■2020/05/24(日) 世界の終わりの短編祭 Side-B-13 一月から八月まで |
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![]() 短編まとめ 18禁短編まとめ やる夫ショートストーリーセレクション 381 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 22:49:32 ID:c970524c ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ° _,,--⌒^``:、 ο ,r''" ` ‐-、 _,,._ ,,r''"~⌒^`:、 _,,..-‐''" ^`: `、 __,, --‐'' ⌒^~' ` ‐- --‐'''""`⌒^.、..,,__ __ ,... .-‐`‐ -‐‐''''"" ,i'⌒ヽ シ ''':‐-,‐‐''' ⌒^~ ,( )ο // ο ° ""'⌒-- ,, , ;; ,,, ,,,;; \ | ゛-、 /./ -- \`ー' \// ο ° ο `\ ",ノ o | /゚ ,i'⌒ヽ、 ο ° ゙、\_ノ i o ( ) ° ` 、゙ ノ /`;;;;;_ノ ο \ i,//´ i / i | r ° i |ノ /ο i ο i | ー.^ノ、.......,iー.⌒^~⌒^~⌒^~⌒^~⌒^~⌒^~⌒^~⌒^~⌒^~⌒^~⌒^~⌒^~⌒^~⌒^~⌒^~⌒⊿ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 一月。 いちいちどこでも誰でも、 「あけましておめでとうございます」 「あけましておめでとうございます」 などと、あいさつを、したりされたり、またしたり。 そんな頃です。 382 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 22:50:03 ID:c970524c 今は、お母さんとその娘さんが、 二人で暮らす、とあるおうちでも、 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ . __ ==、-_、_ _ /:::::::::::::::ーフ__}ニ、::::\ /: >、:::::::_:,r/: : , : ヽヽ、:{ _ _, /.ィ、::::::∨/: : ィ:/|ヽ l: \ソ:>. ___,> Y´'ー-、 ,': :\\//_ 孑/ ! |、!: : ヾ.,イ ._>z二_ ___`ー≧__ !:l |:l:  ̄|/´//' ! l卞: : ハ: :l >┴'´ ̄` ‐-、 ̄ 7 < !l:!:l:l: : : l/_, |/ l: :j、!ト| / ヽ `Y′之> . |ハハ:',: : :|ミ≡" ≡=/:!/ |' ハ ./ , l、 、 , 、 | ヽ } < ヽl ト、: !._ ー ノ:::::::/レ l ,ィ { {7Tハノ T寸寸ヾ }ノ | ヘ>ヘ、|ヽヽ┬</,イ:::/ |ハ| l (>) (<) / / ,/レ′ / ヽ ヾj l \|/ .`|l⊃ 、_,、_, ⊂⊃ |ノ'/|/ ,' i ヽ. ,' ! ! /⌒ヽヘ ゝ._) j /⌒i ! l | ∨ ,' l l \ /::::: >,、 __, イァ/ / . ,' l / / ! l /::::::::::::::7Eニ:::{:::ヘ、__∧ l ├ '-、'-、, ┴、| `ヽ<:::::/ /::::::::::::/ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 「あけましておめでとうございます、 今年も一年、よろしくね」 「あけましておめでとうこざいます! ことしもいちねんよろしくね、お母さん!」 などと、朝も早くから、 あいさつをしたりされたり、してました。 383 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 22:50:43 ID:c970524c ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ . _:. __ .: :. , .:'"~` '"` ' ::。 . ''": . : :. `" ::、 ,〝 ,.、 `':, / , .: -‐…= = ….:‐- .: ', ;: -、 ` 〝::, {‘く:。: : lフ: :: : : :∠ ゝ: 。ゝ} .{i。 、 ,,. 。ノ} 八:::::`¨'' ‐-------‐ ''¨´:::::八 ∧`''=‐---------‐=''"´/. ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::〃 \ / \:::::::::::::::::::::::::::::::::/ . \ / i≧=‐---‐=≦i ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ さてさて、あいさつの後は、朝ごはんです。 本当は、おせちをたくさん作ってあげたかったけど。 せちがらい時代のせいか、いつもよりちょっとだけ、 おかずが多いだけ。 ちょこちょこと、箸で端から皿をつついていた娘に、 お母さんは、ちょっと申し訳なさそうに、 「ごめんね」と言いました。 384 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 22:51:16 ID:c970524c 「えっ? どーしてお母さんがごめんなさいするの?」 「だいじょーぶ、お母さんのごはん、 とってもおいしいよ! 今日はいつもより食べられて、うれしい!」 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ / / 从 \ゝ / i |:::: ヽ ゝ, ヽ . ′ ' ハ ヾ::: |\ ハ | ヾ;. |::::: ヽ | | | │. / \. ヾ | ! / !. ! | i::: :ト.:::: ∨ | | │ハ.| _ _、 | ,.x }/─ トl . / i::::/:::∨ヽ::::::: / |ハ V. イ´ `ミ、.l ,x=≠ミ.z// ,/ V::::::::::: ::::(::::::!| l! ゝ. l,x=ミ、 ` イ/ / ) |:::::::::::::::::::\ | . 7∨ ,: / j.イr '_ノ::::::::::::::: ハ::::ノゝ . ハ. , rイ:::::::::::::::::::::/ ゝ ` ´ .イハi!:::::::::::::: // ` .. __ --――-、 / ̄ ̄ ̄`¬ー- ̄_ ____ヽ }=‐-___  ̄ー=三三三三ミ、 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ と、娘は笑顔で言いました。 たしかに、いつもよりはちょっぴり多め。 でも、いつものご飯がちょっぴりだから、 やっぱりちょっぴりです。 お母さんがまだ子どもだった頃と比べると、 本当にちょっぴりでした。 385 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 22:51:58 ID:c970524c ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ,-ー、ーv-ー 、 / ̄,ー,-ー‐ヽ、 ` 、、 / /彡/.|: :. :. :.\ミヽ、 > ヽ 7‐'フ/ /./ト: :、: :. : ヽ`、ヽ、 /ヽ: :. :ヽ ゝ、//: : :/j |、: :ト、: :. : V`、ヽ' \: : .ヽ /\/: :__/|/ lヽヽ--.、: :V、丶 __ゝ: : .} /: :/: : :/:/_ノ ヽ.ヽ| \`ヽV L==-‐ー: :. : | : : |.イ: : :/=ミ ン=ミ、: V / :/: :. :/: :. :. :.| ,: :|.ハ: : /ィiうヽ ' i、 j`ヽV :./: :. :/|: :. :. : } : |:レ | :∧'.ト::セ |::ii:::::リヽ/: :. :/-|: : /: :j /|: : ヘ | :}弋:リ 弋ヒ::シ :/: :. :./^ ) :イ: / | :∧v: :{ ^` _ `‐'//: :. :./_ィ': :./|:./ |: :ハ: : ヽ、 ー " //j: :. /:. :ィ: :/ レ ∨ ヽ: :| `.i 、___/=/: :んィ/|/ .、 :| リヘ|>‐ー<_.// }レ ∨ ソ レ  ̄`' / 、 ヽ / ヽ / ヽ / .Y } / ヘ ヘ / ヘ ヽ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ お母さんは、顔で笑って、 心はちょっぴり泣きながら、思いました。 できれば、来年の今ごろは、 おなかいっぱい、食べられるといいね。 できれば、ぜったいに、お父さんと、三人でね。 386 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 22:52:29 ID:c970524c ● ● ● ● ● 387 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 22:53:05 ID:c970524c ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ o ο 。 ゚ ° O O 。 ◯ o °。 o o ゚ ゜。 ◯ 。 ゚ ° 。°。 O °。 o ο 。 ° o ο O 。° 。 ゜ ゚゜ o o ゜ O 。 ◯ ゚° ゜ o ο O o ゚ 。 O ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 二月。 にがい思い出は、去年に捨てて。 ニコニコ笑いながら、歩きはじめたり。 そんな頃です。 388 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 22:53:48 ID:c970524c 「オニはーそと~!」 「ふくはーうち~!」 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ _ _, ___,> Y´'ー-、 _>z二_ ___`ー≧__ >┴'´ ̄` ‐-、 ̄ 7 < / ヽ `Y′之> . / , l、 、 , 、 | ヽ }< l ,ィ {7Tハ T寸寸 | }ノヘ )) (( ,ヘ, |(○) (○) / / ,/ / '、 `|'''' r-‐‐┐''''.「)'/|/ / \ヽ、ヽ、__,ノ _,.ィT/=/ < l 7Eニ::ィ1 〉 ゝ'イ/ヽ::::` 、 / i´ ̄ `ヽ::| j| < / ヽ \ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 今日は節分、豆をまずは食べずにまく日です。 昨日は節約、明日も節約。 でも今日はちゃんと、歳の数ぐらいは、 まける豆を用意できました。 お母さん、なんとか負けませんでした。やったね。
389 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 22:54:23 ID:c970524c 豆をまいた後は、もったいないので、 ひとつひとつぶ、マメに拾って、洗います。 その後は、二人でお豆をちびちびと。 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ / 7 /´ ̄`` / i ∨ / .7 // / / / イ }-ト、 i // ,i 7 }/ | / / ./. / / `ヽ、} '´/'| !{ / {7 ./ // / ,′ /\ } // ! .| | ハ、_// / / / / ./ ヽ/ ク / .| i{ | z≦ニミ、 ′ / ムイ / / , 〃 . ´ i |V ! 〃 ヾ/ ./ //i //ムイ} /,′ . / |!:∨i / ./´ _,z==ミ_ ' ムイ/ | ./ .∧∨', !////.,/´ ´  ̄`ヾzトz-./ {/ / / i.|i i! /´ Ⅵ/ / / / | |i. ` 、 -= ィ / ーイ. リ∧ ///// // ./ / /. ∧ r- _ ィ / ./ /|. / ∧ V. __`; / / | /||, 仆 |:::::::、 _.ノ  ̄/ /y /! ,' ! i/ .j.| ソ.―-へ ___, -‐=  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ r-―-=ニ三三三≧==-- ――" ________ 1ニ三三三三-=ニ _-=三三三三三三三三 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 「おいしいね、お母さん!」 娘は笑って言いました。 「うん、そうだね。 来年は、もう一粒多く食べれるからね」 本当に、そうなるといいのにね。 お母さんは、心の中で、 そっと、ぎゅっと、願いました。 390 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 22:54:54 ID:c970524c ● ● ● ● ● 391 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 22:55:57 ID:c970524c ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ "ヾ;" ; ヾ ;"ヾ ; ;ヾ ;ヾ;" ";ヾ ;" /ヾ ;ヾ ;ヾ ;ヾ ";; ;ヾ ;ヾ" ;; "" ;ヾ ;";*"ヾ;";ヾ ;ヾ__ ;;"ヾ ;ヾ; " ;ヾヾ "// ;ヾ ";ヾ ; ;ヾ ;ヾ ;ヾ ; ヾ ;"ヾヾ;"ヾ ;ヾ;"ヾ;;"*ヾ;\\ ;"ヾ ヾ ;ヾ ;ヾ ;ヾ ;ヾ ;ヾヾ ";ヾ" * "; * ;ヾ" ; ;;ヾ """ "ヾ *;ヾ *;" ;";ヾ ;ヾ ;ヾ ;ヾ ; ;"ヾ ;ヾ; " ;;ヾ 〃";ヾ ;ヾ" ;ヾ ;ヾ ";;ヾ ;ヾ " *"" "ヾ* ;ヾ ;ヾ;" ;;" ;"ヾ __ ;;" ";ヾ* ;ヾ ;"ヾ *; ;ヾ ;ヾ" ; / "; ;ヾ ; ;ヾ ;" " ;ヾ ;ヾ ;";ヾ ;ヾ* ;" ";ヾ ;" ;ヾ ;ヾ * 〃 ";ヾヾ ;ヾ " " *; ; *; ;ヾ ;ヾ"; "ヾ " * * ;;"ヾ;"〃* ";ヾ ;ヾ ;ヾ ; ;ヾ" ;ヾ" ;ヾ ;ヾ*;ヾ ;" ; ";ヾ* ;ヾ ;;"ヾ ;ヾ;"ヾ; "* ;ヾ ;ヾ;_" ; ;";ヾ *//* ";* ;;"ヾ ; " *ヾ ;ヾ* ヾヾ * ;ヾ ;ヾ* ;ヾ ;ヾ ;";ヾ ;*ヾ;* ./;* ";.* ; ;*ヾ ;ヾ ;" ; ;"";"";* " *" ;*; " "; ;"ヾ ;ヾ *;ヾ;" "ヾ;" "; ; ; ";ヾ ;;ヾ;;";ヾ ;;" ;ヾ;"ヾ ;ヾ;" ヾ ;ヾ;"* ;ヾ;"ヾ;";ヾ ;ヾ* ; / ' " ;ヾ;"ヾ\、j,iiii,i ;";ヾ ; ; //;ヾ;" yi,iiiii;";ヾ ;ヾ/ ,|ii,iiiiiii;;;;;;::::,:| |iiii;.iii.;;;:_ _. :| |iiiiiii;;;;;;((,,,)::| |iiiiiiii;;ii;;;;;;:;::::| |iiiiii;iii;;;;i;;: :::..| |iii;;iiii;.: ;:,;;;::::::| |iMiiii;;;ii:i;;:;i:i;:::| ;;._,,,..._,,,..,..._,,,. ;;;._,,,.ノ/;::;::.l;;;..._,,,.: ;;;|. ;;;._,, ;;.,..._,,..._,,,. ;;;._,,,..._,,,..,..._,,,. ;;;._,,,..._,,,..,..._,,,. ;;;._,,,..._,..,,..._,,,.; ..._,,,. ;;;._,,,..._,,,.., ..._,,,. ;;;._,,,..._,,,.., ..._,,,. ;;;._ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 三月。 さんさんと太陽さんが、山間から光を照らして。 そろそろ、寒さがさらりと減っていく。 そんな頃です。 392 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 22:56:44 ID:c970524c 「ねぇお母さん! お父さんは、いつ帰ってくるのかなぁ?」 娘は無邪気に笑って、お母さんに聞きました。 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ /i ト 、 l. | \_`ヽj ,∠.._ 、-ー'`Y <,___ ,,.-'' '",゙゙^`丶ミ!`丶、 __≦ー`___ _二z<_ , ' / / |:|、 ::| l ヽ > 7  ̄、-‐ ´ ̄`'┴< /:/ .l./l l:! ゙、__ ::!i. ハ < 之 \ /i l /l7 | ゙{ ヽ`:}! .::.l >{/ ヽ ヽ ./,:!:j i{' __ i! z;,_゙'l .;/:j | |/ | | ヽ \ { ヽ ハ! l ,{ ィ''' "゙゙`i! .::/:.:.! | li l l Ⅳ斗lーハ\ |-┼ト | / l :V::i ' i .::/;.イl | Ⅳl l \| /|j i.: :. !¨! ,_ `'′,,ィ ; /:' |! | ヽ.ヽ{ ___ _ ! / !:../二i_/l| ´ノ:!/'" \ \ヽ'く xx xx レ l こj' lj/ _」、 . \ト、`匚__ f 7 ノ ./j /l,j/ / \ _\V \Τ ̄|< /|/ /二',/ , _ | ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 「そうだねぇ、夏か秋ぐらいには、帰って来たら良いねぇ」 お母さんは娘に、顔では笑って、必死に笑顔を作って、 心の中では、心配をぎゅっとにぎって小さくして、答えました。 本当に、娘の言うとおりになったら良いのにね。 お母さんは、ひそかに、強く、思いました。 393 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 22:57:43 ID:c970524c お父さんは、ちょうど一年前の三月に、 赤い紙と一緒に、遠い遠い所へ行きました。 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 、 `:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\ /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\ _/::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\ /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\ /::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾ ヽ /::::/::::::::::::::!、::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\::::::::::::::::::::::::::::::::}::::ヽ /:/!::!:::::::::::| ヽ:::::::::ヽ:::::::::::::ヽ::::::::::::ヽ:::::::::::::::::::::::ヽ::!ヾ:}! 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━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 「そうだねぇ、もうちょっと暖かくなったら、お返事が来るかなぁ。 だからもうちょっとだけ、待ってようね」 お母さんは、いつもそうやって、ごまかして、娘を安心させようとしていました。 本当に、お返事が来ると良いのにね。 お母さんは、心の中でそっと、ぎゅっと、祈りました。 397 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:00:34 ID:c970524c ● ● ● ● ● 398 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:01:05 ID:c970524c ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ,.:,; ' ''.. .,;.'..:⌒`;,: . ..;;., ` 、 ' ,,.;. ; :., .. .''... .. ' ..;,):.,, ‐― ○ - ‐ '' '.': ;,::. . ..., ;) , ' ヽ .''.:.:´⌒`.: .: ... . ...,. . ,; ,. ヾ .''':. .,'''.:;. .:: .'. ,.:,; ...,; '' , ' -'' ' ' ー'' ー ''' '' .:: ..'...:⌒` : .: ..,,;., .: ...:::⌒` '' '.':. .,.; ,.. ( .: .....: ...:.: .: ⌒` .: ..:.: .: ... . .:.:. (., .: ... : . .: . ::: ....::.. : . .: ... .. . ` . :. .;;, .:;. . . .: . ..:: '' ' 'ー ''' '' ―''' '' ‐-'' ;"ヾ; ;"ヾ ;" ;:;:.;:ヾ ノ ;ヾ ;"ヾ ;":;:.;:ヾノ)) " ;"; "ヾ ;" " ;ヾ " ; ヾ ;ヾ ;;;ヾ ";;;ヾ";"" ;ヾ ;ヾ ;";ヾ;" ;ヾ ;ヾ ; r""ヾ ;))ヾ ;":;:.;:ヾ ; ;ヾ ;ヾ ;;: ノ ;"ヾノ:;:.;: ;ヾ r:;:.;:;":;:.;:;ヾ ;ヾ ;"ヾ ;:;:.:;:)) ";ヾ ":(^);r ;ヾ ; ";:""; "; :;:.;: ; " ;;" ヾ((ヾ:;:.;: ;" ;ノヾ" ; ;:(^) ヾ ;";ヾ ;ヾ "〃;ヾ ;ヾ":;:.;: ; ;ヾr ;;" ..,, ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 四月。 幸せが、しわ寄せてくるような。 あるいは、死が忍び寄ってくるような。 そんな頃です。 399 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:02:00 ID:c970524c 「お母さん……ころんだ時に、しょうじ、やぶっちゃった…… ごめんなさい、本当にごめんなさい……」 「ふふっ、そんなこと、気にしなくて良いよ。 