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みちくさ好きの皆さんは、「看板建築」という建物はご覧になってますか?
都会を街歩きすればほぼ間違いなく出会っている建築物です。
看板建築とは1975年に藤森照信氏(建築史家、現東大名誉教授)が命名した建築様式のひとつです(当時の論文の梗概はこちらで読めます)。ま、難しいことを省いて簡単に言ってしまうと「2~3階建てビルっぽいけど実は普通の家の正面だけ洋風にしたやつ」です。たとえばこんな感じ。




写真を見ると、「あー、なるほど」「あー、見たことある」という人がほとんどでしょう。こういう建物の様式を看板建築といいます。
看板建築の大きな特徴は、道路に面した正面だけ洋風の建物のように垂直な壁があるにもかかわらず、ちょっと裏を覗くと、斜めの日本風の屋根があるということです。(例外もいろいろありますが、厳密な定義はひとまずおいておきます)

実はこの看板建築、いつかは消えゆく運命にあります。なぜなら、建て替えるときに、同じ様式で建てることはまずないからです。建てられるものなら、2階建てではなく、4階建て以上のビルにしたほうがいいですからね。

逆にいえば、今見られる看板建築は40~50年、あるいはそれ以上経っている可能性が高い建物といえます。一番古いものは関東大震災までさかのぼれるので、最古の建物だと80年以上経っている可能性すらあります(一説には震災前にも同様の様式はあったそうですから、もっとさかのぼれるかもしれません?)。

散歩をしていて看板建築をみつけたら、そこにその街の歴史が垣間見えているということです。かつての道幅、かつて賑わっていた商店街、かつての空の広さ……。看板建築を通じて、世界がたくさん広がってくるのです。

1980~1990年代には、もっぱら「保存」という観点から語られることの多かった看板建築ですが、銅板葺きの建物ばかりが珍重される傾向がありました。写真でいえば上の組み写真のパターンですね。
私も大好きですが、普通に残っているモルタル仕上げの看板建築のほうも味わいがあると感じています。下の組み写真のパターンです。(私は勝手に「もるかん!」と名付けて2000枚近くコレクションしています)。こういうのも看板建築です。




モルタル仕上げの素朴な看板建築に目を広げると、今でもたくさん残っていますし、商業建築にとどまらない利用方法が見られるなど、散歩のアクセントとして楽しめるものとなっています。
そこで、みちくさ学会では「2010年目線」で、看板建築の魅力と、看板建築を楽しむ散歩のスタイルについて語ってみたいと思います。

次に街にでかけるときは、看板建築のことも思い出して町並みを見てみてください。きっと、新しい風景が広がっていると思いますよ。
(撮影:月島・神田須田町・神田多町、西早稲田・浜松町・赤坂)





  • 山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)

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  • 1972年生まれ。本業はファイナンシャルプランナー。資産運用とか年金のことを分かりやすく書いたりしゃべるのが仕事。副業はオタク。ゲーム・マンガ・街歩きを同時並行的に好む。所属学会は日本年金学会と東京スリバチ学会。Twitterアカウントは@yam_syun