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266 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:36:15 ID:OyK7KkQM0

有名なのは新日鐵住金君津製鉄所や、八幡製鉄所、JFEスチール千葉製鉄所などであろう。
特に千葉製鉄所の場合、それまで何もない場所であったが故に、一気に周辺が大規模工業地帯となった。

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_　,,, __, -'"￣｀~""'’三三三三三三三三三ヽ
　_,,-_´,三三三三三三_三三_三三三三三三i
　　　　｀"' ､三三_三／/三ハ三三三i三三三i＿＿_
　　　　　 .i;;;｀;;､三i0'i　i,､ /´　 }三／_i/⌒i三三, -'"　　　　　おかげですぐに水島に製鉄所をつくるハメになったんだよな。
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267 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:36:28 ID:OyK7KkQM0

山口県宇部市もまた、大規模なコンビナートや工場がひしめき合うかのように稼働しており、
瀬戸内工業地域を形成する工業都市として栄えている。

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　　　　　　　　　　kl.>_<.il　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 }　　{|
　　　　　　　　　 kl二二l　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _l　.　l!
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　　　　　　　　 l.Z.l i.><l><li　　　　　　　　　　 rｪｪlｪｪlｪｪlｪｪlｪｭlfl幵三三l　l! 匸l匕..l ‐　l.l　l l　l 入入廴lil　l幵幵　.r,_l__i_
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268 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:36:38 ID:OyK7KkQM0

だが、元々この地域には寒村が広がっており、元々宇部市は市ではなく村であった。

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306 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 23:40:11 ID:OyK7KkQM0

今回は、この寒村に過ぎなかった宇部村を、重化学工業地帯にし、今に至る発展に貢献した企業と
その創業者について語る。

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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＜::.::.::.::.::.::.:｀ヽ::.::.::.〃::.::.::.::＿z-‐'∧::.::.::.::｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::.::.::.::.:｀'::.:ヽ､::.::.::.:.＼_彡´ -‐ , '.::.::.::/.::.i::.::.::.::.::.::.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::.::.::.|＼.:::ヘ-､_.:｀丶､.::.::.::.::／::.::／::/::.::.:|::.::.::.::.::.::.
　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　/::.::.::.::.|　ヽ::.::.::.::.::.::.::.::.::.::., '::.::.,イ::.:;:ﾉ　　|::.::.::.::.::.::.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /´::.::.::.::.::|　　＼::ー-,::.::.::.::.::.:＿, -‐'´　　　 |::.::.::.::.::.::.
　　　　　　　　　　　　　　　　.　 /:.::.::.::.::./:.∧　　　｀ー──､　/　　　　　　　 |::.::∧::.::.:
　　　　　　　　　　　　　　　　　/::.::.::.::.::/::.::.::.|　　　　　　　　　| |　　　　　　　　.|::./::.::,'::.::.
　　　　　　　　　　　　　　　　/::.::.::.::.::.:/::.::.::.:|　　　　　　　 ┃.| |┃　　　　　|::/.::.:/::.::.:.
　　　　　　　　　　　　　　　　::.::.::.::.::.:/::.::.::.:/　　　　　　　　､__| |ノ;　＿＿＿,,/::ﾊ.::.ﾊ::.::.::.
　　　　　　　　　　　　　　　　::.::.::.::.::/::.::.::.f´ヽ＿＿＿＿＿｀ー─' ｨ之テ斗 /.:ﾊ.:./::.::.::.::.
　　　　　　　　　　　　　　　　／::.::.:/::.:./::.|　ﾍ＼弋忙云了＞､_ノ辷ニニン /|::.:,'::.::.::.::.::.
　　　　　　　　　　　　　　　　::.::.::.::/::.::i.::.::.ヽ ∧ ￣｀ｰイ´　　／ヽ､_　　　 / /.l::.,'::.::.::.::.::.:.
　　　　　　　　　　　　　　　　::.::.::./::.::.:l::.::.::.::.＼ヽ　　　　_／　 |　　￣｀十､/::.,'::.::.::.::.::.::.
　　　　　　　　　　　　　　　　::.::.:,'::.::.::.|::.::.::.::.::.::｀∨　　／　　　　|,　　／/ /::.:/y-､::.::.::.::.
　　　　　　　　　　　　　　　　::., '::.::.::.::.|::.::.::.::.::.::.::.:＼_/　　　　 ,===､　ノ　ﾚ／　　 ',::.::.::.::.
　　　　　　　　　　　　　　　　,.'::.::.::.::.::.:|::.::.::.ﾊ::.::.l::.i::.:.＼. 　　　{＿_ノ/⌒''Y´ /　　∨::.::.::.::.
　　　　　　　　　　　　　　　　::.::.:/::.::.::ﾘ::.::.::i::.Y::.l.::i::.::.:.| ＼　ノヽニ_/l　　　', l.　　∨＝=
　　　　　　　　　　　　　　　　.::./.::.::./.::.ﾊ.::.l.::.:l.::.l.::.:r‐{|r─'",　　　〈.i　　＿', f二〈三三二
　　　　　　　　　　　　　　　　.:.:i.::.::/.::./::ﾍ.从.:ﾊ:.:._/ i ∧　　ヽ､　,--ヽ_ ー-入＿ﾉニ二二
　　　　　　　　　　　　　　　　.::.l.::.:l.::./::.从.::.::.__／〉 ./ ﾍ,　r==､ゝ､￣ﾉ｀ー'"ヽ　　　r-=＝
　　　　　　　　　　　　　　　　.:.:l.:从ｲ.::.::.::＞' y-／／／/＞-‐´!　￣ﾍ　＼ _＿ﾍ_／
　　　　　　　　　　　　　　　　.:.:ﾊ.::.:_, イ´-＜／_／／／／ | 　,ﾄ-､_　∧／＼_　｀ヽ､
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　　　　　　　　　　　　　　　　＜´　　／　　／／　　　　/　　　　|　　　∧ 　　　　＼
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【AAで学ぶ日本経営者列伝】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第十二回
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【村を市にした男】
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269 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:37:03 ID:OyK7KkQM0

今回の主人公、渡辺祐策は山口県宇部市にて生まれた。元々彼は渡辺姓ではなく、国吉家という名字帯刀を許された家に生まれる。

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　　　　　　　　 /.::/:.:;ハ:::::::.::.:.:.::.:::::::ノ７
　　　　　　　 !. :;. :.:!　j｀￣｀f´￣ゝ./:!
　　　　　　　 !:::;::.:::| ´　　　i |.i　　 {:::.j
　　　　　　 !.:;'.:::::|　　　　 ┴　　 j::::.!
　　　　　　　　j:;':.:::.::|‐=rｯ‐-､_,.rｯァ「::::|　　　正直、あまり裕福ではなかったがね。
　　　　　　　 /;'::.:::::.:!　 _,. -‐'i丶_　ﾉ.::::|
　　　　　　 '^!:::.::::::.:|`´ 　　_' 　 j/.::::;'|
　　　　　　 |:;ﾉ::::::.:!ヘ　 ´　｀／.::::/ﾘ
　　　　　 _」､:::::.::::!＼｀ - ｧくﾚ'j;/
　　　　　　 / ＼ゞ｀`ﾞ｀: : ｀: 〈｀ヽ＼
　　　　 /'´￣｀　 ‐- .:_ : . :＼ﾄ､＼
. 　　　 /　　　　　　　　｀丶.: :ヽ:V´:i
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　　　　,'　　　　　　　　　 ',　　ヽ.: :ﾘ
　　　 i　　 . -───-　._ i　 !　　ヽ:.|
　　　 | ／.: : . : . : . : . : . : .｀v′ 　ヾ!
　　　 |': : : : _,. -───‐--､}　　　 :|
　　　　!: : ／　　　丶　　　 j!　　　 /|

270 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:37:16 ID:OyK7KkQM0

彼の祖父が起こした火事により、一家は無一文となり、そして明治維新後俸禄を失ったことから苦しい生活を余儀なくされた。

　._..-シ'′　,ﾉ.／　　　　　　 .,ν　　　　　 ,／゛ .／　　／　　._..-'"゛　_..-'″
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'"　 ..i　|　　　　　　　 /　　'ﾘ′／　　　　　 : f'" 　　　　　 _,,　-ｰ'''"ﾞﾞ'”
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　/ し　　　　　〃/　　! ./ 　　　　　　　　 ,．／し'"　　　　　　＿z-ｰ¨¨¨⌒´　　　⊇ﾆﾆ二二二二
/゛　　　　　 /　/ 　,iソ゛　　　　　　　,..‐/,／　　　　＿z─-‐'"　　　　　　　　　　　　 -‐‐ﾆ二
　　　　　　　　 " / 　 i./ 　　　　 . ,..-'"゛　″　　　／　　　　　　　　　　　　　　　 'ﾍ;;ｰｚ＿__　 .｀''-.,ﾞ'
　　　　　　〃　 / 　　　　　　　.／　　　　 _..i　/　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　 : ﾞﾞ'㍉.　`'-､.
　　　　　./.!　　!　　　　　　　　/ ,,／　　　　ｒ'"〃　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀'―'''''^″　　 .｀''-..、
　　　　.i.l",!　 i′　　　　　　　i!''/　　　　 ./ 　l′　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿__
　　　 .,ill　|　 l　 /{　　　　　 / 　　　 ./　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀＼￣´
　　　./ﾘ　,! ./　 }/　　　　　 i! ._　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　 .i''i.! 　　.ｌlﾞ　　　　　　　　　 |, .!l.　 ,!　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ミ
　 |　|　　 .!　　　　 /l、　　　リヽ .l
　││./ ｌ　　　,,　/゛│　　　　　　｀'廴　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 'ﾆｰ　,,_
　 .ｌ　 l　.!　　 .ﾈ !　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀'-､ .｀''-､
　　!　　ｌ l　　　 ! .}　　{　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　廴＿_
　　ヽi　.||　　　 l、.ｌ　/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ''-、
　　　|　 ″　　 ∥ .ｌ/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　-..＿、　　　　　　　　　　　ﾞ''-、
､　　│　　　 .､ .!|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀'､｀'-､　　　　　　　　　゛
..ヽ、i,,ﾄ　　　 .ｶ, | ｌ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　ヽ,　.i
　 .ﾞ!//!　　　　l ｌ ! ヽ、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /{　　　　　 }　　ﾞ'､|し
　　　ｌﾚl　　　ｌ !ゝ　 .!　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　!　　　　　ｌ.!ｲ　　　　{
i　　　!､.ｌ　　　　ヽ　　㍉.〟　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / 　│　　　　,}|′　　　　}　　　　 |{
ヽ　　　㍉、　　　ヽ.　　｀乂ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,i}　　　/ 　　 ,!　　　 ./ ゛　　　　　ｲ　　　ﾉし
、.＼　　　丶　.'ト,　ヽ　　　ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　_ //　／　　　/　　　　/ 　　　　　　.{　　 .i| ./ 　イ
. ｀-..｝　　　　　　ｌ＼　ヽ　　　｀'-..,_ 　　　　　 _,,〃 ._..-'"∠z-'"　　　 {　ィ　　/　　　　　　ｲ　　/ﾚ　　　 }
〟　　　　 .}ヽ,　 .ヽ, ｀'-,ヽ　　　　　　 ´ﾞ¨¨¨¨¨´"ﾞﾞ´ ..┴'″　　　　　　　　　｀゛/　 / 　　　　　 / _..-ﾞ　　　　 /リ
. ＼　　　　＼＼　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 {し¨´　　　　　　　　 ~゛　　　　　　　{

271 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:37:27 ID:OyK7KkQM0

それでも彼は学問に打ち込んでおり、将来は教師になろうと努力していた。

　　　　　　　　 {　ﾊ|　, --ｪ,､ __,. -- ､ Vﾊ
　　　　　　　　 |/　:!ﾉゞ三"´_小二ﾞ｀ヽ} |
　　　　　　　　 j :　:|　 /　　,. ┴ ､ヽ　| :{　　　　何かを知り、何かが分かることは非常に楽しいことだよ。
　　　　　　　　 l : . :ト ′　ｆ'´￣｀j!　 V : :!
　　　　　　　　 |i: : :ﾊ　　　|:⌒ﾞ⌒|　ｲ: : :l　　　
　　　　　　　　 |i: : i: :ﾄ､　ゝ──' ,ｲ:|: : i:|
　　　　　　　　 |i: : i: :}　＼　　´　/ ﾊ:i: : i:|
　　　　　　　　ゝ:| iハヽ　｀￣ ´　{:.:.!: /ﾘ
　　　　　　　ノ⌒ﾊ:.:.'､ヽ　　　i､:.V- ､
　　　　 _　 ´　　 l l|:.:.:.＼ヽ　　　i'.:.:.l| l　｀ｰ､
　 ,.　 '´　　　　　ﾍ '､:.:.:.:.:＼ゝ_　/.:.:.:l| l　　　｀　‐-.､