後でちゃんと、二人でいっしょにはり直そうね」 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ {`丶 ,. -''} ,ゝ `ヽニ/´ _,ノ /: : >:'':宀:.<、:`:.、 っ / /: :!゛: : j ::ハ:V: .` ヽ っ j . l: ::l.:,-7!:/ V!ト:i: :!. .`、 |: ::!: :j//__レ ,.j!.V:!: |: ト、! |: ::!: :j/示! 示ヤ:}.:.{: :! ゙ _ _, .l: {.l:. :! !zリ lzリ ハ:lハ:.! ___,> Y´'ー-、 ; l:ハ:l:; l、 ┌ァ ,ノ,!::| V _>z二_ ___`ー≧__ ゙ ヾ、!:;コ‐-rァ"!:/ V >┴'´ ̄` ‐-、 ̄ 7 < / ヾ._コ`ヾ / ヽ `Y′之> へ\ `、|//〉、 , l、 、 , 、 | ヽ }< ; / \\`、レ// `、 l ,ィ {7Tハ T寸寸 | }ノ | 丿 . }' ,>ミ}ヒへ{、 ゙i |ハ |(>) (<) / / ,/レ′ ゙!―--v{ __ :ノく` ./=彡 ,/フ、_, .`|゚ .゚。「)'/|/ E三ヨ-' く_j l ヾ'゙ ヒ彡‐'" 、_ク .ヽ、_. Δ _,ィT/! |´ ,.-、_ヲ| l _」 ヽ.__/ .V:丁レ/:/ノ::::::V| ;  ̄//~丁゙!、|/ヘ rヘ,、ノ:/7:「⌒Y::::::: | .// | |` ! ヘ ヽァ'::ヽ{::::::〉¨´:ヽ:/::| // l ! l ヘ \__ノY:::ヽ:_ノ::: | ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ けっして、豊かな暮らしではないけれど。 今日も二人は、なんとなく、とりあえず、幸せでした。 400 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:03:03 ID:c970524c そんな二人の幸せを。 しょうじのように、引きさくように。 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ , -七l / ./ / / / ./ / ./ / / / / _ / / ,/ ==-f´ヽ ̄\、 / , ァ ヽノ七戈 / / ./ || /  ̄ /、 / / ィ^ヽ ̄ ‐-、 / \ / / __ィェそ -廴化匀_}_}_> /_ / / γ´ヽ 冫_ ̄ ̄_,_,_戎勹  ̄ ̄丁丈¬-、 丈ト}) )  ̄ノ ̄ ̄ ̄ノ )__,,,式 ┘ `ー--ァ----------ttー―γ戈 / \ィ^ヾ ̄匕_ // / / 叉彑ノノ式> / / / _||_ _/  ̄ / // _f´d劜))> ./  ̄  ̄ ヽー¬ ̄ ./ / / / / / / ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 静かだった深夜の空を、たくさんの飛行機が、引き裂いていきました。 401 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:03:35 ID:c970524c ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ / ィフ":.:. ハ:.:.:.:.:ト、:.:._:.:. \ .:.: |:.:.:.:.廴):.:.ヽ、 fヽ '‐'ア::レ':.:.:.:.: 小:.:.:.:..! \ `ヽ、\ |:.:.:.:.:.:.l:.:.:.:.:.:l ゝ`ヽ、 /:.:.:.:.:.:.レ ! | \:.:..', \:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:| .f ヽフ,>- 、 /:.: !:.:.:.X:. | ヽ \:', _\ :.:. |:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:l .l / ////久 .' :..: | :.:.: ハ |_ ヽ \fニテミ、:.j:.:.|:.:.:..|:.:.:.:.:.:| . `7.////. / \ .f:.:.:.:.:.:.:.:.:.| 〉ィ気 \ f込.ノⅤ :.:|:.:.:.:|:.:.:.:.:.:| 〈//// ./ `>.! :.:.:.:.:.:.:.: |f/f廴ハ u. V::::::::}!:.:.:/:.:. ハ:..:.:.:.! \!/ ./ |:. ,イ:i:ヽ:.:.k'代:::::::} ヽ._ン|: /:.:.:./.ノ:.:ル' \f |/ |:ト、 \!\ヽン .//:.:. /:.:.:.:./ . {_ |:! ∨:.:.:.:ハ u. _,--、 〃!:.:..//レ' ヽ | V:.:.:|ハヽ __└ ニ′イ_|:.:.ハ \ .V:.| `ハ \Τ孑 / レ' >、 `丶、 ヽ! V f⌒y' _ 三\ ` ‐- 、 〉 .| ., ' / `ヽ、ヽ `丶、. ハ レ' ,イ ヽ \ `ヽ〈 .V | / } 丶 \ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 「はぁ、はぁ……おかーさん、もうつかれたよぉ……」 「がんばって! 後もうちょっとで、防空ごうにつくから……!」 ドォン、ゴォンと、大きな音を立てて、しょうい弾が落ちてきて。 あちらこちらから、白い煙と赤い火とが舞い上がって。 黒い夜空が、白と赤と、たくさんの人達の悲鳴で染まる中、 お母さんと娘は、けんめいに走って、逃げていました。 402 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:04:12 ID:c970524c お母さんは、ぜったいに離さないと、娘の手を、 強く、かたく、ぎゅっと、握りしめていました。 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ \ \ u 丶. _ _,. ―- 、 、  ̄ r‐---―- 、丶、__ 、 丶ー'___ \ ー丿 `丶、 \  ̄ ヽ ヽr_、_ u. lヽ \.r‐- 、_ |-|_ト、 |八 u. / // `丶._, -― 、 'ーL|‐|-、 、 ∨ \ / // l \ └ヘ‐'\ \ \ \ ヽ ーヽ ;' // |  ̄`ヽ._\_ヽ__', | _| l | ' `ー' ̄ ∟ l_| / `¬=‐〈 \ 丶 __ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 娘は、握られた手が痛いと、思っていたけれど。 けれど絶対に、お母さんと離れたくない、一緒にいたいと思っていたから。 ガマンして、一生けんめい、お母さんの手を握り返していました。 403 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:04:48 ID:c970524c ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 必死で走って、逃げて、逃げ回って。 ようやく二人は、なんとか防空ごうにたどり着きました。 中には、先に避難してきた人たちが、七、八人ほどいて、 みんな力なく、座りこんでいました。 暗くて、狭くて、怖いところ。 でも今だけは、ほんのちょっぴり、安心できるところでした。 404 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:05:21 ID:c970524c 外からは、ドォン、ゴォンという大きな音と、 耳をつんざく様なサイレンの音と、 色んな人がかけていく足音と、たまに悲鳴とが、 混ざり混ざり、たえまなく聞こえてきて、さっぱり落ち着きません。 「こわいよう、お母さん、こわいよう……」 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: _ _, ___,> Y´'ー-、 ; _>z二_ ___`ー≧__ >┴'´ ̄` ‐-、 ̄ 7 < ; / ヽ `Y′之> . / , l、 、 , 、 | ヽ }< l ,ィ {7Tハ T寸寸 | }ノヘ ,ヘ, |(○)三(○) / / ,/ / ; '、 `| ヽ ゚。「)'/|/ / \ヽ、_ c=っ _,.ィT/=/ < l 7Eニ::ィ1 〉 ; ゝ'イ/ヽ::::` 、 / i´ ̄ `ヽ::| j| < ; / ヽ \ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 張りつめていたものが解けてしまったのか、 不安が増してしまったのか、あるいは両方なのか。 ついに娘が、シクシクと、泣きはじめてしまいました。 405 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:05:51 ID:c970524c 暗い防空ごうの中、周りからは白い目。 暗くてよく見えないけれど、なんとなくは分かります。 お母さんは、けんめいになだめようとしますが、 一度泣きはじめた娘は、なかなか泣き止みませんでした。 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: __,.-─-、rュr'^ ̄ ̄`ー、 __ __,/ /::`"::':\__,,/:: : :`ヽ、 __,.:-‐:‐:": : : :`ー-‐'´: : :;ィi: :.:i:: : : : : : :: : : : : : :\  ̄ ̄>'´ : : : : : ; : : : :/|' |: .::ト、: : :\::i|:: : : : : : : ヘ /: : : : : : : : ::|: : ; :/ | |: .::|ー\‐-、||:: : : : : : : : ハ /.: : : : : : : : : ::/|/:/ | ∨::| ,.__\::|.|:: : : : : : : : : } /:.;/: ::i: : : : : : :|´|:_:/、 | ヽ:| ィチテ心、.|:: : : : : : : : :.| /::/|: :::|: ::i: : : : |,ィチ心、 ! f_,,ノ:::::} 》:: : :: : : : : : j j:;/ |: ::;|: ::|;/|: :.:|メ f_,ノ::|゛ V:::::;/,,'|:: : ::i:: : : : :/ '´ |:.:/|::i/::::V:.::| 、V:::;リ  ̄゛ "|::i: : |:: : :i:/ |/ |:|:::::::::ヽ:|:} " ̄ ' u. ,|::|:: :|:.: : |' |:|:::::::::::::(,j u. /" ̄`ヽ、/|/|::.:l:: : :.| |:! :::::::::::::::::ヽ、__ {::__,/{::::::::::|;/:: : :八 |: :::::::;/|:/ヽ、:::::: ̄ ̄::::;;〉 `ヽr-、;:_:_::::ゝ |::;/ ´ / )/ ),ィ´{ ///:::::;r、:} '´ / // //)、ヽ、_,// /:::::/ `ヽ、 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ どうしよう、どうしようと、お母さんがあせあせしていると、 防空ごうの片隅から、ボソッと、 けれどちゃんとハッキリ通る声をかけられました。 「……うっさいなぁ。赤んぼやないんやから、ピーピーさわぐなや」 406 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:06:33 ID:c970524c ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ( ゝ───-..... 、 /.:.:.:::::::::::::::::::::::::.:.:.:`ヽ /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\ /.:./.:/.:.:.:.:.:.:.:.:/ :/: : /^^^^ヽ.:.:.:\ /.:.:/.:/: :/: : : :/: /: : / ヽ.:.:.:.:| |.:./.:/. :/: : : :/: /: : / |.:.:.:.| |: : /: :/: :.:.:./ ̄|::`メ、 ./ .|.:.:.:.| |: : : :/ l:.: :./、_|/ ___ , リ.:.:/ ノ.:.:.:./ |.:.:/ `V ハミ、 彳行V´.:/ /.:.:.:.:.:.ト、.ノ:./ 弋ヒ. ソ ヒ .:ソノ.:/ /.:.:.:.:/.:.:.:.:.>ー小、 ハ |.:.:.:./.:.::::::::::::::::::::(> ⊂=⊃ . イ.:.:.:'. |.:.:/\.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|\| > ー< ):.人:.:.:.} ヽ( \.:.:./ ̄\  ̄\/__ノ\ : :/ /: : : l : : : : : : :| : :ヽ l: : : / : : : : : : :| : :/:l |: : :.ヽ \:_:_:/ |/ : | ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 「みんなバクダンが怖いんや。 でもな、大きな音だすと、敵さんに気づかれて、 バクダン落とされてしまうかもしれんから、みんなガマンしとんや」 「だからアンタも、赤んぼやないんやから、 みんなと同じよーにガマンせんかい……!」 娘と同じぐらいの、薄よごれた服を着た少女が、 娘をピシャリと、叱りつけました。 娘はビクっと、体をふるわせました。 407 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:07:11 ID:c970524c 「うう~っ」と、とうとう本格的に泣き出した娘を、 無理やり泣くのを止めさせるように、 少女はササッとすばやく娘に近づき、 ほおを両手でピシャン、とおさえつけました。 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ,.-‐==‐- ん::: '´ 人:::::、 >ー≦::::::::::ニ=-┛┗ ,.::'゙.:.:::::::::::::::::::::::::::::::┓┏ 。゚.:.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ̄ミh、 η.:.:::::::::::::::::::::/.:::V:::::::{:::::::::.゙:;:':. ∥.::::::::::::/.::::::/.:::::::::iヤvvヘ::::::::::.゙:;::, i{.:.:::::::::∥::::∥:::::::::::j:| /:::::| ゙: ||i:::::::::::i{:::::::i{:::::‐ァ::7; }ト、:从_j . ノリ:::::::::::{{:::::::jj::\.::// ,.メ7人\`ヽ /.::::::::::::;::从:::::从彡'∠., 〃●ハ::{::ハ / i{:::::::/:::i{::乂V::ハ〃●` 丶 }::}::}::::ノ { 乂::i{:::::人:::{`}::リノ . . r‐っ . .ィ:ノノ ´ ヽ\` ー-ノノ ∨ミ=‐- r ´ ̄ _ ‐<`、 `ミミ {ノノ\ _ ‐ ̄ ', ` {‐=彡ヘ...ノ _,. 冖=- .,_ } ! {{ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 「だーかーらー、なーくーのーをーやーめーろー、 っていーうーとーるーやーろ~~!」 そのまま娘のほおを、グリグリ、グリグリ。 娘もお母さんも、少女のいきなりな行動に、 ただただ、おろおろ、おろおろするばかりです。 408 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:07:46 ID:c970524c すると少女は、娘のほおをグリグリしながら、 お母さんに向かって言いました。 「なー、アンタもこの子のお母さんなんやろ? 子どもがベソかいとんやから、アンタもオロオロばっかしとらんで、 この子おとなしゅうさせる手伝いせんかい!」 まだ娘と同じぐらいの少女に怒られて、お母さんはちょっとびっくり、少し悲しみ。 けれど、少女の言う通りだとすぐに思い、娘の肩をよせて、抱きしめながら、言いました。 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ∨ ! / ,. / __,,...--‐‐ - 、 V ム-‐'‐.' / , -'" ``丶、..V / , ' , >、 _/ / K /天 ̄ / !レ 、 ` 、 ,-'" / ! /.i 丶 , -'" ,/ / / / !. /i .i 丶 _,,..-‐''_,,..-‐''/ / / / . / / ! i ヽ '''""~. .// / / / , ',_ ! ! ト、ヽ _,..、-''" ! . // / , ' /-", ソ 仆、 ! / ! / i / ./ ;;レi / ! ! . / _,,..-,' ,イ i / / i !,' i ;;;i ! / /, -'". / // ! //./ /! .i 、_ノ ヽ / " // / ノ!. カ " / /! . / .! ! u. ,ゝ 〃 ./. .//../ i / / / ./ ! ! 、_ /! // / / ! ! / _// i ./ / i /ノ ! ル.' /i''! _'' /`、! ! /! / i / !! i  ̄ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 「ほうら、私もいるから、あなたを絶対に守ってあげるから…… だから落ちついて……ねっ?」 ウソではないけれど、根拠はない。 けれど本当にしたい、心からの思いを。 409 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:08:16 ID:c970524c それからお母さんは、娘の横に座りなおして、 娘の左手を、あらためて強く、ぎゅっと、握りました。 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: __ .. -‐ _ ∠ __ `ヽ ______ -‐ //(__,__ `ー'  ̄ \ _ -‐ / ` ‐- _ 〃 ̄ ̄ .. -‐ ´ ー- 、 \ __ .. -‐ ー- 、{`ヽ_) )⊃ー───────  ̄ ‐-r‐メ、_ノー‐' -‐ ーtォ弋フーイー' ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 娘を安心させるために。 娘を絶対に離さないために。 たとえ何があっても、最後までいっしょにいるために。 410 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:09:51 ID:c970524c 「……ハハッ、ええお母さんやないか。 うんうん、これで一安心やな。でも、もっとええ方法があるで~」 と、ふざけたように少女は笑いながら、 娘の右手を、ぎゅっと握りました。 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 丶. _ _,. ―- 、 、  ̄ r‐---―- 、丶、__ 、 丶ー'___ \ ー丿 `丶、 \  ̄ ヽ ヽr_、_ lヽ \.r‐- 、_ |-|_ト、 |八 / // `丶._, -― 、 'ーL|‐|-、 、 ∨ \ / // l \ └ヘ‐'\ \ \ \ ヽ ーヽ ;' // |  ̄`ヽ._\_ヽ__', | _| l | ' `ー' ̄ ∟ l_| / `¬=‐〈 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 「よしっ、これで二安心やな。これでもう大丈夫やろ? ほならバクダンが落ちなくなるまで、おとなしゅうしとこうか~」 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ >ー≦:::::::::ニ=- _ ,.::'゙.:.:::::::::::::::::::::::::::::::::::ニ‐_ 。゚.:.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ̄ミh、 η.:.:::::::::::::::::::::/.:::V:::::::{:::::::::.゙:;:':. ∥.::::::::::::/.::::::/.:::::::::iヤvvヘ::::::::::.゙:;::, i{.:.:::::::::∥::::∥:::::::::::j:| X⌒::::| ゙: ||i:::::::::::i{:::::::i{:::::‐ァ::7; }ト、:从_j . ノリ:::::::::::{{:::::::jj::/.::// ,.メ7人\`ヽ /.::::::::::::;::从:::::从彡'∠., 〃⌒ハ::{::ハ / i{:::::::/:::i{::乂V::ハ〃⌒` 丶 ``}::}::}::::ノ { 乂::i{:::::人:::{`}::リノ `` r…¬ ィ:ノノ ´ ヽ\` ー-ノノ ∨ミ=‐- r ´ ̄ _ ‐<`、 `ミミ {ノノ\ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ そう言って少女は、ケラケラ笑いました。うす暗い中でも分かる、明るい笑顔でした。 411 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:10:23 ID:c970524c お母さんと、少女に元気づけられて。 娘はようやくホッとして、泣くのを止めることができました。 周りの人たちも、やっとホッと、胸をなでおろすことができました。 「お母さんも……それに、あなたも、ありがとうね」 娘がお礼を言うと、少女はつないでいない方の手を、 顔の前で横にふりながら言いました。 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ( ゝ───-..... 、 /.:.:.:::::::::::::::::::::::::.:.:.:`ヽ /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\ /.:./.:/.:.:.:.:.:.:.:.:/ :/: : /^^^^ヽ.:.:.:\ /.:.:/.:/: :/: : : :/: /: : / ヽ.:.:.:.:| |.:./.:/. :/: : : :/: /: : / |.:.:.:.| |: : /: :/: :.:.:./ ̄|::`メ、 ⌒ |.:.:.:.