JR新宿駅東南口の東側。成人映画館「新宿国際劇場」のビルがあるあたりは、戦前・戦後にかけて大衆劇場「ムーラン・ルージュ新宿座」があった場所で、新宿らしい賑やかさを持つエリアです。
このビルの2階部分をよく見ると、「ファッションヘルス『クリスタル』地下1階」と書かれた風俗店の看板があります。しかし、1階にカラオケ店があるのみで、地下1階には風俗店らしき店舗は見当たりません。以前は、このビルに風俗店が入居していたが閉店し、その後、看板だけがビルに取り残されたようです。


千葉県の西船橋に「個室マッサージ」の看板(ファッションマッサージのことを最初はこう呼びました。)が残っています。「個室マッサージ」は、1985年(昭和61年)、新風営法の施行により、新たに出現した業態でした。新風営法の施行により、キャバレーなどの従来の風俗営業から、個室付浴場、ストリップ劇場、個室ヌード、個室マッサージ、ラブホテル、レンタルルーム、ポルノショップなどが「風俗関連営業」に区分され、営業時間は、午前0時閉店に規制され、客引きも取締の対象となったため、業者は大きな痛手を被りました。ところが、個室マッサージだけは、新法で認知された新しい業態であったため、業者がそれ一本に絞り込んだため、急増しました。


歌舞伎町公園前の通りのビルに、「美少女戦士コスプレエンジェル」と書かれた風俗店と思われる看板がありますが、それらしき店舗は既にありません。「リボンの騎士」、「セーラームーン」など、いわゆる「戦闘美少女」は、わが国固有の表現ジャンルで、美少女は、現実には存在しないような肉感的な衣装を着て、超科学か魔法の力を使って戦います。日本のおたく文化が風俗店にまで浸透していたことを示す遺構です。


歌舞伎町の旧コマ劇場の西側の一画に、1階にパチンコ店が入るビルがありますが、このビルの上部には「ローラン」と書かれた看板が残されています。「ローラン」は、平成10年(1998年)の「ノーパンしゃぶしゃぶ接待事件」の舞台となった飲食店舗ですが、現在は閉店しています。ローランがオープンしたのは、80年代前半で、もとは普通のキャバクラでしたが、90年代初めにしゃぶしゃぶ屋は衣替えし、これが大あたりしました。

以上のように歌舞伎町には、トマソン(不動産に付属・保存されている無用の長物)とも言える「無用風俗看板」を発見することがありますが、この「無用風俗看板」は、当時流行っていた風俗店のジャンルを知ることができる貴重な遺構であるといえます。