時は四世紀、崇神天皇の時代。
とある列島の中央よりやや西に、吉備の国があった。
土地は肥沃で気候も穏やか、さらに海からは塩が取れた。平和な土地だった。
平和な土地だったのだ……

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――やる夫は鬼退治されるようです――
　　　　　（原作：もも太郎）
※このスレはフィクションです。史実と異なる部分があります。
第１話[鬼が島]

「あいつを討ちとれ！」
「逃がすな！　追え！」
「お父さん！　待ってよ！　どこに行くの！」
「だめだ……お前は、母さんを連れて逃げろ」
「嫌だ！！　お父さん！」




　　　　　　　　　　　　　　　　ｶﾞﾊﾞｯ！
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＿＿_＿＿
　　　　　　　　　　　 　 　 　 ／ｰﾆjj三ﾆ‐ u ＼　　　うわああああああああああああああああ！
　　　　　　　　　　　　　 　 /（○）)三（○ ）)::li| ヾ
　　　　　　　　　　　　　 　l|i　:;:(（__人__）))　.::u:;:li}　　
　　　　　　　　　　　　　 　ヽ:;:::　{r┬-}i　::::lii:::;u ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　 　 ＼__`ー"u　　 ::;;／、───────- ､
　　　　　　　　　　　　　　　　,ｒ'　ヽ二ノ￣￣r⌒ヽ （￣￣（￣）　　　　　）ヽ
　　.　　　　　　　　　　　　／ |　ｲ　 Y　　 　 |　　 |　￣￣:::￣. 　　　　／:/
　　.　　　　　　　　　　 ／　　|　 |　　　　 　 :|　　 | ::::::::::::.　　　　　 ／　/
　　.　　 　 　 　 ／￣￣￣￣￣ヽニ＝ー､/　　/i::::::::　　　　　　／　／
　　　　　　　 ／　￣　￣　　　─　　　　　　⌒￣ヽ　 　 　 　 ／　／
　　　　　　 /　r　＿ /　＿　　　　ｒ　　　＿　ー 、￣ヽ　　.／　／
　　　　　　 {　｛　　　{　　　　─　　　 {　　　　　　）　　 }／　／
　　　 　 ／ ヽ、＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿ノ　　 /　.／
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　　.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.;;;;:.:.:. ;.:.:.:.:.:.:.:.,,:.:.:.:.:.:.:／　　 ／ ／

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　　＿＿＿_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　／　　 　 　＼　　　　　あれ……ここは？
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　／　─　 　 ─　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ／ 　 （●） 　（●） 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 |　 　 　 （__人__） 　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ＼　　 　 ｀ ⌒´　　 　 ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,. ‐'／ `<,ム,,、 _／´ ￣ く
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,. ‐'".／:::.　......　:::::o::::::"''"...:::::::..', ｀ﾞヽ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,. ‐'"　　 ／:::::. ::i::::::: 　 ::::...　　 　::::::::::　i　　　／￣￣｀゛'' -､,
　　　　　　　　　　　　　 　,. ‐'"　　　　／　　　:::l　　　 :::::o 　 　.,:　　 　 l　／: : : : : : : : : : : : : ｀ヽ
　　　　＿　　　　　　,. ‐'"　　　　　 ／::.　 .:::::::./i::::: 　:::::::: 　　,,ｲ:::.　　　l/: : : : : : : : : : : : : : : : :
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　　　　　　　　　　　　　　 ｀ヽ／　　　　　　 /　 /::::..　 　　　/　　 :::::::::::li　　＼: : : : : : : : : : : :
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　　　　　　　　　　　　　 し'　　　　　　　　　　　　 　／　　 　　..::::::/　　　＼




　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿　_　_,.... __
　　　　　　　　　　　　　 ,.-‐' "´ヽ::::::y'´　　　 ﾐヽ､
　　　　　　　　　　 　 ／.:.:.:.:::::::::::::::'´::::::::::::::::::::::.::ヽ＼　　　　　　ああっ
　　　　　　　　　　　/.:.／.:.:／.:.:/.:.:::::ﾄ、:.ヽ:.ヽ:.ヽ.:.:ヽ:ヽ　　　　　まだ動いちゃだめですよ
　　　　 　 　 　 　 /／:.:.／.:.:/./:N:|ヽ!|il:.:ヽヽ:ヽ::ｌ:.::.::i::::',
　　　　　　　　　 ///:.:/:.:.:.:./:ｲ.::|ｌ|:f´￣|::Y:i::|!:.:!.|.:.:.:.|:.:.:.!　　　　凄い怪我なんですから、安静にしていないと
　 　 　 　 　 　 ///.:./:/;ｲ:/:::ｌj;:ﾑH!　　ｨ:ｌl什ト､j:|.:.:.:.|::.:.:l
　　　　　　　　//!:!:././/::!:l:イ| ｣⊥ヽ 　 |ｌj抂ｪ｣|｀!..:.!:ﾄ、:.l
　 　 　 　 　 〃 |:|:i:.:.l:i:.:.|:.l:.:ﾚぅ⌒f　　　!´ﾋ'　 lヽ!.:.ｌ.:| ヽ:.l
　　　　　　　 !　∥!|:.:i:l.i.:ﾄ:l.:iハ..::::j_　　 　 L::::ﾉ　|:.:|:.|　 ＼
　　　　　　　　　 l lヽ从ﾄ:! い、 ¨´　　 ,　　 　 　 |.:.l.:.|､,__　＼
　　　　　　　　 　 ! >ヘヽヽノ:ﾄ､　　　 －　　　／|.::|ｉ:.|;;i;;i｀ｰ‐ヘ
　　　　　　　　 　 /ヽ-‐7´/;;ｲ:::＞..,._　　　,.イ::::::|.::|l:ﾘ^介r､;;_j;;;;＼
　　　　　　　　 ／;;;／ノ;rくﾊ二__￣￣￣￣￣__ｺﾆミ{ノ:/ﾉ,ﾘ`´`'ーﾍ
　　 　 　 　 ／;;;;ィ"~＾ヽ`ﾐﾐ片__＂￣`'￣`'￣″|:..:｀Y彡'″
　　　 　 　 ´"´　　　　　＞'-ﾆ_ `'´￣`'￣`'￣`ﾟﾋ'ｰ-ト､
　　　　　　　　　　　 ／　　　　 弋ｰ--ｔ--ｧ-ｰ￢´｢lY 　 ヽ､
　　　　　　　　 　 ／　　　　 　 　 ヽ::.::.:У::.::.;:-┤j !|　　 　 ＼
　　　　　　　　　/　　 ヽ　/　　　　 ヽ::/::.::./´ ｒ'⌒ヽヘ　 　 　 ヽ

　　　　　　　　　　　 ＿＿＿_
　　　　　　　　　　／　　 　 　＼
　　　　　　　　 ／─　 　─　　 ＼　　　　　　……怪我？
　　　　　　　／ （●）　（●） 　 　 ＼
　　　　　　　|　 　（__人__）　　　　　 |
　　　　　　　＼　　 ｀ ⌒´　　　　_／
　　　　　　　　/ l　　　　　　　 ヽ
.　　　　　　　/ /l　　　　　　 丶 .l
　　　　　　 / / l　　　　　　　 }　l
　　　　 ／ユ¨‐‐- ､_　　　　　l　!
　　_ ／　　　｀ ヽ__　 `-　　　{し|
　／　　　　　　　　　　｀ヽ　}／
　　　　　　　　　　　　／ ／/
　 ,,, ＿＿ __＿　_／ ／_/

　彼が自分の体を確認してみると、無数の切り傷と痣があった。
この傷がなんであるか分からなかった。さらに、彼はもっと重要なものを失っていた。

　　　　　　　 　　　＿＿＿_
　　　　　　　　　／　　 　 　＼　　　　　　僕は……誰だお？
　　　　　　 　／　　─　 　 ─＼　　　　　ここはどこなんだお？
　　　　　　／　 　 （●） 　（●） ＼　　　　
　　　　　　|　　　　　（__人__）　　　|
　　　 　　 ＼　　 　　｀ ⌒´　　 ,／
　　　　　　ノ　　　　　　ー‐　　　＼



　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿　_　_,.... __
　　　　　　　　　　　　　 ,.-‐' "´ヽ::::::y'´　　　 ﾐヽ､
　　　　　　　　　　 　 ／.:.:.:.:::::::::::::::'´::::::::::::::::::::::.::ヽ＼　　　　　　ここは、吉備の国です
　　　　　　　　　　　/.:.／.:.:／.:.:/.:.:::::ﾄ、:.ヽ:.ヽ:.ヽ.:.:ヽ:ヽ
　　　　 　 　 　 　 /／:.:.／.:.:/./:N:|ヽ!|il:.:ヽヽ:ヽ::ｌ:.::.::i::::',　　　　　あなたは、この近くで行き倒れているところを発見され、
　　　　　　　　　 ///:.:/:.:.:.:./:ｲ.::|ｌ|:f´￣|::Y:i::|!:.:!.|.:.:.:.|:.:.:.!　　　　ここに運び込まれました
　 　 　 　 　 　 ///.:./:/;ｲ:/:::ｌj;:ﾑH!　　ｨ:ｌl什ト､j:|.:.:.:.|::.:.:l
　　　　　　　　//!:!:././/::!:l:イ| ｣⊥ヽ 　 |ｌj抂ｪ｣|｀!..:.!:ﾄ、:.l　　　　もう三日も目が覚めなかったんですよ
　 　 　 　 　 〃 |:|:i:.:.l:i:.:.|:.l:.:ﾚぅ⌒f　　　!´ﾋ'　 lヽ!.:.ｌ.:| ヽ:.l
　　　　　　　 !　∥!|:.:i:l.i.:ﾄ:l.:iハ..::::j_　　 　 L::::ﾉ　|:.:|:.|　 ＼
　　　　　　　　　 l lヽ从ﾄ:! い、 ¨´　　 ,　　 　 　 |.:.l.:.|､,__　＼
　　　　　　　　 　 ! >ヘヽヽノ:ﾄ､　　　 －　　　／|.::|ｉ:.|;;i;;i｀ｰ‐ヘ
　　　　　　　　 　 /ヽ-‐7´/;;ｲ:::＞..,._　　　,.イ::::::|.::|l:ﾘ^介r､;;_j;;;;＼
　　　　　　　　 ／;;;／ノ;rくﾊ二__￣￣￣￣￣__ｺﾆミ{ノ:/ﾉ,ﾘ`´`'ーﾍ
　　 　 　 　 ／;;;;ィ"~＾ヽ`ﾐﾐ片__＂￣`'￣`'￣″|:..:｀Y彡'″
　　　 　 　 ´"´　　　　　＞'-ﾆ_ `'´￣`'￣`'￣`ﾟﾋ'ｰ-ト､
　　　　　　　　　　　 ／　　　　 弋ｰ--ｔ--ｧ-ｰ￢´｢lY 　 ヽ､
　　　　　　　　 　 ／　　　　 　 　 ヽ::.::.:У::.::.;:-┤j !|　　 　 ＼
　　　　　　　　　/　　 ヽ　/　　　　 ヽ::/::.::./´ ｒ'⌒ヽヘ　 　 　 ヽ

..　　　　　　＿＿＿_
　　　　　／　―　　-＼　　　　　　　吉備……？
.　　.　／　 （●） 　（●）　　　　　　知らない所だお
　　／　　　　 （__人__）　＼
　　|　　　　 　　｀ ⌒´　　　|
.　　＼　　　　　 　　　　 ／
.　　　ノ　　　　　　　　　＼
　／´　 　　　　　　　　　　ヽ


　 　　,.' ｲ:.:.:.:. ／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.://ヽ,l::: ﾍ .:.::.::.:.:.:.:.:.:.::.V　　ヽヽ
　 　.//!':.:.:.:: ':.:.:.:.:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::://ヾ,;;;|/::ﾉ/.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|.:.:.:.:.:.:.:. |
　　// ':.:.:.:/ :.:.:.:.:.:.:.:/.::.:.:.:./:_;_:/_jl/ 　 ´　 '::l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.: |:.: |　　　　　　　あなたは……
　 ,'//:.:.:.:/ｲ:.:.:.:. !:.:.:{:.::.／ :.:.//　||` 　 　　|ﾑl ‐|!､:l :.:.:.:.:.: |:.:.:.:.: |:.: |　　　　　　　この近くに住んでいらっしゃるのでは
　 l　!:.:.:://:!:.|:. |:| .: |:.:. |: l!.:/=!=..|ﾄ.､ 　 　 || ,|:_:|!|:.|＼ :.:.:.:| :.:.:.:.:|:.: |　　　　　　　ないのですか
　 |! |:.::/ﾊ' !.:|:. |:l:.:: |:.:: ﾚ'∨ ':: ヽ|!ﾞ' 　　 　||,r!:=ﾄ|:.|　|:.:.,:. , .:.:.:.: |:.: |
　 ｀ |:./ | 丶!.:.:.ﾊヾ |.:.: |j　 ﾊ::::::ﾉ! 　　 　　ヾ ヽ!::Vヾl: /|:ﾉ :.:.:.:::;|:.. |
.　　 ﾚ'　　　 ＼| 'ヽ,'ヽﾄゝ　ヽ｀´,ﾉ 　 　 　 　　ﾊ:::::::ﾊ! Yl! |:.:.:.:.:. , :. |
　　　 　 　 ／　ヽ /.:::!　　　 ￣ 　　　 　　 　 ヽ_｀_ノ　 ´ /!:.:.:.::∧ .:|
　　　,. ..:':´ゝ　　　'ｲ:. |! 　 　 　 　 　′ 　　 　 　　 　　,ｲ:.l:.:.: ,'　ヽ,,'
,_.., '::::::::::::::_j, .-= .||:.:.:|ゝ､ 　 　 　 　__　 　　 　 　 　, '　 '.:.:..:/　 　 ＼
｀ ￣￣ "´　.fヽ:.. |!:.::.|ﾍ!::ヽ 　 　　 ` ′ 　 　 　 ／:.ヽ,/:.:. /l 　 　_,ノヽ
　　　　 　 　 |: : ＼ヽ | ::.V,. ＼　　　　 　　 ,.. ｬ'! : : :.:./:.:.:.:.:,!'_`ー'',:::::::::＼
　　 　 　 　　|‐--､:`ｰ!--､__ヽ_` 　 ｰ‐　' ´　/::|.: : :.:/:.::.:.::::|! ﾄ､ ヾl' :::::::::: ＼
　　　　　 　ノ￣_｀V: : r ､ : : :`＝=‐-､__　　/!:: |: : :./ヽ__,.-ｲ,ﾉ::::ヽ ｀''ー`ー--ゝ
　　　　　／⌒ヽ : : : : ヽ ` ー─- ､ : : : ` ｰ──_:/ヽ.__, -.ｲ:::::::::::|
　　　 ／　　　　 ＼ : : : : `ー─ ､　＼: :/ ￣￣ ./: : : : : : :.,′:::::: |
　　／　　　　　　 　＼: : : : : : : : : :＼　 ／´￣::/: : : : : : ::/| :::::::: ﾉ

　　　　　 　　　　　＿＿＿_
　　　　　　　　　／　　 ∪ 　＼　　　　　　　　　わからない……
　　　　 　　γ⌒)　ノ三三三ゞ(⌒ヽ　　　　　　なにも分からないんだお……
　　　　　　／ _ノ　（＞）三（＜） ＼ `､
　　　　　（　 <:::∪:::::（__人__）:::::∪| 　）　　　　
　　　　　 ＼　ヽ ::∪::::｀ ⌒´∪::／／



　　　　 ,　-:.‐:. :.¨:. ￣:. :.｀:.　..、
　　,　:. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :＼　　　　　　　　　　　ご自分のお姿を、確認されますか
. ／:. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :ヽ :. :. :. ヽ
':. :. :. :／:. :. /M:. :. :. :. ＼:. :. ＼:. :. :ヽ ／　　　　　　　これ、鏡です
:. :./:./:./:./:.j!川:. :.ヽ:.＼: ヽ:. :. :ヽ:. :／
:. /:./:.:j:. |:. :|l川:. ,l. -―ヽ:､:',:. :. :∨
:.:j:. |:. :|:,ム-|ﾞ "|:. |:, :.l:. : j:. :.',:. : /
:. !:.:|:. :/:.|: :_|　 j : !:. イ乏:㍉:.',r―‐､
:. |:.:|:. .l:. ﾊjﾃﾑ N∧: ハ::::z:ﾘ./ /二Ｊ
:. |:.:|:. :ハ'弋:zﾘ 　　　　 ー' /　―､ l
ヽﾊ:l:ﾊ :小　　　　, 　 　 　　l 二 .l lJ
　　'j　　 l:ﾊ、　　　r ､　　 , .| ヾ! lJ
　 ,'　　　;ﾊ:,l≧- 　 .._ .. イ　!　 し
　,'　: : : ,､'{ヽj　　l　ヽ　 ／ l!　　}
.,': : : :,､'ヽ/ヽ ＼_|＿_／ 　 f!　 :l
': : :,､'＼/　　ヽ ＝==＝ " ハ　 j
: ,､'　　/ 　　　 ＼　＿＿/ﾉ ﾑ ∧
'"　　/　　　　　　l;:　　／ i　　v ﾑ
　　 /　　　　　　 l!:;／　 ハ 　 l　ム

　そう言って彼女は、男に銅鏡を差し出した。
男は鏡を受け取り、中を覗き込むと、がっちりとした体格の、それでいてどこか愛橋のある男の姿が映った。

　　　　　　　　　__,‐⌒ヽ､
　　　　　　　　 /　　　'─ ＼
　　　　　　　 ノ　ノ-､ （○）　＼　　　　　これが……僕なのかお？
　　　　　　　 | ｡（○） 　､ﾟ ヽ,　ヽ　　　　思い出せない……なんにもわからないお……
　　　　　　　 ヽ　　ヽ__,,,ﾄｰ'i　　 ）　　　
　　　 　　　　 ﾉ　　　 ｀ ⌒''　　ﾉ　　　　お前は、一体、誰なんだお……
　　　　　　　 （　　　　　　　　 　 }
　　　　 　　　ヽ　　　　　　 　 ／
　　　　　　　　　ヽ　　　　　／
　　　　　　 .／ｰ-.l`‐-‐＜￣｀`ヽ
　　　　　　（　　　⌒⌒￣￣`r:ｭ〈
　　　　　　 ´`´ｰ-､_,. -‐'´／l .ﾄ''ヽ



　　　　　　　　　　　　,.. ....,,,,,,,.,,,,,,,,,......,,,,、
　　　　　　　　　　　 / .丶 　 ｀''-､ .,..-'" ｀ﾞﾞ''''''―-､
　　　　　　　　　　 : l　l　,i-― ､　.|゛　　 . _、　　　 : l<
　　　　　　　　　　　!　! .l,ﾞ..　-　.ｌ l/ﾆ,ﾞ￣´ ´|　 .,!　 | ヽ
　　　 　 　 　 　 　 lﾞ .i　l.--―---....,,,,_;´ﾞﾞ''''|　　,!　.|　 .ｌ　　　　　　　おや、やっと目が覚めたのかい
　　　 　 　 　 　 　 |　!　!,,,,,,,,,......,,、,,,,　 ⌒ﾞ |　　|　│　.l
　　　 　 　 　 　 　 !　　ｌ._,,................,,,,,,ﾞﾞ;￢‐. !　　|　 lﾞ'､　!
　　　　　　　　　　│ ｉ .l'''''''￢　　 ｰ......二''''ｲ　　|　 !..､ﾞ'/
　　　　　　　　　　 l　lﾞ l　'ﾐク".,i　　 .<_ゞ｀.' |　　.|　i!　.`ｲ
　　　　　　　　　　/ .:゛｝　 ...　 /　　　．｀ﾞ"　!　 .ヽ l､ ﾞ'　i!
　　　　　　　　　　l　.! | 　.゛ .../　　　　ﾞ　　..,!　 .．.l　＼ l
　　 　 　 　 　 　 ,!　,!.| .!.| .r .―--ヽ‐ .､..., ./ !　 ,! .|　　,i"､
　　 　 　 　 　 　 |　.l !ﾞllﾞ　!　......,,,、　 .} .　l !　 lﾞ / 　/　,i ＼
　　　　　　　 . ,r'ﾞ.!　|.|　l-ﾐ.　 ､､　 ｀` .,,ﾞ,/,,|　 ! .i!ｒ'" . / 　　 ﾞ''ｰi､
　　　　　　 .／　　! .!.|　｝ . ﾞ'-､..,,　 ..,ﾆ/‐ﾞ ! ./ .,!　 ／　　 ./ 　 /;;＼
　　　　　.／　　　 .! l'.!　ヽ　　　 .￣゛　　 ./ i" /,,r"　　　 /　　/ ;;;;;;;;;.＼
　　　　 / . 、　　　.ﾞl" .ｌ　 ゝ、 　 　 　 　 ",,ソく゛　　　 ／ .,／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,i!;;､
　　　 ./　　.!　　　　　　!　 ､..￣ﾞﾞ'''''''^'"ﾞﾞ´　 、　　 .,／　,i'";;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾝ　ｌﾞ! ＼
　　　 ｌ　　　|　　i　　　 .!　　 ＼ 　 _,,,.. -‐''"　.,..-'"　　/ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; / .,「.lﾞ.、 . ヽ
　　　ｌ　　　 ,!　　ｌ　　　.!　　　　｀´　　　,.. ｰ'"　　　 ./ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;./ / " ,．."　　 ｝
　　./　　　　l　　 l.　　 ｌ　 .ヽ.. -ｰ'''''ﾞﾞﾞ´　　　　　 ,./ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;./ 」.､.;． l′　　.,i'｝
　　ｌ　　　　　ｌ.　　＼　ゝ　　　　　　　　　　　　,／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;./ l .ﾞ|.゛.′　　　 / ｜
　 ｌ　 .:､　　　..ｌ　　　＼　　　　　　　 : ,,,..-‐フ";;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,i/ ."|‐ ′　　　 ./ 　 .|