| |: : : :/ l:.: :./、_|/ リ.:.:/ ノ.:.:.:./ |.:.:/ .==ミ ≠⌒ミ . .:/ /.:.:.:.:.:.ト、.ノ:./ ..:/ /.:.:.:.:/.:.:.:.:.>ー小、 ハ |.:.:.:./.:.::::::::::::::::::::(> 、__ , イ.:.:.:'. |.:.:/\.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|\| > ー< ):.人:.:.:.} ヽ( \.:.:./ ̄\  ̄\/__ノ\ : :/ /: : : l : : : : : : :| : :ヽ l: : : / : : : : : : :| : :/:l |: : :.ヽ \:_:_:/ |/ : | | : : : | |: : ::| ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 「アハハッ、別に気にせんでえーよ。 あのままビービー泣いてたら、マジで追いださなアカンかったからなぁ」 さらりとキツいことを言う少女に、お母さんは心の中で、少し怖いなぁと思いました。 412 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:11:28 ID:c970524c ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ( ゝ───-..... 、 /.:.:.:::::::::::::::::::::::::.:.:.:`ヽ /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\ /.:./.:/.:.:.:.:.:.:.:.:/ :/: : /^^^^ヽ.:.:.:\ /.:.:/.:/: :/: : : :/: /: : / ヽ.:.:.:.:| |.:./.:/. :/: : : :/: /: : / |.:.:.:.| |: : /: :/: :.:.:./_ノ|::`メ、 \ |.:.:.:.| |: : : :/ l:.: :./、_|/ ___ , リ.:.:/ ノ.:.:.:./ |.:.:/ `V ハミ、 彳行V´.:/ /.:.:.:.:.:.ト、.ノ:./ 弋ヒ. ソ ヒ .:ソノ.:/ /.:.:.:.:/.:.:.:.:.>ー小、 ハ |.:.:.:./.:.::::::::::::::::::::(> ` ´ . イ.:.:.:'. |.:.:/\.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|\| > ー< ):.人:.:.:.} ヽ( \.:.:./ ̄\  ̄\/__ノ\ : :/ /: : : l : : : : : : :| : :ヽ l: : : / : : : : : : :| : :/:l ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 「……前にバクダン落ちてきた時も、赤んぼが火ぃついたように泣いてもうてな…… かわいそうに、その子はお母さんと外に出るハメになっとったんや。 もうあんなんは、二度と見とうなかったしな……」 そう言って、かなしそうに笑う少女の横顔を見て、 お母さんは、さっき心の中で、怖いなぁと思ったことを、 ダメだなぁ、いけないなぁと、心の底から反省しました。 たぶんおそらく、いやきっと、少女は、二人を助けるために、 あえて自分から、ワザとキツいことを言ってくれたのだろうと。 もしもここに、この子がいなかったら…… と思うと、お母さんは、心の底からぞっとしました。 413 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:12:07 ID:c970524c ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 。 ::::: * * ::::;;:::: 。 o 。 o ゚ ゚ ::::: 。 。 。 ゚ . ゚ :: . ゚ :: + * * ::;;:: ゚ * ::;;:: ゚ ; ; ::: 。 ゚ ::;;;:: ゚ ::;;;:: ` : ` :: :::; * ::;;;: o + :: ::::: :: , ; ; ::::; ::::: 。 . ゚ :: . 。 o ゚ . ゚ :: * ::;;:: ゚ 。 . * ::;;:: ゚ 。 ゚ ::;;;:: . ゚ :: . 。 ゚ ::;;;:: * ::;;;: * ::;;:: ゚ ; * ::;;;: ; ; ::::; ゚ ::;;;:: ` :. ; ; ::::; o ゚ ( ⌒ヽ、 ( ) ) 、 (: ´ ) (´⌒::::` ) ( ( ; 人;_| | ´ ⌒ ) |.」.| .| 」| |人;;从;;;;: (´:: ) ..:) ; 人;;从;;| .|-l .| .|. l⌒l‐┐ (::::::: ;;人;;; 人;;从;;;;:|_:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.| (´⌒;:⌒`~;;从;;人;;;⌒`;:(´⌒;:⌒`~;; .l |:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|人;;从;;;;:(´⌒;:⌒`~;;从;;人;;;⌒`;:(´⌒;:⌒`~ ;`(´⌒;;:⌒∵⌒`);(´∴人;;ノ`;;`(´⌒;;:⌒ l | .|::::::::::::::::::::::::::::::::::: | ,,| ̄ ̄ ̄;`(´⌒;;:⌒∵⌒`);(´∴人;;ノ`;;`(´ F√i-ュ| ̄|明-ュ| ̄L―┐-ュFl-ィニニユ 「 ̄|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ニ´t| /F√i-ュ| ̄|明-ュ| ̄L―┐-ュFl-ィニ :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ドォン、ゴォンと、バクダンはまだまだ落ちています。 ゴォゴォと、炎が燃えさかる音も、遠くの方から聞こえてきます。 まだまだまだ、防空ごうからは出れそうにありません。 414 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:12:38 ID:c970524c 「……ねぇ、さっきから気になってたんだけど、 どうして他のみんなと、しゃべり方が違うの?」 やっと落ちついてきたのか、娘は、 お母さんも実はさっきから気になっていたことを、少女に聞きました。 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ /\ ,.-‐==‐- / / ん::: '´ \/ /> 人:::::、 </ >ー≦:::::::::ニ=- _ ┌─┐ ,.::'゙.:.:::::::::::::::::::::::::::::::::::ニ‐_ └─┘ 。゚.:.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ̄ミh、 η.:.:::::::::::::::::::::/.:::V:::::::{:::::::::.゙:;:':. ∥.::::::::::::/.::::::/.:::::::::iヤvvヘ::::::::::.゙:;::, i{.:.:::::::::∥::::∥:::::::::::j:| X⌒::::| ゙: ||i:::::::::::i{:::::::i{:::::‐ァ::7; }ト、:从_j . ノリ:::::::::::{{:::::::jj::/.::// ,.メ7人\`ヽ /.::::::::::::;::从:::::从彡'∠., 〃⌒ハ::{::ハ / i{:::::::/:::i{::乂V::ハ〃⌒` 丶 ``}::}::}::::ノ { 乂::i{:::::人:::{`}::リノ `` r…¬ ィ:ノノ ´ ヽ\` ー-ノノ ∨ミ=‐- r ´ ̄ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 「ああ、これなー。ウチはこの町の出やないねん。 けっこう遠いところで暮らしとったんや。 そこではな、オトンもオカンもオネエらも、他の人らも、みーんなこんな感じやったで」 「へぇ、そうなんだ! 遠いところから、お引っこしして来たんだね!」 と、娘が無邪気に言うと、少女は少し悲しそうな笑顔で、首をふりました。 415 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:13:09 ID:c970524c ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ( ゝ───-..... 、 /.:.:.:::::::::::::::::::::::::.:.:.:`ヽ /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\ /.:./.:/.:.:.:.:.:.:.:.:/ :/: : /^^^^ヽ.:.:.:\ /.:.:/.:/: :/: : : :/: /: : / ヽ.:.:.:.:| |.:./.:/. :/: : : :/: /: : / |.:.:.:.| |: : /: :/: :.:.:./_ノ|::`メ、 \ |.:.:.:.| |: : : :/ l:.: :./、_|/ ___ , リ.:.:/ ノ.:.:.:./ |.:.:/ `V ハミ、 彳行V´.:/ /.:.:.:.:.:.ト、.ノ:./ 弋ヒ. ソ ヒ .:ソノ.:/ /.:.:.:.:/.:.:.:.:.>ー小、 ハ |.:.:.:./.:.::::::::::::::::::::(> ` ´ . イ.:.:.:'. |.:.:/\.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|\| > ー< ):.人:.:.:.} ヽ( \.:.:./ ̄\  ̄\/__ノ\ : :/ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 「……あっちであった空しゅうでな、オカンと上のオネエは、死んだんよ。 下のオネエも、ひどいヤケドで、2日ぐらい苦しんで、やっぱり死んでまった。 オトンは戦争に行っとって、今どこにいるかもよー分からん。 それでウチは、オトンの弟っちゅーオジサンの家で、暮らすようになったんや」 ……この時代、探せばどこにでもある、よくある話。 けれど決して良くはない、悲しい話でした。 416 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:13:40 ID:c970524c 「……ごめんなさい。私、イヤなこと聞いちゃった……」 しょぼんと落ちこんでしまった娘をなぐさめるように、 少女は笑顔から悲しさをすぐに払って、ケラケラと明るく笑いました。 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ z‐==ミ/{/{イ _> ___ L _ Y x<. -‐=<∠. _ イ{ 〃 / ` く 八i/ / ヽ イ { { ハ 人 _∧八 ‐-ハ , ' i )ィ ( { u ( o)}ハ 八 八ハ 〈 イ 〃 丶、 -/ │「ィ::::ニEi´ └l'´::::::/ヽ |:::::::i´ ̄`i ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 417 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:14:11 ID:c970524c ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ,.-‐==‐- ん::: '´ 人:::::、 >ー≦:::::::::ニ=- _ ,.::'゙.:.:::::::::::::::::::::::::::::::::::ニ‐_ 。゚.:.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ̄ミh、 η.:.:::::::::::::::::::::/.:::V:::::::{:::::::::.゙:;:':. ∥.::::::::::::/.::::::/.:::::::::iヤvvヘ::::::::::.゙:;::, i{.:.:::::::::∥::::∥:::::::::::j:| X⌒::::| ゙: ||i:::::::::::i{:::::::i{:::::‐ァ::7; }ト、:从_j . ノリ:::::::::::{{:::::::jj::/.::// ,.メ7人\`ヽ /.::::::::::::;::从:::::从彡'∠., 〃⌒ハ::{::ハ / i{:::::::/:::i{::乂V::ハ〃⌒` 丶 ``}::}::}::::ノ { 乂::i{:::::人:::{`}::リノ `` r…¬ ィ:ノノ ´ ヽ\` ー-ノノ ∨ミ=‐- r ´ ̄ _ ‐<`、 `ミミ {ノノ\ _ ‐ ̄ ', ` {‐=彡ヘ...ノ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 「なーに、もうぜんぶ終わったことや、気にせんでええよ。 ウチは生きとるし、とりあえずメシも食えとるし、それでええんや。 『命あっての物種』って、オカンもよう言うとったしな。 生きてるだけでまるもうけなんかもしれんな、アハハッ!」 ……こういう子こそ、幸せになれたらいいのにね。 悲しいことを、あっけらかんと笑いとばせる、 笑いとばそうとしている少女の強さを見て、お母さんは思いました。 418 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:14:41 ID:c970524c ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::...:::... ...:: :........ ... . .....:::... ...:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::.:::.. ....... .....:: .. ...:: :.... .... ....::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::..:::.. ... ....:::::... ...─- 、 .. .. ...:::.. ... ....:::::... ...::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::...::: .........:::: :...... / ヽ ..:: :.... ...:::.. ... ....:::::... ..:::::::::::::::::::::::: ::::::::::::.. ...: :.... .::::..... ...:::.. l ..... ...:::.. ... ....: ::::... .:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::.:::.........: ::... ... ヽ / .. ... ...:::.. ... ....:::::... ...: :..:::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::. :. .:::::: ::.... .::::..... ` ー--‐' .... ...:::.. ... ....:::::......:: ::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::..... ...:::.. .... ... .. .: .. ..: .:::.. ... :. .:::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::. .:::::: ::.... .::::..... . :: :.. . ... :. .::::: ::.... .::::..:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ――防空ごうに入ってから、どれだけ時間がたったでしょうか。 ようやくイヤな音が聞こえなくなり、夜の本当の静けさが戻ってきました。 「もう終わったのか?」 「ふぅ……助かったわ……」 「家族が心配だ、早く家に戻らないと……」 「家が燃えてないといいけど……」 防空ごうの中にいた人たちは、 口々にそれぞれの不安をかかえながら、 外へと出ていきました。 お母さんと娘、それに少女も、みんなの後に続きました。 419 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:15:18 ID:c970524c 「おうちはどこかな? 送ってあげようか?」 「かまへんかまへん、一人で帰れるわー」 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ / .| 〈 、 | _,ー―――,- ヽ l j_/ / , ―,ニ> `' ‐ _、-< , ' ,/,-ー^フ< ̄`ヽ、ヽ `ヽ ,/: :. :゙ ̄: :. :ィ//| V:ヽ: : : `: 、:.ヽ / : : : . l./: :. : /7/ | `、ト、: :. :. :ヽ: :.` / : : : : :|/: :.,-/ j./ | ヘ'ヽヽ、: :.ヽ: : `、 / : : : : : '|. /^./ レ | | \: : : : 、ヽ: :.ヽ /イ: : : : :、: : : / j、 j 〉―-、:.:.: : |: ヘ: :.トヽ / l : : : : : : : :/彡ミミ ' 'イ^テミヽ、: :| : :| : | ` l: : : : : : : :/;彳 )::ヽ iヽ':::::} ゝ: レヽ : |\ l: : : : :/.: :イ {`:゚::i::.| 弋セ:::リ ハ :.|: : |: :| l : : : ト、:` ヘ弋ヒル:リ ヽ‐-' />j ):∧ | | : /∧:ヽ: :ヘヽ-‐′ ' ゛゛ {_ ノ y V |/ { :ヘ: :\ヘ ( ̄j ノ.jヘ: :| }: .トヘ: :.ヽ|、 `ー ,.ィ.,「 / ∨ ヽ| \、 |ヽ`i、‐- -‐イ: :./ レ | '| Vヘ|\l\} {__/、 ,ー ー< .ヘ' 〉`、ーー‐-、 f. `、 ヽ,-、_ 'フ / ヽ | `、,rーヽ') 〈 ./ ヽ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 夜も遅くてあたりも暗く、オマケに空しゅうの後です。 お母さんは心配でしたが、少女のオジサンの家は、 お母さんたちのお家がある方向の、さらに先の方にあるということで、 途中まで、三人でいっしょに変えることにしました。 空しゅうの後の、心細く、怖い帰り道。 二人でも、不安だけど。 三人なら、少しだけマシ、なのかもしれませんね。 420 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:16:02 ID:c970524c とぼとぼと、歩く帰り道。まわりには、ボロボロに燃えてしまった家の跡。 お母さんは、お家も同じように燃えてないだろうかと、 思わず暗く、心配な気持ちになりますが、 娘と少女が楽しそうなので、顔で笑って心で落ちこむ、ようにしました。 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ : :::::::::::::::::::::::::::: |\,/´i:\ ::: |:  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ;:  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ .:'',.; 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Y´/-―- 、 -=ニ´ _ ヽ / . -‐-、 > 、_ . ´  ̄ `>=<´ ヽ、〈 . /ィ . ´ `ヽ、 iヽゝ / .i/! , ' i ! ! ヽ ハ/ ヽ / ./ ト、ノi .ハ/i .i, ', >  ̄/ .' i/ ∨ ./ ∨! .} .ト、 / .ィ i i === .\/ === ,' / .ト.ゝ  ̄ i ヽ._八 ./ _/ ./! ト、 (. \ ./ ノ /iリ ヽ/i\ \ __ ▽ __./ / ノ!/ ヽiヽ )::i_i::( / Y:::::::∞::::::Y (( !:::::::::'`::::::::i )) /:::::::::::::::::::::ム /:::::::::::::::::::::::::::\ ム;;:::::::::::::::::::::::::::::::::;ゝ `'マ;;;;;;;r、_,、r、;;;f^ ';;;;;;;;| |;;;;;;;' _,';;;;;;| |;;;;;'、 `ー ^ ^ ー ' ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 「ごろごろ~ごろごろ~」 とあるお休みの日の午後のこと。 娘は、なにが楽しいのか、畳の上をゴロゴロと転がりながら、 コロコロと笑い転げていました。 そんな娘を見て、お母さんも、心がころっと、楽しくなりました。 まだまだ、お父さんからの返事が来ない悲しさも。 ほんのちょっぴり、忘れることができました。 425 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:18:58 ID:c970524c ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:..‐:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.ノ.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.; ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:_..‐´:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;...‐′.;.;.;.;.;.;|.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.; ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:_..r‐'´:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;...‐'´.