　　ノ
　　　／ 　 /　　　　　＼
　 ／　　 /　　　　　　 　＼
. /　　 　/　　　　　　　　-一'''''''ー-､.
人＿＿ﾉ　　　　　　　(⌒＿(⌒)⌒)⌒))

　　　　　　 ., ──‐､
　　　　　 ／　　　　　＼
.　　　 　.|　　　　 _ノ　　ヽ
　　　　　| 　　　 （ ●) (●)
　　　　　| 　 　 　 （__人__）
　　　　　 |　　　　 ｀ ⌒´ﾉ ∬　　まあ、色々とやってるもんでな。
.　　　　　rﾝ　　 　 　 　 } .|￣|
　　　 ／⌒ヽ､ 　　　 ノ　 |＿|）
　　　/:::::::::::ｙヾ､ _ィ ´ー-┘ |
　　 /:::::::::r":::::::ｷ ∥i::::::/__/
　　/:::::::::::| ::::::::::V/:::|:::/
　 （::::〆⌒'"`''"ﾞf─≒､.
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣


　　　　　　 ., ──‐､
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.　　　 　.|　　　　 _ノ　　ヽ
　　　　　| 　　　 （ ●) (●)
　　　　　| 　 　 　 （__人__） , -―ーっ
　　　　　 |　　　　 ｀ ⌒´ﾉ （ ゝ彡￣　　　なんならよ、お前も一枚噛んでみるか。
.　　　　　rﾝ　　 　 　 　 }　|　 |　　　　　　お前も昔は虎眼流を習い覚えた身だろう。
　　　 ／⌒ヽ､ 　　　 ノ　 .|　 |　　　　　　腕には覚えがあるはずだ。
　　　/:::::::::::ｙヾ､ _ィ ´ー-ｨi ∫
　　 /:::::::::r":::::::ｷ ∥i:::::::ﾉ| ∬
　　/:::::::::::| ::::::::::V/:::|:::/:::┌‐┐
　 （::::〆⌒'"`''"ﾞf─≒､..　| 　 |
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　　　　　 （ ●）（ ●）　　 |
　　　　　　|　 |　　　　　　 |
　　　　　　ｌ __｀___ 　 　 　 |　　なんだか、後ろめたい事をしている様子ですが。
　　　 　 　 {　　　　 　 　 │
　　　 　 　_{　　　　 　 　 │
　　　　　（　ヽ､＿＿_/ 　）|
　　　　　 |　 ヽ　　　｜　ヽ|
　　　　　 ゝ　ノ　　 　ヽ　ノ
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
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できない夫はやらない夫の弟弟子に当たった。
極度の実戦を旨とする虎眼流の元で激しい修練を重ねた結果、
できない夫は剣術と柔術にかけては奉行所随一の使い手もいってもよかったが、
いかんせん、役目が役目なので、その腕前も宝の持ち腐れだった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

　　　 ／￣￣＼
　　／　　 _ノ　　＼
　　|　　　 （ 一）（●）
　　|　　　　 （__人__）　　　へっ、置きやがれ。
　　 |　　　　　｀⌒´ﾉ　　　まともな事してちゃ、まともに稼げないのが今の世の中じゃねえか。
　　 |　　　,.<))／´二⊃
　　 ヽ　/ ／　 '‐､ﾆ⊃
　 _r‐入ｌ　　　　´ヽ〉
''"::l::::l;;/　　　 __人〉
:::::::::|/|　　　/　 `ヽﾍ､_
:::::::/::::|　　/::〉　　　〉〉::::ﾞ'ｰ､
:::ｙ′.:::|　/::::|ヽ　　//:::::::::|:::!
／: :／:|/:::::::|＼ソ /:::::::::::::i::|

　　　　　 ／￣￣＼
　　　　／　ー'　　ー＼
　　　　|　 （●） （●） |
.　 　 　| u 　　　|　　　|
　　　 　| 　　___´___　 .|
.　　　ｌ^l^lｎ　　　　　　|　　確かにそうですがね……
.　　　ヽ 　 L　　　　　|
　　　　 ゝ 　ﾉ　　　 ノ
　　　／ 　 /　　　　　＼
　 ／　　 /　　　　　　 　＼
. /　　 　/　　　　　　　　-一'''''''ー-､.
人＿＿ﾉ　　　　　　　(⌒＿(⌒)⌒)⌒))

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
できない夫が頬に手を置きながら考え込んだ。
同心が出世するには一に苞苴（ほうしょ、賄賂のこと）で二に手柄だ。
もっともその手柄を立てる為には、他の役目につかなければならない。
その役目につくには金が要る。江戸時代はすべてが金尽くしだ。
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　　　　　　 ., ──‐､
　　　　　 ／　　　　　＼
.　　　 　.|　　　　 _ノ　　ヽ
　　　　　| 　　　 （ ●) (●)
　　　　　| 　 　 　 （__人__） , -―ーっ
　　　　　 |　　　　 ｀ ⌒´ﾉ （ ゝ彡￣
.　　　　　rﾝ　　 　 　 　 }　|　 |　　だろう？
　　　 ／⌒ヽ､ 　　　 ノ　 .|　 |
　　　/:::::::::::ｙヾ､ _ィ ´ー-ｨi ∫
　　 /:::::::::r":::::::ｷ ∥i:::::::ﾉ| ∬
　　/:::::::::::| ::::::::::V/:::|:::/:::┌‐┐
　 （::::〆⌒'"`''"ﾞf─≒､..　| 　 |
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣└‐┘￣￣￣￣￣￣

　　　　　　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　／ _ノ　　　　.＼　　 　 　 _,,
　　　　　　　　　　　　　　　|　（ ●）　（●） |.　 　 　 ｌ;ｌ
　　　　　　　　　　　　　　.　|　　 （__人__）　 |　　＿,_,|,|_,
　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　｀ ⌒´　　|,　ト-=y 　丶
　　　　　　　　　　　　　　.　 |　　　　　　 　 }　 ヽ `ｉ,￣‐^ｌ　　　今の暮らし向きじゃ、好きな相手に珊瑚の髪飾りの
　　　　　　　　　　　　　　.　 ヽ　　　　　 　 }　　　ヾ~　`　 ｉ,　　一つでも買ってやれるか？
　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　　　　ノ _　　　　ヽ、　　 ;ｉ,
　　　　　　　　　　　　　　　 ,　,ｉ　　　　　y: ∧,,,__　　ヽ、　　 ;ｉ,
　　　　　　　　　　　　　　 ,/: ﾍj　　　　 /: : /: : : `ヽ､-x,,゜r　　;ｉ
　　　　　　　　　　　 　／: : ﾍ: : ﾍ　　　/: : /: : : : : : : `ヽ　`;ｉ　　ｉ,
　　　　　　　　　　,／: : : : : : ﾍ: : ﾍ　 /: : /: : : : : : : : : : `、'ｉ　　 ｉ 、
　　　　　　　　　_i: : : : : : : : : : ﾍ: : ﾍ/: : /: : : : : : : : : : : : Yrｉ　　　ｌ,ヽ、
　　　　　　　 _,,,>: : : : : : : : : : : : ﾍ:/: : /: : : : : : : : : : : : /／　 ,　´: : :i
　　　　　　 ,y`: : : : : : ,ｉ: : : : : : : /: : / : : : : : : : : : : : ／: r-　　／: : : ｌ
　　　　_／^: : : : : : : : : ｌ: : : : : :/: : /: : : : : : : : : : : : ／: : ｌ::::v'::::ｙ: : : : }
　v=4⌒ヽ、: j: : : --,,,ｉf: : : : :/: : /: : : : : : : : : : ,,: : : 〈: : : ﾍ_,、::<: : : : /



　　　　　 ／￣￣＼
　　　　／　　 -‐'　　＼
　　　　|　　　 （ ＝）（＝）
.　　　　| 　　 　　 　　|　 l
　　　　 |　　　 　　___´__ﾉ
.　　　ｌ^l^lｎ　　　　　 　 }　　言われればその通りですが……
.　　　ヽ 　 L　　　　 　 }
　　　　 ゝ 　ﾉ　　　　ノ
　　　／ 　 /　　　　　＼
　 ／　　 /　　　　　　 　＼
. /　　 　/　　　　　　　　-一'''''''ー-､.
人＿＿ﾉ　　　　　　　(⌒＿(⌒)⌒)⌒))

　　　　　　　　 　 　 　 ＼　　　　　　/.:.＼　　　　　　 　 　 　 　 }: : }
　　　　　　　　　　　 　 　 ＼＿＿__/.　: : :＼＿＿＿＿　　　　 /／
.　　　　　　 　 　 　 　 ＿,　-─'.: :/. : : : : : : : : : : : : : : ｀…─x′
　　　　　　 　 　 　 ／. : : : ／. : : : : : :i : : : : : : : : : : : : : : : : : : .＼
　　　　　　　　　　/／￣／:　: : .: : : :/| : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : .＼
.　　　　　　　 　 　 　 ／. :　:　:/:.:.＼:!:| : : i: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼
　　　　　 　 　 　 　 /. : : : : :　j: : :　/X!.: :.|: : : : : : : :＼: : : : : : : : : : : : .ヽ
.　　　　　　　 　 　 / :　:／: : :|:　: ://　!｀ｰﾄ､: : : : : : : : ヾ: : : : : : : : : : : : .',
　　　　　　　　　　/.:.:／/. : : :|:| : :|/ｰ､_!: : |: :￣｀: : : : : : ﾄ: : i: : : : : : : : : : i
　　　　　　 　 　 /:／　 i : : : :|:| : :|　ミヾﾍ: ﾄ､: : : |:i : : : : |:|: :.∨: : : : : : : : |
.　　　　　 　 　 /　　 　 |/ |.: :N.:.:.:! ∥:::》ヘﾄ:∨: :!:ﾄ: : : : |:|: : :∨:　:　:　: : ;
　　　　　　　　　　　　　 {　|.: :|/∧|∥T/　　｀ヾ. : :.|ヾ!: : :|:|:　: :|: : : : : : : /
　　　　　　　　　　 　 　 　 |: ://　 〈{:r/　　　　}ト､: |: ﾄ､: :|:|、.: :|: : : : : : /
　　　　　　　　　　 　 　 　 ∨∧ 　 ﾞ￣｀．　　 |: :ト､乂∧:ﾚ:.ヽ: |:　: : : :/!
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 从　。　　　 u　 |:/: ://|: :ﾊﾄ､: :}:.|: : : : ∧{
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ＼　 　 　 　 j/: /ｲ: !:_/: : }: ∨: : : 〈
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ー─┬/:r─一'ﾌ:.:. :.ﾊ: :|: i : i: :ﾄ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ノ／:::::::::X: : :/:∧ : |: | : |: :|　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ／￣￣::::::::／: : ／ /:: ＼|: | : |: :ヽ 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 イ||::::::::::::::: ／: : ／}: :/::::::: : |: | : |: : : ＼　　＼
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ／| |:||:::: ＿／: : ／:／:./:::::::::::: |: |}:.:|: : : : : ∨ 　 丶
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　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／　　 ＞-､＿_:_:_／／: : :／:::::::::::::::::::∧ { |: i＼ : : : .＼　　　ヽ
　　　　　　　　　　　_．´ ￣￣　　 |:||::::::｀ー─一´::::::::::::::::::::::::/∧ﾄ{ヽヽ ＼ : : : .＼　　 ',
　　　 　 　 　 　 ／　　 　 　 　 　 |:|| ||＿＿＿＿＿＿＿＿://::// ＼!:ﾄ､　i: : : : : :ヽ 　 | i
　　　 　 　 　 ／　　 　 　 　 　 　_|:∟二二二二二二二二二x//　　 ヽ! ヽ ＼: : : : :ヽ .ﾉﾉ
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　　　 　 　 ∧　　　 ￣｀ヾ　て. /　　 ＼ 　 　 　 　 ／　 　 　 /＼ ｀ー─‐ｧ一　∨: : : 〈
　 　 　 　 /　}　 　 　 　 　 ,ノ /　　　　 ゞﾉ　　 　 /　　　 　 ,〈|: :||＼　　 ノ　　　 ∨: : : :',
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　　　　 　 〉、　　　　　　{　　 ) 　 　 　 　 ＿＿_/　＿　　　　　| /:./　 }　　 　 　 　 〉.:ﾄ|: |
　　　　　./　〉、　　　　　　　　>　　　　∠＿＿)_ｽ´＿｀ヽ. 　 　|': /　f´ 　 　 　 　 ∧ | |: |
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.　　　　∥//　〉-─一´:::::／ｲ|_r─＜／⌒⌒j:::/￣｀ヽ＿｀Ｖヽi／{i:∧　 　 　 　 　 j′l:/
　 　 　 {!//　 |∧二二二:::／/ナ:::::ノー＜二ﾑ:{:::｀ヽ::/:::::::Y::::::∨{i::{i:::＼ 　 　 　 イ　/i
　　　　 ||/　　|: :.ﾄ､::::::::::＞-へ::: :: {:::::::::::::::::/:::::{:::::::::::＼:_ノヽ::::::}八::＼::::＼＿__/!/　l: |
　　　　 ﾍi　　 |: :|　￣/＼ﾉYゝﾍ:::::ヽ::::::::::::::|::::::::ヽ:::::::::::::ヽ::::::}／＼:＼::＼::::::::ノ / 　 |/
　　　　　 ﾄ､　 i: :|　／{::::::)/　_.xへ_ノ＼::::ノ￣￣¨ヽ＿,-＜⌒｀ト､彡、::￣:::／ ./　　 j
　　　　　 |　　 ゞi　(:::::{／iﾚ´　　　　　　　　　　i　　　　　　　｀ -∨:::::ﾉ￣￣　／
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　　　　　　　　　　 /　　　| 　　　　　　　　　　 ノ、　　　 　 　　　 :|::::::＼

人__人__人__人__人__人__人__人__人__人__人__人__
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　　　　／　 「　　ー ＼
　　　　|　 （●） （●)　|
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.　　　ヽ 　 L　　　　　|
　　　　 ゝ 　ﾉ　　　 ノ
　　　／ 　 /　　　　　＼
　 ／　　 /　　　　　　 　＼
. /　　 　/　　　　　　　　-一'''''''ー-､.
人＿＿ﾉ　　　　　　　(⌒＿(⌒)⌒)⌒))

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巷では「金さえあれば、できる楽しみ」という。
高価な帯の一つでも買っていけば、相手の気も引けるかもしれない。
できない夫はぼんやりとそんな事を考えた。
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　　　　　 ／￣￣＼
　　　　／　ー'　　ー＼
　　　　|　 （●） （●） |
.　 　 　| u 　　　|　　　|
　　　 　| 　　___´___　 .|
.　　　ｌ^l^lｎ　　　　　　|　　はあ……
.　　　ヽ 　 L　　　　　|
　　　　 ゝ 　ﾉ　　　 ノ
　　　／ 　 /　　　　　＼
　 ／　　 /　　　　　　 　＼
. /　　 　/　　　　　　　　-一'''''''ー-､.
人＿＿ﾉ　　　　　　　(⌒＿(⌒)⌒)⌒))
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いや、それ以前にもうすぐ大晦日も迫っている。
年越しの季節となれば、これまで溜め込んでいたツケを払わなければならない。
味噌、米、醤油、炭、どれだけ溜めているのか、できない夫にもわからなかった。
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　　　　　 ／￣￣＼
　　　　／　 「　　ー ＼
　　　　|　 （●） （●)　|　
.　 　 　|　u 　　 | 　 　 |　（……ここらで一息つきたい、だが、一息つくには金がいる）
　　　 　| 　　___´___ 　 |
.　　　ｌ^l^lｎ　`ー'´　　|
.　　　ヽ 　 L　　　　　|
　　　　 ゝ 　ﾉ　　　 ノ
　　　／ 　 /　　　　　＼
　 ／　　 /　　　　　　 　＼
. /　　 　/　　　　　　　　-一'''''''ー-､.
人＿＿ﾉ　　　　　　　(⌒＿(⌒)⌒)⌒))