　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿　_　_,.... __
　　　　　　　　　　　　　 ,.-‐' "´ヽ::::::y'´　　　 ﾐヽ､
　　　　　　　　　　 　 ／.:.:.:.:::::::::::::::'´::::::::::::::::::::::.::ヽ＼
　　　　　　　　　　　/.:.／.:.:／.:.:/.:.:::::ﾄ、:.ヽ:.ヽ:.ヽ.:.:ヽ:ヽ　　　　　　あ、おばあちゃん
　　　　 　 　 　 　 /／:.:.／.:.:/./:N:|ヽ!|il:.:ヽヽ:ヽ::ｌ:.::.::i::::',
　　　　　　　　　 ///:.:/:.:.:.:./:ｲ.::|ｌ|:f´￣|::Y:i::|!:.:!.|.:.:.:.|:.:.:.!
　 　 　 　 　 　 ///.:./:/;ｲ:/:::ｌj;:ﾑH!　　ｨ:ｌl什ト､j:|.:.:.:.|::.:.:l
　　　　　　　　//!:!:././/::!:l:イ| ｣⊥ヽ 　 |ｌj抂ｪ｣|｀!..:.!:ﾄ、:.l
　 　 　 　 　 〃 |:|:i:.:.l:i:.:.|:.l:.:ﾚぅ⌒f　　　!´ﾋ'　 lヽ!.:.ｌ.:| ヽ:.l
　　　　　　　 !　∥!|:.:i:l.i.:ﾄ:l.:iハ..::::j_　　 　 L::::ﾉ　|:.:|:.|　 ＼
　　　　　　　　　 l lヽ从ﾄ:! い、 ¨´　　 ,　　 　 　 |.:.l.:.|､,__　＼
　　　　　　　　 　 ! >ヘヽヽノ:ﾄ､　　　 －　　　／|.::|ｉ:.|;;i;;i｀ｰ‐ヘ
　　　　　　　　 　 /ヽ-‐7´/;;ｲ:::＞..,._　　　,.イ::::::|.::|l:ﾘ^介r､;;_j;;;;＼
　　　　　　　　 ／;;;／ノ;rくﾊ二__￣￣￣￣￣__ｺﾆミ{ノ:/ﾉ,ﾘ`´`'ーﾍ
　　 　 　 　 ／;;;;ィ"~＾ヽ`ﾐﾐ片__＂￣`'￣`'￣″|:..:｀Y彡'″
　　　 　 　 ´"´　　　　　＞'-ﾆ_ `'´￣`'￣`'￣`ﾟﾋ'ｰ-ト､
　　　　　　　　　　　 ／　　　　 弋ｰ--ｔ--ｧ-ｰ￢´｢lY 　 ヽ､
　　　　　　　　 　 ／　　　　 　 　 ヽ::.::.:У::.::.;:-┤j !|　　 　 ＼
　　　　　　　　　/　　 ヽ　/　　　　 ヽ::/::.::./´ ｒ'⌒ヽヘ　 　 　 ヽ


　　　　　　　　　　　　,.. ....,,,,,,,.,,,,,,,,,......,,,,、
　　　　　　　　　　　 / .丶 　 ｀''-､ .,..-'" ｀ﾞﾞ''''''―-､
　　　　　　　　　　 : l　l　,i-― ､　.|゛　　 . _、　　　 : l<
　　　　　　　　　　　!　! .l,ﾞ..　-　.ｌ l/ﾆ,ﾞ￣´ ´|　 .,!　 | ヽ
　　　 　 　 　 　 　 lﾞ .i　l.--―---....,,,,_;´ﾞﾞ''''|　　,!　.|　 .ｌ　　　　　　　　どれ……
　　　 　 　 　 　 　 |　!　!,,,,,,,,,......,,、,,,,　 ⌒ﾞ |　　|　│　.l　　　　　　　　うん、だいぶ良くなったみたいだね
　　　 　 　 　 　 　 !　　ｌ._,,................,,,,,,ﾞﾞ;￢‐. !　　|　 lﾞ'､　!
　　　　　　　　　　│ ｉ .l'''''''￢　　 ｰ......二''''ｲ　　|　 !..､ﾞ'/　　　　　　　私は鳥栖玖流（とすくる）じゃ
　　　　　　　　　　 l　lﾞ l　'ﾐク".,i　　 .<_ゞ｀.' |　　.|　i!　.`ｲ　　　　　　　そなた、名を何という
　　　　　　　　　　/ .:゛｝　 ...　 /　　　．｀ﾞ"　!　 .ヽ l､ ﾞ'　i!
　　　　　　　　　　l　.! | 　.゛ .../　　　　ﾞ　　..,!　 .．.l　＼ l
　　 　 　 　 　 　 ,!　,!.| .!.| .r .―--ヽ‐ .､..., ./ !　 ,! .|　　,i"､
　　 　 　 　 　 　 |　.l !ﾞllﾞ　!　......,,,、　 .} .　l !　 lﾞ / 　/　,i ＼
　　　　　　　 . ,r'ﾞ.!　|.|　l-ﾐ.　 ､､　 ｀` .,,ﾞ,/,,|　 ! .i!ｒ'" . / 　　 ﾞ''ｰi､
　　　　　　 .／　　! .!.|　｝ . ﾞ'-､..,,　 ..,ﾆ/‐ﾞ ! ./ .,!　 ／　　 ./ 　 /;;＼
　　　　　.／　　　 .! l'.!　ヽ　　　 .￣゛　　 ./ i" /,,r"　　　 /　　/ ;;;;;;;;;.＼
　　　　 / . 、　　　.ﾞl" .ｌ　 ゝ、 　 　 　 　 ",,ソく゛　　　 ／ .,／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,i!;;､
　　　 ./　　.!　　　　　　!　 ､..￣ﾞﾞ'''''''^'"ﾞﾞ´　 、　　 .,／　,i'";;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾝ　ｌﾞ! ＼
　　　 ｌ　　　|　　i　　　 .!　　 ＼ 　 _,,,.. -‐''"　.,..-'"　　/ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; / .,「.lﾞ.、 . ヽ
　　　ｌ　　　 ,!　　ｌ　　　.!　　　　｀´　　　,.. ｰ'"　　　 ./ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;./ / " ,．."　　 ｝
　　./　　　　l　　 l.　　 ｌ　 .ヽ.. -ｰ'''''ﾞﾞﾞ´　　　　　 ,./ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;./ 」.､.;． l′　　.,i'｝
　　ｌ　　　　　ｌ.　　＼　ゝ　　　　　　　　　　　　,／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;./ l .ﾞ|.゛.′　　　 / ｜
　 ｌ　 .:､　　　..ｌ　　　＼　　　　　　　 : ,,,..-‐フ";;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,i/ ."|‐ ′　　　 ./ 　 .|

　　　　　　／￣￣￣＼
　　　γ⌒)　　　　　　(⌒ヽ　　　　　僕は……自分の名前がわからないお
　　 ／ _ノ ノ 　　 ＼ 　＼ `､　　　　名前だけじゃなくて、生まれも、これまでの記憶も、何もわからないんだお……
　 （　 < （○）　 （○）　　 | 　）
　　＼　ヽ　（__人__） 　 ／ ／



　　　　　　　　　　　　,.. ....,,,,,,,.,,,,,,,,,......,,,,、
　　　　　　　　　　　 / .丶 　 ｀''-､ .,..-'" ｀ﾞﾞ''''''―-､
　　　　　　　　　　 : l　l　,i-― ､　.|゛　　 . _、　　　 : l<
　　　　　　　　　　　!　! .l,ﾞ..　-　.ｌ l/ﾆ,ﾞ￣´ ´|　 .,!　 | ヽ　　　　　　　　記憶喪失かい
　　　 　 　 　 　 　 lﾞ .i　l.--―---....,,,,_;´ﾞﾞ''''|　　,!　.|　 .ｌ　　　　　　　　怪我が治るまでまだまだ時間がかかるし
　　　 　 　 　 　 　 |　!　!,,,,,,,,,......,,、,,,,　 ⌒ﾞ |　　|　│　.l　　　　　　　　このまま名前がないのも不便だろう
　　　 　 　 　 　 　 !　　ｌ._,,................,,,,,,ﾞﾞ;￢‐. !　　|　 lﾞ'､　!　　　　　　　……それじゃあ、記憶が戻るまで、温羅（うら）と名乗るがよい
　　　　　　　　　　│ ｉ .l'''''''￢　　 ｰ......二''''ｲ　　|　 !..､ﾞ'/　　　　　　　いいな、阿曽媛（あそひめ）
　　　　　　　　　　 l　lﾞ l　'ﾐク".,i　　 .<_ゞ｀.' |　　.|　i!　.`ｲ
　　　　　　　　　　/ .:゛｝　 ...　 /　　　．｀ﾞ"　!　 .ヽ l､ ﾞ'　i!
　　　　　　　　　　l　.! | 　.゛ .../　　　　ﾞ　　..,!　 .．.l　＼ l
　　 　 　 　 　 　 ,!　,!.| .!.| .r .―--ヽ‐ .､..., ./ !　 ,! .|　　,i"､
　　 　 　 　 　 　 |　.l !ﾞllﾞ　!　......,,,、　 .} .　l !　 lﾞ / 　/　,i ＼
　　　　　　　 . ,r'ﾞ.!　|.|　l-ﾐ.　 ､､　 ｀` .,,ﾞ,/,,|　 ! .i!ｒ'" . / 　　 ﾞ''ｰi､
　　　　　　 .／　　! .!.|　｝ . ﾞ'-､..,,　 ..,ﾆ/‐ﾞ ! ./ .,!　 ／　　 ./ 　 /;;＼
　　　　　.／　　　 .! l'.!　ヽ　　　 .￣゛　　 ./ i" /,,r"　　　 /　　/ ;;;;;;;;;.＼
　　　　 / . 、　　　.ﾞl" .ｌ　 ゝ、 　 　 　 　 ",,ソく゛　　　 ／ .,／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,i!;;､
　　　 ./　　.!　　　　　　!　 ､..￣ﾞﾞ'''''''^'"ﾞﾞ´　 、　　 .,／　,i'";;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾝ　ｌﾞ! ＼
　　　 ｌ　　　|　　i　　　 .!　　 ＼ 　 _,,,.. -‐''"　.,..-'"　　/ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; / .,「.lﾞ.、 . ヽ
　　　ｌ　　　 ,!　　ｌ　　　.!　　　　｀´　　　,.. ｰ'"　　　 ./ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;./ / " ,．."　　 ｝
　　./　　　　l　　 l.　　 ｌ　 .ヽ.. -ｰ'''''ﾞﾞﾞ´　　　　　 ,./ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;./ 」.､.;． l′　　.,i'｝
　　ｌ　　　　　ｌ.　　＼　ゝ　　　　　　　　　　　　,／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;./ l .ﾞ|.゛.′　　　 / ｜
　 ｌ　 .:､　　　..ｌ　　　＼　　　　　　　 : ,,,..-‐フ";;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,i/ ."|‐ ′　　　 ./ 　 .|

　 　　,.' ｲ:.:.:.:. ／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.://ヽ,l::: ﾍ .:.::.::.:.:.:.:.:.:.::.V　　ヽヽ
　 　.//!':.:.:.:: ':.:.:.:.:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::://ヾ,;;;|/::ﾉ/.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|.:.:.:.:.:.:.:. |
　　// ':.:.:.:/ :.:.:.:.:.:.:.:/.::.:.:.:./:_;_:/_jl/ 　 ´　 '::l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.: |:.: |　　　　　はい
　 ,'//:.:.:.:/ｲ:.:.:.:. !:.:.:{:.::.／ :.:.//　||` 　 　　|ﾑl ‐|!､:l :.:.:.:.:.: |:.:.:.:.: |:.: |　　　　　よろしくね、温羅さん
　 l　!:.:.:://:!:.|:. |:| .: |:.:. |: l!.:/=!=..|ﾄ.､ 　 　 || ,|:_:|!|:.|＼ :.:.:.:| :.:.:.:.:|:.: |
　 |! |:.::/ﾊ' !.:|:. |:l:.:: |:.:: ﾚ'∨ ':: ヽ|!ﾞ' 　　 　||,r!:=ﾄ|:.|　|:.:.,:. , .:.:.:.: |:.: |　　　　　（おばあちゃん……その名前は……）
　 ｀ |:./ | 丶!.:.:.ﾊヾ |.:.: |j　 ﾊ::::::ﾉ! 　　 　　ヾ ヽ!::Vヾl: /|:ﾉ :.:.:.:::;|:.. |
.　　 ﾚ'　　　 ＼| 'ヽ,'ヽﾄゝ　ヽ｀´,ﾉ 　 　 　 　　ﾊ:::::::ﾊ! Yl! |:.:.:.:.:. , :. |
　　　 　 　 ／　ヽ /.:::!　　　 ￣ 　　　 　　 　 ヽ_｀_ノ　 ´ /!:.:.:.::∧ .:|
　　　,. ..:':´ゝ　　　'ｲ:. |! 　 　 　 　 　′ 　　 　 　　 　　,ｲ:.l:.:.: ,'　ヽ,,'
,_.., '::::::::::::::_j, .-= .||:.:.:|ゝ､ 　 　 　 　__　 　　 　 　 　, '　 '.:.:..:/　 　 ＼
｀ ￣￣ "´　.fヽ:.. |!:.::.|ﾍ!::ヽ 　 　　 ` ′ 　 　 　 ／:.ヽ,/:.:. /l 　 　_,ノヽ
　　　　 　 　 |: : ＼ヽ | ::.V,. ＼　　　　 　　 ,.. ｬ'! : : :.:./:.:.:.:.:,!'_`ー'',:::::::::＼
　　 　 　 　　|‐--､:`ｰ!--､__ヽ_` 　 ｰ‐　' ´　/::|.: : :.:/:.::.:.::::|! ﾄ､ ヾl' :::::::::: ＼
　　　　　 　ノ￣_｀V: : r ､ : : :`＝=‐-､__　　/!:: |: : :./ヽ__,.-ｲ,ﾉ::::ヽ ｀''ー`ー--ゝ
　　　　　／⌒ヽ : : : : ヽ ` ー─- ､ : : : ` ｰ──_:/ヽ.__, -.ｲ:::::::::::|
　　　 ／　　　　 ＼ : : : : `ー─ ､　＼: :/ ￣￣ ./: : : : : : :.,′:::::: |
　　／　　　　　　 　＼: : : : : : : : : :＼　 ／´￣::/: : : : : : ::/| :::::::: ﾉ
　　　　　　　　　　　　　阿曽郷　神職　阿曽媛



..　　　　　　＿＿＿_
　　　　　／　―　　-＼
.　　.　／　 （●） 　（●）　　　　　　温羅……
　　／　　　　 （__人__）　＼
　　|　　　　 　　｀ ⌒´　　　|
.　　＼　　　　　 　　　　 ／
.　　　ノ　　　　　　　　　＼
　／´　 　　　　　　　　　　ヽ

　 　 　 　 ＿＿＿
　 　 　 ／　　 　 　＼　　　　　　うん、よろしくだお、阿曽媛
　　　／　　 　 　 　 　＼
　 ／ 　　⌒　　　⌒　　 ＼
　 |　 /// （__人__） /// 　 |
. (⌒) 　　　 　　 　 　 　 (⌒)
./　i＼ 　 　 　 　 　　　／i　ヽ
　　　　　居候　温羅


　温羅は阿曽媛の屋敷で看病され、日に日に回復していった。運び込まれてからちょうど一週間たち、ようやく
支えを頼りに歩けるようにまでなった。
　もともと、彼は散歩が好きな性分であったのだろう。暇を見つけては、村の周囲を散策し、阿曽媛を困らせたりしていた。
二週間がたち、杖なしで歩けるようになった彼は、阿曽媛に連れられて、吉備国を案内された。

　　　　　　　　　　　　　　 ＞　´　 ＞ ‐ ､ ､_　＝く｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　／／　, 　　,　　　 ｀Y｀ヽ＝＝､一、
　　　　　　　　　 　 /.／ .／　/ ./　 　　 /!　 :Nヽ　 ヽ　ﾊ　　　　　　　ほう、彼が噂の……
　　　　　　　　　　/ｲ / /　　/ //　./ , / ,j　　N　　　 ﾍ　|
　　　　　　　　　　/ / /// /≠/ .///≠x.|/　i v､　　　 V　　　　　　　……ええと
　　　　　　　　　　lｲ　./ l :,ｨ≠x.// ﾉｲ≠､|/　l lﾍヽ　ﾊ　l
　　　　　　　　　　, ! 从 l :l _{少 ′　{ゝｲ ,l　/ N ﾄ､∨ i　l
　　　　　　　　 ／ｲV　| l/l 　 　j　 　 ￣/// /ノ!j jヽ∨　!
　　　　　　　 ///イ j ハ! :ﾄ､　　r_､　　彡ｲ　|´　ﾍｊ､ヽ ＼|
　　 　 　 　 /ノイ j/　 | ! :|´ 丶.　 　 ／ l !　ﾄ､　 ヽ ﾄト､ }、
　　　　　　/ / /ノ´ 　 | l :|　r {-｀≠ ﾆ二!l　l,イ　　ゝl !　ﾄﾍ
　　　　　 / //´　　 　 | l |､_j　｀l　｢　　__ j　|　l　　 / ハ {　',
　　　　　{ノ´　　　　＿| l .! !､､　l /　　 | ,j　,　ﾉ､_ / /　 ﾊヽ ',
　　　　　　　　　　/　 ﾊ l l | ゝ ソ , - ﾆ| l　j /　　｀ ｰ ｖ′｀ヽ!
　　　　　　　　　ノ　　　ﾊ Vゝ'´／／ ノ l /r'　　　　 /　ﾍ
　　　　　　　　ハ.　　 /　V/./_／ 　 ｢　r/´　　　　/　　　ﾍ
　　　　　　　　{　 ヽ /　 〃/　　　　 |　| | 　 :| 　 /　　　 　 〉
　　　　　　　 ,ィ　　,'　 〃 ,'　　　_,. -|　| | 　 :|　/　　　　　/
　　　　　　　ﾊ､ヽ　| 　 l l l-‐ 二 - =|　| | 　 :|/　　, - 彡｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　吉備国　将軍　兎羽火（とうか）



　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,ﾍ
　　　　　　＿＿＿_　　　　　　/ /
　　　　 ／＼　　／＼　　　／ /　　　　温羅ですお！
　　　／（ ⌒） 　（⌒）＼／　 /　　　　　
　 ／ :::::⌒（__人__）⌒:::::＼ /
　 |　　　　　|r┬-| 　 　 　 |
　 ＼ 　 　　｀ ー'´ 　 　 ／
　　／　　　　　　　　　 ＼
　/　　　　　　　　　　　 　＼
/　　／＼　　　　　　　 　 　ヽ
　／　　　＼　　　　　 　　 　ﾉ
U　　　　　　ヽ　　　 　　 　ノ

　　 　 　 /:. :. ／:. :. :.:i:./:. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. ヽヽ.ヽ
.　　　　 /:. :./:. :. :. :. :.i/:. :. :. :.:i:. :. i:. :. :. :. :. '､:. :. :. :. :. :. :.'､:. :. :. :.ヽﾊ　ヽ　　　　　温羅殿――
　　　　/:. :./:./:. :. :. :. |:.:i:. :. :i:.:iヽ:. ヽ:.､:. :. :. :ヽ:. :. :. :. :. :. :.:ヽ:. :. :. :ﾊ:ﾊ　 ヽ　　　　某（それがし）はこの国の将、兎羽火と申す
　　　 ,':. :/:. :i:. :. :. _:. :|:.i:. :.‐‐--.､,:.:ﾍヽ:. :. :. :ﾊヽ:. :. :. :. :. :i:.:ﾊ:. :. :. :.iヽ:i　　ヽ　　　以後お見知りおきを
　　　,':. /:. :.i:. :.／,-､ヽ:i:. :. :. |. ,ｨ=≧ト.､ヽ:.:.:.:,ｨ≦了:. :. :. :.iヽﾍ:. :. :. :i. ヽ
..　　,':./:. :. :.:／イ　 ノi:.i:. :. :i ｲ|r';;;;;::i 　 　 　 fr';;;:|.:r､:. :. :. iヽ .i:. :. :. :|
　　 i:.i:. :. :／'　　　/　 N:. :. :.ﾘ 乂;少 　 　 　 乂ソ V:.ﾍ:. :. :| i ＼:. :. :.|
.　　:.i:. ／.／／ 　 ヽ　 |:. :. :ﾊ　　　　　　　､　 　 　 i:. :.:N:. :| ヽ　 ヽ:. :|
　　 ／イ ／　ノ 　 ./￣|:. :. :.ト　　　　　　　　　　　/:. :. |.ヽﾘ.ゝヽ ヽヽﾘ
　　　' ´ ‐' ´イ ./／　　|:. :. :.iヽ　　　 　 ｀ `　　 ／.|:. :. |＼ヽヽト.ヽ､ヽ-＼
　　‐'　／　／／iゝ､ 　 |:. :. :.|.　＼　　　　　 ,.ィ 　 .|:. :. |　 ヽ､ 　 ヽ `ヽ ｀､＼
.　　..,､イ:."￣:. :.:ﾍ . ｀'‐|:. :. :.|'‐‐-､`　､__ イ/ヽ. 　 i:. :. |　_ノ 　ヽ　ヽ　 ＼ ＼
　 　 V:. :. :. :. :. :. .ﾍ.　　|:. :. :.|-､　　|‐‐‐‐‐| 　 | 　 i:. :. |'´ /　　　　`ゝ､,_ ヽ､,
　　　,ヽ-‐‐‐‐---､ﾍ..　|:. :. :.|　i　　|:::::::::::::|　　{ 　 |:. :. |.／　　 　 　 　 　 `‐‐