だが父親が亡くなり家督を継がなければならないことから、連れ戻されてしまう。

　　　　 /::::/|::::::／|::|　/￣｀`i}､`ー-ｙ┐
　　　 /::://ﾚV ／l/　　U　　 !l,　｀¨´／
.　　　 N//::ﾊ／::::::|＿　　　 _ll, 　／|
.　　　 M/:/:::::::::::::/.戈ﾃｯ､　 _.　〈:::::!
.　　　 |::::::|::::::::::::::|　＿＿__7攵ｋﾉ::::|
.　　　 |::::::|::::::::::::i:|'´　　　,＼_ﾉ:::::::|　　　　　　　せっかく学問に励めると思ったのに。
.　　　 |::::::|:::::::::;::i:|　　‐-、　／:::::/:::!
.　　　 |:::::从:::::从:!　　　／::::::::/i::/
.　　　 |／　ヽi、 i＞ -ｒく:/:/:;i::/ i/
-―＜＼　　　ﾍ　　 ,ﾑヽi/i/,i/　′
.　　　＼＼　　　＼_　 } ﾊ､
　　　　　 Vﾊ　　　　ヽ｜ﾊ＼_
　　　　　　∨ﾊ　　　 `l　ﾊ　　｀丶､
　　　　　　　Vハ　　　｜　ﾊ　　　＼
　　　　　　　 ∨ハ　　 |　　|ﾊ　　　､　　＼
　　　　　　　　 V ハ　 |　　|ｌﾊ　　　ヽ/ 　 /ヽ

272 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:37:39 ID:OyK7KkQM0

渡辺は必死に親族を説得し、岩国の東澤瀉の私塾にて再び学問の道を歩む。

　　　　　　　　 , ‐ﾄ､―- ､
　　　　 , -――∠-‐ゝ.＼ : :ﾄ-､_
　　　　ゝ‐- ／!| !　　ヽ/l: ﾄ､: ﾊ:＼
　　　　ｌ＼/,　⊥　　　　｜l　V　＼l
　　　　 N : ﾚ＿､　_ ィ丕ﾃl: ﾍ.　∧　l　　　　　家督を継がねばならないのは分かっています！　ですが、
　　　　 l ｌ: 〈ｒｒｔﾀV　￣￣ l: : :∨ :丶l　　　　　これからの時代、学を修めなければ生きていくことなどできません！
　　　　 l/: : ｌｒ‐/ ￣￣＼ｊ: : : : : : : :l
　　　　ｌ:i: : ﾍl　｀＿__　　l: l : : : l: : :l
　　　　ｌ:l: : :l:ﾍ　ゞ-┘　 ! l: : : l:l: : :ヽ
　　　　ｌ:ｌ: : ｌ: : ＼　　　 l l: : l l:l: :l: l l
　　　　ｌ:l: : l:l: : lﾊ> --- ｲ:l: : l:l:l : !: ﾄl
　　　　ｌ:ｌ; : l:l: : l:.ﾊ　　 _ﾉｨl: l:州:从:ﾉｙ‐-､＿
　　　　リﾍﾘヽ/:.iﾉ! ／/　ｊ:/':.:.l':.:.:ｿ/　　　　￣　‥‐-　､_
　　　　　　ﾞlニl:.:.:l／:.:.:.:.:.:ｌ':.:.:.:.:.:.://　　　　　　　　　　　　＼
　　　　_ - ´//ｊ:／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／/　　　　　　　　　　／
　 -‐ ´　　 { { l':.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／　/　　　　　　　　　／

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　　　　　　l　　　　l-' _, ー-､_　　　　　　　 _, -一､_｀-i　　　l　　　　　　うーん、そこまで言うならば仕方ないのう。
　　　　　　l　　　　l ´ 　ニ二 _ ｀-) , |l| ､(-´ _ 二ニ　｀l　　　l
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　　　　/　 l.　　　　lヽ､　　 -一　｀一-　-'　ー-　　／l　　i　l',
　　　 / .::..:l i　　 i　l.　　　 l l　　　　　　　　　　 l　　　.!　 ,i　l:.',
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_,／:::::／; ; ;l li　　 ', l｀ｰ-!　　　　　￣　　　　　i- ';;;;;;l　 i i l;;i:iヽ､ヽ
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:i:i:i:i:i:i:' ,; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ;;;;;;／:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i/; ; ; ; ; ヽ

273 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:37:57 ID:OyK7KkQM0

その後、上宇部村戸長役場用掛、村議会議員、助役を務め、宇部村の行政へと関わっていった。

　　　　　　　　　 /⌒ヽ､‐ ､: : : : ＼: : : ／: ￣｀ヽ/ﾍ: : : ＼
　　　　　　　　　　 /: : : : : ＼: : ＼｀: ､゛ ": ／: ／: :/ 　「i: : : : !
　　　　　　　　 /: : : ｌﾍ: : : :ヽ: : ヽ: :｀': : : :／ : : /　　 |:|: : : :
　　　　　　　 ,': : : : l　 `ゝ､: :＼: : : : : ／: : : ／　　　l::|: : : : :
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　　　　　　 /: : : : : : :',　　　　　　　 ∥　　　　　　 /: : : : :
　　　　　　　/: : : : : : : : i　　　　　　　ｌ ∥ ｌ　　　　 /: : : :/: :　　　実行の中にのみ学問がある。行動しなければ学問ではない。
　　　　　 /: : : : : : : : : i　　　　　　　ー　　　　　 ∠_,!: : /: : : :
　　　　　 /: : /: : : : : : :〈、＿　　　　｀´　　　,,, イ］ノケ": : : : :　　私に学を身につけさせれてくれた人達の為にも頑張らねば。
　　　　, ': : , ': : : : : : i⌒|''ll￣匚_＞ヽ、　 ,r'　￣´　/: : : : : :
　　　／: :／: : : : : : : : ',　」 `￣　　　 ,,,ゝ-ﾍ_　　　　 ,': : : : : : : :
　,　´: :／: : : ::,': : : : : : :ゝ|　　　　／　　 j　　￣｀ヽ/: : : : : : : :
　／ , ': : : : : / : : : : : : : : ヽ　　　/　　　丶　　　　/ : : , -.､: :
　｀彳: : : : : ,': : : : :: : : : : : : ::＼./　　　, =＝､　 / , イ,　　〉: :
　 / /: : : ハ: : : : : : : : : : : : : : : ヽ、　ヾ=＝',ｨ´￣ﾍ./　　./: : : :＿＿＿
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　/／!/ 从: : : : : : : : : : : : : :,ｲ三「/⌒ヾ､　　　＼ﾍ　　jｰ"―‐ｹ　　　　＿
　´　　　　〉: : : : : : : : : : : :/|三_ノ、　　　＼　　　.〉､- "x,ｰ-,!f￣　　―
　　　　　／|/ソﾍ: : : : ::／　〉´／,'｀ゝ､＿ﾉ`ー '　＼｀　　､/ﾚ'｀
　　　　　　　　　　ﾉ,　‐'　　.!／　/　 ,!.,"lﾞ　| ｀K ＼　＼ / ＼　　｀丶､
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　　　　　　／　　　　／　　　/　　/　　,'　!　　　＼　　　　＼

274 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:38:48 ID:OyK7KkQM0

だが、そんな渡辺に一つの転機が訪れる。

　　　,.' ｲ:.:.:.:. ／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.://ヽ,l::: ﾍ .:.::.::.:.:.:.:.:.:.::.V　　ヽヽ
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　 |! |:.::/ﾊ' !.:|:. |:l:.:: |:.:: ﾚ'∨ ':: ヽ|!ﾞ' 　　　||,r!:=ﾄ|:.|　|:.:.,:. , .:.:.:.: |:.: |
　｀ |:./ | 丶!.:.:.ﾊヾ |.:.: |j　ﾊ::::::ﾉ! 　　　　ヾヽ!::Vヾl: /|:ﾉ :.:.:.:::;|:.. |
.　　ﾚ'　　　＼| 'ヽ,'ヽﾄゝ　ヽ｀´,ﾉ　　　　　ﾊ:::::::ﾊ! Yl! |:.:.:.:.:. , :. |
　　　　　／　ヽ /.:::!　　　￣　　　　　　ヽ_｀_ノ　 ´ /!:.:.:.::∧ .:|
　　　,. ..:':´ゝ　　　'ｲ:. |! 　　　　　′ 　　　　　　　,ｲ:.l:.:.: ,'　ヽ,,'
,_.., '::::::::::::::_j, .-= .||:.:.:|ゝ､　　　　__　　　　　 U　, '　 '.:.:..:/　　＼
｀￣￣ "´　.fヽ:.. |!:.::.|ﾍ!::ヽ　　　 ` ′ 　　　／:.ヽ,/:.:. /l 　　_,ノヽ
　　　　　　 |: : ＼ヽ | ::.V,. ＼　　　　　　 ,.. ｬ'! : : :.:./:.:.:.:.:,!'_`ー'',:::::::::＼
　　　　　　|‐--､:`ｰ!--､__ヽ_` 　ｰ‐　' ´　/::|.: : :.:/:.::.:.::::|! ﾄ､ヾl' :::::::::: ＼
　　　　　　ノ￣_｀V: : r ､ : : :`＝=‐-､__　　/!:: |: : :./ヽ__,.-ｲ,ﾉ::::ヽ｀''ー`ー--ゝ
　　　　　／⌒ヽ : : : : ヽ ` ー─- ､ : : : ` ｰ──_:/ヽ.__, -.ｲ:::::::::::|
　　　／　　　　＼ : : : : `ー─ ､　＼: :/ ￣￣ ./: : : : : : :.,′:::::: |
　　／　　　　　　　＼: : : : : : : : : :＼　／´￣::/: : : : : : ::/| :::::::: ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　【渡辺夫人】

　／,　 |　　ゝ′　　　 rｭ| |rｭ　　　i､　ノ　| !
／／ヽ.!　　　　　　　　Ｌ!| |L!　　　　 |: :　| |
　′ 　 :|　　　　　　 └─┘　　　 {j: : 　N
　　 .　 |　　＿＿　　　　　　　　　　　V: :　 :|　　　　　　ああ決めたんだ。今や石炭こそが日本の将来を担う。
　　 : :　:!＜､￢ｔrﾑｰュ､　　 , ィ丕マ,､〉: 　｜
　　 : : . | 　`ー冖^ ´ 　｀¨´ ｀冖≠　ｌ': :　｜
　　 : : : |　　　　　＿___／ﾄ､　　　　　,!: : 　i: !
: : : : : : :|　　, '´￣　　　 l､｀ｰ､　 /: : :　i: |
: : : : : : :ﾄ､ /　　　　　　　/′　　 }./: : : :　|!:|

275 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:39:00 ID:OyK7KkQM0

すでに何回か描いてきたが、明治時代は大石炭時代といってもいいほど炭坑が日本各地で開かれていった。

　　　　　　　　／;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ｿ;:;:;:;:;:;:;:ゝ､
　　　　　　　〃;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:Yｲ|;:;:ﾍ;:;:ヽ:;:ヽ
　　　　／;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ヾヽ;:;:;:ﾊ
　　　　　/;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ヽ
　　　　　ﾉｲ;:;:ノ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ノﾉﾊﾍ ∧;:;:;:;:;:;:;:ヽ
　　　　ﾙノノ;:;:;:;:ノノ;:;:ノ彡'ｿ/ﾉヾミﾊ;:;:;:;:从ﾘ　　　　　　私が三池炭坑を落札したのもそこが理由さ。
　　　 /彡彡ﾆ彡ｲ彡ﾆﾆ"　　　＿_　ﾍ;:;:ﾊﾙ'
　　　　ﾄ彡ｲｲ.l|　　￣｀　　　´fｫｯ｀ /ソ''
　　　　　ヾ;;;;ヾ. ｿ　　　　　　 {　　 ,'
　　　　　　ﾙ;;;;ヽﾍ　　　　　ｰ-'　　ﾉ
　　　　　　从;;;;;;;;;|　　／￣￣￣｀ミ辷ﾆﾆﾍ
　　　　　 >ﾊﾙj ヽ　 l´　　　　　　　　|　　i　｀ヽ､
　　　　　　 |＞ｰ--､.ヽﾍ　　　　　 /ﾆﾆ≧.　　|
　　　　　 |.:.:.:.:.:.:.:.:ﾊゝﾐ､　　　　zﾍ､＿__. 　､　|
　　　　　／.:.:|φl.:.:.:.:ﾄY´￣｀Yﾆﾆ>ヾ::（　　　　､　|___
--一'.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ.　　ﾊ　ﾍ　 |.:l´￣　､　 ∨.:｀￣｀ヽ
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.人　 |::　 J　 j.:.:ヽ､　　　 }.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼
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.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼.:.:.:.:.:.:.:

