http://tonarinoaa.blog136.fc2.com///blog-entry-1836.html

【マリと】嘘つきアーニャの真っ赤な真実【三人の友達】「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」 3

2012年10月14日

1 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/10(水) 00:37:32 ID:8Tcw.iHA0

このスレは米原万里さんの著作「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」を原作としたやる夫スレです。

　　　　　　　　　　　　＼　　　　ヽ　V/　/ /
　　　　　　＿＿ , ．イ　　　　　　　V }　　イﾆミー- ﾉ
　　　　　　￣¨ー .,　　　　　／ヽ　　　／　ヽ　r-イ
　　　　　　　／　　　　　./:::...:.＞＝<_＿:.:ハ＼
　　　　　　 .／　　　　　 i / ＜´　　　　　　＞::>　＞..._
､＿＿ , ィ　　　／　　ﾊ !　　,, -　　　　　　　ハ从＜
　￣￣＝ ≠　 { i　　 /八! ／　　　　　　　　　　 }/　ヾﾐ;､
　　　　　　　 /　　　!i!　 //　 ,'　　　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　 ,'　　　ﾊ　川　/　,　　　　　/ 　　　　　　　ハ
　　　　　　/　　　　 ∧ |　 ,　　,' 　　　,ｨ　　　　,'　　 i　　　 .
　　　　／　_ 　　　　　}!　i　　,'　　　,／ ,'　　　/ /i 　 /| 　　 |
　　／　イ7　　　　　 |　 |　 ,'　´／　 /　　／／彡ミ　i 　　 i
　　　￣　 i　　 i!　从　 | .i l　,∠三ミ　／　　　!:{;;}::｝ .! 　　 !
　　　　　 |　 / .|. 　 ∧　| | l. /｛::{;;;}:::｝　　　弋::タ　ﾅ　　　|
　　　　人八 {､　 ,' ∧ >　! 　ヾ三ノ　　　　　　　〃/ 　　　ﾉ
　　　／　| {_ ノ!　　 |::|{ ＼!　〃〃　　　　　′ 　　ｲ　　／
　　　　　　 Vーイ{ 　　|::|　ト､> 　　　　　　　　　__　イ　／
　　　　　　　　 ,/　　　.|::|　|::|::|　　　　　　 (　　ノ／!／
　　　　　　　 /　／Yﾟ|::|　|::|::| 　　　　＿＿￣_／r ､
　　　　　　 ,/..／　ﾄ.|::| _川 |─‐､,,　　/ 　　　＼＼
　　　　　　 'ー"　　　ﾉ/!_| ;;;; |_| ;;;;;;;;;;＞,,,'､　　　　　　＼＼
　　　　　　　　　　　　 /;;;;;;;;;;;....::::::::::::.....;;;;;;＼　　　 (ヽr－'"´ヽ、
　　　　　　　　　　　　/;;;;;;;;;;;;;;;;;;.:.:.:.:.:.::;;;;;;;;;;;;;;;;＼　　｀､j f'" ∠ ヽ
　　　__,,.. ．-‐　'''""~　　;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;／´￣"￢、　ヾＬi´ rｭ　ヽ
　　　;;;　 ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;／／;;;;;;;;;'ヘヾ＼　ヽＬ ⊃　　',
　　;;;;;;;;＼＼;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;／／;;;;;;;;;／　＿__ヽﾄ、　｀ユ__　　｝
　　ﾍ;;;;;;;;;;＼＼;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;／／;;;;;;;;;／∠´　　　　　ヽ　「;;;;;;;;;;;;;;;;;ゝ
　　　iヽ;;;;;;;;;;;＼＼;;;;;;;;;;;;;;;;;／／;;;;;;;;;;／　/　　　　　　　ﾍ__「＝＝==/

前スレ：http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12973/1346594874

まとめていただいたサイト

隣のAA　様

http://tonarinoaa.blog136.fc2.com/

19 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:01:31 ID:TnLt0E5c0

┌───────────────────────────────────────┐
│日本のマスコミが伝える海外に関するニュースの圧倒的多数はアメリカに関するもので、　　　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│次のその他大国、近隣アジア諸国と続き、よほどのことがない限り、　　　　　　　　　　　　　　　...│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│ルーマニアに関するニュースなど流れはしない。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
└───────────────────────────────────────┘

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿__
|　　　　　　　　　_,.. .　-..≦三-‐乍_"^~￣￣~ フ　　　　ｪ =ｭ　　　'' -ｰ'_　　　　≧ ､_　　　　＿__　　　　　|
|,　　ィｰ‐--　--三ニィヨスﾅﾆヽ､　｀ｮ　 _, ..イ, _　　　　 ,_ -― ､_, _ ﾆ､-( ｨ'"￣　　￣"'''''ー'"ﾞー--t---.|
|"'' ｱ..,_, -､..,_　　　　　　γ''" iゝミ、　ﾞ'-'"　　ﾞ'''"　,_　 (ﾆｨｱ = :　,　　,　　　　　　　　　　　　　 _......ｨ-ｧ--''.|
| '　''"~　　　ヾ､,　　　　　ﾞ"ゝ!　　ﾞヽ　　　　　　　㍉ｧｨ'"''ﾞﾞ~-' 　　 _　　　　　　　　''"　　　　ﾞﾌ!　ノﾞ ''ー|
|　　　　　　　　 !　　　　　　　　,ｨ''ﾞ"~　　　　.　　 ┌'ﾞ,-ヾ､　ｨニ> .(〈　　　　　　　　 _,、,.イfィ'"　　　 |
|　　　　　　　　ﾞヽ　　　 _,__ ,イ　　　　　　　　　. γ"ﾞ"~!､_,=ﾆｺ　　_　　　　　　　　　　　!ﾞャｨ'"　　　　　 |
|　　　..,　　　　　　ヾ、 iﾞ ._ 」_,　　　　　　　　　 /"　　　　　　ヾ、ヾｰ--、　　,_　　 _, ..ｲ　'ﾞ　　　　　　 |
| 　　　 '　　　　　　　ﾞｰ- L,　 _,"'　　　　　　 :　!　　　　　　　　ゝ, -'"　　.! .i'" .ヾ._　!　 ik　　　　　　 |
|　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ┐　ﾞ"ヽ、　　　　　ﾞゝ- - ､　　　　　　/　　　ﾞ'　　ゝ"　ｲヾ!　　　　　　　 |
|　　　　　　　　　　　　　　 '　l"　　　　'ﾞｰ-､　　　　　　〈　　 ,　γﾞ　　　　　　　　ヾｰﾆ'.K ;:ｰ -､ ; .,　　　 |
|　,.　　　　　　　　　　　　　　ﾍ,　　　　　 ,ｲ　　　　　　　 !　　　　l ; ｨ　　　　　　　　　￣"'.__ｨ┐!､"　　　　 |
|　　　　 '　　　　　　　　　　　　ﾞ!　　　 _ノ　　　　　　.!　　　i" i_/ .　　　　　　　　　γ'"　　　ヽ　 ;　　|
|　　　　　　　　　 '　　　　　　!　　丿　　　　　　　　　ヽ　_ノ　　　　　　　　　　　　　! __.....、　　ﾉ　　　 |
|　　　　　　　　　　　　　　　　　 !　,ィ　　　　　　　　　　　　 ~　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞーｲ　　　ﾉ7|
|　　　　　　　　　　　　　　　　　l ｿ .,_　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 "'　|
|　　　　　　　　　　　　　　　　　 "''　 .　 .　'　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
|　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,ィ'''"　　　　　　　　＿＿＿___,..､,...-ｰ‐--ｧ_,..-―ー‐-ー─ｰ─- ､....,＿　 |
|　　 _,..　 -ｰ─'ｰ-─''''''"ﾞ~"''" -''"　,...､　.,, -‐'''"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｨﾆ"　|
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣~

20 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:02:08 ID:TnLt0E5c0

┌──────────────────────────────────────────┐
│ましてや、ルーマニアにおける人々の実際の暮らしぶりなどについては想像するしかなかった。　　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　....│
│だから、ルーマニアに留学していた人々や仕事で赴任していた人々に出逢うと、　　　　　　　　　　　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　....│
│つい根掘り葉掘り聞きだしていしまう。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
└──────────────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　＿　　_,
　　　　　　　＿__,＞Ｙ´'ー-､
　　　　　　＿>ｚ二_　＿__`ー≧＿_
　　　　　　＞┴'´￣｀ ‐-､￣７＜
　　　　／　　　　　　　ヽ｀Ｙ′之' ⌒ ヽ
.　　　 /　 ,　　l、　、 ,　､ |　ヽ　}<つ　イ
　　　ｌ ,ｨ {７Tハ　T寸寸 |　　}ノ　|て＿!,　　それでそれで？
　　　 |ハ |（●）　（●）　/ / ,/ﾚ′'　　 /
　　　　　 `|.xx　ヽ　xxx 「)'/|/／　　／　 i
　　　　　　ヽ､_ 　― 　_,.ィT/　　　／　　　l
　　　　　　, ＜￣ヾヲ´　￣　＜´　丶　ﾉﾉ
　　　　.／ -ヽ |　｀　 (￣｀ヽl￣　　)ノノ
　　　　{　／⌒i　,r―て__ ィﾉ　　 ,彡
　　　ヽi__i　ﾉ)/　　　＼　ヾ￣
　　　　　　　￣ /　　　　　ヽ　ヽ

21 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:03:00 ID:TnLt0E5c0

┌───────────────────────────────────────────────┐
│一九六九年に父がルーマニアを訪れてアーニャの自宅に招かれた際に、父の通訳を務めてくれたO氏にも、　　　.│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│直接お逢いする機会があった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│父の通訳を務めてくれた時は、ルーマニアの大学に留学中で、その後帰国していたのである。　　　　　　　　　　　...│
└───────────────────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　ヽ !| !　,- -、 / !,' /
　　　　　　　　　　　　　ヽ`ヽ.l:`;';;| / ,'／
　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ (::___:;;)　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　,'　　　　　',.
　　　　　　　　　　　　　　　　ﾌヽヽ /　／l
　　　　　　　　　　　　　　　 ,' ヾゝ　　　ｨﾌ ',
　　　　　　　　　　　　　　　 | _ 　　' l 　　 __L＿
　　　　　　　　　　　　　' ´ﾆt-_　　‥ 　, _メ､_
　　　　　　　　　　　　　'´　　 _ｨl ｰ┴-'ヽ''i `i- ,,_
　　　　　　　　　　　　　　　 ,:;':' |　|''_　-',/.　 ',　　`'''ｰ--;;､
　　　　　　　　　　　　　　／,'　/,　|ﾞ　 ,:;''-､,.-´　　 .／ ´　｀:､
　　　　　　　　　　　　 _,.:!ヽ!ヽ,! lヽ!／./　　`-,　　/　　　　　 i
　　　　　　　　　　　／ _,iﾞ-, l-:､_i"|　/　　 ,.:'　　i　　　　　 |
　　　　　　　　　　 i ./.| (ヽ Ti　|:i _| ,'　　 ,:' 　　 | 　　　　 |
　　　　　　　　　 |.,'　| .|´'i'ﾞ`,‐／ ,'　　./　　　､i　　　　　　 |
　　　　　　　　 |.|　.| | `､!'／　 .i　　/　　　　　| 　　　　 |
.　　　　　　　　　 | !　.| |　 |O　　 |　 ,'　　　　　　|　　　　　　 i
　　　　　　　　　　| |.　 l !　.|　　　 |　,'　　　　　 ',　　　　　　|
.　　　　　　　　 | | 　 i.|　.|O　　 | ,'　　　　　　　 .i　　　　 |

22 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:03:29 ID:TnLt0E5c0

┌───────────────────────────────┐
│O氏の口から、アーニャ一家の暮らしぶりが、　　　　　　　　　　　　　　　　　...│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　....│
│普通のルーマニア人とはかけ離れた贅沢なものであることを知った。　　......│
└───────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ー--≧ 　 V　ﾚ´{
　',　　丶、　　　　　　 /　　ｌ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,フ'　　　　　　　　　__｀ヽ.
　　、　、　丶　　＿＿＿∠＿/　ｌ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _ 　-‐≦＝=､､_, -､　　　＼｀ヽ
　　 '.,　ヽ　ヽ.｜::::::::::::::::::::::｜ﾉ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　､__-'´　　　　　｀丶. ｀ヽ.､ }　　　｀フ
　　　、　丶　l ｜::::::::::::::::::::::｜'　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　,ｲ　.／{　　　Y　｀| |　　　｀ヽ
　　　　＼　ﾉて::::::::::::::::::::::::::::ト、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　フ　 /ﾝ／　 !　 ,i 　 l　　}人{ヽ.　＼ヾ
　　　　　＼,　丶、::::::::::::::::::::::::ノ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣乂─ 　　─-| 　/　ﾘ:|　　ﾉ　ヽ._
　　　　　〉　　　￣￣￣￣ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i　（○）.　(○ ） l:i:.:ﾄl.ｨ.|:|　　　{´￣
　　　　／/￣　　ヽ、　　　 ,´￣Tヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　! |　　 ,　　　 l:.l:.:ﾚ1:ﾚ'/　,ｲ人
　　　　l　　〈￣ヽ、　　 , ┐|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　l､　＿　　 l:.lil{ﾐｨ|:|´　/ﾉ'
　　　　　ﾃ　　　ゞ-‐'｀　　　〈_ツ i　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾚ　＼　　　, イ|;.|;;|lY.L!从
　　　　 ≧　　　　　　　　　　　　〉　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀i゛　 , /L!L!ゝ
　　　　　 /＼　＿- ‐　　人　二ﾃヽ　∩_　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l　 /i/-‐‐丶
　　　　　　　/＞-----''´"｀'''--ﾂ　　（つ）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,,,r'" 7i/: : : : i
　　　　　 /::::::::::::::::::l＞＜l:::::::::ヽ_／＼フ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｒ'": : : :〆: : : : : :i:
.　　　　　 /:::::::::::::::::::::::::∨::::::::::::::::::::::::::::ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::ヾ==v-─ ､: r─=-､〉
　　　　　/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/　　　　　　　　　　　　　　　　 /:::::::::＼.:.:.:7　 /／　　 :l

23 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:04:07 ID:TnLt0E5c0

┌─────────────┐
│O氏はさらに言い添えた。　　　 │
└─────────────┘

　　　　　　　　＞－ ' ´￣＞‐|:::::::::::::::::::::::::::ｲ　　ﾉ　／
　　　　＞ ' ´　　　 ,,,xxｚ/::::::::ﾄ:::::::::::::::::::::::/::∨;,/／
　　　／　　　　　／;;:'´,'´l::::::::::>弋:::::::::::::::/::::::::::i　〉
　 , '　　　　 , ' ／　,'　ﾞｘ:::::::::ゝﾆ二ﾆソ::::;;::::ﾉ./
／　　　　 ,,,／ , '　　 ,　　　＼_::::::::::::::I´∨〈｀ｖ'ヽ　　　　　ソ連と袂を分かったことで、
　　 ,,,.-‐´　,　'　　＿｛_　　　　'''''====ゝ丶ﾍ＼ｌ
_,,,, - ‐　' ´　　 , ' 　,ｲ｀ヽ、　　　　　　ヽ　ヾｌ、_!　　　　　ルーマニアの独立路線が
　　　　　　　　　　　ｼ　ﾄ-、　　　　　　 ,- ＼　＼゛、
　　　　　　　　　　 ,'　　ゞ_〉、　　　 /〉、｀"ー　Y　　　もてはやされているけれど、
　　　　　　　　　　ｨ'　　　　　｀';. 　　 'ﾜ"、￣｀　 " l
　　　　　　　　　＿ゝ　　　　　　..　　 / ｲ;ﾄ<-　　　 l　　　国内ではかなり国粋主義的排外主義的
　　　　　　　　　　＿゛ﾆ_‐-　　 "゛　｀´　　ｌ｀　　　_}
　　　　　　　　　＞'´::"ﾞｯ、　ヾ__ノ'　=＝キ{、　　 _L、　　締め付けが進んでいるんですよ。
　　　　　　　／:::::::::::/::::| ﾃx,,ノゝ- ,,,,,='´:::::∧__　　ｿﾄ
　　　　,　- ' 　: : : :::/::::::| l 一｀ｻ゛´ー〉::::::::／ｋ_／／::::＼
, - '　´　　. . : : :::::::::l:::::::::l　｀―'´! l＞-' 〉:::::ゝー...'..´::::::::::::::
ヽ　　. . : : : : ::::::::::::::l:::::::::::l　,' 　 /／　 /::::::::::ヽ:::::::::::::::::::::::::
.｜::::::::::::::::::::::::::::::::::::、::::::::∨ ,l_/ ﾚ-‐./:::::::::::::::::＼::::::::::::::::::
　〉:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ:::::::::∨_l 〈　７/:::::::::::::::::::::::::＼:::::::::::::
./:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/:::::::::::〉 l　〉 /::::::::::::::::::::::::::::::::::＼::::::

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　!　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　ヽー､　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　 |::::::::ヽ　!　　　　　,
　　　　　　　　　　　　　　　｀ヽ､::::| '　　　　　ﾉ!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　/::,′
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ/
＿＿＿＿＿　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ､　　　普通の市民の外国人との結婚はおろか、
　　　　　　　　￣｀ `''ー-- ..､　　　　　ﾉ　　l
　　　　　　　　　　　＿＿　　　　　　　　　　　 |　　　恋愛なんて考えられません。
-── ''"´￣￣￣　　　　｀　　　　　　　　ヽ　　|
　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　 l__,ノ　　　御法度です。
　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　　, ' ﾉ､
＿＿　　　　　　　　　　　　　＼　　　　／ /　＼
　　　　￣｀ヽ　　　　　　　　　　　｀"￣ 'ヽｰ' ＼　＼
ー───､　　''､　　　　　　　　　　／　　　＼　＼
:::::::::::::::::::::::::ヽ　　＼　　　　　　　,. '′　　　　ヽ.　　＼

25 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:04:40 ID:TnLt0E5c0

　　　　　　　　　　　　　ヽ. | !.|　　　　 ,' ! ,'/
　　　　　　　　　　　　　　ヽ !| !　,- -、 / !,' /
　　　　　　　　　　　　　　　ヽ`ヽ.l:`;';;| / ,'／
　　　　　　　　　　　　　　　／ヽ (::___:;;)　/
　　　　　　　　　　　　　 /.._　,'　　　　　',. _　　　　　　　　　　　　だいたい、そう簡単に外国に出られないし、
　　　　　　　　　　　　 /　　| ﾌヽヽ /　／lﾉ :＼
　　　　　　　＿_＿,／;:;.　 |,' ヾゝ　　　ｨﾌ ',;:;:;:;:;＼　　　　　　　　　外国人と接する機会も極端に制限されている。
　　　　　　/´;:;:;:;:＜,;:;:;:;.　 | _ 　　' l 　　 __L＿:;:;:;:.＼
　　　 _,.‐'.ゝ、;:;:;:;:;:;:;￣ ' ´ﾆt-_　　‥ 　, _メ､_‐´￣;:;:;ﾉヽ、
‐‐'"´;:;:;:;:;:、;:＼;:;:;:;:;:;:;:;'´　　 _ｨl ｰ┴-'ヽ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;/;:;:;:, ヘ,　　　米原さんのお友達が外国に留学できて、
;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:.＼;:;:｀;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;/ 　 }　　　ﾄ、;:;:;:;:;:;:;:/j_／;:;:;:;:;:;l
;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:.＿￣ヽ;:;:;:;:;:;:;:;:;／　ﾉ　　　 │;:;:;:;:;:;:,イ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:|　　しかも留学先の国の人と結婚できるなんて、
‐‐'´￣￣´　　￣｀tｰ､ ∠´　　　　　　　　{;:;:;:;:;:;:.ｿ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ノ
　　　　　　r､　　 ,ｲ_;:;:｀ｰ｀ｰ､／}　　┌‐'´;:;:;:;:./;:;:;:;:;:;:;:;:;:/　　　　特権中の特権ですよ。
　　 r‐'「ヽ」／￣　∨｀ー､__/ 　'-､＿」ヽ、;:;:;:./;:;:;:;:;:;:;:;:;/
　　r┴-ヒ´_r‐　　ｉ|;:;:;:;:;:;:;:;:｀ﾞ'''''''''''ー‐-､ヽ_/;:;:;:;:;:;:;:;:/
　　￣''''ｰ-＿-‐'''ｉﾚ ';:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:｀;:;:;:;:;:;:;:;:;:./
　　　　　　　　　　ー┬┬‐‐--､.__＿;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ノ

　　　　　　　　 ,-、　　　　　　　　　　　 _
　　　　　　　　 | r、、　　　　　　　　　／ l
　　　　　　　　 l ｌ::::.、、　　　　　／.:: /
　　　　　　　　 | l::::::::、 }r -‐-、／ .::: /
　　　　　　　　ヾ、:::i /lト ---'|/ .:::::./
　　　　　　　　　　', V/::」＝=＝l ::: ／
　　　　　　　　　　 >　ゝ‐----' '<
　　　　　　　　　 /　　　　　　　、
　　　　　　　　　,'　　ノ　　　＼_ ;　　　　父親が、チャウシェスク政権の幹部だから、
　　　　　　　　 ≧　　　●　　　 ●≦
　　　　　　　　　＼⊂⊃（__人._）⊂ﾉ　　　　許されたことでしょう。
　　　　　　　　　　＞　　＿＿　l⌒ヽ
　　　　　　　　　/:::::::::::::::::l＞＜l ::ｉ　ｉ
　　　　　　　　　|:::::::::::::::::::＼／:::::::l　　|

26 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:05:19 ID:TnLt0E5c0

┌────────────────────────────┐
│父親の赴任にともなって五年間もブカレストに住み、　　　　　　　　.....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│現地の学校に通っていた少女に直接話を聞く機会もあった。　　　　.│
└────────────────────────────┘

　 |:.:.:.:.:.:.:.:.:/.:.:.:.:.:./.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./| 　 '. :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l.ヽ:.:.:.:.ｌ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:∧＼:.:.:.',
　 |:.:.:.:.:.:.:./.:.:.:.:.:./.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: , ′　　ｌ :.:.:.:.:.:.:.:.:.:|　∨.:.:.ｌ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∧　＼:.'.
　 |:.:.:.:.:.:/.:.:.:.:.: /.:.:.:.:.:.:.:.:. ヽ／　/　　 |:.:.:.:.:.:.:./:.:.| 　 y'.:.:|:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.∧　　ﾍ.
　 |:.:.:.:./.:.:.:.／/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／＼,′　　 !:.:.:.:.:.:/|:.:./,／　'.:.:| :.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:.|
　 |:.:.:/.:.:.／.:./.:.:.:.:.:.:.:.:.／　　 /｀ ‐-‐'｜:.:.:./　|ｧ'´　　 |:.:| :.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:.|
　 |:.:.i.:.:./.:.:.: '.:.:.:.:.:.:.:／　　　,/ 　　　 |:.:.:/ 　 ′　　　 }.:.| :.:.:.|:.:.:.| :.:.:.:|
　 |:.:.|:./.: ｒﾍ|:.:.:.:.:.:/:.|　三三三三三　 |:./　　三三三ハ|:.:.:.:.|:.:.:.| :.:.:.:|
　 |:.:.l〃.:{　 |:.:.:.:./.:.:.|　　　　　　　 l.'　　　　　．i.:.:.i.:.:.:∧ :.:|ヽ :.:|　　学校のホールには、チェウシェスクの胸像があってね、
　 |:.:./.:.:.:.＼|:.:.:/.:.:.:.:|　　　　　　　　　　　 ' 　　　 |:.:.||:.:/　 :.:.|　'.:.:l
　 |:./.:.:.:.:.:.:. !:./.:.:.:.:.:.'、　　　　　　　　　　 ,.ｰ--､　　 }.:.:|ﾚ′　∨　Ｖ　　どの居室にも正面にチャウシェスクと
　 |/.:.:.:.:.:.:.:.:V　'´ ￣｀ヽ.､　　　　　　 ´｀¨¨{. |_.　 '.:.:.:.|
　/.:.:.:.:.:.:.:.／　　　　ﾍ｀　　　　. ＿＿.　-r１ |:.:.:.:.:.:.:.:.|　　　　　　　　　その奥さんの写真が飾ってあるの。
　:.:.:.:.:.:.:, '　　　　　　　　　'. ＼　　　　| _.　　 -┴ー──┴┐
　:.:.:.:.:./　　　　　　　　　　 |　　＼　ｒ' | 　 -──────i'　　　　　　　　その側を通るときは、敬礼させられて。

　　　　　　_,_,;_‐: :'':'':￢:‐.-. .,,_　 _,,,r.､. . . . .,,_
　　　　　　　　￣,.¨ﾆ=-: : : : : :｀`/: : : : : : : : : :｀:`:丶. 、
　　　　　　　　／,. ‐ '':":´: : : : : :.:l::: : : : : :: : : : : : : : :ﾊ: :＼
　　　　　 ,:'ﾞ'"　　 ,.　　　　 /.::;:!:::. : : : :.::. : : i;. : : : :Ｊ､: : :.ヽ
　　　　　／　　. . ／: : : : : : /:::/ !:::|: : : : i:::ﾊ: : i::. : :　　ヽ: : : ﾞ:,
　　　 /. . : :,,: イ: : : : : : : : :i:::/　!::::!: : : :.l::l. i: : i:::. : : : :i, ﾞ; : : : i
　　 /: ; -'"　/: :/: : : : : /:.;!:::i　 l:::::{: : : :.|:l　 i: :.i::::. : : : i: :i: : : :|
　　/／　　　/: ;.l: : : : : :/､/!::l 　 l::::!i: : : :.!l 　 i: :ﾄ;::::. : : :i: :i: : : !
　 '"　　　　 ; :/ !: : : : : l: :l｀ト!､,,_,,i::| ∨; ､| _,,. ⊥j‐<": : :.!: :i: : :!　　うっかりし忘れると、叱られたり、減点されるの。
　　　　　 !:.!　!: : : : : !:≧土ｭ,,__ !|　∨.:.｢＿,,,｣:L-v: : :.|: :j: : !
　　　　　 !:l　 !: : : : :i:!:lヤ[ﾞﾞ天ﾞﾄヾ　Ｖ:.| 行ﾞ天ﾞ丁ﾔ: : j: :.|: :i　　　バッカみたい。まるでカルト。
　　　　　 l:l　 ∨: : :.i::!ﾊ　r' ｰｲ| 　　ヾ|　r' ｰｲ ! j:};. :.l:|; j）:l
　　　　　　 l:!　　V: : :!:i:{::i　''"￣　　　　　　￣lﾞlT・l:i::i: :!:j,}:!: l　　　ああいうの、個人崇拝っていうんだよね。
　　　　　　　{|　　 ∨.;!::::::::!、　　　　　　　　　　　　 ,':':::V:.i:{:ﾘ: |
　　　　　　　　　　　V l:::::::::::`丶.､,,_　∠ヽ　　_,,...イ':: : : /:::!.: :.|
　　　　　　　　　 l.:.::::::::::::i:::::::::::/丁´￣,ﾚヾ:l: : : /:::ヾ!: :.|

27 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:05:49 ID:TnLt0E5c0

┌───────────────────────────────┐
│商社マンとして長期滞在していた人たちからは、こんな話も耳にした。　　.....│
└───────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　／:.:./ﾚ 7／{:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼_
　　　　　　　　　　 /:.:.:.:./ 　〃/:.:.:.:.:.:.:.:..|:.:.∨~＾＾´＼-:.:.:.:.∑
　　　　　　　　___, ノイ:.:.:/イ／V:.:./:.:.:|:.:.:.:|ﾊ:.:| 　　　 V≠=寸　　　チャウシェスクは妻だけではなく
　　　　　　　　　 /:.:.:.:.:./:.:.:.:.|:./lV:.::|､:.:.:|　ｌ:|　＿___　 W::::/
　　　　　　　　　　/::ｨ:.:.:.:.l:.:.:孑|::|廾|:代､:.::| '~|´_-　　｀　|::::|　　　　ドラ息子までもを国の幹部に取り立てているが、
　　　　　　　　／´ /:.:.:.:.|:.:.:.|! |/_ 二ﾍ! ヽ::| ´ｲ升ﾃ=､ z. |::/‐､
　　　　　　　　　　　|ﾊ::|:.:|/l::| 〃{ﾋっ┘　　　 `＾─'′ 　.|'f;＾:. !　　　その息子は病的な外車マニアで、
　　　　　　　　　　　l　!:N:|ｲ¨|　　　　　　|　　　　　　 l:::ﾉｊ:/
　　　　　　　　　　｀| l{{<∧　　　　　　{　､　　　　　　 |＾;:./　　　　女漁りに明け暮れている。
　　　　　　　　　　　　　＼ {:〉'´ ＼　　　＿＿＿､　　ｊ_／
　　　　　　　　　　　　　　 _／　 {:..　弋云￣　二ノ　　/!
　　　　　　　　　　　　／´｀ー-くﾞマゝく_∨￣_￣　　,.'::ト､_　　　　　何度も酒飲み運転でひき逃げ事故を起こしているんだ。
　　　　　　　　　　　 /　　　ー-､／X｀ｰ/　　　　　／/::|::::::::ヽ
　　　　　　　　　　 /´　　ヽ _　くジ′∨｀ーzァ7ﾌ／　::|!:::::　:::',　　　もちろん、もみ消されているが
　　　　　　　　　./　　_､_　　＼　〉　ﾑ:..　　　　　　　.{!::: 　　.:'､
　　　　　　　　　/　　 __犬_ 　 } / }＼__〉　　　　　/　　V　　　'､
　　　　　　　_/　　　　〈＿__ノノ /|:.:　　　　　　　/　　　|　　/!.　＼_
　　,,.､ -‐ ''"´/　　　　　:.:.:}:.:.:..／!.:|::.:　　　　　　,′　　/　 /:::|::..　ヽ｀丶､
´　　　　　　ノ　　　　..:.:ノｰ彳 :.:ト:|::.:. 　　　〈／￣/　 /::::::|:::::...　＼　｀丶､

28 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:06:43 ID:TnLt0E5c0

┌───────────────────────────────────┐
│浮かび上がっているルーマニアという国は、決して幸せな国ではなかった。　　　　　....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│アーニャ自身は、どうやら例外的特権的に幸せな人生を歩んでいるらしいが、　　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│そこに矛盾を感じていないのだろうか。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
└───────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　　─……─
　　　　　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.､:.:.:.:＼
　　　　　　,　---/:.:.∠二二二二二＼:.:.:.:.ヽ─┐
　　　　　　{＿_ /:.:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ:.:.:.:.:.､__l
　　　　　./　　/:.:.:.':.:.:.:.:.:.:.{:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:i ＼
　　　　　ヽ.／i:.:.:.l:.:.:.:{:＼:从:.:.:.:.:ﾑ斗匕:.ｉ:.:.:.:.:|　./
　　　　　廴l:.:.:.{:.:.:ハ:./`}ﾊ:.:.:.:| ヾ:ハ}/!:.:.:.: ﾄy′
　　　　　 ./ l:.:.:ﾊ:.:l 芹心、＼:l イ芯Y |:.:.:.:.:|
　　　　　 / /|:.:.:.:.:.:|　Vツ　　　　 Vツ　,|:.:.:.:.:|
　　　　 ./ /从:.:.:.:.:ﾑ""　　　 ′　　"" ﾊ:.:.:.: !
　　　　 / / /:.:ﾟ，:.:.:.込、　 r ─┐　 .ｲ:.l:.:.:.:.:|
　　　 ./ / /:.:.:ハ:.:.:.:.{:.:ｉ＼　ゝ　ノ .イ{:.l:.:!:.:.:.: !
　　　 { ｲ./:.:ィi〔:i:|:.:.:.:|:i:厂 ≧==≦⌒Y:i:i|:.:.:.:.:ト．
　　　 ./:./i:i:i:i:i:i|:.:.:.:|i:i}　　-{__}-　　 }:i:i:|:.:.:.:.:|i:i:ハ
　　　 /:./i:i:i:i:i:i: |:.:.:≦三三≧ ｢＼_ノ:i:i |:.:.:.:.:|i:i:i:i:i}
　　　 ,:.ｲ:i: /´￣￣}l|｀¨¨¨¨¨´!d 　〉i:i:i:i:|:.:.:.:.:|i:i:i:i:i|
　　 ./:i:i:i:iｲ　　_二ﾉl|　　　　　|　} ｲ:i:i:i:i:i:|:.:.:.:.:|i:i:i:i:ﾊ
　　厶斗:i:{　　ｰｲ:.:.:.ゝ _＿__ノ ./i:i:i:i:i:ｉｲi:|:.:.:.:.:|i:i:i:i:i:i}
　./:i:i:i:i:i:i:i≧=彡}:.:.:. |i:i:＼:i:i:∨:i:i:i／:i:i:ｉ:|:.:.:.:.:|i:i:i:i:iハ

29 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:07:22 ID:TnLt0E5c0

┌───────────────────────────────┐
│私の知る少女時代のアーニャは、自分の父親と、　　　　　　　　　　　　　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　....│
│父親の属するルーマニア現政権に心から信服していた様子だったし、　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　....│
│周囲にもそれをウンザリするほど執拗に説いた。　　　　　　　　　　　　　　　..│
└───────────────────────────────┘

　　　　　　　　 .／:.:./　二二二二＼:.:.:.:.:.:.:.ヽ
　　　　　　　 /:.:.:.:/／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ:.:.:.「￣＼
　　　　　／.才7:.:.:.:.:.l{:.:.:.:.:.:.:.､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ﾟ，＼/{
　　　　　　〈　/　.':.:.:.､:.:.爪:.:.:.:{:.:.:.＼:.:.:.:.:.:.:.:i　 /ハ
　　　　　　　K_　《:.:.:.:.:Χ ! ヽ:.:.｀ﾄ､:.:.:.X:.:.:.:.:.| くヽ　i
　　　　　　 .:i　|∨:.:.:.:ハ{ ＼　＼{　イ==ミ :.:.l　〉:Ⅵ
　　　　　　 i:l　| |､:.:.:.{.芹心　　　　ｲ斥ｶ |:.:.|)V:.:.|:.|
　　　　　　 |:ト:| lﾊ:.: 从込ﾂ　　、　　ゞ=’ |:.:.|:.:.:.:.:|:.|
　　　　　　 |:| =ミ:.:ヽ∧　　　r‐一ヘ　　 ,|:.:从:.:.:.l:ﾘ
　　　　　 У　/｀ヽ:.:.:ゝ. 　 |　　　 } 　ｲ/:./:.:.:.:.://
　　　　　　 }　　　　ハ:.:.:〕トゝ -- .イ:.:l:.:/:.:.:.:.:/ ′
　　　　　＿|__　　　し':.:.「i≧==r===彡':/:.:./ｌ:/
　　　 ./::::::::::::〕ト．ノTT:|.|:::::::::| |:::o::::::厶‐┬┬‐ .､
　　　 //＾Y＾Y＾'::::::＼| l::≧--::ト!::一イ::: | ││ トハ
　　 .//　/　/　〉::::::∧l::::::::::::: | |:::::::::::::::::∨∨∨:::::::}
　　 i.厂/｀Ｘ＿∧::::::′::::::::: ‐=| |=-::::::::::i:::::::::::::/::::::::ヽ__
　　 |:::::′'::::::::::＼V三三三::::: | |::::::三三三:::ﾚ’:::::::::::::∨＼
　　 {::::j　{::／::::::::リ:::::{_i}::::::::::: | |:::::::::::::::l|::::::::!:::::::::::::::::/ (＿＼
　　人:' ノ::::::::::::::/{::::::::i|::::::::::::: | |:::::::::::::::l|:::::: 「＼:::::／　　 _)/、
.　 {:/ /:::::::::::::: /:∧:::: l|::::::::::::: | |:::::::::::::::l|:::::::ﾉ　ﾚ′　　　／:::::＼

30 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:07:51 ID:TnLt0E5c0

┌────────────────────────────┐
│すでに分別がそなわる年齢に達した今も、そうなのだろうか。　　　　│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│平気で特権を享受し続けられるほど鈍いのだろうか。　　　　　　　　..│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│そんなアーニャを想像するのは嫌だった。　　　　　　　　　　　　　　　 │
└────────────────────────────┘

.　　　　　　/　　 |　　　　　　　　　　 |＼/. 　∨|!　 /　ヾ　　丶､＼
　　　　〃　　 .ｌ　 { 　 l＼｢＼ﾄ､|＼l､|　＼ｨ　川　 |　　 ||　　　ヽ￣
　　　　　 ′　　ハ l　　|　弋"丁　ィ　　ハ　／⌒ヽ .|　　　　　|　}
　　　　| |　　 /　乂　 l　　　r‐　彡'´ 　／　∨ /⌒　∨ 　　　　ﾄ､!
　　　　 | |　　 |／　＼l　　￣　　　　　　　）　　ハ　　　 }
　　　　　{｜　 l　 r,彡'/ヽ　　　　　　　u　　　　　 /:::|　　　　 /
.　　　　　 ',ﾄ､　ﾊ　　ヽ　　　　　　　　　　　　　　　_ ノ|::::|　　/　 {
.　　　　　ヽ＼ヽ　　　　　　　　　　　　　　爪 |:::|::::|　 / 人 |
　　　　　　　ヽ　　､ノ⌒′　　　　　　 / !　.|:::|::::l　/|/ 　｀
.　　　　　　　　　　　｀　　　　　　　　　　　　　　　　|　 |:::l;ノ /
　　　　　　　　　　　　丶　　　　　　　　　　ﾉｲ .!:::!　/
　　　　　　　　　　　　､　　　　　　　　　　 | .{:::|i/
　　　　　　　　　　　　　　｀ r┬.彳　　　　　 l_厶 ′
　　　　　　　　　　　　　　　　　　∨　 !人∧∧人∧|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　 / - ―　… ...－　`　 -　… ‐-　､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　ノ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　　 _ .．' ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::丶::::::::::::::::::::::ヽ

┌───────────────────────────────┐
│アーニャが私の心を占める割合がどんどん少なくなっていったのは、　　　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　....│
│「去る者日々に疎し」もさることながら、そんな事情もあった気がする。　　.....│
└───────────────────────────────┘

　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼
　　 /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.|ヽ
.　　,:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l:.:.:.:.:.:.:.|_,ﾊ
　　,:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: 「＞|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|
.　 ,:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::∠__/|:.:.:.:.:/:.:.:.i:/
　/:.:./:.:.:.:.:.:／／/ ハ:.:.:/イノ{
　１/|:.:.:.:.:<／:.:/ /:.:.:.V 　 /
　 |　|:.:.:, ｨ:.:.:.:.:｀ン/:.:.{.__, ′
　　 /イ/￣/＜＿_/ヽ|
　　 , イ　　　　　　｀ヽ
　　.| /　　　　/_二二ﾆ＼
,.　´|.ト､　　// 厂￣￣ヽ!
　　ヽ|_＼｀´/ /　　　　　.{
,　´￣} ｀ヽ´_ｲ　　　　　_,ﾊ
　　　！　　　「￣￣￣--┤
　　　/　　　　ト､＿／　／
　　.「　　　　　ゝ.＿, イ

31 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:08:32 ID:TnLt0E5c0

┌─────────────────────────────────────────┐
│アーニャのことが再び気にかかるようになったのは、一九八九年一二月一六日以降である。　　　　.│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│ティミショアラのハンガリー人牧師に対する当局の退去命令に抗議する市民の蜂起が　　　　　　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│たちまちルーマニア全土に波及して、チャウシェスク体制が崩壊したとき。　　　　　　　　　　　　　　.....│
└─────────────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿＿＿＿
　　　　　 _ 　　　　　　　　　　 | 　　　炎上中　|
　　　｀)）　　　　　　　　　　　 |￣￣￣￣￣￣　　　　　　　　ジ
　　　　　（）　　　　　　　 ∧　　　　　　　　　　　　　　ジ　ャ
　　　　　　（）　　　　　　　　<⌒>　　　　　（⌒ ⌒)　　　　ャ　|
　ｳｰｳｰ.（ .人　　　　　　　／⌒＼　　＼（　,,　　⌒）／/　|　ン
　　　人／　ヽ　　＿＿____］皿皿［-∧（　⌒　,,　　,,　）　ン
　　　（ ( )(　)　）.三三三∧_／＼_|,,|「|,,,! （　　,,　　　）　　 !!!
　　＿_|￣田￣田 /￣￣Π . ∩　 |'|「|'''|「（　　　）
　/＿_,|==／＼＝ﾊ,￣￣|「|ｶﾞｼｬｰﾝ |「| | *　　　+
/_| ﾛﾛ「￣￣￣ | |　田 |「|　田田　|「|［［　*
|ll.|ﾛﾛ,/| l⌒l.ｌ⌒l.| | 　　|「| 　　　　|「|ﾐﾐﾐﾐﾐﾐ ++*:
　　　λﾜｰ　 ∧　　　　　λﾜｰ　　　λﾜｰ
　 λﾜｰ　　　| |　　λﾜｰ　　　　λﾜｰ

┌───────────────────────────────────┐
│チャウシェスクと第一副首相の妻エレナがヘリコプターで脱出をはかったものの　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│失敗して捕えられ、非公開特別軍事法廷で死刑宣告を受け、　　　　　　　　　　　　　　│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│直ちに処刑されたというニュースはショッキングな映像とともに　　　　　　　　　　　　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│テレビ画面や新聞紙面を独占した。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.│
└───────────────────────────────────┘

　／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;／川　川;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＿;;;;;;;;;;;ﾐﾐﾐミミ|
/彡‐-;;;;;;-‐川川ﾉ_　＼／~~~~￣,,,,,..＼;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|　：　幸
|ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;/‐'''~￣_ヽ　　!―''''二,,,,,,,,,,,　＼;;;;;;;;;;;;;;;|　：　：
ヽ|;;;;;;;;;;;;;;;|-‐''''＿,,,､_''i　:::::::'´､丈;;ｼ-'　　ﾐミ/ii |;;;;! わ　：
ノ;;;;;;;;;;;;;;;;;;| =丈;: ┴'' |　　　::::::　　　　　　|ヽﾉﾉ/;;;;;|
　/|/i;;;;;;;;;;;| 　　　　|　i　　　　　　　 |　/　 / |;;;;;;;;;＼＿＿＿
　　ヽヽ''|ヽ;|　　　　　|ヽ;;;;;;;-!　　　　　|/''| |ヽノ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾉ
　　　　　ヽ '|　　　　　＼;;;／　　　　　 |;;;;| |;;|ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;-､,,,,
　　＿＿__＼|　 iヽ　　 .___,,,,,,,,_,.-　　　ヽﾉ |;;;| ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;＼,.
　　|　：　　＼.|　|　|_ ×-―''i´;;;;|　　　 ||　!;;;;;| |ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;'i
　　|　：　せ｜|'､ヽヽ|| !､,,,,;;;;;／| |　　　|;／;;;;;;;| '|ヽ;;;i-'､;;;i'!
　　| エ　：　| | ヽ|;|ヽ| |　　 |　 |　|　　／;;;;;;;|ヽ|　| ヽ;;!　|
　　| レ　に　|　|　ヽ| | |　　　|　 | |　／,.-‐-､| ||　ヽ　V /''ヽ
　　| ナ　　　|　ヽ　＼/　　　　 | ／;;;;l;（;(;;)）l　| _,.-'´／　人
　　＼＿__／　　ヽ　　＼＿＿／;;;;;;;;|ヽ二シ／ ∠´-‐'´''''''~~

32 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:09:15 ID:TnLt0E5c0

┌──────────────────────────────────────────────────┐
│その後も、ルーマニアの政情不安は続き、新しい政権をめぐって諸勢力間の抗争が激しくなっているようであった。　　　....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│アーニャはイギリス人と結婚したはずだから、多分ロンドンに住んでいて危険な目にはあわなくて済んだかな。　　　　　　　│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│でも、その後離婚してルーマニアに帰っているのかもしれない。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　...│
└──────────────────────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　 !/ /　　　 .ヘヽＶ｣∠ヽ. 　＼＼＼
　　　　　　　　　 _＿ノ／　..　- ､￣　≠‐　- :.:｀ヽへ　　＼＼}
　　　　　　　　　ﾌ　／: : : : : : : : : : : : : : : : : : :ヽ:.:Ｖ| !　　Ｖ {
　　　　　　　　　 //／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :Ⅵリ : : : : : :、
　　　.　　　　　 i//: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ∨ﾊ: : ｉ: : ､: ＼
　　　　　　　　　 /:: : : : ::| │: : : : : : : :ヽ: : : : |: : : : | ∨｝ : }: : :厂｀
　　　　　　　 |: : |: : :/|: :|: : : : : ヽ│: | : : : |: : : : ﾚﾚ∨｝:ｊ!: : ﾄ､
　　　　　　　 |: : |: : ｌ:八:|: : : : : : :ﾄ|、:|＼ : | : : : :}∨ｊ/: :ｊ!: : :ﾚ
　　　　　　　　 |: :ｉ|: : |　人: : |: : 八|∨￣| ∧: : : ﾙ─く/Ｖ⌒ヽ
　　　　　　　　 |: :ｉ|: : |／　_＼|: /　　ィうi心､ |: : //⌒Y｝:厂! !
　　　　　　　　厶八.:ハ. ｘぅ心|/ 　　 VJソ〉|: ∧し///.:|!ﾉ| {
　　　　　　　　　　 |: :＼∧ヽＶソ　　　　　 (|/＼＼イ : :ﾊ∧ゝ
　　　　　　　　　　 |／∨/ ／/ ）　,　　　（＼　ヽ　',ヽＶＮ
　　　　　　　　　　〈/　{∨ /　　　　　ヽ丶 |　| | |八
　　　　　　　　　　　　 {　 |/ 〈、　　‐-―　　 }　j_|　ｌ | |＼
　　　　　　　　　　　 j　　} ＞　　 _,..　ィﾉ　｀　｀　}　〉ー---――-､
　　　　　　　　　　丶、 '⌒丶　 ∨|く／　　　　　/　/　　　　　／
　　　　　　　　　　　 /{￣＼　　＼ﾏ7　　　　 /　/　　　　　/　　　　|

33 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:09:52 ID:TnLt0E5c0

┌───────────────────────────────────────┐
│アーニャとアーニャの家族は無事なのだろうか。父親は逮捕されたのではないか。　　　　　　　.│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│逮捕されなかったとしても、特権階級の人々は、民衆の怒りの標的になるのではないか。　　　.│
└───────────────────────────────────────┘

::::::::::::::::::::::::::ﾊ::::::::::::::/i/／ i:::::::::::::::::::::::::|::::::|:::::::::::::::::ヽ:::::::::::::::＼
::::::::::::::::::::::::::::ﾊ;;;;;;;;;/-'´ 　 .|::::::::::::::::::::::::ﾄ::::: ﾄ::::::::::::::::::::i:::::::::::::::::::ヽ
::::::::::::::::::::::::::::::ﾊ￣　　　　 |::::::ﾊ::::::::::::::|　＼i ＼::::::::::::|:::::::::::::::::::::ﾊ
::::::::::::::::::::::::::::;:::ﾊ　　　　　 |:::/　V::::::::::ﾘ　　　　ｨ=ﾊ:::: |::::::::::::::::::::::::＼
:::::::::::::::::::::::::::::iヽ:ﾍ　　　　　 |:/　　 V::::::/　　　/ｲ＝ﾌi｝ヾ─────'｀
ヽ:::::::::::::::::::::::::|　＼ヽ　　　 |i!　　　｝::/　　　r''´ゞハi l:ヽ
::::＼::::::::::::::::::::|　　＼　　　＿＿ニ三ｲ　　　||r j｝i|　.i lヾ｝
::::::::::＼::::::::::::: |　　　／::::＿,,,ィ彡=''´i/il_,=＝|.しｿﾊﾉﾉ-､
:::::::::::/ ＼::::::::::ヾ／:- ''´＞''´ -=ｲ｀　 ||r'´｀ﾊ彡　ｙ/: : : :＼ニニミ-､
::::::::/　　　｀ー- xゝ rィ彡''´イッ:::ﾘ　　/i　　　ミー=´i: : : : : : :｀:-:､: : :｝ｿヽ
:::::/::ﾊ＿＿＿＿＿/ /　 /　ﾋ:::..ソﾉ　｛.ﾘ　　　　｝.　 l-､: : : : : : : : i: ://: :ﾊ
￣ヽ──────､ﾊ　ヾ　　ゞ''´　ノﾉ　　　 ./　 ./: :ﾉ: : : : : : : : l: i l: : : ﾊ
i ヽ　｀ -ゝ　　　　　　ヽヽ　ミ=''´　／／　　　　　 /: : i: : : : : : : : : l: i l: : : : :ヽ､
｛　　ﾊ　　　　　　　　　＼＼＿_／／　　　　, ィ　/: : :/: : : : : : : : : : /: : : : : : : : ＼
　｀　　廴　　　　　し　　　ー─''´　　　 ir'_´'´ ./: : :/: : : : : : : : : : /: : : : : : : : : : /
>､＿　　　ー　　　　　　　　　　　　　　　　 /: : :/: : : : : : : : ::／: : : : : : : : : : :/
: : : : : ＞-､＿ハ､　　　　　　　　　　　　　　　ハ／: : : : : : : :／: : : : : : : : : : : :/ハ

┌─────────────────────────────────────────┐
│居ても立ってもいられなくなって、二〇年ぶりにアーニャのロンドンの住所に手紙を出したが、　　　...│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│三週間ほどして「転居先不明」で戻ってきた。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│ブカレストのアーニャの実家宛てにも手紙を出したが、梨のつぶてだった。　　　　　　　　　　　　　　　│
└─────────────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　 __ /{　　＿_
　　　　　　　／⌒Ｙ　Ｖ´　∠_
　　　　　　　 / ／⌒＼　　／⌒ヽ.
　　　　　　_ノ　′　　＿Ｙ/_　　　　＼_
. 　　　｀ｱ　V　 ,∠ ニ＝=ミ　 }ﾉ＜´
. 　　　 /　　／　　　　　　｀ヽ　ヽ
　　　　 {　　/ 　　　　　　　ヽ　 }
　　　､_ﾉ　 ,′// /{　　ハ　ﾊハ　｛
　　　｀Ｔ　l　 |／ハ　｛　}／　|　｜}｀
.　　　　ヽ.|　 | 　---＼{. --- ｜　l/
　　　　　八 `| 　(●)　　(●)　ｊ　/{
　　　　＿／ヽ{｀　　　`　　　ノイ＞―- ､
　　／　　 ,二｀＞-へ二､　-＜´　　　　ヽ
　　ヽ、　く／_　＼　＼>Ｊ）　　　　　　ノ
二二二二二,二二二二二二二二二二二二二二二

34 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:10:21 ID:TnLt0E5c0

┌──────────────────────────────────────┐
│そのうちに、どうやらチャウシェスク一族以外の旧政権幹部は無事だったらしいという　　　　.│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.│
│情報が入ってきて一安心するとともに、理不尽な気もした。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│
└──────────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　／　　/　　　　　　　　　　　　　从　　　　　　　＼ゝ
　　　　　　　　　　　　/　　　 i　　 |::::　ヽ　　　　　　　　　ゝ,　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　　　　 .′ '　　ﾊ　　ヾ:::　 |＼　ﾊ　| 　ヾ;.　 |:::::　　　　ヽ　|
　　　　　　　　　　 | | │　/-＼-　ヾ　|ニ| /-i!│　 |: i::::::ト.::::　　　　 ∨
　　　　　　　　　　 | | │ﾊ┬‐'┬、　 │┬‐┬､ヾ|　 /　i::::/:::∨ヽ::::::　/
　　　　　　　　　　　 |ﾊ　Vｨ .|::::::::! 　＼| 　l::::::::!　　/／ ,/ V:::::::::::::::（::::::!|
　　　　　　　　 l　ゝ＼￣￣　　　　￣￣　イ／/ ) |:::::::::::::::::::＼ |
　　　　　　　　　　　　　「 ` 　　ヽ　　　　　　／jｲr '_ノ::::::::::::::: ﾊ::::ﾉゝ
　　　　　　　　　　　　ﾊ　　　　　　　　　　　　 rイ:::::::::::::::::::::/
　　　　　　　　　　　　　　　ゝ.　　　　　　　　　イﾊi!:::::::::::::: //
　　　　　　　　　　　　　　　｀　．　　　　 .　'′ |　ヾ.::::::::::::ﾊi
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＞- r_ﾉヽノ＼／|　 ∨ゝ::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　)::::::::::::::::::::::::::::::{.　　　 `
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ノ:: - ―　… ...－::` …‐- ､
　　　　　　　　　　　　　　　　 _ .．' :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　::::::::::::::::: /::ヽ.::::::::::::::::::::::::::::::::: /::::::, :: ,
　　　　　　　　　　　　　　　.:::::::::::::::::ノ::::::::::ゝ::::::::::::::::::::::::|:::/:::／:::::::|
　　　　　　　　　　　　　　　.::::::::::::::::::/| _:::ノ￣｀ヽ _::::::::::|/／:::::::::::::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /ノ　　　　　　　　ヽ:: |.':::::::::::::::::│