　　　　　　　　　　　　　　（ ;;;;(
　　　 ／￣￣＼　　　　　 ) ;;;;)
　　／　　 _ノ　　＼　　 　/;;／
　　|　　　 （ 一）（●）　　l;;,´
　　|　　　　 （__人__）　　. '
　　 |　　　　　｀⌒´ﾉ　/〉
　　 |　　　,.<))／´二//⊃　　さあ、どうする？
　　 ヽ　/ ／　 '‐､二ﾆ`⊃
　 _r‐入ｌ　　　　´ヽ〉
''"::l::::l;;/　　　 __人〉
:::::::::|/|　　　/　 `ヽﾍ､_
:::::::/::::|　　/::〉　　　〉〉::::ﾞ'ｰ､
:::ｙ′.:::|　/::::|ヽ　　//:::::::::|:::!
／: :／:|/:::::::|＼ソ /:::::::::::::i::|




　　 　／￣￣＼
　　／　　 「　　 ＼
　　|　 　 （ ●）（●）
　　| 　,ｌ　　 　 ｜　|　　
　　|　ハ 　　__´＿ﾉ
　　|　し′　 `ー'´}　　　どんな事をするのかはわかりませんが、
　　ヽ　　　　　 　 }　　　このままでは干上がってしまう。
　　　ヽ　　　　　ノ
　　　　/　　　 く
　　　　|　　　　 |



　　　　 ／￣￣＼
　　　／　＼ 　ヘ. ＼
　 　 | 　（●）（●）　|
　 　 |　 　 　| 　　　│
　 　 |　　　__｀___　u |　　俺にも一枚噛ませてください。
　 　 | 　 ./＿＿ヽ　.|
　　　ヽ　　 　 　 　 /
.　　　　ヽ 　 　 　 /
. 　 　 　 /　　 　く
　　　 　 |　　　 　 |
　　　 　 |　　 　 　|

　　　　　　 ., ──‐､
　　　　　 ／　　　　　＼
.　　　 　.|　　　　 _ノ　　ヽ
　　　　　| 　　　 （ ●) (●)
　　　　　| 　 　 　 （__人__） , -―ーっ
　　　　　 |　　　　 ｀ ⌒´ﾉ （ ゝ彡￣
.　　　　　rﾝ　　 　 　 　 }　|　 |　　　よし、よく言った。それでこそ俺の弟弟子だ。
　　　 ／⌒ヽ､ 　　　 ノ　 .|　 |　　　お前にちょいと引きあわせたい男がいる。
　　　/:::::::::::ｙヾ､ _ィ ´ー-ｨi ∫　　　
　　 /:::::::::r":::::::ｷ ∥i:::::::ﾉ| ∬
　　/:::::::::::| ::::::::::V/:::|:::/:::┌‐┐
　 （::::〆⌒'"`''"ﾞf─≒､..　| 　 |
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣└‐┘￣￣￣￣￣￣



　　　　　　 ., ──‐､
　　　　　 ／　　　　　＼
.　　　 　.|　　　　 _ノ　　ヽ
　　　　　| 　　　 （ ●) (●)
　　　　　| 　 　 　 （__人__）　　まあ、その前にまずは腹ごしらえだな。
　　　　　 |　　　　 ｀ ⌒´ﾉ ∬
.　　　　　rﾝ　　 　 　 　 } .|￣|
　　　 ／⌒ヽ､ 　　　 ノ　 |＿|）
　　　/:::::::::::ｙヾ､ _ィ ´ー-┘ |
　　 /:::::::::r":::::::ｷ ∥i::::::/__/
　　/:::::::::::| ::::::::::V/:::|:::/
　 （::::〆⌒'"`''"ﾞf─≒､.
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣




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　　　　　　　　　　　│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 │
　　　　　　　　　　　│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 │
　　　　　　　　　　　│　 　 　 ┌────────────────────────┐ 　 　 　│
　　　　　　　　　　　│　 　 　 │　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 │　 　 　 │
　　　　　　　　　　　└───┼────────────────────────┼───┘
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 │　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 │
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　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 │　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 │
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 └────────────────┘

　　ノ￣ﾉ￣ﾉ￣ﾉ￣ﾉ￣ﾉ￣ﾉ￣ﾉ￣ﾉ￣ﾉ￣ﾉ￣ﾉ￣ﾉ￣ﾉ￣ﾉ￣ﾉ￣ﾉﾉ
　ノ￣ﾉ￣ﾉ￣ﾉ￣ﾉ￣ﾉ￣ﾉ￣ﾉ￣ﾉ￣ﾉ￣ﾉ￣ﾉ￣ﾉ￣ﾉ￣ﾉ￣ﾉ￣ﾉ￣
　@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==
　　　|
　　　|　　　　　　　　　　　　　　|　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿.　|
　　　|　　　　　　　　　　　　　　|　|　　　　|　　　　|　　　　|　　 　 |　|
　　　|　　　　　　　　　　　　　　|　|　.擬.　|　.古.　|　.乃.　|　.湯 . |　|
　　　|　　　　　　　　　　　　　　|　|　　　　|　　　　|　　　　|　　 　 |　|
　　　|　　　　　　　　　　　　　　|　|.￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣. |　|
　　　|　　　　　　　　　　　　　　|　|　　　　　　　　　　　　　　　　　|　|
　　　|　　　　　　　　　　　　　　|　|　　　　　　　　　　　　　　　　　|　|
　　　|　　　　　　　　　　　　　　|　|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿____.ﾞ|　|
　　　|　　　　　　　　　　　　　　|　|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿_.:|　|
　　　~￣￣￣￣￣￣￣￣￣└┘　　　　　　　　 　　 　　　　　└┘



　　　 ／￣￣＼
　　／　　 _ノ　　＼
　　|　　　 （ 一）（●）
　　|　　　　 （__人__）
　　 |　　　　　｀⌒´ﾉ
　　 |　　　,.<))／´二⊃
　　 ヽ　/ ／　 '‐､ﾆ⊃
　 _r‐入ｌ　　　　´ヽ〉
''"::l::::l;;/　　　 __人〉
:::::::::|/|　　　/　 `ヽﾍ､_
:::::::/::::|　　/::〉　　　〉〉::::ﾞ'ｰ､
:::ｙ′.:::|　/::::|ヽ　　//:::::::::|:::!
／: :／:|/:::::::|＼ソ /:::::::::::::i::|

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,イ/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,イ////
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,イ////／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,イ////／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,イ////／l|
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　,,イ////／.　　 　 　 　 　 |//l|　　　　　　 　 　 　 　 |//l|
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//|.　　　 Ｔ――――――――――――――
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　　　　　　　　　　　　　　　ｲjj /ｰ㍉i|ｘ　　,;|ﾚ㌻||　 |厶
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　　　　 　 　 　 　 　 　 　 V/:　:.　　i| 　 |:. || 　 ||:　ﾊ /
　　　　　　　　　　　　　 　 /ハ　:.　 i| 　_|:: |! 　 || /イ　　　今日は何の用件だい？
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ｉ　j从　:　i|-　＿j!　　ﾘ从ﾘ　　　連れがいるようだが？
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 | //小.　 i| ￣￣|　　' |//
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 | /　i|::∧｜　　 ﾉ　/　|/
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 { rｰ┤ :∧　__＿..,/　 :|ー┐
　　　　　　　　　　　　　　 __jニニー┐　　　　r─=≦{
　　　　　　　　 　 _ 　-=ﾆニ二二二 |　　　　｜ニニニﾆ=-　 _
　　　　　 _ 　-=ﾆニニ＞ ´ニニニ○}＿_,,,,「￣￣｀ ＜ニニニﾆ=-　 _
　_ 　-=ﾆニニニ ・=====／）,ニニニ|:i:i:i:i:i:|ニニニニニ｀ ＜ニニニﾆ=-　 _

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　　　／　「　　 ヘ ＼
　 　 | 　（●）（●）　|
　 　 |　 　 　 |　　　│
　 　 |　　　__´___　　.|
　 　 |　　　`ー'´　　.|
　　　ヽ　　 　 　 　 / 　　八丁堀の同心を勤める、不動できない夫を申します。
.　　　　ヽ 　 　 　 /
. 　 　 　 /　　 　く
　　　 　 |　　　 　 |
　　　 　 |　　 　 　|


　　　　　　　　　　 　 　 ＿＿＿_
　　　　　　　　　　 　 ／　　 　 　＼
　　　　　　　　　　 ／　─　 　 ─　＼
　　　　　　　 　 ／ 　 （━） 　（━） 　＼
　 　 　 　 　 　 |　 　 　 （__人__）　　 　 |　　当道座の末席に座らせていただいております、
　　　　　　　 　 ＼　 　　 ｀⌒´ 　　　,／　　美筆やる夫という、メ○ラでございます。
　　　　　　　 　 ／　　　 　ー‐　　　　＼

.　　　 　 　 　 i;;;;;;;;;;i､　＞ ､　　　　._,.．-'' 'i, .〈;;;;;;;;;;;l
　　　　　　　　i;;;;;;;;,r'　/　　 i~"'''"~　 i　 　 i　 ヽ;;;;;;;l
　　　　　　　　i;;;:;;;r' ,/ 　 　,l　　　 　 .',　 　 ',　 i;;;;;;;;l
　　　　 　 　 ,-､::::!　"'''- ． l. ,　　　/ ,l _．-''i"　l::,r'ヽ
.　　　　　 　 l ﾊ'i;;ｌ ,' ､-､__,ﾐi_./　　　 .''i_,, ．十, ;l/ ﾙ l　　
.　　　　　 　 l l ' l:ｌ i　 `--‐.l'"　　　　`ト`ﾆ イ　;;ﾘ ,' /　　　　　　　　　　八丁堀の旦那かい、少なくても三廻りじゃねえな。
　　　　　　　ヽ l　l l　　 　 /l　　　 |;;;;　iヽ　::;:l 　.l /,/l　　　　 　 , - ．_　見かけたことがねえからよ。
　 　 　 　 　 　 ‐ l l　ヽ　 ' l　　　 .|;;;;;　l　'　/l　 l／l;: .l'- ､_,.-'''"::::::::::::
.　　　　 　 　 　 _` ll 　 ヽ　l　　　 .|;;;;　 l　 / ,l ./ヽ;.l ::::l;;;;;;l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
.　　　　　 　 ／l// l ', 　 ヽl 　　 ､_/ 　 .l / 　 /巛ヽ.l;;;;;l;;;;;;ヽ;;;;;;_/ "'''‐
　　　　　 ／;;;;ｉ//:::ｉｌ/ ヽ　 l　　 ＿＿　 l　　 /　　l　.i;;;;;;;l;;;;　,!/___;;;;;;;;;;
,r-┘￣´ｌ/;;;;;;;ｌ ｌ / :ｌｌ;;;;;;ヽ ｌ 　´ 　 　 ｀　　./　　　 /;;;;;;/;;;..;;......;;;;;;;.;;;;.;
, ;;;;;;;;;;;;／;;;;;;;;;;l丶;:;:'ｌ ｌ'　ｌ, ヽ.　 　￣　　　./　　　 /;;;;;;/;;;;;..;;......;;;;;;;.;;;;;;;
_,.．-''";;;;;;;...;;;; l:::::l;:;::: 　 l 　 ヽ　　 　 　 ./　　　 /;;;;;;/;;;;;;...;;;;;;;;;;;;;;;..;;;;;;



　　　　　　 ., ──‐､
　　　　　 ／　　　　　＼
.　　　 　.|　　　　 _ノ　　ヽ
　　　　　| 　　　 （ ●) (●)
　　　　　| 　 　 　 （__人__） , -―ーっ
　　　　　 |　　　　 ｀ ⌒´ﾉ （ ゝ彡￣
.　　　　　rﾝ　　 　 　 　 }　|　 |　　　荒神の、こいつは俺の弟弟子でな。
　　　 ／⌒ヽ､ 　　　 ノ　 .|　 |　　　いま、例繰方に勤めてはいるんだがな。
　　　/:::::::::::ｙヾ､ _ィ ´ー-ｨi ∫
　　 /:::::::::r":::::::ｷ ∥i:::::::ﾉ| ∬
　　/:::::::::::| ::::::::::V/:::|:::/:::┌‐┐
　 （::::〆⌒'"`''"ﾞf─≒､..　| 　 |
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣└‐┘￣￣￣￣￣￣

　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 __＿ ........... _
　　　　　　　　　　　　　　　／:::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ
　　　　　　　　　　 　 　 ／::::::::､丶ヽ＼＼ヽ､、::::::ﾉ＼
.　　　　　　 　 　 　 　 /:::::::::-=≠ミＹミミＹ7､、Ｙ/::::::/
　　　　　　　 　 　 　 / :::::::::::／::ｲ /　 　 ||　　｀"´Ⅵ＼
.　　　　　　 　 　 　 /ｲ :::: イ::::彡| |＿_　 ||、　　 　 Ⅵハ
　 　 　 　 　 　 　 　 ｲ :::::/⌒Ｙ　|ｰ=ﾞ㍉>|| :>　,ｨzｰ从　 ',
　 　 　 　 　 　 　 　 从::｛⌒Ｙﾐ、| l　　　 ||´　〈`ﾟ"´}ﾊ:!　 ',
　　　　 　 　 　 　 　 |//∧て､ 　| l、　　 |i　　 ∨ /　|l　　i
　 　 　 　 　 　 　 　 { Ⅳ:: `ｰﾍ　| ｌｉ　　　|i 　 ___＼　 !! 　 |
　　　　　 　 　 　 　 　 Ⅵ::::::/ ﾊ | l:i　　 _|ｉ_＿,､ /　　|!　　|
　　　　　　　 　 　 　 　 ∨:::i|　 ﾍ 八.　´ |! ー゛/　　 ﾉ 　 ﾉ
　　　　　　　　　　 　 　 八ﾉi|　　 ＼　　　!　　 ′　 なるほど、例繰方なら見かけねえはずだ。
　　　　　　　　　　　「￣￣￣￣ミ　. ＼　　　 ,′　　なんだ、御家人さんよ、このお人に手柄の一つも立てさせてくれってか。
.　　　　　　 　 　 　 |::::::::::::::::::::::::::::::::＼　ー＜＿＿__
　　　　　　　　_＿ ノ￣￣ミ　､:::::::::::::: /　ハ:::::::::::::::::|
　　--=＝ ￣　:::::::::::::::::彡'´￣￣ミ、〈､ ｛｀ヽ:::::::::::::::|
　　__ ...　-=＝ニ二￣::::::::::::::::::::::::::::￣￣|__彡ヽ::::::::j､_＿_
　 . .:.:.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ==::|圭圭h::::::::::::::::::::}、




　　　　　　 ., ──‐､
　　　　　 ／　　　　　＼
.　　　 　.|　　　　 _ノ　　ヽ
　　　　　| 　　　 （ ●) (●)
　　　　　| 　 　 　 （__人__） , -―ーっ
　　　　　 |　　　　 ｀ ⌒´ﾉ （ ゝ彡￣　　まあな。
.　　　　　rﾝ　　 　 　 　 }　|　 |
　　　 ／⌒ヽ､ 　　　 ノ　 .|　 |
　　　/:::::::::::ｙヾ､ _ィ ´ー-ｨi ∫
　　 /:::::::::r":::::::ｷ ∥i:::::::ﾉ| ∬
　　/:::::::::::| ::::::::::V/:::|:::/:::┌‐┐
　 （::::〆⌒'"`''"ﾞf─≒､..　| 　 |
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣└‐┘￣￣￣￣￣￣