工場や船の動力源として、石炭は現代の石油以上に活用されていたエネルギー源であった。

276 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:39:11 ID:OyK7KkQM0

花子とアンで有名になった石炭王伊藤伝右衛門や、筑豊御三家と呼ばれる麻生、貝島、安川などの
後の財閥となる企業がこぞって炭坑に関わっていたことを見ると、この時代における炭坑の価値がよく分かる。

　 /　　　　「´
　{　　　　　`ー──────- ､
　｀`ヽ.　　　　　　　　　　　　　　ヽ＿__
　　　{　ヽ_,.-‐----- ､._　　　　 / ,.----ミ､
　　　｀ ´　　　　　　　　　￣｀V /　　 /::|　,.イ
　　　　　　　　　　　　　　　／､⊥_　 |::::ﾚ':::::|　_,. -‐ｧ
　　　　　　　　　　　　　　 /　／_＞::`::::/::::::::|'´:::::::/
　　　　　　　　　　　　　　ヽ＜:::::::-=＝'::v::::::!/::/　`ー―‐z__
　　　　　　　　　　　　　　､-≧＝:::＞::::::::::::::::::::￣￣／／／
　　　　　　　　　　　　フ￣￣::7:::::::::::::::::::::::::::::::::＼<
　　　　　　　　　　　　　 ,〃::::::/:::://:|::ﾊ::::::::::::::::::::::::::::::::｀Ｚ
　　　　　　　　　　　　　　_'ﾆイ:_:/:/|::|::!:::vﾍ:::::::::::::::::::､_ア´
　　　　　　　　　　　　　　　￣レ代ﾐ!:| |:::ﾄ、:::::::::::::::ﾄ､:ﾄ､
　　　　　　　　　　　　　く ∧ ｀ j! |代ヾラ:ﾄ､:::::|' ヽ!`ー-､
　　　　　　　　　　　　 /`ーヽ `　ヽ「´ ヽﾚ!::ト! |　／　＼　　　 _
　　　　　　　　　　　　　　　　| 　 /.ハｰ- 　 ,.イ　ヽ!　/ /　　　　￣`＜　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　|　　＼ |｀ｰｧ'´⌒ヽ　／ /　　　　　 /　　　ヽ　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　 Y´　　　／V　 /　　　　 /　　　　　 }　 }
　　　　　　　　　　　　　　　 ∧　　! |　/　／　　　 {　　　／　　　　　 /　/
　　　　　　　　　　　　　　　 |　| 　 / /　ﾄ､　　　　　ゝ　　　　　　　　　 /　 /
　　　　　　　　　　　　　 |　|　 |. |　　ヽ. ー┐　 /　 /⌒ヽ　　　　／　 / ＼
　　　　　　　　　　　　　　　 ∧ |　|. |　　　　￣　　　　ﾊ　　　＼__／___／　　　＼
　　　　　　　　　　　 |　i　r' ﾉ　　　　　　　　 /　|　　　　　　　　ヽ　　　　 '.
　　　　　　　　　　　　　　 ,.ｲ　 | |　|＼　　　　　　　　　「￣＼　　　　 |　　　　 i
　　　　　　　　　　／　|　　 |　|　 `ー- ､_　　　　　!　　　ヽ　　　　　|　　　　 |
　　　　　　　　　　　／　　 |　　　 |　ﾄ､　　　　　　　　　　　　　 `ー┐　|　　　　 |
　　　　　　　　　　　ヽ　　 |　　　　ヽ | ヽ　　　　　　　　　　　　　　　 /　 |　　　 !
　　　　　　　　　　　　|　　!　　　 i　|ヽヽ＼　　　　　　　　　　　　 /　　|　　　,'
　　　　　　　　　　　　|　　　　　　 |　|:::::＼＼ー-　 _　　　　　　 /　　 | 　　 i
　　　　　　　　　　　　| 　　　　　 |::ヽ:::::＞.､　　　　｀`ヽ _,. -‐' 　　 !.　　 |
　　　　　　　　　　　 /ヽ　　　　　 |　|:::::::::::::::::::::＞､　　　 |＼　　　　/　　　 !
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　　　　　　　　　　/:::::::::::::::::::::::｀＞..､!　　　　＼:::::::::::::＼／:::::::∧　i　　　　 '.
　　　　　　　 /:::::::::::::::::::::::::::::::／　　　　　　　＼:::::::::::::::::::::::::::∧ |　　　　　 `ｰ┐
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【伊藤伝右衛門】

277 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:39:21 ID:OyK7KkQM0

そうした炭坑ラッシュの熱に当てられたのか、渡辺も地元の炭坑を買い取り事業を始めようと心に決める。
このとき彼は二十五歳であった。

　　　　　　　　　　　　　　＿　 ,　--‐=ﾆニ￣ニﾆヽ
　　　　　　　　_　-‐‐ニ二::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼＿
　　　　　　／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::-､:::::::::::::::::
　　　　 /::::::::_::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/　 i､::::::::::::::
　　　　 /::::::::::i.ﾍ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ 　 .|:i::::::::::::::
　　　./:::::::::::::|　.ﾍ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/　　 |i:::::::::::::::
　　　/::::::::::::::::i　　ﾍ､::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: '　　　|i:::::::::::::::
　／::::::::::::::/:::i　　　　｀￣￣￣｀Y´￣￣　　　　　i::::::::::::::::　　　　
／::::::::::::::::/:::::::i　　　　　　　　　　|　　　　　　　　 /:::/::::::::::　　　　石炭は掘れば絶対に売れる！　宇部の為にも炭坑開発は必要だ！
:::::::::::::::::::/::::::::::i　　　　　　　　ll. ｜ ll 　　　　 /:::/i:::i:::::::
::::::::::::::::/::::::::::/　　　　　　　　 ====　　 .__ ﾆﾆ/:::/::i:::i:::::::
:::::::::::::/::::::::::/ヽ､＿＿＿＿　　　　　 _ﾆｲ::::ｱ /:::/::::i:::i:::::::
::::::::::/::::::::::/:ii　ﾍﾍﾋゞ､:::ｱ＞､　/.＞-===/:::/i::::i:::i::::::::
:::::::/::::::::::/:::i:ヽ. ﾍ　ゝ‐--‐"　　>' ^ヽ､　　　///::i::::i:::i::::::::
::::/::::::::::/i:::::i::::::ヽﾍ　　　　＞'´ 　 i　　｀￣ノ//./::::/::/:::::::
:/::::::::::/:::i:::::i::::::::::`ﾍ　　Y´ 　　　 l　　　　 /　/:::/ﾆ､:::::::::
:::::::::::/::::::i:::::i::::::::::::::人　|　　　　　 ===､ ,==､ .〃'´　　Y:::::
::::::::/:::::::::i:::::i:::::::::::::::::::＞､　　　ゝﾆﾆﾉ/　　 Y /　　 V:::::::
:::::/::::::::::::i:::::i:::::::::::::::::::::::::| ＞､_／ヽ‐‐' i　　　.V　　 V--‐‐
::/::::::::::::::::i::::i:::::::::::::::::::::::::|/￣　l　　　ﾍ |　　,　 V .こ| 三三
/:::::::::::::::::::i:::i::::::::::::::::::::::::/l　　　ﾍ　 ,===＼ '─人__ﾉニニニ
:::::::::::::::::::::::i::i:::::::::::::::::::::/ﾑゝ､　==入_____ﾉ　`‐´､`‐ ､ r‐‐=ﾆ
::::::::::::::::::::::::ﾘ::::::::,,,- ﾆ´ ／／／‐/ |　Yﾍﾍ　______＞'
::::::::::::::::::,，-‐=ﾆ-‐ ,､／／／　 /　.l - ､ﾍ／　＼　　｀ヽ､
:::::,,，- '´,, - '　／￣`／"ﾞﾞﾞﾞ＼／　 |　　ﾍ　　　＼　　　＼
''´　,, - ´　 .／　　／／　　　./　　 |　　　ﾍ　　　　＼　　　＼
, ' ´　　　／　　／／　　　　 /　　　 |　　　　ﾍ　　　　　＼　　　＼

278 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:39:31 ID:OyK7KkQM0

だが、世の中そこまで甘くはない。堀田山炭鉱の開発に着手するも、四ヶ月で開発に失敗。
多額の借金を抱えてしまう。

　　　ト、￣￣　 ― ミヽ /／ _　 -―　{、　　ﾊ　　　　　 l　　 l
　　　　|　＼￣　-＞‐‐ ￢ {￣　　　　　　　　 l　　　　　　｜　 l
　　　ﾄ　　｀＜　　　　 !!　_　　　　　　　　　　 |　　　　　　｜　 l
　　　 | ヽ　　　 }　　　　｢j || L!　　　　　　　　　　 |　　　　　　｜　　l
　　　　 | |　＼　 ′　　　 r┘_ュ　　　　　　　　　　｜　　　　　　| 　　l
　　　　 ! l 　ﾘ　　　　　　￣　　　　　　　　　　　＿_l　　　　l　　 l　　　l
　　　　　l　　/　　　　　 {　　　　　　　_. -‐　￣｀ヽ　ﾊ　　　 l　　 l 　　 !
　　　　 !　 {　　　　　　_ヽ.　　　　／′ 0＿_　ｨ彡'　 l　　　 l　　 l　　　 l
　　　　　 l　　＼i弋7￣ 0 _≫ー- 　￣￣￣￣　　　　 l　　　 |　　 |　　　 l
　　　　　｜　　　|　｀ミ=- ´　　/⌒ヽ＿＿＿_　　　　 ∧　　 !　　 l　 |　| l
　　　　 l　　　｜　　　　　／..:|::::::::::｡::::u::::::::::｀ヽ　 / ul　　　|　　 !　l　 ! ト
　　　　　｜　　ハ　　　／:::::::::/::::::::　　　　　 U　ｰ′　}!　　　　　 l　| ! ﾄ |
　　　　　 l　　　　＼ / u　　ヽ　　　　　＿　　　 u　ハ　　　　l　 |　!l! |
　　　　　 l　　　　　ヽ　　　　　_ .. -_二 -―ヽ､　　　ｲ　 |　　　　|　 ! |lﾊ|
　　　　　 l　|　　　|　l＼　　ヽｰ　　／´￣￣|}　／ |　　|｜　　 l!　|/|! |
　　　　　　 l　l　　 l　l　|＼　 V´7＿＿ .　-j／　　l 　ﾊ |　　　|! |! |!

279 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:39:41 ID:OyK7KkQM0

　　　　　,ｨ ´￣＞'"￣｀ =､ｰ､
　　　　f´　　　　　　　　 .|　 |
　　　　|　　　　　　　　　　 |　 |
　　　　|　　　　　　　　　　 |　 |
　　　　|　　　　　　　　　　 |　 |　　　　　　　　　すまない、結局私は苦労ばかりをかけせてしまうようだ。
　　　 /　　　　　　　　　　 |　 .|
　　 .|　　　　　　　　　　 ,|l　l|
　　　.ﾚ|/|　　 | 　　　　 /l| l| |
　　　,/ﾚ| ./l ∧　 ,ｲ/ﾚ'ヽ| ﾘﾘ
, ｰ_'´＼=ﾚ'=ﾚ= レ'===ｧ-‐'^ヽ､
　　ヽ､｀｀`ー――' ´　, -‐ｰ'´｀ｰ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿　_　_,.... __
　　　　　　　　　　　　　 ,.-‐' "´ヽ::::::y'´　　　ﾐヽ､
　　　　　　　　　　　／.:.:.:.:::::::::::::::'´::::::::::::::::::::::.::ヽ＼
　　　　　　　　　　　/.:.／.:.:／.:.:/.:.:::::ﾄ、:.ヽ:.ヽ:.ヽ.:.:ヽ:ヽ
　　　　　　　　 /／:.:.／.:.:/./:N:|ヽ!|il:.:ヽヽ:ヽ::ｌ:.::.::i::::',
　　　　　　　　　 ///:.:/:.:.:.:./:ｲ.::|ｌ|:f´￣|::Y:i::|!:.:!.|.:.:.:.|:.:.:.!
　　　　　　 ///.:./:/;ｲ:/:::ｌj;:ﾑH!　　ｨ:ｌl什ト､j:|.:.:.:.|::.:.:l　　　　　人間何事も好不調があります。お金のことなんて気にしないでください。
　　　　　　　　//!:!:././/::!:l:イ| ｣⊥ヽ　 |ｌj抂ｪ｣|｀!..:.!:ﾄ、:.l
　　　　　〃 |:|:i:.:.l:i:.:.|:.l:.:ﾚぅ⌒f　　　!´ﾋ'　 lヽ!.:.ｌ.:| ヽ:.l　　　　　食べていく分の畑もありますし、運が悪かったということで、やり直しましょう。
　　　　　　　 !　∥!|:.:i:l.i.:ﾄ:l.:iハ..::::j_　　　 L::::ﾉ　|:.:|:.|　＼
　　　　　　　　　 l lヽ从ﾄ:! い、 ¨´　　 ,　　　　 |.:.l.:.|､,__　＼
　　　　　　　　　 ! >ヘヽヽノ:ﾄ､　　　－　　　／|.::|ｉ:.|;;i;;i｀ｰ‐ヘ
　　　　　　　　　 /ヽ-‐7´/;;ｲ:::＞..,._　　　,.イ::::::|.::|l:ﾘ^介r､;;_j;;;;＼
　　　　　　　　／;;;／ノ;rくﾊ二__￣￣￣￣￣__ｺﾆミ{ノ:/ﾉ,ﾘ`´`'ーﾍ
　　　　　／;;;;ィ"~＾ヽ`ﾐﾐ片__＂￣`'￣`'￣″|:..:｀Y彡'″
　　　　　 ´"´　　　　　＞'-ﾆ_ `'´￣`'￣`'￣`ﾟﾋ'ｰ-ト､
　　　　　　　　　　　／　　　　弋ｰ--ｔ--ｧ-ｰ￢´｢lY 　ヽ､
　　　　　　　　　／　　　　　　ヽ::.::.:У::.::.;:-┤j !|　　　＼
　　　　　　　　　/　　ヽ　/　　　　ヽ::/::.::./´ ｒ'⌒ヽヘ　　　ヽ

