388 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:03:12 ID:RPwbzUkv
八４．
そしてその原因である、麻呂＝イチジョウの豹変ぶりと言ったら無かった。

国王を毒殺するまでは知略家の如く老獪な振る舞いで
見事国の主権を手に入れたはずなのに―――



　　　　　　　　,ト--ミ､、_:::::::::::::::::｀:"'':―┼――――l
　　　　　　　 /ミミ三三ﾐ'ー‐-- ､、＿:::::::|:::::::::::::::::::::::j
　　　　　　　 {ミミミ三三、　　 　 ､ｰ=､`'┴―――fミ',
　　　　　　,..､ﾐﾐミミミ三ｼ　　. . . . `―' l ii l　(ヲ　　lミil
　　　　　 //う{ﾐﾐミミf'"　　　_,,.,,_:.:.:.:..　 _j_　.:.:.:.　　lﾐﾘ
　　　　　 l V　}ﾐﾐミミ　　　 ',ｨでiﾝﾐ、:.:.､__, -,ｨも=､',l:l′　　　　　　「口答えはするでない！
　　　　　 'i l ,ﾉヾミミ'　　　 ´￣｀ﾞ`ラ .:. 三 f"´￣｀' lj　　　　　　　 協力的な態度を見せぬのであれば
　　　　　 ヽヽへ}ミﾐ　　　　 ｀二ﾆノ ,、 jl　',` ―''" ,l!　　　　　　　 家屋ごと焼き払ってしまえばよかろう！」
　　　　　　 ヽ二ﾉミ'　　　　　　　 ,ィ'" 　 　 ﾄ、　　 ,!
　　　　　　 , -fｿ!'ミ　　　 　 　 ／ `^ヽ,＿ノi　　　 ,'
　　　　　 ,/（/　{i,ﾐ'　　　　　／　 _,,...,＿,,..,、l　　 /
　　　　　/　ヽ　 lN,　　　 ／　 ,ィiTTTTTト, ,}　 ,/
　 , -―/　　 ヽ ', ヽ　 　 {　 ,/⌒'ｰ'‐'‐'‐',ﾘ l　 /
　/　　/ 　　　 ヽ'、 ヽ 　 l　 {,ゝ､‐r‐'ﾝ-i/ ,/ ,ｲ丶､、
"i　　 {、　　　　 ヽヽ丶　丶 ヾ<Zェｪｪｼ'　ﾉ ,i'lヽ、　｀ヾー-- ､
　l,　　 ＼　　　　 ヽヽ 丶、 ｀ ｀ ‐ -- ‐'"/ノ ,l　 ＼　　＼　　ヽ



今ではその欠片もない、ただ力任せのみで押し通そうとする暴君に過ぎないのである。
あるいは噂話の尾ひれですら、不足する程に。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 __＿ .,.､.-..､ ,,...__＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ＞:.:.:.:.:｀ヽγ:.:.￣｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.'.、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　　　 /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.',
　「しかし！　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:',
　 すでに町の者は我々への不信感を高め 　 　 　／イ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:}:.|!:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.ﾍ:.:.:.:.:.:.:',、
　 王女が事を起こすのを　　　　　　　　　　　　 　 　 　ｲ:.:.:.:.:.:.:/:.:/:.:.:.:.:./!:ﾊﾘ:.:.:.:.|.:.:.:.:.:. |:.:.:.:.:.:.:ﾍ
　 今か今かと待ちわびている程ですぞ！」　　 　 　 　!:.:.:./:.;':.:.:i!:.:.:.／/ｲ ∨ﾄ､:.!.:.:.:.:.:.ﾘ:.:.:.:.!:!.:.:ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　j:.:.:.j:.:.i:.:.:.ﾘﾊへ〈ノ　 ﾄ､ハ∠从ﾘ.:.:.:.:.:.:!:.:.:ﾍ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ノ:.:.:｛:.:.:ヽ从こ互ゞ彡ﾞレ＜9ゝ｀ﾘ.:.:.:.:. リ:.:.:＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　イ:.:.:.:.:.:.:）:.:.:.:ﾍ　　 　 　 :i　　　　　ｊ.:.:.:.:.:.:ﾘ:.:.:.:.:.:.:＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／／:.:.:.;.ｲ:.:.:.:.:.:.ﾍ　　 　 〈:|　 　 　 /!.:.:.:.:.:.:!.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/／:.:.:;ｨ彡ｲ:.:.:.:.:.:.:∧　　 　 `´　　　ｲﾘ.:.:.:.:.:ハ､、.:.:.:.:.:.:.:ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.//_＿,ｲ/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/　ヽ.　　に ｺ 　 /ﾍ.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼｀::ー―┴―
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　::::::::::/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. /　　　＼ 　ｰ　 ,ｲ／ﾍ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.j｀::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:::::::::::/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:,ｲ　 　 　 　 ー‐＜　　　｀ﾘj.:.:.:.:.:ﾘ:::::::::::::::::::::::::::
　　
389 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:04:12 ID:RPwbzUkv
八５．
無理からぬ事だった―――

麻呂が一〇年かけて考えてきた策略はすで中折れ状態。

慌てて修正案を考えようにも、常に先手を取られて思うようにいかない状態が続いており、
結局力圧しで何とかなれば、と根拠も裏付けもない勢い任せの作戦が続いているのだ。



　　　　　　　　 |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ|
　　　　　　　　 |丶､ ;;; __;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;_,,: ィ";;_|
　　　　　　　　 ﾄ､;;;;;;;;;;;;;;;｀ ` '' ー -- ‐ '' ";;;;;;;;;,:ィ;:;!
　　　　　　　　,';:｀`' ‐ｮ ､ ,_ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; , - '"l;:;:;:;:l
　　　　　　　　l;:;:;:;:;:;:;ﾐ　　 ｀ ` '' ｰ -‐ '"　　　 ,ﾘ;:;:;:l
　　　　　　　　l;:;:;:;:;:;:;:ゝ　　 く三)　　　(三ｼ　　｀ヾ;:t、　　　　「くっ！
　　　　　　　fﾐ{;:;:;:;:f'´　 , -－-_,, _,ｨ ､_,,ｨ,.-－､　 };f }　　　　　一体何処の誰が
　　　　　　　l ﾄl;:;:;:;:l　　､,ィ或tｭ､ﾞ:ミ　{,'ィt或ｱﾁ　l:l,/　　　　　軍師に着いているのか！
　　　　　　　ﾞi,tヾ:;:;:!　　｀ヽ 二ノ　　　ﾄ ` ‐''"´　 l:l:f
　　　　　　　 ヽ`ｰ};:l　　　　　　 ,r'､ 　 ヽ 　 　　　ﾘ_）　　　　　まさか何年も前に大学から放逐した
　　　　　　　　 ｀"^l:l　　　　　 ,/ﾞｰ､　 ,r'ヽ　　　　l　　　　　　　ヤンでおじゃるか！？」
　　　　　　　　　　　ﾞi　　　　,ノ　 　 `'"　 丶.　　 ,'
　　　　　　　 　 　 　ﾞl､　　 ′ ,, ｨrｪェzｭ､,_ 〉 } /
　　　　　　　　　　　　',ヽ　　ヘヾ'zｪｪｪッ',ｼ'　//ヽ
　　　　　　　　　　　　 }　丶、　` ｰ--‐ '"'´,/ノ:.:.:ヽ
　　　　　　　　　　　　/l　　 丶、　　　 　 ,.ｲ:.:.:.:.:.:.:.:丶､、
　　　　　　　　　 ,r'"^l　!　　　　` ー‐;オ´:.:.:.:.:.:.:.:.:.,ノ　 ,}、
　　　　　,. -ｧ＝く（:.:.:.l　 l　　　　　 ／/:.:.:.:.:.:., - '"　 ,／　ヽ、
　 , - '"´ ／　,／｀＞'t､_」＿＿_,ｨ'ﾞ,ィ,.: -‐ '"　,. -‐ '"　　　　＼
／　　　　ヽ-（　　/　/ f　　 }li,　　　　 ,. -‐ '"　　　　　　　　　　＼



どれだけ優秀な軍師がついたのだ、と
かつて王都の大学で天才と呼ばれた学士の事を思い出すも、
あの怠け者がこのような場に現れるとも考えづらい。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／ 　 　 ヽ＼
　　　　「いえ、あの男はエスメラルダで　　　　　　｜　 　 　 　 ｜
　　　　 未だ燻っている様子。　　　　　　　　　　　 へ-　―ヾ　｜
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―　―　 ∂＼
　　　　………そう言えば、　　　　　　　　　　　　　｜ し 丶 √｜|｜
　　　　王女達が潜伏していた先も　　　　　　　　　｜ ﾄ-＝ヽ　｜|｜
　　　　エスメラルダでしたな………？」　　　　　　 ＼　　　／　|｜
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ ゝ―-" ／ノ丿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（　＼＿＿／　 /｜

ただ、エスメラルダと言う共通点があるため
まさかとリフは息を呑むが―――
390 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:05:17 ID:RPwbzUkv
八６．
ヤンと王女が接点を持ったにしても、その動きが疾風迅雷の如く。

エスメラルダに潜伏していた、との情報が入ったその日の夜に、
すでにカーディナルまで潜り込まれているとあっては最終防衛線を王城にする他無く、
可能な限りの道具や戦力を集めるよう老人は言った。



　　　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i
　　　/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i
　　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i
　　/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;-'"´ヽ
　i'｀ﾞｰ=ｰ--､､,,_;;;;;;;;;;l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;-一=＝'''"´　_,,､!
　ヾ､　｀ﾞﾞ''''ｰ‐-二二|二二-‐一'"´　　 ,,イ彡ﾉ》
　. i;;「｀ﾞ'ｰ､､ 　 　 　 |　　　　　　_, -‐''"´ 彡彡ｨ　　　　　「とにかく！
　. i;|　　　　｀ﾞﾞ''ｰ‐‐┴-‐一'''"´　　　　　 彡彡|　　　　　 彼奴等が城に攻め入ってくるのも時間の問題！
　　i;|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 彡;ｨ|
　　'i| 　 　 .__　　　 　 　 　 　 _....,,　　　　　彡/　　　　　　金はいくらでも国庫から引き出して構わぬ、
　　ゝ　 　 (ミミ;､　　　　　 ,;;彡ﾂﾉ _,,　　　 |彡r,　　　　　　可能な限り人員を集め不眠不休で城の守りにあたらせよ！
　　ヾi　,《でゝ､_､＿i_,__i＿,,, ｨﾆﾄﾂ_,》'､:'　　|/, .i
　　 ヽ　´'三二ノ￢|　 i::. . . ヾ三二'｀ミ 　 |:.）/　　　　　　それから、町中からありったけの
　　　ﾍ　　　　　 　 i　 .i::: : : :　　 　 　 .::::::iﾂ/　　　　　　　魔符や精霊球を徴発してくるのじゃ！
　　　 ヽ::...　　 .:::. , 　 ::i: : : : .　　　..:::::::::::.iﾉ　　　　　　　　冒険者からも買い集め、
　　　　 ヽ::::::　ｨ'''r ､　.::::::.ヽヾ､　 :::::::::::::/　　　　　　　　　 出し渋る者は処刑してしまえ！」
　　　　　ヽ:::: .i:　.｀ﾞﾞｰ-''''"´　 ヽ .:::::::::::人
　　　　　 ﾊ::: i /　　, --:､､_　ヽ ヽ:::::::/i　|＼
　　　 .／: ∧ ｀ｰ‐'ェェ､_,ェ=ゝノ .::::://　 | : :＼
　　／: : : ヽ.ヽ　｀､__,,二二＿,, ,:::::://　.／: : : : ＼_
.／; : : : : : : ヽ ＼　　　　　　　　／ /　/: : :: : : : : : :iｰ､
　/: : : : : : : :ヽ.　＼＿＿,＿_.／ ／／: : : : : : : : : : :i　ヾｰ-､


391 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:06:11 ID:RPwbzUkv
八７．
当然、目的があって麻呂の計画に乗ったリフとギャブレットも、
もはや一蓮托生の身。



　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　 ／ 　 　 ヽ＼
　　　　　　　　　　　　　　　｜　 　 　 　 ｜
　　　　　　　　　　　　　　　 へ-　―ヾ　｜
　　　　　　　　「はっ」　　　　―　―　 ∂＼
　　　　　　　　　　　　　　　｜ し 丶 √｜|｜
　　　　　　　　　　　　　　　｜ ﾄ-＝ヽ　｜|｜
　　　　　　　　　　　　　　　 ＼　　　／　|｜
　　　　　　　　　　　　　　　／ ゝ―-" ／ノ丿
　　　　　　　　　　　　　　（　＼＿＿／　 /｜



　　　　　　　　;':.:.:.:.:.:.:.:.　　　　　 !　　　l　　　　　　　　　　i
　　　　　　　　!:.:.:.:.:.:.:.:　　　　　　!　l　　.li　､　、　　!　　　 !
　　　　　　　 〃:.:.:.:.:.:　　　　l i　l　.l l　ｉ .l l li　l l　l　l　　　 l
　　　　　　 /':.:.:.:.:.:.:.　 / /　l l　l　.ｌ l　ｌ l　!l l /ﾅ.ﾉ! l　　　ヽ､
　　　　　,..､;':.:.:.:.:.:.:　 ./ /　l　/'_/' /ノ/' /''/_、"　ﾚ　　　　 lヽ　　　　「了解です」
　　　　　{、.ヽ:.:.:;:: -‐､ l　/-'"-tｭ='' ﾉ　'　 ､O弐 /　　　　　 l
　　　　　 ヽ　./　 ,　,...L!.l:.!　 ￣　　`　.lヽ　　　　;　　　　　　 l
　　　　　　lヽ/　,-'"　／ヽ､!.　　　　　　!. ,　　　 ;'　　　　　　 l
　　　　　　.l/　~　　／　／`ゝ、　　　 ,､,ノ　　　 l　　　　　　ｲ
　　, -ー'''~{ ,　　'''　　 "　 /''/、　 丶=＝ｯ　　./l　　　　　l　.l
. ／　　　　丶 ￣ ー―　､｛ノ l.＼　　`ニ~　 /／!　　　　　l　ヽ
〈　　　　ヽ　 ヽ.､　　　　　 l l　l　　＼　　　／~　 ll　　　　 l l__ヽヽ
.l　　 l　　ヽ　 ヽ丶.　　　　 l l./、　　l .ー '　　　 ﾘl　　　　//　￣`''''ー､
　!　 l　　　ヽ　ヽ「~'''l　　　 ｝.l ヽ　　!　　　　 _,,.-/　　　／　　　　　　　￣
　l　 l　　　　　 /ヽ￣　　　/ l　　「二i _,,. - ''　／　　／
　.l　 !　　　　 /'　 `丶､_,,..-ｲ　　　/　―　　 イ /／
. /　　　　　 /0　　　　　　　l　　　/　　　　　/l/~



多少乱暴な手であろうとも実行しないわけにはいかないが、
彼らもまだ、王女達がどれだけあがこうとも
圧倒的な戦力で踏みつぶせばよい、と思い込んでいる。
392 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:07:14 ID:RPwbzUkv
八９．
一人、そうではないと解っていたのがランサーだった。

この数日城中を調べて回ったが、妻が捕らえられている様子がない。
おそらく城外のどこかであり、その候補は二カ所にまで絞り込めていたのだ。



　　　　　　　　　　　　　 ｲ　　　　 __＿ ,.イ
　　　　　　　　　　,.イ／/／￣￣.:.:.:.:.:.:ノｰ ､
　　　　　　　 ヽ /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:___ノ.:.:__ノ.:.:.:.:ニ＝ｰ
　　　　　　　　|/.:.:.:.:,.イ.:.:.:/／.:／.:.:.:.:.:￣￣￣.:.:＞/
　　　　　　 ＼ヽ/／.:.:.:.:.:ﾉノ／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＞.:.:.:／/ ｲ
　　　 　 　 　 ∨.:.:/ノイ!　　　彡──　´.:.:.:.／／:.:/
　　　　　 　 　 i／ﾍ 　 }｝　　　ミ二ニ.:.:.:.:／／.:.:.:,ｲ　　　　　　（こりゃあ―――
　　 　 　 　 　 /　|/／厂｀　　ヾ:.:.:.r－く.:.:.:.:.:.:／.:.:.j　　　　　　 時間の問題だな。
.　　　　 　 　 /　／　　　　　 　 ∨/⌒ ヽ.:.:／/.:.: /
　　　　　　　　ヽ　　,,ノ　　　　　　ヽ丿 丿´.:./.:.:.:/　　　　　　　 どうやら城にバゼットは居ねぇ、
.　　　　　　 　 /　　　　　　　　　　　__ノ.:.:.:./.:.:.:./　　　　　　　　後は神殿かギャブレットの邸宅だろうが………
　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　Xヽ.:./.:.:.:,.ｲ
　　　　　　　 ｀ヽ　　　 　 　 　 　 　 | |　 ヽく::::::ヽ　　　　　　　　奴らが攻めてくるってんならちょうど良い、
　　　　 　 　 　 ｀<　￣　 　 　 　 　 | |　 　 l ヽ:::::::ゝ、　　　　　 俺ァ混乱に乗じて抜けさせてもらうぜ）
　　　　 　 　 　 　 ',　 　 　 　 イ 　/ ¨　 　 l　 ｀く:.:.:.:.ヽ
　　　 　 　 　 　 　 ',　　.. 、´　___./───－ｭ　 ＼:.:.:.:.＼
　　　　　　　　　　 　￣　 」￢|::::::::::::::::::::::::::::::∧　　 ＼.:.:.:.:＼
　　　　　　　　　　　　 　 | |￣|:::::::::::::／ ￣￣￣ ＞ｰ-::、:.:.:.:.:ヽ.
　　　 　 　 　 　 　 　 　 ,| |⌒トｰ､／／ 　.:／ ´　　　 　 ｀ヽ、:.:.:.ヽ.
　　　　　　　　 　 　 ／ｲ / 　 ）／／　.:.／　　　　　　　_＿　 ヽ:.:.:.:.:'.,
　　 　 　 　 　 　 ／∠ムへ､,/　/　.:／　　 . ・ ´ ￣　　　　｀ヽ ∨:.:.:.i
.　　　　 　 　 　 /ムγ´:￣::/　/.:／　　／　　　　　　　　　　　 ∨:.:.:.:l
　　　　　　　　 ハ.::::::::::::::::::/　/ ′　／　　　　　　　　　 　 　 　 ∨:.:.:l



あとは抜け出す隙さえあれば、と考えていると―――

393 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:08:12 ID:RPwbzUkv
八１０．
テーブルを叩いた麻呂に呼ばれていた事を知り、



　　　　　　　　 ,l､::::::::::::::::::::::::::::::::::|:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:l
　　　　　　　　,ﾊ::｀丶､:::::::::::::::::::::::|:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;_,, -‐:〈
　　　　　　　　{;;;;ヽ､:::::｀丶､:::::::::::::l:;:;:;:;:;:; ィ";:;:;:;:;:;:;:}
　　　　　　　　,l;;;;;;;;;ｼ丶､:::::::｀:`:ー'‐::'':"::::::::_, ィ"´;;l
　　　　　　　fうl;;;ミミ、　 ｀`丶 ､::::::::,: - ''"´　 ﾘ;;;;;;f-､　　　　　「ランサー！
　　　　　　　{ l l;;;;;ｯ=`　　 (三> ｀^´ (三ｼ　　ム;;;;;;ｿl}　　　　　 聞いているでおじゃるか！？」
　　　　　　　t　!;;;ﾘ　 　 _,,...,,_　　　　　_,,..,,_　 　 l;;;//
　　　　　　 　ﾞl ヾ;l 　:'ｨﾃﾍ9ﾝﾐ　　 ,: ',ｼﾋ9ﾝ､　　l;//
　　　　　　　　`ｰll!　　 ｀''==ヲ'　　l:.:^''==彡'"　,!ﾘﾉ
　　　　　 　 　 　 ll　　　` '' "　　　l:.:.:` '' "　　,i;;l´
　　　　　　　　　　li,　　　　　,r　.:　:.ヽ､　　　 ,:,り
　　　　　　　　　　 t、　　　/ ﾞｰ､　,r 'ﾞヽ　　/,K′
　　　　　　　　　　　ゝ、　,:'　　　:~:　 　 }　// /ヽ、
　　　　　　　　　　　/{lヽ ,ィ＝=ﾆﾆ=＝,ﾉ,ノ7 /:.:.:.:ヾﾆヽ
　　　　　　　　 , ィ/:.:い ヽ ｀` ー一 ''"／,/,/:.:.:.:.:.:.:.:ｿ }- ､、
　　　　　　　 /　/:.:.:.:ヽヽ `' ー‐ -- '"／／:.:.:.:.:.:.:／ /　　 ｀ 丶､
　　　　　,, - {　 ヾ:.:.:.:.ヽ丶　　　　　／／:.:.:.:.:, -'" ,／　　　　　　 ｀ 丶 ､
　 ,, - ''"　　 丶､ ｀` ーゝ､ヽ.,＿,,ｨ"ェくユ- ''"　, ｨ"



心底面倒そうに、そちらに視線を向ける。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾄ､＿　　＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヾー-＜￣¨ヾト､. ＼.ヽ ヽﾄ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _ト--'ド=､=三≧=ﾆﾄ､ﾄ､＼}iYi }i ,.ｨ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＞ =ニト-ドﾐi､｀ヾミli､＼ド､Vi:ﾚ/i/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ≦=＝=＜￣¨ニ=- ､　｀ヾ ＼ Yｌ/ .lﾚｲ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＜-―＝ニ三≧=､ﾄ､ >}-iド!￢iﾍi斤Ｋ
　　　　　「あー、はいはい。　　　 ≦= '三 ニ＝,.ニ.Z 〃.〃　 {{i　 　 {　{iヾヽ
　　　　　 なんだっけ？」　　　　　 之_Ｚ二〃￣　__,.ｨ! {{　|{.　　|{ﾄ､　　ヽ ∨ }}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　≦ｨ'∠,／￣,.イく.　ﾘ_,｣ﾋ==≠=ミ;､　 z久ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ノｲ∠.ｲi,r＜ｿ'　　　　,ｨ''::ﾅ≧　　　 fﾃ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∠ｨ'〃,'{ ￢.、　　　　`￣ ´　　　 　 ｢i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　フイ小| '､:::}　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣}ﾉ,'八.ヽ-､　　　　　　　　　　　　_ ,ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　'＾^!个irr:ｪ　　　　　　　　　　 ___７
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ド.Ll {. } ヽ　　　　　　 ‐''",. -.〉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 川｜|.｜　ﾄ､._　　　　　　　　{
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾘ　 .| ∨　　　　｀ヽ、　　　　_ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 厶=r:|_　　　　　　 　 ｀ T ￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　 く＿ ￣¨ ￢------┴､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　／　ﾉ 　 ￣¨ ￢-------イ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,/,∠...／　　　　　　　　　　　　　＼＿

394 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:09:12 ID:RPwbzUkv
八１１．
そしてまた下される、卑劣にして下劣な命令。



　　　　　　　　　　ﾄ､;:;:;:丶､:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:_;:;: --―;:''"´;:_」
　　　　　　　　　　{::ﾄ､:;:;:;:;:;:｀ '' ー―――;:;: '' "´;:;:;:;:;:;:;:;:;:;_ ,.ィ彡!
　　　　　　　　　　l::l　丶､:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:_,. -r=＝ﾆ二三三 }
　　　　　　　　　　',:i r- ､、` ' ―――― '' "´ ,ｨ彡三三三三三/、
　　　　　　　 　 　 || ヾ三)　　　 　 ,ィ三ﾐｦ　　｀丶三三三三三ん',　　　　　「奴らが動いたら、
　　　　　　　 　 　 lj　　　　　　　　 ﾞ' ― '′　　 　 ヾ三三三ﾐ/　）}　　　　　 桂の小娘を人質にして中庭にて足止めをせよ」
　　　　　　　　　　 | , --:.:、:..　　 .:.:.:.:..:.:...　　　　　　三三三ﾂ ） /
　　　　　　　　　　 | fr‐t-､ヽ.　 .:.:. '",二ニ､、　　　　三三ｼ,rく /
　　　　　　　　　　 l 丶‐三' ﾉ　　 :ヾイ､弋::ノ`:.:.　 　 三ｼ r'‐' /
　　　　　　　　　　 ',　ﾞ'ｰ-‐' ｲ: 　 : 丶三-‐'":.:.:..　 　 三! ,'　 /
　　　　　　　　　 　 ',　　　　/.:　　　　　　　　　　　　　ﾐﾂ/ー'′
　　　　　　　　　　　 ', 　 ,ｨ/ :　　　.:'^ヽ、..　　　　　　 jｿ,ト､
　　　　　　　　　　 　 ',.:/.:.,{、:　　 .:　,ノ 丶:::..　 -､　　 ,ﾊ　 l、
　　　　　　　　　　　　ヽ　.i:, ヽ､__, イ　　　_｀ﾞヾ　 ﾉ 　 / ,l　 l:ヽ
　　　　　　　　　　　　 ,.ゝ､ト=､ェｪｪェ=テアヽ }　　　,/　 l　 l:.:(丶、
　　　　　　　　　　　_r/ /:.｀i ヽヾェェシ／　　ﾞ'　　／ 　 ,'　,':.:.:｀ヾヽ
　　　　 _,,. -‐ '' " ´l. { ｛:.:.:.:',　`.':==:'." 　 　 　 ／　　 /　/:.:.:.:.:.:.}　ト―--　,,＿
一 '' "´　　　　 　　 ',ヽ丶:.:.:ヽ、　⌒　　　　,r'"　　　 /　/:.:.:.:.:.:.:ﾉ,ノ |　　　　　 ｀`丶、
　　　　　　　　　　　 ヽ丶丶､:.:.ゝ､ ＿＿_,. ｲ　　　　 /　/:.:..:.:.:.,ｨｼ′ |



だが、今は動きを見せていない、文部庁の長である言葉の父が
黙っていないだろうとランサーは言った。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　j､　|ｿ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;ノｿ;;;ｨ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　i:;ヽ|:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;/l/: 'ﾉ'ノ／,ノノ'´: : : /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（V:;:;i:;:;:;:;:;ﾍ:;:;:;:;:;:;:;/: ／: : : : : : : : : : : : : :/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヾvゝ:;:;lヽ: ヽヾ:;:;:;:;j: : : : : : : : : : : : : : : : : : ｿ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヾ: : : : : : : : : ヽ/: ;;;;;ｿ''''ヾ'、}: : : : : : : : : j
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ヾ: ヾ｀/｀ヾ/'''´´　ﾍ、　ヾヽヾ;;: : : : : : :j
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ミ:::}/　 /　　　　 ヽ;l　　 ﾍ　ヾ;: ;;ｰ､:j.　　　　　 /ミ
　「―――おいおい。　　　　　　　　 ヾ::}　　ﾘ　　　　 　 ゝソ二|￣ ソ ,ﾍ }　　　　　/ミ
　 そいつは歌丸の親父が　　　　　　 ヽi ｀ミ}≧ 　　ヾ~y| 弋少｀　　 （ ｧ,i　　　　/ミ　 /
　 黙っちゃいねぇぞ？」　　　　　　　　　 i ﾍ　匁ヽ　　ｰ─-　　　　　 丿ｿ　　 　 /ミ　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ',　｀￣　il　　 　 　 　 　 　 ﾍoj　　 　 /ミ　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ',　　 　i|　　　　　　　　　 j. |.|i　　　/ミ　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　i'i、 　ヾ　 　 　 　 　 　 ,'　|.|.i 　 /ミ　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 |.| ヽ　──一- 　 　 , '. 　i.jxゝ/ミ　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 |.j.　 |ヽ　　　　　　／　　　!::::::ヽミ　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 |　ヽ 　 __,,／|￣￣￣￣|: ヽ /
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 「￣|ﾆﾆﾆ--ｰ┤　　　　　 |: : :ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 |.　 |ﾍ|　|r- ､. |　　　　'''´￣￣￣￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ｨ''ｳ＿|ヽl　l⌒ﾘ　｀￣￣＞､



もともと、歌丸＝桂は改革派と言っても娘の安全と、
革命後の文化活動への予算編成を餌に首輪を付けている程度に過ぎず、
その片方が反故になると知れば反旗を翻して敵に回るに違いない。


395 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:10:13 ID:RPwbzUkv
八１２．
しかし麻呂は、それすらも人質で押さえ込めば良いと言い張り―――



　　　　　　　　 ,l､::::::::::::::::::::::::::::::::::|:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:l
　　　　　　　　,ﾊ::｀丶､:::::::::::::::::::::::|:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;_,, -‐:〈
　　　　　　　　{;;;;ヽ､:::::｀丶､:::::::::::::l:;:;:;:;:;:; ィ";:;:;:;:;:;:;:}
　　　　　　　　,l;;;;;;;;;ｼ丶､:::::::｀:`:ー'‐::'':"::::::::_, ィ"´;;l
　　　　　　　fうl;;;ミミ、　 ｀`丶 ､::::::::,: - ''"´　 ﾘ;;;;;;f-､
　　　　　　　{ l l;;;;;ｯ=`　　 (三> ｀^´ (三ｼ　　ム;;;;;;ｿl}　　　　「メイドの小娘らが自決してしまった今、
　　　　　　　t　!;;;ﾘ　 　 _,,...,,_　　　　　_,,..,,_　 　 l;;;//　　　　　奴らに効果的な人質は
　　　　　　 　ﾞl ヾ;l 　:'ｨﾃﾍ9ﾝﾐ　　 ,: ',ｼﾋ9ﾝ､　　l;//　　　　　 侍女か桂の小娘以外に居なかろう？」
　　　　　　　　`ｰll!　　 ｀''==ヲ'　　l:.:^''==彡'"　,!ﾘﾉ
　　　　　 　 　 　 ll　　　` '' "　　　l:.:.:` '' "　　,i;;l´
　　　　　　　　　　li,　　　　　,r　.:　:.ヽ､　　　 ,:,り
　　　　　　　　　　 t、　　　/ ﾞｰ､　,r 'ﾞヽ　　/,K′
　　　　　　　　　　　ゝ、　,:'　　　:~:　 　 }　// /ヽ、
　　　　　　　　　　　/{lヽ ,ィ＝=ﾆﾆ=＝,ﾉ,ノ7 /:.:.:.:ヾﾆヽ
　　　　　　　　 , ィ/:.:い ヽ ｀` ー一 ''"／,/,/:.:.:.:.:.:.:.:ｿ }- ､、
　　　　　　　 /　/:.:.:.:ヽヽ `' ー‐ -- '"／／:.:.:.:.:.:.:／ /　　 ｀ 丶､
　　　　　,, - {　 ヾ:.:.:.:.ヽ丶　　　　　／／:.:.:.:.:, -'" ,／　　　　　　 ｀ 丶 ､
　 ,, - ''"　　 丶､ ｀` ーゝ､ヽ.,＿,,ｨ"ェくユ- ''"　, ｨ"