　　　 ／￣￣＼
　　／　　 _ノ　　＼
　　|　　　 （ 一）（●）
　　|　　　　 （__人__）
　　 |　　　　　｀⌒´ﾉ
　　 |　　　,.<))／´二⊃　　　それで、なんぞ手柄になりそうな話はねえか。
　　 ヽ　/ ／　 '‐､ﾆ⊃
　 _r‐入ｌ　　　　´ヽ〉
''"::l::::l;;/　　　 __人〉
:::::::::|/|　　　/　 `ヽﾍ､_
:::::::/::::|　　/::〉　　　〉〉::::ﾞ'ｰ､
:::ｙ′.:::|　/::::|ヽ　　//:::::::::|:::!
／: :／:|/:::::::|＼ソ /:::::::::::::i::|




　　　　　　　　　　　　.,､r;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ｭ､,,._
　　　　　　　　　　 ／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ
　　　　　　　 　 .,ｲ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;'､
　　　　　　　　/;;;;;;;;;;;;;;ヾ;;ヽ;;;ﾍ;;/;;;/／;;;;;;;;;;',
　　　　　　　　{;;;;;;;;;ﾐ７/ヾ;;/;;;;;;;;;;;;;;;シﾍ彡;;;;;!
　　　　　　　　';;;;;;;;;ﾐ;/　　:!|｀`''"´i|　　 '|彡;;i
　　　　　　　　 ';;;;;/ |　　　!! 　　　;! 　 　il;;;;;;!
　　　　　　　 r‐ﾍ;! ├-､,,_|!　 　　;|_,､-ｰ|l;;;;'r､
　　　　　　　 {こﾍｊ　|弋ｬｫ|k 　 ,.rf|ｬｵｱ´!|ﾚﾍ｝ 　　　. . . . : : : :.:.:.:.:.:.:.: . . . . .
　　　　　　　 ∨ゝl ;.|　　　| 　 !:　 |　　　ｲ|.ﾉ/ 　　　　　. . . . . : : : : : : :.:.:.:. . . . . . .
　　　　　　 　 ヾトｊ　|　　　| 　 !: 　|　　/ ;!|;/ 　　　　　　　. . . . : . : . : . : .:.:.:.:.:.:.:.:. . . .
　　　　　　　　　|;;;;､,!:　 　 !　_|;;　 !　/　/l| 　　　　　. . . : : : : : :.:.:.:.:.:.:. . . . .
　　　　　　　　　ﾘ!|;;;|　　　 !,r‐ー十‐ｭ_,'l|ﾘ 　　　. . . . . :.:.:.:.:.:.:.:.:.:. . . . .
　　　　　　　　　 ﾘ|;;|!ﾍ/ソ´ _,rオ≡＝＝＝＝:.:.:.:.:.: : : : :
　　　　　　　　.,､rｭ;;|!//　／／.,／ .,／ｊ;;|ｭ、　　……血雲って凶賊の一味が上方から江戸へとやってきたようだぜ。
　　　　　　　　｝;;;;;;;;| /　ﾉソ .／ .,／ﾉ＞;|;;;;|
　　　　　__,,,,,,ﾉ;;;;;;;;;!　/　/　　 .,/　/! :|;;;;!;;;;レ＝x､_,,,､_＿
　 ／｀;;´;;;;;;;;;;;＼;;;;l. /　/　/　　　/ i　|;;;;／;∨;;;/;;;;;／;;;;;;;;｀

.　　　　　　　　　　　／￣￣＼
.　　　　　　　　　 ／　_ノ　 ⌒ ＼
.　　　　　　　　　 |　（ ●）　（●） |
　　　　　　　　 .　|　　 （__人__）　 |　
　　　　　 　 　 　 |　　　｀ ⌒´　　|　　詳しく聞かせてくれ。
　　　　　　　　＿ |　　　　　 　 　}＿
　　　　　 ,／:::::::::::ヽ　　　　　 　} |｜＼
　　　　／::::::::::::::::::｜ヽ　　　　ノ/./:::::::::ヽ.
　　　 /::::ヽ、::::::::::::::|｜` ー ' ././::::::::::::::::∧
　.　 /´:::::::｀i.::::::::::::::::|｜　 |　/./::::::::::::::::::/:::ﾍ
　　/::::::::::::::::|:::::::::::::::ヽヽ　 /./:::::::::::::::::::/,ｨﾆ｀ﾍ
　 /::::::::::::::::: |:::::::::::::::::::ヽ.Ｖ./:::::::::::::::::::r/:::::::::::∧
　/´￣｀ヽ、_::｣j:::::::::::::::::::Ｖ./:::::::::::::::::::{_:, - ´￣｀ヽ、
.（::::::::::::::::::::::::::/ ｀¨￢-､/./:::::::::r‐‐-（::::::::::::::::::::::::::〉
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣





;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;r､;;;;;;;;;;;;;ﾍ
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;'　ヽ;;;;;;;;;;;;;;ﾍ
;;;;;;γ二ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;''　 ／ヽ;;;;;;;;;;;｝
;;;;;;;i /⌒}｝;;;;;;''"´　 ／　　 ∨ｿソ
;;;;;;;i　　ﾉ/〃　　　/ヘ、　　 ﾄヾ、
;;;;;;;;!､ｰゝ　 :　　 / 弋ｧﾄ、　ハ:i ヽ、
;;;;;;;;;;;〉7　　 :　 /　 　∨ｿノ 　i| 　 ';
;;;;;;;;;/ !　　 ::　/　 　 　　i′　il　　 i!
;;/!/　i　　 :　/　 　 　 　 !　　i|　　 |!
//　 ﾍ.　 　 i:　　　　 　　!　　i!　　 i!
.　　 　ﾍ.　　i　─ ､,,,ｒｰ-ゝ　/　　 /
ヽ　　　 ﾍ　 !　　　r'"ヘ　　/　　 /
;;;;＼／⌒;、 　　 /　　　＼
;;;;;;;;;;＼;＼ ＼_ _ﾉ　　　　　＼　　大阪で五軒の商家に押し入り、家人を皆殺しにして金を奪っていった、
ヽ;;;;;;;;;;;;;＼＼　　　　　　　　　　　畜生働きの一味さ。
;;;;;;＼;;;;;;;;;/;;/　　　　　　　　　　　こいつらは大店は狙わず、中堅どころの商家を襲うのが手口だ。
;;;;;;;;;;;;＼;/;;く
;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼;;;＼

:::::"'-────　-'" 　ヽ 　 /;;;;;;;;;;;;;;;;',
::/ :::. /　　　　　 ﾞl　　　　',.　.';;;;;;;;;;;;;;;;;;:l
/ ､:: ,! 　 　 　 　 ,i／　 　 ', 　l;;;;;;;....;;;;;;;l
::::::ヽi,　　 　 　 ／l　　　 　 ',　l;;;;;;;_,.． ､
: : ::::l　　　　／ 　 l　 .__._,　 .i　ヽ;;ﾉ/:::　',
"'!=iit.:．　　,' _,._= iﾆ__,,二￣l　 l/. l:::::　,'
ヽ,ﾆl=''　　　 '‐‐､,''i｀-' ,,-'"　l　 l i/／ /
:;::ヽ;l/::'　　　　ヽ　|￣´ 　 　 l　l l l　 /
:::::;;/l;;;;;;|　 　 　 ヽ|　 　 　 / |　| / ./
::::/;;;l::;;;;|　　　　　 ｌヽ　　 /　:| //;:;:l
'': ::　ｌ;;;;;|　　 　 　 ｌ　　　/:　 .l/ ;;i;;;;;l
　 　 ｌ ;;;|　　 　 　 l　 　/;:;　 .l;;;;;;;l:､ !
　　 　 , !　_,..　 　 l 　 ,':::: 　.,'l;;;;;,' :|,l　　盗んだ総額は二千両ってとこだな。
: :: 　 　 ｀´　　 　 　 ,,':::　　/ l;;;;;ll::l l　　規模から見て、一味の人数は四、五人程度だろうよ。
;;;;　　"￣￣￣'　　 　 　 ／　l::i}:l.l;'
. :;:;;;:　　─'　　　　 　 ／/ 　 l 'l'l l
ヽ;;;;;;:;::　 　 　 　 　 ,r'　/::::　 lﾐ-､
;;;;ヽ.;;;;;;;;　　　　　／　 /;;;;:;:　.l "'ヾ',
;;;;;;;;ヽ ::　　 　 ／ 　 ,/ ::::::　_ l -'";;|
　 　 :　''‐-‐''"　　　　 : :: / ;.......,,.　|




　　　　 ／￣￣＼
　　　／ ―　 　―＼
　 　 | 　（●）（●）　|
　 　 |　 　 　 |　　　│
　 　 |　　　__´___　　.|
　 　 |　　　　　　　　.|　　それくらいの人数なら、俺一人でひっ捕らえられますね。
　　　ヽ　　 　 　 　 /
.　　　　ヽ 　 　 　 /
. 　 　 　 /　　 　く
　　　 　 |　　　 　 |
　　　 　 |　　 　 　|

　　　　　　　 　 　 ＿＿＿
　　　 　 　 　 　／ 　 　 　 ＼
　　　 　 　 　 / ､__ノ　　 　　 ＼
　　　 　 　 　 | 　 （ ●）　 　 　 ＼　　　何言ってんだ、そいつらを捕まえたところで、
　　 　 　 　 　ヽ　 　⌒)_ 　　　　　 |　　 三廻りになれるとは限らないだろうが。
　　　　　　　　　`（__厂,′　　　 /: : ト　 それによ、定廻りになったとこで、同心はあくまでも同心よ。
　　　　　　　 　　　　`-､_,, 　 ／: /: : : ｀ ヽ
　 　 　 　 　 　 　 　 　 　"'r: : ／: : : : : : : : ＼
　　　　　　　　　　　　　　´: : : : : : : : : : : : : : : : ヽ
　　　　　　　　　　　　　i: : : : : : : : : : : : : : : : : : : |
　　　　　　　　　　　　 |: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : |
　　　　　　　　 　 　　|: : : : : : : : i : : : : : : : : : : : : |
　　　　　 　 　 　 　　|: : : : : : : : i::: : : : : : : : : : : : |
　　　　　　　　　　　 |: : : : : : : : |:::: : : : : : : : : : : : :|
　　　　　　　　　　　|: : : : : : : ::::|::::: : : : : : :::: : : : : |
　　　　　　　　　　　|: : : : : : :::::::|::::::: : : ::::::::::///: /
　　　　　　　　　　　|.: : : : : : :::::|三三三[三ミミ/∃
　　　　　　　　　　 　 |: : : : ::::::|三三三三三ミ/三|





　　　　　　／￣￣＼
　　　　 ／　　　　　　＼
　 　 　 |　 　 -‐' 　へ　|
　 　 　 | u.（● ) (● ） |
　 　 　 |　 　 　 ｜　u　|
　 　 　 l　Ｕ　 __´___ 　 ｌ　　え、じゃあ何をすれば？
　　　　 ヽ　　　　　　　 !
　　　　　 ヽ　　 　 　 ノ
　　　　　　/　 　 　 く
　　　　 　/　 　 　 　 ヽ

..　　　　　　＿＿＿_
　　　　　／　―　　-＼
.　　.　／　 （━） 　（━）
　　／　　　　 （__人__）　＼
　　|　　　　 　　｀ ⌒´　　　|　　そんなもの、決まってるじゃないですか。
.　　＼　　　　　 　　　　 ／
.　　　ノ　　　　　　　　　＼
　／´　 　　　　　　　　　　ヽ





　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 __＿ ........... _
　　　　　　　　　　　　　　　／:::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ
　　　　　　　　　　 　 　 ／::::::::､丶ヽ＼＼ヽ､、::::::ﾉ＼
.　　　　　　 　 　 　 　 /:::::::::-=≠ミＹミミＹ7､、Ｙ/::::::/
　　　　　　　 　 　 　 / :::::::::::／::ｲ /　 　 ||　　｀"´Ⅵ＼
.　　　　　　 　 　 　 /ｲ :::: イ::::彡| |＿_　 ||、　　 　 Ⅵハ
　 　 　 　 　 　 　 　 ｲ :::::/⌒Ｙ　|ｰ=ﾞ㍉>|| :>　,ｨzｰ从　 ',
　 　 　 　 　 　 　 　 从::｛⌒Ｙﾐ、| l　　　 ||´　〈`ﾟ"´}ﾊ:!　 ',
　　　　 　 　 　 　 　 |//∧て､ 　| l、　　 |i　　 ∨ /　|l　　i
　 　 　 　 　 　 　 　 { Ⅳ:: `ｰﾍ　| ｌｉ　　　|i 　 ___＼　 !! 　 |
　　　　　 　 　 　 　 　 Ⅵ::::::/ ﾊ | l:i　　 _|ｉ_＿,､ /　　|!　　|
　　　　　　　 　 　 　 　 ∨:::i|　 ﾍ 八.　´ |! ー゛/　　 ﾉ 　 ﾉ
　　　　　　　　　　 　 　 八ﾉi|　　 ＼　　　!　　 ′
　　　　　　　　　　　「￣￣￣￣ミ　. ＼　　　 ,′　　血雲一味がどこかに隠した有り金そっくり
.　　　　　　 　 　 　 |::::::::::::::::::::::::::::::::＼　ー＜＿＿__
　　　　　　　　_＿ ノ￣￣ミ　､:::::::::::::: /　ハ:::::::::::::::::|
　　--=＝ ￣　:::::::::::::::::彡'´￣￣ミ、〈､ ｛｀ヽ:::::::::::::::|

　　　　　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　 　 　　　　 ／　　ヽ_　　.＼
　　　　　　 　 　　 （ ●）（ ●）　　｜
　　　　　　　　　　 （__人__）　 　 　 |
　　　　　　 　 　　　ｌ｀ ⌒´　　　　｜
　　　　　　　　　　　{　　 　 　 　 ｜　　俺達が頂いちまうのさ。
　　　　　　　　　　　{　　　　　　 /
　　　　　　　_. -: ´Λ　　　　 _.へ｀　、
　　　 　 r　: :: : : :|: :ﾍ ￣r'　 　 ＼ : ＼
　　　　/: : :: : : : :　ﾍ: ﾍ >、　 　 >ﾍ: :Λ
　　 　/: : : ﾄ､: : : : : : ヽ／:／`ｰ／ : : V: |
　 　 〈: : : :::: _ -￢-－―-､: : : | : : :: : ヽ: ｝
　　　 /: : :_ン´: : : : ＼ ,___, ｨ ）:く : : :: : : ヘ|
　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣



　　　　　　／￣￣＼
　　　　 ／　　　　　　＼
　 　 　 |　 　 -‐' 　へ　|
　 　 　 |　 （● ) (● ） |
　 　 　 |　　　　 ｜　　│
　 　 　 |　　　 __´___ 　 ｌ
　　　　 ヽ 　/＿＿_ヽ　!　　泥棒の上前をはねるってわけですか。
　　　　　 ヽ　　 　 　 ノ
　　　　　　/　 　 　 く
　　　　 　/　 　 　 　 ヽ

