以下の内容はhttp://blog.livedoor.jp/skmtyj/より取得しました。


提供いただきました

3. 通りすがりの者 2013年02月23日 13:47
携帯で読みづらいので、txt化してみました。青空文庫形式対応のアプリ・ソフトを使うと縦書きで読めます。

Androidだと、「青空読手」は<>や─を縦に回転してくれないようですが、「縦書きビューワ」なら縦になるみたいです。Windowsだと「smoopy」などのソフトがあります。

http://up2.cache.kouploader.jp/koups3961.txt
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org3979406.txt.html
http://thuploader.orz.hm/miniup/upload.php?id=07871
http://www1.axfc.net/uploader/so/2804582.txt


9. @ozero 2013年02月23日 15:09
SigilでEPUB化してみました。
台詞・状況・モノローグ・セパレータに分けてマークアップしたけども、台本のマークアップって概ねこんなもんでいいのか見当がつかない。誰か続きplz

[Script][Kenji Eno][Yuji Sakamoto]Kaze_no_Regret.epub
https://www.sugarsync.com/pf/D680131_62985008_664325 


14. mikamix 2013年02月24日 16:36
kindle化しました。
ちょっとマークアップしただけですが、お使い下さい。

https://docs.google.com/file/d/0B6YL_ElH88_8MHZfWFZfN0o2Wkk/edit?usp=sharing

 

説明

脚本家の坂元裕二と申します。
飯野賢治さんと一緒に作ったゲームの脚本をここにアップします。
1996年、飯野さんと共に壱岐島や尾道に旅行することを経て、
書いたものです。
飯野さんは26歳で、僕は29歳でした。
飯野さんのブログにその当時のことが書かれています。
http://blog.neoteny.com/eno/archives/2008_03_post_328.html

HTMLファイルで一括してアップしました。
こちらでダウンロード出来ます。
http://u6.getuploader.com/kohta/download/645/realsound.html

予備
http://u6.getuploader.com/kohta/download/646/realsound.html

これで最終更新となり、放置しておきます。
転載される場合は飯野賢治企画監督作品として明記していただければと思います。

幾つかいただいたコメントは作業中にうっかり消してしまいました。
ごめんなさい。読みました。ありがとうございました。

風のリグレット⑮

              ○

     

           扉を開ける。

           博司が自分の部屋に帰ってきた。

           外を走る電車の音が聞こえており、窓を閉める。

           冷蔵庫を開け、缶ビールを出して、飲む。

           何となくTVを点ける。

           お笑い番組をやっており、笑い声が聞こえる。

           すぐに消す。

           泉水の言葉を思い出す。

     泉水の声「わたし、あなたに電話なんかしてない。どうしてわた

         しの声じゃないって気付かなかったの?」

     博司(M)「毎日のように僕に声をかけてくれた留守番電話は泉

         水からのものではなかった。だったら、あれは一体、誰

         からの電話だったんだ?」

           博司、留守番電話の再生ボタンを押す。

     留守電の声「伝言、十二件です」

           再生がはじまる。

     女の声「もしもし、野々村くん? もしもし、いませんか? 留

         守ですか? ええっと、泉水です。また電話します」

     博司(M)「菜々──。今度こそすぐにわかった。これは菜々の

         声だ。何のためにこんなことを──?」

           番号を押し、伝言を飛ばす。

     菜々の声「もしもし、野々村くん? 泉水です。今日も留守みた

         いね。ええっと、あの──きっと心配してるよね。ごめ

         んね。今はまだ上手く話せないの。とりあえずわたしは

         元気にしてます──また電話するね」

           番号を押し、伝言を飛ばす。

     菜々の声「もしもし、野々村くん。泉水です。元気ですか? わ

         たしは、野々村くんに会えなくて寂しいけど、でも元気

         です。今日、あの日のことを思い出しました。いつか一

         緒に台風を見に行った日のことです。またあの台風が来

         ます。もう一度あの場所で会えたら──。野々村くん、

         わたしは今でもあなたのことが好きです。信じてくださ

         い。また電話します」

     留守電の声「伝言、以上です」

           短い発信音と共に、留守電が切れる。

     博司(M)「どうして気が付かなかったんだ、どうして気付いて

         あげられなかったんだ。菜々は自分の思いを話していた

         んじゃないか──」

           部屋を出て行く博司。

           扉が閉まる。

     博司(M)「あてもなく、僕は菜々を探しに街に出た」

           誰もいなくなった部屋で、電話が鳴りだす。

           留守電に切り替わる。

     留守電の声「もしもしただいま外出しております。御用の方は発

         信音のあとメッセージをお願いします」

           発信音が鳴り、

     菜々の声「もしもし、野々村くん──菜々です」

     