280 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:39:51 ID:OyK7KkQM0

こうして農業に専念し、食べていくだけで精一杯な時期を過ごす。だが、この経験が後に渡辺を事業家として成長させ、
その飛躍のキッカケになるとは彼自身は無論のこと、周囲の人間も思ってはいなかった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / '　.″　　,.ｲﾞ!　/ /　　　　　　　　|ヽ/ﾆニ|ヽニニニﾆヾニニニニニニﾆ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 // ,.″　,.ｨ ,!　 ! / /　　　　　　 ,|.　;ヾ三|　V 二二二∧ニニニニニニ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　,.″　 l　l' |／,/ /　　　　　　　　 ,∧//　｀'l.　＼二二二∧ニニニニﾆﾆ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / /7　　／! ,l 　 ,/ /　　　　　　　　 /三'/,,.　　',. 　 λ三二ニ∧ニニニニニ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /'., ｀　／　 '´　　/ /　　　　　　　　 /三i/〃　　ゝ..ノ　',三二ﾆﾆ∧ニニニﾆﾆ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / .__ ／　　　　 / /　　　　　　　ｉﾆ三iヾ>.　　　　　　 V三三二ﾆ＼ニニﾆﾆ
　　　　　　　　　　　　　　　　＿/ ' l__l 　　　　 / /　　　　　　　　　 ∨ﾆﾉ　　　　　　　＼三三ニニ＼ニニ
　　　　　　　　　　　　　　　 /　r'／　　　　　　 / /　　　　　　　　　　 V∧,. ｬ‐tｧ─ ､　　＿ヾ,.-､二ニﾆ＞＝
　　　　　　　　　　　　　　　　 ,ィl.　 i　 __　　＿＿ ,/ /!　　　　　　　　ﾚく.　｀"''　'"　｀¨¨´　r "〃､V三三二ニ
　　　　　　　　　　　　　　　 |　| , ﾘ_/ﾞ/　/ ,// ,// / .i　　　　　　　　／　　ゝ.,,＿　　　　　　/　 i　〉〉!三三三ニ
　　　　　　　　　　　　　 f´|　ｰ'' .'_/ﾞ¨/ ,// ,//_/　 |　　　　　　　　　　＼　　　　　＼　　　 /　 '　' ,／V:､三三三
　　　　　　　　　　　　　 ,!. !_;ﾉ　　〈 ,// ,// 7　　 !　　　　　　　　 ,.｀ｰr=‐.､＿__ヽ__∠＿τニ..,,＿'/,＼三三
　　　　　　　　　　　　　　　〈.| ;ﾘ!,　　　　｀.〈 // / 　　 i　　　　　　　　／ γ≦´_、/////////,＼: .: .: .: .:ヾ. .:＼三
　　　　　　　　　　　　　　　　じ´/ 〉　　　　ﾞ/ /　　　　 i. __ 　　 , -,､_,／_＞'　　　　｀ '＜'///////＼.: .: .: .: .: .: .:＼
　　　　　　　　　　　　　　 /i. ｀1　　　　 ,/ /　　　　 .i'//,ー‐'////＞,.,　　　　　　　　　＼///////＼.: .: .: .: .: .: .
　　　　　　　　　　　　 /',i,.　 l! ,.　　　 / /　　　　　 .l､///＼////////＞,.,　　　　　　　　＼///////＼.: .: .: .: .:
　　　　　　　　　　 /. ｲ　 ,l! ,〉　 / /|　　　　　 l ＼///｀'///////////＞,.,　　　　　＼///////＼.: .: .: .
　　　　　　　　　　　　　 /7' l.　 / /,ﾍ. ,/ /　!　　　　　　 .|　　V///＼/////////////＞,.,.　　　　　＼//////∧.: .: .
　　　　　　　　　　　 / ,'　l　 ∨/ /,/ ∧　|　　　　　　　　　　∨////＼//////////////,＼　　　　　＼/////,ﾍ .: .:
　　　　　　　　　 /..,'　,l!1　 /.,ｉ!/ /　ヽ| 　　　　　　　 ∨/////,＼//////////////,＞,.,　　　　＼////,ﾍ .:
　　　　　　　　　　　　/　'　i.ィ　 ∨,ik/ 　　 |　　　　　　　　ヾ///////,＼/////////////////≧=-　,ヾ////ﾍ
　　　　　　　　　　 / r'1 ,.ィ´! 　 / /　　　　、　　　　　　　　　　　＼///////,'＼///////////////////////77=-
　　　　　　　　 /　,´　l.ィ"　,,/ /　　　　　　￣ヽ¨¨　''　 ──＝＝＼////////＼/////////////////////////

281 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:40:03 ID:OyK7KkQM0

事業に失敗し、貧困にあえいでいても、渡辺の家には常に誰かが相談に訪れていた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,::::::::::::≦ l::::i:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,:':::::::::::<ヽ、!::::!:::::::::::::::::::i::::::::::::::::::::::::::::::::::::､ー‐　' ´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .::::::::::ﾑ´ ≦ヽ:::N:::::::::::::::::ﾄ::::::::::::::::::::::＼::::::::::ヽ、
　　　　　　　　　　　 r‐ -... __　　　.::::::::::::l　k‐t-ﾐ:::ﾄ､'::V::::::::::|‘,::::::::::::::::::::::::ヽ､:::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　　｀寸　　｀＞-､::::::Ｎ. ヽ戈:::ﾝヽ｀ﾍV::::::::l　ⅵ:::::::::::‘,::::::ﾑ `寸:::厶
　　　　　　　　　　　　　｀寸　　　ヽ,　 i!　　　￣　ｉ!　ﾍV:::::::!zzⅵ:::::::::::‘,::::::ﾑ　 `寸ム
　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀寸　　≧ i!　　　　　　　　　.{V:::::l_:ンア:::::::::::ﾑﾏ::::l　　　寸ﾑ　　　　主上居る？
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ノヽ＿_ ″　　　　　　　　　 V:::l￣ ‘, ﾏ::::::::::} ﾏ:::!　　　　ﾏ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 '"´/::::::::∧　　　　　 r‐ - ､　　 Vl　　 /､::::::::::::,　ﾏ:l　　　　ヾ,
　　　　　　　　　　　　　　　　　／::ィｨ〃ﾍ　　　　　｀丶.ｦ　　 ' 　 /=-ヽ:::::::, 　 v
　　　　　　　　　　　　　　　　　 __ノﾍ　　､　　　　　　　　　　,. '　　___Ⅵﾘ
　　　　　　　　　　　　　　　　　_,, ｘニニ!　　ヽ　丶、　　　　　　　＜` ｰ '´　　V
　　　　　　　　__　　--‐‐　' ´　　　`ニﾆ,　　　　｀､　ヽ __　ィ　´ /'′ Ⅴ
　　　　 ,　'　　　　　　　　　　　　　 lニニ,　　　　　｀＞‐-r'
　　　／　　　　　　　　｀`‐-､!__ニ=ゝ　　　　　 ∧
　／　　　　　　　　　　　　　　　　　 |=｀`‐-､≧o､_____,ｨﾆﾑ､
/　　　　　　　　　　　　　　　　　 l二二ニニ`ヽニニニニヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|二二二二ニニニニニ!　　丶
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 j二二二二二二ニニニ!　　　ヽ

　　　　 /:. :. ／:. :. :.:i:./:. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. ヽヽ.ヽ
.　　　　 /:. :./:. :. :. :. :.i/:. :. :. :.:i:. :. i:. :. :. :. :. '､:. :. :. :. :. :. :.'､:. :. :. :.ヽﾊ　ヽ
　　　　/:. :./:./:. :. :. :. |:.:i:. :. :i:.:iヽ:. ヽ:.､:. :. :. :ヽ:. :. :. :. :. :. :.:ヽ:. :. :. :ﾊ:ﾊ　ヽ
　　　 ,':. :/:. :i:. :. :. _:. :|:.i:. :.‐‐--.､,:.:ﾍヽ:. :. :. :ﾊヽ:. :. :. :. :. :i:.:ﾊ:. :. :. :.iヽ:i　　ヽ　　　主上、実は相談したきことが……
　　　,':. /:. :.i:. :.／,-､ヽ:i:. :. :. |. ,ｨ=≧ト.､ヽ:.:.:.:,ｨ≦了:. :. :. :.iヽﾍ:. :. :. :i. ヽ
..　　,':./:. :. :.:／イ　ノi:.i:. :. :i ｲ|r';;;;;::i 　　　 fr';;;:|.:r､:. :. :. iヽ .i:. :. :. :|
　　 i:.i:. :. :／'　　　/　 N:. :. :.ﾘ乂;少　　　乂ソ V:.ﾍ:. :. :| i ＼:. :. :.|
.　　:.i:. ／.／／　ヽ　 |:. :. :ﾊ　　　　　　　､　　　 i:. :.:N:. :| ヽ　ヽ:. :|
　　／イ／　ノ　 ./￣|:. :. :.ト　　　　　　　　　　　/:. :. |.ヽﾘ.ゝヽヽヽﾘ
　　　' ´ ‐' ´イ ./／　　|:. :. :.iヽ　　　　｀ `　　／.|:. :. |＼ヽヽト.ヽ､ヽ-＼
　　‐'　／　／／iゝ､　 |:. :. :.|.　＼　　　　　 ,.ィ　 .|:. :. |　ヽ､　ヽ `ヽ｀､＼
.　　..,､イ:."￣:. :.:ﾍ . ｀'‐|:. :. :.|'‐‐-､`　､__ イ/ヽ. 　 i:. :. |　_ノ　ヽ　ヽ　＼＼
　　 V:. :. :. :. :. :. .ﾍ.　　|:. :. :.|-､　　|‐‐‐‐‐| 　 | 　 i:. :. |'´ /　　　　`ゝ､,_ ヽ､,
　　　,ヽ-‐‐‐‐---､ﾍ..　|:. :. :.|　i　　|:::::::::::::|　　{ 　 |:. :. |.／　　　　　　 `‐‐