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／i､,,-ーフ,､__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 iヽ／i/::::／∠_::::::::::::::｀＞__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 |::ヽ:/:／／/::::::／::＞::::::::::::ゝ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |ヾ::V:::/:,彡ｿﾊﾍ;;;;;::::￣´＼:ト
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　γ升/`"ﾍL__,,､__ﾍ　/｀二ニ:::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 !/≧　`"''i斤┬,ｒ､ く;;:::ニ＿＼::＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 'fj_)　　　ヾ┴ ′　　ミ::::::::::::＼
　　　「―――へいへい」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/フ　　　　　　　 　 　 ﾐ>＝-::ﾍ一
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 〈 ヽ　　　　　　　　　　γ´ヾラﾍ
　　　（人質、人質、か。　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ',　 ､ｰ'""'､ 　 　　　ソノ/::/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　', 　` ｰ　′ 　 　∧≦／
　　　 効果的だが、怒らせちゃなんねぇ奴が　　　　　　　　　i′　　　　　　　´　l:l::::|
　　　 相手に含まれてなけりゃ良いけどな） 　　　　　　　　　|:lヽ __　　　　　　　l:l:l:::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　L!　　 i　　　　_.,､ｰl !」ゞ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｲt､,,,､､i´: : : : : : : : :＞ｰ-､_ ＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／￣＞ｰ--､,,､ｰ'´:.| i丁厂ﾍ__;, : : : :／: : : : :!√ヽ:｀:＼



これ以上付き合う気のない彼が会話を放棄して部屋を出れば、
397 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:11:12 ID:RPwbzUkv
八１３．
会議室の濁った空気に比べて廊下はまだ清涼に満ちていた。



＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
へへへへへへへへへへへへへへﾍﾍﾍﾍﾍﾍﾍﾍﾍﾍﾍ　　 |
|　|￣￣￣￣￣￣'|　|￣￣￣￣| |￣￣￣| |￣￣||￣|　　 |
|　|　　!l |! !　 l　| ! |　|i　　 |　!ｌ　| |　l　ｌ　!ｉ| |　 l i ||／.:.:.:.:.:＼
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|　|　 !l 　!　 　!　 | |　| !　 |　!　ｌ | |　|l　il |!| |／　　　　.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼
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朝からの断続的な雨はまた強く降り出しており、
見れば中庭の角にある大きな樫の木が、時折光る稲光に照らし出されている。
5 名前： ◆FrtuoSIf66 [sage] 投稿日： 10/10/30 21:12:24 ID:RPwbzUkv
八１４．
確かあれは、ローゼン王国独立の年に植えられた木だったか。
そう話してくれたアンデルセンも、気の良い仲間だったアレックスももう居ない。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　┏───────────────────────────┓

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　烏合の衆をかき集め、人質しか作戦がない国主かよ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　革命が聞いて呆れるぜ―――

| 　|!　!　　|　!|　　!l　|!　　!|　!　!l|!　!|　!　|　!l　|　!l　|!　|!l|　!　　|　┗───────────────────────────┛
　　!　!　 |　!|　 !　l　|!　 |!　!　| !　|!l　||! !　 |　!|　 !l　 |!　 |!　l| !　|!l　||! !　 |　!|　 !l　 |!　 |!　l| !　|!l
| !　!　|　!　|!l　|!　　＿/__/＿ //　　!l　|!　!　|　!　|!l　|!　!|　　|　!|!l　|!　!|　!!　!　|　!　|!l　|!l　|!　!|　!|
　|!　!　　|　!|　　 　　/　/　　　　　　　ー―――――――――――　　　　　|!　!　　|　!|　　!l　|!
!l　|!　!|　!|　!l　|!　　　 /　!　|!l　|!　!|　l　|　!|　!　!l|!　!|　!　|　!l　|　!l!l　|!　!|　!|　!l　|!　!　|　!　|!l　|!　!|
　|!　!　　|　!|　　!l　|!　　!|　!　!l|!　!|　!　|　!l　|　!l　|!　|!l|　!　　|　　|!　!　　|　!|　　!l　|!　　!|　!　!l|!　!|
!l　|!　!|　!|　!l　|!　!　|　!　|!l　|!　!|　l　|　!|　!　!l|!　!|　!　|　!l　|　!l!l　|!　!|　!|　!l　|!　!　|　!　|!l　|!　!|
l　!　| !　 l |　!　!　|　!|　| !　! ゛ゞ.ヾ　　ゞヾゞ;ゞゞヾ　　ゞ;,.ゞ　:,,　　ゞ;ゞヾ;;　!|　　l|!　!|　! 　|!　 ! |　 !|
　　　l　　| !　 ! 　　　.ヾ　　ゞヾゞ;ゞゞヾ　　ゞ;,.ゞ　:,,ヾゞヾ;ゞゞノヾゞ:ヾヾ　　゛ゞ.ヾ　　|　!l　|　!l　|!　!| |
!　!　 |　!|　!　!　ヾゞ..ヾ　.ゞ,'ヾ　　ゞヾゞヾ　,,.ゞヾ::ゞヾ　　.ゞ,'ヾ　ゞヾゞ　;ゞヽ,.ゞ:,,ヾゞヾ　!|　　 ! |　 !|
　　l　　| !　 ! ゛ゞ.ヾ　　ゞヾゞ;ゞゞヾ　　ゞ;,.ゞ　:,,ヾゞヾ;ゞゞノヾゞ:ヾヾ　　゛ゞ.ヾ　　　　ゞヾゞ;　!| |　　l
　|!　 ! |　　.ゞヾゞ;ゞ　　ヾ;ゞゞゞ;ゞ:ヾゞ゛;ヾ;ゞ　　,',;:ヾゞ;ゞヾ.:　　　ゞヾ.,　.ゞヾゞ;ゞ　　ヾ;ゞゞ　|!　 ! |　 !|
!　!　　.,　.ゞヾゞ;ゞ　　ヾ;ゞゞゞ;ゞ:ヾゞ゛;ヾ;ゞ　　,',;:ゞヾゞ;ゞヾ.:　　　　ヾ:ヾゞヾ.,　.ゞヾゞ;ゞ　ヾ;ゞゞ; l　|　!　l
　!|　!| ゛ゞ.ヾゞヾヽ,.ゞ:,,ヾゞヾ;ゞゞヽ,.ゞ:,　　,ヾゞヾ;ゞゞ＼ヾゞ:　ヾヾ゛　ゞ.ヾゞヾヽ,.ゞ:,,ヾゞヾ;ゞゞノ　|　!　l
| !　! ゛ゞ.ヾ　　ゞヾゞ;ゞゞヾ　　ゞ;,.ゞ　:,,ヾゞヾ;ゞゞノヾゞ:ヾヾ　　゛ゞ.ヾ　　　　ゞヾゞ;ゞゞヾ　　ゞ;ゞヾ;;　!|
!　!　ヾ.,　.ゞヾゞ;ゞ　　ヾ;ゞゞゞ;ゞ:ヾゞ゛;ヾ;ゞ　　,',;:ゞヾゞ;ゞヾ.:　　　　ヾ:ヾゞヾ.,　.ゞヾゞ;ゞ　　　ヾ;ゞゞ; l　|
　|　!| 　 ゞヾ ゞヾ 　.ゞ;ゞヾ;ゞゞ; ,,ゞ.ヾ＼＼　ゞヾ:ゞヾ　ﾉﾉ　ゞヾ　.　ゞヾ ゞヾ 　.ゞ;ゞヾ;ゞゞ;ゞ　ヾ;ゞゞ　!
!　!　 |　!|　ヾゞ..ヾ　.ゞ,'ヾ　　ゞヾゞヾ　,,.ゞヾ::ゞヾゞ:ヾ　ゞ:.y.ﾉヾゞ..ヾ　.ゞ,'ヾ　ゞヾゞ　;ゞヽ,.ゞ:,,ヾゞヾ　!|
| !　!　|　!　|!l　ゞヾゞ___＼＼ ゞ ゞヾゞ;ゞゞヾゞ;ゞiiiiii;;;;::::: ｲ.ヾゞ,　.,;　ゞヾゞ___//　;ゞゞゞ;ゞゞヾゞ;　　|　!|
　|!　!　　|　!| 　!l ;ゞヾゞ;ゞヾ;ゞゞヾ　　　　ゞ;ゞ　iiiiii;;;;;::::: :)_/ヽ,.ゞ:,,ゞヾゞ__;::/　ゞヾゞ;ゞヾ;ゞ　 |!　　!| !|!
!l　|!　!|　!|　!l　|!　!　|　!　|!l　|!　!|　lゞヾゞ;ゞ ヽ;iiiiii;;;;::::: :|;:/　　　ヾ;ゞゞ;ゞ　ヾゞ　!　|　!　|!l　|!l　|!　 l|!



どうしてこうなったのか、と思わずには居られないランサーはしかし、
すぐその考えを振り払った。

歯車はとっくに狂っていたに違いない。
ただそれが、こちら向きに回っていなかっただけの事だ。

そう考えてもう一つため息を吐いた彼の脳裏に、
何故だかやらない夫の背中が思い返された―――

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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━……


7 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:13:11 ID:RPwbzUkv
八１５．
━━━━━━━━━━……
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

午後七時四十九分―――

激しい雨音にもかき消されぬ透き通った歌声が、
カーディナル南にある宿屋のとある一室に響いていた。



┏──────────────────────────────────────────────┓

　　　Ah　La La La La La♪

┗──────────────────────────────────────────────┛



＼　丶　ヾ　丶ｖ ＼　ヽ　＼丶丶、　丶＼　ヾ　丶丶＼、 ヽ　＼　＼.　丶
ヾ丶＼　、＼ヽ　、丶＼　＼ヽ丶丶　＼　＼　＼　ヾ 丶　ヽ丶　丶　＼ヾ
　ヽ　、ヾ　、ゞ　ヾ丶 ゝ丶＼ヽ　ゝヽ丶丶＼　＼　丶　＼　丶　ヾ丶＼　＼
　ヽ ＼　丶＼丶ヽ＼　丶　丶　ヽ ヾ　ゞ　丶　丶丶　＼丶　ヽ　＼　＼丶＼
＼　丶　ヾ　丶ｖ ＼　ヽ　＼＼　＼.　丶　丶丶　＼丶　ヽ　＼　＼丶. .、 ヽ
ヾ丶＼　、＼ヽ　、丶＼　＼丶丶　丶丶　＼丶　ヽ　＼　＼丶／,,;;;;／　,,,...
　ヽ　、ヾ　、ゞ　ヾ丶 ゝ丶＼　ゝヽ丶ヽ　ゝヽ　、ゞ　ヾ丶 ゝ／,,,;;;／　 册册
　ヽ ＼　丶＼丶ヽ＼　丶　　ヽ ヾ　ゞ＼ヽ　ゝヽ丶丶　、／___／　 _,.　册册
＼　丶　＼　ヾ　丶丶＼、 丶丶ヽ ＼ 　＼丶　ヽ　＼／ ／| _,.-r'| |　册册
ヾ丶＼　丶　ヽ丶　丶　＼ヾ　＼ヽ ＼　　＼丶　ヽ／ ／　,..| | | | | |　册册
　ヽ　、ヾ　＼　丶　ヾ丶＼　＼　＼ ヽ＼＼丶ヽ/'~T.,.／|川 j_l,.r-'¨ 卅卅i_,.
　ヽ ＼　　＼丶　ヽ　＼　＼ヾ丶　丶丶丶　　 /,.T¨il i l l l川__,,... -‐ ￢¨
＼　丶　＼　ヾ　丶丶＼、 ヽ　＼　＼.　　　　,l:lj|川_'¨三.ノ____,,,,,.....................
,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ＼　ｌ j|:il|‐/jlllllllllll/|＼　＼　ヾ 　＼
__,,.. ．-‐　'''""~" ．;",:;".;．.;．,:;"．;．"．;"=='-i,jl| jj| ﾛｺ 　 | ﾛｺﾖ ∠二∠ 」
．;．;"．;．;";"．;．;"．．;．;";．;．,:　;．;"．　三三 ' -f, 　.i田l|　　　　 |目田|
．;．;"．;．;"．;．;"．;． ,:. ;;: ;．;"．;．;"．;．;"．二二二' -|.,_.j|　　　　 |l.l.l l.l.|
"．; ;"．;．;" "．;．．; ．;"．;．．;"．;．;"．　-------------' - .,_ 　j! ﾆ二|
．;．;"．;．;";"．;．;",:．;．;"．;．　　;．;"．;．-------------------'' - .,_j|
"．; ;"．;．;"．;．;"．;．．;"．;．;"．; ;"．;．;　_______________________________________￢


8 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:14:11 ID:RPwbzUkv
八１６．



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　...................................
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:::::::::::::::　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 :::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:::::::::::::::　　　　　La　La　La　LaLaLaLa♪　　　　　　 :::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:::::::::::::::　　　　　　Ru　Ah　Ah♪　　　　　　　　　　　　　　　:::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:::::::::::::::　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 :::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:::::::::::::::　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 :::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　...................................



┏─────────────────┓

　　　歌………？

　　　まるで天使の歌声だ、
　　　俺は………死んだのか―――

┗─────────────────┛


暗闇の中から浮かび上がろうとする意識が声を聞きつけて、
ここはあの世か、と思った瞬間に―――
9 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:15:12 ID:RPwbzUkv
八１７．
まぶたが開き、薄暗い部屋と見慣れぬ天井を映し出した。




　　＼　　　　　　γ´￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
　　　 ＼　　　　　l　　　………あの世にしちゃぁ、安っぽい部屋………だな………？
. 　 　 　 ＼　　　ヽ、＿＿＿　　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
.　　　　　　 ＼　　　　　　　　∨
　 　　　　 　 　＼ 　 r'´￣￣￣￣￣￣｀､::　 　 ＿＿＿
　　　l} ､:: 　 　 　 ＼ﾍ,_____＿∧＿∧,＿_/::＿_.|　　　　 |＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　　　|l　 ＼::　 　 　 | | 　　　（　´_ゝ`）　.,l､: : 　|　[],　　.|: [ニ]:::::
　　　|l'-,､イ＼:　　　| |,r'",´￣￣￣￣｀ヽl::::　　ﾍ￣￣,/:::(_＿)::
　　　|l　　´ヽ,ノ: 　　| ,'　　　　　 :::::... 　..::ll::　　　 ￣￣::::::::::::::::
　　　|l　　　 | :|　 　 | |　 　　 　 :::::::... . .:::|l::
　　　|l.,＼＼| :|　 　 | |　　 　 　 ::::....　 ..:::|l::
　　　|l　　　 | :|　 　 | |　 　 　　　　　　　 |l::
　　　|l＿＿,,| :|　 　 | |　 　 　 　 　｀`' 　 |l::
　　　|l￣｀~~| :|　 　 | |　''"´　 　 　　　　 |l::
　　　|l　　　 | :|　 　 | ＼,'´＿___..:::::_`l__,ｲ::
　　　|l　　　 | :|　 　 |　　`´::::::::::::::::::::::`´::
　　　|l ＼＼[]:| 　 　|
　　　|l　　 ｨ'´~ヽ　　|
　　　|l-''´ヽ,／:: 　　|
　　　|l 　／:: 　 　　 |
　　　l}ィ:: 　　　 　 　|
　　　　　　　 　　　　|
　　　　　　　 　　　　|
　　　　　　　 　　　　|

10 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:16:12 ID:RPwbzUkv
八１８．
同時に歌声が止み、失礼な呟きを聞きつけた部屋の借り主が振り返る。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿　　,､へ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _.._ 　,､　'": : : : : : : : Y/､i: :＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i:::〆　: : : : : : : : : : : く〈: : l: : : :ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／: : : : : : : : : : : : : :ヽ: : : : ::l: : : : ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 / /: : i: : : : : : : : : : : : : l､: : : : l: : : : : :',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /:./: : :.lヽ: : lヽ: : : : : : : : L:.:.: : : l: : : : : : ,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 /:./l: : : :l..._＼V゛＼: : : : : :l:::::::ヽ: :ｌ: : : : : : i
　　　「あ！　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　 　 l:./: l: : : :L.. 　ヽ　/l::＼: : :.l::::::::::l: ∧: : : : : :l
　　　 やっと気がついたんですね！」　　　　　　　 　 　 　 　 /l/: : ',: : :.| l::ヽ　　　ヽ-'ヽ: ト::::／/ 　',: : : : : l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 /:.ｌ': : : ヽ: :.l l`" ､　　　　　|:.l: : :／　　　i: : : : : l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/: : : : : : : 〉: ｌ ヽ　 -‐'　　 ｨ:./Tく.　 　　　l: : : : : l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /: : : : : : :./ `.j 　　＞ -ｒ '゛l/_.ハヽj　　　　l: : : : : l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 / : : : : : : /　　　　　`rr┴ '"::::::::/>--､　　　l: : : : : l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /: : : : : : :/　　　_.. r '"Hヽ:::::::::::::/ 　 　 ヽ. 　 l: : : : : l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /: : : : : : :/　 r'"　　ﾚ'/^/::ヽ:::::／　　　　　i.　　l: : : : : l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /: : : : : : /　　l　 ／:::/ ./::::::::::Y　 i.　　　　/　 　 !: : : : :.l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /: : : : : :./　　 j /:::::::/ ./::::::::::::::l.　 l.　01 ,'　　　　 !: : : : :.l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / : : : : : /　　 ﾉ l:::::,:'　/::::::::::::::::::',.　ｌ　　　 l　　　　 l: : : : : l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /: : : : : :/　　./;;:ｿ::/　./::::::::::::::::::::::ヽr‐---‐ﾄ,　　　　l: : : : : l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /: : : : : :/ 　 /;;;:/::/　./::::::::::::::::::::::::::::|:;;;;;;;;;;;;;;ﾘ　　　　 l: : : : : l
12 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:17:12 ID:RPwbzUkv
八１９．



　＼　　　　　　　γ´￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
　　　 ＼　　　　　l　　　君は？天使か？
. 　 　 　 ＼　　　ヽ、＿＿＿　　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
.　　　　　　 ＼　　　　　　　　∨
　 　　　　 　 　＼ 　 r'´￣￣￣￣￣￣｀､::　 　 ＿＿＿
　　　l} ､:: 　 　 　 ＼ﾍ,_____＿∧＿∧,＿_/::＿_.|　　　　 |＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　　　|l　 ＼::　 　 　 | | 　　　（　´_ゝ`）　.,l､: : 　|　[],　　.|: [ニ]:::::
　　　|l'-,､イ＼:　　　| |,r'",´￣￣￣￣｀ヽl::::　　ﾍ￣￣,/:::(_＿)::
　　　|l　　´ヽ,ノ: 　　| ,'　　　　　 :::::... 　..::ll::　　　 ￣￣::::::::::::::::
　　　|l　　　 | :|　 　 | |　 　　 　 :::::::... . .:::|l::
　　　|l.,＼＼| :|　 　 | |　　 　 　 ::::....　 ..:::|l::
　　　|l　　　 | :|　 　 | |　 　 　　　　　　　 |l::
　　　|l＿＿,,| :|　 　 | |　 　 　 　 　｀`' 　 |l::
　　　|l￣｀~~| :|　 　 | |　''"´　 　 　　　　 |l::
　　　|l　　　 | :|　 　 | ＼,'´＿___..:::::_`l__,ｲ::
　　　|l　　　 | :|　 　 |　　`´::::::::::::::::::::::`´::
　　　|l ＼＼[]:| 　 　|
　　　|l　　 ｨ'´~ヽ　　|
　　　|l-''´ヽ,／:: 　　|
　　　|l 　／:: 　 　　 |
　　　l}ィ:: 　　　 　 　|
　　　　　　　 　　　　|
　　　　　　　 　　　　|
　　　　　　　 　　　　|



未だ焦点の合わない瞳を声の主に向けて、
ぼんやりする頭で見た事はない伝説上の存在かと問えば、
照れた表情で笑った少女は紛れもない人間ですよ、と頭を掻いた。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／rﾍ::>'"　￣￣　 `　<::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l〈 ／: : : : : : : : : : : : : : ＼-l:::l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l::/: : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ:::l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿_/_L: : : :/l: : :／ヽ : :l: : : :.i: : l: : ',
　　「アハハハ！　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／ ､_､＿,.ィ゛: : :/ l／ 　 　',: lヽ : : ｌ: :l: : : ',
　　確かに『呪歌』（※）の大本は、　　　　　　　　　　　　r-/ 、>┴‐- ､li: : :./　　　　　　 ',l　ヽ: l: :ﾄ, : : :
　　天使達が歌う『聖歌』（※）だとは　　　　　　　　　　 l:::＼__, ＜T￣li: : /　__　　　　　__　　',:l: /:l : : :
　　言われていますが」　　　　　　　　　　　　　　　　　　l:::::::::::::::::::::>: :li: /l　 ⌒　　 　　⌒　　ﾘ:/:ﾉ: : : :
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l::::::::::::::::::/: : :ヽl: ﾄ､/// ＿＿　///　/: : : : : : :
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l:::::::::::::::/､_: : : : : l　＞.､ヽ＿ﾉ　　 ィ: : : : : : : : :
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　!::::::::::::::::::::::` ‐r┴'"⌒>'T　r＜＿ l: : : : : : : : :
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ:::::::::::::::::::::::::ｌ　　　/: l.ｲ`く/: :./　 ヽ: : : : : : :
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ` -r─---┴r-./: : : :l-〈: : :.}　　 l: : : : : : : :
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　 l: : : : : : : :ｌ 〈: : : : :l　l: : /__　 /: : : : : : : :
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　 　 　 l: : : : : : : :ｌ　 ',: : : ｌ　l: :/:::::::Y |: : : : : : : :
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l: : : : : : : :.l　　i: : :l.　l:/:::::::::/　! : : : : : : :



※『呪歌』：特定の音を特定の音階で歌う事で、神聖魔法に近い効果を得られる歌。
　　　　　　 回復や扇動、平和、眠り、鎮魂などがあると言う。
　
※『聖歌』：天界に住まうという天使達の歌で、
　　　　　　 呪歌の元になったと言われている。

14 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:18:11 ID:RPwbzUkv
八２０．



　　　　　　　　　　　　　＞'"{
　　　　　　　　　　　 ／:::/:::::ヾニﾆ､ヽ　 ノﾌ≠==､
　　　　　　　　 　 ／::::::/::::;;;;:::＼, ┤「￣ ｀¨" - ,,ｻ
　　　　　　　　 ／:::::::::/::::::;;;;;L,,-｀ | .|:::::::::::::::::::::::::::｀ ｰ､
.　 　 　 　 　, '...::::::::::/::::::::;;;;i_,, --'"ノ:::::.....　　　....:::::::::::ヽ
. 　 　 　 　 /...::::::::／:::::::;;;;;l-‐‐''"./=/::::＼::......,ｨ:::::::::::::::::ヽ
　　　　　　/.:::::::／:::::::;;;;;;;;;{.,:´￣¨.∀:::::::::::｀〆//i l､:::::::::::::i、
　　　　　 /..:::::/:::::::::::;;;;;;;;;l;;|「i「ｌ.lヽi ;::::ト､∠_.//　lトi､::::::::..l:l　　　　「あまり得意ではないのですが、
.　　　　 /::::::::/:::::::::::;;;;;;;;;;;l;;|ﾋ'ﾋi.ゝ'l:::::/｀弋少´　.ﾉ　i｀::::::::l::l　　　　ヒマさえあれば『回復の歌』を歌っていたので
.　　 　 / ::::::/:::::::::::;;;::::;;;;;;|ゞ;ｰ―‐´i::ｲ　　　　　 弋ﾒl;;;;;;:::/l:l　　　　だいぶ楽になったと思います。
　　 　 i　:　/:::::.......;;::::::;;;;;;|　ヽ、;;;;;;;l::::l　 　　__ `　 /;;;;;;;:/ l:l
. 　 　 |: ::　i ..::::::::::;;:::::::;;;;;;|　／;;;;;;;ｿ|:::l　　（ヽ ﾉ　,.l;;;;;;;;;/　.|　　　　身体は動かせますか？
　　　 |:: : :l;; ::::::::::;;::::::::;;;;;;;;| ´ ７;;;;;i . l::l、　 ｀ , イ;;l;;;;;／　　　　　　 名前は言えますか？」
.　 　 l::::...l;;;::. :::::::;;:::::::::;;;;;;;l　 /;;;;;;;}　.l:l/｀;;;　:|ゞﾒ/i;;/
　　　l::::::l;;;::::::.. :::;;::::::::;;;;;;;;;|‐'ｰ‐ｿ--､ll＝､ヽノ|///iヽ、
.　　 l::::::l;;;:::::....:::::;;::::::;;,/´ ￣￣/¨＼＼　ﾍ　V l l　ﾄ､.l
　　 l::::::l;;;::::::........;:::::::;;/　　　　/　 　 ＼＼ﾍ　} 　 　 }.l
.　　l::::::l;;;;;::::::...:::::::::::/　　　　 i　　　　　＼｀　{ 　 　 { |
　　l:::::::;;;;;:::::::::::::::::::::i　　　　　l　　　　 　 . : ´＼. 　 l |
.　 l::::::;;;;;;;;::::::::::::::::::::l　　　　　l　　　 . : ´　 　　 ＼.ﾉ ヽ



随分酷い怪我でしたが、と手のひらを組み合わせた少女に言われ、
15 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:19:12 ID:RPwbzUkv
八２１．
だんだんと記憶がはっきりしてきた兄者は自分がどういう状況だったかを思い返し、
力の入らない身体を何とか起こして全身に視線を向ける。



　　　　,r,t＝=r=＝┐　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .|
　　　　i1 | ＿j|＿ | i|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　!
　　　　| | | ￣||￣,| !|　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ｜
　　　　|_|」＝＝＝i_i」　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∧＿∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　（　´_ゝ`）　　　　「確か、俺は深手を負って………」
　　　　　　　　　　　　　　　　　/ 　　　　 ヽ
　　　　　　　　　　 ／｢|,､ -─|　|　　　 |　|─-, 　 ＿. 　,　　,／|
　　　　　 　　　,／|!／　　　　|　| 　 　 ゝ__⊃　 /　　　　 ／|:: ||
　　　　　　　　 | ||/　　　　　　|　| 　 /⌒ヽ⌒ヽ､､＿,　　|:::: i: ||
　　　　　　　　 | |!、＿＿＿ と .u）ゝ'_λ　ヾ　 ヽナ--- .|:::::／|
　　　　　　　　 | |＿＿＿＿＿＿＿＿（＿_） ＿）!＿＿二_]. '┘
　　　　　　　　 |_|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ||,_j|　 ,



驚いた事に、背中や肩口に受けた刀傷が塞がっているではないか。
まだ赤黒い跡は残っているものの、どうやら動かす事に支障は無いようだ。



　　　　　　　　　　　　　　 ,　-――-　､ _ _／ヽ
　　　　　　　　／｀==┐／: : : : : : : : : : : : : : : : │
　　　　　　　/::::::::ﾄ､/}　　　: : : : : : : : : : : : : : : : !-.-.
　　　　　　 /::::::::ｋ'ノﾉ:　. : : : : . . . : : : : : /: :/: : : :｀: :＜
　　　　　　/::::::::::::仄｢ｉ. : : : : : : :.／: : : :,:/: :∧: :ｉ: : . .＼:｀
　　　　　 /:::::::::::::/ﾑ_i|,. : : : : : / : : : ／ /: /　 ',: |: : /: : ヽ、　　　　「驚きましたよ？
　　　　　/　:::::/｢`ト|Ｎl_:.｀: : /: :-∠＿/_:/　　 |: |: : :/: : :　　　　　　 いきなり血まみれの人が窓から
　　　　 ,'.:: : :　:.}［II)!i } |/ﾘﾚ',ｨｒそド"´　ﾚ ｨチxV:.!:.V}　　　　　　　　飛び込んで来るんだもん。
　　　　ｉ.: : : .//ﾊ.｣__乂!:.:.! 〈. ﾄzリ　　　　 ﾄzﾘ }:!::Ｎリヽ
　　　　!: : : : .::|:.! |」」./:.:.ｉ　: :｀¨´　　　 ,　｀　: : {:从　}: ヽ　　　　　　 治療師も神官も呼ばないでくれって、
　　　　l: : : : : .:!　　 |/ .:.込、　　　　　　　　　/:: |: : : : : :|　　　　　　 それだけ言って気絶しちゃうし」
　　　　|: : : : : .:|　 　　　　　 ヽ、　　r つ　,. く:.:.:!| : : : : : |
　　　　|: : : : : .:|　　　　　　　 　 ミ　 ､　＜　 　　| : : : : : |
　　　　|: : : : : : ! 　　　　‐‐‐‐く＿〉　￣7公ｲ￣ヽ :.: : : : |
　　　　|: : : : : : |　　.／ヽ;:::::::　::::　::::::〉 〈::::::_} ､　} : : : : :|
　　　　|: : : : : : | 　/　　ヽ;::::::::::　　:ヽl 　l_／:|､　/: : : : : |
　　　　|: : : : : : | ./　　　　i　:::::::::　　:l　　l:::::::l 　| : : : : : |



