アヒルと鴨のコインロッカー

【 ストーリー・あらすじ 】
大学入学のために仙台へ引っ越してきた椎名(濱田岳)。新居の片づけをしていると、同じアパートの河崎(瑛太)と名乗る男が声をかけてきた。口ずさんでいたボブ・デュランの曲に興味を持ったらしい。しかし、彼は初対面の椎名に、同じアパートに住むブータン人のドルジ(田村圭生)という青年に広辞苑を盗んでプレゼントしたいから「本屋を襲わないか?」と誘う。ドルジは河崎の元彼女の琴美(関めぐみ)と付き合っていたらしい。また買うのではなく盗むのが大切だと奇妙なことを言う河崎。椎名は逃げ腰だったが河崎の巧みな話術にのり、気づいたら本屋襲撃に加担していた。
【 出演 】
濱田岳, 瑛太, 関めぐみ, 田村圭生, 関暁夫
【 監督 】
中村義洋
【 感想 】
この映画「アヒルと鴨のコインロッカー」を皆さんは鑑賞されたことがありますか?ラブストーリー、どんでん返し、ヒューマンドラマが詰まった作品です。まだ鑑賞されていない方はネタバレになってしまいますので、「登場人物の紹介」以外は読まないことをおすすめします。ということで、興味のある方はぜひご覧ください。
登場人物の紹介
椎名 (濱田岳)
東京から岩手に引っ越してきた大学生。
河崎とドルジと同じアパートに住んでいる。
河崎 (瑛太)
椎名の部屋の隣に住んでいる男性。
女好きで、いつもナンパしている。
琴美 (関めぐみ)
ドルジの恋人。
短い期間だが、過去に河崎と付き合っていた。
ドルジ (田村圭生)
椎名の部屋の隣に住んでいる男性。
ブータンからやってきた留学生。
麗子 (大塚寧々)
ペットショップの店長をしている女性。
琴美と一緒に働いていた。
一緒に本屋を襲わないか?
岩手の大学に入学するため東京から引っ越してきた椎名。ボブ・ディランの「風に吹かれて」を口ずさみながら荷物の整理をしていると、後ろから隣に住む河崎に話しかけれる。このことがきっかけとなり、椎名は河崎に振り回されることになります。
少し異質な雰囲気を醸し出す河崎、少し話したところでモデルガン2丁を出してきて「一緒に本屋を襲わないか?」と椎名に強盗の話を持ちかけるんです。いやいや・・・、先ほど知り合ったばかりで・・・ってそういう問題でもないですよねっ。危険な匂いがする人だと椎名も思ったはずです。
大学生の椎名を濱田岳さんが演じていますが、おどおどした役がすごく似合う俳優さんですねっ。濱田岳さんの他の作品も何本か観たことはありますが、個人的に大人しい人というイメージがあります。こういう固定したイメージがあるというのは俳優として素晴らしいですねっ。1つの武器だと思います。

広辞苑を盗むために本屋へ
まさかまさかですが、本屋を襲う計画が実現してしまいます。河崎の押しが強いのか、それとも椎名が押しに弱いのか・・・いや、どう考えても椎名が押しに弱過ぎなんですよねっ。訳が分からないまま椎名は連れて行かれます。
モデルガンを持ち、ボブ・ディランの「風に吹かれて(Blowin' in the Wind)」を歌いながら定期的に本屋の裏口ドアを蹴る。一体何の意味があるのか疑問に抱きながら、そしてビクビクしながら河崎に言われた通りにやリ続けます。
椎名の協力もあってか、見事成功。・・・と思いきや、河崎が盗んできたのは「広辞苑」ではなく「広辞林」だったのです。あんなにも勇気を出してやったのに間違えるなんて・・・、ただ当の河崎はそれほど関心がない様子。さらによくわからない男だなぁと思いました。

ペットショップの店長 麗子(大塚寧々)
偶然ですが椎名はペットショップの店長である麗子に出会います。麗子といえば以前「麗子には気をつけろ」と河崎が言っていたが、今度はその麗子に「河崎君の話は信用しないで」と言われてしまうんですねぇ。
もうこれはどっちを信用すればいいのかわからなくなる椎名ですが、ペットショップの店長と本屋強盗の男、どっちを信じるかは明らかです。ちょっと遅いなぁとは思いましたが、椎名は河崎を警戒し始めます。
明らかに河崎は怪しい、なので椎名の行動・考えは正しいのですが、観ている私からすれば「怪しすぎる」ということなのです。河崎の怪しい行動には何かあるのは確か、その何かが「良いこと」に繋がるんじゃないかなぁって観ていました。

