ケモノが人の遺伝子を得て、人幻-ニンゲンとして生まれ、
クローニングによって管理の下で作られる未来世界。
とある人幻のコロニーで成長する、謎の剣を持つ少年の姿があった。

表紙を見た感じでは、実に気軽に読めそうな作品。
裏返してみればなにやら、孔雀の羽をつけた、
尻丸出しのあられもない女性二人の姿。
第一回の最初に、ヒロインと半裸で抱き合う主人公-
ああ、なんだよくある異世界ファンタジーハーレムものか。
とこの作品を軽く見てしまっていた。
甘かった。
実に甘かった

主人公と、取り巻くヒロイン、友人、家族、暮らしているコロニーの住人達は
純朴で純粋で、きれいな物だけを塗り固めたような造りをしている。
だがこの世界は全く優しいものではなく、
銃と硝煙、血臭と裏切り、弱肉強食の全てに取り囲まれた狭い世界であり、
人の姿をした人幻でも容赦なく狩られる世界だということを、
薄皮一枚剥がすだけで露わになってしまう。
少年時代をそんな「綺麗な」場所で過ごす主人公が、
母親の職業に対する、微かで虚ろな嫌悪感までで、
相対することを止めてしまっていた世界の汚濁。
全てが雪崩のように押し寄せて主人公を取り囲む一巻後半、
この平和からの絶望的状況の連続。素晴らしい。
実に私好みの展開だ。

ちょっと表紙の絵と第一回の展開から、FEAR系TRPG少年PC1か?
などと少しでも思った自分がはずかしい。
これは久しぶりに出会った、世界設定を煮詰めに煮詰めたSFファンタジーだ。
クローン技術と管理社会が発達しきった中で、
生命倫理なんざ投げ捨てるほど、遺伝子を弄り半人半獣の人々が闊歩する世界。
その中で世間知らずの人間の主人公が、どのように成長するのかの物語は王道であり、
これからの展開が実に楽しみ。

ちょっと気になるところは主人公が持つ謎の剣設定や、
上空から主人公を見つめる謎の…空賊か?が
少しありきたりすぎるところか。
FEAR的というかキャプテンハーロックというか。
剣の名前がタイトルになっている以上、メインテーマに関わるものなんだろうが
ここは「よくある設定」なんかにはして欲しくないなぁ。
ともあれ次巻以降がとても楽しみな作品。
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