　　　　　　　　　　　　 　　　　 ＿＿ ＿
　　　_,rｰく´＼　 , --､　　　／⌒　　⌒ ＼　　　　　うん、兎羽火
　,-く ヽ.＼ ヽ Y´　／ 　 ／（●）　 （●）　＼　　　　よろしくだお
　{　-!　l _｣_ﾉ‐′/ 　 ／ 　 　（__人__）　　　 ＼
　ヽ　ﾞｰ'´ ヽ　　/　 　|　 　 　. `Y⌒y'´　　　 　|
　　ゝ、　　ﾉ_ イ　　　 ＼ 　 　 ゛ー ′　　　,／
　　　 ヽ　　 　 |　　　 　/　　　　ー‐ 　 　 ヽ

　　　　　　　　　　／: : ＼／＼.: : : : : :＼: : : : : : : 丶､
　.　　　　　　　　/: : : :/￣ : : : : : : : : : : : ＼ : : : : : : : : ＞､
　　　　　　　　 /: : : : ;': : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼: : : : : : ＼ヽ、　　　　（……いきなり呼び捨てか！？）
　　　　　　　　/: : :_: ;': : : : : : : : : : : : ＼: : : : : : : :＼ : : : ＼: ヽ　　　　　（王族でもあるまいし）
　.　　　 　 　 ,': : （,､}i: : : : '; ',: : ＿,,.ﾊ: ; ヽ=‐- ､: : : :ヽ : : :∧＼ヽ
　.　　　　　　,':/:,.ｨ　 l: : : : :iＸ´ ,.ﾆミ､: : ∨,.ﾆ=.､ ｀: : ':,､':, : : :'.,.　＼　　　……ああ、よ、よろしくお願いします
　.　　　　 　 i/: ヽ! .ﾄ!:l : : ∧,;'ハ;;;ヾiヽ: : ',トi;;;;i,!ﾞ〉､: :∧＼;､: ∧
　　　　　 　 /: : :.ｌ　l. l;ﾍ : : ',┘V､;;;ﾉ!ヽヽ: V-'ﾋ' .l: lヽ: :',､',ヽヽ: ',　　　　阿曽媛様、本日はどのような御用件で？
　.　　　　　/: :.: /　.! /； ヽ､:',　 ゝ-'‐. 　 :. ￣,,.,,. i: :! ,メ:l ',ﾍ　 ＼!
　.　　　　 /: : :/　 // ；　 |: iヾ､ """.　　 ﾞ 　 　 .ﾉ: :l"∨　ﾊ.',
　 . 　 　 /: : ./　 ,'/l　/ヾ'l: :.l:ﾍ. 　 　 ,. -_‐､　 .ｲ.: : l､i､ ﾄ､　ヾ､
　　　　 /: : /　　,'l/レ':｀'´l: : i: : ＞ ､　　　 ,ィ´　l: : :l　ヽl、＼!. ＼
　 .. 　 /: ／　　/: : : : : : : l : :'; :lﾞｰ-　｀ -.'‐┼､. ｉ: : :l...＿∨　＼ヽ＼
　.　　/／　　 /: : :/´￣｀ﾍ : ∧へ　　¨ヽ　 / ムﾊ: : i l //7､＼＼iヽﾄ＼
　　.／/　　 /: : : ﾑ∨lヽ,　'; : : ', ＼ﾞ丶､ ∨ .//　.'; :ﾊ ///ヽiヽﾍ　　ヽ . ＼
　　 ,':/／ /: : : : l/　 ＼l,ﾍ､V: :ﾍ　　＞-‐'ィノ.　　 ∨:i//ヽ/ ﾍ　＼　＼　　＼
　　 ／://: : : : : /　　　　＼ﾍ: : :.i'´　＜´　 :.　　　　 ＼ﾄ／　　ヽ　 ヽゝヽ＼＼＼



　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿　_　_,.... __
　　　　　　　　　　　　　 ,.-‐' "´ヽ::::::y'´　　　 ﾐヽ､
　　　　　　　　　　 　 ／.:.:.:.:::::::::::::::'´::::::::::::::::::::::.::ヽ＼
　　　　　　　　　　　/.:.／.:.:／.:.:/.:.:::::ﾄ、:.ヽ:.ヽ:.ヽ.:.:ヽ:ヽ　　　　　私、温羅さんの案内をしているんです
　　　　 　 　 　 　 /／:.:.／.:.:/./:N:|ヽ!|il:.:ヽヽ:ヽ::ｌ:.::.::i::::',　　　　　今、色々な所を回っているんですけど、是非「あの川」も見せ
　　　　　　　　　 ///:.:/:.:.:.:./:ｲ.::|ｌ|:f´￣|::Y:i::|!:.:!.|.:.:.:.|:.:.:.!　　　　たくて……
　 　 　 　 　 　 ///.:./:/;ｲ:/:::ｌj;:ﾑH!　　ｨ:ｌl什ト､j:|.:.:.:.|::.:.:l
　　　　　　　　//!:!:././/::!:l:イ| ｣⊥ヽ 　 |ｌj抂ｪ｣|｀!..:.!:ﾄ、:.l　　　
　 　 　 　 　 〃 |:|:i:.:.l:i:.:.|:.l:.:ﾚぅ⌒f　　　!´ﾋ'　 lヽ!.:.ｌ.:| ヽ:.l
　　　　　　　 !　∥!|:.:i:l.i.:ﾄ:l.:iハ..::::j_　　 　 L::::ﾉ　|:.:|:.|　 ＼
　　　　　　　　　 l lヽ从ﾄ:! い、 ¨´　　 ,　　 　 　 |.:.l.:.|､,__　＼
　　　　　　　　 　 ! >ヘヽヽノ:ﾄ､　　　 －　　　／|.::|ｉ:.|;;i;;i｀ｰ‐ヘ
　　　　　　　　 　 /ヽ-‐7´/;;ｲ:::＞..,._　　　,.イ::::::|.::|l:ﾘ^介r､;;_j;;;;＼
　　　　　　　　 ／;;;／ノ;rくﾊ二__￣￣￣￣￣__ｺﾆミ{ノ:/ﾉ,ﾘ`´`'ーﾍ
　　 　 　 　 ／;;;;ィ"~＾ヽ`ﾐﾐ片__＂￣`'￣`'￣″|:..:｀Y彡'″
　　　 　 　 ´"´　　　　　＞'-ﾆ_ `'´￣`'￣`'￣`ﾟﾋ'ｰ-ト､
　　　　　　　　　　　 ／　　　　 弋ｰ--ｔ--ｧ-ｰ￢´｢lY 　 ヽ､
　　　　　　　　 　 ／　　　　 　 　 ヽ::.::.:У::.::.;:-┤j !|　　 　 ＼
　　　　　　　　　/　　 ヽ　/　　　　 ヽ::/::.::./´ ｒ'⌒ヽヘ　 　 　 ヽ

　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ,. :-､-､
　　　　　　　　　　　 　 /:´:. :. :. ヽ:. ﾍ ｨ‐-=‐‐- ､
　　　　　　　　　　 　 /:／:. :. :..ィﾆ/￣:. :. :. :. :｀:. ｀:≧-.､
.　　　　　　 　 　 　 /ｲ:. :. :. :.:/i:. :. :. :.:,:.:､:. ､:. ヽ:. :ヽ:. :＼　　　　　　　　血吸川……ですか
　　　　　　　　 　 ／:. :. :., -､i:.:i:. :. :. 廴i:.iヽ:.ﾍ:. ﾊ:. :. ヽ:. :ﾍ　　　　　　　わかりました
　　　　　　　　　/:. :. :.／./´'､‐i:i:. :. :ｉィ=≧ｭヽｉ_少:. :. :ﾊ:. ﾊヽ　　　　　　山に登るので、護衛兵をいくらか付けましょう
.　　　　　　 　 /:. :.／: :.ｲ / .rﾊﾊ:.:.:.:i.辷ﾘ　　 fﾁﾘ.i:ﾍ:. :.iゝ:ﾍ　　　　　　某も同行いたします
　　　　　　　 /:.／: : : :/:"~ヽ　i iゝi从.　　 　 ､ゞ'ヽ:. iヽ:i.　ヽi
　　　　　　　,':/:.／:／:. :,':. /ゝ,__i:. :iヽ　　　,　_　 从:.ﾊV
.　　　 　 　 i:イ:.／:. :. :.,':. /　 ＿i:. :i＿　　　　 ／､.V:ﾊ＼
　　　　 　 /: :, ':. :. :. :. i:. / ｨ´ 　 i:. :i　ト.､_　イ　　ヽi:. i　.ﾊ
.　　　 　 /: ,ｲ:. :. :. :._,､_/_.　V　　i:. :i　|｀ぇL-､｀`'‐､.i:. i i .iﾍ
　　　　 / ｲ:. :. :. :.:/ :'¨.ヽ,.｀.`.' ‐. i:. i.　|　V;|| | 　 | | i:.:i i　',.ヽ
.　　　　i/ |:. :. :. .:/. . . . . . ＼. . . ..i:.ﾘ. _`‐-ゞ､|､_. |.| i:.ﾘヽi ヽ.ﾍ
.　　　　　 |:. :. :. /. . . . . . . . . ヽ. . . .. .|;|　 i`ヽ､｀`ヽi.i:/_　 ゝヽﾍｲ^ヽ
　 　 　 　 |:. :. 〈. . . __. . . . . . . ヽ. . . . i;i　　i　　｀`'‐ヽ ｀ヽ　 ／;;ゝ／
　 　 　 　 |:. :. :ﾉ:':´::::::｀ヽ､. . ./‐'. . . . ..i;i.　 i､,_,　　　 ヽ　／;;;;;;／
　 　 　 　 |:. :.:{:::::::::::::::::::::::::ヽi. . . . . . . . i;i　 i:::::｀:'‐,､　／;｡;;／
　　　　 　 |:. :. 〉'´. .. .｀ヽ､:::::::i. . . . . . . . .i;i　 i::::::::::::／;;;;;／ﾊ
　　　　　　|:. :/. . . . . . . . .ヽイ. . . . . . . . .i;i　 .i:::::／;;;;／.|;|.　|



　　　 　　　＿＿＿_
　　　　　／　　 　 　＼　　　　　　　血吸川ってなんだお？
　　　 ／　　─　 　 ─＼
　　／ 　　 （●） 　（●） ＼　　　　血を吸うのかお？
　　|　 　　 　 （__人__）　 　 |　　　　
　　＼　　 ⊂ ヽ∩　　　　 <
　　　 |　 |　 '､＿ ＼　／　 )
　　　 |　 |＿＿＼　 “　 ／
　　　　＼ ＿＿＿＼_／

　　　　　　　　　 /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
　 　 　 　 　 　 /:/::::::::::::::::::::::::l::|､ﾑ:::::::::::::::::::::::::ヽ:､＼
.　　　 　 　 　 /:/::::::::::/::::l:::|::::il::ﾄ从::l:::ヽ::::::::ヽ::::::ヽヽ｀
　　　　　　　　l:/ｨ:::::::::l:::::;'::,ｌ:::/l::l　 l::ﾄ､::l:::::|::i:::i;::､:::ﾄl　　　　　　山の向こうに、血のように真っ赤な川が流れているんですよ
　　　 　 　 　 l:::::l:::::::::|:::/l/ l/_ リ　 リ l/l:::/:ﾊ::ｌ|::ﾊ:l　　　　　　　ただあの辺は山賊が出て危ないので、護衛して貰います
　　　　　　　 ,l:::::乂:::::i､|＿__ｚ　　　 ｚ＿_l/l/:::l/l/.ﾉ'　　　　　　　
　　　　 　 　 ｌ::::/ /ヽ:i　￣￣　　 ､　｀￣　l::::ﾊ
　　　　　　　,l∠　{:{::::ヽ 　 　　　 __　　 　 ﾊ::!へ
　　　　　　ｲヽ　Z从:::::ﾄi　　　　 (_ﾉ　　　/::l::| 　 ＼
　　　　∠.. l　l"~{Kへ::i::l ＼　　　　　 ∠;;;;;ｌ:i｀i`ﾞ＾"`
　　　　　　 ｌ　l::::::ゝ_` `ニﾆ .＞ -- 彳　／ﾉi:::l
　　　　　_ｒへ ゝｭへ ＼　　`　ニニニ彡イﾆ.}/
　　　 . ｲ_｀ヽゝ_　i､　＼＾_　‐-　、 .　 ニ「　 lヽ.
.　　 / {　_ヽﾉﾌ　｜＼　　　 ‐- ､V／ノﾉ| _　|　ﾊ
　 _/　ﾊ　｀¨ヽ　 ﾉ　　ヽ＝= ､＿__ 彡 i／ ＼　 ﾊ
／/　　 ゝ　　　ｲ .　i　　ヽ　　丁 ,´‐ <.　　＿>、 ＼
￣｀丶､/ﾊ　　　ﾊｊ:./　 　 ヽ／ｒ‐ゝ‐-､＼/　 〈 |__／＼
　　　 ｲ　ﾊ　　 ﾊ.V::.　　　/　 .ゝ'‐- 、　 }￣　リ　　　/}
＞､/　l.　 ﾊ　 ,'　 l::::.　　/ -‐ﾍ ＼　　　ﾑ-‐ '´　 . イノ
　 ∧　l　　ﾊ /　　l:::::::イ　　 ／}　 　 　 ﾄ､ 　　／　 ゝ



　　　　　　　　　　　　　　　　　. イ^ヽ. |.ｨ´:｀ヽｰｧく..:..:_.ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　／..:..:..:.ｰ.７.:..:..:..:..:..´:..: ｢ ヽ:..:ヽ
　　　　　　　　　　　　　.ィ　 :..:　　:..:.:.　　..:..:.:.: ..:.:.　:..:..:!..:.ハ　　　　　　　　　なに、連中の銅剣など、この鉄刀には敵いません
　　　　　　　　　　　　/:..　　..:.:　 .:.: . ./ .　.:.:.:.　.:.:.　 :.:..l:. 　 .ヽ　　　　　　　　お二人は某が必ずお守りいたしますので
　　　　　　　　　　　/.ｨ:./..:.:.:..:..:.:.:.:..:.ｲ　.:.: イ:.,!:..:.:.:.　.:..:!　 ..:..:.ヽ　　　　　　　どうぞご安心を
　　　　　　　　　　///:/:..:.:/..､:.:./:.//.:.:./　/:/|:.:.ｲ|:..　.:.:V:.:..:..:..:..i
　　　 　 　 　 　 /' /:ｲ:..:.:ｲ:.:.:/7メ､!_:./　 /ﾑイ/ |ﾊ:.:..:.|!:|:.:.:..:..:..:..i
　　　　　　　　 /　//l..:.:/ｲ:.//j____.lz` 丶Z.＿j__/　l:.:.:.K:ﾄ､:.:.:..:..:..::!
　　　　　 　 　 　 |/｜./ ,.|:小 ￣_￣　}　 ￣￣｀　j:../ﾊ |ﾄ､＼:..:..:..:..!
　　　　 　 　 　 　 ..イ/´,　{ !:.}-v　Yヽ'＿_　'''''　 /イ/ ,} |　｀ヽ＼:..:.:!
　　　　　　　　 ／７' |イ ｲ ,ｵ/　|　 |　 ｢ヽ ヽ　　 /}/:|Y | ヽヽ､ヾｰ＼!
　　　　　　 ／､_ {／/イ/ / l:!　 !　 !　 ! ├┘.ィﾚﾘ:..:ﾊ:V:ヽ ﾄ.}｀ﾐｰ ､　＼
　　　　 ／ ,.ィ　,.ィ　／{ノ　_||　 |　 |　 l　 i≦= フ.／＜ /ヽヽ:＼ ＼ ＼、｀丶､
　 　 ／ イ　／ /／　__ , く.､|　 |　 {　 |　 |,　―く弋ヽ　ヽ7ヽヽ:.:＼ヽ.ト､ヽー- ヽ
　　 ｀¨ /_／　　´　　{　ヽz､ !　　　　　　　|　　　　 ヽヽl　 !-,!　}:.:.:..`..:!　｀ ｰ
　　　　　　　　　　　　ヽ.　マj_　　　　　　　|　　 　 　 } ll!　}ﾑ| ﾘ:.:.:.:..:..:|
　　 　 　 　 　 　 　 　 ハ　　 丶　　　　　｜ 　 　 　 | ll| .|///:.:.:.:.:..:..:|
　　　　　　　　　　　　 |　ﾊ 　 　 ヽ　　　　 }　　 　 ／! l!! j7/l:.:.:.:.:.:..:..:|
　　　　　　　　　　　　 |　　ヽ.　　　　　　　ﾉ _.. イ´　｜ !V/|:.|:.:.:.:.:..:..:.|

　　　　　　　　　 　＿＿＿_
　　 　 　 　　　 ／⌒　　⌒＼
　　　　　　　 ／（ ●） 　（●）＼　　　　　　その刀、鉄で出来ているんだお？
　　　　　　／::::::⌒（__人__）⌒:::::＼　　　　この国は鉄も作っているのかお？
　　　 　 　|　　　　　|r┬-|　　　　 |
　　　　　　 ＼　　　　`,. -'"´´￣｀ヽ
　　　　 　　 ／ 　　　（＿＿＿　　　|
　　　 　　／　　　　　　　　　　　　　 |
　　　（￣　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　　 ￣￣￣|　　　　　　 　 　 　 　 |



　　 　 　 　 　 　 　 　 　 /:. :. :.i:. ii
　　　　　　　 　 　 　 　 /:. ヽ:.,､-‐‐ェァ‐‐-.､
　　　　　　　　　　　 　 i:.,.:＜_,､:/ヽ'ヽ'‐:. :. :. :.｀ヽ,
　　　　　　　　　　　　,ｲ:. イ:｀ヽヽ:. :. :. :. :. :. :. :. :. :.ヽ
　　 　 　 　 　 　 　 /i:./:i:. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :.ヽ:. :. :. :. ヽ　　　　　　　　　いえ……この刀は、「大陸」から持ち込まれたものです
　　　　　　 　 　 　 i:i:..i:i:. :. . :. :. :.:､:. :. :ﾊ:. :. :. :ヽ:. :.ヽ:. ヽｭ　　　　　　　我々は、鉄の製法どころか、そもそも鉄が何であるか
　　　　　　　　　　 ,|:.i:.i:i:.i:. i:. :. :ヽ:.ヽ:. .: ﾍ:.､ﾊ:. :.ヽ:. :. ヽ:.:ﾍヽ　　　　　　よく知らないのです
　　　　　　 　 　 ノ ヽ:.i:.i:.i:. i:.ﾍ:.ﾍ:ヽ:ヽ:.ヽ,:斗t-:､:ﾍ:ヽ:. :ヽ:.ﾊ.＼
　　 　 　 　 ,.ィ´:.::/.､: |:. .:孑チ了`''ヽ',.'´:.i　ヽヽﾊ:.ﾊ:.ヽ:. ﾊ:ﾊ: :.ヽ　　　
.　　　　 ／ : : : : / . ヽ|:. :.:i ,ｨﾁ示　ヽﾍ　f示ﾊヽVi:. ﾊV:.i:.:ﾊﾘ:. :. :ヽ　　
.　　, イ: : : : : : :/ソ彡.|:.: .:i" V';;:ﾘ　　　　V';;:ﾘ　.ﾊ:.i.:ﾊV:ﾊ:.:.i､: : : : :.ヽ,
.　彡:.:: : : : : :, '　 ./:.彡i :.:ﾊ　｀¨´　　　　 ｀¨´　斥:i V|　ヽ ヽ V:.､＼: : :`ヽ
　 彡: : : : : ,.' 　 ./:. :. :|:. :.i ﾍ.　　　　　'　　　　/.i:. i"iﾘ 　 　 　 ヽヽ＼＼:
　 ／:／: , '　　 /:. :. :. |:. :.i 　 ヽ　　 ｀￣　 .イ　ﾞi:. | ､　 　 　 　 　 ゞ:ヽ:＼
　 ／ﾉ:／ . 　 /: : : ,.:':.|:. :.i　 　 |ｪ＞ 　.イ.|--､　!:.:| 　 >,
　　ソ　　 　 /:. :. :./　 |:. :.i 　 f‐‐---､::::f'´　 |　i:. |／　|
　　　 　 　 / :. :. : | ＞|:. :.i___.ﾉ　　 　 V:i 　,､ノァi:.:|　　 |
　　　 　 ,.:':. :. :. :.ﾉ| 　 |:. :.ト ､｀_¨''‐､　 ﾉ　.i 　 | .!:ﾘ　／ `ヽ､
　　　 ／ :. :. : ／.ｲ＼..i:. ﾘ　　　 ｀¨ヽ/　 ./ 　 i　iﾘ／　 　 　 ＞.､
.　 ／:. :. :. :／ｲ　　　 `i:/､_　　　　　|　／　　 i　 i::ﾍ　　　　　　　 ` ､
　 :. :. :. :.／／　　　　　'　　i:｀::¨:7　_ﾚ´　　 　 ヽ ヽ:::i　 　 　 　 　 　 ヽ
　 :. :. ／／　　　　　 　 　 .|::::::::::|　f　　　　　 ,.:':i　i::::|　 　 i　　　　 　 iヽ