ドルジの恋人 琴美(関めぐみ)
ドルジの彼女で河崎の元彼女である琴美。彼女は今はこの世にいないということで、回想シーンでのみ登場してきます。かわいいというのもありますが、やっぱり彼女の性格がものすごく魅力的でした。

すごく優しいですし、なんといってもすごく正義感に溢れています。動物虐待の現場に遭遇した時には、怖い気持ちがありながらも勇気を振り絞ってファイティングポーズを取ってましたよねっ。悪いことは絶対に許さないといった1本筋の通った性格がよく表現されていたと思います。
あと現在のストーリーに回想シーンがちょくちょく挿入されて時間軸が行ったり来たりするのですが、回想シーンはほとんどがモノクロで描かれており、時間軸の変化がものすごくわかりやすかったです。複雑な作品は苦手という方でも楽しめるように作られていますねっ。

本屋の男
河崎の怪しい行動、彼は車で出かけて一体何をやっているのか?椎名は麗子の車で後をつけます。ある場所に着くと何かをしている様子、朝になって河崎が車で家に向かったを確認し、恐る恐るその場を確認してみると・・・なんと、そこにはいたのは瀕死の状態にまで追い込まれた本屋の男だったのです。
これはほんとにびっくりしました。先ほど、河崎は怪しすぎるが故に実は「良いこと」をしているんじゃないかなぁという予想をしていましたが、完全に深読みしてしまってました。もうそのまんまですもんねっ。

隣の隣の外国人
中盤ぐらいですかねっ、ある新事実が明らかになります。今までドルジだと思っていた隣の男は、実はただの山形出身の日本人だったのです。それでは本当のドルジは誰?となるのですが・・・なんと今まで河崎と名乗っていた男こそが本当のドルジだったのです。
これはびっくりですよねっ。それじゃあ、今まで話してくれたことは嘘だったのか?というとそうでもなく、河崎と名乗っていたのが実はドルジだったというだけで、過去の出来事や話はほんとのことだったんですよねっ。

となると本物の河崎は誰なのか?となりますが、ここから登場してくる松田龍平さんこそが本物の河崎なんですねっ。ということで、ここからはドルジ(田村圭生)を瑛太、河崎(瑛太)を松田隆平に置き換え、本当の回想シーンが始まります。
これまで河崎を演じてきた瑛太さんもすごくかっこよく、ワイルドさも出ていてよかったのですが、やっぱり松田隆平さんのワイルドさは流石ですねっ。回想シーンで琴美が河崎のことを「ウワキショウ」と言っていましたが、瑛太さんよりも松田隆平さんの方がしっくりきました。

回想シーンがモノクロからカラーへ
それにしても「隣の隣の外国人」というセリフは嘘ではなかったのはオシャレだと思いました。そして本当の回想シーンを今度はカラーで描かれていくのですが、ここでわかるのがこれまでの回想シーンがモノクロだったのは偽りの過去だったからなんですねっ。
モノクロにすることにより時間軸の変化がわかりやすくなっていましたが、真の目的ではないというのが上手いなぁと思いました。本当の回想シーンがカラーで始まった時、すごく考えられていると感心させられました。

事件の犯人
動物虐待の現場を目撃してしまったドルジと琴美ですが、逃げる時に身元がわかる物を落としてきてしまい、琴美は犯人から狙われることになってしまいます。犯人に怯えながらも、どうしても許せない気持ちでいっぱいの琴美。
犯人からの電話をきっかけに居場所を見つけたドルジと琴美は警察に電話するのですが、裏口から逃げられてしまいます。しかし、車で逃げようとする犯人たちの前に琴美が立ちはだかります。
正義感の強い琴美ですので彼女のとった行動も理解できるのですが、犯人たちがどういう性格かも知っているのですごく残念でした。しかし、その後犯人たちが乗った車も大きなトラックに衝突されるのですが、すっきりというよりも琴美を失った哀しみの方が強かったです。