35 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:11:08 ID:TnLt0E5c0

┌─────────────────────────────────────┐
│そして再び、アーニャを想うことは少なくなった。それどころではなくなった。　　　　　　　　....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　...│
│東欧社会主義国崩壊の波はついにソ連邦をも呑み込み、　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　...│
│ロシア語同時通訳をしていた私は寝食の時間もまともに取れないほど忙しくなった。　　......│
└─────────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　　　　　　,_　　＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　､-ー'｀Ｙ＜,__＿
　　　　　　　　　　　　　　_＿≦ー`__＿　_二ｚ<＿
　　　　　　　　　　　　　　＞７￣､-‐ ´￣｀'┴＜
　　　　　　　　　　　　　＜之′Ｙ´／　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　>{　, ' 　| ､　,　,.　 ,.l　　, 　ﾞｉ
　　　　　　　　　　　r⌒ヽ|　!､{　　| 寸寸T　ハT７} ｨ, ｌ
　　　　　　　　　　/:::＼:::′Ｊﾞｉ, ﾞｉﾞｉ oﾟ⌒　　⌒ﾟo| ハ|
　　　　　　　　　_/:::/　ヽ:::::::::::ﾞｉ|ﾞｉ'(1　　,---v､　|
　　　　　　　　〈__ソ　.　〉::::::::ﾞｉTィ.,_ 　ｉｌｉｌｉｌｉ r_ノ　　　また仕事かよー！
　　　　　　　　　　　　　 /　　＼　　 l:::::ｒ⌒､
　　　　　　　　　　　　/　　　,r‐-､ /::;;;ヽｿ:.＼
　　　　　　　 ._|￣￣￣　　／:::::::::|'　ｰ､＼::::::＼
　　　　　ヽ_ヽ、-‐　入:;::::::::::ﾉヽ　　.＼＾:::::::::i
　　　　　　 |::ヽi＿／　/::::::::/　　＼ .　　`ー'
　　　　　　 i::::/::::ヽ--/:::::::/　　　＿＞
　　　　　　ヽ､::::／ ./::::／⌒＾ー'
　　　　　　　　　　 /::／
　　　　　　　　　ノ.＾/　　ﾀﾞｯ
　　　　　　　　　　　|_／

36 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:11:53 ID:TnLt0E5c0

┌──────────────────────────────────────┐
│それでも記憶の湖の底から時々ソビエト学校の学友たちの顔が浮かび上がってくる。　　　....│
└──────────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,................_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,...::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ､
　　　　　　　　　　　　　　　　．　´￣￣` ー､　　　　　　　　　　　　　　　　　　／:::::::::::::::::::::l:::::::::::::::////ヽ
　　　　　　　　　　　　　／:.∠二二. ＼:.:.:.:.:.:.＼　　　　　　　　　　　　　　　 /:::::::::::::::::::::::::::|:::::::::::::|::/:::::/:::lヽ
　　　　　　　　　　 .ｨ 7:.:/:.:.:.:.:.､:.:.:.＼}:.:.:.:rヘ:.ヽ　　　　　　　　　　　　　　,::::::::::::::::::::::::::::::|:::::::::::::l/l:::ﾄ､ｲ::l::::.
　　　　　　　　　　 ,:': /:.:/:.:ｲ:.:.:.:.:＼:.:.:.!:.:.:.:{ヽ/:.:.:ﾟ，　　　　　　　　　　　　 l::::::::::l:::::::::::::,=､|:::::::::::::|/ ,t-､l/!:::ﾄ,
　　　　　　　 /:.:.:ｉ:.:.:ｌX |、:.:.:.:.:厶斗:.:.:.:∨､:.:.:.i　　　　　　　　　　　　　 |:::::::::|:::::::::::::l {' |::::::::::::l　弋j　{:ｲﾘ
　　　　　　　　 ':.:.:.:.{:.:.:|　ヾ＼:.:´ヽ):.ハ:.:.:. !　ヽ:.|　　　　　　　　　　　　　 ',:::::::|:::::::::::::ヽ._|::::::::::::|　　　　｀ ,
　　　　　　　　　ｉ:.:l:./il:.: 芹ﾊ　　　ｲ笊Ⅵ:.:.:.:|　V:.:|　　　　　　　　　　　　　　}::::,'::::::::::::::::::ﾊ::::::::::::|　　　　_ /
　　　　　　　　　 |:.:l:.Ⅵ:.:.| Vﾘ　　　Ｖり :|:.:.:.:|)./:.:.:!　　　　　　　　　　　　　　 ,:/::::::::::::::::/　l:::::::::::|　　　　, '
　　　　　　　　　 l:/!:.:.:|:.八　｀　　,　　　 |:.:.:.:|:.:.:.:.:.|　　　　　　　　　　　　　　 l'::::::::::::::::::,＿ !::::::::::!　　_, /
　　　　　　　　 {　V从:.:.: ＼｀　　　　イ|:.:.:.从:.: /!　　　　　　　　　　　　　　/:::::::/:::::::/￣｀,::::::::::|￣::::l　　　　　　　　　　　ｎ
　　　　　　　　　　　　　}＼:.l:.:.≧ｰ　　　N:.:./:.:ル’ﾉ　　　　　　　　　　　　　 /:::::::/-―'-- ､､:::::::::!-､::::|　　　　　　　　 (｀　 -──‐-　　/)
　　　　　　　　　　　　 _j:.:厶イ /’　　　刈〕ト．__　　　　　　　　　　 .　　　/::::::/　　　　ヽ　 l ､::::l//!∧　　　　　　 (ヽ.／ｘｰ==＝-､＼　っ
　　　　　　　　　　　 /|: i:i:i : : : |====ミ /: : : : /i/ﾊ　　　　　　　　　　　　 /::::::::{　　　　 ,　　　∨,:::l//ﾍ∧　　　　c　／_／.:::::／:::/:::::::ヽヽ, っ
　　　　　　　　 / :|: i:i:i : : : l　　　 ,: : : : :/i//　ヽ　　　　　　　　　　 ,::::::, -'　　　　 ',　　　∨､:,／ヽ/l}　　　　　＞::{i厶イ彡ｲノﾊ::::}И
　　　　　　　　　　 '　 ∨∧: : : | 　　 /: : : :/i//　　 r｢＼　　　　　　　　/:::::l､　　　　　　ヽﾉ　　ｰﾍ!-/ﾄ､/!　　　　/.:::てﾙ' ＞＿_＜Ｙ:::::|
　　　　　　／　　 ,∨∧: : |　　 , : : : /i//　　　/ハ　ヽ　　　　　　/:::::::::ヽ　　　　　　 ,}　　　　　　l/l ヾ､　.　 /.::::::/⌒ヽ'' |┴‐| ''f⌒ヽ
　　　　　 .／　 i 　 V　∨∧: l rﾍ　i: : :./i// ﾟ，／<X 〉　/、　　　　':ｲ::::::::::::l　　　　 ,- '　　　　　　　ヽ!　 l　　 / ::::::::> _i|ﾉ‐┴─f　ゝ-く!
　　　　　／　　！.／{ 　 ∨∧|ﾉ/ﾊ | : /i// 　 }" 　ヾ/ ノ　＼　　/:/:::::::::::::::!　　　　l　　　　　　　　　　　,'　 ./.::::::／（ l| )　７^く　（ i| ィ

37 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:12:26 ID:TnLt0E5c0

┌──────────────────────────────────────────────┐
│一九九五年の暮れに予定されていたロシア要人の来日が急遽中止になり、随行通訳する予定だった私は　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│突然二週間の自由時間に恵まれた。それで、ブカレストを訪れることにした。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
└──────────────────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.i|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i:|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .i |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　il:|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_,」k、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〃 :いヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿_ ヾ､_ノ　l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　__　　　　　 ,ィ:´　　￣｀'' ‐ケ　　　　　　　　　　　　 __
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣ ― :__/ ｨェｪェkt､　　　ヽ　　　＿＿―― ￣
＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.l　　　;.::　　　　　　　 |―￣　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／
　/￣ニニニニニニニニ二二二二二二二ユ―― ';　　　':;　　　　　　ｒｆ――――ｨｭｔ―――――ﾆニニニニニニニニニニヽ￣ヽ
　　　　　　　　　　　　　 '　　　　ﾚ￣〃´｀ヽ｀ｔ｀ミii＞ヽ　　　　　　　　　レ仁‐h‐〃^ヽヽ￣￣￣l￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　il　　 jj　　 /il￣｀｀''ｰo‐ｆｨｨｨ― ''└ ''´:il　li　　 jj 〉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ー‐´　　rhTrh　　 riih rhih 　　　　 rhiirh｀ー´ ´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　'-' .'-'　　 "" '-'-'　　　　　' '　''

38 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:13:31 ID:TnLt0E5c0

┌───────────────────────────────────────┐
│プラハやブダペストには自由化前後に何度も旅していたが、ブカレストは初めてだった。　　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│かつて東欧のパリと讃えられた街に、その面影はなかった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
└───────────────────────────────────────┘

:::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :/!,::: :l:/ :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: l三ﾆ! :::: :::: :::: ::::
::: :::: :::: :::: :::: :::: ::::/i :l:::ヽ!| :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :: :: l三三、_,j! :::: :::: :
:: :::: :::: :::: :::: :::: ::/ !l:::l :::l|!l:::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::: :::l三三三ﾆ! :::: ::::
::: ::: ::: ::: ::: ::: :::/ /: V::: :::' ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: :::j三三三 l:: ::: ::: :
:: :: :: :: :: :: :: :::/ /: :: l:: :: :: :: :/ :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :::l三三三三l:: :: :: ::
: : : : : : : : : : :l /: : : :l : : :ｨv/: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :|三三三三l : : : : :
:　:　:　:　:　r7/!,:　:　l :　/!lﾍ　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:l　:　:　:　:　:　:　 :|三三三三:ヽ:　r ‐
ヽ-───' ,/l l |!　　 ./ j !l l　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　r'^ーz_,-､　　　　 r'三三三三三|　|三
──r-、三l ｀ヽ li 　 / /' l l !　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 | 三三三|　　　　 |三三三三三 |　|三
三ﾆ/三了ﾆl三 l !l, / /!　 ! !l　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 | 三三三|　　　　 |三三三三三 |　|三
三:/:三Zzヽzヽ :l l / /／ヽ、l l　　　　　　　　　　　_　　　　　　　　　　　　　　　　　 | 三三三|　　　　 |三三三三三 |　|三
Ｚ/｀ヽ、三ヽ､zヽ/ /'三lヽ,zヽ、　　　　　　　　　 / ７ヽ、　　　　　　　　　　　　　　 | 三三三l、　　　..|三三三三三 |　|三
:/三三ヽ､三z:ヽ､三l ィz、三ァヽr-──,　　 /!/三/Z/　　　　 r-‐､_　　　　　　　 |三三三三!　　　 |三三三三三 |　|三
─r 、Z/:;＼ Z zヽ､三ヽヲ ZY'"ヽzヽ三Zヽ,ノ /三/Z/}　　　　　l 三Zl　　 _,.i　　j-vh,　.|三三三三l7.,_　.::|三三三三三ｦヾ'三
三|Zヽ/三l Z＼ t7/Z/7三三lZヾ7三ヽ三Zん'三/Z/7　　　　　j三三l　　,ﾞ::::::',　.|三Zl　.|三三三Z!.|三,ヽ,j三三三三三三Z!三
!ソ､_/三Z＼三ZVZ:://三三l 三l ヽ三ﾍヽ三>-'"Z//　　　　.l三三 l r'ヽヾノ'ヽl三三ヽ!三三三 ‐|-三　／l￣ﾍ三三三三i:三
＼三ヽ、三Zヽ/ヲ>//三三l三シ Zl 三Zヽ´三ヽ/ｼ r─-.,＿_,｢三三Zl l::::l'￣：l::::l三三三三三三ヾl !l三ﾉ三;l三zﾍ..r‐─‐-, 三
:::::ヽ 7三ヽ､三!三V/三ヽ三ﾉﾆ l三ﾍ三Zヽ三三｀ヽ､三三三三三三Z<-､：-r'_,.ﾉ三三三三三三,/!.!ll ,.ヽ三:l三Z:ﾍ!三z三l :三
::::::::l|;三/ /ヽ/三 Z!三Z:ヽ/ ／三 - ､三三ヽ＿,. -‐ ｀l!三三三γ⌒｀/｀'-z_jﾍ-'──'＾ヽ三三 r-!,Zl !lZヽZ:l!三三ヽﾛ!ﾛﾛ! ／

39 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:14:13 ID:TnLt0E5c0

┌──────────────────────────────────────────────────┐
│荒れ果てた町の風景に、何よりも人々の荒んだ表情と、何かにおびえるような落ち着きのない瞳に衝撃を受けた。　　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│その瞳からは独裁体制から自由になった喜びや希望は読み取れない。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│街も人も、いまだにチャウシェスク・ショックから立ち直ってないようである。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　....│
└──────────────────────────────────────────────────┘

: . ￣￣Λ＿Λ──＿＿＿＿＿＿:. :.:. :.:. :.:. :.:. :.:. :.:.i￣￣i:. :.:. :.:. :.:. :.:. :.:. :.:. :. . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
:::::::::: /:彡ミ゛ヽ;）ー､::::::::: Λ＿Λ. . ￣￣￣￣─‐. ⊂ニニ⊃ ＿＿＿＿＿＿:. :.:. :.:. :.:. :.: Λ＿Λ:.: :.: :. :. :.
::::::.../ :::/:: ヽ、ヽ、 ::i:::::....（-д-:::　）ー､::::::.......　　　 (　ﾟдﾟ　)ー､　 Λ＿Λ:: .. .￣￣￣─（-д-:::　）ー､::..
::. . / :::/;;: 　ヽ　ヽ ::ｌ::: . /i ;:　　　　:::i:::.::::::..... . 　/i ;:　　　　::. i /:彡ミ゛ヽ;）ー､:::::::... .　 /i ;:　　　　:::i::..
: . （_,ノ⌒＼;;　ヽ､_ノ:l: . (:: ;;＿＿/ :::./ |:::::......　　(:: ;;＿＿/ :::./::/ :::/:: ヽ、ヽ、 ::i::::.... .　 (:: ;;＿＿/ :::./ |:: .
　　　 i⌒＼）i⌒＼　/:: .. /　＿＿__/　:|:::::::::.... . .　 /　＿＿__/::/ :::/;;: 　ヽ　ヽ ::ｌ:::::......　　/　＿＿__/　:|::..
　　　 | :::| ::;;_| :::| ::;;ﾉ: . i⌒i_ﾉ :i⌒＼　/::::::...... . 　 i⌒i_ﾉ :i⌒＼（_,ノ⌒＼;;　ヽ､_ノ:l::::...　　i⌒i_ﾉ :i⌒＼　/::..
　　　 | :::|　　| :::|:::: ....　| :::| ::;;_| :::| ::;;ﾉ::::::::::... .. 　 | :::| ::;;_| :::| ::;;ﾉ i⌒＼）i⌒＼　/:::::::....　| :::| ::;;_| :::| ::;;ﾉ::::...
　　（___/　（___/::.....　 | :::|　　| :::|:::::.....　.　　　　　| :::|　　| :::|:: .　 | :::| ::;;_| :::| ::;;ﾉ::::::.... .　| :::|　　| :::|:::: ::...
　　　　　　　　　（___/　（___/:::.... .. .. . 　　（___/　（___/:: :　| :::|　　| :::|:::::::.... .　　（___/　（___/:::.... ..
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（___/　（___/:::.....

40 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:14:42 ID:TnLt0E5c0

┌────────────────────────────────────────┐
│フランスかぶれのチャウシェスクは、旧市街に住んでいた人々を有無を言わさず追い出し、　　　..│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│建物は片っ端から破壊して、パリの街並みのコピーを作り出そうと企てた。　　　　　　　　　　　　.....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│この大土木工事に飢餓輸出で捻出した大量の資金を投入した。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│メインストリートは、もちろん「シャンゼリゼ通り」である。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
└────────────────────────────────────────┘

.　　　　　　　／::::/:::l:::::::::三ミ､:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　 /l/:::::::/:l:::l:!::::::::::::::::::::＼::::::::::＼:::::::::::::::::::::::'.,
..　　　　　l:::!:::::::::i::::!::l:l::::＼:::::::::::￣三ﾆ‐-::ヽ:::::::::::::::::::ﾊ　　ぼくには
　　　　 !::ヽ:::::::';:::ヽ::ｿ:::::ﾊ:ヽ::ヽ‐-::::::_::::::::::::::::::::::::::::::::i　　旧市街に住んでいる人々など
　　　　ミヽ:::::｀:::::ﾝツ!:ﾊ::{::::＼＼__::;.:_:::::::::::::::::::::::::::::::::::!　　失ってもいい
　　　　｀ｿｰ:::7´}:l　　ヽヽゝ,..-::::_;. -;ｊ｀ﾐ::ｰ-:::､:::::::::__:;ｲ　　　　理由がある
.　　　　 /:::::::::{　ﾉﾉ　i/ ,,...:':_ -,.‐ｚ-､　｀ﾉ:::::::::::::::／ ‐ｉl:l
.　　　　 V::::::::::ヽ＝ﾐ、ｰ'"　　_迩ﾂ　　｀ヽ:::::;.' /　7 !:!　　それは　パリの街並みを作るため！
　　　　 !:::::ヽ::::' '´ﾋﾘﾆﾝヽ　　　　　　　 L_ｊ └､ﾉ./:ﾊ　　チャウシェスク家を守るため！
　　　　ヽ-. '｀¨',　/,!　-､　!　　　　　　　　　　 _ノ ∧::::i
.　　　　　　　　 '、ｰﾆフ　　　　　　　　　　　 |:（__ノ　 V:!　　　君らとは闘う動機の
.　　　　　　　　 '. 　 _.. ..__　　　　　　　　 l:::　i　　　V‐- ､　「格」が違うんだ！
.　　　　　　　　　　 ,　'ー'´_　　　　　　　　　 l:::　i　　　 'ミ､,
　　　　　　　　　　　 ',　¨´__　　　　　　　　／::　丿　　　Ｖ
　-─‐-,.-─､,.‐ﾆ二ﾊ '´　　｀　　　／::.　　/　　　　／
　　　　　　 {　/ 　　 ',　_　　.._　　,　'::: 　　 /　　,.　'　　／
　　　　　　　 l　ヽ　　__ ヽ-: : ::-:-:'／￣〉　_./ィ "　　 ,. イ

41 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:15:11 ID:TnLt0E5c0

┌─────────────────────────────────────────┐
│しかし、世紀の大土木事業を成し遂げぬうちにチャウシェスクの命運尽きて、事業も頓挫した。　　　│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│頓挫したのは、六年前のはずなのだが、街は今もチャウシェスク政権崩壊の瞬間が　　　　　　　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│凍結したままであるかのようだ。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.│
└─────────────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　　　　 __,ィ‐､
　　　　　ﾄ､　　　　　_,.ﾆｰ'´　　　　彡　　　死　二　　　一
　　 ,-､　　ヽ.＼＿_ノ＾ヽ　 ,.-，ミ､　　ﾆく　　　亡　コ　　　九
　　ヽ＼__／＼＼　　　l´｀>-ﾆ三　　　‐ﾆィ　　　ラ　　　八
.　　　〕--‐'＿　＼ヽ　　ｌ i　　　lｉl彡　　ミ'´　　　　.エ　　　九
　ｒ-､/ /´　＿｀ヽヽl　_ＹL.ヽｖ'´ヽ从ドﾞ｀　　　　　 .・　 .. 　年
.　＼｀二二´ --､)　l ﾄ､｀ヽﾐ､ l__,.　　　　　　　　　　チ
　　|　 l　　_,,..　.,,_／lｲ　　　　　　彡_　　　　　　　　　ャ　　　１２
　　ｌ　 l　/　　　　ミﾆ　彡　イィ个ｰ"　　　　　　ウ　　月
　ヽ　 i　ﾚ'´　　　ｲ＿三,.,.ｒ-'‐く＾ヽ　　　　　　　シ . 　２５
.　　∨ V　／　　／ﾊ.　　　　　ｊノ＼　　　　　　　　.ェ　　　日
　　　l　〈　　i　　　/　＼　　　,.　'　　 ∧_　　　　　　ス
　　　ｸ　ヽl　｀¨´　　　　|　／　　　　/　　￣¨　…ｰ-ク_
　　　'＼／ヽ入＿＿_,ノ¨´ヽ　　 _／l :.:. 　: 　　　　　｀　、
　　　　　｀V　　　　/￣ヽ__ﾉ-‐'"｀丶:::::::.. ::.　 ::.　　　　　　　　＼　＿
　　　　　　 l＼_　　ﾉ　　　l　　　　　　　＼:::::::.. ::::. ::.. ::.　..:　　／￣　　￣＼
　　　　　 V　ヽｆ / ハ_ｸ　　　　　　　丶、:::::::::::::::::.:::　 /　　_,,.　--- ..,,|
.　　　　　　/´＼. ヽ{_,ﾊノ　　..::　..:　　　　　　＼‐-:::::::_　 /,.ィ´　,. --- ..,_/
　　　　　 ,ﾉ　　　｀丶.:::::::..::::::　.::　　　　　　　　　　ヽ　　＼l（,ノ／　　　　 ∧
　　　　／　　　/　　　｀¨ヽ-L::::　::.. .::　 .::　　　　　　ﾊ　　ヽl'´ 　　　　　 i
　　　/　　　,.イ‐-､__　　　　　｀丶::..:::::.:..::::.　　　　　　 l　　　|　　　　　　　　　l
.　　└‐'"´　　　　｀ヽ.,_　　　　　｀ト､:::::､　　　　　　ｌ　　　',　　　　　　　　 i
　　　　　　　　　　　　＼　　　 {_入＼　　　　　丿　　　ヽ　　　　　　　 i
　　　　　　　　　　　　｀¨ヽ.__､＼. ＼　　__,,..ィ/　　　　　　丶　　　　　 i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ｰ｀ー‐ -- 一'　　　　　　　　｀ヽ　　　　　i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i、　　　　i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 V　　　｀ｰ-　..,＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ/´　　　　　 -=＝─‐‐-､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ',　/￣ Τ´ |　　　　　 ,ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ヽ　　_L. ┴-　 -‐'"
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣

42 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:15:42 ID:TnLt0E5c0

┌─────────────────────────────────────┐
│壊された建物の瓦礫はいまだに片づけられないままだし、崩れかかった古い建物、　　　...│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　...│
│建設途中でおっぽり出された巨大な鉄筋コンクリートの建造物が立ち並ぶ。　　　　　　　　.│
└─────────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／|: : :.:::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l 　 | : : : :|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 | 　 |: : :. .:|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 | 　 |: : : :.:|
　　iv'ﾍ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　|:|ｌ＝=|
　　| ;`;|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　|:|》: ::::|　　　　　　　 i'1
　　| ;'l:|　　　　　　 i'`'i　　　　　　　　、　　　／|　　|:|＼ : |　 .　　　　　 |;'|　　　　　 ,、
　　!:`l'|　　ζ＼　　 |;`;|　　　　　　　 ∥ 　　　〕 .|　　|:| 　|| | ./＼　　＿.|;'|　　　　 /.:〉
-､_|_.;l:| 　　＼';､＼　 :|':i;;|　　　 .　 i'1　　　||／>　　r┘.:|　　|:|　 ||::| |　 ∥‐┘ .:|';|──へ./.:/＿r‐
ｰ|＿}:;|　　　　＼';､.＼|;';;;|　　　./〉　|;|＿r／／　 /|￣＼:|　　|:|　　￣　.:〃..／>.::|;'|:::::::::::::::/.:/:::::::::::
-|＿|`|＿r:‐:‐:‐:‐＼';､＼;|　r‐//┐_|:|::::::::;⊥、r/.::|　.:::::::|／＼/＼　　《／／ ..:::|;'|:::::[]::::/.:/]:::::::[]::
ｰ|＿};|::::::::::: : :: : {二l＼;i`!､::://:::::::::::::::::::r| .::| /.:::::<＼／　　〈:::.:... ＼　》 '　.::::::::/|＼＿ｎ::::::::::::::::::::
-|＿|￣/＼:::::::/`|＿{┬| |;､＼::::::::i'|::::::r┴冂、 .:::::|::＼＼ _＿＿__:::::.:..〉″へ:::::/ .| |: : : |:|::::::::l`!へ、
ｰ|＿}::/ ､';';〉.:/ /{＿|┴lニニニニﾆｌ.r┴､_|_|_|:>:::::＿＿＿|」＿＿:l;_;_/／..::.　｀〈　:| |: : : |:|::::::::| |: : :
-|＿;l'_;_;_∠;/_/___l_,,:;;}┬┴┬┴┬┴┐::| .:::|_rｪ┘＿＿;!＿__;!＿＿;|＿;_;:::.:／ : :| |: : : |:|::::::::| | : :
~゛'' ┘⊥ ｣_　|　　|{＿|┴┬┴┬┴┬┴┤ .:|＿;!＿＿;!＿＿:l＿＿;!＿＿;|<___;_/＼_;_;_;|;|-∠|_|;_;_;
　　　　　　　　　~゛'''' ┴'::⊥Λ二＼.:|　　.:|ー:|＿＿;!＿＿;!＿＿;!＿＿:l＿＿;l:::...＼/＜＞::.　 ∠二
　｀　　　 ,　'　　.　　｀　　　∨_,,,;;;;/. ~゛`┴ -'⊥ .」＿;!＿＿;!＿＿;!＿＿;!＿;ﾄ､ r─‐-､　　　...:.:.:.::.:
　　　　　　　　　　　　　,　　　　　　　　　　　　　　　　　~゛　┴　 ⊥. .,_..:::|　::/￣.￣'"ヽ┴-､_;_;_;_;_;_;_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,　　　　　　　｀　　　　　　 ~゛'' ‐-|＼＿＿＿ﾄ--/.. ...:::::::./|
　　`　　　　　　　　　　　　　.,　　　　　｀　　　　,.　　　　　　　　　　 '　　　　＼|__;_;_;_;_;!─l二二二l/
.　　　　　　　　`　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀

43 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:16:09 ID:TnLt0E5c0

┌────────────────────────────────────┐
│目に付いたのは、大量の野良犬だった。日々の食べ物にも窮する人々に　　　　　　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│犬を飼う余裕などあるはずもないのだろう。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│あちこちで群れをなしている。その眼差しは、意外にも穏やかで幸せそうだった。　　　　│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│猜疑心と恐怖の色に染まった人々の瞳とは好対照である。　　　　　　　　　　　　　　　　...│
└────────────────────────────────────┘

　　　　　/　ヽヽ
　　　 /　｢:::::::::::ー‐-:､　＼ヽ　　　　　　　　　　／
　　　　　　l:::::::::::__::::::::::∧　　　　　-　　　　　　/　ヘ　デ
　　　　　　!::/´ ／ヽ::::::::∧ ＿_...._⌒ ,.へ.__＿ |　ヘ　ヘ
.　　　　　 i:/　（　　/:::::::／::::::::::l　｀ <:::::::::__::ｒ' ヽ. ヘ　ヘ
.　　　　　 ';:＼__＼ﾉ:::;::':::::::::::::::::L、　＼) ） l::l | ｌ|. ヘ
.　　　　　＼::::::::__::/:::::::::::::::＜ﾟヽ　　⌒ﾚ':::j　　＼＿　　　＿／
.　　　　　　￣ノ;:::::::::::::::::::＿ヽ!:___/ﾟ´}一'　　　　　ｊノ￣
　　　　　　 __　　 l::i::::::::/ ﾄ､__　　　Uﾉ｀T
　　＿ __ｆｏﾊ　_ﾑl:ｒ‐､.l　＼Ｗ三ミヽ　l　リ＿＿
.　￣　「0 l　　l´ 0 ﾉ　 }、　Ｕ　　＼)ﾉ　／　　ヽ
　　 -=l.-干‐干-土=ヌ､丶、　　 .／　　 |　　ホ　　|
.　　　 !　ｌ＿_|　　ｌ /::ヽ.＼｀二Ｙ´　　　＜　　ヘ　　l
　　　　／:::::::!　　l:::::::::ﾊ　　､__ﾉ! | l　　　|　　ェ　 l
. 　　 /::::::.: :.l　 O}:::::::::::l　　 /::::}　　　　 l　　 (　 /
　　　〈:::::::::::::::.: .. ∧::::::;人_／::::::l 　　　 |　　） |
　　　ヽ::::::::::::::::ﾊ::::∨　　＼'´　l　　　　　＼__／

44 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:16:57 ID:TnLt0E5c0

┌───────────────────────────────────┐
│瓦礫の山を漁る人々に尋ねると、犬たちは、ネズミを餌に暮らしているらしい。　　　 │
└───────────────────────────────────┘

　　　　　　／　　　　　　　　フ '　　　　　　　　　　　　＼
　　　　. '´　　　　　　　／　　　　　　　／　　　　　　　ゝ
　_.．'′ 　　　　　　 /　　　　　　　　 '　　　　　　　　　　i
'´ 　　　　　　　　　　/　　　　　　　 /　　　　　　　　　∧
　　　　　　　　　　／　 ,. -　　　　/　　　 ,|　　　　　/__j　　 /
　　　　　　:.:.:.:.::／　／　　'　　　　 /　　　／ | 　　　,/　ゝ｀ン
　　　 . :.:.:.:.／´｀ﾚ,..イ　　　　　　/　　 ∠ _ _ |　　　 /个´＜
　　　 .:.:.:.:／　　ハ:.:│. 　　　　 | 　／　｀ﾌ　　 /／ﾚ　　 `ｰァ
＿　 :.:.／　　　 |:.:.:.ハ　 , 　　　ﾚ　__ 二` / ｨ'　 /-_- |:.:.:.:　／
＼厂V　　　　　　l:.:.:/爿､│ 　　 l弋t;ｫ￣｀j/ |　/ィぁ丁::く¨´　　　ネズミだけは、嫌と言うほどいるからねえ。
　＼　＼　　　　ゝ.:〉`rｰNﾊ　　　＼､ __　ノ　j,/　ゝ-' i::ﾄ::|
　　　＼　' 　　 _＿l:廴ゝ__|　　　 |` ' , , , 　　/　　 )　'v|ﾝ　　　　　あたしたちも、ネズミが喰えりゃあ
　　　　＼!　 r ´ (__ヽ:.:l`ー|　　「 ` 　　　　　　　　　ﾊ
　　　　＼ |　　　　 `'…┤　　ﾄ　　　　　　　　　　ｲ　|　　　　　　ひもじい思いをしなくて済むかもしれないね。
　　　　　　　＼　　　　 /　　 |7¨`ｰr ､　　　　ｧｲ::Yく_
　　　　　　ﾉ　＼　　 ,' 　　　|　　　l::::l'ヽ __ ／ /:/ __　 7
　　　　　γ　　　　＼__ ' 　　　 |　　ノ:::/　　＼, r＜　　　ｲ
　　　　　ヽ　　　　／＼　　　　| ／::／　　　　　|:::ﾝ　イ　|
　　　　　　＼／　　l　＼　　 |':::::/　　　　　／´　　 |: │

45 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:18:03 ID:TnLt0E5c0

　　　　　､-ー'｀Ｙ＜,__＿
　　_＿≦ー`__＿　_二ｚ<＿
　　＞７￣､-‐ ´￣｀'┴＜
　＜之′Ｙ´／　　　　　　　＼
　　 >{　 ,' 　| ､　,　,.　 ,.l　　, 　ﾞｉ　　　　ところで、
　　 |　!､{　　| 寸寸T　ハT７} ｨ,ｌ
　　 ′Ｊｉ, ﾞｉﾞｉ（ ●）　（●）|ハ|　　　　何を探していらっしゃるんですか？
　　　　i⌒ヽ'(1. ''' 　＿'　 ''' ﾉ川／⌒)
.　　　ヽ　ヽx＞､（_.ノ__,イｌ |::::ヽ／
　　　　 ∧　人lﾊ:::::l,三|:::/ｌ|　,:::::ﾊ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ﾊ:.:.:.:.:.:.:.:.'､､_　　　　　　　 l:.:.:.:.:.:.:.:.:.`ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 !:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/ ヽ;.:.:.:.:lヾヽ　｀ﾃ,＝＝､― l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 !:ﾊ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.! -,ｲﾐ､:.:.:', 　　´ iノﾊ::}　> ,':/＼:.:ヽ､-‐
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l/ ';.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l / lｲ::i `ヾ､　　　弋_ジ　　〃 !:.:.:`ーﾐ､:.:.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ:.:.:.:.:.:､:.:.ﾍ`弋ﾂﾉ　　　　ー　　　 l:.:.:.:.:.:.ﾊ ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼:.:.:.:.iヽ:.ヽ、´ ヽ　　　　　　　　　　u　l:.:.:.:.:.:.:ﾊ }
薪になるようなものさ。　　　　　　　　　　　　　＼:.:',:.:l ｀`　　 , -－､　　　　　　　　l:.:.:.:.:.:.:.ﾊ'
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　!`ｰﾍ　　　 i:::::::, -‐ヽ　　　　　　 ,!:.:.:.:.:.:.:.:',`
何しろ暖房が止まっちまってるからねえ。　　　 !:.:.:.:.:ヽ.　　 ';::/　　　〉　　　／l:.:.:.:.:.:.:.:.:i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　!:.:.:.:.:.:l ＼　ヽ＿ノ　　　　　 !:.:.:.:.:.:.:.:.:!
寒いったらありゃしない。　　　　　　　　　　　　　!:.:.:.:.:.:l　 , ゝ、　　　　　　 , -‐l:.:.:.:.:.:.:.:.:.!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l:.:.:.:.:.:.l／　　 `ｰ--－､'　　.／　i　l:.:.:.:.:.:.:.:.:.!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 !:.:.:.:.ｨ´ ゝ-,‐‐- ､　　　ヽ_／　';.:.:! .l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l:.:.:.:.ﾊ. 〈:.:.i　　　　`r‐ｧ´　　　 !:.ﾄ､!:.:.:.:.:.:.:.:.:.l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l:.:.::.:.l ＼､:.!　　　 /:/　　　　　ヽ:.:!:.:.:.:.:.:.:.:.:.l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 !:.:.:.:.l /　yゝ.、　〈:.:{　　　　　, ィﾍ:!:.:.:.:.:.:.:.:.:.l

46 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:19:18 ID:TnLt0E5c0

┌────────────────────────────────┐
│「シャンゼリゼ通り」を車で突き進んでいくと、だんだん気が滅入ってくる。　　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..│
│通りの両側が完全なる左右対称をなしている。　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
└────────────────────────────────┘

::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::＼＼ ;;;;;;|:::|__|ﾞl
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::＼＼:::| | l:ヽ＼
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ ::::: ＼:| | l｀ll.ﾞミ＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(ﾞ;;(ﾞ;;,,,　;;)
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ヽ::::| | l__ll｀ll.ﾞミ＼　　　　　　　　　　　　　　　　,,,,　　(,;;;; ,,,,,;;;;;;;;;;;）;;;;;）
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: | | l　│]|[]|ミ.＼　　　　　　　　　　　　　(ﾞ;;;,,,,　(ﾞ;;;;;;;;;;;;,,, ,,;;;　;;;;,;>)
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿ _ _ _ _ ! | |i|''''|i| 　l“』 :'ヽ＼　　　　　　　　:::::)　ゞ;,,;;;;,,,,ヾ ;;;;;;;;;,,,,, 　,,,,;;;)::;;lliｒ）
:::::::::::::::|　＼　　　　　　　　　　　　　＼!|i|'.'.|i|'.'.|i| 』l|　』;;;;ヽlll　　　　　(::::::::::）::(;;,, ,;;,　ﾞ'､ ;;;;;;;;;; ,,,;;;;;ｌｉ;;;;l;;;/
:::::::::::::::|　　＼＿＿＿＿＿＿＿＿＿＼!.,|i|,,,,|i| 』l|　』 'lr-､ﾞll　　　　ゞ,,,;;;;;;,ﾉゞ,,,;;;;;;,,,　ゞ,,;;;;;;ﾘ(;;;;;;;;(丿
:::::::::::::::|￣￣￣ヽ～～～～～～～～～ヽ:..,,,,|i| 』l|　』!』l|　』|　　　　ヾ_;iil;;' ゛ヾ_;;iil;;' ~ﾞヾ;;:il;;;ﾚ';''''''ﾞ~
:::::::::::::::|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| | |　|:: |／|l!i!i!|. lllllllll-l::l:::l　|　.|　　　,,-、 |;:|.　　　　 |,ii! 　　 l;l;ii;/
:::::::::::::::|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| | |　|:: |＿|l!i!i!|. lllllllll'll:.l:;;l,,''l,,-"　　　丶ヽ,|;:|ヽ　　 |;liｌ　　 |;i|lｌ|
:::::::::::::::|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| | |　|".|　 |l!i!i!i￣~l;;;;;;;∩;,-"　　　　　　＼ヽ､~:;;,,,,､ｰｌ;li;|ｰｧ、ｌ;iil;;!
__ .. .--|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| | |　|　|　 |l!i!i!|　　|;;;;-"　　　　　　　　　　＼r'''ヽ, lｌ~~lｌ~~lｌ~~ll|lil;;:ｌ--ヽ,
!.　　　|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| | |　|　|　 l:i!:!|l,- "　　　　　　　　　　　　　　＼γ'ヽ､,`ｌl＼~~ll|;lli;;|~,　ｌｌ＼,
!.　　　|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| | |　|　|,,,.-"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼γ'ヽ||,;; ｌｌ~~ｌｌ~~ｌｌ~~ｌｌ~~ｌl
!.　　　|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,| | ,.-- "　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 """""""~~~~~~~~~~~~~~
!.　　　|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,,,,.. .-- "
!.　　　|;;;,,,,.. .-- "
!,,,,.. .-- "

47 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:19:43 ID:TnLt0E5c0

┌──────────────────────────────────────────┐
│しかも、建物は完成しているのだが、光熱下水工事が済んでいないため、ことごとく無人である。　　　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　....│
│ホームレスがかなり住み着いているらしいが、その気配は感じられない。　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　....│
│こんなところに一時間もいたら気が狂ってしまうのではないだろうか。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　...│
└──────────────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　＿　　_,
　　　　　　　　＿__,＞Ｙ´'ー-､
　　　　　　　＿>ｚ二_　＿__`ー≧＿_
　　　　　　　＞┴'´￣｀ ‐-､￣７＜
　　　　　／　　　　　　　ヽ｀Ｙ′之＞
　　　　 /　 ,　　l、　、 ,　､ |　ヽ　／}
　　　　ｌ ,ｨ {７Tハ　T寸寸 |　　}./　/ 　　　__
　　　　 |ハ |三○三三○三/ //　/　 .　／ .ﾉ
　　 (＾ヽ{　ヽ|!!!!!!ｒ‐-ｖ､!!!!!「)'/|/　厶-　´ ／
　(￣ヽヽ　iヽ､_　ｌｉｌｉｌｉｌ|__,.ィT/　　　　／
.(二ヽ　i　i　|,r‐i 7Eニ::r一'´　ー､　　￣￣￣）
　　ヽ　　／　ノ'ｲ／ヽ:ー―.　､＿_　.〈￣￣
　　 i 　 {　　ｲ:::: i´￣｀l::::::::::::::::／＼＼
　　　ヽ.　`ｰ '/::::::| 　　 |'￣￣　　　　ヽノ
　　　　　 `ー ' ￣

48 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:20:18 ID:TnLt0E5c0

┌─────────────────────────────────────────────────┐
│「シャンゼリゼ通り」の突き当りには、「人民宮殿」と名付けられた馬鹿でかい建物があった。　　　　　　　　　　　　　　　....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.│
│パノラマ写真で撮影しても、左右が収まらないほど巨大な建物で、これがチャウシェスク一家の住まいだった。　　　　　..│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.│
│毎夜のように催された宴会でここの大ホールの照明が点灯されると、ブカレスト市の半分は停電になったという。　　　 │
└─────────────────────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｜|｜
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 | .|: |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｜.|:::|
.　　　　　　　　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿|_.:|::::|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　　　　　　　　| |ﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛ|ｌ|ﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛ| |ﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛ|ｌ|ﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛ |
　　　　　　　　| |ﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛ|||ﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛ| |ﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛ|||ﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛ |
　　　　　　　　| |ﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛ|||ﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛ| |ﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛ|||ﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛ |
　　　　　　　　| |ﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛ|||ﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛ| |ﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛ|||ﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛ |
　　　　　　　　| |ﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛ|||ﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛ| |ﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛ|||ﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛ |
　　　　　　　　| ||||||||||||||||||||||||||.||＼＿＿ﾟ.｡＿ﾟ｡＿＿｡ﾟ＿｡.ﾟ＿＿／|||||||||||||||||||||||||||| |
　　　　　　　　| ||||||||||||||||||||||||||.||　 |　|　　|　|　|　| |　 |::::::| |　|　|| |||||||||||||||||||||||||||| |
　,; '"￣｀ﾞ; 　 ,ｌ'"￣｀ﾞ',ｌ|||||||||l;'´￣｀ﾞ=========================|l'" ￣｀ｌ|||l,-‐-､,| |　,;'"￣｀ﾞヽ
　ｉ;;::..　　 i　 |;::.　　　ｉ|||||||||||;.　　　 i|　|　　|　|　|　| |　 |::::::| |　|　| i;.　　　　　　　　　ｉ| |　ｉ;;::..　　 i
　ヾ;.;.;.;.;,.ノ　ヾ;:.;....,ノｌ||||||||||lヾ;:. ,,.ノ========================ヾ;.,　　,ノｌ||ｌ､,,;,.,,ノ| |　ヾ;.;.;.;.;,.ノ
　　　｝|　　　　| ,｝|￣|￣|￣|￣.｝|||二ニlﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ|.　 |::::::|ニlニ二||￣｝| ￣￣｝| |￣|　　　｝|
￣￣￣￣￣￣￣￣ r‐'二l二ゝ--､￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
￣￣￣￣￣￣￣￣└○┴┴○‐'￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣

49 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:20:43 ID:TnLt0E5c0

┌──────────────────────────────────────┐
│それにしても、「人民宮殿」とは、すごい命名だ。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.│
│どこか少女時代のアーニャの言葉遣いの美意識に通じるものを感じてひとり苦笑する。　　 │
└──────────────────────────────────────┘

　　　　　　＿＿ィﾍヽ　,イ￣㍉
　　　／　　　｀ヽ} Y　イ＝ヽ
　　 ∠ ,ォ――-＿　＿＿ミ、　＼
　　イ　　／´/　/　/　丶｀ミヽヽ
　 ./　, - /　 /　　　　　　　　　　　ヽ
　/ ｲ　 /i ／　　　　　　　　　　　　　ヽ
ｲ'　,{　/　'　　 i　　　ｨ　　　　　　　　　　ヽ
　 / }ｲ　ｉ　　　|　　/.| ./|　　　,　　ﾉ .i　　 i
. /　{ i　.|　 | . |　./　|/ .| 　ィ　ィ　 |　　 l
/イ 7ﾍﾘ　 | .ｲ / 　 '　 |.／ |.／ | ./　ｨ .|
'　 /　 >,i　 |/.|/　￣￣ ' 　 .!'￣ |/ 　/ }/
　/-イヽ{　 {　, ＝≡≡　　≡≡ !　 , ‐-､
　　　| ./|　 |ヽ、　　 (二つ _ー (　　　ﾉ）
　　　|/ .| .∧　|ぅr-,、-r 、＜ｲゝ、＿ノ
　　　　 l/　ヽl /｀" ム　ヽ/ |/
　　　　　　　　ｲ　　　　i
　　　　　　　 |　　　　|
　　　　　　　 |　　　　|

50 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:21:33 ID:TnLt0E5c0
┌────────────────────────────────────────────────────┐
│このグロテスクな廃墟が果てしなく広がる荒野にポツンポツンと、まるで蜃気楼のように瀟洒な建物が点在している。　　　　　　│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│市場を開いたルーマニアにいち早く乗り込んだ多国籍資本のホテルだ。建物の中は一瞬パリかニューヨークのホテルに　　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│いるような錯覚を覚える。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.│
└────────────────────────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 | | | | | | | | | | | | | | | | |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿|｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|. 　　 Hotel Grand Palace 　　 |｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　─ ── ── ── ─　　 |｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　┌─┌─┌─┌─┌─┌─ |｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢
　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿＿＿＿＿＿_|　┌─┌─┌─┌─┌─┌─ |｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢
　　　　　　　　　　　　　　　 |　 ─ ── －　　　　　┌─┌─┌─┌─┌─┌─ |｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢
　　　　　　　　　　　　　 i,　|　 lエl　lエl　lエl　lエl　 ┌─┌─┌─┌─┌─┌─ |｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢
　　　　　　　　　　　　 |i　|　┌─　┌─　┌─　 ┌─┌─┌─┌─┌─┌─ |｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢
　　　　　　　　　　　 ==================================================|｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢
,,...,　　　　　|￣￣|＼＼|l工l工l　├┤l工l工l　├┤l工l工l　├┤l工l工l　├┤l工l工l|／￣￣￣￣￣￣|｢｢｢｢｢
ゞ;ゞ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|＿＿＿_|｢｢｢｢｢
t'ゞ;;'tyﾒ;;,,lエエエエエl　lエエエエエl　lエエエエエl　lエエエエエl　lエエエエエl　lエエエエエl　|＿＿|　 |｢｢｢｢｢
YゞKゞヾﾒヾ`ゞ､,,､.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |.HHH|!　|｢｢｢｢｢
kゞ,Yﾊ'ｿ;ヾﾍゞYｿYゞ､,l　lエエエエエl　lエエエエエl　lエエエエエl　lエエエエエl　lエエエエエl　|二二|　 |＿|￣
ゞt;ゞヾ〃ゞYゞﾍゞヾﾒt' rｿ';tゞ;ｯ';'ゞ;ヾゞ、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |.HHH|!　|　 | =
ヾゞtゞkゞゞ;l!_kﾒ'ﾇﾍゞ;k",t'ｯ';;'ﾒ;y;ゞ; ヾゞﾞゞ""ヾ､エl　lエエエエエl　lエエエエエl　lエエエエエl　|二二|　 |＿| =

51 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:22:10 ID:TnLt0E5c0
┌─────────────────────────────────┐
│一泊三〇〇～五〇〇ドル。ここに泊まって日に何度も　　　　　　　　　　　　　　......│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│
│「先進国」と「途上国」を往復するのは神経が持ちこたえられないと思った。　　　.│
└─────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　／　　/　　　　　　　　　　　　　从　　　　　　　＼ゝ
　　　　　　　　　　　　/　　　 i　　 |::::　ヽ　　　　　　　　　ゝ,　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　　　　 .′ '　　ﾊ　　ヾ:::　 |＼　ﾊ　| 　ヾ;.　 |:::::　　　　ヽ　|
　　　　　　　　　　 | | │　/-＼-　ヾ　|ニ| /-i!│　 |: i::::::ト.::::　　　　 ∨
　　　　　　　　　　 | | │ﾊ／　　　、　 │　　　　ヾ|　 /　i::::/:::∨ヽ::::::　/
　　　　　　　　　　　 |ﾊ　Vｨ＿＿, 　＼|､＿＿＿　 /／ ,/ V:::::::::::::::（::::::!|
　　　　　　　　 l　ゝ＼￣　　　　　￣　　　イ／/ ) |:::::::::::::::::::＼ |
　　　　　　　　　　　　　「 ` 　　ヽ　　　　　　／jｲr '_ノ::::::::::::::: ﾊ::::ﾉゝ
　　　　　　　　　　　　ﾊ　　　　　　　　　　　　 rイ:::::::::::::::::::::/
　　　　　　　　　　　　　　　ゝ.　　-　-　　　　　 ..イﾊi!:::::::::::::: //
　　　　　　　　　　　　　　　｀　．｀　　　 .　'′ |　ヾ.::::::::::::ﾊi
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＞- r_ﾉヽノ＼／|　 ∨ゝ::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　)::::::::::::::::::::::::::::::{.　　　 `
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ノ:: - ―　… ...－::` …‐- ､
　　　　　　　　　　　　　　　　 _ .．' :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　::::::::::::::::: /::ヽ.::::::::::::::::::::::::::::::::: /::::::, :: ,
　　　　　　　　　　　　　　　.:::::::::::::::::ノ::::::::::ゝ::::::::::::::::::::::::|:::/:::／:::::::|
　　　　　　　　　　　　　　　.::::::::::::::::::/| _:::ノ￣｀ヽ _::::::::::|/／:::::::::::::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /ノ　　　　　　　　ヽ:: |.':::::::::::::::::│

┌──────────────────────────────┐
│それで、外資系ホテルではなく、社会主義時代に　　　　　　　　　　　　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│外国人用に建てられたという一泊一〇〇ドルのホテルに泊まった。　　.....│
└──────────────────────────────┘

|＿＿|　　|＿＿||＿＿|　　|＿＿||＿＿|　　|＿＿||＿＿|::::::| |／
　　　　　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿__,　　　　　　　　　　 |
,,_＿＿＿|＿MONATON ＿_HOTEL ＿|＿＿＿＿__,,　　　|　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼::::::|　／
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛::::|／
　三|| |::||　　　　　　　　　|　　　　　　　　　||::::| ;;三|　　　　|
　三|| |::||　　　　　　　　　|　　　　　　　　　||::::| ;;三|　　　　 |
　三|| |::||　　　　　　　　　|　　　　　　　　　||::::| ;;三|　　　　 |
　三|| |::||　　　　　　　　　|　　　　　　　　　||::::| ;;三|　　　　 |
　三|| |::||　　　　　　　　　|　　　　　　　　　||::::| ;;三|　　　　 |　　　／
　三|| |::||　　　　　　　　　|　　　　　　　　　||::::| ;;三|　　　　 |　／
　三|| |::||　　　　　　　　　|　　　　　　　　　||::::| ;;三|　　　　 |／
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣

52 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:23:15 ID:TnLt0E5c0

┌────────────────────────────────────────────┐
│どぎついピンク色の絨毯に紫のソファーが並べられたロビーは、薄暗くニンニクの臭いが漂っている。　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│
│ルーマニアがドラキュラの故郷であることを思い出す。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
└────────────────────────────────────────────┘

　 |　 |　 |　 |＿|／: : : : : : : : :　:　.　　　　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　 |　 |＿|／: : : : : : :　:　.　　　　　　　　　　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
＿|／: : : : :　:　.　　　　　　　　　　　　　　　, -┴───── ､, ─────── ､＿＿＿_,|
: :　:　.　　　　　　　　　　　　　　　　 , ─i￣￣￣￣￣￣￣｀ｉ´￣￣￣￣￣￣￣｀ｉ─- ､┘
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　 /|　　　　　　　　　 |　　　　　　　　 | 　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｉ´￣｀ｉ |＿_＿＿_＿＿_＿_,|＿＿＿＿＿＿＿＿ｉ´￣｀i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　 |/　　　　　　　　　　 |　　　　　　　　 |　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　 |´￣￣￣￣￣￣￣｀ｉ´￣￣￣￣￣￣￣｀|　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　 | 　　　　　　　　 | 　　　　　　　　 |　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l_／￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣||＿＿|
　　　　　　　　　　　　　　　　／＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿|─┘
　　　　　　　　　　　　　　 , ────────-､, ─────────､＿__]
　　　　　　　　　　　　 , -i￣￣￣￣￣￣￣￣￣Υ￣￣￣￣￣￣￣￣￣├─┐
　　　　　　　　　　　／　 '─────────┴─────────┘　　|
　　　　　　　　　　　ｉ´￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣｀ｉ
　　　　　　　　　　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　 |＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿|
　　　　　　　　　　　 : :└─┘: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : └─┘

