ここ最近、先進国では次々と死刑を廃止しようという動きがさかんである。
イギリスを筆頭にヨーロッパのほとんどは廃止しており、ロシアやオーストラリアなど、死刑廃止論者たちの声は確実に世界に広がりつつある。
その裏で、実際に殺人者を死刑にすることは、殺人を減らす働きがあるのかどうかという研究もなされていた。
そしてその答えは「YES」と出たそうだ。
一人の殺人者を死刑にすることによって、3〜18人の命を助けることができたかもしれないという結果が出ている。
当然この結果に反論者たちは少なからずショックを受け、データそのものに懐疑的ではある。
しかしながら、おもしろいのは、このデータを出した教授も死刑反論者だったようで、彼のセリフが非常に印象的であった。
「死刑にはそりゃ反対さ。だが結果は、死刑が殺人を予防すると出ている。これをどうしたらいいのかね?隠すのかね?」
当然同様の研究は今までにもなされていて、多少の数の差はあるものの、同じく死刑による別の殺人の減少の効果をあげている。
今までに出た結果として以下の例がある。
・一つに死刑に対し、平均18の殺人を妨げる効果があがる(全国を対象にしたエモリー大学の教授による2003年の研究)
・イリノイ州での2000年の死刑一時廃止により、4年で150の殺人を誘発したとヒューストン大学の教授が2006年発表
・死刑を早期に執行することは、殺人を減少させる効果を強固なものにする。2.75年早めることによって、殺人を一つ防ぐことができる。(2004年のエモリー大学の教授の研究による)
2005年には米国では16,692もの過失でない殺人事件があり、そのうち死刑執行されたのは60件だそうだ。
人命を尊重するという道徳的な理由で死刑を反論する人が多いが、この研究結果が正しいということになれば、この道徳そのものが揺り動かされてくるのではないだろうか。
殺人犯を一人救ってやるために、数人死ぬという結果が出るとなると・・・
Studies: Death Penalty Discourages Crime
森達也
朝日出版社
売り上げランキング: 37346
おすすめ度の平均:
結局は自分の「好き・嫌い」の問題
読むほどにアンビヴァレンス。
素直に率直
テラーの想像力
著者自身の気持ちの揺らぎがそのまま出ている本