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■2022/06/05(日) 名作ショートショートをAA化しよう 「the cold embrace」

カテゴリータグ:B級シネマ◆qrSUVPbtek氏の短編集 2008 名作ショートショートをAA化しよう モララーのビデオ棚 小説・文学・絵本系(2008) 小説・文学・絵本系 シリアス・ホラー・サスペンス・鬱系(2008) シリアス・ホラー・サスペンス・鬱系

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252 名前:B級シネマ ◆qrSUVPbtek  [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:28:08 ID:VnfnvH5H0 (PC)

1/21



   その青年は芸術家
     芸術家というものはときにはその身に起きたような出来事に遭う



       ./V\        
      ( ・-・)      
      (つ旦と)       
      と_)_)       


   そしてドイツ人
     ドイツ人はときおり青年のような体験をすることがある




253 名前:B級シネマ ◆qrSUVPbtek  [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:28:32 ID:VnfnvH5H0 (PC)

2/21



   青年は孤児だった
   亡き父の弟ヴィルヘルム叔父の後見のもとに育てられ
   見初めたのは叔父の娘ゲルトルートだった



     ∧ ∧
    ☆ノ^^ハ)☆   /V\
    ノリ, ^ー^)li  (・ー・ ,)
     (   )   (    )
      | | |     |  |  |
     (,__)_)  (_(__)

   青年もまた「汝を愛す」と互みに愛を誓った




254 名前:( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:28:59 ID:VnfnvH5H0 (PC)

3/21



   二人の仲は叔父に秘密にしておいた
   なぜなら叔父は1人娘には富める求婚者を
   というありがちな望みを抱いていたからである



       wwww
      ( ´Д`)
      (φ   )             
    ̄ ̄\三三\ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\    
                      \  


   もっともそれは恋人たちの夢に比べれば
   なんとも冷たい華のない考えでしかなかった




255 名前:( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:29:30 ID:VnfnvH5H0 (PC)

4/21



   2人は結婚の約束をした
   日は没し、青白き月がのぼるその天地の間に寄り添い
   青年は白くかぼそい指に婚約指輪をはめた

.、    (⌒     ´,r'":: ::      ::\,,.....,   )          (     __,,.. -'''""
::.`'::.、      ,,r'":: :: :...     ::: . ::; :::.`'::.、 )      __,,.. - ‐‐ ''''"" ..:: :: ..::..
::  :::.`'::.、  ,:r'::: :: .::: ::      ::    :; ::: .:: `':.、--‐‐''''"" ::: :: .::: ...::   ..::.. ...::
..:: ..:::.  ,r'":::.. ..:: ..:::. ....      :  ::  :; :: ::. ::`'::、_ ...:::  ::: ...:::..  ..:: ::__,,,,-‐
 ヾ  ,r'"::::   ;ゞ   ゞ    '''' ''':‐-,, ,,      ::. ::`'::、_     __,, - ''"":::.. ::.
ゞヾ; ゞ,;''ゞゞ ,;ゞヾ ,;ゞヾ''';ヾゞ; ::.. ::::... :: " ''''‐- ,..,,,...   __,,,-‐‐''''" ..:: ..::.. .:: ..::..
ヾ ;'''';,,;'''''';; ,;''''';;;''''''; ゞヾ;,,ゞ'''';. . . . . . . , , , , , , , . . . . . . . . , , , , , , , , , , , , . . . .
,,ヾヾ;;ゞi;;;;;i; ゞヾ; ゞ   ヾ;;ゞゞ ゞ'; : :: :,,,::;; ;; :::: :::: :::::;; ;;;: :: :::: ;;:: ::: ;::;;; ;:: ::,: :;;;; ;:: ;;; ;;:: ::
;ゞヾ ヾ ゞi;:,;:, ,、,、  ゞ;; ゞゞ ゞヾ;;;;i ''"~""'' ''""'' ''""'' ''"~""' ''"""'' ''""'' ''""'' ''""
ゞゞ ;ヾゞ , ;;ゞヾ;ゞ  ヾゞ ゞ;ヾ ゞil゙ ''"""~  ~"""'  ''""" ..:::::_::::::.......  ....:::::........::::::.......
;ゞゞ ;;ゞゞヾ ゞ ゞヾ ゞ ;;ゞゞlilノ゙jik   ''"""~"~     .:::::::r'" +  ̄ `-''_=''=::-::  ̄ =::
''|iil|iノ  ゞゞ;;ヾ; ゞゞヾliil'' ゛|i|'  """~     "~"" .:::_/. .. .... .. .~  .. .. .:.:  .+..~
..|ii|i| |i| jik|il| ノi|ヘ .|i|! /i|f!、     *       .:::::ヽ..._ ..。.+. . ~ . .. .. ~~ ..
iiノ:l:i、ソ、  |iヘ `"''` rk:、 ' ` ''"""~"ヽノ〃  "~""'' :::: ::::  ̄ ` ー ― - - ― ´  ̄
'' ` `   '` `                            "~""''        "~"
  """        ''((○))"'         """"           ''"""~"
    """~"      ヽノノ      ''"""~"        ''"""~"           ~"