53 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:24:14 ID:TnLt0E5c0

┌─────────────────────────────────┐
│部屋は毎日申し訳程度にしか掃除されていないみたいでやたら埃っぽい。　　　.│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│
│それでも、シーツは清潔だったので旅の疲れを寝薬に眠りに落ちた。　　　　　　 │
└─────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　　､　　__
　　　　　　　　　　　　　ｨ　‐､|V´ <
　　　　　　　　　　　　／__/:＼∧. :.＼
　　　　　　　　　 __／￣. : . : . :⌒ヽ. :＼　　　　 __
　　　　　　　　　 |/. : . :,-､. :斗- ､.:|. : .|ヽ＝＝＝| |
.　　　　　　　　 |l. :|. : _l__!.:.:｣_｣i__ :!.:ｌ.:.!|　　　　 .| |
　　　　　　　　　ヽi: |.:ー)＼|ー).:l :l./:!.:./　　　　 | |
　　　　　　　_rーー‐‐- ､ _ 　''iﾚ!ｲ /ﾚ￣ヽ.＿＿_| |
　　　　 __ノ￣￣￣￣｀ヽ__`-ー´⌒ヽ＿ノ　　／| |
　　／￣　　　　　ヽ_　_　　ーー　ヽ__　ヽ、. ／　 | |
　ノ　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ヽ／| 　／| |
/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　)　|／　|_|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　|　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　|／

54 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:24:40 ID:TnLt0E5c0

┌────────────────────────────┐
│翌朝一階の食堂の不潔さと、朝食の不味さに胸を突かれた。　　　...│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│給仕の女たちは思いっきりふてくされている。　　　　　　　　　　　　　 │
└────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿　　＿　_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　, 　-‐ｲ　　　ﾄ　-┤　　　ﾌ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_　/ ＼　　}　　　i　　 )　　/ヽ _ /＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼　　 ,.　-‐ 　￣￣　　｀ﾕ　　　　　i
　　　　　　　　　　　　　　　　　r、　　｀／　　　　　　　　　　　　　＼　　｀y´ ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　/ .＼ .／　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼,´ 　／
　　　　　　　　　　　　　　　　ｨ-‐ ,／　　　　　　　　　　　　　　　　　!　　　　　　／　￣)
　　　　　　　　　　　　　　　　　／/ 　／　　　　　　　　　　　　　　　i　　　　　',　　.r´
　　　　　　　　　　　　　　　　 /. /　　　 ,. 　　/.　 l 　　 i 　　　　　 l　　l　　　／ /
　　　　　　　　　　　　　　　　 ,'　　　　/l　　/,　　l 　　ﾄ　 !ヽ　',　　　 .l 　　 ',　 {
　　　　　　　　　　　　　　　　! 　　　　i　l　/ {.　　! 　　| ヽ　! ヽ　', 　　　l　　　l 　＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　', 　　 !　i.　V 　ヽ.　!∨　|　ヽ !　ヽ　', 　　 l 　　 l　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　',_/ 　!孑ﾁ坏≧xヽ! ∨ |´,.ォ==zｪｭ ',　　 l　　 !＿／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　',　ハ　 { lo}　　 .'ｖ !´　Vo　}　ﾘ }　　l　l 　!　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　-‐´ 　 ', 　　、弋ﾉ　　　ﾍｊ　弋_ﾉ . //. 　 l 　| ./ , '
　　　　　　　　　　　　　 ,' ,ﾍ　　　　 ',　∧　　　　　　　　　　 /／　　ｨﾄ-
　　　　　　　　　　　 {/　{　　　／　゜ .　、　　　｀　　　　　／　　　/ i ! 　　i
　　　　　　　　　　　　　i　 /.　　,!　　ｨ　　ヽ　　　＿　　　　　 /　　／ / 　　イヽ
　　　　　　　　　　　　／　／t _／、　　＼　　　　　　＜l 　／　　　／　ヽ　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　￣}/ ＿／　｀ヽ--‐‐/｀. ┬　＜.　 / ／ / 　/ 　/　　　　ヽ |
　　　　　　　　　　　　　　　/ 　∨.　　　 }::{　／　　 } 　　　　{ 　／{　/}. /　　　　　　/
　　　　　 , 　　　　　 ∧_／＼　　 /::/./　　　 / 　ィ ´　イ　 ∨ !/
　　　　　　　　　　 _　　{ / .　　　＼/::/ /　　　 ./,ｨ'´　｛　／　/　ヽ-‐ 　────、
　　　　　　　　　　 }＞o＜{__＿／／　!＿　∠ 　＼ }＞o＜{/　　/:::::/ 　　　　／
　　　　　　　　　　　　ﾊﾍｹ　／〈　　　　　〔ji|{〕　}　ﾊﾍｹ/. 　　/:::::/　＼　　／＼
　　　　　　　　　 {ﾘl|!l}／:::::::::',　　l 　　 /:::|:::l　 l　{ﾘl|!l}　　　/:::::/　　　＼{　　　＼
　　　　　　　　　　ﾊｿ{::::::::::::::::',　　　.／::::::|::::l 　l ./ﾊｿ　　/::::::/　　　　　!ヽ　　/
　　　　　　　　　　　　　ﾘ./::::::::::::::::::',　　/:::::::::::|::::::l　ﾚ　ﾘ　　 /::::::/ ＼　／　　　　{
　　　　　　　　　　　　 l::::::::::::::::::::::',　〈:::::::::::/:::::::l　　　　 /::::::/　　＼{　　　　 }

55 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:25:10 ID:TnLt0E5c0

┌──────────────────────────────────┐
│生焼けのパンも、ニンニク入りの灰色のソーセージも、　　　　　　　　　　　　　　　　..│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│どろりとした果物のジュースも、好み云々以前の不味さである。　　　　　　　　　　　..│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│食材の貧しさもさることながら、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│いかにも投げやりに作られた料理の向こうに荒みきった人々の心が見えた。　　.....│
└──────────────────────────────────┘

　　　　／＼ヘﾍハ/ヽ､
　　　／　 , ヘ＿／ヽヽヽ
　　//　 /／＾´￣｀＾＼＼ゝ
　_,// 　〃 ,　 ,　　　　､＼ヽ､
,ノｲ| l/　//ﾊ|　　l | ﾊ| 　 lﾊ|`
　　小| 　l/ﾅ弋　 |.lﾅﾅ|　l |
　　l从　|（三）＼（三）|,ﾙﾘ　　（不味い・・・）
　　ノﾊ小ゝ　　＿　　ｲ|./
　　　　//＞ -.|￣T |-イi　　　　ｽﾞｽﾞｽﾞ
　　　　{{〃｣:^^|___(⌒.)
　　　　　／:::::::::　　|::＼.＼
　　　　/:::::::::|￣￣￣:l.:l　　〉
　|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|

56 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:25:35 ID:TnLt0E5c0

┌───────────────────────────────┐
│アーニャが思い出帳に記した住所を訪ねたのは、朝食後である。　　　　　...│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　....│
│車で移動していくと、いつのまにか、街並みがガラリと変わっていた。　　　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　....│
│まるで公園の中を走っているかのようだ。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　....│
└───────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ ──────────‐ ﾆ=-､._
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　ヽ＼
　　　　　　　　　 r ‐;　　　　　　　／　　　　　　　＿＿_　　　　 r ‐;　　ｉ　　 '､ヽ
　　　　　 , - = ﾆゝ- ‐ = - ─‐‐' ´￣￣￣￣￣_,　 -　￣￣￣｀ー'‐-､_j_＿__j_ ノヽ、
　　　　／ ,　-､　　ｱ ─ ─ ─ ─ ─ ｱ ─ ‐ '´　　　　.... , - ､　　ｖ　 ',　　　　=｡､　ヽ、
　　　/､　 - ' ´　　　　　　　　　　　　　ヽ､_　　_ )　 ...:::::::/;;;;::::::ヽ　＿　',　　　　　!,r::､ i
　　/ .／￣|＝==============ｧ'´￣￣｀ヽ｀.....::::::::::::::://::::ヽ::::i　|　 ! 　!　　　　ﾘ;:i::i ()
　 (ﾆ〈（::::::::!| |ｰ----r-----‐〈〈 .::::（::::::::::）| (ﾆﾆﾆﾆﾆ7,':::/ ヽ:i::::! i　ｉ　ｉ　　　　〃 ';:ﾘ/
　　ヽ<ヾ､_.ﾍ.ﾊ┬─┴─┐＿_L'､ :::ヽ::::ノﾉ (ﾆﾆﾆﾆ７/i:::!　_ !:i::::i/　,'　 ,'　　　〃rq:ﾚ'
　　　 i｀ー二､.-| 2000GT.|-----｀ｰ──"　　　　／;::i::i /q i:i::/'　/　,.'＿ ,. -'ｲ;　 ;::!
　　　 .!::;::;::;:ｉ｀└───┘三三ゝ----- - - ‐1":;::;::;:i::i し i::ﾚ　-' ＿ ,,..-r:‐":';:'､/::i
　　　　',::;::;::;',:::::::::::/￣￣￣￣￣　　　　　　　　 i::;::;::;::;:i:::'､_/::!￣￣　　　ヽ;;;;;;;'､;;ノ
　　　　ヽ;;;;;;;'､;;;／　　　　　　　　　　　　　　ヽ;;;;;;;;;;'､;;;;;;/

57 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:26:27 ID:TnLt0E5c0

┌──────────────────────────────────┐
│マロニエの並木が豊かな枝を拡げる大通りの両側に幅の広い歩道があり、　　　....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│その向こうに生い茂る樹木の中、美しい建物が見え隠れする。　　　　　　　　　　　 .│
└──────────────────────────────────┘

　;;;;;; ; ;ゞ;;ノ;ノ″ゞ ;" "ゞ; ; ; ゞ゛;ゞ:.y.ﾉゞ ; ;ヾ ;;" ゞ゛）;ヾ ; ;ゞ ;"ゞゞゞ; ; ; ヽ;;ゞ; ; ; ゞゞ
:;;;　;;;;.....:::/ゞ ;" "ゞ; ; ; ゞ゛;ゞ:.y.ﾉゞ ; ;ヾ ;;" "ゞ; ; ゞ(.ﾉゞ゛ ; ;ヾ ;ゞ＼:::;　;;;ゞ゛;;ヾゞ ; ;
;....;;;::::;i;..ii|ゞ ;" "ゞ; ; ; ゞ゛;ゞ:.y.ﾉゞ ; ;ヾ ; ;ゞ;" "ゞ; ;ゞゞ (ゞゞ ; ; ゞ゛;ヾ ; ;ゞ;iii;;i;;;:.,,;;:.:::,,,
::::　;;;..;.ii:i| ; ;";;;;"ゞヾ:;;__;/"ゞ ; ;"/" ヾ ;ゞ;　(　ゞ ; ;ゞゞ ;" "ゞ; ; .ﾉゞ;;ヾ;;|ii::i;;....:....:::... ..
::..;;;.::..　:ii| ;; ;ゞ;;ノ;ノ″" ヾ ;ゞ ;" "ゞ ; ;;;)`(ゞ;ゞ ; ;ヾ (;ヾ ;;ゞゞ;";ゞ;＼:__;::;;;..::.;; :::...;...; :
:::.::;.;;;.:i;:iii|;;;.....:::/ゞ゛;ゞ:.y.ﾉゞ ;" ノヾ ;ゞ ;" ":ゞ;;ゞ ; ;ゞ（ ;;"＼:__;;ゞ;|ii;;;iiii;;.|iiii.i....:::. ;::::,,,
:;;.:.　..;;.ii;i|;;..;;.ii;i|;ノ;ノゞ゛;ゞ:.y.ゞ ; ;); ;ゞ ;"; ;ゞ: ;" "ゞ;　(ゞ ; ;ヾ ; ;;ゞ|ii::i;ii;;.|ii::i;ii;...::,,,;;. .;;
;;;....;;::;...;;ii|;;.;;ii:i;i|.;;ゞ:/ノ;ノゞ゛;ゞノ:.y.ゞ ; ;ゞ)ﾒ:(;;ヾゞゞ ; ;ヾ ; ;ゞゞ|ii;|ii::i;;ii;.|i..iiii.:::. ;;;..::,,,;
::;...;;:..;i...iii|;;.;;ii;;:;i|i;;;;i|.;;i| ノ;ノゞ ; ; ;ゞゞ;;ヾ )'　.(ゞ; ; ゞ;ゞ;; ,|ii|iii;|ii;;|ii;i|.ii;ii;..:|ii::i;:...:::::,,,;;;::..
:..;;;.;;;.:;:;i.;ii|;;.;;i;;:;i|;ii:;i|.;;i|;i|;i|.;;.i./ 　; ;　　　　　　.:;ﾍ;;.,ヾi,;;|;ｉ|ｉ;|i;i|ii;i|ii;;|ii;i.ii;;:|ii.iii,,;;:.:::,,,;;..,.:
;;;....;;::;...;;.ii|;;.;;ii::;ili;;iiｉ|.;;i|;;|;i|ii|/ : : : :´: ::: : : :: ;: :`: .: : .:,.:.lii|;ｉ|;;i|i;;;;|ii;;|ii;ii;;;i.|.iii::. ;...;;;...:::. ;
::;...;;.;;ii:i;;;:;i|;;.;;ii::i|;;i:ii|;i;i|ii|;;|ｲ; ／　 .,,,.　　 ,.., ,.,　　、　 .|;;|ii;|ii:;;|ii:i;|;;ii:i;;.;|ii:::i;;;:;i;...;::;.;;..
::;...;;.;;;;ii:i;:;i|.;...;iiii|;;i:ii|i;;i|iii.ｨ／..,. 　, ,.　　　 .,.　 ,..,,,　`　, .,,.,.iii|i;i;;|iii;;|.;;ii:i;;;|ii:i;;;:;i::;...;::;.;;..
::;...;;.;;ii:i;;;:;i|i;;i:i:;ii|i;;iiｉ|;iｉi,／': ,..　,.,../　　　　 ,,,.,.　,..　,,,ヽ　; ii:ii|ii;.i|i;;iii:i;:|i:;.i:i;;;:;i:..;;.;;:::;;
::;.;;:..;;.;;ii:i;;i|;;i:iiｉ;ii|;ii;iii／´　　 ,,.. ,　　　　　.　,..　,　. ,..　　　＼. iii;iii|ii:i;;;:;i|i:i;;;:;i::;...;::;.;;...
.;...　.;;:.;:;iii;i|;;i:iiiiｉ;i／ ´,,.. ,..`　　/,.,...　　　　　　　 ,,,.,.`　,..,,, ｀＼　ii:iiiiｉ;i|iii;i.;...;;.;;:.; ::;;;;;
iii;;ii:i;;i:i;:;iii;;ii ,,／／.　,.,...　　,,,..,　　　　　　　　　 ,..,,,　　　　.,,.＼＼ .,,　iii;;ii:i;;i:i;:;iii;;iiｉ;;ｉ
;_:.,.,,;l ill lノ／／　:.; :. ／　.,./　__,.;'＿＿l＿＿';＿＿ﾍ＿　_:,＿:.:＼＼　` ,l|: .;lii l::;l,, ..
　　　／／￣／￣￣厂　 7　　　l　　.,.l　.　　ﾍ., , 　＼　;; ;: 　＼＼ ::.;.:;:;,:;:;,:;,:;,:;:

　　　　　,､-'´　　-‐'''"´ｲ　/-―‐､
　　　／　　　　　　　　/ﾐ､/彡!　　ヽ
　　/　　　　　　　 /　/‐―ｚ'=|　　　',
　 /　　　　　　　/|　/　　　　|　| 　　',
　i　　|　　　　　/ | / 　　　 | |!
　l.,､-!　　　　　/ﾆ|/　　　　　,||-|　　 l
　',,= i　　　　 /´, Ｔヾ　　　ィ-ｧ- !　　l
　/ -|　　　　/ヽ-'|　　　　　じ'　 |　　l
　ｌ　（!　　　/｀ー' ´　　　　ヽ- ｲ　 l　　　ここが、キセリョフ通りですよ。
　ヽ､｣　　　/　　　　　　　ｌ　　　　|　.l
　ｒ'´ ｌﾊ　/　　　　　　　　　　　|　i　　　　えーと、番地は何番地でしたっけ？
. r┘　l　ヽﾄ-､._ ,､-‐――-､_,ィ/ |/
┘　ｒ-､ﾍ└‐‐‐`‐‐､..._,,､ｒ‐'-ｭ___
ヽｒ┘ 　｀ヽ,:::::::::::::| |:::::::/::// /　ｌ
-'　　‐--､_＼:::::::ヽ'､　ヽ!/／　｀''i_

58 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:27:33 ID:TnLt0E5c0

　　　　　　　　　　　　　＿　　_,
　　　　　　　　　　　＿__,＞Ｙ´'ー-､
　　　　　　　　　　＿>ｚ二_　＿__`ー≧＿_
　　　　　　　　　　＞┴'´￣｀ ‐-､￣７＜
　　　　　　　　／　　　　　　　ヽ｀Ｙ′之＞
　　 (⌒'Ｚ　 /　 ,　　l、　、 ,　､ |　ヽ　}< r-＾)
　　 ',　 '( 　ｌ ,ｨ {７Tハ　T寸寸 |　　}ノ /::::/
　　　＼:::＼ |ハ |（●）　（●）　/ / ,/ﾚ′:/　　ねえ、ここら辺で車止めて、
　　　　　＼:::＼ `| 　　ヽ　　　「)'/|/／::,.ｲ
　　　　　　　ヽ:::ヽヽ､_ 　― 　_,.ィT::::::／　　　　歩いて探しませんか？
　　　　　　　　ヘ:::｀l 7Eニ::ィ1::|::::::／
　　　　　　　　　｀ヽ:::'ｲ／ヽ::::'::::::/
　　　　　　　　　　　｀ i´￣｀ヽ:::|
　　　　　　　　　　　　j| 　　　Y

　　　　　　　　　　　　　　　｀`ヽ､
　　　　　　　　　　　　　　　 ,-- ､ヽ-- --､ ,. -‐'ﾍ
　　　　　　　　　　／　 ./＼.i／,'ﾊﾍ　　　　ﾍ
　　　　　　　　　　 /　　 /ﾞﾞﾞﾞ丶'´ﾞﾞﾞﾞﾞ∨ﾍ　　　ﾍ
　　　　　　　　　　　　/　　 /　　 , 　､　 ∨ ＼　　 ∧
　　　　　　　　　　　 7/　 7　-√　　 `‐=-i 　 .＼　　.ﾍ
　　　　　　　　　　　〃!　 i 〃¨`,　　〃¨`; |　　.!　ヽ　　ﾍ
　　　　　　　　　　 i.|　 i　　　　　　　 |　　|7:.:i:.ヽ,ィキ‐､　　　ああ、いいですよ。では、ここに
　　　　　　　　　　 ,--j　 i　 y､_＿'_＿ ,.-i　|　ﾘ':.:.:i:.:i¨ﾍ￣-　ﾔ
　　　　　　　 /:.:.､!:i|, .i,　 i::::::::::::::::::::::::i　.! 7ﾘ:.:./:.:.ﾍヽﾍイ_　!
　　　　　　　　 y､:.:.:.ﾍ:':ﾍ!ヽヽ::::::::::::::::::ノノ!7:.:::/:/:.:.:./ﾍヽ-' iﾔ
　　　　　　　 ∠:.:.>:.:.:.ﾍ:.:.:.:ﾍ＞｀二二´＜　7:.:.／:.:.／:.:.:ヽ､ .i　ﾊ
　　　　　　 /:.:.／:.:.＼:.:.＼:.:ﾊ､ﾍ　　 / _,-,〈:./:-i'":.:.:/:.:.:./-､iﾍ彳!
　　　　 i:.‐‐､:.:.:.:.:.:.:.＼:.:ヽ:.i`ヽ､_　　_／::::j:.:i:.:.i:.:.:/:.:.:.7:::::i／:.:.:.:!
　　　　ﾔ:.:.:.ﾍ:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ:.:.i::::::::::::￣::::::::::i:.:.i:.:.ﾍ:.i:.:.:.:.:i:.-'":.:.:.:.:.:.i
　　　　〃:.:.:.:.ヽ:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.|::::::::::::::::::::::::::::i:.:.i:.:.:.:＼:.:.:.:.ヽ､:.:.:.:.:.:.:.i_
　　　　　 |:.:.:.:.:.:.:.:.ﾍ:.:.:.:.i:.:.:.:.i:::::::::::::::::::::::::::::!:.:.:.:.:.:／:.ﾊ:.:./:.ヽ:.:.:.:.:.:.ﾍ

┌───────────────────────────────────┐
│通訳兼ガイド兼運転手の青年は、気軽に応じてくれて、車を歩道に乗り上げた。　　 │
└───────────────────────────────────┘

59 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:27:56 ID:TnLt0E5c0

┌────────────────────────────┐
│それでも、車は歩道側の三分の一しか占めていない。　　　　　　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│歩道に沿って個性豊かな、それでいて品の良い邸宅が並ぶ。　　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│田園調布を大きくしたみたいな本格的なお屋敷街である。　　　　　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│大使館として使われている建物も多い。　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
└────────────────────────────┘

ヽ..　　::::|　 ,i´ヽ
ヽヽ. 　:::|　 |　　＼
　 i i 、:::|　〕__＿＿＼　　　　ノ;ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　†＿＿＿＿
　　`: `: |　 |;;;;;|￣|￣|　　 _／;;;;;;;;;＼_　　　　　　 †__　　　　　　　　　　　　/ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;
　　 `: `:　.| ;; |＿|;;; | 　　|￣￣￣~|　　　　　　　　/ヽ/山　　　　　　　　　 //ヽヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;
　　　 ` ゝ |ｿ└ ┘;;;|　　.|:::| 口 |::::|　　　　　　　//iiヾ￣ヽ　　　　　　　　　 //　√;;;;;;;;;;;;;;;;;;
　　　 .|　 |;;;ゞ;;;;;;;／≡ヽ |:::|::.*.::|::::|　　　　　　 //:皿:ヾ　┌i　　　　　　　　　//　　　 l;;;;;;;;;;;;;;;;;;
　,-.､　 |　 |;;ゞ== //／　/ヽ::|　 . |::::|┌───// ﾄ＝ｲヾヽ| |　　　　　　　　ヽ | || | |　|;;;;;;;;;;;;;;;;;;
,i:::::::i.　.|　 |（( ─ )）ﾉ　〔（）〕::|　　|::::|_ﾉ;;;;;;;;;;;/L/四品四ヾ| |ヽ　　‡ 　　　 / | || | |　ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;
l i::::::l　 |───┬┬─￣|@.~￣　 ||ﾉ| /|／イ─────ヽ　ゝ／＼　　　/　　　 _,,.. -;;;;;;;;;;;;;;;;;;
|;;;i:::::|　.|ゞヽ .┌┴┴┐ | |ヽ＿　 |;| Kﾉ／ || ||ﾛ||ﾛ||ﾛ||ﾛ||;|￣|ゝ/￣ヽ　　/‐エ''"´──
|;;;i:::::|　.|l;;　　│Ｃａｆｅ.|　| |@/;;;;;;ヽ |;| |ﾑ-|‐|||──┬──||　 | /;;|[]|;;;ヽ─┌|┌┐l┌┐
|;;;l:::::|　.|;|ヾ;ｿ└──┘ | | .|　　　| |;| |＿.| .||ﾄ ─ .┴ ─ ┘___|_||~:[]　||;;ヾ l|;;|││|││
|;;;|.....|　.|;|　;;ゞ ...:::::|| .|≡| |┘　　└!;|| 乍.| ||┌田田田┐|　 |..||~:[]　||l─ﾉ|ヾ;;;i::;;ゞ;;;ヽｿ
|;;;|　 |　.|;; ヽヾ .. ::::|| .|三| | |　　　　ヽ. ヽi_,-,-,-,- ヾ;;;i::;ｿ┘|　 |..||~:[]　|||　/ ヽ────
|;;;|　 |　.|;; | | ゝゝ.─┘／／　　　　　　) )　! ! ! ! ! |───|─ ;;ゞ:::[] 丿|/─ヽへ [￣￣]
|;;;| 　|　 |　|:|= 　　　／／　　　　　　　＼＼──[.i───! i .| |ヾ　　ヽ─|[][| |;;;| .￣￣
|;;;| 　|　 |　|:|三三　// /　　　　　　　　　`'‐.､＿　||｀`'‐.._.| |ﾄ‐.､.､.._. ii .|　.|;;;;;| |;;;| 〔〕〔〕
i;;;|　 .| 　|　トヽ　　 l l .l　　　　　　　　　　　　　　｀`'‐.､､.._.|..|ﾄ'‐.､.､.._ | ﾄ‐--.､_____　　　＿
i;;;|─.|-'`|￣　　　　.| | | 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀`''‐.､､.._. | ﾄ‐--.､_____￣￣| | |
i;;;| 　.|　 |　　　　　　| lヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　`'‐.､　　　　￣￣ | | |
ヽ| 　.|　 .|＿　　　　 |　l ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ `'‐‐‐‐‐‐‐| | |
. l|＿ | ／／　　　　ヽヽ＼
. ||／／／　　　　　　i、 i、 i、
　　/　/　　　　　　　　ヽ. ヽ. ヽ.

60 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:28:30 ID:TnLt0E5c0

　　　　　　　　　　　ト .,_
　　　　　　　　　　＼＼　　　　　, ､
　　　　　　　　　　　　　＼ ', -==／　＞￣　==-　_
.　　　　　　　　　 /　＼',∨.:/　　　　　＼　　　｀丶
　　　　　　　　　 / 　　ヽ∨　　　　　　　　＼　　　＼
.　　　　　　　　 /　　　　　 ,、　　　　　　　　　＼　￢- _　ヽ
　　　　　　　　 /　　　　 ∧/_∨　　　　　　　　　＼　　｀　‘,　　　　　　ここは、戦前からの有名な邸宅街です。
.　　　　　　　 //　　　　,'　　　 V.　 |　　　　　　　　　＼　　ｰ-.i
　　　　　　　 //　　 i　 ,'　　　　 ∨. | ､　　　　　　　　ト　＼　　 |　　　　　　その昔は、貴族や金持ちのブルジョアが居を構え、
.　　　　　　 //　　　|　,'　　　　　 Ⅵ!　＼　　　　　　　　ﾍヾ、　|
　　　　　　〃| 　　 | ,'　　　　､　 | |_,.　-＼　　　　　　ハ　　 |　　　　　　第二次世界大戦後の共産革命の後、
　　　　　 /　.|　　{　| L二ﾕ、　￣|ﾘ┬===y＼.　　　　　 |ヽ　.!
　　　　　　　 |　　:', Ⅳ込ﾘヽ　　 }'　込_ン　/ Ⅵ　　　　　|｀　!.|　　　　　　労働者党のお偉方は昔の住人を
　　　　　　　 |　,　 ',|:! ｰ-　　　　　　　ー‐‐'　｜　　　　　| ﾉ/ |
　　　　　　　 | ,'　　　i　　　　　　　　　　　 |　 .!　　　 | ∧　￣ヽ　　　追い出して自分たちの住まいとしました
　　　　　　　 |ﾊ　　 ',　　　/　　　　　　　　　 |　.ﾘ　　.|Ⅵ､_　　/} j_
　　　　　　　　!　V　｜‘,　　ヽ　　　　　　　　　 | ./i　　｜ﾘ∧:iﾄ､　| ￣｀Y
　　　　　　　　　 ∨ | ', ﾍ　　　＿　__　　　　　 !/　i 　ﾘ:::::ﾉ }: : :＼ //　'
　　　　　　　　　 V{　∨ .ﾄ､　　　　｀　　　　　,. ＜　l　/ イ＜!､: : :.∧　/__
　　　　　　　　　　ﾘ＜∨: : ＞､　　　　_,.　≦-==ﾆﾆﾚ≦ニﾆ|: :〉: : : :}_　　}
　　　　　　　　　　Y´ : : :. |: : : iト- Т￣「 r--==≦二二二二ﾝ: : : : : :∧:＼{
　　　　　　　ﾉ!:...: : : :.! : : |ﾆﾆ! |　 .:| .|二二二二二二／: : : : : : : : :.}: : :Y-､
.　　　　　　　　 | : : : ∨∧:..:.|ニﾑ |　./ /二二二二二イ: : : : : : : : : :／: : :/: : :
.　　　　　　　　 |:.､: : : ∨:.! : |ニﾆ｜/ /ニニニﾆ＞'´ : : : : : : : : : ／: : :／: : : :
.　　　　　　　　 | : ＼: : ヽ: : :|「　ー-　 _ニﾆ＞'´: : : : :._,. : -‐ : : : : : : : : : : : : :
.　　　　　　　　 |: : : :‘ ,: : : :..|{ゞ'　　　o　} ': : : : : : ／.: : : : : : : : : : : : : : : : : : :
　　　　　　　 !: : : : : ‘ ,: : :|二二ﾆ=／: : : : : :.／: : :_: : :-‐─: : : ￣: : : : : : :

61 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:29:06 ID:TnLt0E5c0

　　　　　　　　　　　　　＿　　_,
　　　　　　　　　　　＿__,＞Ｙ´'ー-､
　　　　　　　　　　＿>ｚ二_　＿__`ー≧＿_
　　　　　　　　　　＞┴'´￣｀ ‐-､￣７＜
　　　　　　　　／　　　　　　　ヽ｀Ｙ′之＞
　　　　　　　　 rヽ,　　l、　、 ,　､ |　ヽ　}<　　一九八九年のチャウシェスク政権転覆後は、
　　　　　　　　 i　!７Tハ　T寸寸 |　　}ノ　|
　　　　　 r;r‐r/　| |（●）　（●）　/ / ,/ﾚ′　その労働者党のお偉方は、
　　　〈_L (｀ヽ .}`| 　　ヽ　　　「)'/|/
　　　　　l｀（｀`/　ヽ､_ 　― 　_,.ィT/　　　　　ここから追い出されなかったの？
　　　　　ヽ　　l　　　　l 7Eニ::ィ1│
　　　　　　ヽ::::::.ヽ　　. 'ｲ／ヽ::::｀l┘

　　　　　　　　　　／　｀＜ヽ＼-─'　　　＼　 _
　　　　　　　〃　　　　　｀＜ /　　　　　　＼　｀ヽ､
　　　　　　　 , '　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　 /　　　　　,　 ∧　/,:､　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　　 /　　　　　 .'　∧ﾊ//,: |　　　　　　　　　　　　　　ﾍ
　　　　 .' ,:　　　　 ! 7 ヾ:;i{i〃:|　i
　　　　　/./.'　　　　 , | .' 　　　 .| ｜
　　　　 // ,'　　　 /.､i '　　　　　 |　i ',　　　　　　　　 i
　　　 ,'/　i　　　 /ヽ. |i　　　　 |　!　i　　　　　　　　　|　　　　 }　　　ぜーんぜん。
　　　 / 　 !　　 ./i.',{9ﾄﾐ,:　　　　 | ,' 　 i　　　　　　　　　　､　　.'
　　　　 | 　 ./ .! ﾍ　 `　 { ＿__|,'＿__ i　　　　　　 ! '.　',　 '　　　今も彼らは、あなたのこれから訪ねるザハレスク同様、
　　　　 |　　{　i　　￣　　 ` T'r:z___ '　i　　　　　　,'　 i　!./
　　　　 |　　　.'　　　　　　　ヽ｀_　　 i .|', 　　　 |!.Y　 i /　　　　　昔通りの特権を享受していますよ。
　　　　 | .:i. 　{ 　　 /　　　　　　　ー| | !　　　　 i| i | | ｲ
zzzzzz≦::| i:|　 ∧　　丶　　　　　　　　　|ﾘ |　　　　 !|j ﾉ:'　j｀ヽ､
ニニニニ.i/ |　　 iヽ　 _　　　　　　　　 |　　　 i／{　 / / ./
ニニニニﾆハ　 ∧ |ヽ　｀ヽ､　　　　　　　 | j',　　,'／心.　／≧x_
ニニニニニ ∧ iﾆⅥﾆ:＼　　ヽ　　　 _,..ィ´|..'_i　 ,'ニニﾆ＞ｘ　ノ ./
ニニニニニニ ⅦニニニニTT::==≦:: :| .r=ﾘニ! ,'ニニニニニ＞ｘ
ニニニニニニニニニニニニ i　　　 / ,'ニﾆﾆ/ニニニニニニニニ＞ｘ
ニニニニニニニニニニニニ',ヽ　／／ニニニニニニニニニニ二二ハ

62 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:29:31 ID:TnLt0E5c0

　/　,. - / ./　　　　　　　　/ﾑ　ﾄ､
..j,イx＜' ./　　　　　　./ヾ-Vハ
.t,ｲ,. =7./　　　　　　/　 /　　　　｜　|
.'{,. _-7/　　　　　　/　 /　　　　 |　 i|
=V,-７　　　　 /7 / 　　　　 i　7.i　　　　　　それどころか、
:::i　/ 　　　　 /xi /　　　　　　 } /　!
八.' 〃　　　 /t_:i,ﾊ=t_　 l　,　 _〃≦|　　　　　　かつて国の財産だったものをドサクサまぎれに私物化し、
::/./| 　　 y ./ 弋zり　` 'ィ　,ｲ´ﾄｲり |
.' ハ!　　 / ７ヽ＿ ,.　　　　　　ゞ_'_,ィ　　　　　市場経済の時流に乗っかって甘い汁を吸ってます。
::∧.| 　 /| 7　　　　　　　　　　　　　　 |
::::::::|　.ﾊ | '　　　　　　　　､冫　　　　 |　　　　　　甘い汁を吸いなれた連中は、敏感なんですね、うまい話に。
.Y::::| 7､ .|､　　　rtz　　,.＿_ 　　　 ,ｲi　/　,
ハ:::!厶ヽ＼　ヽ--------'　 , イ: : | /| /
: ∧::::::::＞.ヽ､ヽ .　　　　 . ＜:/: : : :.|.': ﾘ,:　　　それに、人を蹴落としたり、人を踏み台にするのは、
: : ∧::::::::::::::::::::.ヽ､ ≧─.'´イ:::,' : : : : :!:イ:,ィ
: : : ∧::::::::::::::::::::::j |　／':::::::::/: : : ／:＞'´: :　　　連中の得意中の得意技ですからね。
:.ﾍ: : ∧::::::::::::::::::7.i,ｲ.::::::::::::/: : : /＜: : : ＞:'
: : ﾍ: : ∧:::::::::::::::} iT::::::::::::,': : : /: : : :／

63 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:30:30 ID:TnLt0E5c0

　　　　　　　,_　　＿
　　　　　､-ー'｀Ｙ＜,__＿
　　_＿≦ー`__＿　_二ｚ<＿
　　＞７￣､-‐ ´￣｀'┴＜
　＜之′Ｙ´／　　　　　　　＼
　　 >{　 ,' 　|､　,　,.　 ,.l　　, 　ｉ　　エッ、
　　|　!､{　　| 寸寸T　ハT７} ｨ,ｌ
　　′Ｊﾞｉ, ﾞｉﾞｉ（ ○）　（○）|ハ|　　チャウシェスクの共犯者として
　　　　　ﾞｉ|ﾞｉ'(1　　　Д　ノ川
　　　　　　│「ィ::ニE7 l　　　　　　追及されなかったんですか。
　　　　　　└l´::::／ヽﾄ
　　　　　　　 |::::|´ ￣｀i

65 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:30:55 ID:TnLt0E5c0

　　　　　　　　.7 ./　　　　　　　 .7　　　　　　　　　　　',　.|　　　　　　　',　　そういう証拠を隠滅するためにこそ、
　　　　　　　 7./j　　　　　　 7　7＿_, ..-- l　 i^ヽ＿＿,', .i.',　　　　　､　,i
　　　　　　　 7/　!　　　　 7j .7＿ｪｪｪｪ　　　　ｪｪｪｪ__ﾔi_ﾔ　　　　 iﾔ i　　あれだけ急いでチャウシェスク夫妻を
　　　　　　　　　 j/　 i　　　　 j iﾞ.7 ∪　　　　　　　　　　∪i | .',　　　　 i ', i
　　　　　　　　　/　　 i　　　　.7､!7_____, .彡　　　　　ミ､. ____ij_,-i　　　　 !7i.|　　処刑しちまったんでしょうよ。
　　　　　　　　　　 i　　　　　i　i,'　　　　　　　　　　 | 　 !　　　 7' .ﾘ
　　　　　　　　　　　 ',　i　　 .j　　　　　　　　,.:!　　　　　　　　 .|　 .y 7　　　　今のイエリスク政権は、
　　　　　　　　　　 ', iﾊ　　,i　　　　　　ヾ､!:::_:.　　　　　　 |　 7i.,'
　　　　　　　　　　　　　ヾ .',　 jﾍ　　　　　　　　　　　　　　 _,ｨ　　 j　7 .ﾘ　　　　チャウシェスク夫妻とドラ息子が抜けただけの、
　　　　　　　　　　　　　 ',　i:::ヽ　　`　─────　 ´　　　イ:i 7_
　　　　　　　　　　　　　　／:', j::ヾ:ﾍ､　　　　　　　　　　／/ノi7:::::＼　　　　そのままチャウシェスク政権ですよ。ハハハハ。
　　　　　　　　　 , イ:::::::::::::ヾ:::::＼､＞.､　　　　　　　, イ_,.イ'::::::::::::::::::::＞､
　　　　　　　　, イ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＞-==.､￣￣￣,-‐'"‐'":::::::::::::::::::::::::::::::::::＞.､_
　　　　／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i ﾔ　　　.77:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＞､

┌───────────────────────────────────────────┐
│ガイドの青年は、ニコリともせずにせせら笑った。目には怒りと悲しみと、それ以上の絶望がある。　　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..│
│ルーマニアに到着以来、気になって仕方なかった人々との　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..│
│すさんだ表情の中心にある生気のない瞳の正体がつかめた気がした。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　...│
└───────────────────────────────────────────┘

64 ：名無しのやる夫だお [↓] ：2012/10/13(土) 23:30:54 ID:AsuAVVyM0

最高権力者を生贄にとかテンプレ過ぎるだろｗ

66 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:31:26 ID:TnLt0E5c0

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｡　｡　｡
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∧人∧　　　　＿＿o
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 __　　 __　　{:{{:{0}:}}:}　　__. |:::::::: ||
　　　　　　　　　　　　　　　　　 | | 　 >ﾟ )／￣￣￣＼( ﾟ< ￣￣||
　　　　　　　　　　 ∧ ∧lニ0ニ! (（..| |　＼|／　| |..）)　　　 ||.∧ ∧
　　　　　　　　　　　　 (*:::::::::)　| |　　）)| |　／|＼　| |(（　　　　||(:::::::::*)
　　　　　　　　　　　 /::::::::つ | | 　 (（. ＼＿＿＿／ .）)　　　 ||と::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　～（;;;;;Uﾉ／￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣＼ヽU;;;;;）～
　　　　　　　　　　　 |三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三|
　　　　　　　 ┏╋┳┳━┳━┳━┳━┳┳┳━┳━┳━┳━┳┳╋┓
　　　　　　　 ┣{†}╋╋━╋━╋━╋━╋╋╋━╋━╋━╋━╋╋{†}┫
　　　　　　　 ┣┻┫┃　 ┃　 ┃　 ┃　 ┃┃┃　 ┃　 ┃　 ┃　 ┃┣┻┫
　　　　　　　 ┣┳┫┃　 ┃　 ┃　 ┃　 ┃┃┃　 ┃　 ┃　 ┃　 ┃┣┳┫
　　　　　　　 ┃╋┃┣━╋━╋━╋━╋╋╋━╋━╋━╋━┫┃╋┃
　　　　　　　 ┣┻┫┃　 ┃　 ┃　 ┃　 ┃┃┃　 ┃　 ┃　 ┃　 ┃┣┻┫
　　　　　　　 ┣┳┫┃　 ┃　 ┃　 ┃　 ┃┃┃　 ┃　 ┃　 ┃　 ┃┣┳┫
　 ◆　 ◆　 ◆　 ┃╋┃┣━╋━╋━╋━╋╋╋━╋━╋━╋━┫┃╋┃ 　◆ 　◆ 　◆
━╋━╋━╋━╋┻┫┃　 ┃　 ┃　 ┃　 ┃┃┃　 ┃　 ┃　 ┃　 ┃┣┻╋━╋━╋━╋━
　 ┃　 ┃　 ┃　 ┣┳┫┣━╋━╋━╋━╋╋╋━╋━╋━╋━┫┣┳┫ 　┃ 　┃ 　┃
　 ┃　 ┃　 ┃　 ┣╋╋╋〓†〓〓†〓〓〓†〓〓†〓〓〓†〓〓†〓╋╋╋┫ 　┃ 　┃ 　┃
　 ┃　 ┃　 ┃　 ┣┻┫┣━╋━╋━╋━╋╋╋━╋━╋━╋━┫┣┻┫ 　┃ 　┃ 　┃
　 ┃　 ┃　 ┃　 ┣┳┫┃　 ┃　 ┃　 ┃　 ┃┃┃　 ┃　 ┃　 ┃　 ┃┣┳┫ 　┃ 　┃ 　┃
　 ┃　 ┃　 ┃　 ┃╋┃┃　 ┃　 ┃　 ┃　 ┃┃┃　 ┃　 ┃　 ┃　 ┃┃╋┃ 　┃ 　┃ 　┃
　 ┃　 ┃　 ┃　 ┣┻┫┣━╋━╋━╋━╋╋╋━╋━╋━╋━┫┣┻┫ 　┃ 　┃ 　┃
　 ┃　 ┃　 ┃　 ┣┳┫┃　 ┃　 ┃　 ┃　 ┃┃┃　 ┃　 ┃　 ┃　 ┃┣┳┫ 　┃ 　┃ 　┃
　 ┃　 ┃　 ┃　 ┃╋┃┃　 ┃　 ┃　 ┃　 ┃┃┃　 ┃　 ┃　 ┃　 ┃┃╋┃ 　┃ 　┃ 　┃
　 ┃　 ┃　 ┃　 ┣┻┫┣━╋━╋━╋━╋╋╋━╋━╋━╋━┫┣┻┫ 　┃ 　┃ 　┃
┳╋┳╋┳╋┳╋┳┫┃　 ┃　 ┃　 ┃　 ┃┃┃　 ┃　 ┃　 ┃　 ┃┣┳╋┳╋┳╋┳╋┳
╋┃╋┃╋┃╋┃╋┃┃　 ┃　 ┃　 ┃　 ┃┃┃　 ┃　 ┃　 ┃　 ┃┃╋┃╋┃╋┃╋┃╋
┻╋┻╋┻╋┻╋┻╋╋━╋━╋━╋━╋╋╋━╋━╋━╋━╋╋┻╋┻╋┻╋┻╋┻
━┻━┻━┻━┻━┻┻━┻━┻━┻━┻┻┻━┻━┻━┻━┻┻━┻━┻━┻━┻━

67 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:31:52 ID:TnLt0E5c0

　　　　　　　　　, ゝ-‐,へ￣｀`ヽ､.
　　　　　　_ _,／　　 /　　｀ヘ､　　ヽ､
　　　　　/　　￣｀　/　　　　　　＼　　ヽ,
　　　_../=＝=‐-､､_　,､　　　　　　　　　　＼
　／~/´　　　　ｌ＼ / ﾍ　ヽ　　　　　　ヾ､＼ﾐ
　　 //　　　　　ｌミヾ""´､メ､＼　　　　＼.│ ＼
　　/ｌｌ　　　　｜ｌ　　　　ﾍヽ＼　＼　　　ﾍ |
　　ｉ |　　　　　ﾄｌ　　　　　ﾍ｀　＼　　　 .:.:ﾍ　　　　キセリョフ通り○×番地。
　　ｌ |　　 .:　 .:メｌ　　　　　　ヾゝ≦=ﾍ　::.　::...ヽ
　　ｌ | .:　 ::::..::|＝≧､､　ヽ _彳/"乂ﾊ ::::::::::.. ﾄｰ,　　ああ、ここですね。
　　　ｉ::::ｉ　 ::::::ｌｉん;;ﾝゝ　　　　　_{ﾐ;;ﾂﾍ　:::::::::::ヽｉ
　　　ｉ::::ﾄ.: ::::.::ｉヽｪツ　　　　　　　　　ﾍヽ::::ヾ::ｉ
　　　　ｉ::ｌﾍ::::::::::ｉ　　　 ,　　　　　　　　人〈::::::＼ｉ｀〉
　　　　人　ﾍ::ヽ::＼　　ヽ　 _...::: 　ﾇ／/ ﾘ〉｀ーゝ__〉┐
　　　　　＼　＼ﾇ::::ヽ_　≦::::::　" ∠／　ﾉ/　　　ノﾐミ冫_,彳
　　　　　　　　/ ＼へﾒ＞ｪ　__　´.:::/　　 ::/　　　／;;;;;;;;;;;;|　ﾐ
　　　　　　　 /| 　/ﾊ　／　＼:::::::.:/　　::/　　／;;;;;;;;／　ヽﾐｲ
　　　　　　　/｜/　　ｉ.:;;;;〈ｦ｜ /　　 ::/　　/;;;;;;;;／　　　ヽ
　　　　　　/ 〃/　　|;;;;;;;;;;ヽ　 /　　　:/　.:　|;;;;／　　　　　　ﾍ_
　　　　　　ヾ/|/　　|;;;;;;;;;;;;;;ゝ_/　　　　　.:　 |;;ｉ　 ,..__　　　　　　＼
　　　　　　　/　　　|;;;;;;;;;;;;;;;;;;/　　.:　　　::　 |li ／　　　　　　　　　　＼

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,､-─- ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　＼
　　.　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,′｡_,.-－､°　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ! -〈　｡　　丶 _,.!、　||
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 r'ィﾞ｢ヾ:､＿,.､-''"⌒)　.||
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣ﾑ　 |:|_　ィ'"￣ヽ､ ||
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 `<!ﾚ'´ﾆ￣｀`''ｰl.||
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿,,..､-''"＾丶、丶、￣三!L、　　待ちなさい！
　　　　　　　＿＿,,..　-ｧ''"￣｀｢´｀ヽ丶､　　　　　ヽ.　　i ￣|ヾ!
　　⊂ニ"￣　　　　　i |　　　　　　　　　　　　　　　 /　　|　　| |′
　　　　　＼　　＞ー-ゝ､＿_　　　　　　　　　　　／　　 |／｜|!
　　　　　　 `ｰ'´　　　　　　＿￣￣￣￣|￣＼ /　ヾ、 l三_| |
　　　　　　　　　　　　　／　 _ヽ　　 _／__r｢丁丁x!　　 rェ工_
　　　　　　　　　　.　／ヾ／_ ￣￣　| iｆ　!二エニ´　　l　｀7 ））
　　　　　　　　　　／.／へﾁ､_｀ヾ､　_| ｣　|｜|　|_x]　　j　 l/･/./
　　　　　　　　　　`<／　｀￣`<Yナ''´ ト|　rィT T x]　 i’　i￣厂!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |_∟ﾌ　天＿　└＝ァｭノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　下-‐"＿＿￣｀"''ｆ_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/´￣　　ﾊヽ｀｢ヽ|　`ヽ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /＼　　　　　　　　| ､ヽ　,ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,ｲ＼､　　　　　　　　|=＝彳 |

68 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:32:21 ID:TnLt0E5c0

┌──────────────────────────────────┐
│門のところで、いきなり銃を持った軍服の男に道をふさがれた。　　　　　　　　　　　.│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│よく見ると、敷地の中でも何人もの軍服の男が歩き回っている。異常に多い。　　....│
└──────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,イ￣￣｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l｀ヽ≡＝= ,,_　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀,ﾄ_lγヽ) ll ,,=､x'
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 (_|:::〉ゝ-'ﾉ.ll.ゝ.ﾉノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l∧￣l",--､ヽ::l_
　　　　　　　　　　　　　　　　　＿____∧ﾉ_ノゝ.◎)Y　/＿__r‐┐
　　　　　　　　　　　　　　　　 _'----/ミミﾐ｀ー--彡ソ´　　￣｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　＞'　　ノミミ三三彡´　,r´｀ヽ ______／:ヽ
　　　　　　　　　　　　　,::´/-‐-- '7￣￣ /￣￣7x　　　 >____ヾ､::::::',
　　　　　　　　　　　／:Y l 　 ____/＿＿./＿.　 /　.ヽ　ノヽ　.｀Y',::::::,
　　　　　　　　　　／::;ｲ　 l￣_ -=＝＝=- __￣/ ./　r´　　ゝ￣｀)l::::::i
　　　　　　　　,ｲ::::/ﾉ >-l-"　/_ 二 _/__.　｀〈､ i__.ﾉ´￣ 7 X｀ｿ.,':::::l
　　　　　　　　/___./´r(　 l,=＝l- ‐‐- l-- ﾆ＝ヽｌ /---./ /､_/ /:::::,'
　　　　　　r‐ｙ′.ヽ､ヽ=_l -=〈ー,≡＝=-----i!___>　 / /､__l /:::::/
　　　　　　ヽ､,-､/_,-ゝ- ､i彡((`´/＼　　　　 / /L≡≡'' ﾊ_∥:::::/
　　　　　　 /　＼＞　　,-‐`ヽ´,,｀Yiヽiヽ---/ /--｀ヽ￣￣/- 二!
　　　　　　.{　　／ミ___/ ,,Ｙ, -､ヾ､´ヽｌ Y丶__l=≡ミ､ヽ　ー/〈::::::l彡Y
　　　　　　 l ／-ミ/ ./／ l_ ｀i===ゞ Y ゝ´　　　｀Yl|l!ヽ_ノ:::::::::::l彡l!
　　　　　　ヾ-=＝､ .i　　丶　ヽﾆﾆﾝx 　＼　　.__==＝:::::::::,--ﾉ彡ﾉ
　　　　　　　　　　　｀ー-＝ゞ∠ﾆﾆ' i＼　 _＼￣::::::::::___／/ ７彡l
　　　　　　　　　　　　　　冫ヽ　l　.l　 `（.○)----´/ / /　 l彡ll

69 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:32:50 ID:TnLt0E5c0

　　　　　　　　　　　　　＿　　_,
　　　　　　　　　　　＿__,＞Ｙ´'ー-､
　　　　　　　　　　＿>ｚ二_　＿__`ー≧＿_
　　　　　　　　　　＞┴'´￣｀ ‐-､￣７＜
　　　　　　　　／　　　　　　　ヽ｀Ｙ′之＞
　　　　　　　　 rヽ,　　l、　、 ,　､ |　ヽ　}<
　　　　　　　　 i　!７Tハ　T寸寸 |　　}ノ　|
　　　　　 r;r‐r/　| |（●）　（●）　/ / ,/ﾚ′ ザハレスクさんを訪ねてきたんです。
　　　〈_L (｀ヽ .}`| 　　ヽ　　　「)'/|/
　　　　　l｀（｀`/　ヽ､_ 　― 　_,.ィT/
　　　　　ヽ　　l　　　　l 7Eニ::ィ1│
　　　　　　ヽ::::::.ヽ　　. 'ｲ／ヽ::::｀l┘

　　　　　　　　　　_冖___
.　　　　　　／　| |　　ヽ
　　　　　　　/　　　| |　　　ヽ
.　　　　　 |∪　　　　　　└|
.　　　　　 (　ニニニニニ　ｌ
.　　　　　〕ｌｌ-‐‐i i‐‐--ｌ〔
　　　　 . （　ヽ .,,,,ｌｌ,,,..　/　）　　　　　身分証明書をお見せなさい。
.　　　／￣ト､　ヽ　　,'　 /--､
.　　 /　　,'|　　i＼(0)只(0)/／￣｀ヽ､
.　　 |__／　|　ﾍ＿＿／　 |　　　　　ヽ､
.　　 |＼＿|　　　,'　　　　　|＼　　　　　ヽ
.　　 |　　　|　　　i　　　　　ﾍ　＼―----'ﾞ
.　　 |　　　|　　　|　　　　　　＼|　　　　　|
　　..|￣￣ﾍ￣　´｀''‐‐----,'　　ﾍ　　　　 |
. 　 |　　　　|ヽ　　　　　　　　　　ヽ　＿＿--i
. 　〈　へへｌ/___,----､　　　　　　ﾍ´___　　 |
.　　 |＼＼＼|￣|i i　i i｀ニニ＿／／＼＼　|
.　　 |へ＼＼＼ |冂冂|　　|冂　／　　　／ﾍｌ