.　　　　　　　　　　　／￣￣＼
.　　　　　　　　　 ／　_ノ　 ⌒ ＼
.　　　　　　　　　 |　（ ●）　（●） |
　　　　　　　　 .　|　　 （__人__）　 |
　　　　　 　 　 　 |　　　｀ ⌒´　　|　　そういうこった。
　　　　　　　　＿ |　　　　　 　 　}＿
　　　　　 ,／:::::::::::ヽ　　　　　 　} |｜＼
　　　　／::::::::::::::::::｜ヽ　　　　ノ/./:::::::::ヽ.
　　　 /::::ヽ、::::::::::::::|｜` ー ' ././::::::::::::::::∧
　.　 /´:::::::｀i.::::::::::::::::|｜　 |　/./::::::::::::::::::/:::ﾍ
　　/::::::::::::::::|:::::::::::::::ヽヽ　 /./:::::::::::::::::::/,ｨﾆ｀ﾍ
　 /::::::::::::::::: |:::::::::::::::::::ヽ.Ｖ./:::::::::::::::::::r/:::::::::::∧
　/´￣｀ヽ、_::｣j:::::::::::::::::::Ｖ./:::::::::::::::::::{_:, - ´￣｀ヽ、
.（::::::::::::::::::::::::::/ ｀¨￢-､/./:::::::::r‐‐-（::::::::::::::::::::::::::〉
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣




　　　 ／￣￣＼
　　／　　 _ノ　　＼
　　|　　　 （ 一）（●）
　　|　　　　 （__人__）
　　 |　　　　　｀⌒´ﾉ
　　 |　　　,.<))／´二⊃　　それで相手の目星はついてるのか？
　　 ヽ　/ ／　 '‐､ﾆ⊃
　 _r‐入ｌ　　　　´ヽ〉
''"::l::::l;;/　　　 __人〉
:::::::::|/|　　　/　 `ヽﾍ､_
:::::::/::::|　　/::〉　　　〉〉::::ﾞ'ｰ､
:::ｙ′.:::|　/::::|ヽ　　//:::::::::|:::!
／: :／:|/:::::::|＼ソ /:::::::::::::i::|

;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;r､;;;;;;;;;;;;;ﾍ
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;'　ヽ;;;;;;;;;;;;;;ﾍ
;;;;;;γ二ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;''　 ／ヽ;;;;;;;;;;;｝
;;;;;;;i /⌒}｝;;;;;;''"´　 ／　　 ∨ｿソ
;;;;;;;i　　ﾉ/〃　　　/ヘ、　　 ﾄヾ、
;;;;;;;;!､ｰゝ　 :　　 / 弋ｧﾄ、　ハ:i ヽ、
;;;;;;;;;;;〉7　　 :　 /　 　∨ｿノ 　i| 　 ';
;;;;;;;;;/ !　　 ::　/　 　 　　i′　il　　 i!
;;/!/　i　　 :　/　 　 　 　 !　　i|　　 |!
//　 ﾍ.　 　 i:　　　　 　　!　　i!　　 i!
.　　 　ﾍ.　　i　─ ､,,,ｒｰ-ゝ　/　　 /
ヽ　　　 ﾍ　 !　　　r'"ヘ　　/　　 /
;;;;＼／⌒;、 　　 /　　　＼
;;;;;;;;;;＼;＼ ＼_ _ﾉ　　　　　＼　　ああ、ちょいと気になって手先に探りをいれさせたんだがな、
ヽ;;;;;;;;;;;;;＼＼　　　　　　　　　　　こいつが大当たりだ。
;;;;;;＼;;;;;;;;;/;;/
;;;;;;;;;;;;＼;/;;く
;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼;;;＼



:::::"'-────　-'" 　ヽ 　 /;;;;;;;;;;;;;;;;',
::/ :::. /　　　　　 ﾞl　　　　',.　.';;;;;;;;;;;;;;;;;;:l
/ ､:: ,! 　 　 　 　 ,i／　 　 ', 　l;;;;;;;....;;;;;;;l
::::::ヽi,　　 　 　 ／l　　　 　 ',　l;;;;;;;_,.． ､
: : ::::l　　　　／ 　 l　 .__._,　 .i　ヽ;;ﾉ/:::　',
"'!=iit.:．　　,' _,._= iﾆ__,,二￣l　 l/. l:::::　,'
ヽ,ﾆl=''　　　 '‐‐､,''i｀-' ,,-'"　l　 l i/／ /
:;::ヽ;l/::'　　　　ヽ　|￣´ 　 　 l　l l l　 /
:::::;;/l;;;;;;|　 　 　 ヽ|　 　 　 / |　| / ./
::::/;;;l::;;;;|　　　　　 ｌヽ　　 /　:| //;:;:l
'': ::　ｌ;;;;;|　　 　 　 ｌ　　　/:　 .l/ ;;i;;;;;l
　 　 ｌ ;;;|　　 　 　 l　 　/;:;　 .l;;;;;;;l:､ !　　どうやら奴さん達、江戸で故買屋をやり始めようって魂胆のようでよ。
　　 　 , !　_,..　 　 l 　 ,':::: 　.,'l;;;;;,' :|,l　　昔からいるまわりの故買屋を追い出そうとしてやがる。
: :: 　 　 ｀´　　 　 　 ,,':::　　/ l;;;;;ll::l l
;;;;　　"￣￣￣'　　 　 　 ／　l::i}:l.l;'
. :;:;;;:　　─'　　　　 　 ／/ 　 l 'l'l l
ヽ;;;;;;:;::　 　 　 　 　 ,r'　/::::　 lﾐ-､
;;;;ヽ.;;;;;;;;　　　　　／　 /;;;;:;:　.l "'ヾ',
;;;;;;;;ヽ ::　　 　 ／ 　 ,/ ::::::　_ l -'";;|
　 　 :　''‐-‐''"　　　　 : :: / ;.......,,.　|

　　　　　　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　／ _ノ　　　　.＼　　 　 　 _,,
　　　　　　　　　　　　　　　|　（ ●）　（●） |.　 　 　 ｌ;ｌ
　　　　　　　　　　　　　　.　|　　 （__人__）　 |　　＿,_,|,|_,
　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　｀ ⌒´　　|,　ト-=y 　丶　　わかった。それじゃあ、さっそく始めるとするか。
　　　　　　　　　　　　　　.　 |　　　　　　 　 }　 ヽ `ｉ,￣‐^ｌ
　　　　　　　　　　　　　　.　 ヽ　　　　　 　 }　　　ヾ~　`　 ｉ,
　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　　　　ノ _　　　　ヽ、　　 ;ｉ,
　　　　　　　　　　　　　　　 ,　,ｉ　　　　　y: ∧,,,__　　ヽ、　　 ;ｉ,
　　　　　　　　　　　　　　 ,/: ﾍj　　　　 /: : /: : : `ヽ､-x,,゜r　　;ｉ
　　　　　　　　　　　 　／: : ﾍ: : ﾍ　　　/: : /: : : : : : : `ヽ　`;ｉ　　ｉ,
　　　　　　　　　　,／: : : : : : ﾍ: : ﾍ　 /: : /: : : : : : : : : : `、'ｉ　　 ｉ 、
　　　　　　　　　_i: : : : : : : : : : ﾍ: : ﾍ/: : /: : : : : : : : : : : : Yrｉ　　　ｌ,ヽ、
　　　　　　　 _,,,>: : : : : : : : : : : : ﾍ:/: : /: : : : : : : : : : : : /／　 ,　´: : :i
　　　　　　 ,y`: : : : : : ,ｉ: : : : : : : /: : / : : : : : : : : : : : ／: r-　　／: : : ｌ
　　　　_／^: : : : : : : : : ｌ: : : : : :/: : /: : : : : : : : : : : : ／: : ｌ::::v'::::ｙ: : : : }
　v=4⌒ヽ、: j: : : --,,,ｉf: : : : :/: : /: : : : : : : : : : ,,: : : 〈: : : ﾍ_,、::<: : : : /



　　　　　　　　　　　┌────────────────────────────────┐
　　　　　　　　　　　│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 │
　　　　　　　　　　　│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 │
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　　　　　　　　　　　│　 　 　 │　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 │　 　 　 │
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　　　　　　　　　　　　 　 　 　 │　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 │
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 │　 　 　 ┌────────────────┐　 　 　 │
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 └───┼────────────────┼───┘
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 │　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 │
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 └────────────────┘

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ここで話を少し遡らせる。
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::::::::::::: ::. :. .: :　 -‐-　 :. .:.: ...: :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::.....: .. : ,r'´.　　 　 ｀ヽ: .. ......:..:.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::.:: .: ..: :'　..:.　　　　 　 ﾞ; :... ...:.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::.: ..: :.　::..　　　　　　 .: :. .:.::......::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::.......: ..: :ヽ　::::...　.....　,.': :.. :. :............:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::.::::. ::.. :..:. :` ｰ- ‐ ''"... ... ..: :..:.::::.::::::.:::::.::::::.:::::::.::::::.:::::.::::::.:::::::.::::::.:::::.::::::.::::::::::::::::::.:::
:::::: :::::: :::::: :::::: ... ... .... :::::: :::::: :::::: :::::: :::::: :::::: :::::: :::::: :::::: :::::: :::::: :::::: :::::: ::::::. ::::::.::::::..:
:::: :::: :::: :::: :::: :::: ::..... :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: ::: :::: :::: ::::
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''"~~"''ヽ,,,_ :　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:
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''"~~"''ヽ,,,_ :　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:
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夜影を照らす蒼い月光が、低く波打っていた。肌寒い季節である。
熱燗か人肌が恋しくなってくる。あたりに人影はない。
それどころか、野良猫一匹、カラスの一羽もいない。
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　　((＿((＿((___((___((＿((___((＿((＿((___((___((___((___((___
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　　ヽλ＿Ｙ～匚乂_ゝ、イ~ヽソヽ,ﾊ__ノ乂_ゝ~ヽソヽ,ﾊ__ノ、
　　ヽ/~~A___匚ﾉ___〉_/ヽ__ハノ　ノ＼/匚ﾉ___~A___匚ﾉ___〉_

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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 !　　　　,,,-‐‐‐､　 ＼,,､ 　　　　　,／　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|ﾞ ｔﾆ二ブ__　　　｀　　 　:';　　　　!i´　 ,--　　 l
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 )　　i_,i　/　　　　　　 　i　 　 i!　/ﾞヽ ｀i　　i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　, __ノ´　__｀￣　　u　　　　　 i　　　i　i 　 l　il　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 （　　｀ -´　｀i　　　　　　　　　 !　　　｀i ｀／／　/　　
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｀i!　　　　　　　　　　　 !､　　　　 ）　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　（__, -‐-- ､_　　　　　　｀＼,,,,,,,,,ノヽ-´ ｀´"'
　　　　　　　　　　　　旦那、そいつは本当のことでござんすか？　　　i　　　　　"'　　　　　　　　 ､　,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ,　　　　　　　　　　　　　　ｌ l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　´　,__,,. -´　i!
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ,.



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;;;;;;;i　　ﾉ/〃　　　/ヘ、　　 ﾄヾ、
;;;;;;;;!､ｰゝ　 :　　 / 弋ｧﾄ、　ハ:i ヽ、
;;;;;;;;;;;〉7　　 :　 /　 　∨ｿノ 　i| 　 ';
;;;;;;;;;/ !　　 ::　/　 　 　　i′　il　　 i!
;;/!/　i　　 :　/　 　 　 　 !　　i|　　 |!
//　 ﾍ.　 　 i:　　　　 　　!　　i!　　 i!
.　　 　ﾍ.　　i　─ ､,,,ｒｰ-ゝ　/　　 /
ヽ　　　 ﾍ　 !　　　r'"ヘ　　/　　 /
;;;;＼／⌒;、 　　 /　　　＼　　ああ、本当だ。
;;;;;;;;;;＼;＼ ＼_ _ﾉ　　　　　＼
ヽ;;;;;;;;;;;;;＼＼
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;;;;;;;;;;;;＼;/;;く
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　　　　　　　　,,. -‐'''"""´"' - ､_
　　　　　　,-'"　　 　 　 　 　 　 ｀':;､,.
　　　　 ,;'´ 　 ,　　　　 　 　 　 　 　 ヽ,.
　　　 ;'´　　　　　　 　　　　_　　　　　::i,
　　 ,;'　,;'　　　　 　　　､__ -　　　　　　:';
　　 ;　　;u　　　u　_,,'''__∠ ､　　　　 　i
　 　 ';　 ';　"' ､､__､-‐ﾞ〆､｀ト､_　u　　.;'
　　　ヽ　　　/,､_　l 　 ,。‐､ﾞ〉├)､　　_''　　　　　　　　　　　　あ、あの同心野郎っ、
　　　　´ヾ　〈´( ﾟ)〉､ ´─´（　 iｙ!ｌ　 ;´　,__,,. -‐'''""´"ヽ.　　 これまで散々俺達から袖の下貰っておいてっ
　 ,,,. ,,,,,＿｀ﾞ〈〉 └､´　, _ ,　´-ﾞ´‐-‐'''"´　　　　　　入　ｌ
　|─､　　´"' ＼ ､_,∠,,. -｀,_亅 ｿ　　　　　 　 　 ／　 ＼|
　 ';／＼　　　　ヽ--‐　／ l　　/　 　 　 　 　 ／　　　　｀i
　∠ --┤　　　 └‐‐'< 　i　／|　　　　　　／＼　　　　　ｌ
'''"´　-､ ＼　　　　　ト､｀､／　ﾉ　　　　　 l´ ,　　"' -､､_ノ
　　　　　　刀　　　　';､｀　l　 /　　　　　　/ソ　　　ヽ　 〈





　　　　　　　　　 |:;:;::::l　　　/､　　l　 　 　 　 i　 ,､ ,>　 ;:::　::::|
　　　　　　　　　 |:::::::|　　 :/:::＼ .l　　　　　 _l'"´ 　 |　 !:::::;::;:|
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　　　 　 　 　 　 il､ . il　　.ﾄ､｀ﾞ‐.l,_ijl　　　l",__,ﾄ-__´,,,l　 .|;゛ ､ }
　　　　 　 　 　 <" .>ﾈ.　 ] ミ｀‐Iｴ､ヽ　 〟゛‐Iｴ‐／ }　 lli/,　!
　　　　　　　　 　 l l　!　''.|　 　 .|,r'::'''｀l　 　 ヽ l　　　.l,　/./ .|
　　　　　　　　　　ヽ'　! :: lヽ　/ |;;;:::;;;;::i　　 　 l{　　 ./! /^.／
　　　　　　　　　　　｀,:::|　!::',　　l::　;;;;;;;!　 　 　 !'　 /:::|ﾚ'.{
　　　　　　　 　 　 　 l::::| |'''':l　 |　　'''''|　　　　 !　/::::/l:::::l
　　　　　　　　　　　 |:;;:::l | :;;;ゝ.!　　　　/　　　 ! .l:;:;:/::!:;:;:l　　世の中そんなもんだろう。
　　　　　　　　　　　 !il::;::::l､::::::l ! ---､､ヽ--‐‐.| l:::/.!::!､､:!
　　　　　　　　　　　 l.l.l!'''::l:ヽ､　' .... ...'‐‐　　　 ! ./　|'':叩:|
　　　　　　　　　　　　!!:! li:ﾘ;;::ヽ　　;::;;:::　　　　`/,　 |:j|:|!:l}
　　　　　　　　　　　_,,|!:|l:l::!::::::|::ヽ　 ;;;;;　　　　/ .l.　.|;!l ゝﾐ､
　　　　　　　　　 ,ィ´/ﾘ;:::::|:::::::::l ::＼ '''' 　 　 / ./　 .|..;;;...`l:::ヽ
　　　 　 　 　 　 }:::::＼:;:::::' ;:: : ;;:l :::::｀――'"　.l　　　'　::;;/ ;;::|

l　　　　　　　 /｀ ｀ﾞﾞ‐-;､_　 　 ,_,,‐'''´　　　　　　 l　　　　　　　　　　　 !.
丶, 　　　　.　/　　　　　´ ￣｀´(.､__, ‐''''-､,,.　 　 i　　　　　　　　　　　〈
　i　　　　 /　i　　,＝＝´　　u　＼｀ ´_ﾆ_｀｀ヽ､　i　!.　　　　　　　　　　i
　ヽ,　　　i　 li ／ ,/⌒ヽ､　 　　　　　 , ⌒｀､　ヽ ｀､;､､　　　　　　　　_,!
　　ヽ､　 i　 ｀i　 ´,イ￣い　　　　, 　 l （⌒い〉　 　〉､｀丶;　　　　　, ,´
　　　｀!　｀ヽ. ｀!　､_ゝ-｀ノ〉　 　 ´､　　､｀_´ノﾉ　　,〉　/´￣i!　／,/´!
　　　　｀､ i´丶i ,, , , ￣,. /´￣｀　 ,,､.　 - ‐ ´　　 /´/ , -　 li　　,／
　　　　　ヽi ｀i |´　　　( ,,l､ ＿ , --､｀)　　u　　 ,/　 i/､　　!i　 /ﾞ
　　　　　　｀､i i　　　　　　　ヽ　　　｀　　 ､.　　i （　 / ﾉﾉ 　/／　　それで旦那、お目こぼしをしてくれるそうですが、
　　　　　　　｀､ヽ 　(_ , - ‐─- --─ ‐,ァ｀　　i i! / ／　 ／　　　　一体俺に何をやらせるつもりで？
　　　　　　　　＼､　 ｀丶￣￣￣￣,´／　　 　 ｀,｀ 　, _ノﾞ
　　　　　　　　　　｀,　　 ｀￣￣￣´　　　　　　,/〉_-＜´
　　　　　　　　　 　 ﾄ　　丶─-　　　　　　 ,／　l
　　　 　 　 　 　 　 i ｀i. 　 　 　 　 　 ,／ﾞﾞ´　/　|