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.; ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:_..-―‐''''ゝ、、:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;.__,,,,......--'".;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.; `゙''‐--............-‐'''´ ...:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.: ̄ ゙̄^''''''|-――‐''"``''‐‐---......,,___.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: : : : : : : : : : : : : : : : : ''‐......__.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:_....----'` ̄''ー 、,,i_.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:_.. - 、,,_: : : : : : : : : : : : : : i: : .. `"''''ー-|-......,,_|_____,,.i.|..-‐'' ̄" i |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| `iー-i---―――‐''" | i | l | | i l i | i i l | l l | l | 、、 l i | | ┼┼ ──┐ ─┐ ─┐ l | │ │ │ ─┐ │ ─┐ │ │ │ l i l i i | | i | | i i i i | l | l | l| | i i i i ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ そんなことがあった、とあるお休みの日の後日の午後のこと。 ゴロゴロと、遠くの方で雷が落ちているような、大雨がふっていました。 426 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:19:31 ID:c970524c ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ____ ィ'―‐rz―-、 \ / /: :.`\ \ \ , '└イ: :| 小l: : \ノ: : : ', っ _」ヽ /| /./: : /_,'」/ | ヽ-、__|: : : : } っ / ゙V´∠イz‐、_ /イ: :l.イ/z|_ | ',≧、「: :./: | / , ヘ,_/ ヽ∨ マ´ ; .|: :| j.ィうヾ うヾト :/ ィ.| // // ^´  ̄ ^`ヽ丶,ゝ |∧ハヽノ 弋ノl:/ノ,'l | _,// 〃 , , 、ヽ、 lハ: :イ┬―――┤,イ/`´ ,ノイ| l/ ヘ ; Vl | |レ」l 小| l/'ナ r 、ri,、ナナ| l | /-v' |´ 〉 l从 /| / /( ヽリ,ルリ / ニ}| _'三Y´ } ノハ小 γ::::lヽl レl:::ヽ ; ハ jl { ハ | /l:::::,l::::|∞|::::!::::l / {ノヽ__ハノ ヽl ヽ::::;ノ ゝ;:::ノ ; { _} | | |\ ノ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 「雷さんこわいよぉ……はやくどっか行ってほしいよぅ……」 「うんうん、大丈夫。夜までにはきっとおさまるから、 今日は家でおとなしくしてようね」 雷を怖がって、泣きべそをかきはじめた娘を、 お母さんは、優しくなだめました。 本当は、お母さんだって、雷は怖いけれど。 娘のためだから、怖くないフリぐらい、 いくらだって、できるからね。 427 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:20:18 ID:c970524c 娘がちょっと怖くなくなったところで、 玄関の方から、戸をコン、コンと、 軽く叩く音が聞こえました。 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ _| >'´:::::::`ヽ、 \ / 」 //::∧::::l:::::::ヽ ∧ / :/ヽ―' _イ: / ∥::!::_:::::l\ /::: ', / /:::::/:::: / , イ /:/ ||::::ト、`ヽ、:`ヽイ:::::::: l ― . , ::::::::/:::::: |´: / !/ |Ⅵ V::|:ヽ::::::: |::::::::: | \ . /::::::::/:::/::::|:::/z± |`|z_,V ハ::::::::/:::::::::::| /イ::::/:::/:::: ルzう''┤ | チミヾ! V /:::::::::::::| /´ |::::::::イ::::://イ7゚::: | ハ。ノ.ぃレ'::::::::::::::::| . |::::::::ハ ハ.《 |辷リ |7し 爿レ::::::::::/:::::| |::::::ハ::| ハ ヽ- ' 弋辷ン〃::::::::イ:::::::l |::: ハ V { /:::::::::/ノ∧.| レ' V::::ゝ、 o /:::::::::/:::/ V | >r 、 __ イ:::イ::/:::/ . Ⅵ V _ ヽ>―,イ/ |イ V__ ヽ / `ヽ、 / ク| レ' ト、 rぃ、ヽ-、 レ‐- 、 \ニ´ ̄ ノ _ 〉 rゝ` _」、 /∨ \ \__/ 「 } `ヽ、//'¨ \ 〈 \ 〉 | \ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 428 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:20:59 ID:c970524c 気になったお母さんが戸をあけると、そこには、 前に防空ごうで、娘がお友だちになった少女が、 ずぶぬれで立っていました。 「……すまん、せめて雨が止むぐらいまでは、 屋根のあるところで、雨やどりさせてもらえへんか?」 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ( ゝ───-..... 、 /.:.:.:::::::::::::::::::::::::.:.:.:`ヽ /.:.:.:.:.:.;;;;;;;;;;;;:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\ /.:./.:/.:U:.:.:.:.:/ :/: : /^^^^ヽ.:.;;;\ /.:.:/.:/: :/: : : :/: /: : / ii lヽ;;.:.:.:| |.:./.:/. :/: : : :/: /: : / |.:.:.:.| |: : /: :/: :.:.:./ ̄|::`メ、 ´ ̄.|.ll:.:.| |:;;; : :/ l:.: :./、_|/ ___ , リ.:.:/ ノ.;;;.:./ |.:.:/ `V ハミ、 彳行V´.:/ /.:.:.:;;;:.ト、.ノ:./ 弋ヒ. ソ ヒ .:ソノ.:/ /.:.:.:.:/.:;;;:.:.>ー小、U ハ |.:.:.:./.:.:::;;U::::::::::::(> r‐っ . イ.:.:.:'. |.:.:/\.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|\| > ー< ):.人:.:.:.} ヽ( \.:.:./ ̄\  ̄\/__ノ\ : :/ ゚ /: : : l : : : : : : | : :ヽ ゚ l: : : / : : : : : : :| : :/:l ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 「と、とにかく中に入って!」 お母さんは少女を、あわてて家の中に入れてあげました。 429 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:21:31 ID:c970524c 「……ありがとうな。ボーッと歩いてたら、 アンタらの家にでくわして、 ついつい、ごめんくださいしてもうたんや」 お母さんはすぐに、お風呂をわかしてと娘に頼みました。 「……あれからな、オジサンの家に帰ったんや。 そしたらな、お家もお店も、全部燃えとったんや」 お母さんはとりあえず、ぬれた服を脱がし、 少女の体をふいてあげました。 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ゝ───-..... 、 /.:.:.:::::::::::::::::::::::::.:.:.:`ヽ /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\ /.:./.:/.:.:.:.:.:.:.:.:/ :/: : /^^^^ヽ.:.:.:\ /.:.:/.:/: :/: : : :/: /: : / ヽ.:.:.:.:| |.:./.:/. :/: : : :/: /: : / |.:.:.:.| |: : /: :/: :.:.:./ ̄|::`メ、 へ |.:.:.:.| |: : : :/ l:.: :./_ノ |/ リ.:.:/ ノ.:.:.:./ |.:.:/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::´.:/ /.:.:.:.:.:.ト、.ノ:/...:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.:/ /.:.:.:.:/.:.:.:.:.>ー小、 ハ |.:.:.:./.:.::::::::::::::::::::(> っ . イ.:.:.:'. |.:.:/\.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|\| > ー< ):.人:.:.:.} ヽ( \.:.:./ ̄\  ̄\/__ノ\ : :/ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 「……オジサンらは、何日も待ったけど、けっきょく帰ってこんかった。 近所の人に、オジサンも、オバサンも、イトコらも、 みーんな死んでもうた、って教えてもろうたんや」 お母さんは黙って、少女に娘の服を着せてあげました。 「……すまん、ホンマにありがとうな。 はじめは、近所の人の家で、ゴハンわけてもらっとったけど、 このご時世やろ? だんだん、おられんようなってな。 しゃーないんで、ずーっとブラブラしとったんやけど……」 430 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:22:09 ID:c970524c 「……雨が、ふってきちゃったんだよね?」 「うん、そうなんや…… ビショビショでさむいし、おなかもペコペコやし、 ウチ、こんまま死んじゃうんかなぁと思いながら、歩いとったら…… アンタらの家があってな、そんでな……」 そこまで言うと少女は、今までガマンしてきたものが あふれてしまったのか、シクシクと泣きだしてしまいました。 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ( ゝ───-..... 、 /.:.:.:::::::::::::::::::::::::.:.:.:`ヽ ; 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}ト、:从_j . ノリ:::::::::::{{:::::::jj::/.::// ,.メ7人\`ヽ /.::::::::::::;::从:::::从彡'∠., 〃⌒ハ::{::ハ / i{:::::::/:::i{::乂V::ハ〃⌒` 丶 ``}::}::}::::ノ { 乂::i{:::::人:::{`}::リノ `` r…¬ ィ:ノノ ´ ヽ\` ー-ノノ ∨ミ=‐- r ´ ̄ _ ‐<`、 `ミミ {ノノ\ _ ‐ ̄ ', ` {‐=彡ヘ...ノ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ すっかり仲良くなった、娘と少女。 しっかり色々な手続きをすませてきたお母さんも、思わずにっこり。 家族が増えて、良かったね。 433 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:24:01 ID:c970524c あいかわらず、お父さんからの手紙は来ないけれど。 次に来た時は、この子のことも必ず書くね。 きっとビックリするだろうな、楽しみだな。 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ _ /ヽ _/ \__/ \ _< __,,,フーL___」 / | \ . ィ-/ ,小 |. l ヽ . / | / ! l Ⅳ | | l / / !ィl´/ |Ⅵ マト、! ! | / .l .| !ハL_ | `! __Ⅵ| | | . / .イ |.i レう´ l う゛ヽ!、 | / //. |! lト、.代⌒| i⌒ノバ / レ′ |! ヽ |! `¨´ ' `¨// ,'ノ | . |ハ ` ト、 `ー' .ィハ 从ハ! ! 从_≧‐ ≦ ムハ」 |.r┴く \>! ト//¨ヽ / \ヽ / \ ! _\/>ァ┬―― -} |_, -ー fヽ! ̄ / /l/### ,イ ∧#####| l####/ | | V####| !#l#/ l ||∨###! {#l/ ト=-、 . ヽ! ∨#lj !#| |X } ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ どれくらい、先になるかは分からないけれど。 家族三人、いや四人で、楽しく笑えたら良いのにね。 お母さんは、心の中で強く、お願いしてみました。 434 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:24:46 ID:c970524c ● ● ● ● ● 435 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:25:17 ID:c970524c ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ !| i| i| |i !| i ! i i i| ! i i |! i ! ! i i i| ! i i ! ! i |! i| ! !| i| |i !| i ! i i i| ! i i |! i ! ! i i i| ! i i ! ! i |! i| ! i| !| i| |i !| i ! i i i| ! i i |! i ! ! i i i| ! i i ! ! i |! i| ! |i l ! l ! i i !| i !| i| i| |i !| i ! i i i| ! i i |! i ! ! i i i| ! i i ! ! i |! i| ! !| i| |i !| i ! i i i| ! i i |! i ! ! i i i| ! i i ! ! i |! ! |i l ! l ! i i !| i i ! i |! i |i i| i! i! i! i i| i i! i! i! !i i| !| i! |i i! !| i i |! i! |i i! i i ! i|! | i! ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 六月 ろうろうと、雨が歌ってしたたって。 ムシムシ蒸し暑く、虫も多くて無視できない。 そんな頃です。 436 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:26:40 ID:c970524c ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ( ゝ───-..... 、 /.:.:.:::::::::::::::::::::::::.:.:.:`ヽ /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\ /.:./.:/.:.:.:.:.:.:.:.:/ :/: : /^^^^ヽ.:.:.:\ /.:.:/.:/: :/: : : :/: /: : / ヽ.:.:.:.:| |.:./.:/. :/: : : :/: /: : / |.:.:.:.| |: : /: :/: :.:.:./ ̄|::`メ、 ´ ̄.|.:.:.:.| |: : : :/ l:.: :./、_|/ リ.:.:/ ノ.:.:.:./ |.:.:/ /.:/ /.:.:.:.:.:.ト、.ノ:./ ≡≡ ≡≡ ノ.:/ /.:.:.:.:/.:.:.:.:.>ー小、 ハ , '⌒ヽ |.:.:.:./.:.::::::::::::::::::::(> r‐っ . イ.:.:.:'. ー l |.:.:/\.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|\| > ー< ):.人:.:.:.} ヽ、_ ノ ヽ( \.:.:./ ̄\  ̄\/__ノ\ : :/ /: : : l : : : : : : :| : :ヽ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 「せっかくの休みだってのに、外に出れへんのはあんまおもしろう無いなぁ」 「うん、そーだよねぇ。雨も強いから、窓もあけれないし、 あせがベトベトで気持ちわるいよぅ」 ムシムシした雨の日。 すっかりお家になれた少女と、少女がいることになれた娘は、 タタミにしいたむしろの上で、虫のように並んでへばっていました。 437 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:27:11 ID:c970524c 「うーん、たしかに暑いよねぇ。お風呂にお水いれてあげるから、入る?」 そうお母さんがたずねたところ、少女は首を横にふりました。 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ( ゝ───-..... 、 /.:.:.:::::::::::::::::::::::::.:.:.:`ヽ /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\ /.:./.:/.:.:.:.:.:.:.:.:/ :/: : /^^^^ヽ.:.:.:\ /.:.:/.:/: :/: : : :/: /: : / ヽ.:.:.:.:| |.:./.:/. :/: : : :/: /: : / |.:.:.:.| |: : /: :/: :.:.:./ ̄|::`メ、 ⌒ |.:.:.:.| |: : : :/ l:.: :./、_|/ リ.:.:/ ノ.:.:.:./ |.:.:/ .==ミ ≠⌒ミ . .:/ /.:.:.:.:.:.ト、.ノ:./ ..:/ /.:.:.:.:/.:.:.:.:.>ー小、 ハ |.:.:.:./.:.::::::::::::::::::::(> 、__ , イ.:.:.:'. |.:.:/\.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|\| > ー< ):.人:.:.:.} ヽ( \.:.:./ ̄\  ̄\/__ノ\ : :/ /: : : l : : : : : : :| : :ヽ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 「いや、ええわ。やっぱ風呂は、熱いモンやからええんよ。 熱い風呂に入って、カーッ!ってやるのが、ウチは好きやからね~」 などと、おじいちゃんみたいなことを言う少女に、娘が口をはさみました。 「アハハッ! なにそれ、おじいちゃんみた~い」 438 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:28:07 ID:c970524c 「オジサンにも、ジジくさい趣味って言われとったわ…… でもな、好きなモンを好き言うて、なにが悪いんやって感じやわ」 「うん、それもそうかも……お家の中ならだいじょーぶだけど、 外じゃあ、甘いの食べたいとか、おまんじゅう食べたいとか、 ケーキ食べたいとか、なかなか言えないもんなぁ……」 「おいおい、それ、全部甘いものやないけ!」 「あれー、そうだったかなぁ? アハハハッ!」 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ (⌒⌒) r 、 ( |il| ___! ヽ.r 、 ゝ───-..... 、 ヽ、 _ ヽ i ヽ、 /.:.:.:::::::::::::::::::::::::.:.:.:`ヽ , ´ ̄ ヽ i ヘ ヾヽ、 /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\ ノ = - ― - .∧ ヽ ヽ、 /.:./.:/.:.:.:.:.:.:.:.:/ :/: : /^^^^ヽ.:.:.:\ <. ´ ` 、 ゝ-≧ ~♪ /.:.:/.:/: :/: : : :/: /: : / ヽ.:.:.:.:|> / \ ヽ!` ヽ |.:./.:/. :/: : : :/: /: : / |.:.:.:.| / ヽ. ', ', |: : /: :/: :.:.:./ ̄|::`メ、 ./ .|.:.:.:.| , / i i 、 . . ヽ |: : : :/ l:.: :./、_|/ ___ , リ.:.:/ { i/、 ! ! ! i ! . ! ト、_ゝ ノ.:.:.:./ |.:.:/ `V ハミ、 彳行V´.:/ ∨ i/ ヽi ./iノi/ヽ/! .! ,' .i /.:.:.:.:.:.ト、.ノ:./ 弋ヒ. ソ ヒ .:ソノ.:/ ヽ .i i/ ! ,' /! i.リ /.:.:.:.:/.:.:.:.:.>ー小、U ハ .`r' === === i // .!i/ |.:.:.:./.:.::::::::::::::::::::(> ⊂=⊃ . イ.:.:.:'. 八 /_ ノソi___! |.:.:/\.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|\| > ー< ):.人:.:.:.} > ▽___ _.,-<´ !/ ヽ( \.:.:./ ̄\  ̄\/__ノ\ : :/ ヽ!ヽ、!__i/ム_ ヽ. ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 娘と少女が楽しそうに話しているのを聞いて、 お母さんもついつられて笑いながらも、 心の中には、チクッと痛みが走りました。 