282 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:40:15 ID:OyK7KkQM0

渡辺はそんな彼らの話を懇切丁寧に聞き、ちゃんとした解決法を教え、親身になって相談をしていった。

＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / 　ﾄ　　　￣￣￣＼　　　／￣￣￣　　　∧　＼
　｀＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　 / | ∧　　　　　　＼／　　　　　　　　 /　}　　 i
　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　/　 // |　∧ー────‐┬────―‐/ 　 l　　 |
.　　　　＼　　　　　　　　　　　 /　 / 　 |　　}　　　　　　 }|　　　　　　 i　　 |　 ∨
.　　　　　 } 　　　　　　　　／/　　　人　ﾉ　　　　　　 }|　　　　　　　　　　 /　　 }　　　なるほど、確かにそれは問題だな。
　　　　　　/ 　　　　　　　／／　　/　　/│ ´　　　　　　ｎ }| ｎ　　　　　　　　ｲ　　／|
　　　　 /|＼　　　　　／／　　　/　　// | 　　　　　　 U_}|_U　　　　 __／　　／ /,|
.　　　 //l//＼＿_______／／　　／/　　/// | /　　　　＼＿＿￣￣＿　-‐=　￣￣{　 //,{
　　　　/　 |////＼______／/ 　／//　　// ＿j/　　　　　　　￣￣￣￣　　　　　／￣ //　|
　　　　　 ////////＼__／　／　//　　// /ﾆﾉ´_,ｨｆ芥うぅｔｩx__　　　　　_ｚｧﾃ芹／　　／　/}
.　　　　 ////////// }＿／　／　　／///}ﾉヽ｢￣＼弋cツ__ノ＼＿,ノ＼乂／　　／　／ /
　　　　/////////// l＼__／　／／　人 l ﾉ}　　 ´￣￣＿＿＿＿___／　　　／　／　 /
.　　　//////////// | 　ヽ__／／　／　ﾊヽ}　　＼＿＿＿＿______／＿＿／　　　__／
..　　///////////// |　　　＼　　／ ___,ノ　＼}　　　/￣￣￣￣ }　　／/　　／　/ {
　／//////////////　　　　｢￣￣l　/／　／＼__/　　　　　　ﾉ　／　/　　／ / /　 |
'////////////////　　　　 |　　　|＼＿／///,|ﾄ　　　　　　　　　 /　／　∨/／jﾉ
////////////// /　　　　　　 |　　　|　　//////,|　　　　　　 ´ ￣￣｀/／　　 / ∧
///////////////　　　　　　│　　　　///////,|　　＼　　　　=== /　　　／jノ
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/////////////　　　　　　　　l　　　 |{////////|　　　　　＼＿＿_|_／　　///////∧
////////////　　　　　　 /　/　　　　||'///////∧　　　　　　　 |　　　/////////∧＿
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283 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:40:26 ID:OyK7KkQM0

この経験から、渡辺は自分を頼ってくる人達の為に何かが出来ないかと真剣に考えるようになり、
具体的に「誰かの為になることをする」と志すようになった。

　　　＿｡r≦::::::::::::::::::､::::≧s｡:::::::::::::::::::≧s｡＿＿
　　　》:::::｀ヽ:::::::::::::::::::::::＼::::::::,.ヘ:::::::::､::::::::＼￣　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　金の切れ目が縁の切れ目というが、私のような敗北者をも頼ってくれる人がいる。
　　 /::＼::_.ノ＼::::::::::::::､:::: ヽ::ﾚi｝ i!:::::::: ＼:::::::≧s｡
.　 /:::::::::::`ｰｧ‐　ヽ_:::::::::＼:::::::::::ヾ}::::::ヽ ::::＼::､￣｀ヾ、　　　　＿＿＿＿＿＿_　　　ならば、彼らの期待に少しでも応えなければならんな。
　<::::::::::::::.ィ　　／ i! ヽ.:::::::ヽ::::::::::::＼::::::::::::､::≧=‐　　＿｡r≦　　　|////////∧
　　ヽ.r≦ 》　 /ｬﾂﾉ／ﾞ:,｀ヽ:!＼＿＿_ヽ:､7ヾヘ＿r'´　　　　　　　 |////////≧s｡
　　　＼::::}　 i!=* '’　　　　　ﾞ:,/ /　 /　　　》’///　　　　　　　 |///////
　　　　　ﾞ:,:L≪!　　　 _ 　　 / /　 /　　　 ;!///i!　　　　　　　 |//////
　　　　　　:,::::｀ヽ '´　 /,'´　 / /　 /　　　 j!///j!　　　　　　　　　 V////!
　　　　　　ﾞ:,::､:::::＼.　　　 / /　 /　　　 j!///j!　　　　　　　　　 V///!
　　　　　　　｀ヽ:::::::≧s｡/ /　 / 　　　 j!///j! }　　　　　　　　　　 V//!
　　　　　　　　＼:::::::/ /　 /＼　　　 .j!///j!　!　　　　　　　　　　 V ∧
　　　　　　　　　　　｀'/ /　 /》,//!　　 .j!///j!　 i! 　　　　　　　　 V ∧
　　　　　　　　　 / /　 /　》,/∧　 .j!////!　 .}　　　　　　　　　　＼/＼
　　　　　　　　｡r≦ヽ.　/､　》,//＼.j!////i!　　:,　　　　　　　　　　　　　　￣￣
　　　　　　　　 / ー､｀:, ）'　）　》,////i!////i!　　 :, O
　　　　　　　r:〈　＿　i　 /'´　　》,/// i!////i!　　ヽ
.　　　　　ﾉ　＿　ヽ.」 ,:　　i　　㍉.//i!////i!　　　　＼
　　　　　　{　　＿ﾞ:,ﾉ　 i! ､ ‘，　　　｀ヽ!////i!　　　　　　`*s｡
　　　　　　l　　｀ヽ　　　ﾉ//ﾄ､}　　　　　i!////i!　　　　　　　　　 ≧s｡　＿＿＿
　　　　　 i!　　　 }　.／ ` ､/∧　　O　 i!////i!　　　　　　　　　　　　　　j!
　　　　　 i!　　　 rf´　　　￣ :,　　　　}////i!　　　　　　　　　　　　 j!　　／
　　　　　 i!　　　 λ　　　　　 :, 　　 !////i!　　　　　　　　　　　 j!　／

284 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:40:37 ID:OyK7KkQM0
そして、村の名士であり、知識人であったことから渡辺は宇部達聰会の委員となり、再び炭坑へと携わることになる。

　　　　　　　　　　　　,､_,,,､_r-､_,､_
　　　　　　　 _,､-'`~＾:::::::::::::::::::::::::::~'`-,_
　　　　　_,r'"::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::"'v、
　　　 j''゛:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`i
　　 f’::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｝
　,.-ｆ~::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::∫　　　　　　　　　　　　渡辺さん、あなたに宇部の炭坑を任せたい。
´　i!::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;r－-::_:::::;:､::::::::::::::::::::::ﾘ
　｛:::::::::::::::::::::::::::::::::::::r’　　　　i~　ヽ::::::::::::::::::;j
　{::::::::::::::::::::::::::::::::::::/　 `,ﾆ,=_､! ,_=,1:::::::::::::;ｒ″
　 '!::::::::::::::::::::::::::::::::i!　ｰ´二　　ヽﾆヽ::::::;i''”　 ,.､__,r‐-､
　　ﾞ';:::::::::::::::::::_,-ﾍ:i! 　　　し､_,ﾑ　Ｖ″ 　 jﾉ~~~~ヽ
ヽ、　ゞ;:::::::::::l´..:..:.l“ 　　　ﾚ',ﾆ,ﾆ,｝　ヽ __,-､／⌒ヽ､
　｀丶､ゞ;::::::{..:..:..:..|　　　　　ﾄﾐ二￣）　 }└ｙ'＿,.='=‐､
　　　　｀`'┴-､..:|　　　　ﾉ　　｀ﾌ}　ﾊ /　　　-‐｀ﾆ=┐
　　　　　　　｀ヽ､＿'´　　ー'ノ‐く　ll! 　　　 ´
｀＞―--　.._　　　　　＞､｀`ー‐く､}!　 lヽ| 　　　　 r=
´　　　　　　｀¨－ .._ |〔　〕ト､.:.:.:.:｀ﾞ|.:.:.:|｜　　　　 !_
　　　　　　　　　　　　｀ヽ＜l〔〕ﾄ､.:.:.|.:.:.;Ｌ|　　　　　 /
　　　　　　　　　　　　　　｀ヽ＜r=ヽ|.:/｛.:| 　　　 /

　　　　　　　　　　　 ,. -‐=＝==－‐-
　　　　　　　　／´￣/::::::∧:::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ
　　　　　　　 /:::::::::::::::::::::/　}:::::::::::::::::::::::::::::::::／}
　　　　　 /::::::::::::::::::::r'.　└――┳丶__／　/::|
　　　　　　{::::::::::::::::::::::{ 　　　　 ┃　　　　/:::::|　　　　　私でいいならば喜んで。
　　　　　　|::::::::::::::::::::::{ 　　　 ┗┃┛　　｛:::::::|
　　　　　　 |::::::::::::::::::::::{＿＿＿　 ━ .＿＿＼:::!
　　　　　　 |::::::::::::::::::::从 {::::::ﾂﾘ_入　/l:::rｿﾉ／:::|
　　　　　　 |:::::::::::::::::::::ヾ´￣￣　　丕´￣￣/:::::::::!
　　　　　　 |::::::::::::::::::::::{ヽ　r‐‐一'　} ヽ__　 }:::::::::::|
　　　　　　 |::::::::::::::::::::::{i　/　　　　　`　　 ∨:::::::::::|
　　　　　　 |::::::::::::::::::::::{ゝ　　　ー一'　／:::::::::::::::|
　　　　　　 |::::::::::::::::::::::{　＞.　　　／:::::::::::::::::::::|
.　　　　　从从从从从　　　≧= 　ﾒ从从从从ﾘ
　　　　　　　　／ヽ∧　　ヽ　　/|ヽ＼
　　　　　,.ィ升: : : ＼＼　　　　　i }　｝: :｀
　　　／´: :: : : : : : : : ＼＼.　　　　}　｝: : : : :＼

285 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:40:47 ID:OyK7KkQM0

元々宇部の炭坑は当時の領主だった福原氏が所有していたが、明治維新後、役人によって買い占められていた。
その後、福原良通が私財をなげうって宇部の炭坑を取り戻し、民間によってこの炭坑群を効率的に運用しようと
事業計画が進められていった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿II_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿／／/::L
.　　　　　　,l!　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i／／／ﾞ,.ｲ : |::!
　　　　　　艸!　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 __./｀! .l: : || !　 |　:|::!
　l　.|　　._从ﾘ､　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　《 .:_!,ノ./.:／ .|　.:|　:|ii!_
_人 .!l　 |:|幵ト|l!、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 У ,.／ / ＿_!＿|三三|
ﾘ. ::!j:l　 |:|从| j从 .,　　,　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 __ / ..://￣/￣ /:/＞―＜＼
|! . |l l人|:|:Yﾞ| |i :.|_|!、_||___,　　　　　　　　　　　　　　　　 _/／.:／/　 /￣ /.//￣!￣!//∧
:＼:!!:|,!_,|:l,ﾉ.:| |i :,|[|:ﾉ..:||/り、　　　　　　　　　＿＿　　　　　 __/／:.／ _/　 /￣ / :l/―/―:|三三!
::::::∨ lノ!;!;j_,' j|:/!＞!＜'ﾏ_/＿＿＿＿_ 　 /＞= y!≧=― ./..::/..::/./￣　.:/￣ /　 |　./:￣:/￣￣:|
::::::: ∨戈i,ﾉ:| 下 |￣l . ,..イ＞―┬―＜≧仄》_r::!:!戈/≧/..::/..::/./　./￣!￣｀ヾ、_| /|: : :∧三三:|
:::::::::::| rj/..| |　l:| |!_ ,!ぐ＞:! ＞=┼=＜三≧:ｘ!,:| :!:!..:/:!二!三!二!/ .!/　 /￣＞.､:| :| /|: : :|:∧:.三.:|
:::::::::::|_|:| . | |　:'| |!<:.!_ 、,夾≧=┴=≦三り_,/ :∨:∨L!＿!＿!＿!＿!＿/三三/l/:! :! .ﾞ|: : :|:|.∧三 |
:::::::::::|: ＼/::|　::|__,ノ:!>'´　　　　　　　　　｀ヾ、/ . /::..》-､..―┬..r=r= ＜i≧≦:!/| :|￣/＞＜三三!
:::::::::::|一:∧ ＼,ﾄ=y'´　　　　　　　　　　 }　./! : /∧.＼　|;| |;|.l:|=＜:＼_/://| :| ./! |　　|:| ￣ !
:::::::::::|二二:ﾏソ　　　　　　　　　　　　｀ー《∨,:|　./　./￣＼二! :|、__ |　!＼ |_| :|/ l! |　　|:l　／!
:::::::::::|一一: |r=r=r=-　　　 .-==r=r=r=r=r=r=≧廾./　./　 ,.イ　　￣＼./＼: : .＼..,!　|! |　　|:|/　::|
:::::::::::|二二: ト.､!ノ　　　　　　　　　￣｀ヾ,.!..,|　| |》.i/.　/ ._/　　　　　 /! ..:/￣￣ト､.|! |＿.:|:|　　:|
:::::::::/一一: .! |.ﾄ.、　　　　　　　　　　　＼!　!,/./././.:/.:∧_/../　　 / .| . !　　　 L/下! ||　￣￣:!
::::::/二二 ::/!｀ヽj,|i　　　　　　　　　　　　｀ヾ!/././.:/!　!/　|/　　 l＼|..::| 　　　 |　!:j≧≦三三
:::/一一 ::/:/:.　/ﾉ|　　　　　　　　　　　　　　　《/./.:∧＼＼,.＞=r＜__!」_.,l :[] [] []:.l_人!/三三三
/二二..::/:/_,.イ| |ﾉ　　　　　　　　　　　　　　　 ∨.:/!/＼「＞､_.:.:|_|_二二_| ._　_　_ .|:　∧＞――
＿ ,，イ ,〈,，イﾉ´ 　　　　　　　　 i´｀i＿＿_∨ l｀Y´:|￣! ┼┼┼┼ ;| |:| |:| |:| |:　| :||
::|　|, ノ .|.:|＼/　　　　　　　　　　 |　 !――＜下下下 _|Y∨Y>,∧,.ｨﾞ| |:| |:| |:| |_.人:!!
￣　　　＼ ..|＼　　　　　　　　　　｀ ´ 　　　＼:!...:|　,:!:三三:人l|∨| |:| |:| |:| |　＼|＞――