              ○

     

           夜の街。

           繁華街の喧騒の中を歩く博司。

           不安げに救急車が走っている。

     博司(M)「思えば、僕は彼女の住所も電話番号も聞いてなかっ

         た。もう二度と彼女には会えないんだろうか」

           時計の音が鳴りはじめる。

     博司(M)「もしも、もう一度あの時からやり直せるのなら、も

         しも、あの夏に帰れるのなら──。会いたい。菜々、君

         に会いたい」

           時計の音が止み、放課後のベルが鳴る。

     

              ○

     

           帰り道の、少年(幼い頃の博司)。

           誰かが走って来る。

     少 女「野々村くん──!」

     少 年「え?」

           息を切らし、追いかけて来た少女(幼い頃の菜々)。

     少 女「ふう、追いついた。ねえ、帰り道こっち?」

     少 年「う、うん」

     少 女「わたしもこっちなの。一緒に帰らない?」

     少 年「おまえ、誰だよ?」

     少 女「今日転校してきたの」

     少 年「転校生? ああ」

     少 女「役場の人が仲良くしてねって言ったら、野々村くん、う

         んって言ったでしょ?」

     少 年「言ったよ」

     少 女「一緒に帰ろ? いいでしょ?」

     少 年「いいけど──あんまりくっつくなよ」

     少 女「どうして?」

     少 年「なんか、女くせえ」

     少 女「当たり前でしょ、女なんだから」

     少 年「おまえ、親は? 今日、転校してきたんだったらお母さ

         ん来てるだろ、一緒に帰れよ」

     少 女「お母さん、いないの」

     少 年「お父さんは?」

     少 女「いないの」

     少 年「出掛けちゃったの?」

     少 女「ううん、ずうっといないの」

     少 年「ずうっといないって?」

     少 女「わたし、生まれてすぐよそに預けられちゃったから」

     少 年「え──」

     少 女「野々村くん、転校したことある?」

     少 年「ううん」

     少 女「今までね、色んなとこ行ったのよ。だから転校するの慣

         れてて一人でも来れるのよ」

     少 年「ふーん」

     少 女「今はね、おじいちゃんとこにいるの」

     少 年「ふーん」

     少 女「ねえ、いい物見せてあげようか?」

     少 年「何?」

     少 女「あのね──」

           鳥の鳴き声。

     少 年「鳥?」

     少 女「うん、ツグミ」

     少 年「何でそんなのポケットに入れてんの? 学校に動物なん

         か連れて来たら、先生に怒られるぞ」

     少 女「怒られるかな? でも、これね、わたしの星座なの」

     少 年「星座?」

     少 女「そう、星座」

     少 年「星座って?」

     少 女「あのね──(と、笑ってしまう)」

     少 年「何笑ってんの?」

     少 女「だって──あのね、わたしの本当のお母さんって、すご

         く、おっちょこちょいだったの。だってね、何でかって

         言うとね、わたしには誕生日が無いの」

     少 年「え──」

     少 女「なんかね、施設にわたしを置いてっちゃう時にね、施設

         の人に誕生日教えるの忘れてっちゃったんだって。おっ

         ちょこちょいでしょ?(と、笑う)」

     少 年「う、うん──」

     少 女「だからね、わたしの誕生日ってね、施設のおばさんが適

         当に作ってくれたんだって。でもさでもさ、そういうの

         嫌じゃない? 本物の誕生日じゃないし。だからね、思

         い切って誕生日は無いことにしたの、わたし」

     少 年「ふーん」

     少 女「だけどほら、学校のみんなとかって、星占いとかするで

         しょ? 自分の星にお祈りしたりとか。そういう時、星

         座が無いと不便なのよね。だから」

     少 年「そ、そっか──」

     少 女「野々村くんもさ、この子にお願いすれば、何かいいこと

         あるかもよ?」