70 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:33:23 ID:TnLt0E5c0

┌───────────────────────────────┐
│私とガイドの青年はパスポートを見せたが、軍服男は通してくれない。　　　.│
└───────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　　　　＿
　　　　　　　　　　　　/￣￣＼＼
　　　　　　　　　　　／　　　　　ヽ　ヽ､
　　　　　　　　　　 |､　　　　　　　ﾞi ﾞiﾍ
　　　　　　　　　　〔＼｀'‐-∪　　　└'　i
　　　　　　　　　　|∩　＼＿　　　　＿|　　　　　　　ザハレスクさんは、あなたがたが
　　　　　　　　　　|∪＼　|´｀''''''''''''''''''''i|
　　　　　　　　　/　|||/ 　｀''''''´´￣ｌ「'''/　　　　　　　いらっしゃることをご存じない。
　　　　　　　　　|　　　　　　　　　,-ｌｌｌ
　　　　　　　　　＼iiiiiiiii　　　/／／　ヽ___　　　　　　外来者があるときは、あらかじめ
　　　　　　　　／ﾍ｀'''''ヽ　　　　　ｪｭ丿＼　ヽ
　　　　／￣|::::::::::＼　　＼__(⊃-‐‐⊂)‐ﾞi::::ヽﾉ　　　私どもに通知されるシステムになってますからね。
　　　/　　　 |::::::::::::::ﾞi　　　｀'‐‐‐‐'´　　　ﾍ::::ﾍ
　　/　　　／::::::::::::::::::|　　　　　　ヽ　　　　ﾍ::::::/ﾍ
　　|　　／―--､::::::::::|　　　　　　　ヽ　　　　ﾍ/　ﾍ
　　|　/　　　　　ﾍ::::::::/　　　　　　　∧___----|　　ﾍ
　　ｌ/　　　　　　/／　ﾞi　　　　,,-‐‐'　　　　　/―''''〈
　　└―--､,-‐ｌ|　　　　　,--‐'＿　　　　　 |／￣　ﾞi

　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　＿＿≧ー＼ソ＜＿
　　　　　　＞　　　ｘ=ｭ-──´─ -　_
　　　＿≦　　 ,ｭ彡"´　　　　　　　　　｀丶
　　　　｀フ　　／／　　　　　　　　　　　　　＼
　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　⌒ク八:′ ,/　 ,/　　　　　　|　　　　｀　　 '.
　　　　　/　:i 　 ′　′:｜ |　|!:i| |　| 　！　!　　　:
　　　 / 　 |　 |　　| 　 |:.｜:||八|　|! |i: |! :| :|!　　 |
　　　　 }　　　　|　　ﾚﾊ土士八　ｊノﾙj!i土士ﾙ　　 !|
　　　　 jﾘ　　 ||! i| |r‐rテi〒　　　　‐rテi〒r|: 　八
　　　　　|!　　从八|　弋.(ソ　　　　弋(ソ．.:　,/　　　では、日本からマリ・ヨネハラが
　　　　　八:i| 　ｆ　ｉ|　､､､　　　　　 .　　､､ |i|/
　　　　　　　}:　|!　八　　　　　　　　　八　　　　アーニャに逢いに来たと伝えてください。
　　　　　　　レ个ｰf }|丶　　　　　　_　　　 . ′
　　　　　　　八从ﾉﾙ个ﾄ　　　´　　イ
　　　　　　　　　 |:::|::|　　fﾞﾊ　　　｀瓜ｨ7ｉ
　　　　　　　　　 j:八j　.斗ハ　　／　ﾚﾍ
　　　　　　　 _　-‐'´::.::.::. r}yく::.::..::.::.:.::.:.｀ーｭ｡.
　　　　　　 /⌒::.::.::.::.::.ｨⅥY薔VIく:.::.::.::.::.::.／⌒＼
.　　　　　 /::.:}::.::.:::.:／　　　　　　＼::.::.::.:.::.::.::/::.ハ

71 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:33:51 ID:TnLt0E5c0

┌────────────────────────────────────┐
│私たちを尋問する軍服男の命令で部下らしい男の人が建物の方へ走っていった。　　　│
└────────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /´￣｀:　 /_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 {ﾆ二三j |}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　〃`ｰ=彡_八
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / {: : : : /{　ヾ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　ゞ１⌒"{　＼　　.＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 Ⅶ　 `.　 {＼__jﾉ}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 Ⅶ　　　〉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /辷三二{
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |/: : :/　/|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /: : :/　 jﾌ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　 /": : :/　/´:　　ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　 /: : : :/ /´｀ヾ. ＿彡ﾊ
　　　　　　　　　　 _　　_＿＿彡 : : / /　　　 i{ 二コﾉ
　　　　　　 /´＼｢｢: : : : : : : } {＼〃　　　 }　　　{
　　　　　 ./　　　`７}: : : 才"￣}_ ノ　　　　　| 　　 i
　　　　　 /　　/⌒"￣　　　　　　　　　　　　 | 　　 |
　　　　　 }__＿]　　　　　　　　　　　　　　　 | 　　 |

72 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:34:13 ID:TnLt0E5c0

　　　　　　　　　　　　　　　　|＼_ ￣ﾄ､ｰ―-､
　　　　　　　　　　＿＿＿＿_＞　＼| Ｌ＿＿_|
　　　　　　　　　　＞＿＿＿__　　　　__＿　＜
　　　　　　　　 l／　　　　ヽ　／　　＼!ゝ
　　　　　　　　／　　　　／ﾐヽ Vr勿＼　　＼ヾ
　　　　　　／／　　＞-―┴┴-　∠.:＼lVVV＼＼
　　　　　∠／　　／　　　　　　　　　　　　ヽ　　　ゝ　》
　　　　　/:/: . : /: . : . : . : . : . : . : . : . : . : .. :ヽ: . :}: | ﾉ
　　　　 /:/|: . /: . : . : . : . :/: . : . : . : . : 　.　　 ',:.:| :∧
　　　 |/ :|: /: . : .:/: . : . ﾊ:: . : . : . : . : . :　 . 　', |'　 |
　　　　　j:/!: . : .,': . : .:／: .|: . : .// /ﾚ'|i ト､|:　. Ｎ　　ｌ
　　　　　　ハl 　 l 　/ヽ､＿､;:　|　,＿,.ハ＼ヽ　l i |.| l　l|
　　　　　ヽ!　ハ ./-― o-　ヽ!　- o―- 〉　 l l !.| l　|　　　　それにしても、ずいぶん大変な警備ですね
　　　　　　i Y/ 　Y.l　｀ー　　　　　ー　'　/ 》 ///i 　|.　|
　　　　　　.| l ! 　　 |´´´ 　　' 　　　 ´´´イ// /ﾚ'| 　i ト､|
　　　　　　ハ～､ゝ＞、　（_）　　　∠/ / /ﾚﾍ　ﾄヽﾊﾉ
　　　　　　　ﾚ//, ､/⌒ ＞ - ｧ　´ ﾑム/
　　　　　　　　 /,.-/_　く　 `ー '"´　　ﾉ　＼
　　　　　　.　／　＿_）／｀ｰ--- ‐ '"ﾍﾍ　　　ヽ
　　　　　　 / 　　 ___ﾉ　　　　,.　　　　　ｉl　　　　〉
　　　　　　 !　　　__,ﾉ　　　／　　　　　　ヽ　　　l

　　　　　　　　　　_冖___
.　　　　　　／　| |　　ヽ
　　　　　　　/　　　| |　　　ヽ
.　　　　　 |∪　　　　　　└|
.　　　　　 (　ニニニニニ　ｌ
.　　　　　〕ｌｌ-‐‐i i‐‐--ｌ〔
　　　　 . （　ヽ .,,,,ｌｌ,,,..　/　）
.　　　／￣ト､　ヽ　　,'　 /--､　　　　　　国の要人を警備するのですから当たり前です
.　　 /　　,'|　　i＼(0)只(0)/／￣｀ヽ､
.　　 |__／　|　ﾍ＿＿／　 |　　　　　ヽ､
.　　 |＼＿|　　　,'　　　　　|＼　　　　　ヽ
.　　 |　　　|　　　i　　　　　ﾍ　＼―----'ﾞ
.　　 |　　　|　　　|　　　　　　＼|　　　　　|
　　..|￣￣ﾍ￣　´｀''‐‐----,'　　ﾍ　　　　 |
. 　 |　　　　|ヽ　　　　　　　　　　ヽ　＿＿--i
. 　〈　へへｌ/___,----､　　　　　　ﾍ´___　　 |
.　　 |＼＼＼|￣|i i　i i｀ニニ＿／／＼＼　|
.　　 |へ＼＼＼ |冂冂|　　|冂　／　　　／ﾍｌ

73 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:35:28 ID:TnLt0E5c0

┌──────────────────────────────────┐
│敷地の中は林のように樹木が多く、車一二台分ほどの大きな駐車スペース、　　.....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│それにテニスコートが三面ほどあった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
└──────────────────────────────────┘

　　　　　　　(^)　　　;;:;:::　ヾ;:.,ヾヾヾ　　　　ﾉ;;:;:::　ヾ;:.,ヾヾヾ;:;:.;:;;:ヾﾉ;:;:.,ヾヾヾ;:;:.,ノ
　;;:;:::　ヾ;:.,ヾヾヾ:::;:;:　　　　　　　;;:;:φ::　ヾ;:.丿,ヾヾヾ;:(^);:.;:;:;:::　ヾ　　　　;:.ヾ;:;:.,ヾ/
　　　　;;:;丿::　ヾμ;:.,ヾヾヾ　(^)　　;;:;:　　　丿　　ヾ;:;;:ヾ::;ヾ;;:;::　ﾉ:.,ヾヾ;ξ:;:.;:　ヾ丿
;;:ヾ::;ヾノ　　　　　　;;:;:::　ヾ;:.,ヾヾヾ　丿　　;:ρ;ヾヾ:;::ヾヾ　ヾ;ノ:ヽヾ;:;ヾ:;::ヾヾヾ;:ヾ）
　　　;;ｧ!＼＼|　|:;;ヾ:;:　.r;.　::: ヾヾ:;::ヾrヾ:;;ヾ:;:;:;:.r;. ; . ＼|.ヾヾ|　|ヾヾヾ;;:;:::ヾ）　　　　 ,.,.　　　,,
;;:;:::.__ |;:''　＼　|''~~^||＾^~ |　|;:;:;;;::;:| |;:;;;;ノ/ヾヽ| |~~~.;;l∥~~ﾞﾞ|　l丿ﾉ'^^^　　　　　　,.,;:;：:､、,,:.：,..
~~　~~|;|^^ 　.|　|　　||　　|　|^^...^.| |　| |/~^~ .| | 　.　.∥　　|　／"　　　　　　　 ,,;:;:；｡;,;:：:;:：::;,..
　　　..|;|　　　|　|　　||　　|　|　　　| |　| | 　　 | |　　　∥　　|　|　　　　　　　　　,.,:,,:；;:;:：;,.,｡,.,:,;:::
　　　..|;|　　　|　|　　||　　|　|　　　| |　| | 　　 | |　　,,_∥._,,rﾞﾞﾞﾞヾﾞ^ﾞヽ　 - - - - -''"''yi''-"''yi''
　　　..|;|　　　|　|　　||　　|　|　　　| |,,,r''''' .ﾞ'ﾞﾞﾞ　"""　　ﾞ^ﾞヽ'"ﾞ~' ′'"ﾞ~' ′、　　　.,..ili 　.,,,.il
　　　..|;|　　　|　|　　 ||　　r'''ﾞ~　,,.　| |､　 ;;'"ﾞ~' ′　　ﾞ^ﾞヽ"""　　　ﾞ^ﾞヽ""　;ヾ　　'"''"'"'"''""'"''
　　　;;'"ﾞ~' 　　　ﾞヽ"^ﾞヽ""""""　　　""""　　　　　　　"""　:;;､":. ;,:;;､:. ;,:;;､:. ;,~)　　　　　　''"'''
｀'''ｰ　　　　　　:;､:. ;,:;.;､　　　　:. ;,:;;､:;;､:　´､:. ;;'"ﾞ~;,ﾞ^ﾞヽ;;､:,:;;､:. ;,:;;　　､:. ;,:;　;､:. ;,:;;､:.)　　''"
jwvjiiijwwiijijyyywWwWWWwwwjij,,.、,、,,,vWWwjjwvjiiijwwiijijyyywWwWWjjwv,,.、,、,,,jiiijwwiijijjw
''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"""''""''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"""''""''"""''''""''''

''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"""''""''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"""''""''"""'''''""''''
''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"""''""''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"""''""''"""'''''""''''

74 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:35:52 ID:TnLt0E5c0

＜マーリー　

　　　　　　　,_　　＿
　　　　　､-ー'｀Ｙ＜,__＿
　　_＿≦ー`__＿　_二ｚ<＿
　　＞ .,,_ ￣､-‐ ´￣｀'┴＜　　　　　　　　　
　＜之′Ｙ´／　　　　　　　＼
　　 >{　 ,' 　|､　,　,.　 ,.l　　, 　ﾞｉ
　　|　ヽ,{　　|寸寸T　ハT７} ｨ, ｌ
　　ヽﾚⅣ ハ（●）　（●）| ハ|　　　ん？
　　　　 V ﾄ'(1　　　 ,　　　}"
　　　　 Vィ丶,　 ― 　 ,.ノ
　　　　　　│「ィ::ニE7l´
　　　　　　└l´::::／ヽ.ﾄ,
　　　　　　　 |::::|´ ￣｀il
　　　　　　　 |::::| 　　 |i
　　　　　　　 |:::::| 　　　＼
　　　　　／l＿ﾘｌ　　ヽ＼
　　　　　＼　　| 　　　ヽ／
　　　　　　｀'ｒ‐┼rｰｒｰ ´
　　　　　　　 |::::|　|::::|
　　　　　　　 |::::|　|::::|
　　　　　　　 {ｰｲ　ﾘrﾍ,
　　　　　　　 'ｰ`　 'ｰ`-

75 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:36:33 ID:TnLt0E5c0

┌──────────────────────────────────────────────┐
│声の方を振り向くと、建物の中から先ほど入っていった男に続いてショールを肩にかけた婦人が現れた。　　　....│
└──────────────────────────────────────────────┘

　　　　 └-i:::::::::::::::::::::::: ,.　　'"´　　　　｀`ヽ:::::::.: : ヽ、
　　　　 __...ﾉ: : : : : : :,.ィ´　　　／　　', 　ヽ｀丶､: : : :ト.､　 ,.ィ"ヽ
.　　　 |: : : : : : : :／　　./　 /　　　　 ',　　 ',　「: : : : :|:.:.:ヽ: : : : : 〉ﾆﾆ､二
　　　ヽ.ィ: : : :/　　 / 　 ,'　　　　　 l　　　',　｀丶ﾄ､:|:.:.:.:.:.|: : : : :ート､､ヽ
　　　　 r‐:':::::::/ 　　 ,'　　,'　　　　　!　　　l .　i'"´:: |:.:.:.:.:.!: : : : :_:ハ ',ヽ
.　　　 ',_:､:::/　　　 l　　ｌ　　　　　　 |l 　　 !　',: : :._:|.:.:.:.:.:|: : : : L_ｌ::', ',r
　　　　　ﾉ:,'　　　 ,'l　　 |　　　　l　 | l !　　! |　｀／ーｧ丶|: : : : : :ﾊ::ヽ
　　　　 /:| |　　　,' |　! .!ｌ|　　　,'|　ｌｌ | l　,' ,|.　/　　　）.:.:.,': : : :r '　｀￢
　　　　　/:::,! |　　 ..L.',_ﾄ. |',ﾄ　　/ !./l/├ /￢∨　　 7.:.:.:./: ::::::::|　　　 |:
　　　 /:::::ﾊ.ﾄ　、　!　..l_ヽヽ＼/ l/,x=≠弍:　/　　 ./: : :/.:.:.:.::::ﾉ|　　　 !:　　　マーリー
　　　　ヽ|l　',ヽ＼!　,x=ミ､ '′ 　　　 r.:.:´ .＼　 /＾,-ﾍ':::::::}::! ｜　　.!:
.　　　　 |　　ト､. ∨ .　　　　-‐　´＼ |.:.:.:.:.:.ヽ｀７、'>》_ノ" !::l.　!　　　|:
　　　　　　|　　l　l.|. ', 　　　{ ´　　　　 }.:.:.:.:.:.:.:.:.｀.:.:.〉ﾆﾌ　　!::l　｜　　 |:
　　　　　 | 　 / / |　ﾄ、　　､　　　 /ﾊ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|　　　.ヽ:| 　|l　　 !
.　　　　　|　 / /　|　|_.＞、　｀¨¨¨¨´../　ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.:|　　　　　　 |.! 　　|
　　　　 !|_ノ' r":.:l　l:.:.:.:.:.:.:.:ﾊィｭﾍ.:.:.:.:.:.:.:.く.:.:.:.:.:.:.:.:./ 　　　　 . | l　　 |
　　　 _..'"ｨ´　ﾄ､:..! .l:.::／｀`ヾ.ﾆﾝリ.:.:.:.:.:./ ':.ヽ.ｭr＜/、　　　　 .! !　　 !
　　＜._ <.|　　 ! ∨ ,''-:.:.:.:.:.::.:`￢´:.｀`.:./:.:.:.:.:.:.:!　!;/: : ＼　　　 ! l　　

　　　　　　　　　　　＿　　_,
　　　　　　　　　＿__,＞Ｙ´'ー-､
　　　　　　　　＿>ｚ二_　＿__`ー≧＿_
　　　　　　　　＞┴'´￣｀ ‐-､￣７＜
　　　　　　／　　　　　　　ヽ｀Ｙ′之＞
.　　　　　 /　 ,　　l、　、 ,　､ |　ヽ　}<
　　　　　ｌ ,ｨ {７Tハ　T寸寸 |　　}ノﾍ　））
　　　（（　,ﾍ, |（○）　（○）　/ / ,/　/
　　　　　　'､ `|'''' r-‐‐┐''''.「)'/|/　/　　アーニャのママ！
　　　　　＼ヽ､ヽ､__,ﾉ　_,.ィT/=/
　　　　　　　　<　l 7Eニ::ィ1　　〉
　　　　　　　　　ゝ'ｲ／ヽ::::｀､／
　　　　　　　　　　 i´￣｀ヽ::|
　　　　　　　　　　j| 　　　 <
　　　　　　　　　／　　　ヽ　＼

76 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:36:58 ID:TnLt0E5c0

┌───────────────────┐
│抱き合ってキスをした。頬が濡れている。　　 │
└───────────────────┘

　`ー/|::.::.::.::.::.::,′　　　　 | 　　　.|　　　　| 　　ﾞ:,:::.:::.:ﾄ　　　＼＼＼＼
冫ｰｲ　￣ト::.::.,′　　　　　　|　　　 |　　　　 .|　|　　 V:下ヽ＼　　ヽ＼ヽ
　　|　　 r┴‐::|　　　ｲ　　.| |人　　　 |　|.　　　|　|　| 　 ':┴┐ Ｙ　　　ﾄ､　＼
　　|　　 |::.::.::.::|　｜ |　　.乂__z＼　　i　|z≦..＿ .|　|　｜ｉ::r┘　'.　　　ｉ　＼
　｜　|└ﾍ::.:∧　.|　|.,.∠::ｧ⌒不.＼,ハﾉ'ｲ⌒jrっ:｀ヾ　ﾘ::￢　￤　｜
　　|　｜ | く::.::.:ﾍ .|ィf___ム:でﾌ:ﾉ　　　　　ヒ::r― うﾘ　 ;::下┘　｜　　｜
　 ∥　|　|　ヾ勹ﾍ .|廴_.ノ￣　　　　　　　｀￣　 'r /::::::｝　　 |　　　|
　 ′　| 　', 　＼ｨr=ﾐ|　　､i丶丶　　　　　l Vヽヽ丶 {γfヽ! 　　|　｜|
　　 /　ヽ　.＼　｀弋ハ　　　　　　　＿＿_　 - ､　　 } ゝゞﾝ　　ｊ| 　|∥
. 　 /　　＼　.＞' .|　ゝ　　 (7´　　＿＿_}ノ　　ノ　　| ｀ヽ　/ﾍ.　 l八
　 /　　　　　　　　.|　　｢｢ {＞ .. ￣　　＿＿　 ∠　 |　./　　＼ .λ　、＼
. /　　　　　　／|　　| ヽヽ　　￣ｰv'　　 |.　 l　V　./　　　　　ﾊ｜　＼
/ 　　　　　 /　. l　　|　 l　＼,'ィ´ｒ,/フ゛ﾉヽ／|ｊ　 / 　　　　 /｜　　＼
　　　　　　 /　　 |　　|　 |　 /:l ゛l´{lソ}/}、ハ　! /　/　　　　 ./. ｜　　　 .

77 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:37:33 ID:TnLt0E5c0

　　　　　　　　＿｣ヽ　／|
　　　　　　／　　　ﾞＶ´∠ｲz‐､＿
　　　　　／　 ,　ヘ,＿／ヽ∨ ﾏ´
　　　 //　 /／＾´ ￣＾｀ヽ丶,ゝ
　　 _,// 　〃　 ,　　,　　　　､ヽ､
　　 ,ノｲ| ｌ/　　//,ﾊ|　ｌ |　ﾊl ﾊ|`
　　　　小| 　　l/'ﾅ弋　|,lﾅﾅ | l |
　　　　 l从　/| (●） i/(●）,ﾙﾘ　　　アーニャは？
　　　ノﾊ小 ji l''　　　　　丿
　　　　　　 /ヽ＞_-,´｀- '´
　　　　　　　 γ"::::ム::｀ヽ
　　　　　　　　/::::ｲ:/∞ヾ.ﾄ::}
　　　　　　〈::::イﾞ"　　ﾞ~'ｌ::!
　　　　　　　　!､_ﾉ　　　　i_ﾉ
　　　　　　／/ 　　　　/ヽ、

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_. イ⌒ヽ_ノ ⌒し '⌒i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 , ､_ノ⌒）´ 　　　　　　　　　し'⌒i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,.　- ─ｧ⌒ 　　　　　　　　　　　　　　 _　ィ
　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　/:::::::::::::::::::::::::::::.......　　　　　　　　　　)
　　　　　　　　　　　　　　　 .　'’ 　　　 /───　　- ＜::::::::::.　　　　　　　(_
　　　　　、　　　　　　. ィ’　　　　　_)　　　　　　　｀　. :::::::.　　　　　　　｀ヽ
　　　　　/　＼　　　／:::::|　　　　( ´　　　　　　　　　　` .::::::::　　　　　　　　ﾉ
　　　　　)　　　ヽイ : : :::::|/__ 　　ﾉ　　　　　　　　　　　　　　＼::::::::.　　　　　 (´
　　　　（　　ヽ. 　│.::::::::::|　　　（´　 '　 ,　 ′ i! 　　　　　　　＼::::::::::.　　　｀7
　　　　　 )　　＼.|.::::::::::::|　　　　7 /　/ /　　 i!　　　　　　、　　　ヽ::::::. 　　　）
　　　　　' 　　　 |:::::::::::::|　（⌒' /　 ' / 　　 i!　　　　　　＼　　　V::::..　　ﾉ
　　　　（ _　　　　 |:::::::::::│　　) / i 　i !　　　 i!　!　　　　　　　　　､　　 i:::::::...ノ
　　　　ｲ::｢ ) 　　 V.::　　|　「 .'　 i 　i !/i 　　ヾ | 　　　　　　　 !ヽ　 |::::::..ﾉ
　　／　 !::|(__　　　ヽ::.. r‐v7/ 　∧　!l斗十 |│ ＼! 　 !　　 ! 　　 ′i　 |::::::::）
　.' 　　 !::|ゝ==) 　　　 rfぅjV　ハ)/7从､|　|│ /:||＼ i 　ｲ　　/　 .′ !::::＼
　　丶　!::| ＼　ゝ-.．　ゝ少ﾉ ,'　 |'　　 _　　　,乂::ﾉ / ､ヽ. / 　 .'　 /　 ,人::::ゞ＼
〈　　＼:|　　ヽ　ヽ ` ｰﾍ　 /　｜ｧ=＝ミ　　／ﾚ')／ゝ/)　ｲ　.:/　ｲ:|　|:|⌒)::::）
　ヽ　　　ヾ: 、　〉、＼　　V　　　|　　　　　　　 r=ミ、 /　!　.′/ ! | __ﾉ　'／　　アーニャはロンドンよ。
　　＼　　|:|＼ !:::|　　ヾ　|　　ハ ////　　　　　　　｀/ﾚ' ﾚｲイ　 | 「! (:／
　　　　ヽ.　|:| 　 |:::|　r.. ―┤ 　| 　'.　　　　　 ′　///∧i| 　　 |:　 |/ !　　　　　　でも、電話をかけましょう。
　　　　　 |:| 　 |:::ﾄ<:. 　　│ 　ト　i!　　　 ` ー　　ｲヾ | 　　 |:　 ∧＼
　　　　　 |:| 　 |:::|　＼　人　＼:ﾄ､　　　　. ＜__j! 　＼　　 |　/ 　'.　＼　　　さあ、中に入って。
　　　　　 |:| 　 |:::| 　　 Y'　＼　　＼＞ -＜´:::::::::::: i!ー-,　＼　! .'　　!　）::）
　　　　　ﾚ′Y::/ 　　 | ヽ. 　＼　　＼tfうj} :::::::::::; / 　 / 　　 / 　　 | /::/
　　　　　　　│! 　　　ム-‐─‐-ゝ　　 ):少 :::::::::; / 　 /ヽ. 　, '　）　　'/::/

78 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:38:12 ID:TnLt0E5c0

┌──────────────────────────────┐
│建物は三階建てで、階段室の両側に一戸ずつ一フロアーに二戸、　　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│都合六戸のフラットからなっているようだ。　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│庭が広大なため小ぶりに見えた建物だが、階段室のホールも　　　　　.....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│階段も窓枠もいちいち巨人のために造られたかのように大きい。　　　　..│
└──────────────────────────────┘

_､.,;'ﾞ:､.,;., ,, ,. ';)二二二二二二二|ニニニ二二二二二二二ニニニ|ニ二二二二二二二二二二二二
;.､,:'ﾞ､,:' ,:;ﾞヽ., ;:.').二二二二ニﾆﾆ|ニニ二二二二二二二二二ニニ|ニニ二二二二二二二二二二二
　　　　､.,;;.　,.;'ハ､二二二二ニﾆ|ニ二二二二二二二二二二二ニ|ニニニ二二二二二二二二二二
　., ;:.')_,.､.;:ノ'"　｀ヽ,二二二ニニ|二二二二二二二二二二二二二|ニニニl￣ l ￣lニニニニ二二二
､.,;;.　,.;' ､.,;'ﾞ:､.,;., ,.;_..;').二二ニニ|二二二二二ﾆ=.　=ﾆ二二二二二|二ニニl ―l― lニニニニニ二ニ
,.､.;:ノ'";.､,:'ﾞ､,:' ,:;ﾞヽ,;.,ヾ二二二ﾆ|二二二二ﾆ .-=ﾆﾆ=-　ﾆﾆニ二二|二二ニl 　 l 　 l二二二二ニニﾆ
､.,;'ﾞ:､.,;.,　 ;.,､_,.;'　., ;:.').二二二ﾆ|二二　.-=ニニニニニニ=-　二二.|二二二lIIIIIIIIIIII二二ニニニニﾆ
､,:'ﾞ､,:' ,:　､;.,　､.,;;　,.;' 二二二二| .-=ニニニニニニニニニニﾆ=-.ニ!二二二ニニニニニニニニニニ
., ;:.')　　 .;.,､__,.､.;:ノ二ﾆ　　-=ニニニニニニニニニニニニニニニニ=-　_=ﾆ二二二二二二二二二
;;.　,.;'ハ.,.;;'ノ二二ニ　{二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二}　ニニニニニニニニﾆ
.;:ノ'"、,;}===========＼＿ｒ ― 　、＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿　,――┐__,／==================
;'ﾞ:､.,;.,)　ﾆ二二二二二二ﾆ.{: :＿} | l: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ｌｌ {＿: :}二二二二二二二二ニニﾆﾆ
'ﾞ､,:'く二ﾆ＞-‐=　=‐-＜ニ {: :＿}_} }: : : : : : : : : :|: :|: : : : : : : : : :{ {_{＿: :} 二＞-‐=　=‐ ＜二二二ﾆﾆ
　､;:ノ.／ : : : : -‐=' '=‐-`　{: :＿}_}_}ニﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ二{_{_{＿: :} ／-‐= =‐-　: : : :＼二二二
/二 / : : .／＼　|l _ ／　　.|: : : :| | | : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : | | |: : : :|′ ヽ -=l|= .／ヽ: : .ヽ二二
;'二,′: :/　　 , ´|l　　ヽ　　|: : : :| | l =====================:| | |: : : :|　〃　　l|　　ヽ　 ',: : : ';ニニ
ﾆﾆｌ : : ,　　〃　|ｌ　　　;,　 |: : : :| | | : : : : : : : : : : |l : : : : : : : : : : | | |: : : :|　 ll　　 l|　　 l!　 l: : : :lﾆニ
ニ,ｌ: :: :ｌ＿_ll＿_|ｌ＿＿lｌ＿|: : : :| | |: :: :,.‐==‐､: : :ｌｌ: : ;.‐==‐､ : : .| | |: : : :|＿ll＿＿l|＿＿l|＿|: : : :l二_
二ｌ: :: :ｌ　￣ll ￣|ｌ￣￣lｌ￣|: : : :| | | : : |l　 |　ｌ|: : !l : :|l　 l　 l| : : | | |: : : :|￣ll￣￣l|￣￣l|￣l : : : lﾆﾆ
}ﾆｌ: :: :l . 　 ll 　 |l　　　lｌ　 |: : : :| | |: :: :|l―|―|l: : || : :ll―|―l|: :: :| | |: : : :|　 ll　　 l|　　 l|　 | : : : lﾆﾆ
ﾆ.! : : l　　 .ll 　 |l　　　lｌ　 |: : : :| | l : : :|l￣l￣ l : :|l : :|l￣|￣ll : : :| | |: : : :|　 ll　　 l|　　 l|　 |: : : ::lﾆﾆ
ﾆｌ: :: :ｌ　　.ll 　 |l　　　lｌ　 |: : : :| | | : : :|l￣l￣||: : |l: : |l￣|￣l| : : :| | |: : : :|　 ll　　 l|　 ,..-l|､. l : : : :l二
"｀ﾞヾ　　 ll_,_.-､　 .,.lｌ-=|: : : :| | |: :: ::|l　 l 　|| : :|l : :|l　 |　 l|: :: :.| | |: : : :|_　ll　　ｒ'"´　　 ⌒ヽ, : ::lニ
,.　'"⌒ｒ'"´　　.'⌒ヽ　　 ;;|: : : :| | l: : : :|l＿l＿||: : |l: : ll　 |　 ll: : : :| | |: : : :|;;｀ﾞヾ　'　　,､_,,.;.,'´￣｀ヽ::l_ﾆ
;;.:''ﾞ'　ﾞ'{　 ,､_,,.;.,'´￣ヽ　;;|: : : :| | |: : : :|l＿|＿|| : :|l : :ll￣|￣l|: : : :| | |: : : :|;:　'"⌒ヾﾞ､ /l　,;'　　,.　 ,;'r'"

79 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:38:38 ID:TnLt0E5c0

┌─────────────────────────────────────────────────┐
│一階入り口正面の左奥に、革張りの大きな玄関窓があり、「バルブ・ザハレスク」と金のプレートに刻まれている。　　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.│
│玄関ホールはゆったりしていて天井が高い。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.│
│玄関ホールから幅の広い廊下が伸びていて、その両側にいくつもの扉があった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
└─────────────────────────────────────────────────┘

　l!￣ｵ　|:.:.:.:.:.|　　と′　 ,　　　　丶　 .: 　ｒ┘
　￣ﾘｺｌ:.:.:.:.:.|　_「┘ /　/　 l |　　　＼ﾉ　 _〕
　　く｣!Ｌ.|:.:.:.:.:.! Ｌ.　//　/, 　l| l　 l　 i　 l ﾊ:.　 _〕
　〃l| l Ｌ.i:.:.:.:.| ｒ┘,./　/, 　 !|｜ｌ| 　l　ｌﾊ:/└i_
　|ｉｌ|　!└l:.:.:.:|　〕//　//l　 l ! li　l|　 l　 l　|!:: と__〕
　li〃!｜l　ﾄｚ水ﾞ/ｲ ,://l:|　l |ｌ l|　lｉ　 |　 ! ｌ|! とl｢´　　　　突き当りの部屋へどうぞ。
　|!　| 　 !小こｼ｣　!// ﾘ:l　,l ! ,'! /l　 ,　/ /l _.｣!|!　　人
　　,ｌ｜ｌ |ハ:.:!|l イ '"⌒ヾ　/ '//　/ ,// ｲ|　l| ｌ!　　__　て
　　/!｜ l l 　＼! ｌ|.　　　　　 "⌒ヾ/iツ行l 〃　　/　|　〈
　 ,'/　!　l|l　　｢¨| llﾄ､　　　、_　　 .ｲ |ｌ　i　|l |! 　 /　/
　,' !　i　ｌ|i ＿|:.:.l:.|l:.|:.＞ .、__　イ´ !:| ! l|　ｌ　　/　/
　! l　,　ｌ|'「　 |:.:.l|:li |:.:.:.:.薔:.:.:.:.:.:.|､ハ! l::-‐ｒｚ／　'´ﾊ
./ ,　ｉ　/l|｜　ヽ/ ｌ| l;,;,;,ノﾞﾍ;,;,;,;,;,;,Y￣|ヽ　 {!' 　 / / ﾉ!
! /　l　, ｌ|　! 　 /　l　|:.:.:.| 　|:.＼:.:/ i　〉　＼{!｣､ヽ'イ丿

80 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:39:33 ID:TnLt0E5c0

┌──────────────────────────────────────────┐
│と言われるままに廊下を突き進んでいると、正面の扉が開いてガウン姿の小さな老人が現れた。　　　│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　....│
│杖をつき、片足を引きずっている。記憶の中のアーニャのパパよりも二まわりも小さい。　　　　　　　　..│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　....│
│でもギョロリとしためつき、大きな鷲鼻はそのままだ。駆け寄って頬ずりをした。　　　　　　　　　　　　　...│
└──────────────────────────────────────────┘

　　　　　 ,／/: :ヽ: : Y: /:､: : : : : : : :＼: : : : : : : : ＼
　　　　／: :/: : : ∧: : ;′1: : : : : : : : : l: : : : : : : : : :∧
　　 ∠二ィ: : : : l::∧: :!:::::l: : : : : : : : : :|: : :ヽ: : : : : : :∧
　　　　 /.: : : : :|::::::∨::::::l: : : : : : : : : :l: : : : ∨: : : : : :∧
　　　 ,r': : : : : : 「¨¨｀""¨1: : : : : : : : : l: : : : : ∨: : : : : :∧
　　　 |! : : : : : : l 　　　 l: :;ｨ: : : :∧ : | : : : : : ∨: : :ヾ : ∧
　　　ｲ!: : : : :i: : !.　　　 !:/ l: : :/　ヽ: ﾄ、 : : : : ∨: : : :＼;ﾊ
　　　/l: : : :,∧:厶-‐､　　ﾚ'　!‐ナ―-ゞ! ヽ、: : : :i: : : : : :l ヾ
　　 !.:!: : ;ｨ: : ト1===ミ:、　 l.:/彡＝=｀=ﾐ:､ヽ : : l.: : : : : |
　　 .l.;ｲ : ;ハｲl:iﾞ '乍ミ1L..../;」i　ｨ卞ぅｘ､ ! ヽﾄ、:l: : : : : :|
　　 .ﾚ'l: :/　ﾘ |:|　ﾋ;ﾘ |「￣"ﾞ1l　　ﾋｚﾘ｀ l l｀ゞ- ､.: : :lヽ:.!
　　　　ﾚ'’　　ヾ＿__ノ.'　　　ヾ: ､＿＿.ノﾉ　´rﾊ !:、:| ヾ
　　　　　　　　　 i￣￣ i　　　　　￣￣￣　　ムｿ:.;ﾊﾉ
　　　　　　　　　､　　　　　　　　　　　　　r彡;〃´
　　　　　　　　　　ヽ　　ヾﾆフ　　　　　ﾉﾚ'´
　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　　 ´ ,L. -‐ ､_
　　　　　　　　　　　　　　ヽ . _　，　　, ィ´　　　,.､二ミ:ｫ
　　　　　　　　　　　　　　 ,.-‐=ﾆj,.ィ'´　　／￣ "¨ヾ＼L、
　　　　　　　　　　　　 _r'´　レ"　　 _ﾆ=′　　　二ﾆ= 　＼
　　　　　　　　　　　rくヽ　 j　,-=ﾆ¨ 　　　イ=‐- ､　　 >"

81 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:40:10 ID:TnLt0E5c0

┌────────────────────────┐
│プラハ時代と同じようにロシア語で挨拶を交わした。　　　 .│
└────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　ヽ　V/　/ /
　　　　　　　　　　　＿＿ , ．イ　　　　　　　V }　　イﾆミー- ﾉ
　　　　　　　　　　　￣¨ー .,　　　　　／ヽ　　　／　ヽ　r-イ
　　　　　　　　　　　　　／　　　　　./:::...:.＞＝<_＿:.:ハ＼
　　　　　　　　　　　 .／　　　　　 i / ＜´　　　　　　＞::>　＞..._
　　　　　､＿＿ , ィ　　　／　　ﾊ !　　,, -　　　　　　　ハ从＜
　　　　　　　￣￣＝ ≠　 { i　　 /八! ／　　　　　　　　　　 }/　ヾﾐ;､
　　　　　　　　　　 /　　　!i!　 //　 ,'　　　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　 ,'　　　ﾊ　川　/　　,　　　　/　　　　　　　ﾍ
　　　　　　　 /　　　　 ∧ |　 ,　　,'　　　　 ,ｨ　　　　 ,'　　 i　　ハ
　　　　　　　／　_,　　　　 }!　i　　,'　　　,／ ,'　　　/ /i 　 ./|　　　 |
　　　　　　　／　イ7　　　　　 |　 |　 ,'　´¨,ﾃﾅ=i‐- 　ｨ／十-.|,,_i　　　 .i
　　　　　　　￣　　i　　　i!　从　 | .i l　,rｆj￣ヾ､／/｜　,ム」_:,;　　　　 .|
　　　　　　　　　　 |　 / .|　　 ∧ .| .| lK {| ::::::ﾘ　　　l／,ｲ}:::::::ﾊﾉ/　　　|　　お元気で何より
　　　　　　　　　人八 {､　 ,' ∧ >　l,　゛ｰ ''　　　　 K.__,/ }/　 / ﾉ.,'
　　　　　　　／　| {_ ノ!　　　|::|{　＼!　　　　　　　｀""　ｲ.//／./
　　　　　　　　　　　Vーイ{ 　　|::|　ト.､ >　　　 __　　　'　　　イ／
　　　　　　　　　　　 /　　　.|::|　|::|::|　　／　＼　　　　　,ｨ'
　　　　　　　　　　　　 /　／Yﾟ|::|　|::|::|､／　／~＼ヽ‐､_,／
　　　　　　　　　　　 /..／＿ﾄ.|::|　川ﾟ|＞イ　,.へ　`＜　ヽr‐ｧ―=‐､
　　　　　　　　　ー ",/´＼ﾉ/!_|　 .|: |,　　イ　,､〆｀`'ｰ　/;;/.:/　　ﾍ
　　　　　　　　　 /　　　ﾍ:.:|;i;;;;;;;ﾊ　　　∨￣　　　/;;/.:/　/　　ﾊ
　　　　　　　　　　 i　　　　 ∧:!;!;;;;;;|:}　　　|!　　　 /;;;;!:/／　　　　i
　　　　　　　　　 |!　　　　　∧l;|;;;;;;|,'　　　|!　　　〈 ;;;ﾚ　　　　　 |
　　　　　　　　　 |!　　　　　　ヽ|;; ;/ 　　ﾊ　　　 ∨!　　　　　 |

　　　　　　　　　＞ -:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∧ /:.:.:|
　　　　　　　　　 >:.-:.－:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∧i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀´:.:./
　　　　　　 r‐ ':.´:.:.:.:.:.:.:.:.::./:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:|:::ヾ:.:.／::|:.:.:.:.:.:.:／
　　　　　　/:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:..|:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:|￣｀''- ､;i:.:.:.:.:.:.:.:.￣ヽ
　　　　/:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:ﾊ:.:.:.|　　　　　 |∧:.:.:.:.:|:.:.:.:.:}
　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::V:.:.:./ -V:|_　　　　//:::.:.:.:.:.:K:.:.:.:|
　　／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∠V:./={´rvミ､=､_,, ,/　|:.:.:.:.:.:.ヾ:.:.:.|
　 /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/´＼-;/￣ V￣ | |ｲ≧ミ=､/ 　 |:.:.:/:.:.:<´ヾ|
　｀ '' 'ー -ァ:.:.:/:::r::j::./:::::::.　　　 | | 辷り｀ |}_　r-Vｿ:.:∧}
　　　　　／:.:.:.:ヽ::::::::::i:::::::::::　　　ヽ廴_　 <ﾃ=/rァヾ:∧:.|
　　　　　フ/:.:.:.:.:.＼::::::::::::::::　　　　　￣ヾ=ﾉ　 <-ﾝ /:| .V
　　　　　　´''- ､:.:.:.:./::::::::::::::::　　　　　　　　　　/=テヾ|　　　もう九〇になります
　　　　　　　　　ヾ/:::::::＼::::::..　　　　　ー -　　 /
　　　　　　　　　/:::::::::::::::::::::::::...　　　　 -　　.／
　　　　　　／＼./::::::::::::::::::::::＼:::::::::...　　　／
　　　　／　　　∧:::::::::::::::　　 /｀ 'ー - ' ´
　　　ノ |　　　　　 }ヽ::::　　　/_
￣￣　 .|　　　　　　＼　　　{　ヽ
　　　　 .|　　　　　　/　｀ー='´　＼

82 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:40:42 ID:TnLt0E5c0

　　　　　　　　　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ|:.:.＼
　　　　　　　　_ - ' ´:.:.::.:.:.:.:.:.:.:_:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヾ:.:.::＼　　 ,
　　　　　　　ヾ､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::､:.:.:.:/ ／/
　　　　　　　　　＞:.:.:.:.:.:／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／:.:./:.:.:.:.:.:.:.:ﾚ:.:.:/　　ああ、
　　　　　　　　 /:.:.:.:.:.:./:.:.:.:._;,;,-‐''''´:.:.:.:.:./:.:.:./:.:.:.:.-='´　　
　　　　　　　　｀ -､:.:.:/:.／/ ゞ:.x ､-ー ''´|:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.＼　　あなたは美しいロシア語をちゃんと維持されてますね。
　　　　　　　　　　ﾚ､:ﾚ´∧ /　｀　＼　.ヾ|:.:/|:.:.:.:.:.|:.:.:r､_::ゝ
　　　　　　　　　　　ミ,;,;:.::|　　　　　｀＞ミ_.|:.:.∧|:.:.:.:}
　　　　 ,＿＿ r‐─ v'´　ヽ　　　　　／ヾ∠.|:/|:./:.:.:.:.|　　　　アーニャは、完全に忘れてしまってますよ。
　　 /.: : : : : : ＼: : : :＼　､　　　_　ヽ '´ |'' ´ ﾚハ:.:./
　　/／＼: : : : : : ＼: : :: :>v ＼　ヾ_ , -―　　　　　　　　　　イギリス人と間違われるほど
　.//: : : : :＼: : : : : : V/: : K: : : ミ'´
../: : : : : : : : :＼: : |: : V: ∨: V: 入　　　　　　　　　　　　　　　完璧な英語を身に着けたかわりにね。
/: : : : : : : :: ::: : :V: : : : : : ＼//: :/ヽ

83 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:42:23 ID:TnLt0E5c0

┌──────────────────────────────────────┐
│アーニャのママとともにお手伝いさんらしい人が部屋に入ってきて紅茶を入れてくれた。　　　│
└──────────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i　　　　　　　　　　　　/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　 └-i:::::::::::::::::::::::: ,.　　'"´　　　　　｀`ヽ:::::::.: : ヽ、　　　　　　　　　ｉ　　　　　　　　　　／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾍ
　　　　 __...ﾉ: : : : : : :,.ィ´　　　／　　 ', 　ヽ｀丶､: : : :ト.､　 ,.ィ"ヽ　　.　 ',　　　　　　 ,.イ::::::::::::／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾊ
.　　　 |: : : : : : : :／　　./　 /　　　　　 ',　　 ',　「: : : : :|:.:.:ヽ: : : : : 〉ﾆﾆ､二,ヘ、＿,,..＞''"::::::::::::／:::::::::::::::::::::::::/::::::::::ｉ:::::::::::::',
　　　ヽ.ィ: : : :/　　 / 　 ,'　　　　　　 l　　　',　｀丶ﾄ､:|:.:.:.:.:.|: : : : :ート､､,'::::::::::::::::::::::::;.､:::::;;.:ィ:::::::::＞､:::::／:::/::::::::::: ﾘ:::::::::::::::i
　　　　 r‐:':::::::/ 　　 ,'　　,'　　　　　 !　　　.l　i'"´: : |:.:.:.:.:.:!: : : : :_:ハ ;::::::::::::::::::::／ヶ‐"::::::_,.＞ｲ:::::／＼'./:::::::; ｲ::;'::i:::::::i::::::l
.　　　 ',_:､:::/　　　 l　　ｌ　　　　　　　 |l 　　 !　',: : : :.|:.:.:.:.:.:|: : : : L_ｌ::'i:::::::::::::::::::i ￣不l;厂 ,,..ヽｆ＝ミ／ ,ﾊ、::://;ｲ::/::::::;:::::::l
　　　　　ﾉ:,'　　　 ,'l　　 |　　　　　l　 | l !　　! |　｀丶; |:.:.:.:.:.::!:..　　　　l::::::::::::::::::::', i ´/　　　　　弋辷ｿヽﾍﾉ／/　_ﾊ:::::::;'::; ｉ::!
　　　　 /:| |　　　,' |　! .!ｌ|　　　　,'|　ｌｌ | l　,' ,|. ｜!´: :.!:.:.:.:.:.,': : : :r '　l:::::::::::::::::::ｉ:ﾍ＼}.　　　　　　＼　　　..＞斥//:::::/::;' l:;'
　　　　　/:::,! |　　 ..L.',_ﾄ. |',ﾄ　　　/ !./l/├ /￢￢､).:: /:.:.:.:./: ::::::::|　　l:ｌ:::::::::::::::::l::::＼_　　　　　　｀¨ ´ / ﾋﾗヽ/ノj:/　ﾘ
　　　 /:::::ﾊ.ﾄ　、　!　..l_ヽヽ＼､./ l/"´　l/_∠ |　 {: : :/:.:.:.:./::::::..　　　　l:!l::::::::::::::::l::::::::ﾊ　　　　　　　　　 i　｀ｰ千' ,ﾘ　/
　　　　ヽ|l　',ヽ＼ !,イ｀` ﾄ　 '′　　 ,ｲ"´　lヽ　,ﾊr'＾,-ﾍ'::::::::.　　　　 l!.';::_:::::::::::l:::::::::∧.　　　　　　　　ノ　 ./::::l
.　　　　 |　　　ト､ト.`弋..ン　　　　　弋..ン '　| .|/j〈ィ'>》_ノ"!::l　!　　_,,..　..,｀＜!::::::::::::ﾍ　　　　　 _　　　／:::::::l
　　　　　　|　　 l　l.|. ',　　　　　､　　　　　　　 l　 ! .|:.ヾﾆﾌ　　 !::l. ｜／:::::::::::::::::＼ヽ｀＜:l:::',、　　　｀.' ,. ＜:::::::::::::::l
　　　　　 |　　 / / |　ﾄ、　　　　 ,.、　　　　　｜ｌ|　|／　　.　　　／:::::::::::::::::::::::::::::ﾍ　丶､｀ヾ＼　 ,. ＜:::::::::::::::::i::::::ｌ:l
.　　　　　|　　/ /　|　|_.＞、　　　　　　_..-.､ｌ　l !　! 　　　.　　 /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾊ　　　＼／.｀¨　　¨ﾞ丶.､:::::ｌl::::::l:l
　　　　　 l|　 /,ｲ _..ｌ　l:.:.:.:.:.:.:｀丶､ __..ィ´:.:.:.:.:.,' .,'::|　| 　　　　　/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::',　　　　入　　　　　　　｀＜:ﾊ!
　　　　 !|_ノ' r":.:.l　l:.:.:.:.:.:.:.:.:.ﾊィｭﾍ:.:.:.:.:.:.:./ /:.:::!　!ヽ、　.　/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::',　　 / i.l
　　　 _..'"ｨ´　ﾄ､:.:.! .l:.:.:.:／｀`ヾ.ﾆﾝリ:.:.:.:.:./ ':.:.:.:.:|　|:.:.:/、. ,':::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ｉ　　,'　 l l
　　＜._ <.|　　 ! ∨ ,'_:.:'-:.:.:.:.:.:.:`￢´:.:｀`:./:.:.:.:.:.:.:.!　!;/: : ＼;::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l＼; 　 l　ﾄ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l.　i　　ｌ　 .i::i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l　LLLl-┴l

84 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:42:51 ID:TnLt0E5c0

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,.　 -―――/ ﾍ―――- .,,_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,.　 - 　　　.l｀　ー-------------一　´l　　　＿_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ゝ､　　｀ヽ　 !　　　　　　　　　　　　 i／´　 -- ､＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　｀ '!　　　　　　　　　　　　　／　　　.i　',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∨ 　　　./　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i 　　　: 　　　　　　　　　　　　　　　ハ　　　.／　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　　.／　　　　　　　　　　　　　　　　　ハ_ ／　.／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾍ　／
　　　　　　　　　　　　　　　　--------　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　∨
　　　　　　　　　..:　　´　　　　　　　　　　　　｀　　 :..　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i
　　　　　　　〃　　　　　　 .................................　　　　ﾍ　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i
　　　　　　 ::.　　 .....::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::...　ノｲ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i
　　　　　∨≧ ., :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::　,.　≦.／:　　　　　　　　　　　　　　　　　 /
　　　　＿　 :　｀ー-　二ニニニニニ二　-一　´. . /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／
　　　/　r---､｀ヽ　　　　￣￣￣￣￣　　　　　　　/　｀ヽ　.,_　　　　　　　　　　　 _,.　＜
　　 i　 i'　´　ヽ )　　　　　　　　　　　　　 /　　　＼　　　　ー---一
　　入　:.　　　　｀.　　　　　　　　　　　　　　 / 　　　　ﾍ
　　i.　＼｀　ー---､　　　　　　　　　　 , '　　　　　　 :
　ハ　　　｀　ー---､ヽ　　　　　　　　　　 , '　　　　　　　　 /
　　　＼　　　　　ﾊ　　｀ﾍ.,_　　　　　 _,.／　　/　　　　.／
　　.　.　＼　　　　＼　　　　　￣￣￣　　　　／　　　／

85 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:43:52 ID:TnLt0E5c0

　　　　　　／ｧ=　　　　　＞x _　. 　 -─‐- 　、::::＜　　＼
　　　　　　／　　　 r' _,ノ　　　　　　　　　　 :｀ヽ:　:＼
　　　　　 /イ　　　 .r'´ ∨　　　　　　　　　　　　　ヽ:　:ヽ
　　　　 /　/ :/　　 } r'∨ 　　／　　　　､　　　　　':　:丶
　　　　　 / :/::　 .::r' ∨　　　〃　/ !　　　ﾄ､ '.　　　': :ﾘ
　　　　　 |:/l::::: .::::{ ∨′　　.′/　.|　　!　|　　V 　　i: ::ｌ
　　　　　 |　|::::/:::爿 i　　　 l　ハi.｜　　i　LL　!　 | 　!: ::!
　　　　　　 |:::|:::::::::ｉ | ｜　　/､＿､i＼　 |ﾉ_j_｣_｀ト: l 　ｉ:::::|
　　　　　　　|::|!::: |::Ⅵ　v: : : f　iｼﾄ、　＼i　 ,.＝､ﾄ､/ ｌ: :::|
　　　　　　 |ハ:::|､:∧从: : : |ｆ代歹　　　　代歹: : {ﾚｌ:../
　　　　　　　　　Ⅵ V:::Vハ: : : '.　　　　 ′ 　ﾉ: /,ｲ!ﾚ′
　　　　　　　　｀{　V:|ヾ: ﾊ : : ﾄ､　（_｀ｱ　 .ィ: 〃/ ﾘ　　トワーリッシチェ・マリーエは、どうしてますか？
　　　　　　　　　　　 . '´￣ﾊ: : |}　＞‐ｧ≦千l　{ﾙ'
　　　　　　　　　　　/　　　{ ﾊ: | 　　 ′} } l｜/ハ　　　　お元気ですか？
　　　　　　　　　 .′　　ヽ }人ヽ_＿.ノノ丿!′　i
　　　　　　　 i　　　　　ﾄ､　､二二´イノｉ　　|
　　　　　　　　 | ｉ　　　Ｖ　｀ー― '´　 v′　|
　　　　　　　　　ｌｌ　　　　∨ /　　　　　ｉ　　 l
　　　　　　　　　　 |∧　　　 ∨　　　　　　｜　 !