286 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:40:58 ID:OyK7KkQM0

そして、渡辺はそうした炭坑群の一つである沖の山炭鉱の頭取となる。

　　　　　　　　　x≦三三三三｀ヽ
　　　　　　,.ィ升三三三三三三三`ｰ　､
.　　　　爪三三 ,､三三三三三三三三ハ
　　　　/三三モ/ |三三三三三三三三三＼
　　　/三三モ/　ヽ三三三三三三三三三ハ
.　　 /三三三 }　　｝三三三三三三ﾗ／}三三}
. 　 ,'三三三 /　　￣`寸三三三ﾗ／　/三三}
　　i三三三./　　　　　　ﾚ´￣￣　　 ./三三t|
.　爪三三/､　　　　 / / ,　　　　　　{三三モ!　　　　　　前回の失敗もある。今回は慎重に開発を続けよう。
　 {三三ﾚ,′|＼　　　７⊥/　　　　　　f三三モ|
　 |三三/[　八トﾂ､　　　　　＿＿＿{三三三|
　 |三t从t 　　￣　∧／￣＜tﾂ　ノ　ﾘ三三イ|
　 |三ｱ八　r- ――┴ ､　　　￣　　/三三三ﾘ
　 |三三∧　　　　　 ′　＼　　　　∧三三t〃
　 |三三三､　　　‐-　､　　　}　／ /三三从
　 |∧三三ハ　　 `　　　　　イ三三三三/
　ﾉﾙ三三ﾘ　＼　　　,.ィ升三三三三,ノ
　　　}八三{　　　`ｰ　　　/三三三三从
　　ｊハハt　　　　　 /三三三三彡'

だが、この炭坑開発も決して平坦ではなかった。

287 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:41:11 ID:OyK7KkQM0

最初の数年間はちっとも採掘出来ず、赤字を垂れ流す有様であり、閉山を検討されるほどであった。
また、お世辞にも宇部産の石炭は三池炭坑のように質がいいとは言えず、採算に乗るまでには
多くの時間がかかった。

＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / 　ﾄ　　　￣￣￣＼　　　／￣￣￣　　　∧　＼
　｀＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　 / | ∧　　　　　　＼／　　　　　　　　 /　}　　 i
　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　/　 // |　∧ー────‐┬────―‐/ 　 l　　 |
.　　　　＼　　　　　　　　　　　 /　 / 　 |　　}　　　　　　 }|　　　　　　 i　　 |　 ∨
.　　　　　 } 　　　　　　　　／/　　　人　ﾉ　　　　　　 }|　　　　　　　　　　 /　　 }
　　　　　　/ 　　　　　　　／／　　/　　/│ ´　　　　　　ｎ }| ｎ　　　　　　　　ｲ　　／|　　　　私は一度失敗している。二度目の失敗など恐れてたまるか。
　　　　 /|＼　　　　　／／　　　/　　// | 　　　　　　 U_}|_U　　　　 __／　　／ /,|
.　　　 //l//＼＿_______／／　　／/　　/// | /　　　　＼＿＿￣￣＿　-‐=　￣￣{　 //,{
　　　　/　 |////＼______／/ 　／//　　// ＿j/　　　　　　　￣￣￣￣　　　　　／￣ //　|
　　　　　 ////////＼__／　／　//　　// /ﾆﾉ´_,ｨｆ芥うぅｔｩx__　　　　　_ｚｧﾃ芹／　　／　/}
.　　　　 ////////// }＿／　／　　／///}ﾉヽ｢￣＼弋cツ__ノ＼＿,ノ＼乂／　　／　／ /
　　　　/////////// l＼__／　／／　人 l ﾉ}　　 ´￣￣＿＿＿＿___／　　　／　／　 /
.　　　//////////// | 　ヽ__／／　／　ﾊヽ}　　＼＿＿＿＿______／＿＿／　　　__／
..　　///////////// |　　　＼　　／ ___,ノ　＼}　　　/￣￣￣￣ }　　／/　　／　/ {
　／//////////////　　　　｢￣￣l　/／　／＼__/　　　　　　ﾉ　／　/　　／ / /　 |
'////////////////　　　　 |　　　|＼＿／///,|ﾄ　　　　　　　　　 /　／　∨/／jﾉ
////////////// /　　　　　　 |　　　|　　//////,|　　　　　　 ´ ￣￣｀/／　　 / ∧
///////////////　　　　　　│　　　　///////,|　　＼　　　　=== /　　　／jノ
//////////////　　　　　　　　　　　 ////////,|　　　　ヽ　　　　 l{　　／／////∧
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////////////　　　　　　 /　/　　　　||'///////∧　　　　　　　 |　　　/////////∧＿
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288 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:41:25 ID:OyK7KkQM0

かろうじて炭坑の採算が取れるようになっていくも、渡辺の頭には一つの懸念があった。

　　　　　　　　　　　　　＿　　＿
　　　　　　　　　　　　　/:::;;:｀ヽ'::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　 /:::/::::::::::::::::::::::|
　　　　　　　　　　　　 |::::|::::::::::::::::::::::::|　　　　・・・・・・
　　　　　　　　　　　　 |::::|::::::::::::::::::::::::|　　
　　　　　　　　　　　　 |::::|ｌ:::::|::::::ｉ:::::::::|
　　　　　　　　　　　　ﾚﾘ'ﾚVﾚ川ル川
　　　　　　　　　　　　　／:::::::::::::::::::|._
　　　　　　　　　_,. -‐.':´￣￣￣￣￣ :＼
　　　　　　　　 /: : : : : : : : : : : :ヾl lﾌ: : : : ＼
　　　　　　　 ./: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ヽ
　　　　　　　/_＿__: : : : | : : : : : : : : : : : : :|: : : ',
　　　　　　 /::::::::::::＼.: :.| : : : : : : : : : : : : :|__／|
　　　　ヾ「~＼ :::::::＼| : : : : : : : : : : : : :|:::::::::〉
　　　　　　　|ノ　＼::::::::| : : : : : : : : : : : : :ﾄ-イ
　　　　　／　　　＼/_＿＿＿__Ａ＿＿|　｜
　　　　 |　　　　　　 |::::::::::::::::::::::::::::::::| 　　 |

　　　　　　　　　　　　　　　　　　／／　　´￣￣￣｀丶､
　　　　　　　　　　　　　　　 . 　´　　　　　　――-　 _　　＼
　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　､　　‐-　、‐- ､｀ヽ　＼
　　　　　　　　　　　　ｌ　　 ∧ 、　　ヽ　　　. ＼: . .＼　＼__ ＼
　　　　　　　　　　 /　 . _|　ヽ:､: .　 i＼: .　: . .ヽ: : . ヽ‐-＼￣
　　　　　　　　　　　　　{　,　l‐iﾆﾆヽiヽ: : ヽ＞_ｚ: : . ヽ: : .ヽ　　　　　　　　　主上どうしたんですか？
　　　　　　　ヽｚ‐- ､__ 'l: { : i: lk‐ｔ=ﾃﾍ,＼: :ﾔﾃkヽ: : : : ﾄ､: .ヽ
　　　　　　　　ゝ￣｀ヽ｀ヽ!: :ﾄ l　￣,,,,　　{ヽi￣　i:ヽ: : : ヽヽ : ',
　　　　　　　　　＼　 ≧ﾊi､ヽ.　　　＿_　　　 i: |人: : : i ヽ: i
　　　　　　　　　　　`　､_L　　　　　　/ニ`}　　ﾊ l　＼ﾄi.　ヽi
　　　　　　　　　　　　　｀i¨´:i＼　　 {　　ｿ　／「リ
　　　　　　　　　　　　　　ｊ : : i ､＼　｀ﾆ´ ／:lヽi
　　　　　　　　　　　　　 /ｲ i: ﾄヽ　＞ - ´ l从
　　　　　　　　　　　　　　 |/∨￣￣￣￣￣|
　　　　　　　　　　　　　　, ィ L　　　　　　ﾄ､_
　　　　　　　　　　　_ - '´　|　　＼―――‐へ. ｀丶､
　　　　　／￣￣￣　　 - ､|　　　　　　　　　　＼＿_`ー―-､
　　　／　　　　　　　 /￣￣￣｀　　　　´￣　　ヽ.　　　　＼

289 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:41:36 ID:OyK7KkQM0

::::::::::::::::::::::::::!Y∧ヽ'///jヽ!//ハ
::::::::::::::::::::::::ﾊ_ )　小　 i　j!////,　　　
::::::::::::::::::::::::!/}.:: : .山　　　|////i　　　　
::::::::::::::::::::::::!/j.:: : 　　　　 .i!////!　　　
::::::::::::::::::::::::!/i<旡､／fテ>|:!///:|　　　　　　　いや、少し考えてしまったのだよ。今は石炭が取れているが、
::::::::::::::::::::::::!/i∧r7へ.__　/!!// ﾘ　　　　　　いつかこの石炭を掘り尽くしてしまった時のことをな。
:::::::::::::::::::::::::V!Vﾊ｀＿　｀'.:ﾘ///＼　　
::::::::::::::::::::::::::N厶ｲヽｰ´／.::/!/ﾆﾆ/≧=､
≧=-──＜ﾆﾆ/ﾆﾆ!´:､.:./ﾆﾆﾆ./ﾆﾆﾆﾆヽ
　　　　　　　　　|ﾆﾆ∧　./ﾆﾆﾆ/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ　
　　　　　　　　　|ﾆﾆ .∧/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ
ー､　　　　　　　|ﾆﾆﾆ ./ﾆﾆﾆ/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ
-‐=-.　　　　　 |ﾆﾆﾆ/ﾆﾆ ./ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ
ー―j　　　　　 |ﾆﾆ./ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ
ｔ―ﾃ　　　　　 |ﾆ /ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆi

　／,　 |　　ゝ′　　　 rｭ| |rｭ　　　i､　ノ　| !
／／ヽ.!　　　　　　　　Ｌ!| |L!　　　　 |: :　| |
　′ 　 :|　　　　　　 └─┘　　　 {j: : 　N　　　　　　石炭とて無限ではない。我々は豊富ではあるが、限りある石炭を掘って売っている。
　　 .　 |　　＿＿　　　　　　　　　　　V: :　 :|　　　　　それで皆、生活をしているわけだが、もしコレが無くなってしまったらどうなるのだろうな。
　　 : :　:!＜､￢ｔrﾑｰュ､　　 , ィ丕マ,､〉: 　｜
　　 : : . | 　`ー冖^ ´ 　｀¨´ ｀冖≠　ｌ': :　｜
　　 : : : |　　　　　＿___／ﾄ､　　　　　,!: : 　i: !
: : : : : : :|　　, '´￣　　　 l､｀ｰ､　 /: : :　i: |
: : : : : : :ﾄ､ /　　　　　　　/′　　 }./: : : :　|!:|