相手が大丈夫なようなので、良く命があった物ですと呆れた少女は
大抵の事には物怖じしない肝の太さと好奇心旺盛さ、
それから今までの経験やこの町で仕入れた情報を元に、
彼の言うとおりにして匿ってやっていたのだ。
16 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:20:14 ID:RPwbzUkv
八２２．
それがどれだけの迷惑と、どれだけの恩かを計り知れない彼は
陽動作戦の時までの情報を考え身分を隠して名乗ったが、



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ∧＿∧
　　　「済まない、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 （ ´_ゝ`）
　　　 随分と迷惑をかけたようだ。　　　　　　　　　　　　　/⌒|＼||
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / 　　￣/|
　　　 俺は兄者＝流石、　　　　　　　　　　　　 　　　　. / 　/　　￣|
　　　 第い……いや、この町の南に住んでいる」　　/ 　/|　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　~ヽ. 　 　 　|



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿　　,､へ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _.._ 　,､　'": : : : : : : : Y/､i: :＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i:::〆　: : : : : : : : : : : く〈: : l: : : :ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／: : : : : : : : : : : : : :ヽ: : : : ::l: : : : ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 / /: : i: : : : : : : : : : : : : l､: : : : l: : : : : :',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /:./: : :.lヽ: : lヽ: : : : : : : : L:.:.: : : l: : : : : : ,
　　　「私はミク、ミク＝初音。　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 /:./l: : : :l..._＼V゛＼: : : : : :l:::::::ヽ: :ｌ: : : : : : i
　　　 しがない旅の詩人です。　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 l:./: l: : : :L.. 　ヽ　/l::＼: : :.l::::::::::l: ∧: : : : : :l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 /l/: : ',: : :.| l::ヽ　　　ヽ-'ヽ: ト::::／/ 　',: : : : : l
　　　隠さなくても良いですよ。　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 /:.ｌ': : : ヽ: :.l l`" ､　　　　　|:.l: : :／　　　i: : : : : l
　　　 第一騎士団の騎士さんですよね？ 　 　 　 　 　 　 　 /: : : : : : : 〉: ｌ ヽ　 -‐'　　 ｨ:./Tく.　 　　　l: : : : : l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /: : : : : : :./ `.j 　　＞ -ｒ '゛l/_.ハヽj　　　　l: : : : : l
　　　正規の装備をしていましたし、　　　　　　　　　　　 　 / : : : : : : /　　　　　`rr┴ '"::::::::/>--､　　　l: : : : : l
　　　追っ手は柄の悪い連中でしたから」　　　　　　 　 　 /: : : : : : :/　　　_.. r '"Hヽ:::::::::::::/ 　 　 ヽ. 　 l: : : : : l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /: : : : : : :/　 r'"　　ﾚ'/^/::ヽ:::::／　　　　　i.　　l: : : : : l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /: : : : : : /　　l　 ／:::/ ./::::::::::Y　 i.　　　　/　 　 !: : : : :.l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /: : : : : :./　　 j /:::::::/ ./::::::::::::::l.　 l.　01 ,'　　　　 !: : : : :.l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / : : : : : /　　 ﾉ l:::::,:'　/::::::::::::::::::',.　ｌ　　　 l　　　　 l: : : : : l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /: : : : : :/　　./;;:ｿ::/　./::::::::::::::::::::::ヽr‐---‐ﾄ,　　　　l: : : : : l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /: : : : : :/ 　 /;;;:/::/　./::::::::::::::::::::::::::::|:;;;;;;;;;;;;;;ﾘ　　　　 l: : : : : l



それより多くの―――
この国の大臣が革命を起こした事、
第一騎士団が潜伏している事、
王女がすでに帰還し、かつ大臣打倒を狙っている事などを聞きつけている
ミクは大丈夫ですよと首を振った。

17 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:21:19 ID:RPwbzUkv
八２３．
現状は分からないが、宿に居る詩人にまで情報が出回るほど
状況が変動し時間が経っているようだ。

それで追っ手があった事を思い出し、どうなったかを問うたが、



　　　　　 　 ∧＿∧
　　　　　　 （ ´_ゝ`）　　　　「そうだ！
　　　　　　/⌒|＼||　　　　　あいつ等は！？」
　　　　　 / 　　￣/|
　　　　. / 　/　　￣|
　　　　/ 　/|　　　　|
　　　　　~ヽ. 　 　 　|



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ／ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　 　 ┌,, 、 . . : : :￣: : : 〈〃,４、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,|.{{／, : : : : : : : : : : ∨ : : ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　 / V:.:/l.: : :l: :ﾄ､: : : : : : '. : : : : ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/.: ﾑ: |-',:.: :|ゝ‐ﾐ ､|: `iー'. : : : : : :'
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　 ′: : l.:|ｨｘ＼| |rl 　 |: : !　 | : : : : : : :',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. 　 　 : : : : :l.:',J　　 `′　|: :,′｜: : : : : : : '.
　　　「上手くごまかしました。　　　　　　　　 　 　 　 　 |: : : : :', |　　 _.　　　|:/ァ ´| : : : : : : : :|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |: : : : : i!ゝ　. __., 　 f¨´　　| : : : : : : : :|
　　　 あれから十日程経っていますが、 　 　 　 　 　 |: : : : :┗┿__xヘ,_xヘ.＿ _| : : : : : : : :|
　　　 その後は一度も調べに来ていませんし　　　　 |: : : : : ,'´　ﾏ､_∧　ﾊ／/　 ｀', : : : : : :|
　　　 諦めたんだと思います」　　　 　 　 　 　 　 　 　 |: : : : :.{　,. -', 　 |　|　 /‐ ､　.}.: : : : : :|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |: : : : : ∨　 ∧　|　| ./　　 ∨. : : : : :｜
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l: : : : : : .',　 　 ヽ!　!/ 　 　 ′.: : : : : :|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |: : : : : : :.|　　　　∨　　　 ！.: : : : : : :|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 | : : : : : :｜　 　 　 ',　 　 　 ',.: : : : : : :|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |: : : : :.／|　　 ,.　-‐',－､　　| : : : : : : |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |: : : ／　 ', ／ ,.　-‐ト 、＼ ﾄ､ : : : : : !
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |: : : ＞　._｛∠ | ,　　}　 ＼ ヽ<--,､: :｜
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |: ／　　　　／ V_.ｨ,从.ﾙ'‐｀ﾞヽ｀´__〉.: !



職業柄か口の回転は天下一品、上手く煙に巻いた彼女はしれっと
安全である事を答える。
18 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:22:12 ID:RPwbzUkv
八２４．
だが重要なのは安全よりもその時間だった。

一体どれほど眠りこけていたんだ、と焦った兄者は部屋の隅に置かれている
自分の鎧や旋棍を見やるも、手入れをしてくれたのか血の跡などは残っていない。



　　　　　　　　　人
　　 　 ∧＿∧　　て
　　　 （；´_ゝ`） 　そ　　「と、十日程って！？
　　　/⌒|＼||　　　　　　 それじゃあ今日は一体、何月何日だ！？」
　　 / 　　￣/|
　. / 　/　　￣|
　/ 　/|　　　　|
　　~ヽ. 　 　 　|



計算する余裕もない彼に尋ねられ、微笑みながら答えたミクの言うとおり―――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＿　　_,..;;-;;v─-､//ヽヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　//||／:::::_::;: ::::::::::::⌒＼| |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　| |/:::::::;/::ヾ:::::へ::::::::ヽ:::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::ヽ;;::::::/:::::::::::::::::::::::ヽ、;;:ヽ:::!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／::::/:/|::'=-|::::::/__ヽ:::;;:::i.＼;::::!::i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::;:::/ i|Oj !|:::/',=、 i::::/,=、!:/ﾚ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,′::::i:::/ 　!＝´|:/ ﾋ!〕　i:/ ﾋ!〕ﾚ :::!
　　　「不死鳥の月、五日です。　 　　　 !:::::::::::::::!　　＼∥!;　 　　 　,　　! :::::!
　　　 そろそろ―――」　　　　　　　　　i:::::::::::::::::! 　 　 丶::::..､　 ー　／i:::::::::!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|:::::::::::::::::!　　　　　_;;;! ｀ －i.._　 i:::::::::!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　!::::::::::::::::::!　　　　/丶-─‐v-丶_!:::::::::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 !::::::|:::::::::::|　　,.-‐＼＿＿/ハ_ノ! ヽ::::::!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　|:::::::::i:::::::::::! , ′　 ヽ : : : : :|　|: : :ヽ !::::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 |:::::::::i::::::::::i l 　 　 ,|:: : : : : :|　|: : : ::ヽ:::::!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　 　 !:::::::::!:::::::::| l　 　 iﾉ、: : : : :|　|: : : : ::!:::::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |::::::::::!::::::::! !‐-‐ |:: : : : : : :|　|: : : :,′::::!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　 !::::::::::!::::::::ヽ:::::::::!ヽ: : : : : :|　|: : : :!:::::::::!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　!::::::::::!::::::::::ヽ::::::!　!: : : : : |　|: : : !::::::::::|


19 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:23:12 ID:RPwbzUkv
八２５．
┏──────────────────────────────────────────────┓

　　　二十時になる頃ですね。

┗──────────────────────────────────────────────┛



:;:;:;:;:;:;:..‐:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.ﾉ.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;
;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:_..‐´:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;...‐′.;.;.;.;.;.;|.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;
;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:_..r‐'´:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;...‐'´.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;
;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:_..-―‐''''ゝ､､:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.__,,,,......--'".;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;
｀ﾞ''‐--............-‐'''´ ...:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:￣￣ﾞ^''''''|－――‐''"｀`''‐‐---......,,___.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:
: : : : : : : : : : : : : : : : ''‐......__.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:_....----'｀￣''ｰ ､,,i_.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＿..
- ､,,_: : : : : : : : : : : : : : i: : .. ｀"''''ー-|-......,,_|＿＿___,,.i.|..-‐''￣"　i　　　　　　　　|　　￣￣￣￣￣|
　　　`iー-i---―――‐''"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　　　　　i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｺﾞﾛｺﾞﾛｺﾞﾛｺﾞﾛ……


　　　　　!　　　　　　　!　　　　　　　！　　！
:　　!　　　!　　！　　　i　!:　l　　　!　　 |　　!　!！:!　!!
　　　!　　　　　　　!　　|　　　　　！　　！
　　　!　:l　　　　　　　∧!　:　！!　　! !　　　　:　　！
　!　　　！　!:　!　　! ﾉ..λ!　　!　　　　|!　　　　!|　!　!　!
:　　!　　　!　　！　 /…λ!:　l　　　!　 |　　　!　! |！:!　!!
　　　　!　　　|　　　====､、　　　！　|　！! !　|！!　:
!　　　　:l　　!|　:　 |.|IIII|.|ｌ！　!:　!　!　　!!　!　!　　!　!　!　!
　　　! | |! ！|!　|: /∴∴ヾ､ |　!:|!　|! | |! !　　！　|　　! |!:
:　　!　　　!　！ |l,i,i,i,i,i,i,i,i,i,iili;,　　　ｺﾞｰﾝ…ｺﾞｰﾝ…ｺﾞｰﾝ…ｺﾞｰﾝ…
!　:l　　!!　:　　　_|I I I I I I_|;}､　　　　ｺﾞｰﾝ…ｺﾞｰﾝ…ｺﾞｰﾝ…ｺﾞｰﾝ…
:　..!　! !　!|　!:　| |γ⌒ヽ| |ll| !！　|　! |!　　:|! !！　|！　！　!!
:　　!　　　|!　！| |,.!､,__,ﾉ.| |ll|　!　　　!　!！:!　!!　|！ |!！ !！
!　:l　　!!　|　！!i''i;;:::;;:::;;:::;i'il|'！!:　!　!　　!!　!　|!　　!　!　!　!
! | |! !！!　::　!　=========､|! |　 |! !　　　　！|　|　! |!:|! !！
！|　|!　!|::　 　 | |'i'i'i'i'i'i'i'| |ll|!！ !! | ! 　!！　! |　　! :| :　 !！
　|:！:　！　!| : | |;|,|,|,|,|,|,| |ll|!！　:　:　!　！!　!！　　| ！!
　!| 　 |！| 　 !| iill|　ｌ:!　!　|　!　!|　！　!! | ! !
...　　! | |! ！|!　| |'i'i'i'i'i'i'i'| |ll||　!:|!　|! | |! !　　！　|　　! |!:
:　　!　 　 !　！ | |;|,|,|,|,|,|,| |ll| |　!　　　!　!　　　！:!　!　!l　　!|　!
!　:l　　!!　:　 　 iill| |!！ !！　|　　　! !　:　！|　!！!
:　!　！! ! | !:!:　| |'i'i'i'i'i'i'i'| |ll| !！　|　! |!　　:|! !！　|！　！　!!
:　　!　　　|!　！| |;|,|,|,|,|,|,| |ll|　!　　　!　!！:!　!!　|！ |!！ !！
!　:l　　!:　|　！!ロⅢⅢⅢロ|i！!:　!　!　　!!　!　|!　　!　!　!　!
! | |! !！!.::;;　 　| |　| |　| :| |ll||! |　 |! !　　　　！|　|　! |!:|! !！
！|　|!　!|::　　　|_|　| |　|_;| |ll|!！ !! | ! 　!！　! |　　! :| :　 !！
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;;;;;！;;;;;;;; ！;;;;;;;;！;;; ;;;;;;;;;;;;！;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;！;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;



その夜最後のはずの、二十時を告げる鐘がカーディナル中に鳴り響いた。
20 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:24:12 ID:RPwbzUkv
八２６．



　　　　　　　　　　　　 ＿＿
　　　 　 　 　 　 　 ／　　　 ＼
　　　　　　　　　／　 　　 　 　 ＼.
　　　　　　　　　|　　　　　:　:::::::::::|
　　　　　　　　　|　　　　　:::::::::::::::|..　　　　　　　　　　　┏┓　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　┏┓
　　　　　　　　　|　　　　::::::::::::::::::|.　　　　　　　　　　　 ┗╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋┛
　　　　　　　　　|　　　::::::::::::::::::::::|ヽ..　　　　　　　　　　┏╋──────────────────────╋┓
　　　 　 　 　 　 ヽ　　　　　　 /_./|＼.　　　 　 　 　 　 ┃｜　　～　やらない夫は　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ｜┃
　　　 　 　 　 　 　 ＼＿＿,-‐´~/:::::::＼.　　　 　 　 　 ┃｜　　　　　　約束を守るようです　～　　　　 　 　 　 　 　 ｜┃
　　　　　　　　　 ∠＿＿＿ ,-‐'~.::::::::::::::)　　　　　　　 ┃｜　　　　　　　　　　　Episode．二人の騎士　　　 　 　 　 .｜┃
　 　 　 　 　 　 /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/　　　　　　 　 ┗╋──────────────────────╋┛
　　　 　 　 　 /::::＿＿::::::::::::::::.::::::::::::::/.　　　　　 　 　 ┏╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋┓
　　　　　　　/／:::::::::::::＼::::::::::::::::::::::/　　　　　　　　　 ┗┛　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　┗┛
　　　　　　　|:::::::::::::::::::::::::＼:::::::::::::::|
　　　　　　　ヽ:::::::::::::::::::::::::::＼::::::::::|
　　　　　　　　|＼::::::::::::::::.:::::::::＼:::::|._
　　　　　　　　 |::::＼＿::::::::::::::::::::＼|:＼　　　　　　　　　　　>:.-:.－:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∧i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀´:.:./
　　　　　　　　〈:::::::::::＼:::::::::::::::::::::::|::::::::|　　　　　　　　r‐ ':.´:.:.:.:.:.:.:.:.::./:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:|:::ヾ:.:.／::|:.:.:.:.:.:.:／
　　 　 　 　 　 /:::::::::::::::::::/:::::::::::::::::|::::::::＼　　　　　 /:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:..|:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:|￣｀''- ､;i:.:.:.:.:.:.:.:.￣ヽ
　　 　 　 　 　 /:::::::::.::::::::|::::::::::::::::::|:::::::::::｀|　　 　　/:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:ﾊ:.:.:.|　　　　　 |∧:.:.:.:.:|:.:.:.:.:}
　　　　　 　 　 |:::::::::::::::::::|::::::::::::::::::|:::::::::::::/、　　／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::V:.:.:./ -V:|_　　　　 //:::.:.:.:.:.:K:.:.:.:|
　 　 　 　 　 　 ＼:::::::::::::|::::＿＿／|＿／:::::ヽ／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∠V:./={´rvミ､=､_,, ,/　|:.:.:.:.:.:.ヾ:.:.:.|
　　　　　　　　　 　/＿_|￣＿＿__/::::::::::::::::::/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/´＼-;/￣ V￣ | |ｲ≧ミ=､/ 　 |:.:.:/:.:.:<´ヾ|
　 　 　 　 　　　　　ヽ:::::::￣|　　 |::/＼＿:::::::｀ '' 'ー -ァ:.:.:/:::r::j::./:::::::.　　　 | | 辷り｀ |}_　r-Vｿ:.:∧}
.＿＿＿＿＿＿＿＿ヽ／|/　　　＼＿__＼::::::::::::::: ／:.:.:.:ヽ::::::::::i:::::::::::　　　 ヽ廴_　 <ﾃ=/rァヾ:∧:.|
　 　 　 　　　　　　　|　|　|￣〉 〉 〉〉〉＿| 　＼::::::::::::フ/:.:.:.:.:.＼::::::::::::::::　　　　　￣ヾ=ﾉ　 <-ﾝ /:| .V
.￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ|￣::´::´´´ヽ　　　　＼:::::::´''- ､:.:.:.:./::::::::::::::::　　　　　　　　　　/=テヾ|
　　　　　 　　　. 　　　　　 ヽ:::::::::::::::::::ヽ　　　　　 ヽ:::::::::::　ヾ/:::::::＼::::::..　　　　　ー -　 　 /
　　　 　　　　　　　　　　　　 ヽ::::::::::::::::::::ヽ　　　　　ヽ::::::::　/:::::::::::::::::::::::::...　　　　 -　　.／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼./::::::::::::::::::::::＼:::::::::...　　 　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　　∧:::::::::::::::　　 /｀ 'ー - ' ´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ノ |　　　　　 }ヽ::::　　 　/_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣￣　 .|　　　　　　 ＼　　　{　ヽ


　 ─────━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
　　　　　　　　第八章　　嵐の中で
　 　 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━─────



21 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:25:12 ID:RPwbzUkv
八２７．
午後八時五分。

正午頃に他の拠点に散った三人の小隊長とジュン、マコト、アリアを送り出したやらない夫は、
夕暮れ前に隠れ家を出るとまず堀の周りを一周していた。



　　　　　　　　　　　　　　　＼＼_＿二二ヽ.　　　　　　.┣━ ┃┃　＼＼_.
　　　　　　　　　　　　　　　　 ~＼＼ 　　＼＼　　　　　┗━　　　 　　 ~＼＼
　　　　　　　.　　　　　　　　　　　＼＼_ 　　~ヽ＼　　　　╋┓　　　　　　　~＼＼ヽ＼__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　丶 ~＼＼　　＼＼　 　 ┃┃　　　　　　　　　~＼＼　＼＼
　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　~| | 　　　　ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　~| | 　　　ヽ
　 　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　|| 　　　　　　ヽ＼　　　　　　　　　　　　　　　|| 　　　　ヽ＼
　　　　　　　,;-、 ,;-、 ,;-、　, ー､　 ;-、 ,;-、　 　　　　　￣丶＼
　　　　　　　l'i;;l　l'i;;ｌ　l'i;;l 　i!;l⌒i|　l'i;;l　l'i;;l　　　　__　　 　ヽ＼
　　　　　　/l三三三三三三三三三三三三l`ー'";:;;|　 　　　　　　━┓┃┃
　　　　　 //i;:'';':;'';:;:'';':;'';:;:'';'i/:;'';;i/';:;''i/:':;;''i/ ;:;:;: :; "|　　　　　 　　 　┃
　　　　　//;:!'';':;'' 　　';':;'';:;iコ';':;'';:　;:'';[l] ;:' : ;';' ;' :;'';'|　　　　　　　 ━┛
　　　　 //'' |;':;'　;':;'';:;:;':;'';:;:;':;'';:;:　';:;;':;'';:;　　;':;'';: :i!　|　　　 ,,;=‐=,,..　　┏┓
　　　　 `i''　|　　　;':;'';　　:;:　';:;;':;'';:;　　;':;'';: ;;:;;' 　i!;:;;| 　　　|∩;:;:;|　　 ┗┛
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　　　　　|;':; |　;':;　　'';:;:　';:;;':;'';:;　　;':;'';: ;:i!i　 ,;':; '';i!;: | 　　i'''"￣~`'i　.　　　━┓┃┃
　　　　　|;':; |;':;'';:;:　';:;;':;';':;'';:;　　;':;'';:;　　';:;　　;':;'';: ;'　|　　|':;'[];:;[]' ;|..　　　　　┃
　　　,＿,|;:_,,|:__: ＿＿;　'';':;'';:;　[l];':;';':;'';:;　　';:;:i!　';:;;: ;|　　!':;'';:':　;'';:|.. . . 　 ━┛
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n_n_n_n_n_n_n_n_n_n_n_n_n_n_n_n_n_n_n_n_n_n_n_n_n_n_n_n_n_n_n_n_n_n_n_n
: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
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: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ



その後東側に潜伏し、城門の跳ね橋が上げられて定期巡回の兵が通り過ぎた後。

堀の側に立ち、降ったり止んだりを繰り返す雨に辟易しながら
稲光に浮かぶ塔に視線を向ける。
22 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:26:12 ID:RPwbzUkv
八２８．



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ､
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　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 i;;;;;;;;;;;;;;;;;,イ´:::ﾄ､;;;;ヽ　　 　 　 　 　 　 ／勹
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　　　　　　　　　　　　　　　　 i;;;;;;;|　|:::::::::::::::::::::｝;|　.,_　　　∠ヾ／
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 i;;;;;;;|　|:::::::::::::::::::::｝;|　　llコ~○／　　　　　（まだ居てくれるといいが………）
　　　　　　　　　　　　　　　　λ;;;;;;;ゞ＼ゝ:::::::::/У　／｀弋ll
　　　　　　　　　　　　　＿／/弋;;;;;;;ー;;;＝─ヤ彡ヽδ／ `弋l､　　　　
　　　　　　　　,r‐＜￣´､ヽ、 ｀ﾄ-＝==＝ﾊ| 　 ,` v-, ､__　　゜
　　　　　 　 /　　 　｀ ｰ-｀､ｰ_`､ ,!'｀`'┴┴ヘ,|／.-'_´.-' 　｀ヽ　　　　　 「………万能なるマナよ、
　　　　　　 l　　　　　　　　 r-ｨヽ.}ヽ､__　　_,.-ﾍ´‐'r-ｨ　　　　 |　　　　　大地の見えざる手を絶ち
　　　　 　 ﾉ 、　　　　 　 　ヽ_ｿ≠====:三===キヲ_ノ　　　　 |　　　　　我が背に翼を与えよ………フライト！」
　　　　 　 〉､ 丶､ _　 　 __,. ゝシ｀`ー---ll--‐‐ﾍゞ‐′ 　　 ,. ヽ、
　　　　 　 !、 `丶--'丶､＿_,ノ　 <＾＾>　 ||　　　　ヽ,--､ -‐',. イ´
.　　　　　 }､`_ー_'二フ７'､_}ヽｭ__,. Ⅴ　´￣｀丶､_,ｯ}:::ゝ-二._,.ｲ
.　　 　 　 〉､_ 二 -ｨ′八ヽ ﾞ´Y　　　　　　　　　　}ﾘ::::::::{'ｰ--〈
　　　　　/ｰ--‐''´::::::/;;;;ヽヽ､_>､　　,. -─‐- ､ノﾚi:::::::::ゝ､ーｲ
.　　　　 l::::::::::::::::::::::/;;;;;;;;;; 〉｝　　Ｙ´　　　　 　 ｌ　|;;|::::::::::::::￣l
　　　 　 ゝ:::::::::::::::ノ;;;;;;;;;;; く ﾉ　　 }　　　　 　 　{　l,;|::::::::::::::::丿
　　　 　,〉:::::::::::::::/;;;;;;;;;;;;/ ｀ヾ丶ゝ、　　　　　 ゝ'〈;;;ヽ､::::::::::`ヽ､
　　　　{:::::::::::::::::く;;;;;;;;;;;;;r'､　　　,.､`丶` =--=''´'´ ,..ヽ､|::::::::::::::::::|



ここから見る限り塔に明かりらしきものは存在しない、
本当に言葉は居るのだろうか。

アリアの話から状況が動いていては欲しくない彼は、
祈るように呪文を唱えると飛行の魔法を解き放った。
23 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:27:12 ID:RPwbzUkv
八２９．
おそらく城壁には見張りや伏兵が待機しているだろう、
すれすれを飛んで見つかっても良くない為、
重力の束縛を離れて浮かび上がると意識を真上へと向ける。

飛行の魔法は術者に依らず、最高速度は基本的に時速五十キロ程度となる、
大きな楕円を描くようにかなりの高度まで一度上がってから
城の敷地内へと入り込み、それから東の塔の天辺へと降り立つまでおよそ四十秒。


　　 ｀'-､.　 `'-、　 ｀'-、 ＼　　　.ヽ　ヽ　.ｌ　　 !　　.ｌ　|　 !　 .!　ｌ　　ｌ　　 ./ 　　/ 　 / 　 / 　 ...／　 ,／゛　 .,..‐″
｀'‐､、　 ｀''-､　 ＼　　 ＼　＼　　 .＼ .ヽ .ヽ　 .ｌ　　.! .|　.!　 l　,!　 /　　./ 　 ./ 　./ 　/ 　 . ／　,／゛　.,..ｒ'"　　,..
...,,　 ｀''-..、　｀''-､　ﾞ'-､　 `'､. ＼　　 ヽ, .ヽ ヽ　 ｌ　　! .l　,!　,! .l　 /　　/ 　 / 　/　／　 .／ . ／ 　_..‐'゛　._..-'″
　 ｀''ｰ､,、 ﾞ''-､、 .｀'-､. `'-、 .＼ ＼　　ヽ. ヽ.ヽ　.ｌ.　 !│ !　l　!　/　 ./ 　./ .／ ,./ 　,／. ／ . ,..ｒ'"　.,..-'″　　_.. ‐
- ..,_　　 ｀'''-､、｀'‐､、 ｀'-,,. ＼＿_､,＼.　 ＼.ヽヽ . ｌ　.l .! .!　! l　/　 / 　/ ／.／　／ ／　,..ｒ'" ._..-'″ . _.. -'"゛
　　 .｀'''ｰ ,,_　　｀''-..,,｀''-_. ／　　 ｀丶､　　　　__　　　　　　　　 　 _..-‐.:￣:.ヽ ,／／ﾞ.,..ｒ'"._..-'"　._..-‐″　　　　 .
～　,,,_　　　.｀''ｰ　,,.　/´　 　 　 　 　 l　 ＼／:.:.:｀:丶､　　　 _..-.:´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.`:..､ｒ'"_..-'"._,, -'"゛　　　 ._,,.. -''''"゛
　　　　.｀ﾞ'''ｰ　..,,、　/　　 　 l 　 　 　 ヽ':..　＼:.:.:.:.:.:.:.:.｀:.ｰ.:´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ヽ..-'"゛　 　_,,　ｰ'''"　　 ._,,,.. -
‘''''―- ..,,,,_,　　　｀ノ 　 　 　 ',　　　 .....:＼/_ ｀ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.;.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:}_,,　-''''"゛_,,,..　-ｰ''"´
　　　　　　　 ｀ﾞﾞ"'l　 　 ､　　　＼ ..:..:..:..:..:..ヽ ...:. ):.:.:.:.:.;.:':.:／￣￣＼:.:.:.:.:.:.:';.:.:.:.:.:.:.:.:.:! -ｰ''''"´.__,,,....　-―''''''ﾞﾞ￣゛
"'''''￢――-.... .. | 　 　 ＼ 　 　 ＼.:..:..:..:..ノ:..:./､:.:.:.;:':.:／ ヽ,,,)ii(,,,ノ＼.:.:.:.:.!:.:.:.:.:.:.:.:.（_.,,.-‐-.._,,,............---一ｰ''''''''''
＿＿＿＿＿＿ 〈 ヽ　　　 ＼　　 ..:.｀:-r:´..:..:/　|:.:.:.!:.:.|　 （●）（●）　|.:.:.:.:,':.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀ヽ＿＿＿＿＿＿
＿____,,,,,,,,,,,........... l 　 ＼　　　＼ .:..:._／,ゝ:_.:/　 |:.;:.l:.:.:|　　（__人__）　 |.:.:.:,':.:.:.:.:.:.:,:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.',
　　　　　　　　 ＿＼. 　 ＼　　 ..:｀フ,ﾉ/　　　　 ,':,':.l:_/|　 　｀ ⌒´　　}＼:.:,'.:.:.:.:.;.:':.:.:.:.:._:.:-.:.:._:.:.:.:.:.',―ｰ-..........,,,,＿_
..... --ｰ￢''^ﾞﾞ´＿..　-＼ ＿二ゝﾆ´´/　　　　　/;':／/ | 　 　　　　　 } ヽj:,':.:.:,:.'_: -‐ ´.,,, ｀ﾞﾞ'''―　..,,,_
　 _,,,..　-‐'''"´　_,,,　ｰ''{　　　_＼ _,/　　 　 　 /:./ ./_'ヽ　　　　　　/:　/ ｀j､'-､、 ｀''ｰ､,,.｀ﾞ''ｰ　,,,、　 . ´ﾞ"''―　..,,_,
｀　　 ._,,,　ｰ'''"_,,　‐''"゛ ゝ- .__￣　 　 　 　 ／:._:｀l'r:-.､ヽ　　　　　ﾉ､|,/| !'`ｰ'　 ﾉ､）､.　 ..｀''ｰ ､、 .｀ﾞ''ｰ　,,,、
-‐''"゛._.. -''''"　　 _.. ‐'"ノ:.:.:.:.:.｀:.ｰ:-.,-─ ' ￣　 ヽヽ.:､:ヽゝ-''ﾌ-─-' |　　｀´ ｀´-、 ｀''-､.　　　｀''ｰ .._　　 ｀ﾞ'''ｰ
. -'''"　　　 ._..-'"´._..-' i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／　　　　　　　 ゝ-r.:‐:.ｿﾆ二ノ｀￣ヽ ヽ　.＼ `-、 ＼ 　 ｀''-､,　　　　｀ﾞ'ｰ .._
　　 . _..-'"´　,..-'" ,..-'{.:.:.:.:.:.:.:.／　　　　　　　　　　 ヾﾞ／:.:.:.:/´ ｌ　　.ヽ ヽ.　 ＼　＼　 ＼ 　　 ﾞ''-..、　　　　 ｀ﾞ''-
.. -'"　 ._..-'"　,／´ . ／';.:.:.:.:./　　　　　　　　　　　　　　 ｀`'"　!　 .ｌ　　 ヽ .ヽ.　 ..＼　`-、 ｀'-､　　　｀''-､,
　 _..-'"　._／´　. ／ 　　' ;.:/ 　/ 　./ 　,/　　./　　/　 !　 !　　.!　 .ｌ,　　 .ヽ　＼　　.＼　 ＼.　 ｀'-、　　　 ｀'-､、
'"゛ . ,..-'´　 . ／　　　 ／　 ,./ 　 / 　 / 　　./　　 !　 .!　│　　l　　.ｌ　　　.ヽ　 ヽ　　 .＼　 ｀'-、　 ﾞ'-､　　　　 ｀''-
._／´　　 ／ 　　　 ,／　 .／　 ./ 　 ./ 　　 ./　　 lﾞ　 .|　 .,!　　 .!　　.ｌ　　　 .ヽ　 ＼　　　＼　 . ＼ 　　 ＼