　　　　　　　　　　　　／::::r‐､:ﾉ:::::::::::::::::::::::::::::::ﾉ
　　　　　　_　　　　　 ,.ｨ'´:::::／!_‐- ､:::::::::::::::::::::::::（,､
　　　　　 /:::｀ヽ＿_,.ィ三/::::::::::::r‐､ﾉ　　｀ヽ､:::::::::::::::::ノ
　　　　r‐'､::::::::::::::/圭ﾐ/:::::::::r､:_） l　 l　　　ヽヽ:::::::::ゝ,
　　　　l:::::::｀:::::::::/圭/´::::::::::ゝ´　 l　 l　　　　ヽヽ:r‐'´
　　　ノ::::＿::::::/圭/:::::::::::r‐､ﾉl　 l l　l　　　　 l l　 l!
　,ｨﾀ'l:::::::::::::::｀:l圭ﾐ!::::::／:ゝ､ l l　 l l　',　　　 l l l　 l
. lﾐ! /ヽ;::::::::::::::l圭ﾐ!::::::::::r‐‐'_ﾑ斗孑十弋､　 l l!　/
　ゞ="〔＿:::::::::::l圭ﾐ!::::::::::｀)lヽl　ィ示ｮ` 　｀ｭ! l／
　// 　 l __）::::::::ヾr‐'ｰ､:（´ l　　　`辷:ﾘ　　　ｶ
.//! 　ﾄ､ゝ-､:::::::lﾉyヽ〉:ﾉ. l　　　　￣　　　ヽ
./ l　　 l. ヽ　ゝ'､:ゞｰ.'´::） l.l　　　　　　　　 _´!　　　ええ、もう年金生活に入りましたけど、
　 l　　 l　　＼　ゝ‐ヾ､圭.l l.l 　　　　　 ´, '
.　l　　 l　　　｀十-､__≧/ l ﾄ､　　　　　　／　　　　　今でも、週に一度は通ってきてくれますのよ。
　l　　 l　　　　　l　r‐‐'´.l　l圭ミ＝==,ｨ＝x､
. l　　 l　　　　　l　〉:::::::/ /圭圭圭ﾐ/ヽ圭圭ゝ､
. !　　 !　　　　 l ／:::::::/ /圭圭圭ﾐ〈ゞ〉圭圭/
.l　　 l　　　／:::::::／ /:《圭圭圭圭!´圭＝彳
l　　 l 　　 /:::::::::〈　｀ー‐-､圭圭圭l圭圭》
l　　 l　　 /::::::::::::::::￣￣｀ー-､二`>圭/
　　　l.　／::::::::::::::::::::::::::ヽー´＜二圭圭ミﾄ､
　　　l /::::::::::::::::::::::::::::::::::::￣＞／圭圭圭ミﾄ､
. , -‐'´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ゝﾉ圭圭圭圭圭ﾐ!

86 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:44:23 ID:TnLt0E5c0

┌──────────────────────────────────────┐
│金縁花模様のマイセンの器で紅茶を飲みながらあらためて部屋全体に目を走らせた。　　　.│
└──────────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　､　　__
　　　　　　　　　　　ｨ　‐､|V´ <
　　　　　　　　　　／__/:＼∧. :.＼
　　　　　　　　／￣. : . : . :⌒ヽ. : .＼
　　　　　　　/. : . : . : . : . : . : . :∨. : .',
.　　　　　　/. : . :,-､. :斗- ､.:|. : .|. : lヽl
.　　　　　 l. :|. : _l__!.:.:｣_｣i__ :!.:ｌ.:.!. : !　｀
　　　　　ヽi: |.:(●＼|●).:l :l./:!.:/
　　　　　　ヽ. /⌒ヽ、 ''iﾚ!ｲ /ﾚ
.　　　　　　 /　__　r∩ﾚ<ﾚ'
.　　　　　　ヽ辷）_}　{ス　　　ｷｭ
　　　　　　／ ,ｨ′匚}＼＼ヽ
　　　　　　｀ｰ/　　　　　　ヽノ
　　　　　　／　　　ヽ　|　　｀ｰ--、
.　　　 ∠ィ￢'⌒ヽ i　|　　　　／}}
　　　　ヽ/　　　　　》　! __＿,ノ}｀く
　　　　　廴.__　　《__,＞′ 　〉'
　　　　　　｀ｰｲ＾Y'⌒i⌒!^ｰ'
　　　　　　　　　 |　|　　|　|
　　　　　　　　　 }ノ　　し'

87 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:44:55 ID:TnLt0E5c0

┌─────────────────────────────────────────┐
│それにしても、大きな部屋だ。大きすぎる。東西七メートル×南北一八メートルぐらいだろうか。　　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│日本のケチな３ＬＤＫなんてスッポリ収まってしまいそう。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
└─────────────────────────────────────────┘
- 　 ..;;_:::::::::::::::::::,.:　'´　　　 | |　　　 | |
::::.::: :.:.:.:.｀:.`ﾞｰi´＝==ｰ_ｰ- ｣Ｌ.. __　 | |
:.::::::.:.:.:... 　　 |　　　　￣ｉ i￢＝ｰt |
::.:..　　　　　 |　　　　　 | |　　　 | |　　　　　　　　 __
:.　, -rｔ--　 ...」_,　　　　　　 | |　　　 | |　　　　　 x≦爪川
　 !　| | F＝=ﾐ. |＝＝‐_ー-''└ー　.._| |　　　　　 | }八L}ﾊ|
　ｉ　| | |////,| |　　　　　￣| |￣￣｀'ｉ |　　　　　 |（_ﾄ､ﾐｰj|
　 |　| | |////,| |　　　　　　 | |　　　 | |　　　　　 | xz公こ|
　 |　| | |////,| |　　　　　　 | |　　　 | |　　　　　 |从行辷|
　 |　| | |////,| |　　　　　　 | |　　　 | |　　　　 └-----'
　 |　| | |////,| |　　　　　　 | |　　{爻爻〆　　　　　　 {沁爻爻}
　 |　| | |」」」」｣ |=====ﾐ. 　 | |　　 YＹ广 r─---　 .....L乂＿ﾉ＿_
　 |　| |-‐Ｖﾍ￢||| || || ||l 　 | |　　ﾉ八　 |￣　｢三二,.ｘ≦}┬r=＝
　 j　| |　　Vﾊ　|j｣L.＜⌒￣￣￣（_＿_） ⌒＞｢三ﾆ/: : :/　| |
　 j　| |　　Ｖﾊ |￣　　 ≧‐┬------┬‐≦　｢三 ,': : / 　 | |
.　 ! :| |　　 |/ﾊ!＿＿＿_,＞|:. .　　 . .:|＞ﾄ､_　｢三:ｉ: : :i　　 | |
.　 ! :| |　　Ｋ＿_＿_＿_ﾉｉ　|:. .　　 . .:|:,.　'´￣｀`Ｙ|: : ,l.. ＿| |
-ｰ[〉| |-‐￢| r──ー､ | |　|:. .　　 . .:|｢ ,ﾆ￢=─'_!ｘ1.|　　:|_| ￣
　　 !｣　　　| | |　　　 | | |　|:. .　　 . .:|| |　 | |￣ | |　| |
　　　　　　 | |_|　　　 | |_| (乂:..　　.:乂| |: . Ll　　| |　| |
　　　　　　 |_|　　　 .::Ｌ!. .: .:.:.:￣￣＾:..|_l:::.:.:...　　| |　Ll
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 :.:.:.:....Ll

┌────────────────────────────────────────────┐
│南と北には蔦に覆われた大きなベランダ付きの開口部があり、その他の壁面は、本棚になっていた。　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│
│本のほとんどがマルクス主義関係の文献である。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
└────────────────────────────────────────────┘

―――――､=ｉ|| |　　　　　　　　　　　　　　　| ||　,―――――――――
========､／| .|| |＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿_| || |＼,================
| | ||| | | |.ｌ||ﾞ　| .|| |_ ._ ._ ._ ._ ._ ._ ._ ._ ._ ._ ._ ._ｉ| || |　ﾞ||ｌ.| | | ||| | |　|　|　| | |
|_|_|||_|_|_|,|||.､ |=|| | || || || || || || || ||...＿＿.|| || || | ､.|||,|_|_|_|||_|_|　|　|　| | |
三三三三]|　,| .|| |_||_||_||_||_|..＿＿／　　/.||_|| || |,　|]三三三三三三三三
| ､.| || | | ｌ||ｉ.ﾞ | .|| |_＿＿＿／　　/|(三三l/　l| || | ﾞ.ｉ||ｌ | | || |.､ |.| | | | |　||
|___|_||_|_|_|||　 |=|| ／　　/|(三三l/l(三三l/l　 | || | 　|||_|_|_||_|___|.|_|_|_|_|　||
三三三三]|　.| .|| (三三l/l(三三l/l(三三l/l　 | || |　,|]三三三三三三三三
|.| | |　 |.､||| '' | .||/(三三l/l(三三l/l(三三l/l　　|| |　 |||､,| 　| | |.| | | |||　| |
|.|_|_|＿|__||| 　|='　(三三l/l(三三l/l(三三l/l　　..=|　 |||__|＿|_|_|.|_|_|_|||　|_|
三三三三]|,　|　　(三三l/l(三三l/l(三三l/l　　　.| , |]三三三三三三三三
_|　 ||.| ||.l || . ,!　　(三三l/l(三三l/l(三三l/l　　 .!、 || l.|| |.|| 　| | | ||||.|　 |
_|＿||.|_||」.||,/　　　(三三l/l(三三l/l(三三l/l 　　. ヽ||.「||_|.||＿|_|_|_||||.|　 |
========'′　　　(三三l/.(三三l/.(三三l/　　　　　.｀'.===============

88 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:45:32 ID:TnLt0E5c0

､ー.:.:|::: |:.::ﾉj ! ﾊ　|　 l!　　　 j　 |　　l
､_ｰ､|　 | }　{ﾄTﾆ､ﾄﾆ|Ｔ{　l　/|　ﾘ　 }
{:｀:::::j'ﾆ､{:ｲ　|ヽ{ィｯ.}ヽヽN /_ﾒ、/　! /　　マリ、今ロンドンのアーニャの勤め先に
!マ:::{j_ｿ/:ﾉ　!|　｀ｰ'　　　ｲｨl.i},/　//
l　ヾへ´::|　 | l　　　　〉ｰ'/ｨイ´　　　　電話をしたら取材に出てるらしいの。
ヽ　＼ヽ!　ﾄ l　　　 ,.= ､　ﾊ　|
トヽ　　｀,|　 l｀l !、　ヽ.ノ　,.ｲ{ l　!　　　　　社に戻ったら、すぐにもこちらに
|　,. イ￣l 　 !:ﾊ l丶-_-＜　　l l　!
:'´.:.:.:l:::::::} 　 !:::ﾍV<rj1:::::::＼ﾊ　!　　　　　電話をよこすよう頼んでおきましたからね。
....:.:.イ}:::ﾉ丶､ヽ::::ｿヽﾁ':::::: .:::::| |j>ヽ、
:／::/:.:久＿＿｀ '‐く:::::::ヽ:::_ イ!　ﾄlヽｰ-- ､r-v､　　 __
:::::/:.:.:ヽ､:::＿＿::＞,ゝ:::: .::ヽ┴-　L}:::}:.:.:...　ヽ:.:.:〉‐´／
:::/.:.:.:ィ:ヽ-　二 _＜＼:: .::::/ ｀二＞､Y::::...　:.:...ｰヽｲ_〉
/:／::/.:.:.:７::､-‐= イl:::ヽく:.:..｀ヽ_＜_:｀i:::::::::..:..:..:::ノ- '
´‐ ´ ..:.／::::::::7ｰｱ::! l:: : ヽヽ:.ｰ-_,＜.:ト-- ⌒ ｰ'

89 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:46:12 ID:TnLt0E5c0

┌────────────────────────────┐
│アーニャのママはそう言って、額に入った写真を見せてくれた。　　　│
└────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　 _,-- 、
　　　　　　　　　　　r冖'::.::.::.:.几、
　　　　　　　　 r┘::.::.::.::.::.::.::.:しﾍ
　　　　　　　　　 _)::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.:.ト、
　　　　　　　 {::.::.::.::.::.::.:_,.:-―-､::.〕｀ヽ-､_＿_
　　　　　　　　　ｺ::.::.::;: '´／　　､ヽ｀しﾍヽ　 )ﾆヱ、
　　　　　　　 └i::.:/　/　 /　　ヽヽ　} l |　{ |ﾊ_/
.　　　　　　　く::/　 l　　l　　　l ｌ　l (　| |　〕|:|　　　　ほら、見てちょうだい。
　　　　　　　　ｌ| 　 l l　l| | 　ｌ| | l |,lﾄ､l_| {　l:|
　　　　　　　　　ヾl　L,ｨ=ﾄ:i､　ﾉ,ィTｋﾉl}必}|　|:|　　　　これが、アーニャの夫。
　　　　　　　　　个ｔﾍ.ｲｔｸ｀　｀ﾋﾟr,ﾉｉ:lヒｵ|　|｣
　　　　　　　　　　　　l |∧｀" ' _,　　 / ｌ|　 |_| ｌ|｜　　　頼りなさそうだけど、ひとかどの音楽評論家らしいのよ。
　　　　　　　　　　 |ﾉ _L＞‐､_,ィ^7 /l|　　 | l|｜
　　　　　　　　　 / |ヽ:.:.:.:.:.:{爻}/ /:.|ﾄ､　 ! |｜　　　これが、二人の娘、可愛いでしょう。
　　　　　　　　　　 _〉｣_∧:.:.:.:.:./|/ /:.:.|j:: ＼ | ｌ｀、
　　　　　　　斗‐- ､＼〕ｰ７|::ヒﾆ二ﾆフ::. ヾーi ヽ
　　　　　　　　｢::.:r‐┴/:.:.:/:.|::| _／,イヽ、::.: ｀┴‐ﾍ.
　　　　　　　　〉:;｀ヽY￢z__｣:ん勹ノ::.::.:｀ｰ-､::.::∧ ＼
　　　　　　　　　　｀7〈〈:{_::.::.<::.::.::.く <r冖､_,ィ⌒Ｚノ| ヽ　ヽ
　　　　　　　 / /:|l:/:￣::｀:ーr=彳::.::.::.::.|::.::.::.:〉l　 |　　|
　　　　　　　　　 / / :ハ_::.::.::.::.:ｰ-'::;:|::.::.::.::.::.ヽ::.∧ ヽ＼　ヽ、
　　　　　　　　　i　／′::.::.::.::.::.::.::／::Ｌ:_:;::.::.::.く:/　｀. ｀、ヽ　ヽ、

90 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:46:48 ID:TnLt0E5c0

┌──────────────────────────────────┐
│夫は、二十五年前にアーニャが父に預けた写真の花婿と同一人物である。　　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│娘たちは、ほんとうに愛くるしい。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
└──────────────────────────────────┘

┌────────────────────────────────────────────────┐
│　　　　　　　　　　　　　　｜　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│　　　　　　　　　　　／￣￣＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..│
│　　　　　　　　　　／　　 _ノ　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│
│　　　　　　　　　　|　　　　・　　・｜　　　　　　　　　　r 、.　　　　　,、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..│
│　　　　　　　　　　|　　＠　（__人__）　　　　　　　　　 l　ヽ,,, -ー -', l　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│　　　　　　　　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　　　　　/　　＠　o 　@ ヽ　　　　　　　　　　　　　　 γ´/ 丿ヽ　　　　　　　　　　...│
│　　　　　　　　 |　　　　　　　 }　　　　　　　　 Y　, ﾍ^ ⌒　^^⌒ヽヽ　　　　　　　　　　-‐ '´￣ヽｿ　｀丿　　　　　　　　　.│
│　　　　　　　　ヽ　　　　　　 }　　　　　　　　　l γ::..:::::..:::...ﾍ、: : : ﾊ j　　　　　　　／　／/" ｀ヽヽ　ヽ＼　　　　　　　　 │
│　　　　　　　　　　　ヽ､.,＿＿ __ノ　　　　　　　　　`ﾉ :ﾉ...:ﾉ　ノ　　ヽ ::::::）　　　　　　 //, '/／ﾚ´/ノ　ヽﾊ　｀､ヽ　　　　　　　　│
│　　　_, ､ -― ''"::l:::::::＼ｰ-..,ノ,､.ﾞ,i ､　　　　　　　　ﾘ::::::(　（ ⌒）　(⌒::（　　　　　　　〃 {_{ 　 ⌒　　⌒　ﾘ| ｌ │i　　　　　　　　│
│　　/;;;;;;::ﾞ:':､::::::::::::|＿:::;､>､_　l|||||ﾞ!:ﾞ､-､_.　　　　　　ﾊ::::ﾊ　 ,,　r‐ｧ　j） )　　　　　　　ﾚ!小ｌ（●）　（●）从　|、i|＼　　　　　　 .│
│　丿;;;;;;;;;;;:::::i::::::::::::::／:::::::＼ﾞ'' ﾞ||i l＼>::::ﾞ'ｰ､　　　　　Ｙ　ヽ　￣イ' y　　　　　　　　丿ﾙ|　　､_,､_,　　　 |ﾉﾚ　ﾘ,　ヽ　　　　...│
│. i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|::::::::::::::＼::::::::::＼ .||||i|::::ヽ::::::|:::!　　　　　／　'ﾍ　　 j￣ヽ　　　　　　　　　　　ヽ　ゝ._）　　j /.　　V＿,/)　　　 .│
│/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;!:::::::::::::::::::＼:::::::::ヽ|||||::::: /::::::::i:::|　　　 /、　　ヾ　/　　ﾍ　　　　　　　　　　　ゝ ,､__,　イ　　　　/　　 /　　　　..│
│;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|;;;;:::::::::::::::::::::::＼:::::ﾞ､|||:::/::::::::::|:::　　　　/rｰ'ゝ　　Ｙ　　〆ヽ　　　　　　　　　　.y'　|ヽ／　| ￣￣￣`　 ,/　　　　 .│
└────────────────────────────────────────────────┘

91 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:47:34 ID:TnLt0E5c0

　　　　　　　　　　　　　　　　|＼_ ￣ﾄ､ｰ―-､
　　　　　　　　　　＿＿＿＿_＞　＼| Ｌ＿＿_|
　　　　　　　　　　＞＿＿＿__　　　　__＿　＜
　　　　　　　　 l／　　　　ヽ　／　　＼!ゝ
　　　　　　　　／　　　　／ﾐヽ Vr勿＼　　＼ヾ
　　　　　　／／　　＞-―┴┴-　∠.:＼lVVV＼＼
　　　　　∠／　　／　　　　　　　　　　　　ヽ　　　ゝ　》
　　　　　/:/: . : /: . : . : . : . : . : . : . : . : . : .. :ヽ: . :}: | ﾉ
　　　　 /:/|: . /: . : . : . : . :/: . : . : . : . : 　.　　 ',:.:| :∧
　　　 |/ :|: /: . : .:/: . : . ﾊ:: . : . : . : . : . :　 . 　', |'　 |
　　　　　j:/!: . : .,': . : .:／: .|: . : .// /ﾚ'|i ト､|:　. Ｎ　　ｌ
　　　　　　ハl 　 l i.〃＿___＼　|. , _´_＿_＼ヽ l i |.| l　l|
　　　　　ヽ!　ハ〃　ゞ-:::ﾉヽ! 　ゞ-;;ノ〉　l l !.| l　|　　　　アーニャ自身は、
　　 __　　 i Y/ 　 Y　　￣　　　　￣　 / 》 ///i |.　|
　　 i ヽ　　.| l !　 .ハ ´´ 　　　｀　　　´´ イ/ ./ﾚ'| .i ト､|　　　今は何をしているんですか？
　　　ヽヽ　.ハ～､ゝ＞.、　　 ―　　 ∠/ //ﾚﾍﾄヽﾊﾉ
　　　　ヽ .ヽ,_ｒ､,､､　 --｀＞ｧ　　　´ﾑム/r ､　　
　　　　ﾉr'^ヽr‐､_,-'ヽ: ヽ'' ~　　　　　~-y/　ヽ_
　　　　 i ー‐､冫-i 、　ヽ: ヽ_　　　　　／:/　　ヽ
　　　　 | -ーｖ'　ﾄ　､　　丶ヽ _: -_／: ／　　　ﾉ,ヽ
　　　　ゝ　--'　ﾉ: ヽヽ､　　 ~ ヽ:ヽ^:.／　　_ -　~/: :i
　　　　 |ヽ　　 ./:i: :.',　 ` ー　-''- `' -- '- - ' ~ /: : : i
　　　　 | :|　　 .i:.ﾉ: : :',　　　　　　　　　　　　i ./: : : : :i

　　､＿＿／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|::::::::::::::::::::::/: /::/::::::＼ﾍ
　　＞::::::／::::::::/::::::::::/::::::::::::::::: |:::::::::::::::::::/::::V:::/:i::::::ﾍ:::＼
　　　／:::::::::::::/::::::::::/::::::::::::::::: : |::::::::::::::ﾄ::iト::┴<:::|:::i::::::＼::＼
　　 /:::::::::::::::::/:::::::: /::::::::::::::::::: ::ｲ::::::::::::::ﾊ::|　　 Vﾉ: |:::::::::ﾊ￣
.　 /:::::::ｨ:::::::/::::::::: /::::::::::::::::::::::/-∠ヽ:::::',　ヽ　　.ｲ:::/:::::::::i::ヽ
　/:::／ |::::: {::::::::::::i:::::::::::::::::::／＿＿≧:::::ﾊ　＿∠:/:::::::::人:::::ゝ
./／　　.}::::::i::::::::::::|::::::::::::／ ||' r￣ (:::). Yヾ:::i　 r===ﾚi::::::/:}＼i
　　　　ﾉ::::::|::::::: : |::::::／|　 .||　＼　＿　i　ﾊﾄ=ｲ(::)ヽ{:l:: /:::i
　　　ハ:::/i::::::::::ﾊ／ヽ/　　ヾ＿＿＿ノ　　　}､-　i::./ハ.|　　　なかなか人気のある旅行雑誌の副編集長をしていますから、
　　　／=＼ﾚﾍ::ﾊヽ　{　　　　￣￣￣　　　ノ　　|'´
　　/'´　　　＼＼::::ヽヽi　　　　　　　　_ ＿　　　 /　　　　　　　英語は商売道具なんですよ。
　　{　　　　　　￣＼￣｀ー､　　　　　 'ー-' 　／
　ノ｀ー ─　ミ､　　.＼＼　￣}　　　　　｀　／┐　　　　　　　　もう完全にあの子はイギリス人になってしまいましたよ
. (　／　　　　　＼　　＼＼　 i　　>──'´　　ヽr-､
　.Y　　　　　　　　＼　　＼＼廴r　＞'´　　　/　　 /
　/　　　　　　　　　　ﾊ　　　　ミ＝V　　　 /／　　イ

92 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:48:07 ID:TnLt0E5c0

　　　　　　　　　　　　　　　　|＼_ ￣ﾄ､ｰ―-､
　　　　　　　　　　＿＿＿＿_＞　＼| Ｌ＿＿_|
　　　　　　　　　　＞＿＿＿__　　　　__＿　＜
　　　　　　　　 l／　　　　ヽ　／　　＼!ゝ
　　　　　　　　／　　　　／ﾐヽ Vr勿＼　　＼ヾ
　　　　　　／／　　＞-―┴┴-　∠.:＼lVVV＼＼
　　　　　∠／　　／　　　　　　　　　　　　ヽ　　　ゝ　》
　　　　　/:/: . : /: . : . : . : . : . : . : . : . : . : .. :ヽ: . :}: | ﾉ
　　　　 /:/|: . /: . : . : . : . :/: . : . : . : . : 　.　　 ',:.:| :∧
　　　 |/ :|: /: . : .:/: . : . ﾊ:: . : . : . : . : . :　 . 　', |'　 |
　　　　　j:/!: . : .,': . : .:／: .|: . : .// /ﾚ'|i ト､|:　. Ｎ　　ｌ
　　　　　　ハl 　 l 　/ヽ､＿､;:　|　,＿,.ハ＼ヽ　l i |.| l　l|
　　　　　ヽ!　ハ ./　　　○　　　　○　　　 l l !.| l　|　　　　意外ですね
　　　　　　i Y/ 　Y.l　｀ー　　　　　ー　'　/ 》 ///i 　|.　|
　　　　　　.| l ! 　　 |´´´ 　　' 　　　 ´´´イ// /ﾚ'| 　i ト､|
　　　　　　ハ～､ゝ＞、　（_）　　　∠/ / /ﾚﾍ　ﾄヽﾊﾉ
　　　　　　　ﾚ//, ､/⌒ ＞ - ｧ　´ ﾑム/
　　　　　　　　 /,.-/_　く　 `ー '"´　　ﾉ　＼
　　　　　　.　／　＿_）／｀ｰ--- ‐ '"ﾍﾍ　　　ヽ
　　　　　　 / 　　 ___ﾉ　　　　,.　　　　　ｉl　　　　〉
　　　　　　 !　　　__,ﾉ　　　／　　　　　　ヽ　　　l

93 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:48:34 ID:TnLt0E5c0

　　　　　　　　　　　　　 i::::＼　　　 r::'::´::::::::::::::::::::::／＿
　　　　　　　　　　　　　ヽ:::::::＼.　 |::::::::::::::::＞-...':::´:::::::::＼
　　　　　　　　　　　＿＿ ≧::::::::＼i!:::::::::r､'::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　／::::::::::::::::/＼:::::::::|:::::: /:::::::＼::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　／::::::::::::::::／:::::::::＼::::::::/:::i:::::::::::＼::::::::::::::::::::::::::::...::::｀:::-.._
　　　　　／_:: -─ｲ::/::::::::::::::i::::::＼/:::::|::::::::::::::: ＼:::::::::::::::::::::::＼＿＿＿::＞
　　　　　　￣,...-:':´:／::::::::::::::::|:::::::::V:/: |:::::::::::::::::::::ﾊ::::::＼:::::::::::::::::｀:-._
　　　　　　 /::::::::::: /::::::::::::::::::::::|:::::_:ｨ=-.-|::::::::::::::::::::::::i:::::::::::＼:::::::::::::::::::: ﾍ
　　　　 /:::::::::::::i::::::::::::::::::::::::|'´　　　 .|:::::::::::::::::::::: :|:::::::::::::::ヽ:::::::::::::::::::ﾍ
　　　　 /::::::::::::::::ﾊ:::::::::::::::､:::::| 　　　 .|:::::::::::::::::::::::::|:::::::::::::::::::＼::::::::::::::::ﾍ
　　　　/:::::::::::::::::::::ﾊ:::::::::::::i ＼ヽ　　　　.|:::::ｲ::::::::::: ﾊ:::|::::::::::::::::::::::::i::::::::::::::::::＼
　　／::::::::::::::::::::::::::ﾊ:::::::::::|＿_ゞ'＿＿　|::/ i:::::::::/＿ヾﾄ::::::::::::::::::: |::::::::i ヽ::::::ﾊ
. ／:::::_::_:: - ﾌ:::::::::::::::ﾄ-三ﾆニ＝＝≦　ﾚ　|::::三ニニニ=ヾ:::::::::::::|::::::: |　｀ー-｀-
　　　　　　 /::::::::::::::::::| |r::::|て芯ミヾ Y}　　 .|::::/ ≧ニニ＝ﾐヾ::::::: |::::::::ﾊ
　　　　 /:::::;:::::::::＿| |　ヾ i!;;;....;;}　 i }ニニニi」｛ﾋｲ:::::｝ >　i l＼::|::::::::::ﾍ
　　　　　/／ /::::::/>‐ﾊi　　　ゞー'　<iﾘ　　ﾚi l　　廴../ ｲ　//::::::ゞ:::::::::::ﾊ
　　　　 /　　ﾊｨ::::i　-ﾊヾニニニニ彡　　 i　　ミ､＿＿＿_.//-､::::::::ヽ￣￣
　　　　　　　　ヾ i　- ﾍ　　　　　　　　　 ;　　　￣￣￣￣/ハ i:::::i￣
　　　　　　　　　　ヾ､∧　　　　　　　　＿　　　　　　　　/　　ﾉ-''´　　　おや、そうですか？
　　　　　　　　　　　　ーヽ　　　　　　　´　｀　　　　　　 /-'／
　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　 ..::　　　　　　/-'´　　　　　　　なんでまた、そんな風に感じたのですか？
　　　　　　　　　　　　＿　　　｀　､　　　　　　　　　　／
　　　　　　　　　　／: : :｀: -..､　　｀i'　､　　　,　ィ' ´
　　　　　　　　　 /: : : : : : : : : :｀: x.ﾉ　　｀　´　　|　　　　　　＿
　　　,...-::'::´:::￣::｀::-::::_: : : : : : : : :＼＿　　　　ﾄ､　　／: : : :ヽ
　r'´: : : : : : : : : : : : : : : :｀:ー-: : :＿: : : :｀ー. ､　.>'´: : : : : : : : : :>＿
　｝: : : : : : :-: :､: : : : : : : : :: : : : : : : : :￣: :ヾ: ::Ⅵ: : :: : : :_: -:'´: : : : :ﾊ

　　　　　　　　　、　＿_,
　　　　　　　､-ー'｀Ｙ＜,__＿
　　　　　_＿≦ー`__＿　_二ｚ<_＿_,
　　　　＞７ >,＞-‐ ´￣　｀'┴＜
.　　　＜"之Ｙ´;:　　　 /　　　　　　＼
　　　八 /:/　, ,/ / : /　/　ﾊ　　、ヽ
.　　　　|;ﾚ;,′: /: |: |: :/l : |.　 /|:ｉ|　 :ヽ '.
　　　 J　: ﾄ､| : l/Ⅳ-|イ{: :/`ﾄ+ｌﾉ,: : ｉ: |
　　　ハ{: :lヽ|:! :!ｨ≠=r ∨ｨ≠=r}: :!:|ハ
　　　　　'; : :V八_{ 下歹　　弋歹ﾊ:Ｎ　　　　　アーニャは、ソビエト学校のクラスメートたちの中でも、
　　　　 }j : :;（_∧.　　　　 '　　 ,ｿ_）
.　　　　　/ｲ :! : V 个、　ー　　,ｲ|ﾉ　　　　　　ずば抜けて祖国ルーマニアを愛する気持ちが強かったんです。
　　　　　　|八 : :{ : !:.:r}＞‐　'l∨L ＿
　　　　　　∨ ＼{⌒｛￣＞rく　｝　｢ }＼　　　もう強烈にルーマニアを愛してましたもの。
　　　　　　/　　 ∨　{_／　孑 ∨　 Ⅵ　ヽ
　　　　　｛　　　 |ｉ rく＼　〉 /　　　|ｉ ,/ﾞハ
　　　　　　〉　　(＼ヽ＼　Yﾞi/　 _,　 ||/ /／)
.　　　　　∧　＿_ヽ｀ｰ　 ∨/　（ヽ／　`∠-っ
　　　　　｛　 ‘ｰ‐ｭ｀/　　｝　　｝　＼　　(工_
　　　　　レ个ー-､　　 _ノ　　人_ 　　_x-r┬ '
　　　　＼|　　／`ｰ /　　/　　 ∧　　＼∨
.　　　　　　 {　'´　　／/　 /　　 / ハ　　　｝
.　　　　　　人　／　　　　　　　 /　＼　ﾉ

94 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:49:06 ID:TnLt0E5c0

┌────────────────────────────────┐
│私がそう言ったとたんに、アーニャのパパもママも黙り込んでしまった。　　　....│
└────────────────────────────────┘

　　　 /　 ,　　　|｀ ´　|　!　 ,|　　r'-:. :.i:. :. .: l .:└i
　　／ _,　ヽ　ﾄ､|__　　|/l　/_ﾄ､ｒｽ:. :. :._:._.:_.:_.: .: .:{
　　'´￣ /　 _┏━━┓┏━━｛:. :.／　,　　＼.: .｝
　　　 /イｲ ┃　　 ┣┫　　/{:./　　 :!　l　:.　 ∨ト､
　　　　　´ﾍ┗━━┛┗━ くノl{　| l.:lj|:._l!_j _:ｌ l|´ﾄｲ
　　　　　　　　L|　　　'_　　　/|　l |T t::j 　 t::jTl｣ .|　l|　　・・・
　　　　　　　　｀　､　　　　, |l |　l l:ﾄ　　 '_　　/|:l　!　|
　　　　　　　　　　　ト　イ　 /　/ |l _ﾄ､ __ ／_ !:l　ｌ　|　　　　　・・・
　　　　　　　＿.」　　 !__ |　ｌ〃:;:;:;:;:○;:;:;:;:;| !　l　|
　　　　　_, -＜_　＼　　／./　/ﾑ二!:;／l＼;:＜_〕｜ l
　　　　/　　　　　＼. Y ／j　/ 〈二｣;:;:;:;:l;:;:;:;:;〈＞‐ﾄ､.!
　　　　/ー ---- ､ l／ヽ l/ /|ト､て「;:;:;:;:j;:;:;:;:;:jてノ | l|
　　　　|　l　　　　|　　 l / |ｌ　ト二二二二／.:ｲ　! l|
　　　 /　 l　　　　　|　　 /'　 l|　ヽ:. :.,＿.,ｒ'´.: .:/:l　 |　|i
　　　 l　　|　　　　　! ／' |　 /　／.:＼｢　＞‐'´.く.　 l　| ',
　　　/　　l 　　　　 /l 　　 / /.: .: .: .: :￣:. :. :. :. :. ',　! :l　ヽ
　　　 /　　 l　　　　/ / 　　 | /.: .: /.: .: .: l:. :. :. :. :. :＼| :l　　ﾄ､
　　 /　　　|　　　く　Ｌ.＿／/.: /.: .: .: .: l:. :. :. :. :. l:. :. :Y　　ヽ＼
　　 | 　　 l 　　　　＞／￣.:/.: .: .: .: .: .|.: :. l:. :. :. l:. :. :.|二＞'´＿｣
　　 /　　　/__, -‐'´_／.: ／.:/.: .; ィ´￣ﾄ:｣.: :. l:. :. :. :.l:. :. :.Y´＜´_
　　/　　 /〈＿.＜二＼f-､.:'.: .: L｣: : : :Ｋ.: :. :.ﾄ､_＿_:.l:. :. :.｀ーｬ-､￣ヽ
　 /　　 /　　　　／／　￣{.: .: rｰ]￣´| ｢´ヽ-イ　　ﾋ＿＿:_:／二 -'´
　 |　　 |　　　 |＿二二＞￣´　/￣´｣|￣´|┘　　　　丶-- ､＜
　｜　　＼　　　　＜く￣＿＿,/Lｯ'´./Ｌ..ｯｲ　　　　　　＿／／
　　|　　　　＼￣￣//´　　　　{_＿／{＿_／　　　　　　ヽ＜

95 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:50:05 ID:TnLt0E5c0

　　　　　　　　　　　　　　　ノ , -　　　　　　_　　/三lゝ!
.　　　　　　　　　　　／　　　　,.　-‐ '´/ヽ/三ノ
　　　　　　　　　　　　／　　　　__　　　　　7三三,｜
　　　　　　　　　／　　 , ' ´　　　r ､_ ノ三三ﾚ.!
　　　　　　　　 r　　　　〆　　　　　__ﾄ､;;三三〃´ ｜
＼　　　 __,　イ　　　　　　 ,〆;:三三!　｀`　､　　 f
ヾ　二 / ,,三/　　　　　　　 r==､_ 丿　　　　＼　ﾉ
　　　/　三/　　　　　＿ / ⌒'!　　　　　　　　Y
`ー=,!三三l　　　／三;::j　l!　|::: !　　　　　ヾ　 |
　　　|三三| 　　 ∠ ーr-ｲ　|! │:::!　,! 　 iヽ　! i|
　　　|三三| 　　　 __,/ / |　|＼ト､:! .lﾄ､　l:::i　l !l
　　　|三三|　　,　三三:: ｲﾄ､|-十=',ﾆﾘ.'ヽ,/:/,/ﾚﾘ
　　　ゞ.三_:|_／三三イ│| 　 ∠ノ=彡　　ヽi_ｲ|
　　 rイrｰt,,ヽ.三ﾉl!　 |│| 　ヾﾉﾃ::≦ 　　ゝ、
ー-ﾃ| l!kt〃,ij　 / l 　 |│|　　〃ゞ/_　　　　/　　　　そうそう、紅茶が冷えてしまいましたね。
　　　ゞ､ニｲハ,/,.ｲ !　 | ヽヽ　　　　　　　　 /
,､.　　`ー-く三＼| ! 　|　ヽヽ.　ι　　ｒｧ /　　　　　　コーヒーを淹れさせましょう
|　＼　　　＼三| ! 　|　　ヽヽ. 　　　 /
　　　`ーr--､_　ゞ| ! 　|_, -―- l |　　_ ノ
　　　　　| 　 _,.＞'| i 　|　　　　ゝ＼,.´
　　　　　,l　　l. 　 | i 　|　　　　　））｀ﾞﾞ'' ､,,_
　　　.r ´ l　　l　　| i 　ゝ　　　　（（　　　　｀ﾞ'' ‐....

96 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:50:32 ID:TnLt0E5c0

┌─────────────────────────┐
│アーニャのママが立ち上がって部屋を出て行った後も、　　....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│アーニャのパパはバツの悪そうに黙ったままである。　　　　..│
└─────────────────────────┘

　　　　／::::::::::::/::::ハ::::::/:::|::::::::::::ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::＞．
　　／:::::::__:::::/::::::{ﾄ::V::}:::::|::::::::::::::::|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,
...／-=イ::::::／:::::: : |::ハ:|:::::|::::::::::::::::|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾑ
　　 /:::::::/:::::::::::::::::!ミﾐⅣｿ|:::::::::::::::::',::::::::::::::::::::::::::::::::::＼:::::::＼
　 . /:::::::::i:::::::::::::::::::|r"￣　 !:::::::::::::i::::V::::::::::::::::ヽ::::::::::::::ハ＞ー
　 /::::::::: :|::::::::::::::::::::|　　　.ﾘ:::::::::::: |::::::V::::::::::::::::::',:::::::::::::::::',
. /::::::::::: ∧:::::::::;:::::: |　　　,'::; ｲ:::::: |ヽ::::ヾ､::::::＿ﾊ:::::::::::::::∧
ｲ:::::::::; ｲ:::∧::::_|ﾑ＝!＿＿/__. V::: | _..≧__,,ｨ≦_:::`:V::::::::::::::::＼
- ' ¨　/:::::::::::>､:{r¨￣￣ ≧ミ}ﾄV:: |r＝″￣￣ } }::::V::}`ー──
　　　,'::::::::}:: i r }!{　,,＿＿ｪz .}}==={{　zｪ＿＿,　}i{ Y::rﾊ
　　 /:::,ｨ/ﾄ.人　{i{ ´￣￣￣` }}￣ {{　´￣￣ ` .}i} ﾉｲ
　 ./／ノ　＞ミﾄ _ﾊ＝＝＝＝"　i} ゛＝＝＝＝ｲノ_＿
　　　　　 ,/　//￣八　　　　　＿＿　　　　　/" .ト　}}ハ
　　　　i７　　{ {　　　＞　.　　　　　　　　　ｲ　　 i!　.}}　廴_
　　　ﾉ　　　ヾ;､　　　　　＞　　_　　＜　　　　 /　/　　　ハ
　　 /　　　　　　＼　　　　＼　　　　 /　　　_＿ノ　　　　　 }
　 ./ ＼　　　　　　＼　　　　＼　 .／ ,．＜　　　　　　　　 ..人 _
　/　　　`ー＝ミ､　　＼　　　　N/　/　　　　　　　　　　イ　　　ヽ

　 '⌒ヽ、　　,ー-､＿＿
　　　,r‐'‐-v'　　　｀　　￣ヽ
　　/　　,　|ヽ,　　　　　　　　＼
　 /　　Ａ､!Ａ;l、　　　　｀i　　　ヽ
　/ 　 l |　　　｀!　 |;　　　!　　　｀!
〃| 　!|,!　　　　 i　| !　　　|三ニﾆ.〉
　 |　l'l|ｭ_　　 _,..| !'_! i　　|ニ三ﾆﾂ
　 |ｉ | ﾄﾋl｀　´ '´|lﾋｿY 　ｉlヽﾆ‐,l´　　　　では、ぼくは失礼して車で待っています
　 '| ! i｀ｰ　　　　一' |　　| !, ）〈
　　| | !、 '､ .　　　　 | 　 | |'´））))ヽ
　　 !,l ,.ヽ　ー一'　 _,..!　 ,l　!ﾆヽ〃)
　　 |l=!|;､ヽ､＿_,..ｲ-‐|/｀!-一'´ﾉヾヽ
　　　｀;;;i,1　｜i l´￣;;;;;;;;;;;;;;;;;;!ヾ〃ﾉ
　　　_ﾉ;;;;;! i'´＾ ,! !;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヾ、ヽ)
　　　;;;;;;;;;〔￣￣〕;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;

┌───────────────────────────────┐
│ガイドの青年が立ち上がり、私に目配せしながら部屋を出て行った。　　　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　....│
│同国人の前では話しにくいこともあろうかと、気を遣ってくれたのだ。　　　　.│
└───────────────────────────────┘

97 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:51:29 ID:TnLt0E5c0

┌─────────────────────────────────┐
│しかし、青年が立ち去った後も、アーニャのパパはうつむいたままである。　　......│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│
│私と目を合わすのを避けている。何か話さなくては。何か・・・と焦る私は、　　　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│
│なぜか一番聞きにくいことを口にしてしまった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│
└─────────────────────────────────┘

　　　　　　　　､_　　＿
　　　　　　ｨ-‐ ` Y　＜＿＿
　　　＿≦―'´＿＿ _二z<＿
　　　＞ヾ￣, -‐　´￣｀┴＜
　＜戈､　Y　 /　　　　　　　　＼　　　昔、アーニャから聞かされた話なんですけど、
　　　 >{　/ 　 l,　､　,　　,l_ 　､　ヽ
　　　|　ゝ{　　 l｀寸寸T ハT7 } ,､ l　　ザハレスクというのは偽名で、
　　　∨ヾﾊ ∨ゝ　（●）　（●）|ハ|
　　　　　　ヾi∨|　　　　 ,　　 |´　　　　本来の苗字はツーケルマンだったとか。
　　　　　　　ヽT､,_ 　 σ　_ ノ
　　　　　　　 |　lヽ::ニヨ7l　　　　　　これ、ほんとうですか？
　　　　　　 └l´:::／ヽ |`

　　　　　　　　　＞ -:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∧ /:.:.:|
　　　　　　　　　 >:.-:.－:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∧i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀´:.:./
　　　　　　 r‐ ':.´:.:.:.:.:.:.:.:.::./:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:|:::ヾ:.:.／::|:.:.:.:.:.:.:／
　　　　　　/:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:..|:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:|￣｀''- ､;i:.:.:.:.:.:.:.:.￣ヽ
　　　　/:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:ﾊ:.:.:.|　　　　　 |∧:.:.:.:.:|:.:.:.:.:}
　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::V:.:.:./ -V:|_　　　　//:::.:.:.:.:.:K:.:.:.:|
　　／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∠V:./={´rvミ､=､_,, ,/　|:.:.:.:.:.:.ヾ:.:.:.|
　 /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/´＼-;/￣ V￣ | |ｲ≧ミ=､/ 　 |:.:.:/:.:.:<´ヾ|
　｀ '' 'ー -ァ:.:.:/:::r::j::./:::::::.　　　 | | 辷り｀ |}_　r-Vｿ:.:∧}　　　ええ、ほんとうですよ。
　　　　　／:.:.:.:ヽ::::::::::i:::::::::::　　　ヽ廴_　 <ﾃ=/rァヾ:∧:.|
　　　　　フ/:.:.:.:.:.＼::::::::::::::::　　　　　￣ヾ=ﾉ　 <-ﾝ /:| .V　　　そんなことをアーニャは
　　　　　　´''- ､:.:.:.:./::::::::::::::::　　　　　　　　　　/=テヾ|
　　　　　　　　　ヾ/:::::::＼::::::..　　　　　ー -　　 /　　　　　　　あなたにしゃべっていたんですか。
　　　　　　　　　/:::::::::::::::::::::::::...　　　　 -　　.／
　　　　　　／＼./::::::::::::::::::::::＼:::::::::...　　　／
　　　　／　　　∧:::::::::::::::　　 /｀ 'ー - ' ´
　　　ノ |　　　　　 }ヽ::::　　　/_
￣￣　 .|　　　　　　＼　　　{　ヽ
　　　　 .|　　　　　　/　｀ー='´　＼

98 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:52:09 ID:TnLt0E5c0

　／::::::::::::::::::::::::::::/::::＼:::::|::::::ヽ:::::::::::::::::＼::::::::-──
_,,- -ィ::::::::::::::::::::/::::::::::i:::V::::::::::::>:::::::::::::::::: ＼:::::＼
　／::::::::::::::::::::／::::::: : :|:::::V/￣　V:::::::::::::::::::::::＼::::ヽ
/::::::ィ:::::::::::::::{:::::::::::::::i: |￣　　　　 V::ﾄ:::::::::::ﾊヽ;;::ゞ:::ﾍ
:::／:::::::::::::::::::|::::::::::::::ﾊ:|　　　　　 |::i　＼:::::::}:::::ﾄ-;;::::ﾊ
/:::::::::::::::::::::::: |:::::::::::::| ﾘ───''　 i:ﾘ　ﾆ彡:::iト､;ヽ＼::i
:::::::::::::::::::::::::::::|::::::: :: |＿,,,-＝＝=ヽ/　_||=__ﾒ:|　||　　　ヾ
::::::::::::::::::::::::::::ハ:::::-::|＞''￣=.ィ-　 ||＝||{t..:jｱ　||
::::::::::::::::::::::::::::i＞＼:: |||ﾏﾊ廴ｿ　　..川　ﾊ￣　iノﾉ　　ツーケルマンというのはユダヤ人の名前ですからね。
:::::::::::::::::::::::r-､}''´　＼||　￣　　　 //　ﾉ｀￣ |´
::::/i:::::::::::::::| /ヽ　　　　ヾ＝=─''´´　　　　　 /　　　　野にあった頃の党は、心意気で団結しているようなところがあって、
:/　|::;;::::::::::ヽ　　＞　　　　　　　｀ー -　　／
　　ﾚハ:::::/i::::::≧::-:､　　　　　　　　　　／　　　　　　誰がどの民族に属するなんて誰も気に留めなかった。
　　　　ﾚ'　￣￣￣Yi　　　　　　_＿__./ ＿
　　　　　_...-:::'´￣￣｀:-..､　　　 |ー-　∧　}､＿
　　　 i: : : : : : : : : : : : : : : : ｀::-.┴..､: /: :}: :}: : : ヽ
　　 /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :: : ヽ　/::/: : : : ∧

99 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:52:36 ID:TnLt0E5c0

　　　　／::::::::::::/::::ハ::::::/:::|::::::::::::ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::＞．
　　／:::::::__:::::/::::::{ﾄ::V::}:::::|::::::::::::::::|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,
...／-=イ::::::／:::::: : |::ハ:|:::::|::::::::::::::::|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾑ
　　 /:::::::/:::::::::::::::::!ミﾐⅣｿ|:::::::::::::::::',::::::::::::::::::::::::::::::::::＼:::::::＼
　 . /:::::::::i:::::::::::::::::::|r"￣　 !:::::::::::::i::::V::::::::::::::::ヽ::::::::::::::ハ＞ー
　 /::::::::: :|::::::::::::::::::::|　　　.ﾘ:::::::::::: |::::::V::::::::::::::::::',:::::::::::::::::',　　　　　ところが、政権を奪取するや、
. /::::::::::: ∧:::::::::;:::::: |　　　,'::; ｲ:::::: |ヽ::::ヾ､::::::＿ﾊ:::::::::::::::∧
ｲ:::::::::; ｲ:::∧::::_|ﾑ＝!＿＿/__. V::: | _..≧__,,ｨ≦_:::`:V::::::::::::::::＼　　　たちまち国粋色を強めだしたんです。
- ' ¨　/:::::::::::>､:{r¨￣￣ ≧ミ}ﾄV:: |r＝″￣￣ } }::::V::}`ー──
　　　,'::::::::}:: i r }!{　,,＿＿ｪz .}}==={{　zｪ＿＿,　}i{ Y::rﾊ
　　 /:::,ｨ/ﾄ.人　{i{ ´￣￣￣` }}￣ {{　´￣￣ ` .}i} ﾉｲ　　　　　　　　　当時の指導者だったデジにも言われました。
　 ./／ノ　＞ミﾄ _ﾊ＝＝＝＝"　i} ゛＝＝＝＝ｲノ_＿
　　　　　 ,/　//￣八　　　　　＿＿　　　　　/" .ト　}}ハ　　　　　　　自分は気にしてないけれど、国をまとめていくのに、
　　　　i７　　{ {　　　＞　.　　　　　　　　　ｲ　　 i!　.}}　廴_
　　　ﾉ　　　ヾ;､　　　　　＞　　_　　＜　　　　 /　/　　　ハ　　　　　民族主義は不可欠だ。
　　 /　　　　　　＼　　　　＼　　　　 /　　　_＿ノ　　　　　 }
　 ./ ＼　　　　　　＼　　　　＼　 .／ ,．＜　　　　　　　　 ..人 _
　/　　　`ー＝ミ､　　＼　　　　N/　/　　　　　　　　　　イ　　　ヽ

　／::::::::::::::::::::::::::::/::::＼:::::|::::::ヽ:::::::::::::::::＼::::::::-──
_,,- -ィ::::::::::::::::::::/::::::::::i:::V::::::::::::>:::::::::::::::::: ＼:::::＼
　／::::::::::::::::::::／::::::: : :|:::::V/￣　V:::::::::::::::::::::::＼::::ヽ
/::::::ィ:::::::::::::::{:::::::::::::::i: |￣　　　　 V::ﾄ:::::::::::ﾊヽ;;::ゞ:::ﾍ
:::／:::::::::::::::::::|::::::::::::::ﾊ:|　　　　　 |::i　＼:::::::}:::::ﾄ-;;::::ﾊ
/:::::::::::::::::::::::: |:::::::::::::| ﾘ───''　 i:ﾘ　ﾆ彡:::iト､;ヽ＼::i
:::::::::::::::::::::::::::::|::::::: :: |＿,,,-＝＝=ヽ/　_||=__ﾒ:|　||　　　ヾ
::::::::::::::::::::::::::::ハ:::::-::|＞''￣=.ィ-　 ||＝||{t..:jｱ　||　　　　これからも、君とともにやっていきたいから、
::::::::::::::::::::::::::::i＞＼:: |||ﾏﾊ廴ｿ　　..川　ﾊ￣　iノﾉ
:::::::::::::::::::::::r-､}''´　＼||　￣　　　 //　ﾉ｀￣ |´　　　　　その自分はユダヤ人だと
::::/i:::::::::::::::| /ヽ　　　　ヾ＝=─''´´　　　　　 /
:/　|::;;::::::::::ヽ　　＞　　　　　　　｀ー -　　／　　　　　　　看板下げてるような苗字は捨ててくれとね。
　　ﾚハ:::::/i::::::≧::-:､　　　　　　　　　　／
　　　　ﾚ'　￣￣￣Yi　　　　　　_＿__./ ＿
　　　　　_...-:::'´￣￣｀:-..､　　　 |ー-　∧　}､＿　　　　　私は、当時は新しい国をつくる情熱に燃えていたからね。
　　　 i: : : : : : : : : : : : : : : : ｀::-.┴..､: /: :}: :}: : : ヽ
　　 /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :: : ヽ　/::/: : : : ∧　　　躊躇うことなく、デジのアドバイスに従った。

