尻無川水門
あれ? 前にどこかで見たような写真じゃないかと思った方は、記憶力がいいようで今ひとつですね。色が違うじゃないですか色が! 前のやつは緑でしたが、今度のは青ですよ。
そう、これは大阪名物・巨大水門「RGBバイザ三兄弟」のうち、B(青)のゲート、尻無川水門です。この水門もまた、大阪市営渡船がばっちり見せてくれます。今回乗せてもらうのは「甚兵衛渡船」。その昔、甚兵衛って名のとっつぁんが細々と渡し舟やっててな・・・みたいな長閑な由来が想像されますが、本当のところはどうなんでしょう。

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甚兵衛渡船には尻無川左岸(大正区泉尾)から乗りました。もちろん右岸(港区福崎)から乗ってもかまいませんので、都合のいい側からどうぞ。ただ、左岸の乗り場にはこんなド派手な陸閘(堤防に設けられた引戸。これも水門の一種)があるので、船が来るまでの間にゲートをなでたりして、楽しいひとときがすごせます。周囲の風景から完全に浮きまくったハッピーなカラーリングに、心もなごみますね。ちなみに渡船は無料で、15分ごとに運行されています。

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乗り場に出るとG(緑)の木津川水門のときとよく似た風景が広がります。それにしても都市部のこんなあちこちに渡船があって、もうほんまに大阪って感じですよね。目指す尻無川水門も、木津川のときと同じような距離感で真正面に現われます。

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やがて時間が来て船が動き出しました。しかし川幅は100メートルもないので、もうあっという間に渡り切ってしまいます。船の揺れで落ちないようにしっかりと手すりをつかみ、雄大な尻無川水門を思いっきり鑑賞しましょう。木津川水門と同じ形式(バイザゲート)で大きさもいっしょ。色だけが違うというのは、コレクター心理をくすぐるものがあります。色違いで揃えるのはコレクションの基本です。

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渡船の上からはそんなにじっくり撮れませんので、上陸してからも撮影します。でも右岸からだとちょっと全景は難しいですね。ふたたび左岸に戻り、水門の近くまで行ってみることにします。

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うーん、近くで見るとさすがにでかい。水門にしては複雑な構造、柱に巻き付くらせん階段など実に見飽きない造形ですが、近くから見続けていたら首が痛くなってきました。そしてその後、尻無川水門には悲しい歴史があることを知ることになります。

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水門の根本に付いているこのレリーフが物語るものは、工事中の大事故です。1969年のこと、何と水中作業のためのケーソン(水中に沈めた大きな箱)が壊れ、底で作業をしていた11人もの方々が犠牲になったのだそうです。そんな尊い人命の上にこのような巨大な構造物が成立していたのか・・・。思わず合掌。

さて、残るはR(赤)の安治川水門ですが、前に訪ねたのはもう12年も前のことです。次に海遊館のカワウソに会いに行くときには、久々に寄ってみようかと思います。

マップ



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  • 佐藤淳一

  • Das Otterhaus

  • 1963年、宮城県生まれ。水門写真家。最近はカワウソばかり撮っている。高いところと水のそばが得意。近著は「カワウソ」(東京書籍刊)。