――岩屋山――


　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 _,,,...:-‐‐=-..,,,_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,r'"::　::　　 　　　::＼,,.....,
　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ,,r'"::　::　:...　　　　　:::　. ::;　:::.`'::.､
　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ,:r':::　::　.:::　::　　　　　　::　 　 :;　::: .:: `':.､　　　　_,,(（"
　　　　　　　　　　　　　　　 ,r'":::..　..::　..:::.　....　　　　　 :　 ::　　:;　:: ::.　::`'::､_,(（"　.:.:.::..
　　　　　　 　 　 　 　 　 ,r'"::::　　...:::　:...:::　::　 　　　　　:::　 .::　　 :;　::　_,,(（"　:;; .:;;:..
　　　　　　　 　 　 　 ,r'"...::::..　......:::::　　　　　　　　　　　 ::.　　　　　_,,,(（　:;; .:;,i'　::;;;:.
　　　　　　　　 　 ,r'":::,,,,,,　:::::......::::::　...　　　　　　　　　　　　　._,,,"( （（　::;;;　r;;　;;
　　　　 ,("゛))､r'"::....::(~::~~j;,　　.:.... 　::...... 　_,,,,　 　　　._,,,-":((:　（:;;:; Z;;　;;　(　::::;;;;
　　　　(;;;::;;;;;; ﾘ　　 f;;;:;;:::::::ﾘ　　.　　　　　 f;;::: :;''))　　（（ ..::从 ;;:f::;;: :(　::::;;;; f;.:::;　;;
　　　r'" ﾐ|l lﾘﾉ　　 ((从wyﾙ　　　　　　　ﾑ;;::;;;::;;;::ﾘ　（（:;;;::(::: :::;(:::::;;; :f:::;　;;　(::;;;.. ;;:
　　　　　,,jｌ |　 　 ll　,'丁 ﾄ　卅　ji从　个 YwWWﾘﾉ　v;;;:: ;((;;:::;;;（(:;;: :; ゞ::;;;.. ;;::: ;;::::.:..:...
　　　　''^~''""゛ ﾞ ﾞﾞ　 ,jl; j| ﾞﾞﾞ ﾞﾞﾞ　ﾞ~` ﾞ 　 "' ' |l; :|" 　 `ﾞ';ﾐwﾘﾉwv从w从wv从w从wv
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　　　　　　　　　　　　　　/::::::::::::::::::::::::/! :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|　　　　　見事な紅葉ですね、将軍！
　　　　　　　　　　　　 ／:::::::::::::::::::::::::/ |:::∧ :::::::::::::::::::::::::::::::: ﾄ::::::::::::__::::::::::::::::::::::::　　　　　山が燃えているみたいです
　　　　　　　　　 　 ／::::::;ｨ:::::::::::::::::::/⌒!::i　!::::::::::::::::;ｲ::ﾄ::::::::::| ＼／／}::::::::::::::::::::'
.　　　　　　 　 　 　 ￣￣ |::::::::::::::ﾊ/　　V ｀|::::::::::::::/ |::l‐八::::ト 〈／ ／ ::::::::::::::::/
　　　　　　　　　　 　 　 　 ::::::::::::::|　,ィ ﾆヽ　＼:::::::/　ﾚ　　 ∨　 〈,イ::::::_:::::::::::::/
　　　　　　　　　　　　　　　､:::::::::::| ヾ んﾍ '　　|::::/　　_　-=x､　　　l／ィ |:::::／
　　　　　　　　　　　　　／.:∧::::::: ヽ　ﾏィｿ　　 ﾚ' 　　´ んﾄﾊ ｀〉　ノ r'. ! l : ト､
　　　　　　　　　　　 ／:.:/(＿_:::::::､:::＼ ¨　　　　　　　　ヒえﾉ '　　　　　ﾉ＼i,ヽ＼
.　　　　　　　 　 　 /.:./////_入::::::',⌒　　　　,　　　　　 ｀¨´　　　＿／:＼///∧:.:､
　　　　　　　　　　/:.://///´:.:.:.:l:::::::〉　　　　　　　　　　　　　　 ///|:.:.:.:.:.:.､///∧.:.
　　　　　　　　　　//////:.:.:.:.:.:.:l::::::|/＼　　(｀ ＝ ァ　　 　　／ ///:.:.:.:.:.:.:.:∨//∧.:.
　　　　　　　　　 |/////:.:.:.:.:.:.:.:.:ｌ:::::ﾄ､//＼　｀ ─'　　　　＜/////:.:.:.:.::.:.:.:.:.:∨//,i:.:|
　　　　　　　　　 |////l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l:::::|.:∨//,,＼＿ .,　__´　} /////:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:∨//l:.l
.　　　　　　 　 　 ﾄ///,| :.:.:.:.:.:.:.:.:l:::::|:.:.∨///|:.:.:.:r‐‐､:.:7.:∨///:.:.:.:.:.:.:i:.:.:.:.:.:.:.:.l///'
.　　　　　　 　 　 |.:＼/|:.:.:.:.:.:.:.:.: | :::|:.:.:.:＼／:.:.:.弋__ノ/:.:.:.:∨/:.:.:.:.:.:.:.:l:.:.:.:.:.:.:.:.:|／
.　　　　　　 　 　 |:.:.::.:.:.＼:.:.:.:.:.:.:.l :::|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./:.:.:.::.:.:／/
　　 　 　 　 　 　 l:.:.:.:.:.:.:.:.:＼ .:.:.:.l::::|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.／:.:./
　　　　　　　　　　　　　　　　　　吉備国　伝令将校　彼方



　一行は護衛兵十名と共に、紅葉乱れる山を歩いていた。
山は深紅の色に包まれ、幻想的な雰囲気を醸し出していた。

　 　 　　　　＿＿＿_
　 　　　;　／ノ||||　ヽ＼;
　　　;　／（ ○） 　（○）＼ ;　　　　　　　　もう歩けないお！
　 ,　／::::::＼（__人__）／::::: ＼;　　　　　　死んじゃう！　死んじゃうお！
　 ;　|　　　　| |r┬-| |　　　　|,,
　 ′＼ 　　 　 `ー'ｫ 　 　／´　　　　　　ここらで休憩するお
　　　　./　　⌒￣￣`r:´>　) :
　　　　(＿ﾆﾆ>-‐'´／'　（／ ;
　　　　;　|　　　　　| ;
　　　　'　＼　ヽ/ / :
　　　　,　／ ／＼＼ .
　　　　;　し’　'　`|　|　;
　　　　　　　　　　⌒



　　　　　　　　　　　　　　 ＞　´　 ＞ ‐ ､ ､_　＝く｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　／／　, 　　,　　　 ｀Y｀ヽ＝＝､一、
　　　　　　　　　 　 /.／ .／　/ ./　 　　 /!　 :Nヽ　 ヽ　ﾊ　　　　まだ二〇分（※この世界では分・時間という単位）しか
　　　　　　　　　　/ｲ / /　　/ //　./ , / ,j　　N　　　 ﾍ　|　　　　山を登っていませんが……
　　　　　　　　　　/ / /// /≠/ .///≠x.|/　i v､　　　 V
　　　　　　　　　　lｲ　./ l :,ｨ≠x.// ﾉｲ≠､|/　l lﾍヽ　ﾊ　l
　　　　　　　　　　, ! 从 l :l _{少 ′　{ゝｲ ,l　/ N ﾄ､∨ i　l
　　　　　　　　 ／ｲV　| l/l 　 　j　 　 ￣/// /ノ!j jヽ∨　!
　　　　　　　 ///イ j ハ! :ﾄ､　　r_､　　彡ｲ　|´　ﾍｊ､ヽ ＼|
　　 　 　 　 /ノイ j/　 | ! :|´ 丶.　 　 ／ l !　ﾄ､　 ヽ ﾄト､ }、
　　　　　　/ / /ノ´ 　 | l :|　r {-｀≠ ﾆ二!l　l,イ　　ゝl !　ﾄﾍ
　　　　　 / //´　　 　 | l |､_j　｀l　｢　　__ j　|　l　　 / ハ {　',
　　　　　{ノ´　　　　＿| l .! !､､　l /　　 | ,j　,　ﾉ､_ / /　 ﾊヽ ',
　　　　　　　　　　/　 ﾊ l l | ゝ ソ , - ﾆ| l　j /　　｀ ｰ ｖ′｀ヽ!
　　　　　　　　　ノ　　　ﾊ Vゝ'´／／ ノ l /r'　　　　 /　ﾍ
　　　　　　　　ハ.　　 /　V/./_／ 　 ｢　r/´　　　　/　　　ﾍ
　　　　　　　　{　 ヽ /　 〃/　　　　 |　| | 　 :| 　 /　　　 　 〉
　　　　　　　 ,ィ　　,'　 〃 ,'　　　_,. -|　| | 　 :|　/　　　　　/
　　　　　　　ﾊ､ヽ　| 　 l l l-‐ 二 - =|　| | 　 :|/　　, - 彡｀ヽ

　　　　　　　　　 /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
　 　 　 　 　 　 /:/::::::::::::::::::::::::l::|､ﾑ:::::::::::::::::::::::::ヽ:､＼
.　　　 　 　 　 /:/::::::::::/::::l:::|::::il::ﾄ从::l:::ヽ::::::::ヽ::::::ヽヽ｀　　　　　　温羅さんは、病み上がりなんです
　　　　　　　　l:/ｨ:::::::::l:::::;'::,ｌ:::/l::l　 l::ﾄ､::l:::::|::i:::i;::､:::ﾄl　　　　　　　あまり無茶はさせないほうがいいと思います
　　　 　 　 　 l:::::l:::::::::|:::/l/ l/_ リ　 リ l/l:::/:ﾊ::ｌ|::ﾊ:l
　　　　　　　 ,l:::::乂:::::i､|＿__ｚ　　　 ｚ＿_l/l/:::l/l/.ﾉ'
　　　　 　 　 ｌ::::/ /ヽ:i　￣￣　　 ､　｀￣　l::::ﾊ
　　　　　　　,l∠　{:{::::ヽ 　 　　　 __　　 　 ﾊ::!へ
　　　　　　ｲヽ　Z从:::::ﾄi　　　　 (_ﾉ　　　/::l::| 　 ＼
　　　　∠.. l　l"~{Kへ::i::l ＼　　　　　 ∠;;;;;ｌ:i｀i`ﾞ＾"`
　　　　　　 ｌ　l::::::ゝ_` `ニﾆ .＞ -- 彳　／ﾉi:::l
　　　　　_ｒへ ゝｭへ ＼　　`　ニニニ彡イﾆ.}/
　　　 . ｲ_｀ヽゝ_　i､　＼＾_　‐-　、 .　 ニ「　 lヽ.
.　　 / {　_ヽﾉﾌ　｜＼　　　 ‐- ､V／ノﾉ| _　|　ﾊ
　 _/　ﾊ　｀¨ヽ　 ﾉ　　ヽ＝= ､＿__ 彡 i／ ＼　 ﾊ
／/　　 ゝ　　　ｲ .　i　　ヽ　　丁 ,´‐ <.　　＿>、 ＼
￣｀丶､/ﾊ　　　ﾊｊ:./　 　 ヽ／ｒ‐ゝ‐-､＼/　 〈 |__／＼
　　　 ｲ　ﾊ　　 ﾊ.V::.　　　/　 .ゝ'‐- 、　 }￣　リ　　　/}
＞､/　l.　 ﾊ　 ,'　 l::::.　　/ -‐ﾍ ＼　　　ﾑ-‐ '´　 . イノ
　 ∧　l　　ﾊ /　　l:::::::イ　　 ／}　 　 　 ﾄ､ 　　／　 ゝ



　　　　　　　　　　　, ､＿__
　　　　　　　x‐‐‐ｖ' ヽヽ` `￣ヽｰ､
　　　　　　/ ,ｲア´　　 ヽヽ　　　ヽヽ　　　 ,ｨ ｱ
マﾆ=-､＿{__{_!{ {　i ﾄ､　 ヽヽ　　　ヽヽ_,イ彡'　　　　　　　　それでは仕方ありません、休憩にしましょう
　｀ヾ三≧ﾆ三≧ｘj ﾄ､込_ヽ}厶}ﾄ､ヽ Yｲﾆ彳
　 　 了彡三彡ｿｿト! .ィT ヽ{ﾅi ﾊﾄ､　Vﾆﾂ　　　　　　　　　　第一分隊は前方、第二分隊は後方の警戒をせよ
　　 　 ￣彳'ﾂﾂ从| ト `┘ , ｰﾞ {从ﾊ　}"´　　　　　　　　　　
　　　　 　 l丁l「l＞ﾄ､ 　 /￣l,.ィi从} }iﾉ
　　　　 　 lﾊ＼j二.ヽ ヽﾆマ´　{　{
　　　　 　 ＞`´　　＼ヽ ＼.＼ ヽ ＼
　　　　　/＿＿　 　 /　Vﾊ}`く`マﾆ､_ヽ＿
　　　　　|‐o‐‐o｀ヽ/　　 V　 /＼}ニニニ三二ヽ
　　　　　|7￢‐-､ヽ! 　　 〉〉'´: . ハ￣￣￣｀ｰ-､}
　 　;　　/／　/　}┘! 　//::.:.:.:./　 〉　　　　　　ﾉ
　　; 　厂　　/　∧/　 //::.:.:.:./／/　　,-､__
　　　/　　　.＼/ /　 //二二{ ／7￣/ tﾉﾆ}
　;　/　　　　　 }ｲ／／──‐{ 　 {∩{-てﾆﾉ

　　　　　 　＿＿＿
　　　　　／_ノ　ヽ、＼　　　　　　　　　　はー、疲れたお
　　 　 oﾟ（＞）　（＜）ﾟo.､　　　　　　　　　ずっと歩きっぱなしだったから足が痛いお
　　／　　　（__人__）　　...＼
　　|　　　　　ﾉ　　　ヽ,　　　|　　　　　　　ところで兎羽火、その腰のひょうたんはなんだお？
　　.＼　　　（/⌒ﾉ´ﾌ 　 .／　　　　　　　
　　 .　.>　　 .￣￣´　　<.


　　　　　　　　　　　　　　r‐-:::__:::::::::::::::::__:.-‐
　　　　　　　　　 　 　 ..:::::::::::::::::::::::::＼≦===-
　　　　　 　 　 　 　 /:/::::::ﾊ:::::::::::::::::::::＼::::::::',　　　　　　　これですか？
　　　　　　　　　　 /:::{:::/|:| |:::::',:::',::::∨:::::',::::::::',　　　　　　これには水を入れています
　　　　　　　　　 　|::::|:::斗' }::::｀ｰﾊ-::::V::::::',:::::::.　　　　　　
. 　 　 　 　 　 　 ,=|::::|::ｘ=ミⅥ/ｨｆ笊ミ::V::::::}::::::::.
.　 　 　 　 　 　// }::::|/ んﾘ,　　 ﾋ心 }:::!::::::|::::::::::.
　　　　　　 　 //ﾙ|::::|i :::::.　　 　 .::::::/:::i:::ﾙ'｀ ，::::.
　 　 　 　 　 //ﾉﾚ.::: 人　 　Vフ 　 /:::/:/!i !iﾚ.',::::::
.　　　 　 　 //ﾙ'ﾚ,|/.|:::个 ､ ＿　 ムイ/ル'ﾚﾊ, ',:::',
　　　　　　7/ﾙﾊ／　|:::::| ｒ=f‐‐==､.|::|::´｀ヽ{!i ﾊ ',:::',
　　　　　 7ﾉｲﾚ　　　.|:::/ .}¨｀Ｖ´￣ |::|::::|i::::::::＼,ﾊ::::',
　　　　　　　　　__ -‐|/＼　　.|..__／|::|¨ ‐- __:::::::::::::::',
.　　　　　　　 ‐}:.:.:.:V/__ -‐　´ __ - |::| / / / }､:::::::::::::',
　　　　　　 /}=,i:.:.:.//　__　-‐. 　 　 |::|.:./ .,'=':.:.}::::::::::::::',
　　　　　　,':.:|=,:.:./::{／　　　 　 __ -|:::V　.V:.:.:.:|::::::::::::::::',

　 　 　　　＿＿＿_
　 　　　／⌒　　⌒＼ ﾎｼﾞﾎｼﾞ　　　　
　　　／（ ●） 　（●）＼　　　　　　　歩きっぱなしで、僕めっさ喉渇いているお
　 ／::::::⌒（__人__）⌒:::::＼　　　　　　ちょっとくださいお
　 |　　　 ｍj |ー'´　　　 　 |
　 ＼　 〈＿_ﾉ　　　　　　／
　　　　ノ　　ﾉ



　　　　　　　　　　　　　　r‐-:::__:::::::::::::::::__:.-‐
　　　　　　　　　 　 　 ..:::::::::::::::::::::::::＼≦===-
　　　　　 　 　 　 　 /:/::::::ﾊ:::::::::::::::::::::＼::::::::',　　　　　　　は、どうぞ
　　　　　　　　　　 /:::{:::/|:| |:::::',:::',::::∨:::::',::::::::',
　　　　　　　　　 　|::::|:::斗' }::::｀ｰﾊ-::::V::::::',:::::::.
. 　 　 　 　 　 　 ,=|::::|::ｘ=ミⅥ/ｨｆ笊ミ::V::::::}::::::::.
.　 　 　 　 　 　// }::::|/ んﾘ,　　 ﾋ心 }:::!::::::|::::::::::.
　　　　　　 　 //ﾙ|::::|i :::::.　　 　 .::::::/:::i:::ﾙ'｀ ，::::.
　 　 　 　 　 //ﾉﾚ.::: 人　 　Vフ 　 /:::/:/!i !iﾚ.',::::::
.　　　 　 　 //ﾙ'ﾚ,|/.|:::个 ､ ＿　 ムイ/ル'ﾚﾊ, ',:::',
　　　　　　7/ﾙﾊ／　|:::::| ｒ=f‐‐==､.|::|::´｀ヽ{!i ﾊ ',:::',
　　　　　 7ﾉｲﾚ　　　.|:::/ .}¨｀Ｖ´￣ |::|::::|i::::::::＼,ﾊ::::',
　　　　　　　　　__ -‐|/＼　　.|..__／|::|¨ ‐- __:::::::::::::::',
.　　　　　　　 ‐}:.:.:.:V/__ -‐　´ __ - |::| / / / }､:::::::::::::',
　　　　　　 /}=,i:.:.:.//　__　-‐. 　 　 |::|.:./ .,'=':.:.}::::::::::::::',
　　　　　　,':.:|=,:.:./::{／　　　 　 __ -|:::V　.V:.:.:.:|::::::::::::::::',

　　　　　　　　　 ,-‐-､
　　　　　　　　　 | 　 |　　ﾝｸﾞ
　　　ﾝｸﾞ　　　　 | 　 |
　　　　　　　　　 | 　 |　　　　　　　　　　　　　　　ありがたいお
　　　　　 ／￣⌒)　 (⌒￣＼ﾝｸﾞ
　　　　／　,. ^‐'_ヽ　/__ｰ^ ､　＼
　　／　／／￣ ｀ ⌒ ´￣＼＼　＼
　（　　<／　 　　　　　　 　　 ＼ﾉ 　 ）
　　＼　＼　　　　　　　　　　 ／　／
　ﾝｸﾞ ＼　＼　　　　　　　／　／



　　　　　　　　　　　　　　　 . : ´¨〆`ｰ'´ ｰｖ'⌒'.
　　　　　　　　　　　　 　 ／:.:.:.:.ｒ.:.:.:.:.:.:.:.:.:. ﾊ.:.:.:ﾍ
　　　　　　　　　　　 　／;´: : :/.:: ィ:/!/}:::.:.: |::.:. ∧　　　　　　　（ああ……そんな一気に……）
　 　 　 　 　 　 　 　 　 /::.ｲ / ｒｫ/'´佗从 ﾄ.}ヾ.:.:.∧
　　　　　　　　　　　 　 | / {/イり,　　 　 !:ﾘ 小 ':、∧
　　　　　　　　　　　 　 ｌ' 　!八　 ｒっ　　 !:ﾄ､iヾﾍ ヽ.:ﾍ
　　　　　　　 　 　 　 　 　 /:　＞ .,__ 　イ ﾄ､ :: ∧ ﾍ ﾊ
　　　　　　　　　　　　　　/ﾚw.ノ| ! ｒ‐ｧ‐|: |_∨- ､V ヾ.'.
　　　　　　　 　 　 　 　 / . ﾚ'ｆヾ!:| ｊу　!: | / ｒ≠､ヽ ﾍi
　　 　 　 　 　 　 　 　 // / ｆ¨ヽﾘ升＜ !:ﾘ:レ':. .: .}:::ヽ ﾐ ､
　　　　　　　　　　　　/´ﾚ′!:.:/:ｒーｭ: ´ﾚ: :|/=＝=,:::::｀i＼
　　　　　　　　　　　　　　　 j;={ j 　 ｦ､. : .: { _＿_ ﾊ:::::::|
　　　　　　　　　　　　　 　 / ,.冫　厶. ｀ ＜勹　 |ヽ}.:.:.:|
　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 辷l/ 　八: ｀　､ 　　　 }ｰ'.: :.:|
　　　　　　　　　　　　　　　　{　 .'　 } .: .: .｀ 　 .,_ﾉｰ,:.: .:|
　　　　　　　　　　　　　　　　ゝ ′　江三三三テ:仇: : |
　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ｆTｉ{　 　: .ｲ:j小.ヽ: |

　　,r'ﾆﾆﾆﾞヽ、
　（"´￣￣ヾ））　　＿＿＿　　　　　　　　　　　プハァー
　|　　 rｰ< ﾉと)／ ノ ′＾ヽ＼　　　　　　　　　ごっそさん
　| 　　｀ﾌ"ﾉ /　 （●）　 （●)＼
　ヽ、　 ' （　ｌ　:::⌒（__人__）⌒ﾞ::l
　　 ＼　　＼|　　　`i-┬y'´　　|
　　　　 ＼ 　＼　 　｀'ー' 　 ／
　　　　　　 ＼ 　ヽ　ー─ィヽ



　　　　　　　　　　　, ､＿__
　　　　　　　x‐‐‐ｖ' ヽヽ` `￣ヽｰ､
　　　　　　/ ,ｲア´　　 ヽヽ　　　ヽヽ　　　 ,ｨ ｱ　;　ぶ
マﾆ=-､＿{__{_!{ {　i ﾄ､　 ヽヽ　　　ヽヽ_,イ彡'　　;　る
　｀ヾ三≧ﾆ三≧ｘj ﾄ､込_ヽ}厶}ﾄ､ヽ Yｲﾆ彳
　 　 了彡三彡ｿｿト!c○ ヽ}Ο｡ﾊﾄ､　Vﾆﾂ　 　　　　　　（全部……飲まれた）
　　 　 ￣彳'ﾂﾂ从| ト/////// {从ﾊ　}"´ 　
　　　　 　 l丁l「l＞ﾄ､　/^^^^{,.ィi从} }iﾉ　　
　　　　 　 lﾊ＼j二.ヽ ヽﾆマ´　{　{　;　　　 　
　　　　 　 ＞`´　　＼ヽ ＼.＼ ヽ ＼ 　 　 　
　　　　　/＿＿　 　 /　Vﾊ}`く`マﾆ､_ヽ＿
　　　　　|‐o‐‐o｀ヽ/　　 V　 /＼}ニニニ三二ヽ　;　ぶ
　　　　　|7￢‐-､ヽ! 　　 〉〉'´: . ハ￣￣￣｀ｰ-､}　;　る
　 　;　　/／　/　}┘! 　//::.:.:.:./　 〉　;　　　　　ﾉ
　　; 　厂　　/　∧/　 //::.:.:.:./／/　　,-､__
　　　/　　　.＼/ /　 //二二{ ／7￣/ tﾉﾆ} ;　　ぶ
　;　/　　　　　 }ｲ／／──‐{ 　 {∩{-てﾆﾉ ;　　る