''"""~"~"""'      ''"""~""''       ''"              ''"""~""''

   ''"~""''""''            ''""''          ''"~""'           ''""''
     ∧ ∧
     ☆ノ^^ハ)  
     ノリ//ー)   /V\
     (   )つ (・-・ )  
      | | |  ゚と  ∪ )
     (,__)_)  (⌒(_,J



256 名前:( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:29:57 ID:VnfnvH5H0 (PC)

5/21



   「死だって僕らを引き離せないさ
      ゲルトルート、もし君が先立つようなことがあっても
      冷たい地面が僕らを隔てたままなんてことはないさ
         君が僕を愛しているのならきっと帰ってきてくれる」


         ∧ ∧
         /V\☆
        ( ・ー・)l|
         (ソ  と )
         |  |  |(
        (_(__))



   「そして、この白い腕を僕の首に・・・・
           ほら、いまこうしているみたいに」




アクセスカウンター



257 名前:( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:30:24 ID:VnfnvH5H0 (PC)

6/21




   恋人はさる金満家の依頼でイタリアに行ってしまい、娘は1人ぼっちになった
      
    恋人は手紙をよこした




    ∧[〓]             ∧ ∧
    ( ´ー`) ̄          ☆((^^ヽ☆
     \ <    γ⌒ヽ   /|  jl(ー^ )||
      \.\_( 〒 )_//ロと   )
        \   ̄ ̄ ̄ /   | | |
         ∪∪ ̄∪∪    (,__(_)







   最初はたびたび、しだいに間遠になり、とうとう途絶えた




258 名前:( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:30:51 ID:VnfnvH5H0 (PC)

7/21



   きっと事情があるんだわ・・・・娘は恋人が手紙を書けない理由をいくつもこしらえた
     希望はいつも裏切られた
       幾度も絶望が襲いそのたびに望みを奮い立たせた
 

        ∧ ∧
       ☆ノ^^ハ)☆  
       ノリ,∩∩)li  
        (ソ ゝ)   




   だが真に絶望するときが来た
     裕福な求婚者が現れたのである 父は肚を決めた
       娘はただちに縁ずくことに決められた






259 名前:( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:31:22 ID:VnfnvH5H0 (PC)

8/21



     急ぎ足で町の裏通りを抜け人気のない橋に至った
     そこはしばしば恋人と黄昏どきを過ごした場所だった




          ∧ ∧
         ☆ノ^^ハ)☆  
         ノリ, - )li  
         ( つと)   
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二、\
i^i.i^ii^i.i^i.i^i.i^ii^i.i^ii^i.i^i.i^ii^i.i^i.i^i.i^ii^i.i^ii^i.i^i.i^i.i^ii^i.i^i.i^ii^i.i^i.i^ii^i.i^ii^i | | ̄ ̄
`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´.| |
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三 | |
                                         |  |



     2人はよく眺めていた
     薔薇色の光が輝き薄れついには水面へと消え逝くのを・・・・





260 名前:( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:31:48 ID:VnfnvH5H0 (PC)

9/21



   青年はフローレンスから帰郷するところだった
      手紙はすでに受け取っていた



        ./V\        
       ( ・-・)
       (     )
       人  Y
       し(__)



   涙でにじんだ懇願と絶望の手紙を
    だがもう愛していなかった
     絵のモデルになったフローレンスの若い娘に浮気心を奪われてしまったのだ
      もっともその胸中にまことの愛はなかった




261 名前:( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:32:18 ID:VnfnvH5H0 (PC)

10/21



   金持ちの求婚者が現れたって?いい話じゃないか
   結婚するがいいさ そのほうがあの娘にゃいいよ






           /V\        
          (  ・ー)
          (     )
          人  Y
          し(__)




    まぁ僕にとってはなおさらだけど・・・・





262 名前:( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:32:53 ID:VnfnvH5H0 (PC)

