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2007年12月28日 22:53

ワーナーミュージックはなぜDRMフリーを選んだのか

 
自由ってすばらしい

本家アメリカではすでにスタートしているのDRMフリーの音楽配信サービス。とうとうワーナーミュージックもこの配信に参加することになったようです。

Warner to sell copyright-free songs on Amazon

copyright-free、著作権フリーと書かれてますが、DRMフリーの間違いです。

米アマゾン、コピープロテクトなしの楽曲オンライン販売を開始

日本でも情報出てますね。

さて今回は、DRMとはなにか、DRMをなぜかけずに音楽を配信するのか、というあたりのお話をしてみようと思います。

そもそもデジタルなデータというのは、言ってしまえば0と1の羅列です。0と1の羅列のうちの1桁を「ビット」、8桁、つまり8ビットのかたまりを「バイト」と言います。

音楽販売の今のところの主流であるCDは、640Mバイトの容量を持っています。Mというのは「メガ」と読み、1024倍の1024倍を表します。640の1024倍の1024倍バイト、6億7108万8640バイト、つまりさらに8をかけて53億6870万9120個もの0と1を記録できるわけです。

ものすごい数ですが、しょせん0か1かでしかないので、データはほぼ確実に取りだせますし、劣化することもありません。

つまりデジタルなデータは何度コピーしても永久にそのデータが変わらない。写真のように色褪せたり、アナログテープのように音が悪くなったりしないのです。

となると困るのは音楽を売ってる人たちですね。1度売ったら何度でも劣化せずコピーできてしまうわけですから、どうにかしたいと考えるのも人情では理解できます。

そこでCCCD(コピーコントロールCD)というのを考え出しました。ところが従来のCDプレイヤーを壊してしまう恐れがあったり、音質が悪くなったり、そもそもコピーを制限するはずがまったく効果がなかったりして、あえなく頓挫しました。

CDの次の時代のためのDRM

このようにCDはもうずいぶん昔に策定されたものということもあって、コピー制限をかけることは諦めざるを得ませんでした。しかし、時代は確実に進み、音楽はCDからパソコンや携帯電話を通したダウンロード販売に切り替わりつつあります。

そこで出てきたのがDRM(Digital Rights Management)、デジタル著作権管理技術です。

これはいくつかの方法がありますが、基本的には音楽を暗号化して保存しておき、正当な購入者かどうかをチェックしてから暗号化された音楽を復号して聞けるようにする、というものです。コピーの回数なども記録され、何個目のコピーかチェックし、制限以上のコピー回数を経たものは再生できないようにされています。

ところがこれにも問題があります。たとえば携帯電話でダウンロード購入した着メロが、機種変更をしたら聞けなくなる。音楽を購入したパソコンが壊れてデータが無くなってしまった。iPodなどの音楽プレイヤーにダビングして聞こうと思ってもコピー制限されててできない、等々……

ようするに我々消費者にとって非常に扱いづらいものになってしまったわけです。

もちろん配信側もわかってはいて、1度購入したら何度かダウンロードし直せるようにしたり、コピー回数制限をゆるくしたりとかはしていますが、根本的な解決にはなってません。

また、配信してる企業によって採用してるDRMの形式や音楽ファイルの形式がバラバラで、せっかく買っても自分の携帯プレイヤーでは聞けないなんてこともよくあります。

結局そういった事が足かせになり、音楽のダウンロード販売は少々行き詰まり気味。iPodとiTunesとiTunes Storeという、携帯プレイヤー、音楽管理ソフト、音楽販売サイトという三つをまとめて揃えて販売してるAppleの独壇場になってしまったわけです。

消費者はDRMフリーを求めている

Appleは比較的ユーザー側の立場にたった運営をしており、DRMの制限も非常にゆるやかで、iTunesを使って購入した音楽をCDに焼き付けることもできました。

ですが、それでもまだ不便なものは不便だったわけです。

私たちの音楽の楽しみ方を考えてみますと、

  • いくつかのCDから気に入った曲を抜き出してテープやCDにまとめる
  • 友達にCDを貸したり、上記のようにして作ったテープやCDをあげる
  • もちろんもらったりもする
  • 携帯用の音楽プレイヤーにダビングする
  • カーステレオで聞くためにもう1枚ダビングする

と、このように実にコピーする機会が多いわけです。

今までより不便になるものが受け入れられるわけがありません

だったらレンタルCDで借りて来てダビングすればいいや、となってしまってもおかしくありません。

コピーフリー自体は不利益にならない

上記で気付いた方もいらっしゃるでしょうが、実はいままでもコピーはたくさんされていたわけです。今さらコピーを制限したところで1人が何個も同じ音楽を買ってくれるかというとそういうわけでもない。コピーができるCDの方を選んで買われるだけなわけです。

しかしそれではいつまでたってもダウンロード販売に移行できない。在庫を抱えることもなく、売り切れにもならず、古い曲も新しい曲もいつでも用意しておけるダウンロード販売は、レコード会社としてもぜひやりたいところなのでしょう。

我々消費者としても、買いたいと思った曲がすぐ買って聞ける。売り切れで買えなかったとかあちこちのショップを探しまわるはめになったとかは、もう古い時代の話になる。お互いに大きなメリットがあるわけです。

では、どうせコピーされるのだからコピーを制限せず、つまりDRMフリーで販売してしまったほうがいいのではないか。

そう、つまりDRMフリーの音楽配信に承諾したワーナー・ミュージックは、そう考えたのだと思われます。

戦う相手はP2P

実は、90年代からさきほど言ったような「在庫を抱えることもなく、売り切れにもならず、古い曲も新しい曲もいつでもダウンロードできる」という環境は存在していました。

それがP2Pファイル交換ソフト、日本ではWinnyなどが有名ですね。

ただしもちろん違法です。ユーザー同士の交換から広まったP2Pファイル交換ソフトですが、規模が大きくなりすぎてもはやレコード会社も目をつむっていられなくなったのは、そう最近の話でもありません。

しかしユーザーにとっては、検索すれば聞きたい音楽がすぐ手に入るという利便性は捨てがたいのでしょう。P2Pファイル交換ソフトの利用はとどまる事を知りません。

この問題自体は長くなるのでまたいずれ書きますが、要するにP2Pファイル交換ソフトの利用は「音楽を無料で手に入れる」だけが目的ではないということです。

おそらくレコード会社もそのことを認識するようになったのでしょう。

こうしたP2Pファイル交換ソフトのメリットに負けない利便性と価格を実現し、違法コピーユーザーに正当な購入の道を示す。残るのは本気で無料で音楽を手に入れようとする海賊だけです。遠慮なく訴えられますし、その数も減ることでしょう。

DRMフリーの音楽配信が実現すれば、少なくとも音楽に関してはP2Pユーザーを激減させる効果があるのではないか。DRMフリーに同意したレコード会社は、そんなことを期待してるのではないでしょうか。

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