まだ子どもなのに、やりたいことだっていっぱいあるのに。 お腹いっぱい食べさせてあげることも、ロクにできないなんて。 好きなことを、好きなようにやらせてあげられないなんて。 お母さん、顔で笑って、心はしょんぼりでした。 439 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:28:53 ID:c970524c 「そーいやー、アンタは、なにが好きなんや?」 「えっ? 私? うーんっとねぇ……お母さん!!」 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ /\ / / \/ /> 、-ー'`Y <,___ </ __≦ー`___ _二z<_ ┌─┐ > 7  ̄、-‐ ´ ̄`'┴< └─┘ <之′Y´/ \ >{ ,' | 、 , ,. ,.l , ゙i | !、{ | 寸寸T ハT7} ィ,l ′Ji, ゙i ゙i ( >) (<)|ハ| i⌒ヽ'(1. ''' _' ''' ノ川/⌒) . ヽ ヽx>、(_.ノ__,イ l |::::ヽ/ ∧ 人lハ:::::l,三|:::/l| ,:::::ハ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ そう娘は、満点の笑顔で答えました。 これには、しょんぼりしていたお母さんも、思わずにっこりです。 「アハハッ、やっぱりな~アンタはオカンのこと、ホンマに大好きやからな~」 「お母さんだけじゃないよ! 二番目はお父さんだし、三番目は――」 「……ウチか?」 「うんっ! そうだよ~!」 440 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:29:25 ID:c970524c 「三番目か~まぁしゃーないな。 ウチはアンタらのこと、けっこー好きなんやけどな~」 「うふふ、ありがと~でも一番はぜったいにお母さんだからね~」 「ちぇっ、悔しいなぁ~もう」 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ !`ヽ l \___ __ ,. ヘ ヽ:`>'´ `ヽ /: : : :.\ ハ、 _____ヽ /: : : : : :.´ヘr.'´: ハ:ヽ: : : : :`ヽ っ /: . : : : : /: : _,/:: :/ い: : : :.', .: : : : : :./:ィ'´:/ : / l:.ト、: : :l : : :'. っ l: : : :l: : : : :l: :/// l/ ヽ: :}: : : :.l |: : : l: : : : :.ィ'ラ示 x=ミ }: /: : :!: :| . |: : _|: : : :〈 代::ハ んハ|/: : : :ト. :! l:.:.{ |: : : : l 辷ソ {ゝ-:ハ/l: : :./ '.:l l: :`l:.l: : : | :;:;:; . ー' ム!: :./ |l |∧:| l: : : |、 ‐- :;:; /ーr ヽ . l/ `い: : :|:`: ..、 ____,. ィ ど´ / ∨ヽ:.!`y'ノ ノrヽム,(´ ノ /:.7ヘノ { / r‐'/:.〉 イ`i /l: :| !て V rイ !/ヽ./ ! l !:.{ ! !ーr イ l / / ト、 | l:.| l ! ! ! l ヽ、 | }、 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ すぐ近くで、二人に好きと言われて。 お母さんは、にっこりを超えて、ちょっぴり恥ずかしくなってきました。 でも、あえて顔には出しません。 恥ずかしいよりも、うれしいの方がずっと勝っているからです。 441 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:30:00 ID:c970524c 「……でも、アンタはホンマにええな、ウチはうらやましいわ」 「んっ? うらやましい?」 「ああ、うらやましいわ。 好きなモンを、ちゃーんと好きって言えるうちに、 好きって伝えられるんやからな。 ウチはもう、ウチのオカンらには、言えれへんからなぁ……」 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ( ゝ───-..... 、 /.:.:.:::::::::::::::::::::::::.:.:.:`ヽ /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\ /.:./.:/.:.:.:.:.:.:.:.:/ :/: : /^^^^ヽ.:.:.:\ /.:.:/.:/: :/: : : :/: /: : / ヽ.:.:.:.:| |.:./.:/. :/: : : :/: /: : / |.:.:.:.| |: : /: :/: :.:.:./_ノ|::`メ、 \ |.:.:.:.| |: : : :/ l:.: :./、_|/ ___ , リ.:.:/ ノ.:.:.:./ |.:.:/ `V ハミ、 彳行V´.:/ /.:.:.:.:.:.ト、.ノ:./ 弋ヒ. ソ ヒ .:ソノ.:/ /.:.:.:.:/.:.:.:.:.>ー小、 ハ |.:.:.:./.:.::::::::::::::::::::(> ` ´ . イ.:.:.:'. |.:.:/\.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|\| > ー< ):.人:.:.:.} ヽ( \.:.:./ ̄\  ̄\/__ノ\ : :/ /: : : l : : : : : : :| : :ヽ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ そう言って、さびしそうな笑顔を浮かべた少女の姿に、 お母さんは思わずぎゅっと胸がしめつけられました。 そうでした。忘れようとしていた、あまり考えないようにはしていたけども。 この子は、なにもかも失ったから、この家に来たのでした。 442 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:30:32 ID:c970524c お母さんは、思わず少女を抱きしめようとしました。 「……ぎゅーっ!」 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ≧⌒`丶イーヾ-イ≧=- 7 ≧ミイ ヽ 、 イ ミ// ヽ // \l l l/ ト / {{ |/| /|/ヘ lヽ|\|ヘ 从 ヘ /⊂⊃ \|⊂⊃ リ l 从 ゝl ト U _ U /ソリ 从 ミx._ /:::::::l 彡イハ从 イ / ゝ ト /:::::::::l / ハ/ }∧ /二二二二二二二二| //三/  ̄ ヽ三三>ヘ┐ /;;;;;;;l三 |、_丿三ニ( `j /;;;;;;;; / |/::::::::/: : : : : : |::::::::::ヽ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ けれど、それより先に、少女が娘に抱きついていました。 443 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:31:18 ID:c970524c ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ __>\| L_ / :  ̄`ヽ: : /¨ ̄: \ /: : : /ミヽ V r勿\: : : :\ />-─: : : : ̄ : : : : ─-<、: \ //: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : \: :\ //: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ヽ : \ ∠/: : : :/: : : /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ヽ: :\ //: : : :/: : : : / : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :i: : : \ //: : : : i: : : :/{: : : : : : :ハ: : : : : : : : : : : : : : : : :i: :< ̄ //: : : : : ! : :/ {: : : : : : ハ: : : /: : : : : : : : : : : : i: : ヽ ソ i : : : : ll: :/u !: :!: : : :! ',: : :.ハ: : : : : : : : : : : : !: : < l: !: : :/ー/┼‐ヘ:j´、: : !ヽ '; : ハ: : :.j: :´: !: : : : :i: : :/ |: !: : ′v__,.二_V ヽ: :! `V、_!: :j: : : /‐7: : :!: : | |{イ: :; 〃トzイ リ ヽ;! ィ=-、 V`|: : / ̄: : : { : : ! ハ V ! ⊂ー=' {て´ソヽ !: :!:-‐、:∧:.{: : :| /ハ ',//// `‐とつ´!: !/´ }: : ヾ!: :/ ´ >{ ′ ////: ! /: : : / : :| -‐´. .ハ レ _ イ;ハ:/ : : 〈 /. : . /.:丶\ _ //: .V: . ヽ : : : | /: . : . :ハ. : 丶 \  ̄ == イ:.レ: . : . : . :ヽレル' ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 「……一人じゃないよ、私たちがいるよ……!」 「……ああ、うん、そうやったな…… あんがとな……アハハ……」 一番はじめに、少女が笑顔のまま泣きはじめました。 次に、娘がもらい泣きだしてしまいました。 お母さんも、いつのまにか涙ぐんでいました。 みんな泣いてしまったけれど、悲しくて悲しくて、 とてもやり切れなくて泣いたわけではありません。 お父さんからのお手紙は、まだ来ないけれど。 お返事を出す時は、このことを書きたいなぁと、お母さんは思いました。 444 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:31:49 ID:c970524c ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::...:::... ...:: :........ ... . .....:::... ...:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::.:::.. ....... .....:: .. ...:: :.... .... ....::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::..:::.. ... ....:::::... ...─- 、 .. .. ...:::.. ... ....:::::... ...::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::...::: .........:::: :...... / ヽ ..:: :.... ...:::.. ... ....:::::... ..:::::::::::::::::::::::: ::::::::::::.. ...: :.... .::::..... ...:::.. l ..... ...:::.. ... ....: ::::... .:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::.:::.........: ::... ... ヽ / .. ... ...:::.. ... ....:::::... ...: :..:::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::. :. .:::::: ::.... .::::..... ` ー--‐' .... ...:::.. ... ....:::::......:: ::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::..... ...:::.. .... ... .. .: .. ..: .:::.. ... :. .:::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::. .:::::: ::.... .::::..... . :: :.. . ... :. .::::: ::.... .::::..:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ それから、少し後。 六月の、終わり頃のことでした。 445 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:32:30 ID:c970524c ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ( ⌒ヽ、 ( ) ) 、 (: ´ ) (´⌒::::` ) ( ( ; 人;_| | ´ ⌒ ) |.」.| .| 」| |人;;从;;;;: (´:: ) ..:) ; 人;;从;;| .|-l .| .|. l⌒l‐┐ (::::::: ;;人;;; 人;;从;;;;:|_:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.| (´⌒;:⌒`~;;从;;人;;;⌒`;:(´⌒;:⌒`~;; .l |:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|人;;从;;;;:(´⌒;:⌒`~;;从;;人;;;⌒`;:(´⌒;:⌒` ;`(´⌒;;:⌒∵⌒`);(´∴人;;ノ`;;`(´⌒;;:⌒ l | .|::::::::::::::::::::::::::::::::::: | ,,| ̄ ̄ ̄;`(´⌒;;:⌒∵⌒`);(´∴人;;ノ`;;`( F√i-ュ| ̄|明-ュ| ̄L―┐-ュFl-ィニニユ 「 ̄|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ニ´t| /F√i-ュ| ̄|明-ュ| ̄L―┐-ュFl- ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ またまた、お母さんたちが住んでいる町に、バクダンの雨がふってきました。 花火のように、ふり落ちてくる火の玉が、 お母さんたちの町と、人を、赤く染め上げていきました。 446 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:33:04 ID:c970524c ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 、_ _____ \:ヽ、 ,ィ \: : : :;: ̄::`=:‐-ヽ:.:`:=:‐::─::─-.、_ / '--ァ >'´.: : : : : : : :;/|: : :i:: : : : : : 、:: : : :`ヽ、 ヘ '-ァ /:/..: : : : :/: :.;イ |: : |、::. : : : : : :、:: : : : :..\ ヘ=-┴ /:/. . . . : : :/: :;/ | |: ::| 丶: : : :.、::.:\::: : . . ..ヘ '´/. . . . . . _:_,'_;ノ | |: ::|`ー─-: . i.. . :.\.. . . ..ハ ´`ヽ/: : : : /: : :/: ::/ | |: :| ∨: : :|:: : : :、::\:.: : :} /:;': : ::/: : :/'|:.:/ | |: :| ∨: :ト、:: : .:ハヽ:ゝ:: :|‐-、 /::/.: : ::l: : / |/ | ヽ:| u. l:\|:::\: : :|::: : : ::| /:/: : : :::|: :∧ ,.=.、 .. . . . . . . ,.=.、、 |:: : : : :|::\:|::: : : リ '"|: : : : :::|:/::::} :|l j:| : : : : : : : |l j:|; |:: : : :i:|:::::: : : :i::/ |: : : :.:::::;/:::,| ゛=" : : : : : : : :.゛=" |::i: : :|:|、:::::: : :l/ |: : :/|/|:.( | |::|: : :|:| ):::: : :| |:/ |:::`l、 u. l ̄ ̄  ̄ヽ |::|i: :.:|リ'::::::|ヽ:| ´ |: :::::::ヽ、_|___.. ._,}_ノ|/|: : :|::::::::::| `ヽ:;/|:/ヽ::__;;〉 ̄ ,{;/ ,/ ヽ:/::::|\:| ___r===ュ__,ィ'´~ ̄`/'`ヽ"__,/ / ,ィ'⌒ヽ、 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄|: /__,/'|o|:\_,//'" ̄`ヽ.〉 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 空しゅう警報の音で飛び起きたお母さんたちは、 あわてて起きて、外へ飛びだしました。 逃げ道はすでに、逃げる人、人、人たちで、いっぱいで。 遠くの方では、赤い火がゴウゴウと燃えていました。 447 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:33:34 ID:c970524c 「は、はやく逃げないと……!」 「どこへや!? 山の方か!? それとも、防空ごうの方へか!?」 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ,.-‐==‐- ん::: '´ 人:::::、 >ー≦:::::::::ニ=- _ ,.::'゙.:.:::::::::::::::::::::::::::::::::::ニ‐_ 。゚.:.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ̄ミh、 η.:.:::::::::::::::::::::/.:::V:::::::{:::::::::.゙:;:':. ∥.::::::::::::/.::::::/.:::::::::iヤvvヘ::::::::::.゙:;::, i{.:.:::::::::∥::::∥:::::::::::j:| /:::::| ゙: ||i:::::::::::i{:::::::i{:::::‐ァ::7; u. }ト、:从_j . ノリ:::::::::::{{:::::::jj::\.::// ,.メ7人\`ヽ /.::::::::::::;::从:::::从彡'∠., 〃⌒ハ::{::ハ / i{:::::::/:::i{::乂V::ハ〃⌒` 丶 }::}::}::::ノ { 乂::i{:::::人:::{`}::リノ u..⊂=⊃ .ィ:ノノ ´ ヽ\` ー-ノノ ∨ミ=‐- r ´ ̄ _ ‐<`、 `ミミ {ノノ\ _ ‐ ̄ ', ` {‐=彡ヘ...ノ _,. 冖=- .,_ } ! {{ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ お母さんは、走りながら考えて、でも余裕なんてなくて、 すぐに答えなきゃいけなくて、思わず泣きそうになりながらも、 後を一生けんめいついてくる二人に、叫びました。 「防空ごう――あの時入った、防空ごうにいきましょう!!」 448 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:34:05 ID:c970524c それからお母さんたちは、一生けんめい走って、走って、 なんとか防空ごうにたどり着きました。 でも、とっても残念なことに、中は人でいっぱいで、ぎゅうぎゅうでした。 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 「もうここは入れない! ヨソへ行ってくれ!」 「戸を開けるな! 敵に気づかれたらどうするのよ!?」 お母さんは、なんとか子どもたちだけでも……と頼もうとしましたが、 近くにバクダンが、落ちてきて。 頼む余裕もなにもなく、泣く泣くお母さんたちは、また走り出しました。 449 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:34:59 ID:c970524c 「ねぇ、お母さん! どこに逃げるの!? ねぇっ!?」 「どこでもええ! とにかく走って逃げるんや!」 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ _ _, ___,> Y´'ー-、 _>z二_ ___`ー≧__ ; >┴'´ ̄` ‐-、 ̄ 7 < / ヽ `Y′之> . / , l、 、 , 、 | ヽ }< ; l ,ィ {7Tハ T寸寸 | }ノヘ ,ヘ, |(○)三(○) / / ,/ / '、 `| u. ヽ ゚。「)'/|/ / ; \ヽ、_ c=っ u._,.ィT/=/ < l 7Eニ::ィ1 〉 ゝ'イ/ヽ::::` 、 / i´ ̄ `ヽ::| j| < / ヽ \ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 娘と少女は、すでにクタクタで、泣きべそをかきながら、 それでも一生けんめい、お母さんの後をついてきていました。 お母さんも、なんとかどこかに、別の場所に、安全なところに。 三人で逃げようと、せめて娘たちだけでも逃してあげようと。 同じように、逃げまどう人たちの間をなんとかすり抜け、 ときどきかき分けながら、ずっと走り続けました。 一生けんめい、死にものぐるいで、走り続けました。 450 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:35:30 ID:c970524c ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 戈/リ 戈____ ∨!_|三≧=三二戈!.::|戈_ /i ̄\ |>! =<≧=― 、____ \|二≧ト、 弍_人_ノ: : : : : / / / ̄:|戈_l弍_ __人∧ ∨ ̄! ∧ノ≧-<二>,=ァ \! \_/ ̄!.| ̄\ . : : ::|: : : : : : |:::ト==_/ ≦二 ̄i i .:戈≧≦ ̄>、 . . ::::::|: : : : : : |:::|戈/ 戈≧イ ̄\_!_人_>' \ ̄\ ..: : ::::::::|: : : : : : |:::||/l|  ̄\/ ̄ _!