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看板建築といえば銅板葺きが有名ですが、タイル・モルタル素材に目を向けると鑑賞の世界が広がります。

銅板葺きの看板建築はカッコイイ!…けれど

私が看板建築好きだと言うと「看板建築、ああ、いいですよね!」と賛同してくれる人は結構いらっしゃいます。しかし私がモルタル仕上げでも好きだというと、半分くらいの人が不思議な顔をします。

看板建築の一般的なイメージは、銅板葺きです。理由は看板建築の提唱者であった藤森教授が著書等で大きく取り上げたことと、銅板葺き看板建築がどんどん減ってしまったため保存運動等が行われたことだと思います。

もちろん、銅板葺きの看板建築ってカッコイイし、目を引くということもあったと思います。こんな感じでどの銅板葺きも美しいです。

銅板葺きの看板建築
銅板葺きの看板建築は、時間経過により緑青が生じているのがとてもきれいです。また、何枚もの板を葺いていたり、凹凸の加工がなされていたりして、レンガやタイルとはまた微妙な表示があり、違う味わいがあります。戦前の古い建物!といういい雰囲気が感じられます。

銅板葺きの看板建築は都内ではかなり少なくなっています。また銅板葺きの上を外装パネルで覆い隠してしまっている物件もあるため、ますます見かけなくなりつつあります(取り壊しの現場に遭遇して「実は銅板葺きだった!」と気づくこともあります)。

でも、看板建築は銅板葺きだけじゃないと思うのです。

ファサードの素材をいろいろ楽しんでみる

看板建築の正面(ファサード)の素材は銅板以外にもいろいろあります。主なところでは、タイル、レンガ、モルタル、石など。いずれもなかなか味わいがあると思いませんか?

タイル素材
タイル素材では七宝焼きのように釉薬を使ってきれいなものもあれば(写真の右上)、スクラッチタイルのように素朴なものもあります(写真の右下)。
スクラッチタイルとはひっかき傷のようなものをつけて釉薬をつかっていないもので、F・L・ライトの設計で有名な旧帝国ホテルで使われたことで大流行した素材だそうです。
複数の色タイルを配したものも時々みかけますが、これも素敵です。

石については実際の厚みはあまりない板状のものが時々使われています。固い業種のお店なんかにはぴったりで、重厚なイメージが出ます。ただし、看板建築は基本的に木造建築の外装を洋風に貼り付けたものなので、石造り建築ではありません。

先ほど紹介した銅板葺きはいろいろな文様(江戸小紋が多い)を使った細工が見事なものもあります(写真左上)。銅板だけに加工がしやすかったのでしょうか。

そして、モルタルです。最近は内装で珪藻土を使って鏝やローラーでならしたものが人気がありますが、外装のモルタルも多く見られます。むしろ件数的にはこれが多いでしょう。その上に塗装をするとまたバリエーションが増えます。
御影石のような雰囲気が出るように、種石を混ぜたモルタルを研ぎ出しや洗い出しで作ったものも見かけます(写真左下)。
(個人的には何のてらいもなく、塗りつけただけのモルタルにも惹かれます)

それ以外だと、外装パネル(いわゆる「さいでりあ」系)でリフォームしている例もあります。防火の観点もあってか、洋風を意識してか、板張りはほとんどみかけません(わざと古い外装にリフォームしている居酒屋などが板張りになっていますが、建築当時の意匠ではありません)。

   ■   ■

先ほどの写真はいきなりアップでしたが、少し引いて撮影すると、以下のようになります。こうした看板建築に近づいてみると、いろいろな素材があるわけです。

固定観念を取り払う
「看板建築=銅板葺き」という固定観念を取り払うと、看板建築の世界がぐんと広がってきます。私の主張するところの「もるかん!=モルタル仕上げの看板建築」が楽しくなってくると、どんどん、みちくさ散歩が楽しくなってくると思いますよ。

次の街歩きの際にはぜひ、モルタルな看板建築にもカメラを向けてみてください。

(文京区湯島・千代田区神田須田町・台東区台東・台東区小島・新宿区中町・
新宿区若松町あたり)





  • 山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)

  • 趣味ホームページ 8th Feb.

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  • 1972年生まれ。本業はファイナンシャルプランナー。資産運用とか年金のことを分かりやすく書いたりしゃべるのが仕事。副業はオタク。ゲーム・マンガ・街歩きを同時並行的に好む。所属学会は日本年金学会と東京スリバチ学会。Twitterアカウントは@yam_syun