　　　　　　　　　＿＿＿
　　　　　　　／ ⌒　　⌒＼
　　　　　 ／　（⌒）　 （⌒）＼　　　　　　ありがとうだお！
　　　　／ 　 ///（__人__）///＼　　　　　おかげで助かったお
　　 　 |　　 u. 　 `Y⌒y'´　　　 |
　 　 　 ＼ 　 　 　 ﾞー ′　　,／　　　　　とっても美味しかったですお
　　　 　 /⌒ヽ　 　ー‐ 　 　ｨヽ
　 　 　 / rｰ'ゝ　　　　　　　〆ヽ
　　　　/,ﾉヾ　,>　　　　　　ヾ_ノ,|
　　　　|　ヽ〆　　　　　　　　|´　|

　　 　 　 　 　 　 　 　 　 /:. :. :.i:. ii
　　　　　　　 　 　 　 　 /:. ヽ:.,､-‐‐ェァ‐‐-.､
　　　　　　　　　　　 　 i:.,.:＜_,､:/ヽ'ヽ'‐:. :. :. :.｀ヽ,
　　　　　　　　　　　　,ｲ:. イ:｀ヽヽ:. :. :. :. :. :. :. :. :. :.ヽ　　　　　　　　　　　（……）
　　 　 　 　 　 　 　 /i:./:i:. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :.ヽ:. :. :. :. ヽ　　　　　　　　　（――不思議だ）
　　　　　　 　 　 　 i:i:..i:i:. :. . :. :. :.:､:. :. :ﾊ:. :. :. :ヽ:. :.ヽ:. ヽｭ　　　　　　　（この男の顔を見ると、なぜか怒る気も失せてしまう）
　　　　　　　　　　 ,|:.i:.i:i:.i:. i:. :. :ヽ:.ヽ:. .: ﾍ:.､ﾊ:. :.ヽ:. :. ヽ:.:ﾍヽ
　　　　　　 　 　 ノ ヽ:.i:.i:.i:. i:.ﾍ:.ﾍ:ヽ:ヽ:.ヽ,:斗t-:､:ﾍ:ヽ:. :ヽ:.ﾊ.＼　　　　　（なにか、人を引き付ける天性でもあるのだろうか）
　　 　 　 　 ,.ィ´:.::/.､: |:. .:孑チ了`''ヽ',.'´:.i　ヽヽﾊ:.ﾊ:.ヽ:. ﾊ:ﾊ: :.ヽ
.　　　　 ／ : : : : / . ヽ|:. :.:i ,ｨﾁ示　ヽﾍ　f示ﾊヽVi:. ﾊV:.i:.:ﾊﾘ:. :. :ヽ　　　　一〇分後に出発します
.　　, イ: : : : : : :/ソ彡.|:.: .:i" V';;:ﾘ　　　　V';;:ﾘ　.ﾊ:.i.:ﾊV:ﾊ:.:.i､: : : : :.ヽ,　　血吸川までもうしばらく歩きます
.　彡:.:: : : : : :, '　 ./:.彡i :.:ﾊ　｀¨´　　　　 ｀¨´　斥:i V|　ヽ ヽ V:.､＼: : :`ヽ
　 彡: : : : : ,.' 　 ./:. :. :|:. :.i ﾍ.　　　　　'　　　　/.i:. i"iﾘ 　 　 　 ヽヽ＼＼:
　 ／:／: , '　　 /:. :. :. |:. :.i 　 ヽ　　 ｀￣　 .イ　ﾞi:. | ､　 　 　 　 　 ゞ:ヽ:＼
　 ／ﾉ:／ . 　 /: : : ,.:':.|:. :.i　 　 |ｪ＞ 　.イ.|--､　!:.:| 　 >,
　　ソ　　 　 /:. :. :./　 |:. :.i 　 f‐‐---､::::f'´　 |　i:. |／　|
　　　 　 　 / :. :. : | ＞|:. :.i___.ﾉ　　 　 V:i 　,､ノァi:.:|　　 |
　　　 　 ,.:':. :. :. :.ﾉ| 　 |:. :.ト ､｀_¨''‐､　 ﾉ　.i 　 | .!:ﾘ　／ `ヽ､
　　　 ／ :. :. : ／.ｲ＼..i:. ﾘ　　　 ｀¨ヽ/　 ./ 　 i　iﾘ／　 　 　 ＞.､
.　 ／:. :. :. :／ｲ　　　 `i:/､_　　　　　|　／　　 i　 i::ﾍ　　　　　　　 ` ､
　 :. :. :. :.／／　　　　　'　　i:｀::¨:7　_ﾚ´　　 　 ヽ ヽ:::i　 　 　 　 　 　 ヽ
　 :. :. ／／　　　　　 　 　 .|::::::::::|　f　　　　　 ,.:':i　i::::|　 　 i　　　　 　 iヽ
　 :.／ /　　　　　　　　　　 |::::::::::|　|　　　　／::::i　i:::::|　　　.i　　　　　/ / ヽ
.　　　 |　　　　　　　　　　　|::::::::::|　|　　,....'::::::::::i　 i:::::|　　　 i　',　　 / / ./
. 　 　 |__　　 　 ヽ　 i　　　 |::::::::::|　|-‐':::::::::::::::::i　.i:::::|　　 　 i　i　 / / ./

　一行は山路を歩き続け、ついに目的の川に到着した。
見ると、川は赤茶色に染まっており、確かに血が流れているようであった。
温羅はこの川を、何かに取りつかれたように凝視していた。ふいに、自分の血が流れているような錯覚に陥り始めた。
錯覚、だと思ってたが、実は彼は未来を見ていたのかもしれない。

､.v,,;..v､,　　　　　　　　　　`'ｰ-､_wiw.,, ::.;;'' ;: :::''::.;;'' ;;:;: :::''　::.;;'' ;;:;:　ﾐﾞ':,”:";oヾv;;ﾐﾞ'爻
ゞ;爻彡ヾ;ゞ;yゞ､.vk,,..v　 =-　　　´~"''‐- ､..,,,_;'　　',:;;　:;:　:::''::,:;;　:;: v':,ゞ;;ﾐﾞ'爻;ヾ.:ﾞ;;ﾐﾞ':,o
”v:";v;oゞゞ;yゞ　ゞ;爻彡　　　　　　　　　　　 　 "'- ､''::.;'':　.;　　''::.;;' 'ﾐﾞ'ｙ”:";oヾv;;ﾐﾞ'爻
.:ﾞ;ゞ;ヾ.:ﾞ;;ﾐﾞ':,oヾv”v':,ゞ;;ﾐﾞ'爻_　 　 -　 -_　_　　 　 　 ｀ヾ ::::''::.; ::::''.:;;　''::.;;''w ;;:;: :iiwW'' ;
.:ﾞ;;ﾐﾞ':,”:";oヾv;;ﾐﾞ'爻vゞ;ヾ.:ﾞ;;ﾐﾞ_　　　　　　　 　 　 　 　 　 "'- ､.;;'' ;;　:;: :::''::　w .,,w ::.;; ::''
v':,ゞ;;ﾐﾞ'爻;ヾ.:ﾞ;;ﾐﾞ':,oヾv”v':,ゞ,:;'w　　-=　_-=-　-　　　　　 　 　 ｀ﾞ''ｰ-､,_''　;: :::,:::.;;''
ﾐﾞ':,oヾv”v':,ゞ;;ﾐﾞ'爻ゞ;爻彡;;'' ;;:;: "'- ､　　 　 ￣ -=＿　＝－　 　 - 　　"'- ';:'':::::.;;'' ;: :::'':
vゞ;ヾ.:ﾞ;;ﾐﾞ':,”:";oヾv;;ﾐﾞ'爻.::.;;'';;:;: :::''″冫　―＝　　　　　　　　＝─　　　　　″-､,::.;;'' ;: :::'
爻vゞ;ヾ.:ﾞ;;ﾐﾞ”v:";v;oゞゞ:;: :,:::''　:::::, -'"　　　　　　　　　　　　　　-　_　　-=─　　　ヽ　::.;;'
　wi ;: ;::wWiｉ ',:;;　:;: :::'': :,:;;_,,.-‐''"　　　 ―＝-　　=-　　　－　－≡―　　　　　　　iYW:;;:'
;;:;: :::'',::.　　　;::::''_,..､-''"　　＿　　―＝　　　　　　　　　　　─ﾆ　　　　　　　　　　,-"　::.;;''
::.;;'' ;;:;: :::''::., -'"　　-￣　　＿ ―-ﾆ＿　　 ―＿　　―ニ-　　―　二　　　　, -'";: ;::.;;'　',:

　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿　_　_,.... __
　　　　　　　　　　　　　 ,.-‐' "´ヽ::::::y'´　　　 ﾐヽ､
　　　　　　　　　　 　 ／.:.:.:.:::::::::::::::'´::::::::::::::::::::::.::ヽ＼
　　　　　　　　　　　/.:.／.:.:／.:.:/.:.:::::ﾄ、:.ヽ:.ヽ:.ヽ.:.:ヽ:ヽ　　　　　　見てください、温羅さん！
　　　　 　 　 　 　 /／:.:.／.:.:/./:N:|ヽ!|il:.:ヽヽ:ヽ::ｌ:.::.::i::::',　　　　　これが血吸川です
　　　　　　　　　 ///:.:/:.:.:.:./:ｲ.::|ｌ|:f´￣|::Y:i::|!:.:!.|.:.:.:.|:.:.:.!
　 　 　 　 　 　 ///.:./:/;ｲ:/:::ｌj;:ﾑH!　　ｨ:ｌl什ト､j:|.:.:.:.|::.:.:l
　　　　　　　　//!:!:././/::!:l:イ| ｣⊥ヽ 　 |ｌj抂ｪ｣|｀!..:.!:ﾄ、:.l
　 　 　 　 　 〃 |:|:i:.:.l:i:.:.|:.l:.:ﾚぅ⌒f　　　!´ﾋ'　 lヽ!.:.ｌ.:| ヽ:.l
　　　　　　　 !　∥!|:.:i:l.i.:ﾄ:l.:iハ..::::j_　　 　 L::::ﾉ　|:.:|:.|　 ＼
　　　　　　　　　 l lヽ从ﾄ:! い、 ¨´　　 ,　　 　 　 |.:.l.:.|､,__　＼
　　　　　　　　 　 ! >ヘヽヽノ:ﾄ､　　　 －　　　／|.::|ｉ:.|;;i;;i｀ｰ‐ヘ
　　　　　　　　 　 /ヽ-‐7´/;;ｲ:::＞..,._　　　,.イ::::::|.::|l:ﾘ^介r､;;_j;;;;＼
　　　　　　　　 ／;;;／ノ;rくﾊ二__￣￣￣￣￣__ｺﾆミ{ノ:/ﾉ,ﾘ`´`'ーﾍ
　　 　 　 　 ／;;;;ィ"~＾ヽ`ﾐﾐ片__＂￣`'￣`'￣″|:..:｀Y彡'″
　　　 　 　 ´"´　　　　　＞'-ﾆ_ `'´￣`'￣`'￣`ﾟﾋ'ｰ-ト､
　　　　　　　　　　　 ／　　　　 弋ｰ--ｔ--ｧ-ｰ￢´｢lY 　 ヽ､
　　　　　　　　 　 ／　　　　 　 　 ヽ::.::.:У::.::.;:-┤j !|　　 　 ＼
　　　　　　　　　/　　 ヽ　/　　　　 ヽ::/::.::./´ ｒ'⌒ヽヘ　 　 　 ヽ


　 　 　　　＿＿＿_
　 　　　／　　 　 　＼　　　　　　　　　　おお……
　　　／　─　 　 ─　＼　　　　　　　　　なんとも、おぞましい川だお
　 ／ -=・=- 　　-=・=-　＼
　 |　 　 　 （__人__）　　U 　|
　 ＼　　 　 ｀ ⌒´ 　　　 ／

　　　　　　　　　 /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
　 　 　 　 　 　 /:/::::::::::::::::::::::::l::|､ﾑ:::::::::::::::::::::::::ヽ:､＼
.　　　 　 　 　 /:/::::::::::/::::l:::|::::il::ﾄ从::l:::ヽ::::::::ヽ::::::ヽヽ｀
　　　　　　　　l:/ｨ:::::::::l:::::;'::,ｌ:::/l::l　 l::ﾄ､::l:::::|::i:::i;::､:::ﾄl　　　　　　　　　　舐めてみると、本当に血の味がするんですよ
　　　 　 　 　 l:::::l:::::::::|:::/l/ l/_ リ　 リ l/l:::/:ﾊ::ｌ|::ﾊ:l
　　　　　　　 ,l:::::乂:::::i､|＿__ｚ　　　 ｚ＿_l/l/:::l/l/.ﾉ'
　　　　 　 　 ｌ::::/ /ヽ:i　￣￣　　 ､　｀￣　l::::ﾊ
　　　　　　　,l∠　{:{::::ヽ 　 　　　 __　　 　 ﾊ::!へ
　　　　　　ｲヽ　Z从:::::ﾄi　　　　 (_ﾉ　　　/::l::| 　 ＼
　　　　∠.. l　l"~{Kへ::i::l ＼　　　　　 ∠;;;;;ｌ:i｀i`ﾞ＾"`
　　　　　　 ｌ　l::::::ゝ_` `ニﾆ .＞ -- 彳　／ﾉi:::l
　　　　　_ｒへ ゝｭへ ＼　　`　ニニニ彡イﾆ.}/
　　　 . ｲ_｀ヽゝ_　i､　＼＾_　‐-　、 .　 ニ「　 lヽ.
.　　 / {　_ヽﾉﾌ　｜＼　　　 ‐- ､V／ノﾉ| _　|　ﾊ
　 _/　ﾊ　｀¨ヽ　 ﾉ　　ヽ＝= ､＿__ 彡 i／ ＼　 ﾊ
／/　　 ゝ　　　ｲ .　i　　ヽ　　丁 ,´‐ <.　　＿>、 ＼
￣｀丶､/ﾊ　　　ﾊｊ:./　 　 ヽ／ｒ‐ゝ‐-､＼/　 〈 |__／＼
　　　 ｲ　ﾊ　　 ﾊ.V::.　　　/　 .ゝ'‐- 、　 }￣　リ　　　/}
＞､/　l.　 ﾊ　 ,'　 l::::.　　/ -‐ﾍ ＼　　　ﾑ-‐ '´　 . イノ
　 ∧　l　　ﾊ /　　l:::::::イ　　 ／}　 　 　 ﾄ､ 　　／　 ゝ

　 　　　＿＿＿_　　　　　　 ヽ v /
　　　／─　　─＼　　　　　-（ｍ）-
　 ／（ ●） 　（●）＼. 　 　 　 ≡
／　　　（__人__）　　　＼　　　　　　　　　　血の味……
|　　　　　 　　　　　　　 |　　　　　　　　　　まてよ……
/　　　　 ∩ノ ⊃　　／
(　 ＼　／ ＿ノ　|　 |
.＼　“　　／＿＿|　 |
　　＼ ／＿＿＿ ／


　　　　　　　　　　　　 　 ∩＿
　　　　　　　　　　　　　　〈〈〈　ヽ
　　　　　　＿＿＿_　　　〈⊃　　}　　　　　　　　この川……砂鉄が採れるんじゃないかお
　　　　 ／⌒　　⌒＼　　 |　　 |
　　　／（ ●） 　（●）＼　 !　　 !
　 ／ :::::⌒（__人__）⌒:::::＼|　　 l
　 |　　　　　|r┬-| 　 　 　 | 　／
　 ＼ 　 　　｀ ー'´ 　 　 ／／
　　/　＿＿　 　　　　　　/
　　(＿＿＿）　　　　　　/

　 　　,.' ｲ:.:.:.:. ／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.://ヽ,l::: ﾍ .:.::.::.:.:.:.:.:.:.::.V　　ヽヽ
　 　.//!':.:.:.:: ':.:.:.:.:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::://ヾ,;;;|/::ﾉ/.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|.:.:.:.:.:.:.:. |
　　// ':.:.:.:/ :.:.:.:.:.:.:.:/.::.:.:.:./:_;_:/_jl/ 　 ´　 '::l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.: |:.: |
　 ,'//:.:.:.:/ｲ:.:.:.:. !:.:.:{:.::.／ :.:.//　||` 　 　　|ﾑl ‐|!､:l :.:.:.:.:.: |:.:.:.:.: |:.: |　　　　　　　さ……てつ？
　 l　!:.:.:://:!:.|:. |:| .: |:.:. |: l!.:/=!=..|ﾄ.､ 　 　 || ,|:_:|!|:.|＼ :.:.:.:| :.:.:.:.:|:.: |
　 |! |:.::/ﾊ' !.:|:. |:l:.:: |:.:: ﾚ'∨ ':: ヽ|!ﾞ' 　　 　||,r!:=ﾄ|:.|　|:.:.,:. , .:.:.:.: |:.: |
　 ｀ |:./ | 丶!.:.:.ﾊヾ |.:.: |j　 ﾊ::::::ﾉ! 　　 　　ヾ ヽ!::Vヾl: /|:ﾉ :.:.:.:::;|:.. |
.　　 ﾚ'　　　 ＼| 'ヽ,'ヽﾄゝ　ヽ｀´,ﾉ 　 　 　 　　ﾊ:::::::ﾊ! Yl! |:.:.:.:.:. , :. |
　　　 　 　 ／　ヽ /.:::!　　　 ￣ 　　　 　　 　 ヽ_｀_ノ　 ´ /!:.:.:.::∧ .:|
　　　,. ..:':´ゝ　　　'ｲ:. |! 　 　 　 　 　′ 　　 　 　　 　　,ｲ:.l:.:.: ,'　ヽ,,'
,_.., '::::::::::::::_j, .-= .||:.:.:|ゝ､ 　 　 　 　__　 　　 　 　 　, '　 '.:.:..:/　 　 ＼
｀ ￣￣ "´　.fヽ:.. |!:.::.|ﾍ!::ヽ 　 　　 ` ′ 　 　 　 ／:.ヽ,/:.:. /l 　 　_,ノヽ
　　　　 　 　 |: : ＼ヽ | ::.V,. ＼　　　　 　　 ,.. ｬ'! : : :.:./:.:.:.:.:,!'_`ー'',:::::::::＼
　　 　 　 　　|‐--､:`ｰ!--､__ヽ_` 　 ｰ‐　' ´　/::|.: : :.:/:.::.:.::::|! ﾄ､ ヾl' :::::::::: ＼
　　　　　 　ノ￣_｀V: : r ､ : : :`＝=‐-､__　　/!:: |: : :./ヽ__,.-ｲ,ﾉ::::ヽ ｀''ー`ー--ゝ
　　　　　／⌒ヽ : : : : ヽ ` ー─- ､ : : : ` ｰ──_:/ヽ.__, -.ｲ:::::::::::|
　　　 ／　　　　 ＼ : : : : `ー─ ､　＼: :/ ￣￣ ./: : : : : : :.,′:::::: |
　　／　　　　　　 　＼: : : : : : : : : :＼　 ／´￣::/: : : : : : ::/| :::::::: ﾉ

　　　　　　　　　　　　 (ヽ三/)　））
　　　　　　　　　＿＿　 ( i)))
　　　　 　　　／⌒　　⌒＼　＼　　　　　　　　　　　鉄だお！
　　　　　　／（ ●） 　（●）＼ ）　　　　　　　　　　　炭を酸化鉄と一緒に入れて、ふいごで火を送ると、鉄ができるんだお
　　　　.／:::::: ⌒（__人__）⌒::::＼
　　　　| 　 　(⌒)|r┬-|　　　　　|　　　　　　　　　　
　　　 ,┌､-､!.~〈`ー´/　　　 ＿/
　　　 | |　|　|　 __ヽ、　　 　/
　　　 ﾚレ'､ﾉ‐´　　￣〉　　|
　　　　｀ｰ---‐一'￣


　　 　 　　＿＿＿_
　 　　　／_ノ　 ヽ､_＼
　 　 ／（ ─）／)（─）＼
　 ／::::::⌒／／／)⌒::::: ＼
　 |　　 ／,.=ﾞ''"／　　　　　 |　　　　　　　あれ……でもなんでこんなこと知っているんだろう
　 ＼.　i f ,.r='"-‐'つ　　 ／
　 ／　ｉ　 　 _,.-‐'~　　　 ＼
　　　　i　　　,二ﾆ⊃

