November 19, 2016 東京新聞「意識の『段差』なくなれば…」 東京新聞 2016年10月25日(火) 障害者は四つ葉のクローバー 意識の「段差」なくなれば・・・ 好きな人や友だちと、ショッピングもしたいし、カフェでお茶もしたい!でもおしゃれなお店ほど、段差があったり、狭かったりと、車椅子では楽しめないことがよくあるのです。仕方がないので、普段はバリアフリーの整った比較的新しいお店やショッピングセンターを選びがちです。 先日、東京・表参道にある大きな商業施設を訪れました。日本有数のショッピングスポットですが、私の行きたい店舗は地下二階にあり、階段でしか行けません。警備の方が、私の車椅子を持って下さると言ってくださいましたが、電動車椅子は重さ80kg、私を含め100kgを越えてしまいます。そんな重いものを、狭い階段で運んでもらうことは、危険を伴います。、泣く泣く入店を諦めました。 誰もが楽しめるはずの大型施設、そしてわずか10年前にできたお店ですら、車椅子ユーザーが行けないなんて。きっとベビーカーをはじめ、階段を使うのが難しい人も、入店を諦めているのでしょう。後日、メールを送り、車椅子でも入れる場所に店舗の移動をお願いしましたが、難しいとの回答をもらいました。残念でたまりません。 東京メトロ霞ヶ関駅も10年前まで、エレベーターでホームから地上に行くことができず、車椅子ユーザーは隣の国会議事堂前駅を使うよう駅員から勧められました。日本の中心ともいえる霞ヶ関もこのような状況だったので、車椅子の人に我慢を強いることが当たり前の社会といえるでしょう。 障害のせいでできないことがあるのではなく、設備が整っていないがゆえに、自分の障害を実感する毎日です。もちろん車椅子でも、普通の人とは違う、時間のかかるルートや、危険を伴う方法なら、できることはあります。でも駅の利用やショッピングで、そんなめんどくささや、危ない思いをしたくはありません。 また、助けてもらいたい時に、周りに人がいるとは限りません。自ら助けを呼ぶことに、疲れることもあります。「どうしましたか?」「手伝いましょうか?」と声をかけてもらえると、ありがたいです。そして健常者が階段を使うときに「車椅子の人はどうするんだろう」と普段から考えてくれたら、私はもっと生活しやすくなるでしょう。 脳性まひで車椅子ユーザーの医師、熊谷晋一郎さんは、「障害者の自立のためには依存先を増やすことだ大切だ」と言っています。例えば東日本大震災のとき、一般の人は階段やはしご、ロープなど、いろいろな手段を頼って避難できましたが、エレベーターしか使えない車椅子ユーザーは取り残されてしまいました。 熊谷さんは、頼るものが少ない障害者も、頼るものがあればあるほど自立につながると言います。言い換えると「自分は自立している」と思っている人ほど、使える手段が多く、いろいろなものに依存しているのかもしれません。 一人一人の気づき、思いやりが、誰かの生きづらさを解消していきます。車椅子ユーザーをはじめ、困難を抱える人に、たくさんの選択肢があり、いろいろな人や物に頼って、依存できる社会をつくっていきたいです。 写真;雨の日でも車椅子で、傘をさして娘とお出かけ