　　　 　 　 　 　 　 , '::::;:;:::::::::::;:;:;:;:;:;:;;;;;;:;;;;::::;:;::::;;ヽ
　　　 　 　 　 　 , ';;;;;;;;;;:::;;;;;;:;:;:;;;;;;;;:;:;;;;;;;:::::.;;:;;;;､;;;;;:ヽ
　　　　　　　　 /;;;;;;;;;;:　;;;;;;;;;;;;:::;;;;;;;;;;::::..;;.　　 ;;_::;;;;;;.i､
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.　　　 　 　 　 i;;;;;;;;;;i､　＞ ､　　　　._,.．-'' 'i, .〈;;;;;;;;;;;l
　　　　　　　　i;;;;;;;;,r'　/　　 i~"'''"~　 i　 　 i　 ヽ;;;;;;;l
　　　　　　　　i;;;:;;;r' ,/ 　 　,l　　　 　 .',　 　 ',　 i;;;;;;;;l
　　　　 　 　 ,-､::::!　"'''- ． l. ,　　　/ ,l _．-''i"　l::,r'ヽ
.　　　　　 　 l ﾊ'i;;ｌ ,' ､-､__,ﾐi_./　　　 .''i_,, ．十, ;l/ ﾙ l
.　　　　　 　 l l ' l:ｌ i　 `--‐.l'"　　　　`ト`ﾆ イ　;;ﾘ ,' /　　誰が剛斗達を追い出そうとしてるのか、そいつを探ってくれ。
　　　　　　　ヽ l　l l　　 　 /l　　　 |;;;;　iヽ　::;:l 　.l /,/l　　　　 　 , - ．_
　 　 　 　 　 　 ‐ l l　ヽ　 ' l　　　 .|;;;;;　l　'　/l　 l／l;: .l'- ､_,.-'''"::::::::::::
.　　　　 　 　 　 _` ll 　 ヽ　l　　　 .|;;;;　 l　 / ,l ./ヽ;.l ::::l;;;;;;l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
.　　　　　 　 ／l// l ', 　 ヽl 　　 ､_/ 　 .l / 　 /巛ヽ.l;;;;;l;;;;;;ヽ;;;;;;_/ "'''‐
　　　　　 ／;;;;ｉ//:::ｉｌ/ ヽ　 l　　 ＿＿　 l　　 /　　l　.i;;;;;;;l;;;;　,!/___;;;;;;;;;;
,r-┘￣´ｌ/;;;;;;;ｌ ｌ / :ｌｌ;;;;;;ヽ ｌ 　´ 　 　 ｀　　./　　　 /;;;;;;/;;;..;;......;;;;;;;.;;;;.;
, ;;;;;;;;;;;;／;;;;;;;;;;l丶;:;:'ｌ ｌ'　ｌ, ヽ.　 　￣　　　./　　　 /;;;;;;/;;;;;..;;......;;;;;;;.;;;;;;;
_,.．-''";;;;;;;...;;;; l:::::l;:;::: 　 l 　 ヽ　　 　 　 ./　　　 /;;;;;;/;;;;;;...;;;;;;;;;;;;;;;..;;;;;;
;;;;;;;...;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ　ヽ:::::　l　 　 ヽ＿＿_ /　　　 /;;ヽ/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;:;:;:::::::::;:;::::ヽ　ゝ:　 〉 　 　 　 　 　 　 　 /::::;:/;;:::::;;;;;;;;;;;;;;;::::::;;;;;;;;;;

　　　　　　　　　　　　　　,,. -‐'''"""´"'' - ､_
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　　　　　　　　 ;　　　　　　　　　　　　　　　　　　.:::::::::i!
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　　　　　　　 　 ';　　　 ,..､;　=',;ー_､　 ´'' '' '_,ﾐ !::::::::;´
　　　　　　　　　｀';　 ,/, ﾍ} ,;'　ｲ･ﾅ';`ｰ　,ｨﾗ'; /,;'_､''
　　　　　　　　　　｀'､_! ;'r.ｌ　|　｀"''´, -　(,.｀´f';"
　　　　　　　　　　　 _,ヽ'-|　i! ,;_＿ ｀ "r‐'　ｲ´＿　　　蛇の道は蛇ってね、
　＿＿ ,,,, ...,,, ,. -‐''"／ヽ'从、　　 ｀二ｰ' ノ';';';,::´';'　　へへ、それくらいならお安い御用でがす。
"､:::::::::::::::::::::::::::::::::::::{´ 　　:　::｀ヽ､　　 /´;';';';';';';';'
　ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ　　　:　:::::;''ｶﾞ;─';';';';';';';';';';'
　　ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::l　　　､..::::/::'l;';';';';';';';';';';';';';
　　　'､::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ　　　　/　 |''';';';';';';';';';';';'
　　　 ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ'' - ､　,.-'l::::::::..';'';';';';';'
　　　　　ヽ､::::::::::::::::::::::::::':.､　 ヽ　l::::::::::::::::';';''.;
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　　 ';　　　　 　 ｀ヽ､;:::::::::::::::::::ヽ/::::::::::::／　,;'



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;;/!/　i　　 :　/　 　 　 　 !　　i|　　 |!
//　 ﾍ.　 　 i:　　　　 　　!　　i!　　 i!
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ヽ　　　 ﾍ　 !　　　r'"ヘ　　/　　 /
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;;;;;;;;;;＼;＼ ＼_ _ﾉ　　　　　＼　　　それとよ、嫌な噂を聞いたんだがな。
ヽ;;;;;;;;;;;;;＼＼　　　　　　　　　　　　なんでも血雲の一味が江戸に紛れ込んだらしいぞ。
;;;;;;＼;;;;;;;;;/;;/
;;;;;;;;;;;;＼;/;;く
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｀i!　　　　　　　　　　　 !､　　　　 ）　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　（__, -‐-- ､_　　　　　　｀＼,,,,,,,,,ノヽ-´ ｀´"'
　　　　　　　　　　　　　　　　　　確か上方の凶賊連中ですよね。　　　i　　　　　"'　　　　　　　　 ､　,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　残忍な畜生働きをするっていう。　　　　ヽ,　　　　　　　　　　　　　　ｌ l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　´　,__,,. -´　i!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/　　　　　　　　, '''"´　　　　 i!
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ,.



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;;/!/　i　　 :　/　 　 　 　 !　　i|　　 |!
//　 ﾍ.　 　 i:　　　　 　　!　　i!　　 i!
.　　 　ﾍ.　　i　─ ､,,,ｒｰ-ゝ　/　　 /
ヽ　　　 ﾍ　 !　　　r'"ヘ　　/　　 /
;;;;＼／⌒;、 　　 /　　　＼　　そうよ。なんだか嫌な予感がするぜ。
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ヽ;;;;;;;;;;;;;＼＼
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（(_）,_,二,_,二,_,二,_,二,_,二,_,二,_,二,_,二,_,二,_,,_,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　　丶;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､
　　　,i'二,_,二,_,二,_,二,_,二,_,二,_,（(_）　　　　／　　　　　　＼;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､
　　,､＿､＿,､＿,､＿,､＿,､＿,､＿,､/ ヽ　　／　　　　　　　　　＼;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､;;;`､
　　７|L;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊL;ｊ／|i'二,_,二,_,二,_,二,_,二,_,二,_,'二,_,二,_,二,_,二,_,二,_,二,_,二,_,二,_,二,_,
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　　　　　　　　　　　 _,ヽ'-|　i! ,;_＿ ｀ "r‐'　ｲ´＿　　　失礼しますぜ、荒神の旦那。
　＿＿ ,,,, ...,,, ,. -‐''"／ヽ'从、　　 ｀二ｰ' ノ';';';,::´';'
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　ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ　　　:　:::::;''ｶﾞ;─';';';';';';';';';';'
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　 　 　 　 　 　 　 　 从::｛⌒Ｙﾐ、| l　　　 ||´　〈`ﾟ"´}ﾊ:!　 ',
　　　　 　 　 　 　 　 |//∧て､ 　| l、　　 |i　　 ∨ /　|l　　i
　 　 　 　 　 　 　 　 { Ⅳ:: `ｰﾍ　| ｌｉ　　　|i 　 ___＼　 !! 　 |
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　　　　　　　　　　 　 　 八ﾉi|　　 ＼　　　!　　 ′　　おう、何かわかったか。
　　　　　　　　　　　「￣￣￣￣ミ　. ＼　　　 ,′
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　　　　　　　　_＿ ノ￣￣ミ　､:::::::::::::: /　ハ:::::::::::::::::|
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　　　';　　ア,..､;｀　´ててヽﾞ､┌ﾞﾞ｀l'´　;´
　　　｀';　 ､｀‐ｔｿ､　 ｀--｀´ i i〉アl　_､''　　
　　　　　｀､_｀￣､,ノ´　,_,,　!´と//r';"　　勿論ですよ、わからなきゃ、わかるまでここにゃ来ませんや。
　　　　　　 ilヽヽ､_,,,／　　 ｀ソr';"
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　　　　　　　 　 人__,,ノ´　　　　 |＿　 ,__,,. -‐'''""´"ヽ.､
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　　　　　　　　　 　　人　　　　／　　　　　　 ,/　　　　＼l
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　　 ;　　　　_､',,--,､,-　　､,-､_..　';ﾞﾞ"'　i'
　　 '; 　 ' "　〉　,イｊ i ､ 　,/ i_ｔ l　〈; , 　;'
　　　';　　,　〈　､_｀ノ　〉 〈ヽ＿ﾉ　 〉　 ;´
　　　｀';　´,,｀,l　　　　´ﾞ-ﾞ｀ 　　　 l.　_''
　　　　｀':;.　（ｌ　υ　,　─　､　　 l）;´　　　それでちょいとツテを頼って、探ってみたんですがね。
　　　　　 ヽ, ､!､　　｀ﾆﾆﾆﾆﾞ　　,!　　　　　どうやら、とっつぁん達を追い出そうとしてる連中ってのが、
　　　　　　　 |｀＼　　 ﾞﾞﾞﾞ　 　,イ　　　　　盗品を売りさばこうって魂胆のようでして。
　 　 　 　 　 ト､　｀＼＿__／´ ,|

: : ::::l　　　　／ 　 l　 .__._,　 .i　ヽ;;ﾉ/:::　',
"'!=iit.:．　　,' _,._= iﾆ__,,二￣l　 l/. l:::::　,'
ヽ,ﾆl=''　　　 '‐‐､,''i｀-' ,,-'"　l　 l i/／ /
:;::ヽ;l/::'　　　　ヽ　|￣´ 　 　 l　l l l　 /
:::::;;/l;;;;;;|　 　 　 ヽ|　 　 　 / |　| / ./
::::/;;;l::;;;;|　　　　　 ｌヽ　　 /　:| //;:;:l
'': ::　ｌ;;;;;|　　 　 　 ｌ　　　/:　 .l/ ;;i;;;;;l
　 　 ｌ ;;;|　　 　 　 l　 　/;:;　 .l;;;;;;;l:､ !
　　 　 , !　_,..　 　 l 　 ,':::: 　.,'l;;;;;,' :|,l　　　同じ抜け物（盗品）を扱う連中は邪魔ってことか。
: :: 　 　 ｀´　　 　 　 ,,':::　　/ l;;;;;ll::l l
;;;;　　"￣￣￣'　　 　 　 ／　l::i}:l.l;'
. :;:;;;:　　─'　　　　 　 ／/ 　 l 'l'l l
ヽ;;;;;;:;::　 　 　 　 　 ,r'　/::::　 lﾐ-､
;;;;ヽ.;;;;;;;;　　　　　／　 /;;;;:;:　.l "'ヾ',



　　　　　　　　　　　　　　,,. -‐'''"""´"'' - ､_
　　　　　　　　　　　　,-'"　　　　　　　　　　 ｀':;､,.
　　　　　　　　　　 ,;'´　　　　　　　　　　　　　　::::ヽ,.
　　　　　　　　　 ;'´　　　　　　　　　　　　　　　,;:::::::::i,
　　　　　　　　 ,;'　　　　　　　　　　　　　　　　　,,::::::::';
　　　　　　　　 ;　　　　　　　　　　　　　　　　　　.:::::::::i!
　　　　　　　　 ;　　　　　　　　　　　　　　　　　.,,.:::::::::i'
　　　　　　　　 ';　　　　　　　　,;'｀"'､.,,,　　　,,..=;''::::::::;'
　　　　　　　 　 ';　　　 ,..､;　=',;ー_､　 ´'' '' '_,ﾐ !::::::::;´
　　　　　　　　　｀';　 ,/, ﾍ} ,;'　ｲ･ﾅ';`ｰ　,ｨﾗ'; /,;'_､''
　　　　　　　　　　｀'､_! ;'r.ｌ　|　｀"''´, -　(,.｀´f';"
　　　　　　　　　　　 _,ヽ'-|　i! ,;_＿ ｀ "r‐'　ｲ´＿
　＿＿ ,,,, ...,,, ,. -‐''"／ヽ'从、　　 ｀二ｰ' ノ';';';,::´';'　　そういうことでしょうね。
"､:::::::::::::::::::::::::::::::::::::{´ 　　:　::｀ヽ､　　 /´;';';';';';';';'　　　もう一つ、そいつらどうやら上方訛りがあるようでしてね。
　ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ　　　:　:::::;''ｶﾞ;─';';';';';';';';';';'
　　ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::l　　　､..::::/::'l;';';';';';';';';';';';';';
　　　'､::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ　　　　/　 |''';';';';';';';';';';';'