290 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:41:47 ID:OyK7KkQM0

陽明学を学び、物事に無限など存在しないということを理解していた渡辺は次第に、
好調な炭坑事業にある危険性を見抜いていった。

　　　　　　　　 , ‐ﾄ､―- ､
　　　　 , -――∠-‐ゝ.＼ : :ﾄ-､_
　　　　ゝ‐- ／!| !　　U ヽ/l: ﾄ､: ﾊ:＼
　　　　ｌ＼/,　⊥　　　　｜l　V　＼l
　　　　 N : ﾚ＿､　_ ィ丕ﾃl: ﾍ.　∧　l　　　今の生活は石炭ありきだが、石炭は無限に沸いて出てくるわけではない。
　　　　 l ｌ: 〈ｒｒｔﾀV　￣￣ l: : :∨ :丶l
　　　　 l/: : ｌｒ‐/ ￣￣＼ｊ: : : : : : : :l　　　いつか必ず石炭は掘り尽くしてしまう。
　　　　ｌ:i: : ﾍl　｀＿__　　l: l : : : l: : :l
　　　　ｌ:l: : :l:ﾍ　ゞ-┘　 ! l: : : l:l: : :ヽ
　　　　ｌ:ｌ: : ｌ: : ＼　　　 l l: : l l:l: :l: l l
　　　　ｌ:l: : l:l: : lﾊ> --- ｲ:l: : l:l:l : !: ﾄl
　　　　ｌ:ｌ; : l:l: : l:.ﾊ　　 _ﾉｨl: l:州:从:ﾉｙ‐-､＿
　　　　リﾍﾘヽ/:.iﾉ! ／/　ｊ:/':.:.l':.:.:ｿ/　　　　￣　‥‐-　､_
　　　　　　ﾞlニl:.:.:l／:.:.:.:.:.:ｌ':.:.:.:.:.:.://　　　　　　　　　　　　＼
　　　　_ - ´//ｊ:／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／/　　　　　　　　　　／
　 -‐ ´　　 { { l':.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／　/　　　　　　　　　／

291 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:41:58 ID:OyK7KkQM0

そこで渡辺が考えたのが、炭坑事業を活用した新事業の立ち上げである。

　　　　　　　　　x≦三三三三｀ヽ
　　　　　　,.ィ升三三三三三三三`ｰ　､
.　　　　爪三三 ,､三三三三三三三三ハ
　　　　/三三モ/ |三三三三三三三三三＼
　　　/三三モ/　ヽ三三三三三三三三三ハ
.　　 /三三三 }　　｝三三三三三三ﾗ／}三三}
. 　 ,'三三三 /　　￣`寸三三三ﾗ／　/三三}
　　i三三三./　　　　　　ﾚ´￣￣　　 ./三三t|　　埋蔵量に限りのある石炭を掘り尽くす前に、その富を無限の技術に転換しなければならない。
.　爪三三/､　　　　 / / ,　　　　　　{三三モ!
　 {三三ﾚ,′|＼　　　７⊥/　　　　　　f三三モ|　　石炭はいつか尽きるが、技術は永遠にして不滅だ。
　 |三三/[　八トﾂ､　　　　　＿＿＿{三三三|
　 |三t从t 　　￣　∧／￣＜tﾂ　ノ　ﾘ三三イ|
　 |三ｱ八　r- ――┴ ､　　　￣　　/三三三ﾘ
　 |三三∧　　　　　 ′　＼　　　　∧三三t〃
　 |三三三､　　　‐-　､　　　}　／ /三三从
　 |∧三三ハ　　 `　　　　　イ三三三三/
　ﾉﾙ三三ﾘ　＼　　　,.ィ升三三三三,ノ
　　　}八三{　　　`ｰ　　　/三三三三从
　　ｊハハt　　　　　 /三三三三彡'

292 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:42:08 ID:OyK7KkQM0

そこでまず始めたのが炭坑で使う採掘用機械の製造と、その保守を行う部署を作り、
そして、お世辞にも質が良いとは言えない宇部産の石炭を使ったセメントや硫安の製造である。

　　　　　　　　, -‐─ ' ´￣｀ー '::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.:｀ヽ＿＿
　　　　　　／＜::.::.::.::.::.::.:｀ヽ::.::.::.〃::.::.::.::＿z-‐'∧::.::.::.::｀ヽ
　　　　　/::.::.::.::.:｀'::.:ヽ､::.::.::.:.＼_彡´ -‐ , '.::.::.::/.::.i::.::.::.::.::.::.
　　　　 /::.::.::.|＼.:::ヘ-､_.:｀丶､.::.::.::.::／::.::／::/::.::.:|::.::.::.::.::.::.
.　　　/::.::.::.::.|　ヽ::.::.::.::.::.::.::.::.::.::., '::.::.,イ::.:;:ﾉ　　|::.::.::.::.::.::.
　　/´::.::.::.::.::|　　＼::ー-,::.::.::.::.::.:＿, -‐'´　　　 |::.::.::.::.::.::.
.　 /:.::.::.::.::./:.∧　　　｀ー──､　/　　　　　　　 |::.::∧::.::.:
　/::.::.::.::.::/::.::.::.|　　　　　　　　　| |　　　　　　　　.|::./::.::,'::.::.　　　よし、まずは採掘用の機械の製造とその手入れを我々で行おう。
/::.::.::.::.::.:/::.::.::.:|　　　　　　　 ┃.| |┃　　　　　|::/.::.:/::.::.:.
::.::.::.::.::.:/::.::.::.:/　　　　　　　　､__| |ノ;　＿＿＿,,/::ﾊ.::.ﾊ::.::.::.　　　そして、石炭の灰や周囲にある灰を使ってセメントを作るぞ。
::.::.::.::.::/::.::.::.f´ヽ＿＿＿＿＿｀ー─' ｨ之テ斗 /.:ﾊ.:./::.::.::.::.
／::.::.:/::.:./::.|　ﾍ＼弋忙云了＞､_ノ辷ニニン /|::.:,'::.::.::.::.::.
::.::.::.::/::.::i.::.::.ヽ ∧ ￣｀ｰイ´　　／ヽ､_　　　 / /.l::.,'::.::.::.::.::.:.
::.::.::./::.::.:l::.::.::.::.＼ヽ　　　　_／　 |　　￣｀十､/::.,'::.::.::.::.::.::.
::.::.:,'::.::.::.|::.::.::.::.::.::｀∨　　／　　　　|,　　／/ /::.:/y-､::.::.::.::.
::., '::.::.::.::.|::.::.::.::.::.::.::.:＼_/　　　　 ,===､　ノ　ﾚ／　　 ',::.::.::.::.
,.'::.::.::.::.::.:|::.::.::.ﾊ::.::.l::.i::.:.＼. 　　　{＿_ノ/⌒''Y´ /　　∨::.::.::.::.
::.::.:/::.::.::ﾘ::.::.::i::.Y::.l.::i::.::.:.| ＼　ノヽニ_/l　　　', l.　　∨＝=
.::./.::.::./.::.ﾊ.::.l.::.:l.::.l.::.:r‐{|r─'",　　　〈.i　　＿', f二〈三三二
.:.:i.::.::/.::./::ﾍ.从.:ﾊ:.:._/ i ∧　　ヽ､　,--ヽ_ ー-入＿ﾉニ二二
.::.l.::.:l.::./::.从.::.::.__／〉 ./ ﾍ,　r==､ゝ､￣ﾉ｀ー'"ヽ　　　r-=＝
.:.:l.:从ｲ.::.::.::＞' y-／／／/＞-‐´!　￣ﾍ　＼ _＿ﾍ_／
.:.:ﾊ.::.:_, イ´-＜／_／／／／ | 　,ﾄ-､_　∧／＼_　｀ヽ､
_, - ´,　'"Y´￣ヽ／ヽrー'"｀ヽ_」／　 .l　￣ヽ　　＼　　＼
=' ´_r-'”　 ,-‐'"´ .／／　　　/　　　|　　 ∧ 　　　＼_
＜´　　／　　／／　　　　/　　　　|　　　∧ 　　　　＼

これが後に宇部鉄工所、宇部セメント製造、宇部窒素工業となる。

293 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:42:19 ID:OyK7KkQM0

これらの事業を行いながら、渡辺は教育機関や上水道、港湾等の社会基盤を整備していった。
そして、恵まれない子供達のための慈善事業や、「宇部新川鉄工所」に「私立宇部徒弟学校」を設立し、
職業訓練学校を作り上げていく。

　　　　　　　　　,.ヘく:::::::::::ヽ::／:::─::､ :::::::::::::::,
　　　　　　　 _ /::::::::::ヽ.::::::／:::,ﾍ¨i ::::::ヽ::::::::::::i!
　　　　　　　ﾔ＼:ヘ:::::::｀´::≪::!　㍉:::::::: ﾞ:, :::::::::
　　　　　　　＼ ≧s｡_ r── i!　　!::::::::::::i::::::::::!
　　　　　　　 |:::`i　　i |! i　　　`ｰ　!:::::::::: !::::::::::}　　　　また、これらの事業を通じて宇部村を発展させねばならない。
　　　　　　　 |:::: }　　┷　　　　　　i!::::::::: l:::::::::::i!
　　　　　　　 |::::ﾉ　　､　　/　　　＿!:::::::::::!::::::::: i!　　　　私を頼ってくれた宇部の人たちの為に出来ることをやらねば。
　　　　　　　 | ::`ｰ､.ｪｯ､ノｰｬﾋりﾉ }::::::::: |:::::::::::i!
　　　　　　　 |:::::::ヽ`ﾌ/｀ヽ. ＿　　 ,!::::::::::::::::::::::i!
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294 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:42:29 ID:OyK7KkQM0

こうした地元の名士として活躍しながら、彼はついに国政へと参加。衆議院議員となり、立憲政友会山口支部初代支部長となる。

　　　　　 .　-‐…＝…‐-　.
　　　／　 -‐-=　　　　　＞┐
　　 /.: ／　　　__　｀ヽ　　'´　__　＼
　　 .::　　　 /＼:::｀ヽ＿＿_.:::ｊ/＼ハ　／|＿
　　|:::　 |.:　｜　　　　　L|」　　　 Ⅵ　　　／
　　|:::　 |::::　|　丿　＼　　　　　 |ｌ:l 　　＼　　　私がまさか国会議員とはな。
　　|:: , ┤:: ├――‐=ﾐ､__, ‐‐――ﾘ:l　　￣
　　|::｛　|::::　ト-＜こ>ー'ﾆｰ'こ＞彳:.:ｌ
　　| l ヽ|::::　|　　　 __／　＼　　ﾉ.::l l
　　|:从.:|::::　|＼_／　＿＿'　ヽ彳 .::l l
　　|'　Ⅵ::l::ｘ‐=ミ u {　　ﾉ　　　八::::l l
　八　 Ⅵ:{　＼__ Ｙ￣＿_ . イ:::ノｌ:::l l
　　　　　V^ヽ.＿ノ＼//|＿｀Ｘ. ノイﾉ
　　　　 ∧　　　八 ∨（＿ノ｀ヽ'＼ﾉ
　　　 ∧:::.、　 O-Ｙ/-|-Oiﾄく　＼ヽ

295 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:42:41 ID:OyK7KkQM0

大臣就任も要請されたが、彼は宇部、山口県の代表として国政に参加していたことから、
その要請を断った。

　　　　　　　　　　　 ,. -‐=＝==－‐-
　　　　　　　　／´￣/::::::∧:::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ
　　　　　　　 /:::::::::::::::::::::/　}:::::::::::::::::::::::::::::::::／}
　　　　　 /::::::::::::::::::::r'.　└――┳丶__／　/::|　　　　
　　　　　　{::::::::::::::::::::::{ 　　　　 ┃　　　　/:::::|
　　　　　　|::::::::::::::::::::::{ 　　　 ┗┃┛　　｛:::::::|　　私のような小才に大臣とは非常にありがたいことではあるが、
　　　　　　 |::::::::::::::::::::::{＿＿＿　 ━ .＿＿＼:::!　地方に大事業を抱えているので、残念ながらその要望には応えられません。
　　　　　　 |::::::::::::::::::::从 {::::::ﾂﾘ_入　/l:::rｿﾉ／:::|
　　　　　　 |:::::::::::::::::::::ヾ´￣￣　　丕´￣￣/:::::::::!
　　　　　　 |::::::::::::::::::::::{ヽ　r‐‐一'　} ヽ__　 }:::::::::::|
　　　　　　 |::::::::::::::::::::::{i　/　　　　　`　　 ∨:::::::::::|
　　　　　　 |::::::::::::::::::::::{ゝ　　　ー一'　／:::::::::::::::|
　　　　　　 |::::::::::::::::::::::{　＞.　　　／:::::::::::::::::::::|
.　　　　　从从从从从　　　≧= 　ﾒ从从从从ﾘ
　　　　　　　　／ヽ∧　　ヽ　　/|ヽ＼
　　　　　,.ィ升: : : ＼＼　　　　　i }　｝: :｀ヽ
　　　／´: :: : : : : : : : ＼＼.　　　　}　｝: : : : :＼