24 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:28:12 ID:RPwbzUkv
八３０．



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　＼　/ ＼
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 |　　 （●）（●）|　　　 　 　 　 　 　 ／勹
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 |　　　（＿人_）│　　　　　　　　 ／ヾ／
　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 | 　 　 ｀ ⌒´　 |　　　　　　　 ／ヾ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　 　 　 　 |,,.._,.,_　　　∠ヾ／
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 .　 ヽ　　　　　　/　 ﾞ弋llコ~○／
　　　　　　　　　　　　　　　　　 / lヽ　 　　　/　　　 ／｀弋ll
　　　　　　　　　　　　　＿／ﾞヾヽﾉ_ヽ ￣ﾉ　,r‐;=／δ／ `弋l､　　　　　（………宮廷魔導師が居ないのが
　　　　　　　　,r‐＜￣´､ヽ、 ｀ﾄ-＝==＝ﾊ| 　 ,`v-, ､__　　゜　　　　　何よりも大きいな………）
　　　　　 　 /　　 　｀ ｰ-｀､ｰ_`､ ,!'｀`'┴┴ヘ,|／.-'_´.-' 　｀ヽ
　　　　　　 l　　　　　　　　 r-ｨヽ.}ヽ､__　　_,.-ﾍ´‐'r-ｨ　　　　 |
　　　　 　 ﾉ 、　　　　 　 　ヽ_ｿ≠====:三===キヲ_ノ　　　　 |
　　　　 　 〉､ 丶､ _　 　 __,. ゝシ｀`ー---ll--‐‐ﾍゞ‐′ 　　 ,. ヽ、
　　　　 　 !、 `丶--'丶､＿_,ノ　　<＾＾>　||　　　 ヽ,--､ -‐',. イ´
.　　　　　 }､`_ー_'二フ７'､_}ヽｭ__,.., Ⅴ　´￣｀丶､_,ｯ}:::ゝ-二._,.ｲ
.　　 　 　 〉､_ 二 -ｨ′八ヽ ﾞ´Y　　　　　　　　　　}ﾘ::::::::{'ｰ--〈
　　　　　/ｰ--‐''´::::::/;;;;;ヽヽ､_>､　　,. -─‐- ､ノﾚi:::::::::ゝ､ーｲ
.　　　　 l::::::::::::::::::::::/;;;;;;;;;;;;〉｝　　Ｙ´　　　　 　 ｌ　|;;|::::::::::::::￣l
　　　 　 ゝ:::::::::::::::ノ;;;;;;;;;;;;く ﾉ　　 }　　　　 　 　{　l;;|::::::::::::::::丿
　　　 　,〉:::::::::::::::/;;;;;;;;;;;;;/ ｀ヾ丶ゝ、　　　　　 ゝ'〈;ヽ､::::::::::`ヽ､
　　　　{:::::::::::::::::く;;;;;;;;;;;;r'､　　　,.､`丶` =--=''´'´ ,..ヽ､|::::::::::::::::::|



以前も触れたが理力魔法は術者による行使、魔符による行使に限らず、
必ず発動時や効果継続時には『マナ』の動きが起こり、
魔力のある者同士は実力により距離は大きく異なるもののそれを感知する事が出来る。

今のやらない夫のように理力魔法により簡単に侵入されては大事になるため、
その感知の為に常駐しているのが宮廷魔導師の役割の一つでもあるのだ。
25 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:29:11 ID:RPwbzUkv
八３１．
月が隠れている事もあり、辺りは深い闇に包まれている事から
こちらが見つかる事はないだろう。
逆に城壁の上には何カ所も篝火が焚かれており、向こうの様子がよく見える。



　　　 　　　　　 ／￣￣＼
　　　　 　　　／　_ノ　 ヽ､.＼
　 　 　 　 　 | 　（●）（●）　.|　　　　（随分弓兵が多いな。
　　　　　　 　!　　（__人__）　 |　　　　 脱出時のマスタング殿に、余程良いようにやられたかな？）
　 　 　 　 　 , っ　 ｀⌒´　　 |
　　　　　　 /　ミ）　　 　　　/
　　　　 　./　ノゝ　　　　　/
　　　　 　i　ﾚ'´　　　 　　ヽ
　　　 　　|　|／|　　　　 |　|



ぐるりと視線を巡らせてみれば、遠目にも弓兵が大勢いるのが分かる、
準備もなしに突入すれば伏兵となったかも知れないが―――



　|￣￣￣￣￣|￣|─‐､
　|　i⌒i　:i⌒i　|　 |￣＼＼
　|,_,|_[_|_:_|_]_|__|＿|　　　＼＼
　＿＿＿＿＿＿＿＿__／／|
　─────┐＿＿__／　 |
　　 , -‐- ､.　　｀´｀´｀´:|:　　 |
　γ　.l⌒l　ヽ .　 ＿ 　 |:　　 |＼
　 |＿_|＿|＿,| ;　i_|_l　.:;|:　　 ||　|
　 | γ⌒ヽ､. |　; i_|_l.;,　|:　　 |＼＼
　 i.［|￣|￣|］.!　　;　　　|:　　 |　 ＼＼
　 |X|─|─|X| ,　 ;　 　 |:　　 |　　　＼＼
　 |__|＿|＿|__|　. 　 , 　 |　 ／＼　　　 ＼＼ .
.／ニニ ニニ＼_＿＿__|／　　　＼. 　 　 ＼ﾞ────────‐,. 、
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ＼　　　 |￣￣￣￣￣￣￣￣|＼＼
　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ＼ 　 |.　[囗　 [囗　 [囗　 .|.　 ＼＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ＼,|＿＿＿＿＿＿＿＿| 　 　 ＼＼.
　　　　　　　∧∧　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ＼. 　 　 ＼＼
　　　　　 <丶｀∀´>／ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ＼. 　 　 ＼＼
　　　　　　 (　つ≫──l>　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼. 　 　 ＼
　　　　 ～（,,　　< 　＼/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ＼
　　　　　　 (,/´ヽ,)　　　　　　　　　∧∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　<丶｀∀´>／ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(　つ≫──l>
　　　　　　　　　　　　　　　　　～（,,　　< 　＼/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(,/´ヽ,)
　　　　 　 ∧∧
　　　　 <丶｀∀´>／ヽ
　　　　　 (　つ≫──l>
　　　 ～（,,　　< 　＼/
　　　　　 (,/´ヽ,)

26 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:30:12 ID:RPwbzUkv
八３２．
程度は大した事が無いようだ、あり合わせの兵ばかりらしい。

もし、弓技を使えるほどの戦力が混じっていたら少し作戦を修正する必要があっただろうが、
持っている弓はどれも廉価な大量生産品で、戦技を使うに物足りないだろう。



　　　 　 ∧∧ 　 　 　　　 　　∧∧ 　 　 　　　 　　∧∧ 　 　　　 　 　 ∧∧
　 　　<丶｀∀´>／ヽ 　 　 <丶｀∀´>／ヽ 　 　 <丶｀∀´>／ヽ 　 　 <丶｀∀´>／ヽ
　　　　(　 つ　≫―l>　　　 (　 つ　≫―l>　　　 (　 つ　≫―l>　　　 (　 つ　≫―l>
（Ｘ）三三三三三|￣|三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三|￣|三三三三三三（Ｘ）
（Ｘ）三三三三三|　 |三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三|　 |三三三三三三（Ｘ）
（Ｘ）三三三三三|　 |三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三|　 |三三三三三三（Ｘ）
（Ｘ）三三三三三|＿|三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三|＿|三三三三三三（Ｘ）



　　 ／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　 （ ●）（●）
.　|　　　　 （__人__）　　　　　（使えなさそうな伏兵ばかりだな………
　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　あんなんじゃ騎士達の鎧は貫けないだろうに）
.　 |　　　 　　　　 }
.　 ヽ　　　　　 　 }
　　 ヽ　　　　　ノ
　　　.>　　　 <
　　　|　　　　 |
　 　 |　　　　 |


当たり所が悪くなければ威嚇程度にしかならないだろう、と見て取った彼は次に、
四隅にいる正規の鎧を装備した者に注目した。
27 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:31:12 ID:RPwbzUkv
八３３．
彼らは皆、手に二枚から三枚のカードを確かめている。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿　_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,､-ｰ'""｀`　　ヽｰ--､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　　　　 　 　　ヽ　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ／´　　　　　　　　　　　 !　　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　へ r,､　　　　i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　｛　/　　　　　　　　　　 　 /　!　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　∨ /　　 　 　 　　　/ 　/　　!! 　 　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　//　　　　　　　 ﾉ ノ_／　　　ヾ、　　l
　 　 ｢ ￣￣￣￣￣￣￣￣|　　　　　　　 　 　 　 !　 　 　 　 　 ／"´ 　　　　 　　! 　　|
　 　 |　　　　　　　　　 　 　 |　　　　　　　　　　　　| 　　／　 ／　　 ! 　 　 　 　　 |　　 !
　 　 |　　　　　　　　　 　 　 |　　　　　　　　　　　　ﾘ!　/ ／´ 　 　 　 　 　 　 　 　 !　　l
　 　 |　　　　　　　　　 　 　 |　　　　　　　　　　　　 !i　| !　｀＞r､,,　　　 _,,r＜´　//ﾍ　!
　 　 |　　　　　　　　　 　 　 |　　　　　　　　　　　　 ヾ〉!i! 　＝rｧ ヽ　/ 　＝rｧ　 i i /　|
　 　 |　　　　　　　　　 　 　 |　　　　　　　　　　　　　 ! 1! 　 ｀￣ 　i 　　　￣´　 ! |ｿ　 !　　　　　┌──────────┐
　 　 |　　　　　　　　　 　 　 |　　　　　　　　　　　　　 ヽ! |　　　　　 | ′　　　　 ! ﾘ　　 ! 　 　 　 │　　第二騎士団員　　　...│
　 　 l　　 　 　 　 　 　 ,. -　|　　　　　　　　　　　　　　/∧　　　　､_＿,,　　　　ｿﾊ　| 　|　　　 　 │　　ギザワ＝ロワウ　 　 │
　 　 l.　　　　　,.　⌒／　丿:|　　　　　　　 　 　 　 　 //ﾑ｝ 　 ー-ｰ一-一 　 i:!ヽi! |　 |　　　 　 └──────────┘
　 　 l.　 _,.　 '´　 ／　 ／　 |　　　　　　　　　　　 　/ｲリ | ヽ　　 ｀ 二 ´　 　ﾉ |　il. |　 |
　　　￣|　　_,. ‐'´　 ,.ｲ￣￣　　　　　　　 　 　 　 ///ト! |　 ヽ_＿　　_＿／　/　.!∨　|
　　　　 |　　| /　　/ ,r'─､　　　　　　　　　　　　///　ヾi !　　　　 ￣/ 　 　 /　/　i:l　|
　 　 　 |　　ﾉ'　　/ '´ 　 / ￣}　　　　　　_＿､-┴┤　　　!　 　 　　 (　 　　/　/ 　 |ﾄｿ
.　　 　 j　　　　／　 　 /　　 j､　　　　　　　　　　　！　　　ヽｰ　-　─－一′/　　 !　ヽｰ-､､,,,,＿
　　　 /　　　　　　　　　　　 ハ〉、　　　　　　 　 　　! 　 　　　__＿＿＿___ 　 ′　　!　 ﾉ
　　　 ､　　 　 　 　 　 　 　 {｀ヽ}}　　　　　　　　ヽ　　!　　 /　　　　　　　 　 i　<ヾ〉/　/
.　　 　 ｀¨⌒丶､_　　　　 　 　 ﾉj　　　　　 　 　 　 　 ', 　/ 　 　 　 　 　 　　i　 `' /　/

28 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:32:12 ID:RPwbzUkv
八３３．
配置や状況からしておそらく魔符、しかも足止めや攻撃的な魔法など―――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,､-ｰ-､ヽ､ゝ､＼　ヽ　 
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ヾ､ト､,,__､ニフ　　　　　　　 `ヾi　|',　 i!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼ヽ　　　　　　　　　　　　　　ヾi :レﾉノ___ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　/￣￣￣/　　　　　　　ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　彡ミ＝ｰ
　　　　　　　　　　 　　　　　/　 　 　 /　　　　　　 　 　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　´￣ミ
　　　　　　 　　　 　　　　　/　 　 　 /　　　　　　　 ＼iヽ＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヾ､
　　　　　　　　 　　　　　 ./　 　_　 /　　　　　　　　　　ヽ､ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾍ
　　　　　　　　　　　　 　/＿__/ﾉ},/　　　　　　　　　　　　 ｀二ニ≡ｰ彡ノﾉ　 )）{　　　　　　　　　　　 ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　 / /　/　　　　　　　　　　　　　　　／彡ノﾉ）彡ﾉ　 ﾉ!ヾミ､､,,　　　　　　　　ミヘ､_
　　　　　　　　　　　　　 / /　/　　　　　　　　　　　　　　　ノﾉ／／〃 /／／ﾉ_,,､-ｰｰ)）　　 ﾍ　　　　ト（ゝ　 ,
　　　　　　　　　　　　／ /　/　　　　　　　　　　　　　　　__ノ///{　 ｛//／´¨　　 _.,,,､イ　　　|/こヽ　　ヽ｀￣
　　　　　　　　　　　ｆ´_／　/ _,. -‐－－‐ｧ 　　　　　　　　 ＼〃{　 （((　　 /7／＿　　ヾ､ 　 i!ﾍ )）　　ﾉ
　　　　　　　　　　　j´　 　 ¨´_,.. -‐ '''''''"　　　　　　　　　　 ｛{）ゞ≧ｔｒﾘ_／／´_,rｬｧ＞　 ）ﾉ　)_ン 　 /
　　　　　　　　　　 /　　 　 "ー`─- ､._　　　　　　　　　 　 　ｿヾﾍゝゞｧ メ　＜彡三ミ7 ク ノo;ｲ　　/
　　　　　　　　　 /　　 　 ｰ┬‐ ''''､- ,,,,,フ　　　　　　　　　　　　　 ｝　　|;　　　　　`ヾｿﾉ （/　′|i　 ｛､__
　　　　　　　　 /　　 　 　 ノ　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　 ノ'ﾍ　 i　　　　　　　`' 　 ヽ! 　 ﾘ!　ト￣　　　┌────────────┐
　　　　　　　</　　 　 　 /　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　', ヾ　　 _,　　　　　　　　　　ﾘ }｝　　　　 │　　第二騎士団員　　　　　　 .│
　　　　　　｢(|　　　　 ／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 ',`￣´ 　　　　 ／　　　＝ﾉ',ﾉ..　　　　│　　プレーター・クォイズ　　　 │
　　　　　_|　` ､　　 |＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∨ﾍ　　　　＜ 　 　 　 <クヽ. 　 　 　 └────────────┘
　　　　ﾊj　　　｀ｰ＜!　ヽ､　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　ヽ-ｰ ､´　　　　　 　 　<久ヽ
　　　/　＼　　　　　`　､)　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　∨　　　　　　　　 　//＼
　 　〈 　 　 `丶､　　　　/ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ハ　　　　　　　 　 ｀　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ノ
29 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:33:12 ID:RPwbzUkv
八３４．
二つ、三つの手を用意しているらしい。



　　　　　　　　　　　　　　　_ , ､- ー-､
　　　　　　　　　　　　　／´　　　　　　｀ヽ、
　　　　　　　　 　 ,､-''´　　　　　　　　　　 ヽ
　　　　　　　　　/　 ハ ﾍ ヽ　　　　　　　　　ヽ
　　　　　　 　 　{ i /　 ヽゝ＞ヘ＞一 　 　 　 }
　　　　　　　　　ﾘﾚ（ゝ、＜tr フ　ﾘ　/⌒ヽ　　!
　　　　　 　 　 　｀ヾfァ〉　　　　　 ヾｿ ソﾉ 　 ,'
　　 　 　 　 　 　 　 ! /　　　　／ 　 　 ノ　　/
　　　　　　　 　 　　 !ヾ　　　　　　　 ヽ 　　/
　　　　　　　　　　　 ヽに｀ゝ　　　　ノ ∨イ
　　　　　　　　　　　　 ',　`　　　 ＜　　 ∨ゝ、　　　　　　　＿＿
　　　　　　　　　　　　　!　　 ／　　/　 ／:::::::::｀ヽｰ-=＝二＿＿　　 　 ┌──────────┐
　　　　　　　　　　　　　｀￣ヽ　　 __／:::::::::::::::::/::::::::::::::::∠_＿. 　 　 　 │　　第二騎士団員　　　...│
　　　　　　　　　　　　　／∠=＝ﾍヽ::::::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::＞-　 　 │　　チャイ・チャー　　 　 .│
　　　　　　　_＿＿__,,ノ!;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ﾍ:ヽ::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::::／. 　 　 　 └──────────┘
　　　　　 /´二フ´:::::::::|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾍ::ヽ:<>/´￣:￣￣:￣:/
　　　 　 /:/　 /ー―::┤;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾍ:_:_／:::/:::7:::::::::::::::/
　 　 　 /''′ /:::::::::::::::::｀￣￣￣￣::´:::::::::::/i1/::::::::::::::/
　　　／　　　i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/:ｿ /::::::::::::::ﾉ



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _＿__,､-ｰ＝￢'''"￣｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　´＞　　　　　　　　 　 　 ＼
┌──────────┐　　　　　　　　　 ,､＜´　　　　　　　　 　 　 　 　 ヽ
│　　第二騎士団員　　　...│　　　　　　　　〃´　　　　　　　　　　　　　　 　 　 l
│　　リョクレイ・ロン　　......│　　　　　　　　/　　　　　　イﾘ　i　　　　　 　 　 　 ヽ
└──────────┘　　　　 　 　 /　　 ﾉﾘ八（　ｊ　ヾｊヾ､、　　　　　　　　ゝ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｛ {　　ﾉ　　　　　　　　ヾ､　　　 　 　 　 l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ! 　 {　 　 i 　　 __＿　ミγヽ　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ルﾘﾊﾆtｭ、　 zﾓｫｧ　　ｊ {〆}　　　　ﾉﾘ
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ｿ┤ 　 j　　　　　　 i　ﾄク　　　ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i　　 l__　　　 ノ　l　lｿ　　　 ｛
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾄ、 _＿ _, 　j 　 l　ｊ　　　　ヾｰ′
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 j:ﾍ　 ｰ 　 　 　 j 人　　　　ヽ､_＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヾ:',　　　　ノ　ﾑ'二∨　　　 　（´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ｰt＜　　_＿＿__∨　　 　 ｛
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「¨:|￣￣:::::::::::::::::::::｀i　　　　ヽ､、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ｲｌ:::⊥___::::::::::::::::::::::::::::l　　　　　　}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ｊ:ｿ´￣/¨i:::::::::::::::::::::／:::｀::ｰ----ム､､、,,,,__

30 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:34:12 ID:RPwbzUkv
八３５．
┏──────────────────────────────────────────────┓

　　　少し前の麻呂とリフ―――



　　　　　　　　　　　　　「;:丶、:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:_;:｝
　　　　　　　　　　　　　ﾄ､;:;:;:丶､:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:_;:;: --―;:''"´;:_」
　　　　　　　　　　　　　{::ﾄ､:;:;:;:;:;:｀ '' ー―――;:;: '' "´;:;:;:;:;:;:;:;:;:;_ ,.ィ彡!
　　　　　　　　　　　　　l::l　丶､:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:_,. -r=＝ﾆ二三三 }
　　　　　　　　　　　　　',:i r- ､、` ' ―――― '' "´ ,ｨ彡三三三三三/、
　　　　　　　　　　 　 　 || ヾ三)　　　 　 ,ィ三ﾐｦ　　｀丶三三三三三ん',　　　「やれば出来るでおじゃるなぁ～～？
　　　　　　　　　　 　 　 lj　　　　　　　　 ﾞ' ― '′　　 　 ヾ三三三ﾐ/　）}
　　　　　　　　　　　　　 | , --:.:、:..　　 .:.:.:.:..:.:...　　　　　　三三三ﾂ ） /　　　 あれだけの魔符と、この精霊球があれば
　　　　　　　　　　　　　 | fr‐t-､ヽ.　 .:.:. '",二ニ､、　　　　三三ｼ,rく /　　　　残党共がいくら束になろうとも
　　　　　　　　　　　　　 l 丶‐三' ﾉ　　 :ヾイ､弋::ノ`:.:.　 　 三ｼ r'‐' /　　　　 一瞬で消し炭になるであろう、ホッホッホ」
　　　　　　　　　　　　　 ',　ﾞ'ｰ-‐' ｲ: 　 : 丶三-‐'":.:.:..　 　 三! ,'　 /
　　　　　　　　　　　　 　 ',　　　　/.:　　　　　　　　　　　　　ﾐﾂ/ー'′
　　　　　　　　　　　　　　 ', 　 ,ｨ/ :　　　.:'^ヽ、..　　　　　　 jｿ,ト､
　　　　　　　　　　　　　 　 ',.:/.:.,{、:　　 .:　,ノ 丶:::..　 -､　　 ,ﾊ　 l、
　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　.i:, ヽ､__, イ　　　_｀ﾞヾ　 ﾉ 　 / ,l　 l:ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　 ,.ゝ､ト=､ェｪｪェ=テアヽ }　　　,/　 l　 l:.:(丶、
　　　　　　　　　　　　　　_r/ /:.｀i ヽヾェェシ／　　ﾞ'　　／ 　 ,'　,':.:.:｀ヾヽ
　　　　　　　 _,,. -‐ '' " ´l. { ｛:.:.:.:',　`.':==:'." 　 　 　 ／　　 /　/:.:.:.:.:.:.}　ト―--　,,＿
　　　一 '' "´　　　　 　　 ',ヽ丶:.:.:ヽ、　⌒　　　　,r'"　　　 /　/:.:.:.:.:.:.:ﾉ,ノ |　　　　　 ｀`丶、
　　　　　　　　　　　　　　 ヽ丶丶､:.:.ゝ､ ＿＿_,. ｲ　　　　 /　/:.:..:.:.:.,ｨｼ′ |
　　　　　　　　　　　　　　　 ｀丶､ ｀`"二ﾕ、_,.,＿＿＿＿/__,/;: -‐ '"　　／


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　ヽ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│　　　　　　　│
　　　「ロイが如何に対抗魔法を使おうとも、　　　　　　　　　へ- 　─ヾ 　│
　　　 これだけの多重攻撃からは逃れられまい！」　 　　 ≦ﾟ≧ﾐ:≦ﾟ≧ ∂　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｜　 し 丶　√ │││
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｜　ﾄ-＝ヽ　　│ ││
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　／　　│ │
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　ゝ──　／ノ　 丿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 （　＼＿＿　／　　　/│


┗──────────────────────────────────────────────┛

31 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:35:13 ID:RPwbzUkv
八３６．
防衛戦術としては基本であるし、単なる騎士団が攻城にあたれば
あっという間に壊滅する事となっただろう。

だが、麻呂達には不幸な事に―――

今夜攻め込むのは単なる騎士団ではない。
この状況を看破し、それ以上の手を用意した英雄候補の導く者達。
宮廷魔導師がおり、宮廷司祭がおり、正統なる旗の下に集った精鋭達だ。



　　　　　　　　 　 　 　 ￣　 　 ､
　 　 　 　 　 　 ´　　　　　 　 　 ＼
　　　　　／　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ
　 　 　 /　　　　　　　　　　　､＿　　ヽ
　　　　'　　　　　　　　　　　　　　 ｀　､ヽ
　　　 l　　　　　　　　　　　　　　,‐-,.._ ゞ　　　　　　（やはり魔符持ちも居る、か。
.　　　l　　　　　　　　　　　　　　l　弋心 l
.　 　 l　　　　　　　　　　　　　　冫.ー　く　　　　　　………だが真紅、恐れる事はない。
　　　l　　　　　　　　　　　　　　 l　　　　ﾉ!　　　　　君が王座に相応しい者なら―――）
　　　l　　　　　　　　　　　　　　 ｀ー‐ f ｒ'
　　　l　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾉ'
　　　!　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 /
　　 ,'　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /
￣　｀ー -　　　　　　　　　　 　 　 /
　　　　　　　 ｀　 ､　　　　　　　　/
:.:.:.:.:.:...　　　　　　　　､　 　 　 ／
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..　　　　　　.:.:ヽ _　´
ー-　:.:.:.:.:.:.:.:..　　　..:.:.:.:.:.:ヽ
　　　 ｀　､:.:.:.:.:.:.:...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
　　　　　　　､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼
　　　　　　　..:.｀:.:､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
　　　　　　..:.:.:.:.:.:.:.｀:.:､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./



┏──────────────────────────────────────────────┓

　　　―――その石が、必ず護ってくれる。

┗──────────────────────────────────────────────┛



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿__________
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_....n=―''ﾞﾞ￣￣￣￣￣￣"ﾞﾞ冖ﾍx.._
　　　　　　　　　　　　　　　　　　_..ｙ/'" 　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ヾ 、
　　　　　　　　　　　　　　　　 _ｨl'´　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヾl
　　　　　　　　　　　　　　　 丿 　　　　　　 _..r=宀宀宀=ｫ-.._　　　　　　　　　∥
　　　　　　　　　　　　　　　」’　　　　　,,nl'" 　　　　　　　　⌒ﾍx､　　　　　　　ll
　　　　　　　　　　　　　　　!　　　　 _ｨl'’　　　　　　　　　　　　　 ﾞﾍx､ 　　　_Ｊ'´
　　　　　　　　　　　　　　├　　　ノ'′　　　　　　　　　　　　　　　　 ｀''―'''"
　　　　　　　　　　　　　　├　 ∠’
　　　　　　　　　　　　　　│_/l′
　　　　　　　　　　　　　　　!l'
　　　　　　　　　　　　 　　├
　　　　　　　　　　　 　,ｒ'´:::::｀ヽ
　　　　　　　　　　　 /:::::::::::::::::::::ヽ,
　　　　　　　　　　　!::::::::::::::::::::::::::::|
　　　　　　　　　　　|::::::::::::::::::::::::::::|
　　　　　　　　　　　i::::::::::::::::::::::::::ﾉ
　　　　　　　　　　　 ヽ､＿____／



ならば打ち破れないはずがない、と―――
33 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:36:11 ID:RPwbzUkv
八３８．
今のところ、中庭の状況に予想外の戦力が含まれていない事を確認したやらない夫は
それで足下の塔に視線を向けた。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　 　　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　　 　 　　|　　　「……………」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　 　 　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　　　　　　}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　 ﾉ
　　　　　:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::　　 ヽ　　　　ノ
　　　　　:::::::::::::::::＿＿＿＿＿＿::::::::::::::::::::::::／　　　　　　＼::::
　　　　　:::::::::::::::┃|| || || | || || ||┃::::::::::::::::::::|　　　　　　　　 |::::::::::
　　　　　:::::::::::::::┃|| || || | || || ||┃::::::::::::::::::::| 　|.　　　　　 |　|::::::::::
　　　　　:::::::::::::::┃|| || || | || || ||┃::::::::::::::::::::|　 |　　　　　　|　|:::::::::
　　　　　::::::::::::::::::￣￣￣￣￣￣:::::::::::::::::::::::| 　| 　　　　　||　|::::::::
　　　　　:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::(_＿)　　 |　　 |__）::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　|　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　 | |　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　 | |　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（＿＿|（＿＿|