11/21



   青年はスケッチブックを開いた
   1郡の人影が目を引いたのだ





       ∧_∧       ∧_∧
      ( ´曲`)γ^⌒~`(´⊆` )
      (    つんハ乂と    )
      | | | ̄ ̄ ̄ ̄| | |
      (_)__)     (_(__) 

   それは葬式ではなかった 会葬者は見えない
         だが亡骸が見えた
   2人の男がぼろぼろの帆で覆われたぞんざいな戸板を担いでいる






263 名前:( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:33:27 ID:VnfnvH5H0 (PC)

12/21


 「亡骸みたいだね」
 
                 「さようで 1時間ほど前、岸に打ち上げられましてな」

 「身投げかい?」

                 「へえ、若い娘でね えれえ別嬪さんですぜ」


 「美男美女と相場が決まっているよ 自殺した人間は
 ちょっとスケッチしてみたいんだけど、美人っていう話だから」




           /V\            ∧_∧
          (  ・ー)           (´⊆` )
          (f‘‘‘‘φ           [100と )
           |__| | γ^⌒~`⌒ヾ   | | |
          (_)__)んハ乂从リハゞ  (_(__)
                 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



 そう言って金をやると、猟師たちは 「仏さんの顔を拝みやしょう、帆布あっしらが取っ払いますから」

 「いや、自分でやるよ」

 青年は湿った粗末な布を持ち上げた

                    さて、顔は・・・・










264 名前:( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:33:57 ID:VnfnvH5H0 (PC)

13/21



              ・
              ・
              ・
              ・
              ・
              ・
              ・
              ・
    ようやく、青年はやや落ち着きを取り戻した
     あの娘が自殺しようと、僕は僕だ そう考えようとした




        ./V\        
       (-・i|!;)
        (     )
        Y  人  
        (__)J




    天分が失せたわけじゃないし、金だってフローレンスで稼いだのがまだ財布に詰まっている
     どこへ行こうと思いのまま、自分に命令できるのは自分だけなのだから
 




265 名前:( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:34:22 ID:VnfnvH5H0 (PC)

14/21



   そのとき、不意に誰かが、何かが、
   背後から首に冷たい腕を巻きつけてきた


         ;;;;;;;;;;::::::::
        ./V\;;;:::::::        
       (i|!・д・);;;:::
        :::∩∩;;;;;::::
        Y  人;;;;:::::  
        (__)J;;;:::




   青年はやにわにふりむいた 誰もいない
   首に巻きついた冷たい腕
   はっきりと感じるのに、見えない






      __
     |==@=|_
     ( ・∀・)   /V\
     と ̄`y´ )つ (・-・;)つ
      |===,゚,=|   r|   ⌒|
     (__)_)  (_し⌒(__)   


   ほどなく声を聞きつけた夜警が、すわ何事ならんとやってきた
   冷たい腕はたちどころに失せた






266 名前:( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:34:50 ID:VnfnvH5H0 (PC)

15/21




   そんな1件があったあと、青年はコローニュを去った
   前と同じ徒歩の旅だが持ち合わせはだんだん乏しくなってきた
    行商人の1行に加わったり、道づれになった者には見境なく話しかけた
    朝から晩まで、常に誰かといっしょにいるように心がけた





             (),/ )::...   (ヽ,()          
          ( ) ..,,/    :::|,,( )           
          ヽ) ,/::     ::/(ノ            
          ヽ):::     :::(/      


          時には一人になった
        すると決まって現れるのだ
       あの冷たい腕が、首の回りに・・・・





267 名前:( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:36:02 ID:VnfnvH5H0 (PC)

16/21



   ゲルトルートが死んでから月日が流れた
   金は底をつき、見る影もなく衰えた

;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;|:::;;;;;;;;;;;;;;;|::     ________        ________
;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;|;;::::::;;;;;;;;;;|      ::|i::,        ,|    .   ::|i::,        ,|
;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;|:::;;;;;;;;;;;;;;;|     ::|| ̄|| ̄||| ̄|| ̄||       ::|| ̄|| ̄||| ̄|| ̄||
;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;|;;::::::;;;;;;;;;;|     ::|| ̄|| ̄||| ̄|| ̄||       ::|| ̄|| ̄||| ̄|| ̄||
;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;|:::;;;;;;;;;;;;;;;|     ::|| ̄|| ̄||| ̄|| ̄||       ::|| ̄|| ̄||| ̄|| ̄||
;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;|::;:;;:;;;;;;;;;;;|     ::|| ̄|| ̄||| ̄|| ̄||       ::|| ̄|| ̄||| ̄|| ̄||
;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;|;;::::::;;;;;;;;;;|      .:|i ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄,|  .    .:|i ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄,|
;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;|\ :::;;;;;;;;|      ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~        ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~
;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;| ;;;\.:::;;|:.   
;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;;;;;l,,;;|    \|:: . ,    
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
        '      .           
           /V\        
          ( i|!・-)
          (     )
          人  Y
          し(__)                      
             ,                                    
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