　　 　 　 /:. :. ／:. :. :.:i:./:. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. ヽヽ.ヽ
.　　　　 /:. :./:. :. :. :. :.i/:. :. :. :.:i:. :. i:. :. :. :. :. '､:. :. :. :. :. :. :.'､:. :. :. :.ヽﾊ　ヽ
　　　　/:. :./:./:. :. :. :. |:.:i:. :. :i:.:iヽ:. ヽ:.､:. :. :. :ヽ:. :. :. :. :. :. :.:ヽ:. :. :. :ﾊ:ﾊ　 ヽ
　　　 ,':. :/:. :i:. :. :. _:. :|:.i:. :.‐‐--.､,:.:ﾍヽ:. :. :. :ﾊヽ:. :. :. :. :. :i:.:ﾊ:. :. :. :.iヽ:i　　ヽ　　　　その話、本当か！
　　　,':. /:. :.i:. :.／,-､ヽ:i:. :. :. |. ,ｨ=≧ト.､ヽ:.:.:.:,ｨ≦了:. :. :. :.iヽﾍ:. :. :. :i. ヽ　　　　　　　鉄を国内で作れるのなら、農耕地の拡大
..　　,':./:. :. :.:／イ　 ノi:.i:. :. :i ｲ|r';;;;;::i 　 　 　 fr';;;:|.:r､:. :. :. iヽ .i:. :. :. :|　　　　　　　　も出来るし、軍の増強にもつながる
　　 i:.i:. :. :／'　　　/　 N:. :. :.ﾘ 乂;少 　 　 　 乂ソ V:.ﾍ:. :. :| i ＼:. :. :.|
.　　:.i:. ／.／／ 　 ヽ　 |:. :. :ﾊ　　　　　　　､　 　 　 i:. :.:N:. :| ヽ　 ヽ:. :|
　　 ／イ ／　ノ 　 ./￣|:. :. :.ト　　　　　　　　　　　/:. :. |.ヽﾘ.ゝヽ ヽヽﾘ
　　　' ´ ‐' ´イ ./／　　|:. :. :.iヽ　　　 　 ｀ `　　 ／.|:. :. |＼ヽヽト.ヽ､ヽ-＼
　　‐'　／　／／iゝ､ 　 |:. :. :.|.　＼　　　　　 ,.ィ 　 .|:. :. |　 ヽ､ 　 ヽ `ヽ ｀､＼
.　　..,､イ:."￣:. :.:ﾍ . ｀'‐|:. :. :.|'‐‐-､`　､__ イ/ヽ. 　 i:. :. |　_ノ 　ヽ　ヽ　 ＼ ＼
　 　 V:. :. :. :. :. :. .ﾍ.　　|:. :. :.|-､　　|‐‐‐‐‐| 　 | 　 i:. :. |'´ /　　　　`ゝ､,_ ヽ､,
　　　,ヽ-‐‐‐‐---､ﾍ..　|:. :. :.|　i　　|:::::::::::::|　　{ 　 |:. :. |.／　　 　 　 　 　 `‐‐

　　　　　 　　　　＿＿＿
　　　　　　 　 ／　　　　　＼
　　　　　　 ／　　 ＼ ,　, ／＼　　　　　　　やってみなくちゃ、わからんお
　　　　　／　 　 （●）　 （●） ＼　　　　　でも、製法は知っているんだお
　　　 　 |　　 　 　 （__人__）　　　|
　　　　　＼　 　 　 ` ⌒ ´　　,／　　　　　
　　　　　　ノ　　　　　　　　　　＼
　　　 ／´　　　 　 _i⌒i⌒i⌒i┐ ヽ
　　　 |　　　　ｌ　 （ l　/　/　/　l
　　 　 l　　　　l 　ヽ 　　　　　 /


　彼の予想は大当たりであった。この地一帯で、大量の良質な鉄が採れたのだ。
吉備国は国が主体となって、この製鉄事業に乗り出した。吉備国はたちまち鉄の一大産地となり、大国となった。
鉄製の農具によって農地の大幅な拡大が可能になり、さらに鉄剣によって軍事力は強大になった。
「真金吹く 吉備の中山 帯にせる 細谷川の音のさやけさ」
古今和歌集ではこのように詠まれている。真金とは鉄のことであり、「真金吹く」とは吉備国を表す枕詞である。

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――大和国――

爻　　 _,,-‐ｔ‐''⌒ﾊ、　　　　　　　_,,,　-‐''三]
ｋ;;:､　(,,　ﾒ μ ,,´｀, -―一''''""~　_,, -‐／::::＼　　　　　　　 ／
､,＼;;:: 人人ｷ,,　 /　--一'''"~￣　　,／:::::['i']::::＼へ、　　／
ﾆヾ ＼ⅲⅲ Y,／　　　　　　　　　／ii[]:::[_,!_]::[];､＼　Yy,,..
-‐''`　 `.、:,:／　　　　　　　　　／ii;[ i ]~~[_!_]~[l];:ヽ ＼＿
＿,,､＿,,,,／　　　　　　　　　,／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ　>￣ヽ
ﾊﾊ从 ／-―====r-===三''　､-―――――――‐＜　木ﾎYyy
(⌒)ｲﾄ爻------(　tｲ-‐'´::::::::,＼＿＿,,,....､_＿＿,,,_____`」￥　Y
　T,::爻Ooﾄ[iiii]<,,. ､ ｷ[]　 i::::::::::::::::[]::::::::::::::[]=======|爻爻三三
ー-　　''ー＾　二,,　ー---┴, -‐へ-O-ー-～～-―へ`~~　　　　]、
　　　　　　　　　━
　〓　　　　　　　　　　　━〓　　　ー　----　､---―

　　 　 /: : /:: : : / : : :.!:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
　　　/: : /: : : 斗--､ :|: : : : :|: : | ,ィＴ: ',: : :ヽ : !
　　　|: : |: : : : : |: /　 ＼: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ﾄ､:|　　　　　　　最近、吉備国がめざわりだな
　　　|: : |: : : : /!/ ⌒ヽ| :/　|:./⌒ヽＶ: |.: : : | V　　　　　　　
　　＜ : _: : : / 〈　 ノ　|/　　ﾚ　ヽ　}|:./ヽ: : :|
　　＜:: |. 小{　　 _,,.. -　　　　､-.,_　ﾚ{: :.|ヽ:|
　　　厶ﾍ　ﾊ　　　　　　　　 ､　　　　{ﾊ,;'　（(
　　　　　 ＼_!　　　　　　　 　'　　　　!　(　( ヽ)　ﾎﾜ～ｯ
　　　　　　　 ヽ　 　 'ー―--　 　 ／　 ヽノζ
　　　　　　___,ｒ| ＼　　 　 　 　 ／　　 |￣￣￣|(^)
　　　　／:/::::| ＼　 ヽ _　,　ィ´　　　　| ''..,,''::;;⊂ニヽ
　　／::::::/::::::|　　＼　　　´ ∧＞､　　.| .,,:: ;;;;ン=-　)
／:::::::::::/::::::::|　　　　＼　 /　 ! ,ｒ-''⌒＾ニ);;;;ヽニノ ヽ
　　　　　　大和国　崇神天皇

　　 ／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼　　　　　　　　　そうですな……
　|　　　 （ ●）（●）　　　　　　　　今の段階では、吉備国の軍事力は脅威にはなりませんが
.　|　u.　　 （__人__）　　　　　　　　いずれ大和に匹敵するだけの力を持つでしょう
　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ
.　 |　　　　　　 　 }
.　 ヽ　　　　　 　 }
　　 ヽ　　　　　ノ
　 　 i⌒＼ ,__(‐- ､
　 　 l ＼　巛ー─;＼
　　 　|　｀ヽ-‐ーく＿）
.　　　 |　　　　　　l
大和国　四道将軍　彦五十狭芹彦命（ひこいさせりびこのみこと）



　彦五十狭芹彦命――。のちの、鬼退治の英雄、吉備津彦命（きびつひこのみこと）である。

　　　　　　　　 ＿＿＿_
　　　　　　　／　　 　 　＼　　　　　　なら早めに潰したほうがいいですね
　　　　 　／　─　 　 ─　＼　　　　　今すぐ軍を招集しましょう
　　　　／ 　 （●） 　（●）　 ＼
　　　　|　　　　　___'___　　 　　 |
　　　　 ＼　 　　`ー'´　　　 ,／
　　 　 /⌒ヽ　 　ー‐ 　 　ｨヽ
　 　　/ 　　　 　,⊆ニ_ヽ、　 |
　　　/　 　 ／　r─--⊃、 　|
　　　|　ヽ,.ｲ　　 ｀二ﾆﾆうヽ.　|
　　　　大和国　稚武彦命



　　　　　　　　　　　　　　　 　 ／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 /: : : : : : : : : : : : : : : : :.、: : : : : : : : ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　 /: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',　　　　まあ待て
　　　　　　　　　　　　　 　 /: : /: : : 斗--､ :|: : : : :|: : | ,ィＴ: ',: : :ヽ : !　　　　いきなり平定、というわけにはいかんだろう
　　　　　　　　　　　　　 　 |: : |: : : : : |: /　 ＼: : /|: : r ､ : : :.|.: : : ﾄ､:|　　　この国には吉備出身の者も多い
　　　　　　　　　　　　　 　 |: : |: : : : /!/ 　　 | :/　|:.:(ヽ､｀＼:|.: : : | V
　　　　　　　　　　　　 　 ＜ : ｣_: : / 　_　 　_|/ 　 ﾚ. ＼ ＼　＼ : |
　　　　　　　　　　　　 　 ＜:: |. 小{　　 ｀ﾞ'''''' 　 　 　 ‐-＼ ＼　＼_　　　　何か、「大義名分」が必要だな
　　　　　　　　　　　　　 　 厶ﾍ　ﾊ　　　　　　　 ､ r--‐-､ >､　　　 ｀ヽ　　例えば、吉備国の民衆が、吉備国の圧政に苦しみ
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼_!　 　 　 　 　 '　` ‐-､ ｀`　　　　　 `､　大和国に訴える
　　　　　　　　　　　　　 _, r´:/ : :| ヽ　　　'ー―--　　 ／＼ 　 　 　 　 `､「どうぞ我らをお助けください」……とかな
　　　　　　　　　　_, r ´:.:.:.:./:.:.:.:.::|　| ＼　　 　 　 　 ／ヽ :｀ヽ 　 　 　 　 ヽ
　　　　　　　_, r'´:.:.:.:.:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:|　 ＼　ヽ _　,　ィ ´ |::.:.:ヽ: : `､　 　 　 　 `､
　　　　_, r ´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.|　　　 >-､ー_'/ 　　!::.:.:.:.:ヽ: : ` 、　__ ＿__i__
　　　/ﾞ: : : : : : : : : : : : ヽ:.:.:.:.:.:.／i!　　/ﾍ　i. / 入　　|＼.:.:.:.:.ヽ;,r'`‐´_,,..---┴‐,
　　 l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼／:.:.:.:!'! /ヽ､ヽrk'´:_,r､　ｲ:.:.:＼／ _>-‐'´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l
　　 !:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／:.:.:.:.:.:.:.l ﾞ'　　 !　　　!　ﾍ/|:.:.:.:.:.:＼/::::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l
　　l:.:.:.:.:.::i.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ﾍ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:!　　　ﾍ＿_/ 　 　 |:.:.:.:.:.:.:./!:::::::::::..:.:.:.:.:.:.:.:.:..::.:.:.:l
　 /:.:.:.:.:.:.: !.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ﾍ:.:.:.:.:.:.:.:.|　　　 /　ヽ　　　 i:.:.:.:.:.:.:/ ﾍ::::::::::::::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ﾍ

　 　　 ／￣￣＼
　 　／　　 _ノ　　＼
　 　|　　　 （ ー）（ー）　　　　吉備国国主、鳥栖玖流は善政を敷いていて、民も満足しております
.　 　|　　　　 （__人__）　　　　
　 　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　大和国に訴えに出る民などおりますまい
　 　.ｌ^l^lｎ　　　 　　}
.　　 ヽ 　 L　　　 　}
　 　　ゝ 　ﾉ　　　ノ
　 　／ 　/　　　 ＼
　 ／　 /　　 　 　　＼
. /　　/　　　　　　|ヽ、二⌒)､
　ヽ＿＿ﾉ


　　 　 /: : /:: : : / : : :.!:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
　　　/: : /: : : 斗--､ :|: : : : :|: : | ,ィＴ: ',: : :ヽ : !
　　　|: : |: : : : : |: /　 ＼: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ﾄ､:|
　　　|: : |: : : : /!/ ⌒ヽ| :/　|:./⌒ヽＶ: |.: : : | V　　　　馬鹿だなお前
　　＜ : _: : : / 〈　{} 　 |/　 .ﾚ　{} 　} |:./ヽ: : |　　　　　そんなもん自演でいいんだよ
　　＜:: |. 小{　　 _,,.. -　　　　､-.,_　 ﾚ{: :.|ヽ:|
　　　厶ﾍ　ﾊ　　　　　　　　 ､　　　　 {ﾊ/　V　　　　　兵士には、分かりやすい正義が必要なんだ
　　　　　 ＼_!　　　　　　＿　'　　　　 !　　　　　　　　「自分たちの戦いには意味がある。これは民を救う義戦である」
　　　　　　　 ヽ　　　Tﾆｰ‐‐‐,‐''　 ／　　　　　　　　　
　　　　　　___,ｒ| ＼　 ｀二二´　／　　　　　　　　　　吉備の鉄は是非とも手に入れんとな
　　　　／:/::::| ＼　 ヽ ｀_⌒ ィ´　　　　　　　　　　　
　　／::::::/::::::|　　＼　　　´ ∧＞､
／:::::::::::/::::::::|　　　　＼　 /　 !＼::`ｰ- ､

　大和国内では、天皇の徹底したプロパガンダにより、「吉備には鬼が住んでいて、人々は恐怖に怯えている」と
考えられていた。民衆の間では、吉備への軍事介入が盛んに議論され、天皇の思惑通りの方向へ向かっていた。



　　　 ∧,,∧　 ∧,,∧　　　　　　　　　吉備の鬼は、人間を食べているらしいぞ
　∧ (´・ω・) (・ω・｀) ∧∧　　　　　鬼の首領は２ｍの大男だってな
(　´・ω)　Ｕ) ( つと ﾉ(ω・｀ )　　　　政府はなにをしているんだ
｜　Ｕ (　　´・) (・｀　　)　と ﾉ　　　　僕らで吉備の人々を助けるんだ
　ｕ-ｕ （l 　　 ) (　　　ﾉu-ｕ
　　　　 `ｕ-ｕ'.　`ｕ-u'

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━━━━
━━

――吉備国――

爻　　 _,,-‐ｔ‐''⌒ﾊ、　　　　　　　_,,,　-‐''三]
ｋ;;:､　(,,　ﾒ μ ,,´｀, -―一''''""~　_,, -‐／::::＼　　　　　　　 ／
､,＼;;:: 人人ｷ,,　 /　--一'''"~￣　　,／:::::['i']::::＼へ、　　／
ﾆヾ ＼ⅲⅲ Y,／　　　　　　　　　／ii[]:::[_,!_]::[];､＼　Yy,,..
-‐''`　 `.、:,:／　　　　　　　　　／ii;[ i ]~~[_!_]~[l];:ヽ ＼＿
＿,,､＿,,,,／　　　　　　　　　,／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ　>￣ヽ
ﾊﾊ从 ／-―====r-===三''　､-―――――――‐＜　木ﾎYyy
(⌒)ｲﾄ爻------(　tｲ-‐'´::::::::,＼＿＿,,,....､_＿＿,,,_____`」￥　Y
　T,::爻Ooﾄ[iiii]<,,. ､ ｷ[]　 i::::::::::::::::[]::::::::::::::[]=======|爻爻三三
ー-　　''ー＾　二,,　ー---┴, -‐へ-O-ー-～～-―へ`~~　　　　]、
　　　　　　　　　━
　〓　　　　　　　　　　　━〓　　　ー　----　､---―

　　　 　 l'´￣`l￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣｀l
　　　　　|　　　|　u　　　　　　　　　　　　　 　 |　　　　　　　吉備冠者（きびのかんじゃ）様！
　　　　　|　　　|　　　　　ヽ　 　 　 /　　 　 　 |　　　　　　　
　　　 　 |　 :J |　　 ●　　ヽ----/　　 ●　　|　　　　　　　もうすぐで鬼之城が完成します
..　.　　　|　　　|　　 　 　 　 ヽ　 /　　　　　　 |　　　　　　　段取りの最終確認に入りますので、来てください
. 　　　　|　　　| 　 　 　 　 　 ヽ/　　　　　　　|
. 　　 　 |　　　|　　　　　　　　　 　 　 　 J 　 |
　..　　　|　　　|　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 |
　　　　 |..　／| 　 　 　 　 　　　　　　　 　 　..ﾄ、
　　　　 |／　 .|　　　　　　　　　　　　　　　　..|. ＼
　　　.／|　　　|. 　　　　　　　　　　　　　　　 .|.　　＼
　 .／　.|　　　.|　　 　 　 　 　 　 　　　　 　　.|　　　　＼
　　　 　|　　 　|　　　　　　　　　　　　　　　　.|
　　 　　Ｌ.＿＿|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿|
　　　　 　 |　　　　　　　　　　　　　　|
　　　　　　| 　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　|　　　　　　　　　　　　　　|



　　　　／￣￣￣＼
　 　／　─　 　 ─ ＼　　　　　　あー、わかったお
　／　 （●） 　（●）　 ＼　　　　もうすぐイクから、後少ししたら行くよ
　|　　　　（__人__）　　　　|
　＼　　　 ｀ ⌒´　　 　／
　／ 　　 　　　　　　　　|
（＿ )　 　・　　 　・　　|｜
　　ｌ⌒ヽ 　 　 　 　＿ﾉ |
　　|　 r　` (;;;U;;)　 　）__）
　（＿ノ　￣　 ／　／
　　　　　　　　（ ＿）
　　　　温羅

　温羅は、製鉄技術の功績を讃えられ、人々からは吉備冠者と呼ばれ、親しまれていた。
彼は阿曽郷の神職の娘・阿曽媛（あそひめ）を妻にめとり、幸せに暮らしていた。
また、彼は農業の知識も豊富にあり、吉備国の穀物生産高は飛躍的に上昇した。

　 　　,.' ｲ:.:.:.:. ／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.://ヽ,l::: ﾍ .:.::.::.:.:.:.:.:.:.::.V　　ヽヽ
　 　.//!':.:.:.:: ':.:.:.:.:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::://ヾ,;;;|/::ﾉ/.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|.:.:.:.:.:.:.:. |
　　// ':.:.:.:/ :.:.:.:.:.:.:.:/.::.:.:.:./:_;_:/_jl/ 　 ´　 '::l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.: |:.: |　　　　　温羅さん、こんな所にいらしてたんですか
　 ,'//:.:.:.:/ｲ:.:.:.:. !:.:.:{:.::.／ :.:.//　||` 　 　　|ﾑl ‐|!､:l :.:.:.:.:.: |:.:.:.:.: |:.: |　　　　　おばあちゃんが呼んでいます
　 l　!:.:.:://:!:.|:. |:| .: |:.:. |: l!.:/=!=..|ﾄ.､ 　 　 || ,|:_:|!|:.|＼ :.:.:.:| :.:.:.:.:|:.: |　　　　　すぐに来てください
　 |! |:.::/ﾊ' !.:|:. |:l:.:: |:.:: ﾚ'∨ ':: ヽ|!ﾞ' 　　 　||,r!:=ﾄ|:.|　|:.:.,:. , .:.:.:.: |:.: |
　 ｀ |:./ | 丶!.:.:.ﾊヾ |.:.: |j　 ﾊ::::::ﾉ! 　　 　　ヾ ヽ!::Vヾl: /|:ﾉ :.:.:.:::;|:.. |　　　　　それと……少し話があります
.　　 ﾚ'　　　 ＼| 'ヽ,'ヽﾄゝ　ヽ｀´,ﾉ 　 　 　 　　ﾊ:::::::ﾊ! Yl! |:.:.:.:.:. , :. |
　　　 　 　 ／　ヽ /.:::!　　　 ￣ 　　　 　　 　 ヽ_｀_ノ　 ´ /!:.:.:.::∧ .:|
　　　,. ..:':´ゝ　　　'ｲ:. |! 　 　 　 　 　′ 　　 　 　　 　　,ｲ:.l:.:.: ,'　ヽ,,'
,_.., '::::::::::::::_j, .-= .||:.:.:|ゝ､ 　 　 　 　__　 　　 　 　 　, '　 '.:.:..:/　 　 ＼
｀ ￣￣ "´　.fヽ:.. |!:.::.|ﾍ!::ヽ 　 　　 ` ′ 　 　 　 ／:.ヽ,/:.:. /l 　 　_,ノヽ
　　　　 　 　 |: : ＼ヽ | ::.V,. ＼　　　　 　　 ,.. ｬ'! : : :.:./:.:.:.:.:,!'_`ー'',:::::::::＼
　　 　 　 　　|‐--､:`ｰ!--､__ヽ_` 　 ｰ‐　' ´　/::|.: : :.:/:.::.:.::::|! ﾄ､ ヾl' :::::::::: ＼
　　　　　 　ノ￣_｀V: : r ､ : : :`＝=‐-､__　　/!:: |: : :./ヽ__,.-ｲ,ﾉ::::ヽ ｀''ー`ー--ゝ
　　　　　／⌒ヽ : : : : ヽ ` ー─- ､ : : : ` ｰ──_:/ヽ.__, -.ｲ:::::::::::|
　　　 ／　　　　 ＼ : : : : `ー─ ､　＼: :/ ￣￣ ./: : : : : : :.,′:::::: |
　　／　　　　　　 　＼: : : : : : : : : :＼　 ／´￣::/: : : : : : ::/| :::::::: ﾉ
　　　　　　　　　　　　温羅の妻　阿曽媛