296 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:42:51 ID:OyK7KkQM0

そして1921年（大正10年）にて、宇部村は正式に宇部市となる。なお、町制を経ずに市制施行し発足したケースは
非常に希なことである。

　　　　　　　　　＿_／.:;、::::.＼－-―=－.::::::::/ｉ::|
　　　　　　　 .´.:::::::::::/ ∨::::::::＼｀.:::::: ／.:::::/ .l::|
　　　　　ｲ::::::::::::/ 　 ├──┰―――″ l::|
　　　　　　　i:|::::::::::::|　　ノ　　　|┃|　　　　 _ノ:::|
　　　　　　ｌ:|::::::::::::|　　　　　　 |┃| 　　　 l::::::|
　　　　　　 |:|::::::::::::| 　　＿　　 ┻　　　　ヽ::::|　　　もはや村ではない。宇部はついに市になったか。
　　　　　　 |:|::::::::::::| ,ィ<て赱=､　　　,ｨｧzｫ､、〉::|
　　　　　　 |:|::::::::::::|´ヽﾆﾆﾆ -へ._／ゝﾆﾆｲ |ﾞ::::|
　　　　　　 |:|::::::::::::|　　　＿＿／ｉ＼＿_　　|ﾟ::::|
　　　　　　 |:|::::::::::::|、　/　　　　　〉　　　ヽ/.:::::|
　　　　　　 |:|::::::::::::| ヽ′　　､＿＿_　　　/.:::::::|
　　　　　　 |:|::::::::::::|＼　　　　｛　　Ⅴ　　/.:::::::i::|
　　　　　　 |:|::::::::i:::|　丶　　　ヽ__/　　,.::::::::ｉ:::|::!
　　　　　　 Ⅵﾊ:::l:::|＿＿＼　　　　　ｲ:::/ｉ:::|:::|::!
　　　　　｝ﾆⅥ:::|三二≧、 ¨¨¨ ´ト､/ .l:/!/ﾚ
　／ヽ ___　ﾉ‐=ﾆ∨三二ﾆ= ＼　　 |ニ!_ ′
. / -' ﾉ′ }_ヽ＼＼-=ﾆ二三二ﾍ　 /三!|.＼
/　　{| 　 /ｰ'} ＼＼＼=ﾆ二三ﾆ=ヽ/=三!|..... ＼
|　　＼　|　 |... /ヽ､＼＼-=ﾆ三.ﾆ/-=三!|............＼
.＼　　｀ |　 |....|　 |..「ヽ、＼-=ﾆ / =ﾆ三!|................ ＼

297 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:43:01 ID:OyK7KkQM0

そして1934年〈昭和9年〉にて渡辺祐策は永眠。享年７０であった。

　　　　　　　　　　　　　＿　　＿
　　　　　　　　　　　　　/:::;;:｀ヽ'::::::::ヽ
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　　　　　　　　　　　　ﾚﾘ'ﾚVﾚ川ル川
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298 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:43:13 ID:OyK7KkQM0

晩年は病魔に伏せっていたが、松岡洋右や当時の県知事が見舞いに訪れるほどの名士になっていた。

_, . . . . . . . . . . . 　　　　　　　　　　　　 ''';ﾞi　　　　　|　　　　i　　　　ヽ
::::::::::::::::::::::::::::::::::｀::::ｰ::::､　　　　　　　　　 |　　　　 /　　　 | 　　　 |
:::::::,r‐───-::､::_::::::::::::｀::ヽ､　　　　　　|　　　ノ　　　　丿,r‐‐-､　|
:::i'_r‐‐‐‐‐‐‐‐- ､､｀`ヽ::､:::::::::::::ヽ､　　　 |　　　　　　　　／´　　　｀ヽ
::| ､￣￣￣フ´oｰ､､　　｀ヽ ::::::::::ヽ　 |　　　　　　　／　　　　　　　|
::|　ヽ､　　 (　　　冫ヽ;　　　　｀l::::::::::|___|　　　　　　／　　　　　　　|
::|　　　｀`ーゞ､___ノ＿丿　　　　　|:::::::::::::::｀ｰ､_　 r‐-　__　　　　　　　ﾉ
:::|　　　　　　　　　　　　　　　　　 |::::::::::::::::::::::::::::｀ヾ:::::::::::::::｀ヽ､　　　/　　　　　　惜しい方が亡くなられたな。
::::ヽ　　　　　　　　　　　　／　　 / /´￣~',~ 丶､:::::/￣｀ｰ､ _::::｀ヽ/
ヽ::::ヽ､------------‐'′　／ /　　　　',　　　 |,;r‐＝ﾆ､‐- ｀ｰ､_::::ヽ､
　ヽ､　｀ｰ､ _　　　　　　　, r'´ ／　　　　　',　　　ヽｌﾞ~　　|ヽ､　／｀i::::::|
　　　｀ー､ _｀ー──' ´ , r'´　　　　　 ',　　　 |ヽ､_ ノ　 !　/＿_|:::::::l､
　　　　　　　￣￣￣￣￣　　　　　　　;　　　 |､　　￣　　|:::::::::::::::::::::]
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,'　　　 :| ｀ｰ､　　 |─,ノ:;;r‐‐' 　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　 , r‐-　　　　, '　　　　|　　　ヽ　 |, r'´r'´
　　　　　　　　　　　　　 ,r'´　　　　　　　　,r‐‐‐-ヾﾆｰ----‐',r '´
　　　　　　　　　　　　　　|　　　　　　　,r'´　　　　　 |　￣￣ﾌ~
　　　　　　　　　　　　.,.,.,;l､　r───〈　　　　　　|　　　 /
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299 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:43:29 ID:OyK7KkQM0

何より、市葬の際には市内の各会社、工場、商店が敬弔休業となり、会場となった神原公園には2万人を超える市民が集まったとされる。
村を市にした男は、多くの人々に慕われていた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 f,} ｲ　{　 r.､　　　　　　　ハﾟヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾉ　　　ヽﾉ　}　　　　　　 .}　｀´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　 /　　　　　 ‘.　　　.{
＿＿　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_>=ミ､ _ノ　　　　　　　　ヽ_,　ィ
_　　　｀ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _r- ､　　　　／￣￣｀ヽ　　　＿　　　　 __ >イ´:
_>　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヾ'　 {　　　./::::::::::::::::::::/　 __＞:.:.｀ー'￣＜ヽ::::::
ヽ　　　＿⊥　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿_　　＞^＼　/:::::::::::::::::／　ア:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ｧヽ::
　`ーイ／￣｀ヽ　　　r-､　　　　　　　　　　__r､　　　 , ＜:.:.:.:.:ヽ　＼:::::::7::::::::::::::::::/　　/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ハ　ヽ
　　く:::::::::::::::::‘.__　厂Yヒｧ-- ､　とア＼　ヽ___>x　./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.}.　　ヽ/::::::::::::::::::/　　/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:!
ー-､ハ:::::::::::::::::::V:.ヽ／:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ　> ⌒ヽ　　Y　ヽ!ﾊ:.:.:.:.:.:.:.:./　　 _/::::::::::::::::::::ヽ　　Ⅵ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ﾊ
:.:.:.:.:.} /ヽ:::::::::::::::::V/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ::::::::::::}'´¨｀ヽ　ヽﾍ:.:.:.:,､ｲ＞＜::V::::::::::::::::::::く　　ﾊヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/
:.:.:.:./ .}:::::V::::::::::::::::V:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ハ:::::::::/!:.:.:.:.::ﾊ　　>^⌒＞ ´￣￣へ::::::::::::::::::::ヽ　 }::}' ＼:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./V　／
≠^ー'::::::::V:::::::::::::::::V:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.Y仁!＞==ｲ_＞ ´:::::::::ト-､:.:.:.:.:.:.:.:∧::::::::::::::::::::::`＜ﾆヽ　ヽ:.:.:.:.:.:./ｲ　／:::::
:::::::::::::＞::´^ｰ=-::::::::::ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:}:.:.:ﾊ!¨¨¨ヽ　　 {::::::::::::::::/:.:.:/:.:.:.:.:.:.:./:.:}ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::｀￣^ﾞV^'^ヽイ:::::::::::
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＞＜　||:::::::::V　　.}! 　　　　　　, ー､　　　 ∧＿ア´｀!　　　　　　　　 i　　 |:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: i
:::}ﾘ　　|}::::::::::ヽ＿ハ　　　　　　 ./:::::::::::|｀ーイ　 | ヽ　　　／!　　　　　　.ト--ｲ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::{
../　　 .|}ー--イ　〈`ー-～---く::::::::::::::|　　 :|　　|　＼　 /::::::ヽ　　x===く　 ./:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|

300 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:43:39 ID:OyK7KkQM0

その後、渡辺が残した事業は1942年に俵田明によって統合され「宇部興産」として再出発する。

　　　　　　　　　 //l ./l |､　 | ハ　:＼| ＼N ヽﾄ＼ハ
　　　　　　　　　 N ｌ/ ,l｜ヽ　{:/l l : l: .ヽ: .l. l:　ヽへﾊ
.　　　　　　　　　N　　ﾊl:l‐-ﾐ,,彡l l､ﾄ､:　､:l: l: .　ヽ　ﾊ
.　　　　　　　　 l:|へ/l :l:l　　　　'l:l l:l=ヽ: l:　: : .　: l:､: ﾊ　　地域社会に有用な産業を次々に興す。故に、宇部興産だ。
　　　　　　　　　l:l: .　 l: |:l= ､　､,=l|ｨl|乏l: l: : l: : :　:l: :ｌ: !|
　　　　　　　　　l:l: :　:ヽト代ｔｿ　　l‐ﾘ￣ヽl､: l: l: . : l: :l: !|
　　　　　　　　 l:l|: . l　:ﾊ:!　　}　　　　　 l: l: l: . : ｌ: ｌ iﾘ
　　　　　　　　 l:ｌl: : l: : l:ﾍ.　 ′　　　　　　l:ハ:l l : l: l |
　　　　　　　　 l:ｌｌ: : l:| :l: :ヘ　ｒ=＝,　　　 l',　l:ｌ:l : l/l/ﾆ}
　　　　　　　　,､ﾘ丶ﾄﾄ: l､:l､＼｀￣　　　／　 l从:｜　 /l` ー――――
.　　　　　　　 { ､＼.`l　ﾍ!`lへl へ __　彡 ´￣　ﾍ:ｌ　 /　､
　　　　　　 l　l　￣￣￣{　　ゝ-‐ ´　　　　 .:::::::ﾘ::::ｌ　　/￣￣￣￣￣
　　　　　　　　l　l,　　　　　ゝ　　　　　　.:::::::::::::::::::-‐ ｌ　 l
　　　　　　　　'l　l,　　　　　ｆ｀＞::､:::::::::::::::::::::-‐　.::::‐ l　　l
　　　　　　　　　　　　　　　【俵田明】
　　　　　　　　　　　【宇部興産初代社長】

301 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:43:51 ID:OyK7KkQM0

炭坑が斜陽化してしまった現代においても、宇部興産は今も宇部市を支える企業として君臨している。
特にセメント事業は三菱と共に「宇部三菱セメント」として国内シェア第二位の地位にある。

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ヾ-=ニ二三_ - =ﾆ二三≧≧≧≧.-=ﾆ二工工工工|王|工工工工工工工工|王|工工工工／
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三ﾐ、;;;;;;;;;;;;;; |.ヾミttttttttttt┼┼┼┼┼┼┼┼┼|王|┼┼┼／／　 ┌───────────
＿＿＼rﾊ.: .:＼ . .|jjjjjjjjjjjjj_jﾐヽ￣ヽ土土土土土土|王|土土／／=　　 .|｀|^lﾐii=-,,,_＿_＿＿＿
＿＿___ミ＼ .:.:.:＼:::::::::::::: ::::｀=ヽﾐヽ,　ヽ=-r-=ェｴｴｴｴii;|￣|￣|￣|￣|￣||￣.|｀|^lﾐii=|工|≧!!三i .i l .|￣|
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　 ..＼::::::＼_|＼.＼.:.:.::＼:::::::::::::::::::::::::ヽミヽ, ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 　　　└=ﾐ|_!!_|土|≧||三|_||| .|二| |
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　　　　￣￣￣￣　＼:.:.:..＼　　　　　　　ヽミヽ, ヽ

302 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:44:01 ID:OyK7KkQM0

宇部興産の特徴の一つとして、宇部地区と伊佐地区に製造拠点が別れていることから、その両者をつなぐ為に
宇部興産が独自に持つ専用道路が存在する。31.94kmに及ぶ、日本一長い]私道として有名である。

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303 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:44:13 ID:OyK7KkQM0

そして今でも、宇部港には大規模な化学工場とそれを支える施設が稼働している。

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304 ：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:44:24 ID:OyK7KkQM0

元々は一寒村に過ぎなった村を、大規模工業地帯とし、今日に至るまでの発展に尽力してきたのは
ある男の「危機感」と「情熱」であった。
今も宇部には、そんな一人の企業家の魂がそこに生きる全ての人たちを見守っていると信じたい。

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【終わり】

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