100 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:53:25 ID:TnLt0E5c0

　　　　　　　　＿　、　　　ィ
.　　　　　　　　 ≧⌒ ｀‐イ⌒≧
.　　　　／´￣｀　　　　＿　　＼
　　　　 //　　　　　イ´　⌒ヾ―-　＿
.　　　 / ／´　　／　　　　,　-‐-　　 _ ﾆ= 、
　　　 / / ィ　　 /　　　　／　　　　　　　　　　｀ヽ
.　　 /ｲ./　　　/　　　　´　　 /　/　/　i　　　　　ヽ
　　　 }/　　 /　　　 /　　　 /　/　/　 .|　　 i　　　｀
　　　 /　　 ,　　　　 , 　　ｲ　/　ｲ　　 l　　 ' |
　　　 ,　　 .|　　　　 |　　寸7Tヽ l　　 l　ｲ　l　　　}
　　　 | , 　 |　　　　 |　　ｬzぇミ、 |　　 '７寸ﾊ}　/　'
　　　 }ﾊ　.∧ 　 i　 .l　　{　弋タ　ヽ、/ ｾﾃぇ､ｲ　/　　ということは、もともとは
.　　　　 ∨　 ,　ﾊ　、　l　￣　　　 ′弋_ﾀ /　/
　　　　　 }　.∧　　}　 {、{　　　　　　　　,　／{ /　　　　ユダヤ人でいらっしゃっるんですか？
. 　　　 {ﾊ/　ヽ　ﾄ、ﾄヾゝ　　　　　　　　イ/
　　　　　　　 } ﾚﾊﾍヽ、　　　こ⊃　 ´
　　　　　　　　　　　　}＿　　≧ｭ　_　イ
　　　　　　　　ﾉ三≧ュ＿　ィ/

　　　　　 ,／/: :ヽ: : Y: /:､: : : : : : : :＼: : : : : : : : ＼
　　　　／: :/: : : ∧: : ;′1: : : : : : : : : l: : : : : : : : : :∧
　　 ∠二ィ: : : : l::∧: :!:::::l: : : : : : : : : :|: : :ヽ: : : : : : :∧
　　　　 /.: : : : :|::::::∨::::::l: : : : : : : : : :l: : : : ∨: : : : : :∧
　　　 ,r': : : : : : 「¨¨｀""¨1: : : : : : : : : l: : : : : ∨: : : : : :∧
　　　 |! : : : : : : l 　　　 l: :;ｨ: : : :∧ : | : : : : : ∨: : :ヾ : ∧
　　　ｲ!: : : : :i: : !.　　　 !:/ l: : :/　ヽ: ﾄ、 : : : : ∨: : : :＼;ﾊ
　　　/l: : : :,∧:厶-‐､　　ﾚ'　!‐ナ―-ゞ! ヽ、: : : :i: : : : : :l ヾ　　ああ。私も私の家内もユダヤ人の家庭の出です。
　　 !.:!: : ;ｨ: : ト1===ミ:、　 l.:/彡＝=｀=ﾐ:､ヽ : : l.: : : : : |
　　 .l.;ｲ : ;ハｲl:iﾞ '乍ミ1L..../;」i　ｨ卞ぅｘ､ ! ヽﾄ、:l: : : : : :|　　　私の両親は熱心にシナゴーグに通うユダヤ教徒だったし、
　　 .ﾚ'l: :/　ﾘ |:|　ﾋ;ﾘ |「￣"ﾞ1l　　ﾋｚﾘ｀ l l｀ゞ- ､.: : :lヽ:.!
　　　　ﾚ'’　　ヾ＿__ノ.'　　　ヾ: ､＿＿.ノﾉ　´rﾊ !:、:| ヾ　　　家庭内での会話はイディッシュでしたからね
　　　　　　　　　 i￣￣ i　　　　　￣￣￣　　ムｿ:.;ﾊﾉ
　　　　　　　　　､　　　　　　　　　　　　　r彡;〃´
　　　　　　　　　　ヽ　　ヾﾆフ　　　　　ﾉﾚ'´
　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　　 ´ ,L. -‐ ､_
　　　　　　　　　　　　　　ヽ . _　，　　, ィ´　　　,.､二ミ:ｫ
　　　　　　　　　　　　　　 ,.-‐=ﾆj,.ィ'´　　／￣ "¨ヾ＼L、
　　　　　　　　　　　　 _r'´　レ"　　 _ﾆ=′　　　二ﾆ= 　＼
　　　　　　　　　　　rくヽ　 j　,-=ﾆ¨ 　　　イ=‐- ､　　 >"

101 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:53:52 ID:TnLt0E5c0

　　　　　　　　　　　　　　　　　　,．-,r=‐'⌒'=‐＜
　　　　　　　　　　　　　　　　, イ　 "　　　　-‐- ,_＼
　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　｀ヽﾍ
　　　　　　　　　　　　　　__L__　　　　　　__　　　ヽ、ﾞﾍ
.　　　　　　　　　　, イ´￣＿..￣｀ '´￣　　｀ヽ、　　ヽ }
　　　　　　　／,ィ''"~　／⌒　　　　　　　　　＼　　ヾ
　　　　　　／　　　　　 '　　　　　__　　　　　　　ヽ　　ヽ
　　　　　／　　　　　　　　　　　 ´　＼　　　　　　 '　ﾍ/
　　　　イ´　｀　 ,　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　'　ヽ
　　　/　　 ,　　,'　.i　　 i　　　　　、　　　ヽ　　　　　 | 　 i
　　 ,' ,　 ./　　|　 :|　　 |　　ヽ　　ヽ　　　　.', 　　　 | 　 |
. 　 { .|　 .|　　 |　 :|　　ハ　　.', 　　',　　　 }　　　 .| 　 !
. 　 ! .|　 .|　　 |ﾆ=|､　　　 .ﾞyﾆキ―-､',　　　,'　　　　 !　ハ　　　アーニャがそのことを知ったのは？
.　　ﾍ!　　', 　弌仆ｔヽ、　　ｨf乏ぇ、 .|　　 /r-、　　 /　./
.　　　ヽ　、　!　込;}ﾞ　｀ヘ/乂い } ﾉ |　　/ァ-､',　 ./　/
　　　　　ヽヽ　,`､__,,　　　　　 `'"’, /!　./ ,'.　 !j　./　ﾊ
　　　　　　ヾlヽﾐ　　　　　　￣´ /ｿ　从'＞'"＞'　｜|
.　　　　　　　ヽ、　　｀　　　　　 ,ｲ／〃　／　　　.l､!
　　　　　　　　|　ヽ、　、　　　　　 '／　 |"´,　　ﾍ/
　　　　　　　ヽ|　.ヽ　￣｀　　　イ　　ﾄヘ　　从
　　　　　　　　　｀　　.｀ぇr‐.＜　　　　_,,ｨ|　｀ﾞ从ヘ
　　　　　　　　　　　　　 |＿,,,... -‐,i彡ィﾍ
　　　　　　　　　　　　　 |≡-=≦三三三＼
　　　　　　　　　　 --‐≦三三三三三三三三≧ｭ

　　/ ／.:/.: 　 i.:.:.:l.:.:.:l.:.:.:/ l.:.:.:.:.:.:｀`´.:.:.:.:.:.: |.:.:.､.:.:.:.＼
　　 l.:.:./ .:.:　.|.:.:.:l..:/l.:.:/　|.:/l.:.:.l.:l.:.ﾄ､.:.:.:.:. |.:.:.:.＼￣
　　./.:./ :. :.: :|.:.:.:l/ .l.:/　 |/　l.:.:N.::.|__＼.:.::|.:.:.:.:.:.:l
　 /.:./ .: .:.:.: :|.:.:.:仁l/二ﾆ　　l.:仁l:/=== ヽ:!.:.:.|＼|
　 l:/.l.:.:.:.:.:.:. .ﾄ､.:.l ﾃ示ﾐヽ1 Ll/ l 「戍ﾃﾐ　lﾄV　　　　十三歳だったか、十四歳だったか。
　　　l.:.:/l .:　ﾊ:lN{　辷ｿﾉ ! 「￣l |弋辷ｿ　l1 l
　　　l:/　l.:/　　 lL_ ＿＿ノ　 ,　　ヽ _二ノ.:.:.　　　　プラハからブカレストへ引き上げる少し前に
　　　　 l/　､__',　　　　　　　　　　　 /　.:.:.
　　　　　　　　ヽ　　　　　r‐‐ｯ　　　/.　　　　　　　話して聞かせましたよ
　　　　　　　　入　　　　　　　 ,..ｲ.:.
　　　　　　.　'´　i.:.＼＞ -- ＜/
　　　　／　　　 |.:.／＼　　ノ.:

102 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:54:24 ID:TnLt0E5c0

┌────────────────────────────────────────────────┐
│その瞬間、記憶の後継との符丁が合致した。アーニャがルーマニアに帰っていったのは、一九六四年の六月。　　　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　...│
│清潔でないとも純潔でないとも受け取れる「チースタヤではないルーマニア人」というリッツァの言葉に　　　　　　　　.....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　...│
│アーニャが激怒したのは、その三か月前の春休みのことだった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　...│
└────────────────────────────────────────────────┘

　/／７ヽ　イ : //:_/_.:／　|: :.:|: : ヽ:.:.. : : : : :.. |.　l　　:.:.:＼＜二ﾆ.┬ ´
/ｲ　／イ｀:/: :/:l: :/:./｀ヽ　l: : :ﾄ: : :.:ヽ:.:.:.. : : :.:.l:.:.:|:.:..　　 :.:ヽｰj　ﾉー二
｀　/´: : : /: : l:. l /l:/　　＼ヽ:.| ヽ: : :.ト、:.:. : :|ヽ_L:.:.:.:.|:...|　ドイ￣:.:|
　 L〉: : : l : : |:. |:| |′　　　ヽヽ　＼:.{　＼: :イ´l:|:.:. :.:.|:.:.:!:.:.l:.:.:.:.:.:.:.:.l
　 |: : : : :! : : |:. :l{ 　 z三ミ､､＼　　＼　／ヽj　 }l!:.:. :.:l:.:.:l!.:.:|:.:.:.:.:.:.:.:.:l
　 {/: : :.:!: : .ﾊ:. :ﾄ　　´　　｀ヽ　　´　　{ｰ'r_z三ミ、 |:. :.:/:.:.:ﾊ:.:l:.:.:.:.:. :.:|:.:.!
　/: /: :.:|: |: :..ヽ:ヽ　　　　　　　　　 i　　 ´　　　｀ j: : /: : /: }/ハ:.:.:. :.:!:.:.l
./ /: :.:小 :!: :.:.:.:ヽ:＼　　　／⌒ ｰ--､‐ ､　　　　/:／/:.ｲ:.:.:/:.:.:.:.!:.:.: : ﾄ:.:.l
':/!: ::. :.|:ﾊﾄ: :.:.:.:.:.:ﾄ.ｰ　　/　　　　　＼i　　　/ｲ:.:/´:.:|:.:/:.:.:.:.:.:|:.:.: : | l:.:l
/ | : :.:.:.l:.:.:.:ヽ:.:.:.:.:.l:.:＼　{　　　　　　　　 j　　 /:/:./:.:.:.:.l:.:.:.:.:.:.:.:.:l|:.:. : l　!:.!
!　!: : :.:.:|!:.:.:.:.:ヽ:.:.:.:l´ノ＼ｰ-　　＿＿_ノ　 .イ:/:./}:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:./|:.:.: :l　j:ﾘ
| ,.ゝ---― ７´: ＼:.ヽ　　｀　、 ‐ _ ..　.＜_:.:.:./:/:.j:.:.:./:.:.:.:.:.:.:.:/　!:.:.:/ //
ｲ　　　　 { : : {　＼ヽ　　　￣/　ヽ:..:..ヽソ/:.:/:.:./:.:.:.:.:.:.:.:/　 j:.:/ /´
　　　　　　　ヽ: :＼　｀＼　　　 {　　〉:..／´ ｀7:／- :._:.:.／　　/´

103 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:55:22 ID:TnLt0E5c0

　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ー--≧ 　 V　ﾚ´{
　　　　　　　　　　　　　　　　　　_,フ'　　　　　　　　　__｀ヽ.
　　　　　　　　　　　　　-‐　　　≦＝=､､-､　　　　　＼｀ヽ
　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　｀ヽ､ }　　　｀フ
　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ|　　　｀ヽ
　　　　∠ニ´_/　　　　　　　　　　　　ヽ　　　 |　 }人　{ヽ.　＼ヾ
　　　　　　 /　　　　　/!　　　　ﾄ　|　ヽ　　.| 　ﾐ　　ﾉ　ヽ._
　　　　　　 |　　　　　/ |　|　　　 | | | ヽ |　　| ヽ }　　 {´￣
　　　　　 }|　　　　 / __| ||　ヽ､|__ﾘ＿_ ヽ!　 |V-/,ｲ人
　　　　　　ﾘ|　|　　_／　ﾘ |　| /　y　　　　ﾘ|　i´[]´　/.ﾉ
　　　　　　　 |　､ | |jィ=≠ァ! // 　ィ≠=ァ　! ´|/|　| |/　　　　ユダヤ人であることは、
　　　　　　　ヽ　､| | 弋付ソ|/"　　弋ｲタ　　|　|ノ/
　　　　　　　　＼v||　　　　　　　　　　　 !　!/　　　　　　ルーマニアでは生きづらいことなのですか？
　　　　　　　　　　 |ヽ　　　　ヽ　　　　　　　／|　ﾄ,
　　　　　　　＿_　　|ヽ　　　　　　　　　ｲ､/ 　| }＿......,,__
　　　　　／　　｀ーヽ　ヽ､_ .　 ‐ ‐ 　／ .ﾉ/ 　./　／　　　ヽ
　　　　　|　￣＼　　ヽ　ヽ　＼ｰ ‐ ´ ／ i 　 /　/　　　　ヽ
　　　　　|　　　　ヽ　　ヽ　＼　＼__／　　|　/ 　 }　　　　　 {
　　　　 |/　　　　＼j　|　 |;;}　/;;;;;ヽ　／!/　／　　　　　　　}
　　　　 /　　　　 {　　|　| ./;;;{人;;;;;;;∧/;;;/ﾘ　 |　　　　　　　　 |

: : : : : : /　　　　　l.:::＼ | |.:.:.:.:.:.:＼
: : : : : /　　　　　　l.:.::::::ﾘ |/´ ￣｀`,　　.:.:.:.::.:.:.:＼
: : : : /　　　　　　　l.:.:／　　　　　　',　　　　.:.:.:.:.:.:＼
: : : /　　　　　　　　＼　　　　　　　 ',　　　　　.:.:.:.:.::::ヽ
: : 〈　　　　　　　　　　＼　　　　　　 ', .:.::::::::::::::::::|＼.::.:|
: : : :',　　　　　　 .:.:.:.:.:　＼　　　　　 ',::::::::ﾄ､.::::::::|　ﾊ:.:l
: : : : :',　　　　　 .:.:.:.:.:.:.ﾄ､　＼　　　　 ',::::::lﾆ＼:::::|
: : : : : .',　　　　　.:.:.:.:.:.:l　＼　＼／　　',::::l　　ﾄ､|
: : : : ::::::',　　　　 .:.:.:.:.:.:l　　　`y':／ﾆヽ ',::l1 　 l |
.:.:.:.:::::::::∧ 　　　 .:.:.:.:.:.:l　／／／　い / l　　l |　　　純粋に学問や芸術に生きるのなら別として、党内だけでなく、
:.:.:.::::::::/　ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l ..／∠　　　い /ハノ/
.:.::::::::./　　　＼.:.:.:.:.:.:.:.:.:V彳o:::ヽ　　　j! !　　`ヽ　　　　社会のあちこちに有形無形の差別はありましたね。
.:::::::::〈　　　　＼.:.:.:.:.:.:.:}ﾑ:::::::ノ´ ／／　　　 /
､::::::::::.＼_,,　-‐　　＼.:.:.:.:l　￣　／／　　　 ,.ｲ　　　　絶対にある程度以上は出世できないとか。
　ヽ　　　　　　　　　＼:L＿／／　　　　　 /
　　＼　　　　　　　　　　└＝＝'　　　　／/
　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /
　　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　 ,′
　　　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　 ,′
　　　　　　　　＼`ー--------r---‐‐'´
　　　　　　　　　＼　　　　　 ∠￣`ヽ

104 ：名無しのやる夫だお [↓] ：2012/10/13(土) 23:55:56 ID:KylZ32.U0

ユダヤ人の開放の手段だった頃の共産主義出身か。

105 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:56:06 ID:TnLt0E5c0

　　　　　　　　　　　＿_
　　　　　　　　　／::::::::::`ｰi
　　　　　　　　」::::::::::::::::::::ﾞﾄ､
　　　　　　　　ヾ::,．-――ヾ＼　＿　　　ええ、ええ。バルブは、ユダヤ人出身者の中で党内の出世頭だったのだわ
　　　　　　 / /　 / ﾊ　ヽ､::「!:::〈_
　　　　　　　　 i　i!　＼ l !／ i',::!|ノi　ﾊ　　それでも中央委員とマルクスレーニン主義研究所の所長止まり。
　　　　　　　ヽ　} ┃　┃　.!:ﾘ-､!　 |
　　　　　　　　　 | /""　　 ""|l{薔}ｉ　 |　　彼よりもはるかに革命への貢献も少なく、才能もない連中が出世して、
　　　　　　　　　 | ゝ、ｆヽ　　 |7'¨´|　 |
　　　　　　　　　 |　Ｋ¨{薇}￣∧ 　 |　 |　　私たちに対して見下すような態度をとるんですからね。
　　　　　　　　　 | ./ ヽ:介､,,/:::ﾊ　 |　 |
　　　　　　　　　 |　＼:::ハ::::::::;イ　 |　 |　　いい加減嫌になるのだわ。

┌─────────────────────────────┐
│いつのまにか、部屋に戻っていたアーニャのママがまくしたてる。　　　.│
└─────────────────────────────┘

106 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:56:47 ID:TnLt0E5c0

┌───────────────────────────────────────┐
│お手伝いさんが、コーヒーをサービスしてくれる。器はヘレンドのロスチャイルド・バード。　　　....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│銀座のデパートで一式たしか六〇万円ぐらいの値がついていた。　　　　　　　　　　　　　　　　　..│
└───────────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　 !/ /　　　 .ヘヽＶ｣∠ヽ. 　＼＼＼
　　　　　　　　　　_＿ノ／　..　- ､￣　≠‐- :.:｀ヽへ　　＼＼}
　　　　　　　　　　ﾌ　／　　　　　　　　　｀ヽ:.:Ｖ| !　　Ｖ{
　　　　　　　　　　//／　　　　　　　　　　　　　Ⅵリ　　　｀.、
　　　　　　.　　　 i//　　　　　|　　　　　　　　　　　∨ﾊ　　ｉ　､＼
　　　　　　　　　　/　　./　/　　!　　　 !　ﾄ､　　　　　 ∨｝　 } 　厂｀
　　　　　　　　　　|　　:i　ハi　 .|　　! :|　V　　　　　　:∨｝ｊ!　ﾄ､
　　　　　　　　　　|　　:l::/　 V　|　_|:_|__| ∨　　　　　 :ｊ/　ｊ!　ﾚ
　　　　　　　　　　|　　:N! ｰ-　V:!_ム斗‐ ＼|:ハ:|　|:::|: /Ｖ⌒ヽ
　　　　　　　　　　|　　|「（● ）　　（● ）　ヽﾊ　　:j /V/! ! |
　　　　　　　　　　ｌ∧　ﾄゝ　　　､　　　　　　} l　 :/´}　!ﾉ｜{
　　　　　　　　　　.V^ﾊ　　　_＿__　　　　　|　 ./ソﾊ｢::l∧ゝ
　　　　　　　　　　　/ : : ∧r/　 r 、＼　　　 ´Ｖ : : / :/
　　　　　　　 /ｲ : / f７　rく＼＼ }--　´/: : :/ :/{
　　　　　　　　　ヽ:{ f７　　＼＼ヽヽ -‐/: :,.ｲ:/ヾ=ミx、
　　　　　　　　　　　（{r―r一'　　　 |、ｲ／__,|ｆ／／⌒ﾊ
　　　　　　　　　　 _ﾉヾ.＿￣》､__ ノ,ハ,r一'´／　　） }ﾉ
　　　　　　　　　　八＿　八　{ｰ‐　　_∧ｲ / ´￣｀＼{
　　　　　　　　　　　 /　　　 _ﾉ: : Ｖﾊ　＿　 :!く￣　　　 r'′
　　　　　　　　　　　ｆ　　　　j＼__: : :{＼＿　｜ }、　　 ,′
　　　　　　　　　　！　　 /　　/｜:|　　　　ﾉ　 :}　　 /
　　　　　　　　　　　 '.　　/｀ｰ:' : :| : '､　　　　 / 　 /
　　　　　　　　　｀７: : : : : :i :| : : :＼　　　／|
　　　　　　　　　　　　 /: : : : : : :| :ヽ: : : : ｀ｰ‐ ´: : :|

107 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:57:17 ID:TnLt0E5c0

　　　　　　　　＿　、　　　ィ
.　　　　　　　　 ≧⌒ ｀‐イ⌒≧
.　　　　／´￣｀　　　　＿　　＼
　　　　 //　　　　　イ´　⌒ヾ―-　＿
.　　　 / ／´　　／　　　　,　-‐-　　 _ ﾆ= 、
　　　 / / ィ　　 /　　　　／　　　　　　　　　　｀ヽ
.　　 /ｲ./　　　/　　　　´　　 /　/　/　i　　　　　ヽ
　　　 }/　　 /　　　 /　　　 /　/　/　 .|　　 i　　　｀
　　　 /　　 ,　　　　 , 　　ｲ　/　ｲ　　 l　　 ' |
　　　 ,　　 .|　　　　 |　　寸7Tヽ l　　 l　ｲ　l　　　}
　　　 | , 　 |　　　　 |　　ｬzぇミ、 |　　 '７寸ﾊ}　/　'
　　　 }ﾊ　.∧ 　 i　 .l　　{　弋タ　ヽ、/ ｾﾃぇ､ｲ　/
.　　　　 ∨　 ,　ﾊ　、　l　￣　　　 ′ゞノ /　/　　　　では、アーニャがルーマニアを捨てた原因も
　　　　　 }　.∧　　}　 {、{　　　　　　　　,　／{ /
. 　　　 {ﾊ/　ヽ　ﾄ、ﾄヾゝ　　　　　　　　イ/　　　　　　その辺にあるのですか
　　　　　　　 } ﾚﾊﾍヽ、　　　こ⊃　 ´
　　　　　　　　　　　　}＿　　≧ｭ　_　イ
　　　　　　　　ﾉ三≧ュ＿　ィ/

　　） . .:.／.:.::::／　　　　　　　＼　＼.:.::| |::::::人
. 　（ . . .:.:.:::::::/ 　　　 /　　　　　　　　ヽ　入| |／ヽ　｀ヽ
　　＼.:.:.:.::::/　　　 /　′　 l　　　　　 | 　l ｢:::| |:::::::ﾉ　　 !
　　　 Y.:.:.′　　 ,′! l　　 |　　　　 |　 }ﾉ..:.| |:::::ﾉ　　 |
.　　　　ゝ┤　　　|　 |｜ l　|　　　 l　　　（. .:://.::∧　　 |
　　　　　 l !|　　_|＿Lｊ､ l ｜　_／|_/ l |　）//.::/　ｌ　　　|
　　　　　 |八 l l l{＼|｀ヾﾄ､l､／￣l/｀刈Y北Ｌ.,′ |　　　|
　　　　｜　ヽヽl ´==''　　　　 ==''＾ } |　ﾋｼ''′　|　　　|　　さあ、あの頃のアーニャは、恋に無我夢中で、
.　　　　　　'　 l / ∧　　　　'　　　　ｲ｜Y´　　｜　　 |
　　　　　｜　j l　|｜丶　　 ‐　　イ｀ヽl　l　　　 |　　　|　　ルーマニアを捨てるという意識はなかったと思うのだわ。
.　　　　　/|　 {｜ ! | ヽ　｀ｒz=.､´　ﾉ　 /　lト､　　｜　　 |
　　　　 //ｊ／. :|　! |＼　l､{{ｒ勿}}〃　 //| jj:::::＼　 |　　　|
. 　　 /.／. .:.::::| 　 { 　　｀ﾞＴﾞ´　　 // l|从::::::::::ヽ.!　　 |
　ｒ‐=ﾆ´.:::ヽー=≧ト:.ｒ‐⊂ニニﾆ⊃x/ /ｊ/:::}::::::::::::::ヽ.　　|
　＼::::::::::::::ゝ---/´ ミ}厂厂厂厂ｊｒ―‐ヘ/.:::j:::＼::::::＼_ｊ
　　　＼::::::::::::::::::/　ア{ i/ i/ i/ i/jゞ､ヽ｀ヽ＼{:::::::::＼::::::::｀ヽ

108 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:58:01 ID:TnLt0E5c0

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿_
　　　　　　　　　　　　（:.｀.:. ､_ 　　　　　 .....,,.-‐.:.:ノ´:.:.:.:.:.）
　　　　　　　　＿＿）:.:.:.:.:/777ー'"´:.:.:.:.:ノ⌒´:.:.:.:.:.:.:.（
　　　　　　　〈ニﾆ（_:.:.:.:.////|:.:.:.:.:.:.:.:._ノ　｀ヽ:.:.:/.:.:.:.:.:.:）
　　　　　　　　　ｉｰ＜（_:.:.:.:ｉ////|:.:.:.:.:.:.ノ　ヽヽ　V:.:/:.:. （
　　　　　　　　　 |　/（_: :. :.:|////lノ⌒´l|　l 　ｌｌ　'/.:.:.:.:ノ
　　　　　　　　　 }i//（_ :. :.:.|////| 　ｌ| l|　l 　ｌ l l　iー'´
　　　　　　　 //　（_:. :.:∨// | 　ｌ| l|　|｀ヽｌ l l　l
　　　　　　　　　〈/　　ﾊ{ｉｰヘ∨/ | 　从ハーrrﾐ从ﾊ!　　　　　　　　でも、長男のニコラエが国を出てイスラエルへ
　　　　　　　　　/ 　 /　 '　　 ∨Λ 　 l　　り　′
.　　　　　　　 / 　 /　　 ‘，　 ∨Λ　i|　　　　　〉　　　　　　　　　　行ってしまったのは、明らかにそのせいですし、
　　　　　　 / 　 /　　　　ヽ＿∨Λ i|　　 rｧ　　　　）　）　）
. 　　　　 / 　 /　　　　〈:.:ｰ=ミ从 lｪｪｪr＜　　　　（　（　（　　　次男のアンドレがグレてしまったのも、
.　　　　　 / 　 /　　　　　／:.｀:ｰ{i:i:i:i:i:i:＜薔>i:i} 　　トr‐r‐r‐rrf
　　　　 / 　 / 　　　 .:.´:.:.:.:.:.:.:.:}ｉ:ｉ:ｉ:ｉ:ｉ:ーｧﾐ彡} 　ｲＶ / / / /　　元はといえば、それがあると思うのだわ。
.　　　 / 　 /　　　　 /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:{i:i:i:i:i:ｉ:ｉ:/i介i:r’r〈　｀￣￣}/
　　　 / 　 /　　　 ,.':.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|i:i:i:i:i:ｉ/i/i:ｉ|i:ｉ} ﾉ:.:｀:fjfjﾊ.／
.　　 / 　 /　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: 从从/ｰ‐l⌒´/:.:.:.:.:.:.:.:.:fj
..　 / 　 /　　／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: ',　/:.:.:.:.:.:.:.:.ノ´
.　/ 　 /fjｰ‐':.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: :.:.:.:fj/:.:.:.:.:.:.:.:/
../ 　 /　fj:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:fjfjfjfjfjfj': : :.:.:.:.:. '
　　 /　　 fj:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. :.:fj:. :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.;. '
.　 /　　　　fjfjfjfjfjfj.:.:.:.:.:.:.:fjfjfjfjfj.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／
　/ 　　　　　　　　 `ﾐfjfjfj沙':.:.:.:.:.:.:ー―‐r‐ ´
./　　　　　　　　 /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ

109 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:58:55 ID:TnLt0E5c0

　　　　　､-ー'｀Ｙ＜,__＿
　　_＿≦ー`__＿　_二ｚ<＿
　　＞７￣､-‐ ´￣｀'┴＜
　＜之′Ｙ´／　　　　　　　＼
　　 >{　 ,' 　| ､　,　,.　 ,.l　　, 　ﾞｉ
　　 |　!､{　　| 寸寸T　ハT７} ｨ,ｌ　　　　　ミルチャはどうしてます？
　　 ′Ｊｉ, ﾞｉﾞｉ（ ●）　（●）|ハ|
　　　　i⌒ヽ'(1. ''' 　＿'　 ''' ﾉ川／⌒)
.　　　ヽ　ヽx＞､（_.ノ__,イｌ |::::ヽ／
　　　　 ∧　人lﾊ:::::l,三|:::/ｌ|　,:::::ﾊ

:.:.:.:.:|i:i:ｉ:i:ｉ:ｉ|.:.:.:.:.:.:.:〉/　　/　　　／／　／　　　　　ハ　ヽ　 ',:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:
:.:.:.:.:|i:i:ｉ:i:ｉ:ｉ|:.:.:.:.: /ｌ l　　 |　　　/ 　/　　/　 /　ﾄ､　/　　　　　 ,:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.
:.:.:.:r'ーく二ﾄﾐ: ｛　ｌ | ￣ |　ー/　_/　　/　　　 | |　　　 |　　　　　,:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:
ヽ:ﾉ　くムゝ八:.:.ミＹﾄﾐ　|　　　厂｀ﾒ、　|　l　| |　　　 }　　　　　l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:
:｛　〈 <r〉ゝゝ〉:.:.:/　ヽ { 　/　　|　 /　　　|　l　| |　　　　　　　 l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:
　ヽ　Yﾍ_,ノ /_:_ノﾞ-=彡=≠=ミメ}　 | 　　 |　l　ﾄ､　　八　　　 ':.:.:.:.:.:.:.:ヽ :.:.:.:_;ノ
　　廴辷,,,ソi:i:|　　|ｉ　 {f斧抃ﾐメ从{　　　 |　l　| | ヽ/}　ヽ　　 ,:.:.:.:.:.:.く⌒ヽノ
　　＼　Ⅵｉ:i:|　　|ｉ　乂zツノ　　ヽ　　 }从; | |／ｲ　　i|　　 /ノ⌒ヽノ
　　く辷ゝミi:ｉ:|　　|ｉ―ﾍ ´¨｀　　　　 f斧抃ﾐィ| |／　}　 /|　　'
　　　 }:.:.:.:.:.:.｀ヽ　 |lｉ:ｉ:i:ｉ:ﾑ""　　　　　乂zツ》ｉ |　　 l／　}　/
.　　　,ゝ-:=:ミ:.:.:}　|i:i:i:i:i:ｉ:ﾑ　　　　 '　 ´¨｀／｀ﾉﾉ　／　ノ ´
.　／ﾞｰ':⌒:ｰ=ﾐ|　|ｉ:ｉ:ｉ:i:i:i:ｉ:｝　´ '　　　""ｲ　´ ´　´　　´
／:.:.:.:.:.:.:.｀ヽｰ=:|　|i:i:i:i:i:ｉ{_r-=ﾐ＿, . イ　 |/
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.`ｰﾊ　ﾏi:ｉ:ｉ:r'ｰくﾆムﾍY　i|　 i|
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.ヽヽi:ｉ:ヽ｛〔〕｝ゝ〉ノ　,ノ
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼}:i:i:ｉ:｀マ辷ソ:ｉ:ｉ/´　　　ミルチャはブカレストに住んでますよ。
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ﾏi:i:i:i:i:i:i:Ⅵｉ:i:/
:.:.:.:.:.:.:.:.:.ゞﾐ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: Ⅵi:i:i:i:ｉ:ｉⅥ{　　　　　　この家にはあまり寄りついてくれないんだけど。
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.: Ⅵi:i:i:i:i:i:ｉ:ｉY
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀:ｰ=ﾆ三ミゞｰ=ﾐi:i:i:ｉ:|　　　　　ある物理学系の研究所の研究者になってますよ。連絡してあげましょうか？
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. ｀ｰ'､
:.:.:.:.:.:.:.:.ノ:.:.:.:.:.:｀:ー:.､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: ＼
:.:.:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼
:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ:.:.:.:.:.:.:.:＼:.:.:.:.:.,:'"´三ﾆ=ﾐヽ

　　　　　　　　　　　＿　　_,
　　　　　　　　　　　＿__,＞Ｙ´'ー-､
　　　　　　　　　　＿>ｚ二_　＿__`ー≧＿_
　　　　　　　　　　＞┴'´￣｀ ‐-､￣７＜
　　　　　　　　／　　　　　　　ヽ｀Ｙ′之＞
　　　　　.　　 /　 ,　　l、　、 ,　､ |　ヽ　} <
　　　　　　　ｌ ,ｨ { {７Tハﾉ T寸寸ヾ　 }ノ　|
　　　　　　　 |ハ| ｌ（●）　　（●）　/ / ,/ﾚ′
　　　　　　　 `|l⊃　､_,､_,　⊂⊃ |ﾉ'/|/　　　　ええ、ぜひぜひ
　　　　　 /⌒ヽﾍ　　ゝ._）　　j /⌒i !
　　　　　　　＼ /::::: ＞,､ __,　イァ/　 /
.　　　　　　　/::::::::::::::7Eニ:::{:::ﾍ､__∧
　　　　　　　　｀ヽ<:::::/ 　　　 /::::::::::::/

110 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/13(土) 23:59:17 ID:TnLt0E5c0

┌─────────────────────────────────────┐
│アーニャのママが手元の受話器をとって番号をプッシュすると、すぐに応答があり、　　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　...│
│ルーマニア語でしばらくやりとりをしていたかと思うと、私に受話器を差し出した。　　　　　 .│
└─────────────────────────────────────┘

:./　　　　　　 f: : : : : ヾ三三三!: : :〔__l　ヽｌﾐ} 　lヾﾐx
/　　　　ヽヽゞ‐' ヽ: : ヾ〃 y '}: : : : :}　　,lミ!.　l　ヾﾐ}
　 l　　　　ヽヽヽく:__ﾊ:.ヽ辷ﾉ!: :r‐ 'l　　 lミ}　 !　 lﾘ
/　!　　　　　ヽ /',ィ了（: :_:ヾ三l}: : :） ′　ゞ' 　 l
!　 l　　　　　　,' /::::ﾊ,　 l く:_ﾐ三!:r' /　　　　',　　',
l 　 !　　　　　l　l弋:ツ　 l 　 l三/ｰ-､,　-t　　l　　 !
l　　',　､　､　 l　　　′　 ! l　lﾐ/ ,ィ´: : : : ゝ-､!　　!　　　ミルチャが直接あなたと話たいそうだわ
ヽヽヽ＼ﾄ､l　　　　　　l l!　l/´: : : : : : : : : : :l　　 l､
　｀ヽト､｀ｰ` ヾj　　　　　l lィ´: : : : : : : : : : : :..:l　　 l: ヽ
　　　　　　　　ト　´_　　/: : : : : : : : : : : : : : :..ｌ　　 l: : ∧
　　　　　　　　 | 　 l ,ｨ'/: : : : : : : : : : : : : : : : :ｌ　　 l: : : ∧
　　　　　　　　 l　　l三l: : : : : : : : :/: : : : : : :..:.ｌ　　 l: : : : ∧
　　　　　　　　 l　　ﾄミ!: : : : : : : :/: : : : :..: : : :.ｌ　　 l: : : : : :.ヽ

111 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:00:01 ID:KTdaDuYo0

┌──────────────────────────────────────────┐
│受話器の向こうから聞こえてきたミルチャの声は、いきなり挨拶抜きに単刀直入切り出してきた。　　　│
└──────────────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　　,.　-‐………‐‐一ｧ
　　　　　　　　　　　　／.:::::／l.:::::/.:i::{:::::＜_
　　　　　　　　／.:::::,lィ≠≧厶∧|｀ヽ:::::｀ア
　　　　　　　 /.:::::/l/　,f弋{｢｀`　　､__厶::::ト
　　　　　　　　　 {::::::::{　　　　　　　　く衍∨!::l
　　　　　　　　　ｊr弌:!　　　　　　　　 ′　!｣`｀
　　　　　　　　　 { ⌒｀　　　　　一､　　 }　　　　　　マリ、オレの両親の言うこと、そのまま信じちゃいけないよ。
　　　　　　　　　ヽｰ┘ 　　　　　　　 , '
　　　　　　　　　　　｀Ｔ7　　　　　　　　, '　　　　　　　　両親のいないところでぜひ話しておかなくちゃならないことがある。
　　　　　　　　　　　个　　　　　　／
.　　　　　　　　　　 |　　　　厂｢´　　　　　　　　　　今夜空いてる？
　　　　　　　　_.　-‐┤　　　　｢ﾉ｀ヽ
　　　　　 ∠　　　　|　　　　／　　　}
.　　　　　 }　　}　,r＜_　　　/　　∧ 厶__
.　　　　　 ,'　　て{::::.::.:.:.:￣｣　／　ヽ {、｀丶、
　　　　　 / r‐一'´ヽ:::.:r一'′´　　　　＼丶、　丶、
　　 _　７⌒＼　　　 ',::{　　／ /　　　　　　　丶、丶、
　／　　　　　＼　｣::!　　／　　　　　　　　＼　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿_
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿__//￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣　　　　　　　　　　　　　 ,_　　＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　､-ー'｀Ｙ＜,__＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_＿≦ー`__＿　_二ｚ<＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＞ .,,_ ￣､-‐ ´￣｀'┴＜
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜之′Ｙ´／　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 >{　 ,' 　|､　,　,.　 ,.l　　, 　ﾞｉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　ヽ,{　　|寸寸T　ハT７} ｨ, ｌ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽﾚⅣ ハ（●）　（●）| ハ|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 V ﾄ'(1　　　 ,　　　}"/）　　　　ええ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 Vィ丶,　 ― 　 ,.ノ || |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│「ィ::ニE7l´　ﾉソ|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　└l´::::／ヽ.ﾄ──´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |::::|´ ￣｀i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |::::| 　　 |

112 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:00:59 ID:KTdaDuYo0

　　　　　　l::::::::::::::::::::::::::::l/:::/／:::::/ｲ／ﾘ::::::::l::::::Vヾヽｊ:::::::::::::::
　　　　　　j::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ﾚ:::ｨ:::::::::::ﾊ::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　 l::::::__::::::::::::/:::,:ｲ:::::/l::::::;ｲ::/:|:::::ｲ::l　!:::: ﾊ::::::l:::::::::::::::::
　　　　　　　Ｙ,ヘ 1::ﾊ:l:/- |:::/‐|::/__l/　|:/　l/　l::::i　!:::ﾊ:::/|:::l::ﾄ
　　　　　　　|　　,〉l::i　　　 lノ,ｨｒ-ｒ-､｀ﾞ‐ﾘ‐'　　 _ﾚ'-‐'lﾅﾘlﾉ::/ﾘ
　　　　　　　l　（ゝ V　　　くゝソ　｀　　　　 /ｨて「｀ﾒ / lﾙ'
　　　　　　　＼｀　 i　　　　　ー　　　　　　ゝニ '　/
　　　　　　　　　iｰｨ　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　じゃ、六時にマリの泊まっているホテルのロビーに迎えに行く。
　　　　　　　,　'´＾ﾘﾍ　　　　　　　　　　 i　　　　 /
　　　　　ｒ'　　　 j　　ヽ　　　　　　 ‐　〉　　　 '　　　　　　夕食一緒に食べながら話そう。
　　　　 |　ヽ､／　　　　＼　　　 -‐- -‐　　／‐　_
　　　　 /　　　l　　　　　　、　　｀￣´ , イ｀､　　　￣｀ヽ
　　　／|　　　 ',　　　　　　　｀､＿ , 1　　　　ヽ　　　　　ヽ
　／　　',　　　ヽ、　　　　　　　　　 |　　',　i　　　＼　　　　 l
／　　　　i　　　　　ヽ、　　ヽ　　 /l　　ヽ l 　　　ヽ　　　　!

┌───────────────────────────────┐
│私からホテルの名称を聞きだすと、ミルチャはすぐさま電話を切った。　　 .│
└───────────────────────────────┘

113 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:02:08 ID:KTdaDuYo0

┌──────────────────────────────────────────────┐
│心配そうに私を見つめるアーニャのママに、ミルチャと今晩逢う約束をしたと話すと、苦しそうに微笑んだ。　　　 │
└──────────────────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　厂￣｀:..､
　　　　　厂￣:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼ｰ=ミ
　　　　　　厂:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ:.:.:.｀.:.､
　　　厂:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ｰ=r'_: .:.:.:.:. ＼　　　　人 _
　　　　{:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: ｰ=ニﾆ=-ヽ:.｀ヽ:.:.:.:.:.＼ー‐＜:.ノ:.:.:｀:.､
.　　　　ヽ:.:.:.:.:.:ｰ=ﾆ　'"´ 　　　　＼ﾉ: : :.:.:.:.:.Ⅵi:i:iΛｰ‐' : :.:〕====ﾐ、
　　　　 _）:.:.:.:. ／　　　　　　く:.⌒ヽ.:.:.:.:.:Ⅵi:i:iΛ:.ノ:.:く=ﾆ二二））
.　　　（:.:.:.:.:.:,:　　　　　/ 　　/　　　＼:.（:.:.:.:.:.:.:Ⅵi:ｉ:ｉ:|:.:._:ノ:{ 二二//
. 　　　｀7:./ 　/　/　/　　 /　　 ,　　ヽ:）:.:.:.:.:.:.|i:i:ｉ:ｉ:|:.:.:.:.:.:. ）ｰ‐r;〈
. 　　　（:./ 　/　/　 '　　 ,　　　/　ﾊ　 r':.:.:.:.:.:.:.|i:i:ｉ:ｉ:|:.:.:. : く　　 |V》
.　　　　　 .′ , 　/　　|ｉ　　|i 　 /! /　!　{:.:.:.:.:.:.:.:.:}i:i:i:ｉ:}:.:.:.:.:. : ）　 | V》
　　　　ｉ　 il　{l　　ｌ{　,斗ｌ‐/,,j/7Ｔ|｀/ーｧ:. : :/i:i:i:i/: : :r‐r'′　|　V》
　　　　　ｉ| 　 i|　i!斗-八　 l iｨf斧抃》j/ （:.:.:.:.:.:/r＝=ﾐ:.:. _）i|　　 | 　V》
.　　　八　ｉl　i| y=ﾐ　ヽ{　弋:::ツ ´　/ ヽ: :/{ζ艾ζ（ﾉ|ii|　　 | 　 V》
.　　　　ヽ八从杙ｿ　　　 ´¨｀　 //ｌ（: /ｉｉ乂辷彡':.:）|ii|　　 |
　　　　　　　　ﾉ　}´ 、　　　　　　 // 　）ｉ:i:i:i/ｰ=彡r' 〈ｪ〉　　 |　　あの子は、もともと頑固な変わり者だったのだけれど、
.　　　　　　／　人　　 r-､　　＿//＿|（i:i:i／／ｌ　　|i　　|　　 |
　　　　　／　／// 　　｀ ´　　|ｉ://i:i:i:i:| |ゞ＜＿,|　　|i　　|　　 |　　最近、さらに偏屈になってね。
.　　　　　　／　〈〈＿＿,＞ー―l〈〈i:i:i:ｉ:ｉ:| |i:i:i:i:}:.:く|　　|i　　|　　 |
　　　/　　, 　　／i:i:i:i:i:i:i:ｉ:ゝ=ﾐY}ｉ:〉〉i:i:i:i:ｌ }i:i:i:/ーく　　|i　　|　　 |　　あなたにいろいろ話すでしょうけれど、
.　　/　　/　　〈ｉ:ｉ:i:i:i:i:i:i:ｉ:〈ζ>刈〈〈i:i:i:i://i:ｉ:i:{:.:.:.:.: ＼ |i　　|　　 |
..　〈　　〈　　　　寸i:i:i:i:i:i:i:i:ゞ=彡'i:iヽヽ//i:i:i:ｉ:i|:.:.:.:.:.:.:.: ＼　 |　　 |　　そのまま真に受けないでちょうだいね。
.　　＼　　､＿＿_,寸i:i:i:i:i:i:i:i:ｉヽ:厂￣　￣￣￣）:.:.:.:.:.:.:.:.:＼|　　 |
.　　　ー―――‐ﾏi:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉー―――ｧ／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. ､　|
　　　　厂￣｀:. .､／:.:ﾏi:i:i:i:i:彡介ﾐi:i:i:i:i:／／:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: ＼|
.　　　/:.:.:.:.:.:.:.／:.:.:.:.:.:.ヽi:i:i:i:ｉ/:::|i:i:i:i:i:/ 　￣）:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼

114 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:02:38 ID:KTdaDuYo0

┌───────────────────────────────────────┐
│どう答えていいか躊躇っているうちに、なぜかまたまた聞きにくい質問が口をついて出た。　　　│
└───────────────────────────────────────┘

　　　　　　　,_　　＿
　　　　　､-ー'｀Ｙ＜,__＿
　　_＿≦ー`__＿　_二ｚ<＿
　　＞７￣､-‐ ´￣｀'┴＜
　＜之′Ｙ´／　　　　　　　＼
　　 >{　 ,'　| ､　,　,.　 ,.l　　, 　ﾞｉ
　　|　!､{　　| 寸寸T　ハT７} ｨ, ｌ　　ルーマニアを知る多くの私の友人知人が、
　　′Ｊﾞｉ, ﾞｉﾞｉ　（●）　（●）| ハ|
　　　　　ﾞｉ|ﾞｉ'(1　　　 ' ／,〉.|　　　　　異口同音に言っていることがあります。
　　　　　ﾞｉTィ.,_ 　　／´ ./ノ
　　　　　　│「ィ:／,二ニソ　　　　　それは、ルーマニア人が外国人と結婚するのは恐ろしく難しい、
　　　　　　└l´:/　 ,-― ､}
　　　　　　　/::ｨ　　ノｰﾍJ　　　　　ほとんど不可能だ、ということです。
　　　　　 ;／l　 _,イ{　　i::､
　　　　　　/:::::::-::-:i　　　 |:::＼

115 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:03:07 ID:KTdaDuYo0

┌───────────────────────────────┐
│私の大学院時代の研究仲間にルーマニアに留学した人がいました。　　　...│
└───────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　,. -‐=＝‐‐‐- ､__
　　　　　　　　　　,. : "´　　_　　　　　　　　｀丶
　　　　　｀　ｰ=≠　　　　　　　　　　　　　　ヽ.
　　　　　　／／　, '　　／　　　　　　＼　　 ,ハ
.　　　　 /／　 /　　/　　;　　　　　ヽ　　　　　',
　　　　　イ　 /　'　　∧　　||　　　　/_}_　　',　 ` 　　,
　　　　　　{　 '　 !　斗七⌒八　　' ∧ハ｀ﾒ､!　　', 　ｌ
　　　　　人/l　｜八z≠ﾐｘ　',　　ﾉ斗≠ﾐｘ_| 　　|　 ,
　　　　　　　八｜;j〃 fゞ_刈`　)イ　iﾄ､,厶刈　　,'　八
　　　　　　　ヽＮﾊゝ ∨匕!　　　 └弌/　|　　ｉ　　　' ,
　　　　　　　　ﾉ !　丶　´　　　' 　　　　　厶　人　　　丶
.　　　　　　／　',　八　　　､-＝-,　　　/　　/ 　',　　　　ヽ
.　　　　　／　　〃! 　　ト　. 　ヽ:::ノ　　 , '　　/　　丶　　　　',
　　　／　　ﾉ´ }　　八ヘト　 _ 　イ〆　　八　　　 ' ,　　　ﾉ
　　／　　　　」　　　 ∨',|　r‐‐‐／　　　/:::::ゞ　　　＼　/
　 /　　　　　／丿　　　　',‐∨‐_／　　　厶-‐=＝l 　　　 ∨
　｛　　　　　爪/　　　　丿又／　　　　/::::::::::::::::::::＼　　　',
.　＼　　　/／　　　／|/::八　　　　　/::::::::::::::::::::::::::/　　 /
　　　ヾ　　〃　　　／::::::::::::::::::',　　　　ｉ::::::::::::::::::::::::::く　　人

┌─────────────────────┐
│留学中にルーマニア男性と恋に落ちました。　　　...│
└─────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　　　／
　　　　　　　　　　　　　　／'
　　　　　　　　　　　　／::/-――――‐-...ー―ｧ
　　　　　　　　 ,..--':::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼´
　　　　　　　／‐ｧ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　 ⌒7:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::!::::::::::::::::::::::.
　　　　　　　 .〃::::::::::::!:::::/:::::::|:::::|:::::::ﾄ::::::::ヽ:::::::::::.
　　　　　　　 /'|:::::::|::::-!::/_{:::::::{:::::ｉ＼::i-＼::::::!::::::!:::!
　　　　　　　　ｉ:::::::|ｌ:::::i/＿＼:::ヽ::::. _)'＿_‘::::|i:::::|l::|
　　　　　　　　 {:::::::|ｌ:::::｢丐心＼i＼{ 丐刃 }i::ﾘ∨:!ﾘ
　　　　　　　ヽ:::|ｉ:::::i ﾋz少　　　ﾋz少　i/　}:::i′
　　　　　　　　　　 )八从　　　　 ,　　　　　厶イi::ﾘ
　　　　　　　　　　 `ﾍ　　　＿＿,　　 ..ｲ:::::ﾘﾙ'
　　　　　　　　　　　　 )ト .　　　　 .ィﾙﾘﾉﾚ
　　　　　　　　　　 r―――}` ー‐　 {i/---- ､
　　　　　　　　　　　　}: : : : : : :＼＿. -: : : : : : : :.＼
　　　　　　　　　　 __人: : : : : : i i: : : : : : : : : : : --〈_
　　　　　　　〃　　　＼: : : : i i: : : : : : : ／　　　　｀　.
　　　　　　 /:i　　　　 `介: リ:_:i´i:_:／　　　　 /⌒丶
　　　　　 ,: :.|　　　　 // //　 i i|　　　　　　 /: : : : : :
　　　　　　 i: : :!　　　　　// // 　 .i i|　　　　　　　/: : : : : : :i

116 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:04:01 ID:KTdaDuYo0

┌────────────────────────────────────────┐
│でも、結婚にこぎつけるまで地獄の責め苦を味わったようです。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│相手の男性は、国の党や様々な機関、職場と居住区で信じられないような嫌がらせを受け、　　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│とうとう研究所を首になって掃除婦になるしかなかったということです。　　　　　　　　　　　　　　　.....│
└────────────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　 ,　兮ヽ､
　　　　　　　　　　　＿＿／　　　　￣￣ 9{_
　　　　　　　　　　 {ﾟ　, -‐一￢￣￣`ヽ、　 .jく
　　　　　　　　　　 i／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼ {:::ヽ
.　　　　　　　　 / ､___:::::::::::/.::::::::::::___;::　_,.',:＼ハ:＼＿_
　　　　　　　 /{ｌ､....＿＿./　___.,l...-l､':::ト､::';::::.＼ト-` ./｀ヽ
　　　　　　　　厶;}l::;::: |::ｊl:::ﾊ::::::::::|l∨:ｌⅣ::';::::::::::::::/ヽ　/-､　|_
　　　　　　　　_./_';ハ::ｌ:バ'　V}i::::::'.`ー‐∨ｉ:::::::::/―ゝ':.:.:.:.:ヽﾍ
　　　　　　 ._仁ヽ｀ヽ Ⅵ弋歹Ⅵ:､::',弋歹¨ヽ:ｌ|;/　／:.:.:.:.:.:.:.:.i　}
　　　　　　ﾉ‐ ､　　　V:{.　　　　 `ｰ__　　　.}ﾘ　{.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ｌ|　l
　　　　 ,r‐ゝ-､__　,ｨ´.人　　　／　_.〉　ｲ　 /:.:.:..:.:.:.:.::.:.:ﾘ_j
　　　ﾘ:.:.:´:.:.:;-=－'ﾐ;__:＞..._/　　 .､_〉イ∠＞′:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.!_｀r‐_''ﾕ =-､
　　　〈:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./　ｌ　　 __ 〉_:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..:.:.:.＞'´ 人ｰ‐一 '" ヽ
.　　　　＞､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..::.::;′,' 　 .,ｨ_ノ:.:.:｀ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:;:ｲ　／　,>､二 _＿_l
　　　　　　　￣￣｀＞-､__|　 {ｰ＜/ ::.:::.:::.:::.:::.::.:::.:::.／　／　／　 ! ヾ､､
　　　　　　　　　　　　￣　　｀＞､.:.:.:::.:::.＞'´￣｀ヽ／　　　',　　ヾ.､