   パリの謝肉祭にたどりつくこと、それが青年の望みだった
   そこでは絶対に独りになる気遣いはない
   あの死者の抱擁を感じることもないだろう




268 名前:( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:36:35 ID:VnfnvH5H0 (PC)

17/21



        オペラ劇場を見つけた
      そこでは仮面舞踏会が催されていた
   入場切符を買い、ドミノ仮面を借りるだけの金は残っていた

    ♪
              ∧_∧    | ̄ ̄ |   ♪     
   ∧∧  ∧∧  X ノ ハヘ X _|___|_      
  ,,(*<X>) (<X>)   |゚ノ<X>)  (<X> )    
   (~~~)人i`y'"i)  §∪~~~)⊃と  <Y>)     
   /  ヽ  |_i_l   !!ノ ::::::ヽ  | | |     
  ∠__ゝ U`J  <____ゝ (__)_)

     ∧ ∧        ♪
    ☆ノ^^ハ)☆ /V\
    ノリ,<X>)li(<X> ,)
     (`介´つと    )
     く/ i丶ゝ |  |  |
     (,__)_)(_(__)




     闇も孤独も去った
   人々は憑かれたように叫びながら踊っている
    仮装した愛らしい娘が青年の腕にしがみついた
   心躍るような気分だった
    持ち前の陽気さが蘇ってきた






269 名前:( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:37:04 ID:VnfnvH5H0 (PC)

18/21



   かよわい仮装の娘は疲れたようだ
   肩に置かれたその腕が、鉛よりも重くなった
   1人、また1人、ほかの踊り手たちが去っていく
   シャンデリアの灯りも、1つずつ消えていった



         ∧ ∧
         /V\☆
        (;i|!・-)l|
         (ソ  と )
         |  |  |(
        (_(__))



   青年はその顔をまじまじと見た
   死んだ魚のような目だった
   どこにも光がない




270 名前:( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:37:33 ID:VnfnvH5H0 (PC)

19/21




   そして、見る見るうちに透き通り、ついにぼんやりした影だけになった
    それも消えた
   青年だけがただっ広い舞踏会場に独り残された


         ;;;;;;;;;;::::::::
        ./V\;;;:::::::        
       (i|!・-・);;;:::
        :::∩∩;;;;;::::
        Y  人;;;;:::::  
        (__)J;:::





   首には、あの冷たい腕が巻きついている
   もうこの冷たい抱擁は解けない
   叫ぼうとした 喉は嗄れ切っている
   静寂のなかに響くのは、もう逃れられない死の舞踏を踊る自分の足音だけだった






271 名前:( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:37:57 ID:VnfnvH5H0 (PC)

20/21





   青年はもう抱擁を解こうとはしなかった
   よし、踊るぞ!もう1曲ポルカだ
   たとえ倒れて死のうとも・・・・

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::::::::::::::
:::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;/V\;;;;;;;;;;;;;;::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::;;;;;;;;;;((i|!・∀・)∩;;;;;;:::::::::::::::::
:::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;ゝ    ノ;;;;;;;;;;;;;;::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;(⌒),、 ヽ;;;;;;;;;;;;;;:::::::::::::::::
:::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;; ̄  し'';;;;;;;;;;;;;;::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::





272 名前:( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:38:23 ID:VnfnvH5H0 (PC)

21/21






   半時間後、警官たちがランプを手に現れた
   表玄関の近くで、警官は何かにつまずいた






   それは、屍体だった
   栄養失調と疲労、さらに脳溢血を起こして死んだ画学生の・・・・





273 名前:B級シネマ ◆qrSUVPbtek  [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:39:07 ID:VnfnvH5H0 (PC)

「淑やかな悪夢」



メアリ・E・ブラッドン作   「the cold embrace」




274 名前:( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 09:14:21 ID:DK6E309t0 (PC)

(;゚Д゚)コワー
そして>>266の手の表現(゚д゚)ウマー



275 名前:( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 17:55:48 ID:aSjRWDig0 (PC)


この人の文章スゲーいいなぁ



276 名前:( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 20:57:26 ID:p0NUV1A10 (PC)

コワイ&良かった。すごく引き込まれました。




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