　吉備国の国主、鳥栖玖流は、国内の豪族・主要人物を自宅に招集した。
国主はもう老いていた。今では床に伏しがちになっており、外に出る事も出来なくなっていたのだ。

　　　　　　　　　　　　,.. ....,,,,,,,.,,,,,,,,,......,,,,、
　　　　　　　　　　　 / .丶 　 ｀''-､ .,..-'" ｀ﾞﾞ''''''―-､
　　　　　　　　　　 : l　l　,i-― ､　.|゛　　 . _、　　　 : l<
　　　　　　　　　　　!　! .l,ﾞ..　-　.ｌ l/ﾆ,ﾞ￣´ ´|　 .,!　 | ヽ
　　　 　 　 　 　 　 lﾞ .i　l.--―---....,,,,_;´ﾞﾞ''''|　　,!　.|　 .ｌ　　　　　　　　　皆の者、よく集まってくれた
　　　 　 　 　 　 　 |　!　!,,,,,,,,,......,,、,,,,　 ⌒ﾞ |　　|　│　.l　　　　　　　　　私はこの通り、もう満足に動けやしない
　　　 　 　 　 　 　 !　　ｌ._,,................,,,,,,ﾞﾞ;￢‐. !　　|　 lﾞ'､　!　　　　　　　　そろそろ疲れたんでな、私の後を、温羅くんに
　　　　　　　　　　│ ｉ .l'''''''￢　　 ｰ......二''''ｲ　　|　 !..､ﾞ'/　　　　　　　　任せたいと思う
　　　　　　　　　　 l　lﾞ l　'ﾐク".,i　　 .<_ゞ｀.' |　　.|　i!　.`ｲ
　　　　　　　　　　/ .:゛｝　 ...　 /　　　．｀ﾞ"　!　 .ヽ l､ ﾞ'　i!
　　　　　　　　　　l　.! | 　.゛ .../　　　　ﾞ　　..,!　 .．.l　＼ l
　　 　 　 　 　 　 ,!　,!.| .!.| .r .―--ヽ‐ .､..., ./ !　 ,! .|　　,i"､
　　 　 　 　 　 　 |　.l !ﾞllﾞ　!　......,,,、　 .} .　l !　 lﾞ / 　/　,i ＼
　　　　　　　 . ,r'ﾞ.!　|.|　l-ﾐ.　 ､､　 ｀` .,,ﾞ,/,,|　 ! .i!ｒ'" . / 　　 ﾞ''ｰi､
　　　　　　 .／　　! .!.|　｝ . ﾞ'-､..,,　 ..,ﾆ/‐ﾞ ! ./ .,!　 ／　　 ./ 　 /;;＼
　　　　　.／　　　 .! l'.!　ヽ　　　 .￣゛　　 ./ i" /,,r"　　　 /　　/ ;;;;;;;;;.＼
　　　　 / . 、　　　.ﾞl" .ｌ　 ゝ、 　 　 　 　 ",,ソく゛　　　 ／ .,／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,i!;;､
　　　 ./　　.!　　　　　　!　 ､..￣ﾞﾞ'''''''^'"ﾞﾞ´　 、　　 .,／　,i'";;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾝ　ｌﾞ! ＼
　　　 ｌ　　　|　　i　　　 .!　　 ＼ 　 _,,,.. -‐''"　.,..-'"　　/ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; / .,「.lﾞ.、 . ヽ
　　　ｌ　　　 ,!　　ｌ　　　.!　　　　｀´　　　,.. ｰ'"　　　 ./ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;./ / " ,．."　　 ｝
　　./　　　　l　　 l.　　 ｌ　 .ヽ.. -ｰ'''''ﾞﾞﾞ´　　　　　 ,./ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;./ 」.､.;． l′　　.,i'｝
　　ｌ　　　　　ｌ.　　＼　ゝ　　　　　　　　　　　　,／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;./ l .ﾞ|.゛.′　　　 / ｜




　　　　　　　 /ﾆＹﾆヽ
　 　(ヽ　 　/（ ﾟ )( ﾟ ）ヽ　　　　　　　　　　　　　　ちょっと待てっていうｗｗｗｗｗ
　　(((i ) ／::::⌒｀´⌒::::＼　　　　　　　　　　　　　素性も知れぬ奴に国は任せられないっていうｗｗｗｗｗ
　／∠_|　,-）＿＿＿（-，|＿＿＿
( ＿＿＿､　　|-┬-|　　　　,＿　　）
　　　　|　　　　`ー'´　　 /´　／／
　　　　|　 　 　 　 　 　 / 　 ( i)))
　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ)
　　　豪族　楽々森彦

　　　 /､;:;:;:;:;:;:;:;:;ｰ-:;､_;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:l
　　 ./ﾐﾐﾐミミ､;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ｰ-;:;､;:_;:;_:;::-‐'"´i
　　 lﾐﾐミミミミミミミｰ-::､;;;;_;:;:;:;:;:;i;:;:;:;:;:;:;:;:i　　　　　　　　　麻呂も反対でおじゃ
　　,!ミﾐミミミミミミﾐ　　　＿;`-､;;;!:-‐'''´|ﾐi　　　　　　　　　この国では当主の次に麻呂が一番土地を持っているでおじゃる
　//｀,ヾミミミﾐｼ‐'″　　'ー‐' 　:　 'ﾆﾌ' i;/
　l l　,rヾミミﾐ 　　　　　_,,,,,　　 ﾉ　 _,,_　l　　　　　　　　　　麻呂こそが次期当主にふさわしい
　',ヽヾ､ヾミミ 　　　 ｨで)ヽ､ 　 r';ｨび､.ﾉ
　 ヽ､__,, ミミ 　 　　 ｀ﾞﾞ'''"ﾌ｀　 | ｀ﾞ'''ﾌ'i
　　〃 i l ミﾐ　　　　　 ／´　 　 | ｀ｰ'´l
　　／ヾ.l ﾐﾐ　　　　　　　/'　 　 |　　/
.　/:::::',ヽヽ`　　　　　　 / ｀ `ﾞｰ-'　/
r/::::::::::',ヽヽ　　　　　　 　 　 i:i　', /
/::::::::::::::ヽヽ＼　　　　'"ｰ=＝=-'/
ヽ:::::::::::::::::ヾ､　` ､　　　ﾞ'一''ｰ'ﾉ′
､　＼:::::::::::::::ヽ　　｀ ｰ‐-t't::i´ﾞｰ-､
.｀-､　｀ｰ-:､::::::ヾ'､ 　 　 //:::l　ヽ　｀ﾞｰ- ､
　　　　　　　　豪族　犬飼健
　　


　　　　 　　　 　　　∩＿
　　　　　　　　　 　〈〈〈　ヽ
　　　　　　　　　　〈⊃　　}
　　 ∩＿＿＿∩　 |　　 |
　　 | ノ　　　　　 ヽ !　　 !
　　/　　●　　　● |　　/
　 |　　　　( _●_)　 ミ／ 　　　　犬飼様の言うとおりクマー
　彡､　　　|∪|　　／
/　＿＿　 ヽノ　/
(＿＿＿）　　　/
　豪族　留玉臣

　　　　　　　　　　　, ､＿__
　　　　　　　x‐‐‐ｖ' ヽヽ` `￣ヽｰ､
　　　　　　/ ,ｲア´　　 ヽヽ　　　ヽヽ　　　 ,ｨ ｱ　　　　　お待ちください
マﾆ=-､＿{__{_!{ {　i ﾄ､　 ヽヽ　　　ヽヽ_,イ彡'　　　　　　温羅殿の功績は皆ご存知のはず
　｀ヾ三≧ﾆ三≧ｘj ﾄ､込_ヽ}厶}ﾄ､ヽ Yｲﾆ彳
　 　 了彡三彡ｿｿト! .ィT ヽ{ﾅi ﾊﾄ､　Vﾆﾂ　　　　　　　それとも、温羅殿のお陰でこの国が発展してきたことをお忘れか！
　　 　 ￣彳'ﾂﾂ从| ト `┘ , ｰﾞ {从ﾊ　}"´
　　　　 　 l丁l「l＞ﾄ､ 　 /￣l,.ィi从} }iﾉ
　　　　 　 lﾊ＼j二.ヽ ヽﾆマ´　{　{
　　　　 　 ＞`´　　＼ヽ ＼.＼ ヽ ＼
　　　　　/＿＿　 　 /　Vﾊ}`く`マﾆ､_ヽ＿
　　　　　|‐o‐‐o｀ヽ/　　 V　 /＼}ニニニ三二ヽ
　　　　　|7￢‐-､ヽ! 　　 〉〉'´: . ハ￣￣￣｀ｰ-､}
　 　;　　/／　/　}┘! 　//::.:.:.:./　 〉　　　　　　ﾉ
　　; 　厂　　/　∧/　 //::.:.:.:./／/　　,-､__
　　　/　　　.＼/ /　 //二二{ ／7￣/ tﾉﾆ}
　;　/　　　　　 }ｲ／／──‐{ 　 {∩{-てﾆﾉ
　　　　吉備国　将軍　兎羽火



　　　　　　 　 　 　 /ﾆＹﾆヽ
　　　　　　　　　　/ （0)(0）ヽ
　　　 　　　　　／　⌒｀´⌒　＼　　　　　　　　　　だまれ平民出身っていうｗｗｗｗｗ
　　　　　　　　|　,-）　　　　（-、.|　　　　　　　　　温羅は国主の器じゃないっていうｗｗｗｗｗ
　　　　　　　　| l　 ヽ＿＿ ノ　l |
　　　　　　　　 ＼　｀ ⌒´ 　　／　　　　　　　　　王になるには正統な血筋が必要っていうｗｗｗｗ
　　　　　　　　／　　　　　 　　ヽ　　　　　　　　　
　　　　　　　/　　　　　　　　　 　ヽ
　　　　　　　|　　　　　　　　　　 |　|
　　　　　　　ヽ_|　　　　　　　　　|丿
　　　　　　　　 |　　　　　　　　　|

　議論は荒れに荒れた。国内は二分され、犬飼健らの派閥が、温羅の当主就任に強硬に反発したのだ。
この間、温羅が一言も言葉を発しなかったことが、ますます犬飼派を増長させた。会議は夜になっても終わらない。
ここで、兎羽火のもとにある伝令兵が近寄った。



.　　　 　 ／: : : : : : .: :.:/.: : : : : : : : : : : : : :', : : : : : : .
. 　 　 ／: : : : : : : :.:/:/:| :|: : : :.: :.: |: : ',: : :.:|: : : : .: :.:|
　　∠　イ:.:..:.|: .: .:/|/ _j.:ﾑ:.: :.: : ､_|| :∧: : 八: : : : : :|　　　　　将軍、ちょっと……
　　　　　| : : :|:..:孑'〔￣|/　',: :}.:.:.:/i|.:厂〕:/／）: : :..:.:|
　　 　 　 : : : |:..:/ ,巧=ミ.　 ∨: :/ 公=ミ、 Y´〉: : : :.:|i
　　　　　 ',..:..:∨ 〈 iし:::l|　　 |: /　 ,ﾉ::::l| i〉 |厶 、: : 八
　 　 　 　∧＼:丶.弋少　 　 |/　 弋_夕　ノ　　 }:..:/
　　　 　 　 ﾍ|:.:｀:ト＼　　　　,　　　　　 　 　ﾉ´ /:./
　 　 　 　 　 |:...:∧ u　　　　　 　 　 　 　 　 ／.:
　 　 　 　 　 |: : :小　　　　ｔr　つ　　　　爪: :／
　 　 　 　 　 |:. :. :|/丶.　　　　　　 　 ／.:|: /
　 　 　 　 　 |:. :. :| ///＞ 　 　 　 イ:.:／|/
　　 _　＜( _人: : :| /// ///｀千　 /∧
. ∠二 二二／＼|＼///////｝　/// } ､
/　 ￣￣￣｀ヽ　　　 ＼ /// /　,'// /二＞ 、
　　　　　　吉備国　伝令将校　彼方

　　 　 　 /:. :. ／:. :. :.:i:./:. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. ヽヽ.ヽ
.　　　　 /:. :./:. :. :. :. :.i/:. :. :. :.:i:. :. i:. :. :. :. :. '､:. :. :. :. :. :. :.'､:. :. :. :.ヽﾊ　ヽ
　　　　/:. :./:./:. :. :. :. |:.:i:. :. :i:.:iヽ:. ヽ:.､:. :. :. :ヽ:. :. :. :. :. :. :.:ヽ:. :. :. :ﾊ:ﾊ　 ヽ　　　　　ん……
　　　 ,':. :/:. :i:. :. :. _:. :|:.i:. :.‐‐--.､,:.:ﾍヽ:. :. :. :ﾊヽ:. :. :. :. :. :i:.:ﾊ:. :. :. :.iヽ:i　　ヽ　　　　分かった
　　　,':. /:. :.i:. :.／,-､ヽ:i:. :. :. |. ,ｨ=≧ト.､ヽ:.:.:.:,ｨ≦了:. :. :. :.iヽﾍ:. :. :. :i. ヽ
..　　,':./:. :. :.:／イ　 ノi:.i:. :. :i ｲ|r';;;;;::i 　 　 　 fr';;;:|.:r､:. :. :. iヽ .i:. :. :. :|
　　 i:.i:. :. :／'　　　/　 N:. :. :.ﾘ 乂;少 　 　 　 乂ソ V:.ﾍ:. :. :| i ＼:. :. :.|
.　　:.i:. ／.／／ 　 ヽ　 |:. :. :ﾊ　　　　　　　､　 　 　 i:. :.:N:. :| ヽ　 ヽ:. :|
　　 ／イ ／　ノ 　 ./￣|:. :. :.ト　　　　　　　　　　　/:. :. |.ヽﾘ.ゝヽ ヽヽﾘ
　　　' ´ ‐' ´イ ./／　　|:. :. :.iヽ　　　 　 ｀ `　　 ／.|:. :. |＼ヽヽト.ヽ､ヽ-＼
　　‐'　／　／／iゝ､ 　 |:. :. :.|.　＼　　　　　 ,.ィ 　 .|:. :. |　 ヽ､ 　 ヽ `ヽ ｀､＼
.　　..,､イ:."￣:. :.:ﾍ . ｀'‐|:. :. :.|'‐‐-､`　､__ イ/ヽ. 　 i:. :. |　_ノ 　ヽ　ヽ　 ＼ ＼
　 　 V:. :. :. :. :. :. .ﾍ.　　|:. :. :.|-､　　|‐‐‐‐‐| 　 | 　 i:. :. |'´ /　　　　`ゝ､,_ ヽ､,
　　　,ヽ-‐‐‐‐---､ﾍ..　|:. :. :.|　i　　|:::::::::::::|　　{ 　 |:. :. |.／　　 　 　 　 　 `‐‐



　　　 　 /＼Ｙ/ヽ
　　　　/ （ 0) (0）ヽ　　　　　　　おい待てっていうｗｗｗｗｗｗ
.　　／::::⌒｀　 ´⌒＼　　　　　　まだ会議は終わっていないっていうｗｗｗｗｗ
　　|::::::::::-） ＿＿ （-|　　　　　　どこに行くっていうｗｗｗｗ
　　l:::::::　 ヽ|!!il|i|!l|. l |
.　　＼::　　 lｪｪｪｪ| ／
.　 　/⌒～"￣,￣￣〆⌒,ﾆつ
　 　|　　,＿_＿ﾞ＿__､rヾｲｿ⊃
　　 | 　 　 　 　 　 　｀l￣
　 　|　　　　　　　　　 |

　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ／｀ヽ
　　　　　　　　　　 　　 　____厂l|ヽ `､
　 　 　 　 　 　 ／"/~<´ ,-┤: ヽヽ: .＼
　 　 　 　 　 _lﾄ : 　/: .､|／" ヽ　　 ＼_. `ヽ_　　　　　　　　……厠だ
　　　　　　 .~,|,! 丨 .ィl !l,＼: : : |!、: : 　 ヽ､: .＼
　 　 　 　 　 ~l,ｲX.rl.`|"l: 　l.／|. _ ヽ　: : : .＼　 ヽ
　　　　　　　 ."┘'"~= ,' :　〃~　　 ヽヽ､: : .┐ヽ
　　　　　 　 　 　 　 ,-"..ィΖ　　　　/　 !、: . ',　ゝ
　　　　　　　　　 ,r', イ'´　　　｀`二へ､　 l　: ｜: l,:
　　　　　　　　〃'´/ﾍ- ＼ 　!　 .ヽ|　 ゝ |　: 　! .:"
　　　　　　　,/ 　 〈. ,---､_ヽ ゝ　 　.,　|┘: 　,' : :
　　　　　　　　　　 j''ン-==力′ 　. |　/ : 　/ : 　,i:
　　　　　　　　　　　l　　　　 .l,　 　_l┘: : 　' : : .／:



　　 　 　 　 　 　 / ノ Ｙ ヽ
　　　　　(ヽ　 　/（ ﾟ )( ﾟ ）ヽ　　　/)　　　　　　　　　　尻尾巻いて逃げるのかっていうｗｗｗｗｗ
　　　　 (((i ) ／::::⌒｀´⌒::::＼ 　( i)))　　　　　　　　　こいつはとんだヘタレっていうｗｗｗｗｗ
　　　　／∠_|　,-）　　　　（-，|＿ゝ ＼
　　　 ( ＿＿　 l　 ヽ＿＿ノ　　 ,＿＿ ）　　　　　　　　これだから平民上がりは駄目なんだっていうｗｗｗｗｗ
　　　　　　　 ＼ 　 |r┬-|　 ／´
　　　　　　　　　|　 |　|　 |　 |
　　　　　　　　　|　 |　|　 |　 |
　　　　　　　　　　 　`ー'´

　兎羽火は彼方二等兵と会議を一時抜けだし、人目のつかない所まで歩いた。
外は雪が降っていた。雪は夜の大地をほんのりと照らしている。月が欠けていたのが、兎羽火にはなぜか印象的だった。


　　　　　　　　　　　　　　 ＞　´　 ＞ ‐ ､ ､_　＝く｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　／／　, 　　,　　　 ｀Y｀ヽ＝＝､一、
　　　　　　　　　 　 /.／ .／　/ ./　 　　 /!　 :Nヽ　 ヽ　ﾊ　　　　　　　なにか掴んだのか？
　　　　　　　　　　/ｲ / /　　/ //　./ , / ,j　　N　　　 ﾍ　|
　　　　　　　　　　/ / /// /≠/ .///≠x.|/　i v､　　　 V
　　　　　　　　　　lｲ　./ l :,ｨ≠x.// ﾉｲ≠､|/　l lﾍヽ　ﾊ　l
　　　　　　　　　　, ! 从 l :l _{少 ′　{ゝｲ ,l　/ N ﾄ､∨ i　l
　　　　　　　　 ／ｲV　| l/l 　 　j　 　 ￣/// /ノ!j jヽ∨　!
　　　　　　　 ///イ j ハ! :ﾄ､　　r_､　　彡ｲ　|´　ﾍｊ､ヽ ＼|
　　 　 　 　 /ノイ j/　 | ! :|´ 丶.　 　 ／ l !　ﾄ､　 ヽ ﾄト､ }、
　　　　　　/ / /ノ´ 　 | l :|　r {-｀≠ ﾆ二!l　l,イ　　ゝl !　ﾄﾍ
　　　　　 / //´　　 　 | l |､_j　｀l　｢　　__ j　|　l　　 / ハ {　',
　　　　　{ノ´　　　　＿| l .! !､､　l /　　 | ,j　,　ﾉ､_ / /　 ﾊヽ ',
　　　　　　　　　　/　 ﾊ l l | ゝ ソ , - ﾆ| l　j /　　｀ ｰ ｖ′｀ヽ!
　　　　　　　　　ノ　　　ﾊ Vゝ'´／／ ノ l /r'　　　　 /　ﾍ
　　　　　　　　ハ.　　 /　V/./_／ 　 ｢　r/´　　　　/　　　ﾍ
　　　　　　　　{　 ヽ /　 〃/　　　　 |　| | 　 :| 　 /　　　 　 〉

　　　　　　　　/: : : : : : : : :/: : }: : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ: : : : : ＼
　 　 　 　 　 /: : : : : : : :.〃.: ::ﾊ:..:/: : : : : : : : : : : : ヽ: :.:|: : : : : : :.',
　 　 　 　 ／: : : : : :. :.|: {{: : :.|　V: }:.:. : :.ヽ: : : : : :.:.:.:|／＼: : : : : ::.　　　　　　　はい、将軍
.　　 　 ／:./: : : : : :.:.:.:| :|从: :!　 V:. : : : :.:.ﾄ､: : : : :. :.ﾄ､ ／ヽ: : : :.:.i　　　　　　　どうやら、大和の使者が犬飼様に頻繁に接触
. 　 _／. イ: : : : : : :. :.:.| ﾑ斗┼‐.､＼:. :.:. :.|　X´￣｀y'　＼ノ: : :.}: :.|　　　　　　　しているようです
　　￣ 　 |: : : : : : _/¨ ﾚ' 　 V　　　　ヽ:.:.:/　　 ＼:./　 　 i!: : :./:.:.:.|
　　 　 　 |: : : :,．//＾y{　 ,ｨｆ７ミx　 　 l: / 　 ,ｨ7ﾃミx　　　レv′: :.|　　　　　　　犬飼様の使いが大和に向かっているところも
　　 　 　 |: ／／/　 ﾊj 〃 ん心　　　j/　　　ん心　}:〉 　 　 l:. : l: |　　　　　　　たびたび目撃されています
　　 　 　 i/／／ /Y:.:.{　｀　Vしｿ　　　　　　　Vしｿ　′ {＾i　.: : /j/
　 　 　 _／／ ／ .ﾉ＼ﾄ　 　 ¨´　　　　　 　 　 ¨´　 　 r'　' /: /
　　　 r' ／,．´ .／}: :.:.|ﾍj　　　　 　 　 ' 　 　 　 　 　 ,′／／
　 　 /　／　　/　/: : :.|:∧　 　 　 ､　_　＿,　　　 　 ∧¨　/
. 　 /　´　　 ./.／　|.:.:.|:.:∧　　　　　　　　　　　 　 /:.∧: {
　 /　　　　 /./ 　　|:.:.:lV: : :>　　　　　　　　　　 イ:.:/　 ｀ ＼
. / 　 　 　 l　l　　　|:.:.:| V＾ヽ: :.}＞ 　 　 　 ＜Y /ｊ∧
/　　　　　 | / ＿__,|:.:.:|/三ﾆ Vl　 　 ｀¨´　 　 j∧三》x
}　　　　　 ﾉ¨´Y⌒Y: : |三三 《　 　 　 　 　 　 ﾄ､i三ﾆ|ﾄ､　
　　　　／′三＝ﾍ!: : |三三ﾆ＼　　　 　 　 　 ｙ'三ﾆ:|ﾄ､ Y⌒ヽ__
　 　 　 /´￣￣￣ |:. :.|三三三ﾆﾍ　　 　 　 ／＼∧:::||　＼ーくニﾆ=ｘ
. 　 　 / 　 　 　 　 |:. :.ﾄ､三三 //⌒ー─‐┴ ､　 Vﾆy　 　 ｀ー─､三 ＼