明かり取りの窓から中を覗いてみれば、
真っ暗な牢の中に誰かが座っているのが分かる。



　 　 　　　, -――-、
　 　　　／ 　　　　　＼
　　　 /::::::::::::::　　　　 ヽ　　　　　（居た！
　　 /::::::::::::::::::　　　　　ヽ　　　　　………良かった、無事みたいだ。
　 　|::::::::::::::::::::::　　　　/　　　　　 しかし―――）
　　 .|　　 　　　　　　　/
　 　 ＼ 　　　　　　 ／

34 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:37:12 ID:RPwbzUkv
八３９．



　....::.:|:: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: ::::: : : : :
　....::.:|:: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: ::: : :: : ::
　....::.:|: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :《》: :《》: : : : : : : : : : : : : : : :
　....::.:|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　《》　《》
　.....;::|　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ,.､t''T叮了丁丁Ti￢-､　　　　　　《》　《》
　.....;::|　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ,.<ヽ>‐ ´ ||￣||￣||｀＾''く,r｀>､　　　　《》　《》
　.....;::|　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 .,心>ｲ'__||＿||＿||＿||＿||__ヾk,. ﾍ　　　《》　《》
　.....:::|　　　;; : .　.　　　　,　;..　 　 　 ム,.//'￣||￣||￣||￣||￣||￣||;V‐''',　　 《》　《》
　.....;::|　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 |ﾆ:!;{_||＿||＿||＿||＿||＿||＿||_,lYﾆl　　 《》　.《》
　.....;::|　　　　　　　　;::. .　　　 　 　 ├'"!´||￣||￣||￣||￣||￣||￣||｀|''r┤ 　 《》　 《》
　.....:::|　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 |-ｰ||］|＿||＿||＿||＿||＿||＿||_,|ｰ-|　　 《》.　 《》
　.....:::|　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 |-ｰ|´||￣||￣||￣||￣||￣||￣||｀|ｰ-|　　 《》　　《》
　.....:::|　　　　　　　　 　 　 　 `　; 　 |-ｰ|_,||＿||＿||＿||＿||＿||＿||_,|ｰ-|　　 《》　　 《》┨
　.....:;:|.　` 　.　　.　　 　 　 　 ., 　 　 |-ｰ|´||￣||￣||￣||￣||￣||￣||［|ｰ-|　　 《》　　《》
　..::::::|　　　　　　　　　 　 　 .　;　'　 |-ｰ|_,||＿||＿||＿||＿||＿||＿||_,|ｰ-|　　 《》.　 《》
　.....;/|　 　 `;　　　　　　　 .　 _, ,..-‐|-ｰ|´||￣||￣||￣||￣||￣||￣||｀|ｰ-|　　 《》　 《》
　.....:l i.　　　 　 .,　　;..　.　._ "__,|..-‐'|-ｰ||］|＿||＿||＿||＿||＿||＿||_,|ｰ-|　　 《》　.《》
　.....;:ｌﾉ.　;　'　　＿,,..-ｰ.'"l_. ._ l,..-‐; |-ｰ|´||￣||￣||￣||￣||￣||￣||｀|ｰ-|　　 《》　《》



　　　　　　　　　　　　　　　,.ィ_:.:´￣.:.:｀.:ヽ
　　　　　　　　　　　　　／:.／.:.:.:.´.:.:.: z´.:.:.ヽ
　　　　　　　　 　 ＿／ :／:／／.:.:／.::ﾊ:i.:.:.:.ﾊ
　　　 　 ,.．--‐ '´ / .:./.;.:.:／/.:／.:;／ ﾉﾍ.i.:.:.:.l
　　　／ 　 　 　 ノ .:.:ｲ :i 〈,r 　ｊ//''' ／ヽ、j:l.:.:.|
　　/　　　　／.:.:.:／ :.| .:i .:|　;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; 刈.:/| 　　　「…………」
.　 i　　　／／:／ .:.／| :.ヽゞ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.,ｲ/.:/:/
　　＼ /://:;ｨ　:.:彡.: .:| : :.:|＼　 __｀ﾞ彡::/.:/ ;ﾍ
　　　　/: {.:ﾚ' .:／//　.:小:.:.ヽ∧入;;/.:/.:/.:/　 ',
　　　　 {:i {;' //|:.:/　　|　|!ミ8彡| |:.:./!.:/.:ﾘ　　 |
　　　　　ﾘ:ﾉ ｊ/ :l/　　 |　| .|b_| l| .|:/:.:./.:.|′　　|
　　　　　　　　 /　　　ｌ　|/　// | .|/／／　 　 　j
　　　　　　 　 /＿＿_| ⊥_ｰｰ|⊥_　　　　　　　 /
　　　　　　　ﾉ_ﾊﾊ__ハｌ_ｌ_ｌ.}/ヽｌ_ｌ_ｌ.}
　　　　　　　（､`ｰｰ､ｨ＿_}￣` 　　ﾉ
　　　　　　　　 `ｰ､､＿__/｀"''－‐"



床にぺたんと座り込み、俯いているのは髪の長い女性のようで
おそらく言葉に間違いないだろう。



　　　　　　／￣￣＼
　　　　 ／　　u　　ノ ＼
　　　　 |　　　 .u （ ●） |　　　　　（何か様子が変だ。
.　　　　 |　　　　 　（__人_）　　　　生気が感じられない………）
　　　　　|　　　　　 ｀ ⌒ﾉ
　　　　　 |　　　　　　 　}
　　　　　 ヽ　u 　　　　 }
　 　　　　 ヽ　　　　　ノ
　　　　　　ノ　　　　　＼
　 　　 ／´　　　　　　　　ヽ



だが、一分ほど観察しても身じろぎ一つしない彼女からは
生きている気配が殆ど感じられず、ただそこに置いてあるだけかのようだ。
35 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:38:14 ID:RPwbzUkv
八４０．
丹念に中の気配を探り、側に誰も居ない事を確認してから
小さく声を出すも―――



┏────────────────────┓

　　　………言葉さん………
　　　…………………言葉さん……………！

┗────────────────────┛


















足下五メートルに座ったままの彼女に反応は見られない―――



　　　　　　　　　　　　　　　,.ィ_:.:´￣.:.:｀.:ヽ
　　　　　　　　　　　　　／:.／.:.:.:.´.:.:.: z´.:.:.ヽ
　　　　　　　　 　 ＿／ :／:／／.:.:／.::ﾊ:i.:.:.:.ﾊ
　　　 　 ,.．--‐ '´ / .:./.;.:.:／/.:／.:;／ ﾉﾍ.i.:.:.:.l
　　　／ 　 　 　 ノ .:.:ｲ :i 〈,r 　ｊ//''' ／ヽ、j:l.:.:.|
　　/　　　　／.:.:.:／ :.| .:i .:|　;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; 刈.:/| 　　　「…………」
.　 i　　　／／:／ .:.／| :.ヽゞ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.,ｲ/.:/:/
　　＼ /://:;ｨ　:.:彡.: .:| : :.:|＼　 __｀ﾞ彡::/.:/ ;ﾍ
　　　　/: {.:ﾚ' .:／//　.:小:.:.ヽ∧入;;/.:/.:/.:/　 ',
　　　　 {:i {;' //|:.:/　　|　|!ミ8彡| |:.:./!.:/.:ﾘ　　 |
　　　　　ﾘ:ﾉ ｊ/ :l/　　 |　| .|b_| l| .|:/:.:./.:.|′　　|
　　　　　　　　 /　　　ｌ　|/　// | .|/／／　 　 　j
　　　　　　 　 /＿＿_| ⊥_ｰｰ|⊥_　　　　　　　 /
　　　　　　　ﾉ_ﾊﾊ__ハｌ_ｌ_ｌ.}/ヽｌ_ｌ_ｌ.}　　　ｸﾞｩ～
　　　　　　　（､`ｰｰ､ｨ＿_}￣` 　　ﾉ
　　　　　　　　 `ｰ､､＿__/｀"''－‐"



いや、微かに唸るような音が返ってきた。



　　 ／￣三＼
　／;;;;　_ノ 三 ＼
　|;;;;;;;　　 （ ○）（○）　　　（腹の音？）
.　|;;;;;　　　 （__人__）
　 |;;;　　　　｀ ⌒´ﾉ
.　 |;;;;　　　　　 　 }
.　 ヽ;;;　　　　 　 }
　　 ヽ;;;l　　　　ノ
　　　/　　　 く
　　　|　　　　 ＼
　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)
36 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:39:13 ID:RPwbzUkv
八４１．
とにかく生きている事は確認できたので鉄格子を斬り落とし、
狭い窓から中へと身を躍らせる。



＼＼
　. ＼＼
　　 ,. ＼＼从/
. 　 　 そ　 　て
　 　　 ゝ,　 　 そ
　　　　 "`/'^r 　＼
　　　 　 　 .　 　 ＼＼
.　　　　　　　　　 　 ＼＼
　　　　　 　 　 　 　 　 ＼＼
　　　　　　　　 　 　 　 　 ＼＼ｷﾝｯ
　　　　　　　　　　　 　 　 　 ＼＼
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ..＼＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ＼＼从/
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 そ　 　て
　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　 ゝ,　 　 そ
　　　　 　　　　　　　　　　　　　 　 　 "`/'^r .＼
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ＼＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ＼＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ＼＼



別に魔法は使わなかったが五メートル程度の高さ、
彼にとってはさしたる衝撃にもならなかった。



　　　　　　　　　　　　　　　　 　_＿＿//　/
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　　 ／　　 　＼./　 /
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ／　　　　　　 ＼/
　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 |　　　　　　　　　|
　　　　　 　 　 　 　 　 　 ｜　　　　　　　　|　/　　 /
　　　　　　　　　　　　　 　 |　　　　　　　　| // 　/　/
　　　　　　　 　／ ⌒ ＼ 　l　　　　 　　　|//　 /　//
　　　　 　 　／　　　　　 ＼｛＿　　　　_ノ__／ ⌒＼ 　 /
　 　 　 　 （_＿／⌒＼　　　　　　　　 ￣ 　 　　　　＼/
　　　 　 　　　　　　　　＼__,,　　 　　　　 　 ／⌒＼＿）
　　　　　　　　　　　　/⌒/　　　　　　　　/
　　　　　 　 　 　 　 / 　/　　　　　　　　/
　　　　　　 　　　　/　./　　　　　　　　/
　　　　 　 　 ,,-‐< 　/　　　　　　　　/
　　　　　　　(,＿＿/　　　／i___＿ノ
　　　　　　　　　　/　　　/
　　　 　 　　　　 /　　　/
　　　　　　　　 /　　　/　　　　ｽﾄｯ
　　 　 　 　 　 〉　　 Ｙ
　 　(　ヽ:　 ／ 　 　ｿ丿 ﾍ｀　;
　´ ＼.从_（__ ＿／)人／ ;｀
37 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:40:15 ID:RPwbzUkv
八４２．



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　 ,,　　、　　　　　　　ｌ
　　　　　　　　 ゝ_　　　 _/　 .. ＞..、　　　　　l
　　　　　　　　　　`''''''‐" 　_ __ ﾆ:＿丶　　 　 1
　　　　　　　/　、　　　　　　＾''''ー ､__　ゝ　　 │
　　　 / . ｌ 丿　　l'"! 、 、　'''-ｰ-､ ´　^ｰ-..､　.
　　　 |　」　|　　|　|| ! 　! ｌ　│　'　　 ,ｒ _..,,　ｆ.　　　　　「言葉さ………っ！」
　　　 `、　 '、　ゝ　ﾉ　/ l　..′ ,´　　|　l│l .ｉ
　　　　　　　｀- － ﾞ‐'′　 --"　　,ﾍ ∪ ﾉ l.
　　　 　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　´ /
　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　 ｀）
　　　　　　　　　　 f　　　　　　　 丿　　 ヽ/
　　　　　　　　　　入 ＿＿＿ -'　　　　　,′
　　　　　　　　　（　V ｖ 　　　 　"‐＿ -'′
　　　　　　　　　　''-二ﾆ -=　　`'`ソ　/
　　　　　　　　　　　 ´　‐‐;ｭ ｀' ､ノ　 /...
　　　　　　　　　　　　 　ニ　　　′　丿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 !.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 !.
　　　　 丶.._ 　　　　　　　　　　　　 /
　　　　　　　｀ﾞ　‐--- ＿＿＿＿-''
　　　　　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼


着地するなり言葉を振り返ったやらない夫は、その有様に目を剥いた。

焦点の合わない瞳、カサカサに乾いて土色の肌、痩けた頬、濁った声―――



　　　　　 / : : : : : : : : : : :/: : :| : : : : : : :/.:: 　 | :|　|: :|:: 　 　 　 　 |: : : : : : : : : : : :l
.　　　　 / : : : : : : : : : : :/: : : :| : : l : : :/.::　　│:|　|: :|::　　　 　 　 |: : :| : : : : : : : : l
　　　　/: : :/ : : : : : : : /: : : : :| : : i : :/.:: 　 　 ! :|　|: :|::　　　　　　 |: : :| : : : : : : : : l
.　 　 /: : ,ｲ : : : : : : : / : : :/: :| :._⊥/-─‐ 　 ! :l　.|: :| ──- .. 　 |:|: :l!: : :l : : : : : |
　　 /: :/ │: : : : ｌ : : !: : : :|:,.イ´.: l/.::::::::::　　/:/　 |: :|:::::::::::::...　｀メ |: :|!: : :l : : : : : |
　　,' : ,′ | : : : : ｌ : : |: : :.イ:/|: : :/-─＜ 　/:/　　|: :| ＞─‐--､｀下y'| : : l: : : : : :|　　　　「あ゛………？」
　 │: |　　| : : : : | : : |: : : :|:.:_,.ｨ≠≦三ﾐ ／'"　　 |: :l　 彡三≧ｪx |/ ヽ: : :l : : : : :|!
　 │: |　　| : : : : | : :│: : :l,ｲィ'::l|li|l|li|!:|　　　　　　| /　　 |::l|il||i|li:ヾ;､　| : : :| : : : : i:!
　 │: ｌ　　ｌ: :/: : :| : : l : : 〃 {:::::l|l|l|l|l|::| 　 　 　　 j,′ 　 |::l|l|l|l|l|::::}ヽゝ : : :l : : : :,ハ
　　|: :,′　∨: : : :l : : l : : : l: .∨:!!|l|ll!!::|　　 　 　 　 　 　 |:::!l!|l|l!!::/　/} : : /: : : :/ : :l
　　|: ′　 ∧ : : : |∨ l: : : :|: :',∨:::::::::::j_　　　　　　 　 　 {::::::::::::::/　// : :/| : : :/ :| : l
　　i,′　 /　ヽ : : | ∨ : : : |!.:ハ＞=≦三三　　　　 　 三≧==＜. //: : /: | : :/ : :| : |
　　　　／　 　| ＼| : ∨ : : ﾊ : :{三三三三　　　 三:.　　三三三三ムイ: : :| :/ : : :| : |
　　　　　　 　 | : |: : : :|＼: {＼乂三三三　　　　i!三三三三三三三/ :| : : :|/ : : : :| : |
　　　　　　 　 | : |: : : :| : :ヽ＼ ￣　　　 　　　　＿Ξ三三三三三,/| : |: : : : | : : : :| : |
　　　 　 　 　 | : | : : : |: : : :|｀ |lヽ、　 　 　 　 ´￣｀ 三三三三:,イ: :| : |: : : : | : : : :| : |
　　　 　 　 　 | : | : : : |: : : :| : |l |: |li:..、　　　 　 三三三三才il| :l : :| : |: : : : | : : : :| : |

38 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:41:12 ID:RPwbzUkv
八４３．
┏──────────────────────────────────────────────┓

　　　ごめ………さ………い………
　　　………だん……う…………ア…………………ス…………

┗──────────────────────────────────────────────┛



　　　　　　　　　　　　ヽ、＿ヽヽ　　-┼ー
　　　　　　　　　　　　 ／　　　　　　　ヽ、
　　　　　　　　　　　　（＿＿　　　 ヽ＿　　　つ


,／´　　　　　＿,　,,,,,,,,,,,､､、＼、､､､`丶、ヽ　　~　＼」　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼　ヽ　|;;ヽ　ヽ;;ヽ
　　　__,,,,,-―＝テ;;;;;;;;;;;;;;く~ ナ-､へ`　、ヾゝ、　　　 く＝=､_ `<～ー―,,--,,-,,,、＿_　ヽ　i　|;;;;ヽ　ヽ;;;ヽ
　　　　~;;;;;Σ~￣￣￣＾`ｰ-Ｘー-ﾉとヾ_ヽヽヾ;;;;ヽ ヽ　　＼　 ＼ヽ;:;:ヽ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;￣＾~;:ｉ､|;;;;;;ヽ　 ヾ;;i
　　 ｰ＜;;;;;Σ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./:.:.:.`ソ/;;;;Ｕメト､ヽヽヾ;;ヽ ヾ　　ヽ　　i　ヽ;:;:;:;:,:;:-ー-;:;:;:;:、;:;:;:;:;:;:;i　|;;;;;;;ヽ　 ヾ
　　　-ー―-` 丶 、　　/ 〃 / (い;;;;;;タ　　:.:.ヽヽヾ;;ヽ　ヾ　 ヽ　i　 ~´　　　　　　　　　`ヾ､;:;i　|;;;;;;;;;ヽ
　　　ヽ　ヾ＼、.ｰ、`ヽ l　 .:.:..くＫｰヽご＾　 :.:. 　＼ヽヾ;;ヽヾ;;ヽ ヽi　　　　　　　　　　　　　　　ヽヾ;;;;;;;;;;;ヽ
、　　　ヾヽ ヾ､ヽ　ミヽ　＼´´´`　　　　　　:.:.　　 　ヽ`､;;;;ヽヾヽヽi　　　(⌒　、　　　　　　　 　　ヾ;;;;;;;;;;;;;;
ヾヽ　　　ヾヽ ヾ:;;;ヽ ヽ　　ヽゝ　　　　　　　　　，　　　ヽ;;;;ヽ ヾヽ､i 　　 丶 　丶 　　　　　　　　　丶;;;;;;;;;;;
, ヾ丶、　　ヾ;;＼ヾ::;;＼＼,,,,`ヽ＼､　　　､-、 　 　　 `､ヾ;;＼ヾ;;i　;:;: 　　`　、　） 　　　　　　　　　ｉ;;;;;;;;;;
;;､ ヾ:;;＼＼　ヾ:;;;ヽヾ､:;;＼Ｙヽ）>ヾヽ、　　´　　　　　人ヾ;;ヽ ヾ;i !;:;:;:;:　 　　　　　　　　.　　　　　 ｉ;;;;;;;;;;
;;;;ヽ､ヾ:;;;＼＼ ＼:;;;＼ｲ::;;;＼ け子=ヵ　　:.:.　　　　　, ',;;;（;;;;;;;;;;;＼ `ヽ:;:;:;:;:;:;:　　　　　　　 　 　　　　,,i;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;丶:;;;;;;＼＼_ゝ,-､;;!ヽー`||;;`ｰ冫i. 　:.:.　 .,,---'-ー''┘ヘ､;;;;;;ヽゝヾ;:;:;:;;:;:;:;:;:,､　　　　　,,,,,- '''´i;;;;;;;;;;;;
::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,-、;;;;;;;;; { :;`i;;;;;;;;＼ヾい;;;'',ｙﾄ　:.:. /ﾍ　　,,　-‐ '　　　`''''-､;;;;;;ヾ;:;:;:;:;:;:;:;;:;:,.-ー''' 　　　　i;;;;;;;;;;;;;;
;;::;;;;;;;;;;;;;;;;{　!`i;;;;;/;:;＾　};;;;;;;;;;;;;;ヽミでｒ'':;:;,,,ク;:;:~￣　　.／´　　　　　　``＜￣￣￣　　　　　　　 　i;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;::;;;;;;;;;;;;|`'i　.};;;|:;:;:. ./;;;;;;;;;;,,,--―'L'''''''''´;:;:!＾;,,;;~〃　　／´　 ,、,,,、　　　　　　　　　　　　　　　/;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;::;;;;;;|:;:; いｲ:;:;:　i,,,,､／　　／~￣,,~ﾉ'　,,, 　 `''-:;;､く＿ ∠;:;:;:;:;:ヽ、＿＿, ＿＿,,,,,-――'''''´￣￣￣~
;;;;;;;;;;;;;;;::;;;ヽ:;:;:; ヽi;;;:　▽_ _ /lt;´-'´/＾~’／　　　　　　　　　　 ￣￣￣
-―---、;;;ヽ:;:;;: ｙ:;:;:;:;ゝ:;:;:;:;:;i:;:;:;:;:;i:;:;:/　　　　　　 ,,,,,,,,:;:;:;:;:;:;:,,,,,,,,
　　　　　`ヽ､ヽ:;:;:;:;ヽ:;:;:;ヽ:;:;:;:;i:;:;:;:; i:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,, ＿＿＿＿＿＿_
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣



ガクガクと揺れる瞳がやらない夫を捉え、しぼんだ唇から呟きが漏れた途端、
糸の切れた操り人形の様に床に倒れ込んでしまう。
39 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:42:13 ID:RPwbzUkv
八４４．
見れば鉄格子の側に冷え切ったスープと乾いたパンが置かれているが、
全く手を付けた様子がない。



　　　　　　　＿,,,,,;;;;;;;;::'''""゛゛'''::;;;;;;;;,,,,,＿
　　　　,,,ｆ;;",二ニ---ｰ'''""゛゛''':---ニ二,゛;;ｆ,,,_
　　　// ,,ｆ　;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ｆ,,　ｉﾞｉ
　　　|ヽヽ::ｆ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ｆ:r',r'
　　　|;;;,,` `=―--,,_;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:_,--―=` ,,;;;;|
　　　 |;;;;;,,,,　￣''――――――――''￣ . ,,;;;;;;;;|
　　　　|;;;;;;,,,,　　　　　　　,,,,,,,,,,,,,,,,　　　　,,,,,,,,;;;;;;;|　　　　　＿＿＿＿＿
　　　　ヽ;;;;;;;,,,,　　　　　　　,,,,,,,,,,　　　　,,,,,,,;;;;;;〃.　　　　 |:::: l:::::　　　　|
　,,ｒ-― """―--,,_＿＿＿＿＿＿_,,--―'''　―- ､ 　 ,,,,|:::: l::::::::.. . 　 |
　 ` ヽ ､　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,k"　＼''''└""＝＝＝＝＝＝
　　　　　`――――-------------――――"　　　　 ＼　　'''''''''''''''　 ＼



　　　　　　　 　 　 　 , ｎ　／￣￣＼ .ｎ
　　　　　 　　　　 .　/ / ｊ.´_ノ　 ヽ、u'l lヽ、
　　　　　 　　　　　/,ｲ /　（○）（○） .ｌ i i i
　　　　　 　 　 　 〈 .ｒ　{u　（__人__）　.i. } } 〉　　　　「まさか、しばらく何も口にしてないのか！？」
　　　　　　　　　　', ｉ. 　',　 　｀ ⌒´　/ 　 /
　　　　　　　　　　 .i　 　l.　　　　　　,'　 ./
　　　　　　　　　.　 ヽ､_.ｲ、.　　　　人　ﾉ
　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　 　〈_ノ ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　|　　　　　.／
　 　 　　　　　　　　　　　|　 　 . 　 |


40 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:43:12 ID:RPwbzUkv
八４５．
それで言葉が栄養失調、水分もここ二日ぐらい取っていないであろう状況だと
分かったやらない夫はすぐに霊薬を取り出したのだが。



　　　　 ／￣￣＼
　　　／u_ノ 　ヽ､_＼
　　　| ((●）) (（●）)|　　　　「言葉さん！
.　　　|　 （__人__)　　|　　　　 体力回復の霊薬を飲んでください！」
　　　 |ヽ　|!il|!|!|　/ .|
.　　　 |　　|ｪｪｪ|　 　}
.　　　 ヽu　　　　　 }
　　　　 ヽ　　　　 ノ
　　　　　/　　　 く　　　　　　〓
　　　 　 |　　　　 ＼　　 　 ｜ ｜
　　　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)｜ ｜
　　　　　　　　　　　　　　　　￣



　　　　　　　　 : : : :. :/　　　　　/ 　 ,ｲ: i　|　　　|｜　　≪
　　　　　　　　 |!: :. ://　　,' 　 ,' 　 / |　i　|　　　|｜ i　　 }}
　　　　　　 　 　 : : /,' 　　i: 　 i 　 /　| /| :! _ -ｰi─'Ti :| !勹}
　　　　　 　 　 : :i　i :　　|　　i: _厶‐ﾅ　i/　　,rｧ≠=≪| |
　　　　　 　 　 : :|　| i 　 |　イ´/___/ 　,′ 　 ｜ 　 .〉 | |　￣　　　　　「……………」
　　 　 　 　 　 : :|　| l　 　 　 jf''￣〈`　　 　 　 !＿_/　| |　 :}
　 　 　 　 　 　 !|　| 　 　＼,八 　　}　 　 　 　 　 　 ;, jﾉ| i/
　　　　　　　　　　i ヽ.　　　＼ゝイ´　　　､ 　　 '"'" 　 j/|
　　　　　　　　　　　　＼　　　＼　　　　　__ 　 　 ,,;;'' /|
　 　 　 　 　 　 　 ＼.　 |＼-=≦　 　 　 ´　　　 '" ｲ　| i　　　|
　　　 　 　 　 　 　 : :＼|　| 　　＼、 ;, 　 　 __..∠r┴-| i　　　|
　　　　　　　　　　　　: :|　|　　 |┴ミ＞'´￣ 　　 　 　_| |　　　ﾄ､
　　　　　　 　 　 　 　 _j : |i　　:|　／　　 　 _　-= ￣　| |　　　|　《
　 　 　 　 　 　 　 　 《　,ﾘ　　 ! |　　 　 ／　　　　 　 | |　　　|
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 | | 　 ／ 　 　　-=.ﾆ二|ﾉ　　　|　 ㍉


瞳孔も開いている彼女に反応が見られなくなってしまったので、
41 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:44:11 ID:RPwbzUkv
八４６．
緊急事態だ、と無理矢理に霊薬を口に流し込んだ。



　　　　　 　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　 　 ノし. u:_ノ｀ ,,＼.
　 　 　 　　 　　　/⌒`　 （ ◯）（Ｏ):
　　　　　 　 　 　.:| 　　j（ 　　（__人__）　　　　　「あー！
　　　　　　　　 　:|　　 ＾　　､｀ ⌒´ﾉ:　　　　　　もう、まだるっこしい！」
　　　　　　　　　　|　　u; 　　 　ﾞ⌒}:
　　　　　　　　　　ヽ 　 　　ﾟ　　" }:
　　　　　　 　　　　 ヽ　:j　　　 ノ:　ｉ |ｉ　|
　　　　　　　　　／⌒　 　 　 ヽ　 | ||　|　　|
　　　　　:: ／￣￣ヽ :: 　 　 　 ＼　|| 　 　 |i
　　　　:: （｢　　　 ｀rﾉ ::　　　　　　＼　　　||i
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　　　　　　　　　`　' ∵',"+',x' ；,'∵,'∴,'+,ヽ;','+'；,'∵,'∴, ∵ "
　　　　　　　　　　　　　　　　｀^　ﾞ　ﾞ　 ^　"



もちろん効果は現れて言葉は光に包まれたのだが―――

42 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:45:12 ID:RPwbzUkv
八４７．
回復するなりの冷たい声と、恨むような突き刺す視線。



　　|.:.:.i.:.::.:i　　/i.:.i　 i.:.:.:.:.:.:/ .//:　　　　|:|.|.:.:.:.:.:i.:.:.:.:|
　 .|.:.:.:i.:..:.:i.:.:._i_i:iｒ'~＾.i~:.::／ .//: '''''''ーｪ/. |.:.:.:.:.:i.:.:.:.:.|
　 |ヽ,:.i:.i:.:.iｒ'´i:::||::::ー::ｫト　 /'´: :ｒ:=‐-;/ `.|..:.:.:.://.:.i.:::|
　|.:.:.:ヽﾄ,i.:.:|.:.:|ｒ=(.f"::"j'ﾄ /::　　´ ｒ'f"ｦ:ｫ;;j|.:.:／/.:.:..i.:.::|
/.:i.:.:i.:.ヽ,ﾄ:.:.ヾ:i::::`''"~´:::　　　.:　''"`''-''::x ﾘ,ｨ:.:/.::i.:.::i.::.:.:ﾄ,　　　　　「………ちょっと、やらない夫君？
.:.:i.:.:i.:.:.::ﾄi`'ト､:.ﾐ､_　　　　　.:i　　　　 .ｒ''´;::'.|／:.:.i..:.:i.:.:.:.:i.:|　　　　　 何勝手な事してるんですか？
:.|.:.:i.:.:.:.:i.:.::＼ト'ﾄ=,,__　　　　　　　　　 ::"　:,'.:.:.:.:/.::.:i.:.i:.:.:.ﾄ,|
.|.:.:i.:.::.:.:i.:.:.::i.:.:´.ト､::::　　　'''　‐.''　　　　／.:.:.::/..:.:.:.i.:.:ｉ.:.:.:.:iヾ､　　　 私は何も食べたくなかったんですよ？」
.:.::.i.:.::..:.:i.:.:.:.:i.:.:.:.:i.:.`::::,_　　　　　　 , ｒ'´::i/.:.:./.:.::.:.:.i.:.:.:i.:.:.:.:i ヾ､
.:.:.:.i.:.:.:.:.:i.:.:.:.:i.:.:.:.:i.:/ー|`‐ ､__　ｒ ´.|＾`.V.:.:.:/.:.:.:.::..:i.:.:.:.:i.:.:.:.:i　ヾ,
.:.:.:.:i.:.:.:.:.:i.:.:.:.:i.:.:,,ｒ'´ .ｒ'´.:.:.:.:.:.:.:..:.:.:.:´'ｿ/.:./.:.:.:.:.:.:.::i.:.:.:.:.:i.:.:.:.:i　 ヾ､
.:.:.:.i:i.:.:.::.:.:i.::.:<´　　 .i.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:　_　 /.:.:/.:.:.:.:.:.:.::.i.:.:.:.:.:..::i.:.:.:.:i　 ヾ､
.:.:.:.i.:ｒi:.:.:.:.:.:i.:.:i　　　 i´~'　　　　/´.:.:/.:.::/.:..:.:.:.:.:.:.:i`'-,.:.:.:.:.:i.:.:.:.:i　　ヾ､
.i／i:.:.::i:.:.:.:.:.:i.:.i　　　ヽ､　　　　　　/i.:.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:i　　ト､:.::..:.i.:.:.:.:i　　ヾ､
'i. 　i:.:.:.::i.:.:.::.:.:i..i　　　　ヽ,　　　　/.i.:.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.i　　.|　 .＼.:.:i.:.:.:.:.i　　ヾﾞ､
..i　　i.:.:.:.:.:i.:.:.:.:.::.:i　　　　 ヽ　　 / i.:.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:i　　.|　　 /.|.:.:i.:.:.:.:i　　 ヾゞ,