全ァ、  ̄≧==-、_∧_: : : :::::::|: : : : : : |:::|У| \ \_./ // / ̄ ̄\`ヽ!≧ァ、__>、::::::|: : : : : : |:::|_| ∧__/./__ノ ! ̄\∧.人_| ̄》>< ̄∨\三二≦三\!__  ̄ ̄ ̄\! \ノ ̄ ̄ ̄|!\ ∧_∧_!/ ̄>、 \.,、三三,、::::\ \ | ./ ∨ /.> \`ヽ ||ーく .〉:i:i:i:i:i:i:\_! ___ \ / \ \〈:::〈 ≧ノ ∧| ̄ ̄!\≧、:i:i|:i:| >、 \./ |\ \_>―イ |/\/>夕三∧戈! / :\ / .∧_≧、_>〈 ̄>、リ >!夕\三\:\ _/ ̄ ̄!__ >、./ l∨\ /`ヽ,人__∧―<_,.人./\三:∧:::\ \___.>'´ \ ,,,,人_/ ̄〈 .| \\ \__>/| \三\::::>、 / | / .......∨ >、 . \人 \\::::::/ \ /\三:\!_∧ _ 人 \_...::::::::::::.〈 >、|\\ \\|:::::.... >――\三;≧、\ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ――いったい、どれぐらい走って、どれほど逃げたでしょうか。 やがて、息が切れて、体力も尽きて、倒れこむようにしゃがみこんで、 でもそこは、すでに火で焼かれていて、だからこそ、とりあえず安全な場所で。 やっと、やっと、休めると、逃げることができたと、 これでもう安心だねと言おうとして、後ろを振り返ると―― 451 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:36:12 ID:c970524c ……娘と少女の姿は、どこにもありませんでした。 お母さんは少しのあいだ、何が起こっているのか、 さっぱり分からなくて―― すぐに何が起こってしまったのか気づいて、叫びました。 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ / / / / , / ハ { ヽ \ヽヽ . / , / / / // l l| ∨ ハ} '. , '′ , ′ / / / /´ | 八 、 | / l ー=ニ´ -‐¬′ , / / / l| l \丶、 |/ l| / ,′ /〃/ / | } 丶 \} | | . / ′ l| || ,/ , | { ト、\ | | . ,′ | /j L」 厶__,ノ , 、」、__jヽ |i |`丶、 } | ′ / !  ̄|_]」二ニ -- ′ |\{ ̄\ |l | ` ー┼}- . l /| | | j,≫-‐ ¬、_ } ,>-=ミ、 || } } | | / |l !l |/n '´ ̄`Y′ t.ィ'⌒丶ヽ\ハ/ l| l / l| ! | | キ{ } } い ∨ , 八 j' { |∧ }从}j r‐、j j ,ハ}/} // 丶、 / ∧ |l ヽ、 | )ヘ.___)ヘ , 'tー~' く j // \ ,′'. { \{'r て_ r~J `て ハ〈` , // ,′ ', \_j{ }i __, -- 、_ }} い/ 〃 / 、 八 {{ ゚ Y´ ̄`⌒ヽ {{ }′ /′ / `、 ,′{丶 リ 、L.. -‐‐tノ }i 。イ ,′ / 、 ∧ \ `〉。、 c彳〃 /} `、 { ヽ ∨ {>-┐ --‐゚ r</}/ / / ヽ| \ { ヽ } / ノ,xく / \ / `〉、 \ / ,′ヽ\ / / 、 >-‐'′ /\ \丶 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 泣き叫びながら、必死で、娘と少女の名前を呼び続けました。 ちょっと遅れてるだけ、まだついてこれてないだけど、 必死に思い込みながら、名前を呼び続けました。 けれど、どれだけ二人の名前を呼んでも、叫んでも、 二人が返事を返してくれることは、空しゅうが終わり、 あたりが静まりかえり、やがて夜が明けはじめるまで、ありませんでした。 452 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:36:42 ID:c970524c ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ iv'ヘ __ | ;`;| /:/\ | ;'l:| i'`'i 、 ┌个┐| | .:_|___. !:`l'| ζ\ |;`;| ∥ | .:|...:|/:/...:.:|..: : : : : :.:`L..r─Lム、 -、_|_.;l:| \';、\ :|':i;;| . i'1 ||/> | └┴┬i::::|==========|: :Lム、ロ.::| ー|_}:;| \';、.\|;';;;| ./〉 |;|_r// / |[]..::[]. 〈〈::::|::::::[]::::.:.:[]..r、]: :: . : . : .::| -|_|`|_r:‐:‐:‐:‐\';、\;| r‐//┐_|:|::::::::;⊥、r/.: ,、 |. : : : :.: :\:|:::::::::::::::::::::/. : : . ┌::、 /〉: ー|_};|::::::::::: : :: : {二l\;i`!、::://:::::::::::::::::::r| .::| /.:::: _ .||_ | : : : : : :、 〉〉/〉::::::;;:::〈 : : : -┘:::L、r‐//┐ ,、: -|_| ̄/\:::::::/`|_{┬| |;、\::::::::i'|::::::r┴冂、 .:::://\| ::::ト、__ : : :||_'//、п∥::.:l| : : :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ニl.r┴、_|_|_|:>:::::〈. ::〈|-、_/::::::..\r':.|.::[,/T>.:/ロ〃乢.>''「 ̄ ̄|[ ̄ ̄ ̄ ̄|「 ̄ -TニTニTニTニTニTニTニTニT《┴┐::| .:::|_rェ :::|:.:..|-i_::_r√ソ\>へ:| :|:ln| :]:|:П叮/7_」L_:.」L____.」L ~三三三三:.三」L三三三」L三三〉〉┬┴┤ .:|_;!:..|:::..|::::.|\.::::》: :::L;:.::r| .L/∟ロ⊥》> ̄]匚 ̄ ̄]「 ̄ ̄]「 ̄「 L l「 ̄ ̄ ̄|「  ̄ ̄|「 ̄ ̄|r'.:| .:|ー:|_ .|::::.l\|_;;||;;:|L:<)┴‐'''"~::::::::::::::::::}「 ̄ ̄|「 ̄ ̄ ̄|「 ̄ ̄l[ ̄| ]_」L:___」L____」|__ |》〉 ~゛`┴::-'⊥::.∟ロ⊥!:::::::::::::::::::::::::::::::::::>''「 ̄ ̄|[ ̄ ̄ ̄____」L:._:.」「 ]「 ̄ ̄]:[ ̄ ̄ ̄]匚」[ ̄][く《:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/7_」L_:.」L___|「 ̄ ̄ ̄|「 ̄ ̄  ̄|「 ||  ̄ ̄|「 ̄TニT ,, 》> ̄]匚 ̄ ̄]「 ̄ ̄,, __,」L__」|____」L 三三三` ,. ` }「 ̄ ̄|「 ̄ ̄ ̄|「 ̄ ` ,. . _|| |L  ̄l|「 L l「 ̄ . `|ト、 _」L____」L:._ ]_」L:_ ]「 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ……ようやくあたりが、少しだけ見えるようになって。 お母さんは、逃げてきた道をたどって、二人を探しはじめました。 逃げている時は、気づかなかったけど、 命があったものの跡が、そこらかしこに残っていました。 本当は、とっても怖いけど。お母さんだって、今すぐに逃げだしたいけど。 それでも、命の跡の中に、二人の姿がありませんようにと、 本当に、けんめいに祈りながら、歩いて、歩いて、二人を探しました。 453 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:37:15 ID:c970524c ……探しはじめてから、どれくらい時間がたったでしょうか。 ケムリでも、吸ってしまったのでしょうか。 それとも、火に巻かれてしまったのでしょうか。 あるいは、両方でしょうか。 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;丶. _ _,. ―- 、 、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; r‐---―- 、丶、__ 、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; 丶ー'___;;;;;;;;;\ ー丿 `丶、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;\;;;;;;;;; ̄;;ヽ ヽr_、_;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; lヽ;;;;;;;;;;;;;;;;\.r‐- 、_ |-|_ト、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; |八;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; `丶._, -― 、 'ーL|‐|-、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;、;;;;;∨ \;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; \ └ヘ‐'\ \ \ \;;;;;ヽ ーヽ;;;;;;';;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;  ̄`ヽ._\_ヽ__',;;;;;|;;;;;;;;_|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; `ー' ̄ ∟;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; `¬=‐〈 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 倒れかかった電柱に、もたれかかるように。 黒くすすけて、それでも手をかたく握りしめながら、 娘と少女が倒れていて―― 454 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:37:47 ID:c970524c ● ● ● ● ● 455 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:38:19 ID:c970524c ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; 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'/ \ __ __,,/_______ (__,/ // ,. ‐,\ / ``ヾ 、 (_,/ ,/ //´ \ _ , -‐'ー―-、 `ヽ、 (__,./ 'ー― ' ´ ` ‐-`、__/ `ヽ、 `ヽ、 / `ヽ、 `ヽ、 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ あれから、どうやって家に帰ったのか。 あれから、どのように二人を連れて帰ったのか。 あれから、どうやって二人を見送ったのか。 あれから、どのように息をして生きているのか。 もうお母さんには、よく分かりません。 涙も出しつくしてしまったのか、 二人がいた時のことを思い出しても、 薄くて細い水てきが、つーっとほおを、つたうだけでした。 457 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:40:27 ID:c970524c ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ││ // /  ̄ ̄ . ̄  ̄.. ̄ ̄│ l  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ // / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ //  ̄ │ li ___________________ // / ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ //  ̄ ̄ ̄ ̄│ ll ________// / ________//  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ │ ll // / _________ // / li. ____ │.ll // /、- ‐‐ // / .li______ │.ll _______// / _______ // / li │ll ___ // / // / li. _____ │ll ______// /________// / li l ll // / .// / li ‐‐ ____ l ll - ‐‐ // / ____ .// / __li_____l ll _____// /._ ______ // /  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 一日中、ボーッと天井を見つめて、死が近づいてくるのを、 ただずっと、亡霊のように、待ち続けているだけの日々。 それでも、一日何も口にしなければ、お腹もすくし、ノドもかわきます。 生きるために、なにかを食べて、お水を飲んで、また死を待ち続ける、のくりかえし。 いっそこのまま、またバクダンが落ちてきて、 思い出がつまったこの家ごと、跡かたもなく、 こっぱみじんにしてくれないかと、思うことさえあります。 お父さんからの返事は、まだきません。 458 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:41:00 ID:c970524c ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ .i ', ,.-''''''''''¬‐-!、、,. -‐¬''''""゙゙゙ ̄ ̄``丶、 i _,,. --―――-- ,,_ _| /, ゙:、 .i. / ̄`´.. _,,..、、、、_ ``''"´ {// i. i } :::::.. , '" `` ‐- jl!| i .i ./ :::/ '''''‐-=t-、=i l l .! . / -- .,,_ ::.. `7 i ! {.;. / -ー¬≧、:./ ,' .l ./ :i '''"´..:: /゙/ ,' .! ! l ...::: ,r'゛ ! / i i ...... ! __,// i / __,,.. - .l | :::::::l、 __,,,,二ニ=! ゙! _,, - ''"....:::::::::::: i ! ハ、 、,,_丶、_j _ / ,,. - ''"....::::::::::::: .i :i. ..::::::;ィ'´ \ \ \''ーl:.. _,,.. -―'''ニ-''ヾ´.....:::::::::::: i .:〉 乂r‐-、` ,,_ :::.... ,.- 、ヽヘ-ヘ:: ニ二 ..,,,___ノ ! i:: `ゝ''"``''' (、 、_ヾ:、/.: : : : : ::::::::ヾ:::::::`...‐- .,,_ .l / V´ ̄了 く ̄ :::::`{.: ゙:、  ̄`::::::- .l ! `ー- ゝ :} i .! |...:. .| l j  ̄`ヾ、::::::::......... ..........::::::::_| l | ::::::`:::::‐-::::::::;;_:::::::::::::::::::_;;;::::::-‐::''":::| l ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ あの時、防空ごうに行こうと思わなきゃよかった、とか。 あの時、ちゃんと二人の手をつないで逃げればよかった、とか。 あの日、たとえ火の中でもいっしょにいればよかった、とか。 そうしたら、一生いっしょだったと言えた、とか。 後に残るは、後悔ばかりで。 お母さんは、ただただ、悲しくて悲しくて、しかたがありませんでした。 459 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:41:31 ID:c970524c ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::...:::... ...:: :........ ... . .....:::... ...:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::.:::.. ....... .....:: .. ...:: :.... .... ....::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::..:::.. ... ....:::::... ...─- 、 .. .. ...:::.. ... ....:::::... ...::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::...::: .........:::: :...... / ヽ ..:: :.... ...:::.. ... ....:::::... ..:::::::::::::::::::::::: ::::::::::::.. ...: :.... .::::..... ...:::.. l ..... ...:::.. ... ....: ::::... .:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::.:::.........: ::... ... ヽ / .. ... ...:::.. ... ....:::::... ...: :..:::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::. :. .:::::: ::.... .::::..... ` ー--‐' .... ...:::.. ... ....:::::......:: ::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::..... ...:::.. .... ... .. .: .. ..: .:::.. ... :. .:::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::. .:::::: ::.... .::::..... . :: :.. . ... :. .::::: ::.... .::::..:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::____________ :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/\_\_\_\_\_\_ ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::://:::::::\_\_\_\_\_\_ ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::://:::::::::::::::::::\_\_\_\_\_\_ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ そんなこんなんな日々が、何日か続いた、ある夜のことでした。 460 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:42:01 ID:c970524c ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ .i ', ,.-''''''''''¬‐-!、、,. -‐¬''''""゙゙゙ ̄ ̄``丶、 i _,,. --―――-- ,,_ _| /, \ .i. / ̄`´.. _,, ‐ ''''''''''=- 、``''"´ { //, i. i } ::::;: '" ‐- .,,_ ...`丶、 j !:{'′ i. .i ./ , ′ `` <ヽヾト!| l l .! . / _ ̄``丶、:::.. `\Y:! l ! {.; ,' _..,.. '二之ニ\.::... `:! l .l ./ i /,,.:..{K´i′ハ| .\:、::.! i .! .i :l _ ! _,ヾ''ー―'′ ヾ:j i i i ..... :i. \、\ー-- ニ=ー . ゙! ,' __,,.. - .l | :::::.::! :. \:、\ /! i _,, -'"....:::::::::::: i ! .ハ ::.. `、`:、``ー l || /.l j ,, - '"....::::::::::::: .i :i ..::::l ::::.. `ト\ __,'厶-‐='-゙l . _,,.-' ....,,-く'"...:::::::::::: i .:〉 ::: 乂ト、 ::::\ l `<、==- -ニ=!:::. ''" 丶..、... } ! i `ヾ t、__\`ー--テ'" ̄ ̄``ヾ; .. : : : : ::::::〈:::::::`...‐- .,,_ .l / \゙:、 `\ く :::::... i .::: ヽ  ̄`:::::: .l ! `` `ー' ::.. } i .! |...:. ../ l j  ̄`ヾ、::::::::......... ..........::::::::_| l | ::::::`:::::‐-::::::::;;_:::::::::::::::::::_;;;::::::-‐::''":::| l ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 夜のとばりもすぎたころ、ふと、お母さんは目をさましました。 誰かが、玄かんにいるような気がしたからです。 こんな夜に、誰かが来るわけでもないのにと、 一応行ってみると、やっぱりいませんでした。 461 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:42:32 ID:c970524c ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ . |: | |: :| .