「ナウシカ」は、まだ終わっていない …ジブリ・プロデューサーが語る 「ナウシカ」は、まだ終わっていない …ジブリ・プロデューサーが語る
「風の谷のナウシカ」のBlu-rayが7月14日にリリースされることが決定。このBD化にあたり、「『ナウシカ』は、まだ終わっていない」とスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが語っている。

「」が7月14日にリリースされることが決定。このBD化にあたり、「『ナウシカ』は、まだ終わっていない」とスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが語っている。


「ナウシカ」をスクリーンで見た。26年ぶりの再会だ。そばには、宮さん(宮崎駿)がいた。試写室が暗くなると、緊張した。手に力が入り、汗ばんだ。そして、「ナウシカ」が始まった。いつも、映画を作り終わると、ぼくらは二度と見ないし、また、見たくない。でないと、次に行けない。しかし、今回は特別の事情があった。

ディズニーから次のBDタイトルを決めて欲しいという要望が出たのは、「ポニョ」のBDの打ち上げの日で、去年の暮のことだった。「ポニョ」の次にどの作品をBDにするのか。それまで何も考えていなかったが、ぼくの答えは即答だった。「ナウシカ」にしませんか。その場に同席したジブリとディズニーの関係者の表情が凍った。みんなの考えていた案は「ラピュタ」で、「ナウシカ」は、BD化の“最後の作品”になると勝手に考えていたようだ。そして、そう答えると同時に、ぼくにはもうひとつの考えが浮かんでいた。

「ナウシカ」の公開は1984年3月。当時の日本映画は実写も含めて、そのほとんどがネガから直接、プリントを焼いた。現在は、別のネガを作って焼くことが多いが、当時は、それが当たり前だった。その数、およそ100本。それだけ焼くと、公開時のモノとは別物の、特に色彩がまるで違うプリントが出来上がる。それを、いつの日か、公開時の綺麗なネガに復元してみたい。それは「ナウシカ」に関わったぼくとしては、長年の宿題だった。

その日を境に、撮影部の奥井(敦)さんを中心に、どういう方針で「ナウシカ」の原板を作るのか。議論が始まった。しかし、奥井さんは、「ナウシカ」の制作には直接、関わっていない。何を基準に原板を作るのか。推測は出来るが肝心なところが分からない。なにしろ、デジタル技術は、何でもやってのける。中古のものを新品に変えるのだって朝飯前だ。そこで、出た結論は、監督である宮さんに決めてもらう、それしか無い。宮さんが会議に参加した。宮さんの意見は、単純明快だった。

仕事が終わって帰宅すると、宮さんは、ディズニー・チャンネルをよく見る。そこで、放映されているのは、デジタル処理で“お色直し”した昔の作品群だった。冒涜ですよ。あれは。今回の話が持ち上がる前から、宮さんは、デジタル処理に関して、否定的な意見を吐いていた。過去の名作が、デジタル処理を施すことで、色にぎらつきのある、品のない作品になってしまっている。ああだったはずがない。あれは、作った人に対する冒涜ですよ。年数が経てば、作品が古ぼけて見えるのは当たり前。ぼくにしても、そうやって過去の名作を見てきた。それをいくら技術の進歩があったからといって、新品にしてしまう権利がだれにあるのか。それが宮さんの意見だった。

それを整理すると、こうだった。基本は、公開時のものを尊重して欲しい。それ以上には綺麗にしない。プリントを焼く過程でついた傷は取る。色パカ(色の間違い)は、そのままにする等々。

奥井さんは、宮さんの意見を尊重し、二カ月掛けて、忠実にデータ化に勤しんだ。フィルムの一コマ一コマをスキャニングして一コマごとにデータ化するという気が遠くなる作業だ。

こうして、3月1日(月)、試写の日がやって来た。

当時を知るスタッフは、ジブリにもうほとんどいない。見るのをいやがった宮さんをぼくが説得した。見るのは、本当に限られたスタッフだった。10分前に、試写室へ行くと、すでに宮さんが待ち構えていた。じつは、2~3日前から、宮さんが、そわそわして落ち着きが無いことをぼくは知っていた。「ナウシカ」との再会を待つ宮さんは、明らかに興奮していた。

上映が終わった。会議室にスタッフが集まり、宮さんの感想を待った。宮さんは、やっと重い口を開いた。古ぼけて見えたと、まず、感想を述べた。そして、こう話したのが印象的だった。鈴木さん、技術的に、ぼくらは、随分と遠くまで来てしまったんだね。

 話し合いの結果、この映像を基本としながら、少しだけ手直しすることになった。宮さんの注文は一つだった。必要な箇所に緑を少し増やして欲しい。

一日経って、奥井さんが、僕の部屋にやって来た。宮崎さん、泣いていましたよね。あれは……。ぼくは、こう答えた。「ナウシカ」は、まだ終わっていない。ぼくも宮さんも、カットごとに、そのときに起きた出来事をすべて覚えている。そりゃあ、後悔もあるし、これでよかったということも含めて。

スタジオジブリ 鈴木敏夫プロデューサ-


Blu-ray版「風の谷のナウシカ」は7月14日発売 鈴木プロデューサーのコメントも(AV Watch)



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