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江戸当時、犯人捕縛に一役買ったのが生国の訛りだった。
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　　　　　　　　　　 ,:-､:‐､_
　　　 　 　 　 　 ,:'::::::::::::::::::!
　　　 　 　 　 　 i::::::::::::::::::::!
　　　　　　　　　 ';::::::::::::::::;:'　　おらは京生まれだズラ
　 　 　 　 　 _.. -::':::::::::::::::'::‐::..､
　 　 　 　 .,:'::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　 　 　 .,'::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i
　　　 　 .,'::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i　　　←甲州訛りがある。
　　　　　.'!::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::',
　　　　　,':::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i
　　　　　i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i;:::::::::::i
　　　 　 !::::::::::::;::::::::::::::::::::::::::::;',':::::::::::;'
　　　 　 .',:::::::::i.i::::::::::::::::::::::::::::!i::::::::::;'
　　　　　 i::::::i'.,':::::::::::::::::::::::::::::'::::_;: '
　　　　　 .i:::::`';::::::::::::::::::::::::::::::::::;'
　 　 　 　 '､:::::;:::::::::::::::;::::::::::::::::i′
　　　 　 　 丶'!:::::::::::::::ii:::::::::::::::!
　　　 　 　 　 i::::::::::::::::ｉi:::::::::::::::',
　　　 　 　 　 .!:::::::::::::::ｉi::::::::::::::::i
　　　　　　 　 i::::::::::::::::!i::::::::::::::::i
　　　 　 　 　 i::::::::::::::::!i:::::::::::::::::!
　　　 　 　 　 i:::::::::::::::',i::::::::::::::::::i
　 　 　 　 　 .,'::::::::::::::::i'!::::::::::::::::::!
　　　　 　 　 i::::::::::::::::::!i::::::::::::::::i´
　　　　　　　 '､:::::::::::::::i丶::::::::::::,'
　　　　　　　　 i::::::::::::;'　i:::::::::::;:'
　　　　　　 　 ,..:'::::::::i' 　 '!:::::::'､
　　　　　　 .,:':::::::::;:: '　　 ヽ::::::::ヽ
.　　　　　　.i::::::_;:'　　　　　 丶::::::i
　　 　 　 　 ｀´　　　　　　　　｀ ' '

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相手の話す言葉に含まれる方言でどこの生まれかを調べられたのである。
江戸時代は今よりも方言がはっきりとしており、これを誤魔化すのは容易ではなかった。
この方言を集めたのが越谷吾山の書き残した「物類称呼」である。
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　　　　　　　　　 |:;:;::::l　　　/､　　l　 　 　 　 i　 ,､ ,>　 ;:::　::::|
　　　　　　　　　 |:::::::|　　 :/:::＼ .l　　　　　 _l'"´ 　 |　 !:::::;::;:|
　　　　　　　　　 |;;;;;;;l .--､l_ :::::::/､　　　　 /　i　　 _l=　.l''''-:(
　　　 　 　 　 　 il､ . il　　.ﾄ､｀ﾞ‐.l,_ijl　　　l",__,ﾄ-__´,,,l　 .|;゛ ､ }
　　　　 　 　 　 <" .>ﾈ.　 ] ミ｀‐ｴI､ヽ　 〟゛‐Iｴ‐／ }　 lli/,　!
　　　　　　　　 　 l l　!　''.|　 　 .|,r'::'''｀l　 　 ヽ l　　　.l,　/./ .|
　　　　　　　　　　ヽ'　! :: lヽ　/ |;;;:::;;;;::i　　 　 l{　　 ./! /^.／
　　　　　　　　　　　｀,:::|　!::',　　l::　;;;;;;;!　 　 　 !'　 /:::|ﾚ'.{
　　　　　　　 　 　 　 l::::| |'''':l　 |　　'''''|　　　　 !　/::::/l:::::l
　　　　　　　　　　　 |:;;:::l | :;;;ゝ.!　　　　/　　　 ! .l:;:;:/::!:;:;:l　　　 なるほどな。
　　　　　　　　　　　 !il::;::::l､::::::l ! ---､､ヽ--‐‐.| l:::/.!::!､､:!　　　わかった、あとは俺の手先に探らせる。
　　　　　　　　　　　 l.l.l!'''::l:ヽ､　' .... ...'‐‐　　　 ! ./　|'':叩:|　　　剛斗達には当分大人しくしてろと伝えておきな。
　　　　　　　　　　　　!!:! li:ﾘ;;::ヽ　　;::;;:::　　　　`/,　 |:j|:|!:l}
　　　　　　　　　　　_,,|!:|l:l::!::::::|::ヽ　 ;;;;;　　　　/ .l.　.|;!l ゝﾐ､
　　　　　　　　　 ,ィ´/ﾘ;:::::|:::::::::l ::＼ '''' 　 　 / ./　 .|..;;;...`l:::ヽ
　　　 　 　 　 　 }:::::＼:;:::::' ;:: : ;;:l :::::｀――'"　.l　　　'　::;;/ ;;::|
　　　　　　　　　.|::::;:;::::｀ ‐.､__　::::l ;:;:;:　　　　 / ,,, -'' ￣ ::::;:;;;:!
　


　　　　　　　　,,. -‐'''"""´"' - ､_
　　　　　　,-'":: 　 　 　 　 　 　 ｀':;､,.
　　　　 ,;'´:::::::　　　　　　　　　　　　ヽ,.
　　　 ;'´:::::::　　　　　　　　　　　　　　::i,
　　 ,;'::::::::,;ﾞ　　　　　　　　　　　　　　　:';
　　 ;:::::::::ゞ　　　　　　　　　　　　　　　　i!
　　 ;::::::::::ヾ　　　　,,,,､''''''､　　　　　　,;´:i'
　　 ';:::::::´ゝ､,,　,,,;'｀/´￣ '　　　ヽ,_､''　;'
　　　';　　ア,..､;｀　´ててヽﾞ､┌ﾞﾞ｀l'´　;´
　　　｀';　 ､｀‐ｔｿ､　 ｀--｀´ i i〉アl　_､''　　わかりました。
　　　　　｀､_｀￣､,ノ´　,_,,　!´と//r';"
　　　　　　 ilヽヽ､_,,,／　　 ｀ソr';"
　　　　　　´"ﾞ'＼--´　 ,_,‐'　　 :i,
　　　　　　　 　 人__,,ノ´　　　　 |＿　 ,__,,. -‐'''""´"ヽ.､
　　　　　　　　　　 　 i　　　　　　＞ ｀´　　　　／￣＼　!
　　　　　　　　　 　　人　　　　／　　　　　　 ,/　　　　＼l
　　　　　　　　,. -‐'''　/ﾞ　 　 /　　　　　 　　/　　　　　　i
　　　 　 ,,. -‐'　　 　 l´　 　/´　　　　　　　/＼　　　　　ｌ
　　　 　 ;,.　　　　　 i´　　/´ 　 　 　 　　　/´ , "' -､､_ノ

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　　　　　　　　　　　│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 │
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一は上方から流れてきた盗人に面通しをさせた。
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　　　　　　　　　, - ------ 、
　　　　　　　 ／::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　 .／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　 　 /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　./::::::::::::::::::／｀ヽ:::::::::::::::::::::::::::',
　　　　ハ:::::::::::::::i　　 o ',::::::::::::::::::::::::::i
　　 　 i:::::::::::::::::::::ヽ＿ ノ:::::::::::::::::_:::::::,'
　　　　',::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/o ',:::/
　　　　 ゝ-:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i__ ノ/
　　　　/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: /
　　　./:::::::::::::::::::::::::::r ニヽ::::::::::::/
ー、/:::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽィ′:::／
:::::::｀ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／　　あいつは血雲一味の……
:::::::::::::::',:::::::::::::::::::、:::::::::／
:::::::::::::::::i::::::::::::::::/｀￣´
:::::::::::::::::i:::::::::::::/
:::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
:::::::::::::::::::::::::::::::::::',
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i

　　　 　 　 　 　 　 , '::::;:;:::::::::::;:;:;:;:;:;:;;;;;;:;;;;::::;:;::::;;ヽ
　　　 　 　 　 　 , ';;;;;;;;;;:::;;;;;;:;:;:;;;;;;;;:;:;;;;;;;:::::.;;:;;;;､;;;;;:ヽ
　　　　　　　　 /;;;;;;;;;;:　;;;;;;;;;;;;:::;;;;;;;;;;::::..;;.　　 ;;_::;;;;;;.i､
.　　　　　　 　 i;;;;;:;;;;l＼ ...　 ;;;;;:::: :::;:;:;　..　／　}_;;;;;;;;i
.　　　 　 　 　 i;;;;;;;;;;i､　＞ ､　　　　._,.．-'' 'i, .〈;;;;;;;;;;;l
　　　　　　　　i;;;;;;;;,r'　/　　 i~"'''"~　 i　 　 i　 ヽ;;;;;;;l
　　　　　　　　i;;;:;;;r' ,/ 　 　,l　　　 　 .',　 　 ',　 i;;;;;;;;l
　　　　 　 　 ,-､::::!　"'''- ． l. ,　　　/ ,l _．-''i"　l::,r'ヽ
.　　　　　 　 l ﾊ'i;;ｌ ,' ､-､__,ﾐi_./　　　 .''i_,, ．十, ;l/ ﾙ l
.　　　　　 　 l l ' l:ｌ i　 `--‐.l'"　　　　`ト`ﾆ イ　;;ﾘ ,' /　　これではっきりしたな。
　　　　　　　ヽ l　l l　　 　 /l　　　 |;;;;　iヽ　::;:l 　.l /,/l　　　　 　 , - ．_
　 　 　 　 　 　 ‐ l l　ヽ　 ' l　　　 .|;;;;;　l　'　/l　 l／l;: .l'- ､_,.-'''"::::::::::::
.　　　　 　 　 　 _` ll 　 ヽ　l　　　 .|;;;;　 l　 / ,l ./ヽ;.l ::::l;;;;;;l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
.　　　　　 　 ／l// l ', 　 ヽl 　　 ､_/ 　 .l / 　 /巛ヽ.l;;;;;l;;;;;;ヽ;;;;;;_/ "'''‐
　　　　　 ／;;;;ｉ//:::ｉｌ/ ヽ　 l　　 ＿＿　 l　　 /　　l　.i;;;;;;;l;;;;　,!/___;;;;;;;;;;
,r-┘￣´ｌ/;;;;;;;ｌ ｌ / :ｌｌ;;;;;;ヽ ｌ 　´ 　 　 ｀　　./　　　 /;;;;;;/;;;..;;......;;;;;;;.;;;;.;
, ;;;;;;;;;;;;／;;;;;;;;;;l丶;:;:'ｌ ｌ'　ｌ, ヽ.　 　￣　　　./　　　 /;;;;;;/;;;;;..;;......;;;;;;;.;;;;;;;
_,.．-''";;;;;;;...;;;; l:::::l;:;::: 　 l 　 ヽ　　 　 　 ./　　　 /;;;;;;/;;;;;;...;;;;;;;;;;;;;;;..;;;;;;
;;;;;;;...;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ　ヽ:::::　l　 　 ヽ＿＿_ /　　　 /;;ヽ/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;:;:;:::::::::;:;::::ヽ　ゝ:　 〉 　 　 　 　 　 　 　 /::::;:/;;:::::;;;;;;;;;;;;;;;::::::;;;;;;;;;;



　　　　　　　　　　　┌────────────────────────────────┐
　　　　　　　　　　　│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 │
　　　　　　　　　　　│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 │
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　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 └────────────────┘

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そして話は現在へと戻る。
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　　　　 ／￣￣＼
　　　／　「　　 ヘ ＼
　 　 | 　（●）（●）　|
　 　 |　 　 　 |　　　│
　 　 |　　　__´___　　.|
　 　 |　　　`ー'´　　.|　　しかし、どうやって一味の隠した金を探り当てるか……
　　　ヽ　　 　 　 　 /
.　　　　ヽ 　 　 　 /
. 　 　 　 /　　 　く
　　　 　 |　　　 　 |
　　　 　 |　　 　 　|



　　　　　　　　　　 　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　 ／　_ノ　 ⌒ ＼
　　　　　　　　　　 |　（ ●）　（●） |
　　　　　　　　　　. |　　 （__人__）　 |
　　　　　　　　　 　 |　　　｀ ⌒´　　|　　　心配するなって。
　　　　　　　　　 　. |　　　　　　 　 }
　　　　　　　　　 　. ヽ　　　　　 　 }
　　　　 　 　 　 　_, ´: :ヽ　　　　ノ:＼
　　 　 　　　 _, -　ﾍ: : :ヽﾍ　　//: : :/: : ゝ 、
　　　　　　 ´ : : : : : :ﾍ: : :ﾍﾍ//: : :/: : : : : ｀ヾ
　　　 　　!: : : : : : : : :ﾍ : : :ﾍ/: : :/　: : : : : : : : : !
　　　 　| : : : : : : : : : : : ﾍ: :/: : :/　: : : : : : : : : : : |
.　　 　 |: : : : : i: : : : : : : .ﾍ/: : :/　: : : : : : : : : : : : i
　　 　 i: : : : : : : i: : : : : : /: : :/　: : : : : : : : i: : : : : |

　　　　　　 ＿＿＿_
　　　　　／　　　　　＼
　　　 ／　─　　　─　＼
　　／　　（━）　（━）　　＼
　　|　　　　（__人__）　　　　 |　　追っ付け、一味のアジトもわかるはずですよ。
　　＼　　　 ｀ ⌒´　　　 _／
　　／　　　　　　　　　　 ＼
　　|　　ｎ:n　　　 　ｎｎ　　　|
　　 |nf|｜|　　　　 | | |^!n　|
　　 ||: 　 ,∩　　∩、　　:| |
　　　ヽ　　,ｲ 　　ヽ　 　:ｲ



　　　　　 ／￣￣＼
　　　　／　　「　 　へ
　　　　|　 　（●）（●）|
.　　　　|　　　　 ｜　　|
　　　　 |　　 　__´___　j　　一体どうやって？
　　　　 |　　　 `ー'´　}
　　　　 ヽ　　　　　　 }
　　　　　 ヽ　　　 　ノ
　　　　　　/　　　 く
　　　　　　|　　　　 |
　　　　　　|　　　 　|



　 　　　　　　＿＿＿_
　　　　　　／　　 　 　＼
　　　　 ／　　─　 　 ─＼
　　　／ 　　 （一） 　（一） ＼
　　　|　 　　 　 （__人__）　 　 |
　　　 ＼　 　 　 `_⌒ ´　　／　　マタタビでございます。
.　　　　ノ　　　 /　）ヽ 　 く
　　　(　 ＼　／__ノi　）　,　)
.　　　＼　　ﾞ　／　ヽ ヽ/ /
　　　　　＼_／　　　 ＼_ﾉ

　　 　／￣￣＼
　　／　　 「　　 ＼
　　|　 　 （ ●）（●）
　　|　　　　 　 ｜　|
　　|　　　　　__´___ﾉ
　　|　　　　　`ー'´}　　マタタビ？
　　ヽ　　　　　 　 }
　　　ヽ　　　　　ノ
　　　　/　　　 く
　　　　|　　　　 |




　　　　　　　　　＿＿＿
　　 　　　／）／─　─､＼
　　 　 ／ .ｲ '（─） 　.（─）＼
　 . 　/,'才.ﾐ).　 （__人__）　　　＼　　一味のひとりの袖の当たりにマタタビの粉をつけておいたんです。
　 . 　|　≧ｼ'　　 ´ ⌒｀　　　　　|　　あとは犬が連中の隠れ家を教えてくれますよ。
　　.　＼　ヽ 　　　　　　　　　 ／

　　　　 ／￣￣＼
　　　／　「　　 ヘ ＼
　 　 |　 （●）（●）　|
　 　 |　 　 　 |　　　｜
　　 ｜　 　__´___　　|　　マタタビというと猫だとばかり思ってましたが。
　　 ｜　 　`ー'´　　|
　　　ヽ　　 　 　 　 /
　　　　ヽ　　　　 ／　　　　　　　　＼
　　　　　/　　　く　　＼　　　　　　　 ＼
　　　　　|　　　　 ＼ 　 ＼　　　　 　 　 ＼
　　　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)､　　　 　 　 　 ＼