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　 ヽ､_　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（●）（● ）　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（__人__）　　　　 |
　　　「落ち着いてください言葉さん。 　　 　 （｀⌒ ´　　　　　|
　　　そうは言ってもこのままじゃ　　　.　　　　{　　　 　 　 　 |
　　　脱水症状で危なかったですよ」　　　　　　{　　 　 　 　 ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 mｍ 　 ヽ 　 　 　ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（⊂　￣￣￣　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　￣￣￣|　　　　|

43 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:46:12 ID:RPwbzUkv
八４８．
だが、落ち着かせようと手を挙げた、
やらない夫の言葉を跳ね返すよう言葉は叫んだ。


　　　　　／: : : / : :/ : : : : : : iiiiii : : ;iiiiiiii: : iiiiiiiiii: :iiiii : : : : : : : i : : : : : : : :i
　　 　 ./: : : :/: : /: : : : : : iillllll!: : :illllllllll:illllllllllllll: .illllllli: : : : : : : .i : : : : : : : |
　 　　/: : ;il/ : /: : : : ;iillllllllll!: : ;iillll!!lllllllﾘlllllllllllllli: illllllllli: : : : : : : .i : : : : : : :|
　　 ./: :;ill/: :;/: : : ;iillllllllllll!: :;ii;llllﾀ;;;ﾀﾘllllllﾘｷlllllllli.llllllllllllii: : ; : : : : i : : : : : : :|
　　.|: ;ill/i: :;ill|: :;iilllllllllllllll! ;iillllﾀ;;;;,;;ﾀﾘ;;ﾀlﾘ;;;;;;;;ﾞ;;ﾞゞ;|lllllllllllli: llli : : : : i: : : : : : :|
　 .| ;ilﾘ .| ;illll| ;illlllllllllllllll!illllﾀ;;;;;;;;;;ﾀﾘ;;;ﾀlﾘ;;;;;;;; ;;;;;;;;;;|llllllllllllli;llllii: :i : : |: : |.: : : |
　 |:;iﾘ　| ;iillll|illllllllllllllll|llllﾀ',;;;;;;;;;;ﾀﾘ;;;;ﾀﾘ;;;;;;;;;　 ;;;;;;;;|lllllll|lllllllillllli: il: : : | : | : : : |　　　　「私なんて死んじゃえば良いんだ！
　 |;ll 　|lllllll|llllllllllllllll|llllﾘﾟﾟﾞﾞ;;;;;;;;ﾀ';;;; ﾀﾘｰ-､､_　 ;;;;;;;|lllllll|lllllllllll|lli il: : : |: :|l : : : |　　　　私が油断したせいで、
　 |l゜　|lllllllll|llllllllllllﾘ.|ﾘ'＿_; ｸ';;;;　 ﾀ';;;;;;;;;;;;;;;;￣ｰ-,|llllﾘ;|llllllllll|llli:ill: : : |: |ll: i : :|　　　　団長やアレックスさんが死んだのよ！？
　 ｢　 .|lllllll| |lllllllllﾘ,ｨﾘﾇｴﾄﾉ｀　　ｸ';;;;;;ｰ--　　　 ;;;;|llﾘ、|lllllllll|llllllll!: : :|: :|llli | : |
　. !　　|lllll|　.|lllllll|ﾞ: |!||||||||ﾞ　 ｸ';;;;; 　´　 ,,彡ﾐ=ｪ,,|ﾘ ;;;;|llllllllﾘllllllllli: : | : |lllli | : |
　 '　 　 |lllll　 .|lllﾘ.;;: |!!!!!!ﾘ ノ' ;;　　 　　　 : |!||||||||ゞ。|lllllﾘllllllllllllli : | : |lllllli | :|ﾞ: 　　　ユミコとマリアは責任を取ったと言うのに、
　　　　 　ｷ　　|ｷll;;;;;=＝ﾟﾞ　　　　　　　　　: |!||||||||l|　ﾞ|lﾘ|llllllllllllllllll: | : |llllllli: | |丶　　 私だけ―――！」
　　　　　　.ヽ　|: ヾ ;;;;;;;;;; ,　　　　　　　;;;;;; ヾｪｪiiiiiﾂ　lﾘ ;|lllllllllllllllllll;|: : |lllllllllli |:|　ﾞi､
　　　　　　　　.l: .ｷﾞ　　　ﾘ　　　　　　　 ;;;;;;;;;;;;;;;;ﾟﾟﾞ　ﾉ 　;|lllllllllllllllllll|: : :|lllllllllllli: :| 　:l、
　　 　 　 　 　 |: : ヽ;　　　　　、＿_　　　　　　 　　′ 　|lllllllllllllllllll| : : |lllllllllllllli: |　　:',
　　 　 　 　 　 |: : :　;ヽ　　　　ヽ　 ￣ﾞﾞﾞヽ　　　　　　　 .|llllllllllllllllll|: : :|lllllllllllllllli: |　　｀i､
　　 　 　 　 　.|: : : :;iillllllヽ.　　 丶　　　.ﾉ　 　　　　 ／|lllllllllllllllllll|: : :|!lllllllllllllllllli: | 　　ﾞﾞl、
　　 　 　 　 　|: : : :;iilllllllllllll|ﾞヽ、　｀｀ﾞﾞﾞ｀　　 　 _　'´;;;ﾞ|llllllllllllllllll|: : : |;;;;ﾞllllllllllllllllli: |. 　　ﾞl、
　　　　　　　 .|: : :;;iilllllllllllllll|　　｀丶、_　,..一' ";;;;;;;;;;;;;|llllllllllllll:lll|: : : |;;;;;;;　ﾞﾞ!llllllllllli: |. 　 　ﾞl、
　　　　　　　 | : : ;iillllllllllllllll| 　i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|lllllllllllll!::il|: : : |;;;;　　　　!lllllllli: l　　　 ﾞli､
　 　 　 　 　 | : : ;illlllllllllllllll|　 i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|lllllllllllll!: i|: : : :|　　　　　　!lllllllli: |.　　 　'i,、
　　　　　　 /; : :;illlllllllllllllll|　 .i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|lllllllllllll!: i!: : : :|′　　　＿_-!llllllli: |.　　　 ﾞﾞl、
　 　 　 　 .ﾞ|: : :;iilllllllllllllllll|　.|　 ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|llllllllllll! : !: : : :|＿-一￣　　　　!llli: l　　　　｀'|、
　　　　 , ﾞ |: : :;iill!llllllllllllll|　 |　　　　;;;;;;;;;;;;;;;;;　 　.|lllllllllll!: : : : : : |′　　　　　　　　　!lllll|　 　　


向こうの牢屋に捕らえられていたアレクサンド付き、アレックス付きのメイド達は
彼らの訃報が入るなり、食事についていたナイフで首を刺し自決してしまった。

最初の数日はなぜ諦めるような事をと信じられなかったのだが、
それから数日もすれば彼女自身の思考も歪んで堕ちていき、
自分もと思うようになっていったのだ。

しかし察した者が木製の器に変え、食事はカトラリーの必要無い
スープとパンのみに変えたおかげでこうして生き存えている。
45 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:47:15 ID:RPwbzUkv
八４９．
助けたかった二人の命がすでに無い事、錯乱する言葉の気持ちを知り、
やらない夫は何を言えば良いのか分からず、顔を手で覆ってしまった。



　　　　　　　───- 、
　　　　／　　　　　　,-‐- ､
　　　/　　　　　　　,-`--　ヾ､
　　　|　　　　　　 ,-‐ー-､`ヽヾ　　　　　（そうか―――）
　　　|　　　　　　 `ー--、`ヾ'　}
　　　|　　　　　　.--‐一ｰ､’　" }
　　　|　　　　　　ゞ-一ヽ､　　　/
ノへﾉ　　　　　　　　　 ﾉ　　　i
、::＼＼　　　　　　　r´　　 　ゝ,、
ヽ:::::::＼＼ヽ ＿_　　ヽ､_　　／　|:::ヽ
ヽヽ::::::::＼ヾ　　　＞´ヽ､／　　 ﾉ::::::＼
::::＼ゞ::::::::ヽ`>､√:::::::ヽ、　／::::::::::::::::　＼
:::::::::::`‐ー-Y;;;_ヽゞ)､＿_ゝt_＿:::::::::::::::　　　＼



捕らえられた当初は彼女も別の考え方をしていたに違いない。

しかし薬を盛られた経験がトラウマになっているのだろう、
慰め程度に支給されるここの食事が口に入ろう訳もない。
おそらく雨水だけで生き延びていたのではないだろうか。

団長達が死んだ事、それに責任を感じたメイド達がすぐ側で命を絶った事も加え、
この環境と衰弱が精神を疲弊させ
良くない考えに行き着いたのを誰が責められよう。
47 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:48:13 ID:RPwbzUkv
八５０．
突如、やらない夫の腕を引っ張って顔から離させた彼女は、



┏─────────────────────┓

　　見なさいよ！
　　薄汚れて無力な、哀れな私を笑いなさいよ！

┗─────────────────────┛

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_,,,,,,...ii,ﾞ
.ｰ　..,、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,, ‐"￣´　　　 　ｺ､
　　　 ￣｀''''ｰ　..,,,,＿_　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,ﾉ゛　　　　　　､. "..,,_,,ﾞl．
　　　　　　　　　　　　 ｀ﾞ^''''―- ..,,,,_　　　　　　 　 　 　 　 ／　　　　,i‐''"´　｀''―ｰ′
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ￣ﾞﾞ"'''''―ｰ- ．..,,.／　　　 . ／ 　　　　　　　　　　　 _,,.. -一''''^lﾞ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 _..-"　　　　　　　　　　　　,iｌー　　　　./
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ,／’　　　　　　　　　　　 __,,,,,ラ――'/'''"゛
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 _..ｒ'"　　　　　　　　　　＿_iﾆー、　　　 _..┘
　　　　　　　 　 　 　 　 r‐' ---――￢''''''''''''''''''''ﾞﾞ´　　　　　　　　　　 __i┴　ゝ--lヽ,,.. ／
｀ﾞ"''ー;;, ......,,_＿___,,,,,,,,,_,;i＿,,,,,.... -ｰ￢'"´　　　　　　　　 　 　 　 　 ,ｨゝ ｀''''ﾍ..＿__,./
　 .'二,,,,,￣´　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 `'～.､,,,,,,／
　　 ゝ..,,,,,,,,,,,...,,,,,,,,,,,,＿__　　　_　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 , ／
　　　　　　　　　　　　,,,..｀-'“´　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 /
　　　　 _,,,..,,..　‐''''"´　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 /
　　　 'ヽ -‐゛　　　 　_,,,.. --ｰ''''''",ﾞ=‐　　　　 　 　 　 　 　 　 ／
　　　　 .｀-.... -ｰ''"´゛　　　_..-'''"゛　　　 　 　 　 　 　 　 ,..-'″
　　　　　 　 　 　 　 　 ,ｒ'"゛　　　　　,,, -'".~l　　　　 .／゛
　　　　　 　 　 　 　 ／　　　.,ン'''"´　　　 ./ 　　　 ,i"
　　　 　 　 　 　 　 'ヽ iﾆ..-'"　　　　　　 ./ 　　　./
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ 　　 ./
　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ,′　 .,ﾉ′
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 / .,i_,,./

48 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:49:13 ID:RPwbzUkv
八５１．
般若のような形相で自分を嘲ると、忌々しげに床を蹴りつけた。



　　|.:.:.i.:.::.:i　　/i.:.i　 i.:.:.:.:.:.:/ .//:　　　　|:|.|.:.:.:.:.:i.:.:.:.:|
　 .|.:.:.:i.:..:.:i.:.:._i_i:iｒ'~＾.i~:.::／ .//: '''''''ーｪ/. |.:.:.:.:.:i.:.:.:.:.|
　 |ヽ,:.i:.i:.:.iｒ'´i:::||::::ー::ｫト　 /'´: :ｒ:=‐-;/ `.|..:.:.:.://.:.i.:::|
　|.:.:.:ヽﾄ,i.:.:|.:.:|ｒ=(.f"::"j'ﾄ /::　　´ ｒ'f"ｦ:ｫ;;j|.:.:／/.:.:..i.:.::|　　　　　　「裏切り者に一服盛られて、
/.:i.:.:i.:.ヽ,ﾄ:.:.ヾ:i::::`''"~´:::　　　.:　''"`''-''::x ﾘ,ｨ:.:/.::i.:.::i.::.:.:ﾄ,　　　　　気がついたら牢の中。
.:.:i.:.:i.:.:.::ﾄi`'ト､:.ﾐ､_　　　　　.:i　　　　 .ｒ''´;::'.|／:.:.i..:.:i.:.:.:.:i.:|
:.|.:.:i.:.:.:.:i.:.::＼ト'ﾄ=,,__　　　　　　　　　 ::"　:,'.:.:.:.:/.::.:i.:.i:.:.:.ﾄ,|　　　　　毎日毎日、リフに『愛人になれ』って
.|.:.:i.:.::.:.:i.:.:.::i.:.:´.ト､::::　　　'''　‐.''　　　　／.:.:.::/..:.:.:.i.:.:ｉ.:.:.:.:iヾ､　　　 言い寄られて―――
.:.::.i.:.::..:.:i.:.:.:.:i.:.:.:.:i.:.`::::,_　　　　　　 , ｒ'´::i/.:.:./.:.::.:.:.i.:.:.:i.:.:.:.:i ヾ､　　 親衛騎士が聞いて呆れるわよね！」
.:.:.:.i.:.:.:.:.:i.:.:.:.:i.:.:.:.:i.:/ー|`‐ ､__　ｒ ´.|＾`.V.:.:.:/.:.:.:.::..:i.:.:.:.:i.:.:.:.:i　ヾ,
.:.:.:.:i.:.:.:.:.:i.:.:.:.:i.:.:,,ｒ'´ .ｒ'´.:.:.:.:.:.:.:..:.:.:.:´'ｿ/.:./.:.:.:.:.:.:.::i.:.:.:.:.:i.:.:.:.:i　 ヾ､
.:.:.:.i:i.:.:.::.:.:i.::.:<´　　 .i.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:　_　 /.:.:/.:.:.:.:.:.:.::.i.:.:.:.:.:..::i.:.:.:.:i　 ヾ､
.:.:.:.i.:ｒi:.:.:.:.:.:i.:.:i　　　 i´~'　　　　/´.:.:/.:.::/.:..:.:.:.:.:.:.:i`'-,.:.:.:.:.:i.:.:.:.:i　　ヾ､
.i／i:.:.::i:.:.:.:.:.:i.:.i　　　ヽ､　　　　　　/i.:.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:i　　ト､:.::..:.i.:.:.:.:i　　ヾ､
'i. 　i:.:.:.::i.:.:.::.:.:i..i　　　　ヽ,　　　　/.i.:.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.i　　.|　 .＼.:.:i.:.:.:.:.i　　ヾﾞ､
..i　　i.:.:.:.:.:i.:.:.:.:.::.:i　　　　 ヽ　　 / i.:.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:i　　.|　　 /.|.:.:i.:.:.:.:i　　 ヾゞ,



　　 ／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　（ ●）（●）　　　　「……………」
.　|　　　　（__人__）
　 |　　　　 ｀ ⌒´ﾉ
.　 |　　　 　　　　 }
.　 ヽ　　　　　 　 }
　　 ヽ　　　　　ノ
　　　.>　　　 <
　　　|　　　　 |
　 　 |　　　　 |


だが、やらない夫の目には映った。

自虐的になり、苛立ちを隠そうとしない彼女の瞳の奥に、先日までの騎士達と同じ―――
諦めたくない、立ち上がる術があるのなら立ち上がりたいと言う感情が隠れている。

50 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:50:14 ID:RPwbzUkv
八５１．
本当に死ぬ気があるのなら舌を噛んだり、石に頭を打ち付ける事だって出来るはずだ。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／::::::::::::::::::::::::::::::: ﾄ､::ヽ:::::::::::＼::::::::::::::::::＼::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::/::::::::::::::::: /::: ∧:!　ヾ:::＼:::::::::::ヽ:::::::::::::::::::ヾ::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |:::i:::::::::::::::: / ::::::| |::!　　 ＼::＼::::::::: !::::::::::::::::::::l:::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |:::|:::::::::::::: ':::::::::::| j_| .. -─十::|:｀ ､ :| ::: ::::::::::::::|:::::::::::::::::::i::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |:∧::::| ::::::|:::::::::√i::l _ __　　|::::|::::::| :::::::::::::::::::::::|::::::::::::::::::::i:::::::::::
　「そうだ、あなた剣持ってるじゃない。　　　　 |:|　|:::| ::::::|:::::::ハ j/ｨ≡tiミ |::,ｲ!:::i| :::::::::::::::::::::::|:::::::::::::::::::::i::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |:|　|:人 ::::|::::: |:::::/　 l 　 |　i/ |:::::i| :::::::::::::::::::::::|::::::::::::::::::::::i:::::::::
　 ちょっと貸しなさいよ」　 　 　 　 　 　 　 　 　 |:|　i::::| ＼l:::::::|:::::i　 　､ ﾉ /　 |:::从 :::::::| ::::::::::::|:::::::::::::::::::::::i::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ヾ.､ ヾ:＼　＼乂:, 　 　´,,,,　　 |/;;/:! : :::|:: ::::::::::|::::::::::::::::::::::::i:::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ＼　ーゝ　ゞ:/＼　´ 　 　 　 ;/ ;|::::::::|:: ::::::::::|:::::::::::::::::::::::::i:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 く 　 　 　 　　 　/;;;;;|　::/ :::::::::::::|::::::::::::::::::::::::::i::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ＼　　__　 　 　 ;;;;;|:::/ :: ::::::::::::|:::::::::::::::::::::::::::i::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　 　　　 　 　 　＼　　　 　　,;;; j/　:::::::::::::::::|::::::::::::::::::::::::::::i:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　　 　　　　　 　　　＞,. ─…；イ　 ::::::::::::::::::|::::::::::::::::l::::::::::::i::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　／√　　　　　　|　 :::::::::::::::::∧::::::::::::::l::::::::::::i:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 ／　/　　　　　 　 ｲ　 :::::::::::::::::|　 ゝ:::::::::l::::::::::::i:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　 　／:::::::/　　　　〆 　　| :::::::::::::::::::::| ::::::::＼::::l::::::::::::i:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　 　　 　 /　::::ノ　　　／　 ィ:::::: | :::::::::::::::::::::| ::::::::::::::＼::::::::::::i



　 　／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　 （ ●）（●）　　　　「お断りします。
.　|　　　　 （__人__）　　　　 俺の剣は、
　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　 そう言う事に使って良い剣じゃない」
.　 |　　　　　　 　 }
.　 ヽ　　　　　 　 }
　　 ヽ　　　　　ノ　　ｍm
　　　/　　　￣￣￣　つﾉ
　　　|　　　　|￣￣￣



それをせずに楽になりたいと逃げているだけ、
いつかは奇跡が起こって助けが来る、そんな期待を捨てきれなかった目だ。

ならば下らない思い込みを粉砕し、教えてやらなければならない。
51 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:51:12 ID:RPwbzUkv
八５２．



　　　　　 / : : : : : : : : : : :/: : :| : : : : : : :/.:: 　 | :|　|: :|:: 　 　 　 　 |: : : : : : : : : : : :l
.　　　　 / : : : : : : : : : : :/: : : :| : : l : : :/.::　　│:|　|: :|::　　　 　 　 |: : :| : : : : : : : : l
　　　　/: : :/ : : : : : : : /: : : : :| : : i : :/.:: 　 　 ! :|　|: :|::　　　　　　 |: : :| : : : : : : : : l
.　 　 /: : ,ｲ : : : : : : : / : : :/: :| :._⊥/-─‐ 　 ! :l　.|: :| ──- .. 　 |:|: :l!: : :l : : : : : |
　　 /: :/ │: : : : ｌ : : !: : : :|:,.イ´.: l/.::::::::::　　/:/　 |: :|:::::::::::::...　｀メ |: :|!: : :l : : : : : |　　　「じゃあ私を殺してくれれば良いわ。
　　,' : ,′ | : : : : ｌ : : |: : :.イ:/|: : :/-─＜ 　/:/　　|: :| ＞─‐--､｀下y'| : : l: : : : : :|　　　 生きる価値のない、下らない女だもの
　 │: |　　| : : : : | : : |: : : :|:.:_,.ｨ≠≦三ﾐ ／'"　　 |: :l　 彡三≧ｪx |/ ヽ: : :l : : : : :|!　　　やらない夫君なら出来るわよね？」
　 │: |　　| : : : : | : :│: : :l,ｲィ'::l|li|l|li|!:|　　　　　　| /　　 |::l|il||i|li:ヾ;､　| : : :| : : : : i:!
　 │: ｌ　　ｌ: :/: : :| : : l : : 〃 {:::::l|l|l|l|l|::| 　 　 　　 j,′ 　 |::l|l|l|l|l|::::}ヽゝ : : :l : : : :,ハ
　　|: :,′　∨: : : :l : : l : : : l: .∨:!!|l|ll!!::|　　 　 　 　 　 　 |:::!l!|l|l!!::/　/} : : /: : : :/ : :l
　　|: ′　 ∧ : : : |∨ l: : : :|: :',∨:::::::::::j_　　　　　　 　 　 {::::::::::::::/　// : :/| : : :/ :| : l
　　i,′　 /　ヽ : : | ∨ : : : |!.:ハ＞=≦三三　　　　 　 三≧==＜. //: : /: | : :/ : :| : |
　　　　／　 　| ＼| : ∨ : : ﾊ : :{三三三三　　　 三:.　　三三三三ムイ: : :| :/ : : :| : |
　　　　　　 　 | : |: : : :|＼: {＼乂三三三　　　　i!三三三三三三三/ :| : : :|/ : : : :| : |
　　　　　　 　 | : |: : : :| : :ヽ＼ ￣　　　 　　　　＿Ξ三三三三三,/| : |: : : : | : : : :| : |
　　　 　 　 　 | : | : : : |: : : :|｀ |lヽ、　 　 　 　 ´￣｀ 三三三三:,イ: :| : |: : : : | : : : :| : |
　　　 　 　 　 | : | : : : |: : : :| : |l |: |li:..、　　　 　 三三三三才il| :l : :| : |: : : : | : : : :| : |



辛いのは一人だけ、自分が最悪の立場に居ると思い込んでいるこの年上の騎士に―――



　　　　　 　 　 　 　 ‐――――‐‐ ､
　　　　　　　　 ／　　　　　　　　　　 ＼
　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　 ＼
.　　　　 　 /　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ
　　　　　 /　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ｉ
　　　　　 |　　二二二二 三 二二二二　 　 ｉ　　　　　　　「ふざけるな！」
　　　　　 | 　 ― ― ― ＝＝ ― ― ― ‐　 |
　　　　　 l　　 _＿＿ ノ　　 　 ^ー―－　　　|
　 　 　 　 l 　 / 　 　 ヾ≧=≦Ｙ　　　 ヽ　　 l
　　　　　　!　 |　{:::::::}　| }llllllll{ |　{::::::}　|　　 l
　　　　　　l. 　ヽ　,　　彡!!!!!!ゞﾐ､　 　 /　　 '
　　　 　 　 ',　　 /　　　　|　　　 ヽ　　　　/
　　　　　　　ヽ　 ゝ ＿ ／＼ ＿ ﾉ 　 　 /
　　　　　　　　ヽ　　 ｀ ー―― ´　　 　∧__
　　　　　　　　　＼　　　　　 　 　 　 ／ / 〉::｀丶、
　　　　　　　　　／＼　　 　 　 　 ／ 　/ /::::::::::::::丶、
　　　　　　　 ／:::::l　　ー――‐ ´　 ／ /:::::::::::::::::::::::｀丶 _
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52 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:52:14 ID:RPwbzUkv
八５３．
誰もそんな事は望んではいないと。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／::::::::::::::::::::::::::::::: ﾄ､::ヽ:::::::::::＼::::::::::::::::::＼::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::/::::::::::::::::: /::: ∧:!　ヾ:::＼:::::::::::ヽ:::::::::::::::::::ヾ::::::::::::::::::::::::::::::＼
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |:∧::::| ::::::|:::::::::√i::l _ __　　|::::|::::::| :::::::::::::::::::::::|::::::::::::::::::::i:::::::::::
　　　　「な、何よ………」　　　　 |:|　|:::| ::::::|:::::::ハ j/ｨ≡tiミ |::,ｲ!:::i| :::::::::::::::::::::::|:::::::::::::::::::::i::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |:|　|:人 ::::|::::: |:::::/　 l 　 |　i/ |:::::i| :::::::::::::::::::::::|::::::::::::::::::::::i:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　|:|　i::::| ＼l:::::::|:::::i　 　､ ﾉ /　 |:::从 :::::::| ::::::::::::|:::::::::::::::::::::::i::::::::
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　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　　　　　 　／:::::::/　　　　〆 　　| :::::::::::::::::::::| ::::::::＼::::l::::::::::::i:::
　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　　　 　　 　 /　::::ノ　　　／　 ィ:::::: | :::::::::::::::::::::| ::::::::::::::＼::::::::::::i



　　　　＿＿
　　 ／　　.　＼
　／._ノ三ﾆヽ、＼　　　　　　　　「自分を下らないなんて言うんじゃねえ！
　|　 （●）（●） .｜　　　　　　　 団長が、とっつぁんが―――
.　|　　（__人__）..　|　　　　　　　　そんな自虐を望んでるって言うのか！？」
　 |　　 ｀ ⌒　 　 |
.　 ヽ　　　　　 , ィ
　　 ヽ　　　　ﾉ⌒)
　　　/　　　(_￣__／￣`ヽ.＿
　　　|　　　　　/〃 ＼ 　 '"　 ＼
　 　 |　　　 ./¨＼ 　 　＼,_　｀`ヾ}
　　　　　.　人''"　＼　 ､__ ｀　､_/　ﾉﾉ
　　　　　 〈 " ＼　__.ヽ　ヾ､._,)'´
　　　　　　ヽ.　　ヽ.　 ､__｀ン〃
　　　　 　 　 ヽ !､_　 ｀'_,／
54 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:53:12 ID:RPwbzUkv
八５４．
辛いのは、自分一人では無いと。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/.:://.:.:/.::.:.:.:.:/.:.:.:.:/..:.:/::,ｲ.:.:/:.:.　　 ::::|.:.:.:.:i.:.:.:.:i.:.:.:.:.:i.:.::..:.:|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. |:.::| |.:..:i.:.:.:.:.:.:i.:.:.:._/.:.:./.:/./.:/＿　　　 ::|.:.:.:.:i.:.:.:.:ｉ.:.:.:.:.:i.:|.:.:..:|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. |:/ .|.:.:.:i.:.:.::.:.:ﾚ'~ﾌ.:.:./／:/::/:.:.:.:.:￣｀'''ﾒ､;: ﾊ.:.:.:.:i.:.:i.:.:.::i.:|..:.:.:|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. |i　 |:.:.:i､i:.:.:.:i i:ﾒ=ｪく´　/／:::;=―ｪｭ,,,._|;/｀|.:.:.::ｉ.::.:i.:..::i.:|.:.:.:.:|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i　 |:.:.ハ:.:.::.|ｹ{f::::::i}` /'´:; 　　 '"{i:::::ﾀﾒ､. |.:..:i.:i.:.:i.:.:.:i.:|.:.:i.:.:|
　　　「下らないでしょう！　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　 ｀i;i　 i::.:.:|.: {i:::::ｿ. ´　　　　　　{i::::::::::|"'|.:.:/.:i:::i.:..::i.::|:.:.:i.:.:ﾄ,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　'i,　｀i;;;|;;;`≡~　　　　　 .... ｀'≡ﾆソ /.ｲ.:.:i.::i..:.::i.::|:.:..::i.::| i､
　　　 敵の罠にみすみす引っかかって、　　　　　　　　　　　　　　　　 |｀ﾄ､;""".,　 　　　　　"";;:;:~"'ｿ'~|.::.:i:'´.:.:.:.:.:|.:.:.:.:i.::|　ii
　　　 仲間の命が失われている時に何も出来なくて、　　　　　　　　 |.: i:::: 　　｀　,,,,,,,＿___　　　　 ´　.|.::.:i.:.::.:.:.:.::|.:.:.:.:::i::|　 ii
　　　 一人でのうのうと生き恥をさらしているのよ！？」　　　　　　　 |:.:.:.ヽ::.　　　 Y´.,_,;;;::｝　　　　　./.:.:.:.::.:.:.:.:.::|.:.:.:.:.:::i::|　　ii
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |.:.:.:.:.::.ヽ､　 　ヽ---'′　　　／|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::ﾄ､.:.:.:.::.::i:::|　　ii
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |.:.:.:.:.:.:.:.:.::i-､　　　　　 _,,　'´-'７:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|.:｀i_.:.:.::.:::i::|　　 ii
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |.:.:.:.:.:.:.:.:.::|.　ｒ｀‐ -　 '´　　　　/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|.:.:.:.:｀‐､.:.:.::i |　　 ii
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.|.:.:.:.:.:.:.:.:.::| ./: : : : : : : : : : ::　:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|　　　　 ヽ,.:::i |　　　ii
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|.:.:.:.:.:.:.:.:.::| /: : : : : : : : : : : 　:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::|　　　　_,,,,‐i_.::i.:|　　　 ii
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .|.:.:.:.:.:.:.:.:.::| iｨ: : : : : : : : : : : : :/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|_,, - '´　　　 ｀'､i::|　　　 ii
55 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:53:16 ID:RPwbzUkv