|: : : :|丁¨ ' ┼- ,_| | | | . |: | |: :|_ 」: : : :|| | | ̄¨ ''' ┼-- _| | ‐┘  ̄ ̄: : : : : : : : ::|┼- ,_| | | | ̄ …┼- : : : : : : : : : : : : : : : :.::_|⊥=-ー┐- ,_ | | | | : : : : : : : : : : : :.: :_,.二|┌…¬ | 丁 '' …┼- ,_| | _,,.. -─ __二二.._└  ̄|_|_─- _| | | ̄ …┼- く < ̄ : : : : : : ̄7- ___|〉〈  ̄ ─- __,、-=====- ``~、``~、、: : : : : :.|: : : : ゚̄l丁: T=- __ 〔〔{ }〕〕 .``~、、``~、 ``' _ |: : :.: : :.:| |: : |: : : : :  ̄ '┐ |≧=‐-----‐=≦| ‐、、 ``~、、``~、、`` - _| |: : |: : : :_,,.、丶´ :|三三三三三三-| ..,,_ ``~、、 ``~、、``~、、`ー‐‐ ''´ _.。sS゚乂三三三三三乂 γ⌒' ,,__``~、、 ``~、、``~、_,.。sS⌒ ≧=‐-->''~ 乂___ノ>⌒ ..,,_``~、、 ``~、:|~"''=- __ L``~ 乂__ノ{乂___|:::|⌒=- .._``~、、 :|``~、、 ~"''=- __ `` 乂__ノ{乂___,|:::|: : : : : :⌒ =- __``~、| ``~、、 ~"''=- _ ~、、 乂 |:::|: : : :.::,, ´ ̄`丶=┐,,| ``~、、 ~"'' ``~、` ー|:::|: : : _〈 ..〉|::::| _ |``~、、 ``'|:::|-<::ヘ`~¨¨¨¨¨´./:|::::| |:::| |┌ └-≧s。``' _____/: :|::::| |:::| ||| 二≧s。``~、.::|::::|  ̄ |└': : 二≧s。`゙|::::| |: : : : ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 気のせいだったのかな? と思い、また寝ようとすると、 今度は、台所の方で、誰かがいる気がしました。 気になっていってみると、やっぱり誰もいません。 でも、誰かがいる、という感じだけは、なんとなくするのです。 お母さん、さっぱり意味が分かりませんでした。 462 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:43:03 ID:c970524c ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  ̄| | |______,|| |.| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄| | |───||l──‐|| |.| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | | ||l. || |.| | | | ||l. || |.| ┌‐‐l]‐┐ | | | ||l. || |.| | ::.。゚o.: | __ | | | ||l. || |.| │ ,;ゝ;:'│| 07.| | | | ||l. || |.| └――┘|;;;;;;;;;;| | | | ||l. || |.| |''''''''''| | | | ||l 0|| |.|  ̄ ̄ | | | ||l. || |.| | | |O ||l. || |.| | | | ||l. || |.| | | | ||l. || |.| | | | ||l. || |.| | | | ||l. || |.| | | | ||l /,||_|,l_____________________ | | | ||l // | | | ||' / | | | // | | | // __________________ | | |//. / \ _| | |/ / \ /| | |. / \ |_l/ / \ / l二二二二二二二二二二二二ニ二二二二二二二二二二二二l | |l l | | |_,,ソ !,|_,ン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ それからのことです。 家にいる時は、常にどこかに、誰かがいるような気がするようになりました。 はじめはあまり落ち着きませんでしたが、ふしぎとすぐに、なれました。 なぜだか分からないけれど、誰かがいるような気がする時は、 ふしぜんな状況なのに、ふしぎと落ちついた気もちに、なれたからです。 463 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:43:33 ID:c970524c これは、いったいぜんたい、なんなんだろう? お母さんは考えました。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ , -‐: : : : ̄ ̄``<「 ̄ マ . /: : : : : : : : : : : : : : : :| \ . / : : : : : : : : : : : : : : : : : | ト 、 /: : : : : : : : : : : : : : l: : : : : :|___/ト、ヽ /: : : : : : : : : : : : : : :.|: : : : : : : :|: : : : :.|ヽ\l |: : : : : : : : : : : : : : : :|: :|: : : : : :|: : : :l: |: ヽ |: : : : : : : : : : : : : : : :.| :|: : : : : :|: : : :|: |\| l: : : : : : : : : : : : : : : : l.:|: : : : : :|: : : /: | | . ',: : : : : : : : : : : : : :/~.l |: : : :l: :|: :/l: :| . ',: : : : : : : : : : : : :ヽ ',|: : : :|:.:|イ `/ ヽ: : : : :.l: : : : : : :l:`7|: : : :j: :| { . Ⅵ: 、: :|: : : :.|: : |: / |: : :./|: lノ い: ヽ|: :. :λ: :レ‐-|: :./‐レ′ ヽ ハ: :./气 |、_ | / ツ V__`l`ヽ`く ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ どうせロクにやることはないので、 考えて考えて、考えて……お母さんは、思いました。 これは、二人が、お家に帰ってきたんじゃないかって。 464 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:44:48 ID:c970524c 七に七をかけて、四十九日、という言葉があります。 これは、死んだ人が、死地の先のいき場所を決めるまでの、 大事な期間なのだそうです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ┌=================================┐ `i i´ l!================l! ┌一_ニl l二ニ─‐`‐-ニ二二二二二二二二二二二二ニ-‐´‐─ニ二l lニ_─┐ || ̄ |_|| | |┼┼||`────────────´||┼┼| | ||_|  ̄|| || |_|| | |┼┼||Y⌒Y⌒Y⌒Y'___Y⌒Y⌒Y⌒Y||┼┼| | ||_| || || | || | |┼┼||─=== 三 。。。ll。。。 三 ===─||┼┼| | || | || || | || | |┼┼|| ̄r;ュ ̄ ,ハ ̄圖圖 ̄,ハ. ̄r;ュ ̄||┼┼| | || | || || | || | |┼┼|| / lヽ 彡ミ´ ,,,,, `彡ミ / !ヽ ||┼┼| | || | || || | || | |┼┼|| L |,ノ ミ彡ミ / , ヽ ミ彡ミ L..|,ノ ||┼┼| | || | || || | || | |┼┼|| ヒヨ ミ;シ | ,.(.)., | ミ;シ ヒヨ ||┼┼| | || | || || | || | |┼┼|| || }l{ | l!_ _il | }l{ || ||┼┼| | || | || || |_|| | |┼┼|| || }l{ \>二</ }l{ || ||┼┼| | ||_| || || |_|| | |┼┼|| || _ 〉]゙[〈 _ || ||┼┼| | ||_| || || | || | |┼┼|| || |@。 二ニ二 。@| || ||┼┼| | || | || || | || | |┼┼|| _||_ @|@ _。 @|@ _||_ ||┼┼| | || | || || | || | |┼┼||,(二l^l_) | )( )|( )( | (_l^l二),||┼┼| | || | || || | || | |┼┼||===|z|==> =<__>=<__>=<==|z|===||┼┼| | || | || || | || | |┼┼||__}呂{...|(◎)=(l^l)=(◎)|...}呂{__||┼┼| | || | || || | || | ニニニ |──┬┴─────┴┬──| ニニニ | || | || || |_|| | |橆橆|| 中 _ll_.┌t⌒t┐ _ll_ 中 ||橆橆| | ||_| || || |_|| | |橆橆|| 〕〔 }H{ {ニ器ニ} }H{ 〕〔 ||橆橆| | ||_| || ||_ | || |  ̄li二」 .]-[. |盥| \_/ |盥| ]-[ |二!! ̄ | || | _||  ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ヒ三三三三三三三三三三三三三三三コ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 死んじゃったのは、不幸せだけど。 死んじゃった人が帰ってくるのは、幸せで。 けれど、死んじゃった人が、 またどこかへ旅立ってしまうのは、やっぱりすごい不幸せで。 お母さんは、喜んでいいのか、悲しんでいいのか、よく分からなくなってしまいました。 465 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:45:18 ID:c970524c ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ / . . . . . . . . . ./. . . ./ | |: : :|: : ::ヘ: : : : : : : : : /:,イ. . . :/: : : :::/|: : : :/ | |: ::|ヽ: . .ヘ . . . . . . . /::/ /: : : /: : : ::_/_|_:ノ:/ | ヽ|‐:|-|‐: ::.|: : |:: : : . . // /: : : :j: :: :::::/ |: :/ | |: | |: ::: :|: ::|: : : : : /'´ /: : : : :|: : :::ハ゛\|/ | |:| |: ::: |: :|: : : : : : /: : : : :/:|: :/::::j \ ___|j__|_:_::|:.:j: : : : ::o |: : : : /|: |/:::Ο ̄ ̄ \ |: ::|/: : : : ::::::: |: : :.://::O::::ノ \ |: /: : : : ::::::::: |: : :/ |/|.::::::{ r-‐" ̄ ̄`ヽ、 ○ |/: : : : :::::::::/ |:::/ |: :::::ヽ、 { ヽ |: : : :::::::;:::/ノ |/ |: :::::::/\| j j: ::0::/:/´:::: |: ::::/__|:/\ ,ノ , /: :::;イ:::::/:::::::::: |:::/´ ´ `>‐-‐<´‐ ´ ./::;/‐|:;/-‐、:::::: /∨ .i /" ̄`Y^j l^Y⌒゛'´ヽ、 ´ `ヽ { :| {.  ̄ `〉' Y´  ̄ 〉./ / | ヽ| ゝ  ̄ソ {  ̄~ / // ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ それに、どれだけお母さんが、誰かがいるような気がするところで、 どんなにごめんねとあやまったり、娘や少女の名前を呼んだり、 ごはんが出きたよと声をかけても、その誰かは―― いや、二人は、お母さんの呼びかけに、こたえてくれることはありませんでした。 二人はただ、何も言わず、姿も見えず、そこにいるだけでした。 少なくともお母さんには、そう思えました。 466 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:45:49 ID:c970524c 二人がそこにいるのなら、お母さんもそこに行こうと、思ったこともありました。 けれど、誰かがいる気がするところで、ずっとずっと、考えて…… 結局、それはやめることにしました。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ , '´: : : : : : : : : : : : : :`丶、 /: :___ ,、_;; ―― 、: : : :\ イ: :./ _/ \ l: : : : : \ . ―――ァ'´: :. :,ィ / ノ―-.l ト、|: : : : : :ヽ _//: :. :彳 _ イ: : ハ: :.\ |‐.!|: : : :|: : ! -='- "/: :. :. :./j /: :./: : 小: : : :\ ノ: :!|: : : :|: : | /: :/: : / レ': :/: :イ: :/ | ト、__:| :\ }: : :|: : : :|: : | . /: :/: : /: :. :. :/_; 斗'7 ||: : : :「ヽ `|: : :|: : : :|: : { . /: :,イ:. :.|: :. :. :イ / |,' |\ : :|\\: : |: : : :|: :∧ /./ !:.: :.| |: :. : :|/_z=ミ ! ヽ卞z≧、: :!: : : :!: ,' \ . / ' |: : | ト,: : : :!イ7¨)ヾ ´廴ハヾV: : : :j: :| . / !: :. :l |ゝ、: :ド 」。、::d ,!辷d イ: : : /):.! . ! ∧ `!ヽ\!( ヽ‐'"/// `´"'(_ ) : : :/7: :| j/ ヽ: : :>‐}`´ ' / : :// ヽj / \: :: :ム.ニァ- 、 '` _, イ: : イ/ . \: |_{ マ ̄´/ // /\ / 乂 \ ヽ-'´ / `゛ヽ、 } ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ いつかはぜったい、いっしょにはいたいけれど。 少なくとも、二人が死地の先へ行く日までは、生きていようと思いました。 二人を見送ってから、「それから」の日々をどうするか、決めることにしました。 今のお母さんには、そうするしかありませんでした。 467 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:46:19 ID:c970524c ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.. ::::::::::::::::::::::::::::::::::);;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ⌒ヽ;;;;;ノ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ノ:.... :.:.:::.:::.:::.::.::(;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;(:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.;,:.:-‐:::':::::::::::::.... :::.:::.::.::ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;r‐、;;;;;;;;;;;;;;):.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.( ::::::::::::::::::::::::::.... :::::::::`'''‐‐--''''つ;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ:. ̄´:.:.:.(;;;;;;;;;;;;ノ:.:.:.:.:.:..:.:.:.:.:.:.:.) :::::::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.... ::::.:::.:::.::(´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; /⌒''''´: :.:.:.:. :.:.:.`'''''´ :.:.:.:.r'⌒ー-:.':.. :.:.:.:.:.::::::::::::::::::::.... :::::::ヽ、;;;;;;:::::-‐ . : : : :.:.:.:. :.:.:. :ノ.:.:.:.:.:. :.:.:.:.:.:.:.. ::::::::::::::::::::::::::::::::.... :::.:::.::.:::.:::.:::. . . : : :,:,:. :,:,:. :..:.:.:.:.:.:.. :.:.:::::::::.. ::::::::::::::::::::::::::::::::::.... ::.::.::.:( : . : : : : :.:. :.:.:. :.:.:.::::::::.. :::::::::::::.. ::::::::::::::::::::::::::::::::::::.... :. : . . : : : : : :. :.:.:. ::::::::::::::.. :::::::::::::.. :.:.:.:.:::::::::::::::::::::::::::::.... . : . : : : : : :. :.:.:. :.:.:.:.:.:..:.. :.:.:.:.:.:.::.. :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:::::::::::.... . : : : : : :. :.:.:. : : : : :::.. :::: : : : :.. :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.... . . . : : :. :.:.:. : : : : : : : : : : : : : : . : . : : : : . : : : : : : : : . . : . . . ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ もしこれが、お母さん自身が死に近づくまでの、夢かまぼろしだと言うのなら。 あるいは二人が、死地におもむくまでのしたくをしているのであれば。 そのどちらでも、お母さんはかまいませんでした。 ほんのちょっとでも、二人と一緒にいられるのなら。 468 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:46:50 ID:c970524c お母さんは、やっと少しは、元気を取り戻して。 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ _,.、 , -.、 /´ ゚゙`ヽ./ ´゚。ヽ. /´____゚ ヽ___ 。ヽ _/ ゚|;;;;;;;;;;;| . :゙!;;;;;;;|: .゚ ゙.___ ,ゝ "´ _t .|;;;;;;;;;;;| ゚. :l;;;;;;;|_,ィ.┴.、- 、` 、 '、 ( `ー―‐‐―‐‐'"7.´_,)=' '__ ノ , ' `ヽ、_ ` ー―――‐‐`´―‐ ¨_,. '  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ホコリをかぶった仏だんをキレイにして、毎日、ご飯をおそなえするようにしました。 お母さんの近くから、遠くのどこかへ行って、いなくなってしまうまで、 おなかいっぱい、食べられるように。 469 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:47:24 ID:c970524c それから、お母さんはこう思いながら、毎日祈りました。 お母さんは、いっしょには、いけれなかったけれど。 二人はいっしょにいけれて、良かったね、と。 不幸の中にも、幸せがあるとするならば。 せめてもの救いになったねと、お母さんは思いました。 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ∨ ! / ,. / __,,...--‐‐ - 、 V ム-‐'‐.' / , -'" ``丶、..V / , ' , >、 _/ / K /天 ̄ / !レ 、 ` 、 ,-'" / ! /.i 丶 , -'" ,/ / / / !. /i .i 丶 _,,..-‐''_,,..-‐''/ / / / . / / ! i ヽ '''""~. .// / / / , ',_ ! ! ト、ヽ _,..、-''" ! . // / , ' /-", ソ 仆、 ! / ! / i / ./ ;;レi / ! ! . / _,,..-,' ,イ i / / i !,' i ;;;i ! / /, -'". / // ! //./ /! .i 、_ノ ヽ / " // / ノ!. カ " / /! . / .! ! ,ゝ 〃 ./. .//../ i / / / ./ ! ! 、_ /! // / / ! ! / _// i ./ / i /ノ ! ル.' /i''! _'' /`、! ! /! / i / !! i  ̄ ノ/ レ !/ノ '' ,'゙⌒`´ヾ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ せめて、次は、一生いっしょにいれたらいいね。 お母さんと、娘と、少女と、お父さんとの、四人でね。 お母さんは、一生けんめいに願いながら、祈りました。 