     少 年「いいよ、それは君のだし」

     少 女「うん。でもね、今日先生に言われたの、明日から学校に

         動物持って来ちゃいけないって──どうしよう──」

     少 年「──」

     少 女「しょうがないか──」

     少 年「──チュンチュン」

     少 女「え?」

     少 年「チュンチュン、チュンチュン」

     少 女「どしたの?」

     少 年「明日から、学校にいる間だけ、俺がそいつの代わりして

         やるよ、俺がおまえの星座になるよ」

     少 女「野々村くん──」

     少 年「チュンチュン、チュンチュン、チュンチュン──」

     少 女「でも、それじゃ雀よ?」

     少 年「そっか、じゃあ──ピヨピヨ、ピヨピヨ」

     少 女「それじゃ、ひよこみたい」

     少 年「そっか──今日帰って研究しとくよ」

     少 女「うん、ありがとう。優しいんだね、野々村くん」

     少 年「う、うるせえ」

     少 女「良かったあ、野々村くんに出会えて」

     少 年「──あ、じゃあわたしんち、ここだから。じゃあね」

     少 年「あ、おい」

     少 女「うん?」

     少 年「名前何ての?」

     少 女「この鳥、まだ名前無いの」

     少 年「鳥じゃなくて──」

     少 女「どんな名前がいいと思う?」

     少 年「名前──名前、か──ライカってのは?」

     少 女「ライカ?」

     少 年「ライカ犬って言って、昔、はじめて宇宙に行った犬の名

         前なんだ。人間が行く前に試しでロケットに乗せられて

         さ」

     少 女「ふーん」

     少 年「ごはんも水も燃料もみんな、行きの分だけしか無いのに

         宇宙に行ってさ、帰って来なかったんだ」

     少 女「じゃあライカは宇宙に行って星になったのね? この子

         にぴったり。うん、今日からこの子のこと、ライカって

         呼ぶね。ありがとう」

           行こうとする菜々。

     少 年「あ、名前──!」

     少 女「だから、ライカ」

     少 年「じゃなくてさ──君の」

     少 女「わたし? わたしは菜々」

     少 年「菜々」

     少 女「そう、高村菜々。おぼえてくれた?」

     少 年「うん、高村菜々」

     少 女「忘れないでね」

           現実に戻るように、列車のベルが鳴る。

     

              ○

     

           地下鉄のホーム、電車を待っている乗客たち。

           駅のアナウンスが流れている。

           博司が来る。

     博司(M)「人が昔を思い出して、ついつい笑顔になるのはどう

         してだろう。笑顔になって、いつか涙がひとつ落ちるの

         はどうしてだろう」

           かすかに鳥が鳴いている。

           通りすぎていく博司。

     

              ○

     

           軽快な音楽が流れる中、コンビニで買い物をしてい

           る博司。

           バイトの青年がレジを打っている。

     青 年「七百六十二円になります」

     博 司「──」

     青 年「お客さん?」

     博 司「はい?」

     青 年「七百六十二円になります」

           金を出す博司。

     博司(M)「思い出はいつもセピア色で、近づけば遠ざかる逃げ

         水のように、もう二度とこの手には戻ってこない」

           店を出て行く博司。

     青 年「いらっしゃいませ」

           鳥が鳴いている。

     

              ○

     

           通りを歩いている博司。

           傍らの車道を車が行き来している。

     博司(M)「ただ、ひとつ確かなことは、この世界には、かけが

         えのないものがあるということ。とりかえしのつかない

         ことがあるということ」

           鳥が鳴いている。

           通りすぎていく博司。

     

              ○

     