117 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:04:26 ID:KTdaDuYo0

┌─────────────────────────────────────────────┐
│それから万難を乗り越えて二人が結婚するまでの筋書きは、ロメオとジュリエットも顔負けの物語です。　　......│
└─────────────────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿_
　　　　　　　　　　　　　　　　　_,　'"´　　　　　｀丶、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,.イ:::/
　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　／..:::::/,.ィ＝＝‐-....＿_
　　　　　　　　　　　　 / ,'　/　　／ /　　ヽ　　　｀ヽヽ　　　　　　　　　　　　　　〈:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＜
　　　　　　　　　　　　　　 l　l　j __ // ,ｲ　､ハヽ　　　}! ﾊ　　　　　　　　　　　　/⌒`:::::::::::::::::::::::::::::=ﾆ二二:.ヽ
　　　　　　　　　　　　　　 l　l　｢ j_从7ヽﾊ　 !七大 ` } ﾘ }/　　　　　　　　　　　/.^V.::::::::::;:.::.::.:..､::＜::.::.::.::..ヽ:.:､:＼
　　　　　　　　　　　　　 |　l　Vfﾞ仡圷/ jl ﾉィｱト､ﾍ// /　　　　　　　　　　　 ,'::;ｲ:::::::;:_ノl‐-:::､::∨::.ヽ::::::::::::ト､ﾍヽl
　　　　　　　　　　　 j　l　 l　 V_:ｿ　 ´　 V:ﾘ　/jｲノ　　　　　　　　　　　　i:/ l::i､:::lﾄ､:;l､::::::::::ｌ:V:::::::ﾍ:::|i:::|:::ハﾍ,`
　　　　　　　　　　　　　 ,'　ﾊ　ﾍ.　　　　 '　｀　,'　 l !　　　　　　　　　　　　　　∨ﾄ､|ｌ伝ｉ＼:::::';::::::::::∧.ｌ:::::::::::∧ﾊ
　　　　　　　　　　　 / /　l　　ヽ　　ー ‐　　.厶　|ﾊ　　　　　　　　　　　　　　 .Ⅵ ﾄ､}ﾘ　　ヽ::l::::::::::::::ﾘ:::::::::::::ハﾘ
　　　　　　　　／／'　∧　弋ﾄ､ __ , r＜7　　l　ヽ　　　　　　　　　　　　　　　ソ　　　　　.YV:::::::::::::::::::::::;ｲ
　　　　　　　　　　／　/　／　∧　　 Vー､　Kヽ{　　ヽ　ヽ　　　　　　　　　　　　　∧　　　　　 ,' 从::::::::::::::ﾊY′
　　　　　　　　　/　　/.／　　/¨}　　　',__∧_j_l::::ﾊ　　　＼　}／　　　　　　　　　　　　丶 ‐-　 ./,.....-ﾘ从ﾙﾘ、′
　　　　　　　　 ,′　 l {　　／:::/　　　/::::ヾ ☆Y:::ﾊ　　　　X　　　　　　　　　　　　　　　　｀r=≦:.,.:..-‐::.:'::::.::.≧ｘ、
　　　　　　　　 {　　　V　r'::::::/　　　/::::::::::＼__j:::::入xぅ／　＼　　　　　　　　　　　　ｆ´￣＞'::＿::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.:.ヽ
　　　　　　　　　ヽ　　l 　{ :::/　　　/::::::::::::::::::V:／／∠　　　　 ',　　　　　　　　　　　 ∨.:..:..:..:..ィ_:;:ﾆ二ミｘ::.::.::.::.::/
　　　　　　　　　　}　　!　j／　　／:!::::::::::::::::::∧V　_二}:ヽ　　　/　　　　　　　　　　　　ﾉ:..::.＜　　　　　　　｀∨.::｛
　　　　　　　　　 /　 /　 {　　〈:::::::l:::::::::::::::/:| j/　-ｰｿ:::ﾉ　　 /　　　　　　　　　　　　〉ｨチ　　　　 ,....-...､　∨:ﾉ
　　　　　　　／　／　　|ヽ　　＼:::l:::::::::::/∠/j　 rﾃ':〃　　( ヽ　 ,　　　　　　　　　 / 〃　 ,　　　／..:..:.冫:｀ｰ':ｿ
.　　　　　　／　／　　､__jノ　　　∧{::::::／　,/ {　 _/:::ハ　　　`ー彡　　　　　　　　 / 〃　.,:′ ／..:.:.:.::〃::.::.::.:/
　　　　　 /　〃　　､__ ＞　　／::;＞'´ 　 /!　∨ﾍ::::ヾ::＼　　　＜ _　　　　　　　 ,' 〃　 ;'　／..:..:..:..:..;'.::.::.::.::/

118 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:05:10 ID:KTdaDuYo0

　　　　　　　　　　　＼｀ヾ:.:.:.:.　.:.:　　.:レ'´／
　　　　　　　　　_,.　-=≒‐:.:.:. .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:￣ﾞ≧
　　　　　　ｘ≦_:.:.: ,．　 ´￣｀ .　´￣￣｀丶､:.そ
　　　　　 ≪_:.:.:／: : :.:　　　　 :.　:.　　　　＼:.≧ｘ､
.　　　　　,ｘ≦:./:.: : : :.:　.: :　:　 :.　:.:.　 :.　　　　ヽ:て¨｀
.　　　　　￣｀7:.: : :　:.:　.: :　.:　　:　:.:.　 .:　:.: 　　ﾊ:.:.:.＼
　　　　　　　,':.: : :　.:.:　:.: :　.:　 .:.:　.:.: .: .:　.:.:. :. Ⅵ´￣´
　　　　　 i:.: : :　 :.:　:.: : : :.:　:.:.:.　.:.: .: .: .:.:.: ＼:＼
　　　　　 l :l|.:.: .:.:.:ﾄ､:.ﾄ､:.:.:j:.:.:.:.: /!:.:ﾊ:.: ﾊ.:　:.:.:トﾐ≧
　　　　　 |.:j|:.:.:.:ﾄ､|弌!弌ノ!:.:.:.:/ T7''T'7 |.:　:.: |
　　　　　 Ⅵk:.: :!.ｧ^笊ﾐ¨V:.:／ｧ^笊ﾐ¨Ⅵ:. .ｲ:.j　　　　アーニャがイギリス人と結婚するのに、
　　　　　　　ﾘﾊ:.:圦乂iｿﾉ´ 　ヽ.乂iｿﾉ.j:./ Ⅳ
　　　　　　八＼{　　　　　　　　　　 /ｨ　ﾉ　　　　　障害はなかったのですか？
.　　　　　　　　ヽﾊ　　　ゝ　　　　 /ｨﾍ
　　　　　　　　　　 /:.＼　　＿_ 　　　.ｲﾊ:.kﾍ
.　　　　　　　　厶ｨ:.:/ﾐiｘ.　　　　ィ:.:.:.Vﾊ!　`
　　　　　　　　　　ﾑﾊV:.:ﾏ=≧=≦=7:.:.:.:.:.Vﾊ
　　　　　　　　　ﾊV:.:x仆ミ//彡仆x :.:.:/Vﾊ
.　　　　　　　　 /ｘ＜///＞介＜////＞xVﾊ
　　　　　　　 ,ｘ＜//////〃./ﾊVﾊ.V///////＞ｘ,
　　　　　 //////////｛しﾞ//}.しﾞ.}//////////ﾊ

119 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:06:37 ID:KTdaDuYo0

┌───────────────────────┐
│アーニャのパパとママは再び黙り込んでしまった。　　　 │
└───────────────────────┘

　　　 /　 ,　　　|｀ ´　|　!　 ,|　　r'-:. :.i:. :. .: l .:└i
　　／ _,　ヽ　ﾄ､|__　　|/l　/_ﾄ､ｒｽ:. :. :._:._.:_.:_.: .: .:{
　　'´￣ /　 _┏━━┓┏━━｛:. :.／　,　　＼.: .｝
　　　 /イｲ ┃　　 ┣┫　　/{:./　　 :!　l　:.　 ∨ト､
　　　　　´ﾍ┗━━┛┗━ くノl{　| l.:lj|:._l!_j _:ｌ l|´ﾄｲ
　　　　　　　　L|　　　'_　　　/|　l |T t::j 　 t::jTl｣ .|　l|　　・・・
　　　　　　　　｀　､　　　　, |l |　l l:ﾄ　　 '_　　/|:l　!　|
　　　　　　　　　　　ト　イ　 /　/ |l _ﾄ､ __ ／_ !:l　ｌ　|　　　　　・・・
　　　　　　　＿.」　　 !__ |　ｌ〃:;:;:;:;:○;:;:;:;:;| !　l　|
　　　　　_, -＜_　＼　　／./　/ﾑ二!:;／l＼;:＜_〕｜ l
　　　　/　　　　　＼. Y ／j　/ 〈二｣;:;:;:;:l;:;:;:;:;〈＞‐ﾄ､.!
　　　　/ー ---- ､ l／ヽ l/ /|ト､て「;:;:;:;:j;:;:;:;:;:jてノ | l|
　　　　|　l　　　　|　　 l / |ｌ　ト二二二二／.:ｲ　! l|
　　　 /　 l　　　　　|　　 /'　 l|　ヽ:. :.,＿.,ｒ'´.: .:/:l　 |　|i
　　　 l　　|　　　　　! ／' |　 /　／.:＼｢　＞‐'´.く.　 l　| ',
　　　/　　l 　　　　 /l 　　 / /.: .: .: .: :￣:. :. :. :. :. ',　! :l　ヽ
　　　 /　　 l　　　　/ / 　　 | /.: .: /.: .: .: l:. :. :. :. :. :＼| :l　　ﾄ､
　　 /　　　|　　　く　Ｌ.＿／/.: /.: .: .: .: l:. :. :. :. :. l:. :. :Y　　ヽ＼
　　 | 　　 l 　　　　＞／￣.:/.: .: .: .: .: .|.: :. l:. :. :. l:. :. :.|二＞'´＿｣
　　 /　　　/__, -‐'´_／.: ／.:/.: .; ィ´￣ﾄ:｣.: :. l:. :. :. :.l:. :. :.Y´＜´_
　　/　　 /〈＿.＜二＼f-､.:'.: .: L｣: : : :Ｋ.: :. :.ﾄ､_＿_:.l:. :. :.｀ーｬ-､￣ヽ
　 /　　 /　　　　／／　￣{.: .: rｰ]￣´| ｢´ヽ-イ　　ﾋ＿＿:_:／二 -'´
　 |　　 |　　　 |＿二二＞￣´　/￣´｣|￣´|┘　　　　丶-- ､＜
　｜　　＼　　　　＜く￣＿＿,/Lｯ'´./Ｌ..ｯｲ　　　　　　＿／／
　　|　　　　＼￣￣//´　　　　{_＿／{＿_／　　　　　　ヽ＜

　　　　　　　　...::´　　/　　　　　　　　　 ∨|!　　　 /　　丶､＼
　　　　　　,..:'　　　 /　　　.、　　　　　　　　川　　　 |　　　　ヽ￣
　　ー=彡'　　.'､＼＼　　｀ヽ　 !　　　　ハ　　　! 　 .|　}
. 　　　 ,'　　　.i.i.|.　＼＼＼　 !　ﾄ､　　　 } ﾉ　　　{　　ﾄ､!
　　　　　i　　　川　　　＼＼＼}　 !ミﾐﾄ､　 //　..　　!　　.}
　　　　 |　　 i , |.|　　　　 .斗-┼　!ミﾐﾄ､　＞､ .　　i　　人
　　　　 |　　 |.i i |　　 ´ ,,,r=≠i|　ﾄ､ﾐＹ´｀ヽ　/　Ｙ´＼ゝ
　　　　　!　　 |ﾘﾘ　　 .〃弋::::ｿi　 |　!ｉ　{､. ﾘ '　 /　 ,{　ヾ
　　　　 |　　 |ｆトﾐ　　　　　 "　｜｜ﾘ　ｒ'./ i　 /　　人ﾄ､　　普通のルーマニア人は外国人との恋愛はご法度だったけれど、
.　　　ﾉ人川弋ﾘ）　　　　　　 .!　i　　 ,,ｲ /　/　　/ |/　｀
　　／´　.从ﾊ　ヽ　　　　　　ヽ|　　∧ ハ从　/　 ′　　　党の幹部の娘だったアーニャは、特別だったんですか。
　　　　　　　　ﾍ.　　　　　　　　　./　/ 　/　∨
　　　　　　　　　ﾉ＼　￣　´　　　／.-‐ "´￣￣￣￣}
　　　　　　　i''￣￣｀ミト.､　　 ..ｲ　´　　　　　　　 |
　　　　　　　|三三＞. 　｀＜´ _ _ ..-‐≠三三三三三{
　　　　　　　トﾆ三三ﾆ＞..､　｀　＜三三三三三三ﾆ!
. 　　　　ﾉト.、｀ヽ三三三＞..、　　｀ー=≠ﾆニニニゝ---､
　　　　　　 !/::::::::ﾄ､　｀ﾞ＜三三三三二二ニニニニニニニミ＼
　　　　　 |',:::::::::i´ ＼　　｀＜三三三三三三三三三三三ﾆﾐ､＼
　　　　　 |::V::::::!___..ノ>､＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿_｀ヾ三三ﾐ､＼
　　　　　 |::::V／　／::::|　/::::::|　　　∨::::::::::::::::::/::::/:::｀ヽ.＼三ﾆヽ　＼

120 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:07:04 ID:KTdaDuYo0

┌─────────────────────────────────────────────┐
│二人は相変わらず黙っている。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│ちょっと無遠慮すぎたかしらと私が心の中で反省しかけたところで、アーニャのパパがポツリと呟いた。　　　....│
└─────────────────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　＞ -:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∧ /:.:.:|
　　　　　　　　　 >:.-:.－:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∧i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀´:.:./
　　　　　　 r‐ ':.´:.:.:.:.:.:.:.:.::./:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:|:::ヾ:.:.／::|:.:.:.:.:.:.:／
　　　　　　/:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:..|:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:|￣｀''- ､;i:.:.:.:.:.:.:.:.￣ヽ
　　　　/:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:ﾊ:.:.:.|　　　　　 |∧:.:.:.:.:|:.:.:.:.:}
　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::V:.:.:./ -V:|_　　　　//:::.:.:.:.:.:K:.:.:.:|
　　／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∠V:./={´rvミ､=､_,, ,/　|:.:.:.:.:.:.ヾ:.:.:.|
　 /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/´＼-;/￣ V￣ | |ｲ≧ミ=､/ 　 |:.:.:/:.:.:<´ヾ|
　｀ '' 'ー -ァ:.:.:/:::r::j::./:::::::.　　　 | | 辷り｀ |}_　r-Vｿ:.:∧}
　　　　　／:.:.:.:ヽ::::::::::i:::::::::::　　　ヽ廴_　 <ﾃ=/rァヾ:∧:.|
　　　　　フ/:.:.:.:.:.＼::::::::::::::::　　　　　￣ヾ=ﾉ　 <-ﾝ /:| .V
　　　　　　´''- ､:.:.:.:./::::::::::::::::　　　　　　　　　　/=テヾ|
　　　　　　　　　ヾ/:::::::＼::::::..　　　　　ー -　　 /
　　　　　　　　　/:::::::::::::::::::::::::...　　　　 -　　.／
　　　　　　／＼./::::::::::::::::::::::＼:::::::::...　　　／　　　　いや、大変でしたよ。私が幹部であるために、
　　　　／　　　∧:::::::::::::::　　 /｀ 'ー - ' ´
　　　ノ |　　　　　 }ヽ::::　　　/_　　　　　　　　　　　　別な意味で大変だったと思います。
￣￣　 .|　　　　　　＼　　　{　ヽ
　　　　 .|　　　　　　/　｀ー='´　＼

121 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:07:28 ID:KTdaDuYo0

: : : : : : /　　　　　l.:::＼ | |.:.:.:.:.:.:＼
: : : : : /　　　　　　l.:.::::::ﾘ |/´ ￣｀`,　　.:.:.:.::.:.:.:＼
: : : : /　　　　　　　l.:.:／　　　　　　',　　　　.:.:.:.:.:.:＼
: : : /　　　　　　　　＼　　　　　　　 ',　　　　　.:.:.:.:.::::ヽ
: : 〈　　　　　　　　　　＼　　　　　　 ', .:.::::::::::::::::::|＼.::.:|
: : : :',　　　　　　 .:.:.:.:.:　＼　　　　　 ',::::::::ﾄ､.::::::::|　ﾊ:.:l
: : : : :',　　　　　 .:.:.:.:.:.:.ﾄ､　＼　　　　 ',::::::lﾆ＼:::::|
: : : : : .',　　　　　.:.:.:.:.:.:l　＼　＼／　　',::::l　　ﾄ､|
: : : : ::::::',　　　　 .:.:.:.:.:.:l　　　`y':／ﾆヽ ',::l1 　 l |
.:.:.:.:::::::::∧ 　　　 .:.:.:.:.:.:l　／／／　い / l　　l |
:.:.:.::::::::/　ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l ..／∠　　　い /ハノ/　　外国人との結婚は法律で禁止されていた。
.:.::::::::./　　　＼.:.:.:.:.:.:.:.:.:V彳o:::ヽ　　　j! !　　`ヽ
.:::::::::〈　　　　＼.:.:.:.:.:.:.:}ﾑ:::::::ノ´ ／／　　　 /　　したがって、どうしても結婚したい場合は、亡命するか、
､::::::::::.＼_,,　-‐　　＼.:.:.:.:l　￣　／／　　　 ,.ｲ
　ヽ　　　　　　　　　＼:L＿／／　　　　　 /　　　特別の国家機関に申請書を提出し、そこで審議にかけられ、
　　＼　　　　　　　　　　└＝＝'　　　　／/
　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　必要な場合は、呼び出されて根掘り葉掘り査問された上で、
　　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　 ,′
　　　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　 ,′　　　　　許可をもらうしかない。
　　　　　　　　＼`ー--------r---‐‐'´
　　　　　　　　　＼　　　　　 ∠￣`ヽ

┌─────────────────────────┐
│アーニャのパパはまるで他人事を話すかのようだった。　　　│
└─────────────────────────┘

122 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:08:28 ID:KTdaDuYo0

┌─────────────────────┐
│その乾いた口調にイライラした。　　　　　　　　　　....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..│
│否が応でも友人の経緯を思い出してしまう。　　　 .│
└─────────────────────┘

　　　　　　　　＿　　_,
　　　　　　＿__,＞Ｙ´'ー-､
　　　　　＿>ｚ二_　＿__`ー≧＿_
　　　　　＞┴'´￣｀ ‐-､￣７＜
　　　／　　　　　　　ヽ｀Ｙ′之＞
.　　 /　 ,　　l、　、 ,　､ |　ヽ　}<
　　ｌ ,ｨ {７Tハ　T寸寸 |　　}ノ　|　　　　私の友人の連れ合いの場合は、
　　 |ハ |（●）　（●）　/ / ,/ﾚ′
　　　　 `| 　　ヽ　　　「)'/|/　　　　　　　その申請に漕ぎ着けるまでが大変だったと言ってました。
　　　　　ヽ､_ 　― 　_,.ィT/
　　　　　　／ Eニ::ｨ -､ |　　　　　　　　陰に陽に妨害や嫌がらせがあって。
　　　　　/::::;／ヽ:::/:::/'::
　　　　　/:::/へヘ/::::/:::　　　　　　　　それも、自分たちにとどまるならまだしも、
　　　　 /:::::＼ヾミ::::/|:::
　　　　（;;;;／| ＼;;;;ノ/:::　　　　　　　　　親兄弟にまで圧力がかかったそうです。
　　　　　　 /　　　　〈:::

123 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:09:23 ID:KTdaDuYo0

　　　　　　　　　　　　　　　　　＿_
　　　　　　　　　　　　　　　／:::::/
　　　　　　　　　　　　／::::::::厶ィ::::::::::::-....＿_
　　　　　　　　　　　　＿{::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＜
　　　　　　　　　　　 /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　 /:::::::/:::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼:::::＼
　　　　　　　　　　/:::;ｲ::i::ｉ:i:::::::!::::::::::::::::::::＼:::::::::::::ｉ:::::::::i
　　　　　　　　 i:::/ l:::l::|:ﾄ､:::ﾄ､:::::::::::::::::::::::}:::|i::::ﾘ::::::Ⅵ
　　　　　　　　 i/ 　Ⅵ:|:i,ｨ芹ミx::::::i:::::::::::::i:::ﾘ::/:::::::::i:|
　　　　　　　　　　　　 Ⅵiﾄﾋﾘ　　＼!::::::::::: !/::::::::::::::/ﾘ
　　　　　　　　　　 ‘iﾘ　　　　　 Ⅳ:::::::::::::::::::::::::/
　　　　　　　　　　　 .　　　　　 , i从:::::::::::::::::::/
　　　　　　　　　　　　　　＼￣　　/＿__}ﾙﾘ从:::/　　　　成績優秀だった妹は大学の合格を取り消され、
　　　　　　　　　　　　　　　　`r‐＜二二二二二＞､
　　　　　　　　　　　　｢￣｀ヽ二二二二二二ﾆﾆ＼　　工場の技師長だった父親はヒラの技師に降格させられた。
　　　　　　　　　　　　　　 ∨二二二二二二二二ﾆﾆ/
　　　　　　　　　　　ﾉ二二／￣￣￣￣￣Vニ{
　　　　　　　　　　　　〉少'´　　　　＿＿,　 Vﾆ}
　　　　　　　　　　　　　　/ //　　　　／二二}二二ﾘ
　　　　　　　　　　　 / //　 /　／二二//二二/
　　　　　　　　　　　　 / //　 / ／二二ﾆ//二二/

　　　　　　／.::::;／..:::::::::::::::::::::::::;ィ.::::::::::::::::::::::::::::::::::/__
　　　　　 '⌒'／..:::::::::::::::::::::::／..::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::´:ハ
　　　　　　〃.:;:::::::::::::::::::::／.:／.::::::::::::::::::::::::::::::;::::::::::::::::::i
　　　　　　/:イ:::::::::::::::::／_／..::::::::::::::::::::ｲ:::::::::/|:::::::::::::li::::|
　　　　　　　 |:::::::::::::::::::::rl::::::::::::::::::::／｀ﾒ､_／　l:::::::::::::lヽ:|
　　　　　　　 |::/.::::::::::::/ .l::;:::::::::;:::/　 ./∠ ｀` 7::::::::/.:;'　ﾘ
　　　　　　　ﾉｲ::::::::::::人 l/ |::::/.|/　　' 乂ヽ /.::::／l:/
　　　　　　　　|::;ｨ::::::::::::＞-|:/　ｌ　　　　　 ´/.:／　 '′
　　　　　　 .ﾉ' .|:::::::::::;::/　l′　　　　　　 /.:人
　_.......--..‐...:￣｀＞:､/:l;′:　　　　　　　￣　 /　　　建前は、法を犯すようなものを
´:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:.＞.、　　　　　　　　__ ./
:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:｀:..､,ﾍ　　　　　／　　　　　育てた家族に対する懲罰だったけれど、
r‐ｚ､:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..ヽ｀:::ー＜
／　|:.ｨ＝≠=-ミ_.:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:＼
. ,|イ二二三三三≧ｘ:..:..:..:..:..:..:..:..:..:冫
/　_,.....-..――､ﾐ////ﾍヽ:..:..:..:..ｨ＞'
＜:..:..:..:..:..:..:..:..:∧ヾ'//∧ ｀ー'x{、
:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..∧ ヾ//∧ l}　 l|
:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:.∧　∨/∧l! : ||

124 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:10:11 ID:KTdaDuYo0

　　　　　　　　　 .イ:::::::::::::::::::＿:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/―.､
　　　　　　　／＞ｨ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::∧
　　　　　 ./／ /二二二ﾆ=-_::::::::::::::::::::::::::::::::';::::::::::::::::::::::∧
　　　　　　 ′ ./イ/|;::::::::::::::::::::::::;ｲ:::::/|::::::::::::::::i::::::::::=ニ二〉ﾍ
　　　　　　　 /.:::/.::|:|::::::::::;ｲ:::::/ ,'.::/ .;:::::::/|::::/l:::lﾊ:::::::::l:::::|ヽ:＼
　　　　　　　./;イ:::::::::|/|::/.::|:::/―‐ﾒ､.'::::|/.:;:::/┤l:::::i:::::::|!::ｌ|　｀ヽ
　　　　　　　　|::|::::/.l:l:::|':::::::ｌｨ=示ミ ,'.:::::;::::::;ｨ示l:l|:::::ｌ::::::ｌ|:ｌ|!
　　　　　　　　l/l:::l　|ｌ::::::::/弋:::ﾄイ'./＞ｲ／ﾃﾄｲﾘ'|:::::ｌ::::;',':/　　　実際には、鎖国している分、
　　　　　　 ,ｨ≦从ヽｌ|::::::;　　｀￣´/´　　 i、`¨¨´lｲ::/|:/,'/
　　　　　〈::.::.::.::.::.:｀ｰﾐ::il､　　　　　　ゝ'　　.|,、ヽ' .′　　　人々の外国に対するあこがれが極端に肥大していて、
　　　　 ,.-.∨::.::.::.::.::.:: ﾚヘ＼　　　　　　　　ｨ..._〉｜
　　　.人::.::.::.::.::_.::.::.::.::.::.::...:..＞..、　　／￣｀ｰ ´ヽ l、　　　　　外国への出口を得た恵まれた人間に対する嫉妬のはけ口に
　　／　　｀￣´　:∨.::.::.::.::.:::...:..:..:..:≧ ′　　　　　／　丶
..／　　　　　　　　 ∨.::.::.::.::.::＼.:..:..:.;ﾄ､　　　,..-＜　　　　 l　　　なったみたいだ

　　　　　　　　　　　　　／　　/　　　　　　　　　　　　　从　　　　　　　＼ゝ
　　　　　　　　　　　　/　　　 i　　 |::::　ヽ　　　　　　　　　ゝ,　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　　　　 .′ '　　ﾊ　　ヾ:::　 |＼　ﾊ　| 　ヾ;.　 |:::::　　　　ヽ　|
　　　　　　　　　　 | | │　/-＼-　ヾ　|ニ| /-i!│　 |: i::::::ト.::::　　　　 ∨
　　　　　　　　　　 | | │ﾊ／　　　、　 │　　　　ヾ|　 /　i::::/:::∨ヽ::::::　/
　　　　　　　　　　　 |ﾊ　Vｨ＿＿, 　＼|､＿＿＿　 /／ ,/ V:::::::::::::::（::::::!|
　　　　　　　　 l　ゝ＼￣　　　　　￣　　　イ／/ ) |:::::::::::::::::::＼ |
　　　　　　　　　　　　　「 ` 　　ヽ　　　　　　／jｲr '_ノ::::::::::::::: ﾊ::::ﾉゝ
　　　　　　　　　　　　ﾊ　　　　　　　　　　　　 rイ:::::::::::::::::::::/
　　　　　　　　　　　　　　　ゝ.　　-　-　　　　　 ..イﾊi!:::::::::::::: //　　　と言ってました。
　　　　　　　　　　　　　　　｀　．｀　　　 .　'′ |　ヾ.::::::::::::ﾊi
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＞- r_ﾉヽノ＼／|　 ∨ゝ::|　　　　だから、嫌がらせは凄まじく、圧倒的多数の人々は、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　)::::::::::::::::::::::::::::::{.　　　 `
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ノ:: - ―　… ...－::` …‐- ､　　　　申請まで漕ぎ着ける前に挫折したとか・・・
　　　　　　　　　　　　　　　　 _ .．' :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　::::::::::::::::: /::ヽ.::::::::::::::::::::::::::::::::: /::::::, :: ,
　　　　　　　　　　　　　　　.:::::::::::::::::ノ::::::::::ゝ::::::::::::::::::::::::|:::/:::／:::::::|
　　　　　　　　　　　　　　　.::::::::::::::::::/| _:::ノ￣｀ヽ _::::::::::|/／:::::::::::::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /ノ　　　　　　　　ヽ:: |.':::::::::::::::::│

┌───────────────┐
│そこまで言って口をつぐんだ。　　　...│
└───────────────┘

125 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:11:03 ID:KTdaDuYo0

┌────────────────────────────────────┐
│そういう状況に国民を追い詰めていた体制の側にいた人間が、　　　　　　　　　　　　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│自分の家族だけは例外にすることが可能だったのですか？　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│という言葉が喉まで出かかっていたのを、ねじ伏せて、無難な質問に切り替えた。　　　 │
└────────────────────────────────────┘

　　　　　{ー- ､∧ﾉ{
　　　　 _ ゞ　≦　　￣ヽ
　　　r ′ －＞ -―　￣`ー　､
　　　|／　／　　　ヽ　　　　ヽ　　ヽ
　　 /　　/　　／　　　　　　ヽ　ヽ　 `､
　　ム.　l　　/　　　　　　＼　l　_L　　l
　　｜l　|　/　 l　 l　　ﾄ､　l 斗七ﾊﾊﾉ
　　川　l　|　 {､｜」斗ヽ、|/ﾚ'ﾚ　从!　　　
　ノリ!八 l　ｋ＜! ヽ!　　　　(● ）l l
　　　　ヽ　ﾍ　　ヽ　(● ）　　　　　リ　　　　でも、そうやって申請さえすれば、
　　　　　} 人ヽヘゝ　　　　　′　　ﾉ
　　　　ノ　　　`~ゝ　　　　　-　　≦ーフ　　ほぼ間違いなく許可は下りたんですか？
　　　　　　　　　廴 `　ー　　≦　} ﾍく
　　　　　　　　 /　　ヾ　　　彡 _,ｲ._ノ､._ゝ
　　　　　　　 /　　　, ゞ- ＿ノ〇l `ｰ'
　　　　　 /　　　/　　〇　　〇|

　　　　　　　　　　　＞'´　／　　 ∧　　｜　　　　i|　ヽ.　　　＼
　　　　　　　　　　／　／　　 /::::ヽ　_,斗:.:.:.: : 　 |　　 !　　:...　　＼
　　　　　　　　　〉　丨　　　　::ー‐^´¨　|:.: : !:.:..　ﾄ､　 |　　 :.:.:...　: :..｀ー-､
　　　　　　　 |　　　| 　ｉｌ　　::|　　　　 ! ::∧:. :. 　,=‐ｉ　　　:.:.:.:.:...:.:.:..:.:.／
　　　　　　　 /　.:.:.:.:|　 i| 　 ::| 　　　　 | / ,ｨ|,.イ´__ ∧　 ..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／
　　　　　　　　　/ :::／イl|　ｌ|　 ::|=､＞ｰ=､ｉ′|:rレ弍¨ヽﾄ :.:.:.:.:.:.:.:.:.／
　　　　　　　　./::／　 /　　　|　　|´戈¨Ｔ |ﾄ==､||　弋__ソ‐|/.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼
　　　　　　　　ﾚ'゜　 /　／　 iヾヽ! 辷_ソ｣|　　ヽ=＝＝=='　ﾏヽ.:.:r-‐'´
　ｒr‐、　　　　　レ'　ﾚ'〉　! ヾﾆ==＝ ′〈　　　　　　　 'ノ::;;;>
　ﾄ'　| 　　　　　　　　￣ヾﾇ、　　　　　｀　　　　　　　,/‐'´　　　いや、許可が下りたのは、
　| 　|　　　　　　　　　　　　　￣ヽ　　　　ー‐　　　　 /
..ﾉ　l'⌒!　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　 _, ィ´　　　　　　半分もいかないだろう
´　ノ^ヽ '､　　　　　　　　　　　　　　｀¨ﾆt-　　-‐'　ﾄ-┐
　　／｀ヽ.ヽ、　　　　　　　　　　＿　　/´iイ　　　　　 |/　ヽ―-- ､__
　　 ‐'´｀ヽ. ｉ､　　　　　　　／i　ゞ7″ | ′　　　／　　 |　　　　｀ヽ、
＼　　イ-' 　ヽ　　　　　／　 i　　/　,ﾍ |＿___,_／ |―､　 |　　　　/　　ヽ.
　ヽ.　 ″　　ｌ　　　／-‐'´ | .//／　ヽﾄ-―/ニ,ﾉ　　＼| 　　 /　　＼'､
　　　＼　　　 l.　,.-‐' 　　 :　ﾚ' ′　　く !　 //　　　　　　　　 / 　　　ヾ、
　　　 |　　　　.ﾄ''　　　　　　! .|　r―┐　 | ,//　　　　　　:. ｌ　 /　　　　　　　｀ヽ、
　　　　 l　　　 l､__　　　　ﾚ' 　|　　|　　i/o’　　　　 :.:. !　|　　　　　　　　　ヽ、
　　　 |　　　　 |／＼　　　 |　　￣´　 / /　　　　　 :.:.:.ヽ⊥_　　　　　　　,.-＜}
　　　ﾉ　　　　｜　　ヽ.　　l　　　　　　{i∧　　　　　　:.:.:.:.:.:.:.|＼　　　／　　＼

126 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:12:01 ID:KTdaDuYo0

　　　　　　　　　　　ｲ´／￣イ-
　　　　　　　　　{、 | {/　＿―二ア、
　　　　　　　　　ゝ＼´＿_ ´　　　　＞、
　　　　　　 , イ´　￣　　￣ヽ、"´　　＼
　　　／´｀/、　_　　　　　　／´￣｀ヽ　、　　,
　　/　／　　｀　　　　　　　　　　　　ヽ　 ',
　 ,'　/　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　 }　 }
　ｉ /　　　　　　 /　　　　ヽ　　 ',　　　 }　.l　 |
　 |'　_i 斗-‐＝/、.ｉ　　　斗-‐=| 、　ﾘ　, 　 }
　 | ´ }　|　 /、_ {　|　　　　}.　　 |　｀ /　/　　ﾘ
　 |　 :|　ゞ‐-r、_ヽﾊ　　　 }_z-r=ｧ　 ,　 {　　ﾄ
　　,　.|　 { | ら云ド　ヽ　 /ら云} "　ﾊ、ﾊ　　{
　　ヽ ! 、ヾ弋-ソ　　　｀"弋‐ｿ　/ ｲ　} ヽ　 |ヽ　　アーニャの場合は、すぐ下りたんですか
　　　ヾ　ゝ＼_　　　　,　　　　　//}　ノヽヽ l
　　　　 ,　ヽ￣　　　　　　　　　　人　　　ヽﾐ
　　　　 ', 　 i＼　　　 --　　　イ　i ＼　　　ヽ、
.　　　　ﾊ　 i　｀ i 　、　　イi　{　　ヽ　ヽ　　{｀
　　　　　　ヽﾊ　　}^Yヽ｀-―ｲ{´{　　　ゝ　＼　ヽ
　　　　　　　　ヽ /////////∧ ヽ/ ＼{　　　｀
　　　　　　　イ////////////ヽ
　　　 _, z "/////////////////＞、

　　　つ:::::::::::::::::rー-'三三_　-――‐-- ､)::::::::＼　　＿
　　　(:::::::::::::::::::::::) 三= '´／　　　　　､　 (_:::::::::::::丶<::::::`ー､
　　　 `ｰ,:::::::: __ノ／　　/ /　　　＼　　＼ム::::::::::: |企;:::::::::::}___
　　　　 (_:::::: ヽ／　　　/ /　　　　　ヽ　　､ヽ(__:::::::::::|三|:::::::::::⌒Yヽ
　　　　　r’:::: /　　　　　 {　　　|!　　| |!　　|!ﾊノ :::::::::|三|:::::::::::::::乂{
　　　　　｀ｧ: :′　/　 /　!　　　 |!　 |! |!　　|! |｀ｰ, : :::|三|:::::::::::::::}　'.
　　　　　ヽ.′　/　 /　 |! 　　 |!　 |! |!　　}! | Ｙ:::::::::|三|:::::::::::::/　 {
.　　　　　　|　|　|!　 |! 　 |!　　　 i}　 } |!　 /_!_| ゝｧ : :|三|::::::::_;ﾉ| 　 '.
.　　　　　|　|　|!|　 |!､　{! |!　 // /}//孑' /ｲ　(_ : :r'--{:::::::)　| 　｜
.　　　　　{　|　| {　卞ﾄ､ハ!_ //ノノィ≦ケテ|　(:::::〈ん)､) 〉´　| 　　|
　　　　　　ヽﾄ､ {ﾍ､从ィ升=ﾐノ´　　/弋じ:::}｜　〉 : ゝﾆン　　 |　　｜
　　　　　　　　ヽ乂ﾍ!ゞ､rゝ':{｀　　　　　宀'´ |　 ∨/／　　　　|　　　　　あのねえ、この人が彼のところまで
　　　　　　　　　 }　　|ﾍ　^¨´　　､　　　　 | 　 {ノ´　　　　　| 　　 |
　　　　　　　　　川　| 丶　　　　r‐､　　　ノ　 } !　　　　　|　　 |　　わざわざ頭下げて頼みに行ったのだわ。
　　　　　　　　 //}　 ! ＿≧-..､　｀´ ,∠⌒} /　八ﾍ . 　　　 |　　　|
　　　　　　,厶.j　/':.:.:.:.　 .:.:.:/>=(:.:.:.:.:.:. / /＞ヽヽ　　　　 |　　　|
　　　　　　 /　／｀ヽ):.:.:.:....:.:__}ｲ夊)＿r　/ /:./::::::ﾍ∧ 　　 | 　　｜
　　　　　八　　'´_ ⊥｝ー :.:.:.:｀¨)´:（/'⌒ヽ｀Ｙ二二〕＼　　|.　　.｜
　　　　〈≦ヽ　　　 r､){:.:.　:.: ／＼ノｰ、｀　《-､::::::::::::::::ヽ |　　 .|
　　　／￣ )'＾う｀)ﾍＪく）_:-＜: : : : >'´　　　, '二＞_＞::::::::::::{､.　　.|
.　　　〈__∠二てｈ_ｎ_ｎ_}::::}: : : : : :r{_r(_r､∠::::ﾐ＜::::::::::::::::::::::::＼　｜
　　　　　__ノ／r′:::::::::!_)／: /: / )ﾍｎ_ｎ_ｎ_Ｊ:::://:::＼::::::::::::::::::::::＼{ー― ､
　　,ｨ≦:::｀ミﾉ:::::::::::::::|_｝: : /: :/:「_)| / ／（:_:_／':::::::::＼:::::::::::::::::::::::::::::::::ノ

┌───────────────┐
│アーニャのママが口を挟んだ。　　　.│
└───────────────┘

127 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:13:11 ID:KTdaDuYo0

　　　　　　　　､_　　＿
　　　　　　ｨ-‐ ` Y　＜＿＿
　　　＿≦―'´＿＿ _二z<＿
　　　＞ヾ￣, -‐　´￣｀┴＜
　＜戈､　Y　 /　　　　　　　　＼
　　　 >{　/ 　 l,　､　,　　,l_ 　､　ヽ
　　　|　ゝ{　　 l｀寸寸T ハT7 } ,､ l
　　　∨ヾﾊ ∨ゝ　（●）　（●）|ハ|
　　　　　　ヾi∨|　　　　 ,　　 |´　　　彼って？
　　　　　　　ヽT､,_　 ―　 _ ノ
　　　　　　　 |　lヽ::ニヨ7l
　　　　　　 └l´:::／ヽ |`

128 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:13:47 ID:KTdaDuYo0

　　ヽヽ｢く´r}-;. :../:::::::/.: .: .: .: .:;-┘.: .: .:j´
　　　 /ハ_/!r'.: .::!::::::::l.: .: .: .:_.:｣　　ヽ.:」┘
　　〈,/　ｌ| l 〕.: .:}::::::/.: .:rソ´!　ｌ　| 　Y
　　　 l　 /| l└i::｣:;::/.: .:_｣l:　 |　 l　ｌ　｜
　　　/　ﾊ.|｣　〈{zﾁ}:ツｌ| l外､l　｜ l　ｌ|
　　 !　l　ﾊヽ　 Y:::|'|: | ! }ﾄ,ﾐﾄヽ!ﾉjﾉｲ　　　彼に決まってるのだわ！
　　 /　l /　＼ヽ l::::ｉ|: l |::::ゞ'＾〈
　　 !　/j　　_｢_￣¨ヽ:ｌ: |｣!　ｒｧ／　　　　　　　チャウシェスクに
　　.!　|/　ﾉ:. ::::: :. :.｀ヽ､￣ ¨ﾌ、　　　　 _,.ｨ_
　 /|　| ／.: .: .: ,:: .: .: .: .: ＼:::Ｋ }　　　 ///厶
　 !,'　l!.: .: ./:: ,: .:l .:l .: .:ヽ.: .:ヽ!｣! ,ﾉｒ' Ｔ_,ヘ'´
／|　:l|:. :／:. ,::::::::l.: .: .: .::|::::. :. :.￣´}.:. :._:. :.｣
￣l　l |:::::: .: .; ::::::::ヽ .: .: .: ヽ::::. :. :. :j.: .: .:｀ヽ〉
:::::|　ｌ |.: .: .: .|:::::::::/.: .: .:'::::.､:'´｢--‐'.: .: .:::j:┘
ー|　ｌ l'´｢ ¨ーｔ:'´￣｀ヽ::＿__ソ.: .:j.: .: .:／

　　　　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:|ヾ:.:.:.:/:::::|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼
　　　　　／:.:..:.:..:.:.:.:.:.:|:::::>/-''｀.|:.:.:. /:.::.:.:.:.:i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼
　　　　／ -''´:.:.:.:.:.::.:.:.|／　　　 |:.:/:.:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.::.:ヾ:.:.:.:.:.::.､:.:.:::＼
　　　　￣/:.:.:.:.:.:.:.:.V:.:.|　　　　 |:/:.:.:.:.:,､:.:.:|:.:.:.:.:.:.:.::.:V:.:.:.:.:.:ヽ￣
.　　　　/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ﾄ:.:ヽ　＿＿/ﾊ:.:.:.:.: /__V:|≧､:.:.:.:.:.:.V:.:.:.:.:.∧
　　　　 /:.:.:.:.:.:.::V:.:.├弋￣＿＿/ .V:.:/＿ _V=- ､V:.:.:.:.:V:.:.:.:.:.∧
　　　 /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:V:.:ﾚ-=≦￣￣||　i:./i | ゞﾃ=､-､ ||ヾ:.:.:.:|:.:.:.:.:.:.∧
.　　　/,;,;:.::.-' /:.:.:.:.Vゞr'て・) }　 ||=イ=|.|　{ ・ .) / || V:.:./ヾ:.:.:.:.:.:.::ゝ　　いや、違うよ、君
　　　￣　　/:.:／/∧　｀== ´　/　　　廴=三三=/　r─､:./￣￣ ´
.　　　　　　 /／　{　ヾー＝＝''´　 {　　　￣￣￣　　 r　 }´
　　　　　　　　　　ヽ .|　　　　　　＿＿　　　　　　 /／/
　　　　　　　　　　　 ∧　　　　　 {=---ｧ}　　　　 /__／
　　　　　　　　　　　　　ヽ､　　　　 ─= ‐　　　　ノ
　　　　　　　　　　　　　　　｀　､　　　　　　　, イ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　|> ､ _ , ィ´　 .|
　　　　　　　　　　　　　　　　r─|　　　　　 ├‐ ､
　　　　　　　　　　　　　　 / ..| .}　　　　　　　 V 　 }
　　　　　　　　　　　　　／　　V､　　　　　／/　　 |＼

129 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:14:24 ID:KTdaDuYo0

┌────────────────────────────────────────────┐
│一瞬、アーニャのパパは顔をゆがめて声を荒げたものの、すぐさま先ほどの乾いた口調にもどった。　　......│
└────────────────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　＞ -:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∧ /:.:.:|
　　　　　　　　　 >:.-:.－:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∧i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀´:.:./
　　　　　　 r‐ ':.´:.:.:.:.:.:.:.:.::./:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:|:::ヾ:.:.／::|:.:.:.:.:.:.:／
　　　　　　/:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:..|:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:|￣｀''- ､;i:.:.:.:.:.:.:.:.￣ヽ
　　　　/:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:ﾊ:.:.:.|　　　　　 |∧:.:.:.:.:|:.:.:.:.:}
　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::V:.:.:./ -V:|_　　　　//:::.:.:.:.:.:K:.:.:.:|
　　／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∠V:./={´rvミ､=､_,, ,/　|:.:.:.:.:.:.ヾ:.:.:.|
　 /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/´＼-;/￣ V￣ | |ｲ≧ミ=､/ 　 |:.:.:/:.:.:<´ヾ|
　｀ '' 'ー -ァ:.:.:/:::r::j::./:::::::.　　　 | | 辷り｀ |}_　r-Vｿ:.:∧}
　　　　　／:.:.:.:ヽ::::::::::i:::::::::::　　　ヽ廴_　 <ﾃ=/rァヾ:∧:.|
　　　　　フ/:.:.:.:.:.＼::::::::::::::::　　　　　￣ヾ=ﾉ　 <-ﾝ /:| .V
　　　　　　´''- ､:.:.:.:./::::::::::::::::　　　　　　　　　　/=テヾ|
　　　　　　　　　ヾ/:::::::＼::::::..　　　　　ー -　　 /　いや、まあ、そうだ。妻の言うとおりだ。
　　　　　　　　　/:::::::::::::::::::::::::...　　　　 -　　.／
　　　　　　／＼./::::::::::::::::::::::＼:::::::::...　　　／　　　　アーニャは幹部の娘だからと、国家機関は裁定を下すのを断ってきた。
　　　　／　　　∧:::::::::::::::　　 /｀ 'ー - ' ´
　　　ノ |　　　　　 }ヽ::::　　　/_　　　　　　　　　　　　それで、チャウシェスクに直接会って頼むしかなかったんだ。
￣￣　 .|　　　　　　＼　　　{　ヽ
　　　　 .|　　　　　　/　｀ー='´　＼

　　　　　､-ー'｀Ｙ＜,__＿
　　_＿≦ー`__＿　_二ｚ<＿
　　＞７￣､-‐ ´￣｀'┴＜
　＜之′Ｙ´／　　　　　　　＼
　　 >{　 ,' 　| ､　,　,.　 ,.l　　, 　ﾞｉ
　　 |　!､{　　| 寸寸T　ハT７} ｨ,ｌ
　　 ′Ｊｉ, ﾞｉﾞｉ（ ●）　（●）|ハ|　　　　それで、許可は下りたんですね
　　　　i⌒ヽ'(1. ''' 　＿'　 ''' ﾉ川／⌒)
.　　　ヽ　ヽx＞､（_.ノ__,イｌ |::::ヽ／
　　　　 ∧　人lﾊ:::::l,三|:::/ｌ|　,:::::ﾊ

130 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:15:10 ID:KTdaDuYo0

┌─────────────────────────────┐
│アーニャの両親は首を縦に振って、そのまま押し黙ってしまった。　　　│
└─────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ|:.:.＼
　　　　　　　　_ - ' ´:.:.::.:.:.:.:.:.:.:_:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヾ:.:.::＼　　 ,
　　　　　　　ヾ､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::､:.:.:.:/ ／/
　　　　　　　　　＞:.:.:.:.:.:／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／:.:./:.:.:.:.:.:.:.:ﾚ:.:.:/
　　　　　　　　 /:.:.:.:.:.:./:.:.:.:._;,;,-‐''''´:.:.:.:.:./:.:.:./:.:.:.:.-='´
　　　　　　　　｀ -､:.:.:/:.／/ ゞ:.x ､-ー ''´|:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.＼
　　　　　　　　　　ﾚ､:ﾚ´∧ /　｀　＼　.ヾ|:.:/|:.:.:.:.:.|:.:.:r､_::ゝ
　　　　　　　　　　　ミ,;,;:.::|　　　　　｀＞ミ_.|:.:.∧|:.:.:.:}
　　　　 ,＿＿ r‐─ v'´　ヽ　　　　　／ヾ∠.|:/|:./:.:.:.:.|
　　 /.: : : : : : ＼: : : :＼　､　　　_　ヽ '´ |'' ´ ﾚハ:.:./
　　/／＼: : : : : : ＼: : :: :>v ＼　ヾ_ , -―
　.//: : : : :＼: : : : : : V/: : K: : : ミ'´
../: : : : : : : : :＼: : |: : V: ∨: V: 入
/: : : : : : : :: ::: : :V: : : : : : ＼//: :/ヽ

131 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:16:09 ID:KTdaDuYo0

┌──────────────────────────────────────┐
│私は私で、素直に、「良かったですねえ」と受け答えできなくて、口をつぐんだ。　　　　　　　　..│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.│
│何となく手持無沙汰で目の前にあったカップのコーヒーを飲み干す。冷めていて苦い。　　　...│
└──────────────────────────────────────┘

　　　　　　　 !/ /　　　 .ヘヽＶ｣∠ヽ. 　＼＼＼
　　　　　　_＿ノ／　..　- ､￣　≠‐- :.:｀ヽへ　　＼＼}
　　　　　　ﾌ　／　　　　　　　　　｀ヽ:.:Ｖ| !　　Ｖ{
　　　　　　//／　　　　　　　　　　　　　Ⅵリ　　　｀.、
.　　　　　 i//　　　　　|　　　　　　　　　　　∨ﾊ　　ｉ　､＼
　　　　　　/　　./　/　　!　　　 !　ﾄ､　　　　　 ∨｝　 } 　厂｀
　　　　　　|　　:i　ハi　 .|　　! :|　V　　　　　　:∨｝ｊ!　ﾄ､
　　　　　　|　　:l::/　 V　|　_|:_|__| ∨　　　　　 :ｊ/　ｊ!　ﾚ
　　　　　　|　　:N!､＿　 V:!_ム斗‐ ＼|:ハ:|　|:::|: /Ｖ⌒ヽ
　　　　　　|　　|「　＿ヾ　　＿＿ﾊ　　:j /V/! ! |
　　　　　　ｌ∧　ﾄゝ￣｀　　´￣￣｀ヽl　 :/´}　!ﾉ｜{
.　　　　　　 V^ﾊ ' ' ' _＿__　　 ' ' '　 |　 ./ソﾊ｢::l∧ゝ
　　　　　　　/ : : ∧r/　 r 、＼　　　 ´Ｖ : : / :/
.　　　　　 /ｲ : / f７　rく＼＼ }--　´/: : :/ :/{
　　　　　ヽ:{ f７　　＼＼ヽヽ -‐/: :,.ｲ:/ヾ=ミx、
　　　　　　　（{r―r一'　　　 |、ｲ／__,|ｆ／／⌒ﾊ
　　　　　　 _ﾉヾ.＿￣》､__ ノ,ハ,r一'´／　　） }ﾉ
　　　　　　八＿　八　{ｰ‐　　_∧ｲ / ´￣｀＼{

132 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:17:03 ID:KTdaDuYo0

┌───────────────────────────────────────┐
│こんな時に、アーニャからの電話があれば、気まずい空気を一気に吹き飛ばせるのに、　　　　│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│と、思った刹那、アーニャのママも同じようなことを考えたらしい。　　　　　　　　　　　　　　　　　　│
└───────────────────────────────────────┘

　　　　　　＿
　　　　　　　/: : :ヽ:ｰ､　　_
　　　　　ゝ:､_: :ヽ__:_r‐':.lヽ
　　　　 , -､ノ: : : : : : : : ｀: :|: :.ヽ､　　__
. 　　く: : : ｀: : : : ;　-― ‐{`: : : :ヽ´: :.〉_ -､
　　　　 '; : : :.,ｨ'´　　　　　ゝ‐-､:-:'ﾐx:´: : : 〉
　　　 r‐': : ; '　　　　　　　　　　ﾉ: : :}ミ}: : :ﾉ
　　　廴:../　　 l　　　　　l　　 ,': : : :}三!: :ゝ,x=ｭ､
　　　　ﾉ;'　　l　! 　　　 l　　　ヾ_: : l三!: : : 〉｀ヾ
　　　　ヾ!　　 !ﾑ斗　/ l‐l-､l　/　〉: l三!:r‐'ミｭ､
　　　　　lﾄ､　lｨｭヽ,/ l/ /／l/l　f´: :..l三!:ヽ三}ヾ
　　　　　　ヽ l じ'　　ｨ示云x!　ゝ､: :l三:.ノﾐ} }}
　　　　　　　 l !　,　　　弋:ツ/ l　 /:{薔}/三} ﾘ　　アーニャったら、まだ取材先から戻ってこないのかしら。
　　　　　 l人　､_　　　　/ /　/彡イ ,ｨ彡'´
　　　　　 !　 ,ヘゝ'　　 /　l　 l'　l　ｲ/}ﾐ}　　　　電話をかけてきてくれないわね。
　　　　　　 / l　{三ミ二三l 　ﾄ､ヽヽ{ﾐﾄ､ﾐ}
.　　　　　 / /l /三ﾐ薔三ﾐ!　 l三ヽ_ヽヽゞ=ﾐ}
　　　　　/ ///:.{三ﾘ寸三}ヽ　ヽ〃: ヽヽ
.　　　　/ / /: : :ゞ〃ヾ三三ヽ　ヽ: :/ /}

133 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:17:34 ID:KTdaDuYo0

　　） . .:.／.:.::::／　　　　　　　＼　＼.:.::| |::::::人
. 　（ . . .:.:.:::::::/ 　　　 /　　　　　　　　ヽ　入| |／ヽ　｀ヽ
　　＼.:.:.:.::::/　　　 /　′　 l　　　　　 | 　l ｢:::| |:::::::ﾉ　　 !
　　　 Y.:.:.′　　 ,′! l　　 |　　　　 |　 }ﾉ..:.| |:::::ﾉ　　 |
.　　　　ゝ┤　　　|　 |｜ l　|　　　 l　　　（. .:://.::∧　　 |
　　　　　 l !|　　_|＿Lｊ､ l ｜　_／|_/ l |　）//.::/　ｌ　　　|　プラハにいた頃は、学校でもマリとずっと一緒だったというのに、
　　　　　 |八 l l l{＼|｀ヾﾄ､l､／￣l/｀刈Y北Ｌ.,′ |　　　|
　　　　｜　ヽヽl ´x=ﾐ　　　 x＝ﾐ　} |　ﾋｼ''′　|　　　|　帰宅すると電話機に飛びついて、つい二〇分前に別れたばかりの
.　　　　　　'　 l / ∧　　　　'　　　　ｲ｜Y´　　｜　　 |
　　　　　｜　j l　|｜丶　　ｰ '　　イ｀ヽl　l　　　 |　　　|　マリに電話していたわね。
.　　　　　/|　 {｜ ! | ヽ　｀ｒz=.､´　ﾉ　 /　lト､　　｜　　 |
　　　　 //ｊ／. :|　! |＼　l､{{ｒ勿}}〃　 //| jj:::::＼　 |　　　|　何かというとすぐにマリに電話していた。
. 　　 /.／. .:.::::| 　 { 　　｀ﾞＴﾞ´　　 // l|从::::::::::ヽ.!　　 |
　ｒ‐=ﾆ´.:::ヽー=≧ト:.ｒ‐⊂ニニﾆ⊃x/ /ｊ/:::}::::::::::::::ヽ.　　|
　＼::::::::::::::ゝ---/´ ミ}厂厂厂厂ｊｒ―‐ヘ/.:::j:::＼::::::＼_ｊ
　　　＼::::::::::::::::::/　ア{ i/ i/ i/ i/jゞ､ヽ｀ヽ＼{:::::::::＼::::::::｀ヽ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |＼_ ￣ﾄ､ｰ―-､
　　　　　　　　　　　　　＿＿＿＿_＞　＼| Ｌ＿＿_|
　　　　　　　　　　　　　＞＿＿＿__　　　　__＿　＜
　　　　　　　　　　　　　l／　　　　ヽ　／　　＼!ゝ
　　　　　　　　　　　／　　　　／ﾐヽ Vr勿＼　　＼ヾ
　　　　　　　／／　　　／＞-―┴┴-∠＼lV ＼＼
　　　　　　　　／　　　 r' _,ノ　　　　　　　　　　 :｀ヽ:　:＼
　　　　　　　 /イ　　　 .r'´厂／　　　　　　　　　　　　　ヽ:　:ヽ
　　　　　　 /　/ :/V|V } r'〃　　／　　　　　　　｀ヽ　　':　:丶
　　　　　　　 / :/::　 .::r'/ /　　〃　　 , 　　　　　 '.　　': :ﾘ
　　　　　　　 |:/l::::: .::::{″′　　 .′ 　 /　　 :ｉ i　　　　 : ::ｌ
　　　　　　　 |　|::::/:::爿 i　　　 l !　 _厶斗　｜LL　!　 | !: ::!
　　　　　　　　 |:::|:::::::::ｉ | ｜　斗i'´/从｣人__ﾉ_j_｣_｀ト　l ｉ:::::|
　　　　　　　　　|::|!::: |::Ⅵ　v　　 ,ィｆ仡＾　　ｨ仡ﾄxiﾄ､/ ｌ: :::|
　　　　　　　　 |ハ:::|､:∧从　　　ﾋ_り　　　　ﾋ.り　{ﾚ′′｜
　　　　　　　　　　　Ⅵ V:::Vハ　 '.　　　　 ′ 　ﾉ　/,ｲ!ﾚ′
　　　　　　　　　　｀{　V:|ヾ: ﾊ　ﾄ､　（_｀ｱ　 .ィ　〃/ ﾘ
　　　　　　　　　　　　　 . '´￣ﾊ　 |}　＞‐ｧ≦千l　{ﾙ'　　　　ええ、私も何から何までアーニャに相談していた気がします。
　　　　　　　　　　　　　/　　　{ ﾊ　| 　　 ′} } l｜/ハ
　　　　　　　　　　　 .′　　ヽ }人ヽ_＿.ノノ丿!′　i　　　アーニャは気だてが良くてて、
　　　　　　　　　 i　　　　　ﾄ､　､二二´イノｉ　　|
　　　　　　　　　　 | ｉ　　　Ｖ　｀ー― '´　 v′　|　　　どんなことでも親身になって一緒に悩んでくれましたから
　　　　　　　　　　　ｌｌ　　　　∨ /　　　　　ｉ　　 l
　　　　　　　　　　　　 |∧　　　 ∨　　　　　　｜　 !