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　 ,,　　、　　　　　　　ｌ
　　　　　　　　 ゝ_　　　 _/　 .. ＞..、　　　　　l
　　　　　　　　　　`''''''‐" 　_ __ ﾆ:＿丶　　 　 1
　　　　　　　/　、　　　　　　＾''''ー ､__　ゝ　　 │
　　　 / . ｌ 丿　　l'"! 、 、　'''-ｰ-､ ´　^ｰ-..､　.　　　　　「その考えがふざけてるってんだ！
　　　 |　」　|　　|　|| ! 　! ｌ　│　'　　 ,ｒ _..,,　ｆ.
　　　 `、　 '、　ゝ　ﾉ　/ l　..′ ,´　　|　l│l .ｉ　　　　　　 王女も、マコトも、ジュンも、
　　　　　　　｀- － ﾞ‐'′　 --"　　,ﾍ ∪ ﾉ l.　　　　　　　マスタング殿やアリアさんだって同じなんだ！
　　　 　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　´ /
　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　 ｀）　　　　　　　第一騎士団だってエンジュ様や仲間を失い、
　　　　　　　　　　 f　　　　　　　 丿　　 ヽ/　　　　　　　 傷ついて、それでも諦めずに
　　　　　　　　　　入 ＿＿＿ -'　　　　　,′　　　　　　　立ち向かっているってのに！」
　　　　　　　　　（　V ｖ 　　　 　"‐＿ -'′
　　　　　　　　　　''-二ﾆ -=　　`'`ソ　/
　　　　　　　　　　　 ´　‐‐;ｭ ｀' ､ノ　 /...
　　　　　　　　　　　　 　ニ　　　′　丿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 !.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 !.
　　　　 丶.._ 　　　　　　　　　　　　 /
　　　　　　　｀ﾞ　‐--- ＿＿＿＿-''
　　　　　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼

56 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:54:12 ID:RPwbzUkv
八５５．
あなたは、そんな女じゃないと。



　　　　　 　 　 　 　 ‐――――‐‐ ､
　　　　　　　　 ／　　　　　　　　　　 ＼
　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　 ＼
.　　　　 　 /　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ
　　　　　 /　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ｉ
　　　　　 |　　二二二二 三 二二二二　 　 ｉ　　　　　「言葉さんの騎士道は、
　　　　　 | 　 ― ― ― ＝＝ ― ― ― ‐　 |　　　　　 そんな簡単に折れ曲がるような物だったのかよ！？」
　　　　　 l　　 _＿＿ ノ　　 　 ^ー―－　　　|
　 　 　 　 l 　 / 　 　 ヾ≧=≦Ｙ　　　 ヽ　　 l
　　　　　　!　 |　{:::::::}　| }llllllll{ |　{::::::}　|　　 l
　　　　　　l. 　ヽ　,　　彡!!!!!!ゞﾐ､　 　 /　　 '
　　　 　 　 ',　　 /　　　　|　　　 ヽ　　　　/
　　　　　　　ヽ　 ゝ ＿ ／＼ ＿ ﾉ 　 　 /
　　　　　　　　ヽ　　 ｀ ー―― ´　　 　∧__
　　　　　　　　　＼　　　　　 　 　 　 ／ / 〉::｀丶、
　　　　　　　　　／＼　　 　 　 　 ／ 　/ /::::::::::::::丶、
　　　　　　　 ／:::::l　　ー――‐ ´　 ／ /:::::::::::::::::::::::｀丶 _
　　　　　-‐::::::::::::::l　　　　　　　　／　 /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ,. イ::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／::::::::::／:::::::::::::::/:::::::::::}ヽ,､::::::::::..
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /::::::::::::::::::::::::::／:::/!:::::::::::ｌ-vi_,}:::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /:::::::::::::/:::::::::::/::::::/ l:::::i|::::ｌ　 　 !:::::::::::∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ./:::::::::::::::{:i|:::::::/_!:_/_, ｉ::/ !:::ｌ　 　 ｌ::::::::::::::::ｌ
　　「他のみんなは………　　　　 　　 ,.ｲ::::::::::::::::::ﾘ:{:::/,斗/=､//　i:::l ､　　ｌ:::::::i:::::::::ｌ
　　 無事なの？」　　　　　　　　　　　／/::::::::::i::::::::::::Ν{だ;;r∨゛ 　 ｉ/ 　＼_}:::::/::::::::::ｌ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　´　/::::::::::/:::::::::::::/　弋;汐　　　/ ,x-=､/::::/:::::::::::/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／:::::::::::/:::::::::::::∧ 　 ￣　　　　 /fr/ }｝／:::::::::::/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　::::::::::::::/:::::::::::::/　 ､　　 　 　 i)　ﾋﾀ, ∠::::::::/ﾊ/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　::::::::::::/:::::::::::::/　　 ﾍ 　　‐ ､　　　 , ｲ::::/ｌ/ .ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　::::::::_/::::::::::::∧　　　　ヽ._　 ,. ． '::´:::::::/ｌ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　::／ ｌ::::::::::::/　 ',　　　 /ｧ､:::::::::/:::::::::::/　ｌ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　、 　!::::::::::::{　　 ':､ 　 '　!　＼/:::::::::::/{.　 ﾞ:,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　∧　i:::::::::::::ｌ　　　 ヽ 　 ｌ 　 /:::::::::::/::::ｌ　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:::∧ l:::::::::::::ｌ　　　 　' 、ｌ　/:::::::::::/:::::::::ｌ 　 　 ＼


57 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:55:15 ID:RPwbzUkv
八５６．
そして皆の力があれば、必ずや復権は成るのだと―――



　　　　　　　　 　 　 　 ￣　 　 ､
　 　 　 　 　 　 ´　　　　　 　 　 ＼
　　　　　／　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ
　 　 　 /　　　　　　　　　　　､＿　　ヽ
　　　　'　　　　　　　　　　　　　　 ｀　､ヽ
　　　 l　　　　　　　　　　　　　　,‐-,.._ ゞ　　　　　「ああ。
.　　　l　　　　　　　　　　　　　　l　弋心 l　　　　　そして今夜、イチジョウ達偽政権を倒し、
.　 　 l　　　　　　　　　　　　　　冫.ー　く　　　　　民に笑顔を、この町に平和を取り戻すために起つ。
　　　l　　　　　　　　　　　　　　 l　　　　ﾉ!
　　　l　　　　　　　　　　　　　　 ｀ー‐ f ｒ'　　　　 俺はその前に、言葉さんを助けに来たんだ。
　　　l　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾉ'　　　　　 復権には貴女の力も必要だから―――」
　　　!　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 /
　　 ,'　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /
￣　｀ー -　　　　　　　　　　 　 　 /
　　　　　　　 ｀　 ､　　　　　　　　/
:.:.:.:.:.:...　　　　　　　　､　 　 　 ／
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..　　　　　　.:.:ヽ _　´
ー-　:.:.:.:.:.:.:.:..　　　..:.:.:.:.:.:ヽ
　　　 ｀　､:.:.:.:.:.:.:...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
　　　　　　　､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼
　　　　　　　..:.｀:.:､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
　　　　　　..:.:.:.:.:.:.:.｀:.:､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./



　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ／::::::::::::::::::::::::::::::: ﾄ､::ヽ:::::::::::＼::::::::::::::::::＼::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　　　 /::/::::::::::::::::: /::: ∧:!　ヾ:::＼:::::::::::ヽ:::::::::::::::::::ヾ::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　 |:::i:::::::::::::::: / ::::::| |::!　　 ＼::＼::::::::: !::::::::::::::::::::l:::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　 |:::|:::::::::::::: ':::::::::::| j_| .. -─十::|:｀ ､ :| ::: ::::::::::::::|:::::::::::::::::::i::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　 |:∧::::| ::::::|:::::::::√i::l _ __　　|::::|::::::| :::::::::::::::::::::::|::::::::::::::::::::i:::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　 |:|　|:::| ::::::|:::::::ハ j/ｨ≡tiミ |::,ｲ!:::i| :::::::::::::::::::::::|:::::::::::::::::::::i::::::::::
　　　「……………」　 　.|:|　|:人 ::::|::::: |:::::/　 l 　 |　i/ |:::::i| :::::::::::::::::::::::|::::::::::::::::::::::i:::::::::
　　　　　　　　　　　　　 　|:|　i::::| ＼l:::::::|:::::i　 　､ ﾉ /　 |:::从 :::::::| ::::::::::::|:::::::::::::::::::::::i::::::::
　　　　　　　　 　 　 　 　 ヾ.､ ヾ:＼　＼乂:, 　 　´,,,,　　 |/;;/:! : :::|:: ::::::::::|::::::::::::::::::::::::i:::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　＼　ーゝ　ゞ:/＼　´ 　 　 　 ;/ ;|::::::::|:: ::::::::::|:::::::::::::::::::::::::i:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 く 　 　 　 　　 　/;;;;;|　::/ :::::::::::::|::::::::::::::::::::::::::i::::
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ＼　　__　 　 　 ;;;;;|:::/ :: ::::::::::::|:::::::::::::::::::::::::::i::::
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　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ＞,. ─…；イ　 ::::::::::::::::::|::::::::::::::::l::::::::::::i::
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　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ／　/　　　　　 　 ｲ　 :::::::::::::::::|　 ゝ:::::::::l::::::::::::i:::
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ／:::::::/　　　　〆 　　| :::::::::::::::::::::| ::::::::＼::::l::::::::::::i:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　::::ノ　　　／　 ィ:::::: | :::::::::::::::::::::| ::::::::::::::＼::::::::::::i


58 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:56:13 ID:RPwbzUkv
八５７．
多くの犠牲が出ており、彼女自体も辛い思いをしているのは百も承知だ。

目の前で知り合いが責任を感じて自ら命を絶ち、
十日以上もここに閉じ込められれば無力感に苛まされ、
絶望し、錯乱するのも当然だと言えるだろう。

それでも―――
諦める必要はない、と少年は言った。



　　　　　　　　　　　　　　　　　「ランサーの裏切りは誰にも予測が出来なかった。
　 　　 ／￣￣＼　　　　　　　イチジョウの準備は巧妙で、
　 　／　　 _ノ　　＼　　　　　　多くの犠牲が出ている。
　 　|　　　 （ ー）（ー）
.　 　|　　　　 （__人__）　　　　　でも―――
　 　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　それは、諦める理由になるのか？
　 　.ｌ^l^lｎ　　　 　　}　　　　　 言葉さんにはまだ、
.　　 ヽ 　 L　　　 　}　　　　　　剣を振るう手も、仲間も残っていると言うのに」
　 　　ゝ 　ﾉ　　　ノ
　 　／ 　/　　　 ＼
　 ／　 /　　 　 　　＼
. /　　/　　　　　　|ヽ、二⌒)､
　ヽ＿＿ﾉ



　　　　　　　　　　　　　　　　 |/.:.:.:/.:.:.:.:/.:.:.:.:.:.:.:／.:.:.:.::／.:.:.:.:.: /<ヽ.:.:i.:.:|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|
　　　　　　　　　　　　　　　　.|i.:.:.:/.:.:.:.:/.::.:.:.:.:.:/.:.:.:.:／.:.:.:／;;//iﾍvwｖ| :|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|
　　　　　　　　　　　　　　　　|.:.://.:.::.::/.::.:.:.:.:/.:.:.:／:.:.:／;;／///　　　 .|.:|.:.:.:i.:.:.:.:i.:.:.:|
　　　　　　　　　　　　　　　　|:.:| |.:.:.::.:i.:.:.:.:.:::i.:.:.://.:::..／;;;／.//　　　　 |:.:|i.:..:i.:.:.:.:i.:.:.:|
　　　　　　　　　　　　　　　　|:.| .|.:.:.::.:i.:.:.:.:.:i.:.:/ｰ;;／ソ／　// -＝=､_.|:.| |.:.::i.:.:.::i.:.:::|
　　「………ならない」　　　.|:| .|.:.:.:.::i.:.:.::.:i.:.:ﾑ;ｒ-y,ﾈ'　　//　-_､,,,,__ .|:;ﾍ|.:..:i.:.:.:i.::..:|
　　　　　　　　　　　　　　　　 ii　|i :i.:.::i.:.:.:.:|ﾔｹiﾃうﾄ`　 ,/'´ 　'´,ｹﾈﾃﾞﾇ;., |.:.:i.:.:/|.::.::|i
　　　　　　　　　　　　　　　　 .` |iﾄ,.:i..:i.:i.:..:|{_|;:::::`}:|　／　　　　　|{::::::f;;ｲｿ:.i.:.ｲ./.:.:.::|i
　　　　　　　　　　　　　　　　　 |i|i.:.::ﾄ,.:iヾ;;:| ｬ:::::,ソ　　　　　　　 .ｾ_:::::ソ/.:.:/.|/.:.:.:.:|.i
　　　　　　　　　　　　　　　　　.|i|i.:.:.:;iヾ;ヽトヽ￣　　　　　 .　　　　.~￣ /イi.:.:|i.:.::.:.:.| .ｉ
　　　　　　　　　　　　　　　　 .|i |:i.:.:.:.:i..:`,ﾐ:ト､　　　　　　 i:　　　　　　 ' /V::./.:.:.:.:.:||　i
　　　　　　　　　　　　　　　　 |i .|.:i.:.:.:.:i.:.:.:.:トト`: .､.　　　-:‐　 　　　, ｒ'´.:::|.:.:/.:.:..:.::||　i
　　　　　　　　　　　　　　　　|i　|:.:i.:.:.::.:.:i.:.:.::i.:|;:;:;:;::`i 　､ __　, .　ｒ'´;:;:i:;:;;:/:/.:.:.:.::.:.:|.:|　ii
　　　　　　　　　　　　　　　. |i　|;:;:;i:;;:;:;:;:;:i;:;:;:i:;|_,／ i　　　　　　 :ト､;;;;i;;;//;:;:;:;:;:;:;:|;:;::|　.ii
　　　　　　　　　　　　　　　.|i　.|;:;:;:ﾄ;:;:;:;:;:;:;:i;:;::i:|　　　　　　　　　　　＼/';: /;:;:;:;:;:;:i;:;:::|　 .ii
　　　　　　　　　　　　　　　|i　.|;:;:;:小;:;:;:;:;:;:;::i;:;::|＿,,...,,_　　　._,,,＿＿:/;::/;:;:;:;:;: /:|;:;:;::|　 .ii
　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾉ'´　|:ﾊ;:;:;:;:;:;:;:;:i :|`ヽ,　　　　　　 , ｒ'´/;:/;:;:;:;:;;:/;:/＼;::|　　ii
　　　　　　　　　　　　　　　. /　　 |:| .ヽ,;:;:;:;:;:;:;i:|= =`=､　　 ,ｒ'´　_./;:/;:;:;:;:;;:/;::/　　 ＼　 .



年の割には低く思える声は空気を震わせ、言葉の身体にゆっくりと染み入ってくる。

静心の奇跡の力でも持っているかのような音に包まれ、
次第に落ち着きを取り戻してきた彼女はやっと―――
どうやってここに現れたのかすら分からないが、
希望をその手に現れたやらない夫を真っ直ぐに見つめる事が出来た。
59 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:57:12 ID:RPwbzUkv
八５８．
しかし言葉はもう一度はね除けた。

半分は駄々をこねていた自分が恥ずかしいからで、
半分は諦めていた自分が簡単に立ち上がれると信じられなかったからだ。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::::::::::::::::::::::| |::| 　!::::ﾄ:::::::::|　ヽ.∧::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 i:::::::::::::::i::::::::::l .ｌ::|　 |::::| ヽ:::::l　　　 ',::::,::::::::::::::::',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 l:::::::::::::::l:::::::l:::! ｌ::| 　 |:::|　ヽ:::ｌ　　　 ｌ:::|!::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 !::::::::::::::l::::::::l:::ｌ-ｌ:|--‐'l::|　 ヽ::ト－- |:::||:::::::::::::::::}
　　　「でも私は、　　　　　　　　　　　　　　　　　　｜::::::::::::l::::::::,ﾍ:ｌ　!|,＿_ ｌ:|　　ヽl ＿_　|::|i:::::::::::::::l:|
　　　 あなた程心が強くない！　　　　　　　　　　 |::::::::::::::l::::::::{　ｌ!,xf=≠ミｌ|　　　,x=≠ﾐｉ､ｌ::::::i::::::/ｌ|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 |::::::::l::::::l:::::::ヽ, "つ;;;ri|　　　　　つ;;ri} ﾞ'|:::::ﾊ:::/ |!
　　　 どうしてそんなに―――」　 　　 　 　 　 　 |::::::::l:::::::l::::::ｌヾ:､弋_沙　　 　 　弋少　/::/:|.}/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i|::::::::l::::::::ヽ:::',　　　 　 　 　 　i)　　　 /／:::|/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ｉ|:::::::::!::::::::i::::ヾゝ　　　　 　 　 　 　 　 /::::::::ト､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｉ.|:::::::::l::::::::::l:::::::|ヽ　　　 　 ´　｀　　 ／:::::::::::|　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i. |::::::::::!::::::::::ｌ::::::|　 ｀　、　　　　 ,　':::::::::::::::::::|　 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｉ　|:::::::::::ｌ:::::::::::ｌ:::::|　　 　｀　'tｰ ´:::::::ｌ:::::::ｉ::::::::::|　　　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 i 　|::::::::::::ｌ::::::::::::ｌ::::|　　　　　 |､:::::::::::::ｌ:::::::::ｌ::::::::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ｉ.　 |::::::::::::,ｌ::::::::::::::ｌ::|　　　　　 ﾄ,｀ヽ､:::::l::::::::::l:::::::|　　　　　　}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i　　|:::::::／ ｌ:::::::::::::::ｌ:|＼　　　 　 ｉ　　 ｀ l:::::::::::ｌ:::::| 　　　　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 i　　 |::／　　 !:::::::::::::::l|　 ＼＿　, -i　　　 |:::::::::::ｌ::::|　　 　 ／



やらない夫はそれが手に取るように分かった。
だから、自信満々の笑顔を浮かべて言ってやった。



　　　　　　　　　　　　　￣￣ 　 ､
　　　　　　　　 ´　　　　　　　　　 ＼
.　　　　 　 /　　　　　　　　　　　　　 ＼
　　　　　 /　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ　　　　　　「信じてるからだ」
　　 　 　 ｉ　　　　　　　　　　　　　　　　　丶
　　 　 　 l　　　　　　 ／ ￣　　 　 　 　 　 丶
　　 　 　 |　　_＿ 　 　 　 　 _　ヽ　　　 　 　 丶
　　 　 　 ヽ/　　　　　　 ｉ　ｲ::::ヽ l　　　　　　　丶
　　　 　 　 ヽ　 　 _　 ヽ ゝ_ゞ::ノ '　　 　 　 　 　 ',
　　　　　　　丶ｉ ｲ:::ヽ　l　 　 ｀ヽ　　　 　 　 　 　 ヽ
　　　　　　　　 ゝ ゞ ',　ヽ _　　丿　　　　　 　 　 　 ＼‐､-..､
　　　　　　　　　ヽ　 ゝ ﾉ , ‐ ´　　　　　　　　　　　 　 ソ:.:.:.:＼
　　　　　　　　　　ヽ　　´　 　 　 　 　 　 　 　 '　　　 /:.:.:.:.:.:／＼
　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　　　　　　/　　 ／:.:.:.:.／:.:.:.:.:.:.ヽ､
　　　　　　　　　　　　 ＼　　　　　　　　　　/　 ／:.:.:.:.／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ヽ､
　　　　　　　　　　　　 　 ヽ　　　　 　 　 ／　 /:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ヽ､
　　　　　　　　　 　 　 　 　 ヽ　_＿　 ィ　　　/:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:
60 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:58:12 ID:RPwbzUkv
八５９．



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ,. イ::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／::::::::::／:::::::::::::::/:::::::::::}ヽ,､::::::::::..
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /::::::::::::::::::::::::::／:::/!:::::::::::ｌ-vi_,}:::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /:::::::::::::/:::::::::::/::::::/ l:::::i|::::ｌ　 　 !:::::::::::∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ./:::::::::::::::{:i|:::::::/_!:_/_, ｉ::/ !:::ｌ　 　 ｌ::::::::::::::::ｌ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,.ｲ::::::::::::::::::ﾘ:{:::/,斗/=､//　i:::l ､　　ｌ:::::::i:::::::::ｌ
　　　「―――何を？」　　　　　／/::::::::::i::::::::::::Ν{だ;;r∨゛ 　 ｉ/ 　＼_}:::::/::::::::::ｌ
　　　　　　　　　　　　　　　　　´　/::::::::::/:::::::::::::/　弋;汐　　　/ ,x-=､/::::/:::::::::::/
　　　　　　　　　　　　　　　　　／:::::::::::/:::::::::::::∧ 　 ￣　　　　 /fr/ }｝／:::::::::::/
　　　　　　　　　　　　　　　　　::::::::::::::/:::::::::::::/　 ､　　 　 　 i)　ﾋﾀ, ∠::::::::/ﾊ/
　　　　　　　　　　　　　　　　　::::::::::::/:::::::::::::/　　 ﾍ 　　‐ ､　　　 , ｲ::::/ｌ/ .ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　::::::::_/::::::::::::∧　　　　ヽ._　 ,. ． '::´:::::::/ｌ
　　　　　　　　　　　　　　　　　::／ ｌ::::::::::::/　 ',　　　 /ｧ､:::::::::/:::::::::::/　ｌ
　　　　　　　　　　　　　　　　　、 　!::::::::::::{　　 ':､ 　 '　!　＼/:::::::::::/{.　 ﾞ:,
　　　　　　　　　　　　　　　　　∧　i:::::::::::::ｌ　　　 ヽ 　 ｌ 　 /:::::::::::/::::ｌ　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　:::∧ l:::::::::::::ｌ　　　 　' 、ｌ　/:::::::::::/:::::::::ｌ 　 　 ＼



　　　　　　　　　 　 ,. ‐―――――‐ - ､
　　　　　　 　 　 ／　　　　　　　　　　　　＼
　　　 　 　 　 ／　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ＼
　　　　　　　/　　　 ＼　　 　 　 　 ﾉ　　　　　 .',
　　　 　 　 /　　　　 ,　 ゞ.._,,　ー "　　 ､　　　　',
　　　 　 　 l　　　　 l {::::::::}　l　 l　{::::::::} l　　　　 l
　　　　　 . l　　　　 ｀ ー '　'　　｀　ー ' '　　　 　 l　　　　　「貴女が騎士である事を、だ」
　　　 　 　 l　　　　　 /　　　 .!　　　 ヽ　　 　 　 l
　　　 　 　 l　　　　　 ヽ＿_／ ＼＿_/.　　 　 　 l
　 　 　 　 . l　　　　　 〈　　　　　　　 〉　　 　 　 l
　　　　　　 .l　 　 　 　 ｀ｰ―――　' 　 　 　 　 l
　　　　　 　 l　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l
　　　　　　 . l　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l
　　 　 　 　 . l　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 l
　　　　　　　　!　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 !
　　　　　 　 ／!　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ,'＾ヽ
　　 　 　 ／{　|ヽ　　　　　　　　 　 　 　 　 /|　/ ＼
　　 　 ／　 ∨|　ヽ　　　　　　　　　　　 ／　| /
　　 ／ ヽ　　＼　　｀ー―――――　´￣￣　 ／
　／＼ 　 ＼　　＼　　　　　　　　／　 　＿　／
"ヽ　 . ＼　　ヽ　　｀ ー──一'　　 ／
　　＼　　＼　　＼　　　　　　　　／/
　 ,　 ‐┬─‐'ﾌ⌒ヽ｀ ー──　´　/
／　　　￣￣ 　 　 } 　＼　　 　　/
　　／ ￣｀ヽ／￣ ヽ　　 ＼
　/　　　　　/　　 　 |￣｀ヽ￣￣/
./　　　　 . /　 　 　 |　　　 |￣ヽ
　　　　　 /　　　　　|　　　｜ 　　}



ならば、立ち上がらぬ道理はない、と。
62 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 21:59:12 ID:RPwbzUkv
八６０．



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　/　　,､　|､|"ﾞ｀､　　　　｀､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l　　　　/　　/　| .|.ｌ|　　 l　　.::::::::::l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 | |　　　l　　/_,. | .| |ト､　 | , 　.:::::::::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　| |　　　l/l/'´　// /　 ｀メﾉl /l .:::::::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ､ヽ　　 ,ｨﾁ斤､′　 　ミュ'　!.:::l:::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　| ＼　{ｂ::::::ﾘ　　　　P::::::リ / .:::|:::ﾄ､
　　　「そんな………」　　　　　　　　　　　　ﾄ､　 ｀トﾞ-‐' 　　,　　｀‐-'／l.::　 |:::| ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|::|　　 ﾍ　　　　　　　　　/:::|.::.　|::::|　｀､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 |:::|　 ::::「｀ ､ 　 ´｀　　イ　｀|.:::.　|:::::|　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 |;:ｲ　 ::::|　　l ` ー ' ´　 !　 |.:: 　ﾄ､:::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／';:::| 　 :::|. 　|‐- ､ , -‐/ 　 !.::. ｜:::ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::';::|　　:::| 　 ヽ　　　/　 　|.::　 |:::::;'::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 l::::::::::::';:|　　:::|　　__＼／__　　|.:::.　|::::;'::::::::::::l



精神論じゃないの、と言いかけた彼女を遮ってやらない夫は強引に続ける。



　　　　　　　　 　 　 　 ￣　　 ､
　 　 　 　 　 　 ´　　　　　　　　＼
　　　　　／　　　　　　　　　 　 　 ヽ
　 　 　 /　　　　　　　　　 　 　 　 ノヾ
　　　　'　　　　　　　　　　　　ー ´　　ヽ
　　　 l　　　　　　　　　　　　　　/ .,.....､ヽ　　　　「俺は！………女性が戦う事は大嫌いです！
.　　　l　　　　　　　　　　　　　　l　{::::::}　l　　　　 出来ればいつだって安全な場所に居て欲しい！
.　 　 l　　　　　　　　　　　　　　冫.ー　く
　　　l　　　　　　　　　　　　　　 l　　　　ﾉ!　　　　だけど―――言葉さんは紛う事なき騎士だった。
　　　l　　　　　　　　　　　　　　 ｀ー‐ f ｒ'
　　　l　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾉ'　　　　　 女性故に辛い事もあったでしょうに、
　　　!　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 /　　　　　　全てはね除けて親衛騎士にまでなった」
　　 ,'　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /
￣　｀ー -　　　　　　　　　　 　 　 /
　　　　　　　 ｀　 ､　　　　　　　　/
:.:.:.:.:.:...　　　　　　　　､　 　 　 ／
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..　　　　　　.:.:ヽ _　´
ー-　:.:.:.:.:.:.:.:..　　　..:.:.:.:.:.:ヽ
　　　 ｀　､:.:.:.:.:.:.:...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
　　　　　　　､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼
　　　　　　　..:.｀:.:､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
　　　　　　..:.:.:.:.:.:.:.｀:.:､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./



司祭職の一つである聖騎士、高位の精霊使いと戦士の融合である精霊騎士と異なり、
この時代、この世界で女性が一国の騎士になるなどほぼ有り得ない事だ。

男尊女卑と言うわけでは無いが、男は男の役目があり女には女の役目があると思われている世の中で、
騎士として認められる為にはそれこそ血の滲むような苦労、
心が押しつぶされそうな苦しみを味わい抜いてきただろう。
63 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 22:00:17 ID:RPwbzUkv
八６１．
それをやり抜いてきたこの女性の心が、
こんな塔の中で朽ち果てる事などあって良いはずがない。