　 　　　　　　＿＿＿_
　　　　　　／　　 　 　＼
　　　　 ／　　─　 　 ─＼
　　　／ 　　 （一） 　（一） ＼
　　　|　 　　 　 （__人__）　 　 |
　　　 ＼　 　 　 `_⌒ ´　　／　　粉である程度匂いを発するものであれば、なんでもいいんですよ。
.　　　　ノ　　　 /　）ヽ 　 く
　　　(　 ＼　／__ノi　）　,　)
.　　　＼　　ﾞ　／　ヽ ヽ/ /
　　　　　＼_／　　　 ＼_ﾉ

　　　　　　　　　 ＿＿＿＿
　　　　　　　　／　　　　　　＼
　　　　　　　─　　　─　　　　＼
　　　　　　（─）　 （ ─） 　 　　 ＼　　　粉ですからね、歩けば少しずつポロポロ落ちる。
　　　　　　|　（_人__）　　　　　　　 |　　　その粉の匂いを犬が嗅ぎ分けるわけでして。
　　　　　 　＼｀ ⌒´　　　　　　 ／
　　　　　　 　/　ー‐　　　　　　　ヽ
　　　　　　　/　　　　　　　　　　　 ｀




　　　　 　 　 ＿_
.　　　　　 ／　ノ ＼
.　　 　 ／ ｢　　（●)＼
　　　 ｜　（●)　＼ 　 ＼
　　　　|　　　　　　　___ ,　ヽ
　 　 　 ＼ 　 　 　_/_シ　　.|　　なるほど、これは上手い手ですね。
　　　　　　＼　　　　 　 　 /　　
.　　　　　　　 ＼　　⊂ヽ∩
　　　　　　　　/´　 　 (,＿ ＼
　　　　 　 　 /　　　　　　 ＼. ＼
.　　　 　 　 / 　 / 　 　 　 |. ＼ソ
　　　　　　（ 　y'　　　　　 .|



　　　 ／￣￣＼
　　／　　 _ノ　　＼
　　|　　　 （ 一）（●）
　　|　　　　 （__人__）
　　 |　　　　　｀⌒´ﾉ　　　あとは一の知らせを待つだけだ。
　　 |　　　,.<))／´二⊃
　　 ヽ　/ ／　 '‐､ﾆ⊃
　 _r‐入ｌ　　　　´ヽ〉
''"::l::::l;;/　　　 __人〉
:::::::::|/|　　　/　 `ヽﾍ､_
:::::::/::::|　　/::〉　　　〉〉::::ﾞ'ｰ､
:::ｙ′.:::|　/::::|ヽ　　//:::::::::|:::!
／: :／:|/:::::::|＼ソ /:::::::::::::i::|

　;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
　;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
　;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::.. ::::.. :::: ..:::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
　;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::... :: ,: "⌒ '.;. ..::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
　;;;;;;;;;;;;;;;;;;::..: :: .;　 　 　 ; :::..;..:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
　;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:.. ..: ヽ、_. ,,ノ　::..;:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::..: :::..:: : .: ::: :: : :. : .
　;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ::..: ; : : : ... : ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:..: : . :. . ::: .:: : : .. : :
　;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:: .. :: .::; :..: .:: ; ':: .:: .:::: ::. ::: ..:
　::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;::::. ::: .: ,======================
　::::::::::::::::::::: ::::　::::: :::::;;: .:::. ::: ./:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　:::.. ::: .:: :: .: .:: ..: ..: :' ..: ..: ; ;; /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　:: ..: ;;; ::.. ::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　 　 　:　;;,ｲ,,二二二二二ニニニニニﾆﾆﾆﾆﾆ
　 　ﾆﾆニニニニ@　　　　ヽ||―――升――,;r┬―f ‐r ‐r ‐r

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
二刻（四時間）ほどが過ぎて、
外がすっかり暗くなった頃にようやく一が顔を出した。
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;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;r､;;;;;;;;;;;;;ﾍ
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;'　ヽ;;;;;;;;;;;;;;ﾍ
;;;;;;γ二ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;''　 ／ヽ;;;;;;;;;;;｝
;;;;;;;i /⌒}｝;;;;;;''"´　 ／　　 ∨ｿソ
;;;;;;;i　　ﾉ/〃　　　/ヘ、　　 ﾄヾ、
;;;;;;;;!､ｰゝ　 :　　 / 弋ｧﾄ、　ハ:i ヽ、
;;;;;;;;;;;〉7　　 :　 /　 　∨ｿノ 　i| 　 ';
;;;;;;;;;/ !　　 ::　/　 　 　　i′　il　　 i!
;;/!/　i　　 :　/　 　 　 　 !　　i|　　 |!
//　 ﾍ.　 　 i:　　　　 　　!　　i!　　 i!
.　　 　ﾍ.　　i　─ ､,,,ｒｰ-ゝ　/　　 /
ヽ　　　 ﾍ　 !　　　r'"ヘ　　/　　 /
;;;;＼／⌒;、 　　 /　　　＼
;;;;;;;;;;＼;＼ ＼_ _ﾉ　　　　　＼　　奴らの隠れ家に乗り込むからよ、すぐに準備をしてくれ。
ヽ;;;;;;;;;;;;;＼＼
;;;;;;＼;;;;;;;;;/;;/
;;;;;;;;;;;;＼;/;;く
;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼;;;＼

　　　　　　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　／ _ノ　　　　.＼　　 　 　 _,,
　　　　　　　　　　　　　　　|　（ ●）　（●） |.　 　 　 ｌ;ｌ
　　　　　　　　　　　　　　.　|　　 （__人__）　 |　　＿,_,|,|_,
　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　｀ ⌒´　　|,　ト-=y 　丶　　　あいよ。
　　　　　　　　　　　　　　.　 |　　　　　　 　 }　 ヽ `ｉ,￣‐^ｌ
　　　　　　　　　　　　　　.　 ヽ　　　　　 　 }　　　ヾ~　`　 ｉ,
　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　　　　ノ _　　　　ヽ、　　 ;ｉ,
　　　　　　　　　　　　　　　 ,　,ｉ　　　　　y: ∧,,,__　　ヽ、　　 ;ｉ,
　　　　　　　　　　　　　　 ,/: ﾍj　　　　 /: : /: : : `ヽ､-x,,゜r　　;ｉ
　　　　　　　　　　　 　／: : ﾍ: : ﾍ　　　/: : /: : : : : : : `ヽ　`;ｉ　　ｉ,
　　　　　　　　　　,／: : : : : : ﾍ: : ﾍ　 /: : /: : : : : : : : : : `、'ｉ　　 ｉ 、
　　　　　　　　　_i: : : : : : : : : : ﾍ: : ﾍ/: : /: : : : : : : : : : : : Yrｉ　　　ｌ,ヽ、
　　　　　　　 _,,,>: : : : : : : : : : : : ﾍ:/: : /: : : : : : : : : : : : /／　 ,　´: : :i
　　　　　　 ,y`: : : : : : ,ｉ: : : : : : : /: : / : : : : : : : : : : : ／: r-　　／: : : ｌ
　　　　_／^: : : : : : : : : ｌ: : : : : :/: : /: : : : : : : : : : : : ／: : ｌ::::v'::::ｙ: : : : }
　v=4⌒ヽ、: j: : : --,,,ｉf: : : : :/: : /: : : : : : : : : : ,,: : : 〈: : : ﾍ_,、::<: : : : /



　　　　　　　　　　　┌────────────────────────────────┐
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　　　　　　　　　　　│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 │
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　＼, ＼＼_,__,__,__,__,__,__,_ro｡　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .'i,` -､_／,,;..／.:::: ／
　　､＼ ,＼＼ﾆ/ﾆ/ﾆ/ﾆ/ﾐ'i/ヽーk　　　　　　　　　_　,,‐,＿　_,､_ ＿　 ／ﾞ`‐ ､ ~｀`-:..､_／　　／
　.＼＼＼::＼＼　'ﾆ/ﾆ/､,'/､::ｌl＼l､,,,,,zvvv､__,,.... .:......::::......'::nr-/ﾛii／,-'',-",-l~｀` ‐ ､::_｀-､_´
＼　'＼＼r`'',^´:'ﾆ/ﾆ/､,'/ｌ'/`'､､::＼;;ゞｰ､ri=令iーｭ/互.iｮi;;;_,,,三／,-",-'',-"-| || |:| |:| |:`-:､_`-､
　 ＼`r''^´／ :/ﾆ/ﾆ/､,'///, -|´'ｪ￣/､>/尺ﾆ∧::品:::,ノ:::::,／　 ~`'‐､_<」,-" :| || |:| |:| |:| |:|　ﾞ -
,,_r''^´ｌｌｌｉ||'´.::/ﾆ/ﾆ/､,'/-´''llﾚl|エエ/||ヽﾛl:::二}_」l但iく;;;,,:<"K",Kミ､ｉ|l|`''‐ ､-'| ||＼_|:| |:| |:| |:| |
ｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌli||.:::/ﾆ/ﾆ/､,'/.lﾚllﾚlｌ_,l|,,エ/=||=|`､ミ平平'不､.「}{::|"I''i/,,|_i_,_|l|:l:l:l:ｌ |`:| || ｌl|.＼:::|_|:| |:| |
ｌｌｌｌｌｌｌlｌｌｌｌｌi||ｰ^ｰ'^ｰo､/! lﾚllﾚllﾚｌ|エ/_,-''"|´八:l:::l:::, -<´.|ilヽ|lヽ,|l::::llillｌﾞ|lﾄ、ｌ:l::|ﾐ:| || ｌl|7ヽ＼ .| |:| |
|i､､il||||||i||:::_||_:::::|| | llﾚll「~ ｌlﾚｌ|￣lvzN'_|ﾉ::::l`:::|く,_　,` |il::::|ｌｌｌl:|:::::::::::_|l､ ＼l:|ﾐ:| || ｌl|7ヽ＼＼ .| |
ｌｌヽ､ｌｌｌｌｌｌl||_:::||::::: || | llﾚlｌ､__,'lﾚｌ|_llll'''"ll´ll:::::ｌi|::::::: lＸ,,::-''卷」ｌｌlll|ｌl::::::::`|l、k｀'' 　| || ｌl|7ヽ＼＼＼.!
ｌｌｌｌ｀､､ｌｌｌｌ||:::_||:::::_|| | llﾚllﾚllﾚlﾚｌ|_ヽllllｌ::::::|:::::::ｉ::::::　＼ｌ_:::「ヽヽlll|ｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌ|l、llt､k　| || ｌl|7ヽ＼＼＼
ｌｌｌｌｌｌｌヽ､ｌl||─､:_:: || | llﾚllﾚllﾚl_／lヽl´ .l:::::::::::::: .ﾊ ﾊ　:::::ｌ:::::ヽヽll/ミ_rくｌlt,lltｌｌ`ｰ| || ｌl|7ヽ＼＼＼
ｌｌｌ ｌｌｌｌｌｌ`､'' ／l_:::_|| | llﾚllﾚll／l／llﾉ`ｰ',,`::::::::　(дﾟ,,) . :::´~ﾞ`-''il三iｌ|'' ＼llｔllt_!_| || ｌl|7ヽ＼＼＼
ｌｌｌｌｌｌ／`Ｊ　l__|＿,|| | llﾚll,イ／ ,／::::::::::::::　　　<_lyl_>　:::::::::::_;;;_l三ii|:::.. . ＼|＼＼ _l|7ヽ＼＼＼
ｌｌ／ .／､_/_/|＿,||_| llｌ／, ' l／''::::::::::　　　　　..l_|__,|.　　 　 :::::il三__|､_,-_、 |::::::`-､`- ､.＼＼＼
'" ／,:::/_:::､l_|l二lﾆ|／l／／`::::::::　　　　　　 :::'-'^~:::　　　>-''､っ:::::く＿」,/|li::::..　::~ﾞ-､｀- ､､＼
／_l'ﾚ'-<＿〉:|::::二ｌ|／,／｀:::::::::..　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 "'＿,,ｨﾆ´入_|＼li:::..　　..:ﾞ`- ､ヽ
ミｇ､::ﾛ´r-､':::|_::::::: |／`:::::::::::''::::::　　　　　　　　　　　　　　 `ーｪ_ｒ:::::::::::>i-|::::..＼lilr────
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柳原の土手から和泉橋を突っ切り、武家地の御徒町に入って、そこから三枚橋を渡っていけば、
上野へとたどり着く。
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爻　　 _,,-‐ｔ‐''⌒ﾊ、　　　　　　　_,,,　-‐''三]
ｋ;;:､　(,,　ﾒ μ ,,´｀, -―一''''""~　_,, -‐／::::＼　　　　　　　 ／
､,＼;;:: 人人ｷ,,　 /　--一'''"~￣　　,／:::::['i']::::＼へ、　　／
ﾆヾ ＼ⅲⅲ Y,／　　　　　　　　　／ii[]:::[_,!_]::[];､＼　Yy,,..
-‐''`　 `.、:,:／　　　　　　　　　／ii;[ i ]~~[_!_]~[l];:ヽ ＼＿
＿,,､＿,,,,／　　　　　　　　　,／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ　>￣ヽ
ﾊﾊ从 ／-―====r-===三''　､-―――――――‐＜　木ﾎYyy
(⌒)ｲﾄ爻------(　tｲ-‐'´::::::::,＼＿＿,,,....､_＿＿,,,_____`」￥　Y
　T,::爻Ooﾄ[iiii]<,,. ､ ｷ[]　 i::::::::::::::::[]::::::::::::::[]=======|爻爻三三
ー-　　''ー＾　二,,　ー---┴, -‐へ-O-ー-～～-―へ`~~　　　　]、
　　　　　　　　　━
　〓　　　　　　　　　　　━〓　　　ー　----　､---―
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
少し外れれば、辺りは田畑と百姓家しか見当たらない。
三人が一味の潜む隠れ家へと向かっていく。
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　 　 　 |: : : :l: : : : : : : : :/:.:.:.:.:.:_r┘ 　 　 　 　 　 ヽ: :＼: ＼ : :ヽ: : : : : : |
　　　　 l: : : l : : : : : : : /:.:.:.｣￣　　 　 　 　 　 　 　 　 ￣ヽ: :＼: :ヽ: : : : :|
　　　 　 !: : l: : : : : : : ;'-‐'´　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ￣ ￢＝=┬‐┘
　　　　　ー'フｰ‐＝ｦ　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ヽ　　＼
　　　　　 ／　　　 〈　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 l!　 　 ｀li､　　ｻﾞｯｻﾞｯ
　　　 _,r'´　　　　ノ 〕　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ヽニ‐-ll　ヽ.
　 .／l l, -―､_／／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ＼￣ヽ_ﾉﾉ
　（ヽ/'´￣フ／´　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ｀=＝'´
　 ｀ー=＝´′

::||二|二|二|二|二|| 　 　 ||二|二|二|二|二|| 　　
::||二|二|二|二|二|| 　 　 ||二|二|二|二|二|| |
ll||二||￣￣￣||二|| 　 　 ||二||￣￣￣||二||　| 　
ii||二|| 　 ／　||二|| 　 　 ||二|| 　 ／　||二||　l 　
il||二||／／　 ||二|| 　 　 ||二||／／　 ||二|| ｜　
li||二||＿＿＿||二||　,,,, ,,,||二||＿＿＿||二||　 　
::||二|二|二|二|二||,,, ,,,,　||二|二|二|二|二||　|o
::||二|二|二|二|二||　,,, ,,,,||二|二|二|二|二||　l　
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　 〔二〕
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三三三|二二二|三三三三三三三三三三三三三三