犯人への復讐
唯一生き残った犯人へ復讐すべく、ドルジと河崎は本屋を襲撃するのですが、HIVに感染していた河崎は倒れてしまい帰らぬ人となってしまいます。同時に2人も大切な人を失ったドルジの哀しみは底知れぬものだったでしょうねっ。
その2年後にドルジは河崎と名乗り、椎名を引き連れて本屋を襲撃します。椎名に裏口でドアを蹴らしていたのは、以前犯人に裏口から逃げられてしまっていたから。「広辞苑」ではなく「広辞林」を盗んでしまったのは、漢字が読めなかったから。
ここで疑問なのですが、なぜドルジは河崎と名乗っていたのでしょうか?おそらく河崎(瑛太)になることにより、河崎(松田隆平)が果たせなかった復讐を成し遂げようとしたのだと思います。

ボブ・ディランが繋げた出会い
琴美と河崎はドルジにとってかけがえのない人でした。そんな2人を失ってからの2年間、一体ドルジはどのように過ごしてきたのでしょうか?レコーダーに記録された2人の声を聴く毎日、そんな時に聞こえてきたのが椎名が歌うボブ・ディランの「風に吹かれて」だったのです。
この時のドルジの表情はものすごく印象的でした。この歌は・・・と心躍らせたことでしょうねっ。部屋を出て椎名を見た時、おそらく運命を感じたのだと思います。
個人的にはこのシーンが一番好きです。これまで椎名がドルジ(瑛太)に出会ったという解釈でしたが、実際はドルジが椎名に出会わせてもらったというのが正しいのでしょうねっ。神(ボブ・ディラン)が繋げた出会いだったのだと思います。

コインロッカー
タイトルにあるアヒルと鴨は話の中でよく出てきていましたが、コインロッカーは何の意味を持つのだろうとずっと疑問を持ちつつ観ていましたが、ラストで登場してきましたねっ。
「神様には見なかったことにしてもらえばいい」と言って、琴美がボブ・ディランのCDを戸棚に閉まったのと同じように、今度は椎名はボブ・ディランのCDを流したラジカセをコインロッカーの中に入れました。これによりドルジは救われたでしょうねっ。
ドルジの犯した罪は決して許されることではありません、しかし、彼の気持ちを考えると全否定できない。きっと椎名もそう思ったからこそ、神様を閉じ込めたのだと思います。ものすごく綺麗なラストでした。

上手くて綺麗な映画
この映画の中で流れる音楽といえば、やっぱりボブ・ディランの「風に吹かれて」ですが、作品に大きな意味を持っており、効果的に使われているので素晴らしいなぁと思いました。
映像でいえば時間軸の移動だったり、キャラクター設定など複雑な構成にも関わらず、とても丁寧に描かれていてすごくわかりやすかったです。カラーとモノクロの使い分けも良かったですねっ。
あとは小道具ですかねっ。ラジカセに始まり、レコーダーや写真、そして広辞苑や革ジャンなど、小道具の使い方がものすごく上手いなぁと思いました。無駄なものは1つもなかったので素晴らしかったです。
ただラストのコインロッカーのあたりなんかは綺麗にまとまりすぎているかなっ?と個人的に少し感じましたが、よく出来た作品だと思いますので、中村義洋監督の他の作品も観てみたいと思いました。

- Comment(2)
- [ 日本映画 ] 邦画
- 2015/03/06
- ihuruさん
こんばんは、ihuruさん。
コメントありがとうございます。
ihuruさんが原作も読まれているんですねっ。
私は原作を読んでいないのですが
映像化が少し不安だったというのはわかる気がします。
ものすごく複雑な構図と構成なので
2時間という短い中で伝えるのはすごく困難な内容だと思いますが
これほどまでに分かりやすく作られていたのは素晴らしいです。
他の記事も読んでいただきありがとうございます。
はいっ、また遊びに行かせていただきますねっ。
ご訪問ありがとうございました(^^)
- 2015/03/08
- パッチさん
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伊坂幸太郎原作×中村監督の映画はどれも
割と良い出来だなぁと思っているのですが、これは特に好きな作品です。
川崎役の松田龍平さんは流石ですよね。存在感がピカイチでした!
他のベスト○○も楽しく読ませていただきました。また来ます。
良かったらわたしのブログにも遊びにきてください♪