　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ,. :-､-､
　　　　　　　　　　　 　 /:´:. :. :. ヽ:. ﾍ ｨ‐-=‐‐- ､
　　　　　　　　　　 　 /:／:. :. :..ィﾆ/￣:. :. :. :. :｀:. ｀:≧-.､
.　　　　　　 　 　 　 /ｲ:. :. :. :.:/i:. :. :. :.:,:.:､:. ､:. ヽ:. :ヽ:. :＼　　　　　　　やはり……
　　　　　　　　 　 ／:. :. :., -､i:.:i:. :. :. 廴i:.iヽ:.ﾍ:. ﾊ:. :. ヽ:. :ﾍ　　　　　　犬飼の背後に大和が付いているとみて間違いないだろう
　　　　　　　　　/:. :. :.／./´'､‐i:i:. :. :ｉィ=≧ｭヽｉ_少:. :. :ﾊ:. ﾊヽ
.　　　　　　 　 /:. :.／: :.ｲ / .rﾊﾊ:.:.:.:i.辷ﾘ　　 fﾁﾘ.i:ﾍ:. :.iゝ:ﾍ　　　　　　餌を与えられたか……
　　　　　　　 /:.／: : : :/:"~ヽ　i iゝi从.　　 　 ､ゞ'ヽ:. iヽ:i.　ヽi
　　　　　　　,':/:.／:／:. :,':. /ゝ,__i:. :iヽ　　　,　_　 从:.ﾊV
.　　　 　 　 i:イ:.／:. :. :.,':. /　 ＿i:. :i＿　　　　 ／､.V:ﾊ＼　　　　　　　　報告御苦労、引き続き観察を頼む
　　　　 　 /: :, ':. :. :. :. i:. / ｨ´ 　 i:. :i　ト.､_　イ　　ヽi:. i　.ﾊ
.　　　 　 /: ,ｲ:. :. :. :._,､_/_.　V　　i:. :i　|｀ぇL-､｀`'‐､.i:. i i .iﾍ
　　　　 / ｲ:. :. :. :.:/ :'¨.ヽ,.｀.`.' ‐. i:. i.　|　V;|| | 　 | | i:.:i i　',.ヽ
.　　　　i/ |:. :. :. .:/. . . . . . ＼. . . ..i:.ﾘ. _`‐-ゞ､|､_. |.| i:.ﾘヽi ヽ.ﾍ
.　　　　　 |:. :. :. /. . . . . . . . . ヽ. . . .. .|;|　 i`ヽ､｀`ヽi.i:/_　 ゝヽﾍｲ^ヽ
　 　 　 　 |:. :. 〈. . . __. . . . . . . ヽ. . . . i;i　　i　　｀`'‐ヽ ｀ヽ　 ／;;ゝ／
　 　 　 　 |:. :. :ﾉ:':´::::::｀ヽ､. . ./‐'. . . . ..i;i.　 i､,_,　　　 ヽ　／;;;;;;／

　　　 　 　 　 　 ／: : : : :/ :／ :/: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ヽ
.　 　 　 　 　 ／.:.:.:.:.:.:.:.:.:／.:.: /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.
　　　　　　／ .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: ／|.:./.:.:.ヽ.:.:.:.:.:. ∧.:.:.:.:ﾄ､＿:.:.:.:.:.:.:.:.:'　　　　はいっ！
　　　　 ∠.::.::イ::.:::.:.::.::.{.::.::/⌒!::{::.::.::.::.::.: |ヽ⌒jヽ::.:〈＿_〉 :.::.::.::.::|
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　　 　 　 　 　 '::.::.:{.::.:::ｉ:|:〃んiﾊ.　　 '::.::/　 んiﾊ　》　/ﾚ'ヽ::.:::::::ﾉ
　　　　　　　　 ヽ:八:: ::.:|:ヾ弋.:リ　 　 ∨　 弋.:リ, ″　 ノ＾ﾊ .:::,:!
　　　　　　　　　 ∨:＼八　　｀´　　 　,　 　 　 ｀´　　　 ）∨ﾉ::./ﾘ
　　　　　　　　　　|.:.::.::.∧ゝ　"　　　　　　　　"　　　　　　/l／
　　　　　　　　　　|.:.::.::.ｉ小.　 　 　 r::ﾆﾆ=┐ 　 　 　 厶イ:::|
.　　　　　 　 　 　 |.:.::.: ｉ::|人　　 　 ∨:::::_ノ　　　　 ｲ::.:::人::|
　 　 　 　 　 　 　 l.:.::.: ｉ::|　|:丶、　　　　　 　　 イ::.ﾉ:∨ 　 ｀
　　　　 　 　 　 　 ｉ.:.::.::ｉ::|　|ﾊ∧:＞,　..__...　'´　厶lｲ⌒＼
　　　　　　　　　　 i.:.::. ｉ::|　　　// ハ　　　　　 ／/////∧
　　　 　 　 　 　 　 l.:.::.::::|　　/⌒Vノ} 　 r=≪///////／∧
　　　　　　　　　 　 ｌ.:.::.:::|⌒7///〈＿__/ﾊ//ﾊVく>/／／（￣)＞　_
　　　　　　　　　　 -|.:.:.:::|^７/／　　　｀⌒入/ﾊV//／＼////////＞ 、
　　　　　　　　　/／|.:.:.:::|〈／　　(⌒)　／ 　∨ﾊＶ/　　　＼/////////＼
　　 　 　 　 　 // 　|.:.:.:::|　　　　　　　　　　　∨／　　　　　＼/////////,ヽ

　結局当主は多数決で決める事となり、賛成四、反対三で温羅の当主就任が決定した。
無事当主になった温羅であったが、犬飼派との亀裂は修復不可能な域まで達していた。


　　　　　 　　　　＿＿＿
　　　　　　 　 ／　　　　　＼
　　　　　　 ／　　 ＼ ,　, ／＼　　　　　えー、今回この国を統治させていただくことになった、温羅だお
　　　　　／　 　 （●）　 （●） ＼　　　　僕はまだまだ未熟者だから、皆、力を貸してほしいお
　　　 　 |　　 　 　 （__人__）　　　|
　　　　　＼　 　 　 ` ⌒ ´　　,／
　　　　　　ノ　　　　　　　　　　＼
　　　 ／´　　　 　 _i⌒i⌒i⌒i┐ ヽ
　　　 |　　　　ｌ　 （ l　/　/　/　l
　　 　 l　　　　l 　ヽ 　　　　　 /

　豪族や家臣たちの前では気丈に振る舞っていた温羅だったが、会議が解散し阿曽媛と二人きりになると、
急に弱気になって語り始めた。
　緊張の線が切れたのであろうか、涙まで流していた。


　　　　　　／￣￣￣＼
　　　γ⌒)　　　　　　(⌒ヽ　　　　どうしよう、いきなり当主だなんて、頭が混乱するお
　　 ／ _ノ ノ 　　 ＼ 　＼ `､　　　不安すぎるお……
　 （　 < （○）　 （○）　　 | 　）
　　＼　ヽ　（__人__） 　 ／ ／

　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿　_　_,.... __
　　　　　　　　　　　　　 ,.-‐' "´ヽ::::::y'´　　　 ﾐヽ､
　　　　　　　　　　 　 ／.:.:.:.:::::::::::::::'´::::::::::::::::::::::.::ヽ＼
　　　　　　　　　　　/.:.／.:.:／.:.:/.:.:::::ﾄ、:.ヽ:.ヽ:.ヽ.:.:ヽ:ヽ　　　　　大丈夫ですよ
　　　　 　 　 　 　 /／:.:.／.:.:/./:N:|ヽ!|il:.:ヽヽ:ヽ::ｌ:.::.::i::::',　　　　　国民はみんな、あなたが当主になることを望んでいます
　　　　　　　　　 ///:.:/:.:.:.:./:ｲ.::|ｌ|:f´￣|::Y:i::|!:.:!.|.:.:.:.|:.:.:.!
　 　 　 　 　 　 ///.:./:/;ｲ:/:::ｌj;:ﾑH!　　ｨ:ｌl什ト､j:|.:.:.:.|::.:.:l
　　　　　　　　//!:!:././/::!:l:イ| ｣⊥ヽ 　 |ｌj抂ｪ｣|｀!..:.!:ﾄ、:.l
　 　 　 　 　 〃 |:|:i:.:.l:i:.:.|:.l:.:ﾚぅ⌒f　　　!´ﾋ'　 lヽ!.:.ｌ.:| ヽ:.l
　　　　　　　 !　∥!|:.:i:l.i.:ﾄ:l.:iハ..::::j_　　 　 L::::ﾉ　|:.:|:.|　 ＼
　　　　　　　　　 l lヽ从ﾄ:! い、 ¨´　　 ,　　 　 　 |.:.l.:.|､,__　＼
　　　　　　　　 　 ! >ヘヽヽノ:ﾄ､　　　 －　　　／|.::|ｉ:.|;;i;;i｀ｰ‐ヘ
　　　　　　　　 　 /ヽ-‐7´/;;ｲ:::＞..,._　　　,.イ::::::|.::|l:ﾘ^介r､;;_j;;;;＼
　　　　　　　　 ／;;;／ノ;rくﾊ二__￣￣￣￣￣__ｺﾆミ{ノ:/ﾉ,ﾘ`´`'ーﾍ
　　 　 　 　 ／;;;;ィ"~＾ヽ`ﾐﾐ片__＂￣`'￣`'￣″|:..:｀Y彡'″
　　　 　 　 ´"´　　　　　＞'-ﾆ_ `'´￣`'￣`'￣`ﾟﾋ'ｰ-ト､
　　　　　　　　　　　 ／　　　　 弋ｰ--ｔ--ｧ-ｰ￢´｢lY 　 ヽ､
　　　　　　　　 　 ／　　　　 　 　 ヽ::.::.:У::.::.;:-┤j !|　　 　 ＼
　　　　　　　　　/　　 ヽ　/　　　　 ヽ::/::.::./´ ｒ'⌒ヽヘ　 　 　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　温羅の妻　阿曽媛

　　　　　　　　　　 _-─―─- ､._
　　　　　　　　 ,-"´ 　 　　ゝ　　 ＼
　　　　　　　　/ 　 　 　 　　　　　 　ヽ　　　　　　　そんなこと言ったって……
　 　 　　　　 / 　　　　　　::::／::::::::＼::ヽ　　　　　　僕、本当は当主なんてガラじゃないんだお
　　　　　　　|　　　　　　 /　ヽ ｀::::´ /｀ヽ
　 　　　　 　l　　 　　　 （　○ﾉ::::::::::ヽ○.;l　　　　　人に命令するのも、苦手なんだお
　　　　　　　` ､　　　　　　　 （__人_）　 .;/
　　　　　　　　　`ｰ,､_　　　　　　 　　／ﾟ
　　　　　　　　　／　　`''ｰ─‐─''"´＼o


　　　　　　　 ＿＿_＿_
　　　　　　／　ノ'　＾ヽ_＼　　　　　　　　　　　　　犬飼さんがなりたいって言うなら、やらせてやればよかったんだお
　　　ﾟ　／ ｡;'⌒） 　（⌒ヽ＼°　　　　　　　　　　僕は最初からやりたくなかったんだお
　　　／　o'ﾟ~（___人___）~o°＼゜
　 　 |　　　 ﾟ　|/⌒ヽ| 　ﾟ　　　|　　　　　　　　　　
　　　＼　　 　 ｀ ⌒ ´ 　 　 ／
　　 　 ／`　　　　　　　　 ´＼
　 　 /　　 　 　 ｀`"´ 　 　 　 ヽ
　　 .| 　 Ｙ　 　 　 　 　 　 Y 　 |
　　 .|　　|　　　　　　　　　 |　　|

　 　 　 　 　 /::::／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼::::::::::::＼ヽ
　 　 　　　 /::::/::::／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::ヾヽ
　　　　　　i::::/::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::,､:::::::::::::::::::::::::ヽ:::::ヽ:::::::::::::ヽ:＼::::::::::::ヾヽ
　　　　　　|:/::::/::::／::::::::::::/::::::::,ｲ　´｀`''´￣!ヾ:::::ﾄ､:::::ｉ:ヽ:::::::::::＼:＼::::::::::iﾍﾍ　　　　　　駄目です！
　　　　　　|'::::/::::/:::::ｌ::::::::∧::::::/ !　　　 　 　ｌ　ﾍ:::! ｌ:::::|::::ｉ::::::::::::::::::､::ヽ::::::l　ﾘ　　　　　　あなたが、やるんです！
　　　　　　':::/::::/:::::::|::::Ⅳ! ﾍ:::ｉ　|　　　　　　|　　ｉ:|　,::::ﾄ:::ｌ:::::::::ヽ::::::ｉ:::::ﾍ::::ｌ ′
.　 　 　 　ｉ.ｲ::::/:!:::::::j::ｉ:| ｌ:l　 l::|　|　　　　　　|　　|:ｌ　j::ィｉ::j:::!::::::::|::::::|:::::::ｉ::::|　　　　　　　この国は、あなたが導くのです
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　　　　　　　　　　　/.:.／.:.:／.:.:/.:.:::::ﾄ、:.ヽ:.ヽ:.ヽ.:.:ヽ:ヽ　　　　　　　　それに、国民の声はどうなるのですか
　　　　 　 　 　 　 /／:.:.／.:.:/./:N:|ヽ!|il:.:ヽヽ:ヽ::ｌ:.::.::i::::',　　　　　　　　みんな、あなたが頑張っている姿を見て、是非後継にと
　　　　　　　　　 ///:.:/:.:.:.:./:ｲ.::|ｌ|:f´￣|::Y:i::|!:.:!.|.:.:.:.|:.:.:.!　　　　　　　願ったんですよ
　 　 　 　 　 　 ///.:./:/;ｲ:/:::ｌj;:ﾑH!　　ｨ:ｌl什ト､j:|.:.:.:.|::.:.:l
　　　　　　　　//!:!:././/::!:l:イ| ｣⊥ヽ 　 |ｌj抂ｪ｣|｀!..:.!:ﾄ、:.l
　 　 　 　 　 〃 |:|:i:.:.l:i:.:.|:.l:.:ﾚぅ⌒f　　　!´ﾋ'　 lヽ!.:.ｌ.:| ヽ:.l　　　　　　　あなたがこの国を愛していることは誰でも知っています
　　　　　　　 !　∥!|:.:i:l.i.:ﾄ:l.:iハ..::::j_　　 　 L::::ﾉ　|:.:|:.|　 ＼　　　　　　だからみんな、安心してあなたに国を任せられるのです
　　　　　　　　　 l lヽ从ﾄ:! い、 ¨´　　 ,　　 　 　 |.:.l.:.|､,__　＼
　　　　　　　　 　 ! >ヘヽヽノ:ﾄ､　　　 －　　　／|.::|ｉ:.|;;i;;i｀ｰ‐ヘ
　　　　　　　　 　 /ヽ-‐7´/;;ｲ:::＞..,._　　　,.イ::::::|.::|l:ﾘ^介r､;;_j;;;;＼
　　　　　　　　 ／;;;／ノ;rくﾊ二__￣￣￣￣￣__ｺﾆミ{ノ:/ﾉ,ﾘ`´`'ーﾍ
　　 　 　 　 ／;;;;ィ"~＾ヽ`ﾐﾐ片__＂￣`'￣`'￣″|:..:｀Y彡'″
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　　　　　　　　　　　 ／　　　　 弋ｰ--ｔ--ｧ-ｰ￢´｢lY 　 ヽ､
　　　　　　　　 　 ／　　　　 　 　 ヽ::.::.:У::.::.;:-┤j !|　　 　 ＼
　　　　　　　　　/　　 ヽ　/　　　　 ヽ::/::.::./´ ｒ'⌒ヽヘ　 　 　 ヽ

　　　　　　　／ ￣￣￣ ＼：
　 　 　 ：:／　　　　 　　　::::＼：　　　　　　阿曽媛……ありがとう……だお
　 　 　;： |　　　　　 　　　 :::::::| ：　　　　　やれるだけ、やってみるお
　　　　　 ＼.....::::::::: 　 　::::, ／
　　　 　 r "　　　 　.r　　／ﾟ。
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　その晩、温羅は夢を見た。
山が燃えていた。血吸川に行ったときに登った、あの山だ。
火は山全体を包み込み、煤と化した木々が倒れる断末魔が聞こえる。
川があった。そして、一匹の鯉を見つけた。
鯉は血を流していた。たちまち、川が赤黒く染まった。
そこに、鵜が飛んで来て、鯉を捕えて連れ去った。
鯉は抵抗しなかった。血を流し過ぎて、出来なかったのかもしれない。
鯉はその穏やかな目を静かに閉じ、死を待った。
山が、啼いていた。川の主を奪われて、怒ったのだろうか。山は揺れ、大地に地震を引き起こした。
地震が収まることはなかった。


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――大和国――


　　 　 /: : /:: : : / : : :.!:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
　　　/: : /: : : 斗--､ :|: : : : :|: : | ,ィＴ: ',: : :ヽ : !
　　　|: : |: : : : : |: /　 ＼: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ﾄ､:|　　　　　ほほう、あのババァ、くたばったか
　　　|: : |: : : : /!/ ⌒ヽ| :/　|:./⌒ヽＶ: |.: : : | V
　　＜ : _: : : / 〈　{} 　 |/　 .ﾚ　{} 　} |:./ヽ: : |
　　＜:: |. 小{　　 _,,.. -　　　　､-.,_　 ﾚ{: :.|ヽ:|
　　　厶ﾍ　ﾊ　　　　　　　　 ､　　　　 {ﾊ/　V
　　　　　 ＼_!　　　　　　＿　'　　　　 !
　　　　　　　 ヽ　　　Tﾆｰ‐‐‐,‐''　 ／
　　　　　　___,ｒ| ＼　 ｀二二´　／
　　　　／:/::::| ＼　 ヽ ｀_⌒ ィ´
　　／::::::/::::::|　　＼　　　´ ∧＞､
／:::::::::::/::::::::|　　　　＼　 /　 !＼::`ｰ- ､



　　 ∩＿＿＿∩
　　 | ノ　　　　　 ヽ
　　/　　●　　　● |　　　　　　　いや、まだ生きますクマー
　 |　　　　( _●_)　 ミ　　　　　　でも退位して、今は温羅とかいう男が後を引き継いだらしいですクマー
　彡､　　　|∪|　　､｀＼
/　＿＿　 ヽノ　/´>　 )
(＿＿＿）　　　/　(_／
　|　　　　　　 /
　|　　／＼　＼
　|　/　　　 )　 )
　∪　　　 （　 ＼
　　　　　　 ＼＿)
大和国　葛城氏

　　 　 /: : /:: : :./: : : :.!:: : : !: : : !: : : ヽ:: : : : : ',
　　　/: : /: : : : |: : : : :|: : : :|: : : | ,: : : ',: : ::ヽ : !　　　　　　ふん
　　　|: : |: : : : : ,,=''".＼: : /|"''=:;,ヽ: : :.|.: : : ﾄ､:|　　　　　　どっちにしろ、引き継ぎでゴタゴタしている時がチャンスだ
　　　|: : |: : : : /" _,=､ | :/　|:./,=､ Ｖ: ..|:.: : : | V
　　＜ : _: : : /　 ((;･.,;)|/　　ﾚ((･.,;) |:./ ヽ: : |　　　　　　　　稚武彦命、三千の兵を与える
　　＜:: |. 小{　 　 ￣　　　　　￣　　ﾚ{: :.|ヽ:|　　　　　　　　冬が明けたら、鬼どもを平定して来い
　　　厶ﾍ　ﾊ　　　　　 　 　 ､　　　　 {ﾊ/　 ／⌒ヽ_ノ） ) ）
　　　　　 ＼_!　　　　　　＿ '　　　　 !!　　 ,'　;'⌒'ー''´
　　　　　　　 ヽ　　＼ｰｪｪｪｪｧt　　 ／　　 |　i|　　　　 (⌒)
　　　　　　___,ｒ| ＼　 ､＼＿ ｀ヽ ／　　　 ﾉ ,'.!　　　　ﾉ ~.ﾚ-r┐､
　　　　／:/::::| ＼ ::::: ＼＿｀＼　＼'、　.／ //､　　ノ__　 |　.|　|　|
　　／::::::/::::::|　　＼　　　´ ∧.＼､_＞'´　ノ'´ 〈￣ 　　｀-Lλ_ﾚﾚ
／:::::::::::/::::::::|　　　　＼　 /"''-　 `ｰ一''´　　 　 ￣｀ー‐---‐‐´



　　　　　　　　 ＿＿＿_
　　　　　　　／　　 　 　＼　　　　　　お任せください
　　　　 　／　─　 　 ─　＼　　　　　鬼を退治して、大量の鉄を持ち帰ってやりますよ
　　　　／ 　 （●） 　（●）　 ＼
　　　　|　　　　　___'___　　 　　 |
　　　　 ＼　 　　`ー'´　　　 ,／
　　 　 /⌒ヽ　 　ー‐ 　 　ｨヽ
　 　　/ 　　　 　,⊆ニ_ヽ、　 |
　　　/　 　 ／　r─--⊃、 　|
　　　|　ヽ,.ｲ　　 ｀二ﾆﾆうヽ.　|

　童話『桃太郎』では、桃太郎が持ち帰ったものは、鬼が貯め込んでいた金銀財宝とある。
「桃太郎は鬼が島を荒らしまわり、金目の物を略奪して本国に凱旋、おじいさんおばあさんに喜ばれた……」
童話の本筋はこうであるが、しかし、この場合の金銀財宝とは、鉄のことである。
もちろん、鬼とは吉備国の兵のことだ。
侵略戦争が正当化されるためには、それが正義のための聖戦である必要があった。



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