134 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:18:08 ID:KTdaDuYo0

┌────────────────────────────────────┐
│そう言いながら、アーニャといると何故かとても心が安定した感覚を思い出した。　　　 .│
└────────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　　 ,. ＜:::::::::｀´:::::::＞､
　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::＞---＜:::::::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　__/_:/:::::/_　-====ミ.∨ﾑ--ﾍ
　　　　　　　　　　　　　 _} -７:::::/::::::i::::::::::::::::::､::::::::',ト }',
　　　　　　　　　　　　　　乂_/::::::,'::::::/|:V:::::､::::::::',::::::::', ﾉﾑ
　　　　　　　　　　　　　　 i/i::i::::::|::/{ﾄ､{ ∨ﾑ＼:::::i:::::ハ∨:',
　　　　　　　　　　　　〈/i::|::::::{:i　|　丶＼',　Ⅵ}::::::i::i }:',ﾊ
　　　　　　　　　　　　　　7_|:::V:::ﾑ,==ミ　　　 rﾁ千::::/::|`:::i丶
.　　　　　　　　　　　 ,'::::i::::::＼:ﾍ、　　､　　　ﾑイ::::::L_::|　}
　　　　　　　　　　　　　 |!::::i::::::::::八　　 r─ _ｱ　 /:::::::7| |￢,
　　　　　　　　　　　　　　ヾ{ V:::i､::::',＞　.￣　イ':::::／| !.|　　'、
　　　　　　　　　　　　 , r{　　＼!.＼i. ト _ ¨´ 　_|／. . | |.|　,　j＼
　　　　　　　　　　　／　　､　　 {:i. . . ト ._｀　'´-.}. . . ..| |.! /　　　＼
　　　　　　　　　 r '　　　　　｀ - V',. ..ﾑ<ヽ_彡'ﾆi . . ..//,'/　　　　　｀ヽ、
　　　　　　　　　 ∨　　　　 __,..-､∨､. ∧.ー＜./. . ./// ト ,_　　　 _,.　　}

135 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:18:31 ID:KTdaDuYo0

　　　　　　　　　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ|:.:.＼
　　　　　　　　_ - ' ´:.:.::.:.:.:.:.:.:.:_:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヾ:.:.::＼　　 ,
　　　　　　　ヾ､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::､:.:.:.:/ ／/
　　　　　　　　　＞:.:.:.:.:.:／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／:.:./:.:.:.:.:.:.:.:ﾚ:.:.:/
　　　　　　　　 /:.:.:.:.:.:./:.:.:.:._;,;,-‐''''´:.:.:.:.:./:.:.:./:.:.:.:.-='´
　　　　　　　　｀ -､:.:.:/:.／/ ゞ:.x ､-ー ''´|:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.＼
　　　　　　　　　　ﾚ､:ﾚ´∧ /　｀　＼　.ヾ|:.:/|:.:.:.:.:.|:.:.:r､_::ゝそうなんですよね。
　　　　　　　　　　　ミ,;,;:.::|　　　　　｀＞ミ_.|:.:.∧|:.:.:.:}
　　　　 ,＿＿ r‐─ v'´　ヽ　　　　　／ヾ∠.|:/|:./:.:.:.:.|　親ばかのようで言いにくいんですが、
　　 /.: : : : : : ＼: : : :＼　､　　　_　ヽ '´ |'' ´ ﾚハ:.:./
　　/／＼: : : : : : ＼: : :: :>v ＼　ヾ_ , -―　　　　　　　　あの子には不思議な力があるんですよ。
　.//: : : : :＼: : : : : : V/: : K: : : ミ'´
../: : : : : : : : :＼: : |: : V: ∨: V: 入　　　　　　　　　　　　　そばにいるだけで、いわく言い難い幸せな気分になるんです。
/: : : : : : : :: ::: : :V: : : : : : ＼//: :/ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　だから、あの子にだけは、あの子だけは、幸せになって欲しいんです。

┌───────────────────────────┐
│アーニャのパパは、うつむいたまま絞り出すように言った。　　　 .│
└───────────────────────────┘

136 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:18:59 ID:KTdaDuYo0

┌────────────────────────────┐
│それは、弁解のようにも聞こえて、自分がこの家に来て以来、　　......│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│尋問口調になっていたことに気付かされて恥ずかしくなった。　　　 .│
└────────────────────────────┘

　　　ｚ‐=＝ミ/{／{イ
　　＿＞　　＿__ Ｌ　_
　　　Ｙ　　ｘ＜. -‐=＜∠. _
　　ｲ{　〃　/　　　　　 ` く
　　八i/　　　 / 　　　　ヽ
　　　イ　　　　 {　{　　　　　ハ
　　　人　　　_∧八 ‐-ﾊ　, ' 　i
　　　 )ィ　( {　u　（ｏ)}ﾊ　八
　　　　　八ハ　　　　　〈　ｲ
　　　　　〃丶、　-／
　　　　　│「ィ::::ﾆEi´
　　　　　└l'´::::::／ヽ
　　　　　　 |:::::::i´￣｀i

┌────────────────────────────────────────────┐
│突然三一年ぶりに目の前に現れた娘の友人を心から歓迎してくれたアーニャの両親に対して、　　　　　　　│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│
│自分は何て不躾で傲岸不遜だったのだろう。身体中の血液が一斉に下降していくようで目眩がする。　　　 │
└────────────────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　　　　ヽヘ　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　＼＼,　　　　　ヽ
　　　　　|　　　　　　　　　　　　　　V∧　　　　Vヽ,
　 /　　　│　　　　　 !　　　　　　　　 V|ヾ　　　　　ゝ
　.　　! 　│ 　　 │　　|　　ヽ:　　　ヽハ　　　　　　＼
　　| ∧ ハ　　　.│　　 |　　　　ﾊ　　　　ヾゝ::.:.:.:.:.:. 　ヽヘ
　 ::, -┴ ､　　　::/l　　:::ﾄ､　　　 ::l　　　　..:::Nl :.:.:.:.:.ヽ:.:. |
∠´　　　ヽ ::__:ｉ l　　:::l　｀､　　 :l　　　　.:::::ｊ:::.:.:.:.:.:.ハ:. ,
　　￣｀~ヽ｀y　l　l :∧:l＿_ ｀､ .::l　::::::::::::___:ｊ:::.:.:.:.:.:!　j/
　　ヽ､　　 l/　/| -V￣ヽ　　　W|　::::「二ヽ|.:.:.:.ﾘ V
､　　　l 　 /イ´:::! __＿＿＿＿＿ |　:::|┌j　l.:.:.:/
_ ＼.　L／ /!::::::| '￣|「::::::::::|「　〉 |　:::|/／/ .:（
ｉ　ノ｀'´　 ∧ ヽ::|　　￣￣￣　´　l　::::|　／　:.:ゝ＼
二__ __ ,イ /　　｀　　　　　　　　 }　::::|く´　 :.|　`ー
　||　|「　|l |　　r､　　　　　　　,ィ　:::::|　ヽ　jﾉ

137 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:19:27 ID:KTdaDuYo0

┌────────────────────────────────────┐
│それにしても、「アーニャだけは」という言い方が引っかかった。　　　　　　　　　　　　　　..│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│アーニャ以外の家族は不幸なのか？たしかに、一般ルーマニア人から見たら　　　　　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│御殿のような高級マンションの中で、二人の老人は、決して幸せそうに見えない。　　　...│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│他のルーマニアの人々同様、何かに怯えるような生気のない瞳をしている。　　　　　　 │
└────────────────────────────────────┘

　　　 /　 ,　　　|｀ ´　|　!　 ,|　　r'-:. :.i:. :. .: l .:└i
　　／ _,　ヽ　ﾄ､|__　　|/l　/_ﾄ､ｒｽ:. :. :._:._.:_.:_.: .: .:{
　　'´￣ /　 _┏━━┓┏━━｛:. :.／　,　　＼.: .｝
　　　 /イｲ ┃　　 ┣┫　　/{:./　　 :!　l　:.　 ∨ト､
　　　　　´ﾍ┗━━┛┗━ くノl{　| l.:lj|:._l!_j _:ｌ l|´ﾄｲ
　　　　　　　　L|　　　'_　　　/|　l |T t::j 　 t::jTl｣ .|　l|
　　　　　　　　｀　､　　　　, |l |　l l:ﾄ　　 '_　　/|:l　!　|
　　　　　　　　　　　ト　イ　 /　/ |l _ﾄ､ __ ／_ !:l　ｌ　|
　　　　　　　＿.」　　 !__ |　ｌ〃:;:;:;:;:○;:;:;:;:;| !　l　|
　　　　　_, -＜_　＼　　／./　/ﾑ二!:;／l＼;:＜_〕｜ l
　　　　/　　　　　＼. Y ／j　/ 〈二｣;:;:;:;:l;:;:;:;:;〈＞‐ﾄ､.!
　　　　/ー ---- ､ l／ヽ l/ /|ト､て「;:;:;:;:j;:;:;:;:;:jてノ | l|
　　　　|　l　　　　|　　 l / |ｌ　ト二二二二／.:ｲ　! l|
　　　 /　 l　　　　　|　　 /'　 l|　ヽ:. :.,＿.,ｒ'´.: .:/:l　 |　|i
　　　 l　　|　　　　　! ／' |　 /　／.:＼｢　＞‐'´.く.　 l　| ',
　　　/　　l 　　　　 /l 　　 / /.: .: .: .: :￣:. :. :. :. :. ',　! :l　ヽ
　　　 /　　 l　　　　/ / 　　 | /.: .: /.: .: .: l:. :. :. :. :. :＼| :l　　ﾄ､
　　 /　　　|　　　く　Ｌ.＿／/.: /.: .: .: .: l:. :. :. :. :. l:. :. :Y　　ヽ＼
　　 | 　　 l 　　　　＞／￣.:/.: .: .: .: .: .|.: :. l:. :. :. l:. :. :.|二＞'´＿｣
　　 /　　　/__, -‐'´_／.: ／.:/.: .; ィ´￣ﾄ:｣.: :. l:. :. :. :.l:. :. :.Y´＜´_
　　/　　 /〈＿.＜二＼f-､.:'.: .: L｣: : : :Ｋ.: :. :.ﾄ､_＿_:.l:. :. :.｀ーｬ-､￣ヽ
　 /　　 /　　　　／／　￣{.: .: rｰ]￣´| ｢´ヽ-イ　　ﾋ＿＿:_:／二 -'´
　 |　　 |　　　 |＿二二＞￣´　/￣´｣|￣´|┘　　　　丶-- ､＜
　｜　　＼　　　　＜く￣＿＿,/Lｯ'´./Ｌ..ｯｲ　　　　　　＿／／
　　|　　　　＼￣￣//´　　　　{_＿／{＿_／　　　　　　ヽ＜

138 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:19:55 ID:KTdaDuYo0

┌─────────────────────────────────┐
│しかし、そのことを今日この場で聞き出すのは、自分にはもう耐えがたい。　　　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│
│適当な用件を口実に引き上げることにした。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
└─────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　／　　/　　　　　　　　　　　　　从　　　　　　　＼ゝ
　　　　　　　　　　　　/　　　 i　　 |::::　ヽ　　　　　　　　　ゝ,　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　　　　 .′ '　　ﾊ　　ヾ:::　 |＼　ﾊ　| 　ヾ;.　 |:::::　　　　ヽ　|
　　　　　　　　　　 | | │　/-＼-　ヾ　|ニ| /-i!│　 |: i::::::ト.::::　　　　 ∨
　　　　　　　　　　 | | │ﾊ┬‐'┬、　 │┬‐┬､ヾ|　 /　i::::/:::∨ヽ::::::　/
　　　　　　　　　　　 |ﾊ　Vｨ .|::::::::! 　＼| 　l::::::::!　　/／ ,/ V:::::::::::::::（::::::!|
　　　　　　　　 l　ゝ＼￣￣　　　　￣￣　イ／/ ) |:::::::::::::::::::＼ |
　　　　　　　　　　　　　「 ` 　　ヽ　　　　　　／jｲr '_ノ::::::::::::::: ﾊ::::ﾉゝ
　　　　　　　　　　　　ﾊ　　　　　　　　　　　　 rイ:::::::::::::::::::::/
　　　　　　　　　　　　　　　ゝ.　　　　　　　　　イﾊi!:::::::::::::: //
　　　　　　　　　　　　　　　｀　．　　　　 .　'′ |　ヾ.::::::::::::ﾊi
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＞- r_ﾉヽノ＼／|　 ∨ゝ::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　)::::::::::::::::::::::::::::::{.　　　 `
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ノ:: - ―　… ...－::` …‐- ､
　　　　　　　　　　　　　　　　 _ .．' :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　::::::::::::::::: /::ヽ.::::::::::::::::::::::::::::::::: /::::::, :: ,
　　　　　　　　　　　　　　　.:::::::::::::::::ノ::::::::::ゝ::::::::::::::::::::::::|:::/:::／:::::::|
　　　　　　　　　　　　　　　.::::::::::::::::::/| _:::ノ￣｀ヽ _::::::::::|/／:::::::::::::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /ノ　　　　　　　　ヽ:: |.':::::::::::::::::│

139 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:20:32 ID:KTdaDuYo0

　　　　 └-i:::::::::::::::::::::::: ,.　　'"´　　　　　｀`ヽ:::::::.: : ヽ、
　　　　 __...ﾉ: : : : : : :,.ィ´　　　／　　 ', 　ヽ｀丶､: : : :ト.､　 ,.ィ"ヽ
.　　　 |: : : : : : : :／　　./　 /　　　　　 ',　　 ',　「: : : : :|:.:.:ヽ: : : : : 〉ﾆﾆ､二
　　　ヽ.ィ: : : :/　　 / 　 ,'　　　　　　 l　　　',　｀丶ﾄ､:|:.:.:.:.:.|: : : : :ート､､ヽ
　　　　 r‐:':::::::/ 　　 ,'　　,'　　　　　 !　　　.l　i'"´: : |:.:.:.:.:.:!: : : : :_:ハ ',ヽ
.　　　 ',_:､:::/　　　 l　　ｌ　　　　　　　 |l 　　 !　',: : : :.|:.:.:.:.:.:|: : : : L_ｌ::', ',r
　　　　　ﾉ:,'　　　 ,'l　　 |　　　　　l　 | l !　　! |　｀丶; |:.:.:.:.:.::!: : : : : :ﾊ::ヽ
　　　　 /:| |　　　,' |　! .!ｌ|　　　　,'|　ｌｌ | l　,' ,|. ｜!´: :.!:.:.:.:.:.,': : : :r '　｀￢
　　　　　/:::,! |　　 ..L.',_ﾄ. |',ﾄ　　　/ !./l/├ /￢￢､).:: /:.:.:.:./: ::::::::|　　　 |:
　　　 /:::::ﾊ.ﾄ　、　!　..l_ヽヽ＼､./ l/"´　l/_∠ |　 {: : :/:.:.:.:./::::::;:::ﾉ|　　　 !:　とうとう、マリのいるあいだに
　　　　ヽ|l　',ヽ＼ !,イ｀` ﾄ　 '′　　 ,ｲ"´　lヽ　,ﾊr'＾,-ﾍ':::::::::}::!｜　　.!:
.　　　　 |　　　ト､ト.`弋..ン　　　　　弋..ン '　| .|/j〈ィ'>》_ノ"!::l　!　　　|:　　アーニャからは電話が無かったわね
　　　　　　|　　 l　l.|. ',　　　　　､　　　　　　　 l　 ! .|:.ヾﾆﾌ　　 !::l. ｜　　 |:
　　　　　 |　　 / / |　ﾄ、　　　　 ,.、　　　　　｜ｌ|　|／　　　ヽ:|　|l　　 !
.　　　　　|　　/ /　|　|_.＞、　　　　　　_..-.､ｌ　l !　! 　　　　　　　 |.! 　｜
　　　　　 l|　 /,ｲ _..ｌ　l:.:.:.:.:.:.:｀丶､ __..ィ´:.:.:.:.:.,' .,'::|　| 　　　　　　　　| !　　 !
　　　　 !|_ノ' r":.:.l　l:.:.:.:.:.:.:.:.:.ﾊィｭﾍ:.:.:.:.:.:.:./ /:.:::!　!ヽ、　　　　　 .| l　　 |
　　　 _..'"ｨ´　ﾄ､:.:.! .l:.:.:.:／｀`ヾ.ﾆﾝリ:.:.:.:.:./ ':.:.:.:.:|　|:.:.:/、　　　　 ! !　　 !
　　＜._ <.|　　 ! ∨ ,'_:.:'-:.:.:.:.:.:.:`￢´:.:｀`:./:.:.:.:.:.:.:.!　!;/: : ＼　　　　 ! l　　 |

┌──────────────────────────────────┐
│そう言いながらアーニャのママは、別れ際、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│アーニャのロンドンの自宅と職場の電話番号を書きつけたメモ用紙をくれた。　　....│
└──────────────────────────────────┘

140 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:20:59 ID:KTdaDuYo0

┌──────────────────────────────────────┐
│アーニャのママと頬ずりを交わしてから、腰をかがめてアーニャのパパに抱きついた。　　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.│
│見た目よりもさらに小さくはかないのに胸を突かれた。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
└──────────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ|:.:.＼
　　　　　　　　_ - ' ´:.:.::.:.:.:.:.:.:.:_:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヾ:.:.::＼　　 ,
　　　　　　　ヾ､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::､:.:.:.:/ ／/
　　　　　　　　　＞:.:.:.:.:.:／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／:.:./:.:.:.:.:.:.:.:ﾚ:.:.:/
　　　　　　　　 /:.:.:.:.:.:./:.:.:.:._;,;,-‐''''´:.:.:.:.:./:.:.:./:.:.:.:.-='´
　　　　　　　　｀ -､:.:.:/:.／/ ゞ:.x ､-ー ''´|:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.＼
　　　　　　　　　　ﾚ､:ﾚ´∧ /　｀　＼　.ヾ|:.:/|:.:.:.:.:.|:.:.:r､_::ゝ
　　　　　　　　　　　ミ,;,;:.::|　　　　　｀＞ミ_.|:.:.∧|:.:.:.:}
　　　　 ,＿＿ r‐─ v'´　ヽ　　　　　／ヾ∠.|:/|:./:.:.:.:.|
　　 /.: : : : : : ＼: : : :＼　､　　　_　ヽ '´ |'' ´ ﾚハ:.:./
　　/／＼: : : : : : ＼: : :: :>v ＼　ヾ_ , -―
　.//: : : : :＼: : : : : : V/: : K: : : ミ'´
../: : : : : : : : :＼: : |: : V: ∨: V: 入
/: : : : : : : :: ::: : :V: : : : : : ＼//: :/ヽ

　　　　　　　／　　/　　　　　　　　　　　　　从　　　　　　　＼ゝ
　　　　　　/　　　 i　　 |::::　ヽ　　　　　　　　　ゝ,　　　　　　　ヽ
　　　　　 .′ '　　ﾊ　　ヾ:::　 |＼　ﾊ　| 　ヾ;.　 |:::::　　　　ヽ　|
　　　　 | | │. /　＼. 　ヾ　|　 ! /　!. !　｜ i::: :ト.:::: 　　　　 ∨
　　　　 | | │ﾊ.|　 _ _､　　 | ,.x }/─ トl . /　i::::/:::∨ヽ:::::::　/
　　　　 |ﾊ　V. イ´　　｀ミ､.ｌ ,x=≠ミ.z/／ ,/ V::::::::::: ::::（::::::!|
　　　　　 l!　ゝ.　 l,x＝ミ､　 `　　　　ｲ／ / ) |:::::::::::::::::::＼ |
.　　　　　　　 7∨ 　　　,:　　　／ j.ｲr '_ノ::::::::::::::: ﾊ::::ﾉゝ
.　　　　　　　　ﾊ.　　　　　　 ,　　　　 rイ:::::::::::::::::::::/
　　　　　　　　ゝ　　｀　 ´ 　　　.イﾊi!:::::::::::::: //　　　　いろいろ無遠慮なことをおたずねしたのに、
.　　　　　　　　　　｀　　　　　 , 　　 |　ヾ.::::::::::::ﾊi
　　　　　　　　　　　　　　＞- r_ﾉヽノ＼／|　 ∨ゝ::|　　　　　誠実に答えてくださってありがとうございます。
　　　　　　　　　　　　　　　)::::::::::::::::::::::::::::::{.　　　 `
　　　　　　　　　　　　　ノ:: - ―　… ...－::` …‐- ､
　　　　　　　　　　 _ .．' :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ヽ
　　　　　　　　　　::::::::::::::::: /::ヽ.::::::::::::::::::::::::::::::::: /::::::, :: ,
　　　　　　　　　.:::::::::::::::::ノ::::::::::ゝ::::::::::::::::::::::::|:::/:::／:::::::|
　　　　　　　　　.::::::::::::::::::/| _:::ノ￣｀ヽ _::::::::::|/／:::::::::::::|
　　　　　　　　　　　　　 /ノ　　　　　　　　ヽ:: |.':::::::::::::::::│

141 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:21:31 ID:KTdaDuYo0

┌──────────────────────────────────────┐
│アーニャのパパは杖を手放して私に倒れかかるようにして抱きつき、ボソッと呟いた。　　　....│
└──────────────────────────────────────┘

　　　　／::::::::::::/::::ハ::::::/:::|::::::::::::ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::＞．
　　／:::::::__:::::/::::::{ﾄ::V::}:::::|::::::::::::::::|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,
...／-=イ::::::／:::::: : |::ハ:|:::::|::::::::::::::::|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾑ
　　 /:::::::/:::::::::::::::::!ミﾐⅣｿ|:::::::::::::::::',::::::::::::::::::::::::::::::::::＼:::::::＼
　 . /:::::::::i:::::::::::::::::::|r"￣　 !:::::::::::::i::::V::::::::::::::::ヽ::::::::::::::ハ＞ー
　 /::::::::: :|::::::::::::::::::::|　　　.ﾘ:::::::::::: |::::::V::::::::::::::::::',:::::::::::::::::',
. /::::::::::: ∧:::::::::;:::::: |　　　,'::; ｲ:::::: |ヽ::::ヾ､::::::＿ﾊ:::::::::::::::∧
ｲ:::::::::; ｲ:::∧::::_|ﾑ＝!＿＿/__. V::: | _..≧__,,ｨ≦_:::`:V::::::::::::::::＼
- ' ¨　/:::::::::::>､:{r¨￣￣ ≧ミ}ﾄV:: |r＝″￣￣ } }::::V::}`ー──
　　　,'::::::::}:: i r }!{　,,＿＿ｪz .}}==={{　zｪ＿＿,　}i{ Y::rﾊ
　　 /:::,ｨ/ﾄ.人　{i{ ´￣￣￣` }}￣ {{　´￣￣ ` .}i} ﾉｲ　　　　　後悔してます
　 ./／ノ　＞ミﾄ _ﾊ＝＝＝＝"　i} ゛＝＝＝＝ｲノ_＿
　　　　　 ,/　//￣八　　　　　＿＿　　　　　/" .ト　}}ハ
　　　　i７　　{ {　　　＞　.　　　　　　　　　ｲ　　 i!　.}}　廴_
　　　ﾉ　　　ヾ;､　　　　　＞　　_　　＜　　　　 /　/　　　ハ
　　 /　　　　　　＼　　　　＼　　　　 /　　　_＿ノ　　　　　 }
　 ./ ＼　　　　　　＼　　　　＼　 .／ ,．＜　　　　　　　　 ..人 _
　/　　　`ー＝ミ､　　＼　　　　N/　/　　　　　　　　　　イ　　　ヽ

　　　　　　　　､_　　＿
　　　　　　ｨ-‐ ` Y　＜＿＿
　　　＿≦―'´＿＿ _二z<＿
　　　＞ヾ￣, -‐　´￣｀┴＜
　＜戈､　Y　 /　　　　　　　　＼
　　　 >{　/ 　 l,　､　,　　,l_ 　､　ヽ
　　　|　ゝ{　　 l｀寸寸T ハT7 } ,､ l
　　　∨ヾﾊ ∨ゝ　（●）　（●）|ハ|
　　　　　　ヾi∨|　u ,,,　　'　,, |　　　　エッ？
　　　　　　　ヽT､,_　 ⊂⊃_ ノ
　　　　　　　 |　lヽ::ニヨ7l
　　　　　　 └l´:::／ヽ |`

142 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:22:02 ID:KTdaDuYo0

　　　　　　　　 /|　　,　イ　　　　　　　　　＝＝‐
　　　｀､　　　 / { ／　　　　　　　　　　　　　`丶、
　　　　ヽ＼　 { |/　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　乂ヽ { |　　　　　　＼　　　　　　　＼　、、
　　　　　　／　　、　|　　　 ` 丶、　　　　　　　ヽヽヽ
　　　　,　',／ // 　＼|、　　 ``　‐　 `_ヽ、　　　　、ヽ　ﾞ.
　　　ノ　/ ///　|i　|``lヽ　　　　＼　　`‐ `=-　　＼ヽ
　　　　　//|　　　ﾚ! | 、ヾ、ﾔ　＼　ヾ＼　　　　　　ヾ｝`
　　　　 i//　/　　 | ヾ　ヽぃ i iヽヽ＼ヽ,,,＼　　＼| | ﾊ!
　　　　　　|//　　　H Aﾄ-仆ヽぃヽ! xｨ勿 }}＼　 `ﾚ′
　　　　　　 /| ,,　ｷ,,x=≠=x,　ﾚヽ　ｲ弋_歹　! ＼ヽヽ.　　　一三年前にお亡くなりになった、
　　　　　　　 |/|　| 代勿 }}　　　　　　　ト ´|` ゝ　
　　　　　　　 | / ヽ `‐゛　　　　　　　　　　,′| | ＼　　　　あなたのお父上だって、そうだったと思いますよ。
　　　　　　　　　　　ヾ!　　　　　ヽ　　　　　〃| |ヽ!　　＼
　　　　　　　　　　　　ヽ＼　　　　-一　　／ /|/　　　 _ ,-ﾝ
　　　　　　　　　　　　　＼ `ト　、_　 _ ／ | /　　_, ‐ ´　ﾉ
　　　　　　　　　　　／´｀ヽ,.|　　￣　____|　)_-（_ 　 , ／
　　　　　　___∠Y ′ ∠,ヽ　ヽ _,-‐ ´´　）‐}　　￣
　　　-‐￣　　 /　　￣＿,´｀￣丶_　　_／／　　　,　ヽ＿
　　/／￣＼ /　　　＜__／ .`　ー´￣／　　／/　　　　￣ﾄ､
　ノ　　　　／　　　ｰ、＼　　＼　／　　／／　　　　　／＼
ノ　　　　ハ　　　　ｰ- ...`ヽ`ヽ　　　　　　　　　　　　　／　　　　＼
　　　　/　人＿ノ_ノ ´ ヽ、＿　　　　ヘ＿＿＿＿　／　　　　　　ヽ

┌────────────────────┐
│大きなギョロ目の眼光が一瞬鋭くなった。　　　　.│
└────────────────────┘

143 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:22:29 ID:KTdaDuYo0

　　　　　　　　　＿__　　　＿__
　　　　　　　　　＞　｀＞'´　＜
　　　　　　　　／　　　　　　x=､＼__
　　　　　＿／／三≧=-＜三ヘ　｀ヽ＞
　　　　　 7 ／'´　　　　　　　｀￣＼　',　　　　　そんな！父の夢見た共産主義とあなたの実践した似非共産主義を
　　　　 / /　　　　　　　　　ヽ　　　ヽヽ
　　　 ,'　 |　　/　 j　.:｛{＼:::.{　ヽ |　 .:::! .:ﾄ＼　　一緒くたにしないで欲しい！
　　 /ｌ　| 斗ｌｰ八.::::ヽ-┼ト　! l:::::.|:::::| ￣
　　/´| 　| ::!∠_ 厶.:::::{ ⊥j厶ﾍ|.::::::,':::::j　　　　法的社会的経済的不平等に矛盾を感じて
　　 .　| :八::| （ ◎）`＼| （◎　） /::::/ :::::|
　　.　| l ハヾゝー :::::::::::::: ー　∠／::::∧|　　　　父は恵まれた境遇を捨てたんです！
　　　　V＼:∨介ﾄ. _ △　_　イ个Ｖ/
　　　　　　　∧}:}弋i┴-- ┴ケ、　　　　　　　　あなたが目指したのは、その逆ではないですか！
　　　　　　　　／　｀‐ーー´　　.＼

⌒丶、＿ノ⌒丶、＿ノ⌒丶、＿ノ⌒丶、＿ノ⌒丶、＿ノ⌒丶、＿ノ
　　　　　　　　　　　　　○
　　　　　　　　　　　　　　　　　о
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｡　　　　　

　　　　　　　　　　　　　／　　/　　　　　　　　　　　　　从　　　　　　　＼ゝ
　　　　　　　　　　　　/　　　 i　　 |::::　ヽ　　　　　　　　　ゝ,　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　　　　 .′ '　　ﾊ　　ヾ:::　 |＼　ﾊ　| 　ヾ;.　 |:::::　　　　ヽ　|
　　　　　　　　　　 | | │　/-＼-　ヾ　|ニ| /-i!│　 |: i::::::ト.::::　　　　 ∨
　　　　　　　　　　 | | │ﾊ┬‐'┬、　 │┬‐┬､ヾ|　 /　i::::/:::∨ヽ::::::　/
　　　　　　　　　　　 |ﾊ　Vｨ .|::::::::! 　＼| 　l::::::::!　　/／ ,/ V:::::::::::::::（::::::!|
　　　　　　　　 l　ゝ＼￣￣　　　　￣￣　イ／/ ) |:::::::::::::::::::＼ |
　　　　　　　　　　　　　「 ` 　　ヽ　　　　　　／jｲr '_ノ::::::::::::::: ﾊ::::ﾉゝ
　　　　　　　　　　　　ﾊ　　　　　　　　　　　　 rイ:::::::::::::::::::::/
　　　　　　　　　　　　　　　ゝ.　　　　　　　　　イﾊi!:::::::::::::: //
　　　　　　　　　　　　　　　｀　．　　　　 .　'′ |　ヾ.::::::::::::ﾊi
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＞- r_ﾉヽノ＼／|　 ∨ゝ::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　)::::::::::::::::::::::::::::::{.　　　 `
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ノ:: - ―　… ...－::` …‐- ､
　　　　　　　　　　　　　　　　 _ .．' :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　::::::::::::::::: /::ヽ.::::::::::::::::::::::::::::::::: /::::::, :: ,
　　　　　　　　　　　　　　　.:::::::::::::::::ノ::::::::::ゝ::::::::::::::::::::::::|:::/:::／:::::::|
　　　　　　　　　　　　　　　.::::::::::::::::::/| _:::ノ￣｀ヽ _::::::::::|/／:::::::::::::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /ノ　　　　　　　　ヽ:: |.':::::::::::::::::│

┌──────────────────────────────────────────┐
│そう心の中で叫んだ私だが、ヨボヨボの老人に向かってその言葉を投げつける勇気はなかった。　　....│
└──────────────────────────────────────────┘

144 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:23:03 ID:KTdaDuYo0

　　　,;r────ｰｭ　; |l|　＼｀l::.　　|　 ;γ´　　　　 'ヽ　　 γ´ 　　　 'ヽ　　　　　　　　:,
　　,,　||￣￣||￣￣|| 　 :|l|,､　.:i |::. 　 |　:; ||￣￣||￣￣|| 　　　||￣￣||￣￣||　　　　　;,.:'
,;:.: "　||　　 ||// 　||　~;:|l|　＼i |::. 　 |　　||　　 ||//　 ||　 ,";; ||　　 ||　// ||　,'　　γ´￣￣￣￣｀ヽ
;　　 .,;||＝＝||＝＝|| 　. |ヽ,//'i |::. 　 | ;:　||＝＝||＝＝|| .;:, 　 ||＝＝||＝＝||　　　 /.lニﾆﾆΨﾆﾆニl.ﾍ
　　　;;||　 //|| 　　|| ;　 | :_ ＼i |::. 　 |　'' ||　// || 　　 || 　　　||//　 || 　　 ||　 .;:' ,||￣￣￣||￣￣￣|| ;:,.
　,　　'{ﾆニニニニﾆ} ";; |´ヽ＼ﾚ::... 　| 　 |￣￣￣￣￣'|　;. 　|￣￣￣￣￣'|　　　:||＿＿＿||＿＿＿||　;:
　　 : ::::::::::::::::::::::::::::　　 |＼,/´i:＼ ::: |:　　￣￣￣￣￣　;: 　　￣￣￣￣￣　.:'',.;　||￣￣￣||￣￣￣||
___________________________＿|　 |￣| :::::＼|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿||＿＿＿||＿＿＿||＿_
_,|＿＿|＿＿|＿＿|＿___|＼|＿|::::::::::::|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ||￣￣￣||￣￣￣||::::
,_＿|＿＿|＿＿|＿＿|___|:::::::: 　＼　:..|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ||＿＿＿||＿＿＿||::::
_,|＿＿|＿＿|＿＿|＿___|::::::::::::::::::::＼|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿||＿＿＿＿＿＿_,||::::
::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::
,三/三/三/三/三/三/三/三/三/三/三/三/三/三/三/三/三/三/三/三/三/三/三/三/三/三/三
::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::　::
,=================================================================================

ニニニニニニニニニフ　　　　　　　∠ニニニニニニニニニフ　　　　　　　∠ニニニニニニニニニフ

145 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:23:26 ID:KTdaDuYo0

┌──────────────────────────────────┐
│そして、口に出さなかったために、アーニャの実家から引き上げる道すがら、　　.....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│その言葉を何度も何度も頭の中を駆けめぐった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
└──────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ー--≧ 　 V　ﾚ´{
　　　　　　　　　　　　　　　　　　_,フ'　　　　　　　　　__｀ヽ.
　　　　　　　　　　　　　-‐　　　≦＝=､､-､　　　　　＼｀ヽ
　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　｀ヽ､ }　　　｀フ
　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ|　　　｀ヽ
　　　　∠ニ´_/　　　　　　　　　　　　ヽ　　　 |　 }人　{ヽ.　＼ヾ
　　　　　　 /　　　　　/!　　　　ﾄ　|　ヽ　　.| 　ﾐ　　ﾉ　ヽ._
　　　　　　 |　　　　　/ |　|　　　 | | | ヽ |　　| ヽ }　　 {´￣
　　　　　 }|　　　　 / __| ||　ヽ､|__ﾘ＿_ ヽ!　 |V-/,ｲ人
　　　　　　ﾘ|　|　　_／　ﾘ |　| /　y　　　　ﾘ|　i´[]´　/.ﾉ
　　　　　　　 |　､ | |jィ=≠ァ! // 　ィ≠=ァ　! ´|/|　| |/
　　　　　　　ヽ　､| | 弋付ソ|/"　　弋ｲタ　　|　|ノ/
　　　　　　　　＼v||　　　　　　　　　　　 !　!/
　　　　　　　　　　 |ヽ　　　　ヽ　　　　　　　／|　ﾄ,
　　　　　　　＿_　　|ヽ　　　　　　　　　ｲ､/ 　| }＿......,,__
　　　　　／　　｀ーヽ　ヽ､_ .　 ‐ ‐ 　／ .ﾉ/ 　./　／　　　ヽ
　　　　　|　￣＼　　ヽ　ヽ　＼ｰ ‐ ´ ／ i 　 /　/　　　　ヽ
　　　　　|　　　　ヽ　　ヽ　＼　＼__／　　|　/ 　 }　　　　　 {
　　　　 |/　　　　＼j　|　 |;;}　/;;;;;ヽ　／!/　／　　　　　　　}
　　　　 /　　　　 {　　|　| ./;;;{人;;;;;;;∧/;;;/ﾘ　 |　　　　　　　　 |

146 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:24:12 ID:KTdaDuYo0

┌──────────────────────────────────────────────┐
│そのうちに、ふと思った。アーニャのパパだって、かつては恵まれたユダヤ人商人の家に生まれ、　　　　　　　　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│何不自由なく育ったのに、社会の矛盾に目覚めて非合法の共産主義運動に身を投じたのだ。　　　　　　　　　　..│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│投獄されて拷問で足まで失っている。どこから、彼の人生は狂い始めたのだろう。権力を奪取してからか。　　.....│
└──────────────────────────────────────────────┘

　　　　／::::::::::::/::::ハ::::::/:::|::::::::::::ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::＞．
　　／:::::::__:::::/::::::{ﾄ::V::}:::::|::::::::::::::::|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,
...／-=イ::::::／:::::: : |::ハ:|:::::|::::::::::::::::|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾑ
　　 /:::::::/:::::::::::::::::!ミﾐⅣｿ|:::::::::::::::::',::::::::::::::::::::::::::::::::::＼:::::::＼
　 . /:::::::::i:::::::::::::::::::|r"￣　 !:::::::::::::i::::V::::::::::::::::ヽ::::::::::::::ハ＞ー
　 /::::::::: :|::::::::::::::::::::|　　　.ﾘ:::::::::::: |::::::V::::::::::::::::::',:::::::::::::::::',
. /::::::::::: ∧:::::::::;:::::: |　　　,'::; ｲ:::::: |ヽ::::ヾ､::::::＿ﾊ:::::::::::::::∧
ｲ:::::::::; ｲ:::∧::::_|ﾑ＝!＿＿/__. V::: | _..≧__,,ｨ≦_:::`:V::::::::::::::::＼
- ' ¨　/:::::::::::>､:{r¨￣￣ ≧ミ}ﾄV:: |r＝″￣￣ } }::::V::}`ー──
　　　,'::::::::}:: i r }!{　,,＿＿ｪz .}}==={{　zｪ＿＿,　}i{ Y::rﾊ
　　 /:::,ｨ/ﾄ.人　{i{ ´￣￣￣` }}￣ {{　´￣￣ ` .}i} ﾉｲ
　 ./／ノ　＞ミﾄ _ﾊ＝＝＝＝"　i} ゛＝＝＝＝ｲノ_＿
　　　　　 ,/　//￣八　　　　　＿＿　　　　　/" .ト　}}ハ
　　　　i７　　{ {　　　＞　.　　　　　　　　　ｲ　　 i!　.}}　廴_
　　　ﾉ　　　ヾ;､　　　　　＞　　_　　＜　　　　 /　/　　　ハ
　　 /　　　　　　＼　　　　＼　　　　 /　　　_＿ノ　　　　　 }
　 ./ ＼　　　　　　＼　　　　＼　 .／ ,．＜　　　　　　　　 ..人 _
　/　　　`ー＝ミ､　　＼　　　　N/　/　　　　　　　　　　イ　　　ヽ

┌───────────────────────────┐
│自分の父も、万が一、日本で共産党が政権をとっていたら、　　　.│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.│
│アーニャのパパのようになってしまったのだろうか。　　　　　　　　 │
└───────────────────────────┘

　　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　　「　ヽ､,＿　＼
　　　　　　　　　（●)（●.）　　 |
.　　　　　　　　 | 　|　　　　　 |
　　　　　　　　ｌ __｀___　　　 │
　　　　　　　ｌ　　　　　　　{
　　　　　　　　　､______　.ィ-ｰﾄ、
　　　　　　　　　　　　V／_:_ｭ:-:-: ヽ
　　　　　　　　　　　 {ｬ＜ : : : : : : : : :.
　　　　　　　　　　　／ｰ-、: : : : : : : : : :'.,
　　「r'、　　　　／ : : : : :｀､ : : : : : : : : :'.,
　　　} r'、　ﾍ､ / : : : : : : : : : : : : : : : : : : i
　　　i/ ム､} .{ i : : : : : : : : : V : : : : : : : : |
　　　{　い､{　Ｙ : : : : : .＼ : V: : : : : : : : |
　　　＼　　ヽ　{|V : : : : : : ＼V: : : : : : : :|
　　　　＼　　ノ|:.V: : : : : : : : :〉 : : : : : : :|

147 ： ◆nx51JYWniw [] ：2012/10/14(日) 00:24:46 ID:KTdaDuYo0

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 j/／　　　　／＼ヽ∨/／∠ヽ.　　　＼＼. ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _／　　　　 ∠≠ﾆ二ﾆ≧=＜´　ﾍ.　　　 ', ﾍ＼ヽ.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿ -‐ ´／　, 　-‐´､_,　'⌒｀^　､＼::＼　} l　　　ヽﾍヽ}
　　　　　　　　　　　　　　　　　￣フ´, 　／　　　　　　　　　　　　丶＼::V| |　　　　 Vl
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／／.／　　　　　　　　　　　　　｀Vヽl |　　　　ヽ ' .
　　　　　　　　　　　　　　　　　 / ,ｲ／　　　　　　　　　　　　　　　　　　 Ⅵ/,　　　　ヽ.＼
　　　　　　　　　　　　　　　　 |/ /　　　　　 |　　　　　　　　　　　　　 ∨ﾍ　　　　　ﾄ､＼_　　　今日はここまでです。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　 /　/　 l:　　　 /　 l　　　　　　　　∨i 　　､　 |　￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l│　　/ ,ｲ　 ,ｲ　　 l　　ﾄ､ヽ　　 / |　　l :|　　　 |　　|　　　　　　ご清聴ありがとうございました。
　　　＿＿　　　　　　　　　　　　　 | |　　 l/‐},≦､l　　　Ｌ　 l＿V 　 ∧/ 　 :|/　　　ﾊ.　ト､
.　　 l厶ﾆLト-､　　　　　　　　　　　 | ﾄ.　　| | 　 |,士弌ヽ |´ヽ{─ l　ｲ /　　/ 　　 /　l/⌒ヽ
.　／＿__　＼二ｰ-､__　　　　　　　 | | ヽ　| ﾄ,　|`込ﾗ` 　＼弐弌ﾍ i. V　　∧　　　,' 　´
　ｌ〃二ｰヽヽ |　 `￢二._-､　　　　　ﾚ　ヽヾヾﾄ､`""　　　　ヾﾋ乃} /　／〉│ |　{
　 |{{ﾆｰr ﾍ} }} |　　　 |　　 ≧Zｭ／⌒ヾ!ヽ＼ゝヽﾊ｀　　,　　　　`'''''ﾞ∠≠'r' ﾉ:jﾉ |　i! r---､
　 lヾ三{_,ソノｨＬ_　　　|　　　 Til┐⌒ヽ　　ﾄ＼ﾄ::ﾄ､　　､__　　　　　ﾉｲ| ! 　　｀TT'´　　　＼
　 l己(　)}ﾆ二l|　 ¨ ￢廴_　　　| | |　｀ヽ　　　》　　ヾ!. ＼　　　　 ,. イｲ:.::| !　　　 !:ﾊ　　　　　＼__
　 l＞==-､､　 |　　 rrｎ|　 ¨ ￢ﾋ｣7　ヽ＼　《　　 /ﾄ＼　｀ー＜__／ /:.:/ﾉ　　　ﾉﾉ }　　　　　 }　＼
　ｌ lｱ⌒ヽぃ |　　 {l{_ﾘr- ､ T了￣`ヽ､ヾヽ:i ＼./　 ≫　　 {＼lﾆﾆｺｲノ /　　／　 !　　　　　　 } ハ
　 | {　　C} } } |ｰ= ､___ |　} } jソ-､_　　 }ツﾘ }.　 /　≪　　　 ', 　|::| ン　/　　≪　　　|　　　　　　　 /ﾉ .|
　ヾﾐ辷彡クﾉ　　 {{　}Ｌクrく　　　〉　/〉} ﾘﾉ　 {　　＼　　＼二ｰ／　　／　　　｜　　　　　　 //　ﾉ
　　ヽー─一ﾍ　　 Vｿl二ﾆ、｀ヽ-' ∠ｲ::||.:/Ｙ___,ｲ-----＼　　ﾍ　/　　／＿＿＿__|　　　　　=ニノ／
　　　{＼＿_三込＿彡ｲ　 {　ト--r'　　lﾄ:||//:/　{　　　　　　＼　　Ｖ　／　　　　　　｀}＿＿／´ , イ'
　　　ヽ　　　　　}　　 } |ヽ-' ﾉ　　|　　ﾘ:.ﾘk::::|　ﾍ　　,＿＿＿ゝ､. |∠＿, ------､　　ﾄ､＿／　　ﾉ､
　　　　`Tﾆ二了　ｲ　｀ﾆﾌ　　　|　ノ:./ｲ||.:.| 　.人　 {:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:{.:.:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:}}　ｲ　＼　　　　　＼
　　　　ノブ￣`ー‐' ￣,二ﾆヽ　ﾄイ/:/.∧ﾄ､|　 ./ 　　＼__,:.:.:.:.,.:.）:{:ヽ.:.:.:.:ヽ.:.:.ノ.:.}}　ﾉ}　　　|＼　　　　　＼

148 ：名無しのやる夫だお [↓] ：2012/10/14(日) 00:30:07 ID:Dd/5ONwQ0

乙

年取って、理想に燃えていた若い頃を思い出すたびに、責められるような気分になるんだろうな

149 ：名無しのやる夫だお [↓] ：2012/10/14(日) 00:30:17 ID:AySC8VPQ0

乙
やるせなし

150 ：名無しのやる夫だお [↓] ：2012/10/14(日) 00:39:55 ID:ci2q54Dk0

乙乙！　いつ追い出されるかと思ってたが、アーニャの両親も悔いているんだろうか・・・
ついに本丸が出てくるか。

・・・・同じにならなかったら、棺桶の蓋が閉まっていたんだよ

151 ：名無しのやる夫だお [↓] ：2012/10/14(日) 01:52:55 ID:s4/Da1TY0

戦後に日本共産党がやってた革命資金源事業のことを考えるとな…
朝鮮戦争後に社会党に持ってかれちまったけど

▲ Fly to the Top

以上の内容はhttp://tonarinoaa.blog136.fc2.com///blog-entry-1836.htmlより取得しました。
このページはhttp://font.textar.tv/のウェブフォントを使用してます

不具合報告/要望等はこちらへお願いします。
モバイルやる夫Viewer Ver0.14

【マリと】嘘つきアーニャの真っ赤な真実【三人の友達】 「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」 3

【マリと】嘘つきアーニャの真っ赤な真実【三人の友達】「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」 3