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二二|_l_||ｌ二二二二二二二二二二二二二二|/===================
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 _ .......... _
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／　　　　　 ｀ヽ
　　　　　　　〈ミ>、　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　/　　　　　　　　‘，
　　　 　 　 　 ﾏ/ﾑ　　　　　　　　　　 　 　 　 　　　 ｛ 　へ　　　　　　|
.　　 　 　 　 　 ﾏ/ﾑ　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　　　　〉（●）　　　 　 |
　　　 　 　 　 　 ﾏ/ﾑ　　　　　　　　　　　　　　　　　く　　　　　　　　 |　　お邪魔するよ。
　　　　　　　　　　ﾏ/ﾑ＿_ 　 　 　 　 　 　 　　　　　　ゝ=､　　　　 　 |
　　　 　 　 　 　 　 ﾏ/ /ーヽ　　　　　　　　　　　　 　 ｝　　　　r==＝＝┐
　　　　　　　　　 　 〈_//／二ヽ　　　　　　 　 　 　 　 ｀¨´「　　|:::/￣￣ミメ、
　　　　　　　　 　 　 r‐く__彡‐┤ 　 　 　 　 　 　 　 　 ,r‐┼=彡/｀ヾ_＿＿ﾍ＼
　　　　 　 　 　 　 　 ヽ/／二二ヽ　　　　　　　　　 ／ i:::: |:::::::::::::::::/:::::::::::::::::＼j
　　　 　 　 　 　 　 　 人斥=气レ′　　 　 　 　 ／::|::::|:::: |:::::::::|::::/::::::::::::::::::::::::::｝
　　　　　　　　　　　 　 ∧丿∨∧､ 　 　 　 ┌く :::::::|::::|:::: }: r-ﾍ:/:::::::`ｰ==ニ二{__
　　　　　　　　　　　　 /／: :: :∨∧＼_,へ／::＼＼:ハ::}:::/::/::::::: ＼:::::::::`ｰ==ニ二{__
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　 i　　　　　　::ヽ　　　 /　　　　 　 　 　 　 : : l
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　　ヽ`'　　　　　　　　　　レイ__　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l　 ￣/　　,.､ ＜＿//__ヾ: : : !_　 ¨　　,/// : : :: ´〃
￣ `　　　　　　　　　　　　　　'-―‐　　　　　　　　　　 　 　 　 　 l　 　 !　　゛"　 ノ､: :　　＼: : :＿￣¨´　　　. : : :＿
＞　　　　　　　　　　　　　　　　 ーヤ　　　　　　　　 　 　 　 , - ､i　 ヾ乂＿　 〃//　 |　　　　　　￣　　　　: : : :',: :
　　　 ／　　　　　　　　　　　　　＜＿　　　　　　　　　　　　 i . .ナ　　　　　 　 彡　 　 '　　 . : : : .　　　　　. : : l :ノ:
-/ ／ /／　/　 ./|ヽ　　 .ﾄ　}　　　＜　　　　　　　　　 　 　 |　 . ./　　　　　　　　　 ,　　　　　　　}: .　　　 . : : :i:!/: :　　
/　/ ／/ﾘ /レ / .| ./ヽ　.! V ヽ　彡´　　　　　　　　　　　　 !　 : く　',　　　　　　　. :i r-､. . .r'` -'　　　　 . : : : :i: : :
　/　　//メ＿|/　 |/　 |　i　|　　　＼,ー――､　　　　　　　　{{､　　｀ ,: .　　　　　　　　　　　　　　　　　　. : : : : :l￣　　誰だっ、テメエはっ！
./ﾍ　/〃-┬-7　　二¨i从', |　　＿＼　　　　 `､　　　　　　　　{{､　: :', : .　　　　　　　　_　　-―――- ､: : : : : l＞､
. ',kV! "`¨　　　　　　 ’`　 ﾘ',ヽ ',　ir-､―‐,--､ !　　　　　　　　　{{ゝ-ヽ　　　 /　, -__´_ 　　　　　ー-- }i: : : : :l: : :
ﾌ ヽ !　　　　　　i.:　　　 "/ /　 ト'ril!｀’ .|　’´ il!'　　　　　　　＿／　　∧　　　　{_¨＿　　-―　　　　￣: : : :／l: : : :
／| ∧　　 　 　 　 　 　 /ノ !＼i .,ヽi　,,　　,,　 i7､　　　　　／／ 　 　 　∧　　ヽ　　　　＿＿　＿　 ｀: : : ／ : i : : : :
―从∧　ニ＝＝-　　 / ∧|＿__从∧/二ヾ /ミ　　 ,　＜//　　　　　　　 ',＼　 `　´　´　　 　 　 . : : :.／: : : :i: : : : :
//// .∧　　　　　　／从〃￣　//{　 `ー‐ '　　 ,＜//// |　　　　　　 . : : i　 ＞　　　　　　　　. : : ／: : : : : :i: : : : :
/ r': : : i: :ヽ　　　／// ∧　i　　 ＼ミ 、＿_rー‐'/////// |　　　　　. : : : : :ヽ　　: : :＞ . ＿＿_ ／: : : : : : : : : : : : :
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／;:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;_,,.;; ｌ
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 !;;;,ｲ'―'/''''{´　'＞,|
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 |i"r　　,!　　!　 .ヽ;,ﾞｔ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,/ﾞ|:|.'ﾆｯli＿ .ilii!ﾘ・｀!^lヽ 　 　 　 　 　 ,．､
　　　　　　　　　　　　　　　　　/lﾞ ﾞ.ﾞ　 .〃 |　.l＼　 .! .! .ｌ 　 　 　 　 / 　 !　　　できない夫の旦那よ、
　　　　　　　　　　　　　　　　 i".ヽ│." .|　.!　 !　./ .|ヾ　|　　　　　 .l　　｜　　　頭目だけは生かしておいてくれよ。
　　　　　　　　　　　　　　　　 !　　/'､ ヽ,!　.＿レlﾞ ,/:.ｌ　│　　　　 .l　　 .,!
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ゛　 .|,;:;:ﾞl､"'“ﾆ'"　 / |;:ｷ　　　　　　　!　　　!
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 !|li│ヽ.　　　/ ;:;:l .ｌiiiiii..､　　,,-､i.|　　　'l!ﾆ;; ..､
　　　　　　　　　　　　　　　　　,,..　-リ　 .ゝ-ｰ'　l,'"´.::::: : ;lｰ'ﾞ:;:/ / l　　　l'‐、'!>.ヽ,
　　　　　　　　　　　　　　　　　l;;:: : :_!　　　　　 : |.,,,r‐'''ﾞ￣::::;:./ / ...ｌ.　　.l　'ヽ .!..ｌ,..ｌ
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ,,...!'''ﾞ´;;.!　　　 ,i''''ﾞ´.::;:;:;;;;;;;;;;;;;:;;./ 　! .lﾞ ヽ　 !　　| .| .|::.l
　　　　　　　　 　 　 　 　 lﾐ丶;:;:;:;;;;;;广'''"´:l;;::;:;:;:;:;:;:;;;;;;;;;;;;;;'二./ .ｌ !、 ﾞ　l゛　./ / .|　!
　　　　　 　 　 　 　 　 ,／.::｀''､;:;;;;:;;;｝　　　ｌ;;:;:;:;;;;:;:;:;:;;;;;;;;;:;:;:;;:/;:|;:.ヽ.`＿__／ ./ 　/│
　　　　 　 　 　 　 ,,./ ":::::;:;:;:;:;:;ヽ;:;:;;l　　 .:,!;:;:;;;;;;;:;:;:;::.__,,..　-,,|;:. ｌ.;;:|＼,,,.. -'".,,／　/
　　　　　　　　 ／゛::::::::::;:;:;;;;;'ぃ;;;; ｌ;:;;｝　 . l.;:;:;;;;、;‐'ﾞ´::::::;:;:;._,!;.!;;;;;.ｌ　l.＼. / ./ ;:;,i７
　　　　　　　　 :i;;:::::::::::::;:;:;;;;;;/;......;; ｌ;│　,｢;;:;:;;;;;|;;;,,....-'''"´;;;;;;;;;ヽ;;;:.ﾞ‐｀''-..ﾉ.;:;:,,/′
　 　 　 　 　 　 l;;;:;::i;:;:::;:;:;;;;;/;;;;;;...;;;;;.ｌ l,../ ;:::;:;;;;;i!ﾞ;;;;;;;;;;:;:;;;;;;;;;;;;;;;;;`-､;::;:;:;:.,,y'"'″
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　|　　　　　__´＿ﾉ
　|　　　　　`ーｎｌ^l^l　　はいよ。
　 ヽ　　　　　 |　　 ﾉ
　　 ヽ　　　　ヽ　く
　　　/　　　　　ヽ　＼

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　　　　　　 ／　　 _ノ　　＼
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　　　　　　　ヽ　　　　　　　}
　　　　　　　　ヽ　　　　　ノ
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　/ ´: : : : : : :ﾍ: ﾍﾍ.　 //: /: : ￣ヽ
ノ: : : : : : : : : : ﾍ: ﾍﾍ//: /: : : ヽ: : ヽ
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│南町奉行所　 　 │
└───────┘

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 (二二二ﾆ/二二ﾆ/二｜二二ヽ二ヽ二ニニ)
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　//＿/__//＿/__//＿/_| |__ヽ＿ヽヽ＿ヽヽ＿ヽヽ
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　　　二二二ﾆ/二二ﾆ/二二二//＿/__//＿/__//＿/＿| |＿_ヽ＿ヽヽ＿_ヽヽ＿ヽヽヽ二二ヽ二二ヽ二二ヽ二二ヽ
　　 //＿/__//＿/__//＿/__///＿/＿//＿/__//＿/＿ | |＿_＿ヽ＿ヽヽ＿ヽヽ＿ヽヽヽヽ＿ヽヽ＿ヽヽ＿ヽヽ＿ヽヽ
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　　　　　　　　　　 ／￣＼
　　　　 　 　 　 　 |　　　　|
　　　　　　　　　　 ＼＿／
　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　／ ￣ ￣　＼
　　　　　　　 ／　 ::＼:::／:: 　＼
　　　　　　／ u.<●>::::::<●>　 ＼　　　いってえ、何がどうなってやがんだ？
　　　　　　|　　　　（__人__）　　 　　|　　新しく付き合うはずだった連中は消えて、
　　　　　　＼　　　 ｀ ⌒´　　　　／　　新しい金蔓はなくなるし、剛斗を突き出すこともできねえ。
　　　　　　 /,,―　-ー　　､　,　-‐ ､　　これじゃ、金も出世も手にはいらねえ。
　　　　　 （　　　,　-‐　'"　　　　　 ）
　　　　　　 `;ー"　`　ー-ー　-ー'
　　　　　　　l　　　　　　　　　　　l


　　　　　　　　　／￣＼
　　　　 　 　 　 |　　　　|
　　　　　　　　　＼＿／
　　　　　　　　　　　|
　　　　　　　／￣￣￣ ＼
　　　　　 ／　　 ::＼:::／::::＼
　　　　／　u <●>::::::<●>　＼
　　　　|　　　　　（__人__）　 　　|　　いや、なによりおかしいのは……
　　　　＼　　　　 ｀ ⌒´　　　／
　　　　　 ￣（⌒`::::　　⌒ヽ
　　　　　　　 ヽ:::: ~~⌒γ⌒）
　　　　　　　　 ヽー―'^ー-'
　　　　　　　　　 〉　　 　│

　　　　　　　　 ／￣＼
　　　　　　　　|　　　 　|
　　　　 　　 　 ＼＿／
　　　　　　　　　＿|＿__
　　　　　　　／　　　　　＼
　　　　　 ／　　::＼:::::::／::＼
　　　　／　 u <●>::::::<●> ＼
　　 　 |　　 　 　 （__人__）　　　| 　　　なんで、おめえがここにいるんだっ！
　 　 　 ＼　 　 　 ` ⌒ ´　　,／　　　 できない夫っ！
.　　　 　 /⌒～"￣,￣￣〆⌒,ﾆつ
　　　 　 |　　,＿_＿ﾞ＿__､rヾｲｿ⊃
　　　　　| 　 　 　 　 　 　｀l￣
.　　　 　 |　　　　　　　　　 |



　　　　 ／￣￣＼
　　　／　「　　 ヘ ＼
　 　 | 　（●）（●）　|
　 　 |　 　 　| 　　　│
　 　 |　　　__｀___　　.|
　 　 |　　　　　　　　.| 　　　今日から隠密廻りをまかせられたもんでね。
　　　ヽ　　 　 　 　 /
.　　　　ヽ 　 　 　 /
. 　 　 　 /　　 　く
　　　 　 |　　　 　 |
　　　 　 |　　 　 　|

┌─────────────────────────┐
│「隠密廻り」は定廻りと並ぶ「三廻り」の花形職である。　　　...│
└─────────────────────────┘

　　　　　　　　　 ／￣＼
　　　　　　　　　 | 　　　 |
　　　　　/≡)　　＼＿／　/ミ ヽ
　　.　／＿ノ　　＿__|＿__ ヽ＿　＼
　　／ ／　　 ／::＼::::::／::＼　 ＼ ＼　　（馬鹿なっ、こいつにそんな金がっ）
　 ( 　く　　.／< ＞>:::::<＜>u＼　 .>　）
　　＼　 ／ u　　（__人__).　　　 ＼'.／　　お、隠密廻りだと……っ
　　　 ヽ|　　　　　 ｀⌒´　　u　　　|/
　　　 　 ＼　　　　　　　 　 　 　／




　　　　　 ／￣￣＼
　　　　 /へ 　 　 　 ＼
.　　　 （（ ●）　　　　　|
　 　 　/　　　　　　　　|
.　　　 ヽ_＿_　　 　 　 |　　　ええ、そうです。
.　　　　 |ー'´　　　 　 |　　　今日からよろしくお願いしますよ。
.　　　　 ヽ　　　　　　/　　　定廻りの尾風名さん。
　　　　　 ヽ　　　　 /
　　　　　　.>　　　 <
　　　　　　|　　　　 |
　　　　 　 |　　　　 |

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空が青々と澄み渡り、陽が半ばほどあがった昼下がりの時刻。
白い雪がぱらぱらと空から降り落ちてきた。
あと三日もすれば北町奉行と交代だ。
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ﾟ　　　。　　　　　゜　　ﾟ　　　。　　　　　　　　゜　ﾟ　　　。　　　　　　　　゜
　　　　　　　　　゜　　｡　　　。　　　　　　　゜　　　　゜　　　　　ﾟ　゜　　｡　　　。
　゜　　｡　　　。　　　　　　　゜
ﾟ　　　。　　　　　゜　゜　　｡　　　。　　　　　　　゜　　ﾟ　　　。　　　　　　　　゜　ﾟ　　　。
　　　　　　　　゜　　｡　　　。　　　　　　　゜　　゜　　｡
　　。　　　　　　　゜　　　　゜　　　　　ﾟ　゜　　｡　　　。
　゜　　　｡　　　。　　　゜　　｡　　　。　　　　　　　゜　　　　　゜
　　　　ﾍ　l ﾉ　r　　ゝＹイｿ。　　　　　　　゜　　ﾟ　　　。
　　 ゜　゜ヽＹソ　　　ヾｖﾉ／　゜　　｡　　　。　　　　　　　゜
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..:.:. .　｡　　　。　　　　　　　゜　　　　゜　　　　ﾟ　゜　　｡｀ﾞ''ｰ-、　　　。　`'‐.､,,

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師走も終わりに近づいていた。
全部のツケを払い終えた後、
できない夫は何を送れば相手が喜ぶのかをじっくりと考え始めた。
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　 ヽ　　　　　 |　　 ﾉ
　　 ヽ　　　　ヽ　く
　　　/　　　　　ヽ　＼