     博司(M)「果たせなかった約束が引き出しの中に、郵便受けの

         中に、留守番電話の中に、ただ積もっていく。ただ降り

         積もっていく」

           公衆電話のテレカの返却音が鳴っている。

           歩いてくる博司。

           立ち止まり、電話ボックスの扉を開け、中に入って

           行く。

           受話器を取り、かける。

           呼び出し音が鳴り、博司の留守電が出る。

     留守電の声「もしもしただいま外出しております。御用の方は発

         信音のあとでメッセージをお願いします」

           留守電の発信音が鳴る。

     留守電の声「伝言、一件です」

     菜々の声「もしもし野々村くん──菜々です」

     博 司「菜々──」

     菜々の声「おかえりなさい。まだ家に帰って来てないのかな。わ

         たしはさっき戻ってきたところです。野々村くん? 今

         どうしてますか?」

     博 司「君の留守電聞いてるよ」

           以下、留守電の菜々の言葉に合わせ、話す博司。

     菜々の声「何となく話がしたくて、電話しました。でも留守じゃ

         しょうがないね」

     博 司「馬鹿、もっと早く電話しろよ」

     菜々の声「別に何が話したいってわけじゃないけど──ただ、な

         んかさ──なんかね。なんか、なんかね──なんかさ、

         話したいなって」

     博 司「なんかな」

     菜々の声「野々村くんってさ、歯磨き粉何使ってるのかな?」

     博 司「そんなことか」

     菜々の声「この間安売りでホワイト&ホワイト買い過ぎてさ、あ

         あいうのって腐るのかな?」

     博 司「知るかよ、そんなこと」

     菜々の声「夜、何食べた?」

     博 司「これからコンビニの弁当だよ」

     菜々の声「風邪ひいてない?」

     博 司「大丈夫」

     菜々の声「卵酒飲んだ方がいいよ」

     博 司「だから、ひいてないって」

     菜々の声「食べ物、何が好き?」

     博 司「オムライス」

     菜々の声「どうせオムライスとかだろうな」

     博 司「(ぷっと吹き出す)」

     菜々の声「それじゃあ──」

     博 司「おい、待てよ」

     菜々の声「あ、そうそう、ひとつ大ニュースがあります」

     博 司「何何?」

     菜々の声「ライカが見つかりました。あのあと、ふらふらお散歩

         してたら、見つけたんです」

     博 司「良かったな」

     菜々の声「実を言うと、ちょっとした大冒険があったんですよ。

         屋根の上に登ったりとか、散髪屋さんに虫取り網を借り

         たりとか」

     博 司「(笑う)」

     菜々の声「でも今は無事にわたしのポケットの中で眠ってます」

     博 司「そうか──」

     菜々の声「けど、またいつかどっか行ってしまうかもしれない」

     博 司「大丈夫だよ」

     菜々の声「その時は──ねえ、野々村くん、覚えてる? 忘れて

         るだろうな。はじめて会った時のこと」

     博 司「思い出したよ」

     菜々の声「もし、もしもさ、この鳥がいなくなってしまったら、

         そしたら野々村くん、またあの時のように──」

     博 司「ああ」

     菜々の声「わたしの星になってよ」

     博 司「ああ、なるよ」

     菜々の声「なんてね、嘘よ」

     博 司「なるってば」

     菜々の声「けど、もしそうなったら、わたしね、すごくわがまま

         言うと思うんだ」

     博 司「言っていいよ」

     菜々の声「遅刻したら許さないし」

     博 司「しない」

     菜々の声「待ち合わせ場所にはわたしより、十分早く来て欲しい

         し」

     博 司「ああ、これから先、十分ずつ遅刻した十年を返すよ、だ

         から──」

     菜々の声「あとね、夜中に寂しい時は電話してくれる?」

     博 司「飛んでいく」

     菜々の声「毎日ちゃんと好きだって言って欲しいな」

     博 司「──好きだ」

     菜々の声「名前付けて言って欲しいな」

     博 司「好きだ、菜々」

     菜々の声「そんなこと言えるわけないよね」

     博 司「言えるよ」

           ふいにテレカ切れの発信音が鳴る。

     博 司「あ──」

     菜々の声「いつか、そう、また十年して、会えるといいね」

     博 司「十年なんて言うなよ、今会いたいんだ」

     菜々の声「それでもときどきは、電話とか」

     博 司「電話じゃなくても」

     菜々の声「手紙とか」

     博 司「手紙じゃなくても」

     菜々の声「わたしのこと」

     博 司「呼び続けるよ、君の名前を呼びつづけるよ」

     菜々の声「わたしね、あのね、野々村くん、君に会えて、よかっ

         たって思う」

     博 司「ああ、君に会えてよかった」

     菜々の声「好きよ」

     博 司「菜々」

     菜々の声「好きです」

     博 司「菜々」

     菜々の声「野々村くん、好きよ」

     博 司「菜々──!」

           ぷつんと切れる電話。

           切れた受話器からプープーとだけ鳴っている。

     博 司「──俺も──菜々、俺も君のことが好きだ」

           間。

           受話器を置く。

           かすかに鳥の鳴き声が、聞こえる。

           だんだん近づいてくる。

           博司、扉を開けて、出て行く。

           ひとりつぶやく。

     博 司「また会えるよな──」

           鳥の鳴き声が大きくなる。

           主題歌が入る。

           余韻を残しながらも、放課後の校庭ではしゃぎ回る

           子供たちの声が聞こえる。

     博司(M)「僕らは歩いていく。すべては長い長いひとつの時の

         流れの中にあって、どんなことも引き返すことなく、た

         だ前へ前へと進んで行く。僕らは歩いていく。過去と未

         来を繋ぐ線路に耳をあてながら旅を続ける」

     

     

                            END




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