470 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:47:55 ID:c970524c ● ● ● ● ● 471 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:48:25 ID:c970524c ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ i / / | \|/ | / \/ / / ,へ _-- ( \ / Υ -─  ̄ (´~ ヽ -‐  ̄ (´⌒´" . | ── ──── ─ ─── ‐‐ ‐ ゝ-'´⌒´ ( (,,,,, / へ、 (´⌒''´`´ (,,,,,´(⌒ヽ / ゝ ヽ ヘ (´~' (´( (⌒` (´⌒´ *\ \ ヾ ヘ  ̄ ̄`ー─── ─- - --- ヾ * \ ヽ ヘ l \ △ \ ヽ ヘ | 、 .,へ ヽ 丶 t Υ \ \ 丶 .| ヽ .,ゝ、 \ ゝへ、 .| \ l l \ \ l l | \ ` ´ /\\ ヽヽ / | | / |\\ 丶 /\ /\ | \ \|/ | \ / /\ \ | \ ヾ \ / \ | | | | | \ `´ \ \ ! ! ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 八月。 ハチがブンブン、飛びかって。 八時の朝には、もう暑くて。 そんな頃です。 472 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:48:56 ID:c970524c ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ __ . : ´ ̄  ̄` : . / . -‐  ̄ ̄ ‐- . \ '/ .。s≦xWx≧s。. \ 、 ∥ .、(xxxxxx||xxxxxx),、 ヾ ____j{ /xx\xxxx||xxxx/x∧ 廴___ / ノ xxxxxx\xx||xx/xxxxxx 、 ヽ '´ ̄ lxxxxxxxx}(____){xxxxxxxxl  ̄`': │ lxxxxxx/xx||xx\xxxxxxl │ │ lxxxx/xxxx||xxxx\xxxxl │ │ 乂/xxxxxxハxxxxxx\_ノ │ │ ¨¨¨¨¨¨¨ ¨¨¨¨¨¨¨ │ │ . < ̄> . │ │ __ l |┌─‐ ┐| l __ │ │ r ' ー: l |└ ─‐┘| l r ' ー: │ │ l '⌒ヽ l l |_ .'⌒ヽ | l l '⌒ヽ l │ │ l 乂_.ノ l l | l 乂_.ノ 「| l l 乂_.ノ l │ │ ヽ ______ '´ `<_'‐'‐'_> ´ ヽ ______ '´ | │  ̄ │ [===========〕⌒ ─ ⌒〔===========]  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ラジオから、戦争の終わりを告げる放送が流れた頃。 お母さんは、お父さんが、娘と少女がいなくなったのと同じ頃に、 亡くなってしまっていたことを、知りました。 お返事は結局、来ませんでした。 お父さんのかけらも、何も戻っては来ませんでした。 473 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:49:27 ID:c970524c けれど、今日だけは、泣くのはやめようと、お母さんは思いました。 だって今日は、四十九日目。 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ _ /ヽ _/ \__/ \ _< __,,,フーL___」 / | \ . ィ-/ ,小 |. l ヽ . / | / ! l Ⅳ | | l / / !ィl´/ |Ⅵ マト、! ! | / .l .| !ハL_ | `! __Ⅵ| | | . / .イ |.i レう´ l う゛ヽ!、 | / //. |! lト、.代⌒| i⌒ノバ / レ′ |! ヽ |! `¨´ ' `¨// ,'ノ | . |ハ ` ト、 `ー' .ィハ 从ハ! ! 从_≧‐ ≦ ムハ」 |.r┴く \>! ト//¨ヽ / \ヽ / \ ! _\/>ァ┬―― -} |_, -ー fヽ! ̄ / /l/### ,イ ∧#####| l####/ | | V####| !#l#/ l ||∨###! {#l/ ト=-、 . ヽ! ∨#lj !#| |X } ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ 二人が、そしておそらくお父さんも、次のいき先を決める日なのです。 べそべそ泣いて、見送るのは、イヤだと思いました。 474 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:49:57 ID:c970524c ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ==| l l||===||===||===||===| | | . : : : : : : : | l l|| || || || | | | . : : : : : : . . : : : : ==| l l||===||===||===||===| | | . : : : : : . . : : : : | l l|| || || || | | | . : : : : . . : : : ==| l l||===||===||===||===| | | . : : : : . . : : | l l|| || || || | | | . : : : . . : : ==| l l||===||===||===||===| | | | l l|| || || || | | | ==| l l||===||===||===||===| | | | l l|| || || || | | | ==| l l||===||===||===||===| | | | l l|| || || || | | | 二二| l |||二二二二二二二二二二二二二:|| | | .:.:.:..: | l |||.i:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.|| | | .:.:.:..: | l |||.i:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.|| | | .:.:.:..: | l |||.i:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.|| | | .:.:.:..: | l |||.i:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.|| | | .:.:.:..: | l |||.i:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.|| | |────────── 二二|_l_||l二二二二二二二二二二二二二二|/===================  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄// ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: // :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: // --- -- ------------------ //-- ------- -- ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: // ( ( ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: // )) :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: // (( _,.'⌒ヽ. ------------- -- --- ---//----- -()゜. . : : }、- ::::::::::::::::::::::::::::::::::: // `ヽJ J′ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ いつも通り、仏だんにご飯をお供えして。 えんがわに座って、ふと、八月の空を見上げた時。 475 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:50:29 ID:c970524c ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ :.:.:::.:::.:::.::.::( .. :::.:::.::.::ヽ :::::.... :::::::::`'''‐‐--''''つ .:.:.:.:.:.:.... ::::.:::.:::.::(´ ::::::::::::::::::::.... :::::::ヽ、__-‐ 、 :::::::::::::::::::::::::::.... :::::::::::.:::.:::.ノ :::::::::::::::::::::::::::::::::.... ::.::.::.:( ,.- ::::::::::::::::::::::::::::::::::::.... :.:` ̄: : : :.:.:.:.::::::::::::::::::::::::::::::.... _ __:.:.:.:.:.:.:.:::::::::::.... :::.. :::.. `ヽ、`\:.:.:.:.:.:.:.:::::::::::.... ::::.. :::::::.. `ー、 ヽ,_:.:.:.:.:.:.:.:::::::::... ::::::.. :::::::::.. ,> └―‐‐ 、:.::::::::::... ::::::::.. :::::::::::.. 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( :::::::::::::::::::.... r'´_,.-‐-、''ー、 :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..... `‐' ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.. ,ィ'´''"´ レ'"´ :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.... 丿:::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.. : : : : : : : : : : : : : : . ヽ___ノ´ ̄ ̄`ー、 : : : : : : : : : : : : : : . ):::.. : . : : : : : : : : . ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ さわやかな風が、お母さんのそばを通りすぎて。 娘と少女が、ケムリのように、空にまい上がった、気がしました。 まい上がった風の中で、二人が笑っている、ような気がしました。 少なくともお母さんは、そうであるように、強く強く、願いました。 お父さんも、たぶんもう少ししたらいくからね。 私も、いつかそっちにいくからね。 だからそれまで、待っていてね。 心の中で、何度も何度も、声をかけました。 476 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:51:18 ID:c970524c 一月から八月まで、日々は過ぎて。 お母さんは、何もかも無くしてしまったけれど。 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ヾ.: ; ;ヾ ; ; :ヾゞヾ., .ゞヾ;ゞヾ;;; ` ; ゙ィ; ; ッ; ;.:゙ィ;"゙ィ ; ; ;゙ィ゛ ゛; ゙ィ; ; ッ; ; ; ;ヾ ; ;ゞ ;" "ゞ; ; ; ゞ゛;ゞ:.; ;ヾ ; ;ゞ ; ` ゙ィ;゙ィ゙ィ;ッ゙ィ;゙ィッ゙ィ. ,.ッ゙ィッ: ; ; ッ; ; :.ッッ:゙ィ ゞ:ヾヾ.: ; ;ヾ ; ; :ヾゞヾ., .ゞヾゞ;ゞヾ;ゞゞ;ゞ ` ` ゙ィ,;゙.ィ゛ ゙ィ; ッ ; ; ッ; ; ゙ィ ; ; ; ゙ィ゛ ゛; ゙ィ; ;ッ;゛; ッ,, ,,ヾ ;";ヾ; ;ゞ ;" "ゞ ; ; ; ゞ ; ;ヾ ; ; ヾ ;ゞ "ゞ;ゞ ` ..:.゙ィ ;゛;" ゛゛ ッ; ッ; ; ゛゙i゛; ;ッ;゛; ; ッ; ゛; ゙ィ; ; ; ;ゞ ;" ;ヾ ; ;";ヾ; ;"/" ; ;ヾ ;ヾ "" ゛;"; ゞ:. ゛ ` ; ; ; ゙ィ゛ ゛; ゙ィ; ッ ゛゙i゛; ; ゙ィ゛ ゛; ゙ィ; ;゙ィ゙ィ; ッ ; ; ッッ; ゛ " ;ヾヾ ; ; ヾ ;ゞゞ; ;ゞ ;" "ゞ ; ;"/" ヾ ;ゞ ;" "ゞ ; ; ; ,.゙ィ゙ィ; ;"゙ィ ; ; ;゙ィ゛ ゛; ゙ィ; ; ッ; ; ゙ィノ.y.:゙ィ ッ:゙ィッ;ッ゙ィ ゞヾ;ヾゞ:ヾ ゞ:.y.ノゞ ; ;ヾ ; ;ゞ ;" "ゞ; ; ; ゞ゛; ;ゞゞ.;;.ッ ィ゛ ;;; ゙ィ ; ; ; ゙ィ゛ ゛; ゙ィ; ッ;;"゙ィ ; ; ;゙ィ゛ ゛; ゙ィ; ; ッ; ; ゙ィノ.y.: ィ ゞ:.y.ノゞ ; ;ヾ ; ;ゞ ;" "ゞ; ; ; ゞ゛;;ヾ ;ゞ ;" "ゞ ; ; ; ゞ ;;; "ゞ;ヾ; ;"゙; ; ;.:゙ィノ.y.:゙ィ;"゙ィ ; ; ;゙ィ゛ ゛; ;;゙ィ; ; ッ; ; ゙ィノ.y.:: ィ ゞ:.y.ノゞ ; ;ヾ ; ;ゞ;; ;" "ゞ; ; ; ゞ゛;ゞ:.y.ノゞ ; ;ヾ ; ;ゞ ;" "ゞ; ; ; ゞ;.;;.; ゙ィノ.y.:゙ィ;"゙ィ ; ; ;゙ィ゛ ゛; ゙ィ゙i_:; ; ッ; ; ゙ィノ.y.:゙ィ: :ゞ:.y.ノゞ ; ;ヾ ; ;:_/ゞ ;" "ゞ; ; ; ゞ゛;ゞ:.y.ノゞ ; ;ヾ ; ;ゞ ;""ゞ;.,., ; ; ; ゙ィ゛ ゛; ゙ィ; ッ ゛゙i゛; ; ゙ィ゛゙i;_;;:ッ゙ィ゛゛;;;;゛; ; ゙ィ゛ "ゞ ; ;";;;;""ゞヾ:;;_;/"ゞ ; ;"/" ヾ ;ゞ ;" "ゞ ; ; ; ` ″!、;;!、;;゙ィ; ; ;;;;;; ;;;;;; ; ;ゞ;;ノ;ノ″ ` ` ` ` ` ` i ::.....;;;; ;;;: :;;; ;;;;.....:::/ ` i:::.....;;;; ;;;: ;....;;;::::;i;..ii| ` ` ` ` ` |ii..;i;::::;;;....; :::: ;;;..;.ii:i| ` ` ` |i:ii.;..;;; :::: ::..;;;.::.. :ii| ` ` ` ` ` |ii: ..::.;;;..:: :::.::;.;;;.:i;:iii| ` |iii:;i:.;;;.;::.::: :;;.:. ..;;.ii;i| ` ` ` ` |i;ii.;;.. .:.;;: ;;;....;;::;...;;ii| ` ` ` |ii;;...;::;;....;;; ::;...;;:..;i...iii| ` ` ` ` ` |iii...i;..:;;...;:: :..;;;.;;;.:;:;i.;ii| ` ` |ii;.i;:;:.;;;.;;;..: ::;...;;.;;ii:i;;;:;i| |i;:;;;i:ii;;.;;...;:: ::;...;;.;;ii:i;;;:;i| |i;:;;;i:ii;;.;;...;:: .;... .;;:.;:;iii;i| |i;iii;:;.:;;. ...;. iii;;ii:i;;i:i;:;iii;;ii ii;;iii;:;i:i;;i:ii;;iii "゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙"゙ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ それでも世界は、当たり前のように続いていきますし、 同じように、お母さんの日々も、続いていきます。 ごくごく、当たり前のように、たんたんと。 477 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:51:48 ID:c970524c いつそっちへ、行けるかは分からないけれど。 いつかそっちへ行った時に、色んなお話ができるように、しておくからね。 だから、ほんのちょっぴり、さようなら。 それじゃあ、またね、バイバイ。 永遠も半ばを過ぎた頃までには、また会おうね。 ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ /| ゙、``丶、 / ,! ヽ、 ヾユ ,∠ 丶 、 /フイ{''" ''‐ゞ、 ` 、 / ,'′/ !、 ゙、 ::.. i 丶 ./ |.l l ゙、ヾ:、ー::l. :::.゙:. ! | イ! l \:、\:! :::i;. i .!:i :i ハl '"` | :::l:::.l jλ ::i j /゙゙ | ::::!::ハ| lハ ::Nハ _ .. ,j ::/:/ { V:::|::ハ、..,,_ー',.ィ'i_|:/V ヾレ' _ ヾyノ厶/ jム>、 (ヽ」 |ィ'i!_l|. /,/,.r‐''¬ (ニヾ У/i!|/// | ⊂ニ ,ノ」⊥く/ | (,ュ/`''/ ,r、〈 | /ァ′ ,' 〃| と二ニヽ.ノ `! ハ// Yマ===ミ,! ヽイ_/_/l_ |/ /'''''"」 У丁丁フ /六 ̄ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ お母さんは、お空に向かって、そっと、つぶやきました。 478 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:52:20 ID:c970524c ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━ ┼ヽ -|r‐、. レ | d⌒) ./| _ノ __ノ / .| ,-‐- 、 -‐ヽ、 κ > ,.-‐==‐- , ': :. :/‐.ニ--.i-< `ヽ、 、-ー'`Y <,___ .ん::: '´ _,.-―‐-._ . /: :. : : :j/: :. :/ト、、:.ヽ: :.\ .__≦ー`___ _二z<_ .人:::::、 /::::::::::::::::::::::::::::\ /: :. :. : :| //: :/j ィ ヽ:ト: :`: :. : `、 > 7  ̄、-‐ ´ ̄`'┴< >ー≦:::::::::ニ=- _ /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ |: : :|: :. :|:レ_, /‐//.| ヽ|ヽ、|: :.|: :ト < 之 \ ,.::'゙.:.:::::::::::::::::::::::::::::::::::ニ‐_ ,'::::::::::::::::::;;;;:::;;:::::::;::;;::::::::::i |: : :|: :. :Vイ/ /' / | Vリ: : |: :| . >{/ ヽ ヽ 。゚.:.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ̄ミh、 !::::::::;:::;:::;;/i::;;!;;::::;'l;:i!;;:::;;;:::! {: : :|: : :ヘ'レ Vヘ: :|: :| | |/ | | ヽ \ { ヽ .η.:.:::::::::::::::::::::/.:::V:::::::{:::::::::.゙:;:':. ..|::::;;:;;:;;i|:;/‐|/'!;;::/-リ‐!;;:;;;;;:;! |: : :|: :. :ヘ_, ==. =、 〉 :/: :j ..| li l l Ⅳ斗lーハ\ |-┼ト | / ...∥.::::::::::::/.::::::/.:::::::::iヤvvヘ::::::::::.゙:;::, l:::;;;;;'';' レ-‐- l;:/| -‐-!;/;;、lゝ |: :.(|: :. : :ィ'^ ̄` .  ̄`'/:|/: :/ .| Ⅳl l \| /|j .i{.:.:::::::::∥::::∥:::::::::::j:| X⌒::::| ゙: .ノ'{;、;i :. '′! 'i}lノ ゙ ヽ|V、 ト: : ヽ 、_, ノ:イ: :./ | ヽ.ヽ{ ___ _ ! / ||i:::::::::::i{:::::::i{:::::‐ァ::7; }ト、:从_j ..゙ };丶. ' '′ ヽト:|ヽ: :丶、 .くハ|:/ .\ \ヽ'く xx xx レ .ノリ:::::::::::{{:::::::jj::/.::// ,.メ7人\`ヽ .|;;i' 、ヾ _フ , ′ ヽヽ>、 ヽ 、`.ヒi`- フヽ./' .\ト、`匚__ f 7 ノ /.::::::::::::;::从:::::从彡'∠., 〃⌒ハ::{::ハ .,.._'」_ 、丶 ィ /\.ミ丶ヽ⌒| ///イ _\V \Τ ̄|< ../ i{:::::::/:::i{::乂V::ハ〃⌒` 丶 ``}::}::}::::ノ /.._ ` ‐- ` iー-.、 f^丶、\ヽ レ //ィ .} .V.:人.:`┬‐r``‐'.:.:.:r'レ⌒l .{ 乂::i{:::::人:::{`}::リノ `` r…¬ ィ:ノノ ´ .../ `ヽ. /:| |、. ,'゙:i | .ヽ\ ヽヒ//| | >:| `ー1 ト、.:.:.:.:.:ノ L_ノ .ヽ\` ー-ノノ ∨ミ=‐- r ´ ̄ .._,. ´ \/.::l、 !〈、::{ ━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━ 479 名前: ◆.Chhu9/tgb7t [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:53:42 ID:c970524c [100/100] これにて投下終了です 絵本風というか童話風というか、そういった作風で 一度やってみたかったので、やってみました そうなっていたら幸いです それでは皆様、お疲れ様でした 480 名前:世終管理◆owlaHvCMPJco [sage] 投稿日:2020/05/18(Mon) 23:55:17 ID:??? >>479 自分自身のチェック漏れから多々ご迷惑をおかけしました。 児童文学のような趣は実現していたと思います。 短編祭ラストの投下、お疲れ様でした。 481 名前: 普通のやる夫さん [sage] 投稿日:2020/05/19(Tue) 00:47:32 ID:aff816ad [1/5] 戦争ってほんと悲惨よね。 娘さん亡くなったあたりが本当にきつかった。 乙でした。
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