今では見かけなくなりましたが、1970年代後半から1980年代初頭、道端でポルノ雑誌自販機をよく見かけました。
ポルノ雑誌自販機の発祥については、1972年頃に出版取次の東販、日販が、雑誌自販機を書店を通じて普及させたが過当競争に陥り、売れるものを求めてエログロに走った(朝日新聞1977年1月31日)という説、酒の ツマミの自販機にヒントに、「エロ本もオカズなんだから、自販機で売ったらどうだろう」と業者が思いついた(川本耕治:ポルノ雑誌の昭和史)という説があります。
 俗にビニ本と呼ばれた書店販売のポルノ雑誌はA4版52ページが主流で1冊1000円以上と高価でしたが、自販機で販売されるポルノ雑誌(自販機本)はB5版64ページの小さく厚ぼったいサイズで、1冊500円でモデルの質も低かったのですが、ダメとわかっていても、ついつい買ってしまう、安っぽいB級C級の魅力がありました。

上の写真は、東十条4丁目に残る自販機の遺構ですが、2005年頃まで大人向けの雑誌が販売されていました(パチスロ必勝ガイド2008年10月号「泉麻人の80年代流行物しりとり」)。
 下の写真は、西新井の環状7号線近くに残る自販機の遺構ですが、商品陳列棚にはDVDと書かれた札が見られ、雑誌に代わってビデオやDVDがオカズの主役に変化していったことがわかります。


 ポルノ雑誌は人手を通しては非常に買いにくい(買うのに気がひける)という性格を持っているため、自販機による販売が急速に増えましたが、青少年でも購入できる、どぎつい表紙が通行人の目に触れる、などの理由から、1980年頃から全国各地でポルノ雑誌自販機の設置が規制され、現在はほとんど姿を消し、一部の地域で見 られるのみとなりました。
(写真は大田区森ヶ崎に現在も残る「ポルノ雑誌追放」運動の看板)


 写真の自販機コーナ(2010年、西新井にて撮影。現在は撤去されています。)は、最近設置されたものです。自販機コーナーに人が入るとセンサーが感知して自動的にいっせいに5台の自販機の電源が入るという先進技術をとりいれたものでした。販売されていたのはDVDやアダルトグッズが中心でした。
 今後はアダルド向けの電子ブックなど新しいメディア(オカズ)がどんどん普及していくものと思われますが、そのような中、レトロで懐かしいポルノ雑誌自販機の遺構は、1970~80年代の風俗文化を知るうえで貴重なものといえます。