他の誰が許そうとも、やらない夫が許さない。



　　　　　　　　　 　 ,. ‐―――――‐ - ､
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　　　 　 　 /　　　　 ,　 ゞ.._,,　ー "　　 ､　　　　',
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　　　　　 . l　　　　 ｀ ー '　'　　｀　ー ' '　　　 　 l　　　　　「その心が―――
　　　 　 　 l　　　　　 /　　　 .!　　　 ヽ　　 　 　 l　　　　　 こんな所で錆び付いて折れるはずがない！
　　　 　 　 l　　　　　 ヽ＿_／ ＼＿_/.　　 　 　 l
　 　 　 　 . l　　　 　 　 l: : : : : : : : : l 　 　 　 　 l　 　　　　俺は―――俺が、そう信じています！」
　　　　　　 .l 　 　 　 　 lr―‐┬―‐l　　　　　 . l
　　　　　 　 l 　 　 　 　 ｀ ー――　'　　　　　　l
　　　　　　 . l　　　　　　　 ー―－　　 　 　 　 l
　　 　 　 　 . l　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 l
　　　　　　　　!　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 !
　　　　　 　 ／!　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ,'＾ヽ
　　 　 　 ／{　|ヽ　　　　　　　　 　 　 　 　 /|　/ ＼
　　 　 ／　 ∨|　ヽ　　　　　　　　　　　 ／　| /
　　 ／ ヽ　　＼　　｀ー―――――　´￣￣　 ／
　／＼ 　 ＼　　＼　　　　　　　　／　 　＿　／　　　　　　　　　　　　　、'ぐ'-,　　　　　　　　 　 　 　 　／ﾞゝ､
"ヽ　 . ＼　　ヽ　　｀ ー──一'　　 ／　　　　　　　　　　 　 　 'l￢､　'!ｯ､`ｉ｀'/''′　　　　 　 　 　 　 　 　`' ､ 　ﾞ' 、　　　　 .. 、
　　＼　　＼　　＼　　　　　　　　／/　　　　　　　　　　　　 　 .|　 ./ 　ヽヽ"゛　 .、　　　　　 .＿___　　　　　　ﾞ'-┘　　　　 / ´７
　 ,　 ‐┬─‐'ﾌ⌒ヽ｀ ー──　´　/　　　　　　　　　 　　　 　 !　./ 　　 .ｌ　ヽ　　'!￣ﾞﾞ__,ﾞ,ﾞ,ﾞ,ﾞ,ﾞ,,,,,,,,__)　　　　　　　　　　　_／ 丿
／　　　￣￣ 　 　 } 　＼　　 　　/　　　　　　　　　　 　　 　 ./ ./ 　　　　.!　 .ｌ　　 ｀´　　　　　　　　　　　　　　　　_..r┘ _／
　　／ ￣｀ヽ／￣ ヽ　　 ＼　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,i／　　　　　　|,　 l　　　　　　　　　　　　　　........--‐‐"｀　_..r''´
　/　　　　　/　　 　 |￣｀ヽ￣￣/　　　　　　　　　　　　　　 ｀　　　　　　　　 ´　　　　　　　　　　　　　　　|　__＿..--‐"´
./　　　　 . /　 　 　 |　　　 |￣ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ｀'´
　　　　　 /　　　　　|　　　｜ 　　}


64 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 22:01:15 ID:RPwbzUkv
八６２．
彼の言っているのがあくまで精神論で、物理的な裏付けなど何もないと言葉には分かっていた。



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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i:.:.ﾊ:i:.:.:i.:.:.:.::i:.:i ﾚf　/　　 /´ 　　　　　　 .|;ﾅ‐ﾄ､i.:.::.:i.:.:i.:.::
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　　　（全然理屈になってない………）　　　＼ヾi:.::ト:.:.:.{ヽ　_,.ｒ=､　　　　　 '´,ｒ=＝＝ｭ､ii.|:.:.:ｲ:./:.:.:.:
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だから、さも真理のように語りかけてくる自分よりも若い少年に呆れたが―――
65 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 22:02:12 ID:RPwbzUkv
八６３．
恥ずかしいぐらいに心臓が高鳴り、心の奥が熱く燃え始めたのが分かる。
彼に期待されていると思うと、嬉しくて涙が溢れそうになる。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾊ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::i:::::::::::ｌヽ::::::/ｌ:::::::::::::::::::::::::::i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /:::/::::::::::::::::::::::::::／:::::::ｌ:::::ｉ::::ｌ､_ヾ/_,ｌ:::::::::::::::::::ｉ:::::::ｌ
　　（でも何故だろう―――？　　 　　　　　 　 　 /:/:::::::::::::::::::::::::::/::::::::::/ｌ:::::ｌ::::ｌ　 ｀´　!::::ｉ::::::::::::::ｌ::::::ｌ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i:/ｌ::::::::::/:::::::::::::/:::::::／ /::::/ｌ:::|　　 　 ｌ:::l|::::::::::::::ｌ::::::ｌ
　　 そう言われると、　　　　　　　 　　　 　 　 　 i:ｌ ｌ::::::::/:::::::i:::::/::::::/ _,./::::/ ｌ::::!､_　 　 ｌ::ｌ|::::i::::::::::ｌ:::::ｌ
　　 そうしなきゃいけないんだ、　　　　　　　　　ｌ| |:::::::ｌ::::::::ｌ::::/:::::/"~ /:::/　ｌ::/　 ￣｀ヽ!ｌ !:::ｌ::::::::::ｌ:::::ｌ
　　 って気になるのは―――）　　　　　　　 　 　 ｌ ｌ:::::::ｌ:::::::ｌ:::/|:::/＿_/／　 ｌ/　 ＿＿_ l!　!::ｌ::::::::/::::::l',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾊ:::::::ｌ::::::ｌ/ ,lx=＝ミ､｀　 /　 ´,,ｨ＝=zx、ｌ/::::::/:::::::::ｌ ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /　',::::::ｌ::::{〃{r;;;;;;rl} ﾞ　 　　　" {r;;;;;;r l}ヾｌ:::::/:::::::::::::ｌ　',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 / 　 }:::::::ヾ:ﾊ　cvリﾉ　　 　 　 　 cv-ﾘﾉ /／::::::::i::::::::ｌ　 '､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 ｌ:::::::::::::::ﾊ　 ￣　　　　i　　　　￣ 　 ﾊ:::::::::::::ｌ::::::::ｌ　　'､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /　 　 ｌ:::::::::::::::::人 xxx　　　　　　　　xxx /:ｌ::::::::::::::ｌ:::::::::ｌ　　 '､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /　　　ｌ:::::::::::i:::::::::::::＞ 　 　 ｀　 ´　　　,∠:::ｌ::::::::::::::ｌ::::::::::ｌ　　　'､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /　　　ｌ::::::::::::ｌ:::::::::::::ｌ:::::::::}｀　､　__,.　イ:::::::::::ｌ::::::::::::::ｌ:::::::::::ｌ　　　 '､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /　　　ｌ:::::::::::::ｌ:::::::::::::r‐'´ ｌ　　 　 　 　 !｀ヽ、ｌ::::::::::::::ｌ::::::::::::ｌ　 　 　 '､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /　　　ｌ:::::::::::ノｌ:::::::::::::ｌ　 y'　　　 　 　 　 ｿ　｀!:::::::::::::l|::::::::::::ｌ　　　　　'､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　ｌ::,r'´ｌ　 ｌ/::::::::::ｌ 　 ｌ_　　　　　　　,/　　ｌ::::::::::::/ｌ｀ヽ、:::ｌ　 　 　 　 '､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　ｌ'´:::::::ｌ　/::::::::::::ｌ　　 ｌ ￣｀ヽ '´￣/　　 ｌ:::::::::::/::ｌ　 /｀ヽｌ 　 　 　 　 '､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /　 　 ｌ:::::::::::::ｌ/:::::::::::::::ｌ　　　ｌ　　　　　 /　　　ｌ::::::::/::::::ｌ /:::::::::::ヽ 　 　 　 　 '､



常に心からの言葉で語る重みだからこそ成せる業。
自分の都合ではなく、他人を思いやるが故の強さだから伝わるもの。

十八年間、ただそうやって生きてきたやらない夫だからこそ言える言葉がある、
伝わる想いがある、奮い起こせる心がある。

―――おそらく、そう言う事なのだろう。
67 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 22:03:13 ID:RPwbzUkv
八６４．
いつしか、雨がまた降り始めていた。



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68 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 22:04:14 ID:RPwbzUkv
八６５．
外から見たとおり、この塔には他に誰も居ないらしい。
届いてくる雨音と垂れる滴の音、自分の鼓動と呼吸のみが聞こえる空間の中で、
言葉は十分以上黙り込んでいた。

やらない夫も、ただ彼女が答えを出すのを待った。



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69 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 22:05:12 ID:RPwbzUkv
八６６．
静かな雨はまるで―――彼女の曇りを洗い流してくれるかのようで、



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ
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::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::/|:::ト、:::::::::::::ヾ:::＼
:::/:::::::::::::::::::::::/:::::::::/ .!::ｌ_,..',:::::::::::::::::ヽ,:::ヽ
:/::!:::::::::::::::::::/::::::::::/,r'}::ｌ 　 }:::::::::::::::::::}',::::ｉ　　　　「ねえ、やらない夫君―――」
:::::!::::::::::!::::::::ｉ::::::::::/　/:/__　ｉ::ｉ:::::::::i|:::::ｌ i:::ｌ
::::ｌ:::::::::::ｌ::::::::ｌ::::::::/　 i/弍　ｌ::ｌ::::::::::|l::::l　!:l
::::|::::::::::::ｌ::::::::ｌ::::/　 ,;佗ﾄi　 !ｉｌ::::::ｉ::l ｌ:::ｌ　ｌ:ｌ
::::|::::::::::::l|:::::::|ｌ::{　〃'っ;ri 　' {:::::!::ｌ ｌ::ｌ　 ﾘ
::人:::::::::::li::::::l ',:!　 　 乂ﾘ 　 ヽ.ｉ:/　ﾘ
'::::::ヽ::::::::ｌｉ:::::ｌ ヾ, 　　¨ﾞ ｰ　　　｀ ;
::::::i:::::｀､::ｌ:ｌ:::::',　 ｀ 　 　 　 　 　 /
::::::ｌ::::::::::｀!::ヽ::ﾊ、　　　　　　 _ ﾉ
:::::::ｌ:::::::::::::::::::ト､!｀ヽ　　　　'´ /
::::::::ｌ:::::::::::::::::::',　　　 　 　 　 /
:::::::::ﾊ::::::::::::::::::ヽ ．., ＿__ ,.ノ
::::::/　',:::::::::::::::::::::＼/
::::/　　∨::::::::::::::::::::::＼
::/　　　 ∨:::::::::::::::::::::::::＼
/　　 　 　＼::::::::::::::::::::::::::::＼



　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　／　 ヽ､_　　＼
　　　　　　　　　　　　　　（●）（● ）　　　|
　　 　 「はい」　 　 　 　 （__人__）　　　　 |
　　　　　　　　　　　　 　 （｀⌒ ´　　　　　|
　　　　　　　　　　.　　　　 { 　 　 　 　 　 |
　　　　　　　　　　　　　　　{　　　　　 　 ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　　 　ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　ﾉ　 　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　 　 　 /　　　　　 |

70 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 22:06:12 ID:RPwbzUkv
八６７．
曇りが晴れたのなら、現れた太陽に照らされて
希望が輝き出すのも当然のことで―――



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ
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::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::/|:::ト、:::::::::::::ヾ:::＼
:::/:::::::::::::::::::::::/:::::::::/ .!::ｌ_,..',:::::::::::::::::ヽ,:::ヽ
:/::!:::::::::::::::::::/::::::::::/,r'}::ｌ 　 }:::::::::::::::::::}',::::ｉ　　　　「本当に―――
:::::!::::::::::!::::::::ｉ::::::::::/　/:/__　ｉ::ｉ:::::::::i|:::::ｌ i:::ｌ　　　　 出遅れた私にも、出来る？
::::ｌ:::::::::::ｌ::::::::ｌ::::::::/　 i/弍　ｌ::ｌ::::::::::|l::::l　!:l
::::|::::::::::::ｌ::::::::ｌ::::/　 ,;佗ﾄi　 !ｉｌ::::::ｉ::l ｌ:::ｌ　ｌ:ｌ　　　　 王女様のお手伝いが………」
::::|::::::::::::l|:::::::|ｌ::{　〃'っ;ri 　' {:::::!::ｌ ｌ::ｌ　 ﾘ
::人:::::::::::li::::::l ',:!　 　 乂ﾘ 　 ヽ.ｉ:/　ﾘ
'::::::ヽ::::::::ｌｉ:::::ｌ ヾ, 　　¨ﾞ ｰ　　　｀ ;
::::::i:::::｀､::ｌ:ｌ:::::',　 ｀ 　//// 　 　 /
::::::ｌ::::::::::｀!::ヽ::ﾊ、　　　　 　 　 ﾉ
:::::::ｌ:::::::::::::::::::ト､!｀ヽ 　 　 ｰ ´/
::::::::ｌ:::::::::::::::::::',　　　 　 　 　 /
:::::::::ﾊ::::::::::::::::::ヽ ．., ＿__ ,.ノ
::::::/　',:::::::::::::::::::::＼/
::::/　　∨::::::::::::::::::::::＼
::/　　　 ∨:::::::::::::::::::::::::＼
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　 ヽ_　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　 （⌒ ）（⌒）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　|　　　　 （__人__）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　 |　　　　　　 　 }
　　　　「もちろんです！」 　　　　　　.　 ヽ　　　　　 　 }
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ 　　　　　ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_,,,,ノ|､￣／/／/ ＼、
　　　　　　　　　　　　　　　　　_,,..r''''"/　|　＼`'／　 /　 | ￣`''ｰ-､
　　　　　　　　　　　　　　　　 / 　 　 /　 |　 ／＼　 / ／　　 　/　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　ﾉ　|　　＞　|／）::::/＼/　＼ 　　ノ　／}
　　　　　　　　　　　　　　　　{ 　 |　{　　 | ,r":::ヽ　/ 　 /　　/　// ハ

71 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 22:07:16 ID:RPwbzUkv
八６８．
言葉が親衛騎士たる女性に戻るまでに、それほどの時間はかからなかった。

　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ＿＿＿
　　　 　 　 　 　 　 　 　 ,. ィ::≦´::::::::::::::::::｀二‐ ．
　　　　　　　　　　 　 ／:::::::::::::::::::::::::::::::i､::::::::::::::::｀ヽ、
　　　　　　　　　　／:::::::::/::::::::::::::::i:::::::::|;;'}::∧:::::::::::::::ﾞ:,
　　　　　　　 　 /::::/::::::/::::::::::::::::::i|::::|!::|wi/!vｉ:::::::::::::::::ﾞ:,
　　　　　　　　/:::::/::::::/::::::::::::::／ l::::ｉ !:|　　　|::::::::::::::::::::',
　　　　 　 　 /:::::/::::::/:::::::::::::/　　l::::ｌ !:| 　 　 !::iｌ::::::::::::!:::ｉ　　　　「じゃ、じゃあ頑張ってみる。
　　　　　　　i::::::,':::::::/::::::::::::/ヽ、/::/ .i:|　 　_｜!|::::::::::::ｌ:::|　　　　私は私を信じられないけど―――
　　　　　　　|i:::::!:::::::{:::::i:::::/ 　 /::ﾒ.,　i:|_,／　 i:l !::::::::::::i:::|
　　　　　　　||i:::::l::::::::::::i|::{　　/／　　i:|　__　　|! !ｉ!:::::::::ｌ:::|　　　　やらない夫君の事は信じてるから！」
　　　　　　　ﾘ ',::::l::::::',::ｌｉ,,≠爪沁, 　 ｉ! ,佗勿ェ､!|:::::}:::l::::|
　　　　　　　　 ∨:ﾞ,:::::ヾ《 'っ;;;ﾘｉ　 　 ! 　'っ;;;ｿ} 》}::/::::ｌ::::|
　　　　　　　　　i}:::::＼::｀､ ゞ-‐'　　 　 　 ﾞｰ-'′//ｉ:::/:::::|!
　　　　　　　 　 ｉ|:::::::::::{｀ヾ、xxx　　 ,　 　 xxx／´ﾉl/::::::::|i
　 　 　 　 　 　 i.|::::::::::::ヽ人　　　　　　　 　 　 ﾊ´:::!:::::i::::|.i
　　　　　　　　 ｉ |::::::::::::i:::::::::｀ヽ､　 ´ ｀　 , ｨ '′::i::::::::::l::::| i
　　　　　　　　i　|:::::::::::::!:::::::::::::i　｀　ｰ '´　 !:::::::::l:::::::::::l::::|　i
　　　　　　　 ｉ　 |:::::::::::::ｌ:::::::,r丿　　　 　 　 !ｧ、:l::::::::::::l::::|　 i
　　　　　　　ｉ 　 |:i::::::::::::ｌ／　ｌ　　　　　　　 ｌ　｀l:::::::::::::l::::| 　 i
　　　　　　 ｉ　　 |::l::::::::::::ｌ　 　ｌ ‐‐-､　,. -‐ !　 ｌ::::::::::::::l、|　　 i


　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 , ------ 、　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ／ ヽ
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ／　　　　　　＼　　　　　　　　　 　 　 ／ヾ ／
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 i 　 　 　 　 　 　 i　　　　　　　　　　 ／ヾ／
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 |　 ＼ 　 　／　 │　　　　　　 　 .／ヾ／
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ｜ （ ●） （● ） ｜ ､-- ､　　　／ヾ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　　（__人__）　　i　　弋||ニi／ヾ／
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 , -!　　 ｀⌒ ´　　 !-､ 　　／○||´　　　　　　　　　「よし！
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 |､ヽヽ　　　　　　 / / |...／ト､／弋｀||　　　　　　　　じゃあ、俺の予備ですが剣や
　　　　 　 　 　 　 　 , 　―;;;;;;;―´　| |､｀ ――― ´.,| | 　｀-;;;;;--　 ､｀弋 |　　　　　　道具を渡します。
　　　　 　 　 　 　 ／ ヽ 　 ▽ 　ヽ　 ヽ ￣￣￣￣/　／　　▽／ ＼　 ´
　　　　　 　 　 　 .i　 　　｀　-　　r―‐/＼　　 　／ヽ― ､　 - ´　 　　 i　　　　　　　　それから魔符を使った作戦を伝えますので
　　　　　　　　 ／　　 　 　 　 　 |　／－ ―┬― －＼　|　　　　 　 　 ＼　　　　　　 宜しくお願いします」
　　　　　　　　　>､ ｀ ー--　　　,／ 　 　 　 ｜　　 　 　 ＼　　--―　´ ,<
　　 　 　 　 　 .>､　 ｰ――‐,‐ ´ 　<＾ ＾>　　|　　 　 　 　 ｀ｰ､－――‐ ,<
　　　　 　 　 　 >､　 ｰ‐,―､´....　　　Ⅴ 　　｜　　　　　　　　 ,｀ｰ､‐―‐ <
　　　　　　 　 / 　　　／::::::i＼.　　,.　-－―┴―－-　､ 　 ／!::::::::＼ 　　ヽ
　 　 　 　 　 /＿　／:::::::::八　 Ｙ　　　　　　　 　 　 　 　 Y　　八::::::::::＼ ＿ヽ
　　　　　　　　i::::::::::::: ／:i;;;;;ヽ. ヽ　　　　　　　　　 　 　 /　 ,/;;;;;;ト:::::::::::::::::<
　　　 　 　 　 i::::::::::::::::::::/;;;;;;;;|ヽ´ ＼, -――――- ､／ ヽ´|;;;;;;;;i::::::::::::::::::::i
　 　 　 　 , - !::::::::::::::::::::|;;;;;;;/　　　　|　　　　　　　　 |　　　ヽ;;;;;;;.!::::::::::::::::::::!- ､


それで早速、この後のことに移ろうとやらない夫は道具入れに片手を突っ込んだのだが、
72 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 22:08:12 ID:RPwbzUkv
八６９．
申し訳なさそうに、恥ずかしそうに俯いた言葉がもう一度だけそれを遮る。



./::::i.:..:i.:..:.:i.:.:.:/ /.::///:/　　 .|.:i.:.:i.:.:.:.:i.:.:.
|:.:.:i.:.:.:i.:.:..:i.:.:/ //// 'メ__　　 .|:.ﾄ, i.:.:.:.:i:.:.
|:.:.i.:.:.:i.:.:::i:.:{i:.ﾝ´/´ /　　`'''ｰ.f;| |.:i.:.:.:i.:i:.:
|:.:ﾊ::i.:.:i.:..:レiｆ´/.／　　　　　 .|i'.`|.:i.::.:i.:i::.　　　　「あ、うん。
.ヾiヾi.:.:i.:.:i{| i　　　　　 　ｧ--=ｪ､ |ﾘ.:.:i.:ﾘ:.　　　　剣を貰えるのは嬉しいんだけど、
　ヽ､{:.:ﾄ;:::ト､ｒ;ﾆﾐ　　　　 "￣＾`ｿ/;:ｲ.:i.:.:　　　　その前に―――」
　　　.|ﾄ;ヾ'ﾐ､":::::　 　　　　::::::::　/'.|.:i./.:.:
　　　 |i.:｀ﾍヽ. 　　｀ .__　　　u　　/i.i:/:.:.::
　　　 |.:i.:.:.:i.:i｀;;.､. 　　　　 　　 .ｲi/i/.:.::.:
　　　 .|:.i.:.:.::i:i.:i.:.:i｀;;...､._　,　'´ 　|i.:i.:/.:.:.:
　　　　|.:.:i.:.:.:i.::i.:i.::i.:.::.:;:i 　　　　.|:.i/.:.:.:.::



　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　／　 ヽ､_　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　 （●）（● ）　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　 （__人__）　　　　 |
　　　　　「その前に？」 　 　　（　　　　　 　 　 |
　　　　　　　　　　　　　　.　　　　{　　　 　 　 　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ⊂ ヽ∩　　 　 く
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 | '､＿ ＼　／　 )
　　　　　　　　　　　　　　　 　 　|　 |_＼　 “　.／
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ヽ､ ＿_＼_／

74 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 22:09:12 ID:RPwbzUkv
八７０．
ぺたん、と座り込むと同時に腹が全力で空腹を訴えた。
霊薬で体力を戻したとは言え、身体の中に燃料が全く残っていないのだから無理もない。



　　　　　　　　　　　　　　　,.ィ_:.:´￣.:.:｀.:ヽ
　　　　　　　　　　　　　／:.／.:.:.:.´.:.:.: z´.:.:.ヽ
　　　　　　　　 　 ＿／ :／:／／.:.:／.::ﾊ:i.:.:.:.ﾊ
　　　 　 ,.．--‐ '´ / .:./.;.:.:／/.:／.:;／ ﾉﾍ.i.:.:.:.l
　　　／ 　 　 　 ノ .:.:ｲ :i 〈,r 　ｊ//''' ／ヽ、j:l.:.:.|　　　　　「何か、食べるもの………
　　/　　　　／.:.:.:／ :.| .:i .:|　ミ　／ 　ヽ 刈.:/|　　　　　　持ってませんか？」
.　 i　　　／／:／ .:.／| :.ヽゞu　 　,　 ミ .,ｲ/.:/:/
　　＼ /://:;ｨ　:.:彡.: .:| : :.:|＼ ヮ __｀ﾞ彡::/.:/ ;ﾍ
　　　　/: {.:ﾚ' .:／//　.:小:.:.ヽ∧入;;/.:/.:/.:/　 ',
　　　　 {:i {;' //|:.:/　　|　|!ミ8彡| |:.:./!.:/.:ﾘ　　 |
　　　　　ﾘ:ﾉ ｊ/ :l/　　 |　| .|b_| l| .|:/:.:./.:.|′　　|
　　　　　　　　 /　　　ｌ　|/　// | .|/／／　 　 　j
　　　　　　 　 /＿＿_| ⊥_ｰｰ|⊥_　　　　　　　 /
　　　　　　　ﾉ_ﾊﾊ__ハｌ_ｌ_ｌ.}/ヽｌ_ｌ_ｌ.}　　ｸﾞｩ～
　　　　　　　（､`ｰｰ､ｨ＿_}￣` 　　ﾉ　　ｷｭﾙﾙﾙﾙﾝ
　　　　　　　　 `ｰ､､＿__/｀"''－‐"



　　　　　　　　　　　　　￣￣ 　 ､
　　　　　　　　 ´　　　　　　　　　 ＼
.　　　　 　 /　　　　　　　　　　　　　 ＼
　　　　　 /　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ
　　 　 　 ｉ　　　　　　　　　　　　　　　　　丶　　　　　　　　　　「携帯食料で良ければありますよ。
　　 　 　 l　　　　　　 ／ ￣　　 　 　 　 　 丶　　　　　　　　　 確かに『腹が減っては戦は出来ぬ』って言いますしね」
　　 　 　 |　　_＿　　 　 　 　 　 ヽ　 　 　 　 丶
　　 　 　 ヽ/ 　 　 　 　 ｉ　イ｀丶 l　　 　 　 　 丶
　　　 　 　 ヽ　　　　 ヽ ゝ _　　　　　　　　　　　 ',
　　　　　　　丶ｉ ｲ｀丶 l　 　 ｀ヽ 　 　 　 　 　 　 ヽ
　　　　　　　　 ゝ　　,　ヽ _　　丿　　　　　 　 　 　 ＼‐､-..､
　　　　　　　　　ヽ　 ゝ ﾉ , ‐ ´　　　　　　　　　　　 　 ソ:.:.:.:＼
　　　　　　　　　　ヽ　　´　 　 　 　 　 　 　 　 '　　　 /:.:.:.:.:.:／＼
　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　　　　　　/　　 ／:.:.:.:.／:.:.:.:.:.:.ヽ､
　　　　　　　　　　　　 ＼　　　　　　　　　　/　 ／:.:.:.:.／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ヽ､
　　　　　　　　　　　　 　 ヽ　　　　 　 　 ／　 /:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ヽ､
　　　　　　　　　 　 　 　 　 ヽ　_＿　 ィ　　　/:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:



それでまずは食べ物と水筒を取り出すと
立ち上がれない様子の言葉に手渡し、その隣に座り込む。
75 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/30 22:10:12 ID:RPwbzUkv
八７１．
牢屋の休息―――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／: : : : : : : : : : : : : : : : : : :＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／: : : : : l: : l ﾄ､;ヽ:｀: : : :＼: : : :｀､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /: : : : : : : |: : l l ｀ ゛l:l : :ヽ: : ヽ: : : ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /:/: : : /:l : :ｲ: ::l l　　 l::l;:::::l::::ヽ;:::::::i::::i
　　　「何から何まで、ありがとう。　　　　　| l: l: : :l :l::/ |: /l l--- l:l 'l::::l:::l:l:l:::l::::l:::l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　| | :| : :l: l/　// l l　,___ ll +::;l:::l::l::::l::::l::::l
　　　私の方がお姉さんなのに、　　　　　　| |: | l:::l V //　ﾚ　",l"弐x,_ l://::::l::::l::i::l
　　　全然そう見えない………ね」　　　　　ﾞl: : :;:l::::l,y弐､　　　　 ｏ::::ﾘ///::::::l:::::l::i::l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　 !､l ヽ;::l,ﾞ 'ｏ:::l　　　　v=" ｲ:: ::::::::l::::::l::i::l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼'l､ヽ゛''"　 　 　 〃　l :/:::::::l:::::::l:::::l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 |: :.､〃丶　 ,　　　 l::/::::::::l:::::::::';:::ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 |::l::::｀'...,..,￣　　／l:/::::::::;'ヽ::::::::';::::ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 |:l : :::::::l::::l:::>i＿ ,ィ : :::::::l　ヽ:::::::';:::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 Y : :::::::l:::::/7　　〃::::::::::/冫ヘ::::::';:::::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ : ::::::l::ﾚ ﾉﾉ　 / : ::::::::/´　　　 ＼:';::::::::::::＼



五歳も違うんだけどなと、困った様子の彼女に
さすがのやらない夫も何を言えば良いのか分からず、笑って別の話題を持ち込んだ。




　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　　 ／　　 _ノ　　＼
　　　　　　　 |　　　 （⌒ ）（⌒）
　　　　　　　 |　　　　 （__人__）　　　　　　　　　「あはは………。
　 　　　 　 　 |　 　　　｀ ⌒´ﾉ
　　　　　　　　|　　　　　　 　 }　　　　　　　　　　見回りが来ないなら三十分ほど猶予がありますし、
　　　　　　　　ヽ　　　　　ﾍミ|　　　　　　　　　　食べながらで良いので聞いてください。
　　　　　　　　／,`　、` -`,--` ,
　　＿＿,---/;;;;;`　　`-,-/ニﾆ |　　　　　　　　あれから何があったか、
　/;;;;;::::、:::::::::|、_ ,＞、 /::l,_l･　,<、__　　　　　　こちらがどうなっていたかをお話しますので」
ノ;;;;;;;;;;;;:::|::::::::::＜:::::::ヽ``l::::|　　|`l,::::ヽ
|;;;;;;;;;;;;;;:::::|:::::::::::::ヽ:::::::＼|:::|`-‐'/::ヽ::::|
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|;:::::::::::::::::::-、:::`;:ヽ;-';;;;;:::ヽ::l
;;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;;:::::::::::::::::::::`、;`l;;;;;8;;;;;::::`ヽ
;;;;;;;;;;;;/、;;;;;;;;;;;;::::::::::::::::::::::;`l;;;|;;;;;;;;;;;::::: `l|、
;;;;;/'　 `,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::::|;;;::l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::l
;;;く　　　';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::::::::::;;;;;;;l;;;;;;;;;;;;;;;;;;/



城の事、町の事、隠れ家の事、自分達の事、
伝えなければならない事は多く、聞かなければならない事もまた多い。

今夜の戦いを出来うる限り有利に進めるため、
可能な限りの摺り合わせをしておきたかった彼は手帳とペンを取り出すと、
まずは葬儀の日の事から話し始めたのだった―――

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76 名前： ◆FrtuoSIf66 [sage] 投稿日： 10/10/30 22:10:41 ID:RPwbzUkv
本日の投下は以上になります。
ご閲覧、合いの手ありがとうございました！

次回は第八章その２になります。



第八章　嵐の中で　その２へ

1. 2010/10/30(土) 22:19:50|
2. やらない夫は約束を守るようです
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